JP2016028964A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】転がり抵抗を低減しつつ、車外音も低減させることができる空気入りタイヤを提供する。【解決手段】総幅SWと外径ODとの比であるSW/ODが、「SW/OD ≦ 0.3」を満たす、トレッド部10に溝が設けられている空気入りタイヤ1に関する。トレッド部の接地領域Gにおいて、接地面積に対する溝面積比率をGRとし、接地幅をWとし、タイヤ赤道線CLを中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域をセンター領域ACとし、前記センター領域ACでの溝面積比率をGCRとし、前記センター領域ACよりもタイヤ幅方向外側の接地領域をショルダー領域ASとし、前記ショルダー領域ASでの溝面積比率をGSRとした場合に、トレッド部の接地領域は、「10[%] ≦ GR ≦ 25[%]」及び「GCR ≦ GSR」を満たして形成される。【選択図】図2

Description

本発明は、乗用車用の省燃費性を向上させた空気入りタイヤに関する。
従来、特にハイブリット自動車(HV)や電気自動車(EV)などの自動車の低燃費性に貢献するために、転がり抵抗を低減する空気入りタイヤが提案されてきた。近年はさらに、環境への配慮が高まるにつれ、自動車の低燃費化に対する貢献度がより高い空気入りタイヤが求められている。
空気入りタイヤの転がり抵抗を低減する手法としては、空気入りタイヤの総幅(SW)を狭くしてその前方投影面積を小さくすることによって、タイヤ周辺の空気抵抗を低減させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2011/135774号
しかしながら、上述の手法では、空気入りタイヤの総幅が狭くなることに伴って接地幅も狭くなることから、ある程度の負荷能力を維持するために外径(OD)を大きくすることが必要となる。そのため、空気入りタイヤの接地長が比較的長くなることになる。
空気入りタイヤの接地長が長くなると、空気入りタイヤのトレッド部の振動等によって励起される周方向溝内の空気の固有振動に起因する気柱共鳴音が増大し、その結果、車外音が増大するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、転がり抵抗を低減しつつ、車外音も低減させることができる空気入りタイヤを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明によれば、
トレッド部に溝が設けられている空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤの総幅SWと外径ODとの比であるSW/ODが、
SW/OD ≦ 0.3
を満たし、
前記トレッド部の接地領域において、接地面積に対する溝面積比率をGRとし、接地幅をWとし、タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域をセンター領域ACとし、前記センター領域ACでの溝面積比率をGCRとし、前記センター領域ACよりもタイヤ幅方向外側の接地領域をショルダー領域ASとし、前記ショルダー領域ASでの溝面積比率をGSRとした場合に、
前記トレッド部の接地領域は、
10[%] ≦ GR ≦ 25[%]
GCR ≦ GSR
を満たして形成されている、
空気入りタイヤが提供される。
本発明の空気入りタイヤによれば、転がり抵抗を低減しつつ、車外音も低減させることができる。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図。 本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す平面展開図。 従来例の空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す平面展開図。 本発明の別の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す平面展開図。
これより、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ1について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態の空気入りタイヤ1の子午断面図である。なお、本実施形態の空気入りタイヤ1は、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、空気入りタイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状をいう。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸AXと直交する方向をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸AXを中心として回転する方向をいう(図2参照)。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸AXと平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう方向の側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる方向の側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸AXに直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本明細書及び図面では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面視で、一対のビード部2と、ビード部に連なるサイドウォール部3と、サイドウォール部同士を連結するトレッド部10とを備える。
なお、本発明では、空気入りタイヤの内部構造は特に限定されない。空気入りタイヤの内部構造は、その空気入りタイヤに要求される性能やデザインなどによって異なるべきものであり、例えば実験やシミュレーションなどにより様々な要求を満足するように決定することが好ましい。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、その総幅SWと外径ODとの比が、
SW/OD ≦ 0.3 ・・・<1>
の関係を満たすように形成されている。
なお、本発明では、総幅SWは、空気入りタイヤ1をリム組みし、空気入りタイヤ1の寸法を規定するために230[kPa](任意に設定した内圧)で内圧を充填したときの無負荷状態における、サイドウォール上のデザインを含んだサイドウォール同士の間の間隔であり、外径ODは、このときのタイヤの外径である。なお、上述のように230[kPa]という内圧は、空気入りタイヤの寸法を規定するために選択されたものである。したがって、本発明に係る空気入りタイヤ1は、通常に使用される範囲の内圧が充填されているものであれば、本発明の効果を発揮するものであり、230[kPa]の内圧が充填されていることが本発明を実施する上で必須ではないことに留意されたい。
ここで、本発明において使用されるリムは、空気入りタイヤ1の内径に適合したリム径を有し、かつISO4000−1:2001に準拠して、タイヤ断面幅の呼びSnと、リム組みされるタイヤの偏平比により表1の対応表によって定められる係数K1との積で求めた値(Rm=K1×Sn)に最も近い、表2に示されている規定リム幅Rm[mm]に対応するリム幅の呼びを有するリムである。
Figure 2016028964
Figure 2016028964
図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部10の一部を示す平面展開図である。本実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部10には、タイヤ周方向に延びる3つの周方向溝12A、12Bと、各周方向溝12A、12Bによって区画された陸部14A、14Bとが形成されている。陸部14A、14Bにはそれぞれ、タイヤ周方向を横断する方向に延びる複数の幅方向溝16A、16Bが形成されている。なお、本明細書では、周方向溝12及び幅方向溝16を総称して溝12、16と呼ぶ。
本実施形態の空気入りタイヤ1では、負荷能力の80%に相当する荷重をかけて平面に接地させたときのトレッド部10の接地領域Gにおいて、接地面積に対する溝面積比率GR、センター領域ACでの溝面積比率GCR及びショルダー領域ASでの溝面積比率GSRが、以下の関係を満たすように形成されている。
10[%] ≦ GR ≦ 25[%] ・・・<2>
GCR ≦ GSR ・・・<3>
本発明では、接地領域Gとは、空気入りタイヤ1を上述したリムにリム組みし、230[kPa]で内圧を充填し、負荷能力の80%に相当する荷重をかけて平面に接地させたときの接地面の領域である。接地幅Wとは,接地領域内のタイヤ幅方向の最大幅である。接地長GLとは、接地領域内のタイヤ周方向の最大長さである。また、本発明では、負荷能力は、ISO4000−1:1994に基づいて負荷能力が決定される。しかしながら、当該ISO規格において負荷能力指数が設定されていないサイズについては、個別で算出して諸外国の規格との整合を考慮して決定するとの記載があり、この場合では、負荷能力については各国の規格に基づいて算出される。したがって、本発明では実際には、JIS規格で採用している負荷能力算出式を利用したJIS D4202−1994解説の「負荷能力の算定」に記載されている、下記の算定式(c)から各タイヤサイズの負荷能力が算出されている。
X=K×2.735×10−5×P0.585×Sd1.39×(D−12.7+Sd)
但し、X=負荷能力[kg]
K=1.36
P=230(=空気圧[kPa])
Sd=0.93×S1−0.637d
S1=S×((180°−sin-1(Rm/S))/131.4°)
S=設計断面幅[mm]
Rm=設計断面幅に対応したリム幅[mm]
d=(0.9−偏平比[−])×S1−6.35
=リム径の基準値[mm]
そして、溝面積比率GRとは、接地領域G内の陸部面積と溝面積との総和(=接地面積)に対する溝面積の比率である。
さらに、図2に示すように、センター領域ACとは、接地領域Gのうちのタイヤ赤道線CLを中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域であり、ショルダー領域ASとは、接地領域Gのうちのセンター領域ACよりもタイヤ幅方向外側に位置する領域である。そして、センター領域ACでの溝面積比率GCRは、センター領域ACにおける陸部面積と溝面積との総和に対する溝面積の比率であり、ショルダー領域ASでの溝面積比率GSRは、ショルダー領域ASにおける陸部面積と溝面積との総和に対する溝面積の比率である。
上述の実施形態に係る空気タイヤ1によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1) 本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、その総幅SWと外径ODとの比が、上述の式<1>の関係を満たすように形成されている。それにより、一般的なサイズ(
例えば205/55R16(SW/OD=0.32))の空気入りタイヤと比較すると、外径ODに対して総幅SWが小さくなる。その結果、空気入りタイヤ1の前方投影面積が小さく、タイヤ周辺の空気抵抗が低減され、ひいては空気入りタイヤ1の転がり抵抗を低減することができる。その一方で、単に総幅SWを狭くすると空気入りタイヤ1の負荷能力が低下するが、式<1>を満たすことにより外径ODが総幅SWに対して相対的に大きいので、負荷能力の低下を抑制することができる。
(2) 本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、接地面積に対する溝面積比率GRが、上述の式<2>に示された範囲の値を取るように形成されている。この溝面積比率GRの範囲は、一般的な空気入りタイヤと比較して、低く設定されている。それにより、主にトレッド部10に設けられた溝12、16に起因して発生する音、つまり車外音を低減することができる。なお、本実施形態の空気入りタイヤ1では、総幅SWが相対的に狭く、それにより排水性能が向上する。したがって、本実施形態の空気入りタイヤ1は、溝面積比率GRを低く設定しても、上述の範囲内であれば、一般的なサイズの空気入りタイヤと比較して、総合的に排水性能を向上又は維持することができる。
(3)本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、センター領域ACでの溝面積比率GCRとショルダー領域ASでの溝面積比率GSRとが、上述の式<3>の関係を満たすように形成されている。それにより、ショルダー領域ASと比較してタイヤ赤道線CLに近いセンター領域ACに設けられる溝がより少なくなることにより、車外音、特に気柱共鳴音を低減させることができる。
(4)(1)において説明したように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、一般的なサイズの空気入りタイヤと比較すると、相対的に外径ODが大きく総幅SWが狭い。したがって、自動車の省スペース化、意匠性の向上、さらに、接地長が長くなることによる、排水性能向上などを見込むことができる。
これまで、図2において、本実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部10の接地領域Gに形成されたトレッドパターンを示すことによって、本発明の構成の一例を示した。しかしながら、トレッド部10の接地領域Gには、少なくとも周方向溝12及び幅方向溝16のいずれか一方が設けられていればよい。トレッド部10おける溝12、16の配置、つまりトレッドパターンの構成は、その空気入りタイヤに要求される性能やデザインなどによって異なるべきものである。よって、本発明では、上記の式<1>〜<3>の関係を満たした上で、例えば実験やシミュレーションなどにより様々な要求を満足するトレッドパターンを決定することが好ましい。
また、センター領域ACでの溝面積比率GCRと、ショルダー領域ASでの溝面積比率GSRの関係が、
1.0 ≦ GSR/GCR ≦ 2.0 ・・・<4>
を満たすと好ましく、
1.3 ≦ GSR/GCR ≦ 1.7
を満たすとさらに好ましい。「GSR/GCR」が1.0よりも大きいと、センター領域ACに位置する溝12、16がショルダー領域ASと比較して少なくなるので、車外音をさらに低減することができるからである。なお、「GSR/GCR」が2.0よりも大きいと、ショルダー領域ASに配置された溝12、16が多くなりすぎてしまい、操縦安定性を維持するのが困難になる。
ここで、図2を参照しつつ、領域AC1と領域AC2とを定義する。領域AC1は、センター領域ACのうちのタイヤ赤道面CLを中心として接地幅Wの25%に相当する幅を有する領域である。そして、領域AC2は、センター領域ACのうちの領域AC1よりもタイヤ幅方向外側に含まれる領域である。このときに、領域AC1における溝面積比率GCR1と領域AC2における溝面積比率GCR2との関係が、
GCR1 < GCR2・・・<5>
を満たすとさらに好ましい。すなわち、センター領域ACのうちでも特にタイヤ赤道線CLに近い領域AC1において溝面積が少なくなるように、トレッド部10の接地領域Gが形成されると好ましい。車外音をさらに低減することができるからである。
また、溝面積比率GCR1が20%以下であると好ましい。すなわち、センター領域ACのうちでも特にタイヤ赤道線CLに近い領域AC1については、溝面積、特に周方向溝面積が少なくなるように、トレッド部10の接地領域Gが形成されると好ましい。車外音をさらに低減することができるからである。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向に延びる周方向溝12が、前記トレッド部に1本以上設けられている。このときのセンター領域ACにおける周方向溝12Aの溝面積比率をAとすると、センター領域ACでの溝面積比率GCRに対する比が、
0 ≦ A/GCR ≦ 1.0 ・・・<6>
を満たすと好ましい。すなわち、トレッド部10の接地領域Gに形成されている溝12、16のうち、タイヤ赤道線CLに近いセンター領域ACに位置する周方向溝12が気柱共鳴音に与える影響が大きい。したがって、センター領域ACに位置する周方向溝12Aの溝面積比率Aを小さくすることが好ましい。なお、「A/GCR」が1.0よりも大きいと、幅方向溝16に対する周方向溝12の割合が大きくなり、気柱共鳴音が増大して、車外音を効果的に低減させることが困難になる。
本実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部10の接地領域Gには、ショルダー領域ASに少なくとも一部が含まれると共に周方向溝12A、12Bによって区画された陸部14A、14Bのうちのタイヤ幅方向の最も外側に位置する陸部14Bに、幅方向溝16Bが設けられている。このようなトレッド部10の接地領域Gにおいて、その幅方向溝16Bのタイヤ幅方向の内側終端16Bi又は外側終端16Boのうちいずれか一方が、当該陸部14B内で終端すると好ましい。
本実施形態では、内側終端16Biが陸部14B内で終端している、つまり内側終端16Biが周方向溝12Bに接続していない。このように幅方向溝16Bを形成すると、主溝による気柱共鳴音の、幅方向溝からの放射が抑えられたるために、車外音をさらに低減させることができる。しかしながら、幅方向溝16Bの内側終端16Bi及び外側終端16Boの両方が、当該陸部14B内で終端していなくてもよい。
実施例では、条件が異なる空気入りタイヤについて、燃費指数、騒音性能、操縦安定性に関するタイヤ性能試験が行われた。
これらの性能試験では、各テストタイヤに適合する上述したサイズのリムを組付け、各々に230[kPa]の内圧を充填して行われた。
これより、テストタイヤについて行われた性能試験の試験方法について説明する。
(燃費指数)
テストタイヤを排気量1800ccの小型前輪駆動車に装着し、全長2kmのテストコースを時速100km/hにて50周走行した。従来例の燃料消費率を100としたときの燃費改善率を測定した。指数が大きいほど燃費が良いことを表している。
(操縦安定性)
テストタイヤを標準リムにリム組みして乗用車(排気量1800cc)に装着し、1周2kmのテストコースをレーンチェンジしながら3周走行したときのフィーリングを3人の専門ドライバーにより評価した。評価結果は、比較例1のフィーリング評価点の平均値を100としたときの、各テストタイヤの評価点の平均値を指数で表示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを示す。
(騒音性能)
JASO C−606に規定されている方法に準じて、テストタイヤを乗用車(排気量1800cc)に装着し、乾燥路面において速度60km/hで走行し、その走行路から7.5m離れた位置において騒音レベル[dB]を測定した。評価結果は従来例の測定値を基準値とし、この基準値との差を示した。つまり、テストタイヤの評価結果がマイナス(−)の値である場合は、当該テストタイヤの騒音レベルが基準値よりも減少しており、ひいては、そのテストタイヤの騒音性能が優れていることが示される。
(排水性能)
テストタイヤを乗用車(排気量1800cc)に装着し、直線ハイドロプレーニング試験を行い、ハイドロプレーニングが発生した速度を計測して評価した。この直線ハイドロプレーニング試験は、水深10mmのプールを、速度を上げながら進入し、そのときの空気入りタイヤのスリップ率を測定する。このときのスリップ率が10%となったときをハイドロプレーニング発生速度とする。この試験では従来レイでの計測結果を100として他の例の計測結果を指数化した。本実施例では、指数の値が大きいほどハイドロプレーニング性能、ひいては排水性能が優れていることを示す。
これより、各テストタイヤ及びその性能試験結果について説明する。
(従来例)
従来例に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが205/55R16であり、その「SW/OD」の値が0.32であり、すなわち式<1>を満たさない。従来例に係る空気入りタイヤのトレッド部には、図3に示されているトレッドパターンが設けられている。
(実施例1〜14)
実施例1〜14に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズがそれぞれ異なり、「SW/OD」が0.30〜0.21の範囲の値を取り、すなわち式<1>を満たす。実施例1〜14に係る空気入りタイヤのトレッド部10には、図3に示されているトレッドパターンを基礎として各タイヤサイズに適合するように変更されたトレッドパターンが設けられている。
従来例及び実施例1〜14に係る空気入りタイヤについて、燃費指数に関する性能試験が行われた。表3には、各テストタイヤの寸法に関する数値と、性能試験結果とが示されている。
Figure 2016028964
表3の性能試験結果によれば、式<1>を満たす実施例1〜14に係るテストタイヤは、従来例よりも燃費指数において優れている。この性能試験結果により、試験されたタイヤサイズのうちでは、タイヤサイズ165/55R20(実施例11)であれば、タイヤサイズ205/55R16に対して燃費が十分に改善されることが確認された。したがって、以後のトレッドパターンに関する試験については、このタイヤサイズが使用される。
(実施例15〜17、比較例1〜3)
実施例15〜17及び比較例1〜3に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20であり、溝面積比率GRが8〜27%の範囲で振り分けられたテストタイヤである。ここで、実施例15〜17は式<1>〜<4>の関係の全てを満たしているが、比較例1〜3は式<2>の関係を満たさない。
実施例15に係る空気入りタイヤのトレッド部には、図2に示されているトレッドパターンが設けられている。その他、以降の実施例(16〜27)及び比較例(1〜4)に係る空気入りタイヤのトレッド部には、図2のトレッドパターンを基礎として、各テストタイヤに設定されている溝面積比率GRなどの各寸法パラメータに適合するように変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで一例として、実施例17に係る空気入りタイヤのトレッド部に配されたトレッドパターンを図4に示す。実施例16〜27及び比較例1〜4に係る空気入りタイヤでは、図4に示されたトレッドパターンのように、図2のトレッドパターンを基礎として、周方向溝12及び幅方向溝16の溝面積や、周方向溝12の数及びタイヤ幅方向位置などを変更することによって、各テストタイヤの各寸法パラメータに適合させている。
(実施例18〜21、比較例4)
実施例18〜21及び比較例4に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20であり、「GSR/GCR」が0.8〜2.2の範囲で振り分けられたテストタイヤである。上述のように、実施例18〜21及び比較例4に係る空気入りタイヤのトレッド部には、図2を基礎として変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで、実施例18〜21は式<1>〜<3>の関係を満たしている。さらに、実施例18〜20は式<4>の関係を満たすが、実施例21は式<4>の関係を満たさない。
従来例、実施例15〜21及び比較例1〜4に係る空気入りタイヤについて、燃費指数、騒音性能、操縦安定性及び排水性能に関する性能試験が行われた。表4には、各テストタイヤの寸法に関する数値と、性能試験結果とが示されている。
Figure 2016028964
表4の性能試験結果によれば、式<1>〜式<3>の関係を満たす実施例15〜21に係るテストタイヤは、燃費指数で従来例を上回る上に、騒音性能についても従来例を上回る。つまり、これらテストタイヤは、転がり抵抗を低減しつつ、車外音も同時に低減させることができる。なお、比較例2に係るテストタイヤは、燃費指数及び騒音性能について従来例を上回るものの、排水性能では従来例を大きく下回る。式<2>の関係を満たさない、比較例2に係るテストタイヤのトレッド部に配された溝が少ないからである。それに対して、実施例15〜17に係るテストタイヤは、従来例に対してほぼ同じ又は従来例を上回る排水性能を有しており好ましい。
さらに、表4の性能試験結果によれば、式<1>〜<4>の関係を満たす実施例15〜20に係るテストタイヤは、燃費指数で従来例を上回る上に、騒音性能及び操縦安定性の両方の性能において従来例を上回る。なお、実施例21は、操縦安定性において従来例を下回る。この結果は、実施例21に係る空気入りタイヤのトレッド部のショルダー領域ASにより多くの溝を配したことによるものと思われる。
(実施例22〜25)
実施例22〜25に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20である。上述のように、実施例22〜25に係る空気入りタイヤのトレッド部には、図2を基礎として変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで、実施例23〜25はさらに式<5>の関係を満たすが、実施例22は式<5>の関係を満たさない。また、実施例22〜24はさらに溝面積比率GCR1が20%以下であるが、実施例25は溝面積比率GCR1が20%以上である。
従来例及び実施例22〜25に係る空気入りタイヤについて、燃費指数及び騒音性能に関する性能試験が行われた。表5には、各テストタイヤの寸法に関する数値及び条件と、性能試験結果とが示されている。なお、以下の表5及び表6の「GCR1,GCR2比較」の項目において、「GCR1>」は溝面積比率GCR1が溝面積比率GCR2よりも大きいことを示し、「GCR2>」は溝面積比率GCR2が溝面積比率GCR1よりも大きいことを示している。つまり、「GCR2>」と表示されたテストタイヤは、式<5>を満たすことを意味している。
Figure 2016028964
表5の性能試験結果によれば、式<5>の関係を満たしかつ溝面積比率GCR1が20%以下である、実施例23及び実施例24に係る空気入りタイヤは、騒音性能において、実施例22及び実施例25を上回っている。つまり、車外音がさらに低減されている。
(実施例26、実施例27)
実施例26及び実施例27に係る空気入りタイヤは、タイヤサイズが165/55R20である。上述のように、実施例26及び実施例27に係る空気入りタイヤのトレッド部には、図2を基礎として変更されたトレッドパターンが設けられている。ここで、実施例26はさらに式<6>の関係を満たすが、実施例27は式<6>の関係を満たさない。
従来例、実施例26及び実施例27に係る空気入りタイヤについて、燃費指数及び騒音性能に関する性能試験が行われた。表6には、各テストタイヤの寸法に関する数値及び条件と、性能試験結果とが示されている。
Figure 2016028964
表6の性能試験結果によれば、式<6>の関係を満たす実施例26は、騒音性能において、従来例及び式<6>の関係を満たさない実施例27よりも上回る。つまり、車外音がさらに低減されている。
以上の表3〜6に示されたタイヤ試験結果により、本発明に係る空気入りタイヤは、転がり抵抗を低減しつつ、車外音も同時に低減できることが確認された。
本発明は、以下のように規定される。
(1) トレッド部に溝が設けられている空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤの総幅SWと外径ODとの比であるSW/ODが、
SW/OD ≦ 0.3
を満たし、
前記トレッド部の接地領域において、接地面積に対する溝面積比率をGRとし、接地幅をWとし、タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域をセンター領域ACとし、前記センター領域ACでの溝面積比率をGCRとし、前記センター領域ACよりもタイヤ幅方向外側の接地領域をショルダー領域ASとし、前記ショルダー領域ASでの溝面積比率をGSRとした場合に、
前記トレッド部の接地領域は、
10[%] ≦ GR ≦ 25[%]
GCR ≦ GSR
を満たして形成されている、
空気入りタイヤ。
(2) 前記GCRと前記GSRの関係が、
1.0 ≦ GSR/GCR ≦ 2.0
を満たす、
(1)に記載の空気入りタイヤ。
(3) タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの25%に相当する幅を有する領域を領域AC1とし、前記領域AC1における溝面積比率をGCR1とし、前記センター領域ACのうちの前記領域AC1よりも幅方向外側に含まれる領域を領域AC2とし、前記領域AC2における溝面積比率をGCR2としたときに、
GCR1 < GCR2
を満たす、
(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
(4) 前記溝面積比率GCR1が20%以下である、
(3)に記載の空気入りタイヤ。
(5) タイヤ周方向に延びる周方向溝が、前記トレッド部に1本以上設けられ、
前記センター領域ACにおける前記周方向溝の溝面積比率をAとすると、前記溝面積比率GCRに対する比が、
0 ≦ A/GCR ≦ 1.0
を満たす、
(1)〜(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
(6) 前記ショルダー領域ASに少なくとも一部が含まれると共に前記周方向溝によって区画された陸部のうちのタイヤ幅方向の最も外側に位置する陸部に、幅方向溝が設けられ、
前記幅方向溝のタイヤ幅方向の内側終端又は外側終端のうちいずれか一方は、前記陸部内で終端する、
(1)〜(5)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用の省燃費性を向上させた空気入りタイヤとして好適に利用することができる。
1 空気入りタイヤ
10 トレッド部
12、12A、12B 周方向溝
14、14A、14B 陸部
16、16A、16B 幅方向溝
SW 総幅
OD 外径
W 接地幅
AC センター領域
AS ショルダー領域
GR 溝面積比率
GCR センター領域での溝面積比率
GSR ショルダー領域での溝面積比率

Claims (7)

  1. トレッド部に溝が設けられている空気入りタイヤであって、
    前記空気入りタイヤの総幅SWと外径ODとの比であるSW/ODが、
    SW/OD ≦ 0.3
    を満たし、
    前記トレッド部の接地領域において、接地面積に対する溝面積比率をGRとし、接地幅をWとし、タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの50%の幅を有する領域をセンター領域ACとし、前記センター領域ACでの溝面積比率をGCRとし、前記センター領域ACよりもタイヤ幅方向外側の接地領域をショルダー領域ASとし、前記ショルダー領域ASでの溝面積比率をGSRとした場合に、
    前記トレッド部の接地領域は、
    10[%] ≦ GR ≦ 25[%]
    GCR ≦ GSR
    を満たして形成されている、
    空気入りタイヤ。
  2. 前記GCRと前記GSRの関係が、
    1.0 ≦ GSR/GCR ≦ 2.0
    を満たす、
    請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの25%に相当する幅を有する領域を領域AC1とし、前記領域AC1における溝面積比率をGCR1とし、前記センター領域ACのうちの前記領域AC1よりも幅方向外側に含まれる領域を領域AC2とし、前記領域AC2における溝面積比率をGCR2としたときに、
    GCR1 < GCR2
    を満たす、
    請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記溝面積比率GCR1が20%以下である、
    請求項3記載の空気入りタイヤ。
  5. タイヤ赤道線を中心として接地幅Wの25%に相当する幅を有する領域を領域AC1とし、前記領域AC1における溝面積比率をGCR1としたときに、
    前記溝面積比率GCR1が20%以下である、
    請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  6. タイヤ周方向に延びる周方向溝が、前記トレッド部に1本以上設けられ、
    前記センター領域ACにおける前記周方向溝の溝面積比率をAとすると、前記溝面積比率GCRに対する比が、
    0 ≦ A/GCR ≦ 1.0
    を満たす、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記ショルダー領域ASに少なくとも一部が含まれると共に前記周方向溝によって区画された陸部のうちのタイヤ幅方向の最も外側に位置する陸部に、幅方向溝が設けられ、
    前記幅方向溝のタイヤ幅方向の内側終端又は外側終端のうちいずれか一方は、前記陸部内で終端する、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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