JP2016053210A - 圧粉体を用いた機械部品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属粉末を一軸加工プレス等により成形する圧粉体を機械部品として用いるため、焼結工程を経ずに、より低温での処理し、製造された焼結製品と同等の強度を有する機械部品の提供。【解決手段】酸化物皮膜を形成可能な金属粉末を主原料とする原料粉末を加圧成形して圧粉体を得、400〜550°で水蒸気処理により、前記圧粉体を構成する前記金属粉末の粒子間に酸化物皮膜を形成させ、100MPaを超える圧環強さを有する機械部品。前記圧粉体が、寸法測定性による圧粉密度で5.0〜7.6g/cm2である機械部品。【効果】処理温度が通常の焼結工程より低い為、寸法変化が小さく、その為、焼結後のサイジングによる寸法矯正工程が省略でき、製品及び成型用金型の設計の自由さが増し、容易となり、処理時のエネルギーも削減できる。【選択図】なし
Description
本発明は、圧粉体を用いた機械部品およびその製造方法に関する。より詳しく述べるならば、本発明は、金属粉末を一軸加工プレス等で成形することにより得た圧粉体を、焼結させることなく高強度化させた機械部品およびその製造方法に関するものである。
従来、粉末冶金の分野においては、金属粉末をはじめとする原料粉末を混合し、圧粉成形した後、800℃を越える高温の炉中で焼結させて製品とするのが一般的であった。
以下では、金属粉末を成形したままのものを圧粉体と呼び、さらに焼結工程を経た焼結体と区別することとする(JIS Z 2500:2000参照)。
以下では、金属粉末を成形したままのものを圧粉体と呼び、さらに焼結工程を経た焼結体と区別することとする(JIS Z 2500:2000参照)。
粉末冶金とは、JIS Z 2500:2000によれば、金属粉の製造、又は金属粉からフォーミングと焼結工程によって製品を製造する冶金技術の部門のことで、鋳造や鍛造とは異なる技術であり、以下のような工程で製品を製造するのが一般的である。
(1)原料となる金属、潤滑剤、黒鉛等粉末の混合
(2)加圧プレス等による圧粉成形
(3)融点以下での焼結
(4)矯正(サイジング)
(5)(必要に応じた)熱処理、含油等の後加工
(1)原料となる金属、潤滑剤、黒鉛等粉末の混合
(2)加圧プレス等による圧粉成形
(3)融点以下での焼結
(4)矯正(サイジング)
(5)(必要に応じた)熱処理、含油等の後加工
中でも、(3)の焼結工程は、鉄系材料の場合800℃以上の高温域で処理されるのが一般的であり、そのコストは、製造コスト全体の1/4〜1/2を占める。さらに、高温での焼結工程を経ることにより、圧粉体が膨張‐収縮するため、目的の寸法ないし精度に収めるために(4)の矯正工程が不可欠である。
焼結工程を経ることで、金属粒子間の融着、ネッキングが起こり、強度が向上するのであるが、より低温での処理で十分な強度が担保されれば、製造コストが低減できるだけでなく、寸法変化を抑制でき、矯正工程も省略することが可能となる。
従来、焼結以外の、圧粉体を高強度化させる方法としては、次のような検討がなされている。
特許文献1には、粉末冶金における圧粉体の強化方法が記載されている。すなわち、成形用潤滑剤として金属石けんを添加した金属粉末を圧縮成形した後、その圧粉体を金属石けんの融点以上、脱ろう温度以下の温度に加熱することにより、冷却後その機械的強度が著しく増加するというものである。そのメカニズムは、圧粉体に内在する空孔中の金属石けんが、熱処理により溶融し、連続した層を形成して凝固し、この層の密度が圧粉体の強度を高めるものと推定されている(特許文献1の特許請求の範囲、第2欄第10〜12行、第3欄第22〜25行参照)。
特許文献2には、圧粉体を焼結することなく水蒸気黒化処理により結合して鉄系「焼結」部品を製造することが記載されている。そのメカニズムは、水蒸気黒化処理により、圧粉体の全表面を酸化膜で覆ったものになり、表面粒子相互が結合固化して全体として所定の強度を有する物体になる、というものである(特許文献2の第2ページ左下欄第8〜11行)。
特許文献1に記載された技術の目的は、あくまで圧粉体を成形プレス等から焼結炉まで搬送する間の欠けや割れを防止することにあり、そのままでは製品としての強度を有していない。したがって、当然ながら、焼結工程の省略を示唆するものではない。結局はその後、高温での焼結工程を踏まなければ、製品として使用できるだけの強度が担保できないばかりか、焼結前の処理であるため、通常の焼結製品に比べて1工程増えることになり、却ってコストアップの要因となる。
特許文献2に記載された技術は、圧粉体を水蒸気黒化処理し、酸化膜により粒子相互を結合すると共に耐食性を付与するというものである。しかしながら、「或る程度の強度、耐久性を有する」(第2ページ右上欄外第7〜8行)とあるが、実際、どの程度の強度が得られるものか、全く不明である。要するに、「磁性材料の部品の用途にはあまり強度が要求されないものもあり、かかる用途として製造が容易で安価な部品を提供する」(第2ページ左上欄第10〜12行)ことを意図したものである。具体例として挙げてある軟磁性材料部品のように、高い強度が求められていない用途に限られ、実際、圧粉体を高強度化させる上で重要と考えられる、圧粉体の材質や密度、水蒸気処理条件などの詳細については何ら明らかにされていない。
本発明は、この焼結工程に代えて他の、より低温での処理を採用することで、従来の技術により製造された焼結製品と同等の強度を有する機械部品を、より低コストで提供せんとするものである。
ここで、JIS Z 2507「焼結軸受‐圧環強さ試験方法」による圧環強さが100MPa以上であれば、機械部品としての使用に耐える強度を有するものとする。
また、JIS Z 2500「粉末や(冶)金用語」によれば、寸法変化とは、焼結によって生じる圧粉体寸法の増減と定義されているが、ここでは焼結工程ではなく水蒸気処理によって生じる圧粉体寸法の増減を意味するものとする。
また、JIS Z 2500「粉末や(冶)金用語」によれば、寸法変化とは、焼結によって生じる圧粉体寸法の増減と定義されているが、ここでは焼結工程ではなく水蒸気処理によって生じる圧粉体寸法の増減を意味するものとする。
かかる目的を達成するための手段として、本発明者らは、水蒸気処理に着目した。一般に、水蒸気処理(steam treatment)はホモ処理とも呼ばれ、酸化雰囲気中で鉄系焼結材料(焼結させた後のもの)を500〜560℃程度に加熱しながら水蒸気と反応させ、表面に主に四酸化三鉄(Fe3O4)の皮膜を生成させるようにしたものである。その皮膜厚さは3〜7μm程度と言われている。水蒸気処理は、一般鋼材への適用例は少ないが、焼結金属に対する安価な表面処理として、古くから広く利用されてきた。主な処理目的は、防錆、耐摩耗性の向上、封孔の3つであり、その他にも、表面硬さや被削性の向上にも有効とされている(例えば、特許文献3参照)。
本発明は、圧粉体の材質や密度、水蒸気処理条件等を適正化することで、高強度圧粉体を得る手法を明らかにするものである。ここで、高強度とは、圧粉体の耐欠け性向上や、軟磁性材料部品程度の強度ではなく、焼結含油軸受等の機械要素部品として使用するに耐えられるような水準であり、具体的には圧環強さ100MPa以上を指す。
従来の焼結体は、原料粉末を一軸加圧等で圧粉成形した後、融点以下(鉄系材料の場合800〜1,300℃)の高温に加熱することで、粒子間の融着(ネッキング)を形成させ、高強度化させている。それに対して、本発明は、酸化雰囲気中で特定の密度の圧粉体を400〜550℃の高温の水蒸気と反応させることにより、鉄粉表面に酸化物皮膜を形成させる。酸化物は、原料粉末に鉄系粉末を使用した場合には主に四酸化三鉄(Fe3O4)である。原料粉末の粒子間に形成される酸化物皮膜が、粉体粒子同士のネッキングの役割を代替し、その結果、圧粉体が高強度化する。
処理温度が通常の焼結工程に比べて低いため、寸法変化が小さい(処理前後で±0.1%以下)。そのため、従来焼結後に寸法を矯正するために必要であったサイジング工程を省略することが可能となる。また、製品および圧粉成形用金型の設計が容易となる。さらに、処理温度が低いことから、処理時に必要な(電気または熱)エネルギーが削減できる上、処理工程も削減でき、製品の製造工程の短縮とコスト低減が可能となる。
水蒸気処理は雰囲気処理であるため、成形すべき製品の形状や寸法の大小によらず適用可能である。
また、本発明は、酸化物皮膜を形成させることが可能な材料であれば適用可能である。したがって、鉄系材料に限らず、アルミニウムやマグネシウム、クロム等、イオン化傾向が大きな金属材料であれば適用可能であると考えられる。
なお、原料粉末の製法に関しては、アトマイズ法、還元法、スタンプ法、カルボニル法などが知られているが、本発明は、原料粉末の製法いかんに拘らず適用可能である。
また、本発明は、酸化物皮膜を形成させることが可能な材料であれば適用可能である。したがって、鉄系材料に限らず、アルミニウムやマグネシウム、クロム等、イオン化傾向が大きな金属材料であれば適用可能であると考えられる。
なお、原料粉末の製法に関しては、アトマイズ法、還元法、スタンプ法、カルボニル法などが知られているが、本発明は、原料粉末の製法いかんに拘らず適用可能である。
さらに、圧粉体の圧粉手法の代表例として一軸加圧成形を挙げたが、酸化物皮膜を形成し得る金属基材が露出していれば、適用可能である。具体的には、多軸CNCプレスによる成形、射出成形(MIM)、さらに追加で冷間静水圧加圧(CIP)成形したものなども可能であり、粉末が押し固められていれば、圧粉成形の手法は問わない。
一般に、圧粉成形時には被成形粉末と金型および粉末同士の潤滑を担保するために、金属石けんやアミドワックスなどの潤滑剤粉末が混合され、その潤滑剤粉末は圧粉体中に残存する。従来の手法では、その後の焼結工程において高温に保持されるために分解し、焼結後の製品中には含まれない。しかし、本発明を適用した場合、圧粉体の密度や処理温度、保持時間によっては潤滑剤成分が残存し得る。そのため、水蒸気処理に先立ち、あらかじめ潤滑剤成分を分解・除去するための脱脂工程を設け、脱脂工程後に連続して水蒸気処理をする、といった手法を取ることが望ましい。ただし、脱脂工程を設けずに、潤滑剤を含有したまま水蒸気処理をしても、高強度化が図れることは確認済みである。
通常、焼結部品においては密度が高い方が強度は向上する。一方、圧粉密度が高すぎると、圧粉体内部まで水蒸気が侵入できず、酸化物皮膜の形成が圧粉体のごく表層に限られるため、強度は向上するものの好ましくない。しかしながら、圧粉密度が低すぎると、取扱い時に欠けや割れが発生してしまう(ラトラ値が大きい)、粒子間距離が長過ぎて酸化物皮膜が粒子間にわたって形成されない、といった懸念がある。以上の理由から、圧粉密度は5.0〜7.6g/cm3、好ましくは5.3〜7.2g/cm3、より好ましくは6.0g/cm3以上7.0g/cm3未満の範囲とするのがよい。圧粉密度は寸法測定法による。
上記の機械部品は、表面が酸化鉄被膜で覆われているため、同一組成の圧粉体に通常の焼結処理を施した焼結体と比べて表面硬度が高く、耐摩耗性に優れている。また、本発明者らの検証により、上記の機械部品が、油を介して相手材と摺動する部品(例えば油潤滑環境で使用されるすべり軸受、ギヤ、カム等)である場合、焼結体よりも優れた初期なじみ特性を有することが明らかになった。この理由は明らかではないが、図1に示すように、上記の機械部品(後述する実施例8に係る圧粉体)の表面には、鉄粉11の間に残存する数十μmオーダーの空孔12の他、厚さ数μm程度の酸化鉄被膜13の内部に、数十nmオーダーのミクロな空孔14が形成されているため、このミクロな空孔14に含浸された油が、初期なじみ特性に寄与したのではないかと考えられる。
この発明によれば、次のような効果が得られる。
焼結工程に比べて格段に低い温度域(例:鉄系の場合400〜550℃)で、酸化雰囲気中で圧粉体に高温の水蒸気を作用させることで、粒子間の結合(酸化物皮膜)を形成し、高強度化することができる。なお、ここで言う高強度とは、具体的には圧環強さ100MPa以上を意味する。圧環強さ100MPa以上であれば、従来技術(特許文献1、2)に比べて十分高強度であり、機械部品としても実用に耐える強度である。例えば従来の焼結含油軸受に代替し得る機械要素部品を提供することができる。
また、処理温度が低いため、高温で焼結する場合に比べて寸法変化が小さい。したがって、その後の矯正(サイジング)工程を省略することが可能となる。同じ理由で、製造工程が短縮され、コストが低減できる。例えば、水蒸気処理前後の寸法変化は、圧粉体に対して±0.1%未満に抑えられる。そのため、製品および圧粉成形用の金型を設計するのが容易になる。
さらに、圧粉体の形状、寸法によらず適用可能である。
水蒸気処理後は酸化物皮膜で覆われるため、防錆処理が不要となる。
処理温度によっては、500℃を超える温度で変性、分解するような添加剤、例えば、しゅう動性や潤滑性を有する材料などを添加し、製品の高機能化が図れる。
水蒸気処理後は酸化物皮膜で覆われるため、防錆処理が不要となる。
処理温度によっては、500℃を超える温度で変性、分解するような添加剤、例えば、しゅう動性や潤滑性を有する材料などを添加し、製品の高機能化が図れる。
以下、具体的な実施例を用いて本発明の実施の形態を説明する。
基材金属粉末として還元鉄粉を、第二金属成分として電解銅粉を、圧粉成形用潤滑剤としてアミドワックス系粉末潤滑剤を用いて、実施例1〜13並びに比較例1〜10の試験片を作製し、各種試験を実施した。試験片はリング状で、寸法は次のとおりである。
内径:φ12mm
外径:φ20mm
長さ:7mm
内径:φ12mm
外径:φ20mm
長さ:7mm
実施例1〜5
還元鉄粉に対して、電解銅粉を2wt.%、潤滑剤を0.7wt.%添加し、混合したものを合金工具鋼SKD11製の金型に充填し、各種成形圧力において一軸加圧成形することにより、圧粉密度(g/cm3)の異なる5個の円筒状圧粉体を得た。その後、圧粉体中に含まれる潤滑剤成分を、350℃において90分間脱脂処理した上で、500℃で40分間水蒸気処理して、実施例1〜5を得た。実施例1〜5の圧粉密度(g/cm3)は次のとおりであった。
実施例1:5.3
実施例2:6.0
実施例3:6.5
実施例4:7.0
実施例5:7.2
還元鉄粉に対して、電解銅粉を2wt.%、潤滑剤を0.7wt.%添加し、混合したものを合金工具鋼SKD11製の金型に充填し、各種成形圧力において一軸加圧成形することにより、圧粉密度(g/cm3)の異なる5個の円筒状圧粉体を得た。その後、圧粉体中に含まれる潤滑剤成分を、350℃において90分間脱脂処理した上で、500℃で40分間水蒸気処理して、実施例1〜5を得た。実施例1〜5の圧粉密度(g/cm3)は次のとおりであった。
実施例1:5.3
実施例2:6.0
実施例3:6.5
実施例4:7.0
実施例5:7.2
実施例6〜9
水蒸気処理の処理温度の違いが与える影響を確かめるために、実施例3相当の、圧粉密度6.5g/cm3の圧粉体を、実施例1〜5と同様に350℃で90分間脱脂した上で、次の4種類の処理温度において40分間水蒸気処理して得たものを、実施例6〜9とした。
実施例6:350℃
実施例7:400℃
実施例8:450℃
実施例9:550℃
水蒸気処理の処理温度の違いが与える影響を確かめるために、実施例3相当の、圧粉密度6.5g/cm3の圧粉体を、実施例1〜5と同様に350℃で90分間脱脂した上で、次の4種類の処理温度において40分間水蒸気処理して得たものを、実施例6〜9とした。
実施例6:350℃
実施例7:400℃
実施例8:450℃
実施例9:550℃
実施例10、11
水蒸気処理の処理時間の違いが与える影響を確かめるために、処理時間を変えたものを2つ準備した。すなわち、実施例3相当の、圧粉密度6.5g/cm3の圧粉体を、実施例1〜5と同様に350℃で90分間脱脂した上で、500℃において、次の時間だけ水蒸気処理して得たものを実施例10、実施例11とした。
実施例10:20分間
実施例11:80分間
水蒸気処理の処理時間の違いが与える影響を確かめるために、処理時間を変えたものを2つ準備した。すなわち、実施例3相当の、圧粉密度6.5g/cm3の圧粉体を、実施例1〜5と同様に350℃で90分間脱脂した上で、500℃において、次の時間だけ水蒸気処理して得たものを実施例10、実施例11とした。
実施例10:20分間
実施例11:80分間
実施例12、13
材質の差異が与える影響を確かめるために、材質を変えたものを2つ準備した。すなわち、実施例3と同様に、各粉末を圧粉密度6.5g/cm3になるように一軸加圧成形し、実施例1〜5と同様に350℃で90分間脱脂した上で、500℃で40分間水蒸気処理した。各実施例で用いた粉末の組成は次のとおりである。
実施例12:還元鉄粉のみ(Cu 0%)に対して、潤滑剤を0.7wt.%添加した粉末
実施例13:還元鉄粉に対して電解銅粉を20wt.%、潤滑剤を0.7wt.%添加した粉末
材質の差異が与える影響を確かめるために、材質を変えたものを2つ準備した。すなわち、実施例3と同様に、各粉末を圧粉密度6.5g/cm3になるように一軸加圧成形し、実施例1〜5と同様に350℃で90分間脱脂した上で、500℃で40分間水蒸気処理した。各実施例で用いた粉末の組成は次のとおりである。
実施例12:還元鉄粉のみ(Cu 0%)に対して、潤滑剤を0.7wt.%添加した粉末
実施例13:還元鉄粉に対して電解銅粉を20wt.%、潤滑剤を0.7wt.%添加した粉末
比較例1〜5
実施例1〜5の、350℃、90分間の脱脂工程およびその後の水蒸気処理工程を省略したもの、つまり、圧粉成形したままの状態のものを、比較例1〜5とした。
実施例1〜5の、350℃、90分間の脱脂工程およびその後の水蒸気処理工程を省略したもの、つまり、圧粉成形したままの状態のものを、比較例1〜5とした。
比較例6、7
実施例12、13の、350℃、90分間の脱脂工程およびその後の水蒸気処理工程を省略したもの、つまり、圧粉成形したままの状態のものを、比較例6、7とした。
実施例12、13の、350℃、90分間の脱脂工程およびその後の水蒸気処理工程を省略したもの、つまり、圧粉成形したままの状態のものを、比較例6、7とした。
比較例8〜10
比較例6、3、7に記載のFeのみ、Fe+2%CuおよびFe+20%Cuの3種類の圧粉体を、1100℃で30分間焼結したものを、それぞれ比較例8〜10とした。
比較例8:Feのみ(比較例6を焼結したもの)
比較例9:Fe+2%Cu(比較例3を焼結したもの)
比較例10:Fe+20%Cu(比較例7を焼結したもの)
比較例6、3、7に記載のFeのみ、Fe+2%CuおよびFe+20%Cuの3種類の圧粉体を、1100℃で30分間焼結したものを、それぞれ比較例8〜10とした。
比較例8:Feのみ(比較例6を焼結したもの)
比較例9:Fe+2%Cu(比較例3を焼結したもの)
比較例10:Fe+20%Cu(比較例7を焼結したもの)
評価方法
得られた試験片の機械的特性は、JIS Z 2507に準拠して実施した圧環強さ測定の結果を基に評価した。使用した試験装置は、株式会社島津製作所製、オートグラフAG−5000Aである。圧環強さとは、圧環荷重から一定の方法で求められる円筒状焼結体又は圧粉体の強さをいい、圧環荷重とは、円筒形の焼結体又は圧粉体を軸に平行な二面で圧縮して割れが生じ始めたときの荷重をいう。
得られた試験片の機械的特性は、JIS Z 2507に準拠して実施した圧環強さ測定の結果を基に評価した。使用した試験装置は、株式会社島津製作所製、オートグラフAG−5000Aである。圧環強さとは、圧環荷重から一定の方法で求められる円筒状焼結体又は圧粉体の強さをいい、圧環荷重とは、円筒形の焼結体又は圧粉体を軸に平行な二面で圧縮して割れが生じ始めたときの荷重をいう。
表1に、圧環強さの判定基準を示す。すなわち、同表の左欄のように圧環強さ(単位:MPa)を50未満、50以上100未満、100以上150未満、150以上の4段階に分け、それぞれ右欄の記号×、△、○、◎で表す。
また、画像寸法測定器(株式会社キーエンス製、IM−6000)を用いて、水蒸気処理前と水蒸気処理後のそれぞれにつき、試験片の内径と外径を測定し、処理前の寸法に対する処理前後の変化量の百分率を計算し、寸法変化率とした。なお、寸法変化率の判定には、内径又は外径のうち、大きい方の数値を採用した。
表2に、寸法変化率の判定基準を示す。すなわち、同表の左欄のように寸法変化率(単位:%)を±0.1以上、±0.1未満、±0.05未満の3段階に分け、それぞれ右欄の記号△、○、◎で表す。
次に、評価結果について述べる。
(イ)圧粉密度について
圧粉密度が圧環強さ及び寸法変化率に対して与える影響を確かめるため、圧粉密度の異なる実施例1〜5の2%Cu−Fe圧粉体に対して、500℃で40分間、水蒸気処理を実施した。この場合の圧環強さおよび寸法変化率の判定結果を表3に示す。
(イ)圧粉密度について
圧粉密度が圧環強さ及び寸法変化率に対して与える影響を確かめるため、圧粉密度の異なる実施例1〜5の2%Cu−Fe圧粉体に対して、500℃で40分間、水蒸気処理を実施した。この場合の圧環強さおよび寸法変化率の判定結果を表3に示す。
実施例1〜5は、水蒸気処理によりすべて圧環強さが向上している。具体的には、圧粉密度5.3g/cm3の実施例1が100MPa未満であるのを除けば、圧粉密度6.0g/cm3以上の実施例2〜5で圧環強さは100MPa以上となっている。ただし、圧粉密度7.0g/cm3の実施例4、同じく7.2g/cm3の実施例5では寸法変化率が若干悪化した。しかも、実施例5は、圧粉密度7.0g/cm3の実施例4よりも圧環強さが劣っている。このことから、圧粉密度は必ずしも高い方がよいわけではないことが分かる。
試験結果に照らし、圧粉密度は5.0〜7.6g/cm3、好ましくは5.3〜7.2g/cm3、より好ましくは6.0g/cm3以上7.0g/cm3未満の範囲とするのがよい。とくに、圧粉密度が6.0g/cm3以上7.0g/cm3未満の範囲にある実施例2及び実施例3は、圧環強さに関しても、寸法変化率に関しても、機械部品として十分である。
水蒸気処理を実施しなかった比較例1〜5は、いずれも圧環強さが50MPa未満であった。なお、比較例1〜5は、水蒸気処理も焼結も経ていないことから、寸法変化率に関しては測定対象としなかった。
圧粉密度が6.5g/cm3の比較例9は、1100℃×30minの焼結を経ていることから、圧環強さは150MPa以上であったものの、寸法変化率が±0.1%以上であった。
圧粉密度が6.5g/cm3の比較例9は、1100℃×30minの焼結を経ていることから、圧環強さは150MPa以上であったものの、寸法変化率が±0.1%以上であった。
(ロ)処理温度について
水蒸気処理の処理温度が圧環強さ及び寸法変化率に与える影響を確かめるため、圧粉密度6.5g/cm3の2%Cu−Fe圧粉体に対し、処理温度を変えて、それぞれ40分間、水蒸気処理を実施した。この場合の圧環強さ及び寸法変化率の判定結果を表4に示す。
水蒸気処理の処理温度が圧環強さ及び寸法変化率に与える影響を確かめるため、圧粉密度6.5g/cm3の2%Cu−Fe圧粉体に対し、処理温度を変えて、それぞれ40分間、水蒸気処理を実施した。この場合の圧環強さ及び寸法変化率の判定結果を表4に示す。
圧環強さに関しては、処理温度が350℃の実施例6、400℃の実施例7、550℃の実施例9では100MPa以上であり、処理温度450℃の実施例8と処理温度500℃の実施例3では150MPa以上であった。
最大寸法変化率は、いずれの実施例でも±0.1%未満であり、処理温度が500℃以下の実施例3、8、7、6では±0.05%未満であった。
なお、処理温度350℃の実施例6では一部赤錆(Fe2O3)が発生しており、当初目的としたFe3O4皮膜のみを形成することはできなかった。実施例6よりも処理温度が高かった実施例7、8、3、9では赤錆の発生は認められなかった。
最大寸法変化率は、いずれの実施例でも±0.1%未満であり、処理温度が500℃以下の実施例3、8、7、6では±0.05%未満であった。
なお、処理温度350℃の実施例6では一部赤錆(Fe2O3)が発生しており、当初目的としたFe3O4皮膜のみを形成することはできなかった。実施例6よりも処理温度が高かった実施例7、8、3、9では赤錆の発生は認められなかった。
試験結果に照らし、水蒸気処理の処理温度は400℃以上、好ましくは400℃以上550℃以下、より好ましくは450℃以上500℃以下の範囲とするのがよい。
処理温度に関しては、500℃の実施例3と550℃の実施例9の試験結果を対比すれば、処理温度は必ずしも高いほど良いというわけではないことが分かる。とくに、圧環強さも、寸法変化率も、従来の水蒸気処理の一般的な処理温度とされる500〜560℃よりも低い処理温度が好適であるとの知見を得た。
処理温度に関しては、500℃の実施例3と550℃の実施例9の試験結果を対比すれば、処理温度は必ずしも高いほど良いというわけではないことが分かる。とくに、圧環強さも、寸法変化率も、従来の水蒸気処理の一般的な処理温度とされる500〜560℃よりも低い処理温度が好適であるとの知見を得た。
(ハ)処理時間について
水蒸気処理の処理時間が圧環強さ及び寸法変化率に与える影響を確かめるため、圧粉密度6.5g/cm3の2%Cu−Fe圧粉体に対し、500℃で、処理時間を変えて、水蒸気処理を実施した。この場合の圧環強さ及び寸法変化率の判定結果を表5に示す。
水蒸気処理の処理時間が圧環強さ及び寸法変化率に与える影響を確かめるため、圧粉密度6.5g/cm3の2%Cu−Fe圧粉体に対し、500℃で、処理時間を変えて、水蒸気処理を実施した。この場合の圧環強さ及び寸法変化率の判定結果を表5に示す。
表5からわかるように、実施例10、3、11はいずれも圧環強さが150MPa以上であり、寸法変化率も±0.1%未満であった。この結果に照らし、水蒸気処理の処理時間は20分以上処理すれば十分な効果が得られると考える。
なお、比較例3は、圧環強さは50MPa未満であったが、寸法変化率に関しては、水蒸気処理も焼結も実施していないことから測定対象としなかった。比較例9は、圧環強さは150MPa以上あるものの、寸法変化率は±0.1%以上であった。
(ニ)材質の差異について
材質が圧環強さ及び寸法変化率に与える影響を確かめるため、基材となる還元鉄粉に対して異なる割合の電解銅粉を添加した粉末を用いて、圧粉密度6.5g/cm3の圧粉体を成形し、500℃で40分間の水蒸気処理を実施した。この場合の各試験片の圧環強さ及び寸法変化率の判定結果を表6に示す。
材質が圧環強さ及び寸法変化率に与える影響を確かめるため、基材となる還元鉄粉に対して異なる割合の電解銅粉を添加した粉末を用いて、圧粉密度6.5g/cm3の圧粉体を成形し、500℃で40分間の水蒸気処理を実施した。この場合の各試験片の圧環強さ及び寸法変化率の判定結果を表6に示す。
還元鉄粉に対する電解銅粉の割合は、実施例12が0wt.%、実施例3が2wt.%、実施例13が20wt.%であったが、いずれも圧環強さは100MPa以上であった。これらの調査した組成においては、鉄比率を80wt.%まで削減しても100MPa以上の圧環強さを達成すること、しかも、いずれの組成においても寸法変化率は±0.1%未満であることがわかる。
また、1100℃で焼結した比較例8、9、10の場合、寸法変化率は±0.1%以上であることから、水蒸気処理のみとした方が寸法変化は小さいことが分かる。
なお、比較例6、3、7は、圧環強さは50MPa未満であったが、寸法変化率に関しては、水蒸気処理も焼結も実施していないことから測定対象としなかった。
なお、比較例6、3、7は、圧環強さは50MPa未満であったが、寸法変化率に関しては、水蒸気処理も焼結も実施していないことから測定対象としなかった。
次に、本発明の実施例の摩擦摩耗特性を評価するために、以下の試験を行った。
圧粉体に水蒸気処理を施した上記の実施例2と、水蒸気処理を施していない比較例2の圧粉体に1100℃×30minの焼結処理を施した比較例11の2種類の試験片を作製した。試験片数は各3個とした。これらの試験片を、潤滑油(油圧作動油 シェルテラスS2M68、ISO粘度VG68相当)中に浸漬し、70℃で1時間以上真空含浸させた。
摩擦摩耗試験は、図2に示す試験機を用いて行った。この試験機は、回転軸21を中心に揺動可能なアーム22と、アーム22の下方に設けられ、回転軸23に固定された相手材24と、相手材24の外周面と摺動するフェルトパッド25とを有する。試験片Wは、アーム22の下面に取り付けられる。相手材24は、外径φ40mm、外径面副曲率R60mm、表面粗さ0.01μmRa以下、ビッカース硬度が780HV以上であり、例えばSUJ2焼き入れ鋼で形成される。フェルトパッド25には、試験片Wに含浸させた潤滑油と同じ潤滑油を含浸させている。アーム22に所定のおもり26を取り付けて、試験片Wを所定の荷重で上方から相手材24に対して押し付けた状態で、ヘルツの最大接触面圧0.5GPa、室温(25℃)下、0.05m/sの回転速度で相手材24を30分間回転させた。このときに、試験片Wと相手材24との間に発生する摩擦力を、アーム22に設けたロードセル27により検出した。また、回転終了後、試験片Wに形成された圧痕の寸法から、比摩耗量を算出した。
上記の試験で得られた以下の3項目から、実施例2(水蒸気処理品)と比較例11(焼結品)の摩擦摩耗特性を評価した。
・摩擦係数の収束値
・初期なじみ特性
・比摩耗量
尚、この試験において、「摩擦係数の収束値」とは、試験終盤10分間の摩擦係数の平均値のことを言う。また、初期なじみ特性とは、試験初期の摩擦係数の推移のことを言う。
・摩擦係数の収束値
・初期なじみ特性
・比摩耗量
尚、この試験において、「摩擦係数の収束値」とは、試験終盤10分間の摩擦係数の平均値のことを言う。また、初期なじみ特性とは、試験初期の摩擦係数の推移のことを言う。
摩擦係数の収束値の結果を図3に示す。同図に示されているように、実施例2の摩擦係数の収束値は、比較例11の摩擦係数の収束値とほぼ同等である。
摩擦係数の推移の結果を図4に示す。同図に示されているように、摩擦係数の推移は実施例2と比較例11とで異なっていた。具体的には、比較例11は、試験開始当初は0.2を超える高い摩擦係数を示し、その後約1分で0.15程度まで減少したが、最終的な水準に収束するまでに5〜10分程度要した。一方、実施例2は、試験開始当初から低い摩擦係数を示し、0あるいは数秒以内に試験終盤と同等の水準まで摩擦係数が減少し、そのまま低い水準を維持していた。このことから、水蒸気処理品である実施例2は、焼結品である比較例11よりも優れた初期なじみ特性を有していると言える。
比摩耗量の結果を図5に示す。同図に示されているように、比較例11の比摩耗量は400〜800×10−10mm3/(N・m)であったのに対し、実施例2は50〜250×10−10mm3/(N・m)であった。このように、実施例2の比摩耗量は、比較例11の比摩耗量の1/2以下であった。このことから、水蒸気処理品である実施例2は、焼結品である比較例11よりも優れた耐摩耗性を有していると言える。
以上の結果から、水蒸気処理品である実施例2は、焼結品である比較例11と同等の摩擦係数の収束値を有すると共に、焼結品である比較例11よりも優れた初期なじみ特性及び耐摩耗性を有していることが確認された。
次に、上記と同様の摩擦摩耗試験を、図2のフェルトパッド25を撤去して外部給油の無い状態で行った。試験時間は5分間とした。また、この試験における「摩擦係数の収束値」は、試験終了時の摩擦係数とした。
外部給油無しの摩擦摩耗試験における摩擦係数の収束値の結果を図6に示す。同図に示されているように、実施例2の摩擦係数の収束値は、比較例11の摩擦係数の収束値とほぼ同等である。
外部給油無しの摩擦摩耗試験における摩擦係数の推移の結果を図7に示す。同図に示されているように、比較例11は、試験開始当初は0.15を超える高い摩擦係数を示し、約1分間かけて収束値と同等の水準に低下している。これに対し、実施例2は、試験開始当初から終了までほぼ同等の低い摩擦係数を示している。このことから、水蒸気処理品である実施例2は、焼結品である比較例11よりも優れた初期なじみ特性を有していると言える。
外部給油無しの摩擦摩耗試験における比摩耗量の結果を図8に示す。同図に示されているように、比較例11の比摩耗量は3000〜7000×10−10mm3/(N・m)であったのに対し、実施例2は1600〜2500×10−10mm3/(N・m)であった。このように、実施例2の比摩耗量は、比較例11の比摩耗量の1/2以下であった。このことから、水蒸気処理品である実施例2は、焼結品である比較例11よりも優れた耐摩耗性を有していると言える。
以上の結果から、外部給油の無い場合であっても、外部給油のある場合と同様に、水蒸気処理品である実施例2は、焼結品である比較例11と同等の摩擦係数の収束値を有すると共に、焼結品である比較例11よりも優れた初期なじみ特性及び耐摩耗性を有していることが確認された。
以上、具体的な実施例をもってこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、上に述べた実施の形態に限らず、特許請求の範囲に悖ることなく種々の改変を加えて実施をすることが可能である。
この発明の機械部品は、100MPaを超える圧環強さを有するため、従来の焼結金属部品の代替品として使用することができる。焼結金属部品の具体例としては、例えば、摺動部品や磁性鉄心などが挙げられる。摺動部品としては、潤滑油を介して相手材と摺動するものが挙げられ、例えば油潤滑環境下で使用される軸受、ギヤ、カム等が挙げられる。軸受としては、油を介して相手材(軸)を摺動支持するすべり軸受、具体的には焼結含油軸受や流体動圧軸受が挙げられる。また、本発明の機械部品は、高負荷用途の焼結機械部品の代替に限らず、より軽負荷用途の焼結金属部品の代替ももちろん可能である。
Claims (9)
- 酸化物皮膜を形成可能な金属粉末を主原料とする原料粉末を加圧成形した圧粉体であって、前記金属粉末の粒子間に酸化物皮膜が形成され、100MPaを超える圧環強さを有する機械部品。
- 前記圧粉体は、寸法測定法による圧粉密度が5.0〜7.6g/cm3の範囲である請求項1の機械部品。
- 前記酸化物皮膜は水蒸気処理によって形成させたものである請求項1又は2の機械部品。
- 前記水蒸気処理の処理温度が400℃以上550℃以下である請求項3の機械部品。
- 潤滑油を介して相手材と摺動する摺動面を有する請求項1〜4何れかの機械部品。
- 酸化物皮膜を形成可能な金属粉末を主原料とする原料粉末を加圧成形して圧粉体を得、水蒸気処理により、前記圧粉体を構成する前記金属粉末の粒子間に酸化物皮膜を形成させることからなる、100MPaを超える圧環強さを有する機械部品の製造方法。
- 前記圧粉体は、寸法測定法による圧粉密度が5.0〜7.6g/cm3の範囲である請求項6の機械部品の製造方法。
- 前記圧粉体中に含まれる、成形用に添加した粉末潤滑剤成分を脱脂させた後、前記水蒸気処理を行う、請求項6又は7の機械部品の製造方法。
- 前記水蒸気処理の処理温度が400℃以上550℃以下である請求項6〜8何れかの機械部品の製造方法。
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