JP2016043964A - 包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 底材と蓋材のヒートシール樹脂層がプロピレン系樹脂であっても、低温シール性(夾雑物シール性およびホットタック性)が良好であり、手指による加圧圧着のみで再封止が可能な包装体を提供する。【解決手段】 表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、剥離樹脂層(C)、ヒートシール樹脂層(D)が順次に積層されてなる多層フィルムで、層(B)が、損失正接のピーク温度が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成される層からなり、層(D)が、ビカット軟化点80℃以上105℃以下であり、重量平均分子量ピーク値が40万以上50万以下、重量平均分子量と数平均分子量との比が1.5以上2.3以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂を主成分とする層からなる包装体。【選択図】 図1

Description

本発明は、多層フィルムを蓋材または底材とする包装体に関し、さらに詳細には、食品や医薬品などの包装に好適に用いられる、再封可能な包装体に関するものである。
使用する度に開封と再封を繰り返す化粧品や生理用品、あるいは一度では消費しきれない量の食品や医薬品などの包装手段としては、従来、再封機能を有する各種の包装体が用いられていた。この包装体は、開封後に残存する内容物の酸化劣化、あるいは吸湿、乾燥などによる変敗を防ぐことができ、例えば、プラスチック製のジッパーをラミネートしたジッパータイプの包装体が知られている。しかし、この包装体は繰り返し開封可能であり、優れた耐久性を有するものの、ジッパーなどの付属物を包装体に取り付けるための専用装置が必要であり、またそれに伴う加工工程も必要であるため、製造コストが嵩み、生産効率も低下するなどの問題点がある。
一方、ジッパーなどの付属物を取り付けることなく包装体自体に再封機能を付与させることのできる多層フィルムも開発されている。例えば、特許文献1および2には、表面樹脂層と、スチレン−ジエン系ゴム質ブロック共重合体の水素添加物と粘着付与剤とを含有してなる粘着樹脂層と、ヒートシール樹脂層とからなる多層フィルムであって、包装体の底材から蓋材として用いられた前記多層フィルムを剥がす際に粘着樹脂層がヒートシール部分において再封可能な粘着状態で露出可能な多層フィルムが開示されている。
しかし、これらの多層フィルムは、粘着樹脂層に必須成分としてゴム質ブロック共重合体の水素添加物と、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、石油炭化水素樹脂などの粘着付与樹脂とを必須成分として多量に含有している。この多層フィルムを食品用包装体に用いた場合、前記粘着付与樹脂が油脂性食品の疑似溶媒であるn−ヘプタンを用いた溶出試験において抽出量が増加する傾向にあるため、食品衛生面からはできるだけ粘着樹脂層に粘着付与樹脂を混合しない方が好ましい。
さらに、特許文献2および3には、ヒートシール樹脂層(特許文献3では溶着層に相当する)と、このヒートシール樹脂層とヒートシール可能な熱可塑性樹脂層とをヒートシールし、次いで引き剥がした場合に、ヒートシール樹脂層が破断すると共にヒートシール樹脂層と粘着樹脂層(特許文献3においては中間接着層に相当する)の層間が剥離して、粘着樹脂層がヒートシール部分において再封可能な粘着状態で露出することを特徴とする多層フィルムを容器の蓋材として使用した包装体が開示されている。
しかしながら、これらの包装体においては、粘着樹脂層とヒートシール樹脂層とが直接隣接しているため開封後にヒートシール樹脂層に添加された滑剤やアンチブロッキング剤等の添加剤が経時的に、露出したヒートシール樹脂層の表面にブリードするなどして、粘着樹脂層との再封剥離強度が低下してしまう懸念がある。
また、特許文献4には、基材の少なくとも一面に粘着樹脂層(粘着剤層)とヒートシール剤層とがこの順に形成されたヒートシール用の包装材料であって、前記粘着樹脂層と前記ヒートシール剤層の間の接着強度がヒートシール剤層とヒートシールの対象となる層の間のヒートシール強度よりも小さい包装材料が開示されている。
具体的には、実施例として、ポリエステルと二軸延伸ポリプロピレンとからなるラミネートフィルム(厚さ50μm)基材の二軸延伸ポリプロピレン面上に、スチレン10質量%とジエン系炭化水素90質量%からなるランダム共重合体の水素添加物をTダイによる押出しラミネートにより25μmの厚さにした粘着樹脂層をラミネートし、さらにこの粘着樹脂層上に溶剤可溶型のアクリル系ヒートシールラッカーをコーティングしたヒートシール剤層を積層した包装材料が例示されている。この包装材料をタブ付の円形に切り抜き、蓋材としてポリスチレン容器にヒートシールした包装体の場合、タブをつまんで引っ張ると、粘着樹脂層とヒートシール剤層との界面で剥離が生じ、剥離した蓋を容器に被せて指等で圧着すると粘着樹脂層がフランジ部に再粘着し、再度封をすることが記載されている。
しかしながら、上記の構成を有する包装体は、ヒートシール剤をコーティングする前段階で、粘着樹脂が外部に露出する工程が発生し、大気中に浮遊している塵、埃などが粘着樹脂に付着し、再封性が低下してしまう場合があり、さらにコーティングのためのコーターや乾燥設備などの特別な設備も必要となり、製造コストがアップするなどの問題がある。
本発明者らは、特定の粘弾性特性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを粘着樹脂層の主成分として用い、粘着樹脂層とヒートシール樹脂層との層間に剥離樹脂層を配することにより上記課題を解決できることを見出し、商業化することに成功した(特許文献5〜9)。
特許文献5〜9において、ヒートシール樹脂層(D)は、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーをそれぞれ主成分とする樹脂が好適に用いられていると開示されている。
また、特許文献6、7、8において、ヒートシール樹脂層(D)は、剥離樹脂層(C)との間の層間剥離強度を、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との間の層間剥離強度よりも大きくするため、ヒートシール樹脂層(D)に接着性樹脂を含有させることができると開示されている。
しかしながら、ヒートシール層(D)に接着性樹脂を配した場合、ヒートシール層の滑り性が低下するため、巻きずれやコブ、幅ぶれなどのフィルムロールの不良が発生し、生産性に劣る問題があった。特に、夏場の高温環境でロールを保管した場合、接着樹脂や接着樹脂のベース原料に含有する低分子量成分(ベタツキ成分)により、ブロッキングが発生し、フィルムの巻きを解く際にヒートシール面が荒れて透明性が損なわれる、という問題があった。また、ドラミラミネーションや押出ラミネーションなどのラミネート基材を積層させる工程で、表面樹脂層(A)上にブロッキング防止パウダーを散布する必要がある。
また、従来の蓋材の中でもポリプロピレン樹脂をシーラントとする蓋材は、シール温度が高く、かつ夾雑物シール性が劣っている。一方、蓋材のヒートシール層において低温シール性を上げたホットメルトタイプの樹脂を用いた場合、ホットタック性が悪く、シール直後に応力をかけると、層間剥離を生じてしまうという問題がある。
特開2003−175567号公報 特開2004−75181号公報 特表2000−500722号公報 特開2005−41539号公報 特許第4749119号公報 特許第4902237号公報 特許第5106795号公報 特許第5121244号公報 特許第5117225号公報
本発明は、従来の多層フィルムの課題を解決するためになされたものであり、その解決課題は、被シール体である包装体の底材または蓋材のヒートシール樹脂がプロピレン系樹脂であっても、耐ブロッキング性に優れて、低温シール性(夾雑物シール性およびホットタック性)が良好であり、食品衛生面に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する、再封可能な包装体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の粘弾性特性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを粘着樹脂層の主成分として用い、粘着樹脂層とヒートシール樹脂層との層間に剥離樹脂層を配し、ヒートシール樹脂層に特定のビカット軟化点と分子量分布を有するランダムポリプロピレン系接着樹脂を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、剥離樹脂層(C)、ヒートシール樹脂層(D)が順次に積層されてなる多層フィルムを包装体の蓋材または底材の一方に用い、当該多層フィルムのヒートシール樹脂層(D)を被シール体である包装体の底材または蓋材にヒートシールしてなる包装体であり、当該包装体のヒートシール部において、前記粘着樹脂層(B)と前記剥離樹脂層(C)とが層間剥離した時に、両層が再封可能な状態で露出する包装体であって、前記粘着樹脂層(B)が、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成される層からなり、前記ヒートシール樹脂層(D)が、ビカット軟化点80℃以上105℃以下であり、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が400000以上500000以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1.5以上2.3以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂を主成分として構成される層からなることを特徴とする包装体に存する。
本発明によれば、耐ブロッキング性に優れ、プロピレン樹脂との夾雑物シール性及びホットタック性に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する再封可能な包装体を提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
本発明で規定する多層フィルムを蓋材に用いた本発明の包装体の部分断面図 図1で示す包装体において、蓋材の一部を容器から剥離した状態の包装体の部分断面図 図1で示す包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図 本発明で規定する多層フィルムを底材に用いた本発明の包装体の部分断面図 図4で示す包装体において、蓋材の一部を容器から剥離した状態の包装体の部分断面図 図4で示す包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図
以下、本発明の包装体を構成する、再封機能付き多層フィルム、蓋材、底材、および包装体について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分として構成される」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上100質量%以下、好ましくは85質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下を占めることを意味する。
本発明の包装体を構成するフィルムは、表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、剥離樹脂層(C)、ヒートシール樹脂層(D)が順次に積層されている多層フィルムであって、前記粘着樹脂層(B)が動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上のスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成される層からなり、前記ヒートシール樹脂層(D)が、ビカット軟化点80℃以上105℃以下であり、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が400000以上500000以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1.5以上2.3以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂を主成分として構成される層からなる多層フィルムである。
そして、この多層フィルムは次の機能を有する。即ち、多層フィルムを包装体の蓋材または底材の一方に用い、当該多層フィルムのヒートシール樹脂層(D)を被シール体である包装体の底材または蓋材のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで該ヒートシール部から前記多層フィルムを剥離したときに、前記ヒートシール部において、前記粘着樹脂層(B)と前記剥離樹脂層(C)とが層間剥離し、かつ前記粘着樹脂層(B)が前記剥離樹脂層(C)と再封可能な状態で露出する再封機能を有する。
まず、上記フィルムの表面樹脂層(A)について説明する。表面樹脂層(A)は、熱可塑性樹脂(a)を主成分として構成される層であり、剥離時に表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)との間の層間剥離強度が、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との間の層間剥離強度よりも大きくなる層構成であれば特に制限されるものではなく、単層であっても多層であってもよい。
表面樹脂層(A)の主成分として用いられる熱可塑性樹脂(a)は、粘着樹脂層(B)、剥離樹脂層(C)、およびヒートシール樹脂層(D)の主成分として用いられる樹脂の種類を考慮して適宜選択することが好ましい。熱可塑性樹脂(a)は、溶融押出温度が概ね180℃以上300℃以下の範囲であることから、この範囲内で溶融押出可能な熱可塑性樹脂が好適に用いられる。具体的に熱可塑性樹脂(a)としては、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等)、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独あるいは2種以上の混合樹脂組成物として用いることができ、単層構成または多層構成を形成できる。
本発明では、成型加工性、製造コスト、透明性などを考慮すると、熱可塑性樹脂(a)としては、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エステル系樹脂、およびスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
前記エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA)、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(E−VA−GMA)、エチレン−無水マレイン酸共重合体(E−MAH)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、等のエチレン系共重合体;さらにはエチレン−アクリル酸共重合体の金属中和物、エチレン−メタクリル酸共重合体の金属中和物等が挙げられる。これらは、一種のみを単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
前記プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン等との共重合体が挙げられ、共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれもが使用できる。また、立体規則性については、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、アタクチック構造、ステレオブロック構造などいずれであってもよい。これらは、一種のみを単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
前記アミド系樹脂としては、まず、脂肪族ポリアミド重合体として、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられる。具体的には、6ナイロンと称されるε−カプロラクタムの単独重合体や66ナイロンと称されるポリヘキサメチレンアジパミド、あるいは、これらの共重合体である6−66ナイロン等が挙げられる。また、芳香族ポリアミド重合体として、キシリレンジアミンと炭素数が6以上12以下のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有している樹脂等が使用できる。具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミドなどの単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセパカミド共重合体などの共重合体が挙げられる。これらは、一種のみを単独で、2種以上を混合して使用してもよい。
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、エチレン含有率が29%以上好ましくは32%以上であり、かつ47モル%以下、好ましくは44モル%以下であり、またケン化度が90%以上、好ましくは95%以上のものが好適に用いられる。エチレン含有量とケン化度が上記範囲のグレードを選択することにより、フィルムのガスバリアー性や力学強度等を良好なものとすることができる。これらは、一種のみを単独で、2種以上を混合して使用してもよい。
前記エステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合樹脂、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を全グリコール単量体単位中に15モル%以上50モル%以下含有する低結晶性あるいは非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン/ネオペンチルテレフタレート共重合樹脂、ポリ乳酸系樹脂に代表される脂肪族ポリエステル樹脂類などが挙げられる。
また、前記エステル系樹脂にハードセグメントとして高融点高結晶性の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルなどを有する熱可塑性ポリエステル系エラストマーも適宜混合してもかまわない。これらのエラストマーは、一種のみを単独で、または2種以上を適宜混合して使用してもよい。
前記スチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレンン(HIPS)、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステルからなるスチレン系共重合体の連続相に分散粒子としてゴム状弾性体を1質量%以上20質量%以下含有した樹脂などが挙げられる。これらは、一種のみを単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
多層フィルムにガスバリアー性、耐ピンホール性などの機能を付与するためには、表面樹脂層(A)を2層以上の層構成とし、かつエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とする層および/またはアミド系樹脂等を主成分とする層を少なくとも1層有することが好ましい。ただし、表面樹脂層(A)を多層構成とした場合には、多層を構成する各樹脂層間の層間剥離強度は、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との間の層間剥離強度よりも大きくなるような接着性樹脂を適宜選択し使用することも重要である。
ここで、前記接着性樹脂としては、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体、およびプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂に、アクリル酸、あるいは、メタアクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、またはメチルアクリレート、メチルメタアクリレート、若しくはグリシジルメタアクリレートなどの一塩基性不飽和脂肪酸のエステル化合物、またはマレイン酸、フマル酸若しくはイタコン酸などの二塩基性脂肪酸の無水物などを化学的に結合させたオレフィン系接着性樹脂が好適に用いられる。このような接着性樹脂の具体例としては、三井化学(株)製の商品名「アドマー」や三菱化学(株)製の商品名「モディック」等を例示することができる。
表面樹脂層(A)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の成分を適宜添加しても構わない。具体的には、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤等の成分が挙げられる。表面樹脂層(A)が多層構成である場合には、特定の層にのみ添加しても、あるいは、全ての層に添加しても構わない。
次に、粘着樹脂層(B)について説明する。粘着樹脂層(B)は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分として構成される層であることが重要である。ここで、前記損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上にあれば、剥離時に露出した粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)を手や指による加圧圧着のみで実用性のある再封性が発現するため好ましい。この再封性には、常温での粘弾性特性、特に、損失正接(tanδ)の値も影響しているものと推察され、常温での損失正接(tanδ)の値が0.1以上(上限値は、通常、0.6程度)であることがさらに好ましい。また、スチレン系熱可塑性エラストマー(b)の損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度の上限値は、エラストマーとしての特性から、通常、10℃以下である。さらに、本発明の包装体は、冷蔵庫に代表される冷蔵設備などの低温での環境下でも使用されることがあるため、これらのことを考慮すると、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度の好ましい範囲は、−35℃以上、より好ましくは−25℃以上であり、5℃以下、より好ましくは0℃以下の範囲である。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)としては、スチレン、あるいはα−メチルスチレンなどのスチレン同族体と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体であることが好ましい。ここで、共役ジエン部分を構成する共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、これらは共重合体中に単独または2種以上が混合された状態で含まれていてもよい。ただし、この共役ジエン部分のビニル結合を主とした二重結合が残った場合の熱安定性や耐候性は極めて悪いので、これを改良するため、二重結合の80%以上、好ましくは95%以上に水素を添加したものを用いることが好ましい。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)の損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は、主に、スチレン含有量と共役ジエン部分のビニル結合量(例えば、ブタジエンの場合は1,2結合、イソプレンの場合は1,2結合と3,4結合の結合量)に依存する。本発明においては、スチレン含有量が1質量%以上、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、共役ジエン部分のビニル結合量が40モル%以上、好ましくは50モル%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、(株)クラレ製の商品名「ハイブラー7311」、旭化成(株)製の商品名「タフテックH1221」、JSR(株)製の商品名「ダイナロン1320P」等を例示することができる。
前記粘着樹脂層(B)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の樹脂や成分を適宜添加しても構わない。具体的には、低結晶性あるいは非晶性のオレフィン系樹脂、軟化剤、オイル(鉱物油)、安定剤(酸化防止剤等)、流動パラフィン等が挙げられる。
次に、剥離樹脂層(C)について説明する。剥離樹脂層(C)は、熱可塑性樹脂(c)を主成分として構成される層であり、剥離時に粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との間の層間剥離強度が、表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)との間および剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)との間の層間剥離強度よりも小さくなるような層構成であれば特に制限されるものではなく、所望により単層であっても多層であってもよい。
剥離樹脂層(C)の主成分として含有される熱可塑性樹脂(c)は、表面樹脂層(A)の主成分を構成する熱可塑性樹脂(a)と同様、溶融押出温度が概ね180℃以上300℃以下で溶融押出可能な熱可塑性樹脂が好適に用いられる。具体的に熱可塑性樹脂(c)としては、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分とする粘着樹脂層(B)との易開封性と再封性とのバランス、成型加工性および透明性などを考慮すると、エステル系樹脂、アミド系樹脂、環状オレフィン系樹脂およびエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明において、剥離樹脂層(C)で好適に用いられる熱可塑性樹脂(c)としては、剛性に優れ、粘着樹脂層(B)との層間剥離の際に、外力によって粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)の層間剥離面の荒れや各層の凹凸などを少なく抑えられ、易開封性と開封−再封を繰り返した場合の再封性が良好であり、工業的に安定し、かつ比較的安価に入手できるアミド系樹脂を用いることが好ましい。中でも成形加工性や透明性などに優れ、わずかな衝撃では層間剥離し、あるいは開封してしまうことがなく、また開封したい場合には容易に層間剥離できる6−66ナイロン、12ナイロン、テレフタル酸やイソフタル酸などのジカルボン酸類とヘキサメチレンジアミンやイソフォロンジアミンなどのジアミン類が反応することで得られる低結晶性あるいは非晶性ポリアミド樹脂などのアミド系樹脂を好適に用いることができる。
アミド系樹脂は、6−66ナイロン樹脂としては、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製の商品名「ノバミッド 2063」や宇部興産(株)製の商品名「UBEナイロン 5033B」等を例示できる。また、12ナイロン樹脂としては、例えば、宇部興産(株)製の商品名「UBESTA 3035UF」、(株)エムス昭和電工製の商品名「Grilamid L25」等が例示できる。また、非晶性ポリアミド樹脂としては、例えば、ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチックス(株)製の商品名「ノバミッド X21」や三井デュポンポリケミカル(株)製の商品名「シーラーPA3426」等を例示できる。
粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(D)との間に剥離樹脂層(C)を配することで、被シール体である包装体の底材または蓋材のヒートシール部を構成する樹脂に制限されることなく、粘着樹脂層(B)との良好な初期剥離強度と再封性の機能を付与することができる。本発明では熱可塑性樹脂(c)に、熱可塑性樹脂(d)よりも粘着樹脂層(B)との初期剥離強度と再封性の機能に優れた熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
具体的には、現在、前記の被シール体のヒートシール部を構成する樹脂としては、通常採用されているヒートシール条件(温度:120〜180℃程度)でヒートシール可能なオレフィン系樹脂が主に用いられているが、本発明においては、低温シール性(シール直後のホットタック性及び夾雑物シール性)を考慮すると、粘着樹脂層(B)との良好な初期剥離強度と再封性を発現する剥離樹脂層(C)としてアミド系樹脂、ヒートシール樹脂層(D)として、ビカット軟化点80℃以上105℃以下であり、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が400000以上500000以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1.5以上2.3以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂をそれぞれ主成分とする層を選択する。
また、剥離樹脂層(C)には、粘着樹脂層(B)との層間で安定した再封性を発現させるために、剥離樹脂層(C)の表面にブリードしやすい添加剤などの混合はできるだけ行わない方が好ましい。
次に、ヒートシール樹脂層(D)について説明する。ヒートシール樹脂層(D)は、ビカット軟化点80℃以上105℃以下であり、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が400000以上500000以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1.5以上2.3以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂(d)を主成分として構成されるヒートシール可能な樹脂層である。
ヒートシール樹脂層(D)は、前記の被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで前記ヒートシール部から多層フィルムを剥離するときに、剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)の間の層間剥離強度が、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)の間の層間剥離強度よりも大きくなるような層構成であれば特に制限されるものではなく、所望により単層構成の樹脂層であっても、多層構成の樹脂層であってもよい。
ランダムポリプロピレン系接着樹脂(d)は、前記の被シール体である蓋材や底材のシール面の材質や表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、および剥離樹脂層(C)の主成分として用いられる樹脂の種類を考慮して適切なヒートシール強度となるような樹脂を適宜選択し使用することができる。
ランダムポリプロピレン系接着樹脂(d)は、公知のチーグラー触媒、バナジウム触媒、シングルサイト触媒などを用いて製造され、シングルサイト触媒としては、メタロセン触媒、幾何拘束型触媒(CGC)、非メタロセン錯体を用いる触媒などが挙げられる。
中でも、シングルサイト触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂は、従来のチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂と比較して非常にシャープな分子量分布を示し、コモノマーの分布も均一なため、ブロッキングしにくく、表面滑性が優れている。
したがって、ブロッキング防止パウダーを使用する必要がなく、スリップ剤やアンチブロッキング剤を添加する場合でも添加量を削減することができる。また、高温保管時においても、低分子量成分の溶出が少ないため、ブロッキングを防ぐことができる。更には、ポリプロピレン樹脂をシーラントとする底材に対しても、シール温度を低温にすることが可能で、夾雑物シール性及びホットタック性に優れる。
他方、チーグラー・ナッタ触媒を用いたランダムポリプロピレン系接着樹脂を用いる場合は、低分子量成分が含まれるため、ブロッキングしやすく、不良現象が発生し生産性が劣る。また、高温下での保管において、低分子量成分などのベタツキ成分により、ブロッキングしてしまい、巻きを解く際にヒートシール樹面が荒れてしまうという問題が生じる。
本発明に適するランダムポリプロピレン系接着樹脂(d)を例示すれば、プロピレン単独重合体、およびシングルサイト触媒を介してプロピレンとα−オレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂に、アクリル酸、あるいはメタアクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、またはメチルアクリレート、メチルメタアクリレート、若しくはグリシジルメタアクリレートなどの一塩基性不飽和脂肪酸のエステル化合物、またはマレイン酸、フマル酸若しくはイタコン酸などの二塩基性脂肪酸の無水物などを化学的に結合させたポリプロピレンが好適に用いられる。これらは、一種のみを単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、ビカット軟化点が80℃以上105℃以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂は、フィルムのスリット作業(フィルムの巻き方向に、機械的に切れ目を入れ、切断しながら、巻き取ること)において、シワやズレ、たるみなどの不良を発生することなく、良好なロール外観のまま仕上げることができる。
ビカット軟化点の下限値は85℃以上が好ましく、上限値は100℃以下が好ましい。
ビカット軟化点が80℃以下の場合は、高温下で軟化しやすいためブロッキングしてしまう傾向がある。また、ビカット軟化点105℃以上の場合は、シール温度を高くしなければならなく、夾雑物シール性に劣り、ホットタック性が悪く、シール直後に応力をかけると、層間剥離を生じてしまうという問題が顕著化する。
本発明において「ビカット軟化点」とは、JIS K7206(1999)[プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法]に規定される方法により測定されたビカット軟化点をさす。
本発明のヒートシール樹脂層(D)の重量平均分子量のピーク値は、400000以上500000以下が好ましく、410000以上490000以下がより好ましい。ピーク値の分子量が高くシャープであるほど、側鎖の分岐が少なく、分子量、コモノマーの分布が均一である。
従来のチーグラー・ナッタ触媒では、重量平均分子量のピーク値が400000未満で分子量分布が広い傾向なので、低分子量成分が多くなり、ベタツキの原因となる。一方、重量平均分子量のピーク値が500000以上では、押出成形性が悪くなり、フィルム製膜が困難となる。本発明において、分子量のピーク値とは、高温GPCにより測定した最大頻度の分子量を意味する。
また、分子量の分布状態を表す重量平均分子量(Mw)/ 数平均分子量(Mn)の比(以下、多分散度Mw/Mnという) が、1.5〜2.3であることが好ましく、1.8〜2.3であることがより好ましい。Mw/Mnが小さいほど、コモノマーの分子量のばらつき状態が小さくなり分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが1.5未満だと、押し出し成形性が低下する等の問題が生じ、工業的に生産することも困難となる。一方、Mw/Mnが2.3を超えた場合は、低分子量成分が多くなり、低分子量成分の溶出によってフィルムがブロッキングし易くなる等の問題が生じる。
このような接着性樹脂の具体例としては、三井化学(株)製の商品名「アドマー」や三菱化学(株)製の商品名「モディック」等の中で、メタロセン触媒ランダムポリプロピレン系接着樹脂が例示できる。
また、前記ヒートシール樹脂層(D)同士を重ねて、40℃の恒温層に24時間保管し、23℃湿度50%RHで24時間放置した後、ASTM 3354により測定されたブロッキング力が3N以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.5N以下が特に好ましい。ブロッキング力が3N以上だとスリット加工時にシワやズレ、たるみなどの不良が発生することがある。
ヒートシール樹脂層(D)には、押出製膜時の加工適性や深絞り包装機などの充填機における包装適性の点から、滑剤やアンチブロッキング剤を適宜添加することが好ましい。ここで、特許文献1などで開示されている表面樹脂層(A)/粘着樹脂層(B)/ヒートシール樹脂層(D)の順に積層され、ヒートシール部分を引き剥がした場合に粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(D)との層間で層間剥離する多層フィルムでは、次のような問題点がある。
すなわち、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(D)とが直接隣接しているため開封後にヒートシール樹脂層(D)に添加された滑剤やアンチブロッキング剤等の添加剤が経時的に、露出したヒートシール樹脂層の表面にブリードするなどして、粘着樹脂層(B)との再封剥離強度が低下してしまう懸念がある。これに対して、本発明で規定する多層フィルムのように、粘着樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(D)の間に剥離樹脂層(C)が配され、ヒートシール部分を引き剥がした場合に粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との層間で層間剥離する多層フィルムでは、ヒートシール樹脂層(D)に好適に添加される滑剤やアンチブロッキング剤等の添加剤が層間剥離部分へ直接影響しにくいため、再封強度への影響が少なく、安定した再封性が得られるという利点もある。
さらにヒートシール樹脂層(D)には、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の成分を適宜添加しても構わない。具体的には、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明で規定する多層フィルムは、該フィルムのヒートシール樹脂層(D)を被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いでヒートシール部から多層フィルムを剥離するときに、粘着樹脂層(B)の露出が、前記ヒートシール部において、前記剥離樹脂層(C)および前記ヒートシール樹脂層(D)の前記多層フィルムからの破断と、前記粘着樹脂層(B)と前記剥離樹脂層(C)との層間剥離と、前記剥離樹脂層(C)および前記ヒートシール樹脂層(D)の被シール体側への移行により行われることから、各々の層に選定される樹脂の組み合わせとしては、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)の間の層間剥離強度が、表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)の間、かつ剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)の間の層間剥離強度よりも小さくなるような構成にすることが好ましい。同時に、わずかな衝撃などで容易に層間が剥離し、あるいは開封してしまうことがないよう、包装体としての機能が維持できる程度の層間剥離強度を確保していることも重要である。
これらの観点から粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)に選定される樹脂の組み合わせとしては、層間剥離強度(初期剥離強度)が1N/15mm幅以上20N/15mm幅以下の範囲となるように選定することが好ましい。ここで、前記層間剥離強度が1N/15mm幅以上であれば、わずかな衝撃により包装体が容易に開封してしまうなどの不具合が発生しにくく、また20N/15mm幅以下であれば、包装体を手で容易に開封できる特性である易開封性が良好であるため好ましい。
本発明においては、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との層間剥離強度(初期剥離強度)のより好ましい範囲は、下限が3N/15mm幅以上であり、さらに好ましくは5N/15mm幅以上であり、かつ上限が15N/15mm幅以下、さらに好ましくは10N/15mm幅以下である。
次に、開封後の再封性については、例えば、手や指による加圧圧着のみで開封と再封を計5回繰り返した後の粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との層間剥離強度(再封剥離強度)が0.5N/15mm幅以上であることが好ましい。ここで、手や指による加圧圧着のみで再封剥離強度が0.5N/15mm幅以上、好ましくは0.75N/15mm幅以上、さらに好ましくは、1.0N/15mm幅以上(なお、再封剥離強度の上限は粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との層間剥離強度以下であり、好ましくは10N/15mm幅以下、さらに好ましくは5.0N/15mm幅以下である。)であれば、実用的な再封性が得られるため好ましい。
本発明において、このような条件を満たす表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)およびヒートシール樹脂層(D)の好適な組み合わせとしては、上述したように表面樹脂層(A)としてオレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、エステル系樹脂、およびスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を主成分として構成される層を配し、粘着樹脂層(B)として動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成される層を配し、剥離樹脂層(C)としては、エステル系樹脂を主成分として構成される層を配し、さらにヒートシール樹脂層(D)としてビカット軟化点80℃以上105℃以下で高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が400000以上500000以下かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が、1.5以上2.3以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂を主成分として構成される層を配したものが挙げられる。
次に、上述した各層の厚みについて説明する。表面樹脂層(A)は、単層あるいは多層構成の樹脂層であり、通常、その厚みは1μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、かつ1000μm以下、好ましくは600μm以下、さらに好ましくは500μm以下である。ここで、表面樹脂層(A)の厚みが1μm以上であれば、ガスバリアー性や耐ピンホール性などの特性を付与する層や接着性樹脂層を配することが容易であり、またその厚みが1000μm以下であれば、ヒートシール時に熱がヒートシール樹脂層(D)に伝わりやすく被シール体のシール部と容易にヒートシールができるため好ましい。
粘着樹脂層(B)は、通常、単層構成の樹脂層であり、その厚みは、特に制限されるものではないが、易開封性と再封性とのバランス、成形加工性、製造コストなどから、0.5μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であって100μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下が好適に採用される。
剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)との合計厚みは特に制限されるものではないが、1μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、30μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下であることが望ましい。ここで、合計厚みが1μm以上であれば、ヒートシール時にヒートシール熱板による加圧等により変形し、これらの各層の機能が低下してしまうなどの不具合が防止できるため好ましく、またその厚みが30μm以下であれば、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)を剥離させる際に、剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)を容易に破断させることができ、粘着樹脂層(B)を再封可能な状態で露出することが可能になるため好ましい。
また、剥離樹脂層(C)の厚みは、0.5μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であって29.5μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。剥離樹脂層(C)の厚みが0.5μm以上であれば、ヒートシール時にヒートシール圧力によって剥離樹脂層(C)が変形し、剥離樹脂層としての機能が低下してしまうなどの不具合が少なくなるため好ましく、またその厚みが29.5μm以下であれば、剥離樹脂層(C)にエステル系樹脂等の剛性の大きい樹脂が配している場合においても、開封時に容易に破断し、剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)が破断せずに多層フィルム側に層が残る等の不具合が発生しにくいため好ましい。
また、ヒートシール樹脂層(D)の厚みは、0.5μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であって29.5μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。ヒートシール樹脂層(D)の厚みが0.5μm以上であれば、剥離樹脂層(C)と良好な層間接着強度を維持することできる。また、ヒートシール時にヒートシール圧力によって剥離樹脂層(D)が変形し、ヒートシール樹脂層としての機能が低下してしまうなどの不具合が少なくなるため好ましく、またその厚みが29.5μm以下であれば、ヒートシール樹脂層(D)にメタロセン系ランダムポリプロピレン接着樹脂等の衝撃強度の大きい樹脂が配している場合においても、開封時に容易に破断し、剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)が破断されずに多層フィルム側に層が残る等の不具合が発生しにくいため好ましい。
次に、本発明のフィルムの製造方法について説明する。本発明のフィルムの製造方法としては、特に制限されるものではないが、粘着樹脂層(B)の保護や生産性および衛生性等に優れている共押出法を好適に用いることができる。すなわち、上述した表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、剥離樹脂層(C)、およびヒートシール樹脂層(D)に用いる各樹脂組成物をそれぞれ別の押出機で加熱溶融させ、マルチマニホールド法やフィードブロック法等の公知の方法で溶融状態において(A)/(B)/(C)/(D)の順で積層した後、Tダイ・チルロール法やインフレーション法等により多層フィルムに成形することができる。ここで、印刷適性やラミネート適性を向上させるために、得られた多層フィルムの表面樹脂層(A)の最外層の表面に表面処理を施すことが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の方法が挙げられるが、本発明においては、表面処理の効果や生産性および製造コストの観点からコロナ処理が好適に用いられる。
本発明で規定する多層フィルムは、粘着樹脂層(B)が積層される面と反対側の表面樹脂層(A)上に、ドライラミネーション法や押出ラミネーション法などの公知の方法により、必要に応じて、接着性樹脂や接着剤などを介してラミネート基材を積層させ、ラミネートフィルムやラミネートシートとすることができる。ここで、ラミネート基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、無延伸ポリプロピレンシート、無延伸ポリエチレンテレフタレートシート、アルミニウム箔、紙、不織布等が挙げられる。本発明においては、ドライラミネーション法が好適に用いられ、その際に用いられる接着剤としては、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤等が例示できる。
本発明において、フィルム自体、あるいはフィルムとラミネート基材とを積層したラミネートフィルムやラミネートシートは、それぞれ各種の包装体の蓋材や底材として用いることができる。例えば、ラミネートフィルムを包装体(容器)の蓋材として使用した場合、この蓋材のヒートシール樹脂層(D)と、食品等の内容物が充填された包装体(容器)(被シール体)のヒートシール樹脂層とを重ね合わせてヒートシールすることにより、気密性や実用的な初期剥離強度および再封機能を有する包装体(容器)とすることができる。この包装体(容器)は、開封後の剥離面に粘着樹脂層(B)が再封可能な状態で露出し、手や指による加圧圧着のみで再封が可能となる。また、各種の包装体(容器)の底材としては、深絞り成形などを行うことにより同様に再封機能を有する包装体(容器)を得ることが可能である。
次に、本発明で規定する多層フィルムを蓋材または底材として用いた深絞り包装体における再封機能について説明する。図1は、本発明で規定する多層フィルムを蓋材として用いた深絞り包装体の部分断面図であり、図2は、図1で示す深絞り包装体において、蓋材の一部を底材から剥離した状態の包装体の部分断面図であり、図3は、図2で示す深絞り包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図である。
また、図4は、本発明で規定するフィルムを底材として用いた深絞り包装体の部分断面図であり、図5は、図4で示す深絞り包装体において、蓋材の一部を底材から剥離した状態の深絞り包装体の部分断面図であり、図5で示す深絞り包装体において、蓋材と底材とを再封した状態を示す部分断面図である。
ここで、図1〜3における符号1は蓋材、符号2は底材(被シール体)、符号3は蓋材の表面樹脂層、符号4は蓋材の粘着樹脂層、符号5は蓋材の剥離樹脂層、符号6は蓋材のヒートシール樹脂層、符号7は底材の表面樹脂層、符号8は底材のヒートシール樹脂層、符号9はヒートシール部、符号10はタブ部、符号11は剥離時における粘着樹脂層4の露出部、符号12は剥離時における剥離樹脂層5の露出部である。
また、図4〜6における符号41は底材、符号42は蓋材(被シール体)、符号43は底材の表面樹脂層、符号44は底材の粘着樹脂層、符号45は底材の剥離樹脂層、符号46は底材のヒートシール樹脂層、符号47は蓋材の表面樹脂層、符号48は蓋材のヒートシール樹脂層、符号49は蓋材のヒートシール部、符号50は蓋材のタブ部、符号51は剥離時における粘着樹脂層44の露出部、符号52は剥離時における剥離樹脂層45の露出部である。
本発明の包装体は、図1に示すように、蓋材1は、表面樹脂層3、粘着樹脂層4、剥離樹脂層5、ヒートシール樹脂層6がこの順で構成される。蓋材1のヒートシール樹脂層6は、被シール体である底材2のヒートシール樹脂層8とヒートシールされている。つまり、蓋材1と底材2とは、ヒートシールによって形成されたヒートシール部9で接着されている。
蓋材1に設けられたタブ部10を摘んで引っ張ると、図2に示すように、ヒートシール部9において、先ずタブ部10側の剥離樹脂層5およびヒートシール樹脂層6が蓋材1から破断されるとともに、蓋材1における粘着樹脂層4と剥離樹脂層5との層間で剥離が開始される。粘着樹脂層4と剥離樹脂層5との剥離がタブ部10側と反対側のヒートシール部9に到達すると、蓋材1の剥離樹脂層5およびヒートシール樹脂層6が破断される。破断された蓋材1の剥離樹脂層5およびヒートシール樹脂層6は、被シート体である底材2側に移行し、粘着樹脂層4の露出部11と剥離樹脂層5の露出部12が形成される。
再封する場合には、図3に示すように、剥離した蓋材1を底材2に被せて、表面樹脂層3を手や指で加圧圧着し、蓋材1の粘着樹脂層4の露出部11と、底材2へ移行した蓋材1の剥離樹脂層5の露出部12と重ね合わせることにより蓋材1と底材2とを再封することができる。
一方、本発明で規定する多層フィルムを深絞り包装体の底材として使用する場合、図4に示すように、底材41は、表面樹脂層43、粘着樹脂層44、剥離樹脂層45、およびヒートシール樹脂層46がこの順で積層されて構成されている。図1と同様にヒートシールによって形成されたヒートシール部49により、蓋材42と底材41とは接着している。
蓋材42に設けたタブ部50をつまんで引っ張ると、図5に示すように、ヒートシール部49において、先ずタブ部50側の剥離樹脂層45およびヒートシール樹脂層46が底材41から破断されるとともに、底材41における粘着樹脂層44と剥離樹脂層45との層間で剥離が開始される。粘着樹脂層44と剥離樹脂層45との剥離がタブ部50側と反対側のヒートシール部49に到達すると、底材41の剥離樹脂層45およびヒートシール樹脂層46が破断される。破断された底材41の剥離樹脂層45およびヒートシール樹脂層46は、被シート体である蓋材42に移行し、粘着樹脂層44の露出部51と表面樹脂層45の露出部52とが形成される。
そして、図6に示すように、再封する場合には、剥離した蓋材42を底材41に被せて、蓋材の表面樹脂層47を手や指で加圧圧着することにより、底材41の粘着樹脂層44の露出部51と蓋材42へ移行した底材41の剥離樹脂層45の露出部52とを重ね合わせることにより蓋材42と底材41とを再封することができる。
本発明の包装体は、各種容器の蓋材や底材等として用いることができ、その用途が特に限定されるものではないが、例えば、インスタントラーメン、スナック菓子、チョコレート菓子、スライスハム等の畜肉加工品、ウェットティッシュ、汗取り紙、芳香剤、使い捨ておしめ等のように数個単位で包装した容器として用いたり、その都度開封して使用する化粧品や生理用品、シップ薬、救急絆創膏、のど飴等の医薬品を包装した容器として用いたりすることができる。特に、開封後に残存する内容物が酸化劣化、吸湿や乾燥などの変敗の影響を受けやすいものを収納するための包装体として好適に使用することができる。
以下に実施例で本発明をさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
(1)損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度
試料を縦4mm、横60mmに切り出し、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmの条件で、横方向について−100℃から測定し、得られたデータから損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度(℃)を求めた。
(2)ビカット軟化点
約10mm×幅10mm×厚さ3mmの板状試験片を射出成形にて成形後、温度23℃ 、相対湿度50%の恒温恒湿室にて24時間放置し状態調整した。ヒートディストーションテスターS3EH型(東洋精機製作所)を用い、50Nのウエイトを使用し、昇温速度50℃/hrの条件で、試験片に圧子が1mm進入した時の温度を測定した。2回試験を行い、その平均値をビカット軟化点(℃)とした。
(3)重量平均分子量のピーク値ならび分子量多分散度
試料のペレット4mgを140℃で溶媒o-ジクロロベンゼン4mlに溶解した後、高温GPCシステムGPCV2000(日本ウォーターズ(株)製)を用い、カラム:Styragel HT6E,4,3(4.6mm径300mm、3連)(日本ウォーターズ(株)製)、標準試料ポリスチレン、温度140℃の条件で、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を分析し、重量平均分子量のピーク値と分子量多分散度(Mw/Mz)を求めた。
(4)初期剥離強度
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出し試験片とした。この試験片を万能試験機(インテスコ(株)製)を用い、温度23℃、引張速度200mm/min、引張角度180度の条件で測定し、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との層間剥離強度(N/15mm幅)を初期剥離強度とした。また、下記の基準も併記した。
A:初期剥離強度が5N/15mm幅以上10N/15mmの場合
B:初期剥離強度が5N/15mm幅未満の場合または10N/15mm以上の場合
(5)層の残り方
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部から手で剥離する場合の状況を下記の基準で目視により評価した。
A:剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)が、多層フィルムからきれいに破断し、毛羽立ち立ちがない場合
B:剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)が、多層フィルムから破断できなかったり、破断した場合でも毛羽立ちがある場合
(6)再封剥離強度
得られた深絞り包装体の底材と蓋材のヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出し試験片とした。そのヒートシール部を開封し、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との間で剥離した箇所を、指で加圧圧着して再封することを5回繰り返す。そして、万能試験機(インテスコ(株)製)を用い、温度23℃、引張速度200mm/min、引張角度180度の条件で測定した剥離強度(N/15mm幅)を再封剥離強度とした。また、下記の基準も併記した。
A:再封剥離強度が0.5N/15mm幅以上の場合
B:再封剥離強度が0.5N/15mm幅未満の場合
(7)滑り性
得られた多層フィルムの表面樹脂層(A)とヒートシール樹脂層(D)の静止摩擦係数をJIS K 7125に規定される方法で測定した。また、下記の基準も併記した。
A:静止摩擦係数が2.0未満でスリット加工時のロール外観が良好な場合
B:静止摩擦係数が2.0以上でスリット加工時のロール外観が不良な場合
(8)ブロッキング性
得られた多層フィルムを10×15cmのサイズに切り取り、ヒートシール樹脂層(D)同士を重ねて、ガラスプレートで挟み込んだ。40℃の恒温層に24時間保管し、その後23℃湿度50%で24時間放置した。ASTM D3354の方法で、2枚のフィルムを引張り試験機により剥離させ、ブロッキング力を測定した。また、下記の基準も併記した。
A:ブロッキング力が3N以下
B:ブロッキング力が3N以上
(9)層間接着強度
得られた多層フィルムを15mm幅の短冊状に切り出し試験片とした。その試験片のヒートシール層(D)同士を重ねてヒートシールし、剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)との間を剥離させ、万能試験機(インテスコ(株)製)を用い、温度23℃、引張速度200mm/min、引張角度180度の条件で測定した剥離強度(N/15mm幅)を層間接着強度とした。また、下記の基準も併記した。
A:層間接着強度が1.5N/15mm幅以上の場合
B:層間接着強度が1.5N/15mm幅未満の場合
(10)シール開始温度
蓋材と底材とのヒートシールにおいて、深絞り包装機(ムルチバック社製、型番R−530、シール時間2秒、シール圧力4kg/cm)を用い、シール温度を130℃以上で10℃おきに設定した条件で行い、シールが出来たか否かを、手で両材を引張って確認した。
確実にシールが行えた最低シール温度をシール開始温度とした。
シール開始温度が低いほど、低温シール性が良好、即ち夾雑シール性やホットタック性が良好であることを示す。
実施例1:
[蓋材]
表面樹脂層(A)を以下の3種類の樹脂を用いて3層構成とした。
A1:エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物((株)クラレ製、商品名「エバールE105」、以下「EVOH」と略称する。)
A2:6−66ナイロン樹脂(ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバミッド2030」、以下「6−66Ny」と略称する。)
A3:オレフィン系接着性樹脂(三井化学(株)製、商品名「アドマーNF558」、以下「AD1」と略称する。)
粘着樹脂層(B)は、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂((株)クラレ製、商品名「ハイブラー7311」、スチレン含量12質量%、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度−18.6℃、20℃でのtanδ値0.19、以下「TPS1」と略称する。)を用いて構成した。
剥離樹脂層(C)は、非晶性ポリアミド樹脂(ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバミッド X21」)を用いて構成した。
ヒートシール樹脂層(D)は、ビカット軟化点98℃、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が445000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1.8である、メタロセン触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂(以下「AD2」と略称する。)に、滑剤としてエルカ酸アミドを500ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを1000ppm添加混合した樹脂組成物を用いて構成した。
上記の樹脂を(A)層用押出機(3層とも口径50mmの単軸押出機)、(B)層用押出機(口径50mmの単軸押出機)、(C)層用押出機(口径50mmの単軸押出機)、(D)層用押出機(口径50mmの単軸押出機)を有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置の各押出機にそれぞれ供給して、押出設定温度190〜230℃ 、Tダイ設定温度235℃の条件で共押出し、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/5μm、全層の厚さが70μm の多層フィルム(X1)を得た。
次いで、得られた多層フィルム(X1)の表面樹脂層(A)の最外層側に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株)製、商品名「エンブレット PET」、厚さ16μm)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(X1LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
なお、ドライラミネーション用の接着剤としては2液硬化型接着剤(主剤として大日本インキ(株)製、商品名「ディックドライLX−75A」、硬化剤として大日本インキ(株)製、商品名「ディックドライKW−40」を使用した。
[底材]
最外層側から、EVOH、6−66Ny、AD1、ランダムポリプロレン樹脂(日本ポリプロピレン(株)製、商品名「ノバテックPP EG7FTB」、以下「PP1」と略称する。)に滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを2000ppm添加混合した樹脂組成物(ヒートシール樹脂層)の順に積層させ、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/30μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(Y1)を共押出法によって得た。
この多層フィルム(Y1)の最外層側(EVOH面)に、総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み320μmのラミネートシート(Y1LS)を得、包装体の底材に使用した。なお、ドライラミネーション用接着剤としてはラミネートフィルム(X1LF)を作製する場合と同様のグレードを使用した。
[深絞り包装体]
深絞り包装機(ムルチバック社製、型番:R−530)を使用して、上記の底材(Y1LS)を無延伸ポリエチレンテレフタレートシート層が外層になるように深絞り成形することにより、縦130mm、横170mm、フランジ部幅6mmの長方形の形状の容器に加工し、ヒートシール部において、深絞りされた底材に設けられたフランジ部分に上記の蓋材(X1LF)を、ヒートシール温度(シール開始温度)150℃、シール時間2秒、シール圧力4kg/cmの条件でヒートシールすることにより深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を下記表1に示した。
実施例2:
[蓋材]
実施例1と同様に、ラミネートフィルム(X1LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1の使用したヒートシール樹脂層に使用する樹脂をホモポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテックPP FB3HAT」、以下「PP2」と略称する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、最外層側から、EVOH、6−66Ny、AD1、PP2に滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを2000ppm添加混合した樹脂組成物(ヒートシール樹脂層)の順に積層させ、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/30μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(Y2)を共押出法によって得た。
この多層フィルム(Y2)の最外層側(EVOH面)に、総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み320μmのラミネートシート(Y2LS)を得、包装体の底材に使用した。なお、ドライラミネーション用接着剤としてはラミネートフィルム(X1LF)を作製する場合と同様のグレードを使用した。
[深絞り包装体]
ヒートシール温度をシール開始温度170℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
実施例3:
[蓋材]
実施例1と同様に、ラミネートフィルム(X1LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1の使用したヒートシール樹脂層に使用する樹脂をポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名「ノバテックLL UF240」、以下「LL」と略称する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、最外層側から、EVOH、6−66Ny、AD1、LLDPEに滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm、アンチブロッキング剤として天然シリカを2000ppm添加混合した樹脂組成物(ヒートシール樹脂層)の順に積層させ、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/30μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(Y3)を共押出法によって得た。
この多層フィルム(Y3)の最外層側(EVOH面)に、総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み320μmのラミネートシート(Y3LS)を得、包装体の底材に使用した。なお、ドライラミネーション用接着剤としてはラミネートフィルム(X1LF)を作製する場合と同様のグレードを使用した。
[深絞り包装体]
ヒートシール温度をシール開始温度140℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
実施例4:
[蓋材]
実施例1において、ヒートシール樹脂層(D)に使用する樹脂を、実施例1で使用したAD2の90質量部とランダムポリプロピレン樹脂「PP」110質量部とを混合した樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/5μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(X2)を得た。次いで、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(X2LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
実施例5:
[蓋材]
実施例1の底材で作製した多層フィルム(Y1)の最外層側(EVOH面)に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株)製、商品名「エンブレット PET」、厚さ16μm)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(Y1LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1の蓋材で作製した多層フィルム(X1)の最外層側(EVOH面)に、総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み320μmのラミネートシート(X1LS)を得、包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
実施例6:
[蓋材]
実施例2の底材で作製した多層フィルム(Y2)の最外層側(EVOH面)に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株)製、商品名「エンブレット PET」、厚さ16μm)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(Y2LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1の蓋材で作製した多層フィルム(X1)の最外層側(EVOH面)に、総厚みが250μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(三菱化学(株)製、商品名「ノバクリアー」)をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み320μmのラミネートシート(X1LS)を得、包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
ヒートシール温度をシール開始温度140℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
比較例1:
[蓋材]
実施例1において、ヒートシール樹脂層(D)に使用する樹脂を、ビカット軟化点78℃、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が385000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が2.4である、メタロセン触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂(以下「AD3」と略称する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/5μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(X3)を得た。
次いで、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材をドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(X3LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
比較例2:
[蓋材]
実施例1において、ヒートシール樹脂層(D)に使用する樹脂を、ビカット軟化点112℃、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が405000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が2.1である、メタロセン触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂(以下「AD4」と略称する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/5μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(X4)を得た。
次いで、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(X4LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
ヒートシール温度をシール開始温度170℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
比較例3:
[蓋材]
実施例1において、ヒートシール樹脂層(D)に使用する樹脂をビカット軟化点109℃、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が376000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が2.5であるチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂(以下「AD5」と略称する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/5μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(X5)を得た。
次いで、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(X5LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
ヒートシール温度をシール開始温度170℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
比較例4:
[蓋材]
比較例3と同様にラミネートフィルム(X5LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例3と同様に、ラミネートシート(Y3LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
比較例5:
[蓋材]
実施例1において、粘着樹脂層(B)に使用する樹脂をTPS1からスチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製、商品名「タフテックH1052」、スチレン含量20質量%、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度−42.2℃、20℃でのtanδ値0.06、以下「TPS2」と略称する)に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/5μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(X6)を得た。
次いで、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(X6LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
比較例6:
[蓋材]
実施例1において、粘着樹脂層(B)に使用する樹脂をTPS1からスチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン含量:20質量%、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度2℃、20℃でのtanδ値0.07、以下「TPS3」と略称する)に変更した以外は、実施例1と同様にして、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、各層の平均厚さが各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/5μm、全層の厚さが70μmの多層フィルム(X7)を得た。
次いで、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み86μmのラミネートフィルム(X7LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。
参考例:
[蓋材]
実施例1において、(A1)/(A2)/(A3)/(B)/(C)/(D)の6層構成で、剥離樹脂層(D)の厚みを40μmとし、各層の平均厚さを各々10μm/20μm/10μm/20μm/5μm/40μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、全層の厚さが105μmの多層フィルム(X8)を得た。
次いで、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネーション法により貼り合わせて、総厚み121μmのラミネートフィルム(X8LF)を得、包装体の蓋材に使用した。
[底材]
実施例1と同様に、ラミネートシート(Y1LS)を包装体の底材に使用した。
[深絞り包装体]
実施例1と同様の方法で、深絞り包装体を作製した。この深絞り包装体を用いて評価した結果を表1に示した。





























Figure 2016043964
表1より、本発明で規定する多層フィルムを用いた蓋材または底材で形成された再封可能な包装体(深絞り包装体)は、初期剥離強度、層の残り方および再封剥離強度、滑り性、ブロッキング性、層間剥離強度、低温シール性(夾雑物シール性及びホットタック性)のすべての特性に問題がなく実用性に優れていることを確認できた(実施例1〜5)。
また、被シール体(底材)のヒートシール樹脂層がポリエチレン樹脂でも、十分なシール強度(初期剥離強度)であることが確認できた。(実施例2、3、6)。
これに対して、ヒートシール樹脂層にビカット軟化点78℃で重量平均分子量ピーク385000かつ多分散度2.4である、メタロセン触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂を配した多層フィルムは、滑り性が悪くスリット加工時のロール外観が不良になり、高温保管時においてブロッキングが発生した(比較例1)。
また、ヒートシール樹脂層に、ビカット軟化点112℃であり、重量平均分子量ピーク405000であり、多分散度2.5である、メタロセン触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン系接着樹脂を配した多層フィルムは、剥離樹脂層(C)との層間接着強度が低く、デラミネーション現象が発生した。また、シール開始温度が170℃と高く、低温シール性(夾雑物シール性及びホットタック性)が劣っていた(比較例2)。
また、ビカット軟化点109℃で重量平均分子量ピーク376000かつ多分散度2.5である、チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレン接着樹脂を配した多層フィルムは、滑り性が悪く、高温保管においてもブロッキングが発生した。また、シール開始温度が170℃と高く、低温シール性(夾雑物シール性及びホットタック性)が劣っていた(比較例3)。
また、被シール体(底材)のヒートシール樹脂がポリエチレン系樹脂の場合、ヒートシールすることが困難であった(比較例4)。
本発明で規定する範囲外の粘弾性特性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを粘着樹脂層に用いた場合には、再封剥離強度が不十分であったりした(比較例5、6)。
なお、剥離樹脂層とヒートシール樹脂層との合計厚みが厚くなると(30μmを超える場合)、ヒートシール部から手で剥離する場合に剥離樹脂層とヒートシール樹脂層が破断できず、被シール体(底材側)に層が残ってしまった(参考例)。
1 蓋材
2 底材
3 蓋材の表面樹脂層
4 蓋材の粘着樹脂層
5 蓋材の剥離樹脂層
6 蓋材のヒートシール樹脂層
7 底材の表面樹脂層
8 底材のヒートシール樹脂層
9 底材のヒートシール部
10 蓋材のタブ部
11 剥離時における粘着樹脂層の露出部
12 剥離時におけるヒートシール樹脂層の露出部
41 底材
42 蓋材
43 底材の表面樹脂層
44 底材の粘着樹脂層
45 底材の剥離樹脂層
46 底材のヒートシール樹脂層
47 蓋材の表面樹脂層
48 蓋材のヒートシール樹脂層
49 蓋材のヒートシール部
50 蓋材のタブ部
51 剥離時における粘着樹脂層の露出部
52 剥離時における剥離樹脂層の露出部
本発明の多層フィルムは、被シール体である包装体のヒートシール樹脂がプロピレン系樹脂であっても、耐ブロッキング性に優れて、低温シール性(夾雑物シール性およびホットタック性)が良好であり、衛生面に優れ、良好な易開封性と、手や指による加圧圧着のみで良好な再封性とを併有する。これらの利点は、食品や医薬品などの包装において、内容物製造業、包装製造業、及び消費者にとって大いに役立つものである。

Claims (7)

  1. 表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、剥離樹脂層(C)、ヒートシール樹脂層(D)が順次に積層されてなる多層フィルムを包装体の蓋材または底材の一方に用い、当該多層フィルムのヒートシール樹脂層(D)を被シール体である包装体の底材または蓋材にヒートシールしてなる包装体であり、当該包装体のヒートシール部において、前記粘着樹脂層(B)と前記剥離樹脂層(C)とが層間剥離したときに、両層が再封可能な状態で露出する包装体であって、前記粘着樹脂層(B)が、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定される損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が−35℃以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として構成される層からなり、前記ヒートシール樹脂層(D)が、ビカット軟化点が80℃以上105℃以下であり、高温GPC法により測定された重量平均分子量のピーク値が400000以上500000以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1.5以上2.3以下であるランダムポリプロピレン系接着樹脂を主成分として構成される層からなることを特徴とする包装体。
  2. 包装体のヒートシール部における粘着樹脂層(B)の露出が、剥離樹脂層(C)および前記ヒートシール樹脂層(D)の多層フィルムからの破断と、粘着樹脂層(B)と剥離樹脂層(C)との層間剥離と、剥離樹脂層(C)およびヒートシール樹脂層(D)の被シール体側への移行とにより行われる請求項1または2に記載の包装体。
  3. 表面樹脂層(A)が、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エステル系樹脂、およびスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を主成分として構成された多層フィルムを用いる請求項1〜2のいずれかに記載の包装体。
  4. 剥離樹脂層(C)がアミド系樹脂を主成分として構成された多層フィルムを用いる請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
  5. 表面樹脂層(A)が2層以上で構成され、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とする層および/またはポリアミド系樹脂を主成分とする層を有する多層フィルムを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。
  6. 剥離樹脂層(C)とヒートシール樹脂層(D)との合計厚みが1μm以上30μm以下である多層フィルムを用いる請求項1〜5のいずれかに記載の包装体。
  7. ヒートシール樹脂層(D)同士を重ねて、40℃の恒温層に24時間保管し、その後23℃湿度50%RHで24時間放置した後、ASTM D3354により測定されたブロッキング力が3N以下である請求項1〜6のいずれかに記載の包装体。
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