以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は、本発明に係る移動体1の一例を模式的に示す外観側面図である。図1に例示した本発明に係る移動体1は、ハンドル型電動車椅子等の搭乗可能な小型の車両を用いた移動体本体2、及び距離を計測する機能を有する計測装置3を用いて構成される。図1に示すように移動体1の前部には、接地点から所定の高さ、例えば60〜70cmとなる位置に計測装置3が取り付けられている。なお図面においては計測装置3を簡略化した円にて示し、移動体1の取付位置から若干離隔して描いているが、視認しやすさを意図したものであり、計測装置3の実際の形状及び位置を示すものではない。計測装置3は、光波、電波等の電磁波を発信する。発信された電磁波は、障害物、路面、溝等の反射対象に反射され反射波となる。計測装置3は、反射波を受信し、反射波を発信してから受信するまでの時間、電磁波の強度、電磁波の位相、電磁波の受信の有無等の受信状況に基づいて、反射対象までの距離又は反射対象の有無を測定する。なお、本願では、電磁波としてレーザ光線を使用するレーザスキャナを計測装置3として用いる形態について説明するが、本発明に係る計測装置3は、レーザスキャナに限定されるものではない。また、レーザスキャナを用いた計測装置3は、電磁波の発信方法として、レーザをパルス波として断続的に発光させる発信方法にて制御するようにしても良く、レーザを連続して発光させる発信方法にて制御するようにしても良い。
移動体1に取り付けられた計測装置3は、回転軸又は揺動軸となる中心軸を中心として回転又は揺動しながら電磁波を発信することにより、走査面が円錐面又は円錐面の一部をなすように電磁波を走査する。以下に計測装置3の走査の様々な形態について系統的に説明する。
<中心軸を中心として回転し、走査面が円錐面となる形態>
(1)計測装置3が、中心軸を中心として360°回転し、「360°の全範囲」において電磁波を発信し、かつ「360°の全範囲」において、電磁波の受信状況を計測(距離の計測等)するように構成する形態を例示することができる。このように構成した場合、計測装置3は、「360°の全範囲」で電磁波を発信し、かつ計測することになるので、走査面は「円錐面」となる。
(2)計測装置3が、中心軸を中心として360°回転し、「360°の全範囲」において電磁波を発信するが、「360°の一部の範囲」でのみ電磁波の受信状況を計測するように構成する形態を例示することができる。このように構成した場合、計測装置3は、電磁波の受信状況の計測は「360°の一部の範囲」に限られるが、「360°の全範囲」において電磁波を発信するので、走査面は「円錐面」となる。
<中心軸を中心として回転し、走査面が円錐面の一部となる形態>
(1)計測装置3が、中心軸を中心として360°回転するが、「360°の一部の範囲」でのみ電磁波を発信し、前記「360°の一部の範囲」で電磁波の受信状況を計測するように構成する形態を例示することができる。このように構成した場合、計測装置3は、「360°の一部の範囲」でしか電磁波を発信しないので、走査面は「円錐面の一部」となる。
(2)計測装置3が、中心軸を中心として360°回転し、「360°の全範囲」において電磁波を発信するが、一部の電磁波は、計測装置3の筐体等による遮断等の事由により、計測装置3の外部には発信されないように構成する形態を例示することができる。即ち、実質的に計測装置3は、「360°の一部の範囲」にしか電磁波を発信しないことになる形態である。このように構成した場合、計測装置3は、実質的に「360°の一部の範囲」でしか電磁波を(計測装置3の外部に)発信しない形態となるため、走査面は「円錐面の一部」となる。
<中心軸を中心として揺動し、走査面が円錐面となる形態>
(1)計測装置3が、中心軸を中心として「360°の揺動範囲」において電磁波を発信し、前記「360°の揺動範囲」において電磁波の受信状況を計測するように構成する形態を例示することができる。このように構成した場合、計測装置3は、「揺動」することになるが、「360°の揺動範囲」で電磁波を発信するので、走査面は「円錐面」となる。
<中心軸を中心として揺動し、走査面が円錐面の一部となる形態>
(1)計測装置3が、中心軸を中心として「360°未満の揺動範囲」において電磁波を発信し、前記「360°未満の揺動範囲」において電磁波の受信状況を計測するように構成する形態を例示することができる。このように構成した場合、計測装置3は、「360°未満の揺動範囲」において電磁波を発信するので、走査面は「円錐面の一部」となる。
上述のように、回転又は揺動による走査は、様々な形態に展開することが可能である。なお、以降の説明においては、便宜上、走査範囲が360°の場合、回転と表現し、走査範囲が360°未満の場合、揺動と表現して説明するが、上述のように、様々な形態で実現することが可能な本発明を便宜的に区分したものに過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではない。
計測装置3は、中心軸の走査側(反射対象側)の走査方向が下方へ向くように配設されており、取付位置から反射対象までの距離を計測すべく、中心軸を中心として回転又は揺動しながら電磁波を発信することで走査面が円錐面又は円錐面の一部をなすように電磁波を走査し、反射波を受信する。図1は、進行方向Fに向けて移動している移動体1に取り付けられた計測装置3が、前方斜め下方へ向けて破線で示す電磁波を発信した状況を模式的に示している。
図1に示すように、移動体1が進行方向Fに向けて移動する場合、移動体1の移動に伴い計測装置3も進行方向Fに向けて移動する。この場合、進行方向における路面が平坦な道路であれば、計測される距離は略一定であるが、進行方向に階段、溝等の段差、即ち凹部が存在する場合、計測される距離が長くなる。本願に示す例では、図1に示すように、距離に応じて安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adを定義することとした。即ち、計測した距離が、どの領域内に入っているかによって、安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adを判定する。安全領域Asは、計測した距離が閾値となる第1の基準値未満の領域であり、警戒領域Aaは計測した距離が閾値となる第2の基準値未満で、かつ第1の基準値以上の領域であり、そして、危険領域Adは第2の基準値以上の領域である。なお、第2の基準値は、第1の基準値より大きい値となる。ここでは、説明の便宜上、第1の基準値及び第2の基準値と称しているが、複数段階の基準値を設けて複数の領域を設定することを意図したものであり、例示した基準値及び領域の設定方法に限定されることなく適宜設定することが可能である。
図2は、本発明に係る計測装置3の走査に係る光学系の構成例を概念的に示す模式図である。図2は、計測装置3が距離を計測する光学系の機構、即ち光学機構として備える距離計測部31の一部を模式的に示している。距離計測部31は、電磁波を発信する発信部31a、反射対象にて反射された電磁波を受信する受信部31b、電磁波による走査を行う走査機構31c等の各種構成を備えた光学機構である。
発信部31aは、指向性の強い電磁波としてレーザ光線を発信(発光)するレーザダイオード等の発光素子を用いて構成されている。受信部31bは、レーザ光線を受信(受光)するフォトダイオード等の受光素子を用いて構成されている。
走査機構31cは、ハーフミラー31c1、ミラー31c2、集光レンズ31c3、モータ31c4等の部材を備えている。
ハーフミラー31c1は、発信部31aが発信するレーザ光線の進行方向に対して45°の角度をなすように配設されており、発信部31aから発信された電磁波を透過させる。
発信部31aを透過したレーザ光線は、ミラー31c2にて反射し、計測装置3の外部へ走査光として発信される。発信したレーザ光線が、路面、障害物等の反射対象に照射されると、反射対象にて反射され、反射光として計測装置3内に入射する。計測装置3内に入射した反射光は、ミラー31c2にてハーフミラー31c1の方向へ反射する。
反射光は、進行方向に対して45°の角度をなすハーフミラー31c1で反射するため、光路が90°曲がり集光レンズ31c3に入射する。反射光は、凸レンズを用いて形成された集光レンズ31c3の屈折作用により集光され、集光された反射光は受信部31bにて受信(受光)される。
このようにして、レーザ光線は、発信部31aからハーフミラー31c1、ミラー31c2を経て外部へ発信される。また、レーザ光線が反射対象にて反射された反射光は、ミラー31c2、ハーフミラー31c1、集光レンズ31c3を経て受信部31bにて受信される。なお、図2に示すように光路の制御が可能であれば、ハーフミラー31c1、ミラー31c2以外の鏡、レンズ、その他の光学部材を用いることが可能である。
また、モータ31c4は、ミラー31c2を軸支しており、モータ31c4が、後述する制御部30(図3参照)の制御に基づいて回転又は揺動することにより、ミラー31c2を回転駆動又は揺動駆動する。モータ31c4がミラー31c2を回転駆動又は揺動駆動する場合の回転中心又は揺動中心となる中心軸は、発信部31aから発信されたレーザ光線がミラー31c2に到達するまでの光路と略同一直線上に位置している。さらに、発信部31aから発信されたレーザ光線がミラー31c2に到達するまでの光路と、ミラー31c2にて反射されたレーザ光線の光路とがなす角度、即ち、ミラー31c2に対する入射光線と反射光線とがなす角度(入射角と反射角との和)は、鋭角をなすように各部材は設計及び配設されている。なお、走査機構31cの取付方向及び反射対象が位置する方向によっては、入射光線と反射光線とがなす角度が鈍角をなすように各部材を設計することも可能である。
前述の様に、ミラー31c2の回転中心となる中心軸と、発信部31aからミラー31c2までの光路とは略同一直線上にある。従って、ミラー31c2が矢印方向へ回転する場合、ミラー31c2にて反射されたレーザ光線は、ミラー31c2にて反射される点を頂点とする仮想上の円錐の円錐面に沿った母線方向を光路として発信されることになる。ミラー31c2が矢印方向及び反対方向へ揺動する場合、反射されたレーザ光線は、仮想上の円錐の円錐面の一部に沿った母線方向を光路として発信されることになる。即ち、計測装置3は、取付位置から周囲の反射対象までの距離を計測すべく、中心軸を中心として回転又は揺動することで走査面が円錐面又は円錐面の一部をなすようにレーザ光線を走査することになる。なお、揺動駆動を実現するための構成としては、モータ31c4及びミラー31c2を用いる形態に限るものでは無い。例えば、モータ31c4及びミラー31c2の代わりにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを使用する等、様々な形態で実現することが可能である。MEMSミラーを使用した場合には、小型化が可能であり、かつ機械的寿命を延ばすことが可能である等、様々な効果を見込むことができる。
幾何学上、円錐を一の平面で切断した場合、切断面の形状は、円、楕円、放物線、又は双曲線のいずれかとなる。本発明に係る計測装置3は、仮想上の円錐の円錐面又は円錐面の一部をなすようにレーザ光線を走査すると仮定することができるため、移動体1が接地する平面と仮想上の円錐の円錐面とが交差する走査線の形状は、円、楕円、放物線、又は双曲線のいずれかとなる。即ち、本発明に係る計測装置3は、中心軸の方向及びミラー31c2による反射角度を適宜設定することにより、用途に応じた様々な曲線で走査を行うことが可能となる。
次に、本発明に係る移動体1等の各種装置の構成について説明する。図3は、本発明に係る移動体1の構成例を示すブロック図である。移動体1は、ハンドル型電動車椅子等の移動体本体2に計測装置3を取り付けて構成される。
移動体本体2は、ハンドル等の操舵機構、エンジン等の動力機構等の様々な機構を備えている。そして、本発明に係る構成として、状況検出部20、出力部21、入力部22、制御部23等の各種機構を備えている。
状況検出部20は、移動体本体2の移動速度、操舵角、操作等の状況を検出する各種センサ等の機構であり、検出した状況を示す速度情報、操舵角情報、操作情報等の情報を出力部21へ出力する。状況検出部20が検出する操作には、加速に要するアクセルに対する操作、進行方向を切り替える前後進切替操作、停止制御等の制御状態を解除する解除スイッチに対する操作等の様々な操作が含まれる。
出力部21は、状況検出部20から受け付けた速度情報、操舵角情報、操作情報等の情報を計測装置3へ出力する機構である。
入力部22は、計測装置3から制御信号等の各種情報を受け付ける機構であり、受け付けた情報は制御部23へ出力される。
制御部23は、計測装置3から入力部22を介して受け付けた情報に基づいて、アクセル制御、最大速度制御、ブレーキ制御、警報報知制御等の移動に関する各種制御を行う機構である。
計測装置3は、装置全体を制御する制御部30、反射対象までの距離を計測する距離計測部31、外部の装置に接続可能な接続部32等の各種機構を備えている。
制御部30は、LSI(Large Scale IC)、VLSI(Very Large Scale IC)等の集積回路を用いて構成される制御回路であり、半導体メモリ等の記録部30aを備えており、記録部30aに記録されている各種プログラム及びデータ等の情報を読み取り、様々な制御を実行する。記録部30aは、制御部30にて実行される各種プログラムと、安全領域As、警戒領域Aa、危険領域Adを決定する基準値、前方走査角度(後述する第1走査角度)、側方走査角度(後述する第2走査角度)等の各種設定値を含む様々なデータとを記録している。なお、各種設定値は、それぞれ1つの値のみが記録されているのではなく、初期値を含め複数の値が記録されており、制御に用いる設定値として適宜選択することが可能である。
距離計測部31は、前述の発信部31a、受信部31b及び走査機構31cの他、電磁波の受信状況に基づいて反射対象までの距離を演算する演算部31d等の各種機構を備えている。
接続部32は、有線通信、無線通信等の通信接続規格に基づき構成される機構であり、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成される設定装置4(図4参照)と接続し、設定装置4により、計測装置3の各種設定を行うことができる。接続部32を有線通信の通信接続規格にて構成する場合、例えば、USB(Universal Serial Bus)、LAN(Local Area Network)等の通信接続規格に基づくコネクタ及び付属回路を用いて接続部32が構成される。また、接続部32を無線通信の通信接続規格にて構成する場合、例えば、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信接続規格に基づくアンテナ及び付属回路を用いて接続部32が構成される。
図4は、本発明に係る移動体1に用いられる計測装置3及び計測装置3に接続される設定装置4の構成例を示すブロック図である。図4は、移動体1から取り外した計測装置3に設定装置4を接続した状態を示している。計測装置3には、通信線を介して設定装置4が接続されている。設定装置4は、制御部40、記録部41、入力部42、表示部43、接続部44等の各種機構を備えている。なお、計測装置3と設定装置4とを無線通信により接続可能とする場合、計測装置3を移動体1に取り付けた状態で、設定装置により各種設定を行えるように構成することも可能である。
制御部40は、演算回路、レジスタ回路等の各種回路を備え、装置内の各部を制御する処理を実行するCPU(Central Processing Unit )等の機構である。
記録部41は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリ、各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される機構であり、設定プログラム41a等のプログラム及びデータ等の各種情報が記録されている。
入力部42は、マンマシンインターフェースとして様々な入力を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネル等の機構である。
表示部43は、各種情報を表示する液晶パネル等の機構である。なお、入力部42及び表示部43を一体化させた液晶タッチパネルを用いるようにしても良い。
そして、パーソナルコンピュータ等のコンピュータは、記録部41に記録された設定プログラム41a等の各種プログラムを読み取り、制御部40の制御により実行することにより、設定装置4として機能する。
<走査範囲>
以上のように構成された本発明に係る移動体1は、図2を用いて説明したように、計測装置3により、走査面が仮想上の円錐の円錐面又は円錐面の一部をなすように走査し、反射波を検出することにより反射対象までの距離を計測する。次に、走査面が仮想上の円錐の円錐面又は円錐面の一部をなすように走査した場合において、走査範囲となる様々な形状について説明する。
<円状走査>
図5A及び図5Bは、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図5Aは、計測装置3を取り付けた移動体1を左側方向からの視点で示しており、図5Bは、上方からの視点で示している。図5A及び図5Bに例示する形態は、中心軸の走査側(反射対象側)が真下方向を向くように計測装置3を取り付けた例を示している。なお、図5A中の一点鎖線は、中心軸を示し、斜線は、走査範囲を示し、太線は、走査面となる円錐面が地表面と交差する走査線を示し、破線は、モータ31c4が、中心軸を回転中心として移動体1の後方へ回転駆動したと仮定した場合の仮想上の母線を示している。
図5Aに示すように、計測装置3の走査に係る回転又は揺動の中心となる中心軸の走査側は、真下を向いており、中心軸に対して角度θ(0°<θ<90°)をなす角度でレーザ光線を下方へ照射し、反射対象である地表面までの距離を測定する。計測装置3の取付位置近傍を頂点とし、走査面を円錐面とする仮想上の円錐は、中心軸と直交する接地面により切断されるため、切断面は円となる。即ち、図5A及び図5Bに示すように中心軸が接地面と直交をなすように取り付けた計測装置3では、接地面に対して円状に走査することになる。図5A及び図5Bでは、モータ31c4が、中心軸を揺動中心として揺動駆動する例を示しているため、一部が欠けた円状、即ち円弧状に走査することになる。
図6A及び図6Bは、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図6Aは、計測装置3を取り付けた移動体1を左側方向からの視点で示しており、図6Bは、上方からの視点で示している。図6A及び図6Bに例示する形態は、中心軸の走査側(反射対象側)が真下方向を向くように計測装置3を取り付けた例を示している。
図6A及び図6Bに例示する形態は、図5A及び図5Bに例示する形態の変形例であり、図5A及び図5Bに例示する形態と比較して、中心軸の走査側とレーザ光線の発信方向とがなす角度θを大きくし、かつ走査角度を小さくしている。これらの形態を比較すると、図5A及び図5Bに例示する形態では、移動体1の前方だけで無く側方も走査しているのに対し、図6A及び図6Bに例示する形態は、主として移動体1の前方を走査している。このように角度θ及び走査角度を適宜設定することにより、様々な範囲での走査が可能となる。
<楕円状走査>
図7A及び図7Bは、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図7Aは、計測装置3を取り付けた移動体1を左側方向からの視点で示しており、図7Bは、上方からの視点で示している。図7A及び図7Bに例示する形態は、中心軸の走査側(反射対象側)が、斜め下方を向き、かつ中心軸の走査側とレーザ光線の発信方向とがなす角度θが、中心軸の走査側と点線で示した水平線とがなす角度(俯角α)より小さくなるように計測装置3を取り付けた例を示している。
図7Aに示すように、計測装置3の走査に係る回転又は揺動の中心となる中心軸の走査側は、斜め下方を向いており、中心軸に対して角度θ(0°<θ<90°)をなす角度でレーザ光線を下方へ照射し、反射対象である地表面までの距離を測定する。なお、このとき中心軸の走査側とレーザ光線の発信方向とがなす角度θは、中心軸の走査側と水平線とがなす角度(俯角α)より小さくなるように計測装置3は移動体1に取り付けられている。計測装置3の取付位置近傍を頂点とし、レーザ光線の発信方向を母線とする仮想上の円錐は、中心軸と斜交する接地面により切断されるため、切断面は楕円となる。なお、図7Aでは、一点鎖線は、中心軸を示し、斜線は、走査範囲を示し、太線は、走査面となる円錐面が地表面と交差する走査線を示し、破線は、モータ31c4が、中心軸を回転中心として回転駆動したと仮定した場合の仮想上の母線及び底面を示している。図7A及び図7Bに示すように、角度θが、俯角αより小さくなるように取り付けた計測装置3では、接地面に対して図中太線で示すように楕円状に走査することになる。図7A及び図7Bでは、モータ31c4が、中心軸を揺動中心として揺動駆動する例を示しているため、一部が欠けた楕円状に走査することになる。
<放物線状走査>
図8A及び図8Bは、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図8Aは、計測装置3を取り付けた移動体1を左側方向からの視点で示しており、図8Bは、上方からの視点で示している。図8A及び図8Bに例示する形態は、中心軸の走査側(反射対象側)が、斜め下方を向き、かつ中心軸の走査側とレーザ光線の発信方向とがなす角度θと、中心軸の走査側と点線で示した水平線とがなす角度(俯角α)とが略等しくなるように計測装置3を取り付けた例を示している。
図8Aに示すように、計測装置3の走査に係る回転又は揺動の中心となる中心軸は、斜め下方を向いており、中心軸に対して角度θ(0°<θ<90°)をなす角度でレーザ光線を下方へ照射し、反射対象である地表面までの距離を測定する。なお、このとき中心軸と水平線とがなす角度(俯角α)は、角度θと略等しくなるように、即ち最上方の母線が水平となるように計測装置3は移動体1に取り付けられている。レーザ光線の発信方向を母線とする仮想上の円錐は、最上方の母線と平行な接地面により切断されるため、切断面は放物線となる。即ち、図8A及び図8Bに示すように、俯角αと角度θとが略等しくなるように取り付けた計測装置3では、接地面に対して図8B中に太線で示すように放物線状に走査することになる。なお、図8A及び図8Bでは、モータ31c4が、中心軸を回転中心として回転駆動する例を示している。レーザ光の照射方向が水平方向となる場合、レーザ光は地表面に到達せず、前方の反射対象で反射することになる。これにより下方だけで無く、前方における、より遠方の反射体の有無及び反射体までの距離を計測することが可能になる。
<双曲線状走査>
図9A及び図9Bは、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図9Aは、計測装置3を取り付けた移動体1を左側方向からの視点で示しており、図9Bは、上方からの視点で示している。図9A及び図9Bに例示する形態は、中心軸の走査側(反射対象側)が、斜め下方を向き、かつ中心軸の走査側とレーザ光線の発信方向とがなす角度θが、中心軸の走査側と点線で示した水平線とがなす角度(俯角α)より大きくなるように計測装置3を取り付けた例を示している。
図9Aに示すように、計測装置3の走査に係る回転又は揺動の中心となる中心軸は、斜め下方を向いており、中心軸に対して角度θ(0°<θ<90°)をなす角度でレーザ光線を下方へ照射し、反射対象である地表面までの距離を測定する。なお、このとき中心軸と水平線とがなす角度(俯角α)は、角度θより小さくなるように、即ち最上方の母線が水平方向より上側を向くように計測装置3は移動体1に取り付けられている。レーザ光線の発信方向を母線とする仮想上の円錐に対する接地面による切断面は双曲線となる。即ち、図9A及び図9Bに示すように、俯角αが、角度θより小さくなるように取り付けた計測装置3では、接地面に対して図9B中に太線で示すように双曲線状に走査することになる。図9A及び図9Bでは、モータ31c4が、中心軸を揺動中心として回転駆動する例を示しているが、モータ31c4が、略水平位置で折り返して揺動するように揺動駆動するように設計しても良い。なお、レーザ光の照射方向が水平方向又は水平方向より上側の方向を向く場合、レーザ光は地表面に到達せず、前方又は斜め上方の反射対象で反射することになる。これにより、下方だけで無く、前方又は上方における反射体の有無及び反射体までの距離を計測することが可能になる。
<様々な範囲に対する走査>
以上のように本発明に係る移動体1は、計測装置3の取り付け方により、円、楕円、放物線又は双曲線と様々な曲線にて走査することが可能である。また、図5A及び図5Bと、図6A及び図6Bとを比較して示したように、同系統の曲線であっても中心軸の走査側とレーザ光線の発信方向とがなす角度、及び走査角度の設定により、異なる範囲を走査するように設定することができる。以下では、これらの角度設定により設定される走査範囲の例及び用途について説明する。
図10は、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図10では、計測装置3を取り付けた移動体1を上方からの視点で示している。図10は、円状に走査するように計測装置3を取り付け、中心軸の走査側とレーザ光線の発信方向とがなす角度θが大きくなるように設定し、主として移動体1の前方を走査するように走査角度を設定した形態を例示している。
角度θを大きくする程、走査の前端となる円弧は直線に近づくため、移動体1の進行方向に直行する方向の幅Wを走査範囲とみなすことができる。図1を用いて説明したように、本発明に係る計測装置3は、反射対象までの距離を計測することにより、進行方向に存在する階段、溝等の凹部を検出することができる。さらに、図10に示すように、前方の走査角度φ1の範囲に対応する幅Wについて走査し、凹部の幅方向の連続性を判定することにより、凹部の幅方向の長さ、即ち凹部の幅を検出することができる。従って、例えば、反射対象までの距離が長く深い凹部である場合であっても、細い溝のようにその幅が狭ければ、移動体1の進行の障害とはならないとの判断を行うことが可能となる。
図11は、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図11では、計測装置3を取り付けた移動体1を上方からの視点で示している。図11は、楕円状に走査するように計測装置3を取り付け、移動体1の前方から両側方にかけて走査するように走査角度を設定した形態を例示している。
図11に示すように移動体1の進行方向に長くなるように走査範囲を設定することで、移動体1の前方の走査角度φ1の範囲に対応する進行方向の長さLに対する走査を行うことができる。従って、例えば、反射対象までの距離に基づいて図11中に斜線で示した凹部を検出した場合であって、図11に破線で示す範囲内での連続性があると判定したときには、凹部の進行方向の長さは所定値以上であるという様な判断を行うことが可能となる。なお、進行方向に対して直行する方向へ直線状に走査する場合であっても、移動体1が前方へ進行することにより、進行方向の長さを判定することは可能であるが、図11に示すように楕円状に走査した場合には、移動体1が停止していても凹部の進行方向の長さを判定することが可能となる。
図12は、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図12では、計測装置3を取り付けた移動体1を上方からの視点で示している。図12に例示する形態は、楕円状に走査するように計測装置3を取り付け、図11に例示した形態より、中心軸と水平線とがなす角度(俯角α)を小さくした、即ち、中心軸を傾けた形態であり、中心軸を回転中心として回転走査するように設定した形態を示している。
図12に示す形態では、中心軸が水平に近づくように傾けることで、進行方向に長い範囲を走査することが可能となっている。従って、例えば、側方の走査角度φ2の範囲で走査することにより、図12中に進行方向として示す凹部の進行方向の長さLを判定することが可能である。判定することが可能な進行方向の長さLは、図11に示す形態と比べて、より前方にある段階から判定することができるので、進行方向の安全性を高めることが可能である。
図13は、本発明に係る計測装置3を備えた移動体1における走査範囲の一例を模式的に示す概念図である。図13では、計測装置3を取り付けた移動体1を上方からの視点で示している。図13は、円状に走査するように計測装置3を取り付け、移動体1の走査角度φ1に対応する前方から走査角度φ2に対応する両側方にかけて走査するように設定した形態を例示している。図13に例示する形態では、凹部の連続性を検出した場合に、連続する走査方向に応じて幅方向の長さW及び/又は進行方向の長さLを判定することがで可能である。
<設定画面>
計測装置3に対する各種設定は、図4を用いて説明したように計測装置3に設定装置4を有線通信又は無線通信により接続することにより、設定装置4を用いて行うことができる。図14は、本発明に係る移動体1に用いられる計測装置3に各種設定値を入力する際の表示画面の一例を示す説明図である。図14は、設定プログラム41aを実行して設定装置4として機能するコンピュータに、計測装置3を接続し、計測装置3の各種設定値を設定する際に、設定装置4の表示部43に表示される表示画面の一例を示している。図14では、円状に走査する場合の表示画面を例示しており、正面方向の領域及び側方の領域における凹部を判定する。なお、以降では、正面方向の領域を第1領域Aとし、側方の領域を第2領域Bとして説明する。
表示画面の左上部には、設定値となる数値の入力欄、各種領域の有無を設定する入力欄、警戒領域Aa又は危険領域Adであると判定した場合における危険に係る報知、制御等の方法を示す危険対応の方法を設定する入力欄等の様々な入力欄が表示される。そして、使用者は、例えば、数値の入力欄に、第1走査角度、第2走査角度、第1領域Aの安全領域As、警戒領域Aa、危険領域Adを決定する基準値、第2領域Bの安全領域As、警戒領域Aa、危険領域Adを決定する基準値等の各種設定値を入力する。なお、各種角度の設定値は角度そのものを示す数値を入力するようにしても良いが、後述するように角度に換算可能な角度以外の数値等の情報を入力するようにしても良い。即ち、各種角度の設定値は、角度に係る情報として入力及び設定することが可能である。各種基準値についても同様であり、基準値に係る情報として入力及び設定することが可能である。
表示画面の中央部には計測装置3の計測領域の画像が表示されている。図14では、距離を計測する範囲と設定された領域との関係を平面図として表示した例を示している。計測領域は、第1領域A、第2領域B及び障害物検知領域Cを区分して示している。また、第1領域A内は、安全領域A(As)及び警戒領域A(Aa)が区分して示されており、警戒領域A(Aa)より遠方は危険領域A(Ad)となる。さらに、第2領域B内は、安全領域B(As)及び警戒領域B(Aa)が区分して示されており、警戒領域B(Aa)より遠方は危険領域B(Ad)となる。
また、各領域は、様々な数値により定義されている。図14に示す例では、各種領域を示す正面方向の角度として、第1領域Aの角度を示す第1走査角度φ1、第2領域Bの角度に関する第2走査角度φ2及び障害物検知領域Cの角度を示す障害物検知角度φ3が定義されている。なお、第2領域Bは、第2走査角度φ2の範囲内で、かつ第1走査角度φ1にて規定される第1領域Aを除く両端の領域となる。また、図14では、各領域の中心角を領域の角度として定義した例を示しているが、進行方向(正面方向)から領域の縁部までの角度により定義する等、適宜設定することが可能である。その場合、第2領域Bは、第1領域Aの縁部からの角度により定義することも可能である。また、例えば、第1領域Aの安全領域A(As)は、進行方向における安全領域A(As)までの第1領域深さ(距離)D1及び第1領域深さD1における進行方向と直交する方向における第1領域幅W1により定義されている。なお、第1領域深さD1及び第1領域幅W1が規定されれば、これらの数値を第1走査角度φ1に換算することができる。即ち、第1領域深さD1及び第1領域幅W1は、前述の角度に係る情報として入力及び設定することができる。他にも、座標、面積等の様々な種類の値を適宜組み合わせて第1走査角度φ1を規定することができる。また、第2領域Bの安全領域B(As)についても、当該領域における安全領域B(As)までの第2領域深さ(距離)D2及び第2領域深さD2において進行方法と平行な方向となる第2領域幅W2により定義されており、これらの数値を、角度に係る情報として入力及び設定することができる。なお、第3領域Cは、走査した範囲内において、反射対象が障害物か否かを判定するための領域であり、設定される障害物基準値未満の領域に反射対象が存在する場合、当該反射対象は障害物であると判定する。
計測領域の画像は、数値を入力して設定することにより、設定値に応じて画像が適宜変化するようになっている。また、計測領域の画像そのものを変化させる入力操作を行い、入力及び設定する数値を決定することも可能である。
なお、図14に例示した平面図は、距離を計測する斜め下の方向が縦方向(以下、Y軸方向という)となる座標系を用いて表示しているが、計測装置3が取り付けられている高さ、走査面の俯角等の情報を入力することにより、移動体1の接地面(水平面)をY軸方向とする座標系に投影して表示する等、適宜設定することが可能である。
図15は、本発明に係る移動体1に用いられる計測装置3に各種設定値を入力する際の表示画面の一例を示す説明図である。図15は、設定装置4の表示部43に表示される表示画面の他の例であり、放物線上に走査する場合の表示画面を例示している。図15に例示するように、走査範囲となる走査曲線の種類が変更された場合、変更された種類に応じた設定画面が表示される。
<各種処理>
以上のように構成された本発明に係る各種装置の処理について説明する。先ず、計測装置3及び設定装置4の処理について説明する。図16Aは、本発明に係る移動体1に用いられる計測装置3の設定値を設定する設定装置4の設定値入力処理の一例を示すフローチャートである。設定装置4は、記録部41に記録している設定プログラム41aを実行する制御部40の制御により、設定値入力処理を実行する。設定装置4が備える制御部40は、例えば、計測装置3から初期走査等の試験走査による距離情報を接続部44にて受信する(S101)。ステップS101にて受信する距離情報とは、計装装置3にて初期走査、更生走査等の試験走査による計測結果となる距離を示す情報である。受信する距離情報には、回転又は揺動に係る走査角度に対応付けられた距離が示されている。
制御部40は、受信した距離情報にて示される走査角度と距離との関係に基づいて走査曲線を描画する演算を行う(S102)。ステップS102の演算により描画された走査曲線は、適宜表示部43に表示される。
制御部40は、ステップS102にて描画した走査曲線に基づいて走査曲線の種類を判定する(S103)。ステップS103における走査曲線とは、走査方向に対する走査において走査範囲となる形状であり、前述の様に円状、楕円状、放物線状又は双曲線状の種類に分類される。判定は、例えば、予め記録しているパターンと照合することにより行われる。
制御部40は、判定した走査曲線の種類に基づいて、例えば、図14に示した表示画面を表示し、使用者の操作に基づいて設定値となる数値、画像等の情報の入力を入力部42から受け付ける(S104)。
制御部40は、入力された設定値に係る情報に基づいて設定範囲を表示部43に表示する(S105)。使用者は、表示された内容を確認し、表示された内容での設定の可否に係る操作を行う。操作を受け付け、制御部40は、設定値の設定を行うか否かを判定する(S106)。
ステップS106において、設定値の設定を行うと判定した場合(S106:YES)、制御部40は、入力を受け付けている設定値に係る情報を接続部44から通信線を介して計測装置3へ送信する(S107)。
ステップS106において、設定値の設定を行わないと判定した場合(S106:NO)、制御部40は、ステップS104へ戻り、以降の処理を繰り返す。
このようにして、設定装置4は設定入力処理を実行する。
図16Bは、本発明に係る移動体1に用いられる計測装置3の設定値設定処理の一例を示すフローチャートである。計測装置3は、制御部30の制御により、接続部32にて設定値に係る情報を受信し(S201)、受信した設定値に係る情報を記録部30aに記録する(S202)。記録部30aに記録された設定値に係る情報は、適宜選択され、設定値として、計測装置3の処理に用いられる。設定値としての処理において、適宜、数値変換、角度換算等の処理が行われ、計測装置3にて取扱可能な数値となる。
このようにして、計測装置3は設定値設定処理を実行する。
以上のようにして、設定値に係る情報が設定された計測装置3を備える移動体1の処理について説明する。以下に説明する処理は、図14に例示した走査範囲を設定した場合の処理を例示したものであり、図14においてφ1として示した走査範囲を第1領域、φ2として示した走査範囲を第2領域として説明する。
図17は、本発明に係る移動体1にて実行される状況検知処理の一例を示すフローチャートである。移動体1は、計測装置3により、周囲を走査し、反射対象にて反射された電磁波の受信状況に基づいて距離を計測し、計測した距離に基づいて、周囲の状況を検知する状況検知処理を実行する。移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、計測した距離に係る距離情報を取得する(S301)。ステップS301にて取得する距離情報には、反射対象までの距離だけでなく、必要に応じて当該距離に係る角度、対応する各種領域等の情報が含まれている。
制御部30は、取得した距離情報に基づいて第1領域凹部検知処理を実行する(S302)。第1領域凹部検知処理とは、検知した反射対象が第1領域において距離に基づき区分される安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adのうちのいずれの領域に位置するかを判定し、判定した領域に応じた対応を行う処理である。第1領域凹部検知処理の具体的な内容については後述する。
さらに、制御部30は、取得した距離情報に基づいて第2領域凹部検知処理を実行する(S303)。第2領域凹部検知処理とは、検知した反射対象が第2領域において距離に基づき区分される安全領域As、警戒領域Aa及び危険領域Adのうちのいずれの領域に位置するかを判定し、判定した領域に応じた対応を行う処理である。第2領域凹部検知処理の具体的な内容については後述する。
さらに、制御部30は、取得した距離情報に基づいて障害物検知処理を実行する(S304)。ステップS304の障害物検知処理とは、走査した範囲内において、反射対象までの距離が予め設定している障害物基準値未満の場合に、反射対象は障害物であり、障害物が接近していると判定して対応する処理である。即ち、ステップS304の障害物検知処理とは、走査角度及び障害物基準値により定義される障害物検知領域内に反射対象が存在するか否かを判定する処理である。障害物検知処理の具体的な内容については後述する。
このようにして、移動体1の状況検知処理が繰り返し実行される。
図18は、本発明に係る移動体1にて実行される第1領域凹部検知処理の一例を示すフローチャートである。図18を用いて示す第1領域凹部検知処理は、図17に示した状況検知処理のステップS302として実行される第1領域凹部検知処理に対応している。移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、取得した距離情報に基づいて、反射対象が第1領域における危険領域Adの範囲内であるか否かを判定する(S401)。ステップS401において、第1領域及び危険領域Adは、記録部30aに設定値として記録されている情報に基づいて規定される。
ステップS401において、第1領域における危険領域Adの範囲内であると判定した場合(S401:YES)、制御部30は、危険領域Adとなる凹部の幅を積算し(S402)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S403)。ステップS403の除外値は、記録部30aに設定値として記録されている情報に基づいて規定される。
計測装置3は、移動体1の周囲を走査しながら反射対象までの距離を連続的に計測する。そして、危険領域Adと判定する凹部の連続性から危険領域Adの幅を計測する。そこで、凹部の幅の基準を除外値として設定しておくことにより、移動体1は、危険領域Adであるとの判定から積算して求められる凹部の幅が、除外値以上である場合、除外値として規定される幅以上の幅を有する凹部が存在すると判断することが可能となる。進行方向に凹部が存在したとしても、その幅が、除外値として規定される幅、例えば、タイヤの幅未満である場合、危険性は低いと考えられるので、危険を回避するための危険対応処理の対象から除外することができる。また、タイヤの幅に基づく幅以外に適宜除外値を設定することにより、例えば、グレーチング、格子、網等の狭い幅の凹部を危険対応処理の対象から除外することが可能となる。なお、凹部の幅は、例えば、計測装置3から発信されるレーザのピッチ及び反射対象までの距離等の情報に基づいて算出される。
ステップS403において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S403:YES)、反射対象が第1領域における危険領域Adの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S404)。
ステップS404にて実行する危険対応処理とは、移動体1の搭乗者に対する報知、移動体1の移動の制御等の処理である。搭乗者に対する報知とは、危険状況を示す警報音の鳴動、表示、音声出力等の各種処理である。移動体1の移動の制御とは、アクセル制御、最大速度制御、ブレーキ制御等の各種処理である。移動体1の制御は、計測装置3から制御に係る制御信号を移動体本体2へ出力し、入力部22にて制御信号を受け付けた移動体本体2が、制御信号に基づき制御部23を制御することにより行われる。即ち、計測装置3の制御部30は、制御信号を移動本体2へ出力することにより、移動本体2の制御部23に危険対応処理を実行させる。なお、第1領域の凹部が一定以上の幅を有すると判定したステップS404における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に移動体1を停止する制御が行われる。
そして、移動体1は、第1領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS403において、連続積算回数が除外値未満であると判定した場合(S403:NO)、制御部30は、反射対象が第1領域における危険領域Adの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、第1領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
ステップS401において、第1領域における危険領域Adの範囲内ではないと判定した場合(S401:NO)、制御部30は、第1領域が警戒領域Aaの範囲内であるか否かを判定する(S405)。
ステップS405において、第1領域における警戒領域Aaの範囲内であると判定した場合(S405:YES)、制御部30は、警戒領域Aaとなる凹部の幅を積算し(S406)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S407)。なお、連続して積算する凹部の幅は、危険領域Adの場合及び警戒領域Aaの場合で、個別に積算して算出してもよく、併せて積算して算出しても良い。個別に積算を行う場合、連続積算幅の初期化の時期は適宜設定することが可能である。即ち、深い凹部と浅い凹部が連続する場合、どのように判定するかを適宜設定することが可能である。また、除外値を共通の設定とすることも、異なる設定とすることも可能である。
ステップS407において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S407:YES)、反射対象が、第1領域における警戒領域Aaの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S408)。なお、警戒領域Aaと判定される凹部が一定以上の幅を有すると判定したステップS408における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に移動体1を減速し低速走行させる制御が行われる。
そして、移動体1は、第1領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS405において、第1領域における警戒領域Aaの範囲内ではないと判定した場合(S405:NO)、反射対象が第1領域における安全領域Asの範囲内に位置すると判断して、第1領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。このとき、ステップS402及びS406にて積算した凹部の連続積算幅は初期化される。
ステップS407において、連続して積算した凹部の幅が除外値未満であると判定した場合(S407:NO)、制御部30は、反射対象が第1領域における警戒領域Aaの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、第1領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
ステップS404及びS408では、報知及び制御の双方を実施する形態を示したが、いずれか一方を実施するようにしても良い。また、停止制御及び低速制御を行う際に、減速勾配の設定、段階的減速の設定等の設定を行い、設定通りに減速制御を行う等、適宜制御することができる。なお、危険対応処理にも更に細分化した領域を設け、危険度、即ち、連続積算幅にて規定される幅、反射対象までの距離等の基準に応じて適宜設定するようにしてもよい。
図19は、本発明に係る移動体1にて実行される第2領域凹部検知処理の一例を示すフローチャートである。図19を用いて示す第2領域凹部検知処理は、図17に示した状況検知処理のステップS303として実行される第2領域凹部検知処理に対応している。移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、取得した距離情報に基づいて、反射対象が第2領域における危険領域Adの範囲内であるか否かを判定する(S501)。
ステップS501において、第2領域における危険領域Adの範囲内であると判定した場合(S501:YES)、制御部30は、危険領域Adとなる凹部の幅を積算し(S502)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S503)。
ステップS503において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S503:YES)、反射対象が第2領域における危険領域Adの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S504)。ステップS504における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に移動体1を停止する制御が行われる。
そして、移動体1は、第2領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS503において、連続積算回数が除外値未満であると判定した場合(S503:NO)、制御部30は、反射対象が第2領域における危険領域Adの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、第2領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
ステップ501において、第2領域における危険領域Adの範囲内ではないと判定した場合(S501:NO)、制御部30は、反射対象が第2領域における警戒領域Aaの範囲内であるか否かを判定する(S505)。
ステップS505において、第2領域における警戒領域Aaの範囲内であると判定した場合(S505:YES)、制御部30は、警戒領域Aaとなる凹部の幅を積算し(S506)、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であるか否かを判定する(S507)。
ステップS507において、連続して積算した凹部の幅が除外値以上であると判定した場合(S507:YES)、反射対象が第2領域における警戒領域Aaの範囲内に位置すると判断し、制御部30は、危険対応処理を実行する(S508)。なお、警戒領域Aaと判定される凹部が一定以上の幅を有すると判定したステップS508における危険対応処理としては、危険状況を搭乗者に報知し、更に移動体1を減速し低速走行させる制御が行われる。
そして、移動体1は、第2領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。
ステップS505において、第2領域における警戒領域Aaの範囲内ではないと判定した場合(S505:NO)、反射対象が第2領域における安全領域Asの範囲内に位置すると判断して、第2領域凹部検知処理を終了し、状況検知処理の次のステップを実行する。このとき、ステップS502及びS506にて積算した凹部の連続積算幅は初期化される。
ステップS507において、連続して積算した凹部の幅が除外値未満であると判定した場合(S507:NO)、制御部30は、反射対象が第2領域における危険領域Adの範囲内に位置すると判断するが、危険対応処理は実行せずに、状況検知処理の次のステップを実行する。なお、危険対応処理を全く行わないのでは無く、注意灯の点灯等の軽微な処理だけとするようにしてもよい。
図20は、本発明に係る移動体1にて実行される障害物検知処理の一例を示すフローチャートである。図20を用いて示す障害物検知処理は、図17に示した状況検知処理のステップS304として実行される障害物検知処理に対応している。移動体1は、計測装置3の制御部30の制御により、取得した距離情報に基づいて、反射対象が障害物検知領域の範囲内であるか否かを判定する(S601)。ステップS601は、障害物検知領域として設定されている範囲内において、障害物となる反射対象が存在するか否かを判定する処理である。
ステップS601にて、反射対象が障害物検知領域の範囲内であると判定した場合(S601:YES)、制御部30は、危険対応処理を実行する(S602)。ステップS602における危険対応処理とは、移動体1の搭乗者に対する報知、移動体1の移動の制御等の処理である。搭乗者に対する報知とは、危険状況を示す警報音の鳴動、表示、音声出力等の各種処理である。移動体1の移動の制御とは、アクセル制御、最大速度制御、ブレーキ制御等の各種処理である。即ち、危険対応処理とは、危険状況を搭乗者に知らせ、更に移動体1の減速、停止等の制御を行う処理を示している。
ステップS601において、反射対象が障害物検知領域内ではないと判定した場合(S601:NO)、ステップS602の処理は実行されない。
このようにして、移動体1の障害物検知処理が実行され、状況検知処理の次のステップが実行される。
状態検知処理の第1領域凹部検知処理及び第2領域凹部検知処理並びに障害物検知処理において、危険対応処理を実行した場合、その危険対応処理を継続するように設定することも可能であり、また継続しないように設定することも可能である。また、継続するように設定した場合においては、その継続時間についても設定することも可能である。例えば、移動体1が、危険領域Adに位置すると判断して停止制御を行った場合、即ちブレーキによる制動を開始した場合、以降の検知結果に関わらず、制動を維持するように設定する。これにより、例えば、正面に溝があり、その溝を通り過ぎたとしても、再加速を行うのではなく、停止するまでその制御状態を維持することで安全性を高めることができる。
危険対応処理の状態を継続するように設定した場合、その状態の解除方法も適宜設定することが可能である。例えば、搭乗者が、後進(バック)を行う操作を行った場合に、危険対応処理の状態を解除するように設定する。移動体1が凹部の手前で停止した場合に、後進することができなければ、その後の操作が困難になる恐れがあるからである。なお、危険対応処理の状態の解除が必要な状況としては、移動体1が、段差の検出に基づく危険対応処理として停止し、動かなくなった状況、溝を通り過ぎて現在は溝を検知していないが事前の危険対応処理が継続されて停止状態を維持し続けている状況等の状況も考えられる。また、解除の方法としては、操舵を行った場合(ハンドルをきった場合)に、解除するように設定するようにしてもよい。さらに、一般的にシニアカーには、ハンドルにアクセルバーが設けられており、アクセルバーを強く握ると停止する機能を有することに鑑み、このようなシニアカーに適用する場合については、握られたアクセルバーを開放した後、更に握り直したとき、停止状態でアクセルバーを強く握ったとき等を契機として、危険対応処理の状態を解除するように設定することも可能である。さらに、搭乗者が任意のタイミングで解除できるように、解除スイッチを設ける等、適宜設定することが可能である。
図21は、本発明に係る移動体1にて実行される設定値切替処理の一例を示すフローチャートである。移動体1の移動に際し、障害物及び凹部に対して危険と判断する状況は、移動速度、操舵状況等の移動状況、及び加速操作、操舵操作等の移動のための操作の状況により異なる。設定値切替処理は、このような状況に応じて設定値を切り替える処理である。
移動体1が備える計測装置3の制御部30は、移動の状況又は移動のための操作の状況を検出し(S701)、検出した状況に応じて設定値を切り替える(S702)。移動体本体2は、状況検出部20により移動状況及び操作状況を検出し、検出した状況を示す情報を出力部21から計測装置3へ出力する。計測装置3の制御部30は、状況を示す情報の入力を受け付け、受け付けた情報にて示される状況に応じて設定値を切り替える。切替の対象となる設定値は、状況を示す情報に対応付けて記録部30aに記録されており、入力された情報に対応する設定値を選択することにより、設定値を切り替えることができる。なお、切替の対象となる設定値は、様々な設定値が個々に記録されていても良く、また、複数の設定値の組み合わせが設定パターンとして記録されていても良い。
設定値切替処理は、例えば、前述の状況検知処理と並行して実施される
以上、詳述したように本発明では、移動体1に、取付位置から下方を走査するように計測装置3を取り付ける。計測装置3は、下方の反射対象までの距離を計測すべく、取付位置近傍を頂点として下方へ広がる仮想的な円錐の円錐面又は円錐面の一部をなすように電磁波を走査し、反射対象までの距離を計測する。これにより、円状、楕円状、放物線状、双曲線状と様々な形状で走査し、移動体1の周囲の凹部を検知することが可能となる。従って、例えば、前方、側方及び後方を走査するように取り付けて周囲の凹部を検知することも可能であり、また、移動体が停止状態であっても、前方の凹部の長さを判定することが可能である等、目的に応じた様々な設定を行うことができる。
このように下方へ向けて仮想的な円錐の円錐面又は円錐面の一部をなすように電磁波を走査する本発明に係る計測装置1は、例えば、建造物に取り付けて、取付位置から下方を走査するライトカーテン等の実施形態に展開することも可能である。これにより、取付位置から下方に生じた様々な異常の検知、例えば、侵入者の発見等の異常検知を行うことが可能となる。
前記実施の形態は、本発明の無数に存在する実施例の一部を開示したに過ぎず、目的、用途、仕様、設定等の様々な要因を加味して適宜設計することが可能である。
例えば、前記実施の形態では、移動体1として、ハンドル型電動車椅子を例示したが、本発明に係る移動体1は、地上を移動する物体全般を示すものである。即ち、例示した物体の他、乗用ゴルフカート、ジョイスティック型電動車椅子、倒立振子型車両、自立走行型モビリティ(有人及び無人の双方を含む)等の搭乗可能な小型の車両、また、乗用車、二輪車等の一般的な車両、更には、パワーショベル、フォークリフト等の重機に適用することも可能である。また、手押し車等の移動支援に要する装置も移動体1として用いることが可能である。さらに、これらの地上を移動する地上移動体に限らず、海上を移動する船舶等の海上移動体、ビルの壁面を移動する壁面移動体等の様々な移動体に適用することが可能である。なお、例えば、壁面移動体のように水平面以外の垂直面等の面を移動する場合、前記実施の形態にて記載した下方とは、壁面方向等の接触面方向を示すことになる。
また、前記実施の形態では、計測装置3を移動体1の前部に取り付ける形態を示したが、本発明はこれに限らず、前部に加え又は前部に替えて、移動体1の後部、側部等の他の部位に取り付ける等、様々な形態に展開することが可能である。
また、前記実施の形態では、計測装置3が制御部30として使用可能な本発明に係る制御回路を備える形態を示したが、本発明はこれに限るものではない。即ち、移動体本体2が本発明に係る制御回路を備えていても良く、本発明に係る制御回路を備える制御装置を、計測装置3及び移動体本体2に取り付け可能となるように設計してもよい。さらには、計測装置3及び移動体本体2の双方に本発明に係る制御回路を組み込み、適宜処理を分担させるようにしてもよい等、様々な形態に展開することが可能である。