JP2016042409A - リチウムイオン二次電池用リチウム含有金属酸化物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池の正極活物質としての、リチウムの含有量が高く、長寿命で、かつ、放電時に大電流が流れ易いリチウム含有金属酸化物の製造方法を提供すること。
【解決手段】以下の3つの工程を順に経るリチウム含有金属酸化物の製造方法:(1)所望の正極活物質を構成する金属元素から成り、スピネル構造結晶を有することにより高い元素分散性を有するリチウム含有金属酸化物を得る工程; (2)上記工程(1)で得られた金属酸化物と特定のリチウム化合物とを混合して焼成することにより、前記金属酸化物にリチウム元素を追加で導入する工程;及び(3)上記工程(2)で得られた金属酸化物を酸性水溶液と接触させた後、特定の温度で焼成する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として好適なリチウム含有金属酸化物の製法方法に関する。
近年の環境技術への関心の高まりに伴い、太陽光発電、風力発電等によって生み出された電気エネルギーの蓄電用途;電気自動車のバッテリー用途等において、蓄電デバイスに対する期待はますます高くなっている。特に、蓄電デバイスの代表であるリチウムイオン二次電池には、蓄電能力向上のために、更なる高容量化が求められている。リチウムイオン二次電池の容量は、電池内の正極におけるリチウム含有金属酸化物のリチウムの含有量に支配される。そのため、リチウムの含有量が多いリチウム含有金属酸化物を開発することにより、リチウムイオン電池の高容量化が期待される。
リチウム含有金属酸化物として、組成式LiMeO{式中、Meは遷移金属元素である。}で表される層状リチウム酸化物結晶を用いる現在のリチウムイオン二次電池の実容量は約160mAh/gであり、これ以上容量を増やすことは現実的に困難な状況になっている。かかる問題に対して、リチウム含有金属酸化物中のリチウムの含有量を増やすことによって高容量化を達成したリチウム含有金属酸化物が報告されている。
例えば特許文献1には、組成式LiMn2−εMe’ε{式中、Me’は、Li及びMn以外の金属元素であり、そして0≦ε≦0.5である。}で表されるスピネル構造を有する結晶と、組成式LiMnOで記載される層状リチウム酸化物結晶とが固溶した結晶である組成式ωLiMnO・(1−ω)LiMn2−εMe’ε{式中、0<ω<1であり、Me’はMn以外の金属元素であり、そして0≦ε≦0.5である。}で表されるリチウム含有金属酸化物が記載されている。
リチウム含有金属酸化物を構成する結晶内に、リチウムの含有量が多い組成式LiMnOで表される結晶を固溶させた前述のリチウム含有金属酸化物は、組成式LiMeOで表される現在のリチウム含有金属酸化物よりもリチウムの含有量が多い。このような高リチウム含量の金属酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池は、その実容量として約200mAh/g以上の高い数値が報告されている。
更に前述のリチウム含有金属酸化物は、それを構成する組成式LiMnOで表される層状リチウム酸化物結晶、及び組成式LiMn2−εMe’εで表されるスピネル構造からなる結晶の双方とも、リチウムイオン二次電池の充放電時に起こるLiの結晶内外への出入りに対してその構造が安定である。従って、多数回の充放電を行っても、結晶の構造変化が少なく、電圧降下が起き難いから、寿命の長いリチウムイオン二次電池を提供することが期待される。
米国特許第7635536号明細書
しかしながら、組成式LiMnOで表される結晶が固溶したリチウム含有金属酸化物を用いるリチウムイオン二次電池は、一般に、電気抵抗が大きく、放電時に大電流を流すのが難しいという問題があるため、現状では実用化には至っていない。その理由の1つとして、組成式LiMnOで表される結晶の電気抵抗が大きいことが挙げられる。
組成式LiMnOで表される結晶の電気抵抗が大きい理由は完全には解明されていない。本発明者等は、特定の理論に束縛されることを好まないが、当該結晶が電解液と接する表面において、電解液から結晶内へのLiの輸送速度が遅いことが、1つの理由ではないかと考えている。従って、組成式LiMnOで表される結晶の表面状態を化学的に変化させることにより、電気抵抗が減少し、電解液から結晶内へのLiの輸送速度が増大して、大電流が流れ易くなると期待される。
かかる事情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、リチウムイオン二次電池の正極活物質としての、リチウムの含有量が高く、長寿命で、かつ、放電時に大電流が流れ易いリチウム含有金属酸化物の製造方法を提供することである。
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた。その結果、リチウム以外に少なくとも1種類の金属元素を含む正極活物質を、以下の3つの工程:
(1)所望の正極活物質を構成する金属元素から成り、スピネル構造結晶を有することにより高い元素分散性を有するリチウム含有金属酸化物を得る工程;
(2)上記工程(1)で得られた金属酸化物と特定のリチウム化合物とを混合して焼成することにより、前記金属酸化物にリチウム元素を追加で導入する工程;及び
(3)上記工程(2)で得られた金属酸化物を酸性水溶液と接触させた後、特定の温度で焼成する工程;
を順に経ることにより、
工程(1)で製造したスピネル結晶構造の金属元素の高い分散状態を概ね保持したまま、
表面状態の化学的変化によって電気抵抗が減少することを見出した。上記の3工程を経て製造された金属酸化物は、リチウム含有量が多く、長寿命で、かつ、放電時に大電流が流れ易いリチウム含有金属酸化物である。本発明は、上記のような知見に基づいて完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 以下の工程:
(1)下記組成式(1):
Li・・・(1)
{式中、1≦x≦2、0≦a≦1、1≦b≦3、及び0≦c≦2の関係を満足する。}で表されるリチウム化合物Aと、
Li以外の1種類以上の金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、及び酢酸塩から選ばれる少なくとも1つと
を焼成して、Liと、Li以外に少なくとも1種類の金属元素とを含み、かつ下記式(2):
Li1+k4―α・・・(2)
{式中、MはLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるスピネル構造結晶を有するリチウム含有金属酸化物Bを得る工程;
(2)得られたリチウム含有金属酸化物Bと、前記組成式(1)で表されるリチウム化合物Aとを混合して焼成して、
上記組成式(2)で表されるスピネル構造結晶と、
下記組成式(3):
LiM’O3−β・・・(3)
{式中、M’は、金属元素Mに含まれるLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦β<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶と
が固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物Cを得る工程;及び
(3)得られたリチウム含有金属酸化物Cを、無機酸又は有機酸を含有する酸性水溶液と接触させた後、100℃超過600℃未満の温度で焼成する工程;
を含む、リチウムイオン二次電池用のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[2] 前記式(2)中のMが、少なくともMnを含む、[1]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[3] 前記式(2)中のMが、更に少なくともNiを含む、[2]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[4] 前記式(3)中のM’が、Ni、Co、Al、Mn、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、Ge、及びZrから選ばれる少なくとも1つである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[5] 前記リチウム化合物Aが、炭酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも1つを含む、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[6] 前記無機酸が、硫酸、塩酸、及び硝酸から選ばれる少なくとも1つを含む、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[7] 前記有機酸が、酢酸及びギ酸から選ばれる少なくとも1つを含む、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[8] [1]〜[7]のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする、リチウム含有金属酸化物を含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質。
[9] 正極活物質として、[8]に記載の正極活物質を用いることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、高容量及び長寿命であり、かつ、放電時に大電流が流れ易いリチウムイオン二次電池の正極活物質の製造に、好適に利用可能である。
実施例1における、リチウム含有金属酸化物B及びリチウム含有金属酸化物CのX線回折スペクトルである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
前記したように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、以下の工程:
(1)下記組成式(1):
Li・・・(1)
{式中、1≦x≦2、0≦a≦1、1≦b≦3、及び0≦c≦2の関係を満足する。}で表されるリチウム化合物Aと、
Li以外の1種類以上の金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、及び酢酸塩から選ばれる少なくとも1つと
を焼成して、Liと、Li以外に少なくとも1種類の金属元素とを含み、かつ下記式(2):
Li1+k4―α・・・(2)
{式中、MはLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるスピネル構造結晶を有するリチウム含有金属酸化物Bを得る工程(工程1);
(2)得られたリチウム含有金属酸化物Bと、前記組成式(1)で表されるリチウム化合物Aとを混合して焼成して、
上記組成式(2)で表されるスピネル構造結晶と、
下記組成式(3):
LiM’O3−β・・・(3)
{式中、M’は、金属元素Mに含まれるLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦β<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶と
が固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物Cを得る工程(工程2);及び
(3)得られたリチウム含有金属酸化物Cを、無機酸又は有機酸を含有する酸性水溶液と接触させた後、100℃超過600℃未満の温度で焼成する工程(工程3);
を含む。
[工程(1)]
工程(1)では、下記組成式(1):
Li・・・(1)
{式中、1≦x≦2、0≦a≦1、1≦b≦3、及び0≦c≦2の関係を満足する。}で表されるリチウム化合物Aと、
Li以外の1種類以上の金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、及び酢酸塩から選ばれる少なくとも1つと
を焼成して、Liと、Li以外に少なくとも1種類の金属元素とを含み、かつ、下記式(2):
Li1+k4―α・・・(2)
{式中、MはLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるスピネル構造結晶を有するリチウム含有金属酸化物Bを製造する。
リチウム化合物Aの具体例としては、例えば炭酸リチウム、水酸化リチウム等、及びこれらの混合物を挙げることができる。炭酸リチウム及び水酸化リチウムは、酸化物との反応性が高く、焼成時に容易に反応する。また、反応後、リチウム以外の成分は、二酸化炭素、酸素、及び水に分解されるため、不純物となる余剰な残渣が残り難い。従って、リチウム化合物Aとしての炭酸リチウム及び水酸化リチウムは、いずれも、リチウム含有金属酸化物の製造に適した原料である。
工程(1)においては、組成式(1)で表されるリチウム化合物Aのみを使用してもよいし、これ以外に、必要に応じて、硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム等を単独又は組み合わせて併用してもよい。
組成式(2)における金属元素Mとしては、例えばMn、Ni、Co、Al、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、Ge、Zr等を挙げることができる。Mとしては、これらのうち、少なくともMnを含有することが好ましく、更にNiを含有することも好ましい態様である。Mnを含有することにより、工程(2)において結晶内にリチウムを追加導入(追添)しやすくすることができ、同時に組成式(3)で表される層状構造結晶が形成し易くなる。また、Niを含有することにより、リチウムイオン二次電池の起電力を向上させることができる。
金属元素Mとして、上記のMn及びNi以外の金属元素を含有する場合、これらは、組成式(2)で表されるスピネル構造結晶中で何らかの機能を発現するというよりは、工程(2)により生成される、組成式(3)で表される結晶構造における金属元素M’の一部として層状構造結晶中に取り込まれることにより、得られるリチウムイオン二次電池の長寿命化、大電流放電の容易化等の効果を発現する。
金属元素MにMnの原子数が占める割合としては、金属元素Mの全原子数に対して、75モル%以上であることが好ましい。MがNiを含有する場合、その割合は、金属元素Mの全原子数に対して、25%以下が好ましい。Niの割合が25%を超過すると、スピネル構造以外の、正極活物質として機能しない結晶構造が生成する可能性がある。
組成式(2)中のMにおけるMn及びNi以外の金属元素数の割合は、Mの全原子数に対して25%以下が好ましい。
なお、スピネル構造としては、空間群
Figure 2016042409
に帰属されるディスオーダー構造でもよいし、空間群P432に帰属されるオーダー構造でもよいし、これらの両方の構造が混じっていてもよい。組成式(2)で表されるスピネル構造においては、kの値は一般的なスピネルでは0であるが、リチウムを過剰に含むスピネル構造の場合、0<k<1の値をとってもよい。その際、スピネル構造の一部又は全体が岩塩構造等の他の立方晶、斜方晶、正方晶等の、他の結晶構造に近い構造に変形してもよい。
組成式(2)で表されるスピネル構造が含有する酸素の割合を示すαの値は、0に近い値をとる。α=0のとき、スピネル構造中の酸素原子が入るサイトには、すべて酸素原子が入っており、酸素欠損が無い状態となる。しかしながら、実際のスピネル構造では酸素欠損が多かれ少なかれ発生し、α>0となる場合が多い。但し、α<1でないとスピネル構造を形成することは困難である。
リチウム含有金属酸化物Bは、組成式(2)で表されるスピネル構造結晶を含むことが必須であるが、他の構造を有する結晶を含有していてもよい。ここで、他の構造を有する結晶としては、正極活物質として機能する、スピネル構造以外の結晶(例えばオリビン構造結晶等);
正極活物質として機能しない構造の結晶を挙げることができる。ここで、リチウム含有金属酸化物Aが、正極活物質として機能しない構造の結晶を含む場合には、該結晶は、工程(3)を経た後に正極活物質として機能する構造の結晶になるものであることが好ましい。
リチウム含有金属酸化物Bを上記のように構成することにより、得られるリチウムイオン二次電池をより高容量化することができる。
工程(1)で製造されるリチウム含有金属酸化物Bにおいては、それぞれの金属元素が結晶内で均一に分散していることが好ましい。この要件は、同種の金属元素が凝集していない状態が好ましいことを意味する。同種の金属元素の凝集が発生すると、その凝集部分が所望の結晶構造とは異なる構造の結晶を生成し、正極活物質としてのリチウム含有金属酸化物の性能を低下させる可能性がある。
工程(1)においてリチウム含有金属酸化物Bを製造する工程は、焼成工程を経ていさえすれば特に限定されるものではない。しかしながら、リチウム含有金属酸化物Bは高い元素分散性を有していることが好ましいため、例えば以下のような3つの例を挙げることができる。
[例1]
例1としては、原料として、
細かく粉砕したリチウム化合物A(例えば、硫酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム等)と
細かく粉砕した他の原料(好ましくは1種類以上の金属酸化物)と
を混合した後、焼成する方法が挙げられる。このとき、紛体を混合した状態のまま焼成してもよいし、圧縮形成してペレット状にして焼成してもよいし、混合したものを水等の液体に分散又は溶解させた後にスプレードライ法等により噴霧乾燥したものを焼成してもよい。
[例2]
例2としては、原料として、リチウム化合物Aと、他の原料(好ましくは1種類以上の金属の塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩等))とを適当な溶媒に溶解させた後、溶媒をドライアップした後に焼成する方法が挙げられる。ここで、溶媒としては、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール等を挙げることができる。
例2は、特に、金属塩として硝酸塩と酢酸塩とを併用する場合に好ましく適用できる。この時、硝酸イオンNO と酢酸イオンCHCOOとのモル比は1:2〜1:5が好ましく、1:25〜1:4がより好ましく、1:3が最も好ましい。
例2においては、金属イオンに配位結合して、ドライアップ時に同種の金属元素が凝集して元素分散性が低下することを抑制する働きを有する既知の錯形成剤を添加してもよい。そのような錯形成剤としては、例えばクエン酸、酢酸、リンゴ酸、アセチルアセトン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。
[例3]
例3としては、原料として1種類以上の金属の塩(の水溶液)とアルカリとを反応させて得られる難溶性の金属塩の粒子に、前述のリチウム化合物Aを添加・混合した後、焼成する方法が挙げられる。
前記原料としての金属の塩としては、例えば硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩等を;
前記アルカリとしては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を;
前記難溶性の金属塩としては、例えば炭酸塩、水酸化物塩、オキシ水酸化物塩、それらの複合塩等を
それぞれ挙げることができる。
例3における反応は、例えば水溶液中で行うことができる。該反応の際には、水溶液中の溶存酸素によって金属イオンが酸化されるのを防ぐために、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素等を吹き込みながら反応させることが好ましい。炭酸塩を製造する場合には、二酸化炭素を採用すると、炭酸塩がより生成し易い環境が与えられるため、好ましい。
また、金属イオンに配位結合し、難溶性の金属塩中で同種の金属元素が凝集して元素分散性が低下することを抑制する働きを有する既知の錯形成剤を添加してもよい。そのような錯形成剤としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ビピリジン、ジアミノエタノール等を用いることができる。
上記の例示のなかで、
リチウム含有金属酸化物Bの元素分散性をより高めるという点では例2又は例3が好ましく、
二次粒子サイズの制御という点では例3が好ましく、そして
合成時のコストを抑えるという点では例1が好ましい。
工程(1)における焼成温度は、目的のリチウム含有金属酸化物Bが得られる焼成温度であれば特に限定されない。この焼成温度としては、リチウムと1種類以上の金属元素とが、酸素と均一に反応するとの観点から選択され、少なくとも300℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましい。但し、焼成に伴う結晶化が進行しすぎて結晶の平均一次粒径が大きくなりすぎると、最終的に得られるリチウム含有金属酸化物の放電特性が悪化する。そのため、焼成温度は1,000℃以下とするのが好ましく、950℃以下がより好ましい。
工程(1)では、同じ又は異なる温度で複数回焼成を行ってもよい。例えば、400℃〜600℃で焼成した後、700〜900℃で焼成を行う等してもよい。複数回の焼成は、炉の中に原料を入れた状態で連続して行ってもよいし、ある温度における焼成後、炉から原料を取り出して混合・解砕・圧縮等の処理を施した後に、再度炉に入れて焼成してもよい。
[工程(2)]
工程(2)では、工程(1)で得られたリチウム含有金属酸化物Bと、前記組成式(1)で表されるリチウム化合物Aとを混合し、焼成することにより、
組成式(2)で表されるスピネル構造結晶の一部を、下記組成式(3):
LiM’O3−β・・・(3)
{式中、M’は、金属元素Mに含まれるLi以外の1種類以上の金属元素であり、0≦β<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶に変化させる。このことにより、組成式(2)で表されるスピネル構造結晶と組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶とが固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物Cを得る。ここで使用するリチウム化合物Aは、前記の工程(1)において使用したものと同種のものであってもよく、異なる種類のものであってもよい。
組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶としては、空間群
Figure 2016042409
に帰属される結晶構造でもよいし、空間群C2/mに帰属される結晶構造でもよいし、若しくは空間群P312に帰属される結晶構造でもよいし、又はこれらが混じった構造でもよい。
本実施形態において組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶を構成する金属元素であるM’として好ましいものは、例えばNi、Co、Al、Mn、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、Ge、及びZrから選ばれる少なくとも1つである。組成式(2)で表されるスピネル構造結晶の一部が変化してできることを鑑みると、M’としてMnを含有していることが好ましい。
M’中に占めるMn原子数の割合は、M’の全原子数に対して、好ましくは65%以上であり、より好ましくは80%以上である。
工程(2)により、
組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶をリチウム含有金属酸化物B内に形成して、
組成式(2)で表されるスピネル構造結晶と、
組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶と
が互いに固溶した結晶が形成される。このことにより、得られるリチウムイオン二次電池の容量を高めるとともに、大電流放電をし易くすることができる。
組成式(3)で表される層状構造が含有する酸素の割合を示すβの値は、0又は0に近い値をとる。β=0のとき、層状構造中の酸素原子が入るサイトにはすべて酸素原子が入っており、酸素欠損がない状態となる。しかしながら、実際の層状構造では酸素欠損が多かれ少なかれ発生することが多く、β>0となる場合が多い。また、β>0の場合に層状構造の一部又は全部が変形して、前述の空間群と異なる構造に変形してもよい。但し、β<1でないと層状構造を形成することは困難である。
この、組成式(2)で表されるスピネル構造結晶の一部を組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶に変化させる反応を起こす工程(2)は、リチウム含有金属酸化物Bにリチウムを追加で導入する(追添する)ことによって達成される。追加で導入するリチウムの原料としては、リチウム含有金属酸化物Bとの反応によってリチウムがリチウム含有金属酸化物Bの結晶内に拡散していくものであれば特に限定されない。この点、前述の組成式(1)で表されるリチウム化合物Aが、効率的にリチウムを導入できるため好ましい。工程(2)で使用されるリチウム化合物Aの好ましい例としては、例えば炭酸リチウム、水酸化リチウム等、及びこれらの混合物を挙げることができる。
追加で導入するリチウムの原料としては、組成式(1)で表されるリチウム化合物Aのみを使用してもよいし、これ以外に、必要に応じて、硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム等を単独又は組み合わせて用いてもよい。
工程(2)におけるリチウム化合物Aの使用量は、リチウム含有金属酸化物Bの100質量部に対して、5〜50質量部とすることが好ましく、10〜45質量部とすることがより好ましい。特に、リチウム化合物Aが炭酸リチウムの場合は、15〜45質量部とすることが好ましく、リチウム化合物Aが水酸化リチウムの場合は、10〜30質量部とすることが好ましい。
リチウム化合物Aをリチウム含有金属酸化物Bと混合する際には、リチウム化合物Aとして
粉砕等の適宜の手段によって微細化したリチウム化合物Aを用いてもよいし、
適当な媒体に溶解又は分散させたリチウム化合物Aを用いてもよい。この媒体としては、例えば水等を挙げることができる。溶解又は分散させたリチウム化合物Aを用いた場合には、混合後、焼成前に、該媒体をドライアップしてもよいし、媒体が残ったまま焼成してもよい。
工程(2)における焼成温度は、以下に説明する下限及び上限の間の温度範囲に設定することが好ましい。
焼成温度の下限は、リチウム含有金属酸化物Bがリチウム化合物Aと反応して、リチウム含有金属酸化物Bの結晶内にリチウムが拡散し始める温度以上に設定することが好ましい。この温度は、リチウム含有金属酸化物B及びリチウム化合物Aの種類によって変わる。しかし、上記の反応は、一般に吸熱反応で、かつ混合物の重量減を伴う反応である。そのため、使用する原料についての熱重量−示差熱分析(Thermogravimetric − Differential Thermal Analysis、以下、TG−DTAと略す。)を行って、吸熱及び重量減が起こる温度を計測することにより、上記温度を設定することができる。より具体的には、重量減を示しつつ、示差熱減少が極小値を示す温度に対して、−100℃以上+200℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは―50℃以上+150℃以下の範囲である。
工程(2)における焼成温度の上限は、工程(1)における最高焼成温度以下であることが好ましい。工程(2)の焼成温度が工程(1)の焼成温度を超えてしまうと、追加で導入したリチウムの結晶内拡散によって結晶成長が急激に加速し、リチウム含有金属酸化物Cの平均一次粒径が好適な範囲を超えてしまって、放電特性を悪化させる場合がある。
また、工程(2)における焼成温度は、上記の温度範囲内であることが好ましいが、上記の温度範囲における下限に近い温度付近で焼成する方が、より好ましい場合が多い。工程(2)における焼成温度が高いと、リチウム含有金属酸化物Bの結晶内で、リチウムだけでなく、他の金属元素の拡散も同時に発生する。その結果、特定の金属元素が偏析して元素分散性が低下し、目的とする組成・結晶構造のリチウム含有金属酸化物Cが得られない場合がある。
本発明は、工程(1)で製造したリチウム含有金属酸化物B中における金属元素の分散(分布)状態をできる限り保持したまま、リチウムの含有量を増加させることにより、元素分散性の高いリチウム含有金属酸化物Cを得る技術である。そのため、リチウム含有金属酸化物Bの結晶内における他の金属元素の拡散はできるだけ抑制しつつ、リチウム含有金属酸化物Bの結晶内にリチウムを均一に導入することが望ましい。従って、工程(2)における焼成温度としては、前述の温度範囲における下限値を採用するか、又は下限よりやや高い温度付近を採用することが好ましい場合がある。
リチウム含有金属酸化物Bにリチウムを追加で導入する工程(2)では、上記の温度範囲内で、同じ又は異なる温度で複数回焼成を行ってもよい。複数回の焼成は、炉の中に原料を入れた状態で連続して行ってもよいし、ある温度で焼成後炉から原料を取り出して混合・解砕・圧縮等の処理を施した後に再度炉に入れて焼成してもよい。例えば、400℃〜600℃で焼成した後、炉から出して混合・解砕した後、再度、400℃〜600℃で焼成を行う等してもよい。この際の焼成時間は特に限定されるものではないが、リチウム含有金属酸化物Bとリチウム化合物Aとの反応を十分に完結させるために、30分以上が好ましく、より好ましくは1時間以上である。上限時間は特に問わない。但し、生産コストの点からは、焼成時間を24時間以下にすることが好ましく、10時間以下がより好ましい。
本実施形態のリチウム含有金属酸化物の製造方法では、前述のリチウム含有金属酸化物Bにリチウムを追加で導入する工程(2)において、リチウム含有金属酸化物Bのスピネル構造結晶の一部を組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶に変化させることにより、リチウム含有金属酸化物Cを得る。その際、焼成温度が低すぎる場合には十分な結晶性を有するリチウム含有金属酸化物Cが得られないことがある。この場合、工程(2)後に、該工程(2)における焼成温度よりも高い温度で再度の焼成を行うことにより、得られるリチウム含有金属酸化物の結晶性を向上させることができる。また、このような操作により、最終的に得られるリチウム含有金属酸化物を構成する結晶の平均粒子径を、好適な範囲に調整することができる。
工程(2)を経て得られるリチウム含有金属酸化物Cは、一般的には、一次粒子と、該一次粒子が凝集した二次粒子とからなる紛体である。一次粒子は、それ自身が単結晶であってもよく、複数の単結晶が異なる面方位で結合したものであってもよい。二次粒子は、他の粒子との結合箇所がなく、1つの粒子として単離できる形態のものである。
一次粒子の平均粒子径である平均一次粒径は、特に限定されるものではないが、平均一次粒径が大きくなりすぎると大電流が流れ難くなる等の放電特性の低下が起こる場合がある。そのため、好適な平均一次粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下である。但し、平均一次粒径が小さくなりすぎると、電池としての耐久性(長期保存特性、充放電の繰り返しによる劣化特性等)が悪化する。そのため、リチウム含有金属酸化物Cの好適な平均一次粒径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物Cは、以下の組成式(2):
Li1+k4―α・・・(2)
{式中、Mは、Mn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるスピネル構造結晶と、以下の組成式(3):
LiM’O3−β・・・(3)
{式中、M’は、金属元素Mに含まれるMn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦β<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶とが、固溶した結晶を有する。
本実施形態における固溶とは、組成式(2)及び(3)で示される各金属酸化物の単位構造を最小のユニットとして、それら最小のユニット1個以上から構成される各金属酸化物のユニット同士が互いに結晶内で混じって存在している状態と定義する。これらユニット同士の結晶内での混じり方としては、組成式(2)及び(3)で示される各金属酸化物の両者とも、それぞれのユニットの大きさができるだけ小さな状態で均一に分散して混じっていることが好ましい。具体的には、各ユニットの大きさは、それぞれ独立に、好ましくは平均50nm以下であり、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下である。これらユニットの大きさが小さく、かつ、互いに均一に分散して結晶内で混じっているほど、放電時に大電流が流れ易くなる。
組成式(2)及び(3)で示される各金属酸化物ユニットの結晶内における混じり方は、透過型電子顕微鏡を用いて結晶内の原子配列を観察することにより、確認することができる。この透過型電子顕微鏡観察は、被検体であるリチウム含有金属酸化物の結晶を、例えば収束イオンビーム(FIB)等の手段により厚さ約100nm以下の薄片に加工したうえで行うことが好ましい。
特に、透過型電子顕微鏡の光学系における球面収差を補正した球面収差補正型走査透過型電子顕微鏡(以下、Cs−STEMと略す。)を用いることにより、高分解能で原子の配列を観察でき、ユニットの平均サイズ及び分散状態を画像観察で求めることができる。また、Cs−STEMに付随するエネルギー分散型X線分析装置(以下、EDXと略す。)を用いることにより、各ユニットにおけるリチウム及び他の金属元素の存在及び分布を確認することができる。
本実施形態に係るリチウム含有金属酸化物において、組成式(2)で表されるスピネル構造結晶及び組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶の存在割合は、前述したそれぞれの最小ユニット数のモル分率を用いて表される下記式(4):
0.30≦M/(M+M)≦0.80・・・(4)
{式中、Mは組成式(2)で表されるスピネル構造結晶のモル分率、そしてMは組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶のモル分率を示す。}の関係を満たすことが好ましい。ここで、式(4)は、組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶の割合がモル分率で30%以上80%以下であることが好ましいことを示すものである。この条件を満足することにより、高容量かつ放電時に大電流が流れ易いリチウム含有金属酸化物を得ることができる。
[工程(3):リチウム含有金属酸化物の酸処理及び焼成]
次に、工程(2)で得られたリチウム含有金属酸化物Cを、無機酸又は有機酸の酸性水溶液と接触させた後、100℃超過600℃未満の温度で焼成する工程を経ることによって、リチウム含有量が多く、長寿命で、かつ、放電時に大電流を流し易いリチウム含有金属酸化物を製造することができる。
具体的には、まず、リチウム含有金属酸化物Cを無機酸又は有機酸の酸性水溶液中に投入し、リチウム含有金属酸化物Cの表面が酸性水溶液と接触するようにする。この際、より接触効率を高めるために、リチウム含有金属酸化物Cの入った酸性水溶液を撹拌してもよいし、超音波を照射してもよく、固体粒子と液体との接触効率を向上させる公知の方法を用いることができる。
リチウム含有金属酸化物Cを添加する前の、無機酸又は有機酸の酸性水溶液中におけるプロトンの濃度としては、0.001mol/L以上1mol/L以下が好ましく、より好ましくは0.01mol/L以上0.5mol/L以下であって、更に好ましくは0.05mol/L以上0.2mol/L以下である。プロトンの濃度が0.001mol/L未満であると、酸によるリチウム含有金属酸化物の表面状態の化学的変化が十分に進まず、本発明の効果が奏されない場合がある。また、プロトンの濃度が1mol/L超過であると、酸によるリチウム含有金属酸化物の表面状態の化学的変化が進みすぎて表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
無機酸又は有機酸の酸性水溶液の液量としては、投入するリチウム含有金属酸化物C中の全Li量に対して、液中のプロトンの量が1モル%以上200モル%以下の範囲になるようにすることが好ましい。前記プロトンの量が1モル%未満であると、酸によるリチウム含有金属酸化物の表面状態の化学的変化が十分に進まず、本発明の効果が奏されない場合がある。また、前記プロトンの量が200モル%超過であると、酸によるリチウム含有金属酸化物の表面状態の化学的変化が進みすぎて表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
以上より、投入するリチウム含有金属酸化物Cの重量に対して、酸性水溶液の好適なプロトン濃度及び液量範囲を算出することができる。
なお、必要に応じて、無機酸又は有機酸の酸性水溶液に、各種の有機溶剤や添加物を添加して用いてもよい。
無機酸としては、水溶液中でプロトンを上記濃度範囲放出できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸、リン酸等を挙げることができる。この中で、安価であり、プロトンを容易に放出し、かつ、不純物となる余剰な残渣が残り難いという点で、硫酸、塩酸、及び硝酸から選択される1種以上を使用することが好ましい。
有機酸としては、水溶液中でプロトンを上記濃度範囲で放出できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸等を挙げることができる。この中で、安価であり、プロトンを容易に放出し、かつ、不純物となる余剰な残渣が残り難いという点で、酢酸及びギ酸から選択される1種以上を使用することが好ましい。
リチウム含有金属酸化物Cの表面を酸性水溶液と接触させる際には、その水溶液の温度が低い方がよく、好ましくは0℃以上30℃以下であり、より好ましくは0℃以上10℃以下、最も好ましくは0℃以上5℃以下であって、0℃に近いほど好ましい。但し、酸性水溶液が凍らず流動性が確保されていれば、0℃以下であってもよい。温度が低すぎる、特に0℃未満であるとリチウム含有金属酸化物Cの入った酸性水溶液の流動性が低下し、固体粒子と液体との接触効率が低下して本発明の効果が奏されない場合がある。また、温度が30℃超過であると、酸によるリチウム含有金属酸化物の表面状態の化学的変化が進みすぎて表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
リチウム含有金属酸化物Cの表面が酸性水溶液と接触している時間は、1分以上24時間以内が好ましく、より好ましくは10分以上12時間以内であって、更に好ましくは1時間以上6時間以内であり、最も好ましくは1.5時間以上3時間以内である。接触時間が1分以下であると、酸による結晶の表面状態の化学的変化が十分に進まず、本発明の効果が奏されない場合がある。また、接触時間が24時間以上であると、酸による結晶の表面状態の化学的変化が進みすぎて結晶表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
なお、リチウム含有金属酸化物Cの表面が酸性水溶液と接触している時間が長くなると、水溶液のpHがアルカリ性側に変化していく、すなわち水溶液中のプロトン濃度が減少していく場合がある。その際、新たにプロトン源として無機酸又は有機酸を追加してもよいし、アルカリ性側に変化した状態をそのまま保持させてもよい。
上記の方法により、リチウム含有金属酸化物Cの表面を酸性水溶液と接触させ、酸による表面状態の化学的変化を起こさせた後、ろ過、遠心分離等の公知の方法により、水溶液中からリチウム金属酸化物Bを分離・抽出する。分離・抽出されたリチウム金属酸化物Bは、必要に応じて水洗してもよいし、そのまま次の焼成工程に進んでもよい。水洗を行う場合には、洗浄水の温度は低い方がよく、好ましくは0℃以上30℃以下であり、より好ましくは0℃以上10℃以下、最も好ましくは0℃以上5℃以下であって、0℃に近いほど好ましい。温度が30℃超過であると、酸によって変化した表面が洗浄中に壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
以上のようにして得られた、酸によって変化した表面を有するリチウム含有金属酸化物Cを、100℃超過600℃未満の温度で焼成する。焼成は大気雰囲気下で行ってもよいし、酸素雰囲気下で行ってもよいし、又は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
本実施形態における上記の焼成工程では、200℃から400℃の温度範囲における特定の温度領域で、焼成前の活物質重量に対し0.5%以上の重量減少が熱重量−示差熱分析によって観測される場合がある。本発明においては、この重量減少が発現する温度及びそれよりやや高温で焼成を行うことが好ましい。具体的には、熱重量−示差熱分析によって0.5%以上の重量減少が起こる温度以上、前記温度+300℃以下、の温度範囲で焼成することが好ましい。具体的には、200℃以上500℃以下が好ましく、250℃以上450℃以下がより好ましい。この重量減少が発現することで、放電時に大電流を流し易い正極活物質としてのリチウム含有金属酸化物を最終的に得ることができる。
なお、各工程において得られたリチウム含有金属酸化物が目的の構造を有しているか否かは、既知のX線結晶解析手法によって判別することができる。また、リチウム含有金属酸化物中のリチウム及び金属元素の重量割合は、既知の誘導結合プラズマ発光分析法(以下、ICPと略す。)によって求めることができる。また、リチウム含有金属酸化物を構成する結晶の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す。)を用いた画像に写る結晶の粒子径を複数測長し平均化することよって、あるいは、不活性気体の物理吸着量を計測する比表面積測定(以下、BETと略す。)によって求めることができる。BETによって求められた平均粒子径は、粒子を真球の球体と仮定して算出したものとする。
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物を正極活物質としてリチウムイオン二次電池に用いる場合の一例を以下に示す。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、セパレーター、及びそれらを収納して電気的接続及び絶縁をとるための外装体からなる。
正極及びその製造方法の一例を以下に示す。
正極は、一般に、集電体上に、正極活物質としてのリチウム含有金属酸化物を含有する正極活物質層が形成されて成る。正極活物質層は、正極活物質以外に、導電助剤及びバインダーを含有することが好ましい。
導電助剤としては、電子を伝導できる公知のものであれば特に限定されないが、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック等に代表される炭素材料が好適である。また、バインダーとしては、正極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン(以降、PVDFと略す。)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム等に代表されるポリマー材料が好適である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
集電体としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス等の金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル、カーボンクロス、カーボンペーパー等が好適である。
正極活物質としてのリチウム含有金属酸化物と、必要に応じて、上記の導電助剤、バインダー等を加えて混合した正極合剤を、例えばN−メチルピロリドン(以下、NMPと略す。)のような溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、正極が製造される。尚、リチウム含有金属酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、負極及びその製造方法の一例を以下に示す。
負極は、リチウムイオン二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
負極としては、例えば
リチウム金属箔そのものを用いることができ、あるいは、
適当な集電体上に、負極活物質を含有する正極活物質層が形成されて成る構成のものを用いることができる。
後者の場合、負極活物質としては、例えば炭素負極活物質、ケイ素合金負極活物質、スズ合金負極活物質等の、リチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質;
ケイ素酸化物負極活物質、スズ酸化物負極活物質、チタン酸リチウム負極活物質等の、リチウム含有化合物から成る負極活物質
等から成る群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。これらの負極活物質は、1種又は組合せて用いることも可能である。
前記炭素負極活物質としては、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックが挙げられる。前記コークスとしては、例えば、ピッチコークス、二一ドルコークス、石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体とは、フェノール樹脂、フラン樹脂等の高分子材料を、適当な温度で焼成して炭素化したものである。
前記リチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質としては、金属元素又は半金属元素の単体、合金、化合物であってよく、また、これらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。尚、本明細書において、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。また、合金には、全体として金属の性質を有するものであれば、非金属元素が含まれていてもよい。
金属元素及び半金属元素としては、例えば、チタン、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)が挙げられる。これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましくはチタン、ケイ素、及びスズから選ばれる1種以上である。
スズの合金としては、スズ以外の第2の構成元素として、例えば、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン,ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有する合金が挙げられる。
ケイ素の合金としては、ケイ素以外の第2の構成元素として、例えば、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有する合金が挙げられる。
チタン化合物、スズ化合物及びケイ素化合物としては、例えば、酸素又は炭素を有するものが挙げられ、チタン、スズ又はケイ素に加えて、上述の金属元素及び半金属元素から選ばれる1種以上を、第2の構成元素として有していてもよい。
上記負極活物質に、必要に応じて、導電助剤、バインダー等を加えて混合した負極合剤を、適当な溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。バインダーとしては負極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンの架橋ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、ポリフッ化ビニリデン等が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
次いで、この負極合剤含有ペーストを集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、負極が製造される。負極における集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等の金属箔により構成される。尚、負極活物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記電解液は、リチウム塩及び非水溶媒を含有し、リチウムイオン二次電池の電解液として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。
リチウム塩は、イオン伝導性の観点から、好ましくは、LiPF、LiCIO、LiAsF、LiSiF、LiOSO2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO2t+1〔tは1〜8の整数〕、LiPF(C2t+16−n[nは1〜5の整数、tは1〜8の整数〕、LiPF(C)、LiPF(C、LiBF、LiAlO、LiAlCl、Li1212−g〔gは0〜3の整数〕、LiBF(C2s+14−q〔qは1〜3の整数、sは1〜8の整数〕、LiB(C、LiBF(C)、LiB(C、LiPF(C)等から選択され、特に好ましくは、LiPFである。これらの電解質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
非水溶媒としては、様々なものを用いることができるが、非プロトン性極性溶媒が好ましい。その具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート等の環状カーボネート;γ−プチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン;スルホラン等の環状スルホン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロビルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;アセトニトリル等のニトリル;ジメチルエーテル等の鎖状エ一テル;プロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタン等の鎖状エーテルカーボネート化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
非水溶媒としては、イオン伝導性の観点から、環状カーボネート、鎖状カーボネート等のカーボネート系溶媒を用いることがより好ましい。また、カーボネート系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートを組合せて用いることが更に好ましい。環状カーボネートとしては様々なものを用いることができるが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートから選ばれる1種以上が好ましく、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートから選ばれる1種以上がより好ましい。鎖状カーボネートとしては様々なものを用いることができるが、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、及びジエチルカーボネートから選ばれる1種以上が好ましい。
カーボネート系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組合せて含む場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比は、イオン伝導性の観点から、体積比で1:10〜5:1であることが好ましく、1:5〜3:1であることがより好ましい。
カーボネート系溶媒を用いる場合、電池物性改善の観点から、必要に応じて、アセトニトリル、スルホラン等の別の非水溶媒を更に添加することができる。
前記セパレーターとしては、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。中でも、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。そのようなセパレーターとしては、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜が挙げられる。これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。合成樹脂製微多孔膜としては、例えば、ポリエチレン若しくはポリプロピレンを主成分として含有する微多孔膜、又はこれらのポリオレフィンを共に含有する微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が好適に用いられる。不織布としては、セラミック製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製等の耐熱樹脂製の多孔膜が用いられる。上記の「セラミック」は、ガラスを含む概念である。
セパレーターとしては、1種の微多孔膜を単層で使用することができ、1種の微多孔膜を複数積層したものであってもよく、あるいは、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
前記外装体は、従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。外装体の材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属;前記金属の表面を樹脂で被覆したラミネートフィルム等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<リチウム含有金属酸化物の製造>
以下の硫酸塩:
MnSO・5HO(関東化学株式会社製)147.7g、及び
NiSO・6HO(関東化学株式会社製)27.2g
を純水に溶解させて合計349mlの硫酸塩水溶液を作製した。これに、28質量%アンモニア水(関東化学株式会社製)を純水で10倍に希釈した希釈アンモニア水を、溶液のpHが7.0になるように撹拌しながら約1g滴下して、中性の水溶液Aを調製した。一方、炭酸ナトリウムNaCO(関東化学株式会社製)74.2gを純水に溶解させて合計350mlとした水溶液Bを調製した。
撹拌機構と、不活性ガスをバブリングさせる機構と、を有する反応槽中に、硫酸ナトリウムNaSO(関東化学株式会社製)28.4gを純水に溶解させて合計200mlとした水溶液Cを入れた。この水溶液Cに対し、撹拌下に窒素ガスを吹き込みつつ、かつ、20分ごとに約70mlずつ反応槽から液を抜き出しつつ、水溶液A及び水溶液Bを各1.75ml/分の速度で同時に水溶液C中に滴下させ、水に難溶性の金属塩の粒子を生成させた。180分後に滴下を止め、反応槽内の液を回収し、ろ過、水洗、及び乾燥して、沈殿Dを得た。
この沈澱Dの乾燥物10.00gと、平均粒子径2μm以下に粉砕した炭酸リチウムLiCO(本荘ケミカル株式会社)1.529gとをよく混合した後、大気中650℃において5時間焼成し、リチウム含有金属酸化物Bを得た。X線構造解析により、リチウム含有金属酸化物Bが主としてスピネル構造を有しており、若干量の酸化マンガンMnが副生していることが分かった。図1中のBに、得られたリチウム含有金属酸化物BのX線回折スペクトルを示す。図1のB中、矢印を付したピークが副生Mnに由来するピークである。
上記のリチウム含有金属酸化物B2.00gと、前述の炭酸リチウムLiCO0.5482gとをよく混合した後、大気中650℃において5時間焼成し、リチウムを酸化物内に追加で導入した後、更に800℃で5時間焼成し、リチウム含有金属酸化物Cを得た。
X線構造解析により、上記リチウム含有金属酸化物Cは、スピネル構造結晶と、概ねC2/mの空間群に帰属できるLiM’O3−β{式中、M’は、Li以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦β<1の関係を満足する。}の層状構造結晶が固溶した組成を有していることが分かった。誘導結合プラズマ(ICP)分析の結果、このM’が少なくともMnを含むこと、及びスピネル構造結晶と前記LiM’O3−βの層状構造結晶との比が、約45:55であることが確認された。また、XRDにより、前記式中のβは0に近い値であると推定された。
図1中のCに、得られたリチウム含有金属酸化物CのX線回折スペクトルを示す。リチウム含有金属酸化物Cについて行ったSEMにより、その平均一次粒子径が約50〜100nmであることが分かった。
次いで、リチウム含有金属酸化物Cの1.5gを、氷浴により2℃に冷却されている0.05mol/Lの硫酸水溶液100mLに入れ、スターラーにより400rpmで2時間撹拌して、硫酸との接触処理を行った。硫酸と接触後の酸化物をろ取し、氷浴により2℃に冷却されている純水100mLに入れ、スターラーにより400rpmで10分間撹拌洗浄した。これをろ取し、400℃において5時間焼成することにより、目的のリチウム含有金属酸化物を得た。
<リチウムイオン二次電池の製造>
本実施例においては、前述のようにして得られたリチウム含有金属酸化物を正極活物質として用いた。
この正極活物質と、
導電助剤であるグラファイトの粉末(TIMCAL社製、KS−6)及びアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製、HS−100)と、
バインダーであるポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製、L#7208)と、
を固形分比として80:5:5:10の質量比で混合した。得られた混合物に、分散溶媒としてNMPを固形分30質量%となるように投入して更に混合することにより、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して、厚さ64μmの正極を得た。なお、この正極の厚さは、アルミニウム箔の厚さを含む値である。
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して、電解液を得た。
ステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)に、負極として直径16mmに打ち抜いたリチウム金属箔(厚さ0.5mm)を挿入した。その上からポリエチレン製微多孔膜からなるセパレーター、ガラス繊維製のセパレーター(ADVANTEC社製、GA−100、膜厚約500μm)、及び直径16mmに打ち抜いた正極を、この順で挿入した。次いで、電池ケース内に、前述の電解液を1.0mL注入して、正極、負極、及びセパレーターを電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉することにより、リチウムイオン二次電池を製造した。
<電池評価>
得られたリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、恒温槽PLM−73S)内に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、充放電装置ACD−01)に接続した。次いで、この電池を、0.1Cの定電流で充電し、5.0Vに到達した後、5.0Vの定電圧において2時間充電し、更に0.1Cの定電流で2.0Vまで放電した際の放電容量を計測したところ、256mAh/gという容量が得られた。尚、1Cとは、電池が1時間で放電される電流値である。
次に、この電池を、0.3Cの定電流で充電し、4.9Vに到達した後、4.9Vの定電圧において2時間充電した後、2.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを、電流値を0.3C、0.3C、1C、1C、2C、2C、5C、及び5Cと、この順で変量して計8回行った。
最後の5Cにおける放電の際の放電容量を計測したところ、80mAh/gの放電容量が得られた。
[比較例1]
本比較例では、リチウム含有金属酸化物Cを酸処理せずそのまま正極活物質として用いた。
リチウム含有金属酸化物Cについて、硫酸との接触処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、実施例1と同様にして電池評価を行った。
最初の0.1Cの定電流放電における放電容量は233mAh/gであり、充放電サイクルを8回行った時の、最後の5Cにおける定電流放電の際の放電容量は58mAh/gであった。
本発明に係るリチウム含有金属酸化物の製造方法は、高容量かつ長寿命で、放電時に大電流が流れ易いリチウムイオン二次電池の正極活物質の製造方法として好適である。
本発明の方法を適用して得られたリチウム含有金属酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、各種民生用機器用の電源、自動車用の電源等として好適に利用可能である。

Claims (9)

  1. 以下の工程:
    (1)下記組成式(1):
    Li・・・(1)
    {式中、1≦x≦2、0≦a≦1、1≦b≦3、及び0≦c≦2の関係を満足する。}で表されるリチウム化合物Aと、
    Li以外の1種類以上の金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、及び酢酸塩から選ばれる少なくとも1つと
    を焼成して、Liと、Li以外に少なくとも1種類の金属元素とを含み、かつ下記式(2):
    Li1+k4―α・・・(2)
    {式中、MはLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるスピネル構造結晶を有するリチウム含有金属酸化物Bを得る工程;
    (2)得られたリチウム含有金属酸化物Bと、前記組成式(1)で表されるリチウム化合物Aとを混合して焼成して、
    上記組成式(2)で表されるスピネル構造結晶と、
    下記組成式(3):
    LiM’O3−β・・・(3)
    {式中、M’は、金属元素Mに含まれるLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦β<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した層状構造結晶と
    が固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物Cを得る工程;及び
    (3)得られたリチウム含有金属酸化物Cを、無機酸又は有機酸を含有する酸性水溶液と接触させた後、100℃超過600℃未満の温度で焼成する工程;
    を含む、リチウムイオン二次電池用のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
  2. 前記式(2)中のMが、少なくともMnを含む、請求項1に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
  3. 前記式(2)中のMが、更に少なくともNiを含む、請求項2に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
  4. 前記式(3)中のM’が、Ni、Co、Al、Mn、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、Ge、及びZrから選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
  5. 前記リチウム化合物Aが、炭酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
  6. 前記無機酸が、硫酸、塩酸、及び硝酸から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
  7. 前記有機酸が、酢酸及びギ酸から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする、リチウム含有金属酸化物を含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  9. 正極活物質として、請求項8に記載の正極活物質を用いることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
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