JP2016030269A - スラブ鍛造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】スラブの幅方向圧下および厚み方向圧下を非対称金敷を用いて連続的に行う場合に、幅方向圧下時における幅反りの発生がなく、またポロシティ圧着能力や仕上がり形状が優れたスラブ鍛造方法を提供する。【解決手段】スラブに対し、上金敷と下金敷の幅が異なる非対称金敷を用いて連続的に幅方向圧下ついで厚み方向圧下を行うスラブ鍛造方法において、幅方向の圧下をスラブの長手方向の端部から行うものとし、その際、スラブ長手中央側における上下金敷の端部位置のずれ量をΔＬ、上下金敷のうちスラブとの接触長さが短い方の接触長さをＢとするとき、これらの比ΔＬ／Ｂを０．２０以下に制限する。【選択図】図１

Description

本発明は、スラブ鍛造方法に関し、特にスラブの幅／厚み比が大きいスラブを鍛造する場合であっても、スラブのポロシティ圧着能力を向上させると共に、仕上がり形状の向上を図ろうとするものである。

一般に、製品厚が厚く、スラブからの総圧下比が小さい場合、熱間圧延のみではスラブの板厚中心部に存在するポロシティ欠陥を適正に圧着するのが困難である。そのため、このような場合には、板厚中心部に加わるひずみの大きい鍛造プロセスが適用される。
特に、優れたポロシティ圧着能力が求められる場合には、金敷の幅が上下で異なるいわゆる非対称金敷を用いた鍛造方法が用いられる（例えば、特許文献１〜３）。ここで、金敷の幅とは、鍛造時、スラブの送り方向と平行な金敷の長さをいう（図１のｌ₁、ｌ₂）。

特許第４５４３９８０号公報 特開２０１１−１４００４３号公報 特許第２８５４２１５号公報

通常、スラブの幅と最終製品の幅は異なるため、鍛造時に、まず幅方向の圧下を行って幅サイズを整えたのち、厚み方向の圧下を行う。かような鍛造において、非対称金敷を用いてスラブの幅方向圧下を行う、すなわちスラブに対し上下金敷の接触長さや接触位置が異なる状態で幅圧下を行うと、変形が上下非対称となって幅反りが発生する。

上記したような鍛造プロセスの後、幅反りが発生した状態でスラブ圧延を行うと、蛇行やさらなる形状不良を誘発し、圧延不良や歩留り低下を引き起こす。

また、通常、金敷の幅はスラブ長さに対して非常に短いため、鍛造時に幅反りの矯正を行うのは極めて困難であり、またたとえ矯正を行えたとしてもその場合は鍛造能率が大幅に低下する。

上記の問題を解決する方法として、上下非対称金敷を用いて行う圧下は厚み方向の圧下のみに限り、幅方向の圧下は上下対称の金敷を用いて行う方法が考えられるが、この場合には、幅方向圧下と厚み方向圧下とで金敷の組み替えが必要となり、やはり鍛造能率の著しい低下を招く。

本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、スラブの幅方向圧下および厚み方向圧下を非対称金敷を用いて連続的に行う場合であっても、幅方向圧下時における幅反りの発生を抑制して、鍛造能率の低下を招くことなしに、ポロシティ圧着能力および仕上がり形状を向上させたスラブ鍛造方法を提供することを目的とする。

さて、発明者等は、上記問題を解決すべく、幅方向圧下時における上下金敷のスラブに対する接触状態に着目し、鋭意検討を行った結果、以下に述べる知見を得た。
スラブの幅方向圧下時における幅反りの発生原因は、上下金敷の圧下位置のずれあるいは上下金敷の接触長の違いに起因した上下非対称変形であることが判明した。

そこで、幅方向の圧下をスラブの長手方向端部から行い、なおかつ上下金敷の端部位置（スラブ長手中央側）のずれを、上下金敷の接触長さのうち短い方の接触長さに対して一定値以下に制御したところ、上下非対称変形が抑制されて幅反りが低減されることの知見を得た。
本発明は、上記の知見を基に、さらに検討を加えた末に開発されたものである。

すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
１．スラブに対し、上金敷と下金敷の幅が異なる非対称金敷を用いて連続的に幅方向ついで厚み方向に圧下を加えることからなるスラブ鍛造方法において、
上記の幅方向の圧下をスラブの長手方向の端部から行うものとし、その際、スラブ長手中央側における上下金敷の端部位置のずれ量をΔＬ、上下金敷のうちスラブとの接触長さが短い方の接触長さをＢとするとき、これらの比ΔＬ／Ｂを０．２０以下に制限することを特徴とするスラブ鍛造方法。

２．前記スラブの幅／厚み比が２．０以上であることを特徴とする前記１に記載のスラブ鍛造方法。

本発明によれば、ポロシティ圧着能力の高い上下非対称金敷を用いた鍛造を、厚み方向圧下のみならず幅方向圧下に適用した場合においても、鍛造後のスラブの仕上がり形状を向上させることができ、産業上極めて有用である。

上金敷と下金敷の幅が異なる非対称金敷を用いてスラブの幅方向圧下を行う状態を示した図である。 スラブの幅反りの評価要領を示した図である。

以下、図１に基づき、本発明を具体的に説明する。
図１は、上金敷と下金敷の幅が異なる非対称金敷を用いてスラブの幅方向圧下を行う状態を示したものである。図中、符号１が上金敷、２が下金敷、３がスラブであり、この例では、上金敷１が幅が短い方の金敷Ｍ₁を、一方下金敷２が幅が長い方の金敷Ｍ₂を示している。なお、図中、ｌ₁で金敷Ｍ₁の幅を、ｌ₂で金敷Ｍ₂の幅を示す。また、Ｂ₁は金敷Ｍ₁のスラブに対する接触長さを、Ｂ₂は金敷Ｍ₂のスラブに対する接触長さを示している。従って、この例で、上下金敷のうちスラブとの接触長さが短い方の接触長さＢとはＢ₁を指す。さらに、ΔＬはスラブ長手中央側における上下金敷の端部位置のずれ量を示す。

さて、図１に示したところにおいて、幅方向の圧下をスラブの長手方向端部から行うに際し、上下金敷の端部位置（スラブ長手中央側）のずれ量ΔＬを次第に小さくしていった。その結果、このΔＬを小さくすることにより、具体的にはΔＬを上下金敷のうちスラブに対する接触長さが短い方の接触長さＢ（この例でＢ₁）に対して０．２０以下とした場合に、上下非対称変形が効果的に抑制されて幅反りが軽減されることが判明した。より好ましいΔＬの範囲は、接触長さが短い方の接触長さＢに対して０．１０以下である。

また、この際、接触長さが短い方の金敷Ｍ₁の接触長さＢ₁は、金敷Ｍ₁の幅ｌ₁の（０．６０〜１．００）倍に設定することが好ましい。Ｂ₁がｌ₁の０．６０倍に満たないと、バス数が増大して鍛造能率の低下を招くからである。より好適なＢ₁／ｌ₁比は０．８０〜０．９５の範囲である。

上述したように、たとえ上下金敷の幅が異なる、さらには上下金敷のセンター位置がずれた状態であっても、スラブに対する幅方向の圧下を、好ましくは適正な接触長さの下で、なおかつ上下金敷の端部位置（スラブ長手中央側）のずれ量を所定の範囲に制御して行うことにより、上下金敷による変形位置と面圧が同等となって、圧下時の幅反りを効果的に抑制できることが究明されたのである。

なお、図１では、上下金敷の端部位置のずれ量ΔＬは、幅の短い上金敷Ｍ₁の接触長さＢ₁の方が、幅の長い下金敷Ｍ₂の接触長さＢ₂よりも短い場合について示したが、接触長さの関係が逆の場合、すなわち下金敷Ｍ₂の接触長さＢ₂の方が上金敷Ｍ₁の接触長さＢ₁よりも短い場合であっても、同様の効果を得ることができる。

そして、本発明は、従来、幅方向圧下の際に幅反りの発生が懸念された幅／厚み比が２．０以上のスラブを適用して特に好適である。

なお、上下金敷の端部位置のずれ量を調整するには、上下各金敷位置をスライドさせるといった方法が挙げられる。
また、本発明は、圧下されるスラブの成分組成の影響を受けないので、どのような成分組成のスラブにも適用可能である。

表１に示す種々の条件でスラブの幅方向圧下を行ったときの圧下後のスラブの幅反り量について調査した結果を、表１に併記する。
なお、スラブの幅反り量は、図２に示すように、幅方向圧下後のスラブの長さをＬ、スラブの両幅端部を結んだ線から反りの最深部までの距離をΔＷ_maxとした場合、ΔＷ_max／Ｌ×１００（％）で評価するものとし、この値が０．８％以下となる場合を合格とした。

同表に示したとおり、本発明に従う条件でスラブの幅方向圧下を行ったＮｏ．１〜７はいずれも、上下金敷のスラブ長手中央側における端部位置のずれ量が金敷接触長さに対して十分に小さいために、生じる幅反り量は小さかった。
これに対し、本発明を逸脱した条件で幅方向圧下を行ったＮｏ．８〜１３は、上下金敷のスラブ長手中央側における端部位置のずれ量が大きいため、上下非対称の変形が生じた結果、幅反りが大きくなっている。

１ 上金敷
２ 下金敷
３ スラブ

Claims (2)

1. スラブに対し、上金敷と下金敷の幅が異なる非対称金敷を用いて、連続的に幅方向ついで厚み方向に圧下を加えることからなるスラブ鍛造方法において、
   上記の幅方向の圧下をスラブの長手方向の端部から行うものとし、その際、スラブ長手中央側における上下金敷の端部位置のずれ量をΔＬ、上下金敷のうちスラブとの接触長さが短い方の接触長さをＢとするとき、これらの比ΔＬ／Ｂを０．２０以下に制限することを特徴とするスラブ鍛造方法。
2. 前記スラブの幅／厚み比が２．０以上であることを特徴とする請求項１に記載のスラブ鍛造方法。

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