JP2016033434A - 化学蓄熱装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱器内の蓄熱材の厚みを大きくした場合であっても、蓄熱材全体を均一に反応媒体と化学反応させて効率よく熱を取り出すことを課題とする。
【解決手段】加熱対象物4を加熱する化学蓄熱装置であって、反応媒体と化学反応して熱を発生させる蓄熱材を有する加熱器11と、反応媒体を貯蔵する貯蔵器と、加熱器11と貯蔵器との間で反応媒体を流通させる接続管13とを備え、蓄熱材は伝熱方向に沿って複数の層状に分れて配置され、加熱器11は、反応媒体導入口13aと、この反応媒体導入口13aから導入される反応媒体を拡散して蓄熱材に供給する多孔体と、反応媒体を流通可能な少なくとも一つの内部流路とを備え、多孔体は、伝熱方向に沿って配置されている隣り合う蓄熱材の層11a,11aの間に配置される第1の多孔体11cを有し、内部流路は、反応媒体導入口13aと第1の多孔体11cとを接続する。
【選択図】図2

Description

本発明は、化学蓄熱装置に関する。
車両等の排気系には、エンジンから排出される排気ガスに含まれる環境汚染物質(HC、CO、NOx等)を浄化するために、配管の内部に種々の触媒及びフィルタ等が設けられている。触媒には、浄化能力を発揮するための最適温度(活性温度)が存在する。触媒は排気ガスにより暖められて活性温度に達するが、エンジン始動時は、排気ガスの温度が低いため、触媒が活性温度に達するまでに長時間を要する。そこで、エンジン始動時等の排気ガスの温度が低いときであっても、触媒の温度を活性温度にまで短時間で上昇させるように、触媒を暖機するための加熱装置を設けることが考えられている。この種の加熱装置としては、エネルギロス(燃費ロス)を低減して暖機を行うことができる、反応媒体と蓄熱材との可逆的な化学反応を利用した化学蓄熱装置が知られている。化学蓄熱装置としては、例えば、特許文献1には、加熱対象物である触媒の外周部に蓄熱物質(蓄熱材)を配置し、蓄熱物質と反応媒体との化学反応による反応熱を利用して触媒を暖機する触媒暖機装置が開示されている。
特開昭59−208118号公報
化学蓄熱装置の加熱器で発生する熱量を増加させるためには、加熱器内の蓄熱材の搭載量を増やす必要がある。特許文献1のような、配管内に配置された加熱対象物をその外周部から加熱する断面環状の加熱器において蓄熱材の搭載量を増やすためには、蓄熱材の厚み(径方向の大きさ)を大きくすることが考えられる。しかし、単純に蓄熱材の厚みを大きくしただけでは、反応媒体を加熱器内に導く反応媒体導入口との位置関係に応じて、部分的に蓄熱材の化学反応の反応性が低下するという問題がある。
例えば、断面が環状の加熱器の外周面に反応媒体導入口を配置した場合、反応媒体導入口から反応媒体が導入されると、蓄熱材は、反応媒体導入口に近い部分(外周側部分)から順に反応媒体と化学反応して、その体積を膨張させていく。しかしながら、反応媒体が蓄熱材全体に行き渡る前に、蓄熱材の外周側部分が化学反応して体積を膨張させると、蓄熱材の内周側部分を圧迫するので、蓄熱材の内周側部分に反応媒体が拡散し難くなる。すなわち、蓄熱材の内周側部分では反応媒体との反応性が低下してしまう。また、蓄熱材は、一度体積膨張すると、熱を蓄熱して反応媒体を脱離させた後も、その体積を膨張させた状態を保つ。このため、最初の化学反応時において体積膨張した後は、蓄熱材の内周側部分は外周側部分により常に圧迫された状態となっている。そのため、2回目以降の化学反応時においても、蓄熱材の内周側部分には反応媒体が拡散し難く、反応性が低下してしまう。以上のように、加熱器内の蓄熱材の搭載量を多くするために、蓄熱材の厚み方向の大きさを大きくしただけでは、蓄熱材の反応媒体導入口から近い部分と遠い部分とで反応媒体との反応性に差が生じてしまっていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、加熱器内に搭載される蓄熱材の搭載量を増加させるために蓄熱材の厚みを大きくした場合であっても、蓄熱材全体を均一に反応媒体と化学反応させて効率よく熱を取り出すことができる化学蓄熱装置を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る化学蓄熱装置は、加熱対象物を加熱する化学蓄熱装置であって、反応媒体との化学反応による発熱と蓄熱による反応媒体の脱離とを可逆的に行う蓄熱材をケーシングの内部に有する加熱器と、反応媒体を貯蔵する貯蔵器と、加熱器と貯蔵器との間で反応媒体を流通させる接続管とを備え、蓄熱材は、加熱対象物に熱を伝える伝熱方向に沿って複数の層状に分かれて配置され、加熱器は、接続管に接続される少なくとも一つの反応媒体導入口と、反応媒体導入口から導入される反応媒体を拡散して蓄熱材に供給する多孔体と、反応媒体を流通させる少なくとも一つの内部流路とを備え、多孔体は、伝熱方向に沿って複数の層状に配置された蓄熱材における隣り合う層の間に配置される第1の多孔体を有し、内部流路は、反応媒体導入口と第1の多孔体とを接続する。
この化学蓄熱装置は、加熱対象物を加熱可能な箇所に配置される加熱器とそれ以外の箇所に配置される貯蔵器を備え、加熱器と貯蔵器とが接続管によって接続されている。貯蔵器には、反応媒体が貯蔵されており、加熱対象物に対する加熱が必要な場合に接続管を介して反応媒体を加熱器に供給する。加熱器には、ケーシングの内部に蓄熱材を有しており、接続管の一端部に接続される反応媒体導入口から反応媒体が導入されると蓄熱材と反応媒体とが化学反応して熱を発生させ、加熱対象物を加熱する。特に、加熱器には、加熱対象物に熱を伝える伝熱方向に沿って複数の層状に分かれて蓄熱材が配置されている。各層の蓄熱材は所定厚みを有しているので、層の数に応じて、複数の層からなる蓄熱材全体としての厚みが大きくなり、蓄熱材の搭載量が増加する。また、加熱器には、反応媒体導入口から導入される反応媒体を拡散して蓄熱材に供給する多孔体を備えている。多孔体は、反応媒体を流通させることができる孔を多数有しており、反応媒体が流れる経路となる。この多孔体として、第1の多孔体を有している。第1の多孔体は、伝熱方向に沿って複数の層状に配置されている蓄熱材に対して、隣り合う一方の層の蓄熱材と他方の層の蓄熱材との間に配置される。また、加熱器には、反応媒体導入口と第1の多孔体とを反応媒体を流通可能に接続する少なくとも一つの内部流路が配置されている。したがって、加熱器内に反応媒体導入口から反応媒体が導入されると、内部流路によって反応媒体導入口から第1の多孔体まで反応媒体を流通させることができる。さらに、第1の多孔体によって一方の層の蓄熱材と他方の層の蓄熱材との間に反応媒体を拡散して、一方の層の蓄熱材と他方の層の蓄熱材のそれぞれに反応媒体を供給することができる。これによって、加熱器のケーシング内部に収容された蓄熱材のうち反応媒体導入口から遠い部分の蓄熱材にも反応媒体を迅速に供給することができるので、この遠い部分の蓄熱材は、反応性を低下させることなく、反応媒体と迅速に化学反応し、膨張する。また、反応媒体導入口から近い部分の蓄熱材も反応媒体導入口から導入された反応媒体が直接拡散するので、この近い部分の蓄熱材は、反応媒体と迅速に化学反応し、膨張する。したがって、反応媒体導入口に近い部分の蓄熱材と遠い部分の蓄熱材とは、ほぼ均一に体積が膨張する。この各層の蓄熱材がほぼ均一に体積膨張した状態は反応媒体が脱離した以降も保持され、そのほぼ均一に体積膨張した各層の蓄熱材による圧力を周辺にほぼ均一に与えることになる。したがって、反応媒体導入口から遠い部分の蓄熱材が、近い部分の蓄熱材の体積膨張による圧力によって圧迫されたような状態を避けることができ、反応性の低下を抑制できる。このように、化学蓄熱装置は、蓄熱材を複数の層状に積層することによって、加熱器に搭載される蓄熱材の量を大きくした場合でも、各層の蓄熱材間に第1の多孔体を設けるとともに、反応媒体導入口から導入される反応媒体を第1の多孔体に流通させるための内部流路を設けることにより、複数の層状に形成された蓄熱材のうち、特に、反応媒体導入口から遠い部分での反応性の低下を抑制でき、結果として蓄熱材全体を均一に反応媒体と化学反応させて効率よく熱を取り出すことができる。
一実施形態の化学蓄熱装置では、多孔体は、内部流路に配置される第2の多孔体を有する。多孔体として内部流路に第2の多孔体を配置することにより、蓄熱材が体積膨張した場合でも反応媒体の流通経路を確保できる。
一実施形態の化学蓄熱装置では、多孔体は、反応媒体導入口が設けられたケーシングの内周面とケーシングに隣り合う蓄熱材の層との間に配置される第3の多孔体を有する。
多孔体は、更に、第3の多孔体を有している。第3の多孔体は、ケーシングの内周面とケーシングに隣り合う蓄熱材の層との間に配置されている。この第3の多孔体も、上記の第1の多孔体と同様に、反応媒体が流れる経路となる。加熱器内に反応媒体導入口から反応媒体が導入されると、第3の多孔体によってケーシングに最も近い層の蓄熱材の各部分に反応媒体を迅速に拡散供給することができ、反応性を向上できる。このように、化学蓄熱装置では、ケーシングに最も近い層の蓄熱材とケーシングとの間に第3の多孔体を設けることにより、蓄熱材と反応媒体との反応性を向上できる。
一実施形態の化学蓄熱装置では、多孔体は、一端部が第1の多孔体に接続されるとともに第1の多孔体から加熱対象物側に向かって延在する少なくとも一つの第4の多孔体を有する。
多孔体は、更に、第4の多孔体を有している。第4の多孔体は、一端部が第1の多孔体に接続され、第1の多孔体から加熱対象物側に向かって延在している。この第4の多孔体も、上記の第1の多孔体と同様に、反応媒体が流れる経路となる。第1の多孔体に反応媒体が拡散すると、第4の多孔体によって、その第1の多孔体から加熱対象物側に配置される蓄熱材の層の内部に向けて反応媒体を迅速に拡散供給することができるので、蓄熱材と反応媒体との反応性を更に向上することができる。このように、化学蓄熱装置では、第1の多孔体に接続され、その第1の多孔体の加熱対象物側に延在する第4の多孔体を設けることにより、蓄熱材と反応媒体との反応性を向上できる。
一実施形態の化学蓄熱装置では、多孔体は、反応媒体との化学反応により膨張した蓄熱材から圧力を受ける状態において、気孔率が10%以上かつ平均孔径が150μm以下である。
蓄熱材が反応媒体と化学反応すると、その体積が膨張する。この膨張した状態は、蓄熱材から反応媒体が脱離してもほぼ保持される。したがって、最初に蓄熱材が膨張すると、それ以降は、体積膨張した蓄熱材によって層間に設けられる多孔体が圧力を受けることになる。そこで、各多孔体を、体積膨張した蓄熱材によって圧力を受けている場合に気孔率が10%以上かつ平均孔径が150μm以下となる多孔体とする。この気孔率が10%以上により、蓄熱材の各部が化学反応するのに必要な十分な量の反応媒体を多孔体を介して迅速に流通及び拡散させることができる。また、平均孔径が150μm以下により、蓄熱材の粒子(例えば、蓄熱材成型体の一部が欠けて粉状になったもの)が多孔体の孔に入ることを防止できる。そのため、体積膨張した蓄熱材によって多孔体が圧力を受けている場合でも、多孔体が反応媒体を流す経路として機能できる。
本発明によれば、加熱器内の蓄熱材の厚みを大きくした場合であっても、蓄熱材全体を均一に反応媒体と化学反応させて効率よく熱を取り出すことができる。
一実施形態に係る化学蓄熱装置を備えた排気ガス浄化システムの概略構成図である。 第1の実施形態に係るヒータと熱交換器周辺の断面図であり、(a)が正断面図であり、(b)が正断面図におけるA−A線に沿った側断面図である。 多孔体シートの斜視図であり、(a)がヒータ内に組み付けられる前の状態であり、(b)がヒータ内に組み付けられた後の状態である。 第2の実施形態に係るヒータと熱交換器周辺の正断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る化学蓄熱装置を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
一実施形態に係る化学蓄熱装置を、車両のエンジンの排気系に設けられる排気ガス浄化システムに備えられる化学蓄熱装置に適用する。一実施形態に係る排気ガス浄化システムは、エンジン(特に、ディーゼルエンジン)から排出される排気ガス中に含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化するシステムであり、触媒のDOC[Diesel Oxidation Catalyst]、SCR[SelectiveCatalytic Reduction]とASC[Ammonia Slip Catalyst]及びフィルタのDPF[Diesel Particulate Filter]を備えている。また、一実施形態に係る排気ガス浄化システムは、暖機用の化学蓄熱装置も備えており、化学蓄熱装置がエンジンとDOCとの間に配置される熱交換器に設けられる。
図1及び図2を参照して、一実施形態に係る排気ガス浄化システム1の全体構成について説明する。図1は、一実施形態に係る排気ガス浄化システム1の概略構成図である。図2は、第1実施形態に係るヒータと熱交換器周辺の断面図であり、(a)が正断面図であり、(b)が正断面図におけるA−A線に沿った側断面図である。
排気ガス浄化システム1は、エンジン2の排気側に接続された排気管3の上流側から下流側に向けて、熱交換器4、ディーゼル酸化触媒(DOC)5、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF)6、選択還元触媒(SCR)7、アンモニアスリップ触媒(ASC)8を備えている。これら熱交換器4、DOC5、DPF6、SCR7、ASC8が配設される各部分は、配設されない部分の排気管3の径よりも大きくなっている。排気管3及び熱交換器4、DOC5、DPF6、SCR7、ASC8の各内部にはエンジン2から排出される排気ガスが流れ、排気ガスの流れる方向によって上流側と下流側が規定される。
熱交換器4は、エンジン2から排出された排気ガスと後述するヒータ11との間で熱の交換(伝達)を行う機器である。熱交換器4は、例えば、金属、セラミックなどの高熱伝導性材料で形成され、図2に示すように円筒状の外筒4aの内部がハニカム構造体4bとなっている。なお、熱交換器4はハニカム構造に限らず、周知の熱交換構造を適用可能である。
DOC5は、排気ガス中に含まれるHC、CO等を酸化する触媒である。DPF6は、排気ガス中に含まれるPMを捕集して取り除くフィルタである。SCR7は、インジェクタ7aによって排気管3内の上流側にアンモニア(NH)あるいは尿素水(加水分解してアンモニアになる)が供給されると、アンモニアと排気ガス中に含まれるNOxとを化学反応させることによって、NOxを還元して浄化する触媒である。ASC8は、SCR7をすり抜けて下流側に流れたアンモニアを酸化する触媒である。
各触媒5,7,8には、環境汚染物質に対する浄化能力を発揮できる温度領域(すなわち、活性温度)が存在する。しかし、エンジン2の始動直後などは、エンジン2から排出された直後の排気ガスの温度は比較的低温であり、その活性温度より低い場合がある。そこで、エンジン2の始動直後などでも、各触媒5,7,8で浄化能力を発揮させるために、各触媒5,7,8での温度を迅速に活性温度にする必要がある。そのために、排気ガス浄化システム1は、最上流の熱交換器4(内部を流れる排気ガス)を加熱し、触媒の暖機を行う化学蓄熱装置10を備えている。
化学蓄熱装置10は、外部エネルギレスで触媒などの加熱対象物を暖機する化学蓄熱装置である。具体的には、化学蓄熱装置10は、加熱対象物からの熱を蓄熱して蓄熱材から脱離する反応媒体を蓄えておき、その蓄えられた反応媒体を必要なときに蓄熱材に供給することで蓄熱材と反応媒体とを化学反応させ、化学反応時の反応熱(放熱)を利用して加熱対象物を暖めるものである。即ち、化学蓄熱装置10は、可逆的な化学反応を利用して、加熱対象物からの熱を蓄えるとともに、再び加熱対象物に熱を供給するものであるといえる。この実施形態では、化学蓄熱装置10は、最も上流に位置する触媒であるDOC5より上流側に配置した熱交換器4を加熱する。熱交換器4の内部には排気ガスが流れており、排気ガスとの間で熱交換をする構成となっている。したがって、排気ガスの流れる配管の最も上流側(エンジン2に近い側)に化学蓄熱装置10を配置することによって、エンジン2の始動時等における温度がさほど高くない状態の排気ガスを、熱交換器4の下流に配置された触媒(DOC5,SCR7、ASC8)へ到達する前に迅速に昇温できる。なお、この実施形態では、熱交換器4が特許請求の範囲に記載の加熱対象物に相当する。
化学蓄熱装置10は、ヒータ11、ストレージ12、接続管13、バルブ14等を備えている。なお、この実施形態では、ヒータ11が特許請求の範囲に記載の加熱器に相当し、ストレージ12が特許請求の範囲に記載の貯蔵器に相当し、接続管13が特許請求の範囲に記載の接続管に相当する。
ヒータ11は、この実施形態では熱交換器4の外周部の全周に設けられ、断面形状が熱交換器4を囲む環状である。ヒータ11は、反応媒体との化学反応により発熱する蓄熱材11a(11a,11a)を多数個有しており、この多数個の蓄熱材11aがケーシング11bの内部に収納されている。ここでは、反応媒体としてアンモニアを用いている。ヒータ11では、アンモニアと蓄熱材11aとが化学反応(化学吸着または配位結合)して、熱を発生させる。また、ヒータ11では、排気ガスの排熱を受けて蓄熱材11aが所定温度以上になると蓄熱材11aとアンモニアとが分離(脱離)して、アンモニアを放出し、アンモニアの回収が可能となる。この所定温度は、ヒータ11で用いられる蓄熱材11aと反応媒体との組み合わせなどによって決まる。
蓄熱材11aは、熱交換器4の外筒4aの外周面の全周に接するように配設される。蓄熱材11aとしては、反応媒体であるアンモニアと化学反応して発熱し、熱交換器4を通過する排気ガスを触媒(DOC5等)の活性温度以上に昇温できる材料を用いる。この材料としては、ハロゲン化合物のMXの組成を持つ材料であり、M=Mg、Ca、Srなどのアルカリ土類金属、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどの遷移金属であり、XがCl、Br、Iなどであり、a=2、3である。なお、蓄熱材11aには、熱伝導性を向上させる添加物を混合してもよい。添加物としては、例えば、カーボンファイバ、カーボンビーズ、SiCビーズ、Cu、Ag、Ni、Ci−Cr、Al、Fe、ステンレス鋼などの金属ビーズ、高分子ビーズ、高分子ファイバである。
ケーシング11bは、ヒータ11の外周側の全面及びヒータ11の上流端部と下流端部の全面を覆うように配設され、熱交換器4の外筒4aの外周面との間で密閉された空間を形成し、その中に蓄熱材11aを封入している。このように、蓄熱材11aは密閉空間内に封入されているので、アンモニアと繰り返し化学反応できる。なお、蓄熱材11aとケーシング11bとの間に断熱材を設けてもよいし、蓄熱材11aと外筒4aとの間にグラファイトシート、アルミニウムなどの金属シートなどで形成された熱伝導シートを設けてもよい。
ヒータ11のケーシング11b内には、蓄熱材全体としての厚さを大きくして発生熱量を増加させるために、熱交換器4に熱を伝える伝熱方向(外周側から内周側への方向)に沿って2つの層状に分れて蓄熱材11a(内周側の層の蓄熱材11aと外周側の層の蓄熱材11a)が配置されている。蓄熱材11a,11aは、上記の蓄熱材の材料がプレスによってペレット状に固められた成型体である。内周側の層では、熱交換器4の外筒4aの外周面上に、図2(b)に示すように排気ガスの流れる方向に沿って複数個の蓄熱材11aが並べられて配設され、図2(a)に示すように周方向に沿って複数個(図2(a)に示す例の場合、8個)の蓄熱材11aが並べられて配設される。外周側の層では、その内周側の層の外周側に、図2(b)に示すように排気ガスの流れる方向に沿って複数個(内側の層と同数個)の蓄熱材11aが並べられて配設され、図2(a)に示すように周方向に沿って複数個(図2(a)に示す例の場合、8個)の蓄熱材11aが並べられて配設される。したがって、各蓄熱材11a,11aの側断面形状は図2(b)に示すように略長方形状であり、正断面形状は図2(a)に示すように所定の厚みを有する略円弧形状である。このように、この排気ガスの流れる方向及び周方向に沿って配設された蓄熱材11a,11aによって、熱交換器4の外筒4aの外周面の全周に蓄熱材が配設され、断面形状が熱交換器4を囲む2層の環状となっている。なお、排気ガスの流れる方向に沿って複数個の蓄熱材で構成しているが、排気ガスの流れる方向に沿って1個の長い蓄熱材で構成してもよい。また、周方向に沿って複数個の蓄熱材で構成しているが、周方向に沿って1個の環状の蓄熱材で構成してもよい。
内周側の層の各蓄熱材11aの長さ(排気ガスの流れる方向での長さ)と外周側の層の各蓄熱材11aの長さとは、略同じ長さである。内周側の層の各蓄熱材11aの幅(周方向での幅)と外周側の層の各蓄熱材11aの幅とは、外周側の層の蓄熱材11aのほうが広い幅である。内周側の層の各蓄熱材11aの厚み(伝熱方向での厚み)と外周側の層の各蓄熱材11aの厚みとは、略同じ厚みである。この所定の厚みを有する蓄熱材11a,11aを伝熱方向に重ねて2層で構成しているので、ヒータ11の蓄熱材全体としての厚みが大きくなる。このように蓄熱材全体としての厚みを大きくすることで、ヒータ11内に搭載される蓄熱材の搭載量が増加し、ヒータ11で発生できる熱量が増加する。
なお、蓄熱材11a,11aは、供給されたアンモニアと化学反応するとその体積を膨張させる。図2には、アンモニアが一度も供給されていない膨張前の蓄熱材11a,11aを示しており、蓄熱材11a,11aの周辺には空隙が存在する。蓄熱材11a,11aが膨張すると、この空隙が体積膨張した蓄熱材11a,11aで埋められ、蓄熱材11a,11aの周辺に体積膨張による圧力を付加する。熱交換器4からヒータ11が受ける温度が高くなって蓄熱材11a,11aからアンモニアが脱離した後も、蓄熱材11a,11aは体積膨張した状態を保持している。したがって、最初にアンモニアが供給されて蓄熱材11a,11aが体積膨張した後は、体積膨張した状態の蓄熱材11a,11aが周辺に圧力を付加し続けることになる。
ヒータ11におけるアンモニアを拡散するための構造については2つの実施形態があるので、まず、第1の実施形態に係るヒータ11Aの構造について説明する。ヒータ11Aは、アンモニア導入口13aから導入されるアンモニアを拡散して2つの層の蓄熱材11a,11aに均一に供給するための多孔体として、アンモニアの流通経路となる第1の多孔体11c、第2の多孔体11d、第3の多孔体11e、第4の多孔体11fを有している。この実施形態では、第1の多孔体11cが特許請求の範囲に記載の第1の多孔体に相当し、第2の多孔体11dが特許請求の範囲に記載の第2の多孔体に相当し、第3の多孔体11eが特許請求の範囲に記載の第3の多孔体に相当し、第4の多孔体11fが特許請求の範囲に記載の第4の多孔体に相当し、第1の多孔体11c、第2の多孔体11d、第3の多孔体11e及び第4の多孔体11fが特許請求の範囲に記載の多孔体に相当する。
第1の多孔体11cは、内周側の層を形成する蓄熱材11aと外周側の層を形成する蓄熱材11aとの間に配置される。第1の多孔体11cは、所定の厚みを有する円筒形状であり、排気ガスが流れる方向に沿って配置される複数個の蓄熱材11aからなる列の長さと略同じ長さを有している。第1の多孔体11cでは、第2の多孔体11dを介してアンモニアが供給されると(但し、外周側の層を形成する蓄熱材11aを介してもアンモニアが供給される)、内周側の層を形成する蓄熱材11aと外周側の層を形成する蓄熱材11aとの間にアンモニアを迅速かつ均一に拡散する。したがって、第1の多孔体11cは、内周側の層の蓄熱材11aにアンモニアを供給する経路として機能し、外周側の層の蓄熱材11aにアンモニアを供給する経路としても機能する。
第3の多孔体11eは、ケーシング11bの内周面と外周側の層を形成する蓄熱材11aとの間に配置される。第3の多孔体11eは、所定の厚みを有する円筒形状であり、排気ガスが流れる方向に沿って配置される複数個の蓄熱材11aからなる列の長さと略同じ長さを有している。第3の多孔体11eは、ケーシング11bの内周面に開口されているアンモニア導入口13aに接続されており、アンモニア導入口13aからアンモニアが導入されると、ケーシング11bと外周側の層を形成する蓄熱材11aとの間にアンモニアを迅速かつ均一に拡散する。したがって、第3の多孔体11eは、外周側の層の蓄熱材11aにアンモニアを供給する経路として機能する。
第2の多孔体11dは、第1の多孔体11cと第3の多孔体11eとの間に設けられ、第1の多孔体11cと第3の多孔体11eとを接続する。第2の多孔体11dは、外周側の層を形成する蓄熱材11aのうちの排気ガスが流れる方向に沿って配置される複数個の蓄熱材11aからなる列とその隣の複数個の蓄熱材11aからなる列との間に配置される。特に、第2の多孔体11dは、アンモニア導入口13aから最も近い列と列との間に配置される。図2に示す例の場合には、第2の多孔体11dはアンモニア導入口13aの直下に配置されている。第2の多孔体11dは、所定の厚みを有する長方形状であり、第1の多孔体11c及び第3の多孔体11eの長さと略同じ長さを有している。第2の多孔体11dでは、アンモニア導入口13aからアンモニアが導入され、そのアンモニアが第3の多孔体11eを介して供給されると、第1の多孔体11cの方向にアンモニアを迅速に拡散する。したがって、第2の多孔体11dは、第3の多孔体11eから第1の多孔体11cへアンモニアを流す経路(流路)として機能し、第2の多孔体11dの周辺に存在する蓄熱材11aにアンモニアを供給する経路としても機能する。なお、この実施形態では、第2の多孔体11dによる流路が特許請求の範囲に記載の内部流路に相当する。
第4の多孔体11fは、第1の多孔体11cと熱交換器4の外筒4aの外周面との間に設けられ、第1の多孔体11cと外筒4aとを接続する。第4の多孔体11fは、内周側の層を形成する蓄熱材11aのうちの排気ガスが流れる方向に沿って配置される複数個の蓄熱材11aからなる列とその隣の複数個の蓄熱材11aからなる列との間に設けられる。特に、第4の多孔体11fは、第2の多孔体11dから最も近い列と列との間に設けられる。図2に示す例の場合には第4の多孔体11fは第2の多孔体11d(アンモニア導入口13a)の直下から少しずれた位置に配置されているが、内周側の層の蓄熱材11aの配置によっては第2の多孔体11d(アンモニア導入口13a)の直下に配置されてもよい。第4の多孔体11fは、所定の厚みを有する長方形状であり、第1の多孔体11cの長さと略同じ長さを有している。第4の多孔体11fでは、第1の多孔体11cを介してアンモニアが供給されると、外筒4aの方向にアンモニアを迅速に拡散する。第4の多孔体11fは、第4の多孔体11fの周辺に存在する蓄熱材11aにアンモニアを供給する経路として機能する。
各多孔体11c〜11fは、気体のアンモニアを十分に流通させることができかつ蓄熱材11aの粒子(例えば、蓄熱材成型体の一部が欠けて粉状になったもの)が孔に入らない径の孔を多数有する。また、各多孔体11c〜11fは、体積膨張した蓄熱材11aによって圧力を受けている場合でも、外形形状がほぼ保持されて(特に、厚みが確保されて)、孔が潰れない(但し、アンモニアを流通させることができれば、多少潰れてもよい)十分な強度を有している。また、各多孔体11c〜11fは、蓄熱材11aがアンモニアと化学反応して発生した熱を伝熱方向に沿って伝える際にこの伝熱を妨げない。
上記したように、蓄熱材11aがアンモニアと化学反応するとその体積が膨張し、この体積膨張した状態は蓄熱材11aからアンモニアが脱離しても保持される。したがって、最初に蓄熱材11aが体積膨張すると、それ以降は体積膨張した蓄熱材11aによって各位置に設けられる多孔体11c〜11fは体積膨張による圧力(面圧)を受けることになる。そのため、上記したように、各多孔体11c〜11fは、体積膨張した蓄熱材11aによって圧力を受けている場合でも、アンモニアの流通経路として機能するために、孔が潰れない強度を有している。特に、各多孔体11c〜11fは、体積膨張した蓄熱材11aによって圧力が印加されているときに、気孔率が10%以上であり、平均孔径が150μm以下であると好ましい。気孔率が10%以上であると、化学反応に必要となる十分な量のアンモニアを迅速に拡散させることができる。また、平均孔径が150μm以下であると、蓄熱材11aの一部が欠けたものが孔に入ることを防止できる。
なお、体積膨張した蓄熱材11aによって各多孔体11c〜11fが受ける圧力(面圧)は、多孔体11c〜11fに用いられる多孔体材料の密度及びヒータ11Aのケーシング11b内の空間容積とヒータ11A内に収容される全ての蓄熱材11a,11aの搭載量によって規定される。この圧力(面圧)としては、例えば、0.2MPa〜20MPa程度である。
各多孔体11c〜11fで用いられる多孔体材料は、アンモニアに対する耐食性を有するものである。また、多孔体材料は、熱伝導性に優れるものが望ましい。多孔体材料としては、金属(特に、繊維状のもの)、セラミックなどからなる多孔体状の材料である。金属としては、例えば、ステンレス鋼であり、アルミニウム、銅などでもよい。多孔体材料としては、例えば、ステンレス鋼の非常に細いワイヤ(ステンレス鋼繊維)で形成されたフェルト状のもの、発泡金属である。
各多孔体11c〜11fの厚みは、体積膨張した蓄熱材11aによって圧力を受けた場合でも外形形状を十分に保持できる厚みである。また、各多孔体11c〜11fの厚みは、熱が伝わり難くならない程度の厚みが望ましい。各多孔体11c〜11fの厚みとしては、例えば、0.1mm〜3mm、好ましくは0.2mm〜2mm程度である。
図3を参照して、各多孔体11c〜11fを形成する方法の一例を説明する。図3は、多孔体シートの斜視図であり、(a)がヒータ11A内に組み付けられる前の状態であり、(b)がヒータ11A内に組み付けられた後の状態である。
多孔体シート15によって、第1の多孔体11c及び第4の多孔体11fあるいは第3の多孔体11e及び第2の多孔体11dを形成する。多孔体シート15は、上記した多孔体材料で形成され、上記の厚みを有する長方形状のシートである。多孔体シート15は、本体部15aとその本体部15aの両端部を垂直に折り曲げた折り曲げ端部15bを有する。本体部15aの幅は、円筒状の第1の多孔体11cあるいは第3の多孔体11eの円周長に相当する幅である。折り曲げ端部15bの幅は、第2の多孔体11d及び第4の多孔体11fの伝熱方向の長さ(蓄熱材11a,11aの厚み)に相当する幅である。多孔体シート15の長さは、各多孔体11c〜11dの排気ガスの流れる方向の長さ(排気ガスが流れる方向に沿って配置される複数個の蓄熱材11a,11aからなる列の長さ)に相当する長さである。
組み付け時には、この多孔体シート15を、内周側の層を形成する蓄熱材11aあるいは外周側の層を形成する蓄熱材11aの外側で、図2(b)に示すように折り曲げ端部15b,15bを内側にして丸める。そして、本体部15aで円筒を形成することによって、第1の多孔体11cあるいは第3の多孔体11eを構成する。また、両端部の一方の折り曲げ端部15bの側面と他方の折り曲げ端部15bの側面とを合わせ、その合わせた折り曲げ端部15b,15bを、排気ガスの流れる方向に沿って配置される複数個の蓄熱材11aからなる列とその隣の複数個の蓄熱材11aからなる列との間あるいは複数個の蓄熱材11aからなる列とその隣の複数個の蓄熱材11aからなる列との間に配置させることによって、第2の多孔体11dあるいは第4の多孔体11fを構成する。
ストレージ12は、反応媒体であるアンモニアを保持(吸着)及び分離(放出)が可能な吸着材12aが内蔵されている。吸着材12aとしては、例えば、物理吸着によるアンモニアの貯蔵が可能な活性炭が用いられる。ストレージ12では、アンモニアを吸着材12aから分離させてヒータ11に供給するとともに、暖機終了後には排気ガスの排熱を受けて蓄熱材11aより脱離したアンモニアを吸着材12aに物理吸着させることで再び回収する。なお、吸着材12aとしては、活性炭に限られず、例えば、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボン、メソポーラスアルミナなどのメソ孔を有するメソポーラス材、または、ゼオライト、シリカゲルを用いてもよい。
接続管13は、ヒータ11とストレージ12とを接続する管であり、ヒータ11とストレージ12との間で反応媒体(アンモニア)を流通させる流路となる。接続管13のヒータ11側の一端部は、ヒータ11のケーシング11bを貫通して、ケーシング11bの内周面の開口部に接続されている。この開口部が、アンモニア導入口13aである。このアンモニア導入口13aによって、ヒータ11内には、ケーシング11bの内部空間の最も外周側(第3の多孔体11e)からアンモニアが導入されることになる。この実施形態では、アンモニア導入口13aが特許請求の範囲に記載の反応媒体導入口に相当する。なお、この実施形態ではアンモニア導入口13aを一つとしているが、複数設けてもよい。
バルブ14は、接続管13の途中に配設され、ヒータ11とストレージ12との間のアンモニアの流路を開閉するバルブである。バルブ14が開かれると、接続管13を介してヒータ11とストレージ12との間でアンモニアの移動が可能となる。バルブ14の開閉制御は、化学蓄熱装置10の専用のコントローラあるいはエンジン2を制御するECU[Electronic Control Unit]等のECUで行われる。バルブ14は、電磁式のノーマリクローズのバルブであり、電圧印加時に開く。なお、バルブ14は、電流駆動のバルブでもよく、また、電磁式以外のバルブでもよい。
以上のように構成したヒータ11Aを備える化学蓄熱装置10の動作を説明する。エンジン2の稼働中、エンジン2から排出された排気ガスの温度が暖機開始温度以下の場合(エンジン2の始動直後など)、バルブ14に電圧が印加されると、バルブ14が開く。これによって、接続管13でのアンモニアの移動が可能となる。このとき、ストレージ12内の圧力がヒータ11A内の圧力よりも高く、アンモニアがヒータ11A側に移動し、接続管13内を流れる。そして、接続管13内を流れるアンモニアが、接続管13のアンモニア導入口13aからヒータ11Aのケーシング11bの内部に導入される。
アンモニア導入口13aから第3の多孔体11eにアンモニアが導入されると、第3の多孔体11eでは、アンモニアをケーシング11bと外周側の層を形成する蓄熱材11aとの間に迅速かつ均一に拡散する。この均一に拡散したアンモニアが、外周側の層を形成する蓄熱材11aに均一に供給される。さらに、アンモニア導入口13aの近く配置される第2の多孔体11dに第3の多孔体11eを介してアンモニアが迅速に供給されると、第2の多孔体11dでは、アンモニアを第1の多孔体11cの方向にアンモニアを迅速に拡散する。第1の多孔体11cにアンモニアが供給されると、内周側の層を形成する蓄熱材11aと外周側の層を形成する蓄熱材11aとの間にアンモニアを迅速かつ均一に拡散する。この均一に拡散したアンモニアが、内周側の層を形成する蓄熱材11aに均一に供給されるとともに、外周側の層を形成する蓄熱材11aにも均一に供給される。さらに、第4の多孔体11fに第1の多孔体11cを介してアンモニアが供給されると、第4の多孔体11fでは、アンモニアを熱交換器4の外筒4aの方向にアンモニアを迅速に拡散する。
このように、ヒータ11Aでは、アンモニア導入口13aに近い外周側の層を形成する蓄熱材11a側だけでなく、アンモニア導入口13aから遠い内周側の層を形成する蓄熱材11aにも均一にかつ迅速にアンモニアが供給されることになる。ヒータ11Aでは、この供給されたアンモニアと各層の蓄熱材11a,11aとが化学反応して、熱を発生する。この際、外周側の層を形成する蓄熱材11aがアンモニアと化学反応しているときに、それと並行して、内周側の層を形成する蓄熱材11aもアンモニアと化学反応している。
特に、アンモニアが最初に供給されたときには、外周側の層を形成する蓄熱材11aがアンモニアと化学反応することでその体積が膨張しているときに、それと並行して、内周側の層を形成する蓄熱材11aもアンモニアと化学反応することでその体積が膨張している。したがって、外周側の層を形成する蓄熱材11aと内周側の層を形成する蓄熱材11aとは、ほぼ均一に体積が膨張する。この各層の蓄熱材11a1,11aがほぼ均一に体積膨張した状態はアンモニアが脱離した以降も保持され、そのほぼ均一に体積膨張した蓄熱材11a,11aによる圧力を周辺にほぼ均一に与えることになる。したがって、外周側の層を形成する蓄熱材11aだけが先に体積膨張して、その体積膨張による圧力を内周側の層を形成する蓄熱材11aが受けて圧迫されたような状態になることはない。そのため、アンモニア導入口13aから遠い内周側の層を形成する蓄熱材11aの反応性が低下するようなことはない。
化学反応で発生した熱は、ヒータ11Aを暖めると熱交換器4の外筒4aに伝わり、伝熱効果によって熱交換器4の内部のハニカム構造体4bにまで伝わる。熱交換器4全体が加熱され、熱交換器4のハニカム構造体4bを流れる排気ガスが迅速に昇温する。さらに、この昇温された排気ガスが下流側に流れ、DOC5、SCR7、ASC8の各触媒が昇温する。そして、この各触媒の温度が活性温度以上になると、排気ガスを浄化できる。
暖機終了後、エンジン2の稼働がある程度継続し、エンジン2から排出された排気ガスの温度が高くなると、ヒータ11Aでは、蓄熱材11aが蓄熱してアンモニアが蓄熱材11aより脱離し、ヒータ11A内でアンモニアが発生する。そして、排気ガスの温度がアンモニア回収可能温度より高い場合、バルブ14は開状態とされ、接続管13でのアンモニアの移動が可能となる。このとき、アンモニアの発生によりヒータ11A内の圧力がストレージ12内の圧力よりも高くなるため、アンモニアが接続管13内を流通してストレージ12側に移動する。接続管13内を流れてストレージ12に達したアンモニアは、ストレージ12内に設けられた吸着材12aに物理吸着されて、ストレージ12に回収される。
このヒータ11Aを備える化学蓄熱装置10によれば、2層の蓄熱材11a,11aによって蓄熱材全体としての厚みを大きくした場合でも、2層の蓄熱材11a,11a間に第1の多孔体11cを設けるとともにアンモニア導入口13aから導入されるアンモニアを第1の多孔体11cに拡散するための第2の多孔体11d(内部流路)を設けることにより、内周側の層を形成する蓄熱材11aにもアンモニアを迅速かつ均一に供給できるので、各層の蓄熱材11a,11aでの反応性(特に、アンモニア導入口13aから遠い側の層の蓄熱材11aでの反応性)の低下を抑制できる。そのため、化学蓄熱装置10では、各層の蓄熱材11a,11aで迅速かつ均一にアンモニアとの化学反応(化学吸着)が生じるので、効率よく蓄熱材11a,11aの搭載量に応じた多くの熱を取り出すことができる。
また、化学蓄熱装置10によれば、ケーシング11bに近い外周側の層を形成する蓄熱材11aとケーシング11bとの間に第3の多孔体11eを設けることにより、外周側の層を形成する蓄熱材11aにアンモニアを迅速かつ均一に供給できるので、反応性を更に向上できる。また、化学蓄熱装置10によれば、第1の多孔体11cと熱交換器4の外筒4aの外周面との間に第4の多孔体11fを設けることにより、反応性を更に向上できる。また、化学蓄熱装置10によれば、第1の多孔体11cと第3の多孔体11eとの間に第2の多孔体11dを設けることにより、蓄熱材11aが体積膨張した場合でも第1の多孔体11cまでアンモニアを拡散するための内部流路を確実に確保できる。
また、化学蓄熱装置10によれば、アンモニアと化学反応して体積膨張した蓄熱材11aによって各多孔体11c〜11fが圧力を受けている場合でも各多孔体11c〜11fの気孔率が10%以上かつ平均孔径が150μm以下であるので、各多孔体11c〜11fがアンモニアの流通経路として十分に機能できる。
なお、アンモニア導入口は複数の箇所に設けることも可能である。車両への搭載性、部品点数などを加味した上でアンモニア導入口13aが1箇所になったとしても、第3の多孔体11eによってアンモニア導入口13aから導入されたアンモニアを周方向に迅速に拡散できる。また、接続管をヒータの内部にまで挿入して、アンモニア導入口をヒータの内部(例えば、熱交換器に近い位置)に設けることも考えられるが、そのような位置に設けると蓄熱材の一部が欠けたものがアンモニア導入口に入る可能性がある。そのため、化学蓄熱装置10では、アンモニア導入口13aをヒータ11の最外周部(第3の多孔体11e)の位置に設けている。
図4を参照して、第2の実施形態に係るヒータ11Bについて説明する。図4は、第2の実施形態に係るヒータと熱交換器周辺の正断面図である。
ヒータ11Bは、上記したヒータ11Aと比較すると、多孔体として第1の多孔体11cのみを有する点と内部流路11gを備える点が異なる。この実施形態では、第1の多孔体11cが特許請求の範囲に記載の第1の多孔体に相当し、内部流路11gが特許請求の範囲に記載の内部流路に相当する。
ヒータ11Bには第3の多孔体11eが設けられていないので、図4に示すようにケーシング11bと第1の多孔体11cとの間に外周側の層の蓄熱材11aが配置されている。また、ヒータ11Bには第4の多孔体11fが設けられていないので、図4に示すように周方向に沿って内周側の層の全ての蓄熱材11aが間隔を空けずに配置されている。
内部流路11gは、第1の多孔体11cとアンモニア導入口13aとを接続して、アンモニアを拡散するための流路である。内部流路11gは、外周側の層を形成する蓄熱材11aのうちの排気ガスが流れる方向に沿って配置される複数個の蓄熱材11aからなる列とその隣の複数個の蓄熱材11aからなる列との間に形成される。特に、内部流路11gは、アンモニア導入口13aから最も近い列と列との間に配置される。図4に示す例の場合には、内部流路11gはアンモニア導入口13aの直下に配置されている。内部流路11gは、所定の幅を有する空間であり、第1の多孔体11cの長さと略同じ長さを有している。内部流路11gでは、アンモニア導入口13aからアンモニアが導入されると、第1の多孔体11cの方向にアンモニアを迅速に拡散する。したがって、内部流路11gは、アンモニア導入口13aから第1の多孔体11cへアンモニアを流す流路として機能する。内部流路11gは、例えば、ケーシング11bに溝を設けることによって形成されたり、あるいは、周方向に配置される蓄熱材11a,11a間の間隔を少し広めに空けることによって形成される。
このヒータ11Bを備える化学蓄熱装置10の動作を説明する。エンジン2から排出された排気ガスの温度が暖機開始温度以下の場合にアンモニア導入口13aからヒータ11のケーシング11bの内部にアンモニアが導入されるまでの動作は、上記と同様の動作であるので、説明を省略する。
アンモニア導入口13aからアンモニアが導入されると、アンモニア導入口13aの近くに形成される内部流路11gによってアンモニアが第1の多孔体11c側に拡散され、アンモニアが第1の多孔体11cに供給される。第1の多孔体11cにアンモニアが供給されると、内周側の層を形成する蓄熱材11aと外周側の層を形成する蓄熱材11aとの間にアンモニアを迅速かつ均一に拡散する。この均一に拡散したアンモニアが、内周側の層を形成する蓄熱材11aに均一に供給されるとともに、外周側の層を形成する蓄熱材11aにも均一に供給される。また、アンモニア導入口13aから導入されたアンモニアが、外周側の層を形成する蓄熱材11aに直接供給される。このように、ヒータ11では、アンモニア導入口13aに近い外周側の層を形成する蓄熱材11a側だけでなく、アンモニア導入口13aから遠い内周側の層を形成する蓄熱材11aにも均一にかつ迅速にアンモニアが供給されることになる。これ以降の動作については、上記と同様の動作なので、説明を省略する。
このヒータ11Bを備える化学蓄熱装置10によれば、2層の蓄熱材11a,11aによって蓄熱材全体としての厚みを大きくした場合でも、2層の蓄熱材11a,11a間に第1の多孔体11cを設けるとともにこの第1の多孔体11cにアンモニアを拡散するための内部流路11gを設けることにより、内周側の層を形成する蓄熱材11aにもアンモニアを迅速かつ均一に供給できるので、各層の蓄熱材11a,11aでの反応性の低下を抑制できる。特に、ヒータ11Bの場合、多孔体としては第1の多孔体11cだけを有する構成なので、ヒータ11Bの構成部材が少なく、ヒータ11Bの製造も容易となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、上記実施形態では触媒としてDOC、SCR及びASC、フィルタとしてDPFを備える排気ガス浄化システムに適用したが、他の構成の排気ガス浄化システムに適用してもよく、例えば、DOC、SCR、ASCのうちのいずれか一つ又は二つの触媒を備えない排気ガス浄化システム、DOC、SCR、ASC以外の触媒を備える排気ガス浄化システムに適用してもよい。また、車両もディーゼルエンジン車としたが、ガソリンエンジン車等にも適用できる。また、エンジンを駆動源とする船、発電機等の他の搭載対象物にも適用できる。
また、上記実施形態では加熱対象物としてDOCの上流側の熱交換器としたが、加熱対象物としては他のものでよく、例えば、DOC、SCR、ASCのうちのいずれかの触媒を加熱対象物としてもよい。
また、上記実施形態ではヒータを熱交換器の外周部の全周に設ける構成としたが、加熱対象物の外周部の一部分にだけヒータを設けてもよい。
また、上記実施形態で反応媒体をアンモニアとしたが、アルコール、水等の他の反応媒体でもよい。また、上記実施形態では反応媒体がアンモニアの場合の蓄熱材、吸着材の各材料をそれぞれ例示したが、化学蓄熱装置で用いられる反応媒体に応じて、蓄熱材、吸着材は適宜他の材料が用いられる。
また、上記実施形態では伝熱方向に沿って2層に分けて蓄熱材が配置されるヒータに適用したが、伝熱方向に沿って3層以上に分けて蓄熱材が配置されるヒータに適用してもよい。3層以上とした場合、各層の蓄熱材間に設けられる第1の多孔体が2個以上となる。この場合、伝熱方向に沿って設けられる隣り合う外側の第1の多孔体と内側の第1の多孔体との間に第4の多孔体を設け、第4の多孔体によって外側の第1の多孔体と内側の第1の多孔体とを接続する。外側の第1の多孔体にアンモニアが拡散すると、この第4の多孔体によってその内側の第1の多孔体まで反応媒体を迅速に拡散させることができ、その内側の層の蓄熱材にアンモニアを迅速に拡散させることができ、反応性を向上できる。
また、上記実施形態では第4の多孔体については一端部が第1の多孔体に接続され、熱交換器の外筒まで延在して、他端部が熱交換器の外筒に接続される構成としたが、熱交換器の外筒までは延在せずに、他端部が熱交換器の外筒に接続されない構成としてもよい。
また、上記実施形態では第1の多孔体と第3の多孔体との間に1箇所だけ第2の多孔体を設ける構成としたが、第1の多孔体と第3の多孔体との間に2箇所以上(例えば、周方向に分割されている蓄熱材間の全ての箇所)に第2の多孔体を設ける構成としてもよい。また、上記実施形態では第1の多孔体とアンモニア導入口との間に1箇所だけ内部流路を形成する構成としたが、第1の多孔体とアンモニア導入口との間に2箇所以上に内部流路を形成する構成としてもよい。また、上記実施の形態では第1の多孔体と熱交換器(加熱対象物)の外周面との間に1箇所だけ第4の多孔体を設ける構成としたが、第1の多孔体と熱交換器の外周面との間に2箇所以上(例えば、周方向に分割されている蓄熱材間の全ての箇所)に第4の多孔体を設ける構成としてもよい。
また、上記実施形態では両端部を折り曲げた多孔体シートを円筒状に丸めて、両端部の折り曲げ端部の側面を合わせることによって、第1の多孔体及び第4の多孔体あるいは第3の多孔体及び第2の多孔体を形成する例を示したが、各多孔体を他の方法で形成してもよい。例えば、第1の多孔体を形成する方法としては、外周側の層の蓄熱材と内周側の層の蓄熱材との間に多孔体材料を挟みこんでプレスし、第1の多孔体を挟んだ状態の2層の蓄熱材を形成する。
また、上記実施形態では第1の多孔体とアンモニア導入口(第3の多孔体)との間の内部流路の全域に第2の多孔体を設ける構成としたが、内部流路に部分的に第2の多孔体を設ける構成としてもよい。なお、内部流路を複数設ける場合には、1つの内部流路にだけ第2の多孔体を設けるとしてもよく、複数の内部流路のうちのいくつか、もしくは、全ての内部流路に第2の多孔体を設けるとしてもよい。
また、上記実施形態では、化学蓄熱装置を、加熱対象物としての円筒状の熱交換器に対してその周囲を取り囲むように環状の加熱器を配置して構成したが、これに限定されず、加熱対象物としての複数の波板状の熱交換部材と加熱器としての複数の扁平チューブ状の加熱室を交互に積層するものとして構成してもよい。この場合、各扁平チューブ状の加熱室内には、波板状の熱交換部材の積層方向に沿って複数の層状に分かれて蓄熱材が配置されており、それら蓄熱材の層の間には第1の多孔体が設けられる。そして、複数の加熱室の一端側には反応媒体導入口と各加熱室の第1の多孔体との間で反応媒体を流通可能に接続する内部流路としてのヘッダ部が設けられる。
なお、多孔体は、加熱器の反応媒体導入口から加熱器内に導入される反応媒体を拡散して蓄熱材に供給するだけでなく、蓄熱材から脱離する反応媒体を加熱器の反応媒体導入口へと導く反応媒体流通経路としても機能する。即ち、蓄熱材の層の間に設けられた第1の多孔体は、蓄熱材各部への反応媒体の均一な供給を可能とするだけでなく、蓄熱材各部から脱離する反応媒体を効率的に反応媒体導入口へ導くことができる。
1…排気ガス浄化システム、2…エンジン、3…排気管、4…熱交換器、4a…外筒、4b…ハニカム構造体、5…ディーゼル酸化触媒(DOC)、6…ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF)、7…選択還元触媒(SCR)、7a…インジェクタ、8…アンモニアスリップ触媒(ASC)、10…化学蓄熱装置、11(11A,11B)…ヒータ、11a(11a,11a)…蓄熱材、11b…ケーシング、11c…第1の多孔体、11d…第2の多孔体、11e…第3の多孔体、11f…第4の多孔体、11g…内部流路、12…ストレージ、13…接続管、13a…アンモニア導入口、14…バルブ、15…多孔体シート、15a…本体部、15b…折り曲げ端部。

Claims (5)

  1. 加熱対象物を加熱する化学蓄熱装置であって、
    反応媒体との化学反応による発熱と蓄熱による前記反応媒体の脱離とを可逆的に行う蓄熱材をケーシングの内部に有する加熱器と、
    前記反応媒体を貯蔵する貯蔵器と、
    前記加熱器と前記貯蔵器との間で前記反応媒体を流通させる接続管と、
    を備え、
    前記蓄熱材は、前記加熱対象物に熱を伝える伝熱方向に沿って複数の層状に分かれて配置され、
    前記加熱器は、前記接続管に接続される少なくとも一つの反応媒体導入口と、前記反応媒体導入口から導入される前記反応媒体を拡散して前記蓄熱材に供給する多孔体と、前記反応媒体を流通させる少なくとも一つの内部流路とを備え、
    前記多孔体は、前記伝熱方向に沿って複数の層状に配置された前記蓄熱材における隣り合う層の間に配置される第1の多孔体を有し、
    前記内部流路は、前記反応媒体導入口と前記第1の多孔体とを接続する、化学蓄熱装置。
  2. 前記多孔体は、前記内部流路に配置される第2の多孔体を有する、請求項1に記載の化学蓄熱装置。
  3. 前記多孔体は、前記反応媒体導入口が設けられた前記ケーシングの内周面と前記ケーシングに隣り合う前記蓄熱材の層との間に配置される第3の多孔体を有する、請求項1又は請求項2に記載の化学蓄熱装置。
  4. 前記多孔体は、一端部が前記第1の多孔体に接続されるとともに前記第1の多孔体から前記加熱対象物側に向かって延在する少なくとも一つの第4の多孔体を有する、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の化学蓄熱装置。
  5. 前記多孔体は、前記反応媒体との化学反応により膨張した前記蓄熱材から圧力を受ける状態において、気孔率が10%以上かつ平均孔径が150μm以下である、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の化学蓄熱装置。
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