JP6587881B2 - 締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材 - Google Patents
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Description
γp=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn−11.5(Cr+Si)−12Mo−23V−49Ti−52Al−47Nb+189 ・・・(A)
C:0.02%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.0%以下、
P:0.040%以下、
S:0.005%以下、
Cr:10.0〜13.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜2.0%、
Cu:0.01〜2.0%、
Al:0.3%以下、
Ti:0.05%未満、
O:0.010%以下、
N:0.02%以下、
V:0〜0.5%、
Nb:0〜1.0%、
B:0〜0.010%、
Zr:0〜1.0%、
Ca:0〜0.02%、
Sn:0〜0.5%、
Mg:0〜0.1%、
Ga:0〜0.05%、
Sb:0〜0.5%、
W:0〜0.5%、
Ta:0〜0.5%、
Co:0〜0.5%、
REM:0〜0.1%、
残部:Feおよび不可避的不純物であり、
下記(i)式を満たし、かつ、下記(ii)式で表されるγpの値が下記(iii)式を満足する、締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材。
0.5Ni+0.5Cu−4Ti−4O≧0 ・・・(i)
γp=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn−11.5(Cr+Si)−12Mo−23V−49Ti−52Al−47Nb+189 ・・・(ii)
40≦γp<80 ・・・(iii)
但し、式中の各元素記号は、鋼材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
V:0.01〜0.5%、
Nb:0.05〜1.0%、
B:0.0005〜0.010%、
Zr:0.05〜1.0%、
Ca:0.0005〜0.02%、
Sn:0.001〜0.5%、
Mg:0.0005〜0.1%、
Ga:0.0005〜0.05%、
Sb:0.001〜0.5%、
W:0.01〜0.5%、
Ta:0.01〜0.5%、
Co:0.01〜0.5%および
REM:0.001〜0.1%、
から選択される1種以上を含有する、前記(1)または(2)に記載の締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cはマトリックスのフェライト組織の強度を高める効果を有する元素であるとともに、オーステナイト生成元素である。オーステナイト相は低温になる時にマルテンサイト相を生じ、結晶粒の粗大化を防ぐ役割を果たす。そのため、Cは靱性を向上させ、線状鋼材としての特性の確保にも寄与する。一方、CはTiおよびNbと結合して炭化物を形成するが、C含有量が0.02%を超えると、Cr炭化物を形成し、耐食性および靱性を劣化させる。したがって、C含有量は0.02%以下とする。C含有量は0.015%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、C含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Siは脱酸剤として働くだけでなく、SiO2の酸化皮膜を形成することによって異常酸化を抑制するため、耐酸化性の向上に有用な元素である。しかしながら、その含有量が2.0%を超えると靱性が劣化する。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。Si含有量は1.0%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、Si含有量を0.05%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすることがより好ましい。
MnはCと同様、マトリックスのフェライト組織の強度を高める効果を有する元素であるとともに、オーステナイト生成元素である。そのため、Mnは靱性の改善に有効な元素である。しかしながら、その含有量が1.0%を超えると耐食性および靱性が劣化する。したがって、Mn含有量は1.0%以下とする。Mn含有量は0.3%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、Mn含有量を0.05%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすることがより好ましい。
Pは靱性等の機械的性質を劣化させる元素である。特に、P含有量が0.040%を超えるとその悪影響が顕著になるため、P含有量は0.040%以下とする。P含有量は0.025%以下であるのが好ましい。
Sは靱性および耐食性を劣化させるため元素である。特に、S含有量が0.005%を超えるとその悪影響が顕著になるため、S含有量は0.005%以下とする。S含有量は0.003%以下であるのが好ましい。
Crは母材の耐食性を確保するのに有効な元素であるが、10.0%未満であると十分な耐食性の確保が困難となる。一方、Crはフェライト形成元素であるため、その含有量が13.0%を超えると、上述のγpの値が大きく低下し、適度なマルテンサイト量が確保できなくなり、靱性が低下する。したがって、Cr含有量は10.0〜13.0%とする。Cr含有量は10.5%以上であるのが好ましく、12.0%以下であるのが好ましい。
Niは母材の耐食性を向上させるのに有効な元素である。また、Niはオーステナイト形成元素であるため、マルテンサイトの形成を促進し、靱性を高める効果を有する。そのため、Ni含有量は0.01%以上とする。しかしながら、その含有量が1.0%を超えると、靱性が低下する。したがって、Ni含有量は0.01〜1.0%とする。Ni含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.3%以下であるのが好ましい。
Moは耐食性および高温強度を高め、焼付きを防止する効果を有する元素である。そのため、Mo含有量は0.01%以上とする。しかしながら、その含有量が2.0%を超えると、σ相が生成しやすくなり、さらに高価格な元素であるためコストダウンに寄与しなくなる。したがって、Mo含有量は0.01〜2.0%とする。Mo含有量は0.05%以上であるのが好ましい。
CuはC、NおよびNiに次ぐオーステナイト形成元素であり、上述の(ii)式で表されるγpの値を制御するためにも有効である。また、耐食性を向上させるのに有効な元素である。そのため、Cu含有量は0.01%以上とする。しかしながら、その含有量が2.0%を超えると靱性が低下する。したがって、Cu含有量は0.01〜2.0%とする。Cu含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.5%以下であるのが好ましい。
Alは脱酸元素であるとともに、微細な窒化物を形成し、微細なフェライトを形成し、靱性を向上させる効果を有する元素である。しかしながら、その含有量が0.3%を超えると逆に靱性が悪化する。そのため、Al含有量は0.3%以下とする。Al含有量は0.05%以下であるのが好ましく、0.03%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましい。
Tiは炭窒化物を形成してCを固定することでCr炭窒化物の生成を抑制し、耐食性および靱性を向上させる効果を有する元素である。しかしながら、その含有量が0.05%以上となると、粗大なTiNまたは酸化物が形成され、靱性を低下させる要因となる。したがって、Ti含有量は0.05%未満とする。Ti含有量は0.04%以下であるのが好ましい。
Oは介在物の形成および脱硫に影響を及ぼす元素であり、その含有量が0.010%を超えると、靱性が劣化する。そのため、O含有量は0.010%以下とする。
Nはマトリックスのフェライト組織の強度を高め、さらにTiおよびAlと窒化物を形成し、微細組織の形成に寄与する。しかしながら、その含有量が0.02%を超えると、Cr窒化物を形成するために耐食性が劣化し、さらに靱性が低下する。したがって、N含有量は0.02%以下とする。N含有量は0.015%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、N含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Vは微細な炭窒化物を生成し、微細なフェライト粒を形成し、靱性の向上に寄与するため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.5%を超えると、粗大なV系炭窒化物が生成するため、かえって靱性が劣化する。したがって、V含有量は0.5%以下とする。V含有量は0.3%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、V含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすることがより好ましい。
NbはTiと同様に炭窒化物を形成してCを固定することで、Cr炭窒化物の生成を抑制し、耐食性および靱性の向上に寄与するため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が1.0%を超えると粗大炭窒化物が形成されるため、かえって靱性が低下する。したがって、Nb含有量は1.0%以下とする。Nb含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.6%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、Nb含有量を0.05%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすることがより好ましく、0.3%以上とすることがさらに好ましい。
Bは粒界のP偏析を抑制し、靱性をさらに向上させるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.010%を超えると粗大ホウ化物が形成されるため、かえって靱性が低下する。したがって、B含有量は0.010%以下とする。B含有量は0.0050%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、B含有量を0.0005%以上とすることが好ましく、0.0020%以上とすることがより好ましい。
ZrはCr炭窒化物の生成を抑制するため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が1.0%を超えると粗大な炭窒化物に起因して、耐食性および靱性が低下する。したがって、Zr含有量は1.0%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、Zr含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Caは熱間加工性を向上させる有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.02%を超えると、かえって靱性が劣化する。したがって、Ca含有量は0.02%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、Ca含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
Snは耐食性を向上させる有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.5%を超えると靱性の低下につながるとともに、耐食性向上効果も飽和する。したがって、Sn含有量は0.5%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、Sn含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Mgは脱酸を強化するのに有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.1%を超えると靱性が劣化する。したがって、Mg含有量は0.1%以下とする。Mg含有量は0.08%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、Mg含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
Gaは冷間鍛造または曲げ加工において加工性を向上させるのに有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.05%を超えると靱性が劣化する。したがって、Ga含有量は0.05%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、Ga含有量を0.0005%以上とすることが好ましく、0.0010%以上とすることが好ましい。
Sbは耐食性の向上に有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.5%を超えると、偏析によって耐食性が劣化する。したがって、Sb含有量は0.5%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、Sb含有量を0.0010%以上とすることが好ましい。
Wは耐摩耗性および耐食性の向上に有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.5%を超えると靱性が劣化する。したがって、W含有量は0.5%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、W含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
Taは耐摩耗性および耐食性を向上させる有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.5%を超えると靱性が劣化する。したがって、Ta含有量は0.5%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、Ta含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
Coは耐摩耗性の向上に有用な元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.5%を超えると靱性が劣化する。したがって、Co含有量は0.5%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合は、Co含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
REMは熱間加工性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、その含有量が0.1%を超えると靱性が劣化する。したがって、REM含有量は0.1%以下とする。REM含有量は0.08%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合は、REM含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
但し、式中の各元素記号は、鋼材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
上述のように、NiおよびCuはオーステナイト形成元素であり、一方、TiおよびOは炭窒化物または酸化物を形成する元素である。これらの元素は靱性に与える影響が大きい。そのため、靱性の低下を防ぐためには、これらの元素の含有量が上記で規定される範囲となるとともに、上記(i)式を満足する必要がある。
40≦γp<80 ・・・(iii)
但し、式中の各元素記号は、鋼材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
上述のように、(ii)式で示されるγpはオーステナイトの安定度を評価する指標となる。γpの値を適切な範囲に制御することによって、使用時の靱性を確保するとともに、高温での過度なオーステナイト生成による耐酸化性劣化および熱変形を防止することができるため、耐熱がじり性を向上させることが可能になる。
上述のように、本発明においては、粒界腐食を防ぐために、必要に応じてNbを含有させる。それに伴いNbおよびFeを含む析出物であるラーフェス相が析出する。ラーフェス相の析出を抑制すれば、靱性がさらに向上する。ラーフェス相の析出量の評価に関しては、以下に示す方法により行うことができる。
本発明に係る締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材の寸法については特に制限はない。しかしながら、靱性および耐熱がじり性に優れる高温環境の締結部で使用される線状鋼材としては、線状鋼材の直径は8mm以上であることが好ましく、10〜20mmであることがより好ましい。
本発明に係る締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材の製造方法については、特に制限は設けず、一般的な工程によって製造することができる。例えば、鋳造工程、熱間線材圧延工程、焼鈍工程および酸洗工程を経て線状鋼材を製造することができる。
Claims (2)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.020%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.0%以下、
P:0.040%以下、
S:0.005%以下、
Cr:10.0〜13.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜2.0%、
Cu:0.01〜2.0%、
Al:0.3%以下、
Ti:0.05%未満、
O:0.010%以下、
N:0.02%以下、
V:0〜0.5%、
Nb:0〜1.0%、
B:0〜0.010%、
Zr:0〜1.0%、
Ca:0〜0.02%、
Sn:0〜0.5%、
Mg:0〜0.1%、
Ga:0〜0.05%、
Sb:0〜0.5%、
W:0〜0.5%、
Ta:0〜0.5%、
Co:0〜0.5%、
REM:0〜0.1%、
残部:Feおよび不可避的不純物であり、
下記(i)式を満たし、かつ、下記(ii)式で表されるγpの値が下記(iii)式を満足し、
電解抽出によって得られる抽出残渣中のFe量が0.20%以下である、締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材。
0.5Ni+0.5Cu−4Ti−4O≧0 ・・・(i)
γp=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn−11.5(Cr+Si)−12Mo−23V−49Ti−52Al−47Nb+189 ・・・(ii)
40≦γp<80 ・・・(iii)
但し、式中の各元素記号は、鋼材中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。 - 前記化学組成が、質量%で、
V:0.01〜0.5%、
Nb:0.05〜1.0%、
B:0.0005〜0.010%、
Zr:0.05〜1.0%、
Ca:0.0005〜0.02%、
Sn:0.001〜0.5%、
Mg:0.0005〜0.1%、
Ga:0.0005〜0.05%、
Sb:0.001〜0.5%、
W:0.01〜0.5%、
Ta:0.01〜0.5%、
Co:0.01〜0.5%および
REM:0.001〜0.1%、
から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材。
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JP2015189763A JP6587881B2 (ja) | 2015-09-28 | 2015-09-28 | 締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015189763A JP6587881B2 (ja) | 2015-09-28 | 2015-09-28 | 締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2015189763A Active JP6587881B2 (ja) | 2015-09-28 | 2015-09-28 | 締結部品用フェライト系ステンレス線状鋼材 |
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2015
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