JP2016072142A - 電池用セパレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】電解液中においても優れた耐熱性を有し、高い電池安定性を長時間維持することが可能な電池用セパレータを提供すること。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の少なくとも片面に、無機充填材(b−2)と、トルエン溶液におけるゲル分率が90〜99質量%であり、30℃未満の領域にガラス転移温度を示し、そしてエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)に対する膨潤度が105〜200%である樹脂バインダー(b−1)と、を含む多孔層(B)を備え電池用セパレータであって、該電池用セパレータを25℃のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)中で10分間超音波処理した時の前記多孔層(B)の残存率が60%以上であることを特徴とする、前記電池用セパレータ。
【選択図】なし

Description

本発明は、電池用セパレータに関する。
ポリオレフィン樹脂多孔膜は、優れた電気絶縁性、及びイオン透過性を示すことから、電池、コンデンサー等におけるセパレータとして広く利用されている。特に近年では、携帯機器の多機能化及び軽量化に伴い、その電源として、出力密度及び容量密度のいずれもが高いリチウムイオン二次電池が使用されており、このような電池用セパレータに、も主としてポリオレフィン多孔膜が用いられている。
リチウムイオン二次電池は、電解液に有機溶媒を用いている。そのため、短絡、過充電等の異常事態に伴う発熱によって電解液が分解し、最悪の場合には発火に至ることがある。
このような事態を防ぐため、リチウムイオン二次電池にはいくつかの安全機能が組み込まれている。その中の一つに、セパレータのシャットダウン機能がある。シャットダウン機能とは、電池が異常発熱を起こした際、セパレータの微多孔が熱溶融等により閉塞して電解液内のイオン伝導を遮断し、電気化学反応の進行をストップさせる機能のことである。一般にシャットダウン温度が低いほど、安全性が高いとされている。ポリエチレンがセパレータの成分として用いられている理由の一つに、適度なシャットダウン温度を持つという点が挙げられる。
しかし、高いエネルギーを有する電池においては、シャットダウンにより電気化学反応の進行をストップさせても電池内の温度が上昇し続ける。その結果、セパレータが熱収縮して破膜し、両極が短絡(ショート)するという問題が生じる場合がある。
安全性がより高い電池を提供することを目的として、特許文献1には、熱可塑性樹脂を主成分とする第一の多孔層に、耐熱層を積層してセパレータを形成する技術が記載されている。近年は、電池の高容量化がさらに進んでおり、このような高容量電池においても、厚みが薄く、かつ高い耐熱性を有するセパレータが求められており、その検討が進められている。
例えば、特許文献1は、耐熱性を向上するために無機充填材とアクリル系重合体とを含有する多孔層と、ポリオレフィン樹脂を主体とする多孔膜とを一体化した電池用セパレータが開示されている。
特開2011−5670号公報
前記特許文献1のセパレータは、耐熱層を有さない通常のセパレータに比較した場合の耐熱性は確かに高いため、電池の安全性は向上していると考えられる。しかしながら、該セパレータは電解液に対する耐性が低いから、電解液中において、耐熱層の結着強度が低下し、長時間電池を作動すると電池の安全性が低下するという観点から、なお改良の余地を有するものである。
本発明は、電解液中においても優れた耐熱性を有し、高い電池安定性を長時間維持することが可能な電池用セパレータを提供することを目的とする。
本発明者らは上記事情に鑑み鋭意検討の結果、
ポリオレフィン樹脂多孔膜上に、
無機充填剤と、特定の物性を有する樹脂バインダーと、を含有する多孔層を設けることにより、電解液中における耐性が高い電池用セパレータが得られ、これにより上記の課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである;
[1] ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の少なくとも片面に、
無機充填材(b−2)と、
トルエン溶液におけるゲル分率が90〜99質量%であり、30℃未満の領域にガラス転移温度を示し、そしてエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)に対する膨潤度が105〜200%である樹脂バインダー(b−1)と、
を含む多孔層(B)を備える電池用セパレータであって、
該電池用セパレータを25℃のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)中で10分間超音波処理した時の前記多孔層(B)の残存率が60%以上であることを特徴とする、前記電池用セパレータ。
[2] 前記樹脂バインダー(b−1)が、0℃以下の領域にガラス転移温度を示すことを特徴とする[1]に記載の電池用セパレータ。
[3] 前記樹脂バインダー(b−1)が、アクリル系重合体である、[1]または[2]に記載の電池用セパレータ。
[4] 非水電解液電池用セパレータである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の電池用セパレータ。
[5] [4]に記載の非水電解液電池用セパレータと、正極と、負極と、電解液と、を有することを特徴とする、非水電解液電池。
本発明によれば、長時間電池を作動しても、高い電池安全性を有する電池用セパレータが提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の電池用セパレータは、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の少なくとも片面に多孔層(B)を備える。
本実施形態のセパレータは、上記のゲル分率、ガラス転移温度、及び膨潤度を有する樹脂バインダーを含み、25℃のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)中で10分間超音波処理した時の残存率が60%以上である多孔層を有することにより、釘刺し試験において高安全性を有するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
釘刺し試験とは、内部短絡に対する安全性の評価手法の1つとして、電池の側面から人為的に釘を貫通させて強制的に短絡させた時の電池の挙動を観察する試験である。釘刺し試験においては、釘刺し箇所でセパレータが破膜した場合、正極と負極とが直接反応して発熱する。このときの発熱により、セパレータが溶融し、その後更に穴が拡大して短絡面積が拡がり、最終的には熱暴走にまで至ることがある。この時、正極活物質が分解して酸素が放出されると、安全性の低い電池では発火へと至る場合もある。従って、貫通による破膜部の孔の拡大を抑制することが、発熱を抑える上で重要であると考えられる。
本実施形態のセパレータが釘刺し試験に優れる理由は詳らかではないが、電解液中における多孔層とポリオレフィン樹脂多孔膜との接着強度、電解液中での多孔層中の樹脂バインダーと無機充填材との結着強度、並びにポリオレフィン樹脂多孔膜及びセパレータの等方性等により、電池に外部短絡が発生した際、セパレータの孔の広がりが抑制され、従って発熱の速度が遅くなることにより、釘刺し試験時の安全性が高まったためと推定される。
次に、セパレータにおけるポリオレフィン樹脂多孔膜について説明する。
セパレータにおけるポリオレフィン樹脂多孔膜としては、電子伝導性が小さく、イオン伝導性を有し、有機溶媒に対する耐性が高く、孔径の微細なものが好ましい。
そのような樹脂多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含む多孔膜(この多孔膜には、織布及び不織布は含まれない);ポリオレフィン繊維を織ったもの(織布)からなる多孔膜;ポリオレフィン繊維の不織布からなる多孔膜等が挙げられる。これらの中でも、塗工工程を経て電池用セパレータを得る場合の塗工液の塗工性に優れ、セパレータの膜厚をより薄くして、電池等の蓄電デバイス内の活物質比率を高めて体積当たりの容量を増大させる観点から、ポリオレフィン樹脂を含む多孔膜(この多孔膜には、織布及び不織布は含まれない。以下、「ポリオレフィン樹脂多孔膜」ともいう。)が好ましい。
本実施形態の電池用セパレータは、樹脂多孔膜として、上記のような好ましいポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を使用するものである。
<ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)>
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)について説明する。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)は、電池用セパレータとした時のシャットダウン性能等を向上させる観点から、構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物により形成されることが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂が占める割合は、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物に含有されるポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等をモノマーとして用いて得られるホモ重合体、共重合体、多段重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、電池用セパレータとした時のシャットダウン特性の観点から、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの共重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等が;
ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等が;
共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンラバー、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等が、
それぞれ挙げられる。
中でも、電池用セパレータとした時に低融点かつ高強度の要求性能を満たす観点からは、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン、特に高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。本明細書において、高密度ポリエチレンとは密度0.942〜0.970g/cmのポリエチレンをいう。本明細書においてポリエチレンの密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。
また、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の耐熱性を向上させる観点からは、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン及びポリプロピレンの混合物を用いることが好ましい。この場合、ポリオレフィン樹脂組成物中の、総ポリオレフィン樹脂に対するポリプロピレンの割合は、耐熱性と良好なシャットダウン機能とを両立させる観点から、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは4〜10質量%である。
ポリオレフィン樹脂組成物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体;無機材;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることがシャットダウン性能等を向上させる観点から好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)は、非常に小さな孔が多数集まって緻密な連通孔を形成した多孔構造を有しているため、イオン伝導性に非常に優れると同時に耐電圧特性も良好であり、しかも高強度であるという特徴を有する。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)は、上述した材料からなる単層であってもよく、積層であってもよい。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の膜厚は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、さらに好ましくは3μm以上25μm以下である。機械的強度の観点から0.1μm以上が好ましく、電池の高容量化の観点から100μm以下が好ましい。ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の膜厚は、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御すること等によって調整することができる。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の平均孔径は、0.03μm以上0.70μm以下が好ましく、より好ましくは0.04μm以上0.20μm以下、更に好ましくは0.05μm以上0.10μm以下、特に好ましくは0.06μm以上0.09μm以下である。高いイオン伝導性及び耐電圧の観点から、0.03μm以上0.70μm以下が好ましい。ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の平均孔径は、後述する測定法で測定することができる。平均孔径は、組成比、押出シートの冷却速度、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることにより調整することができる。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の気孔率は、好ましくは25%以上95%以下、より好ましく30%以上65%以下、更に好ましくは35%以上55%以下である。イオン伝導性向上の観点から25%以上が好ましく、耐電圧特性の観点から95%以下が好ましい。ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の気孔率は、後述する方法により測定することができる。ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の気孔率は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、又は熱固定時の緩和率を制御すること、これらの2種硫黄の制御を組み合わせることにより、調整することができる。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の粘度平均分子量は、30,000以上12,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは50,000以上2,000,000未満、さらに好ましくは100,000以上1,000,000未満である。粘度平均分子量が30,000以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり、成形性が良好になると共に、重合体同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が12,000,000以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。さらに、電池用セパレータとした時に、粘度平均分子量が1,000,000未満であると、温度上昇時に孔を閉塞し易く良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の突刺強度は、膜厚25μm換算値として、400〜2,000gfであることが好ましく、420〜1,800gfであることがより好ましく、450〜1,500gfであることがさらに好ましく、500〜1,200gfであることが特に好ましい。ここで、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の突刺強度は、ポリオレフィン樹脂の種類及び組成比、押出シートの冷却速度、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、並びに熱固定時の緩和率の制御、並びにこれらの組み合わせによって、調整することができる。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を製造する方法としては特に制限はなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば;
(1)ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(3)ポリオレフィン樹脂組成物と無機材とを溶融混練してシート上に成形した後、延伸によってポリオレフィン樹脂と無機材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(4)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィン樹脂に対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィン樹脂を凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法
等が挙げられる。
以下、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、孔形成材を抽出する方法について説明する。
先ず、ポリオレフィン樹脂組成物と上記の孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を、押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の適宜の樹脂混練装置に投入して混錬することにより、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。
上記孔形成材としては、可塑剤、無機材、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上の温度において、該ポリオレフィン樹脂の均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒を用いることが好ましい。このような不揮発性溶媒の具体例としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。これらの可塑剤は、抽出後、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
更に好ましくは、樹脂混練装置に投入する前に、ポリオレフィン樹脂、その他の添加剤、及び可塑剤を、予めヘンシェルミキサー等を用いて所定の割合で事前混練しておく方法である。より好ましくは、この事前混練においては、可塑剤の一部のみを投入し、残りの可塑剤は、樹脂混練装置に適宜加温してサイドフィードしながら混練する方法である。このような混練方法を用いることにより、可塑剤の分散性が高まり、後の工程で樹脂組成物と可塑剤との溶融混練物から成るシート状成形体を延伸する際に、破膜することなく高倍率で延伸することが可能となる。
前記可塑剤の中でも、流動パラフィンは、ポリオレフィン樹脂(特にポリエチレン、ポリプロピレン等)との相溶性が高いから、溶融混練物を延伸した場合に、樹脂と可塑剤との界面剥離が起こり難く、均一な延伸が実施し易くなる傾向にあり、好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば、特に限定はない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とからなる組成物中に占める可塑剤の質量分率として、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。可塑剤の質量分率が90質量%以下であると、溶融成形時のメルトテンションが成形性向上のために十分なものとなる傾向にある。一方、可塑剤の質量分率が20質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との混合物を高倍率で延伸した場合でもポリオレフィン分子鎖の切断が起こらず、均一かつ微細な孔構造を形成し易く、強度も増加し易い。
前記無機材としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、チタニアが好ましく、抽出が容易である点から、シリカが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と無機材との比率は、良好な隔離性を得る観点から、これらの合計質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、高い強度を確保する観点から、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導効率が高いことから、金属製のロールを用いることが好ましい。特に、押出した混練物を金属製のロールに接触させる際に、複数のロールの間隙に挟み込むことは、熱伝導効率が更に高まるとともに、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるため、より好ましい態様である。溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のダイリップ間隔は、200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。ダイリップ間隔が200μm以上であることにより、メヤニ等が低減され、スジ、欠点等の膜品位への不利な影響が少なくなり、その後の延伸工程において膜破断等のリスクを低減することができる。一方、ダイリップ間隔が3,000μm以下であることにより、冷却速度が速くなり、冷却ムラを防げるとともに、シートの厚み安定性を維持できる。
また、シート状成形体を圧延してもよい。圧延は、例えば、ダブルベルトプレス機等を使用したプレス法によって実施することができる。シートに圧延を施すことにより、特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は、1倍を超えて3倍以下であることが好ましく、1倍を超えて2倍以下であることがより好ましい。圧延倍率が1倍を超えることにより、面配向が増加して、最終的に得られるポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の膜強度が増加する。一方、圧延倍率が3倍以下であることにより、表層部分と中心内部との配向差が小さくなり、膜の厚み方向に均一な多孔構造を形成することができる利点がある。
次いで、シート状成形体から孔形成材を除去してポリオレフィン樹脂多孔膜(A)とする。孔形成材を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法等が挙げられる。孔形成材を抽出する方法は、バッチ式又は連続式のいずれであってもよい。ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)膜の収縮を抑えるために、浸漬及び乾燥の一連の工程中に、シート状成形体の端部を拘束することが好ましい。ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)中の孔形成材残存量は、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)全体の質量に対して1質量%未満にすることが好ましい。
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒であり、且つ孔形成材に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを含有する水溶液を抽出溶剤として用いることができる。
上記シート状成形体又はポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を構成する膜を延伸することが好ましい。延伸は、前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前に行ってもよいし、前記シート状成形体から孔形成材を抽出した後の、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を構成する膜に対して行ってもよい。さらに、前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前と後に行ってもよい。
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られるポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の膜強度等を向上させる観点から、二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸することにより、分子が面方向に配向し、最終的に得られるポリオレフィン樹脂多孔膜(A)が裂け難くなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、及びシャットダウン性の観点からは、同時二軸延伸が好ましい。面配向の制御容易性の観点からは、遂次二軸延伸が好ましい。
ここで、同時二軸延伸とは、MD(ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の連続成形の機械方向(長さ方向))の延伸とTD(ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)膜のMDを90°の角度で横切る方向)の延伸とが同時に施される延伸方法をいう。各方向の延伸倍率は、同じであっても異なっていてもよい。逐次二軸延伸とは、MD及びTDの延伸が、それぞれ独立して施される延伸方法をいう。MD又はTDに延伸がなされているときは、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とすることが好ましい。
延伸倍率は、面倍率として、20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上70倍以下の範囲であることがより好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MDに4倍以上10倍以下、TDに4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MDに5倍以上8倍以下、TDに5倍以上8倍以下の範囲であることがより好ましい。総面積倍率が20倍以上であることにより、得られるポリオレフィン樹脂多孔膜(A)に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であることにより、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を構成する膜の収縮を抑制するために、延伸工程後又は膜の成形後に、熱固定を目的として熱処理を行うこともできる。また、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を構成する膜に、界面活性剤等による親水化処理、電離性放射線等による架橋処理等の後処理を行ってもよい。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を構成する膜には、収縮を抑制する観点から熱固定を目的として熱処理を施すことが好ましい。熱処理の方法としては、物性の調整を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作が挙げられる。延伸操作を行った後に緩和操作を行っても構わない。これらの熱処理は、テンター、ロール延伸機等を用いて行うことができる。
延伸操作は、膜のMD及び/又はTDに1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上の延伸を施すことが、更なる高強度かつ高気孔率なポリオレフィン樹脂多孔膜(A)が得られる観点から好ましい。
緩和操作は、膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。MD及びTDの双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることが更に好ましい。緩和率は、膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD及びTDの両方向に対して行ってもよいが、MD又はTDの片方だけに対して行ってもよい。
この孔形成材料抽出後の延伸及び緩和操作は、好ましくはTD方向に対して行う。延伸及び緩和操作の際の処理温度は、ポリオレフィン樹脂の融点(以下、「Tm」ともいう。)より低いことが好ましく、Tmより1℃〜25℃低い範囲で行うことがより好ましい。延伸及び緩和操作の際の温度が上記範囲であることが、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から好ましい。
ポリオレフィン製微多孔膜(A)のMD引張強度/TD引張強度の比は、押出成形による引取りや延伸によって形成されるポリマー鎖の配向に関係する。本実施形態におけるポリオレフィン製多孔膜(A)は、貫通の際の破膜部の孔の拡大を抑え、釘刺し試験に優れることとなる観点から、MD/TD引張強度の比が1.0〜5.5であることが好ましく、1.0〜3.5であることがより好ましく、1.0〜2.5であることが更に好ましい。MD/TD引張強度の比が1.0〜5.5から外れると、ポリマー鎖の配向異方性が過度に強くなる。その結果、一度穴が空くと、より配向の強い方向に沿って亀裂が拡大するの。これに対して、MD/TD引張強度の比が上記範囲内にあると、逆にポリマー鎖の配向等方性が強くなるから、孔の広がりは抑制される。MD/TD引張強度の比が上記範囲内にあることにより、本実施態様のセパレータが捲回体として供給される場合であっても、セパレータリールからの繰出し時に膜のバタツキを抑え、高速捲回時の耳立ち不良を抑制できる観点からも好ましい。
本実施形態におけるポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の透気度は、安全性及び自己放電抑制の観点から、10sec/100cc以上であることが好ましく、イオン透過性の観点から、500sec/100cc以下であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂多孔膜の透気度は100〜220sec/100ccであることがより好ましい。
<樹脂バインダー(b−1)>
本実施形態において用いられる樹脂バインダー(b−1)は、
トルエン溶液におけるゲル分率が90〜99質量%であり、
30℃未満の領域にガラス転移温度を示し、そして
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)に対する膨潤度が105〜200%である。
(樹脂バインダー(b−1)のゲル分率)
樹脂バインダー(b−1)のゲル分率とは、樹脂バインダー(b−1)のトルエンに対する不溶分比率のことであり、樹脂バインダー(b−1)中の架橋度と対応する。
本実施態様における樹脂バインダー(b−1)のゲル分率は90〜99%であり、好ましくは95〜98%であり、より好ましくは96〜98%である。ゲル分率が90質量%以上の場合、有機溶剤(特に電解液に含有される非水溶媒)に対する溶解及び膨潤を抑制でき、また電池内部における樹脂バインダー(b−1)の強度を保持できる。トルエンにおけるゲル分率が99%以下の場合、電極との結着性に優れる。
樹脂バインダー(b−1)のゲル分率は、樹脂バインダー(b−1)を製造する時に用いるモノマーの種類及び比率、並びに重合温度、モノマー追添時間等の重合条件を調整することにより、上記範囲に調整することが可能である。
(樹脂バインダー(b−1)のガラス転移温度Tg)
本実施形態における樹脂バインダー(b−1は、30℃未満の領域にガラス転移温度Tgを示す。樹脂バインダー(b−1)のガラス転移温度は、好ましくは10℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、更に好ましくは−30℃以下である。ガラス転移温度が30℃未満である樹脂バインダー(b−1)は、電極との密着性、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)との接着強度、及び無機充填材(b−2)との結着強度の観点から好ましい。
(樹脂バインダー(b−1)の膨潤度)
樹脂バインダー(b−1)の膨潤度とは、電解液に含有される溶媒の代表例であるエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)に対する膨潤度のことである。樹脂バインダー(b−1)の膨潤度は、105〜200%であり、好ましくは105〜180%、より好ましくは105〜150%である。
樹脂バインダー(b−1)の膨潤度を上記範囲とすることにより、電解液中における樹脂バインダー(b−1)の結着性を維持しながら、電解液に対する樹脂バインダー(b−1)の膨潤を抑制することができる。そのため、耐熱性に優れるセパレータが得られ、二次電池の釘刺し試験の安全性向上が図れる。
電解液に対する樹脂バインダー(b−1)の膨潤度が105%以上である場合は、二次電池内における多孔層中の樹脂バインダー(b−1)が電解液を十分に含むことができるから、抵抗を小さくすることができ、サイクル寿命及び出力特性の低下を抑制できる。一方、電解液に対する樹脂バインダー(b−1)の膨潤度が200%以下である場合は、電解液中における樹脂バインダー(b−1)の膨潤を抑制でき、結着性を発現することができるから、セパレータの耐熱性及び二次電池の釘刺し安全性を保持できる。
樹脂バインダー(b−1)の電解液に対する膨潤度は、樹脂バインダー(b−1)を製造する時に用いる架橋性モノマーの種類及び比率、その他のモノマーの種類及び比率、並びに重合温度、モノマーの追添時間、粒子径等の重合条件を調整することにより、上記範囲に調整することができる。
(樹脂バインダー(b−1)の構成モノマー単位)
本実施形態における樹脂バインダー(b−1)は、モノマー単位として(メタ)アクリル系化合物を含むアクリル系共重合体であることが好ましい。ここで、モノマーとしては、非架橋性モノマー及び架橋性モノマーを挙げることができる。
非架橋性モノマーとしては、例えば、不飽和酸モノマー、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基含有ビニルモノマー、メチロール基含有ビニルモノマー、アルコキシメチル基含有ビニルモノマー、加水分解性シリル基を有するビニルモノマー、不飽和カルボン酸アルキルエステル、不飽和極性化合物、不飽和芳香族化合物、シアン化ビニル等を挙げることができる。これらの具体例としては、
前記不飽和酸モノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸等を;前記(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を;前記エポキシ基含有ビニルモノマーとして、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート等を;前記メチロール基含有ビニルモノマーとして、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド等を;
前記アルコキシメチル基含有ビニルモノマーとして、例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等を;前記加水分解性シリル基を有するビニルモノマーとして、例えば、ビニルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等を;前記不飽和カルボン酸アルキルエステルとして、例えば、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート等を;前記不飽和極性化合物として、例えば、(メタ)アクリルアミド等を;前記不飽和芳香族化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン等を;
前記シアン化ビニルとして、例えば(メタ)アクリロニトリル等を、それぞれ挙げることができる。
電解液に対する膨潤度を低くできる観点から、非架橋性モノマーの中ではメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。シクロヘキシル(メタ)アクリレートの全モノマーに対する使用割合は、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることが最も好ましい。
架橋性モノマーとしては、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているモノマーモノマー等が挙げられる。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているモノマーとしては、ラジカル重合性の二重結合を2個有するモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等を;ラジカル重合性の二重結合を3個有するモノマーとして、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を;ラジカル重合性の二重結合を4個有するモノマーとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等を、それぞれ挙げることができる。
樹脂バインダー(b−1)に使用するラジカル重合性の二重結合を2個以上有している架橋性モノマーとして、ラジカル重合性二重結合の数が多い架橋性モノマーを選択する方が、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率を高くし、電解液に対する膨潤度を低くすることができる。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している架橋性モノマーの使用量は、樹脂バインダー(b−1)に使用する全モノマーの合計100質量部に対する割合として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。この値が0.1質量%以上であることにより、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率を高く、電解液の膨潤度を低くすることができる。また、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している架橋性モノマーの使用量の、全モノマーの合計100質量部に対する割合としては、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。この値を10質量%以下にすることにより、樹脂バインダー(b−1)が電解液を含むことが可能となるから、より良好な電池の性能を発現することができることになる。
(樹脂バインダ(b−1)の製造方法)
本実施形態において用いられる樹脂バインダー(b−1)は、好ましくはラテックスとして、公知の乳化重合法によって得られる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法により、行うことができる。例えば、水性媒体中において、好ましくは連鎖移動剤、界面活性剤、及びラジカル重合開始剤と、必要に応じて用いられる他の添加剤成分とを基本構成成分とする分散系において、前記のモノマーを重合させて、ラテックスを製造する方法である。重合に際しては、モノマー組成を全重合過程を通じて均一にする方法、
重合過程で逐次又は連続的に変化させることによって生成するラテックス粒子の形態的な組成変化を与える方法等の、所望に応じてさまざまな方法が利用できる。
樹脂バインダー(b−1)のラテックス中の固形分濃度は、好ましくは30〜60重量%の範囲で選ばれる。
樹脂バインダー(b−1)の平均粒子径は、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさら更に好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。樹脂バインダー(b−1)の平均粒子径が300nm以下である場合、300nm以下の粒子の重合をする際に、反応速度を上げることができる。従って、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率が高くなり、架橋点間分子量が小さくなるから、電解液に対する膨潤度を小さくすることができる。
樹脂バインダー(b−1)の平均粒子径は、ラテックス中に分散している場合、及びセパレータを構成する多孔層(B)中で粒状である場合、後述する方法で測定することができる。
樹脂バインダー(b−1)の平均粒子径は、シードラテックスの使用、界面活性剤、及び重合開始剤の使用割合等によって調整することができる。一般に、これらの使用割合を高くするほど、生成する共重合体ラテックスの平均粒子径は小さくなる傾向がある。シードラテックスは、本発明のラテックスの重合に先だって同一反応容器で重合したものであってもよいし、異なる反応容器で別途に重合したシードラテックスを用いてもよい。
連鎖移動剤は、合成樹脂の分子量及びゲル生成量を調整するために汎用的に用いられる。例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類やα−メチルスチレンダイマー等の、通常の乳化重合で使用可能なものを全て使用できる。
樹脂バインダー(b−1)を製造する際の重合温度については、平均重合温度として、65℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。平均重合温度は、重合率及び重合温度により求められる。この平均重合温度が65℃以上であることにより、重合速度が速くなり、特に架橋反応が成長反応より速くなるため、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率を高くすることができ、従って、架橋点間分子量が小さくなることにより、電解液に対する膨潤度を制御することができる。
樹脂バインダー(b−1)を製造する際のモノマーは、一度に添加してもよいし、反応開始前にモノマーの一部を添加し、重合の進行に伴って残りのモノマーを追加添加してもよい。本実施形態においては、上述の好ましい樹脂バインダー(b−1)とするために、モノマーを追添する態様による重合が好ましい。モノマーの追添時間については、2時間以上であることが好ましく、3.5時間以上であることがより好ましく、5.5時間以上であることが更に好ましい。モノマーの追添時間を2時間以上にすることにより、反応系内のモノマー/ポリマー比率を低く維持することが可能となる。このことにより、架橋反応が成長反応より速くなるから、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率が高くなり、従って架橋点間分子量が小さくなるから、電解液に対する膨潤度を小さくすることができる。
本実施形態のバインダー樹脂(b−1)を製造するに際しては、アニオン系乳化剤を用いることが好ましい。
樹脂バインダー(b−1)を製造する際の初期状態(重合率10質量%以下の状態)における乳化剤量については、アニオン系乳化剤量は、モノマー100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが更に好ましく、0.5質量部以上であることが最も好ましい。アニオン系乳化剤量を0.05質量部以上にすることにより、初期に生成する粒子数を多くすることができ、樹脂バインダー(b−1)の最終粒径を小さくすることができる。このことにより、架橋反応が成長反応より速くなる。従って、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率が高くなり、架橋点間分子量が小さくなるから、電解液に対する膨潤度を小さくすることができる。
本実施形態のバインダー樹脂(b−1)を製造するに際しては、ラジカル性の重合開始剤を用いることが好ましい。
樹脂バインダー(b−1)を製造する際の初期状態(重合率10質量%以下の状態)におけるラジカル性重合開始剤量については、モノマー100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることが更に好ましく、0.3質量部以上であることが最も好ましい。ラジカル性重合開始剤量を0.05質量部以上にすることにより、初期に生成する粒子数を多くすることができるから、樹脂バインダー(b−1)の最終粒径を小さくできる。このことにより、架橋反応が成長反応より速くなる。従って、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率が高くなり、架橋点間分子量が小さくなるから、電解液に対する膨潤度を小さくすることができる。
<無機充填材(b−2)>
前記多孔層(B)に使用する無機充填材(b−2)としては、特に限定されないが、耐熱性及び電気絶縁性が高く、且つリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機充填材(b−2)としては、例えば、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、その他化合物が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
マグネシウム化合物としては、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
その他化合物としては、酸化物系セラミックス、窒化物系セラミックス、粘土鉱物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラス繊維等が挙げられる。酸化物系セラミックスとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。窒化物系セラミックスとしては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等が挙げられる。粘土鉱物としては、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、複数を併用してもよい。
上記の中でも、電気化学的安定性及び耐熱特性の観点から、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウムの具体例としては、アルミナが挙げられる。水酸化酸化アルミニウムの具体例としては、ベーマイトが挙げられる。ケイ酸アルミニウムの具体例としては、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライトが挙げられる。
前記酸化アルミニウムとしては、電気化学的安定性の観点から、アルミナがより好ましい。多孔層(B)を構成する無機充填材(b−2)として、アルミナを主成分とする粒子を採用することで、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層(B)を実現できる上に、より薄い多孔層(B)厚でもポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の高温における熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。アルミナには、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ等、多くの結晶形態が存在するが、いずれも好適に使用することができる。この中でα−アルミナが熱的・化学的にも安定なので最も好ましい。
前記水酸化酸化アルミニウムとしては、リチウムデンドライトの発生に起因する内部短絡を防止する観点から、ベーマイトがより好ましい。多孔層(B)を構成する無機充填材(b−2)として、ベーマイトを主成分とする粒子を採用することで、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層(B)を実現できる上に、より薄い多孔層(B)厚でもポリオレフィン多孔膜(A)の高温での熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。電気化学素子の特性に悪影響を与えるイオン性の不純物を低減できる合成ベーマイトが更に好ましい。
前記ケイ酸アルミニウムの中では、カオリン鉱物で主に構成されているカオリナイト(以下、カオリンともいう)が軽量性及び透気度の観点から好ましい。カオリンには湿式カオリン及びこれを焼成処理した焼成カオリンがあるが、焼成カオリンは焼成処理の際に結晶水が放出されるのに加え、不純物が除去されるので、電気化学的安定性の点で特に好ましい。多孔層(B)を構成する無機充填材(b−2)として、焼成カオリンを主成分とする粒子を採用することで、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層(B)を実現できる上に、より薄い多孔層(B)厚でもポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の高温における熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。
前記無機充填材(b−2)の平均粒径は、0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましく、0.2μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、0.4μm以上3.0μm以下であることが更に好ましい。無機充填材(b−2)の平均粒径を上記範囲に調整することは、透気度及び高温でのセパレータの熱収縮を抑制する観点から好ましい。
無機充填材(b−2)の粒度分布としては、最小粒径は0.02μm以上であることが好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましい。最大粒径は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下が更に好ましい。また、最大粒径/平均粒径の比率は、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。無機充填材(b−2)の粒度分布を上記範囲に調整することは、高温でのセパレータの熱収縮を抑制する観点から好ましい。また、最大粒径と最小粒径の間に複数の粒径ピークを有してもよい。なお、無機充填材(b−2)の粒度分布を調整する方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等を用いて無機充填材(b−2)を粉砕し、所望の粒度分布に調整する方法、複数の粒径分布の充填材(b−2)を調整後ブレンドする方法等を挙げることができる。
無機充填材(b−2)の形状としては、板状、鱗片状、多面体、針状、柱状、球状、紡錘状、塊状等が挙げられ、上記形状を有する無機充填材(b−2)を複数種組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、透過性向上の観点からは、板状、鱗片状、多面体が好ましい。
前記無機充填材(b−2)が前記多孔層(B)中に占める割合としては、セパレータの透過性及び耐熱性、並びに多孔層(B)中に無機充填材(b−2)を結着させる樹脂バインダー(b−1)の必要量等の観点から、適宜決定することができる。上記無機充填材(b−2)の割合は、セパレータの透過性及び耐熱性の観点から、70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは93質量%以上、最も好ましくは96質量%以上である。また、また多孔層(B)中に無機充填材(b−2)を結着させる樹脂バインダー(b−1)の必要量の観点から、無機充填材(b−2)の割合は、100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99質量%以下、特に好ましくは98質量%以下である。
<その他の成分>
多孔層(B)は、樹脂バインダー(b−1)及び前記の無機充填材(b−2)のみから成っていてもよいし、これら以外にその他の成分を含有していてもよい。ここで使用されるその他の成分としては、例えば保水剤、分散剤、増粘剤、安定剤、pH調整剤等を挙げることができる。
<多孔層(B)のその他の特性>
多孔層(B)の層厚は、耐熱性及び絶縁性を向上させる観点から、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以上、更に好ましくは1.2μm以上、特に好ましくは1.5μm以上、とりわけ好ましくは1.8μm以上、最も好ましくは2.0μm以上である。また、電池の高容量化と透過性を向上させる観点から、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下である。
多孔層(B)の表面軟化温度は、30〜60℃であることが好ましく、より好ましくは30〜50℃であり、更に好ましくは30〜45℃であり、特に好ましくは35〜45℃である。表面軟化温度が30℃以上であることにより、製造時にセパレータをロール状に巻いた後、電極との圧着時にセパレータを巻出そうとした時に、セパレータ同志の密着がなく、シワなくセパレータの巻き出すことができる点で好ましい。表面軟化温度が60℃以下であることにより、電極とセパレータとを高温プレス機を用いて圧着させて得られる積層体にシワが発生しない点で好ましい。セパレータ材料として一般的に使用されるポリオレフィン樹脂のガラス転移温度がさほど高くはない。しかし、本発明の方法によって製造されるセパレータの構成によると、高温における圧着後であっても、得られる積層体にシワが発生しない利点を有する。
多孔層(B)は、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の片面にのみ形成されていても、両面に形成されていてもよい。
<多孔層(B)の形成方法>
本実施形態における多孔層(B)の形成方法としては、好ましくはポリオレフィン樹脂を主成分とするポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の少なくとも片面に、樹脂バインダー(b−1)及び無機充填材(b−2)、並びに必要に応じて使用されるその他の成分を含む塗工液を塗工して多孔層(B)を形成する方法である。
塗工液中の樹脂バインダー(b−1)の形態としては、水に溶解又は分散した水系溶液であっても、一般的な有機媒体に溶解又は分散した有機媒体系溶液であってもよいが、樹脂ラテックスが好ましい。「樹脂ラテックス」とは樹脂が溶媒に分散した状態のものを示す。樹脂ラテックスを樹脂バインダー(b−1)として用いた場合、無機樹脂バインダー(b−1)及び無機充填材(b−2)を含む多孔層(B)を、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の少なくとも片面に積層した際、イオン透過性が低下しにくく高出力特性が得られ易い。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。
塗工液をポリオレフィン樹脂多孔膜(A)に塗工する方法については、必要とする層厚、及び塗工面積を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗工法等が挙げられる。
塗工液をポリオレフィン樹脂多孔膜(A)へ塗工後に、塗膜から溶媒を除去する方法については、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はなく、例えば、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)を固定しながらその融点以下の温度において乾燥する方法、低温において減圧乾燥する方法、抽出乾燥する方法等が挙げられる。また電池特性に著しく影響を及ぼさない範囲においては溶媒を一部残存させても構わない。ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)、及びセパレータ(多孔層(B)を積層したポリオレフィン樹脂多孔膜(A))のMD方向の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、巻取り張力等は適宜調整することが好ましい。
<セパレータ>
本実施形態の方法によって得られるセパレータについて説明する。
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)と、樹脂バインダー(b−1)及び無機充填材(b−2)を含む多孔層(B)とを有する上記セパレータは、耐熱性に優れ、シャットダウン機能を有しているので電池の中で正極と負極を隔離する電池用セパレータに適している。
特に、上記セパレータは高温においても短絡し難いため、高起電力電池用のセパレータとしても安全に使用できる。
本実施形態におけるセパレータを25℃のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)中で10分間超音波処理した時の前記多孔層(B)の残存率は、60%以上である。この残存率は、樹脂バインダー(b−1)のゲル分率、ガラス転移温度、電解液の膨潤度、使用量、無機充填材(b−2)の種類、量等を適宜に選択することにより、調整することができる。
本実施形態のセパレータにおいて、上記の条件で超音波処理を行った後の多孔層(B)の残存率は60質量%以上であり、70%質量以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90%質量%以上であることが更に好ましい。この残存率は60質量%以上であることにより、電池の安全性に関わる釘刺し試験における不良数を低くすることができる。
セパレータの130℃でのMD熱収縮率及びTD熱収縮率は、ともに15%以下であることが好ましく、ともに10%以下であることがより好ましく、ともに5%以下であることがさらに好ましい。熱収縮率が15%以下であることにより、高温環境下における変形が抑制できる。また、セパレータに穴が空いても、亀裂の拡大を抑制できるため、釘刺し試験において優れることとなり、安全性の面でも好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明をするが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下の製造例、実施例、及び比較例における各種物性の測定方法及び評価方法は、それぞれ、以下のとおりである。特に記載のない限り、各種の測定及び評価は、室温23℃、1気圧、及び相対湿度50%の条件下で行った。
<測定方法>
(1)ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の気孔率(体積%)
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)から10cm×10cm角の試料を切り取り、その体積(cm)及び質量(g)を測定し、膜密度を0.95(g/cm)として、下記数式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/膜密度)/体積×100
(2)セパレータの透気度(sec/100cc)
JIS P−8117に準拠し、(株)東洋精機製作所製のガーレー式デンソメータG−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
(3)ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の突刺強度(g)
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径が11.3mmの試料ホルダーによりポリオレフィン樹脂多孔膜(A)膜を固定した。25℃雰囲気下で、前記固定されたポリオレフィン樹脂多孔膜(A)膜の中央部を、先端の曲率半径が0.5mmの針を用いて、突刺速度2mm/secにて突刺試験を行った。この時の最大突刺荷重を突刺強度(g)とした。
(4)ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の平均孔径(μm)、曲路率、及び孔数
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さいときはポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の透気度測定における空気の流れはクヌーセンの流れに、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の透水度測定における水の流れはポアズイユの流れに、それぞれ従うと仮定する。
孔径d(μm)及び曲路率τa(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101,325Pa)、気孔率ε(%)、及び膜厚L(μm)から、下記数式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×10
τa= (d×(ε/100)×ν/(3L×Ps×Pgas))1/2
ここで、Rgas及びRliqは、それぞれ、下記数式を用いて求められる。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101,325))
liq=透水度/100
透気度及び透水度は、それぞれ、次のように求められる。
[透気度]
ここでいう透気度は、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)について前記「(2)セパレータの透気度」の記載に準拠して測定することにより、透気抵抗度として得ることができる。
[透水度]
直径41mmのステンレス製の透液セルに、予めエタノールに浸しておいたポリオレフィン樹脂多孔膜(A)をセットし、この層中のエタノールを水で洗浄した。その後、約50,000Paの差圧で水を透過させ、120sec経過した際の透水量(cm)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、空気の分子速度νは、気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、及び空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から、下記数式を用いて求められる。
ν={(8R×T)/(π×M)}1/2
さらに、孔数B (個/μm) は、次式より求めた。
B=4×(ε/100)/(π×d×τa)
(5)厚み(膜厚、μm)
(5)−1 ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)膜及び電池用セパレータの厚み(μm)
ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)膜及び電池用セパレータから、それぞれ、10cm×10cm角のサンプルを切り出し、格子状に選んだ9箇所(3点×3点)の膜厚を、微小測厚器(東洋精機製作所(株) タイプKBM)を用いて室温23±2℃において測定した。9箇所の測定値の平均値を、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)又は蓄電デバイス用セパレータの厚み(μm)とした。
(5)−2 多孔層(B)の厚み(μm)
多孔層(B)の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用い、セパレータの断面観察により測定した。サンプルのセパレータを1.5mm×2.0mm程度に切り取り、ルテニウム染色した。ゼラチンカプセル内に染色サンプル及びエタノールを入れて液体窒素により凍結させた後、ハンマーでサンプルを割断した。サンプルをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30,000倍にて観察し、多孔層(B)の厚みを算出した。この時、SEM画像において、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)断面の多孔構造が見えない最表面領域を、多孔層(B)の領域とした。
(6)樹脂バインダー(b−1)のガラス転移温度(Tg)
樹脂バインダー(b−1)含有ラテックスを、アルミ皿に適量とり、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥皮膜を得た。得られた乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記の通りとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。−70℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
−70℃から毎分15℃の割合で300℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSC(DSCの微分)のデータを取得。DDSCのピークトップ温度をガラス転移温度とした。
(7)樹脂バインダー(b−1)のトルエンゲル分率
テフロン(登録商標)板上に樹脂バインダー(b−1)を含むラテックスを塗工し、23℃/50%RHの条件下で24時間静置した。次に、90℃に設定したオーブン中に15分静置した。この操作によって形成された樹脂バインダー(b−1)からなるフィルムを、テフロン(登録商標)板から剥がした。
得られた樹脂バインダー(b−1)フィルムの約0.5gを精秤し、この値を(a)gとした。精秤後のフィルムをトルエン30ml中に浸漬して3時間振とうした。振とう後のフィルムを、質量既知の325メッシュでろ取し、140℃において1時間乾燥した後、メッシュ及び不溶分の合計質量を秤量した。この値からメッシュ質量を差し引くことにより、トルエン不溶分の乾燥重量(b)gを得た。トルエンゲル分率は、以下の計算式で算出した。
樹脂バインダー(b−1)のトルエンゲル分率=(b)/(a)×100 [%]
(8)樹脂バインダー(b−1)の電解液膨潤度
樹脂バインダー(b−1)を含むラテックスを80℃のオーブン中に9時間静置した後、更に80℃で12時間真空乾燥を行い、樹脂バインダー(b−1)の乾燥物を得た。得られた樹脂バインダー(b−1)の乾燥物約0.5gの質量を秤量し、浸漬前質量(W)とした。この樹脂バインダー(b−1)乾燥物を、25℃のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=2:3(体積比)の混合溶媒10gと一緒に50mLのバイアル瓶に入れ、24時間浸漬した後、サンプルを取り出し、タオルぺーパーで拭き取ってすぐに質量を測定し、浸漬後質量(W)とした。
樹脂バインダー(b−1)の膨潤度は、以下の式より算出した。
膨潤度(%)=W/W×100
上記の式において、樹脂バインダー(b−1)サンプルが上記混合溶媒に膨潤も溶解もしない場合、膨潤度は100%となる。
(9)樹脂バインダー(b−1)の平均粒子径
(9−1)ラテックス中における平均粒子径
ラテックス中の樹脂バインダー(b−1)の平均粒子径は、粒子径測定装置(日機装株式会社製、Microtrac UPA150)を使用して測定した。測定条件としては、ローディングインデックス=0.15〜0.3、測定時間300秒とし、得られたデータにおいて50%体積粒子径の数値を平均粒子径とした。
(9−2)セパレータ中における平均粒子径
セパレータを構成する多孔層(B)中の粒状の樹脂バインダー(b−1)の平均粒径は、ルテニウム染色したセパレータを、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて、加速電圧1.0kV、30,000倍にて観察することにより測定した。樹脂バインダー(b−1)の一番径が大きい部分を粒径とし、20個の平均値を平均粒子径とした。
(10)電解液中における多孔層(B)の超音波処理後の残存率
セパレータを76mm×26mmに切り出したサンプルの質量を測定し、超音波処理前質量:Dとした。このセパレータサンプルを、25℃のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=2:3(体積比)の混合溶媒10gを入れた50mLのバイアル瓶の中に入れ、超音波洗浄機(株式会社エスエヌディ製 型式US−102)を用いて、発振周波数38kHzにて、10分間超音波処理を行った。その後、サンプルを取り出し、エタノールで洗浄した後、室温で乾燥させてサンプル質量を測定し、超音波処理後質量:Eとした。基材として用いたポリオレフィン樹脂多孔膜の76mm×26mm角のサンプル質量:Fとして、超音波処理後の電解液中における多孔層の残存率を、以下の式より算出した。
残存率(%)=(E−F)/(D−F)×100
(11)MD/TD熱収縮率(%)
ゼパレータを、各辺が基材層であるポリオレフィン樹脂多孔膜(A)のMD及びTDとそれぞれ平行となるように、100mm四方に切り取り、130℃に温調したオーブン内に1時間放置した後に、セパレータのMD/TD熱収縮率を測定した。
(12)電池の安全性試験(釘刺し試験)
a.電池作製
(a−1)正極板作製
活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoOを92.2質量%、導電剤としてリン片状グラファイト及びアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%ずつ、並びにバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%(固形分換算)を、N−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗付し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、正極の活物質塗付量は250g/m,活物質嵩密度は3.00g/cmになるようにした。これを幅約40mmに切断して帯状にした。
(a−2) 負極板作製
活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)、及びスチレン−ブタジエンコポリマー(Tg=−40℃、粒径80nm)1.7質量%(固形分換算)を、精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗付し、120℃で3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗付量は106g/m,活物質嵩密度は1.35g/cmになるようにした。これを幅約40mmに切断して帯状にした。
(a−3) 非水電解液の調製
非水電解液としてエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=2:3(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させることにより、電解液を調製した。
(a−4)捲回・組み立て
セパレータ、帯状正極及び帯状負極を、帯状負極、セパレータ、帯状正極、及びセパレータの順に重ねて渦巻状に複数回捲回して、電極板積層体を作製した。 この電極板積層体を平板状にプレス後、アルミニウム製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製リードを容器壁に、負極集電体から導出したニッケル製リードを容器蓋端子部に接続した。更にこの容器内に、前記した非水電解液を注入した後、封口することにより、角型リチウムイオン電池を作製した。こうして作製された角型リチウムイオン電池は、縦(厚み)6.3mm,横30mm,高さ48mmの大きさで、公称放電容量が620mAhとなるように設計されたものである。
b.容量測定(mAh)
上記のようにして組み立てた角型リチウムイオン電池に対して、電流値310mA(0.5C)、終止電池電圧4.2Vの条件で、6時間定電流定電圧(CCCV)充電を行った。このとき、充電終了直前の電流値はほぼ0の値となった。その後、25℃雰囲気下において1週間放置(エージング)した。次いで、電流値620mA(1.0C)、終止電池電圧4.2Vの条件で3時間定電流定電圧(CCCV)充電した後、一定電流値(CC)620mAで電池電圧3.0Vまで放電する、というサイクルを行った。このときの放電容量を初回放電容量とした。この初回放電容量が±10mA以内の電池を安全性評価に使用した。
c.安全性評価(釘刺し試験)
電流値620mA(1.0C)、終止電池電圧4.2Vの条件で3時間定電流定電圧(CCCV)充電した電池に対して、中央部に、直径2.7mmの鉄製丸釘を、20℃環境下で、5mm/秒の速度で貫通させ、その時の発熱状態を観測した。
電池貫通箇所近傍の電池表面における最高到達温度が100℃未満であった場合を合格とし、100℃以上であった場合を不合格とした。1サンプルにつき20個評価し、不合格の個数を不良品数とした。
<樹脂バインダー(b−1)の合成例>
[合成例1]
攪拌機、還流冷却器、滴下槽、及び温度計を取り付けた反応容器に、初期仕込みとして、水74質量部、アクアロンKH1025(ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩:25質量%水溶液/第一工業製薬(株)製)0.125質量部(固形分換算)、及びアデカリアソープSR1025(25質量%水溶液/(株)ADEKA製)0.125質量部(固形分換算)を投入し、反応容器中の温度を75℃に保ち(重合温度(1))、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(10質量水溶液)0.15質量部(固形分換算)を添加した。添加5分後に、非架橋性モノマーとして、メチルメタクリレート11.8質量部、シクロヘキシルメタクリレート5質量部、ブチルメタクリレート1質量部、ブチルアクリレート33質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート42質量部、メタクリル酸0.1質量部、アクリル酸0.1質量部、グリシジルメタクリレート0.8質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2質量部;
架橋性モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート1質量部;
乳化剤として、アクアロンKH1025:0.15質量部(固形分換算)及びアデカリアソープSR1025(25質量%水溶液):0.15質量部(固形分換算);
開始剤として、ペルオキソ二硫酸アンモニウム10%水溶液:0.15質量部(固形分換算)、並びに
水65質量部からなる乳化混合液を、2.5時間かけて反応容器へ追添した。その間反応液温度が75℃になるようにコントロールした(重合温度(1)、重合時間(1))。乳化混合液添加終了後、75℃において1時間撹拌し(重合温度(2)、重合時間(2))、次に75℃から85℃まで1時間で昇温し(重合温度(3)、重合時間(3))、更に85℃において1時間撹拌し(重合温度(4)、重合時間(4))、反応を完結させた。反応開始から完結までの間、反応液のpHは4以下で維持した。
反応完結後、反応液を室温まで冷却した。冷却後、反応液を200メッシュの金網でろ過し、凝集物等を除去した後、25質量%のアンモニア水でpHを8に調整し、固形分が40質量%となるように水を添加した。次いで、325メッシュの金網でろ過を行うことにより、樹脂バインダーラテックス(LTX1)を得た。得られた樹脂バインダー含有ラテックス(LTX1)のガラス転移温度は−40℃であり、体積平均粒子径は141nmであった。
[合成例2〜20]
上記合成例1において、初期乳化剤量、架橋性モノマーの種類及び量、非架橋性モノマーの種類及び量、重合温度、並びに重合時間をそれぞれ表1に記載の通りに変更した他は合成例1と同様にして、樹脂バインダー含有ラテックス(LTX2)〜(LTX20)を得た。
合成例2、4、19および20においては、重合温度(3)のときに昇温を行わず、表1に記載の温度を維持した。
Figure 2016072142
Figure 2016072142
Figure 2016072142
Figure 2016072142
上記表1における乳化剤、開始剤、及びモノマーの略称は、それぞれ、以下の意味である。
[乳化剤]
KH1025:アクアロンKH1025(ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩:25質量%水溶液/第一工業製薬(株)製)
SR1025:アデカリアソープSR1025(25質量%水溶液/(株)ADEKA製)
[開始剤]
APS:ペルオキソ二硫酸アンモニウム
[非架橋性モノマー]
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
MAA: メタクリル酸
AA:アクリル酸
AM:アクリルアミド
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
BA: ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
MTMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
[架橋性モノマー]
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート
P−TA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
<ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の製造>
製造例1
体積平均分子量70万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部、体積平均分子量25万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部、及び体積平均分子量40万のホモポリマーのポリプ口ピレン5質量部を、タンブラ-ブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリマ一混合物99質量部に対して、酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー卜]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマ一等混合物を得た。
得られたポリマ一等混合物は、窒素置換した後に、窒素雰囲気下でフィーダーにより二軸押出機へ供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5/s)を、プランジャーポンプにより押出機シリンダーに注入した。溶融混練して押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの量比が67質量%(ポリマー等混合物濃度が33質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリユ一回転数100rpm、及び吐出量12kg/hとして、混練を行った。
得られた溶融混練物を、表面温度250℃に制御された冷却ロール上にT−ダイ経由で押出しキャス卜することにより、厚み1,600μmのゲルシートを得た。次に、このゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率6.1倍、設定温度121℃とした。延伸後のゲルシートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去した後、メチルエチルケトンを乾燥除去した。次に、前記処理後のシートをTDテンターに導き、熱固定を行った。熱固定温度は120℃、TD最大倍率は2.0倍、緩和率は0.90とした。
その結果、膜厚17μm、気孔率60%、透気度84秒/100cc、気液法によって算出した平均孔径d=0.057μm、曲路率τa=1.45、孔数B=165個/μm、及び突刺強度が25μm換算で5,679fのポリオレフィン樹脂多孔膜(A1)を得た。
実施例1
[多孔層(B)の形成、及びセパレータの製造]
無機充填材(b−2)として水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)を95.0質量部、樹脂バインダー(b−1)としてアクリルラテックス(固形分濃度40%、膨潤度168%)4.0質量部(固形分換算)、及び分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468)1.0質量部(固形分換算)を、100質量部の水に均一に分散させて塗工液を調製した。
次いで、上記製造例1で得たポリオレフィン樹脂多孔膜(A1)の表面にコロナ放電処理(放電量50W)を実施した後、当該処理面に上記の塗工液をマイクログラビアコーターを用いて塗工した。塗工後、60℃において乾燥することにより、前記ポリオレフィン樹脂多孔膜(A1)上に厚さ4μmの多孔層(B)を形成して、セパレータを得た。
このセパレータについて上述の方法に従って行った評価結果を、合わせて表2に示した。
実施例2〜16及び比較例1〜7
上記実施例1において、樹脂バインダー(b−1)及び無機充填材(b−2)として、それぞれ表2に記載のラテックスを使用した他は実施例1と同様にして、塗工液を調製し、セパレータを製造した。
これらのセパレータについて上述の方法に従って行った評価結果を、合わせて表2に示した。
Figure 2016072142
Figure 2016072142
Figure 2016072142
上記表2における無機充填材及び分散剤の略称はそれぞれ以下の意味である。
[無機充填材(b−2)]
b−2a:水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)
b−2b:焼成カオリン(平均粒径1.0μm)
b−2c:アルミナ(平均粒径1.0μm)
上記の無機充填材(b−2)は、いずれも、ビーズミルを用いて粉砕し、平均粒径が1.0μmになるように調整した後に使用した。
[分散剤]
PCA:ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468)

Claims (5)

  1. ポリオレフィン樹脂多孔膜(A)の少なくとも片面に、
    無機充填材(b−2)と、
    トルエン溶液におけるゲル分率が90〜99質量%であり、30℃未満の領域にガラス転移温度を示し、そしてエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)に対する膨潤度が105〜200%である樹脂バインダー(b−1)と、
    を含む多孔層(B)を備える電池用セパレータであって、
    該電池用セパレータを25℃のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液(体積比:2/3)中で10分間超音波処理した時の前記多孔層(B)の残存率が60%以上であることを特徴とする、前記電池用セパレータ。
  2. 前記樹脂バインダー(b−1)が、0℃以下の領域にガラス転移温度を示すことを特徴とする請求項1に記載の電池用セパレータ。
  3. 前記樹脂バインダー(b−1)が、アクリル系重合体である、請求項1または2に記載の電池用セパレータ。
  4. 非水電解液電池用セパレータである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池用セパレータ。
  5. 請求項4に記載の非水電解液電池用セパレータと、正極と、負極と、電解液と、を有することを特徴とする、非水電解液電池。
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