JP2018091573A - 空調機器制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ユーザーにとってより快適な室内温度環境をユーザーに提供することができるように、空調機器を制御することができる空調機器制御装置を提供すること。【解決手段】 機器制御部10Fは、設定温度tσを設定する設定温度設定部S404と、室内温度時間変化率Sの絶対値が室内温度変化率閾値α以下であるか否かに基づいて、室内温度状態が定常温度状態であるか否かを判断する室内温度状態判断部S421と、室内温度状態が定常温度状態であると判断されたときに、目標室内温度ts1と室内温度taとの温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δte以下であるか否かを判断する温度差判断部S423と、温度差判断部S423にて温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δteよりも大きいと判断されたときに、温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δte以下になるように、設定温度tσを補正する設定温度補正部S425と、を備える。【選択図】 図12C
Description
本発明は、空調機器を制御する空調機器制御装置に関する。
一般住宅に用いられるエネルギー管理システムは、ホームエネルギー管理システム(以下、HEMS)と呼ばれる。HEMSは、住宅の室内に供給される電力、ガス等のエネルギーの使用状況をリアルタイムで表示する機能、過去のエネルギーの使用状況の履歴を表示する機能、さらに、省エネルギー化が促進されるように室内に設置された電力負荷或いは熱負荷へのエネルギーの供給量を制御する機能、等を有する。
昨今のスマートハウスの普及によりHEMSの需要が増大している。こうしたHEMSの需要の増大に伴って、様々な新機能を有するHEMSの開発も進められている。例えば、特許文献1は、室内に存在する人(ユーザー)の温熱的生理状態に関連した温熱的指標であるヒートファクターに基づいて空調機器を制御する空調機器制御機能を有するHEMSを開示する。特許文献1によれば、ユーザーの温冷感に基づいて空調機器によって室内温度が調節されるため、ユーザーにとってより快適な室内温度環境をユーザーに提供することができる。
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載のHEMSに備えられる空調機器制御機能によれば、ユーザーの温熱的生理状態に基づいて求められるヒートファクターが目的とする値である設定ヒートファクターに近づくように目標室内温度が設定され、設定された目標室内温度が空調機器の設定温度として空調機器に送信される。これにより空調機器は、室内温度が目標室内温度に近づくように、室内温度を調節する。
特許文献1に記載のHEMSに備えられる空調機器制御機能によれば、ユーザーの温熱的生理状態に基づいて求められるヒートファクターが目的とする値である設定ヒートファクターに近づくように目標室内温度が設定され、設定された目標室内温度が空調機器の設定温度として空調機器に送信される。これにより空調機器は、室内温度が目標室内温度に近づくように、室内温度を調節する。
しかしながら、空調機器がHEMSから受信した設定温度に基づいて室内温度を調節して室内温度状態が定常温度状態に至った場合でも、室内温度が目標室内温度に一致しない場合がある。室内温度が目標室内温度に一致しない原因としては、空調機器固有の制御特性、空調機器の制御精度の個体差等が挙げられる。そのため、ヒートファクターを目的とする値(設定ヒートファクター)に十分に近づける(或いは一致させる)ことができず、その結果、快適な室内温度環境をユーザーに提供することができない場合が生じ得る。
本発明は、ユーザーにとってより快適な室内温度環境をユーザーに提供することができるように、空調機器を制御することができる空調機器制御装置を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、室内温度(ta)を所望の目標室内温度(ts1)に調節するために設定される設定温度(tσ)に基づいて室内温度を調節するように構成された空調機器を制御する空調機器制御装置であって、設定温度を設定する設定温度設定部(S404)と、設定温度に基づいて空調機器が調節している室内温度の時間変化率(S)の絶対値が所定の閾値(α)以下であるか否かに基づいて、室内温度状態が定常温度状態であるか否かを判断する室内温度状態判断部(S421)と、室内温度状態判断部にて室内温度状態が定常温度状態であると判断されたときに、目標室内温度と室内温度との温度差(Δt)の絶対値が予め定められる室内温度許容偏差(Δte)以下であるか否かを判断する温度差判断部(S423)と、温度差判断部にて温度差の絶対値が室内温度許容偏差よりも大きいと判断されたときに、温度差の絶対値が室内温度許容偏差以下になるように、設定温度設定部にて設定された設定温度を温度差に基づいて補正する設定温度補正部(S425)と、を備える、空調機器制御装置(10F)を提供する。
本発明は、室内温度(ta)を所望の目標室内温度(ts1)に調節するために設定される設定温度(tσ)に基づいて室内温度を調節するように構成された空調機器を制御する空調機器制御装置であって、設定温度を設定する設定温度設定部(S404)と、設定温度に基づいて空調機器が調節している室内温度の時間変化率(S)の絶対値が所定の閾値(α)以下であるか否かに基づいて、室内温度状態が定常温度状態であるか否かを判断する室内温度状態判断部(S421)と、室内温度状態判断部にて室内温度状態が定常温度状態であると判断されたときに、目標室内温度と室内温度との温度差(Δt)の絶対値が予め定められる室内温度許容偏差(Δte)以下であるか否かを判断する温度差判断部(S423)と、温度差判断部にて温度差の絶対値が室内温度許容偏差よりも大きいと判断されたときに、温度差の絶対値が室内温度許容偏差以下になるように、設定温度設定部にて設定された設定温度を温度差に基づいて補正する設定温度補正部(S425)と、を備える、空調機器制御装置(10F)を提供する。
本発明によれば、室内温度状態が定常温度状態である場合における目標室内温度と室内温度との温度差の絶対値が室内温度許容偏差より大きいときに、上記温度差が室内温度許容偏差以下になるように、上記温度差に基づいて設定温度が補正される。これにより、補正された設定温度に基づいて室内温度が調節される。その結果、室内温度と目標室内温度との温度差をより小さく(或いは0に)することができる。よって、ユーザーにとってより好ましい室内温度環境をユーザーに提供することができる。
また、本発明において、目標室内温度は、室内に存在する人の温熱的生理状態に関連する温熱的指標であるヒートファクター(HF)に基づいて定められているとよい。より好ましくは、目標室内温度は、ヒートファクターが予め定められる所望の値(設定ヒートファクターHFs)に一致する温度(ts)に基づいて求められているとよい。そして、設定温度設定部は、こうして求められた目標室内温度に基づいて設定温度を設定するとよい。これによれば、ユーザーの温冷感に基づいて空調機器によって室内温度が精度よく調節されるため、ユーザーにとってより快適な室内温度環境をユーザーに提供することができる。
なお、上記において、「ヒートファクターが予め定められる所望の値(設定ヒートファクターHFs)に一致する温度」は、その温度を用いて演算したヒートファクターの値が所望の値に完全に一致する必要はなく、ユーザーの温冷感に影響を与えない程度に一致していればよい。例えば、ヒートファクターが予め定められる所望の値に一致する温度を演算するにあたり、複数の温度を用意し(仮設定し)、用意したそれぞれの温度を用いてヒートファクターを演算するとする。ここで、演算したヒートファクターのうち所望の値に完全に一致する値が無い場合であっても、ユーザーの温冷感に影響を与えない程度に所望の値に近いヒートファクターの演算に用いた温度を、ヒートファクターが予め定められる所望の値に一致する温度とみなすことができる。
また、設定温度は、予め定められている温度刻み幅(Δtd)ごとに設定可能であり、目標室内温度は、温度刻み幅ごとに設定可能な複数の温度のうち、ヒートファクターが予め定められる所望の値(設定ヒートファクター)に一致する温度に最も近い温度であるのがよい。そして、設定温度設定部は、こうして求められた目標室内温度を設定温度に設定するとよい。これによれば、設定温度を、市販の空調機器等に設定可能な温度のいずれかに設定することができる。そのため市販の空調機器の制御に本発明に係る空調機器制御装置を適用することができる。
上記発明において、「温度刻み幅」とは、例えば市販の空調機器に備えられているリモコン等によって設定することができる設定温度間隔である。温度刻み幅として、例えば1℃、或いは0.5℃を例示することができる。温度刻み幅が0.5℃である場合、例えば設定温度は、20.0℃、20.5℃、21.0℃、21.5℃、・・・というように、0.5℃刻みで設定される。
また、設定温度補正部は、温度刻み幅を用いて段階的に表される複数の刻み温度差のうち上記温度差(すなわち室内温度状態が定常温度状態である場合における、目標室内温度と室内温度との温度差)に最も近い刻み温度差を設定温度に加算することにより、設定温度を補正するとよい。これによれば、室内温度と目標室内温度との温度差の絶対値が室内温度許容偏差以下になるように設定温度を補正することができる。また、補正された設定温度を市販の空調機器等に設定可能な温度のいずれかに設定することができる。そのため市販の空調機器の制御に本発明に係る空調機器制御装置を適用することができる。
上記発明において、「刻み温度差」とは、温度刻み幅間隔で段階的に表される温度差である。例えば、温度刻み幅が0.5℃である場合、「刻み温度差」は、−2.0℃から2.0℃の範囲では、−2.0℃、−1.5℃、−1.0℃、−0.5℃、0℃、0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃である。
また、本発明に係る空調機器制御装置は、目標室内温度が変化したときに、目標室内温度の変化量に相当する目標室内温度差(Δts)を設定温度に加算することにより、設定温度を変更する設定温度変更部(S415)を備えるとよい。これによれば、ヒートファクターの変化によって目標室内温度が変化したときに、その変化に対応して設定温度を変更することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係る空調機器制御装置としての機能を有するホームエネルギー管理システム(以下、HEMS)が設置された住宅Hの概略図である。図1に示すように、住宅Hには分電盤1が設置され、分電盤1に商用電源Cが接続される。商用電源Cから供給される電力は交流であり、電圧は例えば100V、周波数は例えば60Hzである。
また、住宅Hの屋根R上に太陽光発電装置2が取り付けられている。この太陽光発電装置2は光エネルギーを電気エネルギーに変換する。さらに、住宅Hに隣接して熱電併給装置(コージェネレーション装置)3が設置されている。熱電併給装置3は、電気エネルギー及び熱エネルギーを生成する。熱電併給装置3は、例えばガスエンジン等の内燃機関及び発電機を有する。内燃機関の駆動により発電機が発電する。また、内燃機関の駆動により熱が発生する。
太陽光発電装置2及び熱電併給装置3は、系統連系装置(パワーコンディショナ)PCSに電気的に接続される。系統連系装置PCSは、太陽光発電装置2により生成された電力及び熱電併給装置3により発電された電力を、商用電力と同位相で且つ同電圧(例えば100V)、同周波数(例えば60Hz)の交流電力に変換するとともに、変換した交流電力を商用電源Cに系統連系する。
また、住宅Hの室内に電力負荷D1,D2、及び熱負荷H1が設置される。電力負荷D1,D2は分電盤1に電気的に接続される。電力負荷D1,D2は、分電盤1を介して室内に供給される電力により駆動される。電力負荷D1は、例えば冷蔵庫、或いは照明機器である。また、本実施形態において電力負荷D2は、室内温度を調節する空調機器である。また、熱負荷H1には、熱電併給装置3で生成された熱が供給される。熱負荷H1は、例えば床暖房装置である。
図1に示すように、HEMS10は、メイン制御装置11、タブレット型端末制御装置12を備える。メイン制御装置11は、CPU,ROM,RAM等を備えるマイクロコンピュータを主要構成とし、分電盤1に供給される電力により作動する。メイン制御装置11は、系統連系装置PCS、各電力負荷D1,D2、熱負荷H1に無線通信或いは有線通信可能に構成されており、これらの各機器に設けられたセンサから必要な情報、具体的には、太陽光発電装置2の発電量、熱電併給装置3の発電量及び発熱量、電力負荷D1,D2の作動状況、熱負荷H1の作動状況を入力する。
タブレット型端末制御装置12は、CPU,ROM,RAM等を備えるマイクロコンピュータを主要構成とし、充電式バッテリーにより作動する。タブレット型端末制御装置12はメイン制御装置11に通信可能に構成される。また、タブレット型端末制御装置12はディスプレイ12aを備える。
また、HEMS10は、温度センサ13及び湿度センサ14を備える。温度センサ13及び湿度センサ14は住宅Hの室内に設置されている。温度センサ13は室内温度taを検出し、湿度センサ14は室内湿度RHを検出する。検出した室内温度ta及び室内湿度RHはメイン制御装置11に送信される。
図2は、HEMS10の構成を機能ごとに分けて示した図である。図2に示すように、HEMS10は、センサ部10Aと、情報取得部10Bと、演算処理部10Cと、表示制御部10Dと、表示・入力部10E(ディスプレイ12a)と、機器制御部10Fとを有する。
センサ部10Aは各種のセンサ類により構成されており、太陽光発電装置2の発電量、熱電併給装置3の発電量及び発熱量、電力負荷D1,D2の作動状況、熱負荷H1の作動状況、室内温度ta、及び室内湿度RHを検出する。このセンサ部10Aに温度センサ13及び湿度センサ14が含まれる。
情報取得部10Bは、センサ部10Aにより検出された情報、及び、表示・入力部10Eに入力された情報を取得し、記憶する。演算処理部10Cは、情報取得部10Bに取得された情報に基づいて、様々な演算処理を実行し、その処理結果を出力する。本実施形態では、情報取得部10B及び演算処理部10Cはメイン制御装置11に備えられる。
表示制御部10Dは、情報取得部10Bに取得された情報、演算処理部10Cによる演算結果を受け取るとともに、受け取った情報及び演算結果に基づいて、タブレット型端末制御装置12のディスプレイ12aの表示を制御する。表示・入力部10Eはディスプレイ12aに相当し、各種の情報、演算結果を表示する。この表示・入力部10E(ディスプレイ12a)は、ユーザーが触ることにより指示或いは情報を入力することができるように構成されている。機器制御部10Fは、ユーザーからの指示、表示・入力部10Eに入力された情報、演算処理部10Cによる演算結果、情報取得部10Bに取得された情報に基づいて、電力負荷D1,D2、熱負荷H1の作動を制御する。本実施形態では、表示制御部10D、表示・入力部10E(ディスプレイ12a)及び機器制御部10Fは、タブレット型端末制御装置12に備えられる。
このような構成を有するHEMS10において、情報取得部10Bに取得された太陽光発電装置2により発電された電力の使用量、熱電併給装置3により発電された電力の使用量、熱電併給装置3により発熱された熱の使用量が、リアルタイムでディスプレイ12aに表示される。また、電力の使用量及び熱の使用量の履歴もディスプレイ12aに表示させることができる。さらに、住宅Hの室内に設置された空調機器(電力負荷D2)及び床暖房装置(熱負荷H1)の使用状況も、ディスプレイ12aにリアルタイムで表示できる。すなわち、本実施形態に係るHEMSは、室内に供給されるエネルギーの使用状況に関連する情報を表示する機能を有する。
本実施形態に係るHEMS10は、さらに、住宅Hの室内に存在する人の温熱的生理量の予測値を演算し、演算した予測値を表示することができるように構成される。ここで、「温熱的生理量」とは、身体の熱平衡状態の変化に対応して変化する生理量を言う。例えば、身体が高温高湿下に置かれると、体表面温度、深部体温、心拍数、発汗量が変化する。従って、これらの生理量は温熱的生理量である。本実施形態では、深部体温、体表面温度、心拍数、発汗量の予測値を演算する。
また、本実施形態に係るHEMS10は、さらに、後述するヒートファクターHFを演算し、演算したヒートファクターHFを表示することができるように構成される。
上記した温熱的生理量(深部体温、体表面温度、心拍数、発汗量)の予測値の演算及びヒートファクターHFの演算は、演算処理部10Cにてなされる。図3は、本実施形態に係る演算処理部10Cの構成を機能ごとに分けて示した図である。図3に示すように、本実施形態に係る演算処理部10Cは、温熱的生理量演算部10Gと、ヒートファクター演算部10Hと、ヒートファクター優先目標室内温度演算部10Iとを有する。温熱的生理量演算部10Gは、温熱的生理量の予測値を演算する。ヒートファクター演算部10Hは、ヒートファクターHFを演算する。ヒートファクター優先目標室内温度演算部10Iは、後述するヒートファクター優先目標室内温度ts(以下、HF優先目標室内温度tsと言う場合もある)を演算する。
図4は、温熱的生理量演算部10Gが、温熱的生理量の予測値(予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw及び予測心拍数HR)を演算するために実行する温熱的生理量演算処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、HEMS10が駆動された後に、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。このルーチンが起動すると、温熱的生理量演算部10Gは、まず、図4のステップ(以下、ステップをSと略記する)101にて、情報取得部10Bに取得された現在の室内温度taを読み込み、次いで、S102にて、情報取得部10Bに取得された現在の室内湿度RHを読み込む。
続いて、温熱的生理量演算部10Gは、ユーザーの人体側情報を読み込む(S103)。ユーザーの人体側情報とは、温熱的生理量の変化に影響する人体情報及びユーザーが装備する服装に関する情報である。具体的には、ユーザーの身長、体重、年齢、性別、服装、活動量等の情報が、人体側情報に相当する。これらの人体側情報は、ディスプレイ12aを介して、予め情報取得部10Bに取得されている。
続いて、温熱的生理量演算部10Gは、S104にて、着衣指数cloを取得する。「着衣指数clo」とは、住宅Hの室内に存在する人(ユーザー)の服装の軽重を表す数値である。着衣指数cloは、着衣量が多いほど(厚着であるほど)大きい値となるように設定される。例えば、着衣指数cloは、以下の表1のように設定することができる。なお、着衣指数cloが1とは、着衣の熱抵抗が0.155(m2・℃)/Wであることを表す。
表1に示すような、季節・服装と、着衣指数cloとの関係を示す情報は、予めメイン制御装置11内の記憶領域に記憶されている。温熱的生理量演算部10Gは、S104にて、情報取得部10Bに取得されているユーザーの「服装」に関する情報(着衣情報)を表1に照らし合わせることにより、着衣指数cloを取得する。例えば、ユーザーの「服装」が「夏期軽装」であれば、着衣指数cloは0.3である。
次に、温熱的生理量演算部10Gは、S105にて、活動指数metを取得する。「活動指数met」とは、室内に存在する人の代謝量(活動量)の大きさを表す数値である。活動指数metは、代謝量(活動量)が大きいほど大きい値に設定される。例えば、活動指数metは以下の表2のように設定することができる。
表2に示すように、室内でのユーザーの活動態様(代謝情報)が「安静」である場合に活動指数metが1に設定され、活動態様が「軽作業」である場合には活動指数metが2に設定され、活動態様が「重作業」である場合に活動指数metが3に設定される。なお、活動指数metが1とは、代謝量が58.14W/m2であることを表す。
温熱的生理量演算部10Gは、情報取得部10Bに取得されているユーザーの「活動量」に関する情報(代謝情報)に基づいて、活動指数metを取得する。例えば、ユーザーの「活動量」が「室内軽作業」であれば、活動指数metは2である。
温熱的生理量演算部10Gは、着衣指数clo及び活動指数metを取得した後に、S106に処理を進め、予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測心拍数HR、予測発汗量wswを演算する。予測体表面温度tskは、ユーザーの現在の体表面温度の予測値である。予測深部体温tcrは、ユーザーの現在の深部体温の予測値である。予測心拍数HRは、ユーザーの現在の心拍数の予測値である。予測発汗量wswは、ユーザーの現在の発汗量の予測値である。
ここで、北海道大学大学院工学研究院は、体表面温度、深部体温、心拍数、発汗量(温熱的生理量)を、着衣指数clo(着衣情報)、活動指数met(代謝情報)及び属性情報(身長、体重、年齢、性別等)を含む人体側情報及び、室内温度ta、室内湿度RHを含む環境情報に基づいて予測するモデル(暑熱環境ストレス評価モデル)を提案している。図5は、暑熱環境ストレス評価モデルの概要を示す図である。図5によれば、人体の温熱的生理量が、人体側要因を表す量(着衣情報、代謝情報、属性情報等)及び環境側要因を表す量に基づいて予測できることが示されている。従って、斯かるモデルに用いられる予測演算式を利用することにより、着衣指数clo(着衣情報)、活動指数met(代謝情報)、属性情報及び環境情報に基づいて、温熱的生理量の予測値(予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測心拍数HR、予測発汗量wsw)を個体別に精度良く演算することができる。なお、予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測心拍数HR、予測発汗量wswの具体的な予測演算手法は、以下の文献1を参照されたい。
文献1:H. Kubota, K. Kuwabara, Y. Hamada: "The development and initial validation of a virtual dripping sweat rate and a clothing wetness ratio for use in predictive heat strain models": International Journal of Biometeorology, Volume 58, Issue 6, pp 1339-1353
文献1:H. Kubota, K. Kuwabara, Y. Hamada: "The development and initial validation of a virtual dripping sweat rate and a clothing wetness ratio for use in predictive heat strain models": International Journal of Biometeorology, Volume 58, Issue 6, pp 1339-1353
温熱的生理量演算部10Gは、図4のS106にて予測体表面温度tsk,予測深部体温tcr,予測発汗量wsw,予測心拍数HRを演算した後に、演算結果を表示制御部10Dに出力する(S107)。その後、このルーチンを一旦終了する。表示制御部10Dは、温熱的生理量演算部10Gから受け取った演算結果がディスプレイ12aに表示されるようにディスプレイ12aの表示を制御する。これにより、ディスプレイ12aに、予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw及び予測心拍数HRが表示される。
図6は、ディスプレイ12a上における予測体表面温度tsk、予測深部体温tcr、予測発汗量wsw及び予測心拍数HRの表示画面(以下、温熱的生理量出力画面と呼ぶ)の一例を示す図である。図6に示す例では、体表温度(予測体表面温度tsk)が35.0℃、深部体温(予測深部体温tcr)が37.0℃、心拍数(予測心拍数HR)が70b.p.m.(beats per minute)、発汗量(予測発汗量wsw)が1400gである。ユーザーは、温熱的生理量出力画面により自身の温熱的生理状態を確認することができる。
また、ヒートファクター演算部10Hは、ヒートファクター演算処理を実行することにより、ヒートファクターHFを演算する。ここで、ヒートファクターHFとは、ユーザーの温冷感の度合いを表す温熱的指標を言う。ヒートファクターHFは、予測体表面温度tskに基づいて求められており、また、予測体表面温度tskは、環境情報、人体側情報(着衣情報、代謝情報、属性情報)に基づいて求められている。従って、ヒートファクターHFは、ユーザーに関する温熱的指標として個体別に演算される。
図7は、ヒートファクター演算部10HがヒートファクターHFを演算するために実行するヒートファクター演算処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、ヒートファクター演算部10Hは、まず、図7のS201にて、温熱的生理量演算部10Gが演算した予測体表面温度tskを取得する。次いで、ヒートファクター演算部10Hは、S202にて、予測体表面温度tskに基づいてヒートファクターHFを演算する。この場合、ヒートファクター演算部10Hは、以下の式(1)又は式(2)を用いて、ヒートファクターHFを演算する。
tskn≦tsk≦tskcrの場合:tskcr=36℃として、
HF=[(tsk−tskn)/(tskcr−tskn)]×4 (1)
tsk<tsknの場合:tskcr=29℃として、
HF=[−(tsk−tskn)/(tskcr−tskn)]×4 (2)
tskn≦tsk≦tskcrの場合:tskcr=36℃として、
HF=[(tsk−tskn)/(tskcr−tskn)]×4 (1)
tsk<tsknの場合:tskcr=29℃として、
HF=[−(tsk−tskn)/(tskcr−tskn)]×4 (2)
上記式(1)及び式(2)において、tsknは中立体表面温度(℃)、tskcrは臨界体表面温度(℃)である。また、中立体表面温度tsknは、以下の式(3)により求めることができる。
tskn=35.7−0.0275×M×58.14 (3)
式(3)において、Mは代謝量(活動指数met)である。
tskn=35.7−0.0275×M×58.14 (3)
式(3)において、Mは代謝量(活動指数met)である。
上記式(1)又は式(2)を用いて演算されたヒートファクターHFの値が0である場合、温熱的に中立な状態(温熱的中立状態)を表す。このとき温熱的な快適性が最も高い。ヒートファクターHFの値が正方向に高くなるほどユーザーが暑く感じていることを表し、ヒートファクターHFの値が負方向に低くなるほどユーザーが寒く感じていることを表す。ヒートファクターHFが4以上である場合、暑過ぎて温熱的生理状態が危険な状態であると言える。ヒートファクターHFが−4以下である場合、寒過ぎて温熱的生理状態が危険な状態であると言える。本実施形態では、ヒートファクターHFが4程度で暑くて危険な状態であり、3程度でとても暑い状態であり、2程度で暑い状態であり、1程度でやや暑い状態であり、0で中立状態であり、−1程度でやや寒い状態であり、−2程度で寒い状態であり、−3程度でとても寒い状態であり、−4程度で寒くて危険な状態であるといったように、ヒートファクターHFと温冷感との対応付けがなされている。
ヒートファクター演算部10Hは、ヒートファクターHFを演算した後に、図7のS203に処理を進め、演算したヒートファクターHFを表示制御部10Dに出力する。その後、このルーチンを終了する。表示制御部10Dは、演算処理部10Cから入力されたヒートファクターHFがディスプレイ12aに表示されるようにディスプレイ12aを制御する。これにより、ディスプレイ12aに、ヒートファクターHFが表示される。
図8は、ディスプレイ12a上におけるヒートファクターHFの表示画面(以下、HF表示画面と呼ぶ)を示す。図8に示すように、HF表示画面には、3水準の着衣情報(薄着、標準、厚着)と、3水準の代謝情報(重作業、軽作業、安静)とによって3行3列のマトリクス状に表示され、9分割された各領域に、それぞれの着衣情報と代謝情報に基づいて演算された予測体表面温度tskから求めた9個のヒートファクターHFが表示される。そして、現在のユーザーの着衣情報、代謝情報におけるヒートファクターHFが、数値と背景色で読み取れるようになっている。なお、上記の3水準の着衣情報に対応する着衣指数cloとしては、例えば、表1に示した値が設定される。着衣情報に関して、HF表示画面において、プルダウンメニューにより、季節として、冷房期、中間期、暖房期を選択することができるようになっており、それぞれ、表1における夏期、中間期(秋・春)、冬期の値が設定される。また、上記の3水準の代謝情報に対応する活動指数metとしては、例えば、表2に示した値が設定される。
さらに、本実施形態に係るHEMS10は、室内に設置された空調機器(電力負荷D2)を制御することができるように構成される。ここで、本実施形態に係るHEMS10は、空調機器を制御する場合に、2通りの制御方式のいずれかを選択することができるように構成されている。2通りの制御方式のうちの一方は、設定温度優先制御方式であり、他方は、ヒートファクター優先制御方式である。ヒートファクター優先制御方式は、ヒートファクターHFに基づいて空調機器を制御する方式である。
空調機器の制御方式を設定する場合、ディスプレイ12aには、環境制御画面が表示される。図9に、ディスプレイ12a上に表示される環境制御画面を示す。図9に示される環境制御画面にて、空調機器を運転するか停止するかをプルダウンメニューにより選択することができる。また、空調機器を運転する場合、空調機器の制御方式を、設定温度優先制御方式にするかヒートファクター優先制御方式にするかを、プルダウンメニューにより選択することができる。なお、図9の環境制御画面に表示されたグラフには、設定温度優先制御を実行する場合に単位時間ごと(一時間ごと)に定められた設定温度(棒グラフ)、及び、ヒートファクター優先制御を実行した場合に設定されたヒートファクターに基づいて計算された設定温度(星印)が示されている。後述の説明においては、ヒートファクター優先制御について説明し、設定温度優先制御についての説明は比較的周知であるので省略する。
ユーザーがヒートファクター優先制御方式を選択した場合、ユーザーは、自ら、ヒートファクターの所望の値(設定ヒートファクターHFs)を設定することができる。図10は、環境制御画面上に表示されたヒートファクター設定画面を示す図である。図10に示すように、ヒートファクター設定画面は、ヒートファクターのレベル、優先者、服装(着衣情報)、活動(代謝情報)を、それぞれ入力することができるように構成されている。優先者の欄には、例えば室内に複数の人が存在しているとき、後述するヒートファクター優先制御処理にて用いる属性情報として特定される人が入力される。また、ヒートファクターのレベルは、「低」、「やや低」、「中」、「やや高」、「高」の中から選択することができる。表3に、ヒートファクターのレベルと、そのレベルに対応するヒートファクターの設定値(設定ヒートファクターHFs)との対応関係を示す。
表3に示すように、ヒートファクターのレベルが「低」のとき、設定ヒートファクターHFsは−1に設定され、ヒートファクターのレベルが「やや低」のとき、設定ヒートファクターHFsは−0.5に設定され、ヒートファクターのレベルが「中」のとき、設定ヒートファクターHFsは0に設定され、ヒートファクターのレベルが「やや高」のとき、設定ヒートファクターHFsは0.5に設定され、ヒートファクターのレベルが「高」のとき、設定ヒートファクターHFsは1に設定される。
デフォルトでは、ヒートファクターのレベルは「中」、すなわち設定ヒートファクターHFsが0に設定されるが、健康増進を図るために適度な環境ストレスを自ら与えたいようなときにおいては、暖房期にヒートファクターのレベルを低い側に設定することもできるし、冷房期にヒートファクターのレベルを高い側に設定することもできる。
ヒートファクター優先制御方式が選択された場合、演算処理部10Cのヒートファクター優先目標室内温度演算部10I(以下、HF優先目標室内温度演算部10Iと言う場合もある)は、ヒートファクターHFが設定ヒートファクターHFsに一致するような温度であるヒートファクター優先目標室内温度ts(以下、HF優先目標室内温度tsと言う場合もある)を演算する。これとともに、機器制御部10Fは、空調機器設定温度制御処理を実行する。これらの演算処理及び制御処理により、ヒートファクター優先制御が実行される。
図11は、HF優先目標室内温度演算部10IがHF優先目標室内温度tsを演算するために実行するHF優先目標室内温度演算処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、HF優先目標室内温度演算部10Iは、まず、図11のS301にて、ユーザーによりヒートファクター設定画面に入力されたヒートファクターのレベルに基づいて、設定ヒートファクターHFsを取得する。次いで、HF優先目標室内温度演算部10Iは、現在の室内湿度RHを読み込む(S302)。続いて、HF優先目標室内温度演算部10Iは、ユーザーの属性情報(ユーザーの身長、体重、年齢、性別、個人差係数等)を取得し(S303)、さらに、着衣指数clo、活動指数metを取得する(S304,S305)。
その後、HF優先目標室内温度演算部10Iは、読み込んだ室内湿度RH、取得した設定ヒートファクターHFs、属性情報、着衣指数clo、活動指数metに基づいて、HF優先目標室内温度tsを演算する(S306)。ここで、HF優先目標室内温度演算部10Iは、仮設定した室内温度、読み込んだ室内湿度RH、取得した属性情報、着衣指数clo、活動指数metに基づいてヒートファクターを求める。そして、仮設定した室内温度を徐々に変化させて順次ヒートファクターを求め、求めたヒートファクターが設定ヒートファクターHFsに一致したときに、または、求めたヒートファクターが設定ヒートファクターHFsに最も近接したときに、仮設定した室内温度をHF優先目標室内温度tsとする。つまり、S306では、HF優先目標室内温度演算部10Iは、ヒートファクターが設定ヒートファクターHFsに一致するとき、または最も近接するときに用いられた室内温度をHF優先目標室内温度tsに設定する。
次いで、HF優先目標室内温度演算部10Iは、演算したHF優先目標室内温度tsを機器制御部10Fに出力する(S307)。その後、HF優先目標室内温度演算部10Iは、このルーチンを一旦終了する。HF優先目標室内温度演算部10Iは、このルーチンを所定の微小間隔ごとに繰り返し実行し、その都度、演算したHF優先目標室内温度tsを機器制御部10Fに出力する。
機器制御部10Fは、上述したように空調機器設定温度制御処理を実行することにより、空調機器を制御する。この機器制御部10Fが、本発明の空調機器制御装置に相当する。図12A、図12B、図12Cは、機器制御部10Fが実行する空調機器設定温度制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、機器制御部10Fは、まず、図12AのS401にて、温度刻み幅Δtd、室内温度取得間隔時間Δτ、室内温度変化率閾値α、室内温度許容偏差Δteを読み込む。
温度刻み幅Δtdは、空調機器に予め定められている設定温度間隔であり、空調機器の設定温度として設定することができる温度の刻み幅である。つまり、温度刻み幅Δtdごとに設定温度を空調機器に設定することができる。この温度刻み幅Δtdは、例えば市販の空調機器に備えられているリモコン等によって設定することができる設定温度間隔に相当する。温度刻み幅Δtdは、例えば、0.5℃、或いは1.0℃に設定することができる。
室内温度取得間隔時間Δτは、後述する室内温度時間変化率Sの計算に用いる時間であり、例えば10分に設定される。室内温度変化率閾値αは、後述する室内温度時間変化率Sの閾値である。この室内温度変化率閾値αは、室内温度状態が定常温度状態であるか否かを判断するための閾値として用いられ、例えば0.05℃/min.に設定される。室内温度許容偏差Δteは、室内温度taが後述する目標室内温度ts1に実質的に一致しているとみなせるか否かを判断する場合に用いる温度差の閾値であり、例えば0.25℃に設定される。これらの値は、予めメイン制御装置11内の記憶領域に記憶されている。従って、S401では、機器制御部10Fは、上記記憶領域から、これらの値(Δtd、Δτ、α、Δte)を読み出す。
次いで、機器制御部10Fは、HF優先目標室内温度演算部10Iが出力した最新のHF優先目標室内温度tsを取得する(S402)。続いて、機器制御部10Fは、S402で取得したHF優先目標室内温度tsに対し、温度刻み幅Δtdを用いて丸め込み処理を行うことにより、目標室内温度ts1を演算する(S403)。ここで言う「丸め込み処理」とは、温度刻み幅Δtdごとに空調機器に設定することができる複数の設定可能温度のうち最もHF優先目標室内温度tsに近い設定可能温度を選択し、選択した設定可能温度を目標室内温度ts1に設定する処理を言う。つまり、S403における丸め込み処理とは、HF優先目標室内温度tsを、最も近い設定可能温度に丸め込んで目標室内温度ts1を演算する処理である。
例えば、温度刻み幅Δtdが0.5℃であり、設定温度範囲が18.0℃〜30.0℃であるとする。この場合、18.0℃、18.5℃、19・0℃、19.5℃、20.0℃、20.5℃、21.0℃、21.5℃、22.0℃、・・・29.5℃、30.0℃、というように、設定温度範囲の下限から上限にかけて0.5℃間隔(温度刻み幅間隔)で段階的に増加する複数の温度が、空調機器に設定することができる温度(設定可能温度)である。ここで、HF優先目標室内温度tsが21.3℃である場合、HF優先目標室内温度tsに最も近い設定可能温度は21.5℃である。従って、丸め込み処理により、21.5℃が選択される。そして、選択された温度が、目標室内温度ts1に設定される。このようにして、目標室内温度ts1が演算される。
上記の説明からわかるように、目標室内温度ts1は、ヒートファクターHFに基づいて、より詳しくは、ヒートファクターHFが予め定められる設定ヒートファクターHFsに一致する温度(或いはヒートファクターHFが設定ヒートファクターHFsに最も近接する温度)であるHF優先目標室内温度tsに基づいて、求められている。さらに、目標室内温度ts1は、温度刻み幅Δtdごとに設定可能な複数の設定可能温度のうち、HF優先目標室内温度tsに最も近い温度として求められる。
次に、機器制御部10Fは、S404にて、制御対象の空調機器が室内温度を所望の温度(目標室内温度ts1)に調節するために設定される温度である設定温度tσを、目標室内温度ts1に基づいて設定する。具体的には、目標室内温度ts1(上記の例では21.5℃)を設定温度tσに設定する(S404)。このS404の処理を行う部分が、本発明の設定温度設定部に相当する。
機器制御部10Fは、S404にて設定温度tσを設定した後に、設定した設定温度tσを制御対象の空調機器に送信する(S405)。これにより、空調機器は、室内温度taが設定温度tσに近づくように、室内温度taを調節する。つまり、空調機器は、設定温度tσに基づいて室内温度を調節する。
機器制御部10Fは、S405にて設定温度tσを空調機器に送信した後に、最新の室内温度taを取得する(S406)。次いで、S403で演算した目標室内温度ts1を前回目標室内温度ts0に設定し(S407)、さらに、S406で取得した室内温度taを前回室内温度ta0に設定する(S408)。続いて、機器制御部10Fは、タイマー時間τcをリセットする(S409)。
その後、機器制御部10Fは、図12BのS410に処理を進め、タイマー時間τcのカウントを開始する。次いで、機器制御部10Fは、S411に処理を進め、HF優先目標室内温度演算部10Iが出力した最新のHF優先目標室内温度tsを取得する。続いて、機器制御部10Fは、S411にて取得したHF優先目標室内温度tsに対して温度刻み幅Δtdを用いて丸め込み処理を行うことにより、目標室内温度ts1を演算する(S412)。次に、機器制御部10Fは、S412にて演算した目標室内温度ts1から前回目標室内温度ts0を差し引くことによって、目標室内温度差Δts(=ts1−ts0)を演算する(S413)。
続いて、機器制御部10Fは、S414に処理を進め、目標室内温度差Δtsが0であるか否かを判断する。目標室内温度差Δtsが0である場合(S414:Yes)、機器制御部10Fは、S418に処理を進める。一方、目標室内温度差Δtsが0でない場合(S414:No)、機器制御部10Fは、S415に処理を進めて、現在の設定温度tσに目標室内温度差Δtsを加算することにより、設定温度tσを変更する。その後、機器制御部10Fは、S415にて変更した設定温度tσを空調機器に送信する(S416)。これにより、空調機器は、変更された設定温度tσに基づいて室内温度taを調節する。S416の処理を行う部分が、本発明の設定温度変更部に相当する。その後、機器制御部10Fは、S411にて取得した目標室内温度ts1を前回目標室内温度ts0に設定する(S417)。次いで、機器制御部10Fは、S418に処理を進める。
S418では、機器制御部10Fは、タイマー時間τcが室内温度取得間隔時間Δτ以上であるか否かを判断する。タイマー時間τcが室内温度取得間隔時間Δτ未満である場合(S418:No)、機器制御部10FはS411に処理を戻して上記した処理を繰り返す。このように、機器制御部10Fは、タイマー時間τcが室内温度取得間隔時間Δτに達するまでは、HF優先目標室内温度tsを繰り返し取得する。そして、今回取得したHF優先目標室内温度tsに対して丸め込み処理を施して演算された目標室内温度ts1が前回目標室内温度ts0から変化した場合には、空調機器の設定温度をその温度差分(変化分)だけ変化させ、変化させた設定温度tσを空調機器に送信する。
S418にて、タイマー時間τcが室内温度取得間隔時間Δτ以上であると判断された場合(S418:Yes)、機器制御部10Fは、図12CのS419に処理を進め、設定温度tσに基づいて空調機器が調節している最新の室内温度taを取得する。次いで、機器制御部10Fは、室内温度時間変化率Sを演算する(S420)。ここで、室内温度時間変化率Sは、単位時間当たりにおける室内温度taの変化量である。本実施形態において、室内温度時間変化率Sは、タイマー時間τcがカウントを開始してからタイマー時間τcが室内温度取得間隔時間Δτに達するまでに変化した室内温度差の時間変化率である。この室内温度時間変化率Sは、S419にて取得した室内温度taと前回室内温度ta0との差Δta(=ta−ta0)を室内温度取得間隔時間Δτで除すことにより求められる。
次いで、機器制御部10Fは、S420にて演算した室内温度時間変化率S(=Δta/Δτ)の絶対値が、室内温度変化率閾値α以下であるか否かを判断する(S421)。S421の判断結果がNoである場合、すなわち室内温度時間変化率S(=Δta/Δτ)の絶対値が室内温度変化率閾値αよりも大きい場合、機器制御部10Fは、室内温度が変化している途中であり、室内温度状態が定常温度状態(室内温度がほぼ一定であるとみなせる温度状態)ではないと判断する。一方、S421の判断結果がYesである場合、すなわち室内温度の時間変化率S(=Δta/Δτ)の絶対値が室内温度変化率閾値α以下の場合、機器制御部10Fは、室内温度状態が定常温度状態であると判断する。つまり、S421では、設定温度tσに基づいて空調機器が調節している室内温度taの時間変化率(室内温度時間変化率S)の絶対値(=|Δta/Δτ|)が所定の閾値(室内温度変化率閾値α)以下であるか否かに基づいて、室内温度状態が定常温度状態にあるか否かが判断される。このS421の処理を行う部分が、本発明の室内温度状態判断部に相当する。
S421の判断結果がNoである場合、すなわち室内温度時間変化率S(=Δta/Δτ)の絶対値が室内温度変化率閾値αよりも大きい場合、機器制御部10Fは、室内温度状態が定常温度状態に至っていないと判断する。この場合、機器制御部10FはS427に処理を進めて、S419にて取得した室内温度taを前回室内温度ta0に設定し、次いで、タイマー時間τcをリセットする(S428)。その後、図12BのS410に処理を戻して、S411以降の処理を繰り返す。このような処理の繰り返しにより、機器制御部10Fは、室内温度状態が定常温度状態に至るまでは、S411にてHF優先目標室内温度tsを繰り返し取得する。そして、今回取得したHF優先目標室内温度tsに対して丸め込み処理を施して演算された目標室内温度ts1が前回目標室内温度ts0から変化した場合には、空調機器の設定温度をその温度差分(変化分)だけ変化させ、変化させた設定温度tσを空調機器に送信する。
また、S421の判断結果がYesである場合、すなわち室内温度時間変化率S(=Δta/Δτ)の絶対値が室内温度変化率閾値α以下である場合、機器制御部10Fは、室内温度状態が定常状態に至っていると判断する。この場合、機器制御部10Fは、S422に処理を進めて、目標室内温度ts1と室内温度taとの温度差Δt(=ts1−ta)を演算する。次いで、S422にて演算した温度差Δtの絶対値が、室内温度許容偏差Δte以下であるか否かを判断する(S423)。S423の処理を行う部分が、本発明の温度差判断部に相当する。S423にて、温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δte以下であると判断した場合(S423:Yes)、機器制御部10Fは、室内温度taが、十分に目標室内温度ts1(設定温度tσ)に近づくように調節されていると判断する。この場合、機器制御部10Fは、S427に処理を進めて、SS419にて取得した室内温度taを前回室内温度ta0に設定し、次いで、タイマー時間τcをリセットする(S428)。その後、図12BのS410に処理を戻して、S411以降の処理を繰り返す。
また、S423にて、温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δteよりも大きいと判断した場合(S423:No)、機器制御部10Fは、室内温度状態が定常温度状態であるにもかかわらず、室内温度taが目標室内温度ts1に近づいていないと判断する。このような現象は、空調機器固有の制御特性、空調機器の制御精度の個体差等によって生じると考えられる。
このような場合、本実施形態では、温度差Δtを用いて設定温度tσを補正することで、室内温度taが目標室内温度ts1に近づくように、機器制御部10Fが空調機器を制御する。具体的には、S423の判断結果がNoである場合、機器制御部10Fは、まず、S424にて、温度差Δtに対し、温度刻み幅Δtdを用いて丸め込み処理を行うことにより、設定温度差Δt1を演算する。ここでいう「丸め込み処理」とは、温度刻み幅Δtdを用いて段階的に表される複数の温度差(刻み温度差)のうち、温度差Δtに最も近い温度差を選択し、選択した温度差を設定温度差Δt1に設定する処理を言う。つまり、S424における丸め込み処理とは、温度差Δtを、温度刻み幅Δtdを用いて段階的に表される温度差のうち最も近い温度差に丸め込んで設定温度差Δt1を演算する処理である。
例えば、温度刻み幅Δtdが0.5℃である場合、温度刻み幅Δtdを用いて段階的に表される複数の温度差(刻み温度差)は、−2℃から2℃の範囲では、−2.0℃、−1.5℃、−1.0℃、−0.5℃、0℃、0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃である。ここで、温度差Δtが0.8℃である場合、複数の刻み温度差のうち温度差Δtに最も近い刻み温度差は、1.0℃である。従ってこの場合、設定温度差Δt1が1.0℃に設定される。また、温度差Δtが−1.4℃である場合、複数の刻み温度差のうち温度差Δtに最も近い刻み温度差は、−1.5℃である。従ってこの場合、設定温度差Δt1が−1.5℃に設定される。このようにして、S424では、温度刻み幅Δtdを用いて温度差Δtを丸め込むことにより、設定温度差Δt1を演算する。
次いで、機器制御部10Fは、現在の設定温度tσに、S424にて演算した設定温度差Δt1を加算することによって、設定温度tσを補正する(S425)。つまり、S425では、温度刻み幅Δtdを用いて段階的に表される複数の刻み温度差のうち温度差Δtに最も近い刻み温度差としての設定温度差Δt1を設定温度tσに加算することにより、設定温度が補正される。
機器制御部10Fは、S425にて設定温度tσを補正した後に、補正した設定温度tσを空調機器に送信する(S426)。続いて、機器制御部10Fは、S427に処理を進めて、S419にて取得した室内温度taを前回室内温度ta0に設定し、次いで、タイマー時間τcをリセットする(S428)。その後、図12BのS410に処理を戻して、S411以降の処理を繰り返す。
なお、S424の処理において、温度差Δtが、温度刻み幅Δtdの半分未満の大きさである場合、演算される設定温度差Δt1は0℃である。この場合、室内温度taが目標室内温度ts1にほぼ一致するとみなされる。よって、S425の処理にて設定温度tσは変更されないことになる。
機器制御部10Fが上記した処理を実行することにより、空調機器(電力負荷D2)は、室内温度状態が定常温度状態であって且つ温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δteよりも大きいときに、従前の設定温度tσに設定温度差Δt1が加算されることによって補正された設定温度tσに基づいて、室内温度taを調節する。
ここで、設定温度差Δt1が負である場合は、目標室内温度ts1が室内温度taよりも低い。つまり、目標室内温度ts1に対して室内温度taが高い。この場合に従前の設定温度tσに負数の設定温度差Δt1を加算して設定温度tσを補正すると、補正された設定温度tσは低下する。低下した設定温度tσに基づいて空調機器が室内温度taを調節することにより、室内温度taが低下する。こうして室内温度taを低下させることにより、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。その結果、温度差Δtの絶対値を室内温度許容偏差Δte以下にすることができる。
また、設定温度差Δt1が正である場合は、目標室内温度ts1が室内温度taよりも高い。つまり、目標室内温度ts1に対して室内温度taが低い。この場合に従前の設定温度tσに正数の設定温度差Δt1を加算して設定温度tσを補正すると、補正された設定温度tσは上昇する。上昇した設定温度tσに基づいて空調機器が室内温度taを調節することにより、室内温度taが上昇する。こうして室内温度taを上昇させることにより、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。その結果、温度差Δtの絶対値を室内温度許容偏差Δte以下にすることができる。
このように、本実施形態に係る設定温度tσの補正処理(S425の処理)により、室内温度状態が定常温度状態であって、且つ温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δteよりも大きい場合に、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。言い換えれば、本実施形態に係る設定温度tσの補正処理は、室内温度状態が定常温度状態であって且つ温度差Δtが室内温度許容偏差Δteよりも大きい場合に、温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δte以下になるように、設定温度tσを補正する処理である。このS425の処理が、本発明の設定温度補正部に相当する。
図14は、本実施形態に係る設定温度tσの補正処理を行わない場合における、室内温度taの推移の一例を示すグラフである。図14(a)及び図14(b)は、室内暖房時における室内温度taの推移を示すグラフであり、図14(c)及び図14(d)は、室内冷房時における室内温度taの推移を示すグラフである。図14に示す各グラフの横軸が時間、縦軸が温度である。また、時間τ0の時点で、図12AのS404の処理の実行により設定温度tσが目標室内温度ts1に設定され、時間τ0よりも後の時間τ1の時点で、図12CのS421の処理の実行により室内温度状態が定常温度状態であると判断される(すなわち室内温度時間変化率Sの絶対値が室内温度変化率閾値α以下であると判断される)。
図14(a)、(b)、(c)、(d)のいずれの場合においても、時間τ1以降は、室内温度状態が定常温度状態であるにも関わらず、室内温度taが目標室内温度ts1から大きく乖離している状況が継続している。つまり、定常温度状態であるときにおける温度差Δt(=ts1−ta)の絶対値が大きい状態が継続している。このように定常温度状態であるときに室内温度taが目標室内温度ts1と大きく乖離する原因として、空調機器固有の制御特性、空調機器の制御精度の個体差等が挙げられる。空調機器の制御精度の固体差は、空調機器の性能に依存する。また、空調機器固有の制御特性の一例として、室内の天井付近に室内機が取り付けられた空調機器において、室内機の吸込口付近に設置された温度センサが検出した吸込温度を室内温度taとみなし、その吸込温度と設定温度tσとの差に基づいて空調制御が行われるというような制御特性を挙げることができる。このような制御特性によれば、例えば、暖房時に天井付近が温かく床付近が寒いというような、室内の上下方向で温度ムラが生じ、床に近いユーザー周囲の室内温度taが十分に上がらない状態で天井付近のみが設定温度tσに達したとして暖房出力を抑える制御が実行されることがある。この場合、室内温度taが設定温度tσから乖離した状態が継続することになる。
この点に関し、本実施形態では、S425の処理にて室内温度taが目標室内温度ts1に近づくように設定温度tσが補正されるので、精度よく、室内温度taを目標室内温度ts1(=設定温度tσ)に近づけることができる。その結果、ユーザーにとって快適な室内温度環境を提供することができるのである。
図13は、本実施形態に係る設定温度tσの補正処理を行った場合における、室内温度taの推移の一例を示すグラフである。図13(a)及び図13(b)は、室内暖房時における室内温度taの推移を示すグラフであり、図13(c)及び図13(d)は、室内冷房時における室内温度taの推移を示すグラフである。図13に示す各グラフの横軸が時間、縦軸が温度である。また、時間τ0の時点で、図12AのS404の処理の実行により設定温度tσが目標室内温度ts1に設定され、時間τ0よりも後の時間τ1の時点で、図12CのS421の処理の実行により室内温度状態が定常温度状態であると判断される。(すなわち室内温度の時間変化率Sの絶対値が室内温度変化率閾値α以下であると判断される)。
図13(a)においては、室内暖房時であって且つ室内温度状態が定常温度状態と判断される時間τ1の時点で、室内温度taが目標室内温度ts1よりもかなり低いという温度状況が一旦発生している。しかし、時間τ1の時点で図12CのS425の処理の実行により設定温度tσがtσ+Δt1に補正されることによって設定温度tσが高くされる。そのため時間τ1以降、室内温度taが上昇し、その結果、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。また、図13(b)に示すグラフにおいては、時間τ1の時点で、室内温度taが目標室内温度ts1よりもかなり高いという温度状況が一旦発生している。しかし、時間τ1の時点で図12CのS425の処理の実行により設定温度tσがtσ+Δt1に補正されることによって設定温度tσが低くされる。そのため時間τ1以降、室内温度taが低下し、その結果、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。また、図13(c)に示すグラフにおいては、時間τ1の時点で、室内温度taが目標室内温度ts1よりもかなり高いという温度状況が一旦発生している。しかし、時間τ1の時点で図12CのS425の処理の実行により設定温度tσがtσ+Δt1に補正されることによって設定温度tσが低くされる。そのため時間τ1以降、室内温度taが低下し、その結果、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。また、図13(d)に示すグラフにおいては、時間τ1の時点で、室内温度taが目標室内温度ts1よりもかなり低いという温度状況が一旦発生している。しかし、時間τ1の時点で図12CのS425の処理の実行により設定温度tσがtσ+Δt1に補正されることによって設定温度tσが高くされる。そのため時間τ1以降、室内温度taが上昇し、その結果、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。
このように、本実施形態に係る設定温度tσの補正処理を行うことにより、室内温度taが目標室内温度ts1と大きく乖離することを防止することができる。このため、ユーザーにとってより快適な室内温度環境をユーザーに提供することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るHEMS10が備える機器制御部10Fは、室内温度taを所望の目標室内温度ts1に調節するために設定される設定温度tσに基づいて室内温度taを調節するように構成された空調機器(電力負荷D2)を制御する制御装置として機能する。また、機器制御部10Fは、設定温度tσを設定する設定温度設定部S404と、設定温度tσに基づいて空調機器が調節している室内温度taの時間変化率(室内温度時間変化率S)の絶対値が室内温度変化率閾値α以下であるか否かに基づいて、室内温度状態が定常温度状態であるか否かを判断する室内温度状態判断部S421と、室内温度状態判断部S421にて室内温度状態が定常温度状態であると判断されたときに、目標室内温度ts1と室内温度との温度差Δt(=ts1−ta)の絶対値が室内温度許容偏差Δte以下であるか否かを判断する温度差判断部S423と、温度差判断部S423にて温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δteよりも大きいと判断されたときに、温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δte以下になるように、設定温度設定部S404にて設定された設定温度tσを温度差Δtに基づいて補正する設定温度補正部S425と、を備える。
本実施形態によれば、室内温度状態が定常温度状態に至った場合における目標室内温度ts1と室内温度taとの温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δteより大きいときに、上記温度差Δtが室内温度許容偏差以下になるように補正された設定温度tσに基づいて室内温度が調節される。その結果、温度差Δtをより小さく(或いは0に)することができる。よって、ユーザーにとってより好ましい室内温度環境をユーザーに提供することができる。
また、本実施形態によれば、目標室内温度ts1は、室内に存在する人の温熱的生理状態に関連する温熱的指標であるヒートファクターHFに基づいて定められる。より詳しくは、目標室内温度ts1は、ヒートファクターHFが設定ヒートファクターHFsに一致する温度であるHF優先目標室内温度tsに基づいて求められる。そして、こうしてヒートファクターHFに基づいて求められた目標室内温度ts1に基づいて室内温度taが調節される。つまり、ヒートファクター優先制御によって室内温度taが調節される。このため、ユーザーの温冷感に基づいて空調機器によって室内温度taが精度よく調節されるので、ユーザーにとってより快適な室内温度環境をユーザーに提供することができる。
また、本実施形態によれば、設定温度tσは、予め定められている温度刻み幅Δtdごとに設定可能であり、目標室内温度ts1は、温度刻み幅Δtdごとに設定可能な複数の温度(設定可能温度)のうち、ヒートファクターHFが設定ヒートファクターHFsに一致する温度に最も近い温度として演算される。そして、こうして求められた目標室内温度ts1が設定温度tσに設定される。このように目標室内温度ts1を複数の設定可能温度のいずれかに設定することにより、市販の空調機器の制御に本実施形態で説明したヒートファクター優先制御を適用することができる。
また、本実施形態によれば、設定温度補正部S425は、温度刻み幅Δtdを用いて段階的に表される複数の刻み温度差のうち温度差Δtに最も近い刻み温度差を設定温度差Δt1として設定温度tσに加算することにより、設定温度tσを補正する。このように設定温度を補正することにより、室内温度taが目標室内温度ts1よりも高い場合には、設定温度tσを低下させて、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができ、室内温度taが目標室内温度ts1よりも低い場合には、設定温度tσを上昇させて、室内温度taを目標室内温度ts1に近づけることができる。よって、室内温度taと目標室内温度ts1との温度差Δtの絶対値が室内温度許容偏差Δte以下になるように設定温度を補正することができる。また、補正後の設定温度tσも、設定可能温度のいずれかに設定される。このため市販の空調機器の制御に本実施形態で説明したヒートファクター優先制御を適用することができる。
また、本実施形態によれば、機器制御部10Fは、目標室内温度ts1が変化したときに、目標室内温度ts1の変化量に相当する目標室内温度差Δtsを設定温度tσに加算することにより、設定温度を変更する設定温度変更部S415を備える。本実施形態で示したヒートファクター優先制御方式によって空調機器を制御しているときに、室内の湿度変化が生じた場合、或いは着衣情報、代謝情報、設定ヒートファクターHFsをユーザーが自ら変更した場合、ヒートファクターが変化するため、それに伴って目標室内温度ts1が変化する場合がある。このような場合に上記設定温度変更部S415にて設定温度tσを変更することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、HEMS10の機器制御部10Fに空調機器制御装置としての機能を持たせた例について説明したが、独立した空調機器制御装置として本発明を実施してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
10…HEMS、10A…センサ部、10B…情報取得部、10C…演算処理部、10D…表示制御部、10E…表示・入力部、10F…機器制御部(空調機器制御装置)、10G…温熱的生理量演算部、10H…ヒートファクター演算部、10I…ヒートファクター優先目標室内温度演算部、11…メイン制御装置、12…タブレット型端末制御装置、12a…ディスプレイ、13…温度センサ、14…湿度センサ、D1…電力負荷、D2…電力負荷(空調装置)、H1…熱負荷、HF…ヒートファクター、HFs…設定ヒートファクター(所望の値)、S…室内温度時間変化率(時間変化率)、ta…室内温度、ts…ヒートファクター優先目標室内温度、ts1…目標室内温度、tσ…設定温度、α…室内温度変化率閾値(所定の閾値)、Δt…温度差、Δtd…温度刻み幅、Δte…室内温度許容偏差、Δts…目標室内温度差、S404…設定温度設定部、S415…設定温度変更部、S421…室内温度状態判断部、S423…温度差判断部、S425…設定温度補正部
Claims (6)
- 室内温度を所望の目標室内温度に調節するために設定される設定温度に基づいて室内温度を調節するように構成された空調機器を制御する空調機器制御装置であって、
前記設定温度を設定する設定温度設定部と、
前記設定温度に基づいて前記空調機器が調節している室内温度の時間変化率の絶対値が所定の閾値以下であるか否かに基づいて、室内温度状態が定常温度状態であるか否かを判断する室内温度状態判断部と、
前記室内温度状態判断部にて室内温度状態が定常温度状態であると判断されたときに、前記目標室内温度と室内温度との温度差の絶対値が予め定められる室内温度許容偏差以下であるか否かを判断する温度差判断部と、
前記温度差判断部にて前記温度差の絶対値が前記室内温度許容偏差よりも大きいと判断されたときに、前記温度差の絶対値が前記室内温度許容偏差以下になるように、前記設定温度設定部にて設定された前記設定温度を前記温度差に基づいて補正する設定温度補正部と、
を備える、空調機器制御装置。 - 請求項1に記載の空調機器制御装置において、
前記目標室内温度は、室内に存在する人の温熱的生理状態に関連する温熱的指標であるヒートファクターに基づいて求められており、
前記設定温度設定部は、前記目標室内温度に基づいて前記設定温度を設定する、空調機器制御装置。 - 請求項2に記載の空調機器制御装置において、
前記目標室内温度は、前記ヒートファクターが予め定められる所望の値に一致する温度に基づいて求められる、空調機器制御装置。 - 請求項2又は3に記載の空調機器制御装置において、
前記設定温度は、予め定められている温度刻み幅ごとに設定可能であり、
前記目標室内温度は、前記温度刻み幅ごとに設定可能な複数の温度のうち、前記ヒートファクターが予め定められる所望の値に一致する温度に最も近い温度であり、
前記設定温度設定部は、前記目標室内温度を前記設定温度に設定する、空調機器制御装置。 - 請求項4に記載の空調機器制御装置において、
前記設定温度補正部は、前記温度刻み幅を用いて段階的に表される複数の刻み温度差のうち前記温度差に最も近い刻み温度差を前記設定温度に加算することにより、前記設定温度を補正する、空調機器制御装置。 - 請求項4又は5に記載の空調機器制御装置において、
前記目標室内温度が変化したときに、前記目標室内温度の変化量に相当する目標室内温度差を前記設定温度に加算することにより、前記設定温度を変更する設定温度変更部を備える、空調機器制御装置。
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