JP2016131936A - 被処理物改質装置、画像形成装置及び画像形成システム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、放電による被処理物の改質効果を維持しつつ、オゾンの漏洩を防止する。【解決手段】画像形成システム1は、被処理物改質装置4が、画像形成装置6へ搬送される被処理物Pに対して、放電用電源部20が、相対向する電極12、13a間で放電を行わせ、少なくとも電極12、13aがオゾンカバー15で覆われている。オゾンカバー15は、電極12、13aよりも被処理物Pの搬送方向下流側の所定領域を該被処理物Pとの間に所定間隔を開けて覆うとともに、該被処理物Pに対向する面が開口し、かつ、該被処理物Pから離隔する方向に凹んだ所定容量の凹部15aが形成されている。したがって、被処理物改質装置4は、被処理物Pの搬送とともに被処理物Pとオゾンカバー15の間を流れてきたオゾンを、凹部15a内に滞留させ、外部への漏洩を抑制する。【選択図】 図1
Description
本発明は、被処理物改質装置、画像形成装置及び画像形成システムに関し、詳細には、放電プラズマを利用して被処理物の性質を改質する被処理物改質装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
従来、搬送される被処理物にプラズマを照射して、該被処理物の性質を改質することが行われている。
例えば、最大記録幅にわたってノズルの形成されている記録ヘッドを、主走査方向に配設して、記録ヘッドを移動させることなく、1ライン〜複数ラインの画像を短時間に形成する1パス方式のインクジェット方式の画像形成装置がある。
この1パス方式の液滴吐出方式の画像形成装置は、記録媒体への隣接するドットにおける打滴の時間的間隔が短いため、先に記録媒体上に吐出された液滴が該記憶媒体に浸透する前に、隣接する液滴が記録媒体に吐出される。この場合、記録媒体上に吐出された隣接する液滴は、液滴間において合一(以下、適宜、液滴干渉という。)が発生し、画質が低下する。特に、記録媒体が、フィルム、コート紙等の非浸透性記録媒体、緩浸透性記録媒体であると、隣接する液滴が流動して液滴干渉が発生しやすく、画質の低下が大きい。
そこで、従来、 被印刷物の印刷面にプラズマを照射するプラズマ照射部を有する表面改質部と、インクジェットヘッドによりインクを吐出する印刷部と、被印刷物上のインクを硬化させる紫外線照射部とを少なくとも具備するインクジェット印刷機が提案されている(特許文献1参照)。
すなわち、この従来技術は、被印刷物の印刷面にプラズマ照射して、改質させ、改質させた印刷面にインクを吐出した後に紫外線照射してインクを硬化させている。
しかしながら、上記従来技術にあっては、プラズマを照射することで発生するオゾンの外部への漏洩及び漏洩を抑制することによる該オゾンの活性種による被処理物への改質効果の影響については、考慮されていない。
すなわち、通常、プラズマ照射部分に被処理物を搬送して、プラズマの照射によって発生するオゾンによって被処理物の改質を行うが、このとき、プラズマ照射部は、一般的に、隔壁により外部と遮断されて、オゾンの漏洩を抑制構成となっている。
ところが、従来、プラズマ照射部分へ被処理物を連続的に搬送するために、搬送機構と被処理物及び隔壁との間に隙間が発生し、オゾンが漏洩していた。
この場合、被処理物の搬送隙間からのオゾン流出を抑制するために、隔壁内のプラズマ照射部分内のオゾンを吸引して活性炭を通過させて無害化した後に廃棄する吸引機能を取り付け、このオゾン処理部の吸引力を増加することが考えられる。ところが、オゾン処理部の吸引力を増加すると、オゾンだけでなく放電プラズマによって発生した活性種も吸引してしまうことになるため、被処理物の改質効果が低下するという問題がある。また、オゾン処理部の吸引力を増加すると、活性炭を通過するオゾンの量も増加して、活性炭の寿命が短くなり、コストや機構サイズが大きくなるという問題があった。
そこで、本発明は、放電による被処理物の改質効果を維持しつつ、オゾンの漏洩を抑制することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の被処理物改質装置は、相対向する電極間で放電を行わせる放電手段と、前記電極間に被処理物を搬送する搬送手段と、少なくとも前記放電手段を覆う第1カバーと、前記第1カバーに連続する状態で、前記放電手段よりも前記被処理物の搬送方向下流側の所定領域を該被処理物との間に所定間隔を開けて覆うとともに、該被処理物から離隔する方向に凹んだ所定容量の凹部の形成されている第2カバーと、を備えていることを特徴としている。
本発明によれば、放電による被処理物の改質効果を維持しつつ、オゾンの漏洩を抑制することができる。
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な実施例であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではなく、また、本実施の形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
図1〜図13は、本発明の被処理物改質装置、画像形成装置及び画像形成システムの一実施例を示す図であり、図1は、本発明の被処理物改質装置、画像形成装置及び画像形成システムの一実施例を適用した画像形成システム1の概略構成図である。
図1において、画像形成システム1は、搬入部2、搬送部3、被処理物改質装置4、搬送部5、画像形成装置6、乾燥装置7、搬送部8及び搬出部9等を備えている。画像形成システム1は、LAN(Local Area Network)、インターネット等の図示しないネットワークに接続されており、ネットワークに接続されているコンピュータ等のホスト装置から送られてくる画像データと印刷設定等の印刷ジョブに基づいて画像形成する。
搬入部2は、被処理物P及び符号を付さない搬入機構等が収納されており、搬入機構が被処理物Pを搬送部3へ搬入する。被処理物Pは、後述する画像形成装置6で画像形成の対象となる記録媒体であり、本実施例では、ロール状に巻かれた通常のロール紙が用いられている。被処理物Pは、ロール紙に限るものではなく、例えば、カット紙、OHPシート、合成樹脂フィルム、金属薄膜及びその他表面にインク等の液滴での画像対象となる媒体であれば適宜のものを用いることができる。また、被処理物Pは、紙の場合、その種類としては、例えば、普通紙、上質紙、再生紙、薄紙、厚紙、コート紙等種々の紙種の紙を用いることができる。なお、被処理物Pは、コート紙等の非浸透、緩浸透紙であると、後述する画像形成装置6による画像形成の前処理として、被処理物改質装置4で行う改質処理の効果が大きく作用する。また、ロール紙である被処理物Pは、切断可能なミシン目が所定間隔で形成されたロール紙(連帳紙、連続帳票)であってもよい。この場合、被処理物Pにおけるページ(頁)は、所定間隔のミシン目で挟まれる領域となる。
なお、搬入部2は、図1においては、ロール状の被処理物Pを1つ収納して、交換する場合には、手作業で交換する。また、搬入部2は、被処理物Pがカット紙のようなカット状の被処理物Pであるときには、例えば、幅サイズ、媒体質等の異なる被処理物Pを複数種類収納して、適宜選択指定された被処理物Pを搬送部3へ搬入するようにしてもよい。
搬送部3は、搬入部2から搬入されてきた被処理物Pを、被処理物改質装置4へ搬送する。
被処理物改質装置4は、搬送部3から搬送されてきた被処理物Pに対して、前処理として、該被処理物Pに対して性質の改質を施して、改質した被処理物Pを搬送部5へ搬出する。
搬送部5は、被処理物改質装置4から搬出された被処理物Pを、画像形成装置6へ搬送する。
画像形成装置6は、画像形成部6aと読取部6bを備えている。画像形成部6aは、インク吐出式(インクジェット式)の画像形成方式で、被処理物Pに画像を記録出力して、読取部6bへ送り出す。画像形成部6aは、例えば、それぞれ主走査方向において被処理物Pの最大幅に亘って配設されているブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー (Y)の4色のノズルを有する記録ヘッド6aa(図2参照)を備えている。画像形成部6aは、記録ヘッド6aaに対向して被処理物搬送部6abが配設されており、被処理物搬送部6abは、例えば、搬送ローラと搬送ベルトを備えていて、被処理物Pを図1、図2に矢印で示す搬送方向へ搬送する。画像形成部6aは、被処理物搬送部6abによって被処理物Pを搬送し、記録ヘッド6aaのノズルから画像データに応じてインク液滴(記録材液滴)を被処理物Pへ向かって吐出させることで被処理物Pへ画像を形成する。なお、画像形成部6aは、記録ヘッド6aaに形成されているノズルとしては、上記CMYKの4色に限るものではなく、例えば、グリーン(G)、レッド(R)、ホワイト(W)、透明及びその他のインク用のノズルを備えていてもよい。
読取部6bは、画像形成部6aで画像形成された被処理物P上の画像を読み取る。なお、読取部6bが読み取る画像は、ドット解析用のテストパターン画像であってもよい。画像形成システム1は、この読取部6bの読取結果からドットの真円度、ドット径、濃度のバラツキ等を算出する。画像形成システム1は、この算出結果に基づいて、被処理物改質装置4における改質処理及び画像形成部6aにおける画像形成処理をフィードバック制御またはフィードフォワード制御する。
乾燥装置7は、搬送部5から送られてきた画像形成済みの被処理物P、特に、被処理物P上のインク等の記録材液滴を乾燥させ、搬送部8へ送り出す。なお、読取部6bは、被処理物Pの搬送方向において、乾燥装置7の下流側に配設されていてもよい。
搬送部8は、乾燥装置7で乾燥された被処理物Pを搬出部9へ搬送し、搬出部9は、搬送されてきた被処理物Pを、ロール状に巻きつけて搬出可能とする。
そして、上記被処理物改質装置4は、図2に示すように、放電ケース11内に、ロール状のアース電極(対向電極)12、放電電極部13、放電カバー14、オゾンカバー15及び搬送ローラ16等が収納されている。また、被処理物改質装置4は、図示しないオゾン処理部を備えている。
被処理物改質装置4は、アース電極12及び搬送ローラ16が、搬送手段として、図示しない駆動部により回転駆動され、搬送部3から搬送されてきた被処理物Pを、搬送ローラ16及びアース電極12によって順次搬送して搬送部5へ排出する。
なお、被処理物改質装置4は、図2では、放電電極部13が近接して配設されているアース電極12と搬送ローラ16の対が、1対のみ設けられている場合について示しているが、アース電極12と搬送ローラ16の対が、複数対設けられていてもよい。
被処理物改質装置4は、被処理物Pを挟んで、アース電極12に対向する位置に、放電電極部13がアース電極12の曲面に対応した状態で対向配設されている。
放電電極部13は、複数本の放電電極13aで構成されている。放電電極部13は、例えば、被処理物Pの搬送方向と直交する直交方向(幅方向)に、複数の放電電極13aが少なくとも最大の被処理物Pの幅(最大幅)に亘って配設されている。
放電電極部13は、放電電極13a、特に、アース電極12側の先端が、アース電極12との間で放電可能な放電可能位置(放電可能状態)と、放電が不可能な放電不可能位置(放電不可能状態)と、に各放電電極13aが個別に移動可能(遷移可能)に配設されていてもよい。
放電電極部13は、アース電極12と反対側が、放電カバー14により覆われている。被処理物改質装置4は、放電カバー14のさらに外側に、所定間隔開けて、放電電極部13、アース電極12、放電カバー14及び被処理物Pを覆う状態で、オゾンカバー15が配設されている。オゾンカバー(第1カバー)15は、これら放電電極部13、アース電極12、放電カバー14及び被処理物Pを覆って、オゾンを閉じ込めたオゾンカバー空間17を形成している。
オゾンカバー15は、オゾン排気ホース18が連結されており、オゾン排気ホース18は、図示しないオゾン処理部に接続されている。
オゾン処理部は、図示しない吸引ポンプ、処理機構部等を備えており、吸引ポンプによってオゾン排気ホース18を介してオゾンカバー空間17内のオゾン等を吸引して、処理機構部の触媒、活性炭等でオゾンを無害化して外部へ排出する。
被処理物改質装置4は、放電電極13aとアース電極12との間で、放電(プラズマ放電)を発生させて、放電プラズマによって、アース電極12の表面に沿って搬送される被処理物Pの表面を改質する。この放電プラズマによる被処理物Pの表面の改質は、放電プラズマによって、被処理物Pの表面の水接触角を低下させるという改質である。被処理物Pは、改質されることで、画像形成部6aでインク液滴が打滴された際に、隣接ドットが繋がることを抑制して、不規則な隙間、濃度の増大等が発生するビーディング等の画像品質の劣化が抑制される。
上記放電カバー14は、放電電極13aとアース電極12との放電による放電プラズマの活性種(酸素ラジカル等)を、放電電極13aとアース電極12との間に閉じ込めて、被処理物Pの改質効率を向上させる。
オゾンカバー15は、放電プラズマから発生する電磁波をシールドするとともに、放電プラズマによって発生するオゾン等の外部への流出を防止する。このオゾンカバー15については、後で詳細に説明する。
アース電極12は、その軸芯部が、放電用電源部20に接続されており、放電用電源部20は、各放電電極13aに接続されている。放電用電源部20は、外部交流電源(例えば、AC100Vの商用交流電源)からのパルスをトランスで昇圧し、高圧パルスの出力を放電電極13aに供給することで、アース電極12と放電電極13aとの間で放電させる。したがって、放電用電源部20は、相対向する電極12、13a間で放電を行わせる放電手段として機能している。
アース電極12は、そのローラ表面が、ポリイミド、シリコン、セラミック等の誘電体が設置あるいは被覆されている。
放電電極13は、本実施例では、金属部分が露出している放電電極13aが用いられているが、絶縁ゴムやセラミック等の誘電体や絶縁体で被覆されているものであってもよい。また、本実施例では、放電電極13は、板状の放電電極13aを用いて、その先端を被処理物Pから数ミリ浮かした状態で、被処理物Pの搬送方向に複数配列した構成となっている。放電電極13は、上記構成に限るものではなく、例えば、断面形状がローラ状で被処理物Pに対して接触配置されて、被処理物Pの移動に合わせて、連れ回りするものであってもよい。また、放電電極13aは、その断面形状が、ワイヤーのように細いものであってもよい。
なお、本実施例の放電による親水化処理としては、例えば、大気圧非平衡プラズマによる親水化処理を用いているが、この方法は、電子温度が極めて高く、ガス温度が常温付近であるため、好ましい方法である。
大気圧非平衡プラズマを発生させる方法としては、放電電極13aとアース電極12との間に誘電体等の絶縁物を挿入する誘電体バリア放電、細い金属ワイヤー等に著しい不平等電界を形成するコロナ放電、短パルス電圧を印加するパルス放電とに大別される。これらの方法を、一種単独で、または、これらを組み合わせて用いることが可能である。
大気圧非平衡プラズマを広範囲に安定して発生させるには、誘電体で被覆された電極12、13a間に交番する高電圧を印加して得られる、ストリーマ絶縁破壊形式の誘電体バリア放電とすることが好ましい。
オゾンカバー15は、図3に示すように、オゾンカバー空間17への被処理物Pの侵入口及び排出口側において、被処理物Pに近接する状態で配設されており、特に、被処理物Pの搬送方向下流側においては、被処理物Pに対して、長く近接して配設されている。
オゾンカバー15は、その被処理物Pの搬送方向下流側において、被処理物Pに近接するとともに、被処理物Pから所定距離離れて被処理物Pとの間に、所定の大きさの空間を有する凹部15aが形成されている。凹部15aは、被処理物Pの幅方向全面にわたって形成されており、その空間体積がある程度大きいほうが、以下に説明するオゾン流出阻止機能の効果を向上させることができる。例えば、凹部15aは、被処理物Pの搬送方向長さ:2〜10mm、被処理物Pから離隔する方向である高さ方向:5〜15mmの範囲で設定するのが好適である。
また、オゾンカバー15は、凹部15aよりも、被処理物Pの搬送方向上流側の上流側カバー15bよりも、搬送方向下流側の下流側カバー15cが、被処理物Pにより近く配設されており、また、下流側カバー15cが搬送方向に長く形成されている。例えば、上流側カバー15bは、搬送方向:2〜10mm、被処理物Pとの間隔であるギャップ:1〜5mm、下流側カバー15cは、搬送方向:2〜10mm、ギャップ:0.5〜5mmの範囲に形成されていることが好ましい。
すなわち、オゾンカバー15内のオゾンカバー空間17に漂っているオゾンは、回転搬送される被処理物Pの移動に伴って、オゾンの流れが被処理物Pの搬送方向に発生して、被処理物Pの搬送方向に、被処理物Pの表面に沿って流れる。いま、オゾンカバー15は、その被処理物Pの搬送方向下流側の端部に、被処理物Pとの間隔が急に大きくなる凹部15aが形成されている。したがって、被処理物Pに沿って流れてきたオゾンは、凹部15aにおいて、急激にその速度が遅くなり、凹部15a内に渦を巻くようにして流入し、凹部15aよりも下流側へ流れにくくなる。さらに、オゾンカバー15は、その下流側カバー15cが、上流側カバー15bよりも被処理物Pとの間隔が狭い状態で形成されており、凹部15a内に滞留したオゾンが、凹部15aよりも下流側へ流れることをより一層抑止することができる。したがって、オゾンカバー15の電極12、13aよりも下流側部分は、第1カバーであるオゾンカバー15に連続する状態で、電極12、13aよりも被処理物Pの搬送方向下流側の所定領域を該被処理物Pとの間に所定間隔を開けて覆うとともに、該被処理物Pに対向する面が開口し、かつ、該被処理物Pから離隔する方向に凹んだ所定容量の凹部15aの形成されている第2カバーとして機能している。なお、このオゾンカバー15の電極12、13aよりも下流側部分(第2カバー)は、本実施例においては、第1カバーとしてのオゾンカバー15と一体として、形成されているが、電極12、13a部分を覆う部分とは、別の部材で、オゾンが漏れることなく、連続した状態で形成されていてもよい。
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例の画像形成システム1の被処理物改質装置4は、放電による被処理物Pの改質効果を維持しつつ、オゾンの漏洩を抑制する。
画像形成システム1は、ネットワーク上のホスト装置から送られてくる印刷ジョブに基づいて、被処理物Pに画像形成装置6の画像形成部6aにおいて画像形成する。この場合、画像形成システム1は、印刷ジョブで指定された被処理物P、あるいは、操作表示部で選択指定された被処理物Pを搬入部2から搬送部3を介して被処理物改質装置4へ搬送する。
被処理物改質装置4は、複数の放電電極13aのうち、放電させる放電電極13aを決定して、決定した放電電極13aのみを放電させて、被処理物Pの必要な領域のみを改質させる。
そして、被処理物改質装置4は、放電電極13aとアース電極12との間のプラズマ放電によって発生するオゾンが、被処理物Pを改質し、後段の画像形成装置6の画像形成部6aで形成される画像の品質を向上させる。
被処理物改質装置4は、放電電極13aとアース電極12との間でのプラズマ放電によって発生するオゾンが、オゾンカバー15で覆われているオゾンカバー空間17内に充満し、被処理物Pが搬送されるのに伴って、被処理物Pの表面に沿って流れる。したがって、オゾンカバー空間17内のオゾンは、搬送される被処理物Pに対して、改質を施す。
このオゾンカバー空間17を構築するオゾンカバー15は、被処理物Pの搬送方向下流側において、被処理物Pに近接して配設されているとともに、途中に、被処理物Pの幅方向に延在する空間を構築する凹部15aが形成されている。また、オゾンカバー15は、この凹部15aよりも下流側の下流側カバー15bが、凹部15aよりも上流側の上流側カバー15bよりも被処理物Pとの間隔が短く形成されている。
したがって、被処理物Pとともにオゾンカバー15との間を流れてきたオゾンは、被処理物Pとオゾンカバー15との間で所定の圧縮力を受けた状態で流れてくるが、凹部15aで急激に速度が遅くなるとともに、圧縮力が急激に減圧する。その結果、被処理物Pとともに流れてきたオゾンは、凹部15a内に渦を巻くようにして流入し、凹部15aよりも下流側へ流れにくくなる。さらに、オゾンカバー15は、その下流側カバー15cが、上流側カバー15bよりも被処理物Pとの間隔が狭い状態で形成されており、凹部15aで滞留されたオゾンが、凹部15aよりも下流側へ流れることをより一層抑止することができる。
その結果、オゾンカバー空間17内のオゾンが外部に漏れるのを防ぐために、従来のように、オゾン処理部によるオゾンカバー空間17内のオゾンを吸引する吸引力を大きくすることなく、オゾンが外部に漏れるのを抑制することができる。オゾン処理部によるオゾンの吸引力を大きくすることによるオゾンカバー空間17内のオゾン濃度の低下を防止することができ、オゾンによる被処理物Pの改質効果を良好な状態に維持することができる。
なお、上記説明においては、被処理物改質装置4は、オゾンカバー15に凹部15aを1つのみ設けた場合について説明したが、凹部15aは、1つに限るものではない。例えば、図4に示すように、被処理物改質装置4は、オゾンカバー15に、複数の凹部15aa、15ab、15ac、・・・が被処理物Pの搬送方向に並んで形成されていてもよい。オゾンカバー15に形成される凹部15aa、15ab、15ac・・・の数は、何ら限定されるものではないが、コストと大型化の抑制を考慮して、2個から10個が適当である。
このように、被処理物改質装置4は、複数の凹部15aa、15ab、15ac・・・が被処理物Pの搬送方向に並んで形成されていると、被処理物Pとオゾンカバー15の間を流れるオゾンの速度が凹部15aa、15ab、・・・毎に徐々に遅くなる。その結果、オゾンは、被処理物Pの搬送方向下流側により一層流れ難くなり、搬送される被処理物Pとともに流れて外部に排出されるオゾンの量をより一層抑制することができる。
また、この場合においても、各凹部15aa、15ab、15ac、・・・毎に、その上流側カバーよりも下流側カバーにおいて、被処理物Pとの間隔を狭くすると、各凹部15aa、15ab、15ac、・・・から下流側に流れるオゾンの量をより一層抑制することができる。
また、被処理物改質装置4は、例えば、図5に示すように、凹部15aの下流側の側面に、オゾン流阻止材(気流阻止部材)30を取り付けてもよい。
オゾン流阻止材30は、例えば、除電ブラシが用いられ、凹部15aの下流側側面から被処理物Pの上面に接触する状態で取り付けられている。オゾン流阻止材30は、被処理物Pの移動を阻害することなく、被処理物Pととともに流れるオゾンの流れを阻止して、凹部15a内に滞留させる。
その結果、より一層オゾンが外部に漏洩することを抑制することができるとともに、該オゾンによる被処理物Pの改質効果を向上させることができる。
また、オゾン流阻止材30として、除電ブラシを使用すると、除電ブラシによって、被処理物Pの帯電を防止することができ、被処理物Pの搬送部等への張り付きを防止して、搬送抵抗を抑制することができる。
さらに、上記説明においては、被処理物Pが、ロール状の被処理物Pである場合について説明したが、被処理物Pは、ロール状の長尺な被処理物Pに限るものではなく、例えば、図6に示すように、シート状の被処理物Pであってもよい。
この場合、被処理物改質装置40は、平板上のアース電極41上に、ローラ状の放電電極部42が配置されており、アース電極41は、放電電極部42側に、ポリイミド、シリコン、セラミック等の絶縁体41aが重ねられている。アース電極41は、被処理物Pの幅方向において、最大幅の被処理物Pの幅以上の幅を有し、被処理物Pの搬送方向において、被処理物Pの改質に必要な長さを有している。アース電極41は、放電用電源部20に接続されている。
放電電極部42は、ローラ状の放電電極42aが、複数、図6では、2つ配設されており、各放電電極42aは、放電用電源部20に接続されている。
放電電極部42は、アース電極41と反対側が、放電カバー43により覆われている。被処理物改質装置40は、放電カバー43のさらに外側に、所定間隔開けて、放電電極部42、放電カバー43及びアース電極12の表面を覆う状態で、オゾンカバー44が配設されている。オゾンカバー44は、これら放電電極部42、放電カバー43及びアース電極12の表面を覆ってオゾンを閉じ込めたオゾンカバー空間45を形成している。
オゾンカバー44は、図6では図示しないが、オゾン処理部に繋がっているオゾン排気ホース18が連結されている。
オゾンカバー44は、図6に矢印で示す被処理物Pの搬送方向下流側に、長く伸びて形成されている。オゾンカバー44は、この下流側において、被処理物Pに近接するとともに、被処理物Pから所定距離離れて被処理物Pとの間に、所定の大きさの空間を有する凹部44aが形成されている。
なお、図6では、詳細には、分かりにくいが、オゾンカバー44は、凹部44aよりも、被処理物Pの搬送方向上流側の上流側カバーよりも、搬送方向下流側の下流側カバーが、被処理物Pにより近く配設されている。また、オゾンカバー44は、凹部44aを挟んだ、上流側カバーと下流側カバーの寸法としては、上記図2及び図3の場合と同様である。
そして、画像形成システム1は、アース電極41を挟んだ、搬送方向上流側と下流側及び被処理物搬送部6abの下流側に、それぞれ配設されている搬送ローラ46によって被処理物Pを、被処理物改質装置40及び画像形成部6aへ順次搬送する。
図6の場合においても、被処理物改質装置40は、オゾンカバー44内のオゾンカバー空間45に漂っているオゾンが、回転搬送される被処理物Pの移動に伴って流れて、被処理物Pの搬送方向にオゾン流が発生する。このオゾン流は、被処理物Pの搬送方向に、被処理物Pの表面に沿って流れる。いま、オゾンカバー44は、その被処理物Pの搬送方向下流側の端部に、被処理物Pとの間隔が急に大きくなる凹部44aが形成されている。したがって、被処理物Pに沿って流れてきたオゾンは、凹部44aにおいて、急激にその速度が遅くなり、凹部44a内に渦を巻くようにして流入し、凹部44aよりも下流側へ流れにくくなる。さらに、オゾンカバー44は、その下流側カバー44cが、上流側カバー44bよりも被処理物Pとの間隔が狭い状態で形成されており、凹部44aで滞留されたオゾンが、凹部44aよりも下流側へ流れることをより一層抑止することができる。
そして、画像形成システム1は、被処理物改質装置4、40で被処理物Pを改質することで、画像形成部6aでのインク吐出方式での被処理物Pへの画像形成品質を向上させているが、この被処理物改質装置4における媒体改質について、以下説明する。なお、以下の説明では、説明を明確化するために、被処理物改質装置4の場合について説明するが、被処理物改質装置40であっても同様に適用することができる。
被処理物改質装置4は、画像形成部6aで被処理物Pに吐出されたインクが着弾した直後にインク顔料の分散を防止しつつ顔料を凝集させるために、被処理物Pの表面を酸性化させる。被処理物改質装置4は、被処理物Pの表面を酸性化する方法として、プラズマ放電を用いている。また、被処理物改質装置4は、プラズマ処理した被処理物Pの表面の濡れ性、pH値の低下によるインク顔料の凝集性や浸透性をコントロールすることで、インクドット(以下、単にドットという。)の真円度を向上させるとともに、ドットの合一を防止してドットの鮮鋭度や色域を拡げる。このようにすると、画像形成部6aで被処理物P上に吐出されたインク液滴のビーディングやブリード等による画像不良を抑制して、形成画像の画像品質を向上させることができる。また、被処理物P上の顔料の凝集厚みを薄く均一にすることにより、インク液滴量を削減して、乾燥装置7におけるインク乾燥のエネルギーの低減及び印刷コストの低減を図ることができる。
そして、被処理物改質装置4は、放電電極13aとアース電極12との間でプラズマ放電を行って、大気中のプラズマを被処理物Pに照射することで、被処理物Pの表面の高分子を反応させ、親水性の官能基を形成する。プラズマ放電は、放電電極13aから放出された電子が電界中で加速されて、大気中の原子や分子を励起・イオン化し、イオン化された原子や分子からも電子が放出されて、高エネルギーの電子が増加する。その結果、ストリーマ放電(プラズマ)が発生する。プラズマ放電は、このストリーマ放電による高エネルギーの電子によって、被処理物Pの表面の高分子結合を切断する。例えば、被処理物Pがコート紙の場合、コート紙のコート層が炭酸カルシウムとバインダーとしての澱粉で固められているが、その澱粉が高分子構造を有しており、この高分子構造が、プラズマ放電によって切断される。プラズマ放電は、被処理物Pの高分子結合を切断すると、気相中の酸素ラジカルやオゾンと再結合し、被処理物Pの表面に水酸基やカルボキシル基等の極性官能基を形成させる。その結果、被処理物Pは、表面に、親水性や酸性化が付与される。
被処理物Pは、記録ヘッド6aaの隣接するノズルから吐出されたインク液滴が隣接して被処理物P上に打滴されると、隣接インク液滴(以下、適宜、ドットともいう。)が、被処理物Pの表面の親水性が上がることにより濡れ拡がって合一するおそれがある。そして、この合一を防止してドット間の混色が発生するのを防ぐためには、インクの着色剤(例えば、顔料や染料)をドット内で凝集させること、ビヒクルが濡れ拡がるよりも早くビヒクルを乾燥させること、被処理物P内へ浸透させることが重要である。
そこで、本実施例の画像形成システム1は、着色剤の凝集性の向上、ビヒクルの被処理物P内へ浸透性の向上を図るために、画像形成部6aでのインク吐出方式による画像形成の前処理として、被処理物改質装置4において、被処理物Pの表面を酸性化する酸性化処理(放電処理)を実行する。
ここで、酸性化とは、インクに含まれる顔料が凝集するpH値まで被処理物Pの表面のpH値を下げることを意味する。pH値を下げるとは、物体中の水素イオンH+濃度を上昇させることである。インク中の顔料は、被処理物Pの表面に触れる前においては、マイナスに帯電し、ビヒクル中で顔料が分散している。インクは、そのpH値が低いほど、その粘度が上昇する。インクは、酸性度が高くなるほど、インクのビヒクル中でマイナスに帯電している顔料が電気的に中和され、その結果、顔料同士が凝集する。したがって、インクのpH値が必要な粘度と対応する値となるように印刷媒体表面のpH値を下げることで、インクの粘度を上昇させることができる。すなわち、インクは、酸性である被処理物Pの表面に付着した際、顔料が被処理物Pの表面の水素イオンH+によって電気的に中和され、顔料同士が凝集することで、粘度が上昇する。インクは、粘度が上昇することで、隣接したドット間の混色を防止することができるとともに、顔料が被処理物Pの奥深く(さらには裏面まで)浸透することを防止することができる。ただし、必要な粘度と対応するpH値となるようにインクのpH値を下げるためには、被処理物Pの表面のpH値は、必要な粘度と対応するインクのpH値よりも低くする必要がある。
また、インクを必要な粘度とするための被処理物Pの表面のpH値は、インクの特性によって異なる。すなわち、比較的中性に近いpH値で顔料が凝集して粘度が上がるインクもあれば、顔料を凝集させるためにより低いpH値が必要なインクも存在する。
着色剤が、ドット内で凝集する挙動、ビヒクルの乾燥速度、被処理物P内への浸透速度は、ドットの大きさ(小滴、中滴、大滴)によって変わる液滴量及び被処理物Pの種類等によって異なる。
そこで、本実施例の被処理物改質装置4は、プラズマ処理におけるプラズマエネルギーを、被処理物Pの種類や印刷モード(液滴量)等に応じて最適な値に、制御する。
そして、被処理物改質装置4で改質処理を行っていない場合と、改質処理を行った場合とを比較すると、例えば、図7と図8のように示すことができる。図7が改質を行っていない場合の被処理物Pの表面の画像状態を示す図であり、図8が、改質を行った場合の被処理物Pの表面の画像状態を示す図である。なお、図7及び図8は、被処理物Pとして、一般的なコート紙を用いた場合が示されている。
図7において、改質処理を施していない被処理物P(コート紙)は、コート紙表面にあるコート 層Pc21の濡れ性が悪い。そのため、改質処理を施していないコート紙に対してインク吐出式の画像形成部6aでインク液滴を被処理物Pに吐出して画像形成すると、画像は、図7(a)に示すようになる。すなわち、ドットの着弾時にコート紙の表面に付着したドットの形状(ビヒクルCT1の形状)が歪になる。また、被処理物Pの表面の濡れ性が悪い場合、ビヒクルCT1は、表面張力によって高さのある形状となり、ドットの乾燥に比較的長い時間を要することになる。ドットの乾燥が十分でない状態で近接ドットが形成されると、図7(b)に示すように、被処理物Pへの近接ドットの着弾時に、近接するビヒクルCT1、CT2同士が合一し、ドット間で顔料P1、P2の移動(混色)が発生して、ビーディング等による濃度ムラが生じる。
一方、被処理物改質装置4で放電(プラズマ放電)による改質処理を施した被処理物P、例えば、コート紙は、被処理物Pの表面にあるコート層Pcの濡れ性が改善されている。その結果、被処理物改質装置4で放電(プラズマ放電)によって改質処理を施した被処理物Pに対して、インク吐出式の画像形成部6aでインク液滴を被処理物P(コート紙)に吐出して画像形成すると、画像は、図8に示すようになる。すなわち、ドットの着弾時にコート紙の表面に付着したドットの形状(ビヒクルCT1の形状)がコート紙の表面に比較的平坦な真円状に広がり、ドットが平坦な形状となる。また、改質処理で、形成された極性官能基によってコート紙表面が酸性になるため、インク顔料が電気的に中和され、顔料P1が凝集してインクの粘性が上がる。したがって、ビヒクルCT1とビヒクルCT2が合一した場合にも、ドット間の顔料P1と顔料P2の移動(混色)が抑制される。さらに、コート層Pc内部にも極性官能基が生成されるため、ビヒクルCT1の浸透性が上昇し、ビヒクルが被処理物P内部へ浸透して、比較的短時間で乾燥する。被処理物Pの濡れ性が向上しているため、真円状に広がったドットは、被処理物Pに浸透しながら凝集し、顔料P1が高さ方向に均等に凝集されて、ビーディング等による濃度ムラの発生が抑制される。なお、図7及び図8は、模式図であり、実際には、図8の場合においても、顔料は層になって凝集している。
このように、被処理物改質装置4は、被処理物Pに対して放電によって改質処理を施すことで、極性官能基を被処理物Pの表面に形成し、表面を酸性にする。改質された被処理物Pに、画像形成部6aで、マイナスに帯電した顔料が吐出されると、マイナスの顔料が酸性の被処理物Pの表面で中和され、顔料が凝集して粘性が上がって、結果的にドットが合一しても顔料の移動を抑制することができる。また、被処理物Pは、改質されることで、表面のコート層Pc内部にも極性官能基が生成され、ビヒクルが速やかに被処理物Pの内部に浸透して、乾燥時間を短縮することができる。
すなわち、改質された被処理物Pは、濡れ性が上がることで、打滴されたインク液滴が真円状に広がり、また、凝集によって顔料の移動が抑えられた状態で浸透して、真円に近い形状を保たせることができる。
図9は、被処理物改質装置4におけるプラズマエネルギーと被処理物Pの表面の濡れ性、ビーディング、pH値および浸透性との関係を示す図である。図9では、被処理物Pとしてコート紙へ印刷した場合の表面特性(濡れ性、ビーディング、pH値、浸透性(吸液特性))がプラズマエネルギーに依存してどのように変化するかが示されている。なお、図9に示す評価を得るにあたり、インクには、顔料が酸により凝集する特性の水性顔料インク(マイナスに帯電した顔料が分散されているアルカリ性インク)を使用した。
図9に示すように、コート紙表面の濡れ性は、プラズマエネルギーが低い値(例えば、0.2J/cm2程度以下)で急激に向上し、それ以上エネルギーを増加させてもあまり改善しない。一方、コート紙表面のpH値は、ある程度まではプラズマエネルギーを高めることにより低下していくが、プラズマエネルギーがある値(例えば、4J/cm2程度)を超えた当たりで飽和状態になる。また、浸透性(吸液特性)は、pHの低下が飽和したあたり(例えば、4J/cm2程度)から急激に向上する。ただし、この現象は、インクに含まれている高分子成分に依存して異なる。
この結果として、浸透性(吸液特性)がよくなり始めて(例えば4J/cm2程度)からビーディング(粒状度)の値が非常に良い状態となっている。ここでのビーディング(粒状度)とは、画像のざらつき感を数値で表したものであり、濃度のばらつきを平均濃度の標準偏差で表したものである。図9では、2色以上のドットからなる色のベタ画像の濃度を複数サンプリングし、その濃度の標準偏差をビーディング(粒状度)として表している。このように、被処理物改質装置4でプラズマ放電によって被処理物Pに改質処理を施すと、被処理物Pに吐出されたインク液滴が真円上に広がり、かつ、凝集しながら浸透するため、画像のビーディング(粒状度)を改善することができる。
上述したように、被処理物Pの表面の特性と画像品質との関係では、表面の濡れ性が向上することにより、ドットの真円度が向上する。この理由としては、まず、プラズマ処理により生成された親水性の極性官能基によって被処理物Pの表面の濡れ性が向上することがある。さらに、濡れ性が被処理物Pの表面において均一化しているとともに、ゴミや油分や炭酸カルシウム等の撥水要因がプラズマ放電によって除外されたことがある。さらに、被処理物Pの表面における濡れ性の向上は、インク液滴を円周方向に均等に広がらせ、ドットの真円度を向上させる。
また、被処理物Pは、その表面が酸性化(pH値の低下)されることにより、インク顔料の凝集性の向上、浸透性の向上、ビヒクルのコート層内部への浸透性の向上等が生じる。したがって、被処理物Pの表面の顔料濃度が上昇し、ドットが合一しても、顔料の移動を抑えることができる。その結果、顔料の混濁が抑制され、顔料を均一に被処理物Pの表面に沈降凝集させることができる。ただし、顔料混濁の抑制効果は、インクの成分やインクの滴量に依存して異なる。例えば、インクの適量が小滴の場合、大滴の場合に比べて、ドットの合一による顔料の混濁は発生し難い。これは、ビヒクル量が小滴の場合の方が、ビヒクルがより早く乾燥・浸透するためであり、少しのpH反応で顔料を凝集することができるためである。なお、プラズマ処理の効果は、被処理物Pの種類や環境(湿度など)によって変動する。そこで、被処理物改質装置4は、プラズマ処理の際のプラズマエネルギーを最適な値とすることで 、被処理物Pの表面改質効率を向上させ、より一層消費エネルギーを削減することができる。
ここで、プラズマエネルギーとドットの真円度との関係を説明する。図10は、プラズマエネルギーとドット径との関係を示す図であり、図11は、プラズマエネルギーとドットの真円度との関係を示す図である。
図10に示すように、プラズマエネルギーを大きくすると、CMYKのいずれの顔料についても、ドット径が小さくなる傾向にある。これは、プラズマによる改質処理の結果、顔料の凝集効果(凝集による粘性の増加)と浸透性効果(ビヒクルのコート層内への浸透)とが向上し、ドットが拡がる過程で迅速に凝集・浸透するためであると考えられる。
そこで、被処理物改質装置4は、プラズマエネルギーを制御することで、ドット径を制御することができる。
また、図11に示すように、ドットの真円度は、プラズマエネルギーが低い値(例えば、0.2J/cm2程度以下)であっても大幅に改善されている。これは、上述したように、被処理物Pをプラズマ処理することで、ドット(ビヒクル)の粘性が上がるとともにビヒクルの浸透性が上がり、これにより顔料が均等に凝集されたためであると考えられる。
次に、プラズマ処理を行った場合のドットの顔料濃度と行わなかった場合のドットの顔料濃度とについて説明する。図12は、被処理物改質装置4においてプラズマによる改質処理を行わなかった被処理物Pに形成したドットの顔料濃度を示す図である。図13は、被処理物改質装置4においてプラズマによる改質処理を行った被処理物Pに形成したドットの顔料濃度を示す図である。なお、図12及び図13では、それぞれ図面中右下にあるドット画像における線分a−b上の濃度を示している。
図12及び図13の測定では、形成したドットの画像を読み取り、その画像における濃度ムラを測定して、濃度のバラツキを計算した。図12及び図13を比較すると明らかなように、プラズマによる改質処理を行った場合(図13)の方が、行わなかった場合(図12)よりも、濃度のバラツキ(濃度差)を小さい。
そこで、被処理物改質装置4は、制御部31が、上記濃度のバラツキに基づいて、バラツキ(濃度差)が最も小さくなるプラズマエネルギーを算出して、放電処理(プラズマ処理)におけるプラズマエネルギーを設定するようにしてもよい。このようにすると、より鮮明な画像を形成することができる。
なお、濃度のバラツキは、上述した算出方法に限らず、顔料の厚みを光干渉膜厚計測器で測定して算出してもよい。その場合、顔料の厚みの偏差を最小にするように、プラズマエネルギーの最適値を選定してもよい。
そして、被処理物改質装置4、40は、上記被処理物Pの改質処理において、オゾンが発生するが、上述のように、オゾンカバー15、44の被処理物Pの搬送方向下流側において、オゾンカバー15、44を被処理物Pに近づけて配設している。また、オゾンカバー15、44は、被処理物Pの搬送方向下流側に伸びた部分に、凹部15a、15aa、15ab、15ac、・・・、44aが形成されている。
したがって、被処理物Pとともにオゾンカバー15、44との間を流れてきたオゾンは、被処理物Pとオゾンカバー15、44との間で所定の圧縮力を受けた状態で流れてくるが、凹部15a、15aa、15ab、15ac、・・・、44aで急激に速度が遅くなるとともに、圧縮力が急激に減圧する。その結果、被処理物Pとともに流れてきたオゾンは、凹部15a、15aa、15ab、15ac、・・・、44a内に渦を巻くようにして流入し、凹部15a、15aa、15ab、15ac、・・・、44aよりも下流側へ流れにくくなる。さらに、オゾンカバー15、44は、その下流側カバー15c、44cが、上流側カバー15b、44bよりも被処理物Pとの間隔が狭い状態で形成されており、凹部15a、15aa、15ab、15ac、・・・、44aで滞留されたオゾンが、凹部15a、15aa、15ab、15ac、・・・、44aよりも下流側へ流れることをより一層抑止することができる。
また、本実施例は、画像形成システム1に適用した場合について説明したが、被処理物改質装置4と画像形成装置6が、1つの筐体内に収納された画像形成装置にも、同様に適用することができる。
さらに、被処理物改質装置4は、画像形成システム1や画像形成装置に適用されたものにかぎらず、単独でも利用することができ、本発明を同様に適用することができる。
このように、本実施例の画像形成システム1の被処理物改質装置4は、相対向する電極12、13a間で放電を行わせる放電用電源部(放電手段)20と、前記電極12、13a間に被処理物Pを搬送する搬送ローラ16及びアース電極12等の搬送手段と、少なくとも前記電極12、13aを覆うオゾンカバー(第1カバー)15と、前記オゾンカバー15に連続する状態で、前記電極12、13aよりも前記被処理物Pの搬送方向下流側の所定領域を該被処理物Pとの間に所定間隔を開けて覆うとともに、該被処理物Pから離隔する方向に凹んだ所定容量の凹部15aの形成されているオゾンカバー(第2カバー)15と、を備えている。
したがって、電極12、13a間の放電で発生し、被処理物Pの搬送にともなって下流側に流れていくオゾンを、凹部15a内に取り入れて、外部にオゾンが漏洩することを、オゾンカバー15内のオゾンの吸引力を上げることなく抑制することができる。その結果、放電による被処理物Pの改質効果を維持しつつ、オゾンの漏洩を抑制することができる。なお、被処理物改質装置40の場合も同様である。
また、本実施例の画像形成システム1の被処理物改質装置4は、前記第2カバーとしてのオゾンカバー15が、前記凹部15aよりも前記被処理物Pの搬送方向下流側部分である下流側カバー15cが、搬送方向上流側部分である上流側カバー15bよりも、該被処理物Pとの間隔が狭く配設されている。
したがって、上流側カバー15bと被処理物Pとの間を流れてきたオゾンは、その間隔が急に大きくなる凹部15aによって、速度が急に遅くなり、凹部15a内に渦を巻くように流入する。凹部15内に流入したオゾンは、上流側カバー15bよりも被処理物Pとの間隔が狭い下流側カバ15cと被処理物Pとの間へ流出しにくくなる。その結果、放電による被処理物Pの改質効果をより一層維持しつつ、オゾンの漏洩をより一層防止することができる。なお、被処理物改質装置40の場合も同様である。
さらに、本実施例の画像形成システム1の被処理物改質装置4は、前記第2カバーとしてのオゾンカバー15が、前記凹部15aが、前記被処理物Pの搬送方向と直交する幅方向において該被処理物Pの全域に亘るとともに、該搬送方向に所定長さを有し、該被処理物Pから所定量離隔する方向に凹んだ状態で形成されている。
したがって、電極12、13a間の放電で発生し、被処理物Pの搬送にともなって下流側に流れていくオゾンを、被処理物Pの幅方向全域に渡る凹部15a内に取り入れて、外部にオゾンが漏洩することを、オゾンカバー15内のオゾンの吸引力を上げることなく抑制することができる。その結果、放電による被処理物Pの改質効果を維持しつつ、オゾンの漏洩を抑制することができる。なお、被処理物改質装置40の場合も同様である。
また、本実施例の画像形成システム1の被処理物改質装置4は、前記第2カバーとしてのオゾンカバー15が、前記凹部15aが、前記被処理物Pの搬送方向に、複数連続して形成されている。
したがって、電極12、13a間の放電で発生し、被処理物Pの搬送にともなって下流側に流れていくオゾンを、被処理物Pの搬送方向に形成されている複数の凹部15a内に取り入れて、外部にオゾンが漏洩することを、オゾンカバー15内のオゾンの吸引力を上げることなくより一層効果的に抑制することができる。その結果、放電による被処理物Pの改質効果をより一層維持しつつ、オゾンの漏洩をより一層防止することができる。なお、被処理物改質装置40の場合も同様である。
さらに、本実施例の画像形成システム1の被処理物改質装置4は、前記第2カバーとしてのオゾンカバー15の前記凹部15aの前記搬送方向下流側に、該オゾンカバー15から前記被処理物Pの上面に渡る長さのオゾン流阻止材(気流阻止部材)30が設けられている。
したがって、凹部15内に取り込んだオゾンが、下流側へ流出することを、オゾン流阻止材30によってより一層効果的に抑制することができる。その結果、放電による被処理物Pの改質効果をより一層維持しつつ、オゾンの漏洩をより一層防止することができる。なお、被処理物改質装置40の場合も同様である。
また、本実施例の画像形成システム1の被処理物改質装置4は、前記オゾン流阻止材(気流阻止部材)30が、除電ブラシである。
したがって、被処理物Pの帯電を防止することができ、被処理物Pの搬送部等への張り付きを防止して、搬送抵抗を抑制することができる。その結果、放電による被処理物Pの改質効果をより一層維持しつつ、オゾンの漏洩をより一層防止することができる。なお、被処理物改質装置40の場合も同様である。
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
1 画像形成システム
2 搬入部
3 搬送部
4 被処理物改質装置
5 搬送部
6 画像形成装置
6a 画像形成部
6b 読取部
6aa 記録ヘッド
6ab 被処理物搬送部
7 乾燥装置
8 搬送部
9 搬出部
11 放電ケース
12 アース電極
13 放電電極部
13a 放電電極
14 放電カバー
15 オゾンカバー
15a 空間部
15b 上流側カバー
15c 下流側カバー
15aa、15ab、15ac、・・・ 空間部
16 搬送ローラ
17 オゾンカバー空間
18 オゾン排気ホース
20 放電用電源部
P 被処理物
30 オゾン流阻止材
40 被処理物改質装置
41 アース電極
42 放電電極部
42a 放電電極
43 放電カバー
44 オゾンカバー
44a 空間部
45 オゾンカバー空間
2 搬入部
3 搬送部
4 被処理物改質装置
5 搬送部
6 画像形成装置
6a 画像形成部
6b 読取部
6aa 記録ヘッド
6ab 被処理物搬送部
7 乾燥装置
8 搬送部
9 搬出部
11 放電ケース
12 アース電極
13 放電電極部
13a 放電電極
14 放電カバー
15 オゾンカバー
15a 空間部
15b 上流側カバー
15c 下流側カバー
15aa、15ab、15ac、・・・ 空間部
16 搬送ローラ
17 オゾンカバー空間
18 オゾン排気ホース
20 放電用電源部
P 被処理物
30 オゾン流阻止材
40 被処理物改質装置
41 アース電極
42 放電電極部
42a 放電電極
43 放電カバー
44 オゾンカバー
44a 空間部
45 オゾンカバー空間
Claims (8)
- 相対向する電極間で放電を行わせる放電手段と、
前記電極間に被処理物を搬送する搬送手段と、
少なくとも前記電極を覆う第1カバーと、
前記第1カバーに連続する状態で、前記電極よりも前記被処理物の搬送方向下流側の所定領域を該被処理物との間に所定間隔を開けて覆うとともに、該被処理物から離隔する方向に凹んだ所定容量の凹部の形成されている第2カバーと、
を備えていることを特徴とする被処理物改質装置。 - 前記第2カバーは、
前記凹部よりも前記被処理物の搬送方向下流側部分が、搬送方向上流側部分よりも、該被処理物との間隔が狭く配設されていることを特徴とする請求項1記載の被処理物改質装置。 - 前記第2カバーは、
前記凹部が、前記被処理物の搬送方向と直交する幅方向において該被処理物の全域に亘るとともに、該搬送方向に所定長さを有し、該被処理物から所定量離隔する方向に凹んだ状態で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の被処理物改質装置。 - 前記第2カバーは、
前記凹部が、前記被処理物の搬送方向に、複数連続して形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の被処理物改質装置。 - 前記被処理物改質装置は、
前記第2カバーの前記凹部の前記搬送方向下流側に、該第2カバーから前記被処理物の上面に渡る長さの気流阻止部材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の被処理物改質装置。 - 前記気流阻止部材は、
除電ブラシであることを特徴とする請求項5記載の被処理物改質装置。 - 搬送される記録媒体へ記録材液滴を吐出して画像を形成する画像形成部と、該画像形成部よりも該記録媒体の搬送方向上流側に配設され該記録媒体を被処理物として該被処理物を放電によって改質させる被処理物改質部と、を備えた画像形成装置であって、
前記被処理物改質部として、請求項1から請求項6のいずれかに記載の被処理物改質装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。 - 搬送される記録媒体へ記録材液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置と、該画像形成装置よりも該記録媒体の搬送方向上流側に配設され該記録媒体を被処理物として該被処理物を放電によって改質させる被処理物改質装置と、を備えた画像形成システムであって、
前記被処理物改質装置として、請求項1から請求項6のいずれかに記載の被処理物改質装置を備えていることを特徴とする画像形成システム。
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2015
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