(発明が解決しようとする課題)
上記特許文献1及び2に示すように、従来のHEMSによれば、使用したエネルギーの可視化、或いは電気機器の自動制御により、省エネルギー化を支援或いは促進することができる。しかし、室内に存在する人(ユーザー)の温熱的生理状態までは、従来のHEMSでは管理されていない。例えば、特許文献1によれば、用途ごと、或いは領域ごとの使用エネルギーが可視化され、これによりユーザーの意識改革によるエネルギーの有効利用、すなわち省エネルギー化の促進が期待される。しかし、どのような環境を創出するかは完全にユーザーの主観に依存する。その結果、省エネルギー化を促進するあまりにユーザーの温熱的生理状態が悪化し、熱中症等を発症する場合が起こり得る。
本発明は、室内に存在する人の温熱的生理状態の悪化を防止することができるように構成されるエネルギー管理システムを提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、室内に供給されるエネルギーの使用状況に関連する情報を表示する機能を有するエネルギー管理システム(10)であって、室内の熱的な環境情報と、室内に存在する人の着衣量に関する着衣情報と、室内に存在する人の代謝量に関する代謝情報とを取得する情報取得部(10B)と、情報取得部により取得された環境情報、着衣情報、及び代謝情報に基づいて、室内に存在する人の温熱的生理量の予測値を演算する生理量予測演算部(10C,10G)と、を備える、エネルギー管理システムを提供する。
本発明によれば、エネルギー管理システムによって、室内に存在する人(ユーザー)の温熱的生理量の予測値が、室内の熱的な環境情報と、室内に存在する人の着衣量に関する着衣情報及び代謝量に関する代謝情報とに基づいて、精度よく演算される。従って、ユーザーは、演算された精度の高い予測値に基づいて、自己の温熱的生理状態が正常な状態であるか異常な状態であるかを比較的正確に把握することができる。そして、把握した温熱的生理状態に基づいて、ユーザーは、必要に応じ、飲料水を確保する、活動量を減らす、着衣量を減らす、室内に備えられる空調機器の設定温度を下げる、等の措置を講じることにより、温熱的生理状態の悪化を自ら回避することができる。
本発明において、室内の熱的な環境情報とは、ユーザーが感じる寒暖に影響を及ぼす環境因子である。例えば、室内温度、室内湿度、等が、室内の熱的な環境情報に相当する。また、室内の気流、輻射温度等も、室内の熱的な環境情報である。また、着衣情報は、着衣量の多さを表す情報であり、代謝情報は、代謝量(すなわち活動量)の大きさを表す情報である。また、温熱的生理量とは、熱に対する生理状態の変化を表すことができる生理量、すなわち身体の熱平衡状態の変化に依存して変化する生理量を言う。従って、温熱的生理量がその正常範囲から外れた値を示す場合、生理状態が熱的に異常状態になる。温熱的生理量として、例えば、深部体温、体表面温度(平均皮膚温度)、心拍数、発汗量等が、挙げられる。また、温熱的生理状態とは、温熱的生理量によって表される生理状態を言う。
本発明において、温熱的生理量が、深部体温を含むのが良い。深部体温により、熱に対する人の生理状態(温熱的生理状態)が良く表される。この場合、温熱的生理量が、深部体温及び体表面温度(平均皮膚温度)を含むのが良い。さらに、温熱的生理量は、深部体温、体表面温度、心拍数、発汗量を含むのが良い。
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、生理量予測演算部により演算された予測値を表示する表示部(12a)を備えるのがよい。これによれば、ユーザーは、表示部に表示された予測値に基づいて自己の温熱的生理状態が正常な状態であるか異常な状態であるかを把握することができるとともに、必要に応じて上記した様々な措置を講ずることにより、温熱的生理状態の悪化を自ら回避することができる。
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、生理量予測演算部により演算された予測値に基づいて、室内に存在する人の温熱的生理状態が異常状態になり得る危険状態であるか否かを判断する危険状態判断部(10C)と、危険状態判断部により温熱的生理状態が危険状態であると判断された場合に、温熱的生理状態が危険状態であることを報知する危険状態報知部(12a)と、を備えるのがよい。これによれば、危険状態報知部により温熱的生理状態が危険状態であることが報知されることにより、ユーザーは、自らの温熱的生理状態が危険な状態であると認識することができる。この場合、ユーザーは、上記した様々な措置を講じることにより、温熱的生理状態がさらに悪化して熱中症等に陥ることを自ら回避することができる。
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、生理量予測演算部にて演算された予測値に基づいて、室内に備えられる空調機器を制御する機器制御部(10F)を備えるとよい。これによれば、生理量予測演算部にて演算された予測値に基づいて機器制御部が空調機器を制御することにより、ユーザーの温熱的生理状態が常に良好であるように、室内環境を自動的に調整することができる。
また、機器制御部は、危険状態報知部により温熱的生理状態が危険状態であることを報知してから、室内に備えられた空調機器が制御されないまま所定の時間を経過したときに、温熱的生理状態が危険状態から正常状態に移行するように、空調機器を制御するのがよい。これによれば、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態から正常状態に移行するように機器制御部が空調機器を制御することにより、ユーザーの温熱的生理状態が悪化して熱中症等に陥ることを自動的に回避することができる。
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、温熱的生理量の希望値を入力する温熱的生理量入力部(12a)を備えるのがよい。そして、機器制御部は、温熱的生理量入力部に希望値が入力された場合に、生理量予測演算部により予測された予測値が希望値に近づくように、空調機器を制御するとよい。これによれば、温熱的生理量の希望値をユーザーが自ら入力した場合には、ユーザーの温熱的生理量が入力した希望値に近づくように空調機器が制御されるため、快適性をより高めることができるとともに、ユーザーの温熱的生理状態が悪化して異常な状態に至ることを未然に防止することができる。
また、生理量予測演算部は、環境情報、対象とする人の着衣情報、対象とする人の代謝情報、及び、対象とする人の属性情報に基づいて、室内における対象とする人の体表面温度の予測値を演算するとよい。この場合、本発明に係るエネルギー管理システムは、生理量予測演算部(10G)にて演算された体表面温度の予測値に基づいて、室内における対象とする人の温熱的生理状態に関連する温熱的指標であるヒートファクター(HF)を演算するヒートファクター演算部(10H)を備えるとよい。さらに、本発明に係るエネルギー管理システムは、ヒートファクター演算部にて演算されたヒートファクターを表示する表示部(12a)を備えるとよい。
これによれば、室内の環境情報(温度、湿度、風速、輻射温度等)、対象とする人の着衣情報、代謝情報、及び属性情報に基づいて、体表面温度の予測値が個体別に演算される。そして、個体別に演算された体表面温度の予測値に基づいて、室内における対象とする人(ユーザー)の温熱的生理状態に関連する温熱的指標としてのヒートファクターが個体別に演算される。こうして個体別に指標化されたヒートファクターに基づいて、ユーザーは、自らの温熱的生理状態を定量的に把握することができる。また、温熱的に中立な状態近傍の快適状態から、温熱的に中立な状態から大きく外れた暑熱状態或いは寒冷状態までの温熱的状態が1つの温熱的指標(ヒートファクター)によって連続的に表現される。従って、ユーザーは、ヒートファクターを確認するのみで、自らの深部体温或いは体表面温度がどの程度であれば温熱的生理状態が正常であるかなどといった迷いを生じることなく、感覚的に自らの温熱的生理状態を把握することができる。
上記発明において、ヒートファクターとは、環境情報、人体側情報(着衣情報、代謝情報、属性情報)を考慮して、対象とする人が感じる温冷感の度合いを数値で定量的に表現した指標である。一般的に、ヒートファクターが0であるとき、温熱的生理状態が中立状態(温熱的中立状態)であることを示し、このとき温熱的な快適性が最も高い。ヒートファクターが正方向に高くなるほど暑く感じ、負方向に低くなるほど寒く感じる。ヒートファクターが4以上である場合、暑過ぎて温熱的生理状態が危険な状態であると言える。ヒートファクターが−4以下である場合、寒過ぎて温熱的生理状態が危険な状態であると言える。
また、上記発明において、対象とする人の属性情報とは、対象とする人の特性のうち温熱的生理状態に影響を及ぼす可能性がある特性を表す情報である。属性情報として、その人の身長、体重、年齢、性別、発汗特性(運動習慣)、等を例示できる。
なお、生理量予測演算部は、環境情報、着衣情報、代謝情報、属性情報に基づいて体表面温度の予測値を演算するにあたり、上記の情報を考慮して構築された体表温度予測モデル(暑熱環境ストレス評価モデル)を用いるとよい。この場合、体表面温度予測モデルは、人体の無効発汗及び着衣の濡れをも考慮したモデルであるとよい。
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、ヒートファクター演算部にて演算されたヒートファクターが、対象とする人の温熱的生理状態が正常な状態である範囲として予め定められる正常範囲を外れた場合に警報を発する警報部(12a)を備えるとよい。この場合、本発明に係るエネルギー管理システムは、ヒートファクター演算部にて演算されたヒートファクターが、前記正常範囲を外れているか否かを判断するヒートファクター範囲判断部(10I)を備えるとよい。これによれば、警報部が警報を発することにより、ユーザーは、自らの温熱的生理状態が危険な状態であると認識することができる。この場合、ユーザーは、上記した様々な措置を講じることにより、温熱的生理状態がさらに悪化して熱中症、ヒートショック等に陥ることを自ら回避することができる。
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、ヒートファクター演算部にて演算されたヒートファクターに基づいて、室内の温熱的環境要素を制御する温熱的環境制御部(10F)を備えるとよい。この場合、温熱的環境制御部は、ヒートファクターが、対象とする人(ユーザー)の温熱的生理状態が正常な状態である範囲として予め定められる正常範囲内に収まるように、ヒートファクターに基づいて、室内の温熱的環境要素を制御するとよい。さらにこの場合、温熱的環境制御部は、室内の温熱的環境要素を制御するための空調機器を制御するとよい。
これによれば、ユーザーの温熱的生理状態が温熱的中立状態から大きく外れた危険な状態であるか否かを、ヒートファクターによって個体別に定量的に評価判断し、室内の温熱的環境要素の制御によって、ユーザーの温熱的生理状態を危険状態ではない正常状態に自動的に制御することができる。その結果、熱中症予防、ヒートショック予防等、安全な生活環境の実現に寄与することができる。
上記発明において、温熱的環境要素とは、温熱的な室内環境を変化させることができる要素を言い、例えば、温度、湿度等を例示できる。また、温熱的環境要素を制御するための空調機器としては、例えば、エアコン、扇風機、ストーブ、床暖房装置等を例示できる。
また、本発明に係るエネルギー管理システムは、ヒートファクターが予め設定されている設定ヒートファクター(HFs)になるような室内の温度であるヒートファクター優先目標室内温度(ts)を演算するヒートファクター優先目標室内温度演算部(10I)を備えるとよい。そして、温熱的環境制御部は、室内の温度(ta)がヒートファクター優先目標室内温度になるように、室内に備えられる空調機器を制御するとよい。これによれば、ヒートファクターが設定ヒートファクターになるように室内温度が制御或いは管理されるので、ユーザーの温熱的な安全性(快適性)を確保しながら、自動的に過度な空調(冷やし過ぎ、暖め過ぎ)を抑制することができる。また、ユーザーが好みのヒートファクターを設定することにより、人体にとって適度な環境ストレスを与えることもできる。その結果、健康、快適性、省エネルギーの促進を、同時に実現することができる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るホームエネルギー管理システム(以下、HEMS)が設置された住宅Hの概略図である。図1に示すように、住宅Hには分電盤1が設置され、分電盤1に商用電源Cが接続される。商用電源Cから供給される電力は交流であり、電圧は例えば100V、周波数は例えば60Hzである。
また、住宅Hの屋根R上に太陽光発電装置2が取り付けられている。この太陽光発電装置2は光エネルギーを電気エネルギーに変換する。さらに、住宅Hに隣接して熱電併給装置(コージェネレーション装置)3が設置されている。熱電併給装置3は、電気エネルギー及び熱エネルギーを生成する。熱電併給装置3は、例えばガスエンジン等の内燃機関及び発電機を有する。内燃機関の駆動により発電機が発電する。また、内燃機関の駆動により熱が発生する。
太陽光発電装置2及び熱電併給装置3は、系統連係装置(パワーコンディショナ)PCSに電気的に接続される。系統連係装置PCSは、太陽光発電装置2により生成された電力及び熱電併給装置3により発電された電力を、商用電力と同位相で且つ同電圧(例えば100V)、同周波数(例えば60Hz)の交流電力に変換するとともに、変換した交流電力を商用電源Cに系統連係する。
また、住宅Hの室内に電力負荷D1,D2、及び熱負荷H1が設置される。電力負荷D1,D2は分電盤1に電気的に接続される。電力負荷D1,D2は、分電盤1を介して室内に供給される電力により駆動される。電力負荷D1は、例えば冷蔵庫、或いは照明機器である。また、本実施形態において電力負荷D2は、室内雰囲気の温度及び湿度を調整する空調機器である。また、熱負荷H1には、熱電併給装置3で生成された熱が供給される。熱負荷H1は、例えば床暖房装置である。
図1に示すように、HEMS10は、メイン制御装置11、タブレット型端末制御装置12を備える。メイン制御装置11は、CPU,ROM,RAM等を備えるマイクロコンピュータを主要構成とし、分電盤1に供給される電力により作動する。メイン制御装置11は、PCS、各電力負荷D1,D2、熱負荷H1に無線通信或いは有線通信可能に構成されており、これらの各機器に設けられたセンサから必要な情報、具体的には、太陽光発電装置2の発電量、熱電併給装置3の発電量及び発熱量、電力負荷D1,D2の作動状況、熱負荷H1の作動状況を入力する。
タブレット型端末制御装置12は、CPU,ROM,RAM等を備えるマイクロコンピュータを主要構成とし、充電式バッテリーにより作動する。タブレット型端末制御装置12はメイン制御装置11に通信可能に構成される。また、タブレット型端末制御装置12はディスプレイ12aを備える。
また、HEMS10は、温度センサ13及び湿度センサ14を備える。温度センサ13及び湿度センサ14は住宅Hの室内に設置されている。温度センサ13は室内温度taを検出し、湿度センサ14は室内湿度RHを検出する。検出した室内温度ta及び室内湿度RHはメイン制御装置11に送信される。
図2は、HEMS10の構成を機能ごとに分けて示した図である。図2に示すように、HEMS10は、センサ部10Aと、情報取得部10Bと、演算処理部10Cと、表示制御部10Dと、表示・入力部10E(ディスプレイ12a)と、機器制御部10Fとを有する。
センサ部10Aは各種のセンサ類により構成されており、太陽光発電装置2の発電量、熱電併給装置3の発電量及び発熱量、電力負荷D1,D2の作動状況、熱負荷H1の作動状況、室内温度ta、及び室内湿度RHを検出する。このセンサ部10Aに温度センサ13及び湿度センサ14が含まれる。
情報取得部10Bは、センサ部10Aにより検出された情報、及び、表示・入力部10Eに入力された情報を取得し、記憶する。演算処理部10Cは、情報取得部10Bに取得された情報に基づいて、様々な演算処理を実行し、その処理結果を出力する。本実施形態では、情報取得部10B及び演算処理部10Cはメイン制御装置11に備えられる。
表示制御部10Dは、情報取得部10Bに取得された情報、演算処理部10Cによる演算結果を受け取るとともに、受け取った情報及び演算結果に基づいて、タブレット型端末制御装置12のディスプレイ12aの表示を制御する。表示・入力部10Eはディスプレイ12aに相当し、各種の情報、演算結果を表示する。この表示・入力部10E(ディスプレイ12a)は、ユーザーが触ることにより指示或いは情報を入力することができるように構成されている。機器制御部10Fは、ユーザーからの指示、表示・入力部10Eに入力された情報、演算処理部10Cによる演算結果、情報取得部10Bに取得された情報に基づいて、電力負荷D1,D2、熱負荷H1の作動を制御する。本実施形態では、表示制御部10D、表示・入力部10E(ディスプレイ12a)及び機器制御部10Fは、タブレット型端末制御装置12に備えられる。
このような構成を有するHEMS10において、情報取得部10Bに取得された太陽光発電装置2により発電された電力の使用量、熱電併給装置3により発電された電力の使用量、熱電併給装置3により発熱された熱の使用量が、リアルタイムでディスプレイ12aに表示される。また、電力の使用量及び熱の使用量の履歴もディスプレイ12aに表示させることができる。さらに、住宅Hの室内に設置された空調機器(電力負荷D2)及び床暖房装置(熱負荷H1)の使用状況も、ディスプレイ12aにリアルタイムで表示できる。すなわち、本実施形態に係るHEMSは、室内に供給されるエネルギーの使用状況に関連する情報を表示する機能を有する。
エネルギーの使用状況、使用履歴、空調機器の使用状況は、従来のHEMSにおいても表示される。本実施形態に係るHEMSは、さらに、住宅Hの室内に存在する人の温熱的生理量の予測値を演算し、演算した予測値を表示することができるように構成される。
ここで、「温熱的生理量」とは、上述したように身体の熱平衡状態の変化に依存して変化する生理量を言う。例えば、高温高湿下では、身体の体表面温度、深部体温、心拍数、発汗量が変化する。従って、これらの生理量は温熱的生理量である。本実施形態では、深部体温、体表面温度、心拍数、発汗量の予測値を演算する。この演算は演算処理部10Cによりなされる。
図3は、演算処理部10Cが、深部体温、体表面温度、心拍数、発汗量の予測値をそれぞれ演算するために実行する温熱的生理量演算処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、HEMS10が駆動された後に、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。このルーチンが起動すると、演算処理部10Cは、まず、図3のステップ(以下、ステップをSと略記する)101にて、情報取得部10Bに取得された現在の室内温度taを読み込み、次いで、S102にて、情報取得部10Bに取得された現在の室内湿度RHを読み込む。
続いて、演算処理部10Cは、ユーザーの人体側情報を読み込む(S103)。ユーザーの人体側情報とは、温熱的生理量の変化に影響する人体情報及びユーザーが装備する服装に関する情報である。具体的には、ユーザーの身長、体重、年齢、性別、服装、活動量等の情報が、人体側情報に相当する。これらの人体側情報は、ディスプレイ12aを介して、予め情報取得部10Bに取得されている。
ここで、情報取得部10Bがディスプレイ12aを介して人体側情報を取得する方法について説明する。図4は、ディスプレイ12aに表示される情報入力画面の一例を示す図である。この情報入力画面には、身長、体重、年齢、性別、服装(着衣)、活動量(代謝量)、室内気流(流速)、及び室内輻射温度を入力することができる領域がそれぞれ設けられており、各入力領域に触れることにより、その入力領域に係る項目に関する情報を入力することができる。この場合、ユーザーは、ドロップダウンメニュー或いはプルダウンメニューの中から情報を選択することにより、情報を入力するように構成することもできる。図4に示す画面においては、身長が173cm、体重が65kg、年齢が30〜40歳、性別が男性、服装が夏期軽装、活動量が室内軽作業、室内気流が0.2m/s、室内輻射温度が室温と同じ、といったように、各種の情報が入力されている。全ての項目の情報の入力が完了すると、入力された情報が情報取得部10Bに取得される。情報取得部10Bは、取得した情報を記憶する。なお、情報取得部10Bが取得した情報のうち、服装に関する情報が着衣情報に相当し、活動量に関する情報が代謝情報に相当する。また、身長、体重、年齢、性別が、属性情報に相当する。
演算処理部10Cは、S103にて、上記のようにして情報取得部10Bに取得された人体側情報を読み込む。また、このとき、人体側情報と同時に、室内気流、及び、室内輻射温度を読み込んでもよい。
なお、図5に示すように、着衣量と代謝量とを行列状(マトリクス状)に配列させた表をディスプレイ12aに表示させておいてもよい。この表は3行3列に9分割されており、各分割された領域に1〜9の数値が付されている。そして、ユーザーが、表のいずれかの領域に触れることにより、触れた領域によって表される着衣情報と代謝情報が同時に情報取得部10Bに取得される。
続いて、演算処理部10Cは、S104にて、着衣指数cloを取得する。「着衣指数clo」とは、住宅Hの室内に存在する人(ユーザー)の服装の軽重を表す数値である。着衣指数cloは、着衣量が多いほど(厚着であるほど)大きい値となるように設定される。例えば、着衣指数cloは、以下の表1のように設定することができる。なお、着衣指数cloが1とは、着衣の熱抵抗が0.155(m
2・℃)/Wであることを表す。
表1に示すような、季節・服装と、着衣指数cloとの関係を示す情報は、予めメイン制御装置11内の記憶領域に記憶されている。演算処理部10Cは、S104にて、情報取得部10Bに取得されているユーザーの「服装」に関する情報(着衣情報)を表1に照らし合わせることにより、着衣指数cloを取得する。例えば、ユーザーの「服装」が図4に示すような「夏期軽装」であれば、着衣指数cloは0.3である。
次に、演算処理部10Cは、S105にて、活動指数metを取得する。「活動指数met」とは、室内に存在する人の代謝量(活動量)の大きさを表す数値である。活動指数metは、代謝量(活動量)が大きいほど大きい値に設定される。例えば、活動指数metは以下の表2のように設定することができる。
表2に示すように、室内でのユーザーの活動態様(代謝情報)が「安静」である場合に活動指数metが1に設定され、活動態様が「軽作業」である場合には活動指数metが2に設定され、活動態様が「重作業」である場合に活動指数metが3に設定される。なお、活動指数metが1とは、代謝量が58.14W/m
2であることを表す。
演算処理部10Cは、情報取得部10Bに取得されているユーザーの「活動量」に関する情報(代謝情報)に基づいて、活動指数metを取得する。例えば、ユーザーの「活動量」が図4に示すような「室内軽作業」であれば、活動指数metは2である。
演算処理部10Cは、着衣指数clo及び活動指数metを取得した後に、S106に処理を進め、予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測心拍数HR、予測発汗量wswを演算する。予測体表面温度tskは、ユーザーの現在の体表面温度の予測値である。予測深部体温tcrは、ユーザーの現在の深部体温の予測値である。予測心拍数HRは、ユーザーの現在の心拍数の予測値である。予測発汗量wswは、ユーザーの現在の発汗量の予測値である。
ここで、北海道大学大学院工学研究院は、体表面温度、深部体温、心拍数、発汗量(温熱的生理量)を、着衣指数clo(着衣情報)、活動指数met(代謝情報)及び属性情報(身長、体重、年齢、性別等)を含む人体側情報及び、室内温度ta、室内湿度RHを含む環境情報に基づいて予測するモデル(暑熱環境ストレス評価モデル)を提案している。図12は、暑熱環境ストレス評価モデルの概要を示す図である。図12によれば、人体の温熱的生理量が、人体側要因を表す量(着衣情報、代謝情報、属性情報等)及び環境側要因を表す量に基づいて予測できることが示されている。従って、斯かるモデルに用いられる予測演算式を利用することにより、着衣指数clo(着衣情報)、活動指数met(代謝情報)、属性情報及び環境情報に基づいて、温熱的生理量の予測値(予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測心拍数HR、予測発汗量wsw)を個体別に精度良く演算することができる。なお、予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測心拍数HR、予測発汗量wswの具体的な予測演算手法は、以下の文献1を参照されたい。
文献1:H. Kubota, K. Kuwabara, Y. Hamada: "The development and initial validation of a virtual dripping sweat rate and a clothing wetness ratio for use in predictive heat strain models": International Journal of Biometeorology, Volume 58, Issue 6, pp 1339-1353
演算処理部10Cは、S106にてtsk,tcr,wsw,HRを演算した後に、演算結果を表示制御部10Dに出力する(S107)。その後、このルーチンを一旦終了する。表示制御部10Dは、演算処理部10Cから受け取った演算結果がディスプレイ12aに表示されるようにディスプレイ12aの表示を制御する。これにより、ディスプレイ12aに、予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw及び予測心拍数HRが表示される。
図6は、ディスプレイ12a上における予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw及び予測心拍数HRの表示画面(以下、温熱的生理量出力画面と呼ぶ)の一例を示す図である。図6に示す例では、体表温度(予測体表面温度tsk)が35.0℃、深部体温(予測深部体温tcr)が37.0℃、心拍数(予測心拍数HR)が70b.p.m.(beats per minute)、発汗量(予測発汗量wsw)が1400gである。ユーザーは、温熱的生理量出力画面により自身の温熱的生理状態を確認することができる。
このように、本実施形態によれば、演算処理部10Cが、室内に存在する人(ユーザー)の温熱的生理量の予測値(予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw、予測心拍数HR)を演算するとともに、ディスプレイ12aが、演算された予測値を表示する。従って、ユーザーは、ディスプレイ12aに表示された各予測値に基づいて、自己の温熱的生理状態を認識することができる。そして、必要に応じて、飲料水を確保する、活動量を減らす、着衣量を減らす、室内に備えられる空調機器の設定温度を下げる、等の措置を講じることにより、自己の温熱的生理状態が悪化して異常な状態、例えば熱中症に陥ることを自ら回避することができる。
また、演算処理部10Cは、上記のようにしてユーザーの温熱的生理量の予測値を演算した後に、危険状態判断処理を実行することにより、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であるか否かを判断する。ここで、危険状態とは、ユーザーの温熱的生理状態が異常状態、例えば熱中症が発症するような状態になり得る可能性の高い状態である。図7は、演算処理部10Cが実行する危険状態判断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、温熱的生理量演算処理の実行によって各予測値が演算された後に引き続き実行される。
このルーチンが起動すると、演算処理部10Cは、まず、図7のS201にて、予測深部体温tcrが閾値温度tth以上であるか否かを判断する。閾値温度tthは、深部体温がそれ以上であると、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であると判断できる温度として予め設定される。閾値温度tthは、代謝量(活動量)の関数として表すこともできる。閾値温度tthは、例えば37.9℃程度に設定することができる。因みに、温熱的生理状態が正常である場合における深部体温は、概ね、37.0℃〜37.7℃である。
予測深部体温tcrが閾値温度tth未満である場合(S201:No)、演算処理部10Cは、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態ではないと判断し、このルーチンを終了する。一方、予測深部体温tcrが閾値温度tth以上である場合(S201:Yes)、演算処理部10Cは、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であると判断し、S202に処理を進めて危険信号を出力する。その後、演算処理部10Cは、このルーチンを終了する。このようにして、演算処理部10Cは、ユーザーの温熱的生理状態が熱的に異常な状態になり得る危険状態であるか否かを、予測深部体温tcrと閾値温度tthとを比較することによって、判断する。
演算処理部10Cから出力された危険信号は、表示制御部10Dに入力される。表示制御部10Dは、危険信号が入力された場合、温熱的生理量出力画面に、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であることが示されるように、ディスプレイ12aの表示を制御する。図8は、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であることが示された温熱的生理量出力画面の一例を示す図である。図8の例では、画面に大きく「危険状態」という文字が示される。
一般に、高温高湿度下においては、人体の発汗作用が正常に機能しないことに起因して深部体温が上昇する。深部体温の上昇は、屋外に限らず、屋内においても起こり得る。例えば、猛暑時の電力のピークカットを受けて、室内の温度が比較的高めに設定されたような場合には、ユーザーが室内にいるにもかかわらず、深部体温が上昇する可能性がある。また、HEMSによってエネルギーの使用量を可視化することによる省エネルギーの意識が高まり、それにより、温熱的生理状態の悪化を犠牲にしてでも省エネルギーを図るようなことも行われる虞がある。こうした状況では、知らず知らずのうちに、室内で深部体温が上昇し、温熱的生理状態が悪化して熱中症に陥る虞がある。
この点に関し、本実施形態では、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であるか否かを、予測深部体温tcrに基づいて判断し、温熱的生理状態が危険状態であると判断した場合に、ディスプレイ12aを通じてユーザーに温熱的生理状態が危険状態であることを報知する。従って、ユーザーは、自らの温熱的生理状態が危険状態にあることを認識することができる。その場合、ユーザーは、飲料水を確保する、活動量を減らす、着衣量を減らす、室内に備えられる空調機器の設定温度を下げる、等の措置を講じることにより、温熱的生理状態がさらに悪化して異常状態に至ること、すなわち熱中症に陥ることを、自ら回避することができる。
また、演算処理部10Cは、危険信号を出力した場合に、空調機器自動制御信号出力処理を実行する。図9は、空調機器自動制御信号出力処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、演算処理部10Cは、まず図9のS301にて、タイマTによる計測を開始する。次いで、タイマTによる計測時間が、予め定められた閾値時間T0未満であるか否かを判断する(S302)。閾値時間T0は、例えば10分に設定することができる。
タイマTによる計測時間が閾値時間T0未満である場合(S302:Yes)、演算処理部10Cは、ユーザー又は他の者により、空調能力が増加するように空調機器が制御されたか否かを判断する(S303)。空調能力が増加するように空調機器が制御されたと判断した場合(S303:Yes)、演算処理部10CはS305に処理を進めてタイマTをリセットし、その後、このルーチンを終了する。
また、S303にて、空調能力が増加するように空調機器が制御されていないと判断した場合(S303:No)、演算処理部10CはS302に処理を戻し、再度、タイマTによる計測時間が閾値時間T0未満であるか否かを判断する。そして、S302にて、タイマTによる計測時間が閾値時間T0以上であると判断した場合(S302:No)、演算処理部10CはS304に処理を進め、自動制御信号を出力する。次いで、タイマTをリセットし(S305)、その後、このルーチンを終了する。演算処理部10Cがこのような空調機器自動制御信号出力処理を実行することにより、危険信号が出力されてから、空調能力が増加するように空調機器が制御されないまま閾値時間T0以上経過した場合に、演算処理部10Cが自動制御信号を出力する。
演算処理部10Cから出力された自動制御信号は、機器制御部10Fに入力される。機器制御部10Fは、自動制御信号が入力された場合に、異常状態回避運転制御処理を実行する。図10は、機器制御部10Fが実行する異常状態回避運転制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、機器制御部10Fは、まず、S401にて、演算処理部10Cから、直近に演算した予測深部体温tcrを取得する。次いで、予測深部体温tcrと正常深部体温tcr0との差α(=tcr−tcr0)を演算する。正常深部体温tcr0は、熱中症を発症する虞のない深部体温、すなわち、温熱的生理状態が正常な状態であるときの深部体温として予め設定される。正常深部体温tcr0は、例えば、37.0℃に設定される。
その後、機器制御部10Fは、差αが0になるように、空調機器(電力負荷D2)をフィードバック制御する(S403)。S403におけるフィードバック制御を所定の時間だけ実行した後に、或いは、差αが0になったときに、機器制御部10Fはこのルーチンを終了する。
ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であることを報知してから所定時間経過しても、ユーザー側によって、空調能力が増加するように空調機器が制御されていない場合、ユーザーは、例えばタブレット型端末制御装置12から遠い位置にいて、温熱的生理状態が危険状態であることを認識していない虞がある。よって、このような場合に上記したように空調機器を自動制御して、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態から正常状態に移行するように室内の熱的環境を改善することにより、ユーザーの温熱的生理状態がさらに悪化して熱的に異常状態に至ることが自動的に防止される。
また、本実施形態においては、ユーザーが、温熱的生理量の希望値をディスプレイ12aに入力することができる。例えば、ユーザーは、体表面温度34.0℃、深部体温37.0℃、心拍数70b.p.m.といった温熱的生理量により表される温熱的生理状態を希望する場合、これらの数値をディスプレイ12aに入力する。図11に、ユーザーによってディスプレイ12aに希望値が入力された画面を示す。この画面に入力した情報は、機器制御部10Fに受け渡される。機器制御部10Fは、受け渡された情報に基づいて、空調機器を制御する。例えば、機器制御部10Fは、演算処理部10Cが演算した予測深部体温tcrと、ユーザーにより入力された希望値との差βが0になるように、空調機器をフィードバック制御する。これによれば、ユーザーが望ましいと感じる温熱的生理状態を実現するように空調機器が制御されるので、ユーザーの快適性を確保することができるとともに、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態に至ることを、未然に防止することができる。
以上のように、本実施形態に係るHEMS10は、室内の熱的な環境情報(室内温度ta、室内湿度RH)と、室内に存在する人の着衣量に関する着衣情報と、室内に存在する人の代謝量に関する代謝情報を含む人体側情報(身長、体重、年齢、服装(着衣情報)、活動量(代謝情報))とを取得する情報取得部10Bと、情報取得部10Bにより取得された環境情報及び人体側情報に基づいて、室内に存在する人の温熱的生理量である深部体温、体表面温度、心拍数、及び発汗量のそれぞれの予測値を演算する演算処理部10Cと、を備える。
本実施形態によれば、HEMS10によって、室内に存在する人(ユーザー)の温熱的生理量(深部体温、体表面温度、心拍数、発汗量)の予測値が、室内の熱的な環境情報と、室内に存在する人の着衣量に関する着衣情報及び代謝量に関する代謝情報とを含む人体側情報に基づいて、精度良く演算される。従って、ユーザーは、演算された精度の高い予測値に基づいて、自己の温熱的生理状態を比較的正確に把握することができる。そして、把握した温熱的生理状態に基づいて、必要に応じ、飲料水を確保する、活動量を減らす、着衣量を減らす、室内に備えられる空調機器の設定温度を下げる、等の措置を講じることにより、温熱的生理状態の悪化を自ら回避することができる。
また、HEMS10は、演算処理部10Cが温熱的生理量演算処理の実行により演算した各温熱的生理量の予測値を表示するディスプレイ12aを備える。このため、ユーザーは、ディスプレイ12aに表示された予測値に基づいて自己の温熱的生理状態が正常状態であるか異常状態であるかを把握することができるとともに、必要に応じて上記した様々な措置を講ずることにより、温熱的生理状態が悪化して異常状態に至ることを自ら回避することができる。
また、演算処理部10Cは、温熱的生理量演算処理の実行により演算した各温熱的生理量の予測値、特に、予測深部体温tcrに基づいて、ユーザーの温熱的生理状態が異常状態になり得る状態(危険状態)であるか否かを判断し、危険状態であると判断した場合に危険信号を表示制御部10Dに出力する。そして、表示制御部10Dがディスプレイ12aの表示を制御することにより、ディスプレイ12aに、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であることが表示(報知)される。このためユーザーは、自らの温熱的生理状態が危険状態であると認識することができる。この場合、ユーザーは、上記した様々な措置を講じることにより、温熱的生理状態が悪化して熱中症等の熱的に異常な状態に陥ることを自ら回避することができる。
また、HEMS10は、ディスプレイ12aによりユーザーの温熱的生理状態が危険状態であることを報知してから、室内に備えられた空調機器が空調能力を増加するように制御されることなく閾値時間T0が経過したときに、温熱的生理状態が危険状態から正常状態に移行するように空調機器を制御する機器制御部10Fを備える。これによれば、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態から正常状態に移行するように、機器制御部10Fが空調機器を制御することにより、ユーザーの温熱的生理状態が悪化して熱中症等の熱的に異常な状態に至ることを自動的に回避することができる。
また、ディスプレイ12aは、各温熱的生理量(深部体温、体表面温度、心拍数、発汗量等)の希望値を入力する温熱的生理量入力部としての機能を持つ。そして、機器制御部10Fは、ディスプレイ12aに各温熱的生理量の希望値が入力された場合に、演算処理部10Cにより演算された各温熱的生理量の予測値が希望値に近づくように、空調機器を制御する。これによれば、ユーザーの温熱的生理量が入力した希望値に近づくように空調機器が制御されるため、快適性をより高めることができるとともに、ユーザーの温熱的生理状態が悪化して熱的に異常な状態に至ることを未然に防止することができる。
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。上記第一実施形態では、ディスプレイ12aに予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw及び予測心拍数HRが表示されるとともに、予測深部体温tcrに基づいて、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であることを報知し、また、予測深部体温tcrに基づいて空調機器を制御する例を示した。第二実施形態では、ディスプレイ12aに、ヒートファクターが表示されるとともに、ヒートファクターに基づいて、ユーザーの温熱的生理状態が危険状態であることを報知し、また、ヒートファクターに基づいて空調機器を制御する例について説明する。なお、第二実施形態にて以下に説明する構成以外の構成については、上記第一実施形態にて説明した構成と同一であるため、それらの具体的な説明は省略する。
本実施形態に係るHEMS10も、図2に示すように、センサ部10Aと、情報取得部10Bと、演算処理部10Cと、表示制御部10Dと、表示・入力部10E(ディスプレイ12a)と、機器制御部10Fとを有する。各部位の機能は、基本的には、上記第一実施形態で説明した機能と同じである。
図13は、本実施形態に係る演算処理部10Cの構成を機能ごとに分けて示した図である。図13に示すように、本実施形態に係る演算処理部10Cは、温熱的生理量演算部10Gと、ヒートファクター演算部10Hと、ヒートファクター制御部10Iとを有する。温熱的生理量演算部10Gは、上記第一実施形態で説明した図3に示す温熱的生理量演算処理を実行することにより、温熱的生理量(予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw及び予測心拍数HR)を演算し、演算した温熱的生理量を、ヒートファクター演算部10Hに出力する。
ヒートファクター演算部10Hは、ヒートファクター演算処理を実行することにより、ヒートファクターHFを演算する。図14は、ヒートファクター演算部10HがヒートファクターHFを演算するために実行するヒートファクター演算処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、演算処理部10Cは、まず、図14のS501にて、温熱的生理量演算部10Gが演算した予測体表面温度tskを取得する。次いで、ヒートファクター演算部10Hは、S502にて、予測体表面温度tskに基づいてヒートファクターHFを演算する。この場合、ヒートファクター演算部10Hは、以下の式(1)又は式(2)を用いて、ヒートファクターHFを演算する。
tskn≦tsk≦tskcrの場合:tskcr=36℃として、
HF=[(tsk−tskn)/(tskcr−tskn)]×4 (1)
tsk<tsknの場合:tskcr=29℃として、
HF=[−(tsk−tskn)/(tskcr−tskn)]×4 (2)
上記式(1)及び式(2)において、tsknは中立体表面温度(℃)、tskcrは臨界体表面温度(℃)である。また、中立体表面温度tsknは、以下の式(3)により求めることができる
tskn=35.7−0.0275×M×58.14 (3)
式(3)において、Mは代謝量(活動指数met)である。
上記式(1)又は式(2)を用いて演算されたヒートファクターHFは、ユーザーの温冷感の度合いを表す温熱的指標である。ヒートファクターHFは、予測体表面温度tskに基づいて求められており、また、予測体表面温度tskは、環境情報、人体側情報(着衣情報、代謝情報、属性情報)に基づいて求められている。従って、ヒートファクターHFは、ユーザーに関する温熱的指標として個体別に演算される。
ヒートファクターHFの値が0である場合、温熱的に中立な状態(温熱的中立状態)を表す。このとき温熱的な快適性が最も高い。ヒートファクターHFの値が正方向に高くなるほどユーザーが暑く感じていることを表し、ヒートファクターHFの値が負方向に低くなるほどユーザーが寒く感じていることを表す。ヒートファクターHFが4以上である場合、暑過ぎて温熱的生理状態が危険な状態であると言える。ヒートファクターHFが−4以下である場合、寒過ぎて温熱的生理状態が危険な状態であると言える。本実施形態では、ヒートファクターHFが4程度で暑くて危険な状態であり、3程度でとても暑い状態であり、2程度で暑い状態であり、1程度でやや暑い状態であり、0で中立状態であり、−1程度でやや寒い状態であり、−2程度で寒い状態であり、−3程度でとても寒い状態であり、−4程度で寒くて危険な状態であるといったように、ヒートファクターHFと温冷感との対応付けがなされている。
ヒートファクター演算部10Hは、ヒートファクターHFを演算した後に、図14のS503に処理を進め、演算したヒートファクターHFを表示制御部10Dに出力する。その後、このルーチンを終了する。表示制御部10Dは、演算処理部10Cから入力されたヒートファクターHFがディスプレイ12aに表示されるようにディスプレイ12aを制御する。これにより、ディスプレイ12aに、ヒートファクターHFが表示される。
図15は、ディスプレイ12a上におけるヒートファクターHFの表示画面(以下、HF表示画面と呼ぶ)を示す。図15に示すように、HF表示画面には、3水準の着衣情報(薄着、標準、厚着)と、3水準の代謝情報(重作業、軽作業、安静)とによって3行3列のマトリクス状に表示され、9分割された各領域に、それぞれの着衣情報と代謝情報に基づいて演算された予測体表面温度tskから求めた9個のヒートファクターHFが表示される。そして、現在のユーザーの着衣情報、代謝情報におけるヒートファクターHFが、数値と背景色で読み取れるようになっている。このHF表示画面において、ユーザーは、現在の着衣情報、代謝情報に対応するいずれかの領域に触れることにより、触れた領域によって表される着衣情報と代謝情報が後述するヒートファクター制御部10Iに出力される。なお、上記の3水準の着衣情報に対応する着衣指数cloとしては、例えば、第一実施形態の表1に示した値が設定される。着衣情報に関して、HF表示画面において、プルダウンメニューにより、季節として、冷房期、中間期、暖房期を選択することができるようになっており、それぞれ、第一実施形態の表1における夏期、中間期(秋・春)、冬期の値が設定される。また、上記の3水準の代謝情報に対応する活動指数metとしては、例えば、第一実施形態の表2に示した値が設定される。
また、HF表示画面は、個人毎に(個体別に)、及び、場所毎に表示することができ、プルダウンメニューにより人及び場所を選択することができる。選択可能な人として、例えば家族全員、選択可能な場所として、例えば、リビング、寝室、子供部屋、脱衣所、トイレ、等を、それぞれ設定することができる。
なお、本実施形態においては、図15のHF表示画面の中で人名が示されている部分(図15においては「Aさん」と表示されている部分)を押すことにより、個人の属性情報を入力することができるようになっている。図16は、HF画面上に属性情報の入力画面(ユーザー情報入力画面)が表示された状態を示す図である。図16に示すように、HF表示画面上に、属性情報(ユーザー情報)を入力する画面が示される。この入力画面に、名前、性別、生年月日、身長、体重、及び、運動習慣が入力される。生年月日から年齢が計算される。また、運動習慣の入力項目はプルダウンメニューから選択することができるようになっている。図17は、ユーザー情報入力画面上にユーザーの運動習慣を選択することができる画面が表示された図である。図17に示すように、運動習慣として、「よく運動している」、「少しは運動している」、「ほとんど運動しない」という項目が選択可能である。ユーザーは、自らの運動習慣に該当する項目を選択することにより、運動習慣を入力することができる。
ユーザー情報入力画面に入力された運動習慣は、個人差係数の計算に用いられる。表3に、運動習慣と個人差係数との対応関係を示す。
個人差係数は、温熱的生理量演算部10Gが上記した暑熱環境ストレス評価モデル(体表面温度予測モデル)を用いて体表面温度tskを予測するにあたり、発汗能力の個人差を考慮するために用いられる。この個人差係数を用いることにより、無効発汗と着衣の濡れをも考慮して、より正確に、個体別に体表面温度tskを予測することができる。その結果、ヒートファクター演算部10Hにより演算されるヒートファクターHFの精度を向上させることができる。
ヒートファクター制御部10Iは,ヒートファクター演算部10Hが演算したヒートファクターHFを用いて、様々な制御処理を行う。例えば、ヒートファクター制御部10Iは、ヒートファクターHFを用いて危険状態判断処理を実行することにより、ヒートファクターHFが正常範囲から外れていてユーザーの温熱的生理状態が危険状態であるか否かを判断する。図18は、ヒートファクター制御部10Iが実行する危険状態判断処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。図18のルーチンが起動すると、ヒートファクター制御部10Iは、まず、図18のS601にて、ヒートファクター演算部10Hが演算した9個のヒートファクターの中からユーザーがHF表示画面に触れることにより取得された現在の着衣情報、代謝情報に対応するヒートファクターHFを取得する。次いで、ヒートファクター制御部10Iは、S602にて、ヒートファクターHFが4以上であるか否かを判断する。ヒートファクターHFが4以上である場合(S602:Yes)、ヒートファクター制御部10Iは、暑熱側危険信号を表示制御部10Dに出力する(S604)。その後、演算処理部10Cはこのルーチンを終了する。
また、ヒートファクター制御部10Iは、S602にてヒートファクターHFが4未満であると判断した場合(S602:No)には、S603に処理を進め、ヒートファクターHFが−4以下であるか否かを判断する。ヒートファクターHFが−4よりも大きい場合(S603:No)、ヒートファクター制御部10Iはこのルーチンを終了する。一方、ヒートファクターHFが−4以下である場合(S603:Yes)、ヒートファクター制御部10Iは、寒冷側危険信号を表示制御部10Dに出力する(S605)。その後、ヒートファクター制御部10Iはこのルーチンを終了する。
ヒートファクター制御部10Iが上記した危険状態判断処理を実行することにより、ヒートファクターHFが4以上であるときには暑熱側危険信号が表示制御部10Dに出力され、ヒートファクターHFが−4以下であるときには寒冷側危険信号が表示制御部10Dに出力される。表示制御部10Dは、暑熱側危険信号を入力したとき及び寒冷側危険信号を入力したときには、例えば、ディスプレイ12aのHF表示画面を点滅させる。また、HF表示画面の点滅とともに、警報音が発生するようにしてもよい。なお、暑くて危険であるか、寒くて危険であるかは、例えば、HF表示画面の背景色により判断できるように構成することができる。
この例によれば、ヒートファクターHFが−4より大きく4より小さい範囲が、ユーザーの温熱的生理状態が正常な状態である範囲、すなわち正常範囲として定められる。そして、ヒートファクターHFが正常範囲から外れた場合に、HF表示画面が点滅することによって、警報が発せられる。従って、ユーザーは、自らの温熱的生理状態が危険状態にあることを認識することができる。例えばヒートファクターHFが4以上になった場合、ユーザーは、飲料水を確保する、活動量を減らす、着衣量を減らす、室内に備えられる空調機器の設定温度を下げる、等の措置を講じることにより、温熱的生理状態がさらに悪化して異常状態に至ること、すなわち熱中症に陥ることを、自ら回避することができる。また、ヒートファクターHFが−4以下になった場合、ユーザーは、着衣量を増やす、室内に備えられる空調機器の設定温度を上げる、等の措置を講じることにより、ヒートショックに陥ることを、自ら回避することができる。
また、本実施形態においては、ヒートファクターHFが正常範囲内に収まるように、ヒートファクターHFに基づいて、室内の温熱的環境要素、例えば室温を制御するように構成することもできる。この場合、機器制御部10Fが、例えば、図19に示す運転制御処理を実行する。図19に示す運転制御処理ルーチンが起動すると、機器制御部10Fは、まず、図19のS701にて、ヒートファクター演算部10Hが演算した9個のヒートファクターの中からユーザーがHF表示画面に触れることにより取得された現在の着衣情報、代謝情報に対応するヒートファクターHFを取得する。次いで、例えば、ヒートファクターHFが−2以上であり且つ2以下である範囲内に収まるように、ヒートファクターHFに基づいて、空調機器をフィードバック制御する。この場合、例えば、目標とするヒートファクターHFが実現するように計算された目標室内温度と現在の室内温度との差が0になるように、空調機器の制御量をフィードバック制御する。その後、機器制御部10Fは、このルーチンを終了する。このようにして空調機器の制御量をフィードバック制御して室温を制御することで、ユーザーの温熱的生理状態が異常状態に至ることを、未然に回避することができる。
また、本実施形態においては、空調機器を制御する場合に、2通りの制御方式のいずれかを選択することができるように構成されている。2通りの制御方式のうちの一方は、設定温度優先制御方式であり、他方は、ヒートファクター優先制御方式である。設定温度優先制御方式は、予め単位時間ごとに設定されている設定温度に基づいて空調機器を制御する方式である。ヒートファクター優先制御方式は、ユーザーが設定するヒートファクターに基づいて空調機器を制御する方式である。
空調機器の制御方式を設定する場合、ディスプレイ12aには、環境制御画面が表示される。図20に、ディスプレイ12aに表示される環境制御画面を示す。図20に示される環境制御画面にて、空調機器を運転するか停止するかをプルダウンメニューにより選択することができる。また、空調機器を運転する場合、空調機器の制御方式を、設定温度優先制御方式にするかヒートファクター優先制御方式にするかを、プルダウンメニューにより選択することができる。なお、図20に表示されたグラフには、設定温度優先制御を実行する場合に単位時間ごと(一時間ごと)に定められた設定温度(棒グラフ)、及び、ヒートファクター優先制御を実行した場合に設定されたヒートファクターに基づいて計算された設定温度(星印)が示されている。
ユーザーがヒートファクター優先制御方式を選択した場合、ユーザーは、自ら、目標とするヒートファクターの値(設定ヒートファクターHFs)を設定することができる。図21は、環境制御画面上に表示されたヒートファクター設定画面を示す図である。図21に示すように、ヒートファクター設定画面は、ヒートファクターのレベル、優先者、服装(着衣情報)、活動(代謝情報)を、それぞれ入力することができるように構成されている。優先者の欄には、例えば室内に複数の人が存在しているとき、後述するヒートファクター優先制御処理にて用いる属性情報として特定される人が入力される。また、ヒートファクターのレベルは、「低」、「やや低」、「中」、「やや高」、「高」の中から選択することができる。表4に、ヒートファクターのレベルと、そのレベルに対応するヒートファクターの設定値(設定ヒートファクターHFs)との対応関係を示す。
表4に示すように、ヒートファクターのレベルが「低」のとき、設定ヒートファクターHFsは−1に設定され、ヒートファクターのレベルが「やや低」のとき、設定ヒートファクターHFsは−0.5に設定され、ヒートファクターのレベルが「中」のとき、設定ヒートファクターHFsは0に設定され、ヒートファクターのレベルが「やや高」のとき、設定ヒートファクターHFsは0.5に設定され、ヒートファクターのレベルが「高」のとき、設定ヒートファクターHFsは1に設定される。
デフォルトでは、ヒートファクターのレベルは「中」であるが、例えば暖房期にもう少し暖かいほうが良い場合は、ヒートファクターのレベルを高い側に設定することもできるし、冷房期にもう少し涼しいほうがよい場合は、ヒートファクターのレベルを低い側に設定することもできる。また、健康増進を図るために適度に環境ストレスを自ら与えたい時などにも、ヒートファクターのレベルを「中」以外に設定することもできる。
ヒートファクター優先制御方式が選択された場合、ヒートファクター制御部10Iは、ヒートファクター優先制御処理を実行する。図22は、ヒートファクター制御部10Iが実行するヒートファクター優先制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、ヒートファクター制御部10Iは、まず、図22のS801にて、ユーザーによりヒートファクター設定画面に入力されたヒートファクターのレベルに基づいて、設定ヒートファクターHFsを取得する。次いで、ヒートファクター制御部10Iは、現在の室内湿度RHを読み込む(S802)。続いて、ヒートファクター制御部10Iは、ユーザーの属性情報(ユーザーの身長、体重、年齢、性別、個人差係数等)を取得し(S803)、さらに、着衣指数clo、活動指数metを取得する(S804,S805)。
その後、ヒートファクター制御部10Iは、読み込んだ室内湿度RH、取得した設定ヒートファクターHFs、属性情報、着衣指数clo、活動指数metに基づいて、ヒートファクター優先目標室内温度tsを演算する(S806)。ここで、ヒートファクター制御部10Iは、仮設定した室内温度、読み込んだ室内湿度RH、取得した属性情報、着衣指数clo、活動指数metに基づいてヒートファクターを求める。そして、仮設定した室内温度を徐々に変化させ、求めたヒートファクターが設定ヒートファクターHFsに一致したときの仮設定した室内温度をヒートファクター優先目標室内温度tsとする。つまり、S806では、ヒートファクター制御部10Iは、ヒートファクターが設定ヒートファクターHFsになるように設定されるべき室内温度を求め、求めた室内温度をヒートファクター優先目標室内温度tsに設定する。
次いで、演算したヒートファクター優先目標室内温度tsを機器制御部10Fに出力する(S807)。その後、ヒートファクター制御部10Iは、このルーチンを終了する。
また、ヒートファクター優先制御方式が選択された場合、機器制御部10Fは、ヒートファクター優先運転制御処理を実行する。図23は、機器制御部10Fが実行するヒートファクター優先運転制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、機器制御部10Fは、まず、図23のS901にて、ヒートファクター制御部10Iから、ヒートファクター優先目標室内温度tsを取得する。次いで、現在の室内温度taを読み込む(S902)。続いて、機器制御部10Fは、ヒートファクター優先目標室内温度tsと現在の室内温度taとの差Δt(=ts−ta)が0となるように、すなわち室内温度taがヒートファクター優先目標室内温度tsとなるように空調機器をフィードバック制御する(S903)。その後、機器制御部10Fは、このルーチンを終了する。
ヒートファクター制御部10Iが上記したヒートファクター優先制御処理を実行し、且つ、機器制御部10Fが上記したヒートファクター優先運転制御処理を実行することにより、空調機器は、ヒートファクターHFが設定ヒートファクターHFsになるように、室内の温度を制御する。
これにより、ユーザーの温冷感の度合いに基いた空調制御が実現される。設定ヒートファクターHFsが0である場合、室内のユーザーは、常にヒートファクターHFが0になるような快適環境を得ることができる。また、設定ヒートファクターHFsを0からわずかにずらした値に設定された場合、ユーザーは快適ではあるがわずかに環境に対するストレスを感じる。このような微小な環境ストレスをユーザーに与えることにより、快適性を維持しつつも、ユーザーの健康状態を良好に保つことができ、加えて、省エネルギーに貢献することができる。
以上のように、第二実施形態に係るHEMS10は、予測体表面温度tskに基づいて、室内における対象とする人(ユーザー)の温熱的生理状態に関連する温熱的指標であるヒートファクターHFを演算するヒートファクター演算部10Hと、ヒートファクター演算部10Hにて演算されたヒートファクターを表示するディスプレイ12aと、を備える。従って、ユーザーは、自らの温熱的生理状態をヒートファクターによって定量的に把握することができる。また、温熱的に中立な状態近傍の快適状態から、温熱的に中立な状態から大きく外れた暑熱状態或いは寒冷状態までの温熱的状態が1つの温熱的指標(ヒートファクター)によって連続的に表現される。従って、ユーザーは、ヒートファクターを確認するのみで、自らの深部体温或いは体表面温度がどの程度であれば温熱的生理状態が正常であるかなどといった迷いを生じることなく、感覚的に自らの温熱的生理状態を把握することができる。
また、本実施形態にて取得されるヒートファクターは、対象とする人の属性情報、着衣情報(着衣指数clo)、代謝情報(活動指数met)に基づいて、個体別に演算される。従って、それぞれの人が、各々のヒートファクターを確認することによって、自らの温熱的生理状態を把握することができる。
また、本実施形態において、ヒートファクター制御部10Iは、ヒートファクター演算部10Hにて演算されたヒートファクターHFが、ユーザーの温熱的生理状態が正常な状態である範囲として予め定められる正常範囲(例えば、−4<HF<4の範囲)を外れているか否かを判断する。そして、ディスプレイ12aは、ヒートファクターが正常範囲から外れた場合に点滅することによって警報を発する。従って、ユーザーは、自らの温熱的生理状態が危険な状態であると認識することができる。
また、本実施形態に係る機器制御部10Fは、ヒートファクターHFが正常範囲(例えば、−4<HF<4の範囲)内に収まるように、ヒートファクターHFに基づいて、空調機器を制御して室内の温熱的環境要素(例えば室内温度)を制御する。このため、ユーザーの温熱的生理状態を危険状態ではない正常状態に自動的に制御することができる。その結果、熱中症予防、ヒートショック予防等、安全な生活環境の実現に寄与することができる。
また、本実施形態に係るヒートファクター制御部10Iは、ヒートファクター優先制御方式が選択されたときに、ヒートファクターが予め設定されている設定ヒートファクターHFsになるような室内の温度であるヒートファクター優先目標室内温度tsを演算する。そして、機器制御部10Fは、室内温度taが、ヒートファクターHFが設定ヒートファクターHFsになるように設定されたヒートファクター優先目標室内温度tsに一致するように、室内に備えられる空調機器をフィードバック制御して室内温度を制御する。このため、温熱的な安全性(快適性)を確保しながら、自動的に過度な空調(冷やし過ぎ、暖め過ぎ)を抑制することができる。また、ユーザーが好みのヒートファクターを設定することにより、人体にとって適度な環境ストレスを与えることもできる。その結果、健康増進、快適性、省エネルギーの促進を、同時に実現することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記第一及び第二実施形態においては、HEMSを例にとって説明したが、本発明は、その他のエネルギー管理システム、例えばBEMS、或いはCEMSにも、適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。