JP2016023337A - 耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
MoはNi合金の耐食性、特に耐孔食性を向上させる元素として積極的に添加される。しかし、高濃度の酸中ではMo添加は耐粒界腐食特性を劣化させる。それは、高濃度の酸中においてNi合金は過不働態状態となっており、Moは過不働態域の電流密度を増大する効果があるためである。粒界のMo量が粒内のMo量よりも高い場合、ガルバニックカップリング効果(腐食電位の異なる金属が接触することにより、腐食電位の卑な金属の腐食速度が上昇する現象)によって、より一層粒界の腐食速度が増大する。この粒界と粒内のMo量比と耐粒界腐食特性の関係性を鋭意検討した結果、粒界に偏析するMo量/粒内のMo量が1.5以下であれば十分な耐粒界腐食特性を示すことを明らかにした。また、粒界に偏析するMo量/粒内のMo量の下限値は、粒界と粒内のMo量が等しくなる1.0である。粒内と粒界のMo量はTEM−EDXによる分析で測定することが出来る。
本発明のNi合金クラッド鋼の製造方法について以下に述べる。
加熱時に合せ材を十分溶体化するために1050℃以上に加熱する。しかし、高温に加熱しすぎると合せ材の熱間加工性が劣化するし、母材の結晶粒粗大化による靭性劣化を招く。そのため加熱温度は1050℃以上1200℃以下の範囲とする。好ましくは1050℃以上1150℃以下の範囲である。
十分な合せ材/母材界面接合を得るためには、1000℃以上での圧下比が2以上である必要がある。Ni合金は低合金鋼に比較して変形抵抗が大きく、クラッド材を製造する場合、良好な接合性が得られにくいという難点がある。しかし、1000℃以上の高温域ではNi合金と低合金鋼の変形抵抗差は小さくなる。そのため、1000℃以上での圧下比(=(圧延前の板厚)÷(圧延後の板厚))を2以上とすることで良好な合せ材/母材界面の接合強度が得られる。
圧延仕上温度が800℃未満となると、M6CやM23C6などの鋭敏化を引き起こす炭化物が粒界に析出する。また、図1に示すように、圧延後放冷した場合とミスト冷却(加速冷却)した場合の腐食速度(g/m2・hr)を比較すると、圧延仕上温度が950〜800℃の範囲ではミスト冷却(加速冷却)した場合の腐食速度(g/m2・hr)が小さくなることがわかる。即ち、圧延仕上温度を950〜800℃の範囲として、圧延後加速冷却することで、優れた耐粒界腐食特性を得ることが出来る。従って、圧延仕上温度は950〜800℃の範囲とする。好ましくは920〜820℃の範囲である。
圧延終了後に冷却速度5℃/s以上で、500℃以下まで冷却するのは、炭化物の粒界析出とMoの粒界偏析を防止するためである。950〜800℃の圧延仕上温度から500℃の温度範囲における冷却速度が1℃/s未満ではM6CやM23C6などの鋭敏化を引き起こす炭化物が粒界に析出する。また、冷却停止温度を500℃よりも高温にした場合も同様である。さらに、950〜800℃の圧延仕上温度から500℃の温度範囲における冷却速度が5℃/s未満ではMoの粒界偏析が生じ、耐粒界腐食特性が劣化する。そのため、圧延終了後に冷却速度5℃/s以上で500℃以下まで冷却を行う。好ましくは10℃/s以上、500℃以下である。なお、500℃以下の温度では放冷するものとする。
以下、本発明における合せ材は、粒界のMo量と粒内のMo量の比が1.5以下であるNi合金であれば良いが、更に好適な成分組成として以下のように規定する。なお、成分%は、特に記載がない限り質量%を意味する。
Cはクラッド鋼の製造において、圧延および熱処理工程の熱履歴で炭化物として粒界に析出し、耐食性を阻害するため多量の含有は避けるべき元素である。0.020%を超えて含有すると、炭化物の析出が促進され、鋭敏化により耐食性が劣化するため、C量は0.020%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.010%以下である。
Siは製鋼時の脱酸に有効な元素のため、0.02%以上含有するのがよい。しかし、SiはM6Cの析出を促進する元素であり、0.50%を超えて含有すると、析出Cr量の増大を引き起こし、鋭敏化が生じ易くなる。そのため、Si量は0.02〜0.50%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.20%の範囲である。
Mnも脱酸に有効な元素であり、0.02%以上含有するのがよい。しかし、0.50%を超えて含有すると、非金属介在物が残存し、耐食性が劣化し、また熱間加工性も劣化するため、Mn量は0.02〜0.50%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.15%の範囲である。
Pは不純物元素であり、クラッド鋼板の接合性確保のため、1000℃以上で圧延する際に、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、P量は0.015%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.005%以下である。
SはPと同様に不純物元素であり、クラッド鋼板の接合性確保のため、1000℃以上で圧延する際に、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、S量は0.015%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.001%以下である。
Crは、金属の表面に保護性の高い酸化物皮膜を形成し、耐孔食性や耐粒界腐食特性を向上させる元素である。しかし、Crを過剰に含有すると析出Cr量の増大を引き起こし、鋭敏化を生じ易くなる。従って、Niやその他の合金とのバランスも考え、Cr量は20.0〜23.0%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、21.0〜22.0%の範囲である。
Moは、耐孔食性、耐隙間腐食性を向上させる。また、Niとの複合添加によって、サワーガス環境中での耐応力腐食割れ感受性も改善する。しかし、10.0%を超えて含有すると粒界のMo偏析が顕著となり、耐粒界腐食特性が劣化する。そのため、Niやその他の合金元素との添加量を考慮して8.0〜10.0%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、9.0〜10.0%の範囲である。
Feは、原料としてフェロクロム、フェロモリブデン等を用いた場合、不可逆的に混入する不純物であり、5.0%を超えるとNi量が低下して耐食性が低下するため、Fe量は5.0%以下とするのが好ましい。より好ましくは3.5%以下である。
Alは脱酸に有効な元素として0.02%以上添加する。しかし、0.40%を超えて含有すると耐応力腐食割れ性が劣化するため、Al量は0.02〜0.40%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20%の範囲であるのが好ましい。よりより好ましくは、0.02〜0.15%の範囲である。
TiはCの固定化元素として有効であるため、0.10%以上含有する。しかし、多量に含有するとクラッド鋼板の接合界面で金属間化合物として析出し、接合性を阻害するため、Ti量は0.10〜0.40%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.10〜0.30%の範囲である。
Nb、TaもCの固定化に寄与する元素である。しかし、多量に含有するとクラッド鋼の接合界面で金属間化合物として析出し、接合性を阻害するため、Nb+Ta量は3.15〜4.15%の範囲とするのが好ましい。より好ましいNb+Ta量は3.50〜4.00%の範囲である。
上記した合せ材の成分の残部はNiおよび不可避的不純物である。Niは耐食性を向上させる元素であり、特に、サワー環境での耐応力腐食割れ性を著しく改善する。前述したように、CrとMoとの複合添加効果でさらに耐食性は向上する。また、不可避的不純物としては、N、O、V、B、Wが挙げられ、それぞれN:0.01%以下、O:0.001%以下、V:0.04%以下、B:0.0005%以下、W:0.3%以下の範囲内で含有しても耐食性に何ら影響を与えるものではない。
析出物の抽出には10vol%アセチルアセトン−1mass%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール混合液(通称10%AA液と呼ぶ)中での電解抽出(通称SPEED法と呼ぶ)を適用した。ろ過によりフィルター上に捕集した抽出残渣のXRD(X線回折)より、析出物の種類を特定した。また、粒界上の炭化物析出の有無、および粒界と粒内のMo量はTEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)により測定した。
合せ材と母材の接合性評価はJIS G0601 剪断強さ試験によった。
Claims (2)
- Ni合金からなる合せ材と母材とからなる組立用スラブを1050℃以上1200℃以下に加熱後、1000℃以上での圧下比を2以上とし、圧延仕上温度を950〜800℃とする熱間圧延を行った後、直ちに冷却速度5℃/s以上、冷却停止温度500℃以下とする加速冷却を行った後に放冷して得られた、合せ材の粒界に偏析するMo量(質量%)と粒内のMo量(質量%)との比が1.5以下であることを特徴とする耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼。
- 前記Ni合金の成分組成として、質量%で、C:0.020%以下、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.02〜0.50%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Fe:5.0%以下、Al:0.02〜0.40%、Ti:0.10〜0.040%、Nb+Ta:3.15〜4.15%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の耐粒界腐食特性に優れたNi合金クラッド鋼。
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Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH05245657A (ja) * | 1992-03-06 | 1993-09-24 | Nkk Corp | 母材の脆性破壊伝播停止特性に優れた高ニッケル合金クラッド鋼板の製造方法 |
JP2014101568A (ja) * | 2012-11-22 | 2014-06-05 | Jfe Steel Corp | 溶接部靭性に優れた高靭性高耐食性Ni合金クラッド鋼板及びその製造方法 |
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