JP2016061304A - 自動変速機 - Google Patents

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優作 長尾
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優作 長尾
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Abstract

【課題】ハブ部材に接合されるキャリヤの第2支持体の接合部にあって肉厚を厚くすることなく、かつ耐久性の向上を可能とする。【解決手段】キャリヤ本体50は、第1支持体51と第2支持体52とによりロングピニオンギヤP3及びショートピニオンギヤP4を支持している。第2支持体52は、ロングピニオンギヤP3を支持する薄板部52aとショートピニオンギヤP4を支持する厚肉部52bとを有しており、厚肉部52bのそれぞれには、外周側がフランジ部60Fに接合される接合面52fとなる接合部52cが形成されている。接合部52cの付根部分である付根部52dには、フランジ部60Fを突き当てさせる段差部52gが形成されており、厚肉部52bの周方向の端部には、段差部52gの段差を小さくする凹部70F,70Rが形成されている。この凹部70F,70Rにより段差に生じる応力が分散され、肉厚を厚くすることなく、耐久性を向上できる。【選択図】図4

Description

この技術は、車両等に搭載される自動変速機に係り、詳しくは、ショートピニオンギヤ及びロングピニオンギヤを回転自在に支持するキャリヤに、係止要素により係止されるハブ部材が接合される構造を有する自動変速機に関する。
例えば車両等に搭載される自動変速機の中には、内燃エンジン等の駆動源の回転を減速した減速回転を出力する減速プラネタリギヤと、ショートピニオンギヤ及びロングピニオンギヤを回転自在に支持するキャリヤを有するラビニヨ型のプラネタリギヤセットとを組合せて、例えば前進6速段以上の多段変速を可能とした自動変速機がある。このような自動変速機にあっては、ラビニヨ型のプラネタリギヤセットの外周側にキャリヤをケースに対して係止するブレーキやワンウェイクラッチが配設されたものがある(特許文献1参照)。
このキャリヤは、ロングピニオンギヤを支持する薄板状の薄板部(特許文献1の第2フランジ部33)とショートピニオンギヤを支持する厚肉部(特許文献1のブリッジ部55)とを有する支持体(特許文献1の第2キャリヤ本体34)を有しており、支持体から軸方向に延びるように形成された接合部の外周側の接合面(特許文献1の円弧面)に、ブレーキのハブ部材(ワンウェイクラッチのインナーレースとなる部材)が溶接等により接合されており、当該ブレーキを係止した場合やワンウェイクラッチが係合した場合に、そのハブ部材の回転が固定されることでキャリヤの回転を固定する。
特開2006−125425号公報
ところで、ラビニヨ型のプラネタリギヤセットには、上述のようにショートピニオンギヤとロングピニオンギヤとが備えられており、特に伝達するトルクが大きいと回転時には回転方向に大きな力が発生し、かつ互いに噛合するショートピニオンギヤとロングピニオンギヤとの回転方向が異なるため、プラネタリギヤセットの中心に対して互いに回転方向反対側に力が発生する。また、ショートピニオンギヤとロングピニオンギヤとには、インボリュート歯車形状が形成されているが、その形状に伴い、それらギヤの中心には互いに反対方向に押される力が発生する。さらに、ショートピニオンギヤとロングピニオンギヤとは、一般にスパーギヤとなっているため、トルク伝達時にはそれぞれにスラスト力が発生し、それらギヤには軸方向に反対方向のスラスト力が発生する。そして、例えば減速プラネタリギヤから減速回転がサンギヤに入力される場合など、大きなトルクがショートピニオンギヤやロングピニオンギヤに作用すると、それらを支持しているキャリヤの支持体には、例えば支持体の全体を内外周方向に変形させる大きな力が発生することになる。
上述のようにキャリヤの回転がブレーキやワンウェイクラッチにより固定され、かつ上記の変形させる方向の大きな力が発生する状態では、ハブ部材とキャリヤの支持体とを接合した部分、特に、キャリヤの支持体の接合部、特に接合部の付根部分に大きな応力が集中する。このため、従来はこの接合部の肉厚を厚くすることで、接合部における耐久性の向上を図っていた。しかしながら、ギヤ比の設定によっては、ロングピニオンギヤの径が小径化すること或いはショートピニオンギヤの径が大径化することによってリングギヤの内径が支持体に近づくことになるため、接合部の肉厚を外周側に向けて厚くするスペースがなくなり、耐久性の向上が従来の手法では困難となるという問題があった。
そこで、ハブ部材に接合されるキャリヤの第2支持体の接合部にあって肉厚を厚くすることなく、かつ耐久性の向上を可能とする自動変速機を提供することを目的とするものである。
本実施の形態に係る自動変速機(1)は、第1サンギヤ(S2)と、第2サンギヤ(S3)と、リングギヤ(R2)と、前記第1サンギヤ(S2)に噛合するショートピニオンギヤ(P4)と前記第2サンギヤ(S3)、前記ショートピニオンギヤ(P4)、及び前記リングギヤ(R2)に噛合するロングピニオンギヤ(P3)とをキャリヤ本体(50)により回転自在に支持するキャリヤ(CR2)と、を有するプラネタリギヤセット(PU)と、
前記キャリヤ(CR2)の外周側に配置され、前記キャリヤ本体(50)に接合されたハブ部材(60)と、
前記ハブ部材(60)の回転をケース(6)に対して係止可能な係止要素(B−2,F−1)と、を備えた自動変速機(1)において、
前記キャリヤ本体(50)は、前記ショートピニオンギヤ(P4)の一端と前記ロングピニオンギヤ(P3)の一端とを支持する第1支持体(51)と、中空円板状に形成された薄板部(52a,152a)と該薄板部(52a,152a)と一体に形成されると共に周方向の複数箇所に形成された厚肉部(52b,152b)とを有し、前記厚肉部(52b,152b)と前記薄板部(52a,152a)が周方向に交互に配置され、前記ショートピニオンギヤ(P4)の他端を前記厚肉部(52b,152b)で支持すると共に前記ロングピニオンギヤ(P3)の他端を前記薄板部(52a,152a)で支持する第2支持体(52,152)と、を有し、
前記ハブ部材(60)は、前記係止要素(B−2,F−1)と係合するドラム部(60D)と、前記ドラム部(60D)から内周側に延びるフランジ部(60F)とを有し、
前記厚肉部(52b,152b)のそれぞれは、外周側にて軸方向に延び、外周側が前記フランジ部(60F)に接合される接合面(52f,152f)となる接合部(52c,152c)と、前記接合部(52c,152c)の付根にて前記フランジ部(60F)を軸方向に前記厚肉部(52b,152b)に突き当てさせる段差部(52g,152g)と、前記段差部(52g,152g)から軸方向に延びると共に前記厚肉部(52b,152b)の周方向の端部に形成された凹部(70F,70R,170F,170R)と、を有することを特徴とする。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
本自動変速機によると、第2支持体の接合部に変形させる方向の大きな力が生じ、付根部に応力が集中する際、段差を小さくする凹部により応力が分散されるので、接合部の肉厚を厚くすることなく、耐久性を向上することができる。そして、接合部の肉厚を厚くすることを防止できるので、大きなトルクを伝達することを可能とするものでありながら、リングギヤ、ロングピニオンギヤ、及びショートピニオンギヤの配置間隔を変更することを不要とすることもできるし、ショートピニオンギヤの外径を大きくすることも可能とすることができる。
本実施の形態に係る自動変速機を示すスケルトン図。 本実施の形態に係る自動変速機の係合表。 本実施の形態に係る自動変速機の速度線図。 本実施の形態に係る自動変速機の一部を示す断面図。 第1の実施の形態に係るキャリヤの第2支持体を示す図で、(a)は正面図、(b)はA矢視図、(c)はB−B矢視断面図、(d)がC矢視図。 第1の実施の形態に係るキャリヤの第2支持体を示す斜視図。 第2の実施の形態に係るキャリヤの第2支持体を示す斜視図。
<第1の実施の形態>
以下、本第1の実施の形態を図1乃至図6に沿って説明する。なお、本自動変速機1は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプ等の車輌に搭載されて好適な自動変速機であり、図1、図4中における左右方向が実際の車輌搭載状態における左右方向(或いは左右逆方向)に対応するが、説明の便宜上、エンジン等の駆動源側である図中右方側を「前方側」、図中左方側を「後方側」というものとする。
[自動変速機の概略構成]
まず、本自動変速機1の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFFタイプの車輌に用いて好適な自動変速機1は、前方側に、ロックアップクラッチ2aを有するトルクコンバータ2が配置されており、後方側に、変速機構3、カウンタシャフト部4、及びディファレンシャル部5が配置されている。
該トルクコンバータ2は、例えば駆動源としてのエンジン(不図示)の出力軸10と同軸上である変速機構3の入力軸7を中心とした軸上に配置されており、該変速機構3は、該入力軸7を中心とした軸上に配置されている。また、カウンタシャフト部4は、それら入力軸7と平行な軸上であるカウンタシャフト12上に配置されており、ディファレンシャル部5は、該カウンタシャフト12と平行な軸上に左右ドライブシャフト15,15を有する形で配置されている。
なお、図1に示すスケルトン図は、自動変速機1を平面的に展開して示しているものであって、上記入力軸7と、カウンタシャフト12と、左右ドライブシャフト15,15とは、側面視で三角形状の位置関係である。
上記変速機構3には、入力軸7上において、プラネタリギヤ(減速回転出力部)DP及びプラネタリギヤユニット(プラネタリギヤセット)PUが備えられている。上記プラネタリギヤDPは、第1のサンギヤS1、第1のキャリヤCR1、及び第1のリングギヤR1を備えており、該第1のキャリヤCR1に、第1のサンギヤS1に噛合するピニオンギヤP2及び第1のリングギヤR1に噛合するピニオンギヤP1を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
一方、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素として第2のサンギヤ(第1サンギヤ)S2、第3のサンギヤ(第2サンギヤ)S3、第2のキャリヤCR2、及び第2のリングギヤR2を有し、該第2のキャリヤCR2に、第2のサンギヤS2に噛合するショートピニオンギヤP4と、第3のサンギヤS3、ショートピニオンギヤP4、及び第2のリングギヤR2に噛合するロングピニオンギヤP3とを有している、いわゆるラビニョ型のプラネタリギヤである。
上記プラネタリギヤDPの第1のサンギヤS1は、ケース6に対して回転が固定されている。また、上記第1のキャリヤCR1は、上記入力軸7に接続されて、該入力軸7の回転と同回転(以下、「入力回転」という。)になっていると共に、第4のクラッチC−4に接続されている。更に、第1のリングギヤR1は、該固定された第1のサンギヤS1と該入力回転する第1のキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1のクラッチC−1及び第3のクラッチC−3に接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUの第3のサンギヤS3は、第1のブレーキB−1に接続されてケース6に対して固定自在となっていると共に、上記第4のクラッチC−4及び上記第3のクラッチC−3に接続されて、第4のクラッチC−4を介して上記第1のキャリヤCR1の入力回転が、第3のクラッチC−3を介して上記第1のリングギヤR1の減速回転が、それぞれ入力自在となっている。また、上記第2のサンギヤS2は、第1のクラッチC−1に接続されており、上記第1のリングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、上記第2のキャリヤCR2は、入力軸7の回転が入力される第2のクラッチC−2に接続されて、該第2のクラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、第1のワンウェイクラッチ(係止要素)F−1及び第2のブレーキ(係止要素)B−2に接続されて、該第1のワンウェイクラッチF−1を介してケース6に対して一方向の回転が規制されると共に、該第2のブレーキB−2を介して回転がケース6に対して固定自在(係止可能)となっている。そして、上記第2のリングギヤR2は、カウンタギヤ8に接続されている。
また、上記カウンタギヤ8には、上記カウンタシャフト部4のカウンタシャフト12上に固定されているカウンタドリブンギヤ11が噛合しており、該カウンタシャフト12には、外周面上に形成されている出力ギヤ12aを介してディファレンシャル部5のギヤ14が噛合している。そして、該ギヤ14は、ディファレンシャルギヤ13に固定されており、ディファレンシャルギヤ13を介して左右ドライブシャフト15,15に接続されている。
以上のように構成された自動変速機1は、図1のスケルトンに示す各第1〜第4のクラッチC−1〜C−4、第1及び第2ブレーキB−1,B−2、第1のワンウェイクラッチF−1が、図2の係合表に示す組み合わせで係合又は解放制御されることにより、図3の速度線図のような回転数比で、前進1速段(1st)〜前進8速段(8th)、及び後進1速段(Rev1)〜後進2速段(Rev2)が達成される。なお、本実施の形態においては、後進1速段及び後進2速段を達成するものを説明しているが、後進1速段だけを用いて、後進2速段を使用しないように自動変速機1を設計してもよい。
なお、図3の速度線図に示すように、プラネタリギヤDPによってエンジンの回転を減速した減速回転が出力可能となっており、プラネタリギヤユニットPUにおいて、前進1速段では、第2のサンギヤS2に減速回転を入力すると共に第1のワンウェイクラッチF−1の係合により第2のキャリヤCR2の回転を固定することで第2のリングギヤR2から前進1速段の回転を出力し、後進1速段では、第3のサンギヤS3に減速回転を入力すると共に第2のブレーキB−2により第2のキャリヤCR2の回転を固定することで第2のリングギヤR2から後進1速段の回転を出力することになる。
[変速機構の後方部分の構造]
続いて、自動変速機1(変速機構3)の後方側部分の詳細構造を図4に沿って説明する。変速機構3は、その中心部分に、上記入力軸7を備えており、該入力軸7の前方側は、ケース6に回転自在に支持されていると共に、該入力軸7の後方側は、ケース6に形成されたボス部6aに回転自在に支持されている。
上記入力軸7の外周側には、該入力軸7を中心として、上述したラビニョ型のプラネタリギヤユニットPUがカウンタギヤ8の後方側に配設されている。入力軸7のその直ぐ外周側には、スリーブ状に形成された第2のサンギヤS2が該入力軸7に対して相対回転自在に配置されている。また、入力軸7には、外周側にフランジ状に延びるフランジ部7aが形成されており、第2のサンギヤS2は、入力軸7のフランジ部7aに対して軸方向に位置決め規制されていると共に、第3のサンギヤS3に対して軸方向に位置決め規制されている。第2のサンギヤS2の外周側には、スリーブ状に形成された第3のサンギヤS3が該入力軸7に対して相対回転自在となるように配置されている。なお、第2のサンギヤS2の前方側は、上述した第3のクラッチC−3や第4のクラッチC−4に連結される連結部材にスプライン係合されている。また、第3のサンギヤS3の前方側は、上述した第1のクラッチC−1に連結される連結部材にスプライン係合されている。
上記第2のサンギヤS2及び第3のサンギヤS3の外周側には、第2のキャリヤCR2が配置されている。第2のキャリヤCR2は、大まかに、第1支持体51と第2支持体52とにより複数のロングピニオンギヤP3及び複数のショートピニオンギヤP4を回転自在に支持するキャリヤ本体50を構成している。第1支持体51は、中空円板状の側板部51aと該側板部51aから外周側にドラム状に延設されたハブ部51bとを有しており、そのうちの側板部51aには、ロングピニオンギヤP3を回転自在に支持するピニオンシャフト53の後端部が嵌合されて固定される嵌合孔51HLと、ショートピニオンギヤP4を回転自在に支持するピニオンシャフト54の後端部が嵌合されて固定される嵌合孔51HSとが形成されており、つまり第1支持体51は、ロングピニオンギヤP3及びショートピニオンギヤP4の一端側を回転自在に支持している。また、ハブ部51bの外周側には、後述する第2のクラッチC−2の内摩擦板21bがスプライン係合するスプライン部51sが形成されており、さらにハブ部51bの先端には、外周側に鍔状に屈曲形成された鍔部51cが形成されている。なお、鍔部51cは、後述のハブ部材60の接合面60c及びフランジ部60Fに溶接等により接合されている。
一方、上記第2支持体52は、ロングピニオンギヤP3のピニオンシャフト53の前端部に対応する部分が薄肉の薄板部52aとして形成されていると共に、ショートピニオンギヤP4のピニオンシャフト54の前端部に対応する部分が薄板部52aに対して肉厚の厚肉部52bとなるように形成されており(図5及び図6参照)、厚肉部52bは、ロングピニオンギヤP3が存在しない部分に、複数のロングピニオンギヤP3と周方向に対して交互に配置されている。薄板部52aには、ロングピニオンギヤP3を回転自在に支持するピニオンシャフト53の前端部が嵌合されて固定される嵌合孔52HLが形成されており、また、厚肉部52bには、ショートピニオンギヤP4を回転自在に支持するピニオンシャフト54の前端部が嵌合されて固定される嵌合孔52HSが形成されており、つまり第2支持体52は、ロングピニオンギヤP3及びショートピニオンギヤP4の一端側を回転自在に支持している。
厚肉部52bの外周側からは、後述のハブ部材60が接合される部分的に筒状の接合部52cが軸方向に延びるように形成されている。詳しくは図5及び図6に沿って後述する接合部52cには、ハブ部材60のフランジ部60Fの先端部分が溶接等により接合され、上述のように第1支持体51の鍔部51cにフランジ部60Fが溶接等で接合されることで、第1支持体51と第2支持体52とが一体的なキャリヤ本体50として構造体を構成している。
一方、プラネタリギヤユニットPUの後方部分の外周側には、第2のクラッチC−2が配置されている。第2のクラッチC−2は、複数の外摩擦板21a及び複数の内摩擦板21bからなる摩擦板21と、その摩擦板21を押圧駆動して係合自在にする油圧サーボ20と、を有して構成されている。
該油圧サーボ20は、クラッチドラム22、ピストン部材23、リターンプレート24、リターンスプリング25を有しており、これらにより、作動油室26、キャンセル油室27を構成している。クラッチドラム22は、内周側部材22Aと外周側部材22Bとが例えば溶接されて一体に構成されている。内周側部材22Aの先端は、上記入力軸7のフランジ部7aに例えば溶接等により固着されていると共に、内周側部材22Aの内周側は、環状部材81を介してケース6のボス部6aに対して回転自在に支持されている。外周側部材22Bは、上記摩擦板21の外周側まで軸方向にドラム状に延びており、内周側が上記外摩擦板21aにスプライン係合している。この外周側部材22Bの先端部には、スナップリング29が嵌合されており、摩擦板21の前方への移動が規制されている。
上記クラッチドラム22の前方側は、ピストン部材23と対向する部分が、上記作動油室26を構成するためのシリンダとして形成されている。また、内周側部材22Aには、ピストン部材23が軸方向摺動自在に嵌合されていると共に、リターンプレート24がスナップリング28によって位置決めされる形で配設されている。上記ピストン部材23は、上述のクラッチドラム22の前方側に対向して軸方向移動自在に配置されており、該クラッチドラム22との間に油密状の作動油室26を構成している。また、ピストン部材23の外周側は上記摩擦板21に対抗配置されている。リターンプレート24は、その後方に配置されたピストン部材23との間に、リターンスプリング25が縮設されると共に油密状のキャンセル油室27を構成している。なお、上記リターンプレート24は、上記リターンスプリング25の付勢力に基づき前方側に常時付勢されて、つまりクラッチドラム22に対して固定された状態となっている。
以上のように構成された第2のクラッチC−2は、ケース6内の油路から環状部材81の油路を介して作動油室26に作動油圧が供給されると、リターンスプリング25の付勢力に抗してピストン部材23を前方側に押圧駆動し、摩擦板21を係合させ、クラッチドラム22、入力軸7と第2のキャリヤCR2とを回転方向に駆動連結する。反対に、作動油室26から作動油圧が排出されると、キャンセル油室27の油により作動油室26の遠心油圧がキャンセルされつつリターンスプリング25の付勢力によりピストン部材23が後方側に移動し、摩擦板21を解放させる。
上記第2のクラッチC−2の前方側には、上述したようにキャリヤ本体50に接続されたハブ部材60が配置されている。ハブ部材60は、大まかにドラム状に形成されたドラム部60Dと、ドラム部60Dの後方側の端部から内周側にフランジ状に延びるように形成されたフランジ部60Fと、により一体的な部品として構成されている。そのうちのドラム部60Dは、後方部分が第2のブレーキB−2の摩擦板31の内摩擦板31bにスプライン係合するスプライン部60sが形成されたハブ部60aとなっており、前方部分が第1のワンウェイクラッチF−1のインナーレースとして機能するインナーレース部60bとなっている。一方のフランジ部60Fは、上述した第1支持体51と第2支持体52とをそれぞれ溶接等により接合する部分となっており、該フランジ部60Fの後方側に形成された接合面60cに第1支持体51の鍔部51cが嵌合されて該フランジ部60Fに突き当てられた状態で溶接等により接合されている。また、フランジ部60Fの先端部60Faは、詳しくは後述する第2支持体52の接合面52fに嵌合されて付根部52dの段差に突き当てられた状態で溶接等により接合されている。
上記第2のクラッチC−2の外周側から上記ハブ部材60のハブ部60aの外周側にかけては、第2のブレーキB−2が配置されている。該第2のブレーキB−2は、複数の外摩擦板31a及び複数の内摩擦板31bからなる摩擦板31と、この摩擦板31を係止させる油圧サーボ30とを備えている。上記内摩擦板31bは、上述したハブ部材60にスプライン係合し(つまりドラム部60Dに係合し)、第2のキャリヤCR2に駆動連結されている。また、外摩擦板31aは、ケース6の内周面に形成されたスプライン部6sにスプライン係合されている。
上記油圧サーボ30は、上記ケース6の内面に形成されたシリンダ部32、ピストン部材33、リテーナプレート34、及びリターンスプリング35を有しており、該シリンダ部32と該ピストン部材33とにより作動油室36を構成している。該ピストン部材33は、先端部分が櫛歯状に形成されており、複数のリターンスプリング35の周方向の間から摩擦板31に対抗配置されるように延設されている。上記リテーナプレート34は、スナップリング39によりケース6に対して前方側への移動が規制されており、該リテーナプレート34とピストン部材33との間には、リターンスプリング35が縮設されている。
以上のように構成された第2のブレーキB−2は、図示を省略したケース6内の油路から作動油室36に作動油圧が供給されると、リターンスプリング35の付勢力に抗してピストン部材33を前方側に押圧駆動し、摩擦板31をケース6に対して係止させ、ハブ部材60を介して第2のキャリヤCR2を回転方向に固定する。反対に、作動油室36から作動油圧が排出されると、リターンスプリング35の付勢力によりピストン部材33が後方側に移動し、摩擦板31を解放させる。
第2のブレーキB−2の摩擦板31の前方側にあって、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、第1のワンウェイクラッチF−1が配置されている。第1のワンウェイクラッチF−1は、大まかに、上述したインナーレース部60bと、アウターレース72と、それらの間に介在して該インナーレース部60b(つまりハブ部材60)の回転方向を一方向に規制する一方向規制機構(例えばローラカム機構やスプラグ機構など)73と、を有して構成されており、つまり第1のワンウェイクラッチF−1は、ハブ部材60のドラム部60Dに係合している。アウターレース72は、その外周面がケース6のスプライン部6sにスプライン係合しており、両側面がスナップリング78,79によって規制されることによって、ケース6に対して位置決め固定されている。
上記インナーレース部60bを有するハブ部材60の内周側には、ロングピニオンギヤP3に噛合する第2のリングギヤR2が収納される形で配置されている。該第2のリングギヤR2の前方部分は、スプライン形状に形成されており、接続部材41が内周側からスプライン係合している。また、接続部材41は、その内周側がカウンタギヤ8にスプライン係合されており、つまり第2のリングギヤR2、接続部材41、カウンタギヤ8が一体的に駆動連結されている。上記カウンタギヤ8は、外周側の歯面が上述のカウンタドリブンギヤ11(図1参照)の歯面に噛合している。なお、カウンタギヤ8は、ケース6に支持されたセンターサポート部材によりアンギュラボールベアリング(又はテーパードローラ等)を介して回転自在に支持されている。
[第2支持体の詳細構造]
続いて、第2のキャリヤCR2のキャリヤ本体50の第2支持体52の詳細構造について、図5及び図6に沿って説明する。図5(a)〜(d)及び図6に示すように、第2支持体52は、薄板状に形成された薄板部52aと、その薄板部52aに対して例えば周方向複数箇所(4箇所)に肉厚に形成された厚肉部52bとを有しており、薄板部52aと厚肉部52bとは、周方向に交互に配置されている。薄板部52aには、ロングピニオンギヤP3を回転自在に支持するピニオンシャフト53(図4参照)が嵌合される嵌合孔52HLが貫通形成され、また、厚肉部52bのそれぞれには、ショートピニオンギヤP4を回転自在に支持するピニオンシャフト54(図4参照)が嵌合される嵌合孔52HSが貫通形成されている。なお、第2支持体52は、全体形状が大まかに鍛造により形成され、上記嵌合孔52HL及び上記嵌合孔52HSがドリル等により切削されて形成される。
厚肉部52bの外周側の軸方向端部には、軸方向(変速機構の入力軸7の方向)にそれぞれが部分的な筒状となる接合部52cが一体に形成されており、接合部52cの外周側には、旋盤等により切削されることにより、上記ハブ部材60が接合される接合面52fが形成されている。そのため、厚肉部52bに対する接合部52cの付根部分となる付根部52dには、接合部52cの接合面52fと厚肉部52bの外周面52eとの間に段差となる段差部52gが形成されている。この付根部52dの段差部52gは、自動変速機1の組付時にあって、ハブ部材60のフランジ部60Fが接合面52fに嵌合される際に、該フランジ部60Fが軸方向に突き当てられることで位置決めを行う部位となっている。
そして、厚肉部52bの付根部52dの周方向の両側の端部には、上述したように鍛造により第2支持体52の全体形状を形成するときに同時に形成された凹部70F,70Rが、それぞれの付根部52dに対して設けられている。この凹部70F,70Rは、厚肉部52bの外周面52eよりも内径側に凹んでおり、かつその凹みの底部分が接合部52cの接合面52fよりも外径側となるように形成されており、つまり凹部70F,70Rは、段差部52gから軸方向に延びるように形成されており、上記接合面52fと上記外周面50eとの段差を小さくするような形状となっている。
次に、前進時と後進時に接合部52cの付根部52dに生じる力について説明する。なお、前進時にあって最も大きな力(トルク)が生じるのは、エンジンの回転が最も減速される前進1速段であり、後進時にあって最も大きな力(トルク)が生じるのは、駆動源の回転が最も減速される後進1速段であるので、それぞれ前進1速段の状態と後進1速段の状態を例として説明する。
前進1速段(1st)では、図2及び図3に示すように、第1のクラッチC−1が係合され、第1のワンウェイクラッチF−1が係止される。すると、図1に示すように、ケース6に固定された第1のサンギヤS1と入力軸7からエンジンの回転が入力される第1のキャリヤCR1とによって第1のリングギヤR1が減速回転し、つまりプラネタリギヤDPから第1のクラッチC−1に減速回転が出力される。この減速回転は、第1のクラッチC−1を介して第2のサンギヤS2に入力される。一方、第2のキャリヤCR2は、ハブ部材60を介して第1のワンウェイクラッチF−1によりケース6に対して回転が係止(正転回転方向に規制)され、回転が固定された状態となる。すると、第2のサンギヤS2に入力された減速回転は、ショートピニオンギヤP4を逆転回転させ、そのショートピニオンギヤP4に噛合するロングピニオンギヤP3を正転回転させ、さらにロングピニオンギヤP3に噛合する第2のリングギヤR2をさらに減速させた回転で正転回転させる(図3参照)。これにより、カウンタギヤ8に前進1速段としての正転回転が出力され、カウンタシャフト部4及びディファレンシャル部5を介して車輪に前進1速段の回転が伝達される。
この際、ショートピニオンギヤP4が逆転回転し、ロングピニオンギヤP3が正転回転することにより、それらショートピニオンギヤP4とロングピニオンギヤP3とには回転方向反対側に上記減速回転により増幅された大きなトルクに基づく大きな力が発生すると共に、インボリュート歯車形状のギヤの中心に反対方向に押される力や軸方向に反対方向のスラスト力も発生し、それぞれを支持するピニオンシャフト53,54を介して第2支持体52には該第2支持体52全体を外側から内側に変形させる方向の力が発生する。具体的には、第2支持体52自体は、第1のワンウェイクラッチF−1の係止により回転が固定されていると共に、第2支持体52の薄板部52aの嵌合孔52HLに掛かる力と厚肉部52bの嵌合孔52HSに掛かる力とは逆向きになり、第2支持体52にあっては、薄板部52aに対して厚肉部52bが反対方向に引っ張られる形となり、厚肉部52bには捩れ方向の力が発生する。そのため、ケース6に対して第1のワンウェイクラッチF−1の係止によって固定されたハブ部材60が接合されている接合部52cを抑えたまま、厚肉部52bが引っ張られつつ薄板部52aが逆向きに引っ張られるので、接合部52cの付根部52dの段差部52gにおける周方向の一方側の端部(凹部70Fの側)には応力が集中し易くなる。
しかしながら、第2支持体52の接合部52cの付根部52dには、凹部70Fが設けられているので、付根部52dにおける接合面52fと外周面52eとの段差部52gにおける段差が小さくされており、その段差部52gに生じる応力集中が低減される。これにより、接合部52cの付根部52dに発生する応力集中が分散され、接合部52cと厚肉部52bとの間に大きな応力集中が生じなくなるので、接合部52c(特に付根部52d)における耐久性が向上する。
また同様に後進1速段(Rev1)では、図2及び図3に示すように、第3のクラッチC−3が係合され、第2のブレーキB−2が係止される。すると、図1に示すように、ケース6に固定された第1のサンギヤS1と入力軸7からエンジンの回転が入力される第1のキャリヤCR1とによって第1のリングギヤR1が減速回転し、つまりプラネタリギヤDPから第1のクラッチC−1に減速回転が出力される。この減速回転は、第3のクラッチC−3を介して第3のサンギヤS3に入力される。一方、第2のキャリヤCR2は、ハブ部材60を介して第2のブレーキB−2によりケース6に対して回転が係止され、回転が固定された状態となる。すると、第3のサンギヤS3に入力された減速回転は、ロングピニオンギヤP3を逆転回転させ、さらにロングピニオンギヤP3に噛合する第2のリングギヤR2をさらに減速させた回転で逆転回転させる(図3参照)。これにより、カウンタギヤ8に後進1速段としての逆転回転が出力され、カウンタシャフト部4及びディファレンシャル部5を介して車輪に後進1速段の回転が伝達される。なお、この際、ショートピニオンギヤP4は、ロングピニオンギヤP3に噛合しているため、減速された正転回転で回転することになる。
この際、第3のサンギヤS3の正転回転に基づき、ロングピニオンギヤP3が逆転回転することにより、ロングピニオンギヤP3には回転方向に減速回転により増幅された大きなトルクに基づく大きな力が発生し、それを支持するピニオンシャフト53を介して第2支持体52には該第2支持体52全体を内側から外側に変形させる方向の力が発生する。具体的には、第2支持体52自体は、第2のブレーキB−2の係止により回転が固定されていると共に、第2支持体52の薄板部52aの嵌合孔52HLに掛かる力は厚肉部52bへ掛かる力となり、第2支持体52にあっては、薄板部52aに対して厚肉部52bが外周側に開く方向に押圧される形となる。そのため、ケース6に対して第2のブレーキB−2の係止によって固定されたハブ部材60が接合されている接合部52cを抑えたまま、厚肉部52bが押圧されるので、接合部52cの付根部52dの段差部52gにおける周方向の一方側の端部(凹部70Rの側)には応力が集中し易くなる。
しかしながら、第2支持体52の接合部52cの付根部52dには、凹部70Rが設けられているので、付根部52dにおける接合面52fと外周面52eとの段差部52gにおける段差が小さくされており、その段差部152gに生じる応力集中が低減される。これにより、接合部52cの付根部52dに発生する応力集中が分散され、接合部52cと厚肉部52bとの間に大きな応力集中が生じなくなるので、接合部52c(特に付根部52d)における耐久性が向上する。
このように前進時にあっても後進時にあっても、応力集中が低減され、耐久性を向上しつつ接合部52cの肉厚を例えば内外周方向に対して厚くして補強する必要がなくなるので、第2のリングギヤR2、ロングピニオンギヤP3、及びショートピニオンギヤP4の配置間隔を従来のものから大幅に変更することを不要とすることができる。それにより、大きなトルクを伝達可能な自動変速機1を、従来のものに比して製造ラインの大幅な変更を行うことなく、製造することが可能となる。また、接合部52cの肉厚を内周方向に厚くすることが不要となるので、ショートピニオンギヤP4の外径を大きくすることも可能となり、その分、自動変速機1のギヤ比の設定自由度を上げることも可能となる。
<第2の実施の形態>
つづいて、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について、図7に沿って説明する。なお、本第2の実施の形態は、第1の実施の形態における第2支持体52を変更して第2支持体152としたものであり、それ以外の部分は同様であるので、その説明を省略する。
本第2の実施の形態に係る第2支持体152は、第1の実施の形態の第2支持体52の凹部70F,70Rに比して、凹部170F,170Rの形成手法を変更したものである。
詳細には、第2の実施の形態に係る第2支持体152は、第1の実施の形態と同様に、ロングピニオンギヤP3のための嵌合孔152HLが形成された薄板部152aと、ショートピニオンギヤP4のための嵌合孔152HSが形成された厚肉部152bと、該厚肉部152bから軸方向に延びる接合部152cと、接合面152fを有する接合部152cと外周面152eとの間に段差となる段差部152gが形成された付根部152dとを有している。
その厚肉部152bの付根部152dの周方向の両側の端部には、凹部170F,170Rが形成されている。この凹部170F,170Rは、第2支持体152の全体形状を鍛造により形成した後、ドリル等により切削されて形成されるものである。即ち、鍛造を行う際には、付根部152dの段差部152gは、厚肉部152bの外周側の周方向全体に亘って形成されており、第2支持体152を仕上げる際に、付根部152dの段差部152gが小さくなるように、それぞれ付根部152dの周方向の両側の端部にドリル等を当てて切削を行い、凹部170F,170Rを形成する。このように切削により凹部170F,170Rを形成すると、鍛造により形成する場合に比して、寸法精度を向上することができる。言い換えると、例えば第1の実施の形態のように鍛造により凹部70F,70Rを形成すると、寸法誤差により段差が大きく残ったり小さくなり過ぎたりする虞があり、その場合に設計通りの耐久性が向上できないものが製造される虞があって、歩留まりが悪くなる。しかしながら、切削により凹部170F,170Rを形成する場合は、寸法誤差が小さくなるので、不良品を製造する可能性が小さくなり、歩留まりを向上することができる。なお、切削により凹部170F,170Rを形成する場合は、凹部170F,170Rを大きくすると切削工程の時間が長くなるので、必要最低限の大きさに形成することが望ましい。
これ以外の構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
[本実施の形態のまとめ]
本第1及び第2の実施の形態に係る自動変速機(1)は、第1サンギヤ(S2)と、第2サンギヤ(S3)と、リングギヤ(R2)と、前記第1サンギヤ(S2)に噛合するショートピニオンギヤ(P4)と前記第2サンギヤ(S3)、前記ショートピニオンギヤ(P4)、及び前記リングギヤ(R2)に噛合するロングピニオンギヤ(P3)とをキャリヤ本体(50)により回転自在に支持するキャリヤ(CR2)と、を有するプラネタリギヤセット(PU)と、
前記キャリヤ(CR2)の外周側に配置され、前記キャリヤ本体(50)に接合されたハブ部材(60)と、
前記ハブ部材(60)の回転をケース(6)に対して係止可能な係止要素(B−2,F−1)と、を備えた自動変速機(1)において、
前記キャリヤ本体(50)は、前記ショートピニオンギヤ(P4)の一端と前記ロングピニオンギヤ(P3)の一端とを支持する第1支持体(51)と、中空円板状に形成された薄板部(52a,152a)と該薄板部(52a,152a)と一体に形成されると共に周方向の複数箇所に形成された厚肉部(52b,152b)とを有し、前記厚肉部(52b,152b)と前記薄板部(52a,152a)が周方向に交互に配置され、前記ショートピニオンギヤ(P4)の他端を前記厚肉部(52b,152b)で支持すると共に前記ロングピニオンギヤ(P3)の他端を前記薄板部(52a,152a)で支持する第2支持体(52,152)と、を有し、
前記ハブ部材(60)は、前記係止要素(B−2,F−1)と係合するドラム部(60D)と、前記ドラム部(60D)から内周側に延びるフランジ部(60F)とを有し、
前記厚肉部(52b,152b)のそれぞれは、外周側にて軸方向に延び、外周側が前記フランジ部(60F)に接合される接合面(52f,152f)となる接合部(52c,152c)と、前記接合部(52c,152c)の付根にて前記フランジ部(60F)を軸方向に前記厚肉部(52b,152b)に突き当てさせる段差部(52g,152g)と、前記段差部(52g,152g)から軸方向に延びると共に前記厚肉部(52b,152b)の周方向の端部に形成された凹部(70F,70R,170F,170R)と、を有することを特徴とする。
これにより、第2支持体の接合部に捩れ方向の大きな力が生じ、付根部に応力が集中する際、段差部の段差を小さくする凹部により応力が分散されるので、接合部の肉厚を厚くすることなく、耐久性を向上することができる。そして、接合部の肉厚を厚くすることを防止できるので、大きなトルクを伝達することを可能とするものでありながら、リングギヤ、ロングピニオンギヤ、及びショートピニオンギヤの配置間隔を従来のものに比して大幅に変更することを不要とすることができる。それにより、大きなトルクを伝達可能な自動変速機1を、従来のものに比して製造ラインの大幅な変更を行うことなく、製造することが可能となる。また、接合部の肉厚を内周方向に厚くすることが不要となるので、ショートピニオンギヤの外径を大きくすることも可能となり、その分、自動変速機のギヤ比の設定自由度を上げることも可能となる。
また、本第1及び第2の実施の形態に係る自動変速機(1)は、前記凹部(70F,70R)は、前記厚肉部(52b,152b)の周方向の両側の端部に形成されたことを特徴とする。
これにより、前進走行時と後進走行時とで、接合部に生じる力の向きが逆になるので、前進走行時には付根部の周方向の一方の端部に、後進走行時には付根部の周方向の他方の端部に応力が集中することになるが、付根部の周方向の両側の端部に凹部が形成されているので、前進走行時と後進走行時との両方で応力を分散することができる。
そして、本第1及び第2の実施の形態に係る自動変速機(1)は、駆動源の回転を減速した減速回転を出力可能な減速回転出力部(DP)を備え、
前記第1サンギヤ(S2)に前記減速回転を入力すると共に前記係止要素(B−2,F−1)により前記キャリヤ(CR2)の回転を固定することで前記リングギヤ(R2)から前進1速段の回転を出力し、
前記第2サンギヤ(S3)に前記減速回転を入力すると共に前記係止要素(B−2)により前記キャリヤ(CR2)の回転を固定することで前記リングギヤ(R2)から後進段の回転を出力することを特徴とする。
これにより、第2支持体の接合部に、前進1速段又は後進1速段では減速回転による大きなトルクに応じた応力集中が生じるが、接合部に生じる応力を凹部により分散することができるので、前進1速段と後進1速段との両方で応力を分散することができる。
なお、本第1及び第2の実施の形態においては、ハブ部材60に第2のブレーキB−2と第1のワンウェイクラッチF−1を係止要素として備えているものを説明したが、これに限らず、どちらか一方を備えているものであっても構わない。例えばワンウェイクラッチだけが設けられている場合は、前進1速段でハブ部材が固定されるが、後進時にハブ部材が固定されないので、前進時に発生する応力集中だけを低減できればよく、つまり第2支持体に設ける凹部は、周方向の両側ではなく、前進側の一方だけで足りることになる。
また、本第1及び第2の実施の形態にあっては、前進8速段及び後進2速段を達成する自動変速機1を一例として説明したが、これに限らず、ラビニヨ型のプラネタリギヤセットを搭載する自動変速機であれば、どのようなものであっても構わない。また、本自動変速機1では、後進1速段及び後進2速段を達成するものを説明したが、後進時に変速を行う必要がなければ、どちらか一方だけを達成するように構成したものでよい。さらに、本実施の形態で言うところの後進2速段だけを後進段として用いるものでは、第4のクラッチC−4の係合により入力回転をそのままプラネタリギヤユニットPUに伝達するので、後進時に減速回転が入力されることがなく、つまり付根部52d,152dに発生する応力が小さくなるので、この場合は、凹部70R,170Rを小さくしたり無くしたりすることも考えられる。
1…自動変速機
50…キャリヤ本体
60…ハブ部材
6…ケース
B−2…係止要素(第2のブレーキ)
F−1…係止要素(第1のワンウェイクラッチ)
51…第1支持体
52…第2支持体
52a…薄板部
52b…厚肉部
52c…接合部
52f…接合面
52g…段差部
60D…ドラム部
60F…フランジ部
70F…凹部
70R…凹部
152…第2支持体
152a…薄板部
152b…厚肉部
152c…接合部
152f…接合面
152g…段差部
170F…凹部
170R…凹部
DP…減速回転出力部(プラネタリギヤ)
PU…プラネタリギヤセット(プラネタリギヤユニット)
S2…第1サンギヤ(第2のサンギヤ)
S3…第2サンギヤ(第3のサンギヤ)
CR2…キャリヤ
P3…ロングピニオンギヤ
P4…ショートピニオンギヤ
R2…リングギヤ(第2のリングギヤ)

Claims (3)

  1. 第1サンギヤと、第2サンギヤと、リングギヤと、前記第1サンギヤに噛合するショートピニオンギヤと前記第2サンギヤ、前記ショートピニオンギヤ、及び前記リングギヤに噛合するロングピニオンギヤとをキャリヤ本体により回転自在に支持するキャリヤと、を有するプラネタリギヤセットと、
    前記キャリヤの外周側に配置され、前記キャリヤ本体に接合されたハブ部材と、
    前記ハブ部材の回転をケースに対して係止可能な係止要素と、を備えた自動変速機において、
    前記キャリヤ本体は、前記ショートピニオンギヤの一端と前記ロングピニオンギヤの一端とを支持する第1支持体と、中空円板状に形成された薄板部と該薄板部と一体に形成されると共に周方向の複数箇所に形成された厚肉部とを有し、前記厚肉部と前記薄板部が周方向に交互に配置され、前記ショートピニオンギヤの他端を前記厚肉部で支持すると共に前記ロングピニオンギヤの他端を前記薄板部で支持する第2支持体と、を有し、
    前記ハブ部材は、前記係止要素と係合するドラム部と、前記ドラム部から内周側に延びるフランジ部とを有し、
    前記厚肉部のそれぞれは、外周側にて軸方向に延び、外周側が前記フランジ部に接合される接合面となる接合部と、前記接合部の付根にて前記フランジ部を軸方向に前記厚肉部に突き当てさせる段差部と、前記段差部から軸方向に延びると共に前記厚肉部の周方向の端部に形成された凹部と、を有する、
    ことを特徴とする自動変速機。
  2. 前記凹部は、前記厚肉部の周方向の両側の端部に形成された、
    ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
  3. 駆動源の回転を減速した減速回転を出力可能な減速回転出力部を備え、
    前記第1サンギヤに前記減速回転を入力すると共に前記係止要素により前記キャリヤの回転を固定することで前記リングギヤから前進1速段の回転を出力し、
    前記第2サンギヤに前記減速回転を入力すると共に前記係止要素により前記キャリヤの回転を固定することで前記リングギヤから後進段の回転を出力する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機。
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