JP2016030072A - マイクロニードルアレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】シート部及び針部から構成されるマクロニードルアレイであって、乾燥時のシート部の割れ性が改善されたマイクロニードルアレイを提供する。【解決手段】シート部116、及び、シート部の上面に存在する複数の針部112、を有するマイクロニードルアレイであって、針部が水溶性高分子及び薬物を含み、シート部が水溶性高分子及び糖アルコールを含むマイクロニードルアレイ。針部が、水溶性高分子、薬物120、並びに、単糖及び二糖から選ばれる少なくとも一種の糖、を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、マイクロニードルアレイに関する。
皮膚、粘膜などの生体表面に薬物を投与する方法としては、液状物質又は粉状物質を生体表面に付着させる方法がある。さらに、適量の薬物を投与し、かつ十分な薬効を達成するための薬物の投与方法として、薬物を含有する高アスペクト比のマイクロニードル(針状凸部)が形成された経皮吸収製剤を用い、マイクロニードルを皮膚内に挿入することにより、薬物を注入する方法が行われている。例えば、生体内溶解性を有する物質を基材とした自己溶解型マイクロニードルアレイが報告されている。自己溶解型マイクロニードルアレイにおいては、その基材に薬物を保持させておき、マイクロニードルが皮膚に挿入された際に基材が自己溶解することにより、薬物を皮内に投与することができる。
特許文献1には、水分含有量が0.5w/w%以下の糖を調製する工程;調製した糖に薬剤を混合する工程;混合した薬剤と糖を加熱混練する工程;加熱混練した上記材料を加熱成型する工程を少なくとも含む、経皮的に薬剤を投与するためのマイクロニードルの調製方法が記載され、糖として糖アルコールを使用することが記載されている。
特許文献2には、水溶性高分子と、グルコース、フルクトース、シュクロース、ラクトース、トレハロースからなる群から選ばれた1種若しくは複数種の糖類との混合物をマイクロニードル素材とし、マイクロニードル刺入後30分以内に溶解することを特徴とするマイクロニードルが記載されている。
特許文献3には、液供給装置から薬物を含む高分子溶解液をモールドに供給し、針状凹部の上に位置調整されたノズルから、ノズルとモールドの表面とを接触させた状態で、針状凹部に薬物を含む高分子溶解液を充填する充填工程と、ノズルとモールドの表面とを接触させた状態で、液供給装置をモールドに対して相対的に移動させる移動工程とを繰り返すことで、2次元配列された針状凹部に上記薬物を含む高分子溶解液を充填する工程と、薬物を含む高分子溶解液から構成される薬剤を含む層、及び薬剤を含まない溶解液から構成される薬剤を含まない層で構成され針状凹部の反転形状である針状凸部が表面に形成されたポリマーシートを形成する工程と、ポリマーシートを上記モールドから剥離する工程とを備える経皮吸収シートの製造方法が記載されている。
また、特許文献4には、基板側面の上端部に、皮膚内可溶材からなる微細カンチレバーを1又は2以上有した構造であるマイクロインプリメントにおいて、上記カンチレバーが略錐体の片割れ形状であり、上記カンチレバーの微細先端部の長幅が0.1μm〜100μmであり、上記カンチレバーの先端から末端までの長さが50μm〜5mmであることを特徴とする皮膚表面内挿入用マイクロインプリメントが記載されている。
特許4925039号公報 特許5472770号公報 国際公開WO2014/077242号 特開2009−232873号公報
液状物質又は粉状物質である薬物を生体表面に付着させる方法においては、薬物の付着領域が皮膚の表面に限られていたため、発汗、異物の接触などによって、付着している薬物が除去される場合があり、適量の薬物を投与することは困難である。また、このような薬物の拡散による浸透を利用した方法では、薬物を皮膚の奥深くに浸透させることが難しく、充分な薬効を得ることは困難であった。
一方、固形の薬物製剤において、製剤中に残存する水分量は、長期の保存安定性に大きな影響を与える。そのため、固形の薬物製剤においては、乾燥剤を同梱し、低湿を維持することが一般に行われている。水溶性高分子を基材とした自己溶解型マイクロニードルアレイの場合も、薬物を基材中に内包させるため、長期の保存安定性の観点から、残存する水分量を低減させることが好ましい。しかし、コンドロイチン硫酸及びデキストランなどの水溶性高分子では、水分含水量の低下に伴い、ひび割れが生じやすいという問題がある。自己溶解型マイクロニードルにおいては、特に針状凸部を担持するシート部にひび割れが生じやすい傾向がある。
特許文献1の実施例では、糖アルコールからなる基材を用い、薬剤との混合及び成形加工を120〜150℃の高温で行うことによってマイクロニードルを調製している。しかし、特許文献1に記載のマイクロニードルは、糖アルコールのみでマイクロニードルを成形しているため、柔軟な針が形成され、容易に折れることがある。また、特許文献1に記載のマイクロニードルは一層のみからなるため、薬剤の利用効率が低下することがある。特許文献2には、水溶性高分子と単糖又は二糖を混合した基材でマイクロニードルを作製し、ニードル先端部を薬剤水溶液中に浸漬させることによって、薬剤をニードル先端部に局在化させたマイクロニードルが記載されている。 しかし、特許文献2のマイクロニードルでは、単糖又は二糖がシート部へ添加されているため、シート部の割れを抑制すること難しく、水分量の低下と共に割れが生じることがある。
特許文献3には、水溶性高分子のシート部と薬剤を含有する針部とからなる二層構成の経皮吸収シートが記載されているが、シート部に糖アルコールを添加させることは記載されていない。特許文献4は、基板側面の上端部に、皮膚内可溶材からなる微細カンチレバーを1又は2以上有した構造であるマイクロインプリメントに関するものであり、シート部と針部から構成され、シート部の上面に複数の針部が存在しているマイクロニードルアレイとは構成が異なる。
本発明は、シート部及び針部から構成されるマクロニードルアレイであって、乾燥時のシート部の割れ性が改善されたマイクロニードルアレイを提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シート部、及び、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイにおいて、シート部に糖アルコールを含有させることによって、乾燥時のシート部の割れ性を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) シート部、及び、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイであって、針部が水溶性高分子及び薬物を含み、シート部が水溶性高分子及び糖アルコールを含むマイクロニードルアレイ。
(2) シート部における水溶性高分子及び糖アルコールの含有量の質量比率が10:0.5〜10:3の範囲内である、(1)に記載のマイクロニードルアレイ。
(3) シート部に含まれる糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールから選択される一種以上である、(1)又は(2)に記載のマイクロニードルアレイ。
(4) 針部が、水溶性高分子、薬物、並びに、単糖及び二糖から選ばれる少なくとも一種の糖、を含む、(1)から(3)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイ。
(5) 針部が、水溶性高分子、薬物及びスクロースを含む、(1)から(4)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイ。
(6) 薬物がホルモン又はワクチンである、(1)から(5)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイ。
(7) 薬物が成長ホルモンである、(1)から(6)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイ。
(8) マイクロニードルの針部が、円錐状又は多角錐状の形状を有する、(1)から(7)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイ。
(9) 乾燥剤と一緒に密閉保存されている、(1)から(8)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイ。
本発明によれば、シート部、及び、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイにおいて、乾燥時のシート部の割れ性を改善することができる。
図1Aは、円錐状のマイクロニードルの斜視図であり、図1Bは、角錐状のマイクロニードルの斜視図であり、図1Cは、円錐状及び角錐状のマイクロニードルの断面図である。 図2は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。 図3は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。 図4は、図2、3に示すマイクロニードルの断面図である。 図5は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。 図6は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。 図7は、図5、6に示すマイクロニードルの断面図である。 図8A、Bは、別の形状のマイクロニードルの断面図である。 図9A〜Cは、モールドの製造方法の工程図である。 図10Aは、枠を設けたモールドの正面図であり、図10Bは、枠を設けたモールドの斜視図であり、図10Cは、枠を設けたモールドの正面図であり、図10Dは、枠を設けたモールドの斜視図である。 図11は、図10で製造されたモールドの拡大図である。 図12は、別の形態のモールドを示す断面図である。 図13A〜Cは、薬物を含む高分子溶解液をモールドに充填する工程を示す概略図である。 図14は、ノズルの先端を示す斜視図である。 図15は、別のノズルの先端を示す斜視図である。 図16は、充填中のノズルの先端とモールドとの部分拡大図である。 図17は、移動中のノズルの先端とモールドとの部分拡大図である。 図18は、ノズル内の液圧と薬物を含む高分子溶解液の供給との関係を示す説明図である。 図19A〜Cは、マイクロニードルアレイの形成工程を示す説明図である。 図20A〜Dは、別のマイクロニードルアレイの形成工程を示す説明図である。 図21A〜Dは、別のマイクロニードルアレイの形成工程を示す説明図である。 図22は、剥離工程を示す説明図である。 図23は、別の剥離工程を示す説明図である。 図24は、マイクロニードルアレイを示す説明図である。 図25の(A)及び(B)は、原版の平面図及び側面図である。 図26は、実施例で使用した充填装置の模式図である。 図27は、実施例13〜16及び比較例2で作製したマイクロニードルの安定性を評価した結果を示す。横軸は、実施例と比較例の番号を示し、縦軸はダイマーの発生率を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本明細書において、「所定量の薬物を含む」とは、体表に穿刺する際に、薬効が発揮される量の薬物を含むことを意味する。「所定の量の薬物を含まない」とは、薬効が発揮される量の薬物を含んでいないことを意味し、薬物の量の範囲が、薬物を全く含まない場合から、薬効が発揮されない量までの範囲を含む。
以下、「所定量の薬物を含む」を「薬物を含む」と、「所定量の薬物を含まない」を「薬物を含まない」と称する。
[マイクロニードルアレイの構成]
本発明のマイクロニードルアレイは、シート部、及び、シート部の上面に存在する複数針部、を有するマイクロニードルアレイであって、針部が水溶性高分子及び薬物を含み、シート部が水溶性高分子及び糖アルコールを含むマイクロニードルアレイである。
本発明において複数とは、1つ以上のことを意味する。
本発明のマイクロニードルアレイは、薬物を効率的に皮膚中に投与するために、シート部及び針部から構成され、針部に薬物を担持させている。
また、本発明においては、シート部に糖アルコールを添加することによって、乾燥時のシート部の割れ性を改良している。本発明においては、シート部に糖アルコールを添加することで、シート部の割れ性の解消と、皮膚への穿刺性が両立されたマクロニードルアレイを提供することが可能である。さらに本発明においては、シート部に糖アルコールを添加することで薬物の安定性の向上を図ることができる。
本発明のマイクロニードルアレイとは、シート部の上面に、複数の針部がアレイ状に配置されているデバイスである。針部は、シート部の上面に、所定の密度で配置されていることが好ましい。
シート部は、針部を支持するための土台であり、図1〜8に示すシート部116のような平面状の形状を有する。このとき、シート部の上面とは、面上に複数の針部がアレイ状に配置された面を指す。
シート部の面積は、特に限定されないが、0.005〜1000mmであることが好ましく、0.05〜500mmであることがより好ましく、0.1〜400mmであることがさらに好ましい。
シート部の厚さは、針部と接している面と、反対側の面の間の距離で表す。シート部の厚さとしては、1μm以上2000μm以下であることが好ましく、3μm以上1500μm以下であることがより好ましく、5μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
シート部は、水溶性高分子及び糖アルコールを含む。シート部は、水溶性高分子及び糖アルコールから構成されていてもよいし、それ以外の添加物を含んでいてもよい。なお、シート部には薬物を含まないことが好ましい。
シート部に含まれる水溶性高分子としては、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、デキストラン、デキストリン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アラビアゴム等)、タンパク質(例えば、ゼラチンなど)、又は生分解性高分子(例えば、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体など)を挙げることができる。上記の中でも多糖類が好ましく、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ及びコンドロイチン硫酸が特に好ましい。
糖アルコールとは、アルドース又はケトースのカルボニル基が還元されて生成する多価アルコールである。糖アルコールとしては、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、エリトリトール、ラクチトール、マルチトール及びキシリトールなどが挙げられ、これらの2種以上を使用してもよい。好ましくは、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールから選択される一種以上を使用することができる。より好ましくは、マンニトール又はソルビトールであり、特に好ましくはソルビトールである。なお、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコールは、D体でもL体でもよく、好ましくはD体であり、マンニトール又はソルビトールとしては、D−マンニトール又はD−ソルビトールを使用することができる。
シート部における水溶性高分子及び糖アルコールの含有量の質量比率は、好ましくは10:0.5〜10:10であり、より好ましくは10:0.5〜10:7であり、さらに好ましくは10:0.5〜10:5であり、よりさらに好ましくは10:0.5〜10:4であり、特に好ましくは10:0.5〜10:3である。
シート部における水溶性高分子と糖アルコールの含有量の質量比率は、マイクロニードルアレイの針部を取り除いた後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、分離し、測定することができる。
マイクロニードルアレイは、シート部の上面に、アレイ状に配置された複数の針部から構成される。針部は、先端を有する凸状構造物であって、鋭い先端を有する針形状に限定されるものではなく、先の尖っていない形状でもよい。
針部の形状の例としては、円錐状、多角錐状(四角錐状など)、又は紡錘状などが挙げられる。例えば、図1〜8に示す針部112のような形状を有し、針部の全体の形状が、円錐状又は多角錐状(四角錐状など)であってもよいし、側面のなす角度を連続的に変化させた構造であってもよい。また、針部の側面の傾きが非連続的に変化する、二層又はそれ以上の多層構造をとることもできる。
本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に適用した場合、針部が皮膚に挿入され、シート部の上面又はその一部が皮膚に接するようになることが好ましい。
針部の高さ(長さ)は、針部の先端からシート部へ下ろした垂線の長さで表す。針部の高さ(長さ)は特に限定されないが、好ましくは50μm以上3000μm以下であり、より好ましくは100μm以上1500μm以下であり、より好ましくは100μm以上1000μm以下である。針部の長さが50μm以上であれば、薬物の経皮投与を行うことができ、また針部の長さが3000μm以下とするのは、針部が神経に接触することによる痛みの発生を防止し、また出血を回避できるため、好ましい。
針部とシート部の界面を基底部と呼ぶ。1つの針部の基底における最も遠い点間の距離が、100μm以上1500μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下であることがより好ましく、100μm以上700μm以下であることがさらに好ましい。
針部は、1つのマイクロニードルアレイにあたり1〜2000本配置されることが好ましく、3〜1000本配置されることがより好ましく、5〜500本配置されることがさらに好ましい。1つのマイクロニードルアレイあたり2本の針部を含む場合、針部の間隔は、針部の先端からシート部へ下ろした垂線の足の間の距離で表す。1つのマイクロニードルあたり3本以上の針部を含む場合、配列される針部の間隔は、全ての針部においてそれぞれ最も近接した針部に対して先端からシート部へ下ろした垂線の足の間の距離を求め、その平均値で表す。針部の間隔は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.2mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
以下、添付の図面に従って、本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1〜図8は、マイクロニードルアレイの一部拡大図であるマイクロニードル110を示している。本発明のマイクロニードルアレイは、シート部116の表面に複数個の針部112が形成されることで、構成される(図においては、シート部116上に1つの針部112のみを表示し、これをマイクロニードル110と称する)。
図1Aにおいて、針部112は円錐状の形状を有し、図1Bにおいて、針部112は四角錐状の形状を有している。針部は単層構造であってもよく、多層構造であってもよいが、図1Cに示すように、薬物を含む層120、及び、薬物を含まない層122、により構成されることが好ましい。図1Cは、図1A、図1Bに示されるマイクロニードル110の断面図を示す。薬物を含む層120をマイクロニードル110の先端に形成することにより、皮膚内に効率よく薬物を送達することができる。図1Cにおいて、Hは針部112の高さを、Wは針部112の直径(幅)を、Tはシート部116の高さ(厚み)を示す。
図2、図3は、シート部116の表面に針部第1層112A、及び、針部第2層112Bが形成された、別の形状を有するマイクロニードル110を示している。図2において、針部第2層112Bは、円錐台の形状を有し、針部第1層112Aは円錐の形状を有している。また、図3において、針部第2層112Bは、四角錐台の形状を有し、針部第1層112Aは四角錐の形状を有している。ただし、針部の形状は、これらの形状に限定されるものではない。
図4は、図2、図3に示されるマイクロニードル110の断面図である。図4においても、図1Cと同様に、薬物を含む層120、及び、薬物を含まない層122、により構成されることが好ましい。
図4において、Hは針部112の高さを、Wは基底部の直径(幅)を示す。
また、図4において、角度αとは針部第1層112Aにおける側面のなす角であり、角度βとは針部第2層112Bを、針部先端方向に延長した際の、交点のなす角である。
皮膚に対するマイクロニードル110の挿入しやすさの観点から、角度βは角度α以上であることが好ましい。また、角度βを角度αより大きい角度で設定することで、針部全体の体積が大きくなり、マイクロニードルアレイの製造時において、より多くの薬物を針部の上端に集中させることができる。
本発明のマイクロニードルアレイは、図1Cのマイクロニードル110の形状より、図4のマイクロニードル110の形状とすることが好ましい。このような構造をとることで、針部全体の体積が大きくなり、マイクロニードルアレイの製造時において、より多くの薬物を針部の上端に集中させることができる。
図5、図6は、さらに別の形状を有するマイクロニードル110を示している。
図5に示される針部第1層112Aは円錐状の形状を有し、針部第2層112Bは円柱状の形状を有している。図6に示される針部第1層112Aは四角錐状の形状を有し、針部第2層112Bは四角柱状の形状を有している。ただし、針部の形状は、これらの形状に限定されるものではない。
図7は、図5、図6に示されるマイクロニードル110の断面図である。図7においても、図1C及び図4と同様に、薬物を含む層120、及び、薬物を含まない層122、により構成されることが好ましい。
図7において、Hは針部112の高さを、Wは基底部の直径(幅)を示す。
また、図7において角度αとは針部第1層112Aにおける側面のなす角であり、角度βとは針部第3層112Cを、針部先端方向に延長した際の、交点のなす角である
皮膚に対するマイクロニードル110の挿入のしやすさの観点から、角度βは角度α以上であることが好ましい。また、角度βを角度αより大きい角度で設定することで、針部全体の体積が大きくなり、マイクロニードルアレイの製造時において、より多くの薬物を針部の上端に集中させることができる。
図8A及び図8Bは、さらに別の形状を有するマイクロニードル110の断面図である。図8Aでは、図7に示されるマイクロニードル110の針部第3層112Cを、二層構成にしたようなマイクロニードル110を示し、図8Bでは、半球を潰したような形状の針部第3層112Cを有するマイクロニードル110を示している。
図8A及びBにおいて、Hは針部112の高さを示し、また、Wは基底部の直径(幅)を示す。
図8において、角度αとは針部第1層112Aにおける側面のなす角であり、角度βとは針部第3層112Cを針部先端方向に延長した際の、交点のなす角である。
皮膚に対するマイクロニードル110の挿入のしやすさの観点から、角度βは角度α以上であることが好ましい。また、角度βを角度αより大きい角度で設定することで、針部全体の体積が大きくなり、マイクロニードルアレイの製造時において、より多くの薬物を針部の上端に集中させることができる。
本発明のマイクロニードルアレイにおいて、針部は、横列について1mm当たり約0.1〜10本の間隔で配置されていることが好ましい。マイクロニードルアレイは、1cm当たり1〜10000本のマイクロニードルを有することがより好ましい。マイクロニードルの密度を1本/cm以上とすることにより効率良く皮膚を穿孔することができ、またマイクロニードルの密度を10000本/cm以下とすることにより、マイクロニードルアレイが十分に穿刺することが可能になる。針部の密度は、好ましくは10〜5000本/cmであり、さらに好ましくは25〜1000本/cmであり、特に好ましくは25〜400本/cmである。
針部は、水溶性高分子及び薬物を含む。
針部が皮膚内に残留しても人体に支障が生じないように、針部は生体溶解性物質で形成されることが好ましい。
針部に含まれる水溶性高分子としては、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、デキストラン、デキストリン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アラビアゴム等)、タンパク質(例えば、ゼラチンなど)、又は生分解性高分子(例えば、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体など)を挙げることができる。上記の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。上記の中でも多糖類が好ましく、ヒドロキシエチルスターチ、デキストラン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びポリエチレングリコールが特に好ましい。針部に含まれる水溶性高分子は、シート部に含まれる水溶性高分子と同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、針部が二層又それ以上の多層構造をとる場合は、針部のそれぞれの層に含まれる水溶性高分子が同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
針部に含まれる水溶性高分子は、針部に含ませる薬物と相互作用しないものを用いることが好ましい。例えば、タンパク質を薬物として用いる場合、荷電性の高分子を混合すると、タンパク質と高分子が静電相互作用によって会合体を形成し凝集、沈殿してしまう。従って、薬物に荷電性の物質を用いる場合にはヒドロキシエチルスターチ、デキストラン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等の電荷を持たない水溶性高分子を用いることが好ましい。
針部は、さらに単糖及び二糖から選ばれる少なくとも一種の糖を含んでいてもよい。針部に含めることができる糖としては、グルコース、フルクトース、エリトロール、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラミノース、アロース、ホカロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、ソルボース、タガース又はガラクトースなどの単糖、又はスクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハース又はセロビオースなどの二糖を挙げることができる。上記の中でも、スクロースが好ましい。
薬物とは、人体に対して作用を及ぼす効能を有する物質である。薬物は、ペプチド又はその誘導体、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、又は化粧品成分から選択することが好ましい。薬物の分子量は特には限定されないが、タンパク質の場合には分子量500以上のものが好ましい。ペプチド又はその誘導体及びタンパク質としては、例えば、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、hPTH(1→34)、インスリン、エキセンディン、セクレチン、オキシトシン、アンギオテンシン、β−エンドルフィン、グルカゴン、バソプレッシン、ソマトスタチン、ガストリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、エンケファリン、ニューロテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ブラジキニン、サブスタンスP、ダイノルフィン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、インターフェロン、インターロイキン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、グルタチオンパーオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、デスモプレシン、ソマトメジン、エンドセリン、及びこれらの塩等が挙げられる。ワクチンとしては、インフルエンザ抗原、HBs抗原(B型肝炎ウイルス表面抗原)、HBe抗原(Hepatitis Be抗原)、BCG抗原、麻疹抗原、風疹抗原、水痘抗原、黄熱抗原、帯状疱疹抗原、ロタウイルス抗原、Hib(インフルエンザ桿菌b型)抗原、狂犬病抗原、コレラ抗原、ジフテリア抗原、百日咳抗原、破傷風抗原、不活化ポリオ抗原、日本脳炎抗原、ヒトパピローマ抗原、あるいはこれらの2〜4種の混合抗原等が挙げられる。上記の中でも、薬物としては、ホルモン又はワクチンが好ましい。ホルモンとしては成長ホルモンが特に好ましい。
針部における薬物の含有量は、特に限定されないが、針部における水溶性高分子の質量に対して、好ましくは0.01〜50質量%であり、より好ましくは0.02〜40質量%であり、さらに好ましくは0.02〜30質量%である。
本発明のマイクロニードルアレイは、乾燥剤と一緒に密閉保存されている形態で供給することができる。乾燥剤としては、公知の乾燥剤(例えば、シリカゲル、生石灰、塩化カルシウム、シリカアルミナ、シート状乾燥剤など)を使用することができる。
[マイクロニードルアレイの製造方法]
本発明のマイクロニードルアレイは、例えば、特開2013−153866号公報又は国際公開WO2014/077242号公報に記載の方法に準じて以下の方法により製造することができる。
(モールドの作製)
図9Aから9Cは、モールド(型)の作製の工程図である。図9Aに示すように、モールドを作製するための原版を先ず作製する。この原版11の作製方法は2種類ある。
1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行う。そして、RIE(リアクティブイオンエッチング)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に円錐の形状部(凸部)12のアレイを作製する。尚、原版11の表面に円錐の形状部を形成するようにRIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、円錐の形状を形成することが可能である。2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に四角錘などの形状部12のアレイを形成する方法がある。
次に、モールドの作製を行う。具体的には、図9Bに示すように、原版11よりモールド13を作製する。方法としては以下の4つの方法が考えられる。
1番目の方法は、原版11にPDMS(ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウコーニング社製のシルガード184(登録商標))に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11より剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV(Ultraviolet)硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11より剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液を剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11より剥離する方法である。4番目の方法は、Ni電鋳により反転品を作成する方法である。
これにより、原版11の円錐形又は角錐形の反転形状である針状凹部15が2次元配列で配列されたモールド13が作製される。このようにして作製されたモールド13を図3Cに示す。
次に、図9Cで製造されたモールド13に枠14を設置する。図10Aから10Dは枠14を設置した図である。図10A及び10Bは、それぞれ、モールド13の周囲に枠を設けた場合の平面図及び斜視図である。図10C及び10Dは、それぞれ、複数のモールド13をつなぎ合わせ、型の内部にも枠14を設けた場合の平面図及び斜視図である。枠14を設けることにより、機能性膜を所望の膜厚に形成する際、水溶性高分子の溶解液(以下、「高分子溶解液」ともいう)がモールド13の外に流れることを防止することができる。
このとき、モールド13と枠14との段差が50μm以上10mm以下とすることが好ましい。また、図10Aから10Dの型は、モールド13と枠14を分離できる構成であるが、一体型で構成することも可能である。図10C及び10Dでは、複数のモールド13を基板17上に、及び複数のモールド13同士を、接着剤を用いてつなぎ合わせる。そして、モールド13の側面周囲、及び内部に枠14を設置する。
図11は他の好ましいモールド13の態様を示したものである。針状凹部15は、モールド13の表面から深さ方向に狭くなるテーパ状の入口部15Aと、深さ方向に先細りの先端凹部15Bとを備えている。入口部15Aをテーパ形状とすることで、高分子溶解液を針状凹部15に充填しやすくなる。
図12は、マイクロニードルアレイの製造を行う上で、より好ましいモールド複合体18の態様を示したものである。図12中、(A)部はモールド複合体18を示す。図12中、(B)部は、(A)部のうち、円で囲まれた部分の拡大図である。
図12の(A)部に示すように、モールド複合体18は、針状凹部15の先端(底)に空気抜き孔15Cが形成されたモールド13、及び、モールド13の裏面に貼り合わされ、気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート19と、を備える。空気抜き孔15Cは、モールド13の裏面を貫通する貫通孔として形成される。ここで、モールド13の裏面とは、空気抜き孔15Cが形成された側の面を言う。これにより、針状凹部15の先端は空気抜き孔15C、及び気体透過シート19を介して大気と連通する。
このようなモールド複合体18を使用することで、針状凹部15に充填される高分子溶解液は透過せず、針状凹部15に存在する空気のみを針状凹部15から追い出すことができる。これにより、針状凹部15の形状を高分子に転写する転写性が良くなり、よりシャープな針部112を形成することができる。
空気抜き孔15Cの径D(直径)としては、1〜50μmの範囲が好ましい。空気抜き孔15Cの径Dが1μm未満の場合、空気抜き孔としての役目を十分に果たせない。また、空気抜き孔15Cの径Dが50μmを超える場合、成形されたマイクロニードル10の先端部のシャープ性が損なわれる。
気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート19としては、例えば気体透過性フィルム(住友電気工業社製、ポアフロン(登録商標)、FP−010)を好適に使用できる。
モールド13に用いる材料としては、弾性素材又は金属製素材を用いることができ、弾性素材が好ましく、気体透過性の高い素材が更に好ましい。気体透過性の代表である酸素透過性は、1×10−12(mL/s・m・Pa)以上が好ましく、1×10−10(mL/s・m・Pa)以上がさらに好ましい。気体透過性を上記範囲とすることにより、モールド13の凹部に存在する空気を型側から追い出すことができ、欠陥の少ないマイクロニードルアレイを製造することができる。このような材料として、具体的には、シリコーン樹脂(例えば、ダウコーニング社製のシルガード184(登録商標)、信越化学工業株式会社のKE−1310ST(品番))、UV硬化樹脂、プラスチック樹脂(例えば、ポリスチレン、PMMA(ポリメチルメタクリレート))を溶融、又は溶剤に溶解させたものなどを挙げることができる。これらの中でもシリコーンゴム系の素材は、繰り返し加圧による転写に耐久性があり、かつ素材との剥離性がよいため好ましい。また、金属製素材としては、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ir、Tr、Fe、Co、MgO、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、α−酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム、ステンレス(例えば、ボーラー・ウッデホルム社(Bohler-Uddeholm KK)のスタバックス材(STAVAX)(商標))などやその合金を挙げることができる。枠14の材質としては、モールド13の材質と同様の材質のものを用いることができる。
(高分子溶解液)
高分子としては、本明細書中上記した水溶性高分子を使用する。
本発明においては、針部を形成するための薬物を含む高分子溶解液、及び、シート部を形成するための糖アルコールを含む高分子溶解液、を準備する。
溶解液中の水溶性高分子の濃度は、使用する水溶性高分子の種類によっても異なるが、一般的には1〜50質量%であることが好ましい。また、溶解に用いる溶媒は、温水以外であっても揮発性を有するものであればよく、メチルエチルケトン(MEK)、アルコールなどを用いることができる。
高分子溶解液は、水溶性高分子及び薬物を、又は、水溶性高分子及び糖アルコールを、水に溶解することによって製造することができる。溶解しにくい場合、加温して溶解してもよい。又は水溶性高分子の溶解液と、薬物又は糖アルコールの溶解液とを混合してもよい。溶解の際の温度は、高分子材料の種類により適宜選択可能であるが、約60℃以下の温度で加温することが好ましい。
(針部の形成)
図13Aに示すように、2次元配列された針状凹部15を有するモールド13が、基台20の上に配置される。モールド13には、5×5の2次元配列された、2組の複数の針状凹部15が形成されている。薬物を含む高分子溶解液22を収容するタンク30、タンクに接続される配管32、及び、配管32の先端に接続されたノズル34、を有する液供給装置36が準備される。なお、本例では、針状凹部15が5×5で2次元配列されている場合を例示しているが、針状凹部15の個数は5×5に限定されるものではなく、M×N(M及びNはそれぞれ独立に1以上の任意の整数を示し、好ましくは2〜30、より好ましくは3〜25、さらに好ましくは3〜20である)で2次元配列されていればよい。
図14はノズルの先端部の概略斜視図を示している。図14に示すように、ノズル34の先端には平坦面であるリップ部34A及びスリット形状の開口部34Bを備えている。スリット形状の開口部34Bにより、例えば、1列を構成する複数の針状凹部15に同時に、薬物を含む高分子溶解液22を充填することが可能となる。開口部34Bの大きさ(長さと幅)は、一度に充填すべき針状凹部15の数に応じて適宜選択される。開口部34Bの長さを長くすることで、より多くの針状凹部15に一度に薬物を含む高分子溶解液22を充填することができる。これにより、生産性を向上させることが可能となる。
図15は別のノズルの先端部の概略斜視図を示している。図15に示すように、ノズル34の先端のリップ部34Aには、2つのスリット形状の開口部34Bが設けられている。2つの開口部34Bにより、例えば、2列を構成する複数の針状凹部15に同時に、薬物を含む溶解液22を充填することが可能となる。
ノズル34に用いる材料としては、弾性素材又は金属製素材を用いることができる。例えば、テフロン(登録商標)、ステンレス鋼(SUS(Steel Special Use Stainless))、チタン等が挙げられる。
図13Bに示すように、ノズル34の開口部34Bが針状凹部15の上に位置調整される。ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とは接触している。液供給装置36から薬物を含む高分子溶解液22がモールド13に供給され、ノズル34の開口部34Bから薬物を含む高分子溶解液22が針状凹部15に充填される。本実施形態では、1列を構成する複数の針状凹部15に薬物を含む高分子溶解液22が同時に充填される。ただし、これに限定されず、針状凹部15に一つずつ充填するようにすることもできる。また、図15に示すノズル34を使用することで、複数列を構成する複数の針状凹部15に対し、複数列毎に薬物を含む高分子溶解液22を同時に充填することもできる。
モールド13が気体透過性を有する素材で構成される場合、モールド13の裏面から吸引することで薬物を含む溶解液22を吸引でき、針状凹部15内への薬物を含む高分子溶解液22の充填を促進させることができる。
図13Bを参照して充填工程に次いで、図13Cに示すように、ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とを接触させながら、開口部34Bの長さ方向と垂直方向に液供給装置36を相対的に移動し、ノズル34を、薬物を含む高分子溶解液22が充填されていない針状凹部15に移動する。ノズル34の開口部34Bが針状凹部15の上に位置調整される。本実施の形態では、ノズル34を移動させる例で説明したが、モールド13を移動させてもよい。
ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とを接触させて移動しているので、ノズル34がモールド13の針状凹部15以外の表面に残る薬物を含む高分子溶解液22を掻き取ることができる。薬物を含む高分子溶解液22をモールド13の針状凹部15以外に残らないようにすることができる。
モールド13へのダメージを減らすことと、モールド13の圧縮による変形をできるだけ抑制するため、移動する際のノズル34のモールド13への押付け圧はできる限り小さい方が好ましい。また、薬物を含む高分子溶解液22がモールド13の針状凹部15以外に残らないようにするため、モールド13もしくはノズル34の少なくとも一方がフレキシブルな弾性変形する素材であることが望ましい。
図13Bの充填工程と、図13Cの移動工程とを繰り返すことで、5×5の2次元配列された針状凹部15に薬物を含む高分子溶解液22が充填される。5×5の2次元配列された針状凹部15に薬物を含む高分子溶解液22が充填されると、隣接する5×5の2次元配列された針状凹部15に液供給装置36を移動し、図13Bの充填工程と、図13Cの移動工程とを繰り返す。隣接する5×5の2次元配列された針状凹部15にも薬物を含む高分子溶解液22が充填される。
上述の充填工程と移動工程について、(1)ノズル34を移動しながら薬物を含む高分子溶解液22を針状凹部15に充填する態様でもよいし、(2)ノズル34の移動中に針状凹部15の上でノズル34を一旦静止して薬物を含む高分子溶解液22を充填し、充填後にノズル34を再度移動させる態様でもよい。充填工程と移動工程との間、ノズル34のリップ部34Aがモールド13の表面に接触している。
図16は、薬物を含む高分子溶解液22を針状凹部15に充填中におけるノズル34の先端とモールド13との部分拡大図である。図16に示すように、ノズル34内に加圧力P1を加えることで、針状凹部15内へ薬物を含む高分子溶解液22を充填するのを促進することができる。さらに、針状凹部15内へ薬物を含む高分子溶解液22を充填する際、ノズル34をモールド13の表面に接触させる押付け力P2を、ノズル34内の加圧力P1以上とすることが好ましい。押付け力P2≧加圧力P1とすることにより、薬物を含む高分子溶解液22が針状凹部15からモールド13の表面に漏れ出すのを抑制することができる。
図17は、ノズル34の移動中における、ノズル34の先端とモールド13との部分拡大図である。ノズル34をモールド13に対して相対的に移動する際、ノズル34をモールド13の表面に接触させる押付け力P3を、充填中のノズル34をモールド13の表面に接触させる押付け力P2より小さくすることが好ましい。モールド13へのダメージを減らし、モールド13の圧縮による変形を抑制するためである。
図18は、ノズル内の液圧と薬物を含む高分子溶解液の供給との関係を示す説明図である。図18に示すように薬物を含む高分子溶解液22の供給は、ノズル34が針状凹部15の上に位置する前から開始される。薬物を含む高分子溶解液22を針状凹部15に確実に充填するためである。5×5で構成される複数の針状凹部15への充填が完了するまで、薬物を含む高分子溶解液22はモールド13に連続して供給される。ノズル34が5列目の針状凹部15の上に位置する前に薬物を含む高分子溶解液22をモールド13に供給するのを停止する。薬物を含む高分子溶解液22が針状凹部15からあふれ出るのを防止できる。ノズル34内の液圧に関して、薬物を含む高分子溶解液22の供給が開始されると、ノズル34が針状凹部15に位置しない領域では高くなる。一方、ノズル34が針状凹部15の上に位置すると、薬物を含む高分子溶解液22が針状凹部15に充填され、ノズル34内の液圧が低くなる。液圧の変動が繰り返される。
5×5で構成される複数の針状凹部15への充填が完了すると、ノズル34は、隣接する5×5で構成される複数の針状凹部15へ移動される。液供給に関して、隣接する5×5で構成される複数の針状凹部15へ移動する際、薬物を含む高分子溶解液22の供給を停止するのが好ましい。5列目の針状凹部15から次の1列目の針状凹部15までは距離がある。その間をノズル34が移動する間、薬物を含む高分子溶解液22を供給し続けると、ノズル34内の液圧が高くなりすぎる場合がある。その結果、ノズル34から薬物を含む高分子溶解液22がモールド13の針状凹部15以外に流れ出る場合があり、これを抑制するため、ノズル34内の液圧を検出し、液圧が高くなりすぎると判定した際には薬物を含む高分子溶解液22の供給を停止するのが好ましい。
なお、上記においてはノズルを有するディスペンサーを用いて薬物を含む高分子溶解液を供給する方法を説明したが、ディスペンサーによる塗布に加えて、バー塗布、スピン塗布、スプレーなどによる塗布などを適用することもできる。
薬物を含む高分子溶解液を針状凹部に供給した後、1℃〜50℃、0.05〜6時間の乾燥処理を行うことができる。ここで、乾燥処理は、1℃〜50℃の乾燥風により溶媒を蒸発させることによって行ってもよい。この乾燥処理により、深部の、薬物を含む高分子溶解液は固化状態になる。乾燥温度は、薬物が失効しない温度以下に保つことが必要である。
(シート部の形成)
シート部を形成する工程について、いくつかの態様を説明する。
第1の態様を、図19Aから19Cを参照して説明する。図19Aに示すように、モールド13の針状凹部15に薬物を含む高分子溶解液22をノズル34から充填する。次いで、図19Bに示すように、薬物を含む高分子溶解液22の上に、糖アルコールを含む高分子溶解液24をディスペンサーにより塗布する。ディスペンサーによる塗布に加えて、バー塗布、スピン塗布、スプレーなどによる塗布などを適用することができる。
次いで、図19Cに示すように、薬物を含む高分子溶解液22、及び、糖アルコールを含む高分子溶解液24、を乾燥固化させることで、針部112及びシート部116から構成されるマイクロニードルアレイ1が形成される。第1の態様において、薬物を含む高分子溶解液22、及び糖アルコールを含む高分子溶解液24の針状凹部15内への充填を促進させるために、モールド13の表面からの加圧及びモールド13の裏面からの減圧吸引を行うことも好ましい。
次に、第2の態様について図20Aから20Dを参照して説明する。図20Aに示すように、モールド13の針状凹部15に薬物を含む高分子溶解液22をノズル34から充填する。次いで、図20Bに示すように、薬物を含む高分子溶解液22を乾燥固化させることで、針状凹部15内に薬物を含む層120が形成される。次いで、図20Cに示すように、薬物を含む層120が形成されたモールド13に、糖アルコールを含む高分子溶解液24をディスペンサーにより塗布する。ディスペンサーによる塗布に加えて、バー塗布、スピン塗布、スプレーなどによる塗布などを適用することができる。薬物を含む層120は固化されているので、薬物が、糖アルコールを含む高分子溶解液24に拡散するのを抑制することができる。次いで、図20Dに示すように、糖アルコールを含む高分子溶解液24を乾燥固化させることで、複数の針部112、及び、シート部116から構成されるマイクロニードルアレイ1が形成される。第2の態様において、薬物を含む高分子溶解液22、及び糖アルコールを含む高分子溶解液24の針状凹部15内への充填を促進させるために、モールド13の表面からの加圧、及び、モールド13の裏面からの減圧吸引を行うことも好ましい。
次に、第3の態様について図21Aから21Dを参照して説明する。図21Aに示すように、モールド13の針状凹部15に薬物を含む高分子溶解液22をノズル34から充填する。次いで、図20Bと同様に、薬物を含む高分子溶解液22を乾燥固化させることで、薬物を含む層120が針状凹部15内に形成される。次に、図21Bに示すように、別の支持体29の上に、糖アルコールを含む高分子溶解液24を塗布する。支持体29は限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース、ガラス等を使用することができる。次に、図21Cに示すように、針状凹部15に薬物を含む層120が形成されたモールド13に、支持体29の上に形成された糖アルコールを含む高分子溶解液24を重ねる。これにより、糖アルコールを含む高分子溶解液24を針状凹部15の内部に充填させる。薬物を含む層は固化されているので、薬物が、糖アルコールを含む高分子溶解液24に拡散するのを抑制することができる。次に、糖アルコールを含む高分子溶解液24、を乾燥固化させることで、複数の針部112及びシート部116から構成されるマイクロニードルアレイ1が形成される。
第3の態様において、糖アルコールを含む高分子溶解液24の針状凹部15内への充填を促進させるために、モールド13の表面からの加圧及びモールド13の裏面からの減圧吸引を行うことも好ましい。
マイクロニードルアレイ1の形成において、乾燥固化の工程は、溶媒を含む薬物を含む高分子溶解液22、及び/又は糖アルコールを含む高分子溶解液24を乾燥させることで、針状凹部15の内部で薬物を含む高分子溶解液22、及び/又は糖アルコールを含む高分子溶解液24を固化させる工程である。
薬物を含む高分子溶解液22、及び/又は糖アルコールを含む高分子溶解液24を乾燥させる方法として、高分子溶解液中の溶媒を揮発させる工程であればよい。その方法は特に限定するものではなく、例えば加熱、送風、減圧等の方法が用いられる。乾燥処理は、1〜50℃で1〜72時間の条件で行うことができる。送風の場合には、0.1〜10m/秒の温風を吹き付ける方法が挙げられる。乾燥温度は、薬物を含む高分子溶解液22内の薬物を熱劣化させない温度であることが好ましい。薬物を含む高分子溶解液22を乾燥させることにより固化し、薬物を含む高分子溶解液22を塗布した際の状態よりも縮小させる。これにより、モールド13の針状凹部15から針部を容易に剥離することが可能となる。
(剥離)
マイクロニードルアレイ1をモールド13から剥離する方法は特に限定されない。剥離の際に針状凸部が曲がったり折れたりしないことが好ましい。具体的には、図22に示すように、マイクロニードルアレイ1の上に、粘着性の粘着層が形成されているシート状の基材40を付着させた後、端部から基材40をめくるように剥離を行うことができる。ただし、この方法では針状凸部が曲がる可能性がある。そのため、図23に示すように、マイクロニードルアレイ1の上の基材40に吸盤(図示せず)を設置し、エアーで吸引しながら垂直に引き上げる方法を適用することができる。なお、基材40として支持体29を使用してもよい。
図24はモールド13から剥離されたマイクロニードルアレイ2を示している。マイクロニードルアレイ2は、基材40、基材40の上に形成された針部112、及びシート部116で構成される。針部112は、円錐形状又は多角錐形状の先端部、及び、円柱状又は多角柱状の胴体部、を主に有している。ただし、針部112はこの形状に限定されるものではない
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1〜12>
(モールドの製造)
一辺20mmの平滑なNi板の表面に、図25に示すような、底面が500μmの直径D1で、150μmの高さH1の円錐台50上に、300μmの直径D2で,500μmの高さH2の円錐52が形成された針状構造の形状部12を、1000μmのピッチL1にて10列×10行の2次元配列に研削加工することで、原版11を作製した。原版の針先端部から2mm離した位置に金属板を固定し、原版と金属板の間の空間を満たすようにシリコンゴムを充填し、熱硬化させ、剥離した。これにより、図10Aに示すような、針孔開口部側に液だれ防止の堤防を有するシリコンゴムの反転品を作製した。このシリコンゴム反転品の、中央部に10列×10行の2次元配列された針状凹部が形成された、一辺30mmの平面部外を切り落としたものをモールドとして用いた。
(薬物を含む高分子溶解液の調製)
ヒドロキシエチルスターチ(Fresenius Kabi社製)を水で溶解し、14.4質量%水溶液を調製した。上記で得られた水溶液に、薬物としてヒト血清アルブミン(和光純薬)を3.6質量%添加し、薬物を含む高分子溶解液とした。
(糖アルコールを含む高分子溶解液の調製)
水溶性高分子と、糖アルコールを、表1に記載した実施例1〜12の組み合わせ及び濃度で水に溶解し、糖アルコールを含む高分子溶解液を調製した。デキストラン70 (名糖産業社製)、D-マンニトール(和光純薬社製)、D−ソルビトール(和光純薬社製)及びグリセロール(和光純薬社製)を使用した。
(薬物を含む高分子溶解液の充填及び乾燥)
円錐形状の凹部を持つモールドの孔パターン配列上に、薬物を含む溶解液を0.3mL滴下した後、耐圧容器の中に入れた。コンプレッサーから耐圧容器内に圧縮空気を注入し、耐圧容器内を0.35MPaの圧力で5分間保持した。このように圧力をかけることにより、気泡を除去し、型のニードル部の先端まで薬物を含む溶解液を充填することが可能になる。充填後、モールドの針孔開口部パターン上に残った余分な薬物を含む溶解液は回収し、25℃で1時間乾燥した。
(シート部の形成及び乾燥)
薬物を含む高分子溶解液を充填及び乾燥したモールドの針孔開口部パターン上に、糖アルコールを含む高分子溶解液1gを滴下した後、耐圧容器の中に入れた。コンプレッサーから耐圧容器内に圧縮空気を注入し、耐圧容器内を0.35MPaの圧力で5分間保持した。このように圧力をかけることにより、気泡を除去し、型のニードル部に予め充填された薬物を含む高分子溶解液の層と密着させることが可能となり、針部とシート部で構成された二層型マイクロニードルアレイを形成することが可能になる。また、モールドは堤防を有していることから、加圧時に、糖アルコールを含む高分子溶解液がモールドからはみ出すことがない。モールドを耐圧容器から取りだし、オーブンに投入して、35℃、18時間の乾燥処理を行った。
(剥離工程)
乾燥固化したマイクロニードルアレイをモールドから慎重に剥離することで、先端にヒト血清アルブミンが偏在する、針部とシート部とで構成されるマイクロニードルアレイが形成された。
<実施例13〜18>
(モールドの製造)
一辺40mmの平滑なNi板の表面に、図25に示すような、底面が500μmの直径D1で、150μmの高さH1の円錐台50上に、300μmの直径D2で、600μmの高さH2の円錐52が形成された針状構造の形状部12を、700μmのピッチL1にて八角形状に400本の針を2次元正方配列に研削加工することで、原版11を作製した。この原版11の上に、シリコンゴム(ダウ・コーニング社製SILASTIC MDX4-4210)を0.7mmの厚みで膜を形成し、膜面から原版11の円錐先端部50μmを突出させた状態で熱硬化させ、剥離した。これにより、約30μmの直径の貫通孔を有するシリコンゴムの反転品を作製した。このシリコンゴム反転品の、中央部に10列×10行の2次元配列された針状凹部が形成された、一辺30mmの平面部外を切り落としたものをモールドとして用いた。針状凹部の開口部が広い方をモールドの表面とし、30μmの直径の貫通孔(空気抜き孔)を有する面をモールドの裏面とした。
(薬物を含む高分子溶解液の調製)
ヒト成長ホルモン(Pfizer社、ジェノトロピン(登録商標))を1mg/mLに溶解したのち、分子量分画10000の限外濾過フィルター(Sartorius stedim biotech社製、VIVA SPIN(登録商標))を用いた遠心限外濾過法(2000xg, 25min)により、濃度70mg/mLの濃縮液を調製した。ヒドロキシエチルスターチ(Fresenius Kabi社製)を水で溶解し、14.4質量%水溶液を調製した。ヒドロキシエチルスターチ水溶液に、スクロース(和光純薬社製)を7.2質量%の濃度で添加した。この溶液に、薬物として、濃縮したヒト成長ホルモン(Pfizer社、ジェノトロピン(登録商標))溶液を添加し、薬物濃度3.6質量%の薬物を含む高分子溶解液を調製した。
(糖アルコールを含む高分子溶解液の調製)
水溶性高分子と、糖アルコールを、表1に記載した実施例13〜18の組み合わせ及び濃度で水に溶解し、糖アルコールを含む高分子溶解液を調製した。コンドロイチン硫酸(マルハニチロ食品社製)、D−マンニトール(和光純薬社製)、D−ソルビトール(和光純薬社製)、及びグリセロール(和光純薬社製)を使用した。
(薬物を含む高分子溶解液の充填及び乾燥)
図26に示す充填装置を使用した。充填装置は、モールドとノズルの相対位置座標を制御するX軸駆動部61及びZ軸駆動部62、ノズル63を取り付け可能な液供給装置64(武蔵エンジニアリング社製超微量定量ディスペンサーSMP-III)、モールド69を固定する吸引台65、モールド表面形状を測定するレーザー変位計66(パナソニック社製HL−C201A)、ノズル押し込み圧力を測定するロードセル67(共和電業製LCX−A−500N)、及び表面形状及び押し付け圧力の測定値のデータを基にZ軸を制御する制御機構68を備える。
水平な吸引台上に一辺15mmの気体透過性フィルム(住友電気工業社製、ポアフロン(登録商標)、FP−010)を置き、その上に表面が上になるようにモールドを設置した。モールド裏面方向からゲージ圧90kPaの吸引圧で減圧して、気体透過性フィルムとモールドをバキューム台に固定した。
図14に示すような形状のSUS製(ステンレス鋼)のノズルを準備し、長さ20mm、幅2mmのリップ部の中央に、長さ12mm、幅0.2mmのスリット状の開口部を形成した。このノズルを液供給装置に接続した。3mLの薬物を含む高分子溶解液を、液供給装置とノズル内部に装填した。開口部を、モールドの表面に形成された複数の針状凹部で構成される1列目と平行となるようにノズルを調整した。1列目に対して2列目と反対方向に2mmの間隔をおいた位置で、ノズルを1.372×10Pa(0.14kgf/cm)の圧力でモールドに押し付けた。ノズルを押し付けたまま、押し付け圧の変動が±0.490×10Pa(0.05kgf/cm)に収まるようにZ軸を制御しつつ、0.5mm/秒で開口部の長さ方向と垂直方向に移動させながら、液供給装置にて、薬物を含む溶解液を、0.31μL/秒で30秒間、開口部から放出した。2次元配列された複数の針状凹部の孔パターンを通過して、2mm間隔を置いた位置でノズルの移動を停止し、ノズルをモールドから離した。
薬物を含む高分子溶解液を充填したモールドを、直径5mm開口部を持った風防(25cm)内に収め、乾燥した。ここでいう風防は、開口部に気体透過性フィルム(住友電気工業社製、ポアフロン(登録商標)、FP−010)が装着されており、直接風が当たらないような構造となっている。
(シート部の形成及び乾燥)
シート部を形成する支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(175μm)をクラウドリムーバー(Victor jvc社)を用いて、以下条件(使用ガス:O、ガス圧:13Pa、高周波(RF)電力:100W、照射時間:3分、O流量:SV250、目標真空度(CCG):2.0×10-4Pa)にて親水化プラズマ処理したものを用いる。処理を施したPET上に、糖アルコールを含む高分子溶解液を、表裏面を75μmの膜厚で塗布した。一方で、薬物を含む高分子溶解液を充填したモールドを吸引台に吸引固定した。糖アルコールを含む高分子溶解液を塗布したPETの表面側を、モールド表面を向かい合わせに配置し、更にPETとモールド間の空隙、また、PETのモールドと反対側の空間を2分間減圧した。減圧後、PETのモールドと反対側の空間のみ大気圧開放することで、糖アルコールを含む高分子溶解液を塗布したPETと、モールドを貼り合せた。10分間接触状態を維持した後、PETとモールドが貼り合わさって一体となったものを乾燥させた。
(剥離)
乾燥固化したマイクロニードルアレイをモールドから慎重に剥離することで、先端にヒト成長ホルモンが偏在する、シート部と針部とで構成されるマイクロニードルアレイが形成された。
<比較例1>
(薬物を含む高分子溶解液の調製)
実施例1〜12と同様に調整した。
(シート部用の高分子溶解液の調製)
デキストラン70(名糖産業社製)を20質量%の濃度で水に溶解し、シート部用の高分子溶解液を調製した。
(薬物を含む高分子溶解液の充填及び乾燥)
実施例1〜12と同様に形成した。
(シート部の形成及び乾燥)
実施例1〜12と同様に形成した。
(剥離)
実施例1〜12と同様に実施した。
<比較例2〜4>
(薬物を含む高分子溶解液の調製)
実施例13〜18と同様に調整した。
(シート部用の高分子溶解液の調製)
コンドロイチン硫酸、又はコンドロイチン硫酸とスクロースを、表2に記載した比較例2から4の濃度で水に溶解し、シート部用の高分子溶解液を調製した。コンドロイチン硫酸(マルハニチロ食品社製)、及びスクロース(和光純薬社製)を使用した。
(薬物を含む高分子溶解液の充填及び乾燥)
実施例13〜18と同様に形成した。
(シート部の形成及び乾燥)
実施例13〜18と同様に形成した。
(剥離)
実施例13〜18と同様に実施した。
<割れ性及び成形性の評価:実施例1〜18及び比較例1〜4>
上述のように作製されたマイクロニードルアレイの割れ性を評価した。成形直後のシート部の割れ性を評価した。更に、相対湿度0%のスーパードライ(東洋リビング社、環境:温度15〜30℃,湿度0%)中に終夜保管し、絶乾後の割れ性を評価した。割れ性の評価では、割れていない場合をA、割れている場合をCとした。ここで「割れる」とは、シート部が2個以上の破片に割れて分断されている場合を意味する。
また、成形性については、モールドからマイクロニードルアレイを剥離する際、シート部が平面形状を維持している場合はAとし、シート部が平面形状を維持できず10°以上の曲がりが発生した場合、あるいは結晶化に伴う白色化が発生した場合はBとした。A及びBはともに実用上は問題がない。
Figure 2016030072
Figure 2016030072
表1及び表2に示す結果から、水溶性高分子単独に対し、糖アルコールを添加すると、絶乾後の割れが抑制できることを明らかになった。
<安定性評価>
実施例13〜16及び比較例2で作製したマイクロニードルを、乾燥剤(エージレスドライ(登録商標)、三菱ガス化学株式会社)と共に包装し、50℃の恒温槽内で14日間静置した。14日間経過後にマイクロニードルアレイを取り出し、マイクロニードルアレイの針部のみを回収した。それぞれ1mLの水中に溶解し、高速液体クロマトグラフィーのサイズ排除モードで測定を実施した。測定条件は、USP(2011年度版)、Somatropinの項に記載の条件に準拠して実施した。ヒト成長ホルモンは、単量体からダイマーへと変性することで、薬理活性が低下することが知られているため、クロマトグラムから、ヒト成長ホルモンの単量体に対するダイマー比率を計測し、その変化率により、安定性を比較した。結果を図27に示す。
図27に示す結果から、シート部が水溶性高分子単独の場合に比べ、シート部に糖アルコールを添加することで、ヒト成長ホルモンの安定性が向上することが明らかになった。
1 マイクロニードルアレイ
2 マイクロニードルアレイ
110 マイクロニードル
112 針部
116 シート部
120 薬物を含む層
122 薬物を含まない層
W 直径(幅)
H 高さ
T 高さ(厚み)
11 原版
12 形状部
13 モールド
14 枠
15 針状凹部
D 径(直径)
17 基板
18 モールド複合体
19 気体透過シート
20 基台
22 薬物を含む高分子溶解液
24 糖アルコールを含む高分子溶解液
29 支持体
30 タンク
32 配管
34 ノズル
34A リップ部
34B 開口部
36 液供給装置
P1 加圧力
P2 押付け力
40 基材
50 円錐台
52 円錐
D1 直径
D2 直径
L1 ピッチ
H1 高さ
H2 高さ
61 X軸駆動部
62 Z軸駆動部
63 ノズル
64 液供給装置
65 吸引台
66 レーザー変位計
67 ロードセル
68 制御機構
69 モールド

Claims (9)

  1. シート部、及び、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイであって、針部が水溶性高分子及び薬物を含み、シート部が水溶性高分子及び糖アルコールを含むマイクロニードルアレイ。
  2. シート部における水溶性高分子及び糖アルコールの含有量の質量比率が10:0.5〜10:3の範囲内である、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
  3. シート部に含まれる糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールから選択される一種以上である、請求項1又は2に記載のマイクロニードルアレイ。
  4. 針部が、水溶性高分子、薬物、並びに、単糖及び二糖から選ばれる少なくとも一種の糖、を含む、請求項1から3の何れか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
  5. 針部が、水溶性高分子、薬物及びスクロースを含む、請求項1から4の何れか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
  6. 薬物がホルモン又はワクチンである、請求項1から5の何れか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
  7. 薬物が成長ホルモンである、請求項1から6の何れか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
  8. マイクロニードルの針部が、円錐状又は多角錐状の形状を有する、請求項1から7の何れか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
  9. 乾燥剤と一緒に密閉保存されている、請求項1から8の何れか1項に記載のマイクロニードルアレイ。
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