JP2016066407A - 燃料電池の特性回復方法および燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化剤極電位を自然電位以上に上げることなく、燃料電池の特性を回復させる燃料電池の特性回復方法を提供する。【解決手段】燃料電池内の燃料極または酸化剤極の少なくとも一方の電極に、一酸化炭素および水分含有ガスを供給し、他方の電極に水素ガスを供給して(S4〜S6)、触媒金属表面の不純物を一酸化炭素で置換する。その後、一酸化炭素の供給を止めて一酸化炭素を供給した方の電極電位を酸化剤極自然電位を上限とする所定電位まで上昇(S9、S10)させることで、触媒金属表面に付着した一酸化炭素を酸化離脱する。【選択図】図3
Description
本発明は、燃料電池の特性回復方法および燃料電池システムに関する。
燃料電池を長期間運転することで、燃料電池スタック内の電極に不純物が蓄積して徐々に発電性能の低下が起こる。
従来、このような性能低下を引き起こす不純物を除去するための方法として、酸化剤極電位を自然電位より高い電位とすることで、触媒に吸着されている不純物を水と反応させて除去する技術がある(特許文献1)。
しかしながら、酸化剤極電位を自然電位以上に上げた場合、触媒金属が溶出したり、担体が腐食したりして、触媒そのものが劣化するおそれのあることがわかってきた。
そこで本発明の目的は、電極電位を自然電位以上に上げることなく、燃料電池の特性を回復させることができる燃料電池の特性回復方法およびそのシステムを提供することである。
上記目的を達成するための本発明の燃料電池の特性回復方法は、まず、燃料電池内への酸素の供給を遮断する。そのうえで、燃料極または酸化剤極のうち一方の電極側に、一酸化炭素ガスおよび水分含有ガスを供給し、他方の電極側に水素ガスを供給する(段階(a))。その後、一酸化炭素ガスの供給を止めて、一酸化炭素ガスを供給した方の電極の電位を、酸化剤極自然電位を上限とした所定電位にまで上昇させる(段階(b))。
また、上記目的を達成するための本発明の燃料電池システムは、燃料電池内への酸素の供給および遮断を制御する酸素供給弁と、燃料電池内の燃料極または酸化剤極のうち、一方の電極側へ一酸化炭素ガスを供給する一酸化炭素ガス供給源と、一酸化炭素ガスを供給した電極へ、水分含有ガスを供給する水分含有ガス供給源と、一酸化炭素ガスを供給した電極の電位を上げるための電源と、制御部とを備える。そして制御部は、一酸化炭素とともに水分含有ガスを供給し、その後、一酸化炭素の供給を止めて、一酸化炭素ガスを供給した電極の電位を、酸化剤極自然電位を上限とした所定電位にまで上昇するように制御する。
本発明によれば、酸素供給を遮断したうえで、一酸化炭素ガスを供給することで電極の触媒金属表面に付着している不純物を一酸化炭素により置換する。このとき触媒金属表面に付着している不純物が除去される。その後一酸化炭素ガスを止めて、電極の電位を自然電位を上限とした所定電位にまで上昇させる。これにより触媒金属表面に付着させた一酸化炭素を酸化離脱させる。このように本発明では、自然電位以上の電位に上げる必要がないので触媒を劣化させることなく、触媒金属に付着した不純物を除去して、燃料電池の特性を回復させることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面において同一の機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面はあくまでも本発明の実施形態を説明するためのものであるので、各部材の寸法や比率は説明の都合上誇張または簡略化しており、実際の寸法や比率とは異なる。
図1は、本発明を適用した実施形態の燃料電池システムの構成を示す説明図である。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック101を有する。この燃料電池システム100は、たとえば車両を駆動するモーターの電源として車両に搭載して使用される。このため、この燃料電池システム100は、ECU(Engine Control Unit)200によって各部の制御が行われる。なお図1においては、ECU200から各部への信号線は図示省略した。
燃料電池スタック101の構造は周知のものであるので、ここでは概略を説明する。図2は、燃料電池スタック101内部の発電セルの一例を示す断面図である。
燃料電池スタック101は複数の発電セルからなる。一つの発電セルは、図2に示すように、積層構造である。発電セルは、中心に高分子電解質膜500を配置している。高分子電解質膜500の一方側には、燃料極側触媒層521、燃料極側ガス拡散層522、燃料極側セパレータ523が積層されている。燃料極側ガス拡散層522と燃料極側セパレータ523の間には、複数の燃料ガス供給溝524を備えている。高分子電解質膜500の他方側には、酸化剤極側触媒層531、酸化剤極側ガス拡散層532、酸化剤極側セパレータ533が積層されている。酸化剤極側ガス拡散層532と酸化剤極側セパレータ533の間には、複数の酸化剤ガス供給溝534を備えている。燃料電池スタック101は、このような発電セルが複数積層されて構成されている。
燃料ガスは、燃料ガス供給溝524を通じて燃料極側ガス拡散層522を介し、燃料極側触媒層521に供給される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給溝534を通じて酸化剤極側ガス拡散層532を介し、酸素極側触媒層531に供給される。
なお、図示しないが、高分子電解質膜500と燃料極側セパレータ523の間の外周部、および高分子電解質膜500と酸化剤極側セパレータ533の間の外周部には、それぞれエッジシール部材が設けられている。エッジシール部材は燃料電池スタック101からのガスの漏洩を防止する。エッジシール部材は、たとえばガスケット、ガスシールなどである。
燃料電池スタック101は、燃料極(具体的には燃料ガス供給溝524)に供給された燃料ガスと、酸化剤極(具体的には酸化剤ガス供給溝534)に供給された酸化剤ガスを電気化学的に反応させて電力を発生する。燃料ガスはたとえば水素、酸化剤ガスはたとえば酸素を含む空気である。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック101に水素を供給する水素供給配管102と、燃料電池スタック101に空気を供給する空気供給配管103(酸化剤供給配管)を備えている。
水素は、たとえば高圧水素タンク104から水素供給配管102を介して燃料電池スタック101内の燃料極に供給される。高圧水素タンク104は燃料供給源である。水素供給配管102には、高圧水素タンク104の下流に水素供給弁105が設けられている。水素供給弁105が開になると、高圧水素タンク104からの高圧の水素ガスがその下流に設けられた水素調圧弁106によって減圧されて、燃料電池スタック101に供給される。なお、高圧水素タンク104から供給される高圧の水素ガスの圧力を下げるためにさらに減圧弁(図示せず)を設けてもよい。
水素供給弁105は、燃料電池スタック101への水素供給の必要性に応じて、ECU200によってその開閉状態が制御される。水素調圧弁106は、燃料電池スタック101へ供給される水素圧力が所望の値となるように、ECU200によってその開度が制御される。燃料電池スタック101の燃料極側から排出されるガスは、排出配管107から排出される。排出配管107には、排出弁108が設けられている。排出弁108はECU200によって制御される。
空気は、空気供給配管103に接続されているコンプレッサー110によって取り込まれる。取り込まれた空気(大気)はコンプレッサー110によって加圧される。加圧空気は、空気供給配管103を介して燃料電池スタック101内の酸化剤極に供給される。空気供給配管103の経路上には空気供給弁111が設けられている。空気供給弁111は空気を取り入れるときに開となる。空気供給弁111はECU200によって制御される。
燃料電池スタック101の酸化剤極側から排出されるガス(酸素の一部が消費された空気および反応生成物である水)は、空気出口配管113を介して外部(大気中)に排出される。この空気出口配管113には、空気出口弁114と空気調圧弁115が設けられている。空気調圧弁115は、燃料電池スタック101に供給される空気圧力と空気流量とが所望の値となるように、その開度が調整される。これにより燃料電池スタック101内部の圧力を所定の圧力となるようにしている。空気調圧弁115はECU200によって制御される。またECU200は、空気圧力と空気流量の調整のために、コンプレッサー110の駆動量(回転数)も制御している。
空気供給配管103のコンプレッサー110の下流、かつ燃料電池スタック101の上流には、供給される空気を加湿するための加湿器112が設けられている。燃料電池システム100は車両に搭載されるため、加湿器112も小型であることが要求される。加湿器112は空気供給配管103と空気出口配管113とに接続されている。これにより加湿器112は、空気出口配管113から水分を取り込み、空気供給配管103へ放出することで空気を加湿している。このため別途水タンクを搭載する必要がないので、小型化できる。加湿器112は空気供給配管103へ放出する水分量を制御することで加湿量を制御している。加湿器112はECU200によって制御される。
燃料電池スタック101には、水分含有ガスを外部から取り入れるための水分含有ガス供給配管121が設けられている。水分含有ガス供給配管121の経路上には水分含有ガス供給弁122が設けられている。水分含有ガス供給弁122は水分含有ガスを取り入れる際に開となる(通常の運転時は閉)。水分含有ガス供給配管121は、空気供給配管103に接続されている。水分含有ガス供給配管121は、空気供給配管103上の空気供給弁111の下流、かつ燃料電池スタック101の上流に設けられている。水分含有ガス供給配管121には継手124が設けられている。水分含有ガス供給配管121には、継手124を介して水分含有ガス供給源123が接続される。水分含有ガス供給源123はたとえば水蒸気発生器または水噴霧器などである。水蒸気発生器を取り付けた場合には、水蒸気が水分含有ガスとして供給される。水噴霧器を取り付けた場合はさらにキャリアガスとして不活性ガス(たとえば窒素ガス)を使用して霧状の水を直接供給することになる。図においては、水分含有ガス供給源123を水分含有ガス供給配管121に接続した状態、すなわち特性回復処理を行い得る状態を示した。しかし通常の運転時には水分含有ガス供給源123は接続されていない。
燃料電池スタック101には、一酸化炭素ガスを取り入れるための一酸化炭素ガス供給配管131が設けられている。一酸化炭素ガス供給配管131の経路上には一酸化炭素ガス供給弁132が設けられている。一酸化炭素ガス供給弁132は、一酸化炭素ガスを取り入れる際に開となる(通常の運転時は閉)。一酸化炭素ガス供給配管131は、空気供給配管103上の空気供給弁111の下流、かつ燃料電池スタック101の上流に設けられている。一酸化炭素ガス供給配管131には継手134が設けられている。一酸化炭素ガス供給配管131には、継手134を介して一酸化炭素ガス供給源133が接続される。一酸化炭素ガス供給源133としては、たとえば、一酸化炭素を不活性ガスや窒素ガス中に混合したガスボンベなどを使用する。図においては、一酸化炭素ガス供給源133を一酸化炭素ガス供給配管131に接続した状態、すなわち特性回復処理を行い得る状態を示した。通常の運転時には一酸化炭素ガス供給源133は接続されていない。
燃料電池スタック101には、燃料極および酸化剤極に接続された電極端子161および162が設けられている。電極端子161および162は、通常の運転時には負荷が接続される。
特性回復の際には、電極端子161および162に負荷は接続しない。電極端子161および162には、外部電源160とともに、外部電源160からの電力の供給を制御するための電力コントローラー165が接続される。電力コントローラー165は、電極端子161および162の間の電圧を測定するために電圧計168を備えている。電力コントローラー165は、電圧計168の電圧を監視しながら、燃料極と酸化剤極の両電極間に印加する電圧を制御する。電力コントローラー165はECU200によって制御される。なお、図においては、外部電源160および電力コントローラー165が電極端子161および162に接続されている状態を示しているが、通常の運転時には外部電源160および電力コントローラー165は接続されていない。ただし、自動車のシステムとして二次電池を搭載している場合には、その二次電池を特性回復時に用いる外部電源として使用することもできる。
次にこの燃料電池システム100における特性回復処理について説明する。
図3は、特性回復処理の手順を示すフローチャートである。特性回復の処理はECU200によって制御される。
ECU200は、特性回復処理が必要か否かを診断する(S1)。この判断は、たとえば、(1)セル電圧が所定電圧より小さい場合、(2)セル電圧低下割合が所定割合より大きい場合、(3)積算運転時間が所定時間を超えた場合、などである。これらいずれか一つの条件を満たした場合に特性回復処理を行うようにする。
上記(1)セル電圧が所定電圧より小さい場合とは、たとえば、燃料電池スタック101を構成する単セル当たりに換算したセル電圧値が、所定電圧を下回った場合である。この所定電圧はあらかじめ燃料電池スタック101ごとに決めておく必要があるが、仕様が同じ燃料電池スタック101であれば同じ電圧でもよい。所定電圧はECU200に記憶しておく。セル電圧が所定電圧より小さいか否かの判断は電極端子161および162間の電圧、すなわち燃料電池スタック101の燃料極と酸化剤極の無負荷(開放)時の電圧を計測することにより行われる。
上記(2)セル電圧低下割合が所定割合より大きい場合とは、燃料電池スタック101を構成する単セル当たりに換算した発電性能低下割合が、所定割合を上回った場合である。この所定割合は、触媒層や電解質膜の構成部材の材質など燃料電池スタック101の特性を考慮して、実験的に決定された値であることが望ましい。
上記(3)燃料電池スタック101の積算運転時間が所定時間を上回った場合において、所定時間とは、これまでの実験や経験などにより、燃料電池スタック101内部に不純物が蓄積して性能低下を招くような経過時間である。この所定時間は、たとえば定期点検の周期(定期点検1回ごと、2回、3回…ごとなど)に合わせてもよい。所定時間に代えて、自動車の走行距離が所定距離に到達するごとに回復処理を行うようにしてもよい。
なお、上記(1)〜(3)は、すべてを使用する必要はなく、いずれか一つだけでもよいし、適宜組み合わせて特性回復処理の必要性を判断してもよい。
ECU200は、ステップS1の判断の結果、特性回復が不要であれば(S1:NO)、処理を終了する。このとき、たとえば車両内の表示装置や外部の表示装置などにその旨をECU200から表示するようにしてもよい。
一方、ECU200は、ステップS1の判断の結果、特性回復が必要であれば(S1:YES)、続いて燃料電池の発電動作を停止するために、水素供給弁105、空気供給弁111を閉じる。またコンプレッサー110も停止する(S2:発電停止)。そして発電動作が停止しているか否か判断する(S3)。発電動作が停止していなければ(S3:NO)、発電動作が停止するまで待つことになる。
発電動作が停止したなら(S3:YES)、続いてECU200は、作業者が行う特性回復のための準備終了を待つ(S4)。発電停止確認後、準備を促すための表示を車両内の表示装置や外部の表示装置などECU200から表示するようにしてもよい。作業者は、発電停止後、特性回復のための準備として、一酸化炭素ガス供給配管131に一酸化炭素ガス供給源133を接続し、水分含有ガス供給配管121に水分含有ガス供給源123を接続する。この段階では一酸化炭素ガス供給弁132および水分含有ガス供給弁122は閉じておく。また、作業者は電極端子161および162に外部電源160および電力コントローラー165を接続する。この段階では外部電源160からの電力供給はオフとしておく。
なお、ステップS1〜S4までの処理を準備作業として作業者が行うようにしてもよい。この場合、準備が整ったことを作業者が判断して、ステップS5以降の処理をECU200に実行させることになる。したがって、この場合は、ECU200が特性回復処理としてS5以降の処理を実行するようにプログラムされていればよい。
準備が整ったなら(S4:YES)、続いてECU200は、セル温度を一酸化炭素が触媒金属表面へ飽和吸着させることができる温度範囲に制御する(S5)。この温度範囲はたとえば5〜60℃である。セル温度の制御は、燃料電池スタック101の温度を測定して、測定された温度が一酸化炭素を触媒層へ飽和吸着させることができる温度範囲か否かを判断する。もしこの温度範囲を超える場合には、温度が低下するまで待つことになる。一方、この温度範囲未満の場合は、別途ヒーターで加熱するか、または燃料電池による発電を行って温度を上げる。なお、温度の測定は燃料電池スタック101取り付けられていて、ECU200に接続されている温度センサー(不図示)により行う。
一酸化炭素を触媒層へ飽和吸着させることができる温度範囲は上記のとおり、燃料電池を運転することのできる温度範囲である。したがって、燃料電池が運転可能な状態の温度であれば、特別な温度制御を行わなくてもよい。
続いてECU200は、一酸化炭素ガス供給弁132および水分含有ガス供給弁122を開いて酸化剤極へ一酸化炭素ガスと水分含有ガスを供給するとともに、水素供給弁105も開いて燃料極へ水素ガスを供給する(S4)。このときECU200は空気供給弁111を閉じ、空気出口弁114を開く。また、排出弁108も開く。
一酸化炭素ガス供給弁132を開けることで、一酸化炭素ガスが酸化剤極へ供給される。空気出口配管113の出口には一酸化炭素回収装置を設けておくことが好ましい。これは、特性回復処理において未使用の一酸化炭素ガスを回収するためである。また、空気出口配管113の出口から空気供給配管103へ至る循環経路を設けて一酸化炭素ガスを循環させるようにしてもよい。
水分含有ガス供給弁122を開けることで、水分含有ガスが酸化剤極へ供給される。酸化剤極へ供給する水分量は、通常の発電時よりも高く、配管が水詰まりしない程度であればよい。燃料電池スタック101の酸化剤極に供給される水分は、触媒に一酸化炭素を吸着させた際に外れた不純物を洗い流す役割がある。また、酸化剤極に供給される水分は、触媒に付着させた一酸化炭素を酸化するために用いる(これらの詳細は後述する)。
水素供給弁105を開けることで、水素ガスが燃料極へ供給される。これにより、燃料極は、疑似的に可逆水素電極(RHE)として作用することになる。これにより燃料極の電位は0V(vs.RHE)ということになる。水素ガスの流量は、燃料極内が水素ガスで満たされていれば、疑似的な可逆水素電極として作用するので、通常の発電時より少ない量でよい。なお、排出弁108は開けておくことになる。このため排出配管107には、水素を回収するための装置を設けておくことが好ましい。
このように特性回復処理の際には、水素ガスを燃料極へ供給するが、空気供給弁111は閉じて酸化剤極側への空気(すなわち酸素)の供給は遮断している。このため燃料電池スタック101内において水素と酸素の反応は行われない。なお、空気供給弁111は、酸素の供給および遮断を制御する酸素供給弁ということになる。
続いてECU200は、電力コントローラー165により燃料極−酸化剤極間に微弱な電圧を印加する(S7)。この処理は一酸化炭素が触媒に飽和吸着するまでの時間(第1所定時間)保持する(S8)。飽和吸着するまでにかかる時間は、燃料電池スタック101の大きさやセルの構造などにより違う。このためあらかじめ実験などにより飽和吸着に要する時間を求めておく。この第1所定時間はECU200内に記憶しておく。第1所定時間の間、一酸化炭素ガス、水分含有ガス、および水素ガスは供給し続ける。
第1所定時間の間に印加する微弱な電圧は、たとえば燃料極−酸化剤極間に0.05V程度(酸化剤極側が+)の電圧である。これにより酸化剤極の電位を0.05V(vs.RHE)にすることができる。
触媒金属への一酸化炭素の吸着は、電圧を印加しなくても起こる反応である。本実施形態では、触媒金属表面に不純物が吸着していることを想定している。このため、不純物があっても、一酸化炭素が吸着し易いように微弱な電圧を印加している。印加する電圧は0.1V未満の極弱い電圧で十分である。
しかし、この段階での電圧印加はなくてもよい。これは、上記のとおり、そもそも触媒金属表面への一酸化炭素の吸着は電圧を印加しなくても起こる反応だからである。その場合、触媒金属に付着している不純物の影響を考慮して、第1保持時間を長くしたり、一酸化炭素ガスの供給量を多くして燃料電池スタック内の圧力を上げたりするなどして、触媒金属へ一酸化炭素を飽和吸着させるようにする。
ステップS7およびS8の処理によって、触媒金属の表面に付着していた不純物が、一酸化炭素によって置換されて取り除かれる。これは一酸化炭素の触媒金属への吸着力が他の物質と比較して非常に強いために起こる。つまり一酸化炭素が触媒金属の表面に付着すると同時にそれまで付着していた不純物が取り除かれるのである。このとき不純物は水分含有ガスにより触媒金属の表面から洗い流される。ちなみにこの反応は下記化学式(1)のとおりである。ここでは触媒金属としてプラチナ(Pt)を想定した。
Pt−不純物+CO→Pt−CO+不純物 …(1)
続いて、ECU200は、ステップS8において第1所定時間が経過したと判断したなら(S8:YES)、一酸化炭素の供給を止めて、触媒金属に付着した一酸化炭素を酸化離脱するために燃料極−酸化剤極間に電圧(酸化剤極が+)を印加して上昇させる(S9)。このときの上限電圧は燃料電池スタック101固有の実動作における開回路電圧(OCV)以下の所定電圧とする。燃料電池のOCVは、理論的には1.23Vであるが、実際には分極や内部抵抗などの影響で0.9〜1.02V程度である。
続いて、ECU200は、ステップS8において第1所定時間が経過したと判断したなら(S8:YES)、一酸化炭素の供給を止めて、触媒金属に付着した一酸化炭素を酸化離脱するために燃料極−酸化剤極間に電圧(酸化剤極が+)を印加して上昇させる(S9)。このときの上限電圧は燃料電池スタック101固有の実動作における開回路電圧(OCV)以下の所定電圧とする。燃料電池のOCVは、理論的には1.23Vであるが、実際には分極や内部抵抗などの影響で0.9〜1.02V程度である。
本実施形態では、ここで印加する電圧は、実動作のOCVを超えないようにする。印加する電圧を実動作のOCVより低くすることで触媒金属の溶出を防止することができる。ここで、自然電位とOCVの関係を説明する。OCVは二極間の電圧として測定される値である。一方、自然電位は、一方の電極において酸化剤が存在することによって生じる可逆水素電極(RHE)を基準とした電位である。燃料電池に対する実際の操作として燃料極と酸化剤極の間にOCV以下の電圧を加えることは、すなわち酸化剤極電位を可逆水素電極(RHE)を基準とした自然電位以下の電位にすることになるのである。
このステップS8では、燃料極−酸化剤極間の電圧を0.1から0.9Vの間で徐々に高くすることとした。すなわち上限電圧を0.9Vとしたのである。上限電圧を0.9Vとした理由は後述する。この電圧の印加によって、酸化剤極の電位を上限0.9V(vs.RHE)まで上昇させることになる。
この処理により、触媒金属に付着させた一酸化炭素を酸化させて(すなわち二酸化炭素にして)、触媒金属から除去することができる。
なお、この電圧印加時の開始電圧は、0V(すなわち0V(vs.RHE))からでもよいし、ステップS6において印加した電圧(たとえば0.05V(すなわち0.05V(vs.RHE)))からでもよい。電圧の印加は徐々に電圧を上昇させる走査印加とした。走査印加に代えて段階的に印加してもよい。
触媒金属表面における一酸化炭素の酸化反応(COの酸化脱離)と、そのときの電位と電流を説明する。
触媒金属表面における一酸化炭素の酸化脱離の反応は下記化学式(2)のとおりである。式(2)は触媒金属としてプラチナ(Pt)を想定したが、その他の合金触媒でも同様である。
Pt−CO+H2O→Pt+CO2+2H++2e− …(2)
図4は、触媒金属表面における一酸化炭素の酸化脱離時の電位、電流を示したグラフである。
図4は、触媒金属表面における一酸化炭素の酸化脱離時の電位、電流を示したグラフである。
触媒金属表面における一酸化炭素の酸化脱離は、Pt/C触媒、PtCo/C触媒のそれぞれについて、COを吸着させた後、COを酸化して離脱させた。
各触媒へのCOの吸着条件は、0.05V、30分により行った。酸化離脱は、0.1M過塩素酸中において、可逆水素電極(RHE)に対して0.05〜1.0Vの電位範囲で、20mV/sの走査速度でサイクリックボルタンメトリーを行った。電流値は、電位走査中に流れた電流値である。
ここで使用したPtCo/C触媒は下記のようにして調整したものである。
(PtCo/C触媒の調整)
ビーカーに入れた1000ml超純水に、0.105Mの塩化コバルト(CoCl2・6H2O)水溶液 7.3mL(Co量で45mg)、1.32Mの塩化白金酸水溶液 0.12mL(白金量で30.7mg)を投入した。これを、室温(25℃)で5分間、スターラーで撹拌・混合して、混合液を調製した。
ビーカーに入れた1000ml超純水に、0.105Mの塩化コバルト(CoCl2・6H2O)水溶液 7.3mL(Co量で45mg)、1.32Mの塩化白金酸水溶液 0.12mL(白金量で30.7mg)を投入した。これを、室温(25℃)で5分間、スターラーで撹拌・混合して、混合液を調製した。
別途、クエン酸三ナトリウム二水和物0.4g、水素化ホウ素ナトリウム 0.15gを超純水100mLに溶解して、還元剤溶液を調製した。
上記で得られた混合液に、上記で調製した還元剤溶液 100mLを投入し、室温(25℃)で30分間、スターラーで撹拌・混合し、還元析出させて、触媒前駆粒子(Pt−Co混合粒子)を含む溶液を得た。次に、この溶液に、酸処理カーボン担体A 0.2gを含む担体懸濁液Aを添加して、室温(25℃)で48時間、スターラーで撹拌・混合し、触媒前駆粒子を担体に担持した。その後、この触媒前駆粒子担持担体をろ過した後、超純水で洗浄した。上記ろ過・洗浄操作を計3回繰り返した後、ろ過を行い、触媒粒子担持担体を得た。この触媒粒子担持担体を60℃で12時間乾燥させた後、100体積%の水素ガス雰囲気下で、600℃で120分間、熱処理工程を実施した。これにより、PtCo/C触媒を得た。また、PtCo/C触媒の触媒粒子の担持濃度(担持量)は、担体に対して、14.3重量%(Pt:11.8重量%、Co:2.5重量%であった。
図4を参照して触媒金属表面における一酸化炭素の酸化脱離を説明する。一酸化炭素が吸着したプラチナ触媒(Pt/C)は、0.8V(vs.RHE)付近に電流のピークがある。そして0.86V(vs.RHE)付近の電位でこの山がなくなっている。またプラチナとコバルトの合金触媒(PtCo/C)は、0.75V(vs.RHE)付近に電流のピークがある。そして0.83V(vs.RHE)付近の電位でこの山がなくなっている。このような電流は、触媒金属に吸着している一酸化炭素が酸化される際に流れた電流である。このため、この図4からプラチナ触媒(Pt/C)では、0.7V(vs.RHE)未満の部分では一酸化炭素が酸化されず、0.86V(vs.RHE)を超えた部分では、一酸化炭素がすべて酸化されたことがわかる。同様に、プラチナとコバルトの合金触媒(PtCo/C)は、0.65V(vs.RHE)未満の部分では一酸化炭素が酸化されず、0.83V(vs.RHE)を超えた部分では、一酸化炭素がすべて酸化されたことがわかる。
したがって、一酸化炭素を酸化離脱させるためには、図4から、プラチナ触媒(Pt/C)は、0.7V〜0.86V(vs.RHE)の電位を与えればよいことがわかる。またプラチナとコバルトの合金触媒(PtCo/C)は、0.65V(vs.RHE)〜0.83V(vs.RHE)の電位を与えればよいことがわかる。
このことから本実施形態では、触媒金属に吸着させた一酸化炭素を確実に除去するために、酸化剤極の電位を、Pt/Cの場合の0.86V(vs.RHE)やPtCo/Cの場合の0.83V(vs.RHE)などよりもより高い0.9V(vs.RHE)を所定電位としたのである。
所定電位は、触媒金属に吸着させた一酸化炭素を二酸化炭素に酸化されるために必要な電位であればよい。図4からは酸化剤極の電位を、Pt/Cの場合は0.7V(vs.RHE)以上、PtCo/Cの場合は0.65V(vs.RHE)以上にすれば、一酸化炭素の酸化が起こることがわかる。したがって一酸化炭素を酸化離脱させるために必要な電位の下限は、使用している触媒金属がPt/CやPtCo/Cの場合は、0.7V(vs.RHE)以上にすればよいことになる。
電位が低いと、一酸化炭素の酸化離脱に時間がかかるので、回復処理を確実にかつ迅速に行うためには、Pt/CやPtCo/Cの場合は、所定電位を0.9V(vs.RHE)とすることがもっとも好ましい。なお、この所定電位は、それぞれの触媒金属の種類に応じて厳密に設定してもよい。つまり、Pt/Cの場合は0.7V(vs.RHE)以上、0.86V(vs.RHE)以下の値、PtCo/Cの場合は0.83V(vs.RHE)以上0.83V(vs.RHE)以下の値とするなどである。もちろんここで示した金属(プラチナやプラチナとコバルトの合金)以外の合金触媒の場合も同様であり、自然電位を上限とする、一酸化炭素を離脱させることのできる電位に設定すればよい。
実際の操作においては、すでに説明したように、燃料極へ水素ガスを供給しているため、燃料極が疑似的に可逆水素電極となっている。このため燃料極の電位を0V(vs.RHE)とみなして、燃料極と酸化剤極の間に0.9Vを上限とする電圧(酸化剤極が+)を印加する。これにより酸化剤極の電位を0.9V(vs.RHE)を上限とする所定電位にまで上昇させることができる。
この電圧の印加開始から印加終了までを第2所定時間として、この間電圧が所定電圧に到達している場合はその電圧を保持する(S10)。これは、一酸化炭素を完全に酸化して除去するためである。第2所定時間は、燃料電池スタック101の大きさや構造などによっても異なる。このためあらかじめ実験などにより、一酸化炭素を完全に酸化離脱させるために必要な時間を求めておく。これを第2所定時間としてECU200に記憶しておく。
図3の手順に戻り説明する。
ステップS9の後、ECU200は第2所定時間経過したと判断したなら(S10:YES)、水分含有ガス供給弁122および水素供給弁105を閉じる(S11)。なお、運転時間を積算している場合は、この段階で積算運転時間をゼロリセットする。これは実際に回復処理が行われて終了した時点を運転時間ゼロとするためである。
続いてECU200は、ステップS1へ戻り、特性回復の処理が必要か否かを診断する(S1)。回復処理によって特性が回復していればステップS1ではいずれの場合も良好なものとなるので処理は終了する。
本実施形態においては、一酸化炭素ガスおよび水分含有ガスは、酸化剤極側に供給した。酸化剤極は、外気を取り入れているため汚染(被毒)されやすい。そこで、本実施形態では、酸化剤極の触媒金属に付着した不純物を取り除いて特性回復を図ったものである。
しかし、本発明は、このような酸化剤極の特性回復に限定されない。燃料極側の触媒金属が汚染(被毒)された場合にもその特性を回復することができる。
図5は、燃料極側の特性回復を行うための他の燃料電池システムの構成を説明するブロック図である。なお、図5においては図1に示した部材と同様機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
燃料極側の特性回復を行うための構成は、図示するように、燃料極につながっている水素供給配管102に、水分含有ガス供給弁122および水分含有ガス供給源123と、一酸化炭素ガス供給弁132および一酸化炭素ガス供給源133を接続する。また酸化剤極につながっている空気供給配管103に、高圧水素タンク104、水素供給弁105、水素調圧弁106を接続する。なお、これらを接続するための継手は図示省略した。
これにより燃料極に一酸化炭素ガスと水分含有ガスを供給し、酸化剤極に水素ガスを供給することができる。
燃料極側の特性回復処理は、すでに説明した酸化剤極側の特性回復処理と各ガスの供給先が異なるだけで、処理自体は同様である。すなわち、まず、空気供給弁111を閉じる(酸素の供給を遮断する)。燃料極に一酸化炭素ガスと水分含有ガスを供給し、酸化剤極に水素ガスを供給する。酸化剤極に水素ガスを供給することで酸化剤極を疑似的に可逆水素電極(RHE)とする。燃料極−酸化剤極間に0.05V(燃料極側が+)の微弱電圧を加える。これにより燃料極の電位が0.05V(vs.RHE)となる。第1所定時間経過後、一酸化炭素ガスの供給を止める。一酸化炭素ガスの供給停止後、燃料極−酸化剤極間に0.9V(燃料極側が+)になるまで電圧を印加する。これにより燃料極の電位が上限0.9V(vs.RHE)となる。その後、第2所定時間待って処理を終了する。
このように、燃料極側においても、酸化剤極側と同じ処理によって、触媒金属表面の不純物を取り除いて特性回復することができる。
燃料電池に使用される触媒サンプルを用いて、性能回復試験を行った。性能回復試験は下記の耐久試験を行った後、上述した実施形態同様に性能回復のために、一酸化炭素の吸着、その後の酸化脱離を行った。
<触媒サンプル>
プラチナ(Pt)を炭素に担持した触媒(Pt/C)と、プラチナ(Pt)とコバルト(Co)の合金を炭素に担持した触媒(PtCo/C)を触媒サンプルとして用意した。なお、PtCo/Cサンプルの調整は、すでに説明した(PtCo/C触媒の調整)と同じである。
プラチナ(Pt)を炭素に担持した触媒(Pt/C)と、プラチナ(Pt)とコバルト(Co)の合金を炭素に担持した触媒(PtCo/C)を触媒サンプルとして用意した。なお、PtCo/Cサンプルの調整は、すでに説明した(PtCo/C触媒の調整)と同じである。
<性能評価用電極>
触媒サンプルを、それぞれ直径5mmのグラッシーカーボンディスクにより構成される回転ディスク電極(幾何面積:0.19cm2)上に34μg/cm2となるように均一にイオン交換膜(ナフィオン(登録商標))とともに分散担持し、性能評価用電極を作製した。
触媒サンプルを、それぞれ直径5mmのグラッシーカーボンディスクにより構成される回転ディスク電極(幾何面積:0.19cm2)上に34μg/cm2となるように均一にイオン交換膜(ナフィオン(登録商標))とともに分散担持し、性能評価用電極を作製した。
<耐久試験>
上記性能評価用電極を用いて次の試験を行った。
上記性能評価用電極を用いて次の試験を行った。
N2ガスで飽和した60℃の0.1M過塩素酸溶液中で行った。各触媒サンプルの性能評価用電極を対極とし、可逆水素電極(RHE)を参照用電極として、電極間の電位を0.6Vに3秒間保持した後、瞬時に0.9Vに電位を上げ、0.9Vを3秒間保持した後、0.6Vに瞬時に戻すというサイクルを15万サイクル繰り返した。
<面積比活性の測定>
N2ガスで飽和した25℃の0.1M過塩素酸溶液中で行った。各触媒サンプルの性能評価用電極を対極とし、可逆水素電極(RHE)を参照用電極として、電極間の電位を0.05〜1.2Vの範囲で、50mV/sの走査速度によりサイクリックボルタンメトリーを行った。得られたボルタモグラムの0.05〜0.4Vに現れる水素吸着ピークの面積より、各電極触媒の電気化学的表面積(cm2)を算出した。
N2ガスで飽和した25℃の0.1M過塩素酸溶液中で行った。各触媒サンプルの性能評価用電極を対極とし、可逆水素電極(RHE)を参照用電極として、電極間の電位を0.05〜1.2Vの範囲で、50mV/sの走査速度によりサイクリックボルタンメトリーを行った。得られたボルタモグラムの0.05〜0.4Vに現れる水素吸着ピークの面積より、各電極触媒の電気化学的表面積(cm2)を算出した。
次に、電気化学計測装置を用い、酸素で飽和した25℃の0.1M過塩素酸中で、0.2Vから1.2Vまで速度10mV/sで電位走査を行った。さらに、電位走査により得られた電流から、物質移動(酸素拡散)の影響をKoutecky−Levich式を用いて補正したうえで、0.9Vでの電流値を抽出した。そして、得られた電流値を上述の電気化学的表面積で除した値を面積比活性(μA/cm2)とした。Koutecky−Levich式を用いた方法は、たとえば、Electrochemistry Vol.79, No.2, p.116−121 (2011) (対流ボルタモグラム(1)酸素還元(RRDE))の「4 Pt/C触媒上での酸素還元反応の解析」に記載されている。抽出した0.9Vの電流値を電気化学表面積で除算することで面積比活性が算出される。
<特性回復処理>
(実施例)
各触媒サンプルの性能評価用電極に対して耐久試験を行った後、一酸化炭素を吸着させ、その後一酸化炭素を酸化離脱させた。
(実施例)
各触媒サンプルの性能評価用電極に対して耐久試験を行った後、一酸化炭素を吸着させ、その後一酸化炭素を酸化離脱させた。
一酸化炭素の吸着は、1%一酸化炭素/アルゴンバランスガスで飽和した25℃の0.1M過塩素酸溶液中において、性能評価用回転ディスク電極に0.05Vの電位を印加して、30分間放置した。なお、吸着を促進させるため、回転ディスク電極は400rpmで回転させておいた。
その後一酸化炭素を酸化離脱するために、N2ガスで飽和した25℃の0.1M過塩素酸溶液中において性能評価用電極を対極とし、可逆水素電極(RHE)を参照用電極として、電極間の電位を0.05〜0.9Vの電圧範囲で、20mV/sの走査速度によりサイクリックボルタンメトリーを行った。その後、上記面積比活性を測定した。
(比較例)
上記耐久試験後、そのまま上記面積比活性を測定した。
上記耐久試験後、そのまま上記面積比活性を測定した。
実施例および比較例における活性化維持率を表1に示す。活性化維持率は、耐久試験前にあらかじめ測定した上記面積比活性の値を分母とし、上記実施例および比較例の値を分子とする百分率で示した。
評価の結果、実施例のとおり、特性回復処理を行うことで、プラチナ触媒においては、高い効果のあることがわかる。またプラチナとコバルトの合金触媒においても、特性回復効果のあることがわかる。これらの結果からプラチナ触媒はもとより、プラチナと他の金属の合金触媒においても特性回復効果を期待できる。なお、実施例において特性回復後100%まで回復しないのは、耐久試験時における金属の溶出のためである。
以上説明した実施形態および実施例による効果を説明する。
(1)本実施形態は、水素ガスを燃料極へ供給しつつ、一酸化炭素ガスと水分含有ガスを燃料電池スタックの酸化剤極に供給して第1所定時間保持する。これにより触媒金属表面に付着している不純物を一酸化炭素によって置換する。その後、一酸化炭素ガスの供給を止めて、酸化剤極電位を自然電位以下の電位となるまで上昇させて第2所定時間保持する。これにより触媒金属表面に付着させた一酸化炭素を酸化離脱させる。このため酸化剤極電位を自然電位以上に上げることなく触媒金属表面から不純物を除去することができる。したがって自然電位以上の電位を印加することによる触媒金属の溶出や担体の腐食を抑えて、触媒の劣化を防止することができる。
なお、水素ガスを酸化剤極へ供給し、一酸化炭素ガスと水分含有ガスを燃料極に供給して、同様の処理を行うことで燃料極側の触媒金属表面から不純物を除去することができる。
(2)本実施形態では、上限となる所定電位を、0.7以上、0.9V以下とした。これにより、触媒金属の溶出を確実に抑えて、特性回復を行うことができる。
(3)本実施形態においては、第1所定時間保持する間、燃料極と酸化剤極の間にOCV以下の微弱な電圧を印加することした。これにより、不純物が付着している触媒金属表面への一酸化炭素の飽和吸着を促進することができる。
(4)本実施形態では、一酸化炭素を酸化離脱する際の電位は、走査して上昇させることにしたので、触媒金属表面に付着した一酸化炭素を酸化して除去することができる。
(5)本実施形態では、一酸化炭素を酸化離脱する際の電位は、段階的に上昇させることにしたので、触媒金属表面に付着した一酸化炭素を酸化して除去することができる。
(6)本実施形態では、燃料電池の温度を一酸化炭素が触媒金属に吸着しやすい温度となるようにした。これにより触媒金属表面に吸着した不純物を一酸化炭素で十分に置換することができる。
以上本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
たとえば、実施形態では、一酸化炭素が触媒金属に飽和吸着するために必要な時間として第1所定時間の間保持することとした。同様に一酸化炭素の酸化離脱のために第2所定時間保持することとした。しかし、これらの所定時間は好まし時間というだけであり、限定されるものではない。なぜなら、触媒金属の一部だけでも不純物が除去できれば特性回復効果はある程度あるからである。たとえば、時間にゆとりがないが特性劣化が激しいような場合は、第1所定時間、第2所定時間に満たない時間実施して、ある程度特性を回復させるという利用方法も可能である。逆に時間にゆとりがあれば、第1所定時間、第2所定時間にかかわらず、処理に長い時間かけてもよい。
そのほか本発明は特許請求の範囲に記載された技術思想に基づいてさまざまな形態として実施可能であり、それらもまた本発明の範疇である。
100 燃料電池システム、
101 燃料電池スタック、
102 水素供給配管、
103 空気供給配管、
104 高圧水素タンク、
105 水素供給弁、
106 水素調圧弁、
107 排出配管、
108 排出弁、
110 コンプレッサー、
111 空気供給弁、
112 加湿器、
113 空気出口配管、
114 空気出口弁、
115 空気調圧弁、
121 水分含有ガス供給配管、
122 水分含有ガス供給弁、
123 水分含有ガス供給源、
131 一酸化炭素ガス供給配管、
132 一酸化炭素ガス供給弁、
133 一酸化炭素ガス供給源、
160 外部電源、
161 電極端子、
165 電力コントローラー、
200 ECU、
500 高分子電解質膜、
521 燃料極側触媒層、
522 燃料極側ガス拡散層、
523 燃料極側セパレータ、
524 燃料ガス供給溝、
531 酸化剤極側触媒層、
532 酸化剤極側ガス拡散層、
533 酸化剤極側セパレータ、
534 酸化剤ガス供給溝。
101 燃料電池スタック、
102 水素供給配管、
103 空気供給配管、
104 高圧水素タンク、
105 水素供給弁、
106 水素調圧弁、
107 排出配管、
108 排出弁、
110 コンプレッサー、
111 空気供給弁、
112 加湿器、
113 空気出口配管、
114 空気出口弁、
115 空気調圧弁、
121 水分含有ガス供給配管、
122 水分含有ガス供給弁、
123 水分含有ガス供給源、
131 一酸化炭素ガス供給配管、
132 一酸化炭素ガス供給弁、
133 一酸化炭素ガス供給源、
160 外部電源、
161 電極端子、
165 電力コントローラー、
200 ECU、
500 高分子電解質膜、
521 燃料極側触媒層、
522 燃料極側ガス拡散層、
523 燃料極側セパレータ、
524 燃料ガス供給溝、
531 酸化剤極側触媒層、
532 酸化剤極側ガス拡散層、
533 酸化剤極側セパレータ、
534 酸化剤ガス供給溝。
Claims (12)
- 燃料電池内への酸素の供給を遮断したうえで、燃料極または酸化剤極のうち一方の電極側に、一酸化炭素ガスおよび水分含有ガスを供給し、他方の電極側に水素ガスを供給する段階(a)と、
前記一酸化炭素ガスの供給を止めて、前記一酸化炭素ガスを供給した方の電極の電位を、開回路電位を上限とした所定電位にまで上昇させる段階(b)と、
を有することを特徴とする燃料電池の特性回復方法。 - 前記段階(b)における前記所定電位は0.7V以上、0.9V以下の電位であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の特性回復方法。
- 前記段階(a)において、前記一酸化炭素ガスを供給した方の電極の電位を0Vより高く前記所定電位より低い電位にすることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池の特性回復方法。
- 前記段階(b)においては、前記所定電位より低い電位から前記所定電位まで走査して上昇させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の燃料電池の特性回復方法。
- 前記段階(b)においては、前記所定電位より低い電位から前記所定電位まで段階的に上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の燃料電池の特性回復方法。
- 前記段階(a)および前記段階(b)の間、前記燃料電池を所定の温度範囲に保つことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の燃料電池の特性回復方法。
- 燃料電池内への酸素の供給および遮断を制御する酸素供給弁と、
前記燃料電池内の燃料極または酸化剤極のうち、一方の電極側へ一酸化炭素ガスを供給する一酸化炭素ガス供給源と、
前記一酸化炭素ガスを供給した前記電極へ、水分含有ガスを供給する水分含有ガス供給源と、
前記一酸化炭素ガスを供給した前記電極の電位を上げるための電源と、
前記一酸化炭素とともに水分含有ガスを供給し、その後、前記一酸化炭素の供給を止めて、前記一酸化炭素ガスを供給した前記電極の電位を、開回路電位を上限とした所定電位にまで上昇するように制御する制御部と、
を有することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記所定電位は、0.7V以上、0.9V以下の電位であることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。
- 前記制御部は、前記一酸化炭素ガスを供給している間、前記一酸化炭素ガスを供給した電極の電位を0Vより高く、前記所定電位より低い電位に制御することを特徴とする請求項7または8に記載の燃料電池システム。
- 前記制御部は、前記所定電位にする際には、前記所定電位より低い電位から前記所定電位まで走査して上昇させることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
- 前記制御部は、前記所定電位にする際には、前記所定電位より低い電位から前記所定電位まで段階的に上昇させることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
- 前記制御部は、前記燃料電池を所定の温度範囲に保つことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
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2014
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