本発明の1番目(以下、第1発明とする)は、円偏光板に関する。
すなわち、少なくとも位相差機能部分と直線偏光機能部分とバックアップ樹脂に熱接合する熱接合機能部分を持つ多層の円偏光板において、直線偏光機能部分の一方の側に位相差機能部分が、もう一方の側に熱接合機能部分が配置されている新規な円偏光板である。
第1発明には、位相差機能部分と直線偏光機能部分とバックアップ樹脂に熱接合する熱接合機能部分によって、以下、順次説明する第1から第5までの5ケースがある。
第1発明の第1のケースは、直線偏光機能部分が直線偏光子であり、直線偏光子を両面から保護する保護シートの片方のシートが位相差機能シート、または位相差板であり、もう片方のシートが熱接合機能を持つ熱接合シートであることを特徴とする円偏光板である。
直線偏光子は、通常、厚さ0.1mm以下の均一な樹脂シートである。ごく一般的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系樹脂の一軸延伸シートである。
高い直線偏光度を得るためには、2〜5倍程度の延伸倍率で延伸したシートへ、さらに、ヨウ素または二色性染料でドープすることが行われている。
ヨウ素を用いるヨウ素ドープ法は、染料を用いる染料ドープ法に比べ、直線偏光子に固有の着色を与えることが少ないうえ、高い偏光度のものが得られやすい特徴を持つ反面、昇華しやすいヨウ素を使用するため、耐熱性に劣る欠点がある。一方、染料ドープ法は、ヨウ素ドープ法より高い耐熱性を持つ一方で、染料固有の色相が直線偏光子に現れる問題や、染料によって、つまり色相によって偏光度が異なる問題がある。
後述するように、本発明では、円偏光板を曲げ加工して円偏光レンズを作り、さらに射出成形法により、凹面側を樹脂でバックアップすることがあるが、ヨウ素ドープ法の偏光子は、曲げ加工の熱やバックアップ樹脂の射出成形の熱により、ヨウ素が昇華して偏光度が低下することがある。そのため、本発明では、熱安定性の高い染料ドープ法の偏光子であることが推奨される。
位相差機能シートは、通常、厚さ0.2mm以下の均一な樹脂シートであり、求められる位相差の程度によって、厚みが光学的に設定されるものであり、通常は1/4λの位相差のあるものが好ましく用いられる。
あるいは、位相差機能シートとして、1/4λの位相差シートと1/2λの位相差シートを組み合わせた積層体(あるいは、積層構造)が用いられる場合もある。すなわち、右回りに設計した円偏光板に1/2λ位相差シートを積層することによって、左回りの円偏光板に調製することができるからである。1/2λ位相差シートも、通常、厚さ0.2mm以下の均一な樹脂シートであり、厚みは光学的に設定されるものである。
位相差の程度にかかわらず、位相差シートに用いられる樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレートなどの液晶ポリマー、ポリスルホン樹脂などが一般的である。
樹脂には、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの安定剤が添加されることが多い。
位相差シートは、通常は押し出し成形したシートを、1軸方向ないしは2軸方向に延伸したシートである。
後述するように、本発明では、熱接合機能部分へバックアップの樹脂を射出成形する場合がある。
しかしながら、バックアップ樹脂の射出成形は、おうおうにして、位相差シートを熱収縮させることになる。位相差シートの熱収縮は、当初は適正であった位相差値に、なんらかの変化を与えることを意味し、その結果、当初は適正であった円偏光性能を損なうことにつながる。現象的には、1レンズ内において、円偏光性能ムラが発生する。円偏光性能ムラのあるレンズを枠入れして立体視用の眼鏡を作ると、立体視性能の低下した円偏光眼鏡になる。
そのため、位相差シートに用いる樹脂は、耐熱性が高く、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上、好ましくは160℃以上あるものが適する。
位相差板は、上述したような位相差シートの片面、または両面に、トリアセチルセルロース(TAC)やポリメチルメタクリレート、シクロオレフィン樹脂のような光学的異方性の少ない樹脂シートを貼付し、補強したものが知られており、厚さ0.1〜0.5mm程度の積層シートである。
熱接合機能を持つ熱接合シートは、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン・メチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン樹脂、ポリー4−メチルペンテンー1樹脂など、熱可塑性の透明樹脂から作られる。
なかでも、シート製造の容易さから、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、およびポリウレタン樹脂のいずれかが好ましく用いられる。
熱接合シートは、バックアップする樹脂との熱接合適合性があるため、熱接合シートとバックアップの樹脂とは、化学的に同系統の樹脂であるか、あるいは、熱接合シートとバックアップの樹脂のどちらか一方が、熱接合性の高いポリウレタン樹脂である場合が好ましい。
これらの樹脂には、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの安定剤が添加されることが多い。
熱接合シートは、1軸や2軸延伸されている必要はない。むしろ、延伸されていない方が、曲げ加工やバックアップ射出成形の際に熱収縮が起こらないので、円偏光レンズに歪みが生じにくい。
熱接合シートの好ましい厚さは、0.01〜1mm程度、より好ましくは0.02〜0.8mm程度である。シートの厚さが0.01未満では、円偏光板および円偏光レンズが薄くなりすぎて取扱いにくく、厚さが1mmを超えると、位相差シートとの厚さバランスが損なわれて、円偏光板にソリが出やすくなる問題がある。
円偏光板は、少なくとも、直線偏光子と位相差シートを組み合わせた積層体であり、直線偏光子の向き(延伸方向)と1/4λ位相差シートの向き(延伸方向)の角度によって、右回りの円偏光板になったり、左回りの円偏光板になったり、楕円偏光板になったりする。
また、右回りの円偏光板の位相差機能側に、1/4λ位相差シートと延伸方向を合わせて1/2λ位相差シートを積層すると、左回りの円偏光板になる。左回りの円偏光板についても、同様のことが言え、1/2λ位相差シートを積層することによって右回りの円偏光板が調製できる。
従って、直線偏光子と位相差シートの組み合わせ角度は極めて大切であり、正しい円偏光性能が得られるように、また、円偏光性能が変化しないように、両者の組み合わせ積層体を、接着剤などによって相互に固定するのが普通である。
直線偏光子と、位相差シートまたは位相差板、ならびに熱接合シートを貼付するのに用いる接着剤または粘着剤は、水や熱、紫外線などに対する長期の耐久性が必要であり、基本的には、それらに合格するものであれば特に限定しない。長期耐久性は、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの安定剤の添加によって補われることが多い。
接着剤について例を挙げると、イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアクリル樹脂、ワックスなどがある。粘着剤としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
貼付するにあたり、これらの接着剤または粘着剤は、グラビアコーティング法やオフセットコーティング法など一般的な塗布方法により、直線偏光子や位相差シート、熱接合シートへ均一に塗布される。
接着剤層または粘着剤層の厚さは、通常0.1〜100μm、好ましくは0.5〜80μmである。接着剤層または粘着剤層の厚さが0.1μm未満では、接着力が低く、100μmを超えると、円偏光板の端面から接着剤や粘着剤がしみ出ることがある。
第1発明の第2のケースは、直線偏光機能部分が、直線偏光子と、それを挟持する2枚の保護シートからなる偏光板であり、片方の保護シートの上に位相差機能を持つ位相差機能シート、または位相差板が配置され、もう片方の保護シートの上に熱接合機能を持つ熱接合シートが配置されている円偏光板の場合である。
ポリビニルアルコール系樹脂の直線偏光子は、一般に物理強度が弱く、また、吸湿性があるので、取扱い性の良いものとは言えない。そのため、偏光子に保護シートを貼付して補強したものは直線偏光板(あるいは、偏光板)と呼称され、偏光子の取扱い性を良くした直線偏光板を、流通や加工の基本形態にすることが一般に行われている。
直線偏光板の一般構造は、1枚の偏光子のそれぞれの面に、保護シートを貼付したものである。すなわち、保護シート−直線偏光子−保護シートの順に積層された3層構成の積層体である。
保護シートは、一般には、押し出し成形法またはキャスト成形法で作られる。
押し出し成形法の保護シートとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン・メチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン樹脂、ポリー4−メチルペンテンー1樹脂、可塑剤を加えたアシルセルロース樹脂のような透明熱可塑性樹脂のシートがある。
保護シートとしては、光学的異方性のできるだけ少なく、かつ、製造のしやすいことが望ましい。
特に好ましい透明熱可塑性樹脂は、押し出し成形のしやすさや、高い透明性の得られやすさから、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、およびポリシクロオレフィン樹脂が挙げられる。
これらの樹脂には、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの安定剤が添加されることが多い。
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAなど芳香族フェノール類を主体にする芳香族ポリカーボネート樹脂、および芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のポリマーアロイが、直線偏光板の物理強度を強める上で好ましい。
なかでも、ビスフェノールA系のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が15000以上、好ましくは18000以上のものが、円偏光レンズの強度と靭性において優れ、眼を守る機能が高いので、特に推奨される。
ポリアミド樹脂は、脂環族あるいは脂肪族ジカルボン酸と、脂環族あるいは脂肪族ジアミンを縮重合したポリアミドであり、硬さ、強度や、強靭性があり、非晶性で透明度の高いポリアミド樹脂が好ましい。
特に高透明性である必要性から、非晶性ナイロンあるいは透明ナイロンといわれているポリアミドが好ましく用いられる。その代表例として、エムス(EMS CHMEMIE)社の“グリルアミド(GRILAMID)”TR−55、“グリルアミド”TR−90、ヒュルス(HULS)社の“トロガミド(TROGAMID)”CX−7323などが挙げられる。透明ナイロンは、一般的に、ポリカーボネート樹脂よりは光学的異方性が少ない特徴がある。また、ソルベントクラック耐性など耐溶剤性がポリカーボネート樹脂より高い傾向がある。
ポリエステル樹脂は、テレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸類の主成分にしたポリエステル樹脂が、硬さ、強度、強靭性、および透明性から好ましく用いられる。
ポリウレタン樹脂は、芳香族ジイソシアネートや脂環族ジイソシアネートをジイソシアネート成分にしたポリウレタン樹脂のうち、硬さ、強度や、強靭性があり、結晶化の起こりにくい、透明性の高いポリウレタン樹脂が好ましい。
好ましい例として、BASF社のポリエステル系ポリウレタン“エラストラン(ELASTOLLAN)”ET590、“エラストラン”ET595、“エラストラン”ET598や、同社のポリエーテル系ポリウレタンが挙げられる。
ポリアクリル樹脂は、メチルメタアクリレートやシクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート系重合体、共重合体を含むアクリル樹脂が、硬さ、強度や、透明性から挙げられる。
ポリシクロオレフィン樹脂は、総じて複屈折が小さい特徴があり、光学異方性の小さいシートが得られやすい。また、耐熱性が高く、高カーブの円偏光レンズにしても、位相差性能にばらつきが生じにくい特徴がある。代表的なシクロオレフィン樹脂(および、シクロオレフィン共重合樹脂)として、日本ゼオンの“ZEONEX”や“ZEONOR”、JSRの“ARTON”、日立化成の“OPTOREZ”、三井化学の“APEL”、積水化学の“ESSINA”が挙げられる。
押し出し成形法の保護シートに対し、キャスト成形法の保護シートは、光学異方性が小さいので、直線偏光板の保護シートとしては好ましい特性を備えている。
代表的なキャスト成形法シートの製法として、アシルセルロースシートを例に挙げてみる。キャスト成形法では、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピルセルロース、およびジプロピルセルロースのようなアシルセルロース類を、例えばアセトンや塩化メチレンに溶解して溶液を作る。次いで、その溶液をベルトまたは平板の上へ流延し、加熱あるいは減圧処理により脱溶媒してシートにする。
ポリシクロオレフィン樹脂も、溶液流延法でシートに作られることがある。また、例えば、メチルメタクリレートを主体にする(メタ)アクリレート類をガラス板の間に封入し、いわゆる板間重合法でキャスト成形するポリアクリル樹脂シートもある。
板間重合法シートには、このほか、ポリウレタン樹脂シートがある。板間重合のポリウレタン樹脂シートは、トリレンジイソシアネート(TDI)、メタキシレンジイソシアネート(MDI)、およびジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類や、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類と、エチレングリコール、および1,3−プロパングリコールなどの脂肪族グリコール類や、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどのポリエーテル系グリコール類、カプロラクトン系、アジペート系などのポリエステル系グリコール類などのポリオール類とを混合し、板間に充填し、加熱重合する。
キャスト成形法の保護シートとしては、すでにシートの工業生産技術が確立されているものが好ましく、そうしたシートの工業生産技術が確立されている樹脂としては、トリアセチルセルロース(TAC)などのアシルセルロース樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、およびポリアクリル樹脂が挙げられる。
これらの樹脂には、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの安定剤が添加されることが多い。
本発明に特に好ましい直線偏光板は、位相差シート、または位相差板を貼付する側の保護シートが光学的に均一なシートである場合である。
すなわち、偏光板の2枚の保護シートのうち、少なくとも1枚がキャスト成形されたアシルセルロースシート、とりわけトリアセチルセルロース(TAC)シート、シクロオレフィン樹脂シート、ポリメタクリル樹脂シート、およびポリウレタン樹脂シートのような光学的に均一性の高いシートである場合である。位相差シート、または位相差板は、光学的に均一性の高い保護シートの上に貼付する。
保護シートの好ましい厚さは、押し出し成形法やキャスト成形法などのシートの製造方法にかかわりなく、0.01〜1.0mm程度、より好ましくは0.02〜0.8mm程度である。0.01mm未満の厚さでは、偏光子の保護作用が弱くなる。一方、厚さが1.0mmを超えると、後述するように、偏光板の曲げ加工が難しくなることがある。
偏光子をサンドイッチにする2枚の保護シートは、樹脂の種類やシート成形法、延伸倍率、シート厚みなどが一致する必要はないが、偏光板の調製のしやすさや、ソリのなさ、取扱いのしやすさから、実質的に同じシートであることが好ましい。
偏光子と保護シートは、接着剤または粘着剤を用いて貼付するのが一般的である。
光学異方性の少ないキャスト成形法の保護シートは、あまり問題にならないが、押し出し成形法の保護シートであって、もしそれが延伸シートである場合は、貼り合わせにおける偏光子と保護シートの方向性が問題になる。すなわち、偏光子の延伸方向と保護シートの延伸方向をほぼ完全に一致させないと、偏光度の低下や、偏光度の局所ムラや色ムラが発生することがある。二軸延伸の保護シートの場合は、延伸倍率の大きい方の延伸方向と偏光子の延伸方向をほぼ完全に一致させる方法が好ましい。
偏光子と保護シートを貼付する接着剤または粘着剤は、水、熱、光などに対する長期の耐久性が必要であり、基本的には、第1発明の第1のケースで用いた接着剤と粘着剤であれば問題はない。
接着剤について例を挙げると、イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ワックスなどがある。粘着剤としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
貼付するにあたり、これらの接着剤または粘着剤を、グラビアコーティング法やオフセットコーティング法などの一般的な塗布方法により、保護シートまたは偏光子へ均一に塗布する。
接着剤層または粘着剤層の厚さは、通常0.1〜100μm、好ましくは0.5〜80μmである。接着剤層または粘着剤層の厚さが0.1μm未満では接合力が低く、100μmを超えると偏光板の端面から接着剤や粘着剤がしみ出ることがある。
偏光板の好ましい厚さは0.1〜2mm、より好ましくは0.2〜1.6mmである。
0.1mm未満の偏光板は作りにくく、2mmを超えると、偏光板の曲げ加工を行う際、偏光子にクラックが入ったり、保護シートに皺がよったりして、うまくレンズ状に曲がらない傾向がある。
代表的な偏光板としてTAC(トリアセチルセルロース)偏光板を挙げられる。TAC偏光板は、ポビニルアルコール系直線偏光子を、キャスト成形法で調製した2枚のTACシートで挟んだものである。特に、バックアップする樹脂との熱接合性が万全でないTAC偏子板は、第1発明の第2のケースが有用である。
このほか、直線偏光子をキャスト成形したシクロオレフィン樹脂シート、ポリメタクリル樹脂シート、およびポリウレタン樹脂シートのような光学的に均一性の高いシートで挟んだ直線偏光板が推奨される。
このほか、2枚の保護シートのうち、少なくとも1枚がキャスト成形されたアシルセルロースシート、とりわけトリアセチルセルロース(TAC)シート、シクロオレフィン樹脂シート、ポリメタクリル樹脂シート、およびポリウレタン樹脂シートのような光学的に均一性の高いシートであり、もう片面が、押し出し成形されたポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン・メチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン樹脂、ポリー4−メチルペンテンー1樹脂、および可塑剤を加えたアシルセルロース樹脂のような透明熱可塑性樹脂のシートである場合が推奨される。
第1発明の第2のケースにおいて、直線偏光板の片面に貼付する位相差機能シート、または位相差板は、第1発明の第1のケースで述べた位相差機能シート、および位相差板と同じでよい。また、直線偏光板の光学的な均一性の高い保護シート側に、位相差機能シート、または位相差板を貼付する。
もう片面(位相差機能シートを貼付しない面)に貼付する熱接合シートは、バックアップする樹脂との熱接合性によって選択されるべきであり、第1発明の第1のケースで述べた熱接合シートの原則がそのまま適用される。
すなわち、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン・メチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン樹脂、およびポリ−4−メチルペンテンー1樹脂など、熱可塑性の透明樹脂から作られるシートである。
なかでも、シート製造の容易さから、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、およびポリウレタン樹脂のいずれかが好ましく用いられる。
熱接合シートは、バックアップする樹脂との熱接合適合性があるため、熱接合シートとバックアップの樹脂とは、化学的に同系統の樹脂であるか、あるいは、熱接合シートとバックアップの樹脂のどちらか一方が、熱接合性の高いポリウレタン樹脂である場合が好ましい。
これらの樹脂には、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの安定剤が添加されることが多い。
熱接合シートは、1軸や2軸延伸されている必要はない。むしろ、延伸されていない方が、曲げ加工やバックアップ射出成形の際に熱収縮が起こらないので、円偏光レンズに歪みが生じにくい。
熱接合シートの好ましい厚さは、0.01〜1mm程度、より好ましくは0.02〜0.8mm程度である。シートの厚さが0.01未満では円偏光板および円偏光レンズが薄くなりすぎて取扱いにくく、厚さが1mmを超えると、位相差シートとの厚さバランスが損なわれて、円偏光板にソリが出やすくなる問題がある。
偏光板に位相差機能シート、または位相差板と熱接合シートを貼付するのに用いる接着剤や粘着剤は、第1発明の第1のケースで述べた接着剤や粘着剤と同じであってよい。
偏光板としてTAC偏光板を用いる場合、バックアップする樹脂は、引っ張り強度や曲げ剛性の高さ、強靭性があること、硬度が大きいことから、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることが勧められる。バックアップする樹脂とTAC製保護シートとの間の熱接合性が十分でないので、TAC製保護シートの上に、バックアップの樹脂と熱接合が可能なポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂などの熱接合性シートを貼付することが勧められる。
TAC偏光板以外の直線偏光板、例えば、キャスト成形したシクロオレフィン樹脂シート、ポリメタクリル樹脂シートや、ポリウレタン樹脂シートを保護シートにする直線偏光板の場合も同様である。
このほか、2枚の保護シートのうち、少なくとも1枚がキャスト成形されたアシルセルロースシート、とりわけトリアセチルセルロース(TAC)シート、シクロオレフィン樹脂シート、ポリメタクリル樹脂シート、およびポリウレタン樹脂シートのような光学的に均一性の高いシートであり、もう片面が、押し出し成形されたポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン・メチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン樹脂、ポリー4−メチルペンテンー1樹脂、および可塑剤を加えたアシルセルロース樹脂のような透明熱可塑性樹脂シートである直線偏光板の場合でも、バックアップする樹脂との熱接合性を高めるために、熱接合機能側になる押し出し成形された透明熱可塑性樹脂シートの上に、さらに熱接合シートを貼付することがある。
第1発明の第3のケースは、直線偏光子の片方の保護シートの上に位相差機能を持つ位相差機能シート、または位相差板が配置され、もう片方の保護シートが熱接合機能を持つ熱接合シートである円偏光板の場合である。
第3のケースは、基本的には第2のケースと同様の偏光板を用いる。位相差機能シートおよび位相差板も、第1のケースや第2のケースと同じものを用いる。
偏光板に位相差機能シート、または位相差板を貼付するのに用いる接着剤や粘着剤は、第1発明の第1のケースや第2のケースで述べた接着剤や粘着剤と同じであってよい。
第3のケースは、熱接合する側の保護シートが、バックアップする樹脂と化学的な馴染みがあり、よく熱接合する場合である。このケースの保護シートとバックアップする樹脂とは、第2のケースで述べた熱接合シートとバックアップする樹脂に準じて選択されるべきである。
第1発明の第4のケースは、直線偏光子の片方の保護シートが、位相差機能を持つ位相差機能シート、または位相差板であり、もう片方の保護シートの上に熱接合機能を持つ熱接合シートが貼付されている円偏光板の場合である。
第4のケースは、基本的には第1のケースと同様の直線偏光板を用いる。位相差機能シートおよび位相差板も、第1のケースや第2のケースと同じものを用いる。
第4のケースは、熱接合する側の保護シートが、バックアップする樹脂と化学的な馴染みがよくなく、バックアップする樹脂と熱接合しにくい場合である。このケースにおいて貼付する熱接合シートとバックアップする樹脂とは、第2のケースで述べた熱接合シートとバックアップする樹脂に準じて選択されるべきである。
熱接合シートを貼付するのに用いる接着剤や粘着剤は、第1発明の第1のケースや第2のケースで述べた接着剤や粘着剤と同じであってよい。
第1発明の第5のケースは、熱接合機能が、熱接合側に設けられた熱接合用コーティング層によって補完されている円偏光板である場合である。
すなわち、熱接合機能部分とバックアップする樹脂との熱接合性が、熱接合用コーティング層によって補完されている。
さらに、第1発明の第1〜第4のケースにおいて具体的に記述すると、第1〜第4のケースの熱接合シートに、熱接合用コーティング層を設けることによって達成できる。
かかる熱接合用コーティング層に用いる樹脂には、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、および合成ゴムなどが挙げられ、低粘度品はそのまま、高粘度品または固体は溶剤に溶解するか、エマルジョンにして用いられる。
これらの熱接合用コーティング層は、グラビアコーティング法やオフセットコーティング法などの一般的な塗布方法により、熱接合シートに均一に塗布する。
熱接合用コーティング層の厚さは、通常0.1〜500μm、好ましくは0.5〜400μmである。熱接合用コーティング層の厚さが0.1μm未満では接着力が低く、500μmを超えると、バックアップする樹脂を射出成形した時、円偏光レンズの端面から熱接合用コーティング層が滲み出たり、はみ出したりすることがある。
本発明の2番目(以下、第2発明とする)は、第1発明のケース1からケース5で開示された右回りと左回りの円偏光板を、右回りと左回りの円偏光レンズにすることに関する。
本発明の円偏光板は、通常、偏光子や保護シート、位相差機能シートなどの平面シートを積層した平面積層体シートとして作られる。
こうした平面積層体シートを、本発明の右回りと左回りの円偏光レンズにするためには、右回りと左回りの円偏光板を打ち抜くか、切り取るか、あるいは研磨するなどの方法で、円形状や楕円形状、長楕円形状、小判状、4角形状、5角形状などの多角形状、角を丸めた多角形状、なす形状、ドロップ形状などのレンズ形状にする。できあがったものは、平面形状の右回りと左回りの円偏光レンズである。
本発明の右回りと左回りの円偏光レンズは、眼鏡にした場合のラップやレーキを大きく取れるように、曲げ加工されていることが好ましい。曲げ加工の形状には、球面形状、楕円球面形状、およびトーリック形状などがある。
曲げ加工法には、以下に説明するように色々な方法がある。曲げ加工される前の円偏光板は、曲げ加工装置にセットしやすいような形状や大きさに切り取られていることが通常行われている。
円偏光板の曲げ加工方法の1つとして、ブロー成形法がある。この方法は、直径がレンズの大きさにほぼ等しい窪みを設けた曲げ装置を用いる。円偏光板の位相差機能側を上向きにして、窪みの上に円偏光板を置き、窪みの外周に等しい形状のリング状固定金具をその上から押し付ける。円偏光板は、リング状固定金具によって、曲げ装置に固定される。
上部から電熱ヒータや赤外線ヒータをかざし、円偏光板を加熱、軟化して、曲げやすくする。
円偏光板が所定温度に達しところで、窪みの内部へ圧空を導入し、内部から加圧する。その結果、円偏光板が上方へ膨らみ、レンズ状に変形する。
目的の形状まで膨らんだ時点で、ヒータ加熱を停止するとともに内部加圧を停止する。リング状固定金具の押し付けをゆるめ、曲げ加工済みの円偏光板を曲げ装置から取り出す。必要に応じて、円偏光板の不要部分を切り取ると、位相差機能側が凸面、熱接合機能側が凹面に配置された円偏光レンズが得られる。
円偏光板を曲げ加工するその他の方法として、バキューム成形法がある。この方法は、円偏光板の固定方法や加熱方法がブロー成形法とほぼ同形式であるが、位相差機能部分を下向きにして円偏光板を曲げ装置の上に置くところが異なる。
円偏光板が所定温度に達しところで、窪みの部分を内部から減圧する。その結果、円偏光板が下方へ引き込まれ、レンズ状に変形する。
目的の形状まで引き込まれた時点で、ヒータ加熱を停止するとともに減圧を停止する。リング状固定金具の押し付けをゆるめ、曲げ加工済みの円偏光板を曲げ装置から取り出す。必要に応じて、円偏光板の不要部分を切り取ると、位相差機能側が凸面、熱接合機能側が凹面になる円偏光レンズが得られる。
円偏光板を曲げ加工するその他の方法として、圧空真空成形法がある。この方法は、技術思想的には、ブロー成形法とバキューム成形を合体させたものである。
リング状固定金具で固定した円偏光板の上部に加圧室(あるいは減圧室)、下部に減圧室(あるいは加圧室)が設けられており、加圧と減圧を同時に行うことにより、加圧側の膨らみ変形と減圧側の引っ込み変形との加算により、変形をより容易に行うものである。円偏光板は、位相差機能側が凸面に来るように、装置上にセットする。
ブロー成形法やバキューム成形や圧空真空成形法は、厚さ0.2mm程度以下の円偏光板の曲げ加工には有効であるが、それより厚さの大きい円偏光板に対しては、曲げ加工した部分に厚さムラが出たり、皺が寄ったり、ひび割れしたりしやすくなる。
そうした厚さムラや皺やひび割れは、位相差シートや直線偏光子の局部的な伸びにつながり、十分な円偏光性能が得られないことになる。
そこで、曲げ加工した部分に厚さムラが出たり、皺が寄ったり、ひび割れしたりしない円偏光板の曲げ加工方法が重要になり、円偏光板を曲げ加工するその他の方法として、特開平1−22538号公報に示されるような方法がある(本発明では、この方法を吸引式フリー曲げ加工方法と呼称する)。
吸引式フリー曲げ加工方法は、ブロー成形法やバキューム成形や圧空真空成形法で用いるリング状固定金具を用いないが、形式的にはバキューム成形法に近い。
すなわち、曲げ形状にほぼ等しい曲率形状に窪んだ金型の上に、円偏光板を固定しないまま置く。雰囲気温度と金型温度を曲げ加工温度に設定し、金型の底から減圧して行くと、金型と同形の形状になるまで、円偏光板が金型に引き込まれる。
雰囲気温度と金型温度を一定温度まで下げてから、円偏光レンズを金型から取り出す。
吸引式フリー曲げ加工方法は、厚さ0.2mm程度以下の円偏光板の曲げ加工には、皺が寄ったりして、良品の円偏光レンズが得られにくい問題があるが、0.2mmより厚い円偏光板に対しては、比較的スムーズに曲げ加工のできる長所がある。本発明の第2発明の円偏光レンズを得る上で、とくに推奨される方法である。
本発明の第2発明に沿って作られた右回りと左回りの円偏光レンズは、レンズ表面にハードコート加工することができる。ハードコートとしては、シラン系、エポキシ系などの熱硬化型ハードコートと、アクリル系、エポキシ系などの活性光線硬化型ハードコートが一般的である。
本発明の3番目(以下、第3発明とする)は、第2発明で開示された右回りと左回りの円偏光レンズの熱接合機能部分に、バックアップの樹脂を射出成形した円偏光レンズに関する。
バックアップ樹脂の射出成形法は、射出成形機の金型に、第2発明で得た円偏光レンズをインサートし、熱接合機能側(しばしば凹面側になる)にバックアップの樹脂を射出成形する、いわゆるインサート射出成形法である。
生産性や成形の精密性などから、基本的には特開平11−245259号公報に示されるようなインサート射出成形法が好ましい。
すなわち、バックアップする側に熱接合する面を向けて、円偏光レンズを金型に配置し、バックアップする樹脂層をインサート射出成形する方法である。なかでも、射出圧縮成形法は、金型の中に樹脂を低圧で射出した後、金型を高圧で閉じて樹脂に圧縮力を加える方法をとるため、成形体に成形歪みや樹脂分子の局所的配向に起因する光学異方性を生じにくい。また、樹脂に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂を冷却することができるので、寸法精度の高い成形品が得られる。
第3発明には、このほか、第2発明で作った右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを横並びに配置して(この場合の横並び配置状態とは、両レンズがわずかに重ねて配置した状態、もしくは端部が接触して配置した状態、もしくは間隔をあけて配置した状態を含む)、熱接合機能部分にバックアップの樹脂を同時に射出成形し、右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを横並びに配置して作った立体視用の円偏光1眼レンズ、またはフレームとレンズが一体になった立体視用の円偏光1眼レンズ、またはフレームとレンズが一体になった立体視用の円偏光1眼ゴーグルレンズが含まれる。
いずれも、第2発明の右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを横並びに配置した状態でインサートできる一眼用レンズ金型を用いる。
第2発明の右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズは、同時にバックアップ成形されるとともに、両レンズの間をバックアップする樹脂で連結されて、立体視用の円偏光1眼レンズができあがる。
さらには、バックアップする樹脂で両レンズの周辺に、同時的にフレームを成形すると、フレームとレンズが一体になった立体視用の円偏光1眼レンズができあがる。さらには、バックアップする樹脂で両レンズの周辺に、同時的にフレームを成形すると、フレームとレンズが一体になった立体視用の円偏光1眼ゴーグルレンズができあがる。
バックアップ射出成形するにあたり、インサートする第2発明の円偏光レンズを金型に固定するために、第2発明の円偏光レンズを金型に設けられた吸引孔を通じて金型側から吸引固定することがしばしば行われる。
第2発明の円偏光レンズの曲げ形状は、金型の形状にほぼ等しくするのが好ましい。すなわち、第2発明の円偏光レンズが平面形状であれば、金型も平面形状のものを用い、第2発明の円偏光レンズが球面であれば、金型もそれにほぼ等しい球面の金型を用いる。
第2発明の円偏光レンズが平面形状である場合は、金型への吸引固定によって、金型の形状(例えば、球面形状や楕円球面形状やトーリック形状)に沿って曲げられ、その形状でバックアップされ、球面形状や楕円球面形状やトーリック形状の円偏光レンズを作ることもできるが、事前に曲げ加工した第2発明の円偏光レンズを、それにほぼ等しい球面形状や楕円球面形状やトーリック形状の金型にセットしてバックアップ射出成形する場合に比べると、バックアップ後のレンズの仕上がりが良くない傾向がある。
バックアップする樹脂は、第2発明の円偏光レンズと熱接合することが求められるので、熱接合シートに用いた樹脂とバックアップする樹脂とは、化学的に同系統であることが好ましい。
すなわち、保護シートがポリカーボネート樹脂の時はポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂の時はポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂の時はポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂の時はポリアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂の時はポリシクロオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂の時はポリウレタン樹脂であることが好ましい。
バックアップする樹脂がポリカーボネート樹脂の場合は、ポリエステル樹脂製の熱接合シートと熱接合することがある。
また、バックアップする樹脂がポエステル樹脂の場合は、ポリカーボネート樹脂製の熱接合シートと熱接合することがある。
また、バックアップする樹脂がポリウレタン樹脂である場合は、ポリウレタン樹脂に限らず、多くの化学構造の熱接合シートと熱接合することがある。
また、熱接合機能が、第1発明の第4のケースで開示したような熱接合用コーティング層によって補完されている場合は、バックアップする樹脂の化学種が限定されないか、一部を除き限定されないことがある。
樹脂をバックアップして厚さを増した円偏光レンズが、レンズ全域にわたり同じ厚さである場合は、矯正度数の入らないレンズ、いわゆるプラノレンズである。プラノレンズは、レンズの厚さが大きくなるにつれ、レンズ端部の視線にマイナスサイドの屈折力がつくようになり、歪んだ視覚を生じやすい。その対応策として、球面レンズやトーリックレンズのフロントカーブとバックカーブの中心をずらしたり、曲率半径を変更したりする光学設計によって、レンズ端面に向かって徐々に厚みを減らし、プラスサイドの屈折力をつけ、マイナスサイドの屈折力をキャンセルすることが好ましく行われている。
プラノレンズの場合は、バックアップ樹脂を成形した後のレンズの中心厚さは、0.7〜3mm程度、好ましくは0.8〜2.8mmであることが推奨される。0.7mm未満の厚さではインサート射出成形しにくいのと、耐衝撃強度に対する補強効果が十分でないことがある。また、3mmを超えると、レンズが重くなるのと、眼鏡にした場合、レンズ端部がぶ厚くなり、見栄えのよくない傾向がある。
また、第2発明に沿って作られた円偏光レンズのフロントカーブ曲率と、バックアップ後の円偏光レンズのバックカーブ曲率を変えることにより、プラスサイドやマイナスサイドの度数を付けた円偏光矯正レンズを作ることができる。
また、いわゆるセミフィニッシュレンズ(セミレンズと略称されることがある)を作ることができ、バックアップした樹脂部分のマイナスサイド、あるいはプラスサイドの研磨によって、円偏光矯正レンズを作ることができる。
本発明の第3発明に沿って作られた円偏光レンズ、ならびに立体視用の円偏光1眼レンズ、ならびに立体視用の円偏光1眼グラス型レンズは、レンズ表面にハードコート加工することができる。ハードコートとしては、シラン系、エポキシ系などの熱硬化型ハードコートと、アクリル系、エポキシ系などの活性光線硬化型ハードコートが一般的である。
ハードコートは通常0.5〜15μm程度の膜厚で付与するが、密着性や耐衝撃性の向上を目的に、アクリレート系やウレタン系などのプライマーコート層をレンズ表面に設け、プライマーコート層の上にハードコート層を設けることも行われる。
また、本発明の第3発明の円偏光レンズ、ならびに立体視用の円偏光1眼レンズ、ならびに立体視用の円偏光1眼ゴーグルレンズは、反射防止加工や防曇加工が行われることもある。
本発明の4番目(以下、第4発明とする)は、本発明の第2発明、および第3発明で開示された円偏光レンズの位相差機能部分(しばしば凸面側になる)を対物側、熱接合機能部分、またはバックアップ樹脂側(しばしば凹面側になる)を接眼側として枠入れした立体視用の円偏光2眼眼鏡、または立体視用の円偏光2眼ゴーグルに関する。
円偏光レンズを嵌める2眼の眼鏡フレーム、または2眼のゴーグルフレームの形状やタイプは特に限定しないが、レンズがしっかり固定されものが好ましい。
フレームへの枠入れは、片眼に右回りの円偏光レンズを入れ、もう片眼に左回りの円偏光レンズを入れることを鉄則にする。
ここで、直線偏光子の透過軸方向が水平方向(2つのレンズを結ぶ方向を眼鏡の水平方向とする)になるように円偏光レンズを眼鏡フレームに枠入れすると、正面方向(あるいは位相差機能部分側)から見て、位相差シートの遅相軸方向が時計短針の10時半と4時半を結ぶ傾きになっているのが右回りの円偏光レンズ、位相差シートの遅相軸方向が時計短針の1時半と7時半を結ぶ傾きになっているのが左回りの円偏光レンズになる。
第4発明には、このほか、第3発明で作った右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを横並びにして配置した立体視用の円偏光1眼レンズを光学部品として嵌めた立体視用の円偏光1眼眼鏡や、フレームとレンズが一体になった立体視用の円偏光1眼グラス型レンズを光学部品として嵌めた立体視用の円偏光1眼グラスが含まれる。
このほか、右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを横並びにして配置した立体視用の円偏光1眼ゴーグルレンズを光学部品とし、それにベルト等を装着した立体視用の円偏光1眼ゴーグルが含まれる。
実施例1
直線偏光子として、ポリビニルアルコールのシートを1軸方向に4倍延伸して、厚さ約30μmのシートにし、さらに2色染料で染色し、偏光度98%のポリビニルアルコール系直線偏光子を調製した。
熱接合シートとして、粘度平均分子量がおよそ25000のポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトL−1250Z)を押し出し成形して、厚さ0.3mm程度の透明シートを調製した。
ポリカーボネート樹脂製熱接合シートの片面に、ウレタン系接着剤を厚さ25μm程度に塗布し、先に調製したポリビニルアルコール系直線偏光子を重ね、貼付した。
次いで、直線偏光子のもう片面に、ウレタン系接着剤を厚さ25μm程度に塗布し、ポリシクロオレフィン系の1/4λ位相差シート(厚さ46μm、株式会社美館イメージング(MeCan Imaging Co.)製)を重ね合わせて貼付した。
重ね合わせるにあたり、直線偏光子の延伸方向と、位相差シートの延伸方向を、右回りの円偏光が得られるように45度の角度をつけ、右回りの円偏光板を調製した。
同様にして、直線偏光子の延伸方向と、位相差シートの延伸方向を、左回りの円偏光が得られるように45度の角度をつけ、左回りの円偏光板を調製した。
得られた右回り円偏光板も左周り円偏光板も、厚さが0.43mm程度であった。
実施例2
トリアセチルセルロース(TAC)偏光板(厚さ約0.23mm。偏光度99.5%。2色性染料でドーピングした厚さ約30μmのポリビニルアルコール製直線偏光子の両面を、キャスト成形して調製した厚さ約100μmのTAC製の保護シートで挟み、接着剤で貼付したもの。住友化学製)の片面に、実施例1で用いた位相差シートを、実施例1と同様にして貼付した。
TAC偏光板のもう片面に、実施例1で用いたポリカーボネート樹脂製熱接合シートを、実施例1と同様にして貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、厚さが0.55mm程度であった。
実施例3
実施例1で用いたTAC偏光板の片面に、実施例1で用いた位相差シートを、実施例1と同様にして貼付した。
熱接合シートとして、透明ナイロン(“トロガミド”CX−7323、ヒュルス社製)を押し出し成形して、厚さ0.3mm程度の透明シートを調製した。
TAC偏光板のもう片面に、上記透明ナイロン製の熱接合シートを、実施例1と同様にして貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、厚さが0.55mm程度であった。
実施例4
実施例1で用いた直線偏光子に、キャスト成形して調製した厚さ約100μmのTAC製の保護シートを、実施例1と同様にして貼付した。さらに、直線偏光子のもう一方の側に、熱接合性のある保護シートとして、実施例1で用いたポリカーボネート樹脂シートを用い、実施例1と同様にして貼付した。得られた積層体は、偏光度98%、厚さ約0.48mmの直線偏光板である。
得られた直線偏光板のTAC製保護シートの上に、実施例1で用いた位相差シートを、実施例1と同様にして貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、片面が位相差シート、もう片面が熱接合性のあるポリカーボネート樹脂シートであり、厚さが約55mmであった。
実施例5
実施例4で調製した直線偏光板のTAC製の保護シートの上に、厚さ約0.3mmの位相差板(ポリシクロオレフィン系樹脂でできた厚さ約46μmの1/4λ位相差シートの両面にTAC製の保護シートを貼付したもの。株式会社美館イメージング製)を重ね合わせ、実施例1と同様にして貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、片面が位相差板、もう片面が熱接合性のあるポリカーボネート樹脂シートであり、厚さが0.8mm程度であった。
実施例6
保護シートとして、板間重合して調製した厚さ約200μmのポリメチルメタクリレート樹脂シートに、アクリル系接着剤を厚さ約25μm塗布し、実施例1で用いたポリビニルアルコール系直線偏光子の片面に貼付した。
次いで、ポリビニルアルコール系直線偏光子のもう片面に、同様にして板間重合して調製した、厚さ約200μmのポリメチルメタクリレート樹脂シートを貼付した。
得られたものは、ポリビニルアルコール系直線偏光子の両面にポリメチルメタクリレート樹脂シートを貼付した、厚さ約0.48mmのポリアクリル偏光板である。
同偏光板の片面に、実施例1で用いた位相差シートを、実施例1と同様にして貼付し、右回りと左回りの円偏光板を調製した。得られた円偏子板の厚さは約0.55mmである。
同円偏光板の熱接合機能側(ポリメチルメタクリレート樹脂側)に、架橋性ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー。共栄社化学社のウレタンアクリレートUA−306H)のイソプロピルアルコール溶液を塗布した。
塗布後、熱風オーブンに入れてイソプロピルアルコールを除去して、架橋性ウレタンアクリレート層を形成した。次いで、架橋性ウレタンアクリレート層に紫外線を照射して熱接合用コーティング層を調製した。熱接合用コーティング層の厚さは35μmである。
実施例7
円偏光板として、ポラテクノ製の右回り円偏光板と左周りの円偏光板(いずれも、厚さが約0.3mm。同円偏光板は、ポリカーボネート製1/4λ位相差シート/TAC製保護シート/ヨウ素でドーピングしたポリビニルアルコール系直線偏光子/TAC製保護シートの順に積層貼付されたもの)を用いた。
熱接合シートとして、実施例6で用いたポリメチルメタクリレート樹脂シートを用いた。同ポリメチルメタクリレート樹脂シートにアクリル系接着剤を厚さ約25μm塗布したものを、上記の円偏光板のTAC製保護シートの側に貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、厚さが0.53mm程度であった。
実施例8
実施例1で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
円形に打ち抜いた円偏光板を、70℃の熱風乾燥機に5時間入れて乾燥処理した。次いで、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側になるようにして、曲率半径87mmの金型を備えた吸引式フリー曲げ加工装置にセットした。吸引式フリー曲げ加工装置は、予め金型温度が125℃に設定してある。
円偏光板は、吸引式フリー曲げ加工装置にセットすると同時に、金型側から減圧吸引される。その状態で130℃の熱風オーブンに入れ、0.05MPaの条件で吸引する。およそ10分後に熱風オーブンから取り出し、減圧吸引を停止する。
曲げ加工したレンズを金型から取り出し、フランジ状の周縁部を切り取った。得られたレンズは、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズであった。
実施例9
実施例2で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
実施例8と同様にして、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例10
実施例3で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
金型温度が100℃、熱風オーブン温度が115℃以外は実施例8と同様にして、曲げ加工し、右回りと左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例11
実施例4で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
実施例8と同様にして、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例12
実施例5で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
実施例8と同様にして、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例13
実施例6で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
金型温度が90℃、熱風オーブン温度が95℃以外は実施例8と同様にして曲げ加工し、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例14
実施例7で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
金型温度が90℃、熱風オーブン温度が95℃以外は実施例8と同様にして曲げ加工し、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例15
射出成形機の成形室にインサート成形用の6C(カーブ)、つまり、曲率半径87mmの金型を取り付けた。
成形室を開け、凸面側の金型に、実施例8で調製した円偏光レンズの凸面側を先頭にして挿入し、凸面側の金型に設けた細孔を通じて減圧吸引し、円偏光レンズを凸面側の金型に固定した。
成形室を閉じ、円偏光レンズの凹面側(熱接合機能側)にポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量25000、帝人化成製、パンライトL−1250Z)を射出成形して、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例16
実施例9で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例15と同様にしてポリカーボネート樹脂を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例17
実施例10で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例15と同様にして透明ナイロン(“トロガミド”CX−7323、ヒュルス社製)を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例18
実施例11で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例15と同様にしてポリカーボネート樹脂を射出成形し、直径86mm、中心厚さが10mmの右回りと左回りの円偏光セミレンズを作った。
実施例19
実施例12で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例15と同様にしてポリカーボネート樹脂を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例20
実施例13で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例15と同様にしてポリウレタン樹脂(BASF社製、エラストランET595)を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例21
実施例14で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例15と同様にしてポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学製、スミペックスMGSS)を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例22
実施例8〜14で調製した右回りと左回りの円偏光レンズについて、それぞれの実施例ごとに、眼鏡フレーム形状に合うように周縁部をレンズカット機で研磨した。
それぞれの実施例ごとに、右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズをペアリングする。ペアリングした右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを、凸面を対物側、凹面を接眼側にして眼鏡フレームに枠入れする。
できあがった眼鏡は、右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを1眼づつ嵌めた円偏光眼鏡である。
調製後の円偏光眼鏡を目にかけ、インターリーブフィルター方式の立体テレビを観賞したところ、いずれの眼鏡も良好に立体視ができた。
実施例23
直線偏光子として、ポリビニルアルコールのシートを1軸方向に4倍延伸して、厚さ約30μmのシートにし、さらに2色染料で染色し、偏光度98%のポリビニルアルコール系直線偏光子を調製した。
熱接合シートとして、粘度平均分子量がおよそ25000のポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトL−1250Z)を押し出し成形して、厚さ0.3mm程度の透明シートを調製した。
ポリカーボネート樹脂製熱接合シートの片面に、ウレタン系接着剤を厚さ25μm程度に塗布し、先に調製したポリビニルアルコール系直線偏光子を重ね、貼付した。
次いで、直線偏光子のもう片面に、ウレタン系接着剤を厚さ25μm程度に塗布し、ポリカーボネート系の1/4λ位相差シート(厚さ60μm、GS−120 帝人化成(株)製)を重ね合わせて貼付した。
重ね合わせるにあたり、直線偏光子の延伸方向と、位相差シートの延伸方向を、右回りの円偏光が得られるように45度の角度をつけ、右回りの円偏光板を調製した。
同様にして、直線偏光子の延伸方向と、位相差シートの延伸方向を、左回りの円偏光が得られるように45度の角度をつけ、左回りの円偏光板を調製した。
得られた右回り円偏光板も左周り円偏光板も、厚さが0.43mm程度であった。
実施例24
トリアセチルセルロース(TAC)偏光板(厚さ約0.23mm。偏光度99.5%。2色性染料でドーピングした厚さ約30μmのポリビニルアルコール製直線偏光子の両面を、キャスト成形して調製した厚さ約100μmのTAC製の保護シートで挟み、接着剤で貼付したもの。住友化学製)の片面に、ウレタン系接着剤を厚さ25μm程度に塗布し、ポリアミド製(ガラス転移温度は略165℃)の1/4λ位相差シート(厚さ70μm)を貼付した。
TAC偏光板のもう片面に、実施例23で用いたポリカーボネート樹脂製熱接合シートを、実施例23と同様にして貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、厚さが0.63mm程度であった。
実施例25
実施例24で用いたTAC偏光板の片面に、実施例23で用いた位相差シートを、実施例23と同様にして貼付した。
熱接合シートとして、透明ナイロン(“トロガミド”CX−7323、ヒュルス社製)を押し出し成形して、厚さ0.3mm程度の透明シートを調製した。
TAC偏光板のもう一方の片面に、上記透明ナイロン製の熱接合シートを、実施例23と同様にして貼付した。得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、厚さが0.6mm程度であった。
実施例26
実施例23で用いた直線偏光子に、キャスト成形して調製した厚さ約100μmのTAC製の保護シートを、実施例23と同様にして貼付した。さらに、直線偏光子のもう一方の側に、熱接合性のある保護シートとして、実施例1で用いたポリカーボネート樹脂シートを用い、実施例23と同様にして貼付した。得られた積層体は、偏光度98%、厚さ約0.48mmの直線偏光板である。
得られた直線偏光板のTAC製保護シートの上に、実施例23で用いた位相差シートを、実施例23と同様にして貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、片面が位相差シート、もう片面が熱接合性のあるポリカーボネート樹脂シートであり、厚さが約0.58mmであった。
実施例27
実施例26で用いた直線偏光板のTAC製の保護シートの上に、厚さ約0.3mmの位相差板(ポリシクロオレフィン系樹脂でできた厚さ約46μmの1/4λ位相差シートの両面にTAC製の保護シートを貼付したもの。株式会社美館イメージング製)を重ね合わせ、実施例23と同様にして貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、片面が位相差板、もう片面が熱接合性のあるポリカーボネート樹脂シートであり、厚さが0.8mm程度であった。
実施例28
保護シートとして、板間重合して調製した厚さ約200μmのポリメチルメタクリレート樹脂シートに、アクリル系接着剤を厚さ約25μm塗布し、実施例23で用いたポリビニルアルコール系直線偏光子の片面に貼付した。
次いで、ポリビニルアルコール系直線偏光子のもう片面に、同様にして板間重合して調製した、厚さ約200μmのポリメチルメタクリレート樹脂シートを貼付した。
得られたものは、ポリビニルアルコール系直線偏光子の両面にポリメチルメタクリレート樹脂シートを貼付した、厚さ約0.48mmのポリアクリル偏光板である。
同偏光板の片面に、実施例23で用いた位相差シートを、実施例23と同様にして貼付し、右回りと左回りの円偏光板を調製した。得られた円偏子板の厚さは約0.55mmである。
同円偏光板の熱接合機能側(ポリメチルメタクリレート樹脂側)に、架橋性ウレタンアクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー。共栄社化学社のウレタンアクリレートUA−306H)のイソプロピルアルコール溶液を塗布した。
塗布後、熱風オーブンに入れてイソプロピルアルコールを除去して、架橋性ウレタンアクリレート層を形成した。次いで、架橋性ウレタンアクリレート層に紫外線を照射して熱接合用コーティング層を調製した。熱接合用コーティング層の厚さは35μmである。
実施例29
円偏光板として、ポラテクノ製の右回り円偏光板と左周りの円偏光板(いずれも、厚さが約0.3mm。同円偏光板は、ポリカーボネート製1/4λ位相差シート/TAC製保護シート/ヨウ素でドーピングしたポリビニルアルコール系直線偏光子/TAC製保護シートの順に積層貼付されたもの)を用いた。
熱接合シートとして、実施例28で用いたポリメチルメタクリレート樹脂シートを用いた。同ポリメチルメタクリレート樹脂シートにアクリル系接着剤を厚さ約25μm塗布したものを、上記の円偏光板のTAC製保護シートの側に貼付した。
得られた右回り円偏光板と左周り円偏光板は、いずれも、厚さが0.53mm程度であった。
実施例30
実施例29で用いた右回りと左回りの円偏光板(ポラテクノ製)のそれぞれを長方形に打ち抜き、70mm×80mmの打ち抜きシートを作った。いずれの打ち抜きシートも、直線偏光子の吸収軸方向(あるいは、延伸方向)が70mm辺と平行になるよう、透過軸方向(あるいは、延伸方向に対し、直角の方向)が80mm辺と平行になるようにした。
右回りの円偏光打ち抜きシート1枚と左回りの円偏光打ち抜きシート1枚を、直線偏光子機能側を下にしてペアリングし、両シートの70mm辺を接触させ、接触部分の位相差機能側を幅5mmの塩ビ粘着テープ(日東電工製)で固定した。
その結果、右回りと左回りの円偏光板を左右に配置した、70mm×160mmの打ち抜きシート接合体ができあがる。この打ち抜きシート接合体の直線偏光子の透過軸方向は、160mm辺と平行になるように統一されている。
次いで、この打ち抜きシート接合体の直線偏光子機能側に、実施例23と同様にして、厚み0.3mmのポリカーボネート樹脂製熱接合シートを貼付した。
次いで、位相差機能側に貼付していた固定用の塩ビ粘着テープを剥離、除去した。
この結果、右回りと左回りの円偏光板が、中央線を境に、左右に配置され、直線偏光子の透過軸方向が160mm辺と平行になる、寸法70mm×160mm、厚みが約0.62m程度の円偏光1眼レンズ用、もしくは円偏光1眼ゴーグルレンズ用の円偏光1眼用シートができあがった。
実施例31
実施例23で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
円形に打ち抜いた円偏光板を、70℃の熱風乾燥機に5時間入れて乾燥処理した。次いで、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側になるようにして、曲率半径87mmの金型を備えた吸引式フリー曲げ加工装置にセットした。吸引式フリー曲げ加工装置は、予め金型温度が125℃に設定してある。
円偏光板は、吸引式フリー曲げ加工装置にセットすると同時に、金型側から減圧吸引される。その状態で130℃の熱風オーブンに入れ、0.05MPaの条件で吸引する。およそ10分後に熱風オーブンから取り出し、減圧吸引を停止する。
曲げ加工したレンズを金型から取り出し、フランジ状の周縁部を切り取った。得られたレンズは、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズであった。
実施例32
実施例24で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
実施例31と同様にして、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例33
実施例25で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
金型温度が100℃、熱風オーブン温度が115℃以外は実施例31と同様にして、曲げ加工し、右回りと左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例34
実施例26で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
実施例31と同様にして、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例35
実施例27で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形に打ち抜いた。
実施例31と同様にして、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例36
実施例28で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれについて、直径90mmの円形状にエンドミル加工した。
金型温度が90℃、熱風オーブン温度が95℃以外は実施例31と同様にして曲げ加工し、曲率半径が約87mmの、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側(熱接合コーティング)となる、右回りと左回りの円偏光レンズを調製した。
実施例37
実施例29で調製した右回りと左回りの円偏光板のそれぞれをエンドミル加工し、片面が位相差板側、もう片面が熱接合機能側(ポリメチルメタクリレート樹脂シート)となる、直径85mmのフラット円形レンズを調製した。このレンズについては、曲げ加工を行わない。
実施例38
実施例30で調製した円偏光1眼用シートを円偏光1眼レンズにするため、右回りと左回りの円偏光板が、中央の境界線を挟み、左右に配置され、かつ、左右対称形状となる長楕円型に打ち抜いた。
曲率半径260mmとなる1眼用金型を備えた吸引式フリー曲げ加工装置にセットし、実施例31と同じ条件で、曲げ加工を行った。
得られた曲げ加工レンズは、曲率半径が約260mmあり、凸面が位相差機能側、凹面が熱接合機能側となる、右回りと、左回りの円偏光板が左右に並列一体化された円偏光1眼レンズである。
実施例39
射出成形機にインサート成形用の6C(カーブ)、つまり、曲率半径87mmの金型を取り付けた。
金型を開き、凹面側のキャビ側金型に、実施例31で調製した円偏光レンズの凸面側(位相差板側)を先頭にして挿入し、凹面側の金型に設けた細孔を通じて減圧吸引し、円偏光レンズを凹面側の金型に固定した。
金型を閉じ、円偏光レンズの凹面側(熱接合機能側)にポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量25000、帝人化成製、パンライトL−1250Z)を射出成形して、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例40
実施例32で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例39と同様にしてポリカーボネート樹脂を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例41
実施例33で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例39と同様にして透明ナイロン(“トロガミド”CX−7323、ヒュルス社製)を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例42
実施例34で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例39と同様にしてポリカーボネート樹脂を射出成形し、直径86mm、中心厚さが10mmの右回りと左回りの円偏光セミレンズを作った。
実施例43
実施例35で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例39と同様にしてポリカーボネート樹脂を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例44
実施例36で調製した円偏光レンズの熱接合側に、実施例39と同様にしてポリウレタン樹脂(BASF社製、エラストランET595)を射出成形し、直径86mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光プラノレンズを作った。
実施例45
射出成形機にインサート成形用のフラット金型を取り付けた。実施例37で調製したフラット円形レンズの熱接合側に、実施例39と同様にしてポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学製、スミペックスMGSS)を射出成形し、外形85mm、中心厚さが2mmの右回りと左回りの円偏光フラットレンズを作った。
実施例46
射出成形機に、フレームとレンズが一体になった一眼グラス用レンズを作るインサート成形用金型を取り付けた。同金型は、曲率半径約260mm(2C)に設計されている。
実施例38で調製した円偏光1眼レンズの熱接合機能側に、実施例39と同様の条件で、ポリカーボネート樹脂を射出成形して、中心厚み2mmの円偏光1眼グラス型レンズを作った。
実施例47
実施例39〜45の円偏光レンズについては、ハードコート処理を行った。
実施例31〜37の右回りと左回りの円偏光レンズ、ならびに、実施例39〜45のハードコート加工後の右回りと左回りの円偏光レンズについて、それぞれの実施例ごとに、眼鏡フレーム形状に合うように周縁部をレンズカット機で研磨した。
それぞれの実施例ごとに、右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズをペアリングする。ペアリングした右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを、凸面(位相差機能側)を対物側、凹面(熱接合機能側)を接眼側にして眼鏡フレームに枠入れする。
できあがった眼鏡は、右回りの円偏光レンズと左回りの円偏光レンズを1眼ずつ枠入れした円偏光2眼眼鏡である。
上記の各円偏光2眼眼鏡を目にかけ、円偏光方式の立体テレビを観賞したところ、いずれの眼鏡も良好に立体視ができた。
また、実施例39〜45で調製した右回りと左回りの円偏光レンズを枠入れした円偏光2眼眼鏡は、光学性能が良く、各レンズが樹脂でバックアップされてレンズ自体に剛性があるため、眼鏡をねじっても、レンズが眼鏡フレームから脱落することはなかった。
特に、実施例40で調製した円偏光レンズを枠入れした円偏光2眼眼鏡は、円偏光ムラが少なく、円偏光方式の立体テレビを観賞したところ、特に良好に立体視ができた。
実施例48
実施例46で調製した円偏光1眼グラス型レンズをハードコート処理後、つる部品を取り付け、円偏光1眼グラスを完成した。
調製した円偏光1眼グラスを目にかけ、円偏光方式の立体映画を観賞したところ、いずれの眼鏡も良好に立体視ができた。
また、同円偏光1眼グラスは、光学性能が良く、レンズが樹脂でバックアップされてレンズ自体に剛性があるため、グラスをねじっても、グラスが変形しにくかった。