以下、本発明の食品包装用シート、食品包装容器および食品包装体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
≪食品包装体≫
図1は、本発明の食品包装体の第1実施形態を模式的に示す図((a)は平面図、(b)は図1(a)中のA−A線断面図)、図2は、図1に示す食品包装用シートの断面図である。
なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言い、左側を「左」、右側を「右」という。また、本明細書で参照する図面は、構成の一部を誇張して示したものであり、実際の寸法等を正確に反映したものではない。
図1に示す食品包装体100は、食品包装袋50と、この食品包装袋50で密閉された状態で包装された食品1とを有している。
食品1としては、特に限定されず、例えば、バナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨のような果実類、ダイコン、ニンジン、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、エダマメ、オクラのような果菜類、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、トウミョウのような芽物類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、レタス、アスパラガスのような葉茎菜類、キク、ユリ、カーネーション等の花卉または苗等の青果物やこれらの加工品・調理品等(例えば、漬物、ジャム、果実ソース等)、鶏肉、豚肉、牛肉、魚肉等の肉類やこれらの加工品・調理品等(例えば、蒲鉾、ちくわ、ソーセージ、ハム等)、饅頭、チョコレート、ガム、ゼリー、寒天、クッキー等の菓子、牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳製品、醤油、味噌等の調味料、酒、清涼飲料水等の液体飲料またはゼリー状の飲料、サプリメント(栄養補助食品)、健康機能食品等の健康食品、うどん、そば等の麺類、パン類、米類、餅類等、あるいはこれらを組み合わせたものが挙げられ、これらの何れであっても、食品包装袋50で包装することができる。なお、飲料としては、緑茶、ほうじ茶等のお茶や紅茶等の茶葉や、各種ティーパック、ココア、粉ジュース等の、いわゆる粉末飲料等であってもよい。
このような食品1は、食品包装袋50に収納されて食品包装体100とされ、例えば市場や小売店で陳列して販売される。
以下、本発明の食品包装体が備える食品用包装袋について説明する。
<食品包装袋>
図1に示す食品包装袋50は、食品を収納するために用いられる食品包装容器である。
食品包装袋50は、食品包装用シート10として、四角形状の第1のシート10aおよび第2のシート10bを、互いの各辺同士が重なるように重ね合わせた後、3辺を接着、溶融、縫製等により接合することで、袋状に形成されたものである。図1では、接合された部分をシール部52として、網掛けを付して示す。
また、食品包装袋50は、図1に示すように、その内部に形成された空間53と、食品包装袋50の図1(a)中右辺部に設けられた封止部54とを有している。この封止部54は、食品包装袋50の図1(a)中右側に開口した口部を封止することで得られる。なお、封止部54を封止する方法としては、例えば、口部を金属または樹脂製かしめ、輪ゴム、テープおよびジッパー等で縛る方法、または、口部を接着、溶融、縫製する方法等が挙げられ、いかなる方法であってもよい。
図1に示すような食品包装体100は、このような構成の食品包装袋50の空間53内に、口部を介して食品1を入れた後、口部を前記のような方法により封止することにより得られる。このとき、食品包装袋50の3辺がシール部52によって接合されているため、食品1は食品包装袋50から脱落することが防止されている。
以下に、このような構成の食品包装袋50を形成する食品包装用シート10について説明する。
<食品包装用シート>
図2に示すように、食品包装用シート10は、それぞれ、基材層11と、防カビ性を有する精油成分を含む精油含有層12とを有するものである。
以下、基材層11と精油含有層12とについて順次説明する。
(基材層11)
基材層11は、精油含有層12を支持し、食品包装用シート10全体としての、強度等を好適なものとする機能を有している。
また、基材層11は、食品包装用シート10を図2に示すような食品包装袋50にした場合、精油含有層12の外側に配置され、揮発した精油成分が外部へ飛散することを防止または抑制する機能を有している。
基材層11の構成材料としては、例えば、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、セロハン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリ乳酸等の樹脂材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、基材層11の構成材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリ乳酸よりなる群から選択される1種または2種以上を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
このような構成材料は、精油成分の透過率が特に低いものである。このため、揮発した精油成分が食品包装袋50の外部へ飛散することをより効果的に防止することができる。また、このような構成材料は、比較的薄いシート状に成形することが可能である。このため、このような構成材料を用いれば、精油成分が外部へ飛散することを防ぐ機能を損なうことなく、膜厚が比較的薄い基材層11を成形することができ、結果、食品包装用シート10の軽量化に寄与することができる。さらに、膜厚を比較的薄く成形することできるため、多種多様な食品に合わせ、より多くの種類の食品包装用シート10を成形することができる。また、このような樹脂材料は、透明性を有する基材層11を形成し易く、食品包装袋50に包装された食品1を視認できるようにしたい場合に有効である。
また、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリ乳酸よりなる群から選択される1種または2種以上を含む材料で構成された基材層11を用いれば、精油成分が浸透することにより基材層11が不本意に膨潤することを防止または抑制することができる。
また、基材層11の構成材料には、前述したような樹脂材料以外に、必要に応じて、例えば、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー等を含んでいてもよい。
また、基材層11としては、前述したような樹脂材料を含む単層フィルムや、樹脂材料で構成された単層フィルムを2層以上積層した多層フィルムのものを用いることができる。なお、多層フィルムの場合には、同一の材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。また、基材層11は、樹脂材料を含むフィルム(単層フィルムのおよび多層フィルム)に金属箔、紙や不織布等を積層したものであってもよい。
基材層11としては、具体的には、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリ乳酸フィルム、アクリル樹脂をコーティングしたセロハンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とポリスチレンとEVAとEVOHをラミネートしたフィルム等が挙げられる。
基材層11の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、0.01mm以上0.1mm以下であるのが好ましく、0.015mm以上0.1mm以下であるのがより好ましく、0.020mm以上0.065mm以下であるのがさらに好ましい。基材層11の平均厚さが前記下限値未満となると、食品包装用シート10の構成材料等によっては、強度が十分に得られなくなるおそれがある。また、基材層11の平均厚さが前記上限値を超えると、食品包装用シート10の構成材料等によっては、食品包装用シート10の柔軟性が低下する場合がある。
(精油含有層12)
精油含有層12は、防カビ性を有する精油成分を含む材料で構成された層である。
精油含有層12は、食品包装用シート10を図1に示すような食品包装袋50にした場合、空間53側、すなわち食品1と対向する側に配置され、食品1にカビが繁殖することを抑制する。
精油成分は、防カビ性を有するものであって、揮発性を有する物質である。このように、精油成分は揮発する物質であるため、食品包装袋50が食品1に直接接していなくとも、空間53内に配置された食品1に対するカビの繁殖を抑制することできる。
このような機能を有する防カビ性を有する精油成分としては、具体的には、アサノミ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、アンゼリカ、ウイキョウ、ウコン、オールスパイス、オレガノ、オレンジピール、カショウ、カッシア、カモミール、カラシナ、カルダモン、カレーリーフ、カンゾウ、キャラウェー、クチナシ、クミン、クレソン、クローブ、ケシノミ、ケーパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サッサフラス、サフラン、サボリー、サルビア、サンショウ、シソ、シナモン、シャロット、ジュニパーベリー、ショウガ、スターアニス、スペアミント、セイヨウワサビ、セロリー、ソーレル、タイム、タマネギ、タマリンド、タラゴン、チャイブ、チャービル、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニガヨモギ、ニジェラ、ニンジン、ニンニク、バジル、パセリ、ハッカ、バニラ、パプリカ、ヒソップ、フェネグリーク、ペパーミント、ホースミント、マジョラム、ミョウガ、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、ローズ、ローズマリー、ローレル又はワサビから抽出し、またはこれを水蒸気蒸留して得られた抽出物が挙げられ、これらの中でも特に、コリアンダー、シソ、タイム、バジル、レモングラス、レモンバームおよびオレガノの抽出物よりなる群から選択される1種または2種以上であるのが好ましく、コリアンダー、シソ、タイム、バジル、レモンバームおよびオレガノの抽出物よりなる群から選択される1種または2種以上であるのがより好ましい。このような精油成分は、食品添加物として使用されている人体に安全な物質である。このため、揮発した精油成分が接触した食品1を食する人体に対する安全性をより高いものとすることができる。
また、コリアンダー、シソ、タイム、バジル、レモンバームおよびオレガノの抽出物は、特に強い防カビ性を、より長い期間にわたって発揮するものである。このため、このような抽出物を用いて形成した精油含有層12を有する食品包装用シート10を用いれば、食品包装袋50内(空間53)のカビの繁殖をより長い期間にわたって効果的に抑制することができ、空間53内に配置された食品1の鮮度をより長期にわたって保持することができる。また、食品1に発生するカビとしては、多くの種類のものが知られているが、これらの抽出物を精油成分として用いれば、食品1に発生し得るより多くの種類のカビに対して、特に優れた防カビ性を発揮することができる。また、これらの抽出物は、一般的に食品が保存される温度(−20℃〜35℃)において、適度に揮発するものであり、この温度範囲内において、より長期にわたって特に優れた防カビ性を発揮する。このように、これらの抽出物は、様々なカビの種類に対応するだけでなく、食品1が保存され得る幅広い温度環境下において特に優れた防カビ性を発揮することができる。
精油成分の構成成分としては、特に限定されないが、鋭意検討した結果、精油成分が、CnHmOpで表わされる化合物を構成成分として含有することにより(ただしn、m、pは8≦n≦12、8≦m≦24、1≦p≦5を満たす整数である。)、優れた防カビ性を発揮することを見出した。すなわち、精油成分の構成成分としてCnHmOpで表わされる化合物(ただしn、m、pは8≦n≦12、8≦m≦24、1≦p≦5を満たす整数である。)を構成成分として含有することが好ましい。このような構成成分を含むことで、たとえば、食品1を包装した直後から、その後より長い期間にわたって、特に優れた防カビ性を発揮することができる。CnHmOpで表わされる化合物(ただしn、m、pは8≦n≦12、8≦m≦24、1≦p≦5を満たす整数である。)としては、チモール(C10H14O)、カルバクロール(C10H14O)、リナロール(C10H18O)、シトロネラール(C10H18O)、シトラール(C10H18O)、1,8−シネオール(C10H14O)、ペリルアルデヒド(C10H14O)、テルピネン−4−オール(C10H18O)などがあげられる。
CnHmOpで表わされる化合物(ただしn、m、pは8≦n≦12、8≦m≦24、1≦p≦5を満たす整数である。)の沸点は170℃以上240℃以下が好ましい。この温度範囲にあると、特に優れた防カビ性を発揮することができる。
前記CnHmOpで表わされる化合物(ただしn、m、pは8≦n≦12、8≦m≦24、1≦p≦5を満たす整数である。)の精油成分に対する重量%は20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。この範囲にあると、特に優れた防カビ性を発揮することができる。
精油含有層12の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、0.0005mm以上0.01mm以下であるのが好ましく、0.001mm以上0.01mm以下であるのがより好ましく、0.001mm以上0.003mm以下であるのがさらに好ましい。精油含有層12の平均厚さが前記下限値未満となると、精油含有層12を構成する精油成分の種類等によっては、食品1に付着したカビの繁殖を十分に抑制できない場合がある。また、精油含有層12の平均厚さが前記上限値を超えても、それ以上の効果の増大が見込めない。
以上のような構成の食品包装用シート10は、単位面積当たりの精油成分の含有量が0.5g/m2以上5g/m2以下であるのが好ましく、0.5g/m2以上4g/m2以下であるのがより好ましく、0.5g/m2以上2g/m2以下であるのがさらに好ましい。精油成分の含有量が前記下限値未満となると、精油含有層12を構成する精油成分の種類等によっては、食品1に付着したカビの繁殖を十分に抑制できない場合がある。また、精油成分の含有量が前記上限値を超えても、それ以上の効果の増大が見込めない。
食品包装用シート10は、温度:25℃、湿度:50%の環境下に静置した際の24時間での精油成分の揮発量が、0.2g/m2以上5g/m2以下であるのが好ましく、0.2g/m2以上4g/m2以下であるのがより好ましく、0.5g/m2以上4g/m2以下であるのがさらに好ましい。これにより、食品1に対する十分な防カビ性を、より長期にわたって発揮することができる。一方、精油成分の揮発量が前記下限値未満となると、精油成分の種類等によっては、十分な防カビ性を得ることができない場合がある。
また、精油成分の揮発量が前記上限値を超えると、精油成分の含有量等によっては、防カビ効果の持続性が低下する場合がある。
また、食品包装用シート10は、温度:25℃、湿度:50%の環境下に静置した際に、精油成分の含有量が0.5g/m2から0.1g/m2に到達するまでにかかる時間Hは、1h以上20h以下であるのが好ましく、5h以上15h以下であるのがより好ましい。これにより、食品1に対する十分な防カビ性を、より長期にわたって発揮することができる。一方、時間Hが前記下限値未満となると、精油成分の種類等によっては、十分な防カビ性を得ることができない場合がある。また、時間Hが前記上限値を超えると、精油成分の含有量等によっては、食品1を高温(25℃〜35℃)環境下で保存する場合、食品1に対する防カビ効果を長期にわたって維持しにくい場合がある。
また、食品包装用シート10の厚さ(平均厚さ)は、0.01mm以上1.0mm以下であるのが好ましく、0.02mm以上0.08mm以下であるのがより好ましい。食品包装用シート10の厚さを前記範囲内に設定することにより、食品包装用シート10は特に優れた防カビ性を発揮するものとなる。一方、前記下限値未満となると、基材層11や精油含有層12の構成材料等によっては、強度が十分に得られなくなるおそれがある。また、前記上限値を超えると、食品包装用シート10の構成材料等によっては、食品包装用シート10の柔軟性が低下する場合がある。
なお、第1のシート10aおよび第2のシート10bは、同一の構成のものであってもよいし、異なる構成のものであってもよい。例えば、第1のシート10aおよび第2のシート10bの膜厚や構成材料が、それぞれ異なるものであってもよい。
<第2実施形態>
図3は、本発明の食品包装体の第2実施形態を模式的に示す図((a)は平面図、(b)は図3(a)中のB−B線断面図)である。
以下、図3を参照しつつ、本発明の食品包装用シート、食品包装容器および食品包装体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態では、図3に示すように、食品包装袋50を構成する食品包装用シート10に開口部51が形成されている点で、前述した実施形態と異なっている。
具体的には、図3に示すように、第1のシート10aには、開口部51(開口部511a、開口部511b、開口部511cおよび開口部511d)が形成されている。また、開口部51は、第1のシート10aの、シール部52および封止部54以外の箇所に設けられている。
開口部51を設けることにより、精油成分の揮発性が特に高い場合、空間53内の圧力が高まることにより食品包装袋50が不本意に膨張するようなことを防ぐことができる。これにより、食品包装袋50の見栄えが悪くなることを的確に防止することができたり、食品包装体100の店頭での陳列のし易さが向上する。
また、このような開口部51を有することで、包装する食品1が特に青果物である場合、青果物の呼吸速度等の特性に合わせた酸素透過速度および炭酸ガス透過速度を実現することができる。その結果、食品包装体100が青果物の保存に適した酸素濃度および炭酸ガス濃度を維持することができるという効果(MA効果)を得ることができる。すなわち、MA(Modified Atmosphere)包装が実現可能となる。
なお、本実施形態では、開口部51の形状は、食品包装袋50に食品1を入れない状態で、平面視において1本の直線型(I字型)をなしているが、開口部51の形状はこれに限定されず、例えば、S字型、U字型、半円形、波型のような曲線部を有する形状、V字型、X字型、L字型、H字型、T字型、W字型、コ字型のような角部を有する形状であってもよい。また、第1の開口部511の形状は、食品包装袋50に食品1を入れない状態で、平面視において丸型、四角形型、星型等の孔を有する形状とすることも可能である。特に、食品1が青果物である場合、第1の開口部511の形状が1本の直線型をなす形状であると、食品包装袋50内(空間53)を、青果物の保存に適した酸素濃度および炭酸ガス濃度に維持し続けることが特に容易となる。
さらに、開口部51の加工は、カッターのような鋭利な刃物を用いて切ることで開口部51を形成するようにしてもよいし、所望の形状の開口部51ができるようにした型でパンチ孔を打ち抜くことで行うようにしてもよいし、レーザーによる貫通孔の加工により開口部51を形成してもよい。また、例えば、2枚の食品包装用シート10を重ね合わせ、開口部51となり得る部分以外の外周部を接合することで、接合しなかった部分を開口部51とするような形成方法であってもよい。
また、開口部51の加工時期は、特に限定されず、食品包装用シート10の製作時に行ってもよいし、食品包装用シート10を袋状とするのとほぼ同時、または袋状とした後に行ってもよい。
より具体的には、例えば、ロールの状態の食品包装用シート10に開口部51を加工する場合、開口部51は、印刷やスリット等の形成と同時並行して加工することもでき、横ピロー機や縦ピロー機等の自動包装機で食品1を包装する際に加工することもできる。また、開口部51の加工は、手作業でも可能であり袋1枚でも容易に作製可能である。
また、図3(a)に示すように、開口部511a、開口部511b、開口部511cおよび開口部511dは、それぞれ、第1のシート10aの所定の位置に偏在することなく、均一に形成されている。これにより、食品1が青果物である場合、食品包装袋50内における酸素濃度および炭酸ガス濃度に偏りが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
また、食品包装袋50に食品1を入れない状態での開口部51の長さLは、0.001mm以上25mm以下であるのが好ましく、0.01mm以上20mm以下であるのがより好ましく、0.1mm以上5mm以下であるのがさらに好ましい。開口部51の長さLを前記範囲内に設定することにより、精油成分の揮発性が特に高い場合であっても、精油成分による防カビ性の効果を損なうことなく、空間53内の圧力が高まることにより食品包装袋50が不本意に膨張することを防ぐことができる。また、食品1が青果物の場合、食品包装体100の食品1の保存により適した酸素濃度および炭酸ガス濃度をより確実に維持することができるようになり、その結果、食品包装体100はさらに優れたMA効果を発揮するものとなる。一方、開口部51の長さLが前記下限値未満であると、食品1が青果物の場合、食品包装体100が食品1の保存により適した酸素濃度および炭酸ガス濃度を維持しにくくなる場合がある。また、開口部51の長さLが前記上限値を超えると、精油成分の材料等によっては、精油成分の防カビ効果を十分に得ることができない場合がある。また、開口部51から空間53内に異物等が混入しやすくなる場合がある。
なお、開口部51の形状が丸型の孔をなすものである場合、食品包装袋50に食品1を入れない状態での開口部51の長さLは、0.01mm以上1.2mm以下であるのが好ましく、0.02mm以上0.8mm以下であるのがより好ましく、0.08mm以上0.4mm以下であるのがさらに好ましい。
以下、食品1として青果物を用いた場合について中心に説明する。
このような開口部51を有する食品包装袋50を備える食品包装体100では、その内部(空間53内)における酸素濃度は、0.04%以上19%以下であり、炭酸ガス濃度は、2%以上26%以下であることが好ましく、酸素濃度は、0.1%以上10%以下であり、炭酸ガス濃度は、5%以上15%以下であることがより好ましい。酸素濃度が前記下限値未満であったり二酸化炭素(炭酸ガス)濃度が前記上限値を超えると、包装する青果物の種類によっては、青果物はガス障害を起こして異臭、トロケおよび内部褐変等の劣化を生じやすくなるおそれがある。これに対して、酸素濃度が前記上限値を超えたり、二酸化炭素濃度が前記下限値未満であったりすると、青果物の呼吸抑制効果が小さくなる傾向を示し、青果物を長時間包装する必要がある場合等には、黄化防止、褐変防止および内容成分の減少等が起こる可能性がある。
以上のように、食品包装袋50を開口部51を有する構成とすることで、包装する青果物の呼吸速度等の特性に合わせた酸素透過速度および炭酸ガス透過速度を実現することができる。その結果、食品包装体100が上述したような酸素濃度および炭酸ガス濃度を維持することができるようになる。すなわち、MA(Modified Atmosphere)包装が実現可能となる。
さらに、食品包装袋50に対して1/2の容積の青果物を、食品包装袋50で包装した状態(以下、この状態を「状態A」と言う。)における、開口部51の最大幅Wが0.001mm以上25mm以下に設定されていることが好ましい。
このように、青果物を食品包装袋50で包装していない状態ではなく、青果物を食品包装袋50で包装した状態での開口部51の幅が食品包装袋50内における酸素濃度および炭酸ガス濃度に関与し、さらに、この開口部51の最大幅を規定することで、酸素濃度および炭酸ガス濃度を青果物の保存に適した範囲内により確実に設定することができるようになる。そして、状態Aにおける、開口部51の最大幅Wを前記範囲内に設定することで、食品包装体100が青果物の保存により適した酸素濃度および炭酸ガス濃度をより確実に維持することができるようになり、その結果、食品包装袋50がより優れたMA効果を発揮するものとなる。
また、状態Aにおける、開口部51の最大幅Wは、0.001mm以上25mm以下に設定されることが好ましいが、0.01mm以上1mm以下に設定されることがより好ましい。開口部51の最大幅Wを前記範囲内に設定することにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
さらに、食品包装袋50に対して3/4の容積の青果物を、食品包装袋50で包装した状態Bにおける、開口部の最大幅Wは、0.0013mm以上33mm以下であるのが好ましく、0.015mm以上1.5mm以下であるのがより好ましい。このように状態Aばかりでなく、食品包装袋50に対して3/4の容積の青果物を、食品包装袋50で包装した状態Bにおける、開口部51の最大幅Wを前記範囲内に設定することにより、食品包装袋50で包装する青果物の容積に関係することなく、食品包装袋50により優れたMA効果を発揮させることができるようになる。
なお、食品包装袋50の容積は、例えば、食品包装袋50を水で満水とした状態で開口部51を密閉した際に、食品包装体100中に収納される水の体積を測定することにより求められる。また、包装される青果物の容積は、この青果物をラップ等で包装し、この状態で、満水とした容器中にその全体が水中に存在するようになるまで浸すことで、かかる容器から溢れ出た水の体積を測定することにより求められる。
また、開口部51の幅とは、上述したような形状の開口部51を食品包装用シート10に形成すると、開口部51は長辺と短辺とを有するものとなるが、この開口部51の短辺の長さ(大きさ)のことを言う。また、開口部51の最大幅Wとは、開口部51中における短辺の長さの最大値のことを言い、開口部511a、開口部511b、開口部511cおよび開口部511dのそれぞれの最大幅の合計から求められる平均値を表す。さらに、後述する開口部51の長さとは、開口部51の長辺の長さのことを言い、開口部511a、開口部511b、開口部511cおよび開口部511dのそれぞれの長さの合計から求められる平均値を表す。
さらに、前記状態Aにおける、開口部51の最大幅Wと、食品包装用シート10の厚さTとの比W/Tは、0.01以上2500以下であるのが好ましく、0.25以上40以下であるのがより好ましい。W/Tを前記範囲内に設定することにより、食品包装袋50を、より確実にMA効果を発揮するものとすることができる。また、W/Tを前記下限値未満に設定した場合には、食品包装用シート10の種類によっては、食品包装用シート10に加工を施しにくくなる可能性があり、前記上限値を超えると、食品包装用シート10の種類によっては、開口部51が開きやすくなり、開口部51の幅が大きくなる傾向を示すため、目的とする酸素透過速度および炭酸ガス透過速度を超えてしまうおそれがある。
また、状態Aにおける、開口部51の長さLは、0.01mm以上25mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上5mm以下であるのがより好ましい。開口部51の最大幅Wを前記範囲内に設定するばかりでなく、開口部51の長さLを前記範囲内に設定することにより、食品包装体100が青果物の保存により適した酸素濃度および炭酸ガス濃度をより確実に維持することができるようになり、その結果、食品包装袋50がさらに優れたMA効果を発揮するものとなる。
さらに、前記状態Aにおける、開口部51の長さLと、開口部51の最大幅Wとの比L/Wは、0.2以上2500以下であるのが好ましく、2以上500以下であるのがより好ましい。
比L/Wを前記範囲内に設定することにより、食品包装体100が青果物の保存により適した酸素濃度および炭酸ガス濃度をより確実に維持することができるようになり、その結果、食品包装袋50がさらに優れたMA効果を発揮するものとなる。
また、本実施形態のように、開口部51を複数有する場合、複数の開口部51は、それぞれ同様の構成であってもよいし、異なる構成のものであってもよい。
本実施形態のように、食品包装用シート10に開口部51が形成されている場合、食品包装用シート10は、温度:25℃、湿度:50%の環境下に静置した際の24時間での精油成分の揮発量が、0.2g/m2以上5g/m2以下であるのが好ましく、0.3g/m2以上5g/m2以下であるのがより好ましく、0.5g/m2以上5g/m2以下であるのがさらに好ましい。これにより、開口部51を有する食品包装袋50は、食品1に対する十分な防カビ性を、より長期にわたって発揮することができる。
また、本実施形態のように、食品包装用シート10に開口部51が形成されている場合、食品包装用シート10は、温度:25℃、湿度:50%の環境下に静置した際に、精油成分の含有量が0.5g/m2から0.1g/m2に到達するまでにかかる時間Hは、1h以上20h以下であるのが好ましく、7h以上18h以下であるのがより好ましい。これにより、開口部51を有する食品包装袋50は、食品1に対する十分な防カビ性を、より長期にわたって発揮することができる。
<第3実施形態>
図4は、本発明の食品包装体の第3実施形態を模式的に示す図((a)は平面図、(b)は図4(a)中のC−C線断面図、(c)は図4(a)中のD−D線断面図)である。
以下、図4を参照しつつ、本発明の食品包装用シート、食品包装容器および食品包装体の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
前述した第2実施形態では、開口部51が、第1のシート10aに設けられていたが、本実施形態では、開口部51が、第1のシート10aおよび第2のシート10bの双方に設けられている。
具体的には、図4に示すように、開口部51として、第1のシート10aには、第1の開口部511(開口部511a、開口部511b、開口部511cおよび開口部511d)が形成されており、第2のシート10bには、第2の開口部512(開口部512a、開口部512b、開口部512cおよび開口部512d)が形成されている。
また、第1の開口部511および第2の開口部512は、それぞれ、食品包装袋50に食品1を入れない状態では、平面視において1本の直線型(I字型)の切り込み状をなしている。
また、第1の開口部511の開口部の長さL1は、第2の開口部512の長さL2よりも長くなっている。
ここで、第1の開口部511の長さL1とは、開口部511a、開口部511b、開口部511cおよび開口部511dのそれぞれの長さの合計から求められる平均値を表し、第2の開口部512の長さL2とは、開口部512a、開口部512b、開口部512cおよび開口部512dのそれぞれの長さの合計から求められる平均値を表す。
第1の開口部511および第2の開口部512を設けることにより、精油成分の揮発性が特に高い場合、空間53内の圧力が高まることにより食品包装袋50が不本意に膨張するようなことをさらに効果的に防ぐことができる。これにより、食品包装袋50の見栄えが悪くなることをより的確に防止することができたり、食品包装体100の店頭での陳列のし易さが向上する。
また、第1のシート10aおよび第2のシート10bの双方に開口部51を設けることにより、食品包装体100内(空間53)の通気性がさらに高まる。このため、包装する食品1が特に青果物である場合、青果物の呼吸速度等の特性に合わせた酸素透過速度および炭酸ガス透過速度を実現することができ、その結果、食品包装体100が青果物の保存に適した酸素濃度および炭酸ガス濃度を維持することができる。
以下、食品1として青果物を用いた場合について中心に説明する。
本実施形態は、食品包装袋50に食品1を入れない状態において、第1の開口部511の長さおよび第1のシート10aの厚さをそれぞれL1(mm)およびT1(mm)とし、第2の開口部512の長さおよび第2のシート10bの厚さをそれぞれL2(mm)およびT2(mm)としたとき、L1/T1>L2/T2なる関係を満足するものである。かかる関係を満足することにより、第1のシート10aは、第2のシート10bと比較して、優れた酸素透過速度および炭酸ガス透過速度を発揮するものとなる。そのため、食品包装体100の輸送時や陳列時の条件に合致した方向で、食品包装体100を収納および陳列することが可能であるため、食品包装袋50は、より優れたMA効果を発揮するものとなる。
例えば、第1のシート10aが、商品名、産地、生産者および値段等の印刷物が印刷されている印刷面であり、第2のシート10bが、印刷物が印刷されていない非印刷面である場合、かかる構成の食品包装体100は、通常、第1のシート10a(印刷面)を上側とし、第2のシート10b(非印刷面)を下側として陳列される。そのため、上側に位置する第1のシート10aから主として酸素が透過し、下側に位置する第2のシート10bから主として炭酸ガスが透過することとなる。また、上記の通り、食品包装用シート10がL1/T1>L2/T2なる関係を満足するため、第1のシート10aを上側とした食品包装体100では、酸素透過速度が炭酸ガス透過速度と比較して速くなる。したがって、適度な低酸素、高二酸化炭素環境を確実に形成することができる。
また、開口部511aと開口部512aとは、食品包装袋50に食品1を入れない状態で、平面視において、重なり合う位置に設けられている。これと同様に、開口部511bと開口部512b、開口部511cと開口部512c、および、開口部511dと開口部511dは、それぞれ、食品包装袋50に食品1を入れない状態で、平面視において、重なり合う位置に設けられている。このように、第1の開口部511および第2の開口部512は、第1のシート10aおよび第2のシート10bの厚さ方向で、それぞれ、最も近い位置に形成されているもの同士が互いに重なる位置に設けられていることが好ましい。これにより、第1の開口部511および第2の開口部512の数を同一とすることができ、L1/T1>L2/T2なる関係を満足することにより得られる効果をより確実に発揮させることができる。
また、L1/T1およびL2/T2の具体的な値としては、L1/T1は、2.5以上250以下であり、前記L2/T2は、1以上100以下であるのが好ましく、L1/T1は、10以上180以下であり、前記L2/T2は、5以上50以下であるのがより好ましい。L1/T1およびL2/T2を、それぞれ、前記範囲内に設定することにより、食品包装袋50を、より確実にMA効果を発揮するものとすることができる。また、L1/T1およびL2/T2を、前記下限値未満に設定した場合には、食品包装用シート10の種類によっては、食品包装用シート10に加工を施しにくくなる可能性があり、前記上限値を超えると、食品包装用シート10の種類によっては、第1の開口部511および第2の開口部512が開きやすくなり、目的とする酸素透過速度および炭酸ガス透過速度を超えてしまうおそれがある。
さらに、食品包装袋50に食品1を入れない状態において、第1の開口部511の長さL1は、0.05mm以上12mm以下であり、第2の開口部512の長さL2は、0.01mm以上5mm以下であるのが好ましく、第1の開口部511の長さL1は、0.3mm以上8mm以下であり、第2の開口部512の長さL2は、0.05mm以上3mm以下であるのがより好ましい。前記上限値を超えると、揮発した精油成分が必要以上に食品包装袋50の外部へ飛散してしまう場合がある。また、食品包装用シート10の種類やそれらの厚さによっては、食品包装用シート10が変形することに起因して第1の開口部511および第2の開口部512が必要以上に開きやすくなるため、酸素透過速度および炭酸ガス透過速度の制御が難しくなるおそれがある。一方、前記下限値未満であると、精油成分の揮発性が特に高いものである場合、空間53内の圧力が高まることにより食品包装袋50が不本意に膨張しやすくなることがある。また、前述したような効果を得るために、多数の開口部51を形成する必要が生じ、その結果、食品包装用シート10の種類やそれらの厚さによっては、加工が困難となり、食品包装袋50の量産に向かなくなるおそれがある。
また、第1のシート10aの厚さT1および第2のシート10bの厚さT2は、それぞれ、0.01mm以上0.1mm以下であるのが好ましく、0.01mm以上0.065mm以下であるのがより好ましい。第1のシート10aの厚さT1および第2のシート10bの厚さT2を前記範囲内に設定することにより、それぞれが有する第1の開口部511および第2の開口部512から酸素および炭酸ガスを確実に透過させることができる。また、前記下限値未満となると食品包装用シート10の材質によっては、強度が十分に得られなくなるおそれがある。さらに、前記上限値を超えると、コストが高くなるおそれがある。
以上、本発明の食品包装用シート、食品包装容器および食品包装体の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の食品包装用シート、食品包装容器および食品包装体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前記実施形態では、食品用包装袋は、2枚の食品包装用シートを重ね合わせて袋状に形成したものとして説明したが、これに限定されず、例えば、1枚の食品包装用シートを2つに折り重ね、対向する2辺を接合することにより袋状にしたものであってもよい。
なお、1枚の食品包装用シートを2つに折り重ねて食品包装袋を形成した場合には、折り曲げた部分を境にして、一方の面を第1のシートとし、他方の面を第2のシートとして用いることとする。
また、食品用包装袋としては、例えば、ガゼット袋等の形態の袋であってもよく、さらには、トレー、カップ等に食品を充填し、これを食品用包装袋で包装する形態のものであってもよい。
また、前記実施形態では、食品包装袋は、全体が食品包装用シートで構成されているものであったが、食品包装袋は、その全体が食品包装用シートで構成されていなくてもよい。例えば、食品包装袋は、精油含有層を有する食品包装用シートと、精油含有層を有さない基材層のみで構成されたシートとを組み合わせたものであってもよい。
また、前記実施形態では、本発明の食品包装容器の一例として、食品包装袋について説明したが、食品包装容器の形態は、袋状に限定されない。例えば、トレー、カップ等であってもよい。また、食品包装容器は、1つの部材で構成されたものに限らず、複数の部材で構成されたものであってもよい。この場合、複数の部材のうちの1つの部材のみが本発明の食品包装用シートで構成されたものであってもよい。例えば、一部が開口した容器本体と、容器本体の開口を塞ぐように設けられた蓋体との2部材で構成された食品包装容器である場合、蓋体のみが本発明の食品包装用シートで構成されたものであってもよい。
また、前記実施形態では、図2に示すように、食品包装用シートは、基材層と精油含有層との2層構造のものとして説明したが、これに限定されない。例えば、精油含有層の基材と反対の面側に、精油含有層から剥離可能に構成された、精油成分の揮発を防止する機能を有する保護層を設けてもよい。このような保護層を設けることにより、食品包装用シートにより食品を包装する前において、精油含有層の精油成分が不本意に揮発することを防止することができる。また、食品を包装する際には、保護層を剥離すればよい。
また、前記実施形態では、図2に示すように、基材層と精油含有層との界面は、直線状をなしているが、基材層と精油含有層との界面は、これに限定されない。例えば、その界面が、凹凸状をなすものであってもよい。これにより、精油含有層の基材層に対する密着性がさらに優れたものとなる。また、基材層と精油含有層との明確な界面が存在していなくてもよく、例えば、界面付近においては、基材層の材料と精油含有層の材料とが混在した状態で存在していてもよい。
また、前記実施形態では、図2に示すように、精油含有層は、基材層の一方の面に全体的に設けられていたが、例えば、精油含有層は、基材層の一方の面側に部分的に設けられていてもよい。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
1.食品包装用シート、食品包装袋および包装体(食品包装体)の検討
(実施例1A)
1−1.包装体の製造
<1>食品包装用シートの製造
まず、コリアンダーの種子をミキサーにて粉砕したものを蒸留器に入れた。
熱と蒸気で蒸すことにより芳香成分を含んだオイルが蒸気となって気化したものをパイプに集め冷却した後、液体に還元したもののうち、表面に浮かんだものを集めたものを抽出物として使用した。
この抽出物をGC−MS法にて分析したところ、リナロール(C10H18O)が68.5%含まれていた。
次に、基材層としての、防曇加工を施した厚さ0.04mmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に、コリアンダーの抽出物を塗布して精油含有層を形成した。これにより、食品包装用シートを得た。なお、精油含有層を形成する際には、コリアンダーの抽出物を、食品包装用シートにおける単位面積当たりの含有量が2g/m2となるように塗布した。
<2>食品包装袋の製造
得られた食品包装用シートの一部を切りとり、互いに寸法が等しい2枚の四角形状のシート(第1のシートおよび第2のシート)を用意した。その後、第1のシートおよび第2のシートを、それぞれの精油含有層が内側になるように、互いの各辺同士を重ね合わせ、3辺をヒートシールにより融着した。これにより、内寸130×280mmの食品包装袋を作製した。
また、同様の操作を行い、この食品包装袋を多数個製造した。
<3>包装体(食品包装体)の製造
次に、滅菌されたシャーレを用意し、シャーレ内に寒天培地を作成した。次いで、予め、別途培養したカビ菌(Botrytis cinerea)を1白金耳とり、前記寒天培地の中央付近に置いた。
次に、1つの食品包装袋内に、食品の代わりに、前記シャーレを入れた。このとき、シャーレの底部が、第1のシート側に位置するようにし、シャーレの開口側が、第2のシート側に位置するようにした。そして、食品包装袋の開口している部分(口部)をヒートシールで密封し、包装体(食品包装体)を得た。
また、同様の操作を繰り返し、この包装体を2個製造した。
(実施例2A〜実施例13A、比較例1A〜比較例4A)
食品包装用シートの構成を表1に示すようにした以外は、前記実施例1Aと同様にして
食品包装用シート、食品包装袋および包装体を得た。
なお、実施例11A、実施例12A、実施例13A、比較例3A、比較例4Aでは、表1に示す精油成分の化合物が液体であるため、粉砕、蒸留、還元、抽出の作業を行わず、そのまま、基材層に精油含有層として塗布を行った。
各種化合物の化学式および沸点は以下の通りである。
リナロール(C10H18O;198℃)
ペリルアルデヒド(C10H14O;237℃)
チモール(C10H14O;234℃)
リナロール(C10H18O;198℃)
シトラール(C10H18O;229℃)
1,8−シネオール(C10H14O;176℃)
テルピネン−4−オール(C10H18O;204℃)
シトロネラール(C10H18O;204℃)
ミルセン(C10H16;167℃)
ピネン(C10H16;156℃)
(実施例14A)
食品包装用シートの構成を表1に示すようにし、第1のシートに長さ4.7mmのI字型の開口部を4個設けたこと以外は、前記実施例1Aと同様にして、食品包装用シート、食品包装袋および包装体を得た。
4個の開口部は、食品包装用シートを製造した後、第1のシートと第2のシートとを重ね合わせて食品包装袋を製造する前に、第1のシートにデザインナイフを4箇所で押し当てることにより、形成した。
(実施例15A、実施例16A、比較例5A)
食品包装用シートの構成を表1に示すようにし、第1のシートに設ける4個の開口部を、その長さ(4個の開口部の平均値)が表1に示したものとなるように形成したこと以外は、前記実施例14Aと同様にして、食品包装用シート、食品包装袋および包装体を得た。
実施例14A〜16A、比較例5Aについて、開口部は、それぞれ、第1のシートの所定の位置に偏在することなく、均一に形成した。
表1に、各実施例および各比較例の包装袋の構成を示した。
なお、表1中、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを「OPP」、ポリエチレンテレフタレートを「PET」、ポリ乳酸フィルムを「PLA」、で示した。
1−2.包装体の保管
各実施例および各比較例で得られた、2つ製造したうちの一方の包装体を、それぞれ、平板上に第1のシートが上側となるように載置した状態で、25℃で3日間保管した。
また、各実施例および各比較例で得られた、2つ製造したうちの他方の包装体を、それぞれ、平板上に第1のシートが上側となるように載置した状態で、25℃で6日間保管した。
1−3.評価
<1>防カビ性の評価
<1−1>防カビ性(3日間)の評価
25℃で3日間保管した各実施例および比較例の包装体について、それぞれ、目視にて、カビの発生状況を観察し、以下の評価基準に従い評価した。
A:カビの範囲は全く広がっていなかった。
B:カビの範囲はほとんど広がっていなかった。
C:カビの範囲はほとんど広がっていなかったが、その場で増殖していた。
D:カビの範囲が広がっていた。
E:カビが全体的に広がっていた。
<1−2>防カビ性(6日間)の評価
25℃で6日間保管した各実施例および比較例の包装体について、それぞれ、目視にて、カビの発生状況を観察し、以下の評価基準に従い評価した。
A:カビの範囲は全く広がっていなかった。
B:カビの範囲はほとんど広がっていなかった。
C:カビの範囲はほとんど広がっていなかったが、その場で増殖していた。
D:カビの範囲が広がっていた。
E:カビが全体的に広がっていた。
表2に、各実施例および各比較例の評価結果を示した。
表2の防カビ性(3日間)の評価結果から、各実施例の包装体は、食品包装袋内のカビの繁殖が抑制されていた。これにより、各実施例の包装体は、食品包装袋内に食品を設置した場合であっても、その食品にカビが繁殖することを抑えることができると推測される。
これに対して、精油含有層として、CnHmOpで表わされる化合物を含有しないもの(ただしn、m、pは8≦n≦12、8≦m≦24、1≦p≦5を満たす整数である。)を使用した各比較例の包装体では、満足する結果が得られなかった。