JP2016056938A - 車両用駆動装置 - Google Patents

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Satoru Tanaka
悟 田中
貴久 平野
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Abstract

【課題】エネルギ効率の向上とオイルの掻き上げ開始時の掻上量確保とを共に達成する。【解決手段】車両用駆動装置は、オイル貯留部7からオイルを掻き上げる掻上部材6と、掻き上げられたオイルの供給を受けるギヤ機構とを備える。ギヤ機構は、大径ピニオンと小径ピニオンとを有するステップドピニオンと、リングギヤ形成部材70と、支持部材80とを有する。リングギヤ形成部材70は、小径筒状部71と、大径筒状部72と、円環板状部73と、軸方向当接部75とを有する。支持部材80は、軸方向当接部75に当接する当接面81aを有する。小径ピニオン及びリングギヤ56の斜歯の向きが、車両の前進力行時に軸方向当接部75を当接面81aに近づける向きのスラスト力が生じるように設定されている。【選択図】図5

Description

本発明は、ギヤ機構を備える車両用駆動装置に関する。
ギヤ機構を備える車両用駆動装置においては、当該ギヤ機構に含まれる各種のギヤや、駆動装置内に通常備えられるベアリング等の潤滑を適切に行うことが必要とされる。このような潤滑を行うための技術として、車両用駆動装置のケース内に形成されるオイル貯留部からオイルを掻き上げて対象部位へと供給する技術が知られている。このような技術は、例えば特開2013−147177号公報(特許文献1)によって公知である。
掻上部材を用いてオイルを掻き上げる場合、掻き上げ開始時のオイル供給の確実性の観点からは、掻上部材の先端部がオイル貯留部のオイル中に十分に浸っている方が好ましい。一方、掻上部材のより多くの部分がオイル中に浸っているとその分だけ引き摺り損失が大きくなるため、エネルギ効率の観点からは、オイルに対する掻上部材の浸漬量は少ない方が好ましい。
特開2013−147177号公報
上述した、相反する要求を共に満足させる技術の実現が望まれる。
本開示に係る車両用駆動装置は、
ケース内に形成されるオイル貯留部からオイルを掻き上げる掻上部材と、前記掻上部材によって掻き上げられたオイルの供給を受けるギヤ機構と、を備える車両用駆動装置であって、
前記ギヤ機構は、大径ピニオンと小径ピニオンとが軸方向に並んで配置されたステップドピニオンと、前記小径ピニオンに噛み合うリングギヤを保有するリングギヤ形成部材と、前記リングギヤ形成部材を支持する支持部材と、を有し、
前記リングギヤ形成部材は、内周面に前記リングギヤが形成された小径筒状部と、当該小径筒状部に対して前記軸方向の一方側である軸第一方向側に配置されて前記大径ピニオンの径方向外側を覆う大径筒状部と、前記小径筒状部と前記大径筒状部とを径方向に接続する円環板状部と、前記大径筒状部に対して前記軸第一方向側に形成された軸方向当接部と、を有し、
前記支持部材は、前記軸方向当接部に対して前記軸第一方向側から全周に亘って当接可能な当接面と、前記リングギヤ形成部材の被係合部に係合して前記リングギヤ形成部材の相対回転を規制する係合部と、を有し、
前記小径ピニオン及び前記リングギヤが斜歯に形成されるとともに、その噛合部において車両の前進力行時に前記軸方向当接部を前記当接面に近づける向きのスラスト力が生じるように前記小径ピニオン及び前記リングギヤの斜歯の向きが設定されている。
この構成によれば、車両の前進力行時に、支持部材の当接面とリングギヤ形成部材の軸方向当接部とを全周に亘って当接させることができる。よって、掻上部材によって掻き上げられて潤滑等のためにギヤ機構に供給されるオイルの一部を、支持部材とリングギヤ形成部材の大径筒状部及び円環板状部とによって区画される空間に貯留することができる。従って、車両の前進力行時における、オイル貯留部での掻上部材のオイル中への浸漬量を少なくすることができ、オイルの掻き上げに伴う引き摺り損失を低減してエネルギ効率を高めることができる。
一方、車両の前進力行時以外には、支持部材の当接面とリングギヤ形成部材の軸方向当接部との当接状態が解除される。よって、ギヤ機構に供給されるオイルは、支持部材とリングギヤ形成部材との隙間を通ってそのままオイル貯留部に戻される。従って、オイル貯留部における掻上部材のオイル中への浸漬量を多くすることができ、オイルの掻き上げが必要となった際には、十分な量のオイルを掻き上げることができる。
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、以下の説明によってより明確になるであろう。
実施形態に係る車両用駆動装置の断面図 図1の部分拡大図 互いに係合するリングギヤ形成部材及び支持部材の分解斜視図 リングギヤと小径ピニオンとの噛み合いの様子を示す斜視図 リングギヤ形成部材と支持部材との位置関係の変化態様を示す説明図 別態様の車両用駆動装置の拡大断面図
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に記載する実施形態によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
本実施形態に係る車両用駆動装置1は、例えば電動車両やハイブリッド車両等の車両において、左右一対の車輪Wのそれぞれに取り付けられて対応する車輪Wを駆動するドライブユニットDとして用いられる。本実施形態では、車両用駆動装置1をインホイールタイプの駆動装置(ドライブユニットD)に適用した場合を例として説明する。
なお、以下の説明では、回転電機3及びロータ軸4の軸心を基準として、「軸方向A」、「径方向R」、及び「周方向」を定義する。すなわち、「軸方向A」はロータ軸4の軸心に沿う方向を表し、「径方向R」はロータ軸4の軸心に直交する方向を表し、「周方向」はロータ軸4の周りを周回する方向を表す。また、「軸第一方向A1側」は軸方向Aの一方側である図1における左側を表し、「軸第二方向A2側」は軸方向Aの他方側である右側を表す。また、「下」は、車両用駆動装置1を車両(図示せず)に搭載した状態での位置(鉛直方向に沿った位置)を表すものとする。
図1に示すように、車両用駆動装置1は、ケース2と、回転電機3と、ロータ軸4と、ギヤ機構5と、掻上部材6と、オイル貯留部7と、出力軸9とを備えている。回転電機3、ロータ軸4、ギヤ機構5、及び出力軸9は同軸に配置されている。回転電機3、ロータ軸4、ギヤ機構5、及び掻上部材6はケース2内に収容されている。オイル貯留部7は、ケース2の下部にオイルを貯留可能に形成されている。出力軸9は、その一部がケース2から露出する状態で配置されている。
ケース2は、回転電機3及びギヤ機構5等の収容空間Sを形成する第一ケース部材21と、この第一ケース部材21に固定される第二ケース部材22とを有する。第一ケース部材21及び第二ケース部材22は、それぞれ有底の筒状に形成されている。第一ケース部材21と第二ケース部材22とは、液密状態で軸方向Aに接合されている。本実施形態では、第一ケース部材21に対して軸第二方向A2側から第二ケース部材22が接合されている。
第一ケース部材21は、収容空間Sの径方向外側を覆うとともに軸第一方向A1側から軸第二方向A2側に向かうに従って拡径するように形成されている。本実施形態では、第一ケース部材21は、軸第一方向A1側から軸第二方向A2側に向かうに従って複数箇所で段階的に拡径する有段筒状に形成されている。第一ケース部材21は、その軸第一方向A1側の端部における径方向Rの中心部に、円筒状のスリーブ部21Aを有している。このスリーブ部21Aに挿通される状態で、出力軸9が配置されている。スリーブ部21Aの径方向内側には、第一ハブ部材11の一部も配置されている。
第二ケース部材22は、第一ケース部材21の軸第二方向A2側の開口部を覆うように配置される板状部材である。第二ケース部材22は、略円板状に形成されている。「略円板状」とは、円板状、又は、多少の凹凸や異形部分があったとしても全体としては円板状とみなすことができる形状を表す(以下、「略」を用いて表現する他の形状・状態等に関しても同様である)。第二ケース部材22は、掻上部材6に対して軸方向Aに対向して配置されている。
第二ケース部材22の内面(収容空間S側の面)における径方向Rの中心部には、ボス部23が形成されている。ボス部23は、軸第一方向A1側に向かって突出するように略円筒状に形成されている。ボス部23には、ロータ軸4の軸第二方向A2側の端部を回転可能に支持する第二軸受92が内嵌されている。
図1に示すように、回転電機3は、ステータ31とロータ32とを有する。ステータ31は第一ケース部材21に固定されている。ステータ31は、ステータコア31Aとコイルエンド部31Bとを含む。ステータコア31Aは、例えば円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体である。コイルエンド部31Bは、ステータコア31Aに巻装されたコイルのうち、ステータコア31Aから軸方向Aの両側にそれぞれ突出する部分である。ロータ32は、ステータ31の径方向内側に、ステータ31に対して隙間を隔てた状態で配置されている。ロータ32は、ロータコア32Aと永久磁石32Bとを含む。ロータコア32Aは、例えば円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体である。永久磁石32Bは、ロータコア32Aに埋め込まれている。
図1及び図2に示すように、ロータ32は、ロータ連結部34を介してロータ軸4に固定されている。ロータ連結部34は、一体的に形成された筒状部34Aとフランジ部34Bとを有する。筒状部34Aは、ロータコア32Aを径方向内側から支持している。ロータコア32Aは、軸方向Aの両側に配置されたエンドプレート35によって挟持されて軸方向位置が定まった状態で筒状部34Aに支持されている。本実施形態では、ロータ32と一体回転するように掻上部材6が設けられている。掻上部材6は、ロータコア32Aに対して軸第二方向A2側に取り付けられたエンドプレート35と一体的に形成されている。掻上部材6は、車両用駆動装置1内において潤滑や冷却等を必要とする各部にオイルを供給するため、回転電機3によって駆動されて、ケース2の下部に形成されるオイル貯留部7に貯留されたオイルを掻き上げる。
本実施形態では、掻上部材6は、一体的に形成された掻上本体部61と接続部62とを有する。掻上本体部61は、オイルを掻き上げるための中核をなす部分であり、径方向Rに沿う略円環板状に形成されている。掻上本体部61は、第二ケース部材22の内面(収容空間S側の面)に対して軸方向Aに対向して配置されている。掻上本体部61における軸方向Aの少なくとも一方の面(本例では両面)には、凹溝64が形成されている。接続部62は、軸第二方向A2側のエンドプレート35と掻上本体部61とを接続する部分であり、略円筒状に形成されている。このような接続部62と掻上本体部61とを備える掻上部材6は、軸第二方向A2側のコイルエンド部31Bと所定間隔を隔てて、当該コイルエンド部31Bの外形に沿って配置されている。
フランジ部34Bは、筒状部34Aの軸第二方向A2側の端部から径方向内側に向かって延び、その径方向内側端部でロータ軸4に連結されている。このようにして、ロータ32、ロータ連結部34、及びロータ軸4は一体回転する。これらは、軸方向Aの相互位置関係が定まった状態で一体回転する。なお、フランジ部34Bと第一ケース部材21の端部壁との軸方向Aの間には、回転センサ38が設けられている。
ロータ軸4は、ロータ連結部34に対して軸方向Aの両側で、2つの軸受(第一軸受91及び第二軸受92)によって回転可能な状態で径方向Rに支持されている。ロータ軸4は、軸方向Aにおけるロータ連結部34よりも軸第一方向A1側では、第一軸受91により、第三軸受93及び第一ハブ部材11を介してケース2(本例では第一ケース部材21)に支持された状態の出力軸9に支持されている。ロータ軸4は、軸方向Aにおけるロータ連結部34よりも軸第二方向A2側では、第二軸受92により、ケース2(本例では第二ケース部材22)に支持されている。このように、本実施形態では、ケース2に「支持される」は、直接支持されることの他、軸受のみを介して支持されることや、軸受と他の部材とを介して支持されることを含む概念である。
ロータ軸4の内部には、軸方向Aに沿って延びる軸内油路47が形成されている。軸内油路47はロータ軸4を軸方向Aに貫通するように形成されている。また、軸内油路47は、ロータ軸4の内部を径方向Rに延びる連通孔48により、ロータ軸4の外周面に連通している。連通孔48の開口は、ギヤ機構5の一例であるプラネタリギヤ機構50の径方向内側に位置している。ロータ軸4の外周面には、外歯のギヤが設けられている。このギヤは、本実施形態では、プラネタリギヤ機構50が有するサンギヤ51となっている。サンギヤ51は、ロータ軸4と一体回転する。また、サンギヤ51は、ロータ32及びロータ連結部34と一体回転する。このようにして、回転電機3が出力する回転及びトルクは、ロータ連結部34及びロータ軸4を介してサンギヤ51に伝達される。
図2に示すように、プラネタリギヤ機構50は、サンギヤ51と、サンギヤ51に噛み合う大径ピニオン55Aとそれよりも小径の小径ピニオン55Bとが並設された複数(本例では3つ)のステップドピニオン55と、複数のステップドピニオン55を回転自在に支持するキャリヤ52と、複数の小径ピニオン55Bに共通に噛み合う内歯のリングギヤ56とを有する。大径ピニオン55Aと小径ピニオン55Bとは、大径ピニオン55Aが小径ピニオン55Bに対して軸第一方向A1側に位置する状態で軸方向Aに並んで配置されている。本実施形態では、サンギヤ51とこれに噛み合う大径ピニオン55A、及び小径ピニオン55Bとこれに噛み合うリングギヤ56とは、いずれも斜歯に形成されている(図5を参照)。
図2に示すように、キャリヤ52は、出力軸9の軸第二方向A2側の端部に形成されたフランジ部9Aに固定されたキャリヤカバー53を有する。キャリヤカバー53は、フランジ部9Aと軸方向Aに対向する部分を有しており、当該対向部分とフランジ部9Aとに亘って複数のピニオン軸54が架け渡されている。そして、複数のピニオン軸54のそれぞれに、ニードルベアリングを介してステップドピニオン55が回転自在に支持されている。
プラネタリギヤ機構50は、小径ピニオン55Bに噛み合うリングギヤ56を保有するリングギヤ形成部材70と、リングギヤ形成部材70を支持する支持部材80とをさらに有する。リングギヤ形成部材70と支持部材80とは、スナップリング77によって抜け止め係止されている。リングギヤ形成部材70は、支持部材80を介してケース2(本例では第一ケース部材21)に固定されている。
図2及び図3に示すように、リングギヤ形成部材70は略円筒状に形成されている。リングギヤ形成部材70は、小径筒状部71と、大径筒状部72と、円環板状部73とを有する。小径筒状部71、大径筒状部72、及び円環板状部73は一体的に形成されている。小径筒状部71は、大径筒状部72よりも小径の円筒状に形成され、その内周面にはリングギヤ56が形成されている。リングギヤ形成部材70は、この小径筒状部71の部分によってリングギヤ56を保有している。大径筒状部72は、小径筒状部71よりも大径の円筒状に形成されている。大径筒状部72は、小径筒状部71と同軸に配置されている。大径筒状部72は、小径筒状部71に対して軸第一方向A1側において、大径ピニオン55Aの径方向外側を覆うように配置されている。
円環板状部73は、小径筒状部71と大径筒状部72とを径方向Rに接続している。本実施形態では、円環板状部73は、小径筒状部71の軸第一方向A1側の端部と大径筒状部72の軸第二方向A2側の端部とを径方向Rに接続している。このような構成により、リングギヤ形成部材70は、軸第二方向A2側から軸第一方向A1側に向かうに従って一箇所で階段状に拡径する有段筒状に形成されている。
リングギヤ形成部材70は、外側フランジ部74と軸方向当接部75とをさらに有する。外側フランジ部74及び軸方向当接部75は、小径筒状部71、大径筒状部72、及び円環板状部73と共に一体的に形成されている。外側フランジ部74は、大径筒状部72に対して軸第一方向A1側に設けられている。外側フランジ部74は、大径筒状部72の軸第一方向A1側の端部において、径方向外側に延びるように配置されている。この外側フランジ部74の軸第一方向A1側の面に、軸方向当接部75が形成されている。軸方向当接部75は、外側フランジ部74の軸第一方向A1側の面から軸第一方向A1側に向かって突出する円筒状に形成されている。本実施形態では、円筒状の軸方向当接部75の径方向Rの厚みは外側フランジ部74の径方向Rの厚みよりも薄い。また、円筒状の軸方向当接部75の外径は外側フランジ部74の外径よりも小さく、かつ、その内径は大径筒状部72の内径よりも大きい。本実施形態では、軸方向当接部75の内径は大径筒状部72の外径と同程度とされている。
大径筒状部72に対して軸第一方向A1側に形成された円筒状の軸方向当接部75は、その軸第一方向A1側の端面75aが支持部材80に当接可能に構成されている。本実施形態では、外側フランジ部74の外周部には、軸方向Aに沿って延びる径方向Rの凹凸である内側凹凸部74Aが形成されている。このような内側凹凸部74Aは、例えば突出歯と凹溝とを周方向に交互に配置することによって構成される。内側凹凸部74Aは、支持部材80が有する支持筒状部82に形成された外側凹凸部82Aに係合可能となっている。このような構成により、軸方向当接部75は、支持筒状部82よりも径方向内側において、その軸第一方向A1側の端面75aが支持部材80に当接可能となっている。軸方向当接部75は、支持部材80に対して軸第二方向A2側から全周に亘って当接可能となっている。
図2及び図3に示すように、支持部材80は、支持円環板状部81と支持筒状部82とを有する。支持円環板状部81及び支持筒状部82は一体的に形成されている。支持円環板状部81は、リングギヤ形成部材70の径方向Rの厚みよりも大きい径方向厚さを有する円環板状に形成され、径方向Rに延びるように配置されている。支持円環板状部81は、ボルト等の締結部材によってケース2(第一ケース部材21)に固定されている。支持円環板状部81における軸第二方向A2側を向く面は、リングギヤ形成部材70の軸方向当接部75に対向している。この対向面は、軸方向当接部75の軸第一方向A1側の端面75aに対して、軸第一方向A1側から全周に亘って当接可能な当接面81aとなっている。
支持筒状部82は、略円筒状に形成され、支持円環板状部81から軸第二方向A2側に向かって軸方向Aに延びるように配置されている。支持筒状部82は、支持円環板状部81の径方向外側の端部から軸第二方向A2側に向かうように配置されている。支持筒状部82は、外側フランジ部74及び軸方向当接部75よりも径方向外側に配置されている。また、本実施形態では、支持筒状部82には、軸方向Aに沿って延びる径方向Rの凹凸である外側凹凸部82Aが形成されている。このような外側凹凸部82Aは、例えば支持筒状部82を構成する円筒状の板部自体が凹凸に形成されることによって構成される。外側凹凸部82Aは、リングギヤ形成部材70が有する外側フランジ部74に形成された内側凹凸部74Aに係合可能となっている。本実施形態では、外側凹凸部82Aが「係合部」に相当し、内側凹凸部74Aが「被係合部」に相当する。
支持部材80(支持筒状部82)の外側凹凸部82Aとリングギヤ形成部材70(外側フランジ部74)の内側凹凸部74Aとが互いに係合した状態で、支持部材80とリングギヤ形成部材70との相対回転が規制される。このとき、支持部材80とリングギヤ形成部材70とは、相対回転が規制される一方で、図5に示すように軸方向Aに沿う相対移動は許容される。本実施形態では、支持円環板状部81とスナップリング77との間の軸方向長さが、外側フランジ部74と軸方向当接部75とを合わせた軸方向長さよりも長い。このため、支持部材80とリングギヤ形成部材70とは、支持円環板状部81とスナップリング77との間の軸方向長さと、外側フランジ部74と軸方向当接部75とを合わせた軸方向長さとの差分の範囲内で、軸方向Aに沿う相対移動が許容される。
図1に示すように、プラネタリギヤ機構50は、回転電機3の径方向内側において、径方向Rに見て回転電機3と重複する部分を有するように配置されている。なお、2つの部材の配置に関して、「ある方向に見て重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。本実施形態では、プラネタリギヤ機構50の小径ピニオン55Bが、ロータ32の径方向内側において、径方向Rに見てロータ32及びステータ31と重複する部分を有するように配置されている。このような配置構成を採用することで、車両用駆動装置1の軸方向長さが短く抑えられ、装置全体の小型化が図られている。
プラネタリギヤ機構50は、回転電機3の出力回転を変速(本例では減速)して出力軸9に伝達する変速機構(本例では減速機構)として機能する。サンギヤ51には、ロータ連結部34及びロータ軸4を介して回転電機3(ロータ32)の出力回転が伝達される。リングギヤ56は、リングギヤ形成部材70及び支持部材80を介してケース2に固定されている。このため、回転電機3の出力回転は、サンギヤ51とリングギヤ56との歯数比及び小径ピニオン55Bと大径ピニオン55Aとの歯数比に応じて減速されてキャリヤ52に伝達され、当該減速回転はさらに、フランジ部9Aを介してキャリヤ52と一体回転する出力軸9に伝達される。このような減速機構を備えることで、比較的小型の回転電機3を用いつつ、大きな駆動力(トルクと同義)を確保可能としている。
図1及び図2に示すように、出力軸9は、相対回転が規制された状態で外嵌された第一ハブ部材11と共に、第一ケース部材21のスリーブ部21Aに内嵌された第三軸受93によって回転可能な状態で径方向Rに支持されている。出力軸9の軸第二方向A2側の端部には、軸方向Aに沿う有底孔である軸端孔部9bが形成されている。軸端孔部9bには、ロータ軸4の軸第一方向A1側の端部を回転可能に支持する第一軸受91が内嵌されている。
出力軸9は、車輪Wに駆動連結されている。「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体回転するように連結された状態や、1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれても良い。
出力軸9は、ケース2の外に露出する部分(第三軸受93よりも軸第一方向A1側の部分)において第一ハブ部材11と一体回転するように連結されている。なお、第一ハブ部材11と第一ケース部材21との間には、オイルをシールするためのシール部材95が配置されている。第一ハブ部材11は、タイヤ(図示せず)が取り付けられるリム部材14を径方向Rに支持する第二ハブ部材12に固定されている。こうして、車両用駆動装置1と車輪Wとが一体的に設けられている。車両用駆動装置1及び車輪Wは、懸架装置(図示せず)を介して車体(図示せず)に懸架されている。
車両用駆動装置1において、運転者のアクセル操作等に基づく車両の前進力行時には、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示せず)からインバータ装置(図示せず)を介して回転電機3のステータ31に電力が供給され、ロータ32が回転駆動される。すると、ロータ連結部34を介してロータ軸4が回転駆動され、さらにプラネタリギヤ機構50によって減速された回転が出力軸9に伝達されて、車輪Wが回転駆動されることになる。一方、運転者のアクセル操作やブレーキ操作等に基づく車両の前進減速時には、慣性力によって車輪W及び出力軸9が回転駆動され、さらにプラネタリギヤ機構50によって増速された回転がロータ軸4に伝達される。すると、ロータ連結部34を介してロータ32が回転駆動されてステータ31に逆起電力が生じるので、これをインバータ装置を介して蓄電装置に供給して、蓄電装置を充電することができる。
車両の走行中は、力行制御及び回生制御によって発熱する回転電機3の冷却や、摺動状態で動作する各種のギヤ(サンギヤ51,大径ピニオン55A,小径ピニオン55B,リングギヤ56)や軸受91〜93等の潤滑を行うことが必要となる。本実施形態では、このような冷却及び潤滑は、ケース2の下部に形成されるオイル貯留部7に貯留されたオイルを、ロータ32と一体回転するように設けられた掻上部材6で掻き上げることによって行われる。掻き上げられたオイルは、図示が省略された油路を通って、第二ケース部材22のボス部23の径方向内側に形成される内周空間24(図2を参照)へと導かれる。オイルは、その後、内周空間24からロータ軸4の内部に形成された軸内油路47及び連通孔48を通って、上述した冷却対象部位及び潤滑対象部位に供給される。なお、図2には、典型的なオイルの流れを二点鎖線で示している。
このような一連の流れの中で、オイルの一部は、プラネタリギヤ機構50に供給されて各ギヤの噛合部(サンギヤ51と大径ピニオン55Aとの噛合部、及びリングギヤ56と小径ピニオン55Bとの噛合部)を潤滑する。また、オイルの一部は、軸受91〜93に供給されてこれらにおける摺動部(インナーレース及びアウターレースと転動体との摺動部)を潤滑する。車両用駆動装置1の各部において冷却又は潤滑の用を果たしたオイルは、自然流下によってオイル貯留部7に戻される。その際、オイルは、例えば支持部材80(外側凹凸部82A)とリングギヤ形成部材70(内側凹凸部74A)との係合部における径方向R及び周方向の隙間を通ってオイル貯留部7に戻される。
ところで、掻上部材6を用いてオイル貯留部7のオイルを掻き上げる場合、掻き上げ開始時のオイル供給の確実性の観点からは、掻上部材6の先端部がオイル貯留部7のオイル中に十分に浸っている方が好ましい。一方、掻上部材6のより多くの部分がオイル中に浸っているとその分だけ引き摺り損失が大きくなるため、エネルギ効率の観点からは、オイルに対する掻上部材6の浸漬量は少ない方が好ましい。もちろん、オイル貯留部7に現に貯留されているオイルの液面の位置(オイルレベルL;図5を参照)は、掻上部材6によって掻き上げられてから再度オイル貯留部7に戻るまでのオイルの総量に応じて、静止時のオイルレベルL(以下、「静止レベルLp」と言う。)に比べて多少は低下する。それでもなお、上述した相反する要求を共に満足させるには不十分である。
このような点を考慮して、本実施形態では、掻き上げられたオイルのオイル貯留部7への帰還を定常的な流れに完全に委ねるのではなく、オイルの帰還ルートの一部を、車両の走行状態に応じて一時的に堰き止めることができるように構成されている。すなわち、本実施形態では、車両の走行状態に応じて、オイルの帰還ルートの途中に一時的な中間貯留部8を生じさせる構成を採用している。以下、この点について詳述する。
車両の停止時には、回転電機3も停止しておりロータ32及び掻上部材6の回転速度はゼロである。この状態では、通常、ケース2内のオイルの全量がオイル貯留部7に貯留された状態となる。この状態でのオイルレベルLが、上述した静止レベルLpとなる(図5の上段を参照)。本実施形態では、静止レベルLpが掻上部材6の掻上本体部61の径方向内側端部付近に位置するように、ケース2内に収容するオイルの量が設定されている。このようにすれば、掻上本体部61の大部分が車両の停止時にオイル貯留部7のオイル中に浸漬することになるので、車両の発進時にロータ32が回転を開始して掻上部材6が回転を開始した際にも、十分な量のオイルを掻き上げることができる。
ケース2内に収容するオイルの量は、さらに静止レベルLpがステータ31の内周面よりも径方向外側に位置するように設定されることが好ましい。このようにすれば、車両の走行状態によらずにステータ31とロータ32との間の隙間(エアギャップ)にオイルが存在しないので、せん断損失を低減することができる。よって、エネルギ効率を高めることができる。なお、「せん断損失」は、エアギャップにオイルが存在する状態でロータ32が回転することによる、エアギャップ内のオイルのせん断に起因する損失である。
一方、車両の走行時には、回転電機3が車両駆動用のトルクを出力しており、掻上部材6はロータ32と同速で回転する。この状態では、ケース2内のオイルの一部が掻上部材6によって掻き上げられて冷却対象部位及び潤滑対象部位に供給される。このような状況の下、本実施形態では、プラネタリギヤ機構50が有する各部材の構成(各ギヤの斜歯の向きや、リングギヤ形成部材70及び支持部材80の形状等)を利用して、プラネタリギヤ機構50の内部空間に中間貯留部8が生じるように構成されている。
上述したように、プラネタリギヤ機構50に備えられる大径ピニオン55Aとこれに噛み合うサンギヤ51、及び小径ピニオン55Bとこれに噛み合うリングギヤ56とは、いずれも斜歯に形成されている(図4を参照)。なお、図4においては、車両の前進力行時における各部材の回転及び伝達される駆動力の向きを細矢印で表している。互いに噛み合う小径ピニオン55B及びリングギヤ56のそれぞれの斜歯は、小径ピニオン55Bとリングギヤ56との噛合部Eにおいて、車両の前進力行時にリングギヤ形成部材70を支持部材80側に向かわせるスラスト力Fが生じる向きとなるように設定されている。そして、本実施形態では、リングギヤ形成部材70には軸第一方向A1側に向かって突出する円筒状の軸方向当接部75が設けられるとともに、支持部材80には軸第二方向A2側を向く平坦な当接面81aが設けられている。このため、小径ピニオン55B及びリングギヤ56の斜歯の向きは、小径ピニオン55Bとリングギヤ56との噛合部Eにおいて、車両の前進力行時に軸方向当接部75を当接面81aに近づける向きのスラスト力Fが生じるように設定されていると言える。
支持部材80側に向かうスラスト力Fを受けたリングギヤ形成部材70は、スナップリング77よりも支持部材80側の範囲内で、軸方向Aに沿ってスライド移動する。これにより、図5の下段に示すように実際に、リングギヤ形成部材70の軸方向当接部75の端面75aが、支持部材80の支持円環板状部81の当接面81aに当接する。その結果、支持円環板状部81と軸方向当接部75と外側フランジ部74と大径筒状部72と円環板状部73とによって区画される空間に、オイルを一時的に貯留するための中間貯留部8が形成される。なお、中間貯留部8の容積は、概ね、大径筒状部72の内周空間の容積と小径筒状部71の内周空間の容積との差分に等しい。
このように、車両の走行時には、掻上部材6によって掻き上げられて冷却対象部位及び潤滑対象部位に供給されるオイルの一部を、一時的に中間貯留部8に貯留することができる。これにより、掻き上げられたオイルのオイル貯留部7への帰還量を、中間貯留部8の容積に応じて低減することができる。その結果、車両の走行時におけるオイル貯留部7のオイルレベルL(以下、「走行中レベルLd」と言う。)を大きく低下させることができる。特に、オイル貯留部7の走行中レベルLdを、オイルの帰還を定常的な流れに完全に委ねる場合に比べて有意に低下させることができる。従って、オイル貯留部7における掻上部材6のオイル中への浸漬量を少なくすることができ、オイルの掻き上げに伴う引き摺り損失を低減してエネルギ効率を高めることができる。
本実施形態では、一時的な中間貯留部8を形成するに当たり、プラネタリギヤ機構50が有するステップドピニオン55に対応する有段筒状のリングギヤ形成部材70の形状を有効活用している点に大きな利点を見出すことができる。また、リングギヤ形成部材70の中でも特に大径筒状部72を利用している点にも、大きな利点を見出すことができる。つまり、オイルの最大貯留可能量となる中間貯留部8の容積は、当該中間貯留部8の外径と内径との差の二乗に比例する。大径筒状部72を利用して中間貯留部8の外径を相対的に大きくすることで、中間貯留部8によるオイルの最大貯留可能量を増大させることができ、オイル貯留部7の走行中レベルLdの低下に大きく寄与することができる。
このように、本実施形態に係る車両用駆動装置1によれば、車両の発進時に適切にオイルを掻き上げることができるとともに、車両の走行中には引き摺り損失を低減してエネルギ効率を高めることができる。
本実施形態のように車両用駆動装置1をインホイールタイプのドライブユニットDとして用いる場合には、左右一対の車輪Wのうち少なくとも一方の車輪Wを駆動するドライブユニットDとして用いることができる。すなわち、左右一対の車輪Wのそれぞれを駆動する一対のドライブユニットDとして計2台の車両用駆動装置1を用いても良いし、左右いずれか一方の車輪Wを駆動するドライブユニットDだけに車両用駆動装置1を用いても良い。後者の場合には、必要とされる冷却及び潤滑の程度を考慮して、左右一対の車輪Wのうち、より大きな負荷が作用する方の車輪Wを駆動するドライブユニットDに車両用駆動装置1を用いることが好ましい。そのような大負荷作用車輪としては、例えば物流分野において予め定められた特定ルートに沿って走行する搬送車に備えられる、当該特定ルートとの関係で外輪となる割合の高い方の車輪Wが例示される。
〔その他の実施形態〕
車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、リングギヤ形成部材70に含まれる軸方向当接部75が軸第一方向A1側に向かって突出する円筒状に形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。軸方向当接部75は、全周に亘って連続して支持部材80の当接面81aに当接可能となっていれば良く、その形状は、例えば多角形筒状、楕円筒状、又は異形筒状等であっても良い。また、軸方向当接部75と外側フランジ部74とが径方向Rの同じ位置において同じ厚みを有するように構成されても良い。この場合、軸方向当接部75と外側フランジ部74とを区別することなく、その全体を「軸方向当接部」とみなすことができる。
(2)上記の実施形態では、互いに係合するリングギヤ形成部材70の内側凹凸部74Aと支持部材80の外側凹凸部82Aとが、それぞれ径方向Rの凹凸となっている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば図6に示すように、リングギヤ形成部材70と支持部材80とが、例えば大径筒状部72に設けられた径方向Rの凹凸(径方向凹凸部72A)と支持筒状部82に設けられた軸方向Aの凹凸(軸方向凹凸部82A)との噛み合いによって互いに係合しても良い。このような構成においても、リングギヤ形成部材70が軸第一方向A1側に向かって突出形成された軸方向当接部75を有し、この軸方向当接部75の軸第一方向A1側の端面75aと支持円環板状部81における軸第二方向A2側を向く当接面81aとが当接可能に構成されると良い。
(3)上記の実施形態では、掻上部材6が一体的に形成された掻上本体部61と接続部62とを有する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。掻上部材6は、少なくともオイル貯留部7に貯留されたオイルを掻き上げることができれば良く、例えば掻上本体部61のみで掻上部材6が構成されても良い。また、掻上本体部61が、凹溝64に代えて、円形や矩形等の所定形状の凹部を有しても良い。さらに、掻上部材6が、掻上本体部61の径方向外側端部に径方向Rの凹凸部を有するように構成されても良い。
(4)上記の実施形態では、掻上部材6が、車両を走行させるための駆動力源として機能する回転電機3のトルクによって駆動される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、回転電機3と車輪Wとを結ぶ駆動伝達経路から独立して設けられた専用の駆動力源(例えば電動モータ等)のトルクによって掻上部材6が駆動されても良い。この場合、掻上部材6及びその駆動力源の少なくとも一方は、回転電機3等とは別軸に配置されても良い。
(5)上記の実施形態では、掻上部材6によって掻き上げられたオイルが、ロータ軸4内の軸内油路47及び連通孔48を通ってプラネタリギヤ機構50等に供給される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、掻き上げられたオイルが、別途設けられる油路形成部材内の供給油路を通って、ロータ軸4の外部からプラネタリギヤ機構50等に供給されても良い。
(6)上記の実施形態では、車両用駆動装置1をインホイールタイプの駆動装置(ドライブユニットD)に適用し、2台の車両用駆動装置1を用いて左右一対の車輪Wを個別に駆動する例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば車両用駆動装置1に駆動力分配用のディファレンシャル装置を設け、1台の車両用駆動装置1を用いて左右一対の車輪Wの両方を一括的に駆動しても良い。この場合において、車両の駆動力源として、回転電機3と内燃機関とを併用するように車両用駆動装置1が構成されても良い。
(7)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎないと理解されるべきである。従って、当業者は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔実施形態の概要〕
以上をまとめると、本開示に係る車両用駆動装置は、好適には、以下の各構成を備える。
[1]
ケース(2)内に形成されるオイル貯留部(7)からオイルを掻き上げる掻上部材(6)と、前記掻上部材(6)によって掻き上げられたオイルの供給を受けるギヤ機構(5)と、を備える車両用駆動装置であって、
前記ギヤ機構(5)は、大径ピニオン(55A)と小径ピニオン(55B)とが軸方向(A)に並んで配置されたステップドピニオン(55)と、前記小径ピニオン(55B)に噛み合うリングギヤ(56)を保有するリングギヤ形成部材(70)と、前記リングギヤ形成部材(70)を支持する支持部材(80)と、を有し、
前記リングギヤ形成部材(70)は、内周面に前記リングギヤ(56)が形成された小径筒状部(71)と、当該小径筒状部(71)に対して前記軸方向の一方側である軸第一方向(A1)側に配置されて前記大径ピニオン(55A)の径方向外側を覆う大径筒状部(72)と、前記小径筒状部(71)と前記大径筒状部(72)とを径方向(R)に接続する円環板状部(73)と、前記大径筒状部(72)に対して前記軸第一方向(A1)側に形成された軸方向当接部(75)と、を有し、
前記支持部材(80)は、前記軸方向当接部(75)に対して前記軸第一方向(A1)側から全周に亘って当接可能な当接面(81a)と、前記リングギヤ形成部材(70)の被係合部(74A)に係合して前記リングギヤ形成部材(70)の相対回転を規制する係合部(82A)と、を有し、
前記小径ピニオン(55B)及び前記リングギヤ(56)が斜歯に形成されるとともに、その噛合部(E)において車両の前進力行時に前記軸方向当接部(75)を前記当接面(81a)に近づける向きのスラスト力(F)が生じるように前記小径ピニオン(55B)及び前記リングギヤ(56)の斜歯の向きが設定されている。
この構成によれば、車両の前進力行時に、支持部材の当接面とリングギヤ形成部材の軸方向当接部とを全周に亘って当接させることができる。よって、掻上部材によって掻き上げられて潤滑等のためにギヤ機構に供給されるオイルの一部を、支持部材とリングギヤ形成部材の大径筒状部及び円環板状部とによって区画される空間に一時的に貯留することができる。これにより、車両の前進力行時に、リングギヤ形成部材の径方向内側に一時的に貯留されるオイル量に応じて、オイル貯留部での掻上部材のオイル中への浸漬量を少なくすることができる。従って、オイルの掻き上げに伴う引き摺り損失を低減してエネルギ効率を高めることができる。
一方、車両の前進力行時以外のときには、支持部材の当接面とリングギヤ形成部材の軸方向当接部との当接状態が解除される。よって、ギヤ機構に供給されるオイルは、途中で一時的に貯留されることなく、支持部材とリングギヤ形成部材との隙間を通ってそのままオイル貯留部に戻される。従って、オイル貯留部における掻上部材のオイル中への浸漬量を多くすることができ、オイルの掻き上げが必要となった際には、十分な量のオイルを掻き上げることができる。
以上より、上記の構成によれば、エネルギ効率の向上とオイルの掻き上げ開始時の掻上量確保とを共に達成することができる。
[2]
前記支持部材(80)は、径方向(R)に延びる支持円環板状部(81)と、前記支持円環板状部(81)から前記軸第一方向(A1)側とは反対側である軸第二方向(A2)側に向かって軸方向(A)に延びる支持筒状部(82)と、を有し、
前記支持筒状部(82)に前記係合部(82A)が形成され、
前記支持円環板状部(81)の前記軸第二方向(A2)側を向く面に前記当接面(81a)が形成され、
前記軸方向当接部(75)は、前記支持筒状部(82)よりも径方向内側において前記軸第一方向(A1)側に向かって突出する円筒状に形成されているとともに、当該円筒状部の前記軸第一方向(A1)側の端面(75a)が前記当接面(81a)に当接するように形成されている。
この構成によれば、支持筒状部の存在により、軸方向当接部よりも径方向外側でリングギヤ形成部材を適切に支持することができる。また、円筒状部の軸方向当接部の軸第一方向側の端面を、支持円環板状部の軸第二方向側を向く当接面で受けることで、両者の当接時の密着性を良好なものにすることができる。よって、オイルを、支持部材とリングギヤ形成部材とによって区画される空間に貯留されやすくして、上述した利点を効果的に発揮させることができる。
[3]
左右一対の車輪(W)のそれぞれに取り付けられて対応する車輪(W)を駆動する一対のドライブユニット(D)を備える車両において、前記左右一対の車輪(W)のうち少なくとも大きな負荷が作用する方の車輪を駆動するドライブユニット(D)として用いられる。
この構成によれば、少なくともより大きな負荷が作用する方の車輪用のドライブユニットとして用いられる車両用駆動装置において、ギヤ機構に設けられる各種のギヤ等に対する潤滑を適切に行いつつ、エネルギ効率を向上させることができる。
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。
本発明は、車両を駆動するための駆動装置に利用することができる。
1 車両用駆動装置
5 ギヤ機構
6 掻上部材
7 オイル貯留部
8 中間貯留部
50 プラネタリギヤ機構
55 ステップドピニオン
55A 大径ピニオン
55B 小径ピニオン
56 リングギヤ
70 リングギヤ形成部材
71 小径筒状部
72 大径筒状部
73 円環板状部
74A 内側凹凸部(被係合部)
75 軸方向当接部
75a 端面
80 支持部材
81 支持円環板状部
81a 当接面
82 支持筒状部
82A 外側凹凸部(係合部)
D ドライブユニット
W 車輪
E 噛合部
F スラスト力
A 軸方向
A1 軸第一方向
A2 軸第二方向
R 径方向

Claims (3)

  1. ケース内に形成されるオイル貯留部からオイルを掻き上げる掻上部材と、前記掻上部材によって掻き上げられたオイルの供給を受けるギヤ機構と、を備える車両用駆動装置であって、
    前記ギヤ機構は、大径ピニオンと小径ピニオンとが軸方向に並んで配置されたステップドピニオンと、前記小径ピニオンに噛み合うリングギヤを保有するリングギヤ形成部材と、前記リングギヤ形成部材を支持する支持部材と、を有し、
    前記リングギヤ形成部材は、内周面に前記リングギヤが形成された小径筒状部と、当該小径筒状部に対して前記軸方向の一方側である軸第一方向側に配置されて前記大径ピニオンの径方向外側を覆う大径筒状部と、前記小径筒状部と前記大径筒状部とを径方向に接続する円環板状部と、前記大径筒状部に対して前記軸第一方向側に形成された軸方向当接部と、を有し、
    前記支持部材は、前記軸方向当接部に対して前記軸第一方向側から全周に亘って当接可能な当接面と、前記リングギヤ形成部材の被係合部に係合して前記リングギヤ形成部材の相対回転を規制する係合部と、を有し、
    前記小径ピニオン及び前記リングギヤが斜歯に形成されるとともに、その噛合部において車両の前進力行時に前記軸方向当接部を前記当接面に近づける向きのスラスト力が生じるように前記小径ピニオン及び前記リングギヤの斜歯の向きが設定されている車両用駆動装置。
  2. 前記支持部材は、径方向に延びる支持円環板状部と、前記支持円環板状部から前記軸第一方向側とは反対側である軸第二方向側に向かって軸方向に延びる支持筒状部と、を有し、
    前記支持筒状部に前記係合部が形成され、
    前記支持円環板状部の前記軸第二方向側を向く面に前記当接面が形成され、
    前記軸方向当接部は、前記支持筒状部よりも径方向内側において前記軸第一方向側に向かって突出する円筒状に形成されているとともに、当該円筒状部の前記軸第一方向側の端面が前記当接面に当接するように形成されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
  3. 左右一対の車輪のそれぞれに取り付けられて対応する車輪を駆動する一対のドライブユニットを備える車両において、前記左右一対の車輪のうち少なくとも大きな負荷が作用する方の車輪を駆動するドライブユニットとして用いられる請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
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