JP2021136113A - 被毒物質抽出装置及び被毒状態評価方法 - Google Patents
被毒物質抽出装置及び被毒状態評価方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2021136113A JP2021136113A JP2020030304A JP2020030304A JP2021136113A JP 2021136113 A JP2021136113 A JP 2021136113A JP 2020030304 A JP2020030304 A JP 2020030304A JP 2020030304 A JP2020030304 A JP 2020030304A JP 2021136113 A JP2021136113 A JP 2021136113A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- container
- substance
- solvent
- mea
- poisoning
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/30—Hydrogen technology
- Y02E60/50—Fuel cells
Landscapes
- Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
- Fuel Cell (AREA)
Abstract
Description
例えば、特許文献1には、
燃料電池の一方の電極に燃料ガスを供給し且つ他方の電極に不活性ガスを供給しながら得たサイクリックボルタモグラムに基づいて、前記他方の電極の電極触媒の状態を評価する電極触媒評価方法であって、
電極触媒からのプロトンの脱離に関与した電荷量に基づいて電極触媒の粒径D0を求める第1の工程と、
貴電位側から卑電位側に掃引するとき、電極触媒に対してプロトンが吸着する際に貴電位側に出現する第1のピークI1と卑電位側に出現する第2のピークI2との比I1/I2とに基づいて電極触媒の粒径D1を求める第2の工程と、
前記第1の工程で求められた粒径D0と、前記第2の工程で求められた粒径D1との相関関係を求める第3の工程と、
前記相関関係に基づいて電極触媒の状態を評価する第4の工程と、
を有する電極触媒評価方法が開示されている。
(A)プロットが直線状、又は略直線状である時には、電極触媒に凝集が生じた状態であり、電極触媒の被毒や溶出が生じていないと評価することができる点、
(B)プロットがD0とD1の比例直線(平均粒径が相違する電極触媒を含む単セルを用いて予め作成された比例直線)より上方に外れる時には、電極触媒が被毒されたと判断することができる点、及び、
(C)プロットがD0とD1の比例直線より下方に外れる時には、電極触媒が溶出していると判断することができる点
が記載されている。
さらに、供給ガスの入り口と出口や、MEAの端部と中央部などで被毒物質の種類やその存在量が異なることがある。しかし、特許文献1の方法は、単セルを用いた試験であり、非破壊でセル全体の評価ができる反面、セルの局所的な評価ができない。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、被毒物質の種類やその存在量に関するセルの局所的な評価が可能な被毒物質抽出装置、及び、これを用いた被毒状態評価方法を提供することにある。
(a)膜電極接合体(MEA)又はその破片、並びに、(b)前記MEAに含まれる触媒粒子に吸着している被毒物質(COを除く)を溶解又は分散させることができ、かつ、前記MEAの構成要素を溶解させない溶媒を収容するための容器と、
前記容器内をCOガス雰囲気に維持するためのCO供給・排出装置と
を備えている。
(a)膜電極接合体(MEA)又はその破片、並びに、(b)前記MEAに含まれる触媒粒子に吸着している被毒物質(COを除く)を溶解又は分散させることができ、かつ、前記MEAの構成要素を溶解させない溶媒を容器に収容する第1工程と、
前記容器内をCO雰囲気にし、前記触媒粒子に吸着している前記被毒物質をCOに置換する第2工程と、
前記被毒物質が溶出している前記溶媒を前記容器から取り出し、前記被毒物質の質量分析を行う第3工程と、
前記被毒物質の質量から前記被毒物質の組成式を算出する第4工程と
を備えている。
さらに、このような測定は、MEAに対してだけではなく、MEAから切り出した破片に対しても行うことができる。そのため、MEAの平均的な被毒状態の評価だけでなく、MEAの局所的な被毒状態の評価も行うことができる。
[1. 被毒物質抽出装置]
図1に、本発明に係る被毒物質抽出装置の模式図を示す。図1において、被毒物質抽出装置10は、容器20と、CO供給・排出装置30とを備えている。
被毒物質抽出装置10は、
(a)溶媒排出管(図示せず)、及び/又は、
(b)攪拌装置60
をさらに備えていても良い。
[1.1.1. 容器の構造]
容器20は、膜電極接合体(MEA)26又はその破片、及び、溶媒28を収容するためのものであり、本体22と、本体22の開口部を塞ぐための蓋24とを備えている。容器20の形状及び大きさは、MEA26又はその破片、及び、溶媒28を収容することが可能である限りにおいて、特に限定されない。
図1において、合計4個の容器20が描かれているが、これは単なる例示である。被毒物質抽出装置10に備えられる容器20の個数は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な個数を選択することができる。一般に、容器20の個数が多くなるほど、1回のCO含有ガスの供給・排出操作で多数の試料を同時に処理することができる。
蓋24がゴム栓である場合、ガス供給・排出用のニードルを蓋24に刺すだけで、CO含有ガスの供給・排出が可能となる。また、ニードルを引き抜くと、容器20を密閉可能な状態に戻すことができる。そのため、蓋24は、ゴム栓が好ましい。
容器20には、MEA26の全体を収容しても良く、あるいは、MEA26の破片を収容しても良い。また、MEA26の全体を容器20に収容する場合、MEA26をそのまま容器20に収容しても良く、あるいは、MEA26を適当な大きさに切断して容器20に収容しても良い。
MEA26の全体を容器20内に収容すると、MEA26の平均的な被毒状態を評価することができる。一方、MEA26の破片を容器20内に収容すると、破片を切り出した位置(例えば、ガス流路の上流側、ガス流路の中央部、あるいは、ガス流路の下流側)における局所的な被毒状態を評価することができる。
一方、MEA26又はその破片の面積を必要以上に大きくしても、効果に差がなく、実益がない。従って、MEA26又はその破片の面積は、300cm2以下が好ましい。
ここで、「MEA26又はその破片の面積」とは、MEA26又はその破片を平面上に展開した時の、MEA26又はその破片の投影面積の総和をいう。
一般に、燃料電池の性能を低下させる被毒物質としては、
(a)電解質膜から溶出する硫黄化合物(例えば、硫酸、パーフルオロアルキルスルホン酸など)、
(b)MEA26の構成材料から溶出する有機化合物(例えば、マロン酸、コハク酸、炭化水素など)、
(c)外気から混入する大気汚染物質(例えば、塩素、ヨウ素などのハロゲン、自動車排ガスなどに含まれるNOx、SOx、炭化水素など)、
などがある。
発明において「被毒物質」というときは、触媒粒子の表面に吸着している被毒物質(COを除く)であって、溶媒24に溶解又は分散させることが可能なものをいう。多くの場合、被毒物質は有機化合物であるが、無機化合物を含む場合がある。
溶媒28は、MEA26に含まれる触媒粒子に吸着している被毒物質を溶解又は分散させることができ、かつ、MEA26の構成要素(例えば、電解質、担体、触媒粒子など)を溶解させないものである必要がある。
溶媒28は、このような条件を満たす限りにおいて、特に限定されない。溶媒28としては、例えば、水、水とエタノールの混合溶媒、水とアセトニトリルの混合溶媒、0.1%程度のギ酸の水溶液、0.1%程度の酢酸の水溶液などがある。
CO供給・排出装置30は、容器20内をCOガス雰囲気に維持するためのものである。CO供給・排出装置30は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。図1において、CO供給・排出装置30は、ガス分配器32と、ガス供給用ニードル34と、ガス排出用ニードル36とを備えている。
ガス分配器32は、容器20が複数個ある場合において、各容器20にそれぞれCO含有ガスを分配するためのものである。そのため、容器20が1個である場合には、ガス分配器32を省略することができる。
ガス分配器32の出口は、配管48の入り口に接続されている。配管48の出口は、複数個(図1に示す例では、4個)に分岐しており、分岐した配管48の出口には、それぞれ、ガス供給用ニードル34が接続されている。
ガス供給用ニードル34は、COガスボンベ42及び窒素ガスボンベ46から供給されるCO含有ガスを容器20内に供給するためのものである。ガス供給用ニードル34の基端、は配管48の出口に接続されている。ガス供給用ニードル34の先端は、蓋24を貫通して容器20内に挿入されている。
ガス排出用ニードル36は、容器20内のガスを排出するためのものである。ガス排出用ニードル36の先端は、蓋24を貫通して容器20内に挿入されている。ガス排出用ニードル36の基端は、分岐した配管50の入り口に接続されている。さらに、配管50の出口は、局所排気装置52に接続されている。
後述するように、容器20内にMEA26又はその破片、及び、溶媒28を入れ、容器20内にCO含有ガスを供給すると、MEA26又はその破片に含まれる被毒物質が溶媒28内に溶出する。溶媒28内に溶出した被毒物質は、質量分析計により分析が行われる。この場合、被毒物質が溶出している溶媒28を含む容器20を被毒物質抽出装置10から取り外し、容器20ごと質量分析計まで運搬し、分析に供することもできる。しかしながら、特に容器20の個数が多い場合、このような方法は極めて煩雑である。
撹拌装置60は、容器20内の溶媒28を撹拌するためのものである。容器20内にCO含有ガスを導入すると、COの一部が溶媒28に溶解する。そのため、容器20を静置した場合であっても、被毒物質がCOに置換される。すなわち、撹拌装置60は、必ずしも必要ではない。しかし、容器20を静置した場合、COによる被毒物質の置換速度は相対的に遅い。
また、撹拌装置60は、容器20を加温するためのヒータを備えているものが好ましい。これは、溶媒28を加温した状態で溶媒28を撹拌すると、COによる被毒物質の置換速度が向上するため、及び/又は、被毒物質の溶媒28への溶解度が向上するためである。
本発明に係る被毒状態評価方法は、
(a)膜電極接合体(MEA)又はその破片、並びに、(b)前記MEAに含まれる触媒粒子に吸着している被毒物質(COを除く)を溶解又は分散させることができ、かつ、前記MEAの構成要素を溶解させない溶媒を容器に収容する第1工程と、
前記容器内をCO雰囲気にし、前記触媒粒子に吸着している前記被毒物質をCOに置換する第2工程と、
前記被毒物質が溶出している前記溶媒を前記容器から取り出し、前記被毒物質の質量分析を行う第3工程と、
前記被毒物質の質量から前記被毒物質の組成式を算出する第4工程と
を備えている。
まず、
(a)膜電極接合体(MEA)26又はその破片、並びに、
(b)MEA26に含まれる触媒粒子に吸着している被毒物質(COを除く)を溶解又は分散させることができ、かつ、MEA26の構成要素を溶解させない溶媒28、
を容器20に収容する(第1工程)。
まず、燃料電池セルを解体し、膜−電極−ガス拡散層接合体(Membrane-Electrode-Gas diffusion layer Assembly, MEGA)を取り出す。さらに、MEGAの両面からガス拡散層(GDL)を剥がし取り、MEA26を得る。
取り出したMEA26は、そのまま容器20に収容しても良い。一方、MEA26の局所的な評価を行う場合には、MEA26の任意の場所から所定の大きさの破片を切り出すのが好ましい。いずれの場合においても、MEA26又は破片の面積は特に限定されない。上述したように分析精度を向上させるためには、MEA26又はその破片の面積は1cm2以上が好ましい。例えば、フルサイズのMEA26のように、試料サイズが容器20よりも大きな場合、容器20に収まるように試料を細かく切り刻んでも良い。
次に、容器20の中に、MEA26又はその破片を入れ、これに溶媒28を加えて蓋24で密栓する。溶媒28には、上述したように、被毒物質を溶解又は分散させることができ、かつ、MEA26の構成要素を溶解させないものを用いる。溶媒28の量は、特に限定されないが、容器20の容積の半分以下が好ましい。蓋24には、ガス供給用ニードル34及びガス排出用ニードル36を貫通させることができるように、ゴム栓を用いるのが好ましい。
次に、容器20内をCO雰囲気にし、触媒粒子に吸着している前記被毒物質をCOに置換する(第2工程)。
まず、容器20の蓋24に、ガス供給用ニードル34及びガス排出用ニードル36を貫通させる。次いで、ガス供給用ニードル34を、ガス分配器32、第1開閉弁40、及び、第2開閉弁44を介して、COガスボンベ42及び窒素ガスボンベ46に接続する。また、ガス排出用ニードル36を、局所排気装置52に接続する。
次に、第1開閉弁40を開けて、ガス分配器32及びガス供給用ニードル34を介して容器20にCO含有ガスを供給する。この時、第2開閉弁44をさらに開けて、容器20にCOとN2の混合ガスを供給しても良い。この間、容器20から排出されるガスは、ガス排出用ニードル36を介して局所排気装置52から排出される。
但し、CO含有ガス中のCO濃度が低くなりすぎると、被毒物質の置換速度が過度に遅くなる。従って、CO濃度は、0.005vol%以上が好ましい。CO濃度は、好ましくは、0.05vol%以上、さらに好ましくは、1.0vol%以上である。
COによる被毒物質の置換は、溶媒28中にCO含有ガスをバブリングしながら行っても良く、あるいは、容器20にCO含有ガスを充満させた後、容器20を密閉した状態で行っても良い。後者の場合、容器20内のガスがCO含有ガスで置換された後、第1開閉弁40、及び第2開閉弁44を閉じ、ガス供給用ニードル34及びガス排出用ニードル36を引き抜く。
被毒物質抽出装置10がヒータ付きの撹拌装置60を備えている場合、撹拌装置60の温度を所定の温度に設定し、攪拌装置60を作動させるのが好ましい。これにより、CO、MEA26又はその破片、及び溶媒28がそれぞれ接触し、MEA26に含まれる触媒粒子に吸着していた被毒物質がCOに置換される。触媒粒子から脱離した被毒物質は、溶媒28中に溶出する。
撹拌装置60を用いて溶媒28の撹拌を行った場合、一定の時間経過後、撹拌装置60を停止させる。被毒物質とCOとの置換が完了する時間は、容器20内に収容されるMEA26又はその破片の量、容器20内に導入されるCO含有ガスのCO濃度、溶媒28の温度等により異なる。通常、CO含有ガスを容器20内に供給してから、30分〜60分程度経過すると、被毒物質の脱離がほぼ完了する。
容器20を密閉した状態でCOによる被毒物質の置換を行った場合、置換終了後に、再び蓋24にガス供給用ニードル34及びガス排出用ニードル36を貫通させる。次いで、第2開閉弁44を開け、容器20に窒素ガスを流す。これにより、容器20内に残留しているCO含有ガスが排出され、容器20内が窒素ガスで満たされる。
容器20内が窒素ガスで置換された後、第2開閉弁44を閉じ、ガス供給用ニードル34及びガス排出用ニードル36を引き抜く。
さらに、容器20から、被毒物質が溶出している溶媒28(以下、これを「抽出液」ともいう)を回収し、質量分析に供する。上述したように、容器20に溶媒排出管(図示せず)が備えられている場合には、容器20から質量分析計に直接、溶媒28を供給することができる。
次に、被毒物質が溶出している溶媒28(抽出液)を容器20から取り出し、被毒物質の質量分析を行う(第3工程)。
第3工程は、溶媒28に基準物質を添加した後、基準物質の質量分析を行う工程を含んでいるのが好ましい。
また、第3工程は、前記被毒物質の質量を誤差5ppm以内で測定することが可能な質量分析計を用いて前記質量分析を行うものが好ましい。
以下に、液体クロマトグラフ質量分析装置を用いた質量分析の方法について説明する。なお、被毒物質の分析方法は、これに限定されるものではない。液体クロマトグラフ装置を備えた分析装置に代えて、ガスクロマトグラフ、イオンクロマトグラフ、キャピラリー電気泳動などの分離装置と質量分析計とを組み合わせた分析装置を用いても良い。また、溶媒中の有機物量(有機体炭素量)を求めるだけであれば、全有機炭素測定装置(TOC計ともいう)を用いても良い
このような質量分解能が高い質量分析計88としては、
(a)飛行時間型質量分析計、
(b)二重収束扇形磁場型質量分析計、
(c)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計、
(d)オービトラップ(登録商標)(電場型のフーリエ変換型質量分析計)
などがある。
以下に、LC−MS70を用いた被毒物質の分析手順を示す。
まず、送液ポンプ78により、第1溶離液及び第2溶離液を吸引して分離カラム82へ導出する。第1溶離液と第2溶離液は、ミキサー76で任意の割合で混合される。上述したように、第1溶離液には、被毒物質の溶解力の低い溶媒(例えば、0.1%程度のギ酸又は酢酸の水溶液)が用いられる。第2溶離液には、被毒物質の溶解力の高い溶媒(例えば、アセトニトリルやメタノールなどの有機溶媒)が用いられる。
分離カラム82から溶出した被毒物質は、溶離液と共にイオン化部86に導入される。イオン化の方法としては、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)等のイオン源装置を用いることができる。これらのイオン化法は、ソフトイオン化法と呼ばれ、分子構造を破壊することなく分子量情報が得られることが特徴である。
次に、前記被毒物質の質量から前記被毒物質の組成式を算出する(第4工程)。
質量分析計88で検出されたイオンは、その質量と計測時間が記録され、データ処理部92へ送られる。LC−MS70のデータは、計測時間(保持時間、リテンションタイム等ともいう)、質量と電荷の比(一般に、m/zと表される)、信号強度(イオン強度、イオンカウント等と表される)で構成される。横軸に計測時間、縦軸に信号強度を表したものをクロマトグラムと呼ぶ(例えば、図3参照)。また、横軸にm/z、縦軸に信号強度(相対強度で示すことが多い)を表したものをマススペクトルと呼ぶ(例えば、図4参照)。以下では、LC−MS70のデータ(後述する実施例では、エレクトロスプレーイオン化の負イオンモード)から炭素数別の被毒物質量を求めるための手順について記載する。
計測時間内に検出されたすべてのイオンに対して、一定以上の信号強度を有するイオンを抽出する。検出されたイオンの中には、計測時間は異なるものの、イオンの質量が同一のもの(構造異性体)も含まれる。
抽出されたイオンの精密質量(測定値)から、被毒物質の分子式(例えば、炭素C、水素H、及び酸素Oからなる被毒物質であれば、CxHyOz)を求める。測定値から分子式を算出するためには、被毒物質の構成元素を絞り込む必要がある。例えば、被毒物質として、電解質の分解物、セル構成材料、あるいは、大気汚染物質を想定した場合、構成元素として、炭素C、水素H、窒素N、酸素O、フッ素F、及び硫黄Sを選択するのが好ましい。
質量分析で計測する質量は、統一原子質量単位(単位:u、炭素原子の質量の1/12と定義)との比で表される。各元素の精密質量は、具体的には、12C=12.0000000、1H=1.00782504、14N=14.030740、16O=15.949146、19F=18.9984032、32S=31.9720710である。
分子式を求めたすべての被毒物質についてピーク面積を求める。同時に基準物質(例えば、PTSA)を注入した時には、基準物質のピーク面積を求め、基準物質のピーク面積に対する被毒物質のピーク面積の比を求める。
被毒物質と基準物質を同時に分析した場合、被毒物質のピーク面積比に基準物質の注入量(既知量)を乗じ、さらに測定に用いたMEAの幾何面積を除して、被毒物質の含有量を求める。なお、エレクトロスプレーイオン化におけるイオン化効率は、被毒物質の化学構造等に依存することから、その検出感度は一定ではない。従って、ここで求める値は、基準物質を基準とした概算値である。
被毒物質の炭素数毎に概算量を集計する。このような集計を、例えば、MEAの部位毎に行うと、MEAの局所的な被毒状態の評価を行うことができる。
固体高分子形燃料電池において、カソード触媒が被毒されるとセル電圧が低下する。触媒被毒の原因としては、電解質膜から溶出する硫黄化合物、燃料電池の構成材料から溶出する有機化合物、外気から混入する大気汚染物質などがある。このように被毒物質の発生源は様々であることから、電極触媒に付着している被毒物質には、低分子量の化合物から高分子量の化合物まで多様な有機化合物が含まれる。これらの被毒物質を効率良く除去するためには、被毒物質の種類に応じた条件(電位)でエージング運転(又は、リフレッシュ運転)を行う必要がある。しかしながら、従来の方法は、被毒の有無を知ることはできるが、被毒物の種類及び量を知ることはできない。
さらに、このような測定は、MEAに対してだけではなく、MEAから切り出した破片に対しても行うことができる。そのため、MEAの平均的な被毒状態の評価だけでなく、MEAの局所的な被毒状態の評価も行うことができる。
さらに、被毒物質の存在量と質量分析計の応答値との間には、比例関係が認められる。そのため、濃度が既知の基準物質を同時に測定することによって、被毒物質の存在量(概算)を求めることができる。
[1. 試料の作製]
セル構成材料が異なる燃料電池セルを解体して、MEGAを取り出した。MEGAの両面からガス拡散層(GDL)を剥がし取った。GDLを剥がし取ったMEAにマイクロポーラス層(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの撥水性樹脂とカーボンブラックなどの導電性材料からなる層)が融着している場合には、不織布を用いてこれを剥がし取った。MEAの端部又は中央部から、1×1cm2の大きさの破片を切り出した。
図1に示す被毒物質抽出装置10を用いて、MEA26の破片に含まれる被毒物質を抽出した。さらに、図2に示す液体クロマトグラフ質量分析装置70を用いて、抽出液に含まれる被毒物質の質量分析を行った。イオン化の方法にはエレクトロスプレーイオン化(ESI)を用い、イオン化の極性は負イオンモードを用いた。さらに、全有機炭素測定装置を用いて、抽出液に含まれる全有機炭素量(TOC)を測定した。
[3.1. クロマトグラム]
図3に、実施例1のクロマトグラムを示す。図3より、0〜6分の間に、70種類以上のイオンが検出されていることが分かる。
図4に、実施例1の保持時間4.4分のピーク(図3において、矢印で示されているピーク)のマススペクトルを示す。図4において検出されたイオンの質量は、m/z185.0828であった。この値から、分子式としてC9H13O4が算出された。ここで、C9H13O4の測定値(m/z185.0828)に対して、理論値はm/z185.0819であるので、測定誤差は4.86ppmであることが分かる。また、エレクトロスプレーイオン化(負イオンモード)では、被毒物質からプロトンが1つ脱離([M−H]-と表記される)したイオンとして検出される。従って、プロトンが脱離する前の中性分子としての分子式は、C9H14O4と表せる。
図5に、実施例1〜4で得られた試料の被毒物質の質量を示す。図5より、以下のことが分かる。
(1)実施例1は、実施例2と比べて被毒物質の量が多い。同様に、実施例3は、実施例4より被毒物質の量が多い。これは、MEA端部がセル構成材料の影響によって被毒されていることを示している。
(2)実施例1は、実施例3に比べて被毒物質の量が多く、被毒物質の種類も多い。これは、セル構成材料の違いによると考えられる。実施例1は、被毒物質の炭素量が3から12までに渡っており、炭素数が8以上の被毒物質も含まれていた。一方、実施例3は、炭素数が8以上の被毒物質はほとんど含まれていなかった。
抽出液のLC−MS結果と全有機炭素量(TOC)とを比較した。図6に、全有機炭素量(TOC)とLC−MSで検出されるピークの総面積との関係を示す。LC−MSで検出される被毒物質の総ピーク面積とTOCとの間には強い正の相関が認められた。
20 容器
26 膜電極接合体(MEA)
28 溶媒
30 CO供給・排出装置
Claims (9)
- (a)膜電極接合体(MEA)又はその破片、並びに、(b)前記MEAに含まれる触媒粒子に吸着している被毒物質(COを除く)を溶解又は分散させることができ、かつ、前記MEAの構成要素を溶解させない溶媒を収容するための容器と、
前記容器内をCOガス雰囲気に維持するためのCO供給・排出装置と
を備えた被毒物質抽出装置。 - 複数個の前記容器と、
複数個の前記容器にCO含有ガスを分配するガス分配器と
をさらに備えた請求項1に記載の被毒物質抽出装置。 - 前記被毒物質が溶出している前記溶媒を、前記容器から排出するための溶媒排出管をさらに備えた請求項1又は2に記載の被毒物質抽出装置。
- 前記容器内の溶媒を攪拌する攪拌装置をさらに備えた請求項1から3までのいずれか1項に記載の被毒物質抽出装置。
- (a)膜電極接合体(MEA)又はその破片、並びに、(b)前記MEAに含まれる触媒粒子に吸着している被毒物質(COを除く)を溶解又は分散させることができ、かつ、前記MEAの構成要素を溶解させない溶媒を容器に収容する第1工程と、
前記容器内をCO雰囲気にし、前記触媒粒子に吸着している前記被毒物質をCOに置換する第2工程と、
前記被毒物質が溶出している前記溶媒を前記容器から取り出し、前記被毒物質の質量分析を行う第3工程と、
前記被毒物質の質量から前記被毒物質の組成式を算出する第4工程と
を備えた被毒状態評価方法。 - 前記第3工程は、前記溶媒に基準物質を添加した後、前記基準物質の質量分析を行う工程を含み、
前記第4工程は、前記被毒物質の組成式に加えて、前記被毒物質の成分量を算出する工程を含む
請求項5に記載の被毒状態評価方法。 - 前記第2工程は、CO濃度が0.005vol%以上100vol%以下であるCO含有ガスを前記容器内に供給する工程を含む請求項5又は6に記載の被毒状態評価方法。
- 前記MEA又はその破片の面積は、1cm2以上である請求項5から7までのいずれか1項に記載の被毒状態評価方法。
- 前記第3工程は、前記被毒物質の質量を誤差5ppm以内で測定することが可能な質量分析計を用いて前記質量分析を行うものからなる請求項5から8までのいずれか1項に記載の被毒状態評価方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020030304A JP7222944B2 (ja) | 2020-02-26 | 2020-02-26 | 被毒物質抽出装置、被毒状態評価方法、及び、被毒状態評価装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020030304A JP7222944B2 (ja) | 2020-02-26 | 2020-02-26 | 被毒物質抽出装置、被毒状態評価方法、及び、被毒状態評価装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021136113A true JP2021136113A (ja) | 2021-09-13 |
JP7222944B2 JP7222944B2 (ja) | 2023-02-15 |
Family
ID=77661512
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020030304A Active JP7222944B2 (ja) | 2020-02-26 | 2020-02-26 | 被毒物質抽出装置、被毒状態評価方法、及び、被毒状態評価装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7222944B2 (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005050760A (ja) * | 2003-07-31 | 2005-02-24 | Seimi Chem Co Ltd | 固体高分子電解質型燃料電池アノード電極触媒 |
JP2008287962A (ja) * | 2007-05-16 | 2008-11-27 | Ricoh Co Ltd | 電気化学反応装置及び燃料電池 |
JP2016066407A (ja) * | 2014-09-22 | 2016-04-28 | 日産自動車株式会社 | 燃料電池の特性回復方法および燃料電池システム |
-
2020
- 2020-02-26 JP JP2020030304A patent/JP7222944B2/ja active Active
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005050760A (ja) * | 2003-07-31 | 2005-02-24 | Seimi Chem Co Ltd | 固体高分子電解質型燃料電池アノード電極触媒 |
JP2008287962A (ja) * | 2007-05-16 | 2008-11-27 | Ricoh Co Ltd | 電気化学反応装置及び燃料電池 |
JP2016066407A (ja) * | 2014-09-22 | 2016-04-28 | 日産自動車株式会社 | 燃料電池の特性回復方法および燃料電池システム |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP7222944B2 (ja) | 2023-02-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Oberacher et al. | Mass spectrometric methods for monitoring redox processes in electrochemical cells | |
Wagner et al. | Long term investigations of silver cathodes for alkaline fuel cells | |
Baltruschat | Differential electrochemical mass spectrometry | |
US4025412A (en) | Electrically biased two electrode, electrochemical gas sensor with a H.sub.2 | |
Limbeck et al. | ETAAS determination of palladium in environmental samples with on-line preconcentration and matrix separation | |
US6852970B2 (en) | Mass spectrometer | |
US20060076246A1 (en) | Water electrolysis method and device for determination of hydrogen and oxygen stable isotopic composition | |
Jeong et al. | Capillary electrophoresis mass spectrometry with sheathless electrospray ionization for high sensitivity analysis of underivatized amino acids | |
St-Pierre et al. | PEMFC contamination model: competitive adsorption demonstrated with NO2 | |
Schonvogel et al. | High temperature polymer electrolyte membrane fuel cell degradation provoked by ammonia as ambient air contaminant | |
Indelicato et al. | Recent approaches for chemical speciation and analysis by electrospray ionization (esi) mass spectrometry | |
Wang et al. | Evaluating the influence of PEMFC system contaminants on the performance of Pt catalyst via cyclic voltammetry | |
Bondue et al. | A New 2-Compartment Flow Through Cell for the Simultaneous Detection of Electrochemical Reaction Products by a Detection Electrode and Mass Spectroscopy | |
JP7222944B2 (ja) | 被毒物質抽出装置、被毒状態評価方法、及び、被毒状態評価装置 | |
Kertesz et al. | Study and application of a controlled-potential Electrochemistry− Electrospray emitter for electrospray mass spectrometry | |
Yuill et al. | Electrochemical aspects of mass spectrometry: Atmospheric pressure ionization and ambient ionization for bioanalysis | |
Bawol et al. | The Oxygen Reduction Reaction in Ca2+‐Containing DMSO: Reaction Mechanism, Electrode Surface Characterization, and Redox Mediation | |
Rockett et al. | Theory of the performance of porous fuel cell electrodes | |
JP4556571B2 (ja) | イオン定量分析方法およびフッ素イオン定量分析方法 | |
Athanasiou et al. | Electrochemical promotion of carbon supported Pt, Rh and Pd catalysts for H2 oxidation in aqueous alkaline media | |
Ochran et al. | Effects of ground loop currents on signal intensities in electrospray mass spectrometry | |
Wang et al. | Evaluation of PEMFC system contaminants on the performance of Pt catalyst via cyclic voltammetry | |
Dytrtová et al. | An electrochemical device generating metal ion adducts of organic compounds for electrospray mass spectrometry | |
KR102116043B1 (ko) | 전기화학적 흐름 전지 및 이를 이용한 실시간 전기화학적 특성 분석 시스템 | |
TW416004B (en) | Electrochemical detector for liquid chromatography, liquid chromatography apparatus and analysis using the aparatus |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20210927 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20220623 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20220712 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20220823 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20230110 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20230203 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7222944 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |