JP2016034274A - Agp分解酵素生産菌 - Google Patents

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Abstract

【課題】アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの資化能を有する微生物及びその抽出物を用いた組成物を提供すること。【解決手段】本発明は、キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物に関する。また、本発明は、これらの微生物を用いたアラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの分解方法、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインが分解された飲食品の製造方法に関する。さらに、本発明は、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン資化能を有する微生物のスクリーニング方法に関する。さらに、本発明は、このような微生物を用いた、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン分解剤に関する。【選択図】図3

Description

本発明は、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの資化能を有する微生物に関する。また、本発明は、そのような微生物もしくは当該微生物の生産するアラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン分解酵素を利用したアラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの分解方法、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン分解剤、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインが分解された飲食品の製造方法に関する。さらに、本発明は、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン資化能を有する微生物のスクリーニング方法に関する。
植物の細胞壁構成成分としては、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン(以下、AGともいう)、アラビノガラクタンプロテイン(以下、AGPともいう)、セルロース等の多糖類が知られている。例えば、コーヒー生豆においては、不溶性多糖類の含有量が極めて高く、かつ不溶性多糖類とタンパク質とが複雑な構造体を形成しているため、コーヒー生豆の可溶化は困難とされている。
不溶性多糖類を可溶化することは、植物の細胞壁の構造や構成成分の解明、食品素材や機能性食品などへの応用、未利用農産物の有効利用という観点から重要である。具体的には、原料の製品への変換効率の向上、原料の可溶化に伴う好ましい味わいや風味の改善などが考えられる。またコーヒー豆においては、生豆原料からの機能性素材の効率の良い抽出、従来にはない焙煎豆の風味や食感の変化、および産業廃棄物である抽出滓の有効利用などが考えられる。
AGやAGPは植物に見られる基本的な糖質であり、構造モデルが示されているにもかかわらず、未だに酵素等による低分子化の技術は十分でない。例えば、コーヒー豆の細胞壁は、ガラクトマンナン層、AGP層、セルロース層が組み合わされ膠着した「繰り返し多層構造」となっていることが推測されており、非常に堅く不溶性であり、一般的なセルラーゼに対して抵抗性を示す。
このコーヒー豆の細胞壁に対して、酵素分解を行う方法として、希アルカリ処理及びセルラーゼ処理を繰り返し段階的に行う方法が報告されている(特許文献1)。
特許第5172095号公報
しかしながら、希アルカリ処理―セルラーゼ処理を繰り返し行う段階的酵素処理後の可溶化画分のAGPは、末端アラビノースはほぼ除去されるものの、ほとんど低分子化されない。この可溶化画分のAGPの分子量は150万Da以上のままである。酵素分解後の残渣を切断又は破砕して形成される断面や深部破砕部にも、ヤリブ試薬により朱色に染まることから、AGPは組織全体に存在している。よって、従来の方法では、酵素処理に非常に手間がかかり、一種の薬品処理を行うため、食品加工において好ましくない。
上記の従来技術により、AGやAGPを含有する植物の細胞壁を酵素分解等により、食品加工上、安全に低分子化する技術は、未だに十分ではない。
本発明の目的は、AG又はAGPのうち、特に高分子性のものを効率的に分解し、低分子化させて、資化することができる微生物又はこのような微生物のスクリーニング方法を提供することである。また、本発明の目的は、このような微生物を利用したAG又はAGPの分解方法、AG又はAGPが分解された飲食品の製造方法を提供することである。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、部分精製したAGPを唯一の炭素源として含有する培地を用いてスクリーニングを行い、これまでに報告の無いAG又はAGPの資化能を有し、その培養液にAG又はAGP分解酵素を生産する微生物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、AG又はAGPの資化能を有する微生物であって、炭素源の少なくとも90%以上がアラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインに由来する培地で培養することにより得られ、キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物に関する。
また、本発明は、上記の微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGP含有物に作用させる工程を含む、該含有物中のAG又はAGPの分解方法に関する。
さらに、本発明は、上記の微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGP含有物に作用させる工程を含む、AG又はAGPが分解された飲食品の製造方法に関する。
さらに、本発明は、AG又はAGPの資化能を有する微生物のスクリーニング方法であって、
炭素源の少なくとも90%以上がAG又はAGPに由来する培地において候補微生物を培養する培養工程、及び、
前記培養前後における試料中の前記AG又はAGPの含有量を比較する評価工程を含む、方法に関する。
さらに、本発明は、上記の微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン分解剤に関する。
本発明により、AG又はAGPに対して資化能を有する、キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物を提供することができる。また、これらの微生物を利用することにより、AG又はAGPの分解方法若しくは低分子化方法を提供することができ、AG又はAGPを分解若しくは低分子化した飲食物を製造することが可能となる。さらに、これらの微生物を利用することにより、AG又はAGPを分解することから、AG又はAGPが膠着している原料の構成多糖類をより高度に可溶化することが可能になる。
調製AGP溶液についてのHPLC分析結果を示す図である。 AGPを唯一の炭素源として含有する培地でスクリーニングをした結果、ブランクのAGPのピークに対して80%以上の減少が認められた菌株の2例における、HPLC分析結果を示す図である。 Chitinophaga sp. KSM45株における、コーヒー生豆由来AGPの分解能をHPLC分析した結果を示す図である。 Chitinophaga sp. KSM45株から得られた培養上清について、酵素濃度とAGP減少率との関係を示すグラフである。 Ensifer sp. KSM81株における、コーヒー生豆由来AGPの分解能をHPLC分析した結果を示す図である。 Ensifer sp. KSM81株から得られた培養上清について、酵素濃度とAGP減少率との関係を示すグラフである。 Burkholderia stabilis KSM97株における、コーヒー生豆由来AGPの分解能をHPLC分析した結果を示す図である。 Burkholderia stabilis KSM97株から得られた培養上清について、酵素濃度とAGP減少率との関係を示すグラフである。 Chitinophaga sp. KSM45株における、アルカリ未処理コーヒー豆切片の酵素反応の結果を示す写真である。 Chitinophaga sp. KSM45株、Ensifer sp. KSM81株、又はBurkholderia stabilis KSM97株における、アルカリ処理コーヒー豆切片の酵素反応の結果を示す写真である。 各種のセルラーゼを用いて、Chitinophaga sp. KSM45株における、コーヒー豆切片の酵素反応を行った結果を示す写真である。 Chitinophaga sp. KSM45株、Ensifer sp. KSM81株、又はBurkholderia stabilis KSM97株における、アラビアガム由来AGPの分解能をHPLC分析した結果を示す図である。
[微生物]
本発明の微生物は、AG又はAGPの資化能を有し、炭素源の少なくとも90%以上がAG又はAGPに由来する培地で培養することにより得られ、キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する。
本明細書において、「AG又はAGPの資化能を有する」とは、AG又はAGPを炭素源として増殖できる能力を有していることをいう。具体的には、例えば、ある微生物が、AG又はAGPを唯一の炭素源とする培地において増殖できる場合に、その微生物はAG又はAGPの資化能を有するといえる。微生物が、AG又はAGPを唯一の炭素源とする培地において増殖して生育できる期間は、少なくとも24時間とすることができ、好ましくは2日以上、より好ましくは3日以上、さらに好ましくは5日以上とすることができる。
本発明において、「炭素源の少なくとも90%以上がAG又はAGPに由来する培地」は、培地の炭素源として、AG又はAGPを高濃度で含有するものであれば限定はされないが、培地の炭素源の90%がAG又はAGPに由来する培地を用いることができ、好ましくは95%、より好ましくは98%とすることができ、AG又はAGPが実質的に唯一の炭素源である培地を用いることが特に好ましい。例えば、AGPを炭素源として高濃度で含有する培地を用いることにより、単にAGPを代謝し、分解することができる微生物ではなく、AGPを資化し、栄養源とすることで増殖可能な微生物が得られる。
本発明において用いられるキチノファーガ(Chitinophaga)属微生物としては、本発明の効果を奏する限り、限定はされないが、例えば、Chitinophaga arvensicola、Chitinophaga ginsengisegetis、Chitinophaga niastensis、Chitinophaga terrae、Chitinophaga eiseniae、Chitinophaga japonensis、Chitinophaga sancti、Chitinophaga rupis、Chitinophaga filiformis、Chitinophaga ginsengisoli、Chitinophaga niabensis、Chitinophaga oryziterrae、Chitinophaga pinensis、Chitinophaga skermanii又は生物学上、遺伝学上これらに近縁な菌株が挙げられる。これらのキチノファーガ(Chitinophaga)属微生物は、本発明の効果を奏する限り、自然界に存在する天然株でもよく、天然株の変異種、又は遺伝子改変種であってもよい。AG又はAGPの資化能、効率的なAG又はAGPの分解効果の観点から、Chitinophaga arvensicola、Chitinophaga ginsengisegetis、Chitinophaga niastensis、Chitinophaga terrae、Chitinophaga eiseniae、Chitinophaga japonensis又はその近縁な菌株が好ましく、Chitinophaga arvensicola又はその近縁な菌株がさらに好ましい。
また、本発明において用いられるキチノファーガ(Chitinophaga)属微生物としては、日本薬局方の「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」に準拠する16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析において、本発明の効果を奏する範囲で、配列表の配列番号1に記載の配列と相同性の高い配列を有する菌株が好ましく、90%以上の相同性であることがより好ましく、95%以上の相同性であることがさらに好ましく、98%以上の相同性であることが特に好ましい。16S rDNAの塩基配列が、配列番号1に記載の配列を有する菌株が特に好ましい。16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析は、菌株の16S rDNA塩基配列を決定後、得られたDNA塩基配列を、GenBank、DDBJ、EMBL等の国際的な塩基配列データベースを用いて相同性検索をすることにより行うことができる。
本発明において用いられるキチノファーガ(Chitinophaga)属微生物の具体例としては、本発明の効果を奏する範囲で、Chitinophaga sp. KSM45株(受託番号:NITE P−01889)の有する全塩基配列と相同性の高い配列を有する菌株が好ましく、95%以上の相同性であることがより好ましく、98%以上の相同性であることがさらに好ましく、99%以上の相同性であることが特に好ましい。
本発明において用いられるエンシファー(Ensifer)属微生物としては、本発明の効果を奏する限り、限定はされないが、例えば、Ensifer adhaerens、Ensifer mexicanus、Ensifer fredii、Ensifer saheli、Ensifer medicae、Ensifer terangae、Ensifer meliloti、Ensifer arboris、Ensifer numidicus、Ensifer kostiensis、Ensifer kummerowiae、Ensifer garamanticus、Ensifer又は生物学上、遺伝学上これらに近縁な菌株が挙げられる。これらのエンシファー(Ensifer)属微生物は、本発明の効果を奏する限り、自然界に存在する天然株でもよく、天然株の変異種、又は遺伝子改変種であってもよい。AG又はAGPの資化能、効率的なAG又はAGPの分解効果の観点から、Ensifer adhaerens、Ensifer mexicanus、Ensifer fredii、Ensifer saheli、Ensifer medicae、Ensifer terangae、Ensifer meliloti、Ensifer arboris、Ensifer numidicus、Ensifer kostiensis、Ensifer kummerowiae又はその近縁な菌株が好ましく、Ensifer adhaerens又はその近縁な菌株がさらに好ましい。
また、本発明において用いられるエンシファー(Ensifer)属微生物としては、日本薬局方の「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」に準拠する16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析において、本発明の効果を奏する範囲で、配列番号2に記載の配列と相同性の高い配列を有する菌株が好ましく、90%以上の相同性であることがより好ましく、95%以上の相同性であることがさらに好ましく、98%以上の相同性であることが特に好ましい。16S rDNAの塩基配列が、配列番号2に記載の配列を有する菌株が特に好ましい。
本発明において用いられるエンシファー(Ensifer)属微生物の具体例としては、本発明の効果を奏する範囲で、Ensifer sp. KSM81株(受託番号:NITE P−01890)の有する全塩基配列と相同性の高い配列を有する菌株が好ましく、95%以上の相同性であることがより好ましく、98%以上の相同性であることがさらに好ましく、99%以上の相同性であることが特に好ましい。
本発明において用いられるバークホルデリア(Burkholderia)属微生物としては、本発明の効果を奏する限り、限定はされないが、例えば、Burkholderia stabilis、Burkholderia ambifaria、Burkholderia pirrocinia、Burkholderia metallica、Burkholderia diffusa、Burkholderia contaminans、Burkholderia arboris、Burkholderia seminalis、Burkholderia cepacia、Burkholderia latens、Burkholderia anthina、Burkholderia vietnamiensis、Burkholderia dolosa、Burkholderia multivorans、Burkholderia cenocepacia、Burkholderia oklahomensis、Burkholderia ubonensis、Burkholderia gladioli、Burkholderia glumae、Burkholderia thailandensis、Burkholderia plantarii、Burkholderia pseudomallei、Burkholderia mallei、Burkholderia sordidicola、Burkholderia caryophylli、Burkholderia soli、Burkholderia sediminicola、Burkholderia unamae、Burkholderia phytofirmans、Burkholderia rhizoxinica又は生物学上、遺伝学上これらに近縁な菌株が挙げられる。これらのバークホルデリア(Burkholderia)属微生物は、本発明の効果を奏する限り、自然界に存在する天然株でもよく、天然株の変異種、又は遺伝子改変種であってもよい。AG又はAGPの資化能、効率的なAG又はAGPの分解効果の観点から、Burkholderia stabilis、Burkholderia ambifaria、Burkholderia pirrocinia、Burkholderia metallica、Burkholderia diffusa、Burkholderia contaminans、Burkholderia arboris、Burkholderia seminalis、Burkholderia cepacia、Burkholderia latens、Burkholderia anthina、Burkholderia vietnamiensis又はその近縁な菌株が好ましく、Burkholderia stabilis又はその近縁な菌株がさらに好ましい。
また、本発明において用いられるバークホルデリア(Burkholderia)属微生物としては、日本薬局方の「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」に準拠する16S
rDNA塩基配列に基づく分子系統解析において、本発明の効果を奏する範囲で、配列番号3に記載の配列と相同性の高い配列を有する菌株が好ましく、90%以上の相同性であることがより好ましく、95%以上の相同性であることがさらに好ましく、98%以上の相同性であることが特に好ましい。16S rDNAの塩基配列が、配列番号3に記載の配列を有する菌株が特に好ましい。
本発明において用いられるバークホルデリア(Burkholderia)属微生物の具体例としては、本発明の効果を奏する範囲で、Burkholderia stabilis KSM97株(受託番号:NITE P−01891)の有する全塩基配列と相同性の高い配列を有する菌株が好ましく、95%以上の相同性であることがより好ましく、98%以上の相同性であることがさらに好ましく、99%以上の相同性であることが特に好ましい。
本発明のAG又はAGPの分解方法は、キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物をAG又はAGP含有物に作用させる工程を含む。
本明細書において、AG又はAGPの「分解」とは、本発明の方法の使用前と比較して、使用後において、AG又はAGP含有物中の高分子性のAG又はAGP含有量が減少することをいう。微生物を使用する場合において、AG又はAGPの「分解」とは、微生物が生産する酵素によりAG又はAGPが酵素分解されること若しくは低分子化されること、微生物によりAG又はAGPが分解されて代謝されること、又は資化されることを含む。ここで、「高分子性のAG又はAGP」とは、重量平均分子量が少なくとも150万Da以上であるAG又はAGPをいう。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラム(GPC)装置での測定値である。また、ここで「高分子性のAG又はAGPの低分子化」とは、150万Da以上の分子量を有するAG又はAGPが、分子量を減ずるよう変化することをいう。例えば、150万Da以上の分子量を有するAG又はAGPが、1000〜10万Da程度に分解されることをいう。本発明の分解方法の使用前と比較して、使用後において、AG又はAGP含有物中のAG又はAGP含有量が、重量比で、50%以上減少することが好ましく、70%以上減少することがより好ましく、80%以上減少することがさらに好ましい。AG又はAGP含有物中のAG又はAGP含有量は、公知の測定方法を用いて分析することができ、限定はされないが、HPLC法を用いる場合は、分析結果のピーク面積値から求めることができる。
本明細書において、「AG又はAGP含有物」とは、植物又はその構成の一部等、植物由来の物質であって、構成多糖類としてAG又はAGPを含有しているものをいう。一般に、AG又はAGPは、植物の主要な構成多糖類として知られているが、特にAGPは多糖とタンパク質が複雑な構成体を形成しているため、酵素による分解が非常に困難である。特に高分子性のAG又はAGPは、ほとんど酵素による分解ができない。また、AG又はAGP含有物は、不溶性多糖成分を多く含むほど、また、高分子性多糖成分を多く含むほど、酵素による分解が困難である。例えば、コーヒー豆は、不溶性であり高分子性である多糖類含量が極めて多く、また、これらの多糖類とタンパク質やAGPとが膠着し複雑な構造体を形成しているため、酵素による分解が非常に困難であるとされている。
[AG又はAGPが分解された飲食品]
本発明により、AG又はAGPが分解された飲食品を製造することが可能となる。飲食品原料中のAG又はAGPを分解することにより、構成多糖類の構造が崩れたり、酵素分解がし易くなり、加工がし易くなるほか、原料の構成多糖類の可溶化増大等の利点が期待されるため、従来になかった加工製品の製造が可能となる。例えば、コーヒー豆等の植物種子や、植物の葉部、茎部、根部、花部等に含まれるAG又はAGPを分解することにより、セルラーゼなどを用いた細胞壁構成多糖類の酵素分解による細胞壁の崩壊や分解がし易くなるため、硬さを軽減した製菓素材を提供することが可能となる。また、構成多糖類は分解によりオリゴ糖や単糖となって抽出効率や製品への変換効率の向上も可能になる。
また、本発明により、AG又はAGPが分解し、飲食品原料の少なくとも部分的な可溶化や低分子化が可能となるため、従来の飲食品とは、味や香りの異なる製品を製造することが可能となる。さらに、本発明により、植物の部分的可溶化又は完全可溶化が可能となるため、原料植物に含まれる成分を抽出しやすくなる利点がある。原料植物の可溶化製品を用いて機能性飲食品とすること、又は化粧品、衣料品、医薬品の原料とすることも可能である。
植物の可溶化製品は、液状、ゲル状、固形状、粉末状等種々の形態で提供することが可能である。植物の可溶化製品は、公知の添加剤を適宜使用して、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形することも可能である。また植物の可溶化製品は、種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳に添加して使用することや、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶飲料等の飲料に添加して使用することも可能である。
キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物自体を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、その方法は限定されないが、例えば、これらの微生物とAG又はAGP含有物とを同一容器にて培養することが挙げられる。本発明の微生物はAG又はAGPを資化することにより、増殖することが可能であるため、種菌(スターター)を作用させるだけでよいという利点がある。
本発明の微生物と、AG又はAGP含有物とを同一容器にて培養する場合、その重量比は、AG又はAGP含有物の種類等により適宜変更される。例えば、AG又はAGP含有物がコーヒー生豆である場合は、本発明の微生物の乾燥重量1gに対して、コーヒー生豆の切片又は粉砕物100g〜10000g程度を培地に添加して培養することができる。
培地の種類としては、公知の栄養培地を用いることが可能であるが、AG又はAGP以外の炭素源となる成分が少ない培地が好ましく、AG又はAGP以外の炭素源となる成分を含まない培地がより好ましい。具体的には、AGP 0.1重量%、ポリペプトン 0.01重量%、NHNO0.1重量%を含む液体培地を用いることができる。
キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物の菌体培養物を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、その方法は限定されないが、例えば、微生物の培養上清をそのまま若しくは希釈してAG又はAGP含有物に反応させること、又は、培養上清中の酵素を抽出し、場合によっては、酵素を精製した上で、酵素をそのまま若しくは希釈してAG又はAGP含有物に反応させることが挙げられる。
微生物の培養上清は、例えば、微生物を公知の液体で1日間培養した後、遠心分離を行うことで得ることが可能である。この培養上清を得るために培養する期間は、微生物の種類、酵素産生能力等により適宜変更されるが、少なくとも1日間とすることができ、少なくとも3日間が好ましく、少なくとも5日間がより好ましい。
限定はされないが、例えば、AGP 0.1重量%、ポリペプトン 0.01重量%、NHNO 0.1重量%を含む液体培地に、白金耳で微生物約2mgを植菌し、1日間培養した後、遠心分離を行うことで微生物の培養上清を得ることができる。
キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物の菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、その方法は限定されないが、例えば、微生物の菌体をホモジナイザー等により破砕し、菌体内容物を水、有機溶媒又は含水有機溶媒等の適宜な溶媒に溶解して用いることができる。これらの抽出溶媒としては、例えば、水、アルコール、又はこれらの混合物が挙げられ、水、メタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン又はこれらの混合物が好ましく、水、エタノール又は含水エタノールがより好ましい。
これらの菌体培養物又は菌体抽出物は、利用する態様に応じて、適宜に希釈や濃縮して用いることができる。また、これらの菌体培養物又は菌体抽出物は、希釈や濃縮の前後等に、さらに精製処理に付することより、精製物とすることができる。精製処理においては、公知の分離・精製方法を適宜に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、ジエチルアミノエチル基又はカルボキシメチル基などを持つ担体等を用いたイオン交換クロマトグラフィー法、ブチル基、オクチル基、フェニル基など疎水性基を持つ担体などを用いた疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法等を用いることが可能である。
クロマトグラフ法を用いる場合であっては、例えば、順相若しくは逆相の担体又はイオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー又は遠心液体クロマトグラフィー等のいずれか、又はそれらを組み合わせて用いる方法が挙げられる。クロマトグラフ法を用いる場合の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種のクロマトグラフ法に対応して適宜選択することができる。
本発明の微生物自体、その菌体培養物又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、微生物の菌数は、本願発明の効果を奏する限り、限定はされないが、例えば、約10個/g〜約1014個/g、好ましくは約10個/g〜約1012個/gに相当する菌数を用いることが可能である。
本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、その作用時間は、微生物の菌体量、培養上清中の酵素量、反応温度、反応液のpH等により適宜変更され得るが、例えば、少なくとも1時間とすることができ、少なくとも10時間以上であることが好ましく、少なくとも24時間以上であることがより好ましく、少なくとも2日以上であることがさらに好ましく、少なくとも3日以上であることがさらに好ましく、少なくとも4日以上であることが特に好ましく、少なくとも5日以上であることが最も好ましい。
本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、その作用温度は、微生物の増殖に適する温度や酵素の至適温度により適宜変更され得るが、例えば5℃〜50℃で作用させることが可能であり、10℃〜45℃であることが好ましく、20℃〜40℃であることがより好ましく、25℃〜38℃がさらに好ましい。
本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、その培地又は溶液中のpHは、微生物の増殖に適するpHや酵素の至適温度により適宜変更され得るが、通常6〜8とすることができ、好ましくは6.8〜7.5である。pH調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行うことができる。
本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる場合の重量比は、微生物の種類、AG又はAGP含有物の種類や状態により適宜変更されるが、微生物自体を作用させる場合は、乾燥重量で、微生物0.1〜1.0g程度に対して、AG又はAGP含有物100〜10000g程度とすることができ、微生物の菌体培養物又は菌体抽出物を作用させる場合は、乾燥重量で、微生物0.1〜1.0g程度に対して、AG又はAGP含有物100〜10000g程度とすることができる。
本発明において、AG又はAGP含有物は、微生物や酵素との接触面積を高めるために、裁断物又は粉砕物を用いることが好ましい。裁断又は粉砕には、ミキサー等の公知の方法を用いることが可能であるが、裁断物が1kg〜10kg等の大スケールである場合は、大型バーチカルカッターミキサー等を用いることができ、数10g〜数100gの小スケールの場合は、家庭用ミキサー等を用いることができる。例えば、大スケールでの破砕条件を適用する場合は、原料の硬さ、含水率等によって適宜変更されるが、例えば、破砕時間は数十秒〜数分間、ミキサーの回転数は10〜3000rpmで行うことが可能である。
本発明において、AG又はAGPの分解効果をより高める目的で、AG又はAGP含有物に対してセルラーゼ処理を施す工程を含めることが可能である。セルラーゼ処理を行うことにより、植物の構成糖であるセルロースやマンナンやガラクトマンナンなどの多糖類が分解し、植物と微生物が産生する酵素等との接触面積が高まり、本発明のAG又はAGP資化能を発揮しやすくなることが期待される。セルラーゼ処理を施す工程は、本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる工程の前に、同時に、又は後に行うことができる。本発明の微生物による酵素で、AG又はAGPが分解され、細胞壁構成成分が緩むと、セルラーゼが浸透しやすくなるため、セルラーゼ処理を施す工程は、本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させる工程と同時又は後に行うことが好ましい。
セルラーゼ処理工程に用いることができるセルラーゼは、自然界にあるセルラーゼを分離・精製して用いることも可能であり、市販品を購入して用いることも可能である。セルラーゼは、用いるAG又はAGP含有物の種類等により適宜に変更され、限定はされないが、例えば、Tricoderma viride由来セルラーゼ、Tricoderma reesei由来セルラーゼ、Tricoderma sp.由来セルラーゼ、Aspergillus niger由来セルラーゼ、Aspergillus oryzae r由来セルラーゼ、Aspergillus aculeatus由来セルラーゼ、Aspergillus sp.由来セルラーゼ、カイコウオオソコエビ(Hirondellea gigas)由来セルラーゼ等が挙げられる。セルラーゼの市販品としては、例えば、GODO−TCF(合同酒精社製)、スミチームC(新日本化学工業社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、マルチフェクト(ダニスコジャパン社製)、セルラーゼA 「アマノ」3 (天野エンザイム社製)、セルラーゼ XL‐531(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
セルラーゼ処理において、反応温度は、例えば5℃〜50℃で作用させることが可能であり、10℃〜45℃であることが好ましく、20℃〜40℃であることがより好ましく、25℃〜38℃がさらに好ましい。セルラーゼ処理において、反応時間は、少なくとも1時間とすることができ、少なくとも10時間以上であることが好ましく、少なくとも24時間以上であることがより好ましく、少なくとも2日以上であることがさらに好ましく、少なくとも3日以上であることがさらに好ましく、少なくとも4日以上であることが特に好ましく、少なくとも5日以上であることが最も好ましい。
本発明において、AG又はAGPの分解効果をより高める目的で、AG又はAGP含有物に対する加熱工程を含めることが可能である。これにより、AG又はAGP含有物に本来的に含まれる酵素類が活性低下又は失活し、微生物が産生する酵素等が作用しやすくなることが期待される。また、AG又はAGP含有物に本来的に含まれる酵素類が活性低下又は失活することで、上記のセルラーゼが作用しやすくなることが期待される。
加熱工程における加熱温度及び加熱時間は、AG又はAGP含有物に本来的に含まれる酵素類が活性低下又は失活を起こす温度及び時間であれば限定はされないが、例えば、60℃で15分以上とすることができ、70℃で15分以上とすることが好ましい。
加熱工程には、公知の加熱方法及び加熱装置を採用することが可能であり限定はされないが、例えば、高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)、恒温槽、ヒートブロック等が挙げられる。高圧蒸気滅菌器を用いる場合には、121℃、2気圧、20分の条件で加熱することができる。
AG又はAGP含有物がクロロゲン酸類を含有する場合、あらかじめ酸化されずに機能性成分としてのクロロゲン酸類を取り出しておく目的で、AG又はAGP含有物に対する熱水抽出工程をさらに含めることが可能である。クロロゲン酸類を含有するAG又はAGP含有物は、限定はされないが、例えば、コーヒー生豆が挙げられる。これにより、AG又はAGP含有物に含まれるクロロゲン酸類が酸化されることなく、AG又はAGP含有物の分解を進められることが期待される。
本明細書において、クロロゲン酸類を含有するAG又はAGP含有物に対する熱水抽出工程は、クロロゲン酸類を低減させることができる限り、公知の方法を用いることができる。限定はされないが、AG又はAGP含有物に対して、熱水を添加することや、AG又はAGP含有物と水とを混合した上で、加熱すること等により、熱水抽出を行うことが可能である。
限定はされないが、熱水抽出工程における熱水の温度は、例えば25℃〜100℃とすることができ、45℃〜99℃が好ましく、80℃〜98℃がさらに好ましい。クロロゲン酸類を含有するAG又はAGP含有物に対する熱水抽出工程において、抽出時間は、少なくとも3分とすることができ、少なくとも5分以上であることが好ましく、少なくとも10分以上であることがより好ましく、少なくとも15分以上であることがさらに好ましく、少なくとも20分以上であることがさらに好ましく、少なくとも25分以上であることが特に好ましく、少なくとも30分以上であることが最も好ましい。
熱水抽出工程の後、抽出された上清には、クロロゲン酸、ポリフェノール類、ショ糖、トリゴネリン、カフェイン等が含まれており、これらの抽出上清と残渣を分離することにより、クロロゲン酸を抽出上清とともに除去することが可能である。このような分離工程は、公知の方法を用いることが可能である。限定はされないが、例えば、遠心分離等が挙げられる。
本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させることにより、AG又はAGP含有物から、それらを構成する多糖類、オリゴ糖、又は単糖を得ることが可能である。限定はされないが、本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を、AG又はAGP含有物に作用させて、酵素反応を行い、その酵素反応物を得る。酵素反応物に対して、遠心分離等の分離工程を行うことにより、水溶性固体として、多糖類、オリゴ糖、単糖等を得ることができる。また、酵素反応物に対して、エタノール等のアルコールやアセトン等の水と混和可能な有機溶媒を添加し、沈殿させることで多糖類、オリゴ糖、単糖等を得ることも可能である。
AG又はAGP含有物は、不溶性多糖成分を多く含むほど、また、高分子性多糖成分を多く含むほど、従来用いられている酵素による分解が困難であるため、本発明によりAG又はAGP含有物を分解し、多糖類、オリゴ糖、又は単糖を得ることができれば、AG又はAGP含有物を用いた新たな製品の開発、従来廃棄されていたAG又はAGP含有物のリサイクル等が可能となる。
得られた多糖類やオリゴ糖を用いて、インスタント製品を製造することも可能である。インスタント製品としては、限定されず、例えば、インスタント食品、インスタントコーヒー等が挙げられる。
例えば、インスタントコーヒーは、焙煎し粉砕したコーヒー豆を満たしたセル(カラム)に抽出溶液を浸出し、得たコーヒー抽出物を濃縮後、凍結乾燥または噴霧乾燥により製造される(参考文献としてSivetz,Coffee Processing Technology,第1巻、p262〜p263、AVI、1963等)。インスタントコーヒーには様々な製法があるが、共通しているのは100℃、常圧条件下で行う「コーヒー豆からアロマを主に回収する抽出工程」と、例えば150〜180℃の温度、加圧条件下で行う「加水分解されたコーヒー豆細胞壁成分の抽出工程」がある点である。この150〜180℃の温度、加圧条件下での抽出工程がある理由は、乾燥後のインスタントコーヒーの固形を形成するため、および香気成分の散逸を防ぐために必要な、コーヒー豆細胞壁成分を確保するためである。インスタントコーヒーの製造では必ず濃縮工程があり、硬いインスタントコーヒーを形成するためには、乾燥前の液体の段階で、ある一定の固形濃度が必要である。しかし、常圧抽出による抽出液を過度に濃縮すると、コーヒーの香気成分が消失してしまう。一方で、加圧抽出からの抽出液(コーヒー豆細胞壁成分)を過度に抽出しようとすると、コーヒー豆を加水分解することにより生成する様々な物質により、味覚が低下してしまう。すなわち、高温高圧条件で得る抽出物は、インスタントコーヒーの風味・香りに悪影響を与えることになる。そこで、高温高圧条件ではなく、酵素反応によって生成した多糖類等のコーヒー生豆成分をインスタントコーヒーの製造に用いることにより、コーヒーの味、香りに悪影響を及ぼさず、大掛かりなプラントを有することの無い条件での製造が可能になる。
インスタントコーヒーを製造する方法としては、AG又はAGP含有物を酵素分解して得られた多糖類やオリゴ糖に対して、焙煎豆コーヒーの抽出液を混合することが例示される。これにより、コーヒー生豆が本来有している風味や香りを残したまま、インスタントコーヒーを製造することが可能である。得られた多糖類やオリゴ糖と焙煎豆コーヒー抽出物との混合物を乾燥させることにより、固形状のインスタントコーヒーを得ることができる。よって、本発明の別の実施形態においては、上記微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、コーヒー生豆に対して酵素反応させる工程、該コーヒー生豆の酵素分解物とコーヒー抽出液とを混合する工程、及び、該混合物を乾燥する工程を含む、インスタントコーヒーの製造方法を提供することが可能である。用いることができる微生物、菌体培養物、又は菌体抽出物の調製等については、上記に準じる。
コーヒー生豆の酵素分解物とコーヒー抽出液とを混合する工程において、コーヒー抽出液は、焙煎したコーヒー豆を熱水により抽出して得ることが可能であり、その濃縮物を用いることも可能である。コーヒー生豆の酵素分解物とコーヒー抽出液とを混合する場合、その混合比は限定されないが、例えば、Brixが25.3である焙煎豆コーヒー抽出液(濃縮物)を用いる場合、この焙煎豆コーヒー抽出液(濃縮物)に溶解している固形分に対して、1〜20%(w/w)の割合になるようにコーヒー生豆の酵素分解物を混合することができ、2〜15%(w/w)であることが好ましく、2〜15%(w/w)であることが好ましく、5〜10%(w/w)であることがさらに好ましい。
混合物を乾燥する工程において、乾燥方法としては、公知の方法を用いることが可能であり、限定はされないが、例えば、自然乾燥、噴霧乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて用いることができる。
また、AG又はAGP含有物から得られた多糖類やオリゴ糖は、プレバイオティクス素材として有用であり、食品素材、サプリメント素材、化粧品素材への応用、あるいは糖鎖工学をはじめとした医薬分野にも使用できるものである。得られた多糖類やオリゴ糖は、例えば、加工食品、化粧料などに配合され、形状の安定化や、油分と水分とを乳化させるために使用できるものである。これらの多糖類やオリゴ糖は、賦形剤や安定化剤として有用である。AG又はAGP含有物として、コーヒー生豆を用いる場合は、例えば、酵素反応前に酸化を受けやすいポリフェノール類等を抽出しておき、その抽出残渣に対して、本発明の微生物自体、その菌体培養物、及び/又はその菌体抽出物を作用させて酵素反応を行った後、先に抽出したポリフェノール類等を混合することで、酸素による劣化が防止されたポリフェノール類等を含むプレバイオティクス素材を製造することが可能である。また、コーヒー生豆から得られた多糖類やオリゴ糖は、コーヒー生豆由来多糖類やコーヒー生豆由来オリゴ糖として、その期待される難消化性、腸内細菌の改善性により、種々の健康飲食品に利用され得る。
[スクリーニング方法]
また、本発明により、AG又はAGP資化能を有する微生物のスクリーニング方法が提供される。本発明のスクリーニング方法は、炭素源の少なくとも90%以上がAG又はAGPに由来する培地において候補微生物を培養する培養工程を含む。
培養工程において用いられる培地は、培地の炭素源として、AG又はAGPを高濃度で含有するものであれば限定はされないが、培地の炭素源の90%がAG又はAGPに由来する培地を用いることができ、好ましくは95%、より好ましくは98%とすることができ、AG又はAGPが実質的に唯一の炭素源である培地を用いることが特に好ましい。例えば、AGPを唯一の炭素源とする培地を用いることにより、単にAGPを代謝し、分解することができる微生物ではなく、AGPを資化し、栄養源とすることで増殖可能な微生物を選別することが可能となる。
AG又はAGPは、植物から抽出して用いることも可能であり、市販品を購入して用いることも可能である。また、AG又はAGPを含有する植物組織を利用することも可能である。AG又はAGPを植物から抽出して用いる場合、より高いAG又はAGP資化能を有する微生物を選別する目的で、コーヒー生豆由来のAGPを用いることが好ましい。コーヒー生豆由来のAGPは、不溶性であり高分子性であることから、微生物にとって資化することがより困難であると推測される。
本発明において、AG又はAGPを主な炭素源として含有する培地に含まれるAG又はAGPの含有量は、限定はされないが、より高いAG又はAGP資化能を有する微生物を選別する観点から、0.001〜10重量%とすることができ、0.01〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましい。
本発明において、AG又はAGPを主な炭素源として含有する培地には、窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、尿素、ペプトン、ポリペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、酵母エキス、乾燥酵母、大豆粉、カザミノ酸、アミノ酸等が用いられる。これらの窒素源のうち、扱い易さの観点から、ペプトン、ポリペプトンが好ましく、ポリペプトンがより好ましい。また、無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
本発明において、AG又はAGPを主な炭素源として含有する培地のpHは、通常6〜8とすることができ、好ましくは6.8〜7.5である。培地のpH調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行うことができる。
培養温度は、微生物の増殖に適する温度や酵素の至適温度により適宜変更され得るが、例えば5℃〜50℃で作用させることが可能であり、10℃〜45℃であることが好ましく、20℃〜40℃であることがより好ましい。
培養時間は、微生物の種類等により適宜変更され得るが、例えば少なくとも1時間とすることができ、少なくとも10時間以上であることが好ましく、少なくとも24時間以上であることがより好ましく、少なくとも2日以上であることがさらに好ましく、少なくとも3日以上であることがさらに好ましく、少なくとも5日以上であることが特に好ましい。
培養は、必要により、通気や攪拌を加えることもできる。
本発明のスクリーニング方法は、候補微生物の培養前後における試料中のAG又はAGPの含有量を比較する評価工程を含む。
本発明において、評価工程における試料中のAG又はAGP含有量は、公知の方法で分析することが可能であり、限定はされないが、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、化学的なフェノール硫酸法、免疫ブロッティング法等で分析することができる。
評価工程においては、候補微生物の菌体の培養前と比較して培養後における、試料中のAG又はAGPの含有量が、重量比で、少なくとも50%の減少量を示す場合に、その微生物はAG又はAGPの資化能を有すると判定することができる。本発明において、評価工程では、候補微生物が、少なくとも5日間、増殖して生育できることを判定の基準として加えることが可能である。
本発明のスクリーニング方法は、さらに、候補微生物の菌体及びその菌体培養物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGPに作用させ分解させる酵素反応工程を含むことができる。
本発明において、酵素反応工程では、候補微生物の菌体及び/又は培養上清を、AG又はAGPを基質とした酵素反応により、候補微生物のAG又はAGP分解能を評価することが可能である。例えば、0.1%AGPとなるようにAGPをリン酸緩衝液(0.1M、pH7)に添加し、候補微生物の菌体及び/又は培養上清と酵素反応を行うことができる。
反応時間は、微生物の増殖に適する温度や酵素の至適温度により適宜変更され得るが、少なくとも1時間とすることができ、少なくとも3時間とすることが好ましく、少なくとも24時間とすることがより好ましい。
反応温度は、微生物の増殖に適する温度や酵素の至適温度により適宜変更され得るが、例えば5℃〜50℃で作用させることが可能であり、10℃〜45℃であることが好ましく、20℃〜40℃であることがより好ましい。
酵素反応における評価方法は、上記の培養工程における評価方法と同様に、反応前後におけるAG又はAGPの含有量を比較することにより行うことができる。
[AG又はAGP分解剤]
本発明により、上記微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、AG又はAGP分解剤を提供することが可能である。用いることができる微生物、菌体培養物、又は菌体抽出物の調製等については、上記に準じる。このようなAG又はAGP分解剤は、さらに公知の方法を用いることにより、生ゴミ処理剤、植物性廃棄物処理剤、堆肥分解促進剤、消臭剤、飲食物、健康食品、食品添加物、化粧品、医薬品、又は医薬部外品等として提供することが可能である。
本明細書において、AG又はAGP分解剤を生ゴミ処理剤、植物性廃棄物処理剤、堆肥分解促進剤、消臭剤、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品添加物、健康食品等に用いる場合は、公知の方法により加工することが可能であり、例えば、錠剤、粉末、散剤、顆粒、細粒、カプセル、飲料、乳製品、ガム、グミ等として使用することができる。健康食品として用いられる場合には、特定保健用飲食品、栄養補助飲食品、機能性飲食品、機能性表示飲食品、病者用食品等として使用することができる。
AG又はAGP分解剤を生ゴミ処理剤として用いる場合、生ゴミとしては、限定はされないが、植物由来の生ゴミが挙げられ、特にAG又はAGPを豊富に含有している植物由来の生ゴミが好ましい。植物由来の生ゴミや植物性廃棄物としては、例えば、コーヒーかす、ビールかす、焼酎かす、ウイスキーかす、清酒かす、おから、緑茶かす、紅茶かす、麦茶かす、コーンスターチ副産物、バレイショ澱粉かす、カンショ澱粉かす、製紙スラッジ、バーク、オガクズ、モミガラ、イナワラ、ムギワラ等が挙げられる。不溶性多糖類の含有量が極めて高く、かつ不溶性多糖類とタンパク質とが複雑な構造体を形成している観点から、生ゴミや植物性廃棄物としては、コーヒーかすが好ましい。
コーヒーは、近年、先進国を中心に国内外で消費量が増加しており、特に日本国内においては、コンビニエンスストアや、ファストフード店でも多量に提供されている。コンビニエンスストアや、ファストフード店においては、各店舗においてコーヒーを抽出した後の生ゴミが多量に廃棄されている。コーヒー豆の加工工場等も含め、コーヒー豆に関する植物性廃棄物は年間10万トン以上と推定されており、これらの廃棄物を分解し、別の製品に加工することや、廃棄物からバイオマスのように多糖類やオリゴ糖等の糖分を取り出して利用することができれば、産業上有用である。
AG又はAGP分解剤をAG又はAGP含有物に適用する場合、本発明の効果を奏する限りにおいて、その方法は限定されないが、上記微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と混合することが挙げられる。または、微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、公知の方法により、液剤に加工するか、適宜乾燥させた状態で錠剤、散剤、粉末剤に加工することで、AG又はAGP含有物と混合することも可能である。また、上記微生物自体をAG又はAGP含有物に適用する場合は、上記微生物がAG又はAGP含有物を資化することができる性質上、上記微生物を処理開始時において単回投与するだけで、継続して使用することが可能である。また、数ヶ月又は数年に1度など、定期的に新しい上記微生物を投与して使用することも可能である。
AG又はAGP分解剤をAG又はAGP含有物に適用する場合、均一に本発明の効果を奏するために、公知の方法により、撹拌させながら微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とAG又はAGP含有物とを混合することも可能である。この場合の温度条件、pH条件、混合時間の条件等は上記に準じる。
上記のAG又はAGP分解剤を、AG又はAGP含有物に作用させる場合、セルラーゼと共に用いることが有用である。用いることができるセルラーゼの種類や条件等については、上記に準じる。AG又はAGP分解剤と、セルラーゼとを一つの製剤として加工することも可能であり、別々の製剤として加工し、使用時に併用することも可能である。AG又はAGP分解剤と、セルラーゼとを別々の製剤として併用する場合は、いずれかを先にAG又はAGP含有物に作用させることも可能であり、同時にAG又はAGP含有物に作用させることも可能である。
本発明の別の実施形態によれば、上記微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、AG又はAGP分解剤を含む、AG又はAGP含有物を分解するためのキットを提供することが可能である。このようなキットには、セルラーゼ、酵素反応用容器、製品説明書等をさらに含めることが可能である。
上述した実施の形態に関し、本発明は以下の微生物及び方法を開示する。
AG又はAGPの資化能を有する微生物であって、炭素源の少なくとも90%以上がAG又はAGPに由来する培地で培養することにより得られ、キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物。
前記AG又はAGPが、高分子性である、上記微生物。
前記AG又はAGPが、少なくとも150万Daの分子量を有する、上記微生物。
前記AG又はAGPが、コーヒー生豆由来である、上記いずれかに記載の微生物。
前記キチノファーガ(Chitinophaga)属微生物が、Chitinophaga arvensicolaに近縁な菌株であることを特徴とする、上記いずれかに記載の微生物。
前記キチノファーガ(Chitinophaga)属微生物が、16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析において、配列表の配列番号1に記載された塩基配列と90%以上の相同性を有する菌株であることを特徴とする、上記いずれかに記載の微生物。
前記エンシファー(Ensifer)属微生物が、Ensifer adhaerensに近縁な菌株であることを特徴とする、上記いずれかに記載の微生物。
前記エンシファー(Ensifer)属微生物が、16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析において、配列表の配列番号2に記載された塩基配列と90%以上の相同性を有する菌株であることを特徴とする、上記いずれかに記載の微生物。
前記バークホルデリア(Burkholderia)属微生物が、Burkholderia stabilis又はその近縁な菌株であることを特徴とする、上記いずれかに記載の微生物。
前記バークホルデリア(Burkholderia)属微生物が、16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析において、配列表の配列番号3に記載された塩基配列と90%以上の相同性を有する菌株であることを特徴とする、上記いずれかに記載の微生物。
前記キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア属(Burkholderia)に属する微生物における16S−rDNA遺伝子の配列が、それぞれ配列表の配列番号1、配列番号2、又は配列番号3に記載された塩基配列を含む、上記いずれかに記載の微生物。
キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア属(Burkholderia)に属する微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGP含有物に作用させる工程を含む、該含有物中のAG又はAGPの分解方法。
キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア属(Burkholderia)に属する微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGP含有物に作用させる工程を含む、AG又はAGPが分解された飲食品の製造方法。
キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア属(Burkholderia)に属する微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGPを含有する植物組織に作用させる工程を含む、AG又はAGPの分解及び該植物組織の構成多糖類の可溶化方法。
前記AG又はAGPが、高分子性である、上記方法。
前記AG又はAGPが、少なくとも150万Daの分子量を有する、上記いずれかに記載の方法。
前記AG又はAGP含有物が、コーヒー生豆である、上記いずれかに記載の方法。
さらに、AG又はAGP含有物を加熱する加熱工程を含む、上記いずれかに記載の方法。
前記加熱工程が、高圧蒸気滅菌器により、121℃、2気圧、20分の条件で行われる、上記いずれかに記載の方法。
さらにAG又はAGP含有物に対してセルラーゼ処理を施す工程を含む、上記いずれかに記載の方法。
前記セルラーゼが、Tricoderma viride由来セルラーゼ、Tricoderma reesei由来セルラーゼ、Tricoderma sp.由来セルラーゼ、Aspergillus niger由来セルラーゼ、Aspergillus oryzae由来セルラーゼ、Aspergillus aculeatus由来セルラーゼ、Aspergillus sp.由来セルラーゼ又はカイコウオオソコエビ(Hirondellea gigas)由来セルラーゼである、上記いずれかに記載の方法。
前記セルラーゼ処理を施す工程が、上記いずれかに記載の微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGP含有物に作用させる工程と同時又は後に行うことを特徴とする、上記いずれかに記載の方法。
前記加熱工程が、前記セルラーゼ処理を施す工程より前又は同時に行うことを特徴とする、上記いずれかに記載の方法。
AG又はAGPの資化能を有する微生物のスクリーニング方法であって、
炭素源の少なくとも90%以上がAG又はAGPに由来する培地において候補微生物を培養する培養工程、及び、
前記培養前後における、試料中の前記AG又はAGPの含有量を比較する評価工程を含む、方法。
前記培地に含有されるAG又はAGPが、高分子性である、上記いずれかに記載の方法。
前記培地に含有されるAG又はAGPが、少なくとも150万Daの分子量を有する、上記いずれかに記載の方法。
前記培地に含有されるAG又はAGPが、コーヒー生豆由来である、上記いずれかに記載の方法。
前記培地における唯一の炭素源が、AG又はAGPに由来する、上記いずれかに記載の方法。
前記培養工程における培養時間が、少なくとも10時間以上である、上記いずれかに記載の方法。
前記評価工程は、前記AG又はAGPの含有量が、重量比で、少なくとも50%の減少量を示すことが基準とされる、上記いずれかに記載の方法。
前記評価工程は、さらに、培養工程において、候補微生物が、少なくとも5日間、増殖して生育できることが基準とされる、上記いずれかに記載の方法。
さらに、候補微生物の菌体及びその菌体培養物からなる群より選択される少なくとも1種を、AG又はAGPに作用させ分解させる酵素反応工程を含む、上記いずれかに記載の方法。
前記酵素反応工程における作用時間が、少なくとも1時間以上である、上記いずれかに記載の方法。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.コーヒー生豆からのAGPの調製
微粉化コーヒー生豆(UCC上島珈琲株式会社製、Indonesia AP−1)506.84gをヘキサン1Lで一晩脱脂処理し、脱脂微粉化コーヒー生豆468.39gを得た。これに0.1M NaOHを2.5L加え、オートクレーブ(121℃、20分)した。次に、水道水及び蒸留水で洗浄し吸引濾過で残渣を回収し(上清は処分)、半分に分けた(A1、A2)。それぞれに酢酸バッファー((添加後)0.1M、pH5.0)を2.5L、セルラーゼを1重量%となるよう加え、一晩反応(37℃、24時間)させた。反応終了後、デカンテーションで上清を回収し、オートクレーブ(121℃、20分)処理によりセルラーゼを失活、タンパク質を沈殿させ、遠心分離(10000rpm、7分)によって上清を得た(A1:約2800mL、A2:約2000mL)。この上清を腐敗防止のためpH4.5に調製し、限外濾過膜(SARTORIUS社製、VIVAFLOW 200)でそれぞれ約500mLになるまで濃縮した。これを遠心分離(10000rpm、10分)し、上清を遠心チューブに入れ一晩透析(水の交換は2回)し、透析内液を得た。これを調製AGPとして以下で用いた(A1:約580mL、A2:約660mL)。
2.全糖量(TS:Total Sugar)の測定
得られた調製AGP溶液における全糖量をフェノール硫酸法で測定した。乾燥した特級ブドウ糖10.0mgを蒸留水に溶解して1mLとした濃度10.0mg/mLの原液を、適宜希釈することで、12.5、25、50、100、及び200μg/mLの標準糖溶液を調製した。試験管に標準糖溶液100μL、5%フェノール100μLとり、濃硫酸500μLを液面に直接当たるように加えて、よく混合した。強く発熱するので、室温で放冷した後、マイクロプレートに200μLとり、マイクロプレートリーダー(旭テクノ硝子社製、Micro Plate Reader EZS−ABS)にて492nmの吸光度を測定し、検量線を作成した。次に、上記で調製した調製AGPを同様に発色させ、検量線から全糖量を求め、その結果を表1に示した。
Figure 2016034274
表1に示す通り、A1の全糖量は139μg/mL、A2の全糖量は120μg/mLであり、収率(脱脂微粉化コーヒー生豆重量を100%とする)は3.41%であった。
3.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析
得られた調製AGP溶液についてHPLCにて分析を行い、その結果を図1に示した。
<HPLC測定条件(以下同じ)>検出器:SPD−10A UV−VIS DETECTOR(SHIMADZU社製)カラム:TSK−gel G−3000 SWXL(I.D.7.8mm×300mm)カラム温度:30℃移動相:0.1M phosphate緩衝液(pH7)+0.1M NaSO流量:1mL/分検出:UV280nm注入量:20μL
図1に示す通り、A1及びA2において、AGPが含まれるピーク(5分)が検出された。
4.AGP分解酵素生産菌のスクリーニング
(1)合成培地を用いたスクリーニング
大阪府内において土壌サンプルを集めた。土壌サンプル206種を3mLの蒸留水に3〜4種ずつそれぞれマイクロスパテラ1杯分入れ、懸濁したものを土壌懸濁液とした。液体合成培地(表2)を調製し、試験管に3mLずつ分注したものをオートクレーブで滅菌
(121℃,20分)した。室温で放置して冷ました後、調製した土壌懸濁液をそれぞれ約100μL加えて蓋を閉め、振盪培養機(30℃,200osc/分)で14日間培養した。培養中、培地の色が黄色または黄緑色に変化したものの培養液を新たに調製した液体合成培地(表2)に約100μL入れて培養した。
Figure 2016034274
平板合成培地(表2)を調製し、オートクレーブで滅菌(121℃,20分)し、シャーレに約10mL入れてクリーンベンチ内で冷まし、固めた。これに上記培養液約20μLまき、白金耳でストリークして菌の分離を行った。次に、分離したそれぞれの菌は調製した液体栄養培地(表3)3mLに植菌した。振盪培養機(30℃,200osc/分)で4〜6日間培養し、培養液から1.5mL取り、遠心分離(13200rpm,5分)し、孔径0.20μmのフィルターに通してHPLC分析を行ない、AGPの分解減少について評価した。
Figure 2016034274
また、培養停止から約2週間後に培養液を全てHPLC分析したところAGPの減少が認められたので、それぞれ100μL滴下したシャーレに滅菌後約40℃まで冷ました培地を約10mL注ぎ込み、ゆっくり混ぜた後、室温で放置して培地を固め、30℃で培養した。平板合成培地(表2)を調製し、オートクレーブで滅菌(121℃,20分)し、シャーレに約10mL入れてクリーンベンチ内で冷まし、固めた。分離した菌を滅菌した爪楊枝で取り、孔径0.20μmのフィルターに通した蒸留水1滴に懸濁し、これを白金耳でストリークして菌の分離を行った。コロニー周辺の培地が黄色または黄緑色に変化した菌株を新しく調製した液体栄養培地(表3)3mLにそれぞれ植菌した。振盪培養機(30℃,200osc/分)で4〜6日間培養し、培養液から1.5mL取り、遠心分離(13200rpm,5分)し、孔径0.20μmのフィルターに通してHPLC分析を行った。
培養中、培地の色が黄色または黄緑色に変化したものから単離した菌株および培養停止から約2週間たった培養液から単離した菌株について、培養液をHPLC分析した結果、ブランクのAGPのピークに対して80%以上の減少が認められた菌株を33株選抜した。これらの菌株について、AGPを基質とした酵素反応を行い、さらなる菌株の選抜を行った。AGPの減少が認められた菌株のうち、例として2菌株の培養液のHPLC分析結果を図2に示した。
(2)栄養培地を用いたスクリーニング
土壌懸濁液は上記の4(1)と同じものを使用した。平板栄養培地(表3)を調製し、オートクレーブで滅菌(121℃,20分)した。調製した土壌懸濁液をそれぞれ100μL滴下したシャーレに滅菌後約40℃まで冷ました培地を約10mL注ぎ込み、ゆっくり混ぜた後、室温で放置して培地を固め、30℃で培養を開始した。生育したコロニー周辺の培地が黄色または黄緑色に変化した菌株を選択して分離した。平板栄養培地(表3)を調製し、オートクレーブで滅菌(121℃,20分)し、シャーレに約10mL入れてクリーンベンチ内で冷まし、固めた。分離した菌を滅菌した爪楊枝で取り、孔径0.20μmのフィルターに通した蒸留水1滴に懸濁し、これを白金耳でストリークして菌の分離を行った。コロニー周辺の培地が黄色または黄緑色に変化した菌株を新しく調製した液体栄養培地(表3)3mLに植菌した。振盪培養機(30℃,200osc/分)で5日間前後培養し、培養液から1.5mL取り、遠心分離(13200rpm,5分)し、孔径0.20μmのフィルターに通してHPLC分析を行ない、AGPの分解減少について評価した。
培養中、培地の色が黄色または黄緑色に変化したものから単離した菌株について、培養液をHPLC分析した結果、ブランクのAGPのピークに対して80%以上の減少が認められた菌株を7株選抜した。これらの菌株について、AGPを基質とした酵素反応を行い、さらなる選抜を行った。
5.菌体及び/又は培養上清によるAGP分解反応に基づくスクリーニング
(1)上清及び菌体によるAGP分解反応に基づくスクリーニング
上記4(1)及び(2)で選抜した計40菌株を液体栄養培地(表3)で5日間培養後、遠心分離(13200rpm,10分)して上清と菌体(沈殿)を得た。上清は0.25mLをエッペンチューブに入れ、調製AGP溶液をAGPが0.1%含まれるように添加したリン酸バッファー(0.1M,pH7)1mLと混合し、インキュベーター内で静置し反応させた(37℃,24時間)。ブランクとして蒸留水0.25mLも同じように反応させた。菌体は、上清をできるだけ取り除いた後、リン酸バッファー(0.1M,pH7)を0.25mL加え、上清の酵素反応と同じく0.1%AGP添加リン酸バッファー(0.1M,pH7)1mLと混合し、振盪機で反応させた(37℃,24時間)。ブランクとしてリン酸バッファー0.25mLと0.1%AGP添加リン酸バッファー1mLのみ混合し、反応させた。反応後、遠心分離(13200rpm,5分)し、上清を孔径0.20μmのフィルターに通してHPLC分析を行った。
上記4(1)及び(2)で選抜した40菌株について、上清と菌体に分けて酵素反応およびHPLC分析を行った結果、上清のみ、または上清と菌体の両方がブランクのAGPのピークに対して50%以上の減少が認められた菌株を17菌株選抜した。
(2)希釈上清によるAGP分解反応に基づくスクリーニング
上記5(1)で選抜した菌株について、再び液体栄養培地(表3)で5日間培養後、遠心分離(13200rpm,10分)して上清を得た後、上清をリン酸バッファー(0.1M,pH7)で2倍と4倍に希釈した。上清原液と2倍希釈上清と4倍希釈上清のそれぞれ0.25mLをエッペンチューブに入れ、0.1%AGP添加リン酸バッファー(0.1M,pH7)1mLと混合し、インキュベーター内で静置し反応させた(37℃,18時間)。ブランクとして蒸留水0.25mLも同じように反応させた。反応後、ヒートブロックで加熱し(100℃,20分)酵素を失活させた。これを遠心分離(13200rpm,5分)し、上清を孔径0.20μmのフィルターに通してHPLC分析を行った。
HPLC分析を行った結果、AGP分解活性が特に強い酵素を生産する菌株を3菌株選抜し、KSM45、KSM81、KSM97とした。これらの酵素反応サンプルのHPLC分析結果及びAGP減少率をそれぞれ図3〜図8に示した。
図3及び図4に示す通り、KSM45では、全ての希釈倍率で酵素反応液中のAGPが含まれる1つめのピーク(5分)がほぼ消失し、2つめのピーク(11分)が大きくなっている。よって、AGPが、菌株が産生した酵素により分解されたと判断した。
図5及び図6に示す通り、KSM81では、酵素濃度が大きくなるにつれ、酵素反応液中のAGPが含まれる1つめのピーク(5分)は小さくなった。逆に、酵素濃度が大きくなるにつれ2つめのピーク(11分)は大きくなった。よって、AGPが、菌株が産生した酵素により分解されたと判断した。
図7及び図8に示す通り、KSM97では、酵素濃度が大きくなるにつれ、酵素反応液中のAGPが含まれる1つめのピーク(5分)は小さくなった。2つめのピーク(11分)はブランクと大きな差はなかったが、AGPは菌株が産生した酵素により分解されたと判断した。
6.選抜菌株の同定(16S rDNAの塩基配列解析)
上記により選抜したAGP分解活性が特に強い酵素を生産するKSM45、KSM81、KSM97の同定を、株式会社テクノスルガ・ラボに依頼した。16S rDNAの全塩基配列解析の結果、KSM45の16S rDNAの塩基配列は、配列番号1に示す配列を有するため、Chitinophaga arvensicolaに近縁なChitinophaga sp.株(本明細書においてChitinophaga sp. KSM45株ともいう)であることがわかった。本菌株は、2014年6月25日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITE P−01889(識別の表示:Chitinophaga sp. KSM45)として寄託された。
KSM81の16S rDNAの塩基配列は、配列番号2に示す配列を有するため、Ensifer adhaerensに近縁なEnsifer sp.株(本明細書においてEnsifer sp. KSM81株ともいう)であることがわかった。本菌株は、2014年6月25日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITE P−01890(識別の表示:Ensifer sp. KSM81)として寄託された。
KSM97の16S rDNAの塩基配列は、配列番号3に示す配列を有するため、Burkholderia stabilis(本明細書においてBurkholderia stabilis KSM97株ともいう)であることがわかった。本菌株は、2014年6月25日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITE P−01891(識別の表示:Burkholderia stabilis KSM97)として寄託された。
これら3菌株について、AGP分解産物の検討やコーヒー豆切片との酵素反応など、さらなる分析を行った。
7.コーヒー豆切片の酵素反応
コーヒー生豆約20粒を蒸留水で浸し、オートクレーブ(121℃,20分)した後、1粒ずつ簡易ミクロトームと剃刀を用いて薄くスライスした。この時点で、切片数枚をアルカリ未処理切片として回収した。次に、切片を50mLの0.1M NaOHに入れ、アルカリ処理(121℃,20分)を行った。オートクレーブ後、蒸留水で5分間ずつ3回洗浄した。これをアルカリ処理切片とした。
菌株を液体栄養培地(表3)で5日間培養後、遠心分離(13200rpm,10分)して培養上清を得た(培養物の660nmにおけるOD値は、KSM45が0.160、KSM81が0.160、KSM97が0.216)。獲得菌株ごとに、アルカリ未処理切片とアルカリ処理切片について、培養上清200μL、生理食塩水200μL(ブランク)、1%GODO−TCF(Tricoderma reesei由来セルラーゼ、合同酒精社製)添加生理食塩水200μL、1%GODO−TCF添加培養上清200μLを、それぞれ作成したコーヒー豆切片と共にマイクロプレートに入れ、7日間37℃で酵素反応を行った。爪楊枝で懸濁し、崩壊の様子を観察した結果を図9及び図10に示す。
図9に示す通り、KSM45の酵素とアルカリ未処理切片との反応について、ブランクおよび培養上清のみ添加した切片は崩壊しなかった。1%GODO−TCF添加生理食塩水(以下、[1%TCFのみ]と示す)を添加した切片と1%GODO−TCF添加培養上清(以下、[1%TCF+KSM45(KSM81,KSM97)]と示す)を添加した切片は両方とも崩壊したが、6日目で[1%TCF+KSM45]の切片はほぼ完全に崩壊し、粉々になり、一部可溶化も認められた。
同様に、KSM81の酵素とアルカリ未処理切片との反応について、ブランクおよび培養上清のみ添加した切片は崩壊しなかった。[1%TCFのみ]と[1%TCF+KSM81]の切片は両方とも崩壊したが、8日目で[TCF+KSM81]の切片はほぼ完全に崩壊し、粉々になり、一部可溶化も認められた。
また、同様にKSM97の酵素とアルカリ未処理切片との反応について、ブランクおよび培養上清のみ添加した切片は崩壊しなかった。[1%TCFのみ]と[1%TCF+KSM97]の切片は両方とも少し崩壊しただけであった。
図10に示す通り、KSM45の酵素とアルカリ処理切片との反応についても同じく、ブランクおよび培養上清のみ添加した切片は崩壊しなかった。しかしながら、[1%TCFのみ]と[1%TCF+KSM45]を添加した切片は両方とも粉々に崩壊したが、顕微鏡で観察すると[1%TCF+KSM45]の切片の方がより細かく崩壊していた。以上より、KSM45の酵素によってAGPが分解され細胞壁構成成分が緩み、セルラーゼが隅々まで働きやすくなることにより、切片はほぼ完全に崩壊・可溶化されたと推察した。
KSM81の酵素とアルカリ処理切片との反応についても同じく、ブランクおよび培養上清のみ添加した切片は崩壊しなかった。しかしながら、[1%TCFのみ]と[1%TCF+KSM81]を添加した切片は両方とも粉々に崩壊したが、顕微鏡で観察すると[1%TCF+KSM81]の切片の方がより細かく崩壊していた。以上より、KSM45より効果は小さいものの、セルラーゼと酵素の効果的な相乗効果が認められた。
KSM97の酵素とアルカリ処理切片との反応についても同じく、ブランクおよび培養上清のみ添加した切片は崩壊しなかった。しかしながら、[1%TCFのみ]と[1%TCF+KSM97]を添加した切片は両方とも粉々に崩壊したが、顕微鏡で観察すると[1%TCF+KSM97]の切片の方が少し細かく崩壊していた。以上より、上記2菌株よりも効果は小さいが、セルラーゼと酵素の効果的な相乗効果が認められた。
8.各種のセルラーゼを用いた酵素反応
コーヒー生豆を蒸留水で浸し、オートクレーブ(121℃,20分)した後、簡易ミクロトームにて切片を作成したものを一つずつ96穴マイクロプレートリーダーの穴に入れて、KSM45の培養上清液125μL及びセルラーゼ酵素製剤1%溶液を125μL加えて混和し、その切片可溶化の効果を試験した。セルラーゼ単独の効果は、セルラーゼ酵素製剤1%溶液125μLと水125μLとを混和して同様に反応させた。またブランクは切片と水250μLを加えて同様に試験した。反応温度37℃にて行い、反応時間は3日とした。評価方法は、顕微鏡で50倍の倍率で、96穴マイクロプレートを直接暗視野撮影し観察した。
結果は図11に示すとおりであり、各種のセルラーゼについて評価したところ、セルラーゼ溶液単独の場合と比較してトリコデルマ ビリデ由来のセルラーゼ、トリコデルマ属セルラーゼ、アスペルギルス 二ガー由来のセルラーゼなどに顕著な細胞崩壊や可溶化効果が認められた。すなわち、AGP分解酵素と幾つかのセルラーゼ製剤との組み合わせは効率的にコーヒー豆切片を可溶化することに、有効なことが示された。
9.アラビアガム溶液の酵素反応
選抜菌株(KSM45、KSM81、KSM97)の培養上清をそれぞれ0.25mLずつエッペンチューブに入れ、0.4gのアラビアガムを100mLの蒸留水に溶かし調製した0.4%アラビアガム溶液1mLと混合し、インキュベーター内で静置し反応させた(37℃,18時間)。ブランクとして蒸留水0.25mLも同じように反応させた。反応後、ヒートブロックで加熱し(100℃,20分)酵素を失活させた。これを遠心分離(13200rpm,10分)し、上清を孔径0.20μmのフィルターに通してHPLC分析を行った。その結果を図12に示す。
アラビアガムには約20〜25%のAGPが含まれているとされている。図12に示す通り、最も高分子側の5分のピークはブランク以外のサンプルには見られず、8分のピークはブランクと比べてサンプルのピークは小さくなっていた。このどちらかのピークにAGPが含まれているので、アラビアガム中のAGPは分解されていると考えられた。また、12分のピークはブランクと比べてサンプルのピークは大きくなっていることから、コーヒー由来AGPの酵素分解と同様に分解産物が増加したと考えられた。以上より、獲得菌株の生成する酵素はアラビアガム由来AGPも分解すると考えられた。

Claims (9)

  1. アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの資化能を有する微生物であって、炭素源の少なくとも90%以上がアラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインに由来する培地で培養することにより得られ、キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物。
  2. 前記キチノファーガ(Chitinophaga)属、エンシファー(Ensifer)属、又はバークホルデリア属(Burkholderia)に属する微生物における16S−rDNA遺伝子の配列が、それぞれ配列表の配列番号1、配列番号2、又は配列番号3に記載された塩基配列を含む、請求項1に記載の微生物。
  3. 請求項1又は2記載の微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン含有物に作用させる工程を含む、該含有物中のアラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの分解方法。
  4. 請求項1又は2記載の微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン含有物に作用させる工程を含む、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインが分解された飲食品の製造方法。
  5. アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの資化能を有する微生物のスクリーニング方法であって、
    炭素源の少なくとも90%以上がアラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインに由来する培地において候補微生物を培養する培養工程、及び、
    前記培養前後における、試料中の前記アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの含有量を比較する評価工程を含む、方法。
  6. 前記培養工程が、少なくとも10時間以上の培養時間である、請求項5記載の方法。
  7. 前記評価工程は、試料中の前記アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインの含有量が、重量比で、少なくとも50%の減少量を示すことが基準とされる、請求項5又は6記載の方法。
  8. さらに、候補微生物の菌体及びその菌体培養物からなる群より選択される少なくとも1種を、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテインに作用させ分解させる酵素反応工程を含む、請求項5〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. 請求項1又は2記載の微生物、菌体培養物、及び菌体抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、アラビノガラクタン又はアラビノガラクタンプロテイン分解剤。
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