JP2016023995A - 放射性セシウムで汚染された表土中の放射性セシウムを固定する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表土を耐浸出性にすぐれた固化体に変え、その内部に放射性Csを安定に取り込んだ形で固定する方法を提供する。
【解決手段】汚染された表土100部(重量部。以下同じ)に焼却灰10〜30部を混合し、適宜の形状に成形したのち、1000℃以上の温度に加熱し焼結して固化体とする。
【選択図】なし
【解決手段】汚染された表土100部(重量部。以下同じ)に焼却灰10〜30部を混合し、適宜の形状に成形したのち、1000℃以上の温度に加熱し焼結して固化体とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、放射性セシウムで汚染された表土と瓦礫とを焼結することにより放射性セシウムを安定に固定して、溶出を防止する方法に関する。ここで「瓦礫」とは、雑木雑草の焼却灰や都市ゴミの焼却灰をいう。東日本大震災により破壊された家屋などの残骸を焼却処理することにより発生した、放射性セシウムを含むことのある焼却灰もこれに包含される。以下の記述においては、まとめて「焼却灰」と呼ぶ。
原子力発電所の事故によって放出された放射性セシウム(134Csと137Csとがあるが、以下あわせて「放射性Cs」という。)は、風に乗って広い範囲にまき散らされ、田畑、森林、湖沼、街区に降り注いだので、それら放射性物質を除去して安全に生活できるようにするための除染作業が、各地で続けられている。そうした除染作業のうちで、たとえば校庭の表土を汚染している放射性Csの除去は、放射線の影響を受けやすい児童・生徒などを放射線の害から守るために、喫緊の仕事である。表土をかき集めて来ることにより除染の目的は達成できるが、問題は集めた大量の表土をどのようにして安全に処理するかにある。
放射性Csを含む廃棄物や瓦礫を処理して安定なものにする端的な手段として、それらを溶融炉に投入して1100〜2800℃の高温で溶融し、得られたスラグを固化する処理法が提案された(特許文献1「放射性セシウムを含んだ瓦礫処理」)。この処理によりCsは、カルシウムなどと同様に酸化物となるが、固化したスラグからCsが溶出する危険は十分に防止されていないし、溶融温度があまり高いとCsの蒸気圧が高くなって、排気中に逸出するおそれがある。いうまでもなく、高温の処理がエネルギーの消費が多く、不利である。
気体となったCsの捕集には、セラミックフィルターが用いられている。放射性Csを捕集した廃フィルターを安全に処理し、耐浸出性および熱安定性にすぐれた固化体にする方法として、廃フィルターを粉砕し、500〜1500℃に加熱して一次焼結し、固化剤を添加した後、900〜1800℃に加熱する二次焼結をおこなう技術が開示された(特許文献2「放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴット及びその製造方法」)。固化剤としてはNa2O、K2O、Fe2O3、TiO2、MgO、CaOおよびB2O3から選んだものを使用する。得られたセラミックインゴットは、コランダム、クリストバライト、ポルサイトなどの形態であって、その中で放射性Csは安定に存在するという。
一方、放射性Csで汚染された土壌を浄化する手段として、低濃度の酸水溶液と土壌を混合し、200℃で処理することによって、土壌中に含まれる放射性Csが、ほぼ100%抽出できることが報告された(非特許文献1)。抽出された放射性Csを減容し、安定な固化体とするために、溶液中の放射性Csを適宜の吸着材に吸着させることが試みられ、その系統の技術に関しては多数の提案がある。吸着材としては、天然または合成のゼオライト、プルシャンブルー、リン酸ジルコニウムなどが用いられている。ゼオライトは簡易であるが、減容化が十分ではなく、この点で有利なプルシャンブルーの利用が有望視されている。
特開2013−242287
特開2014−85336
産総研発表(2011年8月31日)
表土の除染は、ある深さまで表土をはぎ取ることが直接的であり有効であるが、除去された表土の量は膨大であるから、その中の放射性Csを抽出するとい処理は、処理対象があまりに膨大な量になって、現実的とはいえない。大量の薬剤や吸着材を使用し、多大なエネルギーを消費した上で、なお固定化によって生じた固化体の管理が問題になるからである。結局、放射性Csで汚染された表土の処理方法としては、表土を耐浸出性にすぐれた固化体に変え、一定以上の深さに埋め戻すといった処理が適切である。
一方、震災や津波により破壊された建築物や家財などは、焼却処理するほかないが、放射性Csで汚染されたものもあり、それらから生じた焼却灰もまた、耐浸出性を確保した固化体に変える必要がある。同様な問題は、樹木から生じた落ち葉や枯れ枝の焼却によって生じる草木灰に関してもある。
本発明の目的は、上記した事情にかんがみ、放射性Csで汚染された表土を、抽出剤や吸着材を使用することなく、そのまま耐浸出性にすぐれた固化体に変えて、その内部に放射性Csを安定に取り込んだ形で固定することを可能にする方法を提供することにある。
上記の目的を達成する本発明の固化体を得る方法は、基本的な態様としては、放射性Csで汚染された表土100重量部に対して焼却灰10〜30重量部を混合し、成形した後、温度1000〜1350℃に加熱して焼結させることからなる。
本発明の固化体を得る方法の有利な実施態様は、表土100重量部および焼却灰10〜30重量部に加えて、焼結助剤として、Na,K,Li,CaおよびMgの1種または2種以上から選んだ金属の酸化物または塩類を5〜20重量部混合し、成形した後、温度500〜1000℃に加熱して焼結させることからなる。
本発明の固化体を得る方法の変更態様は、上記した基本的な態様または好適な実施態様のいずれかにおいて、表土および焼却灰の混合物、または表土、焼却灰および焼結助剤の混合物の成形性を助けるため、表土100重量部に対する割合で10重量部以下のバインダーを添加して成形した後、温度1000〜1350℃または500〜1000℃に加熱して焼結させることからなる。
このバインダーとしては、タールピッチ、種々のプラスチック材料、ポリビニルアルコールやヒドロキシメチルセルロースのような有機バインダーが好適であるが、水酸化カルシウムやポルトランドセメントのような無機バインダーも使用できる。とりわけ水酸化カルシウムは、表土+焼却灰の混合物に混合した場合、成形時に成形性を助ける作用があるという点で無機バインダーとして役立ち、焼結に当たって焼結助剤としても有用であるという点で、好適なバインダー兼焼結助剤である。
本発明の方法によって放射性Csで汚染された表土を固化体に変えれば、部分的にガラス化した焼結物となり、放射性Csをその内部に取り込んだ固化体が得られる。焼結物は緻密な組織をもつから、表土のままの状態にくらべて、かなりな程度の減容が実現する。放射性Csはこの固化体の内部に安定に取り込まれており、固化体が水に接触したときにも溶出するおそれは、実質上ないといってよい。表土と混合する焼却灰にも放射性Csが含まれていた場合、それも焼結によってガラス化し、灰の中にあった放射性Csもまた固定される結果となり、一石二鳥の効果が得られる。
好適な実施態様に従った場合、焼結助剤の添加により、成形体の焼結温度に必要な最低の温度を顕著に低くすることができるから、処理に要するエネルギーの消費が各段に少なくて済むという利益がある。変更態様に従って成形時にバインダーを使用した場合は、焼結の対象にする成形体を得る、表土を主とする材料の集まりを成形する作業が容易になり、より減容度が高い成形が可能になるとともに、成形体の取り扱いを容易に行なうことができる。
この固化体は内部に含む放射性Csの半減期に応じて放射線を出すから、それに対する防御策を講じる必要があるが、防御手段は、たとえば、ある厚さの鋼板で遮蔽するとか、一定の深さの地中に埋設するといった簡単な方策で足りる。焼結によって得られた固化体は、かなりな機械的強度を有するから、たとえば地下に埋設する構造体の材料として、有利に使用することができる。上記のように耐浸出性にすぐれているから、地下水や雨水が接触しても放射性Csの溶出は、実質上生じない。
表土は、地域によって多少の違いがあるが、一般にケイ酸塩や、長石類のようなアルミノケイ酸塩と、シリカなどのほかに、カオリナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ムスコバイトなどの鉱物を含んだ混合物であり、「胎土」と呼ばれる陶磁器原料とほぼ同じ組成である。表土を汚染している放射性Csは、これらの鉱物に吸着またはイオン交換の形で固定されている。表土の組成を分析した例を、表1に示す。
一方、焼却灰は、雑木や雑草を燃やした草木灰はもちろん、都市ゴミを焼却して得た灰を含む。ゴミ焼却炉の灰には、炉内に残った、いわゆる「主灰」と、飛散した灰を集めた「飛灰」とがあり、前者が量的には主体であるが、後者も使用でき、混合して使用することが好都合である。除染作業に伴って発生した、これも放射性Csを含有する落ち葉や枯れ枝を焼却した灰を、あわせて処理するのが有利である。これらの灰は、焼却の対象によって異なるが、K,Ca,Mgの酸化物、シリカ、アルミナおよびリン酸化物を含む。各種の焼却灰の分析例を、表2に示す。
表土と焼却灰とを混合して加熱すれば、表土を部分的にガラス化して、液相焼結を実現し、緻密な固化体を得ることができ、放射性Csは固化体の内部に安定に取り込まれる。焼結の対象は、上述のように、表土100重量部に対して10〜30重量部の範囲が適切である。10重量部に満たない少量では焼結が不十分であり、かつ焼結温度が高くて、固化体を得るために要するエネルギーが過大となる。一方、30重量部を超える多量では、かえって固化体の耐溶出性が損なわれる。
表土は、その採取した地域によって異なるが、一般に微細な粒子と粗大な粒子とが混在している。その粒径による区分は、つぎのとおりである。
(微細)細粒分 〜0.075mm 粘土−シルト
粗粒分 0.075〜2.0mm 砂(細砂−中砂−粗砂)
2.0〜75.0mm 礫(細礫−中礫−粗礫)
(粗大)石 分 75mm〜 石(粗石−巨石)
微粒子はガラス化の促進に有利である一方、粗大な粒子は骨材として働き、焼結時の収縮や割れを防ぐから、適度な粒度分布をもっていることは、むしろ好ましいことである。多くの表土において、径0.075mm以上の粗な粒子は、表土全体の15〜20%程度であって、表土をあえて粉砕することなく、成形性にとって好ましくない礫や砂利を除去しさえすれば、たいていの表土はそのまま固化体製造の材料として使用することができる。
(微細)細粒分 〜0.075mm 粘土−シルト
粗粒分 0.075〜2.0mm 砂(細砂−中砂−粗砂)
2.0〜75.0mm 礫(細礫−中礫−粗礫)
(粗大)石 分 75mm〜 石(粗石−巨石)
微粒子はガラス化の促進に有利である一方、粗大な粒子は骨材として働き、焼結時の収縮や割れを防ぐから、適度な粒度分布をもっていることは、むしろ好ましいことである。多くの表土において、径0.075mm以上の粗な粒子は、表土全体の15〜20%程度であって、表土をあえて粉砕することなく、成形性にとって好ましくない礫や砂利を除去しさえすれば、たいていの表土はそのまま固化体製造の材料として使用することができる。
焼結助剤は、表土と焼却灰の混合物の焼結に当たって、低融点の融液を形成して焼結体のガラス化を促進するので、固化体の緻密化とその内部への放射性Csの取り込みを助けるから、その使用は強く推奨される。これには、前記のようにNa,K,Li,CaおよびMgの1種または2種以上から選んだ金属の酸化物または塩類、具体的には炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、消化ドロマイト、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを使用する。
上記の焼結助剤の中でも、水酸化カルシウムは、焼結促進作用に加えて、それを添加した混合物の成形性を高める、つまりバインダーとしての作用をも併せもつので、廉価で入手しやすく、取り扱いも容易であるという利点と相俟って、最良の焼結助剤ということができる。焼結助剤の使用量は、表土100重量部に対して5〜20重量部の範囲とする。5重量部に満たない量であると焼結温度を低下させる効果が不十分であるし、20部を超える多量を添加しても、それ以上焼結温度の低下は望めない。
バインダーは、成形体の強度が不足で取り扱いに不利である場合に添加する。タールピッチや、アクリル樹脂など各種の合成樹脂、ポリビニルアルコールやヒドロキシメチルセルロースのような有機バインダーが有用であるほか、上記の水酸化カルシウムやポルトランドセメントのような無機バインダーも使用可能である。焼結により消滅する有機バインダーの方が、固化体の容積を増やさないという観点から有利である。添加量は、表土100重量部に対して5重量部以内で足り、できるだけ少量に止めるのが得策である。
表土と焼却灰の混合物、それらと焼結助剤との混合物、またはさらにバインダーを添加したものを混合する装置は、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサーなど工業的に使用されているものから選択して使用する。混合に要する時間は、装置の種類や容量によっても、また投入した材料の量によっても異なるが、バッチ作業において1バッチの混合を2時間以内に完了できることが、効率の点から好ましい。
混合物の成形は、混合した材料の焼結を均一に、かつ効率的に行なうことができるように、また得られた固化体の取り扱いが容易であるようにするため、実施する工程である。そのための装置および工程は任意であって、一軸成形、押出成形、ロール成形、ラバープレス、鋳込み成形などさまざまなものから選択することができる。もっとも簡易な態様としては、プレス型内に一定量の混合剤量を充填し、一軸圧縮すなわち型の軸方向に圧力を加える成形法が実施容易で好ましい。その場合の成形圧は、とくに制限はないが、一般に5〜100MPaの範囲から選ぶのが適切である。
焼結は、焼結助剤を加えない場合は、放射性Csの固定に必要なガラス化を達成するために、1000〜1350℃の温度範囲に加熱して行なう必要がある。温度をこれ以上高くすると、Csの蒸気圧が高くなって、放射性物質を揮発・飛散を招くおそれが出てくる。これに対して、適切な焼結助剤を選択してその適量を使用した場合は、液相の生成温度を下げることができ、その結果として、焼結に要する加熱温度を1000℃以下に、好適な場合には500℃近辺まで低くすることができる。これは、焼結に要するエネルギー消費の顕著な低下と、焼結に用いる装置の長期間の使用を可能にする。
焼結に用いる装置は、バッチ炉、ローラー炉、メッシュ炉などさまざまなものから選ぶことができる。ここで推奨すべき実施態様として、炉の耐火レンガとして、多孔質の珪石レンガまたは粘土レンガを使用することを特筆すべきであろう。この種のレンガは、焼結中に微量ではあるが揮発し飛散する放射性Csと反応して、ケイ酸セシウムやアルミノケイ酸セシウムの形で、これをレンガ表面に固定する働きがあるからである。
焼結の雰囲気にはとくに制限はなく、酸化性−中性−還元性のどれであってもよいが、成形に先だってバインダーを使用した場合は、それを焼結中に燃焼させるために、酸化性雰囲気が好ましい。加熱は、できるだけ短時間に完了することが望ましいのはもちろんであるが、通常、5時間以内であれば実用的である。成形体は、後記する例では小型のペレット状としたが、より大型の成形体、たとえば地下に埋める杭のようなものに成形した場合、焼結に24時間といった長時間を要するであろう。
校庭から採取した表土に、焼却灰として草木灰を加えて成形し、焼結した例を示す。焼却灰として使用した草木灰の化学組成は、前記した表2の「草木灰」の欄に記載したとおりである。表土には礫が混在し、それが成形の支障になるので、フルイ分けにより40mm以上の粗な粒子を除去したのち、乾燥機に入れて、110℃×24時間、乾燥した。その組成は、前記した表1に記載のとおりである。この表土に、試薬の塩化セシウム(関東化学社製)を、表土100gに対して10mg、すなわちCs含有量が100ppmとなるように加え、ヘンシェルミキサーで混合して汚染シミュレーション表土とした。
汚染シミュレーション表土100重量部に対し、何も加えない(比較例1)か、焼却灰とバインダーを加える(実施例1〜3および比較例2,3)か、焼却灰と焼結助剤を加える(実施例4)か、または焼却灰、焼結助剤およびバインダーを加え(実施例5〜8および比較例4)、アルミナ製の自動乳鉢で1時間混合した。混合時に、必要に応じて若干の水を加えた。混合物を圧力10MPaで一軸圧縮して、直径40mm×高さ10mmのタブレット形状に成形した。
成形体をアルミナるつぼに入れ、昇温速度400℃/時で昇温し、焼却灰と焼結助剤の両方を加えたものは400〜1100℃の範囲に、それ以外のものは1000〜1500℃の範囲に1〜5時間加熱して、まず焼結が有利に進行する温度を見出した。ついで、各成形体をそれぞれの焼結温度に2時間保持して焼結させることにより、固化体サンプルを得た。
得られた固化体サンプルからのCsの溶出試験を、JIS K−0058−1「スラグ類の化学物質試験方法 第1部:溶出試験方法」に準拠した方法によって実施した。具体的には、焼結体に対して10倍量の溶媒(水)を加え、200rpmで6時間撹拌し、10〜30分間静置したのち、溶媒を抜き、抜き取った液を3000rpmで20分間遠心分離し、上澄み液を細孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過して検液とし、その中のCsの定量を、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により行なった。
表3に、各実施例および比較例の原料配合割合と、焼結条件および溶出試験の結果を示す。ここに示した実施例および比較例は、放射性Csを用いていないものであるから、いわゆるコールドランの例ではあるが、固化体中のCsの物理的・化学的な挙動は、それが放射性であるか非放射性であるかを問わず同等であると考えられ、この前提に立てば実施例および比較例のデータをそのまま、Csが放射性である場合の、いわゆるホットランのデータとして受け取ることができる。すなわち、本発明の効果は、ここに掲げるデータにより確認されているということができる。
表3に掲げた結果から、つぎのことがいえる。まず、焼結温度と成形性について、
(1)実施例1〜3は、焼結助剤を添加することなく、表土100重量部に対して焼却灰の量を10,20,30重量部と増加させた例であって、焼却灰の量が増すにつれて焼結温度を低くできることが明らかになった。しかし、焼結温度はいずれも1000℃を上回っている。
(2)比較例2は焼却灰の量が少ない場合であって、まったく使用しない場合の比較例1にくらべて、焼結温度を低くすることができなかった。一方、焼却灰が多量である比較例3も、焼結助剤を加えてないので、やはり焼結温度が1100℃という高温であった。
(3)比較例3はまた、焼却灰が多量に過ぎたため、バインダーとしてタールピッチ10重量部を使用したにもかかわらず、成形体の強度が不足で取り扱いに不都合であった。
(1)実施例1〜3は、焼結助剤を添加することなく、表土100重量部に対して焼却灰の量を10,20,30重量部と増加させた例であって、焼却灰の量が増すにつれて焼結温度を低くできることが明らかになった。しかし、焼結温度はいずれも1000℃を上回っている。
(2)比較例2は焼却灰の量が少ない場合であって、まったく使用しない場合の比較例1にくらべて、焼結温度を低くすることができなかった。一方、焼却灰が多量である比較例3も、焼結助剤を加えてないので、やはり焼結温度が1100℃という高温であった。
(3)比較例3はまた、焼却灰が多量に過ぎたため、バインダーとしてタールピッチ10重量部を使用したにもかかわらず、成形体の強度が不足で取り扱いに不都合であった。
つぎに、焼結助剤の効果についていえば、
(4)実施例4〜6においては、焼却灰を適量の10〜30重量部に加えて焼結助剤を5〜20重量部添加したので、焼結温度を1000℃以下に、もっとも有利な実施例6においては、500℃にまで低下させることができた。
(5)焼却灰が10重量部、焼結助剤が6重量部である実施例4に対し、比較例4は、焼却灰が8重量部、焼結助剤が4重量部と少なめであるため、焼結温度は前者の1000℃に対して後者は1100℃と若干高かった。
(4)実施例4〜6においては、焼却灰を適量の10〜30重量部に加えて焼結助剤を5〜20重量部添加したので、焼結温度を1000℃以下に、もっとも有利な実施例6においては、500℃にまで低下させることができた。
(5)焼却灰が10重量部、焼結助剤が6重量部である実施例4に対し、比較例4は、焼却灰が8重量部、焼結助剤が4重量部と少なめであるため、焼結温度は前者の1000℃に対して後者は1100℃と若干高かった。
固化体からのCsの溶出可能性は、
(6)実施例1〜8のいずれも、検出限界である1ppmに達しなかったのに対し、比較例1〜3においては、若干の溶出が確認された。とくに、成形に困難があった比較例3では最大の1.8ppmのCs溶出があり、焼結に先立つ成形が固化体の緻密さをもたらし、それが耐浸出性にとって重要であることがわかった。
(7)比較例4は、焼結助剤を使用したにもかかわらず焼結温度が1100℃と高いため比較例としたが、Csの溶出は認められなかった。なお、未処理の汚染シミュレーション表土からのCs溶出量は、3ppm程度であった。
(6)実施例1〜8のいずれも、検出限界である1ppmに達しなかったのに対し、比較例1〜3においては、若干の溶出が確認された。とくに、成形に困難があった比較例3では最大の1.8ppmのCs溶出があり、焼結に先立つ成形が固化体の緻密さをもたらし、それが耐浸出性にとって重要であることがわかった。
(7)比較例4は、焼結助剤を使用したにもかかわらず焼結温度が1100℃と高いため比較例としたが、Csの溶出は認められなかった。なお、未処理の汚染シミュレーション表土からのCs溶出量は、3ppm程度であった。
それぞれの実施例において得られた焼結体各5個について、その寸法と重量を測定し、それらの平均値から、カサ密度と焼結時の収縮率とを求めた。実施例6の焼結体のカサ密度は2.3〜2.4g/cm3、収縮率は6〜8%であった。焼結前の粉体の状態における、表土−焼結助剤−バインダー混合物のカサ密度は0.4〜0.6g/cm3であったから、減容化の度合は1/6〜1/4程度である。
図2にみるムライトの針状結晶は、アスペクト比が約8であった。ムライト粒子の成長はアルミナとシリカの反応によるものであるから、きわめて遅いが、ガラス相が存在すると、その中ではイオンの拡散が速やかに行なわれるので、比較的大きなムライト結晶が生成する。焼結体をX線回折により分析すると、チャートのバックグラウンドが高くなっていることが特徴的であり、これはガラス相の形成を示している。主な生成物は、上記のムライト(3Al2O3・2SiO2)、クリストバライト(SiO2の一形態)のほかに、ウォラストナイト(ケイ灰石:(Ca,Mn,Fe)SiO3)があることが、X線回折により確認された。
実施例6の焼結体をEDX分析した結果、Csは焼結体の内部に広く分布しており、焼結体中のガラス相や、シリカ粒子(クリストバライト)を囲むマトリクスの境界部分、および析出粒子の表面部分に高濃度で存在することが確認された。こうした事実に基づけば、Csはガラスのネットワークの端成分として、あるいはケイ酸セシウムないしアルミノケイ酸セシウムなどとして取り込まれていると考えられる。
本発明の方法は、放射性Csで汚染された表土の害を軽減する目的でとりあえず行なわれている、表土とその下の層とを入れ替える、いわゆる「天地返し」にくらべて本格的であって、高い耐浸出性を有する固化体をある程度以上の深さに埋めることにより、放射性Csに由来する放射線の害を実質上封じ込めて、その地域の安全を確保することのできる確実な対策ということができる。本発明の方法はまた、地域除染の結果として多量に集められ、最終処分のために蓄積されている汚染表土の処理のために有用であり、中間貯蔵施設に関する負担を軽減する上で期待される技術である。
本発明は、放射性セシウムで汚染された表土を、焼却灰とともに焼結することにより放射性セシウムを安定に固定して、溶出を防止する方法に関する。ここで「焼却灰」とは、雑木雑草の焼却灰や都市ゴミの焼却灰をいう。東日本大震災により破壊された家屋などの残骸を焼却処理することにより発生した、放射性セシウムを含むことのある焼却灰もこれに包含される。以下の記述においては、まとめて「焼却灰」と呼ぶ。
Claims (5)
- 放射性セシウムで汚染された表土100重量部に対して焼却灰10〜30重量部を混合し、成形した後、温度1000〜1350℃に加熱して焼結させることからなる、放射性セシウムで汚染された表土中の放射性セシウムを安定に固定した固化体を得る方法。
- 放射性セシウムで汚染された表土100重量部および焼却灰10〜30重量部に加えて、焼結助剤として、Na,K,Li,CaおよびMgの1種または2種以上から選んだ金属の酸化物または塩類である焼結助剤を5〜20重量部混合し、成形した後、温度500〜1000℃に加熱して焼結させることからなる放射性セシウムで汚染された表土中の放射性セシウムを安定に固定した固化体を得る方法。
- 請求項1または2に記載した放射性セシウムで汚染された表土中の放射性セシウムを安定に固定した固化体を得る方法において、表土および焼却灰の混合物、または表土、焼却灰および焼結助剤の混合物に、表土100重量部に対する割合で10重量部以下の、タールピッチ、合成樹脂、ポリビニルアルコールおよびヒドロキシメチルセルロースから選んだバインダーを添加して成形した後、焼結助剤の有無に従って、温度1000〜1350℃または500〜1000℃に加熱して焼結させることからなる方法。
- 請求項2に記載した放射性セシウムで汚染された表土中の放射性セシウムを安定に固定した固化体を得る方法において、焼結助剤として水酸化カルシウムを使用して実施する方法。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の放射性セシウムで汚染された表土中の放射性セシウムを安定に固定した固化体を得る方法によって製造した、セシウム溶出量(JIS K 0058−1により測定)が1ppm以下である固化体。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017166948A (ja) * | 2016-03-16 | 2017-09-21 | 株式会社東芝 | 放射性ストロンチウム汚染土壌の処理方法及び処理装置 |
CN107274951A (zh) * | 2017-06-19 | 2017-10-20 | 中国科学院武汉岩土力学研究所 | 具有负电荷密度梯度的缓冲回填层及其设计方法 |
CN112366019A (zh) * | 2020-10-26 | 2021-02-12 | 西南科技大学 | 一种含放射性复杂组分污染土壤的快速处理方法 |
CN114550965A (zh) * | 2021-12-27 | 2022-05-27 | 中国原子能科学研究院 | 放射性铯废物的偏铝酸钠-硅胶体系陶瓷固化的方法 |
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2014
- 2014-07-17 JP JP2014147242A patent/JP2016023995A/ja active Pending
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JP2017166948A (ja) * | 2016-03-16 | 2017-09-21 | 株式会社東芝 | 放射性ストロンチウム汚染土壌の処理方法及び処理装置 |
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CN114550965A (zh) * | 2021-12-27 | 2022-05-27 | 中国原子能科学研究院 | 放射性铯废物的偏铝酸钠-硅胶体系陶瓷固化的方法 |
CN114550965B (zh) * | 2021-12-27 | 2024-02-20 | 中国原子能科学研究院 | 放射性铯废物的偏铝酸钠-硅胶体系陶瓷固化的方法 |
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