以下、本発明の一実施形態としてのコネクタを図面に基づいて説明する。このコネクタは、図2,図3(A)に示すように、ケーブル1の端部に取り付けられるケーブル側コネクタであって、図4(A)に示すように、電気・電子機器に内蔵のプリント回路基板等の基板(図示せず)に実装される基板側コネクタであるレセプタクルRを相手コネクタとし、図5(A)に示すように、レセプタクルRと嵌合(接続)することにより、ケーブル1を基板に接続するプラグPである。なお、プラグPは、レセプタクルRと向かい合わせた状態でレセプタクルR内に挿入し嵌合するが、本明細書においては、プラグPとレセプタクルRそれぞれの互いに向かい合わせる側を「前」、反対側を「後」という。
ケーブル1は、信号を差動一対で伝送するものであって、図2,図3(A)に示すように、一対の差動対線である2本の芯線2と、2本の芯線2の周りを覆うシールド(図示せず)と、ケーブル1の保護外皮であって、シールドの周りを覆うシース3とからなる。芯線2は、導体2aが絶縁体2bで被覆された被覆電線からなる。
レセプタクルRは、図4(A)に示すように、プラグPが挿入されるプラグ挿入部11が前側に開口されたレセプタクルハウジング12と、レセプタクルハウジング12に横並びの配置で平行に支持されプラグ挿入部11内の後部(奥部)に突出され2本のプラグ側コンタクト24に接触する2本のレセプタクル側コンタクト(相手コンタクト)13と、レセプタクルハウジング12に支持されプラグ挿入部11内の後部に突出されレセプタクル側コンタクト13の周りを覆うシールド部材である四角い筒状のレセプタクル側金属シェル(相手金属シェル)14とを備え、レセプタクルハウジング12は、四角い筒状に絶縁性合成樹脂材をもって成形されたレセプタクル側樹脂ケース(相手樹脂ケース)15と、レセプタクル側樹脂ケース15の後端部に嵌め込まれる後壁状に絶縁性合成樹脂材をもって成形されたレセプタクル本体16と、基板に固定する金属カバー17とからなる。レセプタクル側コンタクト13とレセプタクル側金属シェル14と金属カバー17は、それぞれ、導電性金属板材を所定の形状に打ち抜き、曲げ加工することにより形成され、基板に半田接続する基板接続片部13a,14a,17aが一体に形成されている。
プラグPは、図2,図3(A)に示すように、後方からケーブル1の一端部が挿入されたケーブル接続部21と、ケーブル接続部21から前側に突出した状態で設けられた差し込み部22とを有し、差し込み部22がレセプタクルRのプラグ挿入部11内に挿入されるようになっている。
差し込み部22は、四角い柱状の外形を有する絶縁体である差し込み本体23と、差し込み本体23内に横並びの配置で平行に収容された2本のプラグ側コンタクト24と、差し込み本体23の外周側を覆うシールド部材である四角い筒状のプラグ側金属シェル25と、プラグ側金属シェル25の外周側を覆う四角い筒状のプラグ側樹脂ケース26とを備え、前側に開口されたレセプタクル側コンタクト挿入部27と、同じく前側に開口されたレセプタクル側金属シェル挿入部28とが形成され、レセプタクル側コンタクト13がレセプタクル側コンタクト挿入部27内に挿入され、レセプタクル側金属シェル14がレセプタクル側金属シェル挿入部28内に挿入されるようになっている。
差し込み本体23は、ケーブル側差し込み本体29と、ケーブル側差し込み本体29の前側に一連に結合されたレセプタクル側差し込み本体30と、レセプタクル側差し込み本体30にプラグ側コンタクト24を固定する樹脂ストッパ31とからなり、それぞれ、絶縁性合成樹脂材をもって成形されている。
プラグ側コンタクト24は、導電性金属板材を所定の形状に打ち抜き、曲げ加工することにより形成されている。プラグ側コンタクト24には、前後方向に延びる細幅な基部24aと、基部24aの後端から後方へ延出された芯線接続片部24bと、基部24aの前端から前斜め下方へ延出され上下方向に弾性変位可能な片持ち梁状の弾性接触片部24cと、弾性接触片部24cの先端部に下向きに突き出して設けられた円弧状の可動接点部24dと、可動接点部24dの先端部からさらに前方へ短く延出して設けられた平らな係止片部24eとが一体に形成されている。
ケーブル1の一端部においてシース3及びシールドを除去して芯線2を露出させ、露出した芯線2の先端部のみ絶縁体2bを除去して導体2aを露出させ、露出した導体2aにプラグ側コンタクト24の芯線接続片部24bの下面が半田付けで接続され、その後、ケーブル側差し込み本体29がインサート成形によりケーブル1の一端部において露出した芯線2の回りに一体に成形されている。
ケーブル側差し込み本体29は、その前部の上部を切り欠く切り欠き形状を有し、前部の下部が板状の重ね継ぎ部29aに形成されている。ケーブル側差し込み本体29の上面には前向き段面29bが形成されている。ケーブル1の一端部において露出した芯線2は、その被覆部分(絶縁体2b)がケーブル側差し込み本体29の後部内に横並びの配置で平行に埋設され、露出した導体2aがケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29a内にプラグ側コンタクト24の芯線接続片部24bの下面との接続半田も含め横並びの配置で平行に埋設された状態になっており、ケーブル1の一端部において露出した芯線2がケーブル側差し込み本体29(絶縁性合成樹脂)により覆われ保護されている。プラグ側コンタクト24は、その芯線接続片部24bの下面がケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aの上面に固着され、芯線接続片部24bがケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aの上面に横並びの配置で平行に露出され、芯線接続片部24bより先の部分24a,24c,24d,24eがケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aから前方へ横並びの配置で平行に突出された状態で、ケーブル側差し込み本体29に一体に成形され支持されている。
レセプタクル側差し込み本体30は、その後端部の下部を切り欠く切り欠き形状を有し、後端部の上部が板状の重ね継ぎ部30aに形成されている。レセプタクル側差し込み本体30の下面には後向き段面30bが形成されている。重ね継ぎ部30aの上面には前後方向のプラグ側コンタクト収容溝部30cが2本横並びの配置で平行に形成されている。またレセプタクル側差し込み本体30は、その内部に、前後方向のレセプタクル側コンタクト挿入部27を2本横並びの配置で平行に形成している。レセプタクル側コンタクト挿入部27の前端がレセプタクル側差し込み本体30の前端にて前側に開口され、レセプタクル側コンタクト挿入部27の後端が、その上部をプラグ側コンタクト収容溝部30cに連通接続された状態で、後向き段面30bにて後側に開口されており、レセプタクル側コンタクト挿入部27は、後方からプラグ側コンタクト24の芯線接続片部24bより先の部分24a,24c,24d,24eが挿入収容されるプラグ側コンタクト収容部を兼ねている。レセプタクル側コンタクト挿入部27の前端開口部には、その前端開口部を上下に仕切る隔壁状のプラグ側コンタクト係止部30dが形成されている。さらにレセプタクル側差し込み本体30は、その前部の外周面に、前側と外側とに開口した溝状のレセプタクル側金属シェル挿入部28を形成している。レセプタクル側差し込み本体30の後向き段面30bには樹脂ストッパ装着溝部30eが形成されている。
樹脂ストッパ31は、後壁部31aと、後壁部31aの前面から横並びの配置で前方へ平行に突出された2本のプラグ側コンタクト支持部31bとが一体に形成され、後壁部31aが後方からレセプタクル側差し込み本体30の樹脂ストッパ装着溝30e内に嵌め込まれ、後壁部31aの後面が、その周囲の後向き段面30bを含む一平面内に配置され、プラグ側コンタクト支持部31bが後方からレセプタクル側コンタクト挿入部27の後端部に嵌め込まれた状態で、レセプタクル側差し込み本体30に装着されるようになっている。また樹脂ストッパ31は、後壁部31aの上面とプラグ側コンタクト支持部31bの上面とが、樹脂ストッパ31の最上部にて同一平面内に配置され、樹脂ストッパ31の上面になっている。
差し込み本体23を組み立てる際は、初めに、プラグ側コンタクト24においてケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aから前方へ突出された芯線接続片部24bより先の部分24a,24c,24d,24eにおける根元部の下面、即ちプラグ側コンタクト24の基部24aの下面に樹脂ストッパ31の上面を当接させ、樹脂ストッパ31によりプラグ側コンタクト24の基部24aを下から支えるように、樹脂ストッパ31の後壁部31aの後面をケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aの前端面に接着剤により固着し、樹脂ストッパ31をケーブル側差し込み本体29に一体に取り付け、その後、プラグ側コンタクト24においてケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aから前方へ突出された芯線接続片部24bより先の部分24a,24c,24d,24eを後方からレセプタクル側差し込み本体30のレセプタクル側コンタクト挿入部27内に挿入しつつ、レセプタクル側差し込み本体30の重ね継ぎ部30aをケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aの上部に重ね合わせることにより、レセプタクル側差し込み本体30をケーブル側差し込み本体29の前側に一連に繋ぎ合わせて結合し、差し込み本体23をケーブル1の一端部に一連に組み立てる。
差し込み本体23の組み立てに伴い、樹脂ストッパ31は、そのプラグ側コンタクト支持部31bが後方からケーブル側差し込み本体29のレセプタクル側コンタクト挿入部27内の後端部に嵌め込まれ、後壁部31aが後方からレセプタクル側差し込み本体30の樹脂ストッパ装着溝部30e内に嵌め込まれ、レセプタクル側差し込み本体30に装着された状態で、差し込み本体23内に組み込まれている。これにより、プラグ側コンタクト24においてケーブル側差し込み本体29のレセプタクル側コンタクト挿入部27内の後端部に挿入された基部24aが、樹脂ストッパ31によりレセプタクル側コンタクト挿入部27内の天壁部に押し付けられた状態で、レセプタクル側差し込み本体30に固定されている。
プラグ側コンタクト24は、その芯線接続片部24bが後方からレセプタクル側差し込み本体30のプラグ側コンタクト収容溝部30c内に挿入された状態で、ケーブル側差し込み本体29の重ね継ぎ部29aとレセプタクル側差し込み本体30の重ね継ぎ部30aとの間に挟み込まれ、芯線接続片部24bより先の部分24a,24c,24d,24eがレセプタクル側差し込み本体30のレセプタクル側コンタクト挿入部27内に挿入された状態で、差し込み本体23内に横並びの配置で平行に収容され支持されている。プラグ側コンタクト24の芯線接続片部24bより先の部分24a,24c,24d,24eについては、その弾性接触片部24cの根元側にある基部24aが、レセプタクル側コンタクト挿入部27内の後端部にて樹脂ストッパ31によりレセプタクル側コンタクト挿入部27内の天壁部に押し付けられレセプタクル側差し込み本体30に固定され、弾性接触片部24cの先端部に設けられた可動接点部24dからさらに前方へ延出された係止片部24eが、レセプタクル側コンタクト挿入部27の前端開口部におけるプラグ側コンタクト係止部30dより上部に挿入された状態で、弾性接触片部24cが、その根元の曲げ部を支点にして、先端の係止片部24eがプラグ側コンタクト係止部30dに当接する初期位置(復帰位置)とレセプタクル側コンタクト挿入部27の天壁部に当接する最大弾性変位位置との間で弾性変位可能に、レセプタクル側コンタクト挿入部27内に収容され支持されている。
レセプタクル側差し込み本体30は、ケーブル側差し込み本体29に固定されている。即ち、プラグ側コンタクト24とケーブル側差し込み本体29とは、インサート成形により一体に成形されており、ケーブル側差し込み本体29には、プラグ側コンタクト24の芯線接続片部24bが固着されている。一方、レセプタクル側差し込み本体30には、樹脂ストッパ31によりプラグ側コンタクト24の基部24aが固定され、レセプタクル側差し込み本体30のレセプタクル側コンタクト挿入部27内からプラグ側コンタクト24の芯線接続片部24bより先の部分24a,24c,24d,24eが抜けるのを阻止している。この抜け止めによりレセプタクル側差し込み本体30がケーブル側差し込み本体29に固定されている。プラグ側コンタクト24の基部24aには、その両側部に抜け止め用の突起が設けられており、レセプタクル側差し込み本体30のケーブル側差し込み本体29への固定強度が強化されている。
プラグ側金属シェル25は、導電性金属板材を所定の形状に打ち抜き、曲げ加工することにより四角い筒状に形成されており、その上壁部の幅方向中心線を中心として前後方向に延びたジグザグ状の継ぎ目25aを有している。差し込み部23の外周側をプラグ側金属シェル25で覆うことにより、レセプタクル側差し込み本体30の前部の外周面、即ち差し込み本体23の先端部の外周面に、前側と外側とに開口した溝状で形成したレセプタクル側金属シェル挿入部28の外側開口が、プラグ側金属シェル25の先端部により覆われ、レセプタクル側金属シェル挿入部28が前側にのみ開口された状態になっている。
プラグ側樹脂ケース26の前端開口部には、その内周面から内側へ張り出したプラグ側金属シェル挿入ストッパ部26aが形成され、プラグ側金属シェル25の先端がプラグ側金属シェル挿入ストッパ部26aに当接する完全挿入位置まで、プラグ側金属シェル25が後方からプラグ側樹脂ケース26内に挿入されるようになっている。プラグ側樹脂ケース26の上壁部には、差し込み部22がプラグ挿入部11内に完全挿入された時に差し込み部22を抜け止してプラグ挿入部11内に固定するためのロックアーム26bが形成されている。
ケーブル接続部21は、ケーブルカバー部26cと、ケーブル圧着部25bとを備え、ケーブルカバー部26cは、プラグ側樹脂ケース26の後端から後方へ延出された状態でプラグ側樹脂ケース26に一体に成形され、ケーブル圧着部25bは、プラグ側金属シェル25の底壁部から後方のケーブル接続部ハウジング32内に突出した状態でプラグ側金属シェル25に一体に形成されている。ケーブル1のシールドとプラグ側金属シェル25とを電気的に結合することが、シールド性を向上する上で好ましい。
プラグPを組み立てる際は、初めに、ケーブル1の一端部に差し込み本体23が組み立てられ、その後、差し込み本体23が後方からプラグ側金属シェル25内に挿入される。その次に、ケーブル圧着部25bがケーブル1の一端部のシース3に圧着固定され、その後、プラグ側金属シェル25が後方からケーブルカバー部26c内を通してプラグ側樹脂ケース26内に挿入され、ケーブル1の一端部とケーブル圧着部25bとを後方からケーブルカバー部26c内に挿入しつつ、プラグ側金属シェル25の先端がプラグ側樹脂ケース26のプラグ側金属シェル挿入ストッパ部26aに当接する完全挿入位置まで、プラグ側金属シェル25がプラグ側樹脂ケース26内に挿入される(この時点で差し込み部22が組み立てられる。)。これにより、プラグPがケーブル1の一端部に一連に組み立てられ一体に取り付けられる。
プラグPは、その差し込み部22の先端面(前端面)をレセプタクルRのプラグ挿入部11の前端開口(プラグ挿入口)に向かい合わせた状態で、差し込み部22を前方からプラグ挿入部11内に挿入することにより、図5(A)に示すように、レセプタクルRに嵌合(接続)され、ケーブル1を基板に接続する。
差し込み部22を前方からプラグ挿入部11内に挿入すると、図5(A)に示すように、レセプタクル側金属シェル14を前方からレセプタクル側金属シェル挿入部28内に挿入し、レセプタクル側金属シェル14を前方からプラグ側金属シェル25の先端部の内側に嵌め込みつつ、レセプタクル側コンタクト13が前方からレセプタクル側コンタクト挿入部27内に挿入され、プラグ側コンタクト24の可動接点部24dがレセプタクル側コンタクト13に押し付いて接触することにより、プラグ側コンタクト24がレセプタクル側コンタクト13に電気的に接続され、ケーブル1の芯線2が基板に電気的に接続されるようになっている。なお、レセプタクル側コンタクト13は、レセプタクル側コンタクト挿入部27の前端開口部におけるプラグ側コンタクト係止部30dより下部からレセプタクル側コンタクト挿入部27内に挿入される。
而してプラグPは、図3(A),図3(B)に示すように、レセプタクルRとの嵌合時にレセプタクル側コンタクト13に接触させるプラグ側コンタクト24と、プラグ側コンタクト24の周りを覆う金属シェル25と、プラグ側金属シェル25を覆うプラグ側樹脂ケース26とを備え、プラグ側金属シェル25に弾性変位可能に形成した切り起こし片41をプラグ側樹脂ケース26の内壁に形成した段面51に係合させることで、プラグ側金属シェル25をプラグ側樹脂ケース26内に固定するものであって、切り起こし片41は、その先端部のみ曲げてプラグ側金属シェル25の外側に突出するものである。
図1,図3(A),図3(B)に示すように、プラグ側金属シェル25の切り起こし片41は、導電性金属板材を所定の形状に打ち抜き、その後、曲げ加工することによりプラグ側金属シェル25を形成する際に、打ち抜き加工と曲げ加工との間で、プラグ側金属シェル25の継ぎ目25aがない底壁部となる矩形の金属平板部の一部に対して切り曲げ加工を施すことにより形成されている。
即ち、プラグ側金属シェル25の底壁部となる矩形の金属平板部の一部に前方へ開口したコの字形の切り込み部(スリット)40を形成し、切り込み部40の両端部の間の切り残した部分を根元部42とし、その根元部42にて切り込み部40の周りの底壁部と一連に繋がり、根元部42から曲がることなくそのまま真っ直ぐに切り込み部40の内側にて後方へ延出され、内面が切り込み部40の周りの底壁部の内面を含む一平面内に配置され、外面が切り込み部40の周りの底壁部の外面を含む一平面内に配置され、プラグ側金属シェル25の内外側へ弾性変位可能な片持ち梁状の矩形金属片(金属バネ板)を形成し、この矩形金属片の先端部のみプラグ側金属シェル25の外側に曲げることにより、先端部のみプラグ側金属シェル25の外側に突出した切り起こし片41がプラグ側金属シェル25の底壁部の一部に形成されている。
而して切り起こし片41は、切り込み部40の両端部の間の切り残した部分からなり、切り込み部40の周りの底壁部と一連に繋がる根元部42と、根元部42から曲がることなくそのまま真っ直ぐに切り込み部40の内側にて後方へ延出され、内面が切り込み部40の周りの底壁部の内面を含む一平面内に配置され、外面が切り込み部40の周りの底壁部の外面を含む一平面内に配置され、プラグ側金属シェル25の内外側へ弾性変位可能な直片部43と、直片部43の先端(後端)から折り曲げで後斜め外方へ延出された斜片部44と、切り起こし片41の先端付近に設定された唯一の曲げ部45であって、直片部43と斜片部44との間の曲げ部45とを一体に有し、斜片部44のみプラグ側金属シェル25の底壁部の外面から突出されている。
切り起こし片41は、少なくともその先端面(斜片部44の先端面)の全面がプラグ側金属シェル25の外側に位置するように、切り起こし片41の先端部のみ、45度以下の曲げ角度θを持って、プラグ側金属シェル25の外側に曲げられている。図示した切り起こし片41は、それ以下の曲げ角度では先端面の一部が切り込み部40内に残り、先端面の全面がプラグ側金属シェル25の外側に位置しなくなる最低曲げ角度θ(図3(B)参照)を持って、先端部のみプラグ側金属シェル25の外側に曲げられている。
また、プラグPでは、図1,図3(A),図3(B),図5(A),図5(B),図6に示すように、プラグ側金属シェル25の先端部が、差し込み部22のプラグ挿入部11に対する挿抜方向(前後方向)においてレセプタクル側金属シェル挿入部28と重なり、レセプタクル側金属シェル挿入部28の外側開口を覆い、レセプタクル側金属シェル挿入部28の外壁になっており、このプラグ側金属シェル25の先端部に切り起こし片41が形成され、レセプタクルRとの嵌合時に、レセプタクル側金属シェル14が切り起こし片41の内側に嵌り込むようになっている。より具体的には、プラグ側金属シェル25の先端部における底壁部の中央部に切り起こし片41が形成され、レセプタクルRとの嵌合時に、レセプタクル側金属シェル14の底壁部が切り起こし片41の内側に嵌り込むようになっている。
また、プラグPでは、図3(a),図3(b),図6に示すように、プラグ側樹脂ケース26の先端部における底壁部の内面に、プラグ側金属シェル25がプラグ側樹脂ケース26内に完全挿入された時に、切り起こし片41と向かい合い切り起こし片41の斜片部44が嵌め込まれ、切り起こし片41を初期状態(復帰状態)(自由状態)に保持可能な切り起こし片係合溝部50が形成され、切り起こし片41の斜片部44の後向きの先端面を切り起こし片係合溝部50の前向きの後壁部に係合させ、プラグ側金属シェル25を抜け止めしてプラグ側樹脂ケース26内に固定するようになっており、切り起こし片係合溝部50の前向きの後壁部がプラグ側樹脂ケース26の内壁の段面51になっている。
切り起こし片係合溝部50は、切り起こし片41の外側を通過しプラグ側樹脂ケース26の前端まで延ばされており、切り起こし片係合溝部50の前端がプラグ側樹脂ケース26の前端にて前側に開口されている。切り起こし片41の内側には前側に開口されたレセプタクル側金属シェル挿入部28が形成され、切り起こし片41の外側には前側に開口された切り起こし片係合溝部50が形成されており、ケーブル1の一端部にプラグPを組み立てた時に、外部からレセプタクル側金属シェル挿入部28や切り起こし片係合溝部50を通して切り起こし片41の段面51との係合状態が正常か否かを確認することができる。
また、プラグPでは、図3(a),図3(b),図6に示すように、切り起こし片係合溝部50の真後ろにプラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52が形成され、プラグ側樹脂ケース26の底壁部の内面には、切り起こし片係合溝部50とプラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52とが所定の間隔を設けた状態で一列に形成されている。プラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52は、切り起こし片係合溝部50と同様に内側に開口され、切り起こし片係合溝部50とは反対にプラグ側樹脂ケース26の後端まで延ばされており、プラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52の後端がプラグ側樹脂ケース26の後端にて後側(ケーブルカバー部26c内)に開口されている。プラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52は、プラグ側金属シェル25が後方からプラグ側樹脂ケース26内に挿入される時に、その挿入開始直後から完全挿入される直前まで、切り起こし片41と向かい合い切り起こし片41の斜片部44が後方から挿入されて嵌め込まれており、切り起こし片41を初期状態(復帰状態)(自由状態)に保持しつつ、切り起こし片41の斜片部44と協同してプラグ側金属シェル25を挿入方向へ誘導する。
プラグ側樹脂ケース26の底壁部の内面において、切り起こし片係合溝部50とプラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52との間にあり、切り起こし片係合溝部50の後壁部、即ち段面51とプラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52の前壁部とを繋いでいる部分は、切り起こし片41の斜片部44を内側に押圧して切り起こし片41を弾性変位させる切り起こし片押圧面54になっている。また、プラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52の前壁部は、プラグ側金属シェル25がプラグ側樹脂ケース26内に完全挿入される直前に、切り起こし片41の斜片部44がプラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52内から切り起こし片押圧面54へスムースに乗り上がるための前上がりに傾斜した斜面53に形成されている。
プラグPを組み立てる際に、プラグ側金属シェル25を後方からプラグ側樹脂ケース26内に挿入すると、その挿入開始直後から完全挿入される直前までは、切り起こし片41の斜片部44がプラグ側金属シェル挿入ガイド溝部52内に嵌め込まれることにより、切り起こし片41には外力が加わらず、切り起こし片41は初期状態に保持される。そして、プラグ側金属シェル25が完全挿入される直前で、初めて、切り起こし片41の斜片部44が斜面53から切り起こし片押圧面54に乗り上がることにより、切り起こし片41が切り起こし片押圧面54により内側へ押圧されて弾性変位する。その後、プラグ側金属シェル25が完全挿入された時に、切り起こし片41が復帰変位しつつ、切り起こし片41の斜片部44が切り起こし片係合溝部50内に嵌り込むことにより、図3(A),図3(B)に示すように、切り起こし片41の斜片部44の先端面が切り起こし片係合溝部50の後壁部、即ち段面51と係合し、この係合によりプラグ側金属シェル25が抜け止めされてプラグ側樹脂ケース26内に固定される。
また、レセプタクルRは、図4(B),図5(B),図6に示すように、プラグPとの嵌合時に、切り起こし片41と向き合うレセプタクル側金属シェル14の部位に、外側に向かってドーム状に突き出した突起61を設け、プラグPは、レセプタクルRとの嵌合時に、レセプタクル側金属シェル14の突起61が切り起こし片41に接触するようになっている。即ち、プラグPでは、プラグ側金属シェル25の先端部における底壁部の中央部に切り起こし片41が形成され、レセプタクルRとの嵌合時に、切り起こし片41がレセプタクル側金属シェル14の底壁部の中央部に向き合うようなっており、このレセプタクル側金属シェル14の底壁部の中央部に突起61が設けられ、レセプタクルRとの嵌合時に、レセプタクル側金属シェル14の突起61が切り起こし片41に接触するようになっている。また、プラグPとレセプタクルRとの嵌合状態で、プラグ側金属シェル25とレセプタクル側金属シェル14との嵌合部を底側から見ると、図6に示すように、切り起こし片41の幅方向中心線と、レセプタクル側金属シェル14の底壁部の幅方向中心線上にある前後方向に延びた直線状の継ぎ目14bとが重っており、そのため、突起61は、レセプタクル側金属シェル14の底壁部の中央部において継ぎ目14bを挟んでその両側に1個ずつ設けられ、レセプタクルRとの嵌合時に、レセプタクル側金属シェル14の突起61が、それぞれ、切り起こし片41に接触するようになっている。より具体的には、突起61は、切り起こし片41における直片部43に接触するように、レセプタクル側金属シェル14に設けられている。
以上から明らかなように、プラグPは、レセプタクルRとの嵌合時にレセプタクル側コンタクト13に接触させるプラグ側コンタクト24と、プラグ側コンタクト24の周りを覆うプラグ側金属シェル25と、プラグ側金属シェル25を覆うプラグ側樹脂ケース26とを備え、プラグ側金属シェル25に形成した弾性変位可能な切り起こし片41をプラグ側樹脂ケース26の内壁に形成した段面51に係合させることで、プラグ側金属シェル25をプラグ側樹脂ケース26内に固定するものであって、切り起こし片41は、先端部のみ曲げてプラグ側金属シェル25の外側に突出するもので、プラグ側金属シェル25の切り起こし片41をその根元部42から曲げるのではなく、先端部のみ曲げてプラグ側金属シェル25の外側に突出することから、プラグ側金属シェル25が単品の状態の際に、外力が加わりにくく、しかも根元部42から先端付近まで形状変化がなく(直片部43)、例え外力が加わっても、根元部42への応力集中を起こしにくく、ヘタリが生じにくい。その上、曲げ部45が先端付近(直片部43と斜片部44との間)に一箇所あるだけの単純な形状をなすことから、根元部と先端付近の二箇所で曲げて先端部のみ金属板の外側に突出する複雑な形状の従来の切り起こし片に比べ、金型費や工程を削減することができる。従って、プラグ側金属シェル25をプラグ側樹脂ケース26内に確実に固定しつつ、プラグ側金属シェル25のコストアップを抑えることができる。
また、プラグPは、レセプタクルRに、レセプタクル側コンタクト13の周りを覆うレセプタクル側金属シェル14が備えられ、プラグ側金属シェル25の内側には、レセプタクルRとの嵌合時にレセプタクル側金属シェル14が挿入されるレセプタクル側金属シェル挿入部28が形成され、レセプタクルRとの嵌合時にレセプタクル側金属シェル14が切り起こし片41の内側に嵌り込むもので、レセプタクルRと嵌合すると、切り起こし片41の内側にレセプタクル側金属シェル14が嵌り込み、レセプタクル側金属シェル14が切り起こし片41の弾性変位を規制することから、プラグPに振動や衝撃が加わっても、切り起こし片41が弾性変位することなく、プラグ側樹脂ケース26との係合が外れるおそれがない。また例え、レセプタクルRと嵌合する前のプラグP単体状態にて、切り起こし片41にヘタリがあり、プラグ側樹脂ケース26との係合が弱い状態であっても、レセプタクルRと嵌合すると、レセプタクル側金属シェル14により切り起こし片41が外側へ押し戻され、プラグ側樹脂ケース26との係合が正常状態となり、外れるおそれがない。
また、プラグPは、レセプタクル金属シェル14に突起61が設けられ、レセプタクルRとの嵌合時に突起61が切り起こし片41に接触するもので、レセプタクルRと嵌合すると、レセプタクル側金属シェル14に設けられた突起61が切り起こし片41に接触することから、金属シェル14,25同士が電気的に確実に接触(結合)し、シールド性が向上する。また、レセプタクルRとの嵌合時にレセプタクル側金属シェル14が切り起こし片41の内側に嵌り込むという構成による作用効果が、プラグ側金属シェル25とレセプタクル側金属シェル14との嵌合隙間に左右されることなく確実に得られる。さらに、突起61を切り起こし片41ではなくレセプタクル側金属シェル14に設けたことから、突起61によって切り起こし片41に形状変化を与え応力集中を起こすこともない。