JP2016039150A - 固体高分子形燃料電池 - Google Patents

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義郎 宇高
亮 是澤
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Abstract

【課題】起電力低下を良好に抑制し、安定した起電力を確保することが可能な固体高分子形燃料電池の提供。【解決手段】空気極側ガス拡散層(GDL)が撥水部と親水部とを有し、空気極側セパレータは空気極側ガス拡散層側表面に複数のリブ部を有し、空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面を第1の面とし、第1の面に対向する空気極側ガス拡散層表面を第2の面とし、隣接するリブ部の側壁面を両側面とし、第1の面、第2の面、及び、両側面で囲まれた領域をガスチャネルとし、第1の面には、ガスチャネルが延びる方向に沿ってマイクログルーブが形成され、両側面には、第2の面側から前記第1の面側に向かって傾斜するマイクログルーブが形成されている固体高分子形燃料電池。【選択図】図4

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は環境への負荷が少なく、高出力密度で常温でも作動することから次世代の移動体あるいは定置用のエネルギー供給源として注目されている。固体高分子形燃料電池は、アノード(燃料極)とカソード(空気極)の両サイドのセパレータからそれぞれ水素と酸素を供給し、それらが触媒層で反応を起こすことで電気エネルギーを生成する。具体的には、固体高分子形燃料電池のセル内部は、膜電極接合体(MEA:Membrane and Electrode Assembly)と呼ばれる、プロトンを受け渡す役割を持つイオン交換性高分子膜である電解質を有し、その両端を、それぞれ触媒層、及び、多孔質ガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)で挟みつけた構造となっている。アノード側では水素が電子を放出する酸化反応が起き、カソード側において、酸素とプロトン(H+)が水を生成する還元反応が起きる。
Utaka, Y., Hirose, I. and Tasaki, Y., "Characteristics of oxygen diffusivity and water distribution by X-ray radiography in microporous media in alternate porous layers of different wettability for moisture control in gas diffusion layer of PEFC", International Journal of Hydrogen Energy, Vol.36 (2011) pp. 9128-9138. 岡部晃、宇高義郎、「固体高分子形燃料電池における壁面傾斜マイクログルーブを用いたガス拡散層からガスチャネルへの排水性向上」、日本機械学会論文集、79巻805号(2013−9)、pp. 1866-1874.
固体高分子形燃料電池の起電力低下の要因として、化学反応によって生成された水が微細多孔体のガス拡散層内の空隙やガスチャネル側のガス拡散層表面を塞ぐことにより、反応ガスの拡散を阻害するフラッディング現象と、電解質膜が乾燥状態になりプロトン伝導性が低下するドライアウト現象等が挙げられる。従って、固体高分子形燃料電池の性能向上には膜電極接合体内の湿分制御が重要である。フラッディング現象は、反応によって生成された水蒸気あるいは水が固体高分子形燃料電池のカソード側に移動することで発生する。空気と比較して、水の酸素の拡散抵抗は著しく大きいため、このような過剰な液水は多孔質ガス拡散層内部の酸素の拡散経路を塞ぐことになる。そのため、カソード側ガス拡散層においては、電極間に発生する水を適切に排出させ、ガス拡散層内あるいはガス拡散層のガスチャネル側表面での液水の過度の滞留を防ぐなど、液水の適切な管理が必要である。このような観点から、従来、多孔質ガス拡散層の酸素の拡散特性に関する研究・開発が盛んに行われている(非特許文献1)。
しかしながら、近年、より強力に固体高分子形燃料電池の起電力低下を抑制し、安定した起電力を確保したいという需要が増大しており、これらの需要を満たす固体高分子形燃料電池の開発が望まれている。
本発明は、起電力低下を良好に抑制し、安定した起電力を確保することが可能な固体高分子形燃料電池を提供することを課題とする。
本発明者らは研究を重ねたところ、詳細は後述するが、空気極側の多孔質ガス拡散層に撥水部と親水部とを設けた構成、及び、空気極側のガスチャネルを構成する領域において、所定のマイクログルーブを形成した構成を組み合わせることで、起電力低下を良好に抑制し、安定した起電力を確保することが可能な固体高分子形燃料電池を提供することが可能となることを見出した。
すなわち、本発明の一態様は、固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜を挟むように設けられた燃料極及び空気極と、
前記燃料極の外側表面に設けられた燃料極側セパレータと、
前記空気極の外側表面に設けられた空気極側セパレータと、
を備えた固体高分子形燃料電池であって、
前記燃料極が、前記固体高分子電解質膜側から、燃料極側触媒層及び燃料極側ガス拡散層をこの順に備え、
前記空気極が、前記固体高分子電解質膜側から、空気極側触媒層及び空気極側ガス拡散層をこの順に備え、
前記空気極側ガス拡散層は、撥水部と親水部とを有し、
前記空気極側セパレータは、前記空気極側ガス拡散層側表面に複数のリブ部を有し、
前記空気極側セパレータの前記空気極側ガス拡散層対向側表面を第1の面とし、前記第1の面に対向する前記空気極側ガス拡散層表面を第2の面とし、隣接する前記リブ部の側壁面を両側面として、前記第1の面、前記第2の面、及び、前記両側面で囲まれた領域をガスチャネルとし、
前記第1の面には、前記ガスチャネルが延びる方向に沿ってマイクログルーブが形成され、
前記両側面には、前記第2の面側から前記第1の面側に向かって傾斜するマイクログルーブが形成された固体高分子形燃料電池である。
本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記空気極側ガス拡散層は、面方向に、撥水部と親水部とが互いに接するように並列して設けられた構造を有する。
本発明の別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記空気極側ガス拡散層の互いに接するように並列して設けられた前記撥水部と前記親水部とが、それぞれ前記ガスチャネルが延びる方向に対して傾斜して設けられている。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記空気極側ガス拡散層は、面方向に、撥水部が井桁状に設けられた構造を有する。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記空気極側ガス拡散層が、面方向に、ドット状の撥水部が碁盤目配列あるいは千鳥配列し、且つ、前記ドット状の撥水部が互いに近接あるいは一部接触するように設けられた構造を有する。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記第1の面に形成されたマイクログルーブは、前記ガスチャネルが延びる方向から分岐して、前記両側面に形成されたマイクログルーブの前記第1の面側の先端につながるように形成された分岐マイクログルーブをさらに備える。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記第1の面に形成されたマイクログルーブ、及び/又は、前記両側面に形成されたマイクログルーブが、複数形成されている。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記空気極側ガス拡散層の前記親水部の幅が、前記撥水部の幅に対して小さく形成されている。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の並列する撥水部及び親水部の延びる方向を傾斜させて設けられている。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の矩形の親水部の一つの頂点がチャネル上流に位置する方向に設けられている。
本発明の更に別の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池では、前記ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の撥水部の複数のドットにより囲まれる、碁盤目配列の場合四つの頂点、千鳥配列の場合三つの頂点を持つ親水部の星形状の一つの頂点がチャネル上流に位置する方向に設けられている。
本発明によれば、起電力低下を良好に抑制し、安定した起電力を確保することが可能な固体高分子形燃料電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池の模式図である。 従来の酸素拡散方向に対して垂直方向に液水が広がるような分布形態をとるガス拡散層の断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る空気極側ガス拡散層の構造とその原理を示す模式図である。 図4(a)は、従来の空気極側ガス拡散層及び空気極側セパレータにおける液水の分布を示す断面(ガスチャネルに垂直な方向で切断したときの断面)模式図である。図4(b)は、図4(a)のリブの側壁面及び空気極側セパレータの断面模式図である。図4(c)は、本発明の一実施形態に係る空気極側ガス拡散層及び空気極側セパレータにおける液水の分布を示す断面(ガスチャネルに垂直な方向で切断したときの断面)模式図である。図4(d)は、図4(c)のリブの側壁面及び空気極側セパレータの断面模式図である。 図5(a)は、本発明の一実施形態に係る空気極側ガス拡散層及び空気極側セパレータにおける液水の分布を示す断面(ガスチャネルに垂直な方向で切断したときの断面)模式図である。図5(b)は、図5(a)のリブの側壁面及び空気極側セパレータの断面模式図である。図5(c)は、図5(a)のガスチャネル内から見上げたときの第1の面の平面模式図である。 図6(a)は、実施例で用いた固体高分子形燃料電池の空気極側ガス拡散層の断面模式図である。図6(b)は、図6(a)の空気極側ガス拡散層の平面模式図である。 実施例に係る(1)CPW−PTFEの酸素拡散係数と含水率との関係性を示すグラフである。 実施例に係る(2)CPW−CPNWの酸素拡散係数と含水率との関係性を示すグラフである。 実施例に係る(3)WP−PTFEの酸素拡散係数と含水率との関係性を示すグラフである。 実施例に係る液供給開始位置からのガス流路方向に沿った距離に対する、マイクログルーブに沿うグルーブ中央位置における水流の表面流速の変化を示すグラフである。 実施例に係る試験部内の液水移動を示す模式図である。 実施例に係る試験部内の液水移動を示す模式図である。 実施例に係るθ=20°およびVg=6.0m/sの一定条件の下、液供給開始位置からのガス流路方向に沿った距離に対する、マイクログルーブに沿うグルーブ中央位置における水流の表面流速の変化を示すグラフである。 撥水部と親水部とで構成され、面方向に、撥水部が井桁状に設けられた構造を有する空気極側ガス拡散層を、ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の矩形の親水部の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた形態を表す模式図である。 面方向に、ドット状の撥水部が碁盤目配列し、且つ、前記ドット状の撥水部が互いに近接あるいは一部接触するように設けられた構造を有する空気極側ガス拡散層を、ガスチャネルが延びる方向に対して、撥水部の複数のドットにより囲まれる四つの頂点を持つ親水部の星形状の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた形態を表す模式図である。 面方向に、ドット状の撥水部が千鳥配列し、且つ、前記ドット状の撥水部が互いに近接あるいは一部接触するように設けられた構造を有する空気極側ガス拡散層を、ガスチャネルが延びる方向に対して、撥水部の複数のドットにより囲まれる三つの頂点を持つ親水部の星形状の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた形態を表す模式図である。 親水部と撥水部(それぞれ色の薄部と暗部)とが、ガス流に対して45°傾斜した空気極側のガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)の断面写真である。 試験例3に係る、固体高分子形燃料電池のチャネル内の各空気流速におけるセル電圧(V)と電流密度との関係を示すグラフである。 試験例3に係る、固体高分子形燃料電池のチャネル内の各空気流速における出力密度と電流密度との関係を示すグラフである。 試験例4に係る、固体高分子形燃料電池のチャネル内の各空気流速におけるセル電圧(V)と電流密度との関係を示すグラフである。 試験例4に係る、固体高分子形燃料電池のチャネル内の各空気流速における出力密度と電流密度との関係を示すグラフである。 試験例4に係る、固体高分子形燃料電池のセル電圧の時間変化を示すグラフである。 試験例4に係る、固体高分子形燃料電池のセル電圧の変動率を示すグラフである。 (A)は試験例5に係る、チャネル内の空気流速と、電流密度・出力密度との関係を示すグラフである。(B)はガスチャネルが延びる方向(空気流方向)に対する傾斜角θを示す、空気極側ガス拡散層:GDLの表面観察写真である。
(固体高分子形燃料電池)
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池の模式図である。本発明の固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜を挟むように設けられた燃料極及び空気極と、燃料極の外側表面に設けられた燃料極側セパレータと、空気極の外側表面に設けられた空気極側セパレータとを備える。燃料極は、固体高分子電解質膜側から、燃料極側触媒層及び燃料極側ガス拡散層をこの順に備える。空気極は、固体高分子電解質膜側から、空気極側触媒層及び空気極側ガス拡散層をこの順に備える。このような構成の燃料電池をスタック化して電気的に直列に接続することで、出力電圧を増加させた燃料電池デバイスを作製することも可能である。
固体高分子形燃料電池は、アノード(燃料極)とカソード(空気極)の両サイドのセパレータからそれぞれ水素と酸素を供給し、それらが触媒層で反応を起こすことで電気エネルギーを生成する。固体高分子形燃料電池のセル内部は、プロトンを受け渡す役割を持つイオン交換性高分子膜である固体高分子電解質膜を有し、その両端を、それぞれ触媒層、及び、多孔質ガス拡散層で挟みつけた構造となっている。下記式で示されるように、アノード側では水素が電子を放出する酸化反応が起き、カソード側において、酸素とプロトン(H+)が水を生成する還元反応が起きる。
アノード(燃料極)側反応式:H2 → 2H+ + 2e-
カソード(空気極)側反応式:2H+ + 1/2O2 + 2e- → H2
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜の材料は、一般的な固体高分子形燃料電池の固体高分子電解質膜に用いられているものを使用することができる。当該材料としては、例えば、ペルフルオロスルホン酸(Perfluorosulfonic acid)等が挙げられる。
(空気極側触媒層及び燃料極側触媒層)
空気極側触媒層及び燃料極側触媒層は、一般的な固体高分子形燃料電池の空気極側触媒層及び燃料極側触媒層に用いられているものを使用することができる。当該材料としては、例えば、導電性カーボン上に白金系ナノ粒子を担持させた触媒等が挙げられる。
(燃料極側ガス拡散層)
燃料極側ガス拡散層は、一般的な固体高分子形燃料電池の燃料極側ガス拡散層に用いられているものを使用することができる。当該材料としては、例えば、炭素繊維等が挙げられる。
(空気極側ガス拡散層)
固体高分子形燃料電池の安定性および性能の向上には両サイドのセパレータに挟まれた部分であるセル内部の液水・湿分制御が重要であり、その構成要素のうち特に空気極側ガス拡散層の特性が大きく影響している。空気と比較して、水の酸素の拡散抵抗は著しく大きく、過剰な液水は空気極側ガス拡散層内部の酸素の拡散経路を塞ぐことになる。従って、空気極側ガス拡散層内部の液水の存在状態が酸素拡散現象を支配する。例えば、空気極側ガス拡散層内に十分な割合の空孔が存在しても、図2に示すような酸素拡散方向に対して垂直方向に液水が広がるような分布形態をとる場合には、酸素の拡散抵抗は非常に大きい。従って、このような液水分布では発電反応に必要な酸素が供給されにくく、セル出力の低下を招くことになるため、過剰な液水を除去する必要がある。一方、プロトンが固体高分子電解質膜内で水和した状態で存在することによって、プロトンのアノードからカソード側への移動を実現しているため、固体高分子電解質膜には湿分が必要であり、反応ガスは加湿状態で供給される。以上のように、液水を除去して空気極側触媒層への酸素拡散を保持する一方で、適度にセル内の湿分を保つことも必要とされるため、固体高分子形燃料電池においては液水および湿分の制御が重要となる。また、空気極側ガス拡散層の触媒層側表面には、例えば、カーボン及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE, Polytetrafluoroethylene)の混合体で構成されたマイクロポーラス層(MPL: Micro Porous Layer)が塗布されていても良い。このように、空気極側ガス拡散層の触媒層側表面にマイクロポーラス層を設けることで、GDLの排水能力あるいは水分保持を高める効果がある。
本発明の空気極側ガス拡散層は、上述のような固体高分子形燃料電池において重要な液水および湿分の制御を行うことを可能とする液水挙動の特性を有している。図3に、ぬれ性分布を利用して酸素拡散経路を保つハイブリッド構造多孔体である本発明の空気極側ガス拡散層の構造とその原理を示す。空気極側ガス拡散層は、撥水部と親水部とを有する。このような構造により、空気極側触媒層で生成され多孔体内に送られた撥水部と親水部にまたがる液水は、ぬれ性の違いにより多孔体構造材への接触角が異なり、撥水部の液水は親水部へすばやく引き込まれ、撥水部に空孔が形成される。その結果として、内部に液水が存在しても、ぬれ性の境界の撥水部側に酸素拡散経路が確保される。この液水分布は本来相反する液水保持と酸素拡散の両者を実現できるという点で、上述のようなセル全体の液水・湿分制御にとって望ましい特性を有していると云える。
空気極側ガス拡散層は、面方向に、撥水部と親水部とが互いに接するように並列して設けられた構造を有するのが好ましい。また、図17に示すように、空気極側ガス拡散層の互いに接するように並列して設けられた撥水部と親水部とは、それぞれガスチャネルが延びる方向に対して、直角ではなく、傾斜して設けられていてもよい。このような構成によれば、空気極側ガス拡散層の撥水部と親水部とが、ガスが流れる方向に対して直角ではなく傾斜することとなり、発生する水分によって撥水部表面の液水による被覆(いわゆる撥水部に隣り合う親水部表面から親水部表面を液水がつなぐブリッジングによる撥水部表面の液水被覆)が良好に抑制される。空気極側ガス拡散層の撥水部と親水部とが、ガスが流れる方向に対して有する角度は、例えば、10°〜80°、20°〜60°、20°〜45°とすることができる。
空気極側ガス拡散層の撥水部の構成材料としては、例えばカーボンペーパーに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE, Polytetrafluoroethylene)、PFA:テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等の微粒子を溶融固着させた材料等が挙げられる。また、空気極側ガス拡散層の親水部の構成材料としては、例えば未処理のカーボンペーパー等が挙げられる。
空気極側ガス拡散層は、拡散層を構成する基材(上記カーボンペーパー等)に微細多孔質層(MPL:micro porous layer)を設けることで構成されていてもよい。このような構成によれば、空気極側での反応により生じた液水の移動がより良好となる。
空気極側ガス拡散層では、撥水部の液水が隣接する親水部へすばやく引き込まれることで、撥水部に空孔が形成されるが、このとき撥水部の幅が大きいほど、撥水部の液水、特に撥水部の中央部分の液水は、隣接する親水部までの距離が長くなる。その結果、撥水部の液水が親水部へ引き込まれることなく撥水部上で残留してしまうおそれがある。このような問題に対し、撥水部の幅が小さく形成されていると、撥水部の液水は隣接する親水部までの距離が短くなり、隣接する親水部へ引き込まれやすくなるため、撥水部上で残留する問題を良好に抑制することができる。撥水部の幅は、小さく形成されていればいるほど、液水が撥水部上で残留する問題をより良好に抑制することができる。
また、マイクログルーブ付きのガスチャネルを用いることで親水部の液水はマイクログルーブにより吸引・排除され、また親水部には液水が滞留しやすいため、相対的な点からは、撥水部に比べて親水部の幅を小さくすることが望ましい。例えば、親水部の幅は、撥水部の幅に対して5%以上小さく形成されているのが好ましく、撥水部の幅に対して10%以上小さく形成されているのがより好ましく、20%以上小さく形成されているのが更により好ましく、30%以上小さく形成されているのが更により好ましく、40%以上小さく形成されているのが更により好ましく、50%以上小さく形成されているのが更により好ましく、60%以上小さく形成されているのが更により好ましく、70%以上小さく形成されているのが更により好ましい。
ガスチャネルが延びる方向に対して、空気極側ガス拡散層の並列する撥水部及び親水部の延びる方向を傾斜させて設けるのが好ましい。このような構成により、空気極側ガス拡散層の並列する親水部が、ガスチャネルが延びる方向に対して傾斜することとなり、空気極側セパレータのリブの空気極側ガス拡散層と接する面に存在する液水が、より空気極側ガス拡散層の親水部へ取り込まれやすくなるため、空気極側セパレータのリブの空気極側ガス拡散層と接する面の排液性が良好となる。
空気極側ガス拡散層は、撥水部と親水部とで構成され、面方向に、撥水部が井桁状に設けられた構造を有していてもよい。このような構成によれば、親水部面積に比例するぬれ部面積を相対的に減少させることができる。また、ぬれ部と撥水部との境界線を長くとることができ、液水の移動がより良好となる。
井桁状の撥水部形状の場合においては、ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の矩形の親水部の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けるのが好ましい。このような構成により、空気極側セパレータのリブの空気極側ガス拡散層と接する面に存在する液水が、より空気極側ガス拡散層の親水部へ取り込まれやすくなるため、空気極側セパレータのリブの空気極側ガス拡散層と接する面の排液性が良好となる。図14に、撥水部と親水部とで構成され、面方向に、撥水部が井桁状に設けられた構造を有する空気極側ガス拡散層を、ガスチャネルが延びる方向に対して、空気極側ガス拡散層の矩形の親水部の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた形態を表す模式図を示す。
空気極側ガス拡散層が、面方向に、ドット状の撥水部が碁盤目配列あるいは千鳥配列し、且つ、前記ドット状の撥水部が互いに近接あるいは一部接触するように設けられた構造を有していてもよい。このような構成によれば、親水部面積に比例するぬれ部面積を相対的に減少させることができる。また、液水が移動する際に、空気極側ガス拡散層に星型のぬれ部が存在することとなり、ぬれ部と撥水部との境界線を長くすることになり、液水の移動がより良好となる。
ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の撥水部の複数のドットにより囲まれる、碁盤目配列の場合四つの頂点、千鳥配列の場合三つの頂点を持つ親水部の星形状の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けるのが好ましい。このような構成により、空気極側セパレータのリブの空気極側ガス拡散層と接する面に存在する液水が、より空気極側ガス拡散層の親水部へ取り込まれやすくなるため、空気極側セパレータのリブの空気極側ガス拡散層と接する面の排液性が良好となる。図15に、面方向に、ドット状の撥水部が碁盤目配列し、且つ、前記ドット状の撥水部が互いに近接あるいは一部接触するように設けられた構造を有する空気極側ガス拡散層を、ガスチャネルが延びる方向に対して、撥水部の複数のドットにより囲まれる四つの頂点を持つ親水部の星形状の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた形態を表す模式図を示す。また、図16に、面方向に、ドット状の撥水部が千鳥配列し、且つ、前記ドット状の撥水部が互いに近接あるいは一部接触するように設けられた構造を有する空気極側ガス拡散層を、ガスチャネルが延びる方向に対して、撥水部の複数のドットにより囲まれる三つの頂点を持つ親水部の星形状の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた形態を表す模式図を示す。
(燃料極側セパレータ)
燃料極側セパレータは、燃料極側ガス拡散層側表面に複数のリブ部を有する。燃料極側セパレータの燃料極側ガス拡散層対向側表面を第1の面とし、第1の面に対向する燃料極側ガス拡散層表面を第2の面とし、隣接するリブ部の側壁面を両側面として、第1の面、第2の面、及び、両側面で囲まれた領域で、燃料である水素の流路となるガスチャネルを構成している。燃料極側セパレータの材料は、一般的な固体高分子形燃料電池の燃料極側セパレータに用いられているものを使用することができる。当該材料としては、例えば、金属材料、金属基材上に金メッキを施した材料、グラファイト、グラファイトに樹脂を含浸させて作製した材料等が挙げられる。
(空気極側セパレータ)
上述の液水を含むときの酸素拡散特性に優れた撥水部と親水部とを有するハイブリッド構造の空気極側ガス拡散層には、さらに排出液水を空気極側ガス拡散層表面に滞留させないためのガスチャネル構造を組み合わせることにより、より高性能な液水制御システムの実現が可能となる。当該ガスチャネル構造を実現するための本発明の空気極側セパレータの構造及び原理について説明する。
本発明の空気極側セパレータは、空気極側ガス拡散層側表面に複数のリブ部を有する。空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面を第1の面とし、第1の面に対向する空気極側ガス拡散層表面を第2の面とし、隣接するリブ部の側壁面を両側面として、第1の面、第2の面、及び、両側面で囲まれた領域でガスチャネルを構成している。
図4(a)は、従来の空気極側ガス拡散層及び空気極側セパレータにおける液水の分布を示す断面(ガスチャネルに垂直な方向で切断したときの断面)模式図である。図4(b)は、図4(a)のリブの側壁面及び空気極側セパレータの断面模式図である。図4(c)は、本発明の一実施形態に係る空気極側ガス拡散層及び空気極側セパレータにおける液水の分布を示す断面(ガスチャネルに垂直な方向で切断したときの断面)模式図である。図4(d)は、図4(c)のリブの側壁面及び空気極側セパレータの断面模式図である。
図4(a)及び(b)に示すように、従来型のセパレータに設けられたガスチャネルには、水の生成により気液二相流が形成され、生成水の多い条件においては、液水は空気極側ガス拡散層表面にも滞留するおそれがある。これに対し、本発明では、そのような空気極側ガス拡散層表面への液水の滞留を軽減することを目的として、空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面である第1の面には、ガスチャネルが延びる方向に沿ってマイクログルーブが形成されている。また、隣接するリブ部の側壁面である両側面には、第2の面側から第1の面側に向かって傾斜するマイクログルーブが形成されている。第2の面側から第1の面側に向かって傾斜するマイクログルーブは、ガスチャネルに対して傾斜角を持つ。このように、空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層側表面である第1の面に、ガスチャネルが延びる方向に沿ってマイクログルーブを形成し、且つ、隣接するリブ部の側壁面である両側面に、第2の面側から第1の面側に向かって傾斜するマイクログルーブを形成することで、ガスチャネルを流れる空気の剪断力および液水の毛管力(表面張力)によるグルーブ内の液水上昇力を利用して、空気極側ガス拡散層表面からの液水およびチャネル上流からの流水を、空気極側ガス拡散層表面に付着しないように、空気極側ガス拡散層が対向する、空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面である第1の面にマイクログルーブを通して移動させることができる。これによって、膜電極接合体からガスチャネルへの排水性能を向上させることができる。なお、本発明の固体高分子形燃料電池は、当該マイクログルーブによるこのような排水性能が強力であるが、空気極側のガス拡散層(GDL)が親水部と撥水部とで構成されているため、この親水部がガス拡散層内の乾燥を適度に防いでいる。
空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面である第1の面に形成するマイクログルーブ、及び、隣接するリブ部の側壁面である両側面に第2の面側から第1の面側に向かって傾斜するように形成するマイクログルーブは、それぞれ複数形成されているのが好ましい。このような構成によれば、ガスチャネルを流れる空気の剪断力および液水の毛管力(表面張力)によるグルーブ内の液水上昇力がより向上し、空気極側ガス拡散層表面からの液水およびチャネル上流からの流水を、空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層側表面である第1の面により良好に移動させることができる。
隣接するリブ部の側壁面である両側面に第2の面側から第1の面側に向かって傾斜するように形成するマイクログルーブは、傾斜角が小さいほどガスチャネルを流れる空気の剪断力がより大きくなるため好ましい。傾斜角の大きさは、特に限定されないが、例えば、5°以上、10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、30°以上、35°以上、40°以上、45°以上とすることができる。
図5(a)は、本発明の一実施形態に係る空気極側ガス拡散層及び空気極側セパレータにおける液水の分布を示す断面(ガスチャネルに垂直な方向で切断したときの断面)模式図である。図5(b)は、図5(a)のリブの側壁面及び空気極側セパレータの断面模式図である。図5(c)は、図5(a)のガスチャネル内から見上げたときの第1の面の平面模式図である。図5(c)に示すように、第1の面に形成されたマイクログルーブは、ガスチャネルが延びる方向から分岐して、両側面に形成されたマイクログルーブの第1の面側の先端につながるように形成された分岐マイクログルーブをさらに備える。このような構成により、空気極側ガス拡散層側表面から、隣接するリブ部の側壁面である両側面に形成されたマイクログルーブを通して移動する液水を、当該分岐マイクログルーブを通して第1の面に形成されたマイクログルーブへ効率良く移動させることができる。その結果、膜電極接合体からガスチャネルへの排水性能をより向上させることができる。
以下に本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(試験例1)
固体高分子形燃料電池の実施例に係る空気極側ガス拡散層として、図6に示す構造のものを準備した。図6(a)は、実施例で用いた固体高分子形燃料電池の空気極側ガス拡散層の断面模式図である。図6(b)は、図6(a)の空気極側ガス拡散層の平面模式図である。当該空気極側ガス拡散層は、それぞれ多孔体構造をもった撥水部と親水部が密着して交互に並んだ構造になっており、それらが外径5mm、肉厚0.16mmのポリプロピレン製リングに入っている。試料外周のリングとの隙間はフィラーで埋められている。表1に本測定に用いた多孔体試料の性質をまとめた。ここで、撥水部の材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂繊維を多孔質シート状に加工したもの(PTFE)、およびカーボンペーパー基材にPTFE含浸撥水処理を施したもの(CPNW)を用いた。親水部の材料には、カーボンペーパー基材に酸化チタンコーティングによる親水処理を施したもの(CPW)、および木材を由来とする吸水ペーパー(WP)を用いた。表2に単体試料を組み合わせたハイブリッド構造試料それぞれにおける条件を示す。表1に示した各多孔質材料から3通りのハイブリッド構造、(1)CPW−PTFE、(2)CPW−CPNWおよび(3)WP−PTFEを作成した。ここで、(fpwと(fDwは、それぞれ乾燥状態における親水部の全体に対する空隙割合および拡散コンダクタンス割合を示している。なお、単体試料の拡散係数は別に測定した。それら3通りのハイブリッド構造の組み合わせの特徴は次の通りである:
組み合わせ(1)CPW−PTFEは親水部に親水処理したカーボンペーパーを、撥水部にPTFEを用いた組み合わせであり、(2)CPW−CPNWには(1)における撥水部をカーボンペーパーに換え、同一基材でぬれ性のみ変化させた。(3)WP−PTFEの組み合わせでは、両材料ともに表面処理を施していない。試料厚さを変化させ、3種類の組み合わせの酸素拡散測定を行った。組み合わせ(1)〜(3)のいずれにおいても、それぞれ親水部と撥水部のピッチを変化させているが、その際に親水部と撥水部の酸素拡散コンダクタンス割合と空孔体積割合のどちらもほぼ1:1になるように条件を設定した。また、比較のため、撥水および親水材料単体(シングル構造)で同じ構造の試料についても測定した。
酸素拡散係数の測定には、本発明者らが開発したガルバニ電池酸素吸収体による測定装置を用いた。(1)CPW−PTFEは酸素拡散係数と含水率との関係性において、図7に示したようにハイブリッド構造の最も典型的と考えられる特性が表れた。
(2)CPW−CPNWの酸素拡散係数と含水率との関係性は図8に示す結果となり、(1)と同様にハイブリッド構造及びシングル構造ともに、含水率の低下により酸素拡散係数が上昇し、ハイブリッド構造ではシングル構造と比較して酸素拡散係数が増大した。
(3)WP−PTFEの酸素拡散係数と含水率との関係性は図9に示す結果となり、この場合も、(1)及び(2)と同様に、ハイブリッド構造及びシングル構造ともに、含水率の低下により酸素拡散係数が上昇し、ハイブリッド構造ではシングル構造と比較して酸素拡散係数が増大した。
(試験例2)
図5に示すマイクログルーブ構造に関する空気極側ガス拡散層からガスチャネルへの排水性確認試験を、非特許文献2(日本機械学会論文集、79巻805号(2013−9)、pp. 1866-1874.):「固体高分子形燃料電池における壁面傾斜マイクログルーブを用いたガス拡散層からガスチャネルへの排水性向上」に記載された「2.実験装置及び方法」に基づき、以下の通り行った。図5に示すように、本試験例に係るマイクログルーブ構造は、空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面である第1の面に、ガスチャネルが延びる方向に沿ってマイクログルーブが形成されている。また、隣接するリブ部の側壁面である両側面には、第2の面側から第1の面側に向かって傾斜するマイクログルーブが形成されている。また各部の寸法の詳細を表3に示す。
ガスチャネル幅および高さを等しいdg=1.0mmとし、リブ部の側壁面および空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面である第1の面の傾斜方向マイクログルーブ幅を等しくd1=0.2mm、深さをh1=0.2mmとした。第1の面中央グルーブの幅および深さはそれぞれをd2=0.3mm、h2=0.2mmとした。さらに、グルーブとガス流方向のなす角度をθ、ガス流方向のピッチをPとした。ここでは、ガスチャネルの寸法が1mm程度であることを考慮して、マイクログルーブはd1=h1=0.2mmの矩形断面とした。傾斜角θを20°、30°及び45°の3通りのマイクログルーブを用いて実験を行った。以上のマイクログルーブを設置したガスチャネルの排水性能を検討するため、固体高分子形燃料電池におけるセパレータとガス拡散層からなるガスチャネル構造、および化学反応による水の生成を模擬した実験装置を製作した。ガスチャネルの底面(第2の面)をマイクロ多孔体からなるカーボンペーパーガス拡散層とし、ガス拡散層からガスチャネル内に液水が供給される。マイクログルーブには酸化チタンコーティングを施し、十分なぬれ性をもたせた。リブ部の片側の側壁面および対向する第1の面にマイクログルーブを付加したガスチャネルに空気を流した。もう一方の側壁面は観察用にアクリル性の透明平滑面を用いた。固体高分子形燃料電池では、ガスチャネルの下流部において液水流量が増大するため、特にフラッディングが起こりやすいことを考慮して、全長198mmのガスチャネルのうち、下流側の約80mmにマイクログルーブを設けた。ガス拡散層の下部には全長200mmの送液用のミニタンクを配置し、シリンジポンプを用いて一定流量の液水を圧入させることによりガス拡散層を通してガスチャネル内に供給した。液水供給開始位置から流路方向にx座標をとった。
実験は、供給液水流量を一定に保ちながら行った。供給水量としては、実際の固体高分子形燃料電池の大電流領域に相当する電流密度I=2.0A/cm2を基準とし、また液水が生成する面の基準の幅としては、実験装置の幅1mmに同寸法のリブ下面積が存在するとした。すなわち、幅を2mmとして液水供給量を決定した。図10に、液供給開始位置(x=0mm)からのガス流路方向に沿った距離に対する、LIF法により計測されたマイクログルーブに沿うグルーブ中央位置における水流の表面流速の変化を示した。チャネル内の空気流速をVg=6.0m/s、供給水量は基準値である電流密度I=2.0A/cm2に相当するQI=2.0=0.93nL/s・mm2)とし、グルーブ角度θを20°、30°及び45°の3通りに変化させて実験を行った結果である。液水表面流速はGDLグルーブの位置によって多少の増減が存在し、比較的ばらつきがあるが、いずれの角度においてもグルーブの開始位置x=118mmから約10mm程度の範囲で大きく減少し、その後x=150mm程度まではほぼ一定の値をとっている。グルーブ開始位置からしばらく流速が大きいのは、x=0〜118mmにおいて供給された水の影響によるものと考えられる。すなわち、図11に試験部内の液水移動を矢印により模式的に示した。破線で囲った枠(1)に示されるように、ガスチャネル下流のグルーブが配置された区間(約x=118〜198mm)の上流側(約x=118〜138mm)に位置するグルーブには、直下のガス拡散層を通過してきた液水に加え、ガスチャネル上流(x=0〜118mm)からの液水が流れ込むため、液水量が集中する。そのためグルーブ配置区間の上流側では側面グルーブを流れる量も増大するため液水表面流速が増大したものと考えられる。
次に、グルーブ角度θの影響を検討する。θ=45°の場合には、ほぼx=130mmにおいて液水移動の限界が生じ、グルーブ液水表面流速は減少し、液水を上昇させる効果がなくなった。θ=30°では、図12に図示したように、液水があふれる限界位置は、約x=138〜162mmにおいて現れた。この場合にはθ=45°に比べてグルーブが機能する有効長さが増大していることが確認される。それらの限界現象(フラッディング)においては、側面のグルーブを覆う様子が観察され、その場合には液水表面流速の計測が不可能となる。図11の破線枠(2)に示すように、下流側の第1の面のグルーブにおいては、ガス拡散層から側壁面のグルーブを通り供給される液水に加え、上流側の第1の面のグルーブからの液水が流れてくるため、第1の面のグルーブ内の液水流量はガスチャネル方向に増大する。そのため下流側に進むにつれて、第1の面のグルーブに側面グルーブを通過する水が流れ込みにくくなり、また流動方向が異なる第1の面の流水とグルーブからの上昇流により不安定な流動を生じる可能性が考えられる。それらの不安定流動などにより生じる排液の限界は、空気流の剪断力による液水移動性能に強く依存していると考えられる。θ=20°の場合には、グルーブが設けてある区間x=118〜198mmの全範囲で正の液水表面流速が計測され、本実験装置の全長のx=198mmまで排液の限界は見られなかった。ガスチャネル全域(約x=0〜200mm)に供給された液水の移動及び排出が可能であることを示し、液水表面流速の大きい値やグルーブの有効範囲が十分確保されていることからも、θ=30°に比べ角度の小さい20°のグルーブの排水能力は高い。したがって、本測定のθが20〜45°の範囲では、角度が小さいほど液水表面流速は大きくなり、ガス流によるせん断力が増大することにより排液限界までの長さが増大したものと考えられる。
図13はθ=20°およびVg=6.0m/sの一定条件の下、供給液水流量を燃料電池において先のI=2.0A/cm2とI=4.0A/cm2で発電した場合に相当するQI=4.0=1.87nL/(mm2・s)の2種類の条件で行った結果を示している。黒三角マークが、マイクログルーブ内の液水上昇が正常に確認された場合、白三角マークが、液水流動が逆流など正常に上昇しなかった場合を示している。前述のように、QI=2.0の条件では約x=118〜198mm全範囲でガス拡散層の表面に液水がたまる様子は観測されなかったが、QI=4.0では約x=153mmの位置で側面グルーブ間に薄い液膜が発生した後、液水表面流速が急激に減少、グルーブ内を逆流し、約x=179mmの位置でガスチャネル下部に滞留した液水がガス流により流動している様子が観測された。QI=4.0では供給液水流量が倍増されているため、構造上ガスチャネル下流側でフラッディングが始まるが、I=2.0A/cm2の高密度発電を仮定しても1mm角のガスチャネルにマイクログルーブを付加した場合、ガスチャネル方向に約150mm程度は有効に排水できると考えられる。以上から、電流密度が2.0A/cm2に相当する大きな生成水量において、傾斜角が20°の場合には、マイクログルーブが機能する距離は実験装置の全長の198mmで有効であり、実用的な燃料電池スタック寸法への適用が可能であると考えられる。
(試験例3)
図5に示すようなマイクログルーブが形成された空気極側セパレータ、及び、親水部と撥水部とで構成された空気極側ガス拡散層を設けた、図1で示すような固体高分子形燃料電池について、チャネル内の空気流速を、5.0m/s、6.0m/s、7.0m/s、8.0m/sである場合について、それぞれ電流電圧特性、主力密度特性を比較した。
空気極側ガス拡散層の触媒層側表面には、カーボン及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の混合体(カーボン:PTFE=2.0mg/cm2:2.0mg/cm2)で構成されたマイクロポーラス層を塗布しておいた。
親水部と撥水部とで構成された空気極側ガス拡散層は、図17に示すように、親水部と撥水部が、ガス流に対して45°傾斜するように設けた。当該親水部と撥水部は、それぞれ約1mm幅のピッチで並列するように設けた。
空気極側セパレータのマイクログルーブについては、図5において、ガスチャネル幅および高さを等しいdg=1.0mmとし、リブ部の側壁面および空気極側セパレータの空気極側ガス拡散層対向側表面である第1の面の傾斜方向マイクログルーブ幅を等しくd1=0.2mm、深さをh1=0.2mmとした。第1の面中央グルーブの幅および深さはそれぞれをd2=0.3mm、h2=0.2mmとした。
固体高分子形燃料電池におけるクランピング圧(締付圧)は1.23MPa、セル温度は70℃、相対湿度は70%、燃料極側ガスチャネルの水素流速は1.2m/sとした。
当該固体高分子形燃料電池について、チャネル内の各空気流速におけるセル電圧(V)と電流密度との関係を図18に、出力密度と電流密度との関係を図19にそれぞれ示す。図19によれば、最高出力はチャネル内の空気流速が最も大きい8.0m/sの場合が最大であることがわかる。
(試験例4)
試験例3で使用した固体高分子形燃料電池(空気極側ガス拡散層:GDLは親水部と撥水部とで構成され、空気極側ガスチャネルにはマイクログルーブが形成されている)を実験例No.2とした。また、実験例No.2に対し、GDLが親水部のみで構成されたものを用意し実験例No.1とした。また、実験例No.1に対し、空気極側ガスチャネルにマイクログルーブを形成しないものを実験例No.3とした。また、実験例No.2に対し、空気極側ガスチャネルにマイクログルーブを形成しないものを実験例No.4とした。
これらの固体高分子形燃料電池について、試験例3と同条件にて、チャネル内の空気流速を、5.0m/s、6.0m/s、7.0m/s、8.0m/sである場合について、それぞれ電流電圧特性、主力密度特性を比較した。
これらの固体高分子形燃料電池について、チャネル内の各空気流速におけるセル電圧(V)と電流密度との関係を図20に、出力密度と電流密度との関係を図21にそれぞれ示す。
図21によれば、GDLが親水部と撥水部とで構成され、空気極側ガスチャネルにマイクログルーブが形成されている実験例No.2が、どの空気流速においても、他の実験例に対して最も最高出力が大きいことがわかった。
また、このときの、セル電圧の時間変化、及び、セル電圧の変動率を測定し、それぞれ図22、図23に示す。図22及び図23より、空気極側ガス拡散層:GDLが親水部と撥水部とで構成され、空気極側ガスチャネルにマイクログルーブが形成されている実験例No.2が、最も生成水に起因するセル電圧の変動が低減され、セル電圧の安定性が向上していることがわかった。
(試験例5)
試験例3と同様の固体高分子形燃料電池において、空気極側ガス拡散層:GDLの互いに並列に設けられた親水部と撥水部の、ガスチャネルが延びる方向(空気流方向)に対する傾斜角θ=0°(並行)、20°、30°、45°としたものをそれぞれ準備した。
当該各固体高分子形燃料電池について、チャネル内の空気流速と、電流密度・出力密度との関係を比較検討した。チャネル内の各空気流速に対する出力密度の関係を図24(A)に示す。また、図24(B)は、ガスチャネルが延びる方向(空気流方向)に対する傾斜角θを示す、空気極側ガス拡散層:GDLの表面観察写真である。
図24によれば、空気極側ガス拡散層:GDLの互いに並列に設けられた親水部と撥水部の、ガスチャネルが延びる方向(空気流方向)に対する傾斜角θが20°のときが、最も電流密度及び最高出力が大きいことがわかった。

Claims (11)

  1. 固体高分子電解質膜と、
    前記固体高分子電解質膜を挟むように設けられた燃料極及び空気極と、
    前記燃料極の外側表面に設けられた燃料極側セパレータと、
    前記空気極の外側表面に設けられた空気極側セパレータと、
    を備えた固体高分子形燃料電池であって、
    前記燃料極が、前記固体高分子電解質膜側から、燃料極側触媒層及び燃料極側ガス拡散層をこの順に備え、
    前記空気極が、前記固体高分子電解質膜側から、空気極側触媒層及び空気極側ガス拡散層をこの順に備え、
    前記空気極側ガス拡散層は、撥水部と親水部とを有し、
    前記空気極側セパレータは、前記空気極側ガス拡散層側表面に複数のリブ部を有し、
    前記空気極側セパレータの前記空気極側ガス拡散層対向側表面を第1の面とし、前記第1の面に対向する前記空気極側ガス拡散層表面を第2の面とし、隣接する前記リブ部の側壁面を両側面として、前記第1の面、前記第2の面、及び、前記両側面で囲まれた領域をガスチャネルとし、
    前記第1の面には、前記ガスチャネルが延びる方向に沿ってマイクログルーブが形成され、
    前記両側面には、前記第2の面側から前記第1の面側に向かって傾斜するマイクログルーブが形成された固体高分子形燃料電池。
  2. 前記空気極側ガス拡散層は、面方向に、撥水部と親水部とが互いに接するように並列して設けられた構造を有する請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
  3. 前記空気極側ガス拡散層の互いに接するように並列して設けられた前記撥水部と前記親水部とが、それぞれ前記ガスチャネルが延びる方向に対して傾斜して設けられている請求項2に記載の固体高分子形燃料電池。
  4. 前記空気極側ガス拡散層は、面方向に、撥水部が井桁状に設けられた構造を有する請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
  5. 前記空気極側ガス拡散層が、面方向に、ドット状の撥水部が碁盤目配列あるいは千鳥配列し、且つ、前記ドット状の撥水部が互いに近接あるいは一部接触するように設けられた構造を有する請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
  6. 前記第1の面に形成されたマイクログルーブは、前記ガスチャネルが延びる方向から分岐して、前記両側面に形成されたマイクログルーブの前記第1の面側の先端につながるように形成された分岐マイクログルーブをさらに備えた請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池。
  7. 前記第1の面に形成されたマイクログルーブ、及び/又は、前記両側面に形成されたマイクログルーブが、複数形成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池。
  8. 前記空気極側ガス拡散層の前記親水部の幅が、前記撥水部の幅に対して小さく形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池。
  9. 前記ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の並列する撥水部及び親水部の延びる方向を傾斜させて設けた請求項2及び請求項6〜8のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池。
  10. 前記ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の矩形の親水部の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた請求項4及び請求項6〜8のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池。
  11. 前記ガスチャネルが延びる方向に対して、前記空気極側ガス拡散層の撥水部の複数のドットにより囲まれる、碁盤目配列の場合四つの頂点、千鳥配列の場合三つの頂点を持つ親水部の星形状の一つの頂点をチャネル上流に位置する方向に設けた請求項5〜8のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池。
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