JP2016023337A - 耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼 - Google Patents

耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】Moの粒界偏析量と製造条件を調整することで耐粒界腐食特性の向上を図ったNi合金クラッド鋼を提供する。【解決手段】 Ni合金からなる合せ材と母材とからなる組立用スラブを1050℃以上1200℃以下に加熱後、1000℃以上での圧下比を2以上とし、圧延仕上温度を950〜800℃とする熱間圧延を行った後、直ちに冷却速度5℃/s以上、冷却停止温度500℃以下とする加速冷却を行った後に放冷して得られた、合せ材の粒界に偏析するMo量(質量%)と粒内のMo量(質量%)との比が1.5以下であることを特徴とする耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼。【選択図】図1

Description

本発明は、耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼およびその製造方法に関する。
近年、エネルギー問題から従来採掘が困難であった難採掘環境においてもエネルギー資源開発が進んでいる。このような難採掘環境は特に腐食環境も厳しく、より耐食性に優れた高合金クラッド鋼のニーズが高まっている。さらに難採掘環境下で使用される産業設備や構造物では耐久性及び長寿命化並びにメンテナンスフリ−化が指向されており、Alloy625、825に代表されるNi合金はこれらニ−ズに適合した材料として注目を集めている。
一方で、Ni合金の主原料であるNiやMo、Crに代表される合金元素の価格は、時に高騰したり、大きく変動することがある。そのため、無垢材(全厚が合せ材の金属組成のような場合を云う。)としての使用よりも、高合金鋼の優れた防食性能をより経済的に利用することができるクラッド鋼が、最近、注目されている。
高合金クラッド鋼とは合せ材にNi合金、母材に普通鋼材と、二種類の性質の異なる金属を貼り合わせた鋼材である。クラッド鋼は、異種金属を金属学的に接合させたもので、めっきとは異なり剥離する心配がなく、単一金属及び合金では達し得ない新たな特性を持たせることができる。
クラッド鋼は、使用環境毎の目的に合った機能を有する合せ材を選択することにより、無垢材と同等の機能を発揮させることができる。さらに、クラッド鋼の母材には、耐食性以外の高靭性、高強度といった厳しい環境に適した炭素鋼や低合金鋼を適用することができる。
このように、クラッド鋼は、無垢材よりも合金元素の使用量が少なく、かつ、無垢材と同等の防錆性能を確保でき、さらに炭素鋼や低合金鋼と同等の強度や靭性を確保できるため、経済性と機能性が両立できるという利点を有する。
以上から、高合金の合せ材を用いたクラッド鋼は非常に有益な機能性鋼材であると考えられており、近年そのニ−ズが各種産業分野で益々高まっている。
しかし、クラッド鋼には複合材料であるが故の問題点が存在する。ステンレス鋼をはじめとする耐食性材料では、金属間化合物や炭化物、窒化物などの析出を生じると、析出物周辺部のCr濃度が低くなる。通常、これらの析出物は結晶粒界に優先的に析出するため、脱Cr領域が粒界に沿って連続的に形成される。この現象を鋭敏化という。鋭敏化の著しい材料は、腐食環境下に曝されると、脱Cr領域が優先腐食し結晶粒の脱落が生じるため、耐粒界腐食特性に劣る。
そのため、通常、無垢材では圧延後に溶体化処理を施して析出物を固溶させる。しかし、クラッド鋼の場合には析出物が溶け込むような高温に加熱保持すると、母材の普通鋼材の結晶粒が粗大化し、機械的特性が著しく劣化するという問題がある。
このような背景から、溶体化処理が不要な耐食性に優れたクラッド鋼の製造方法が検討されている。
クラッド鋼合せ材の鋭敏化を防止する報告として、以下に示す文献がある。
特許文献1には「ステンレスクラッド鋼の界面での炭素の拡散に着目して検討を行った結果、普通鋼中の炭素濃度が0.06%であっても、ステンレス側には、最大で0.1%近い炭素が拡散し、耐食性を著しく劣化する。かかる炭素の拡散を抑制するには、ステンレス鋼中の炭素濃度を低減するとともに、ステンレス鋼中にNb、Tiを適量添加し、拡散してきた炭素をNbC、TiCとして固着することが極めて有効である」旨が記載されている。
特許文献2には「フェライト系ステンレス鋼ではCr炭化物の析出により脱Cr領域が発生する温度域があるが、その逆にその温度域に長時間保持すればCrの拡散速度が速いため、脱Cr領域は粒内からのCrの拡散によりCrが補充され、脱Cr領域は消滅することが知れており、Crを十分に拡散させ、且つ母材が軟化しない熱処理方法を検討し、900℃に30分間保持した後、700℃まで空冷し、同温度に30分間保持して空冷した場合、母材の強度、靭性が全く劣化することがなく、しかも、合せ材のステンレス鋼にも全く脱Cr領域が発生しないことを知見した」旨が記載されている。
さらに、脱Cr領域以外の耐粒界腐食特性劣化の原因についての報告としては下記非特許文献がある。
非特許文献1には「Moを含むSUS316鋼において、粒界に析出するLaves相が粒界腐食の発生に極めて悪影響を及ぼす」旨が記載されている。
非特許文献2には「脱Cr領域が形成されていない場合においても、Pなどの耐酸性に劣る析出物が粒界上に析出することで耐鋭敏化特性が劣化する」旨が記載されている。
特開平06−182496号公報 特開昭62−093311号公報
材料と環境、44巻、p.448−452(1995) 鉄と鋼、79巻、No.6、95−102(1993)
上記したように、特許文献1、2及び非特許文献1、2には、耐鋭敏化特性を向上させる手段として、粒界上への炭化物、金属間化合物、Pなどの不純物元素の化合物の析出を抑止する方法が開示されているが、本発明は、上記した化合物等の粒界への析出防止とは全く異なる観点で、粒内と粒界への元素分配を調整するもので、Moの粒界偏析量と製造条件を調整することで耐粒界腐食特性の向上を図ったNi合金クラッド鋼を提供する。
発明者らは、粒界上の析出物が耐粒界腐食特性劣化の主な原因であることを念頭に置いて、Ni合金クラッド鋼合せ材の耐食性劣化について検討した。その結果、粒界上に析出物が存在しない場合でも耐粒界腐食特性が著しく劣化することがあることを知見した。さらに鋭意検討を重ねた結果、粒界上にMoが偏析することが耐粒界腐食特性の劣化原因の一つであり、耐粒界腐食特性は製造条件にも大きく左右されることを明らかにした。なお、本発明におけるNi合金とは、合金成分のうちでNiの含有量が最も多い合金をいうものとする。また、母材の成分組成は限定されるものではなく。一般構造用圧延鋼板、溶接構造用圧延鋼板、圧力容器用鋼板など多くの種類の鋼板が使用される。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1] Ni合金からなる合せ材と母材とからなる組立用スラブを1050℃以上1200℃以下に加熱後、1000℃以上での圧下比を2以上とし、圧延仕上温度を950〜800℃とする熱間圧延を行った後、直ちに冷却速度5℃/s以上、冷却停止温度500℃以下とする加速冷却を行った後に放冷して得られた、合せ材の粒界に偏析するMo量(質量%)と粒内のMo量(質量%)との比が1.5以下であることを特徴とする耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼。
[2] 前記Ni合金の成分組成として、質量%で、C:0.020%以下、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.02〜0.50%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Fe:5.0%以下、Al:0.02〜0.40%、Ti:0.10〜0.040%、Nb+Ta:3.15〜4.15%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からなることを特徴とする[1]記載の耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼。
本発明によれば、Ni合金クラッド鋼を適切な製造条件で製造することにより、Ni合金クラッド鋼の合せ材の粒界のMo量と粒内のMo量との比を1.5以下とし、優れた耐粒界腐食特性を有するNi合金クラッド鋼を得ることができる。さらに、優れた耐粒界腐食特性を得るにはCr、Nb等の合金元素を含有することが好ましい。
圧延仕上温度・圧延後の冷却条件と腐食速度の関係を説明する図である。
以下、本発明における成分の限定範囲、製造方法について説明する。各元素の%表示は、特に記載が無い限り質量%を意味する。
1.粒界に偏析するMo量(質量%)と粒内のMo量(質量%)との比が1.5以下
MoはNi合金の耐食性、特に耐孔食性を向上させる元素として積極的に添加される。しかし、高濃度の酸中ではMo添加は耐粒界腐食特性を劣化させる。それは、高濃度の酸中においてNi合金は過不働態状態となっており、Moは過不働態域の電流密度を増大する効果があるためである。粒界のMo量が粒内のMo量よりも高い場合、ガルバニックカップリング効果(腐食電位の異なる金属が接触することにより、腐食電位の卑な金属の腐食速度が上昇する現象)によって、より一層粒界の腐食速度が増大する。この粒界と粒内のMo量比と耐粒界腐食特性の関係性を鋭意検討した結果、粒界に偏析するMo量/粒内のMo量が1.5以下であれば十分な耐粒界腐食特性を示すことを明らかにした。また、粒界に偏析するMo量/粒内のMo量の下限値は、粒界と粒内のMo量が等しくなる1.0である。粒内と粒界のMo量はTEM−EDXによる分析で測定することが出来る。
Moの粒界偏析は結晶粒成長時のSolute drag効果(結晶粒の粒成長時に、鋼中に含まれる溶質元素が代表的な欠陥サイトである粒界に偏析する現象)によって生じる。そのため、Moの粒界への偏析量は圧延後の冷却速度により調整することが出来る。
圧延後の冷却速度が遅い場合は結晶粒成長に伴うSolute drag効果によりMoが粒界に偏析する。一方で、圧延後の冷却速度を速くすることで結晶粒成長を抑えられ、Moの粒界への偏析を避けられる。さらに、高温であるほど結晶粒成長速度は大きいため、圧延仕上温度が高温であるほどMoの粒界偏析は顕著に生じる。
2.Ni合金クラッド鋼の製造方法について
本発明のNi合金クラッド鋼の製造方法について以下に述べる。
本発明のクラッド鋼の合せ材は、粒界のMo量と粒内のMo量の比が1.5以下であるNi合金であれば良い。一方、母材の材質は用途などにより選定されるが、天然ガス等のパイプラインに使用される用途では、例えば母材として、質量%で、C:0.26%以下、Mn:1.65%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Nb+V+Ti:0.15%以下の低合金鋼を用いることができる。また、母材の成分組成は上記に限定されるものではなく。一般構造用圧延鋼板、溶接構造用圧延鋼板、圧力容器用鋼板など多くの種類の鋼板を使用することができる。
上記した合せ材と母材とを組み合わせ、クラッド圧延によりクラッド鋼板とする。
本発明において、合せ材と母材とを組み合わせたクラッド圧延用組立スラブを素材としてNi合金クラッド鋼を製造する。クラッド圧延用組立スラブは母材/合せ材/合せ材/母材というように重ね合わせた形式が製造上効率的であり、また冷却時の反りを考慮すると、母材同士、合せ材同士は等厚であることが望ましい。もちろん、上記で記述した組立方式に限定する必要が無いことは言うまでも無い。
加熱温度:1050℃以上、1200℃以下
加熱時に合せ材を十分溶体化するために1050℃以上に加熱する。しかし、高温に加熱しすぎると合せ材の熱間加工性が劣化するし、母材の結晶粒粗大化による靭性劣化を招く。そのため加熱温度は1050℃以上1200℃以下の範囲とする。好ましくは1050℃以上1150℃以下の範囲である。
1000℃以上での圧下比:2以上
十分な合せ材/母材界面接合を得るためには、1000℃以上での圧下比が2以上である必要がある。Ni合金は低合金鋼に比較して変形抵抗が大きく、クラッド材を製造する場合、良好な接合性が得られにくいという難点がある。しかし、1000℃以上の高温域ではNi合金と低合金鋼の変形抵抗差は小さくなる。そのため、1000℃以上での圧下比(=(圧延前の板厚)÷(圧延後の板厚))を2以上とすることで良好な合せ材/母材界面の接合強度が得られる。
圧延仕上温度:950〜800℃
圧延仕上温度が800℃未満となると、MCやM23などの鋭敏化を引き起こす炭化物が粒界に析出する。また、図1に示すように、圧延後放冷した場合とミスト冷却(加速冷却)した場合の腐食速度(g/m・hr)を比較すると、圧延仕上温度が950〜800℃の範囲ではミスト冷却(加速冷却)した場合の腐食速度(g/m・hr)が小さくなることがわかる。即ち、圧延仕上温度を950〜800℃の範囲として、圧延後加速冷却することで、優れた耐粒界腐食特性を得ることが出来る。従って、圧延仕上温度は950〜800℃の範囲とする。好ましくは920〜820℃の範囲である。
冷却速度:5℃/s以上、冷却停止温度:500℃以下
圧延終了後に冷却速度5℃/s以上で、500℃以下まで冷却するのは、炭化物の粒界析出とMoの粒界偏析を防止するためである。950〜800℃の圧延仕上温度から500℃の温度範囲における冷却速度が1℃/s未満ではMCやM23などの鋭敏化を引き起こす炭化物が粒界に析出する。また、冷却停止温度を500℃よりも高温にした場合も同様である。さらに、950〜800℃の圧延仕上温度から500℃の温度範囲における冷却速度が5℃/s未満ではMoの粒界偏析が生じ、耐粒界腐食特性が劣化する。そのため、圧延終了後に冷却速度5℃/s以上で500℃以下まで冷却を行う。好ましくは10℃/s以上、500℃以下である。なお、500℃以下の温度では放冷するものとする。
なお、本発明において、特に断らない限り、加熱温度、圧延仕上温度、冷却停止温度、冷却速度は鋼板平均温度とする。
ここで、鋼板平均温度は、スラブもしくは鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率等のパラメータを考慮して、熱伝導計算により求めたものである。また、冷却速度は熱間圧延終了後、冷却停止温度までの冷却に必要な温度差をその冷却を行うのに要した時間で割った平均冷却速度である。
3.合せ材の成分組成について
以下、本発明における合せ材は、粒界のMo量と粒内のMo量の比が1.5以下であるNi合金であれば良いが、更に好適な成分組成として以下のように規定する。なお、成分%は、特に記載がない限り質量%を意味する。
C:0.020%以下
Cはクラッド鋼の製造において、圧延および熱処理工程の熱履歴で炭化物として粒界に析出し、耐食性を阻害するため多量の含有は避けるべき元素である。0.020%を超えて含有すると、炭化物の析出が促進され、鋭敏化により耐食性が劣化するため、C量は0.020%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.010%以下である。
Si:0.02〜0.50%
Siは製鋼時の脱酸に有効な元素のため、0.02%以上含有するのがよい。しかし、SiはMCの析出を促進する元素であり、0.50%を超えて含有すると、析出Cr量の増大を引き起こし、鋭敏化が生じ易くなる。そのため、Si量は0.02〜0.50%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.20%の範囲である。
Mn:0.02〜0.50%
Mnも脱酸に有効な元素であり、0.02%以上含有するのがよい。しかし、0.50%を超えて含有すると、非金属介在物が残存し、耐食性が劣化し、また熱間加工性も劣化するため、Mn量は0.02〜0.50%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.15%の範囲である。
P:0.015%以下
Pは不純物元素であり、クラッド鋼板の接合性確保のため、1000℃以上で圧延する際に、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、P量は0.015%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.005%以下である。
S:0.015%以下
SはPと同様に不純物元素であり、クラッド鋼板の接合性確保のため、1000℃以上で圧延する際に、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、S量は0.015%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.001%以下である。
Cr:20.0〜23.0%
Crは、金属の表面に保護性の高い酸化物皮膜を形成し、耐孔食性や耐粒界腐食特性を向上させる元素である。しかし、Crを過剰に含有すると析出Cr量の増大を引き起こし、鋭敏化を生じ易くなる。従って、Niやその他の合金とのバランスも考え、Cr量は20.0〜23.0%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、21.0〜22.0%の範囲である。
Mo:8.0〜10.0%
Moは、耐孔食性、耐隙間腐食性を向上させる。また、Niとの複合添加によって、サワーガス環境中での耐応力腐食割れ感受性も改善する。しかし、10.0%を超えて含有すると粒界のMo偏析が顕著となり、耐粒界腐食特性が劣化する。そのため、Niやその他の合金元素との添加量を考慮して8.0〜10.0%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、9.0〜10.0%の範囲である。
Fe:5.0%以下
Feは、原料としてフェロクロム、フェロモリブデン等を用いた場合、不可逆的に混入する不純物であり、5.0%を超えるとNi量が低下して耐食性が低下するため、Fe量は5.0%以下とするのが好ましい。より好ましくは3.5%以下である。
Al:0.02〜0.40%
Alは脱酸に有効な元素として0.02%以上添加する。しかし、0.40%を超えて含有すると耐応力腐食割れ性が劣化するため、Al量は0.02〜0.40%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20%の範囲であるのが好ましい。よりより好ましくは、0.02〜0.15%の範囲である。
Ti:0.10〜0.40%
TiはCの固定化元素として有効であるため、0.10%以上含有する。しかし、多量に含有するとクラッド鋼板の接合界面で金属間化合物として析出し、接合性を阻害するため、Ti量は0.10〜0.40%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.10〜0.30%の範囲である。
Nb+Ta:3.15〜4.15%
Nb、TaもCの固定化に寄与する元素である。しかし、多量に含有するとクラッド鋼の接合界面で金属間化合物として析出し、接合性を阻害するため、Nb+Ta量は3.15〜4.15%の範囲とするのが好ましい。より好ましいNb+Ta量は3.50〜4.00%の範囲である。
残部
上記した合せ材の成分の残部はNiおよび不可避的不純物である。Niは耐食性を向上させる元素であり、特に、サワー環境での耐応力腐食割れ性を著しく改善する。前述したように、CrとMoとの複合添加効果でさらに耐食性は向上する。また、不可避的不純物としては、N、O、V、B、Wが挙げられ、それぞれN:0.01%以下、O:0.001%以下、V:0.04%以下、B:0.0005%以下、W:0.3%以下の範囲内で含有しても耐食性に何ら影響を与えるものではない。
4.材質の評価方法について
析出物の抽出には10vol%アセチルアセトン−1mass%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール混合液(通称10%AA液と呼ぶ)中での電解抽出(通称SPEED法と呼ぶ)を適用した。ろ過によりフィルター上に捕集した抽出残渣のXRD(X線回折)より、析出物の種類を特定した。また、粒界上の炭化物析出の有無、および粒界と粒内のMo量はTEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)により測定した。
次に合せ材であるNi合金の耐粒界腐食特性の評価方法について説明する。
耐粒界腐食特性はJIS G0573 ステンレス鋼の65mass%硝酸腐食試験(Huey試験)により評価した。
試験方法は沸騰させた65%硝酸溶液中に試験片を48時間浸漬させ、試験前後の重量変化から腐食速度(g/m・hr)を算出し、新たな沸騰65%硝酸溶液中に同一試験片を再び浸漬させる。この48時間浸漬試験を5回繰り返し、5回の腐食速度の平均値から耐粒界腐食特性を評価した。評価基準は0.60g/m・hr以下のものを耐粒界腐食特性が良好であると判断した。
合せ材と母材の接合性評価はJIS G0601 剪断強さ試験によった。
剪断強さ試験は合せ材を母材から接合面と平行に剥離し、その剥離に要した最大剪断強度から接合性を評価する方法である。評価基準は剪断応力が300MPa以上のものを接合性が良好であると判断した。
以下に本発明の実施例を比較例と対比して説明する。表1に示す化学成分の母材と合せ材(Ni合金)を用いて、クラッド鋼を製造した。
Figure 2016023337
製造条件は、母材/合せ材/合せ材/母材を重ねて一組とし、表2に示す条件で熱間圧延を行い、クラッド鋼板からせん断試験片、耐粒界腐食試験の試験片を採取し、各試験に供した。
Figure 2016023337
試験結果を表3に示す。合せ材の化学成分と製造条件が本発明の請求項を満足する水準1〜16のクラッド鋼は合せ材の耐食性と接合性を満足する。1000℃以上の圧下比が本発明の範囲外である水準17は接合性に劣っており、圧延仕上げ温度が本発明の範囲外である水準18および19は耐粒界腐食特性に劣っていた。また、冷却速度が本発明の範である水準20〜23は粒界に偏析するMo量/粒内のMo量が1.5以上であり、耐粒界腐食特性に劣っていた。
Figure 2016023337

Claims (2)

  1. Ni合金からなる合せ材と母材とからなる組立用スラブを1050℃以上1200℃以下に加熱後、1000℃以上での圧下比を2以上とし、圧延仕上温度を950〜800℃とする熱間圧延を行った後、直ちに冷却速度5℃/s以上、冷却停止温度500℃以下とする加速冷却を行った後に放冷して得られた、合せ材の粒界に偏析するMo量(質量%)と粒内のMo量(質量%)との比が1.5以下であることを特徴とする耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼。
  2. 前記Ni合金の成分組成として、質量%で、C:0.020%以下、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.02〜0.50%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Fe:5.0%以下、Al:0.02〜0.40%、Ti:0.10〜0.040%、Nb+Ta:3.15〜4.15%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼。
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