JP2016039010A - 電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 電解液中の塩濃度の偏りに伴う劣化を抑制する。【解決手段】 二次電池(10)の抵抗上昇量(Rh)が閾値(R_th)以上であるとき、抵抗上昇量および閾値の差を示す抵抗上昇抑制量(ΔRh)を算出する。抵抗上昇量と、正極板および負極板における塩濃度の差と、発電要素内を移動する電解液の流速との対応関係を用いて、抵抗上昇量を抵抗上昇抑制量だけ低下させるときの流速である流速制限値(u_lim)を算出する。二次電池の温度から特定される、二次電池の電流値および流速の対応関係を用いて、流速制限値に対応した電流値である電流制限値(Ib_max,Ib_min)を算出し、電流制限値に応じた上限電力値(Wout,Win)を設定する。電流制限値に応じた上限電力値を設定して、電解液の流速を流速制限値に制限することにより、抵抗上昇抑制量の分だけ、抵抗上昇量を低下させて、塩濃度の偏りに伴う劣化を抑制できる。【選択図】 図10
Description
本発明は、電解液中の塩濃度の偏りに伴う劣化を抑制する電池システムに関する。
特許文献1では、電解液中の塩濃度の偏りに伴う劣化を評価するための評価値を設定し、組電池の電流値に基づいて評価値を算出している。ここで、評価値が目標値よりも大きいとき、評価値および目標値の差分を積算し、この積算値が閾値よりも大きいとき、組電池の出力制限値を最大値よりも小さい値に設定している。これにより、塩濃度の偏りに伴う劣化が進行することを抑制するようにしている。
電解液中の塩濃度の偏りに伴う劣化は、塩濃度の偏りだけでなく、正極、負極およびセパレータに含浸された電解液の流れ(流速)にも依存することが分かった。このため、塩濃度の偏りに伴う劣化を抑制するためには、電解液の流れを考慮する必要がある。
本発明の電池システムは、二次電池と、二次電池の温度を検出する温度センサと、二次電池の充放電を制御するときの上限電力値を設定するコントローラと、を有する。二次電池では、充放電を行う発電要素および電解液が電池ケースに収容されており、発電要素は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に配置されたセパレータとを有する。
コントローラは、発電要素に含浸された電解液中の塩濃度の偏りに伴って発生する二次電池の抵抗上昇量が閾値以上であるとき、抵抗上昇量および閾値の差を示す抵抗上昇抑制量を算出する。コントローラは、抵抗上昇量と、正極板および負極板における塩濃度の差と、発電要素内を移動する電解液の流速との対応関係を用いて、抵抗上昇量を抵抗上昇抑制量だけ低下させるときの流速である流速制限値を算出する。コントローラは、二次電池の温度から特定される、二次電池の電流値および流速の対応関係を用いて、流速制限値に対応した電流値である電流制限値を算出し、電流制限値に応じた上限電力値を設定する。
本発明によれば、電流制限値に応じた上限電力値を設定して、電解液の流速を流速制限値に制限することにより、抵抗上昇抑制量の分だけ、抵抗上昇量を低下させて、塩濃度の偏りに伴う劣化を抑制できる。
ここで、抵抗上昇量は、正極板および負極板における塩濃度の差と、発電要素内を移動する電解液の流速とに依存するため、所定の塩濃度差が発生しているとき、抵抗上昇量を抵抗上昇抑制量の分だけ低下させるための流速(流速制限値)を算出できる。また、電解液の流速は、二次電池の電流値と、電解液の膨張/収縮とに依存し、電解液の膨張/収縮は、二次電池の温度に依存する。すなわち、電解液の流速は、二次電池の電流値および温度に依存する。したがって、二次電池の温度を検出すれば、流速制限値に対応した電流制限値を算出できる。
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明の電池システムについて、図1を用いて説明する。二次電池10は、正極ラインPLおよび負極ラインNLを介して、負荷20と接続されている。負荷20は、二次電池10から出力された電力を受けて動作する。また、負荷20は、発電を行うこともでき、負荷20によって生成された電力は、二次電池10に供給される。これにより、二次電池10が充電される。
図1に示す電池システムは、例えば、車両に搭載できる。この場合には、複数の二次電池10を直列に接続した組電池を車両に搭載できる。また、負荷20としては、モータ・ジェネレータを用いることができる。モータ・ジェネレータは、二次電池10から出力された電力を受けて、車両を走行させるための動力を生成する。モータ・ジェネレータが生成した動力は、車輪に伝達される。モータ・ジェネレータは、車両の制動時に発生する運動エネルギを電力に変換し、この電力を二次電池10に供給できる。
電圧センサ31は、二次電池10の電圧値Vbを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。電流センサ32は、二次電池10の電流値Ibを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。本実施例において、二次電池10を放電しているときの電流値Ibを正の値とし、二次電池10を充電しているときの電流値Ibを負の値としている。
コントローラ40は、電圧値Vbおよび電流値Ibに基づいて、二次電池10の充放電を制御できる。ここで、コントローラ40は、電圧値Vbや電流値Ibに基づいて、二次電池10のSOC(State of Charge)を算出できる。SOCとは、満充電容量に対する現在の充電容量の割合である。SOCの算出方法としては、公知の方法を適宜採用できるため、SOCの算出方法に関する詳細な説明は省略する。
温度センサ33は、二次電池10の温度(電池温度)Tbを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。コントローラ40は、メモリ41を有する。メモリ41は、コントローラ40が所定の処理(特に、本実施例で説明する処理)を行うときに用いられる情報を記憶する。なお、メモリ41は、コントローラ40の外部に設けることもできる。
次に、二次電池10の構造について、図2を用いて説明する。図2において、X軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。本実施例では、鉛直方向に相当する軸をZ軸としている。なお、X軸およびZ軸と直交する軸をY軸とする。
二次電池10は、電池ケース110および発電要素120を有する。電池ケース110は、発電要素120を収容している。電池ケース110は密閉状態となっており、電池ケース110の内部には電解液が注入されている。電池ケース110には負極端子111および正極端子112が固定されている。負極端子111および正極端子112は、発電要素120と電気的に接続されている。
発電要素120は、充放電を行う要素であり、図3に示すように、負極板(本発明の電極板に相当する)121と、正極板(本発明の電極板に相当する)122と、セパレータ123とを有する。図3は、発電要素120の一部を展開した図である。負極板121は、集電箔121aと、集電箔121aの表面に形成された負極活物質層121bとを有する。負極活物質層121bは、負極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。負極活物質層121bは、集電箔121aの一部の領域に形成されており、集電箔121aの残りの領域には、負極活物質層121bが形成されていない。
正極板122は、集電箔122aと、集電箔122aの表面に形成された正極活物質層122bとを有する。正極活物質層122bは、正極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。正極活物質層122bは、集電箔122aの一部の領域に形成されており、集電箔122aの残りの領域には、正極活物質層122bが形成されていない。
負極活物質層121b、正極活物質層122bおよびセパレータ123には、電解液が含浸している。この電解液は、発電要素120の内部に存在する。一方、発電要素120の外部、言い換えれば、発電要素120および電池ケース110の間に形成されたスペースにも、余剰液としての電解液が存在している。
図3に示す順番で、負極板121、正極板122およびセパレータ123を積層し、この積層体をX軸の周りで図4に示す矢印Dの方向に巻くことにより、発電要素120が構成される。ここで、負極板121および正極板122の間には、セパレータ123が配置される。
X軸が延びる方向(X方向という)における発電要素120の一端では、負極板121の集電箔121aだけが巻かれている。集電箔121aだけが巻かれた部分は、図2に示す負極端子111と電気的に接続される。また、X方向における発電要素120の他端では、正極板122の集電箔122aだけが巻かれている。集電箔122aだけが巻かれた部分は、図2に示す正極端子112と電気的に接続される。
本実施例では、上述したように、積層体を巻くことにより、発電要素120を構成しているが、これに限るものではない。具体的には、積層体を巻かずに、負極板121、正極板122およびセパレータ123を積層しただけで、発電要素120を構成することもできる。
図4に示す領域Aは、負極活物質層121bおよび正極活物質層122bがセパレータ123を挟んで互いに向かい合う領域である。領域Aにおいて、二次電池10(発電要素120)の充放電に応じた化学反応が行われる。
二次電池10では、電解液中の塩濃度に偏りが発生することにより、二次電池10の内部抵抗値が上昇してしまう。このような内部抵抗値の上昇量を抵抗上昇量Rhとする。抵抗上昇量Rhは、二次電池10の劣化に伴う内部抵抗値の上昇量とは異なる。劣化に伴う内部抵抗値の上昇量は増加するだけであり、減少することはない。一方、抵抗上昇量Rhは、塩濃度の偏りに依存するため、塩濃度が偏るほど、抵抗上昇量Rhが増加し、塩濃度の偏りが緩和されるほど、抵抗上昇量Rhが減少する。
塩濃度の偏りの状態としては、図5および図6に示す状態がある。図5は、負極板121および正極板122が対向する方向(Y方向)において、塩濃度の偏りが発生する状態を示す。図5では、負極板121、正極板122およびセパレータ123の位置関係を示す概略図(図5の上側の図)と、塩濃度の分布(一例)を示す図(図5の下側の図)とを表している。
塩濃度分布を示す図において、縦軸は塩濃度であり、横軸はY方向における位置である。図5(上側の図)では、負極板121および正極板122がセパレータ123から離れているが、実際には、負極板121および正極板122がセパレータ123に接触している。図5(下側の図)に示すように、二次電池10の充電時では、塩濃度の偏りとして、実線で示す塩濃度分布が発生することがある。また、二次電池10の放電時では、塩濃度の偏りとして、一点鎖線で示す塩濃度分布が発生することがある。
なお、図5では、Y方向における塩濃度の偏りを示しているが、これに限るものではない。上述したように、本実施例の発電要素120では、負極板121および正極板122がX軸の周りで巻かれているため、負極板121(負極活物質層121b)および正極板122(正極活物質層122b)が対向する方向において、図5と同様の塩濃度の偏りが発生する。
二次電池10の充放電を行うときには、負極板121および正極板122の間において、負極板121および正極板122が対向する方向(例えば、図5に示すY方向)に塩が移動する。二次電池10がリチウムイオン二次電池であるとき、この塩はリチウム塩となる。負極板121および正極板122が対向する方向に塩が移動することによって、負極板121および正極板122が対向する方向において、塩濃度の偏りが発生する。
図6は、負極板121および正極板122のそれぞれの表面上(領域A内)において、塩濃度の偏りが発生する状態を示す。図5に示す塩濃度の偏りが発生することに応じて、図6に示す塩濃度の偏りが発生する。図6では、領域Aを含む負極板121の一部と、領域Aを含む正極板122の一部とを上下に分けて示している。ここで、負極板121の一部と、正極板122の一部とは、セパレータ123を挟んで対向している。
図6の矢印で示すように、塩濃度の偏りは、領域A内において、X方向に発生しやすい。図6では、負極板121および正極板122のそれぞれにおいて、領域A内における塩濃度の分布(一例)も示している。塩濃度分布を示す図において、縦軸は塩濃度であり、横軸はX方向における位置である。ここで、二次電池10の充電時では、塩濃度の偏りとして、実線で示す塩濃度分布が発生することがある。また、二次電池10の放電時では、塩濃度の偏りとして、一点鎖線で示す塩濃度分布が発生することがある。
上述したように、X方向における発電要素120の両端部では、負極板121(集電箔121a)や正極板122(集電箔122a)がX軸の周りで巻かれているだけである。このため、X方向における発電要素120の両端部では、電解液が通過しやすい。言い換えれば、発電要素120の内部から発電要素120の外部に向かって電解液が移動したり、発電要素120の外部から発電要素120の内部に向かって電解液が移動したりしやすい。
これにより、図6に示すように、領域A内のX方向において、塩濃度の偏りが発生しやすくなる。上述したように、負極板121、正極板122およびセパレータ123を積層しただけの構成であっても、発電要素120の内部から発電要素120の外部に向かって電解液が移動したり、発電要素120の外部から発電要素120の内部に向かって電解液が移動したりしやすい。
図6に示す塩濃度の偏りは、電解液の流れによって発生することが分かった。また、この電解液の流れは、電解液の体積変化(膨張および収縮)によって発生することが分かった。具体的には、電解液が膨張すると、X方向において、発電要素120の内部から発電要素120の外部に向かう電解液の流れが発生する。すなわち、図7において、X方向における領域Aの中心Cを基準として、矢印X1で示す方向に電解液が流れる。一方、電解液が収縮すると、X方向において、発電要素120の外部から発電要素120の内部に向かう電解液の流れが発生する。すなわち、図7において、領域Aの中心Cに向かう方向(矢印X2で示す方向)に電解液が流れる。矢印X1,X2で示す方向に電解液が流れることにより、図6に示す塩濃度の偏りが発生する。
そこで、本実施例では、電解液の膨張および収縮によって発生する電解液の流れ(流速)を算出することにより、図6に示す塩濃度の偏り(塩濃度分布)を把握するようにしている。図6に示す塩濃度の偏りを把握すれば、例えば、この塩濃度の偏りによって発生する抵抗上昇量Rhを把握できる。本発明における塩濃度の分布とは、図6に示す塩濃度分布である。
以下、電解液の流れ(流速)を算出する方法について説明する。
下記式(1)は電解液の流れを規定する方程式であり、Brinkman-Navier-Stokes方程式として知られている。下記式(2)は電解液の流れに関する連続式であり、質量保存則から導かれる式である。下記式(1),(2)は、本発明の液流れ方程式に相当する。
上記式(1),(2)において、ujは電解液の流速、ρは電解液の密度、εe,jは電解液の体積分率、tは時刻である。また、上記式(1)において、μは電解液の粘度、Kjは透過係数、pは電解液の圧力である。
ここで、添字jは、負極板121、正極板122およびセパレータ123を区別するために用いられ、添字jには「n」、「p」および「s」が含まれる。添字jが「n」であるときには、負極板121に関する値を示し、添字jが「p」であるときには、正極板122に関する値を示し、添字jが「s」であるときには、セパレータ123に関する値を示す。
上述したように、電解液は、負極板121(負極活物質層121b)、正極板122(正極活物質層122b)およびセパレータ123のそれぞれに含浸している。このため、電解液に関するパラメータ(流速uj、体積分率εe,j、透過係数Kj)としては、負極板121、正極板122およびセパレータ123のそれぞれにおいて規定される。なお、本明細書では、上記式(1),(2)に示すパラメータ以外にも添字jを用いることがある。
粘度μとしては予め定めた固定値を用いたり、電解液の温度に応じて粘度μを変更したりすることができる。電解液の温度としては、温度センサ33によって検出される電池温度Tbが用いられる。粘度μおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbを検出することにより粘度μを特定できる。粘度μおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報はメモリ41に記憶される。
密度ρは、電解液の膨張および収縮を規定するパラメータであり、電解液の膨張および収縮に応じた値を示す。電解液の膨張および収縮は電解液の温度(すなわち、電池温度Tb)に依存し、密度ρも電解液の温度(電池温度Tb)に依存する。したがって、密度ρおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbを検出することにより密度ρを特定できる。密度ρを特定することにより、電解液の膨張および収縮を把握できる。密度ρおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報はメモリ41に記憶される。体積分率εe,jや透過係数Kjは予め定めた固定値を用いることができる。
上記式(1)では、流速ujおよび圧力pが未知数となるため、上記式(2)に示す連続式を規定して上記式(1),(2)の連立方程式を解くことにより、流速ujおよび圧力pを算出できる。上記式(1),(2)には、電解液の膨張および収縮を規定する密度ρが含まれているため、上記式(1),(2)の連立方程式を解くことにより、電解液の膨張および収縮に応じた流速ujを算出できる。この流速ujには、図7の矢印X1で示す方向の流速と、図7の矢印X2で示す方向の流速とが含まれる。流速ujを算出するときには、例えば、上記式(1),(2)を用いて収束計算を行うことができる。また、上記式(1),(2)を用いた演算は所定の周期で行われるが、前回の演算周期で算出された値を今回の演算周期で用いることにより、流速ujを算出できる。
負極板121では、負極活物質層121bの内部において電解液が移動する。このため、流速uj(すなわち、流速un)は、負極活物質層121bの内部における位置毎に算出される。図6に示す塩濃度の偏りを把握するときには、X方向で互いに異なる位置において、流速unが算出される。
正極板122では、正極活物質層122bの内部において電解液が移動する。このため、流速uj(すなわち、流速up)は、正極活物質層122bの内部における位置毎に算出される。図6に示す塩濃度の偏りを把握するときには、X方向で互いに異なる位置において、流速upが算出される。セパレータ123では、この内部において電解液が移動する。このため、流速uj(すなわち、流速us)は、セパレータ123の内部における位置毎に算出される。図6に示す塩濃度の偏りを把握するときには、X方向で互いに異なる位置において、流速usが算出される。
一方、上記式(1),(2)において、様々な条件を仮定した上で、上記式(1)を簡易化することもできる。以下、上記式(1)を簡易化するときの手法(一例)について説明する。
電解液の密度ρが流速ujを算出する位置(X方向の位置を含む)に関わらず一定であると仮定すると、上記式(2)は下記式(3)で表される。
上記式(3)から下記式(4)が導き出せる。下記式(4)に示すvp,vn,vsは、正極板122、負極板121およびセパレータ123のそれぞれにおける電解液の動粘性係数(v=μ/ρ)である。下記式(4)に示すx,yは、X方向およびY方向における位置をそれぞれ示す。ここで、Y方向とは、負極板121および正極板122がセパレータ123を挟んで対向する方向(図7の上下方向)である。
電解液の連続性を考慮すると、上記式(4)は下記式(5)で表される。
一方、上記式(1)において、下記式(6)に示す仮定を行うと、下記式(7)が得られる。
X方向における電解液の圧力分布に関して、負極板121、正極板122およびセパレータ123における圧力分布が互いに等しいと仮定すると、下記式(8)が得られる。
上記式(5),(8)によれば、下記式(9)が導き出せる。下記式(9)は、負極板121において、X方向の位置に応じた流速unを示している。下記式(9)に示すxはX方向の位置を示している。
上記式(9)をxで積分し、xが0であるときの流速unを0と仮定すると、下記式(10)が得られる。ここで、xが0であるときの位置は、X方向における領域Aの一端を示している。また、X方向における領域Aの長さをLとすると、X方向における領域Aの他端については、xがLになる。
流速unと同様に、流速up,usは下記式(11),(12)で表される。
上記式(10)〜(12)は上記式(1)を簡易化した式となり、負極板121、正極板122およびセパレータ123のそれぞれにおいて、X方向の位置に応じた流速un,up,usを算出できる。上記式(10)〜(12)は、本発明における液流れ方程式に相当する。なお、電解液の流速ujを算出するための方程式は、上記(1),(2),(10)〜(12)に限るものではない。電解液の流れは電解液の体積変化によって発生するため、電解液の体積変化を規定する電解液の密度をパラメータ(変数)として含み、電解液の流れを規定できる方程式であれば、本発明を適用できる。
流速ujを算出すれば、下記式(13)に基づいて、電解液中の塩濃度ce,jを算出できる。ここで、塩濃度ce,jを算出するときには、流速un,up,usのすべてを考慮してもよいし、流速un,up,usの一部(例えば、流速un)だけを考慮してもよい。
上記式(13)において、De,j effは、電解液の実効拡散係数であり、t+ 0は電解液中の塩の輸率である。Fはファラデー定数であり、jjは、単位体積および単位時間において、電解液中の塩の生成量である。
上記式(13)の左辺第1項は、所定時間Δtにおける塩濃度の変化を規定している。上記式(13)の左辺第2項は、電解液の流れ(流速uj)に依存する塩濃度の変化を規定している。上記式(13)の右辺第1項は、電解液中の塩の拡散状態を規定している。上記式(13)の右辺第2項は、塩の生成量を規定している。ここで、二次電池10の放電時では、負極板121の表面(負極活物質層121b)において塩が生成され、二次電池10の充電時では、正極板122の表面(正極活物質層122b)において塩が生成される。
上記式(13)によれば、図5および図6に示す塩濃度の偏りを把握することができる。上記式(13)を解くことにより塩濃度ce,jを算出できる。ここで、流速ujとしては、X方向の位置に応じた流速ujが用いられるため、上記式(13)を解くことにより、X方向の位置に応じた塩濃度ce,jを算出できる。これにより、X方向における塩濃度ce,jの分布(図6参照)を算出できる。
なお、塩濃度ce,jの算出方法は、上記式(13)を用いた方法に限るものではない。X方向において塩濃度ce,jのバラツキが発生している状態であれば、流速ujに基づいて、X方向における塩濃度ce,jの分布を算出できる。上記式(13)では、塩濃度ce,jのバラツキを把握するために、塩の拡散状態および塩の生成量を規定している。例えば、塩濃度ce,jのバラツキを予め設定すれば、塩の拡散状態や生成量を考慮せずに、流速ujに基づいて塩濃度ce,jの分布を算出できる。
また、上記式(13)によれば、電解液中の塩の拡散状態を規定しているが、塩の拡散状態を考慮しなくてもよい。塩の拡散に関する時定数は、塩の生成に関する時定数よりも大きいため、塩の拡散が発生していないこともある。そこで、塩濃度ce,jの分布を算出するときに、塩の拡散状態を考慮しないようにしてもよい。
上述したように塩濃度ce,jの分布を算出すれば、塩濃度ce,jの最大差(塩濃度差)Δce,j_maxを算出できる。塩濃度差Δce,j_maxは、塩濃度(最大値)ceおよび塩濃度(最小値)ceの差である。
図8に示すように、抵抗上昇量Rhおよび塩濃度差Δce_maxの対応関係を実験などによって予め求めておけば、塩濃度差Δce_maxを算出することにより、この塩濃度差Δce_maxに対応した抵抗上昇量Rhを算出できる。図8に示すように、塩濃度差Δce_maxが大きくなるほど、抵抗上昇量Rhが大きくなる。言い換えれば、塩濃度差Δce_maxが小さくなるほど、抵抗上昇量Rhが小さくなる。上記式(13)によれば、塩濃度ceは、負極板121および正極板122のそれぞれで算出される。ここで、図8に示す塩濃度差Δce_maxを算出するときには、まず、負極板121および正極板122における塩濃度ceの分布を合算する。具体的には、負極板121および正極板122において、互いに対向する位置における塩濃度ceを合算する。そして、合算した塩濃度ceの分布において、塩濃度(最大値)ceおよび塩濃度(最小値)ceの差を塩濃度差Δce_maxとして算出する。
抵抗上昇量Rhおよび塩濃度差Δce_maxの対応関係は、マップ又は演算式として表すことができる。そして、この対応関係を特定する情報はメモリ41に記憶しておくことができる。上記式(13)によれば、所定時間(演算周期)Δtが経過するたびに塩濃度ce,jが算出されて塩濃度ce,jの分布を把握できるため、所定時間Δtが経過するたびに抵抗上昇量Rhが算出される。これに伴い、抵抗上昇量Rhの変化を把握できる。
一方、抵抗上昇量Rhは、平均塩濃度ce_aveに依存することがある。そこで、平均塩濃度ce_aveに基づいて、抵抗上昇量Rhを算出することもできる。平均塩濃度ce_aveとは、負極板121および正極板122における塩濃度(上述した合算値)ceの分布を平均化した塩濃度(平均値)である。塩濃度差Δce_maxと同様に、抵抗上昇量Rhおよび平均塩濃度ce_aveの対応関係(マップ又は演算式)を実験などによって予め求めておけば、平均塩濃度ce_aveを算出することにより、この平均塩濃度ce_aveに対応した抵抗上昇量Rhを算出できる。
また、塩濃度差Δce_maxおよび平均塩濃度ce_aveに基づいて、抵抗上昇量Rhを算出することもできる。この場合には、塩濃度差Δce_max、平均塩濃度ce_aveおよび抵抗上昇量Rhの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけばよい。塩濃度差Δce_maxおよび平均塩濃度ce_aveを算出すれば、算出した塩濃度差Δce_maxおよび平均塩濃度ce_aveに対応する抵抗上昇量Rhを算出できる。
図9は、塩濃度分布を算出する処理を示すフローチャートである。図9に示す処理は、コントローラ40によって実行される。
ステップS101において、コントローラ40は、温度センサ33を用いて電池温度Tbを検出する。ステップS102において、コントローラ40は、電解液の流速ujを算出する。具体的には、上述したように、コントローラ40は、X方向の位置に応じた流速ujを算出する。流速ujを算出するときには、ステップS101の処理で検出された電池温度Tbが用いられる。
ステップS103において、コントローラ40は、ステップS102の処理で算出された流速ujに基づいて塩濃度ce,jの分布を算出する。塩濃度ce,jの分布を算出する方法は上述した通りである。
本実施例では、ステップS101の処理において、温度センサ33を用いて電池温度Tbを検出しているが、これに限るものではない。具体的には、ステップS101の処理において、二次電池10を充放電したときの発熱量(電池温度Tbの上昇量)と、二次電池10の放熱量(電池温度Tbの低下量)とを考慮することにより、電池温度Tbを推定できる。
二次電池10の発熱量は、二次電池10の電流値Ibおよび内部抵抗値から算出できる。二次電池10の内部抵抗値は、電流値Ibおよび電圧値Vbから算出できる。二次電池10の放熱量は、電池温度Tbと、二次電池10の周囲に存在する大気中の温度(環境温度)とに基づいて算出できる。ここで、電池温度Tbが環境温度よりも高いときにおいて、電池温度Tbおよび環境温度の差が広がるほど、放熱量が大きくなりやすい。
二次電池10を充放電していなければ、電池温度Tbは環境温度と等しくなる。そこで、温度センサ33とは異なる温度センサを用いて環境温度を検出しておき、二次電池10を充放電するたびに算出される発熱量と、二次電池10の放熱量とに基づいて、現在の電池温度Tbを算出(推定)できる。発熱量および放熱量に基づいて電池温度Tbを推定する方法は、公知の方法を適宜採用できる。二次電池10を車両に搭載したとき、車両には、車両の外部における温度を検出する温度センサが設けられている。この温度センサを用いて、環境温度を検出できる。
図9に示す処理によって塩濃度分布を算出したときには、この塩濃度分布に基づいて抵抗上昇量Rhを算出し、この抵抗上昇量Rhに基づいて二次電池10の充放電を制御できる。ここで、二次電池10の充放電を制御するときの処理(一例)について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。図10に示す処理は、コントローラ40によって実行される。
ステップS201において、コントローラ40は、図9に示す処理で算出した塩濃度ce,jの分布に基づいて抵抗上昇量Rhを算出する。抵抗上昇量Rhを算出する方法は上述した通りである。ステップS202において、コントローラ40は、抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるか否かを判別する。閾値Rh_thは、抵抗上昇量Rhの上限値であり、二次電池10の劣化を抑制する観点に基づいて適宜設定できる。閾値Rh_thを特定する情報は、メモリ41に記憶しておくことができる。
抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるとき、コントローラ40は、ステップS203において、抵抗上昇量Rhおよび閾値Rh_thに基づいて、抵抗上昇抑制量ΔRhを算出する。ここで、抵抗上昇抑制量ΔRhは、ステップS201の処理で算出された抵抗上昇量Rhから閾値Rh_thを減算した値、すなわち、抵抗上昇量Rhおよび閾値Rh_thの差である。
ステップS204において、コントローラ40は、ステップS203の処理で算出した抵抗上昇抑制量ΔRhと、正負極間の塩濃度差Δce,npとに基づいて、流速制限値u_limを算出する。以下、流速制限値u_limを算出する方法について説明する。
正負極間の塩濃度差Δce,npとは、図5に示す塩濃度分布において、正極板122における塩濃度ceと、負極板121における塩濃度ceとの差である。上述したように、塩濃度差Δce_maxを算出するときに、正極板122および負極板121における塩濃度ceがそれぞれ算出されているため、これらの塩濃度ceの差(すなわち、正負極間の塩濃度差Δce,np)を算出することができる。
抵抗上昇量Rhは、塩濃度差Δce,npおよび流速uに依存する。具体的には、塩濃度差Δce,npが大きいほど、また、流速uが高いほど、抵抗上昇量Rhが大きくなる。言い換えれば、塩濃度差Δce,npが小さいほど、また、流速uが低いほど、抵抗上昇量Rhが小さくなる。
図11に示すように、正負極間の塩濃度差Δce,npが所定値であるとき、流速uを低下させれば、抵抗上昇量Rhを低下させることができる。図11において、縦軸は抵抗上昇量Rhを示し、横軸は流速uを示す。抵抗上昇量Rh_cは、ステップS201の処理で算出された抵抗上昇量Rhを示し、流速u_cは、抵抗上昇量Rh_cが発生するときの流速uを示す。すなわち、流速u_cは、図9に示すステップS102の処理で算出された流速ujとなる。
図11に示す抵抗上昇量Rh_limは、流速制限値u_limに対応した抵抗上昇量Rhである。すなわち、抵抗上昇量Rh_limは、塩濃度差Δce,npが所定値であり、流速uが流速制限値u_limであるときの抵抗上昇量Rhとなる。ここで、抵抗上昇量Rh_cおよび抵抗上昇量Rh_limの差が、抵抗上昇抑制量ΔRhとなる。
上述したように、流速u_cおよび抵抗上昇量Rh_cは予め算出されているため、ステップS203の処理で算出された抵抗上昇抑制量ΔRhが得られるときの流速制限値u_limを算出できる。すなわち、抵抗上昇量Rh_cから抵抗上昇抑制量ΔRhを減算すれば、抵抗上昇量Rh_limを算出できる。塩濃度差Δce,npが所定値であるとき、抵抗上昇量Rhが抵抗上昇量Rh_limとなるときの流速uを算出できる。このときの流速uが流速制限値u_limとなる。
ステップS205において、コントローラ40は、ステップS204の処理で算出した流速制限値u_limに基づいて、電流制限値Ib_max,Ib_minを算出する。具体的には、図12に示すように、流速u(Tb)および電流値Ibの対応関係を予め求めておく。この対応関係は、マップ又は演算式として表され、この対応関係の情報はメモリ41に記憶しておくことができる。
図12において、縦軸は流速uを示し、横軸は電流値Ibを示す。ここで、流速uが0よりも高いときには、図7に示す矢印X1の方向において電解液が流れているときの流速を示す。また、流速uが0よりも低いときには、図7に示す矢印X2の方向において電解液が流れているときの流速を示す。流速uが0であれば、図7に示す矢印X1,X2のいずれの方向においても電解液が流れていない。
図12に示す流速u(Tb)は、各電流値Ibにおいて、電解液の膨張や収縮に応じた流速uである。電流値(絶対値)Ibが大きいほど、発電要素120の発熱量が増加し、電解液が膨張しやすくなる。この電解液の膨張により、図7に示す矢印X1の方向に電解液が流れやすくなるため、電流値(絶対値)Ibが大きいほど、流速uが高くなる。言い換えれば、電流値(絶対値)Ibが小さいほど、流速uが低くなる。したがって、流速u(Tb)および電流値Ibの関係は、図12に示す関係となる。電解液の膨張や収縮は、電池温度Tbにも依存するため、図12に示す関係は、電池温度Tb毎に用意される。
コントローラ40は、電池温度Tbを検出すれば、この電池温度Tbに対応した図12に示す対応関係を特定できる。このように特定された図12に示す対応関係において、ステップS204の処理で算出された流速制限値u_limに対応する電流値Ibが電流制限値Ib_max,Ib_minとなる。電流制限値(正の値)Ib_maxは、二次電池10を放電するときの電流制限値となり、電流制限値(負の値)Ib_minは、二次電池10を充電するときの電流制限値となる。図12から分かるように、流速制限値u_limが低いほど、電流制限値Ib_max,Ib_minが0[A]に近づく。
ステップS206において、コントローラ40は、充電電力許容値Winや放電電力許容値Woutを設定する。充電電力許容値Winは、二次電池10の充電を許容する上限の電力値であり、放電電力許容値Woutは、二次電池10の放電を許容する上限の電力値である。
上述したように、二次電池10を充電したときの電流値Ibは負の値となるため、充電電力値も負の値となる。一方、二次電池10を放電したときの電流値Ibは正の値となるため、放電電力値は正の値となる。二次電池10を充電するときには、充電電力値(絶対値)が充電電力許容値(絶対値)Winよりも高くならないように充電が制御される。また、二次電池10を放電するときには、放電電力値が放電電力許容値Woutよりも高くならないように放電が制御される。
コントローラ40は、ステップS205の処理によって電流制限値Ib_maxを算出すれば、この電流制限値Ib_maxに対応した放電電力許容値Woutを算出できる。ステップS206の処理では、このように算出した放電電力許容値Woutが設定される。電流制限値Ib_maxが0[A]に近づくほど、放電電力許容値Woutが低下し、二次電池10の放電が制限されやすくなる。
また、コントローラ40は、ステップS205の処理によって電流制限値Ib_minを算出すれば、この電流制限値Ib_minに対応した充電電力許容値Winを算出できる。ステップS206の処理では、このように算出した充電電力許容値Winが設定される。電流制限値Ib_minが0[A]に近づくほど、充電電力許容値(絶対値)Winが低下し、二次電池10の充電が制限されやすくなる。
抵抗上昇量Rhが閾値Rh_thよりも小さいとき、コントローラ40は、図10に示す処理を終了する。このとき、充電電力許容値Winとしては、基準値としての充電電力許容値Win_refが設定され、放電電力許容値Woutとしては、基準値としての放電電力許容値Wout_refが設定される。
充電電力許容値Win_refや放電電力許容値Wout_refは、電池温度Tbや二次電池10のSOCに基づいて設定される。ステップS206の処理で設定される放電電力許容値Woutは、放電電力許容値Wout_refよりも低くなる。また、ステップS206の処理で設定される充電電力許容値(絶対値)Win_refは、充電電力許容値(絶対値)Win_refよりも低くなる。
図10に示す処理では、抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるとき、充電電力許容値(絶対値)Winおよび放電電力許容値Woutを低下させているが、これに限るものではない。具体的には、充電電力許容値(絶対値)Winおよび放電電力許容値Woutの一方だけを低下させることができる。
抵抗上昇量Rhとしては、二次電池10の充電に起因した抵抗上昇量Rhと、二次電池10の放電に起因した抵抗上昇量Rhとがある。図6に示すように、充電時および放電時において、塩濃度ce,jの分布が異なる。したがって、塩濃度ce,jの分布を把握すれば、二次電池10の充電に起因した抵抗上昇量Rhと、二次電池10の放電に起因した抵抗上昇量Rhとを区別できる。
ここで、二次電池10の充電によって塩濃度差Δce_maxが発生し、この塩濃度差Δce_maxから算出された抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるときには、充電電力許容値(絶対値)Winだけを低下させることができる。これにより、充電に起因した抵抗上昇量Rhに関して、抵抗上昇量Rhの増加を抑制したり、抵抗上昇量Rhを減少させたりすることができる。
一方、二次電池10の放電によって塩濃度差Δce_maxが発生し、この塩濃度差Δce_maxから算出された抵抗上昇量Rhが閾値Rh_th以上であるときには、放電電力許容値Woutだけを低下させることができる。これにより、放電に起因した抵抗上昇量Rhに関して、抵抗上昇量Rhの増加を抑制したり、抵抗上昇量Rhを減少させたりすることができる。
本発明の実施例2について説明する。本実施例において、実施例1で説明した構成要素と同じ構成要素については同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。
実施例1では、電解液の膨張および収縮によって発生する電解液の流れ(流速uj)を考慮して塩濃度分布を算出している。ここで、電解液の流れは、電解液の膨張および収縮に加えて、活物質(正極活物質や負極活物質)の膨張および収縮によっても発生することがある。本実施例では、電解液の膨張および収縮と、活物質の膨張および収縮とによって発生する電解液の流れ(流速uj)を考慮して塩濃度分布を算出している。
活物質の膨張時には活物質の体積が増加し、活物質の収縮時には活物質の体積が減少する。活物質の体積は、電池温度Tbや二次電池10のSOCに依存する。すなわち、電池温度TbやSOCが変化すれば、活物質の体積が変化する。
負極活物質層121bや正極活物質層122bの体積が変化しないと仮定すると、負極活物質や正極活物質の体積が変化することにより、各活物質層121b,122bに含浸された電解液の体積分率εe,jが変化する。したがって、電解液の流れ(流速uj)を算出するときには、体積分率εe,jの変化を考慮することが好ましい。体積分率εe,jの変化量Δεe,jは、下記式(14)に基づいて算出できる。
上記式(14)において、βj(具体的にはβn又はβp)は活物質(負極活物質又は正極活物質)の体積膨張率であり、εe,jは前回の演算周期で算出された体積分率εe,jである。体積膨張率βjは、活物質の膨張および収縮を規定する値であるため、上記式(14)によれば、体積膨張率βjに基づいて変化量Δεe,jを算出できる。今回の演算周期において変化量Δεe,jを算出したときには、前回の体積分率εe,jに対して今回の変化量Δεe,jを加算することにより、今回の演算周期における体積分率εe,jを算出できる。
ここで、変化量Δεe,jを最初に算出するとき、上記式(14)に示す体積分率εe,jとしては、電池温度Tbや二次電池10のSOCに応じた値を用いることができる。電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方と、体積分率εe,jとの対応関係を示す情報を実験などによって予め求めておけば、電池温度TbやSOCを特定することにより、体積分率εe,jを特定できる。
体積膨張率βjは線膨張率αjから算出できる。すなわち、線膨張率αjの3倍の値が体積膨張率βjとなる。ここで、線膨張率αjは、電池温度Tbや二次電池10のSOCに依存するため、電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方から線膨張率αjを特定できる。例えば、線膨張率αjおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbの検出又は推定によって線膨張率αjを特定できる。また、線膨張率αjおよびSOCの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、SOCの推定によって線膨張率αjを特定できる。上述した対応関係を示す情報はメモリ41に記憶しておくことができる。なお、線膨張率αjを算出せずに、電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方から体積膨張率βjを直接算出することもできる。
なお、各活物質層121b,122bに関する変化量Δεe,n,Δεe,pに加えて、セパレータ123に関する変化量Δεe,sを算出してもよい。変化量Δεe,sを算出するとき、上記式(14)に示すβj(すなわち、βs)は、セパレータ123を構成する材料の体積膨張率となる。体積膨張率βsは電池温度Tbに依存する。このため、体積膨張率βsおよび電池温度Tbの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度Tbの検出又は推定によって体積膨張率βsを特定できる。セパレータ123に関して、変化量Δεe,sおよび体積分率εe,sを算出する方法は、上述した算出方法と同様である。
上記式(14)の変化量Δεe,jから算出された体積分率εe,jは、上記式(1),(2),(10)〜(13)に示す体積分率εe,jとして用いられる。そして、実施例1と同様に、電解液の流速ujを算出して塩濃度分布を算出することにより、二次電池10の抵抗上昇量Rhを算出できる。本実施例において、流速ujを算出するときには、体積膨張率βjを算出するために、図9に示すステップS101の処理において、電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方が特定される。
本実施例によれば、活物質の膨張および収縮によって電解液の流れが発生するときには、体積分率εe,jの変化を考慮して流速ujを算出することにより、流速ujの算出精度を向上させることができる。これに伴い、塩濃度分布の算出精度を向上させたり、抵抗上昇量Rhの算出精度を向上させたりすることができる。
本実施例において、二次電池10の充放電を制御するときには、図10に示す処理と同様の処理を行うことができる。ただし、ステップS205の処理において、電流制限値Ib_max,Ib_minを算出するときには、電解液の膨張や収縮だけでなく、活物質の膨張や収縮も考慮している。この点について、図13を用いて説明する。
図13は、図12に対応した図である。本実施例において、電流制限値Ib_max,Ib_minを算出するときには、図13の実線で示すように、流速u(Tb,SOC)および電流値Ibの対応関係が用いられる。図13の実線で示す対応関係は、図13の一点鎖線で示す対応関係と、図13の二点差線で示す対応関係とから特定される。
図13の一点鎖線で示す対応関係は、図12に示す対応関係となる。図13の二点差線で示す対応関係は、流速u(SOC)および電流値Ibの対応関係である。この対応関係は、マップ又は演算式として表され、この対応関係の情報はメモリ41に記憶しておくことができる。
図13に示す流速u(SOC)は、各電流値Ibにおいて、活物質(負極活物質)の膨張や収縮に応じた流速uである。充電時の電流値(絶対値)Ibが大きいほど、負極活物質が膨張して、図7に示す矢印X1の方向に電解液が流れやすくなる。このため、充電時の電流値(絶対値)Ibが大きいほど、矢印X1の方向における流速uが高くなる。言い換えれば、充電時の電流値(絶対値)Ibが小さいほど、矢印X1の方向における流速uが低くなる。
一方、放電時の電流値Ibが大きいほど、負極活物質が収縮して、図7に示す矢印X2の方向に電解液が流れやすくなる。このため、放電時の電流値Ibが大きいほど、矢印X2の方向における流速uが高くなる。言い換えれば、放電時の電流値Ibが小さいほど、矢印X2の方向における流速uが低くなる。したがって、流速u(SOC)および電流値Ibの関係は、図13の二点差線で示す関係となる。負極活物質の膨張や収縮は、二次電池10のSOCにも依存するため、図13の二点差線で示す対応関係は、二次電池10のSOC毎に用意される。
コントローラ40は、二次電池10のSOCを算出すれば、このSOCに対応した、図13の二点差線で示す対応関係を特定できる。図13において、一点鎖線および二点差線で示す対応関係を特定すれば、実線で示す対応関係を算出することができる。実線で示す流速u(Tb,SOC)は、各電流値Ibにおいて、一点鎖線で示す流速u(Tb)に二点差線で示す流速u(SOC)を加算した値である。ここで、流速u(SOC)が負の値であるとき、流速u(Tb)から流速u(SOC)を減算した値が流速u(Tb,SOC)となる。
上述したように、コントローラ40は、電池温度Tbを検出し、二次電池10のSOCを算出すれば、図13の実線で示す対応関係を特定できる。図13の実線で示す対応関係において、図10のステップS204の処理で算出された流速制限値u_limに対応する電流値Ibが電流制限値Ib_max,Ib_minとなる。
本発明の実施例3について説明する。本実施例において、実施例1,2で説明した構成要素と同じ構成要素については同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。以下、実施例1,2と異なる点について、主に説明する。
実施例2では、負極活物質層121bや正極活物質層122bの体積が変化しないと仮定した上で、体積分率εe,jが変化するものとしている。一方、活物質の膨張や収縮によって各活物質層121b,122bの体積が変化することがある。この場合には、各活物質層121b,122bの体積変化を考慮する必要がある。
そこで、本実施例では、各活物質層121b,122bの体積変化を考慮して流速ujを算出している。各活物質層121b,122bの体積が変化すると、各活物質層121b,122bにおいて、電解液が存在する空間の体積が変化することに応じて体積分率εe,jが変化する。この点を考慮して、体積分率εe,jを算出できる。以下、体積分率εe,jの算出方法について、具体的に説明する。
本実施例では、各活物質層121b,122bの体積変化を各活物質層121b,122bの厚さの変化とみなしている。各活物質層121b,122bの厚さとは、負極板121および正極板122が対向する方向(図7の上下方向)における各活物質層121b,122bの長さである。
各活物質層121b,122bの厚さが変化した分だけ、発電要素120の厚さが変化するときには、発電要素120の厚さの変化量が下記式(15)によって表される。発電要素120の厚さとは、図4において、Y方向における発電要素120の長さである。
上記式(15)において、Δy0は発電要素120の厚さの変化量である。変化量Δy0は、正極活物質層122bの厚さの変化量Δypと、負極活物質層121bの厚さの変化量Δynと、セパレータ123の厚さの変化量Δysとの総和になる。上記式(15)では、セパレータ123の厚さの変化量Δysも考慮している。セパレータ123の厚さとは、負極板121および正極板122が対向する方向(図7の上下方向)におけるセパレータ123の長さである。なお、変化量Δysを無視することもできる。
変化量Δypは、正極活物質層122bの厚さ(変化前の厚さ)ypに正極活物質の体積膨張率βpを乗算することによって求められる。変化量Δynは、負極活物質層121bの厚さ(変化前の厚さ)ynに負極活物質の体積膨張率βnを乗算することによって求められる。変化量Δysは、セパレータ123の厚さ(変化前の厚さ)ysにセパレータ123を構成する材料(すなわち、セパレータ123自体)の体積膨張率βsを乗算することによって求められる。
二次電池10には拘束力が与えられることがある。この拘束力は、Y方向において二次電池10を挟む力である。二次電池10を固定したり、発電要素120の入出力性能を確保したりするために、二次電池10に拘束力を与えることがある。二次電池10(発電要素120)に拘束力が与えられており、発電要素120の厚さの変化が制限されるとき、発電要素120の厚さの変化量Δyは変化量Δy0よりも小さくなる。すなわち、変化量Δyは、発電要素120の厚さが変化するときの力と、発電要素120に与えられた拘束力とが釣り合っているときの変化量となる。
ここで、二次電池10の厚さの変化について、図14に示すバネモデルを用いて説明する。二次電池10は、電解液が含浸されていない部分(非含浸部分という)と、電解液が含浸された部分(含浸部分という)とで構成されている。非含浸部分は、電池ケース110および集電箔121a,122aである。含浸部分は、負極活物質層121b、正極活物質層122bおよびセパレータ123である。図14において、バネ定数k1は、非含浸部分のバネ定数(固定値)であり、バネ定数k2は、含浸部分のバネ定数(固定値)である。
図14に示す初期状態とは、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123が膨張する前の状態である。ここで、非含浸部分の厚さは初期値を示す。二次電池10に拘束力が与えられていない状態(非拘束状態、すなわち自然状態)では、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123の膨張によって、発電要素120の厚さが初期状態の厚さよりも変化量Δy0だけ増加する。ここで、非含浸部分の厚さは初期値のままである。
一方、二次電池10に拘束力が与えられている状態(拘束状態)では、変化量Δy0に相当する力と拘束力とが釣り合う。拘束力によって発電要素120が縮められ、拘束状態での発電要素120の厚さは、非拘束状態での発電要素120の厚さよりも小さくなる。拘束状態において、含浸部分の厚さは、初期状態の厚さよりも変化量Δyの分だけ大きくなる。ここで、変化量Δyは変化量Δy0よりも小さい。
図14に示す拘束状態では、下記式(16)に示す関係(力の釣り合い関係)が成り立つ。
上記式(16)において、Hは発電要素120の高さ(固定値)であり、pは拘束状態における電解液の圧力であり、xはX方向における発電要素120の位置である。バネ定数k1,k2は実験などによって予め求めておくことができる。高さHとは、図2や図4において、Z方向における発電要素120の長さであり、予め求めておくことができる。
変化量Δy0は、電池温度Tbや二次電池10のSOCに依存する。このため、電池温度TbおよびSOCの少なくとも一方と、変化量Δy0との対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、電池温度TbやSOCを特定することにより変化量Δy0を特定できる。変化量Δy0を特定すれば、変化量Δyは、圧力pを変数として含む関数で表すことができる。
変化量Δyは、発電要素120の全体における厚さの変化量である。ここで、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123のそれぞれにおける厚さの変化量Δyp,Δyn,Δysは、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123におけるバネ定数の比と、変化量Δyとから算出できる。具体的には、変化量Δyp,Δyn,Δysは、下記式(17)によって表される。
上記式(17)において、knは負極活物質層121bのバネ定数(固定値)、kpは正極活物質層122bのバネ定数(固定値)、ksはセパレータ123のバネ定数(固定値)である。各バネ定数kn,kp,ksは実験などによって予め求めておくことができる。
変化量Δyp,Δyn,Δysを用いれば、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123のそれぞれにおける厚さyp,yn,ysを把握できる。すなわち、前回の演算周期で算出された厚さyjに対して、上記式(17)で算出された変化量Δyj(Δyp、Δyn、Δys)を加算することにより、今回の厚さyjを算出できる。
また、変化量Δyp,Δyn,Δysを用いれば、正極活物質層122b、負極活物質層121bおよびセパレータ123のそれぞれにおいて、電解液が存在する空間の体積の変化量ΔVe,jを算出できる。ここで、Ve,jは、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123のそれぞれにおいて、電解液が存在する空間の体積である。変化量ΔVe,jは下記式(18)によって表される。
上記式(18)において、Vs,jは、各活物質層121b,122bでは、各活物質層121b,122bに含まれる活物質の体積(Vs,n、Vs,p)を示し、セパレータ123では、セパレータ123自体の体積(Vs,s)を示す。そして、体積Vs,jの変化量がΔVs,jとなる。Vall,jは体積Vs,jおよび体積Ve,jの総和である。そして、体積Vall,jの変化量がΔVall,jとなる。
変化量ΔVall,jおよび変化量ΔVs,jは、下記式(19),(20)によって表される。
上記式(19)に基づいて変化量ΔVall,jを算出するとき、体積Vall,jおよび厚さyjとしては、前回の演算周期で算出された値が用いられる。また、変化量Δyjとしては、上記式(17)が用いられる。上記式(20)に示す体積膨張率βjは、実施例2で説明したように、電池温度Tbや二次電池10のSOCから算出できる。また、上記式(20)に示す体積分率εe,jおよび体積Vall,jとしては、前回の演算周期で算出された値が用いられる。
上記式(19),(20)に基づいて変化量ΔVall,j,ΔVs,jを算出すれば、上記式(18)に基づいて変化量ΔVe,jを算出できる。ここで、上記式(20)には体積膨張率βjが含まれているため、体積膨張率βjに基づいて変化量ΔVe,jを算出できる。
電解液の流速ujを算出する式(上記式(1),(10)〜(12))では、変化量ΔVe,jがパラメータとして含まれていない。ただし、電解液が存在する空間の体積が変化するときには、電解液の体積分率εe,jが変化するため、変化量ΔVe,jを変化量Δεe,jに変換することができる。具体的には、体積Vall,jが予め定めた一定の体積Vall_model,jであると仮定したとき、下記式(21)に示すように、体積Vall_model,jおよび変化量ΔVe,jから変化量Δεe,jを算出できる。
変化量Δεe,jを算出すれば、前回の演算周期で算出された体積分率εe,jに変化量Δεe,jを加算することにより、今回の体積分率εe,jを算出できる。今回算出した体積分率εe,jを用いれば、上記式(1),(2)に基づいて、又は、上記式(10)〜(12)に基づいて、流速ujを算出できる。また、上記式(13)に基づいて塩濃度ce,jを算出するときにも、今回算出した体積分率εe,jを用いることができる。
本実施例によれば、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123のそれぞれにおける体積(具体的には厚さ)が変化したときを考慮して、体積分率εe,jを算出している。これにより、上述した体積が変化するときにおいて、流速ujの算出精度を向上させることができる。これに伴い、塩濃度分布の算出精度を向上させたり、抵抗上昇量Rhの算出精度を向上させたりすることができる。
透過係数Kjは、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123のそれぞれにおける厚さyj(すなわち、厚さyp,yn,ys)に依存する。例えば、正極活物質層122bにおいて、正極活物質の体積が一定であるとき、正極活物質層122bの厚さypが大きくなるほど、正極活物質層122b中で電解液が移動しやすくなるため、透過係数Kpが大きくなる。
また、正極活物質の体積が一定であるとき、正極活物質層122bの厚さypが小さくなるほど、正極活物質層122b中で電解液が移動しにくくなるため、透過係数Kpが小さくなる。同様に、セパレータ123自体の体積が一定であるとき、セパレータ123の厚さysが大きくなるほど、セパレータ123中で電解液が移動しやすくなるため、セパレータ123の透過係数Ksが大きくなる。また、セパレータ123自体の体積が一定であるとき、セパレータ123の厚さysが小さくなるほど、セパレータ123中で電解液が移動しにくくなるため、透過係数Ksが小さくなる。
したがって、透過係数Kjおよび厚さyjの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、厚さyjに応じた透過係数Kjを特定できる。このように特定した透過係数Kjは、上記式(1)又は上記式(10)〜(12)において用いることができる。
一方、透過係数Kjは体積膨張率βjに依存する。例えば、正極活物質層122bにおいて、厚さypが一定であるとき、正極活物質が膨張するほど、正極活物質層122b中で電解液が移動しにくくなるため、透過係数Kpが小さくなる。また、厚さypが一定であるとき、正極活物質が収縮するほど、正極活物質層122b中で電解液が移動しやすくなるため、透過係数Kpが大きくなる。同様に、セパレータ123の厚さysが一定であるとき、セパレータ123自体が膨張するほど、セパレータ123中で電解液が移動しにくくなるため、透過係数Ksが小さくなる。また、厚さysが一定であるとき、セパレータ123自体が収縮するほど、セパレータ123中で電解液が移動しやすくなるため、透過係数Ksが大きくなる。
したがって、透過係数Kjおよび体積膨張率βjの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、体積膨張率βjに応じた透過係数Kjを特定できる。このように特定した透過係数Kjは、上記式(1)又は上記式(10)〜(12)において用いることができる。なお、体積膨張率βjは、実施例2で説明したように、電池温度Tbや二次電池10のSOCに基づいて算出できる。
透過係数Kjを特定するときには、厚さyjおよび体積膨張率βjの少なくとも一方を考慮できる。厚さyjおよび体積膨張率βjの両方を考慮するときには、厚さyjおよび体積膨張率βjと、透過係数Kjとの対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけばよい。
一方、上述した説明では、上記式(16)に示すバネ定数k1,k2を固定値としているが、バネ定数k1,k2を変更することもできる。バネ定数k1,k2を規定する部分(含浸部分および非含浸部分)が図14に示す非拘束状態から縮められると、バネ定数k1,k2が大きくなる。含浸部分が膨張するほど、非含浸部分が縮められるため、変化量Δyに基づいて、非含浸部分のバネ定数k1を算出できる。具体的には、変化量Δyおよびバネ定数k1の対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、変化量Δyを算出することにより、バネ定数k1を算出できる。バネ定数k1を算出するときには、前回の演算周期で算出された変化量Δyを用いることができる。
図14を用いて説明したように、含浸部分は、変化量Δy0および変化量Δyの差(Δy0−Δy)に相当する分だけ、縮められることになる。したがって、この差(Δy0−Δy)に基づいてバネ定数k2を算出できる。具体的には、差(Δy0−Δy)およびバネ定数k2の対応関係を示す情報(マップ又は演算式)を実験などによって予め用意しておけば、差(Δy0−Δy)を算出することにより、バネ定数k2を算出できる。バネ定数k2を算出するときには、前回の演算周期で算出された差(Δy0−Δy)を用いることができる。
含浸部分は、負極活物質層121b、正極活物質層122bおよびセパレータ123となるため、バネ定数k2にはバネ定数kn,kp,ksが含まれる。各バネ定数kn,kp,ksは、バネ定数k2を算出する場合と同様に、差(Δy0,j−Δyj)に基づいて算出できる。ここで、変化量Δy0,jは、変化量Δy0のうち、各活物質層121b,122bおよびセパレータ123のそれぞれが占める変化量である。各バネ定数kn,kp,ksを算出するときには、前回の演算周期で算出された差(Δy0,j−Δyj)を用いることができる。このように算出された各バネ定数kn,kp,ksは上記式(17)で用いられる。
10:二次電池、20:負荷、31:電圧センサ、32:電流センサ、
33:温度センサ、40:コントローラ、41:メモリ、110:電池ケース、
111:負極端子、112:正極端子、120:発電要素、121:負極板、
121a:集電箔、121b:負極活物質層、122:正極板、122a:集電箔、
122b:正極活物質層、123:セパレータ
33:温度センサ、40:コントローラ、41:メモリ、110:電池ケース、
111:負極端子、112:正極端子、120:発電要素、121:負極板、
121a:集電箔、121b:負極活物質層、122:正極板、122a:集電箔、
122b:正極活物質層、123:セパレータ
Claims (1)
- 充放電を行う発電要素および電解液が電池ケースに収容された二次電池と、
前記二次電池の温度を検出する温度センサと、
前記二次電池の充放電を制御するときの上限電力値を設定するコントローラと、を有し、
前記発電要素は、正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に配置されたセパレータとを有しており、
前記コントローラは、
前記発電要素に含浸された前記電解液中の塩濃度の偏りに伴って発生する前記二次電池の抵抗上昇量が閾値以上であるとき、前記抵抗上昇量および前記閾値の差を示す抵抗上昇抑制量を算出し、
前記抵抗上昇量と、前記正極板および前記負極板における前記塩濃度の差と、前記発電要素内を移動する前記電解液の流速との対応関係を用いて、前記抵抗上昇量を前記抵抗上昇抑制量だけ低下させるときの前記流速である流速制限値を算出し、
前記二次電池の温度から特定される、前記二次電池の電流値および前記流速の対応関係を用いて、前記流速制限値に対応した前記電流値である電流制限値を算出し、
前記電流制限値に応じた前記上限電力値を設定する、
ことを特徴とする電池システム。
Priority Applications (1)
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JP2014160896A JP2016039010A (ja) | 2014-08-06 | 2014-08-06 | 電池システム |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019106285A (ja) * | 2017-12-12 | 2019-06-27 | トヨタ自動車株式会社 | 二次電池システムおよび二次電池の活物質の応力推定方法 |
-
2014
- 2014-08-06 JP JP2014160896A patent/JP2016039010A/ja active Pending
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