JP2016067711A - 移植用皮膚組織片の作製方法 - Google Patents

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鈴木 茂彦
Shigehiko Suzuki
茂彦 鈴木
尚樹 森本
Naoki Morimoto
尚樹 森本
山岡 哲二
Tetsuji Yamaoka
哲二 山岡
馬原 淳
Atsushi Umahara
淳 馬原
藤里 俊哉
Toshiya Fujisato
俊哉 藤里
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Abstract

【課題】加圧処理を用いた移植用皮膚組織片の作製において、表皮細胞または培養表皮の生着のための最適な条件を決定し、以って加圧処理による不活化皮膚に表皮細胞または培養表皮を移植・生着させることを含む新規の移植用皮膚組織片の作製方法、それにより得られる移植用皮膚組織片、および対象への移植・生着後に生着部位に表皮細胞または培養表皮を生着させるための該不活化皮膚の新規用途、等を提供すること。
【解決手段】哺乳動物より採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより作製された不活化された皮膚組織に、皮膚移植療法が所望される個体への移植前または移植後に表皮細胞または培養表皮を移植・生着させること。
【選択図】なし

Description

本発明は、移植用皮膚組織片の技術分野に関する。より詳細には、本発明は、加圧処理を用いて作製された不活化皮膚組織を使用する移植用皮膚組織片の作製方法、それにより得られる移植用皮膚組織片、およびその用途等に関する。
皮膚は表皮と真皮の二層から構成されている。表皮は、外界からの病原体の侵入を防ぎ、体内の水分を保つ役割がある。表皮の構造は表皮細胞が重層化した、ほぼ細胞成分のみから成り立っており、現在の細胞培養技術を用いれば再生可能である。真皮は主に膠原線維等の強靱な結合組織と線維芽細胞等の細胞成分、皮膚付属器(毛等)からなり、皮膚に力学的強度を持たせる、体の中で最大の臓器である。表皮はほぼ再生可能なのに対し、真皮を再生することは現在の技術では極めて困難である。
このため、皮膚欠損創に対する治療では、縫縮(縫い縮めること)できる程度の小さな創以外を治療するには、(1)自家皮膚・皮弁移植(自分の皮膚を他の部位から採取しまたは切り離さずに移植する)、(2)同種皮膚移植(死体から採取し凍結保存した皮膚を移植する)、(3)人工材料を用いた再建、の三つの治療法しかない。近年、自家皮膚移植および同種皮膚移植のために、自家または同種皮膚に含まれる細胞を除去した脱細胞化皮膚の研究開発が進められている。
生体組織から脱細胞化する方法では、高張液や低張液を用いる方法、酵素を用いる方法、凍結させる方法等が報告されているが、界面活性剤(SDS;Sodium Dodecyl Sulfate)を用いる方法がもっとも脱細胞効果が高いとされている(非特許文献1)。本発明者らは、ヒト皮膚組織(母斑組織、母斑:母斑細胞を含む皮膚)を用いて、まず表皮を酵素処理して分離し、その後に界面活性剤(SDS)や酵素(トリプシン)、高張食塩水(1N)等をもちいた方法で細胞を不活化できることを確認した。そして、剥離した表皮を不活化皮膚上に再移植して培養すると、トリプシン、1N食塩水で不活化した皮膚上には表皮が生着するが、SDSを用いて不活化した皮膚上には表皮が生着しないことを報告した(非特許文献2)。この結果、SDSによる不活化では組織に損傷があることが示唆されたため、本発明者らは、薬剤を用いない不活化方法として、超高圧法による皮膚の不活化、脱細胞化を検討した。超高圧法(冷間等方圧加圧処理)は、600MPa以上の超高圧法(冷間等方圧加圧処理)を利用し組織内の細胞を完全に破壊する脱細胞化技術であり、本方法を用いて既に心臓弁や大動脈、神経、角膜等多種類の組織で脱細胞化が行われ、動物実験で有効性が確認されている(特許文献1、非特許文献3、4)。本方法は、自家移植ではなく、同種移植を目的として開発を行ってきたため、同種移植の際に問題となる拒絶反応および感染症の伝播を防ぐことが可能な加圧条件、すなわち600MPa以上の非常な超高圧を設定している。本方法は細胞および細菌、ウィルス等も死滅させるが、細胞外マトリックスを損傷することのない、薬剤等を用いる従来の方法と比較して安全性が高い方法であるとされてきた。更に、本発明者らは、この超高圧法を皮膚に応用し、加圧条件を検討したところ、安価で小型の加圧装置を用いても達成できる200MPa程度の圧力でも不活化、脱細胞化が可能であることを見出した(特許文献2)。
特許第4092397号公報 WO2014/034759
Crapo PM et al., Biomaterials. 2011 Apr;32(12):3233-43 Liem PH et al., J. Artif. Organs. 2013 Sep;16(3):332-42 Hashimoto Y. et al., Biomaterials. 2010 May;31(14): 3941-8 Funamoto S. et al., Biomaterials. 2010 May;31(13):3590-5
従来技術の問題点として、薬剤を用いる不活化、脱細胞化方法は、その薬剤が持つ細胞毒性や処理過程で細胞外マトリックスが変性、損傷することが知られている。特に、脱細胞効果の高いSDSを用いた場合には、SDS自体に細胞毒性があること、SDSが組織に結合し正常細胞の接着を妨げること、SDSを除去することが非常に難しいこと、など組織再生の足場として用いるには非常に問題が多い。上述の通り、本発明者らも、SDSを用いて不活化した皮膚には表皮が接着しないことを明らかにした。
一方、超高圧法は、薬剤を用いず、圧力を用いるので1000MPaの圧力でも組織構造(マトリックス)の損傷はない、とされてきた。しかし、加圧処理を用いた組織の不活化、脱細胞化の条件は知られていたが、実際の現場で必要となる“生着の条件”については、全く知られていなかった。
更には、不活化した皮膚組織の生着性に関するこれまでの評価は、該組織を生体に戻した場合の生着性に限られている。即ち、不活化した皮膚組織に表皮細胞または培養表皮を移植して生着させる(不活化皮膚組織と細胞治療の併用)という観点での評価は行われていない。
本発明は、当該技術分野の上述の現状に鑑み為されたものであり、その目的は、加圧処理を用いた移植用皮膚組織片の作製において、表皮細胞または培養表皮の生着のための最適な条件を決定し、以って加圧処理による不活化皮膚に表皮細胞または培養表皮を移植・生着させることを含む新規の移植用皮膚組織片の作製方法、それにより得られる移植用皮膚組織片、および対象への移植・生着後に生着部位に表皮細胞または培養表皮を生着させるための該不活化皮膚の新規用途、等を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。従来、超高圧法を用いた不活化、脱細胞化方法では細胞は不活化されるが、組織の構造の損傷はないとされてきた。実際、後述の実施例に示すように、本発明者らがヒト正常皮膚に100、200および1000MPaで印加した直後の組織像を観察したところ、全ての印加群で表皮基底膜および血管内皮の基底膜が保たれており、つまり組織構造は保たれていることが確認された。しかしながら、上記の検体の中で表皮が剥がれ落ちた200および1000MPaで印加した組織片にヒト培養表皮を移植したところ、200MPaで印加した皮膚には培養表皮が生着したが、1000MPaで印加した皮膚には培養表皮は生着しないことを本発明者らは確認した。これらの結果から、超高圧法を用いて培養表皮の生着に適した不活化皮膚組織片を取得するためには、加圧の条件を厳密に管理する必要があることが示唆された。そこで本発明者らは生着に最適な条件を決定するためのより詳細な検討を行い、本発明を完成するに至った。
本発明は即ち、以下の通りである。
[1]移植用皮膚組織片の作製方法であって、該方法は、
哺乳動物由来の不活化された皮膚組織に表皮細胞または培養表皮を移植して生着させる工程を含み、
該不活化された皮膚組織が、哺乳動物より採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより作製されたものであり、かつ該培養表皮が、哺乳動物から採取された表皮を含む組織から表皮細胞を分離し、該分離された細胞を培養することにより得られたものである、前記方法。
[2]哺乳動物より採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより前記不活化された皮膚組織を作製する工程を更に含む、上記[1]に記載の方法。
[3]該培養表皮が、重層化した表皮細胞から構成されたシートである、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記水溶液が、緩衝液、培養液、および蒸留水のいずれかから選択される、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記不活化された皮膚組織が由来する哺乳動物および前記表皮細胞または培養表皮が由来する哺乳動物がいずれも、前記移植用皮膚組織片の移植が所望される個体である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記哺乳動物がヒトである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法により得られた移植用皮膚組織片。
[8]哺乳動物から採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより作成された皮膚組織片であって、該皮膚組織片を哺乳動物に移植して生着させ、該生着部位に、表皮細胞、または哺乳動物から採取された表皮を含む組織から表皮細胞を分離し、該分離された細胞を培養することにより得られた培養表皮を移植して生着させることを含む皮膚移植療法において使用するための、前記皮膚組織片。
[9]該培養表皮が、重層化した表皮細胞から構成されたシートである、上記[8]に記載の皮膚組織片。
[10]前記水溶液が、緩衝液、培養液、および蒸留水のいずれかから選択される、上記[8]または[9]に記載の皮膚組織片。
[11]前記不活化された皮膚組織が由来する哺乳動物および前記表皮細胞または培養表皮が由来する哺乳動物がいずれも、前記皮膚組織片の移植が所望される個体である、上記[8]〜[10]のいずれかに記載の皮膚組織片。
[12]前記哺乳動物がヒトである、上記[8]〜[11]のいずれかに記載の皮膚組織片。
本発明によれば、適切な条件での加圧処理により不活化された皮膚組織に表皮細胞または培養表皮を移植して生着させることを含む移植用皮膚組織片の作製方法、それにより得られる移植用皮膚組織片、および対象への移植・生着後に生着部位に表皮細胞または培養表皮を生着させるための該不活化皮膚組織の用途、等が提供される。
従って、例えば、皮膚腫瘍を含む皮膚に含まれる細胞を破壊(不活化)し、不活化皮膚組織に表皮細胞または培養表皮を移植して生着させることで、腫瘍細胞を含まない皮膚組織片を作製し、それを再移植することが可能となる。
本発明者らは、熱傷等の皮膚欠損患者や全身性の皮膚腫瘍患者(先天性巨大色素性母斑等)の治療を行うために皮膚再生の研究を行ってきた。皮膚、特に真皮を再生する場合、自家皮膚移植以外の方法、すなわち同種皮膚や人工材料を用いた方法では真皮が再建できない、というのが臨床現場の現状である。自家移植のためには感染症の伝播を考慮する必要がないので、本発明で用いられる圧力条件は、自家移植用の皮膚組織片を作製するために好適に用いることができる。
高圧による不活化技術はいままで臨床応用されていないが、本発明によって適切な条件で印加すれば組織損傷がなく、表皮細胞または培養表皮が生着する自家真皮の作成が可能であることが示された。皮膚に含まれる細胞を、組織構造を損傷することなく不活化し、それに表皮細胞または培養表皮を生着させ、それを再度患者に移植する治療方法、あるいは、不活化した皮膚を患者に移植し、その後生着した皮膚(真皮)上に表皮細胞または培養表皮を移植する治療方法はいままで報告されていない。この不活化組織を再移植する方法は、皮膚腫瘍治療において有効であると考えられる。特に現在有効な治療法がない全身性の皮膚腫瘍である先天性巨大色素性母斑の治療において、本治療法は根治的な画期的な治療法となると考えられ、多くの患者にとって福音となると予想している。
また、本発明によって明らかになった加圧条件は、病院手術室に設置可能な程度の小型で安価な加圧装置で実施可能である。つまり、医療分野において、いままでにない新規治療法およびこの治療法を行う医療機器が開発され、患者腫瘍組織の不活化および再建材料として再移植、という新しい概念の治療方法が展開されると予想している。病院で即時に実施可能な組織不活化治療法が開発できれば、本治療法が日本発の標準治療となり、また皮膚疾患以外の疾患の治療にも応用され、病変切除を基本とする外科治療の概念を変える画期的治療になると予想している。
ヒト皮膚を100,200,1000MPaで印加した組織を示す。上段はヘマトキシリンエオジン染色像、下段は抗タイプIVコラーゲン抗体を用いた免疫染色像である。 200, 1000MPaでの印加皮膚に培養表皮を移植し、2週間ヌードマウス皮下に埋入し取り出した組織のヘマトキシリンエオジン染色切片(上段)を示す。200MPa印加皮膚には培養表皮が生着したが、1000MPa印加皮膚には生着しなかった。蛍光染色された細胞を示す(下段)。200MPaでは形成された表皮が蛍光染色されているのがわかる。 ヒト母斑組織を印加し、培養表皮が生着するか検討した。印加は200、500、1000MPaで実施した。また、酵素処理(ディスパーゼ処理)を行い、印加せずに表皮を剥離させた検体も準備した。表皮が剥離したこれらの酵素処理、印加後の皮膚を組織培養用のシャーレに置き、それぞれの母斑上にヒト培養表皮を移植し、ヌードマウスの背部皮下に移植した。移植2週後に取り出した組織のヘマトキシリンエオジン染色組織を示す。200、500MPa印加した母斑には培養表皮が生着したが、1000MPa印加母斑には生着しなかった。また酵素処理した母斑にも培養表皮は生着しなかった。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明による移植用皮膚組織片の作製方法(以下、本発明の方法ということもある。)は、哺乳動物由来の不活化された皮膚組織に表皮細胞または培養表皮を移植して生着させる工程を含む。該不活化された皮膚組織は、哺乳動物より採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより作製されたものであり、かつ該培養表皮は、哺乳動物から採取された表皮を含む組織から表皮細胞を分離し、該分離された細胞を培養することにより得られたものである。本発明の方法はまた、哺乳動物より採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより不活化皮膚組織を作製する工程を更に含んでもよい。
該哺乳動物は特に制限されず、以下に限定されないが例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、サル、イヌ、ネコ、ヤギ等が挙げられ、好ましくはヒトである。また、自家移植を目的とする場合、該不活化された皮膚組織および該表皮細胞または培養表皮はいずれも、移植対象の個体に由来するものである。
該皮膚組織としては、一般的な手法、例えば、生検、インフォームドコンセントを得た患者から提供される皮膚組織等が挙げられるが、採取の手法はこれらに限定されない。該皮膚組織は、真皮の少なくとも一部を含み、更に表皮および皮膚付属器(毛包など)を含み得る。通常、該組織は皮下組織を含まない。該組織の大きさは、目的に応じて適宜変動させることができるが、通常10cm〜200cm程度である。皮膚の採取部位は特に限定されないが、例えば、移植を所望される部位、またはドナーにおいて傷が目立ちにくいという点から腹部、背部あるいは耳介後部、等が挙げられる。
皮膚組織を浸す水溶液としては、緩衝液、培養液、蒸留水等が含まれるがこれらに限定されない。緩衝液としては、例えば、生理食塩水、PBS緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液、Tris-HCl緩衝液等が挙げられるが、これらに限定されない。培養液としては、DMEM、MEM-α、RPMI1640、Eagle基礎培養液等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記皮膚組織に印加される高静水圧は、該組織中の細胞を不活化するのに十分で、かつ作製された組織片への表皮細胞または培養表皮の生着を可能にするものである。具体的には、該静水圧は、200〜500MPaの範囲内である。印加する静水圧が200MPaより低くなると、不活化が不十分となることがあり、一方、印加する静水圧が500MPaより高くなると、培養表皮の十分な生着が得られないことがある。加圧する温度は、4℃−50℃、より好ましくは、15℃−35℃である。
加圧する時間は、細胞を不活化することのできる時間であればよく、例えば、10分である。好ましくは、1分−60分、より好ましくは、10分−30分である。また、場合によっては、1時間−3時間も有り得る。
高静水圧を印加する方法は、従来公知の高圧装置を用いて直接もしくは間接的に加圧することにより行われる。高圧装置は、上記の本発明における高静水圧を印加できる装置であればよい。例えば、市販の冷間等方圧加圧装置(例:Dr. CHEF,(株)神戸製鋼所)、それらを改良した装置等が挙げられる。
上述の通り組織に高静水圧を印加することにより、該皮膚組織が不活化される。本明細書において、皮膚組織の「不活化」とは、該組織の構造を損傷することなくまたは損傷は最小限に抑え、該組織中の細胞の活性を全体として顕著に低減させることをいう。好ましくは、不活化は、該組織中の細胞の活性を完全にまたは実質的に完全に喪失させるものである。不活化は、細胞成分を破壊するものであってもよいし、破壊を伴わないものであってもよい。例えば、対象とする組織の細胞成分(細胞小器官、細胞質、および細胞膜)を破壊し、組織の構造を保持しかつ細胞の足場となる細胞外マトリクス(以下、ECMともいう。)(エラスチン、コラーゲン、ラミニン、フィブリリン等)は、保持することをいう。
不活化の程度は、細胞生存率、細胞活性、形態変化の観察、組織からの細胞培養、核染色、残存DNA量等を指標に測定することができる。これらは、一般的な方法で測定することができ、例えば市販のキット等を使用することができる。一例として、細胞の生存率をWST-8アッセイ(Cell Count Reagent SF)で測定することができる。また、ヘマトキシリンエオジン染色の核染色により脱核の確認を行うことができる。
不活化後の皮膚組織に表皮細胞または培養表皮を移植する際に、その目的に応じて、当業者は適宜適した培養液を調製することができる。該培養液は例えば、FBS(ウシ胎児血清)添加DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)培地を含み得る。さらに、必要に応じて、血清、血清代替物、各種アミノ酸、各種ビタミン、浸透圧調整剤、pH緩衝液、又は抗生物質等を培養液等に添加して、使用することができる。
上述の不活化後の皮膚組織を緩衝液等で洗浄して細胞成分を除去した後、そこに表皮細胞または培養表皮を移植することができる。洗浄用の緩衝液としては、生理食塩水、PBS緩衝液等の他に、石灰化の発生を抑制する等の目的で、リン酸イオンの含有量が2.0 mmol/L以下であり、クエン酸、EDTA、及び許容される塩からなる群から選択される化合物を含有する緩衝液(特開2010-227246号公報)を使用することもできるが、これらに限定されない。あるいは、細胞成分を除去することなく、不活化後の組織をそのまま表皮細胞または培養表皮の移植に供することもできる。代替的には、不活化後の皮膚組織を生体に移植し、その後生着した皮膚組織上に表皮細胞または培養表皮を移植することもできる。
移植に用いられる培養表皮は、表皮細胞(好ましくは、正常な表皮細胞)を含む限り特に限定されない。自家移植のためには、該表皮細胞は、組織片の移植対象とする個体に由来するものである。該培養表皮は、好ましくは、重層化した表皮細胞から構成されるシートである。表皮細胞のシートは、Rheinwald JG, Green H. Serial cultivation of strains of human epidermal keratinocytes: the formation of keratinizing colonies from single cells. Cell. 1975 Nov;6(3):331-43等の記載に従って、採取された表皮を含む皮膚組織から表皮細胞を分離し、分離された表皮細胞を3T3−J2細胞と共培養することにより作製することができる。あるいは、採取された表皮を含む皮膚組織からの該シートの作製は、特定の事業者やCPC等の外部の培養施設に委託することもできる。
不活化された組織への培養表皮の移植および生着は、該不活化組織を、上述したような培養液を含むシャーレ中におき、該組織上に培養表皮を配置して数時間から7日間培養することにより行うことができる。一方、不活化された組織への表皮細胞の移植および生着は、上述したような培養液中に懸濁した表皮細胞集団を該不活化組織に播種し、数時間から7日間培養することにより行うことができる。その場合、不活化組織1cmあたり通常10〜10個程度の表皮細胞を播種する。そのようにして得られた組織片を対象動物に移植することができ、該動物の真皮細胞や血管が該組織片に入り込むことにより、皮膚の再生が可能となる。あるいは、該不活化組織を対象動物に移植し、該動物の真皮細胞や血管が該組織片に入り込み、該組織が生着した後に表皮細胞または培養表皮を移植してそれらを生着させ皮膚の再生を行うこともできる。
より具体的には、皮膚腫瘍、先天性巨大色素性母斑等の患者から、皮膚を採取し、上述の方法で不活化することができる。さらに、不活化後の組織から上述の方法で移植片を調製し、それを該患者に自家移植することができる。
以下の実施例等により本発明をより具体的に説明するが、実施例等は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
1.異なる圧力条件を用いて不活化したヒト正常皮膚組織の観察
手術で余剰となったヒト正常皮膚(直径4mm)に0MPa、100MPa、200MPa、1000MPaで印加した。印加処理をするために、組織は生理食塩水を満たしたプラスティックバックへ封入した。その後、組織は超高圧印加処理装置(Dr. CHEF,(株)神戸製鋼所)のサンプルチャンバーへ投入し、66.7 MPa/minの速度で圧力を上昇させ、各圧力で10分間圧力を印加した。その後、常圧まで66.7 MPa/minの速度で圧力を減少させることで、印加した組織を得た。印加直後の組織像を図1に示す。200MPa以上の印加で不活化されることは既に公知である(上記特許文献2)。
ヘマトキシリンエオジン染色では、100MPa処理群では表皮が残っているのがわかる。しかし、200,1000 MPa印加群では表皮は剥がれていた。抗タイプIVコラーゲン抗体を用いた免疫染色を行い、表皮基底膜および真皮内の毛細血管の血管内皮の基底膜構造が保たれているか確認した。この結果、すべての印加群で表皮基底膜及び血管内皮の基底膜が保たれている、つまり組織構造は保たれていることを確認した。
2.不活化後の組織への培養表皮の移植と、得られた組織片のマウス皮下への移植実験
上記1.の検体のなかで、表皮が剥がれ落ちた組織、すなわち200,1000MPaで印加した皮膚を組織培養用のシャーレに置き、それぞれの皮膚上にヒト培養表皮(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製の表皮細胞シート、直径10mm)を移植した。ヒト培養表皮細胞には蛍光色素PKH26で細胞膜を染色したものを用いた。その後、ヌードマウスの背部皮下に移植した。2週間後に取り出した組織切片を図2に示す。この結果、200MPa印加した皮膚には培養表皮が生着したが、1000MPa印加皮膚には生着しなかった。
これは1000MPa印加皮膚にはなんらかの組織構造の損傷があり、培養表皮が生着しなかったものと考えられた。
3.不活化後のヒト母斑組織への培養表皮の移植と、得られた組織片のマウス皮下への移植実験
次にヒト母斑組織(一般には“ほくろ”、といわれる色素性母斑:母斑細胞を含む皮膚組織)を印加し、培養表皮が生着するか検討した。印加は200、500、1000MPaで実施し、すべての検体で表皮が剥離した。また表皮を剥離する目的で酵素処理(ディスパーゼ処理)を行い、印加せずに表皮を剥離させた検体も準備した。表皮が剥離したこれらの酵素処理または印加後の皮膚を組織培養用のシャーレに置き、それぞれの母斑上にヒト培養表皮を移植した。その後、ヌードマウスの背部皮下に移植した。移植2週後に取り出した組織のヘマトキシリンエオジン染色組織写真を図3に示す。この結果、200、500MPa印加した母斑には培養表皮が生着したが、1000MPa印加母斑には生着しなかった。また酵素処理した母斑にも培養表皮は生着しなかった。
これは1000MPaの印加では正常皮膚と同様になんらかの組織構造の損傷があること、酵素処理をした場合は残留した酵素が培養表皮の生着を妨げているものと考えられた。

Claims (12)

  1. 移植用皮膚組織片の作製方法であって、該方法は、
    哺乳動物由来の不活化された皮膚組織に表皮細胞または培養表皮を移植して生着させる工程を含み、
    該不活化された皮膚組織が、哺乳動物より採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより作製されたものであり、かつ該培養表皮が、哺乳動物から採取された表皮を含む組織から表皮細胞を分離し、該分離された細胞を培養することにより得られたものである、前記方法。
  2. 哺乳動物より採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより前記不活化された皮膚組織を作製する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 該培養表皮が、重層化した表皮細胞から構成されたシートである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記水溶液が、緩衝液、培養液、および蒸留水のいずれかから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記不活化された皮膚組織が由来する哺乳動物および前記表皮細胞または培養表皮が由来する哺乳動物がいずれも、前記移植用皮膚組織片の移植が所望される個体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記哺乳動物がヒトである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により得られた移植用皮膚組織片。
  8. 哺乳動物から採取された皮膚組織を水溶液に浸し、該組織に200〜500MPaの高静水圧を印加して該組織を不活化することにより作成された皮膚組織片であって、該皮膚組織片を哺乳動物に移植して生着させ、該生着部位に、表皮細胞、または哺乳動物から採取された表皮を含む組織から表皮細胞を分離し、該分離された細胞を培養することにより得られた培養表皮を移植して生着させることを含む皮膚移植療法において使用するための、前記皮膚組織片。
  9. 該培養表皮が、重層化した表皮細胞から構成されたシートである、請求項8に記載の皮膚組織片。
  10. 前記水溶液が、緩衝液、培養液、および蒸留水のいずれかから選択される、請求項8または9に記載の皮膚組織片。
  11. 前記不活化された皮膚組織が由来する哺乳動物および前記表皮細胞または培養表皮が由来する哺乳動物がいずれも、前記皮膚組織片の移植が所望される個体である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の皮膚組織片。
  12. 前記哺乳動物がヒトである、請求項8〜11のいずれか1項に記載の皮膚組織片。
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