(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。
図1は、本実施の形態に係る加熱調理器の一例であるガスコンロを示す概略斜視図であり、天板30の上面に複数のコンロバーナ31,32,36を備え、コンロ本体3の内部には、焼網15やグリルプレート20を用いた調理を行うための矩形箱状のグリル庫2(加熱庫)が設けられている。なお、このガスコンロでは、焼網15とグリルプレート20とは入れ替えて使用されるため、図2、及び図3では、グリルプレート20が用いられている状態を例に挙げて説明する。
図1、及び図2に示すように、グリル庫2の前面開口部100には、前後にスライド開閉するグリル扉21が設けられている。グリル扉21の後面部下方には、グリル庫2内へ向かって連結板210が延設されており、連結板210にグリルプレート20及び汁受け皿16を載置した支持枠18が連結されている。これにより、グリル扉21を手前に引くことで、支持枠18とともにグリルプレート20及び汁受け皿16がグリル庫2の前方に引き出され、グリル扉21を後方に押すことで、支持枠18とともにグリルプレート20及び汁受け皿16がグリル庫2内に収容されるように構成されている。なお、本明細書では、グリル扉21とグリル庫2の奥側とが対向する方向を前後方向、グリル庫2の幅方向を左右方向、グリル庫2の高さ方向を上下方向という。
図3に示すように、支持枠18は、前後辺をそれぞれ上方に突出させて、側面視略コ字状になるように金属製の丸棒材を折り曲げた折り曲げ体181と、折り曲げ体181の前後端部にそれぞれ取り付けられた前後支持板185,186とを備える。支持枠18の前後辺の上方に突出させた各台座部182は、正面視略凸状に形成されており、下方の段部195がグリルプレート20あるいは焼網15の前後端部を下方から支持する。
グリルプレート20を用いた調理を行う場合、グリル庫2内には、支持枠18に着脱自在に支持されたグリルプレート20、及び汁受け皿16が導入される。なお、グリルプレート20を用いる場合、必ずしも汁受け皿16を用いる必要はない。
本実施の形態のグリルプレート20は、アルミニウム製の成形体や鋳造体からなり、全体として略矩形の浅皿状に形成され、耐熱塗装やフッ素樹脂加工等の表面処理が施されている。より詳細には、グリルプレート20は、略矩形浅皿状の本体部201と、本体部201の前後左右の周縁からそれぞれ前後左右方向の外方に延在するフランジ部211,212とから構成されている。本体部201には、被調理物のグリルプレート20への接触面積をできるだけ小さくして被調理物が貼りつき難くなるように、左右方向に延在する凸条部と凸条部間に形成された凹部とが前後方向に等間隔で複数形成された波形の凹凸部201aが形成されている。また、この凹凸部201aの左右両端と本体部201の左右周縁との間にはそれぞれ、下方に突出する溝部201bが前後方向に延在している。これにより、自動調理中に被調理物から滴り落ちた油や水分が凹部及び溝部201bに溜まり、被調理物への油等の再付着が抑えられる。さらに、前後フランジ部212の左右中央部には、内方に切り欠かれた切り欠き部215が形成されている。従って、前後フランジ部212の左右両端部を支持枠18の段部195上に載置すると、切り欠き部215内に台座部182の中央部が配置され、グリルプレート20がグリル庫2内の一定位置に収容される。なお、グリルプレート20は、自動調理中に被調理物から生じる水分や油などを下方に落とすために、小孔を有してもよい。
汁受け皿16は、金属薄板を所定形状にプレス成形した後、耐熱クリア塗装や琺瑯等の仕上げ塗装が施されて形成されており、平面視略矩形状の浅い皿部161と、皿部161の外周縁に形成された前後フランジ部162及び左右フランジ部164とを備えている。汁受け皿16は、皿部161が支持枠18の折り曲げ体181に載置されるとともに、前後フランジ部162がそれぞれ支持枠18の前後支持板185,186で下方から支持されることによりグリル庫2内の一定位置に収容される。
焼網15を用いた調理を行う場合、グリル庫2内には、汁受け皿16、及び図1に示す焼網15が導入される。本実施の形態の焼網15は、金属製の丸棒材を平面視略矩形状に折り曲げて形成された焼網枠体150と、焼網枠体150の左右方向に対向する左右辺151を連結する複数の金属製の細丸棒材154とを備えており、焼網15の全体には、フッ素樹脂加工あるいはメッキなどの表面処理が施されている。また、焼網枠体150の前後辺152の左右中央部は、内方に折り曲げられて窪み部155が形成され、前後辺152の左右両端部にはそれぞれ、前後外方に突出する突設部153が形成されている。従って、突設部153は、焼網15を支持枠18の段部195上に載置するための被支持部として機能し、焼網15の突設部153を上記支持枠18の段部195で下方から支持することにより、焼網15がグリル庫2内の一定位置に収容される。
図2に示すように、グリル庫2内の上壁22の中央部には、被調理物を上方から加熱するための上バーナ56が設けられている。上バーナ56は、下面部がセラミック製の板体で構成された表面燃焼式のセラミックバーナであり、上記板体の下面部の略全域に炎孔560が開設されている。従って、点火した際には、上記板体の下面全体にガスの燃焼炎が形成され、その輻射熱や燃焼排気がグリル庫2内の中央部へ向けて下方に放射される。また、グリル庫2内の左右の側壁23の中央部より下方位置であって、グリル扉21を閉じたときに、グリルプレート20の本体部201あるいは焼網15の細丸棒材154よりも下方に位置するように、グリル庫2の中央部に向かって炎孔550が開口する下バーナ55が設けられている。従って、点火した際には、炎孔550からグリル庫2内の中央部に向かってガスの燃焼炎が形成され、その輻射熱や燃焼排気がグリル庫2内の中央部へ向けて放射される。
上下バーナ56,55の各炎孔560,550の近傍位置には、後述するイグナイタ600から高電圧が印加された際に、対応する炎孔560,550の周辺へ向けて火花放電する点火電極601,501と、対応する炎孔560,550に形成される燃焼炎で加熱されて起電圧を出力する炎検知センサとしての熱電対602,502とが設けられている。
グリル庫2の後方上部には、排気通路13に連通する排気用開口80が開設されている。また、グリル庫2の後端(奥側)には排気ダクト26が連設されており、排気ダクト26が排気通路13を構成している。そして、グリル庫2の後壁25の左右中央部には、第1温度センサ14aと、その下方に、第2温度センサ14bが配設されている。これら第1及び第2温度センサ14a,14bにより、グリル庫2内の庫内温度が検知される。本実施の形態では、既述した熱電対602,502の起電圧や第1温度センサ14aで検知された庫内温度に基づき、後述する自動調理の制御が実行され、第2温度センサ14bで検知される庫内温度に基づき発火防止の制御が実行される。なお、庫内温度を検知するために、第1温度センサ14aまたは第2温度センサ14bのいずれか一方のみを用いてもよい。
図1に戻って、グリル庫2のグリル扉21の左側に形成された操作部には、上下バーナ56,55の点・消火と火力調節機能を兼備したグリル用スイッチ37、及びその下方のカンガルー式の操作ユニット38が設けられている。操作ユニット38は、下方を支点にして上方を開いてタッチパネル式の操作部380が出現するようにコンロ本体3に対して装着されており、不使用時には操作ユニット38をコンロ本体3に対して押し込んだ収納状態にできるように構成されている。また、天板30上面の前方には、運転状態や調理モード、さらに調理条件等を表示する液晶表示部300が配設されており、表示盤が視認できるように構成されている。
操作部380には、グリルプレート20上に魚や肉などの被調理物を載置して自動調理するときに選択されるプレート調理モード用のグリルプレートスイッチ41と、焼網15上に被調理物を載置して自動調理するときに選択される焼網調理モード用のオートスイッチ42とが設けられている。また、操作部380には、焼網調理モードで被調理物の焼き加減を調節するための焼き加減スイッチ43が設けられている。
さらに、操作部380には、上記のグリルプレートスイッチ41、オートスイッチ42、及び焼き加減スイッチ43の各調理スイッチの操作回数に応じて点灯する表示部を備えている。具体的には、グリルプレートスイッチ41が操作されるごとに、タイマ、焼き魚、トーストが択一的に選択されて点灯されるようになっており、オートスイッチ42が操作されるごとに、干物、切身、姿焼が択一的に選択されて点灯されるようになっており、さらに焼き加減スイッチ43が操作されるごとに、強め、標準、弱めが択一的に選択されて点灯されるようになっている。従って、本実施の形態のガスコンロでは、グリルプレートスイッチ41及びオートスイッチ42が、自動調理モードを選択する自動調理モード選択部及び被調理物の種類を設定する被調理物設定部を構成する。
また、操作部380には、グリルプレートスイッチ41でタイマが選択された場合に、調理時間を設定するためのタイマスイッチ47と、調理時間を表示するタイマ表示部48とが配設されている。
図4は、本実施の形態のガスコンロのブロック図である。なお、制御装置Cは、上下バーナ56,55だけでなく、コンロバーナ31,32,36の燃焼も制御するが、以下では上下バーナ56,55についてのみ説明し、コンロバーナ31,32,36については説明を省略する。
図4に示すように、上下バーナ56,55にはそれぞれ、ガス供給管500から分岐した分岐管551,561が接続されており、ガス供給管500には、メイン弁V1が配設されている。分岐管551,561には、火力切替弁V2,V3が配設されており、火力切替弁V2,V3のバイパス管553,563にはオリフィス554,564が設けられている。これらメイン弁V1、及び火力切替弁V2,V3は、制御装置Cでその開閉が制御される。具体的には、メイン弁V1が開閉すると、上下バーナ56,55の両方に燃料ガスが供給または停止される。また、火力切替弁V3が開弁すると、分岐管561及びバイパス管563の両方から上バーナ56に燃料ガスが供給されて、上バーナ56が強火燃焼し、火力切替弁V3が閉弁すると、バイパス管563のみから燃料ガスが供給されて、上バーナ56が弱火燃焼する。さらに、火力切替弁V2が開弁すると、分岐管551及びバイパス管553の両方から下バーナ55に燃料ガスが供給されて、下バーナ55が強火燃焼し、火力切替弁V2が閉弁すると、バイパス管553のみから燃料ガスが供給されて、下バーナ55が弱火燃焼する。
制御装置Cには、上記第1及び第2温度センサ14a,14b、電源スイッチ29、グリル用スイッチ37、メイン弁V1、火力切替弁V2,V3、液晶表示部300、グリルプレートスイッチ41やオートスイッチ42を含む操作部380、イグナイタ600、及び熱電対602,502などが電気配線を介して接続されている。なお、グリルプレートスイッチ41、オートスイッチ42、及び焼き加減スイッチ43の操作回数は3進カウンタ(図示せず)でカウントされるとともに、3進カウンタの出力によって、選択された被調理物の種類や焼き加減が判断されるように構成されている。
制御装置Cは、マイクロコンピュータやタイマなどで構成されている。マイクロコンピュータには、図5〜図7に示す制御プログラムが組み込まれており、制御プログラムに基づいて上下バーナ56,55の火力や自動調理時間などが制御される。また、図示しないが、マイクロコンピュータは、機能構成として、メイン弁V1や火力切替弁V2,V3を開閉して上下バーナ56,55の火力を制御する燃焼制御部と、被調理物の種類や初期の庫内温度に応じて予想される最小調理量の被調理物を実質的に焼き上げるのに必要な最小所要時間を設定する最小所要時間設定部と、上下バーナ56,55が燃焼しているときに、各熱電対602,502の起電圧(出力値)に基づき失火エラーを判定する失火エラー判定部と、自動調理中、上バーナ56が燃焼しているときに、熱電対602の起電圧に基づき上バーナ56の火力切替を判定する火力切替判定部と、自動調理中の最小所要時間経過後に上バーナ56が燃焼しているときに、熱電対602の起電圧に基づき調理終期を判定する調理終期判定部と、自動調理中の庫内温度に基づき異常過熱を判定する異常過熱防止判定部と、自動調理中の被調理物の焼き上げ完了を判定する焼き上げ判定部と、最小所要時間より前の所定の早切れ防止判定時間から最小所要時間までの判定時間内に、庫内温度が異常過熱防止温度より低い所定の早切れ防止判定温度以上であるかどうかを判定する早切れ防止判定部とを有している。さらに、マイクロコンピュータのメモリには、各自動調理モードで自動調理を実行するための設定値を含むデータテーブルが格納されている。
下記の表1、及び表2は、プレート調理モードで「焼き魚」が選択された場合に設定されている最小所要時間や早切れ防止判定温度等の各設定値を含むデータテーブルであり、表3は、上下バーナ56,55の熱電対602,502の起電圧に基づいて、上下バーナ56,55の火力を変更するための失火判定基準値等の各設定値を含むデータテーブルである。これらの各設定値は、実験により予め求められたものであり、グリル庫2のサイズや上下バーナ56,55の能力などに応じて適宜設定される。なお、焼網調理モードで自動調理する場合にも、同様に、被調理物の種類や焼き加減ごとに異なる設定値が設定されたデータテーブルがメモリに格納されている。
上記表1及び表2中の各設定値について説明すると、初期温度T0は、自動調理開始時に第1温度センサ14aで検知される庫内温度である。具体的には、本実施の形態のプレート調理モードでは、自動調理開始時の初期温度T0に基づいて、各設定値を、L(例えば、90℃未満)、H(例えば、90℃以上、150℃未満)、HH(例えば、150℃以上、210℃未満)、及びSH(例えば、210℃以上)の4つの温度帯に分類して設定している。このように、自動調理開始時の初期温度T0に応じて、同種の被調理物を調理する場合でも、異なる調理条件で自動調理することにより、より細やかな火力制御を行うことができる。
最小所要時間Xminは、選択された被調理物の種類に応じた予想される最小調理量の被調理物を実質的に焼き上げるのに必要な時間であり、異常過熱防止判定、早切れ防止判定、または失火エラー判定で、最小所要時間Xmin前に上下バーナ56,55が強制的に消火されない場合を除いて、自動調理開始から上下バーナ56,55を強制的に継続燃焼させる時間である。なお、早切れ防止判定で上下バーナ56,55が最小所要時間Xminより前に消火された場合、最小所要時間Xminが焼き上げ判定の判断要素とされる。
焼き上げ完了温度Tfは、最小所要時間Xmin経過後に庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tfに到達したときに上下バーナ56,55を消火させるための判定温度であり、焼き上げ判定の判断要素の一つである。このように、最小所要時間Xmin経過後、上下バーナ56,55が継続燃焼している場合に、焼き上げ完了温度Tfで上下バーナ56,55を消火させることにより、料理としての許容範囲を越えて被調理物が焼き上がってしまうのを防止できる。
最大所要時間Xmaxは、庫内温度Th1が後述する切替温度T1に到達しない場合、または最小所要時間Xmin経過時に上下バーナ56,55が継続燃焼しており、最小所要時間Xmin経過後に第1温度センサ14aで検知される庫内温度Th1が上記焼き上げ完了温度Tfに到達せず、熱電対602の起電圧Vuが調理終期判定基準値Vz以下にも低下しない場合のいずれであっても、一定の調理時間が経過すると、上下バーナ56,55を強制消火させるための判定時間であり、焼き上げ判定の判断要素の1つである。
異常過熱防止温度Tkは、上下バーナ56,55の異常により第1温度センサ14aで検知される庫内温度Th1が所定の温度に到達した場合に、上下バーナ56,55を強制消火させる判定温度である。
初期火力P0、及び初期継続燃焼時間t0はそれぞれ、自動調理開始時に上下バーナ56,55に設定される火力、及び初期火力P0を維持する時間である。また、切替温度T1、及び切替火力P1は、被調理物の種類に応じて適切に被調理物を焼き上げるために、早切れ防止判定より前で庫内温度Th1が所定の温度以上になった場合に、上下バーナ56,55の火力を弱める判定温度、及び切替後の火力である。
早切れ防止判定時間tsは、最小所要時間Xminの所定時間前から最小所要時間Xminまでの判定時間を設定するための時間であり、早切れ防止判定温度Tsは、判定時間内に、庫内温度Th1が異常過熱防止温度Tkより所定温度低い温度に到達した場合、最小所要時間Xminより前であっても、上下バーナ56,55を強制的に消火させる判定温度である。
余熱時間trは、焼き上げ判定後に、グリル庫2内で被調理物を余熱により調理するために設定されている時間である。具体的には、(i)早切れ防止判定で上下バーナ56,55を消火した後に最小所要時間Xminが経過した場合、最小所要時間Xmin経過後、余熱状態で被調理物を調理する時間、(ii)庫内温度Th1が切替温度T1に到達することなく、最大所要時間Xmaxが経過した場合に、上下バーナ56,55を消火して、余熱状態で被調理物を調理する時間、(iii)最小所要時間Xminまで上下バーナ56,55が継続燃焼された後で、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tfに到達した場合に、上下バーナ56,55を消火して、余熱状態で被調理物を調理する時間、(iv)最小所要時間Xminまで上下バーナ56,55が継続燃焼された後で、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tfに到達せず、また熱電対602の起電圧Vuが調理終期判定基準値Vz以下にも到達せずに、最大所要時間Xmaxが経過した場合に、上下バーナ56,55を消火して、余熱状態で被調理物を調理する時間、または(v)最小所要時間Xminまで上下バーナ56,55が継続燃焼された後で、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tfに到達せずに、熱電対602の起電圧Vuが調理終期判定基準値Vz以下に到達した場合に、上下バーナ56,55を消火して、余熱状態で被調理物を調理する時間である。このような余熱時間trを自動調理時間内に設けることにより、被調理物の表面を焼き過ぎることなく、高温の庫内温度により被調理物の内部まで十分に熱を通すことができ、被調理物をふっくらと焼き上げることができる。
また、表3中の各設定値について説明すると、失火判定基準値Vx及び判定時間txはそれぞれ、自動調理中、何らかの異常により上下バーナ56,55の少なくともいずれか一方の燃焼状態に不良が生じ、熱電対602,502のいずれかの起電圧Vu,Vlが低下した場合に、上下バーナ56,55を強制的に消火させるための判定基準値及び判定時間である。火力切替判定基準値Vy及び判定時間tyはそれぞれ、自動調理中、上バーナ56の燃焼状態が不安定になり、熱電対602の起電圧Vuが低下した場合に、上バーナ56へのガスの供給量を一旦増加して、火力を強めるための判定基準値及び判定時間である。調理終期判定基準値Vz及び判定時間tzはそれぞれ、自動調理中の最小所要時間Xmin経過後、上バーナ56の燃焼状態が不安定になり、熱電対602の起電圧Vuが低下した場合に、上下バーナ56,55へのガスの供給を停止して、上下バーナ56,55を消火させるための判定基準値及び判定時間であり、焼き上げ判定の判断要素の1つである。従って、失火判定基準値Vx、火力切替判定基準値Vy、及び調理終期判定基準値Vzは、Vx≦Vz<Vyの関係となるように設定されている。なお、本実施の形態では、自動調理を円滑に進めるために、最小所要時間Xmin前後に関わらず、熱電対602の起電圧Vuが火力切替判定基準値Vy以下を判定時間ty連続して示す場合、上バーナ56の火力が強められるが、被調理物から発生する水蒸気に起因した起電圧Vuの低下は、調理終期の最小所要時間Xmin経過後に大きくなることから、最小所要時間Xmin経過後のみ、火力切替判定を行ってもよい。
次に、図5〜図8を参照して、本実施の形態のグリル庫2を用いてプレート調理モードで自動調理を行う場合の制御動作を説明する。図5〜図7は、マイクロコンピュータに組み込まれているグリルプレートスイッチ41で「焼き魚」が選択された場合の自動調理を行うための制御プログラムの一例を示すフローチャートであり、図8は、初期温度T0がLの場合の自動調理時間と庫内温度との関係の一例を示す相関図である。なお、オートスイッチ42が選択されて焼網調理モードが行われる場合も同様の制御が行われる。
まず、使用者が電源スイッチ29をオンし、グリルプレートスイッチ41を操作してプレート調理モードでの被調理物の種類(例えば、焼き魚)を選択し、グリル用スイッチ37をオンして上下バーナ56,55を所定の初期火力P0(例えば、いずれも強火)で点火させると、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Th1から初期温度T0が取得され、選択された調理モード、被調理物の種類、及び初期温度T0に応じて設定されている各設定値が読み込まれる(ステップST1〜ST4)。
所定の初期継続燃焼時間t0(例えば、1分間)、初期火力P0が維持された後、庫内温度Th1が切替温度T1(例えば、230℃)に到達すると、上下バーナ56,55の火力が切替火力P1(例えば、いずれも弱火)に弱められる(ステップST5〜ST7)。なお、庫内温度Th1が、最大所要時間Xmax(例えば、15.5分間)を経過しても、切替温度T1に到達しなかった場合(ステップST6で、NO、ステップST8で、Yes)、上下バーナ56,55を消火し(ステップST9)、焼き上げ判定を行って、所定の余熱時間tr(例えば、1分間)、余熱で調理する(図8の例5を参照)。また、庫内温度Th1が切替温度T1に到達しなくても、最大所要時間Xmaxが経過するまでに、熱電対602,502のいずれかの起電圧Vu,Vlが失火判定基準値Vx(例えば、2.5mV)以下を判定時間tx(例えば、10秒間)連続して示す場合、上下バーナ56,55のいずれかに何らかの異常が生じた虞があるとして、上下バーナ56,55へのガスの供給を停止して、上下バーナ56,55を強制消火し、液晶表示部300や図示しないスピーカ等から失火エラーによる異常終了を報知する(ステップST10〜ST12)。
次いで、図6に示す庫内温度Th1が異常過熱防止温度Tk(例えば、280℃)まで上昇しているかどうか判定され(ステップST13)、庫内温度Th1が異常過熱防止温度Tk以上になれば、上下バーナ56,55に火力切替機能等の異常が生じた虞があるとして、上下バーナ56,55を強制消火し(図8の例1を参照)、液晶表示部300や図示しないスピーカ等から過熱防止エラーによる異常終了を報知する(ステップST14〜ST15)。
一方、上下バーナ56,55の火力が切替火力P1に弱められた後、庫内温度Th1が異常過熱防止温度Tkまで上昇することなく、自動調理開始からの調理時間が最小所要時間Xmin(例えば、7.5分間)より前の早切れ防止判定時間ts(例えば、5.5分間)になると(ステップST16で、Yes)、庫内温度Th1が早切れ防止判定温度Ts(例えば、278℃)に到達しているかどうかが判定される(ステップST22)。そして、早切れ防止判定時間ts経過後、最小所要時間Xminより前に庫内温度Th1が早切れ防止判定温度Tsに到達すると(ステップST22で、Yes)、上下バーナ56,55を消火し(ステップST23)、最小所要時間Xminまで余熱で調理を行って(ステップST24)、焼き上げ完了を判定する(図8の例2を参照)。
また、早切れ防止判定時間ts前に、熱電対602の起電圧Vuが火力切替判定基準値Vy(例えば、6mV)以下を判定時間ty(例えば、2秒間)連続して示す場合、上バーナ56の燃焼状態が不安定になったとして、上バーナ56へのガスの供給量を増加し、上バーナ56を強火に切り替える(ステップST17〜ST18)。これにより、熱電対602の起電圧Vuが上昇するから、上バーナ56の燃焼状態が多少不安定であっても、起電圧Vuが失火判定基準値Vxに達し難くなり、自動調理を継続させることができる。なお、上バーナ56の火力を強めた後でも、熱電対602,502のいずれかの起電圧Vu,Vlが失火判定基準値Vx以下を判定時間tx連続して示す場合、上記と同様に、上下バーナ56,55へのガスの供給を停止して、上下バーナ56,55を強制消火し、失火エラーによる異常終了を報知する(ステップST19〜ST21)。
一方、判定時間内の庫内温度Th1が早切れ防止判定温度Ts未満であれば(ステップST22で、No)、最小所要時間Xminまで上下バーナ56,55の燃焼が継続される。なお、最小所要時間Xminが経過するまでは、上記と同様に、火力切替判定及び失火エラー判定が行われ、火力切替判定で上バーナ56の燃焼が不安定となった場合、上下バーナ56,55の設定火力を確認して、上下バーナ56,55がいずれも弱火に設定されていれば、上バーナ56へのガスの供給量を増加し、上バーナ56を強火に切り替え、さらに失火エラー判定で異常が生じた虞がある場合、上下バーナ56,55を強制消火する(ステップST26〜ST31)。
次いで、図7に示す最小所要時間Xmin経過後、最大所要時間Xmax前に(ステップST32で、No)、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tf(例えば、275℃)に到達すると(ステップST33で、Yes)、上下バーナ56,55を消火し(ステップST39)、焼き上げ完了を判定する(図8の例3を参照)。
また、最小所要時間Xmin経過後、最大所要時間Xmax前に、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tfに到達しない場合(ステップST33で、No)、上記と同様に、熱電対602の起電圧Vuに基づいて火力切替判定が行われる。そして、熱電対602の起電圧Vuが火力切替判定基準値Vy以下を判定時間ty連続して示す場合、被調理物の内部から発生する水蒸気によって上バーナ56の燃焼状態が不安定になったとして、上下バーナの56,55の設定火力を確認し、上下バーナ56,55がいずれも弱火に設定されていれば、上バーナ56へのガスの供給量を増加して、上バーナ56を強火に切り替える(ステップST35〜ST36)。これにより、調理終期に不要な上下バーナ56,55の強制消火を回避できるとともに、起電圧Vuに基づいて調理終期を安定して判定できる。
次いで、上記のように上バーナ56が強火であっても、熱電対602の起電圧Vuが調理終期判定基準値Vz(例えば、2.5mV)以下を判定時間tz(例えば、6秒間)連続して示す場合、調理終期の被調理物の内部から水蒸気が発生しているとして、上下バーナ56,55へのガスの供給を停止して、上下バーナ56,55を消火し(ステップST37〜ST38)、焼き上げ完了を判定する。なお、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tfに到達せず、また熱電対602の起電圧Vuが調理終期判定基準値Vz以下まで低下せずに、最大所要時間Xmaxが経過すると(ステップST32で、Yes)、上下バーナ56,55を消火し(ステップST39)、焼き上げ完了を判定する(図8の例4を参照)。
上記のようにして各焼き上げ判定が行われると(ステップST40)、いずれの場合でも、さらに上下バーナ56,55を消火させたままの状態で所定の余熱時間tr(例えば、1分間)、余熱調理を継続させ(ステップST41)、余熱時間trが経過すると、液晶表示部300や図示しないスピーカから自動調理の終了を報知させる(ステップST42)。
図9は、本実施の形態のグリル庫2で、自動調理を行ったときの自動調理時間と上バーナ56の熱電対602の起電圧Vuとの関係の一例を示す相関図である。図9に示すように、何らかの異常が生じなければ、最小所要時間Xminが経過した後、起電圧Vuが変動し始め、低下してくる(図9のA領域)。これは、最小所要時間Xminまで上下バーナ56,55を燃焼させた場合、被調理物の内部まで火が通り、被調理物の内部から水蒸気が発生し始めるためである。そして、既述したように、最小所要時間Xminを経過した後、起電圧Vuが火力切替判定基準値Vy以下を判定時間ty連続して示す場合、上バーナ56が弱火で燃焼していれば、上バーナ56へのガスの供給量を増加させて、上バーナ56を強火で燃焼させるから、水蒸気による上バーナ56の燃焼状態の変動であれば、起電圧Vuが回復する(図9のB領域)。その後、被調理物の調理が進んで、さらに被調理物の内部から水蒸気が発生すると、再度、起電圧Vuが低下してくる。このとき、最大所要時間Xmax経過前で、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tfに到達していなくても、起電圧Vuが調理終期判定基準値Vz以下を判定時間tz連続して示す場合(図9のC領域)、被調理物の内部まで十分に加熱されたと判断できるから、上下バーナ56,55がいずれも消火される。
以上のように、本実施の形態によれば、上下バーナ56,55を燃焼させて自動調理を開始させると、異常過熱や失火エラー等が生じない限り、被調理物の種類や、さらには初期の庫内温度に応じて設定された最小調理量の被調理物を実質的に焼き上げるのに必要な時間である最小所要時間が経過するまでは少なくとも上下バーナ56,55を所定の火力で燃焼させるから、被調理物の調理を進行させることができる。そして、最小所要時間が経過して、被調理物の内部まで火が通る調理終期になると、被調理物の内部の水分が蒸発するため、グリル庫2内に燃焼のための酸素を有さない多量の水蒸気が充満し、上下バーナ56,55の燃焼が妨げられ、特に、グリルプレート20を用いた調理では、上バーナ56の燃焼状態が不安定となりやすい。従って、最小所要時間まで上下バーナ56,55を燃焼させた後に上バーナ56の熱電対602の起電圧(出力値)が所定の調理終期判定基準値以下になれば、被調理物の内部まで十分に加熱されたと判断できる。これにより、庫内温度による焼き上げ判定を待つことなく、調理終期における被調理物の加熱状態を精度良く判定できる。また、最小所要時間経過後に多量の水蒸気が発生し、庫内温度の上昇に時間がかかる場合でも、被調理物の焼き上がりを判定できるから、早期に上下バーナ56,55を消火でき、被調理物の表面の焼き過ぎも防止できる。
また、調理終期に被調理物の内部から発生する多量の水蒸気によって、熱電対602近傍の炎孔560に形成される燃焼炎が不安定となり、起電圧が失火判定基準値以下まで低下すると、他の炎孔560には燃焼炎が形成されているにも関わらず、強制的に上下バーナ56,55が消火されてしまい、自動調理が中断される可能性がある。しかしながら、上記実施の形態では、最小所要時間経過後に熱電対602の起電圧が調理終期判定基準値より高い火力切替判定基準値以下になれば、上バーナ56へのガスの供給量を一旦増加させて、上バーナ56の火力を強めるから、水蒸気の発生によって上バーナ56が不要に消火されることが防止され、被調理物を十分に加熱することができる。しかも、上バーナ56へのガスの供給量を一旦増加させて火力を強めた後で熱電対602の起電圧が調理終期判定基準値以下まで低下した場合に調理終期を判定するから、焼き上がり初期に多量の水蒸気の発生による起電圧の低下があっても、被調理物の内部全体が加熱されたときの起電圧の低下を確実に把握することができる。
さらに、本実施の形態によれば、庫内温度や自動調理時間だけでなく、熱電対602の起電圧にも基づいて被調理物の焼き上がりが判定されるから、調理終期における水蒸気の発生のしやすさに関わらず、いずれの被調理物でも自動調理により良好に焼き上げることができる。
(実施の形態2)
上記実施の形態では、最小所要時間経過後に上バーナ56の熱電対602の起電圧が調理終期判定基準値以下であれば、上下バーナ56,55をいずれも消火しているが、熱電対602の起電圧(出力値)が調理終期判定基準値以下になると、上バーナ56のみを消火し、下バーナ55の燃焼を継続させてもよい。なお、本実施の形態のガスコンロや用いられる調理具の構造、基本的な制御構成は、実施の形態1のそれらと同一であるため、説明を省略する。
図10は、本実施の形態においてプレート調理モードで自動調理を行う場合の制御動作の一例を示すフローチャートの一部であり、上記のように調理終期判定後の制御動作が相違する以外は、図5〜図7で説明した実施の形態1のそれと同一である。このため、異なる部分のみに異なるステップ番号を付して説明し、同一の部分は説明を省略する。
自動調理中、最小所要時間Xminが経過して、熱電対602の起電圧Vuが調理終期判定基準値Vz以下を判定時間tz連続して示す場合、上バーナ56へのガスの供給を停止して、上バーナ56を消火し、下バーナ55のみ燃焼を継続させる(ステップST34〜ステップST381)。そして、庫内温度Th1が焼き上げ完了温度Tf以上になるか、最大所要時間Xmaxが経過すると(ステップST382〜ST383)、下バーナ55へのガスの供給を停止して、下バーナ55を消火し(ステップST384)、焼き上げ完了を判定する。
被調理物や調理条件によっては、表面の焼き過ぎを抑えながら内部まで十分に加熱するために、調理終期に所定時間、弱い火力で調理を継続させたい場合があるが、既述したように庫内温度に基づく場合、調理終期の判断が難しい。しかしながら、最小所要時間まで上下バーナ56,55を燃焼させた後に熱電対602の起電圧(出力値)が所定の調理終期判定基準値以下まで低下すれば、被調理物から発生する水蒸気に起因した起電圧の低下と判断できる。従って、上記実施の形態によれば、調理終期の被調理物の加熱状態を精度良く判定できる。これにより、適切な時間に上バーナ56を消火することができ、表面の焼き過ぎを防止しながら、内部までしっかり火を通すことができる。
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態ではいずれも、調理終期判定基準値を失火判定基準値と同一としているが、火力切替判定基準値より低ければ、調理終期判定基準値は失火判定基準値より高くてもよい。
(2)上記実施の形態ではいずれも、上下バーナを有する加熱調理器が用いられているが、上バーナのみを有する加熱調理器であってもよい。
(3)上記実施の形態では、調理具として、焼網、グリルプレート、及び汁受け皿を例に挙げて説明したが、調理容器等の食材を加熱庫内に載置して調理可能な他の調理具を用いることもできる。