以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、電力変換装置1の概略構成を示す分解斜視図である。なお、この電力変換装置1は、車載用電動機への交流電力供給に用いられる。電力変換装置1は、コンデンサ10と、パワーモジュール20と、配線板30と、制御回路基板40と、それらを格納する筐体50(50a,50b)とを有している。
筐体50(50a,50b)は、コンデンサ10、パワーモジュール20、配線板30および制御回路基板40が固定されるベース50aと、それらを覆うようにベース50aに取り付けられるカバー50bとを有している。なお、図2に示すように、箱型のベース50aにコンデンサ10、パワーモジュール20、配線板30および制御回路基板40を収納し、ベース50aの上部開口を板状のカバー50bで覆う構成としても良い。筐体50(50a,50b)は、金属、樹脂およびセラミック等の材料で形成される。
電力変換装置1は、電源装置から供給された直流電力をコンデンサ10で平滑化した後に、インバータ回路を備えるパワーモジュール20において直流電力を交流電力に変換する。得られた交流電力は、上述したように車載用電動機に供給される。制御回路基板40に設けられた制御回路によってパワーモジュール20を制御することにより、車載用電動機に供給される交流電力を制御する。
コンデンサ10は複数のコンデンサ素子により構成され、コンデンサ10の図示上端面には、一対の直流端子100が設けられている。コンデンサ10は、ベース50aの底板500上に固定される。
パワーモジュール20には、スイッチング素子としてのパワー半導体、および、パワー半導体を駆動するドライブ回路が設けられている。なお、配線板30にドライブ回路を設けるようにしても良い。図1に示す例では、U相、V相、W相に対応して3つのパワーモジュール20が設けられており、各パワーモジュール20の上端には、一対の直流端子200、交流端子201、複数の制御端子202が上方に突出するように設けられている。各パワーモジュール20は、底板500上に設けられたボックス状の冷却部501にそれぞれ収容される。冷却部501には冷却媒体の流路が形成されており、パワーモジュール20は冷却媒体により冷却される。
コンデンサ10およびパワーモジュール20の上方には、配線板30および制御回路基板40が配置されている。底板500には一対の支持板502が立設されており、各支持板502の上端面は凹凸状の段差面となっている。配線板30は支持板502の下段面502a上に固定され、制御回路基板40は支持板502の上段面502b上に固定される。配線板30は、樹脂基板の表面および/または内部に金属製の配線を設けたものである。コンデンサ10の直流端子100,パワーモジュール20の直流端子200および交流端子201は、配線板30に接続される。パワーモジュール20の制御端子202は、配線板30を貫通して制御回路基板40に接続される。
なお、配線板30は、別途備えた端子がパワーモジュール20の端子や制御回路基板40とも電気的に接続される。また、配線板30から外部の駆動機器への電力供給は、配線板30と駆動機器との間を電気的に接続する銅の板材やハーネス(いずれも不図示)などにより行われる。
電力変換装置1を自動車等の車両に搭載する場合、振動への耐久性確保のため、コンデンサ10,パワーモジュール20,配線板30および制御回路基板40は、上述のように筐体50に機械的に固定される。各部材と筐体50との固定方法としては、ねじによる締結、Tig溶接やレーザ溶接などの溶接、超音波や摩擦撹拌などによる接合、ろう付け、スナップフィット、圧入などが挙げられる。
配線板30は概略板状の部材であり、コンデンサ10およびパワーモジュール20の各端子は、配線板30の一方の面(図示下側の面)から他方の面(図示上側の面)へ貫通するように配置され、配線板30の接続端子に接続される。なお、配線板30と各端子との接合には、Tig溶接やレーザ溶接などの溶接、超音波や摩擦撹拌などによる接合、ろう付けなどの金属同士を接続可能な方法が用いられる。
ところで、配線板30を筐体50に固定した後に、配線板30とコンデンサ10およびパワーモジュール20とを接続する場合、端子位置の誤差や配線板取り付け誤差等によって、接続すべき端子同士が接触せず離れて配置されてしまうことがある。そのような離れて配置された端子同士を接合する場合、例えば、溶接を用いた場合には片方の端子のみが溶融して満足な接合ができないおそれがあり、接続信頼性の低下という問題が生じる。
また、治具等を用いる場合、配線板30を筐体50に固定する前に治具を用いて端子同士を接触させて接合作業を行い、そして、配線板30を筐体50に固定した後に、治具を取り外す必要がある。そのため、作業が繁雑となり接合作業に時間を要することになる。
本実施の形態では、作業性を低下させること無く、確実な端子接合を行うことができる電力変換装置を提供するために、以下に説明するような構成を採用するようにした。
図3は、本実施の形態における配線板30の筐体50への取り付け構造を説明する斜視図である。図3は、電力変換装置1の一部分を示したものであり、カバー50bについては図示を省略している。なお、上述した図1,2の構成は、図3の構成を適用する前の構造を示したものである。図3に示す構成では、配線板30、制御回路基板40が固定される支持板502の構成が若干異なると共に、上端面に弾性突起51が設けられて配線板30を支持する支持板503が追加されている。なお、図3に示す例では弾性突起51が2つ設けられているが、1つ以上設けられていれば良い。弾性突起51は、切削加工、塑性加工、樹脂モールド成形などの工法により筐体50と一体成形されるほか、別部材として形成したものを筐体50に固定するようにしても良い。
一対の支持板502の上端面は段差構造となっており、段差の上段面502bに制御回路基板40が固定される。配線板30は、一対の支持板502の下段面502aおよび支持板503の上端面上に配置され、ボルト等の締結部材によって支持板502の下段面502aに固定される。その際、配線板30の上面に立設された位置決め用の柱状部材41を制御回路基板40の位置決め孔400に挿通させることで、制御回路基板40と配線板30との位置決めが行われる。
図3に示す構成では、各構成部品(コンデンサ10,パワーモジュール20,配線板30および制御回路基板40)が筐体50に固定される構造であるため、全て筐体50に対して位置決めされる。そのため、構成部品を積み上げる構成における積み上げ誤差を回避することができる。
配線板30には、コンデンサ10の直流端子100が貫通する2つの貫通孔33と、パワーモジュール20の端子200,201が貫通する3つの貫通孔34と、パワーモジュール20の制御端子202が貫通する貫通孔39と、弾性突起51が係合する2つの貫通孔32とが形成されている。貫通孔33の近傍には、貫通孔33の縁に接するように接続端子35が形成されている。同様に、貫通孔34の近傍には、貫通孔34の縁に接するように接続端子36a,36bが形成されている。コンデンサ10の直流端子100は接続端子35と接続され、パワーモジュール20の直流端子200は接続端子36aに接続され、交流端子201は接続端子36bに接続される。
制御回路基板40は配線板30に電気的に接続される。配線板30にはアルミ製のピンや銅製のワイヤなどの導電性材料の片端を予め接続しておき、もう一方の片端を制御回路基板40に接続することで導通を取ることが可能である。
ところで、配線板30と制御回路基板40とを接続する際、筐体50に制御回路基板40を固定した後に、制御回路基板40より外側に配線板30を配置して導電性材料を接続する構成の場合、配線板30よりも筐体50に近い側で接続作業を行わなければならず、作業が複雑になる。
一方、本実施の形態のように配線板30の上方に制御回路基板40を配置する構成の場合、筐体50に配線板30を固定した後に、配線板30よりも外側(図示上側)に制御回路基板40を配置して導電性材料を接続する際に、制御回路基板40よりも外側で接続作業を行うことができ、作業が簡易になる。
図4は、弾性突起51の形状、および弾性突起51と直流端子200との位置関係を説明する図である。なお、パワーモジュール20の制御端子202については、図示を省略した。また、交流端子201は直流端子200に対して紙面裏面側に配置されており、図4では直流端子200に隠れて見えていない。図4に示すように、直流端子200に対して、配線板30の接続端子36aは図示右側に配置されている。同様に、図3に示すように、交流端子201およびコンデンサ10の直流端子100に対して接続端子35,36bは、図示右側に配置されている。
弾性突起51の頂部には、図示左側に突出した爪部510が形成されている。この爪部510は直流端子200側に突出している。爪部510の上面は左斜め下方向に傾斜している。以下ではこの面を斜面511と呼ぶことにする。コンデンサ10およびパワーモジュール20の端子と配線板30の接続端子を十分な加圧力で接触させるためには、配線板30の貫通孔32と筐体50の弾性突起51の爪部510との位置関係が重要となる。
図4に示すように、弾性突起51の根元左側の面と直流端子200の接続面200aとの距離をA、接続端子36aの接続面360(図4では、貫通孔34の右側側面と同一位置となっている)と貫通孔32の左側側面(弾性突起51の係合面)との距離をB、爪部510の水平方向高さ(突出量)をCとしたとき、A,B,Cは次式(1)を満足するように設定される。式(1)の条件は、後述するように、弾性突起51の弾性力によって、接続面360が接続面200aに付勢されるための条件である。
A−C<B<A …(1)
図5は、配線板30の接続端子36aをパワーモジュール20の直流端子200に付勢させる弾性突起51の付勢作用を説明する図である。先ず、図5(a)に示すように、配線板30の貫通孔34にパワーモジュール20の直流端子200が挿入されるように、配線板30を配置する。上述したように「A−C<B」と設定されているので、貫通孔32の縁(図示左側の縁)が爪部510の斜面511上に当接する。この状態では、配線板30と支持板502の下段面502aおよび支持板503の上面との間には、隙間が生じている。
図5(a)の状態から、図5(b)に示すように配線板30を図示下方に押し下げると、貫通孔32の縁が爪部510の斜面511上を左斜め下方向に移動するので、直流端子200に対して配線板30は矢印R1のように移動することになる。式(1)のように「A−C<B」と設定されているので、貫通孔32の縁が斜面511の左側に外れる前に、貫通孔34の右側面が直流端子200の接続面200aに当接する。図5(b)の状態においても、配線板30と支持板502の下段面502aおよび支持板503の上面との間には、隙間が生じている。
図5(b)の状態から、さらに配線板30を押し下げると、貫通孔32の縁から斜面511に加わる力によって、弾性突起51が図5(b)の矢印R2の方向に弾性変形する。そして、弾性突起51が弾性変形することによって、爪部510の先端が貫通孔32に入り込んで側面320に当接する。さらに、図5(c)に示すように、配線板30の下面が支持板503の上端面に当接するまで配線板30を押し下げると、弾性突起51は弾性変形を維持した状態で貫通孔32内に挿入され、直流端子200の接続面200aが接続端子36aの接続面360に接触する。
なお、ここでは説明を省略するが、図5に示す作業を行うことで、直流端子200および接続端子36aの接続面同士が接触状態となるだけでなく、同時に、交流端子201およびコンデンサ10の直流端子100についても、互いの接続面同士が接触状態となる。
図6は、爪部510の突出方向と反対側に配置された端子(コンデンサ10の直流端子100)における寸法A〜Cを説明する図である。図6のような配置の場合、寸法A,B,Cは次式(2)を満足するように設定される。条件式(2)は、弾性突起51の弾性力によって、直流端子100の接続面100aが接続端子35の接続面350に付勢されるための条件である。
A<B<A+C …(2)
なお、弾性突起51の爪部510と配線板30の貫通孔32の側面320との接触位置は、配線板30の厚さ方向の中心付近が理想であるが、配線板30が筐体50の固定面から浮き上がるのを防止するためには、配線板30の厚さ方向の中心より上で接触するのが望ましい。配線板30を図5(c)、図6(b)のような状態としたならば、所定の接合方法により(例えば、Tig溶接)、直流端子100,200および交流端子201を対応する接続端子35,36a,36bに接合する。
上述したように、本実施の形態では、弾性突起51の弾性力により、直流端子100,200および交流端子201と対応する接続端子35,36a,36bとの接触が維持された状態で接合が行われるので、接続信頼性が向上する。また、接合後も、直流端子100,200および交流端子201に接続端子35,36a,36bを押しつける付勢力(弾性突起51の弾性力による付勢力)が作用し続けるので、車両走行時の振動に対しても、接続信頼性が確保される。
なお、図5,6に示す例では、弾性突起51が貫通孔32内に挿入されやすいように、爪部510に斜面511を設けたが、爪部510の先端形状を球状や半球状とするようにしても良い。また、配線板30における弾性突起51が挿入される穴を貫通孔32としたが、図5(c)に示す状態において、弾性突起51が貫通孔32から突出しない寸法であれば、貫通していなくても良い。さらにまた、コンデンサ10およびパワーモジュール20の端子が配線板30の接続端子とより接触しやすくするために、それらの端子を配線板30の接続端子に近づく方向に傾けておくようにしても良い。
(変形例1)
図7,8は、上述した実施の形態の第1の変形例を示す図である。第1の変形例では、上述した弾性突起51に代えて、図8に示すような弾性突起56を支持板503の上端面に設けるようにした。
先ず、図8により弾性突起56の形状を説明する。図8において、(a)は平面図、(b)はA1−A1断面図である。上述した図4の弾性突起51は、貫通孔32の側面に当接する爪部510を有し、図5(c)に示すように弾性突起51全体が反り返るように弾性変形するものであった。一方、弾性突起56においては、主に弾性突起56に設けられた弾性変形部561が弾性変形し、配線板30の接続端子36aをパワーモジュール20の直流端子200に押しつけるような構成としている。なお、弾性突起56は、切削加工、塑性加工、樹脂モールド成形などの工法により筐体50の支持板503と一体に形成しても良いし、別に形成されたものを支持板503に固定するような構造であっても良い。
図8に示すように、弾性突起56は、支持板503の上端面から上方に突出した本体部560と、本体部か560からパワーモジュール20の方向に突出した弾性変形部561とを備えている。本体部560は、基部560aと、基部560aから立設された一対の壁部560bとを備えている。弾性変形部561は断面が略U字形状の壁部であって、一対の壁部560bの図示左側端面から左方向(図7のパワーモジュール20の方向)に突出するように形成されている。また、壁部560bの右上隅には斜面562が形成されている。
図7は、図8に示す弾性突起56と、パワーモジュール20の直流端子200および配線板30との関係を示す図であり、上述した実施の形態における図4に対応する図である。第1の変形例では、図8の弾性突起56を用いるとともに、直流端子200の上端に斜面200cを形成するようにした。図7において、寸法Aは、弾性突起56の基部560aの図示左側の側面と直流端子200の接続面200aとの距離である。また、寸法Bは、接続端子36aの接続面360(図7では、貫通孔34の右側側面と同一位置となっている)と貫通孔32の側面320(弾性突起56の係合面)との距離であり、寸法Dは、弾性変形部561の基部560a(図8参照)からの突出量である。寸法A,B,Dは次式(3)を満足するように設定される。式(3)の条件は、弾性変形部561の弾性力によって、接続面360が接続面200aに付勢されるための条件である。
A−D<B<A …(3)
図9,10は、弾性突起56の付勢作用、すなわち、配線板30の接続端子36aをパワーモジュール20の直流端子200に付勢させる機能を説明する図である。まず、図9(a)に示すように、配線板30の貫通孔32に弾性突起56の上端部分が挿入されるように、配線板30を配置する。図7に示すように弾性突起56の図示左右方向の寸法Eは貫通孔32の寸法Fよりも小さく設定されているので(E<F)、貫通孔32の側面320の縁が弾性突起56の斜面562に当接する。図9(a)に示す状態において、直流端子200の斜面200cの上端が貫通孔34内に挿入された状態になってさえいれば、貫通孔34の下面側の縁が斜面200cから離れていても良いし、当接していても良い。
次いで、図9(a)の状態から配線板30を図示下方に押し下げると、貫通孔32の縁が弾性突起56の斜面562に当接した状態で、配線板30が斜め右下方向に移動する。その結果、図9(b)に示すように、貫通孔32の側面320に弾性変形部561が押しつけられて弾性変形部561が変形し、貫通孔32に対する弾性突起56の挿入量が増加する。図9(b)に示す状態では、貫通孔32の縁が弾性突起56の斜面562から外れるとともに、貫通孔34の縁が直流端子200の斜面200cに当接している。
図10(a)は、図9(b)の状態から配線板30をさらに押し下げた状態を示したものである。配線板30は、貫通孔34の縁が斜面200cに当接した状態で斜め右下方向に移動し、貫通孔34の縁が斜面200cの下端に達している。その結果、弾性突起56の弾性変形部561は図9(b)に示す状態からさらに変形することになり、貫通孔32の反対側の側面321と弾性突起56との間に隙間が形成される。
図10(a)に示す状態から配線板30をさらに押し下げると、直流端子200の接続面200aに貫通孔34の側面340が押圧された状態で、直流端子200が貫通孔34に挿入される。一方、弾性突起56は、貫通孔32の側面320が当接しながら配線板30が降下するので、弾性変形部561が変形しながら貫通孔32に挿入される。
図10(b)は、配線板30が支持板503の上端面に当接するまで押し下げられた状態を示す。このとき、弾性突起56と貫通孔32の側面321との間には隙間が形成され、弾性変形部561の変形により、矢印で示すような左向きの力(弾性力)が配線板30に作用する。その結果、配線板30の接続端子36aが直流端子200に付勢され、それらは互いに密着した状態となる。図7に示す寸法B,F,Gは、次式(4)を満たすように設定される。なお、交流端子201も直流端子200の場合と同様に、頂部に斜面が形成される。
B+F>G …(4)
図11は、弾性変形部561の突出方向と反対側に配置された直流端子100との位置関係を説明する図である。図11のような配置の場合、寸法A,B,Dは次式(5)を満足するように設定される。また、図10(b)の場合と同様に貫通孔32に挿入された弾性突起56と側面321との間に隙間が形成されるためには、「B−F<G」のように設定する必要がある。なお、直流端子100にも、直流端子200の場合と同様に斜面100cが形成されている。
A<B<A+D …(5)
なお、上述した第1の変形例では、「E>F」のように設定することで、弾性突起56の貫通孔32への挿入時に弾性変形部561を予め変形させ、図10(b)の状態における弾性力がより大きくなるようにした。しかしながら、図12(a)に示すように「E<F」のように設定した場合であっても、直流端子200を貫通孔34に挿入する際の弾性変形部561の変形により、接続端子36aを直流端子200に付勢させることは可能である。その場合には、弾性突起56における斜面562は不要となる。
また、図7,8に示した斜面562に代えて、図12(b)に示すように弾性変形部561に斜面561aを形成し、弾性突起56を貫通孔32に挿入する際に斜面561aを貫通孔32の縁に当接させて、弾性変形部561を変形させるようにしても良い。
図4,5に示した弾性突起51は、弾性突起51が反り返るように変形する片持ち構造である。一方、弾性突起56は弾性変形部561が変形する構造であって、その弾性変形部561は、両端が一対の壁部560bで支持された略U字形状の壁部である。そのため、弾性変形部561は弾性突起51に比べて変形し難く、より小さな寸法で同じ加圧力を発生させることができるという特徴を有する。なお、弾性変形部561の断面形状は、上述した略U字に限らず、略円形、略半円形、略多角形等でも良いし、また、各形状の中空断面をもつ形状でも良い。
(第2の変形例)
図13は、上述した実施の形態の第2の変形例を説明する図である。図13(b)は、配線板30に形成された弾性変形部38と、支持板503に形成された突起58等を示す図であり、図13(a)は配線板30を上方から見た平面図である。第2の変形例では、配線板30の貫通孔32に弾性変形可能な略U字断面形状の弾性変形部38を設け、貫通孔32に挿入される突起58によって弾性変形部38を変形させる構造とした。弾性変形部38は図示右側方向に突出するように形成されており、突起58によって弾性変形部38が変形すると、配線板30が図示左方向に付勢される。その結果、配線板30に設けられた接続端子36aの接続面360が直流端子200の接続面200aに押圧される。
弾性変形部38は、切削加工、塑性加工、樹脂モールド成形などの工法により配線板30と一体成形されても良いし、別部材で形成した後に配線板30に固定するようにしても良い。突起58の上端は、左側に下り傾斜の斜面580となっており、このような斜面580を形成することにより、突起58を貫通孔32に挿入したときの弾性変形部38の変形をスムーズに行わせることができる。斜面580を形成する代わりに、突起58の先端を球面のような曲面形状としても良い。
図13に示す構成の場合、直流端子200の接続面200aと突起58の直流端子側側面との距離をA、弾性変形部38の先端と接続端子36aの接続面360との距離をB、弾性変形部38の根元から先端までの高さをD1としたとき、これらは次式(6)を満足するように設定される。
B−D1<A<B …(6)
図14は、突起58および弾性変形部38とコンデンサ10の直流端子100との位置関係を説明する図である。図14に示すような配置の場合、A,B,D1は次式(7)を満足するように設定される。このように設定することで、弾性変形部38の弾性力により、直流端子100の接続面100aが接続端子35の接続面350に押圧される。
B<A<B+D1 …(7)
(第3の変形例)
図15は、本実施の形態の第3の変形例を説明する図である。第3の変形例では、図4に示した弾性突起51に代えて、弾性変形部として機能するプランジャ57を用いる構成とした。プランジャ57は、筒状のボディ570と、ボディ570の先端から一部が突出するようにバネ571等の弾性体の弾性力により付勢されると共に、突出量(E)が可変な接触子としてのボール572とを備えるものである。バネ力に逆らってボール572をボディ内に押し込むと、押し込み力と釣り合う位置までバネ571が圧縮され、その位置でバネ力と押し込み力とが釣り合うことになる。図15に示したプランジャ57にはボール572が使用されているが、接触子としてはボール572に代えてプランジャピン等を用いる構成のものもあり、種々の構成のプランジャを用いることができる。プランジャ57は、支持板503の上端面に固定されている。
貫通孔34に直流端子200が挿入され、かつ、貫通孔32内にプランジャ57が挿入されるように配線板30を下方に移動すると、貫通孔32と貫通孔34との間の配線板30が直流端子200とプランジャ57との挟み込まれる形になり、プランジャ57のボール572が貫通孔32の側面320に当接し、ボディ570内に押し込まれる。その結果、バネ力により配線板30が図示左側に付勢され、接続端子36aの接続面360が直流端子200の接続面200aに押圧される。
図15の寸法Eは、ボール572のボディ570からの最大突出量であり、言い替えればボール572の最大押し込み可能量である。そして、プランジャ57により配線板30の接続端子36aが直流端子200に付勢されるようにするために、寸法A,B,Eは次式(8)を満足するように設定される。
A−E<B<A …(8)
図16は、プランジャ57とコンデンサ10の直流端子100との位置関係を説明する図である。図16に示す配置の場合、寸法A,B,Eは次式(9)を満足するように設定される。このように設定することで、配線板30がプランジャ57により図示右側に付勢され、直流端子100の接続面100aが接続端子35の接続面350に押圧される。
A<B<A+E …(9)
第3の変形例では、ボール572を有するプランジャ57を配線板30の貫通孔32に挿入させる構造なので、貫通孔32への挿入がスムーズに行われる。また、上述した弾性突起51,56や弾性変形部38を用いる構成の場合、それらの形状や材料特性により得られる加圧力に制限があり、さらには、所望の加圧力を正確に調整するのが難しい。一方、プランジャ57を用いる構成の場合には、バネ571のばね弾性係数、材質、または軸長を変更することにより、所望の加圧力を発生させることが可能である。
上述した実施の形態では、付勢部としての弾性突起51、56、弾性変形部58およびプランジャ57を筐体50側(具体的には支持板503)に設けたが、これらを配線板30側に設けるようにしても良い。その場合、付勢部が係合する係合部は、筐体50側に設けられる。
図17は、図4に示す弾性突起51を配線板30に設けた場合の構成を示す図である。なお、図17は、配線板30を筐体50に固定する前の状態を示す。筐体50の支持板503の上端面には弾性突起51が係合する係合部としての凹部52が形成されている。弾性突起51の形状は、図4,5に示した弾性突起51と同様である。ただし、弾性突起51の爪部510は直流端子200とは逆方向に突出している。弾性突起51は、切削加工、塑性加工、樹脂モールド成形などの工法により配線板30と一体成形されるほか、別部材として形成した後に配線板30に固定するようにしても良い。
図17に示すように、爪部510の突出方向に対して反対側にある直流端子200の場合には、寸法P,Q,Rは、次式(10)が満足されるように設定される。寸法Pは、直流端子200の接続面200aから、凹部52の側面520(爪部510の当接面)までの距離である。寸法Qは、接続端子36aの接続面360から、弾性突起51の爪側付け根までの距離である。寸法Rは、弾性突起51の爪部510の突出方向高さ(爪側付け根から爪部先端までの距離)である。
Q<P<Q+R …(10)
図18は、配線板30の下面に設けられた弾性突起51の凹部52への係合動作を説明する図である。図17に示す状態から配線板30を支持板503上に載置するために、配線板30を下方に移動すると、図18(a)に示すように弾性突起51の斜面511が凹部52の縁(側面520の縁)に当接する。そのため、さらに配線板30を下方に移動させると、斜面511と側面520の縁とが当接した状態で、配線板30が左斜め下方向に移動する。その結果、図18(b)に示すように配線板30の貫通孔34の右側側面が直流端子200に当接する。
図18(b)に示す状態から配線板30をさらに押し下げると、図18(c)に示すように、弾性突起51が図示左側に反り返るように変形し、爪部510の先端が凹部52の側面520に当接するようになる。そのため、弾性突起51から支持板503に対して図示右方向の弾性力が作用し、その反力として配線板30に図示左方向の力が作用する。その結果、配線板30に設けられた接続端子36aの接続面360が、直流端子200の接続面200aに押圧され、端子同士の接触状態が維持される。
図19は、弾性突起51とコンデンサ10の直流端子100との位置関係を説明する図である。図19(a)は、寸法P,Q,Rの関係を説明する図であり、図19(b)は、配線板30が筐体50(支持板503)に固定された状態における弾性突起51の形状を示す図である。
図19に示す場合には、弾性突起51の爪部510の突出方向に直流端子100が配置されることになる。そのため、寸法P,Q,Rは次式(11)を満足するように設定される。図19(b)に示すように配線板30を支持板503上に配置すると、弾性突起51は図18(c)の場合と同様に反り返るように変形し、その結果、配線板30が図示左方向に付勢され、直流端子100の接続面100aに配線板30の接続端子35の接続面350が押圧される。
Q−R<P<Q …(10)
図20は、図8に示す弾性突起56を配線板30に設けた場合の構成を説明する図である。弾性突起56は配線板30の下面に設けられ、支持板503の上端面には、弾性突起56が挿入される凹部52が形成される。図20(a)は配線板30を筐体50に固定する前の状態を示し、図20(b)は配線板30を固定した状態を示す。ここでは、「F<E」、かつ「Q+S−E>P−F」と設定されるとともに、寸法P,Q,Sは次式(11)を満足するように設定される。
Q<P<Q+S …(11)
図20(b)のように、凹部52に挿入された弾性突起56における弾性変形部561の変形量は「Q+S−P」であって、弾性突起56が支持板503に及ぼす弾性力の反力によって、配線板30が図示左方向に付勢される。
図21は、弾性突起56とコンデンサ10の直流端子100との位置関係を示す図である。この場合には、寸法P,Q,Sは次式(12)を満足するように設定される。
Q−S<P<Q …(12)
図22は、図13に示す弾性変形部38を筐体50(支持板503)に設けた場合の構成を説明する図である。図22(a)は支持板503に設けられた弾性変形部38と、配線板30に設けられた突起58を示す図である。図22(b)は、A2−A2断面図である。支持板503の上端面には凹部52が形成され、その凹部52内に略U字形状の弾性変形部38が形成されている。弾性変形部38はパワーモジュール20の直流端子200方向に突出するように形成されている。配線板30の下面(支持板503に対向する面)には斜面580が形成された突起58が形成されている。
配線板30を支持板503上に配置すると、突起58が凹部52内に挿入され、斜面580が当接することによって弾性変形部38が図示右方向に変形する。その結果、弾性変形部38の弾性力によって配線板30が図示左方向に付勢され、接続端子36aがパワーモジュール20の直流端子200に押圧される。図22に示す寸法P,Q,D1は、次式(13)のように設定される。
P−D1<Q<P …(13)
図23は、弾性変形部38および突起58とコンデンサ10の直流端子100との位置関係を示す図である。この場合には、寸法P,Q,D1は次式(14)を満足するように設定される。
P<Q<P+D1 …(14)
図24は、図15に示すプランジャ57を筐体50(支持板503)に設けた場合の構成を説明する図である。配線板30の下面に設けられたプランジャ57は、ボール572が直流端子200と逆方向を向くように配置される。支持板503の上端面には、プランジャ57が挿入される凹部52が形成されている。寸法Eはボール572の最大突出量であり、寸法Qは接続端子36aの接続面360からボディ570の先端までの距離、寸法Pは直流端子200の接続面200aから凹部52の側面520までの距離である。寸法E,P,Qは、次式(15)を満足するように設定される。
Q<P<Q+E …(15)
ここでは、「P<Q+E」のように設定されているので、プランジャ57が凹部52に挿入されると、ボール572が側面520に当接し、Q+E−Pだけボール572がボディ570に押し込まれることになる。そのため、バネ571が圧縮されてバネ力が側面520に作用し、その反力によって配線板30が図示左方向に付勢される。その結果、配線板30の接続端子36aの接続面360が、直流端子200の接続面200aに押圧される。
図25は、プランジャ57とコンデンサ10の直流端子100との位置関係を示す図である。この場合、プランジャ57のボール572は直流端子100方向を向いている。そして、寸法E,P,Qは、次式(16)を満足するように設定される。
Q−E<P<Q …(16)
なお、上述した実施の形態では、配線板30を一枚の基板で構成したが、図26に示すように複数枚の基板(30a,30b)で構成するようにしても良い。例えば、機能別に複数枚に分けることにより、配線板30の配置自由度が増す。また、制御回路基板40も複数枚で構成することも可能である。配線板30と同様、機能別に複数枚に分けることにより、制御回路基板の配置自由度が増す。また、配線板30と制御回路基板40とを、例えば、図27に示すように一体のアセンブリ80として両方の機能を1つの基板として構成することも可能である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、配線板30は、コンデンサ10の直流端子100が接続される第1の接続端子35、およびパワーモジュール20の端子200,201が接続される第2の接続端子36a,36bを有し、その配線板30を弾性突起51等の付勢部により基板平面に沿った一方向に付勢する構成としたことにより、直流端子100が接続端子35に押圧され、端子200,201が接続端子36a,36bに押圧されるように接続状態が維持される。そのため、溶接等による端子接合作業において、従来のように接合作業時に作業者が配線板30を押さえつける必要がなく、また、固定治具等も必要ない。その結果、溶接作業の作業性向上を図ることができると共に、接続信頼性の向上を図ることができる。
付勢部は、配線板30および筐体50の一方に設けられた弾性変形部と、配線板30および筐体50の他方に設けられ、配線板30が固定された状態において弾性変形部が変形状態で係合する係合部と、を有する。弾性変形部としては、例えば、弾性突起51,56、弾性変形部38やプランジャ57等を用いることができる。プランジャ57は、配線板30および筐体50の一方に設けられる筒状体としてのボディ570と、ボディ570の先端から一部が突出するようにボディ570内に設けられ、ボディ570からの突出量が可変な接触子としてのボール571と、ボール571が筒状体から突出する方向にボール571を付勢するバネ572と、を有する。
配線板30には、コンデンサ10の端子が貫通する第1の貫通孔33とパワーモジュール20の端子が貫通する第2の貫通孔34が形成され、貫通孔33および接続端子35は付勢部の付勢方向に沿って隣接配置され、かつ、貫通孔33は接続端子35に対して付勢方向に配置され、貫通孔34および接続端子36a,36bは前記付勢方向に沿って隣接配置され、かつ、貫通孔34は接続端子36a,36bに対して付勢方向に配置される。このような配置とすることで、配線板30をその基板平面に沿った一方向に付勢するだけで、コンデンサ10およびパワーモジュール20の端子の全てに、配線板30の対応する接続端子を押圧させることができる。
なお、上述した実施形態では、筐体50の中ほどに支持板503を形成して、その上端面に付勢部の弾性変形部または係合部を設けたが、例えば、図28に示すように、突起58を配線板30が固定される支持板502に設けても構わない。弾性変形部38は、配線板30の支持板502に対向する部分に形成される。
さらに、コンデンサ10およびパワーモジュール20の各々を、筐体50に固定された配線板30との間の領域に配置されるように筐体50に固定するのが好ましい。このようにコンデンサ10,パワーモジュール20および配線板30を個別に筐体50に固定することにより、耐振動性の向上が図れる。また、筐体50を基準にコンデンサ10,パワーモジュール20および配線板30の位置決め公差が設定されるので、積み上げ誤差を考慮する必要がなく、各部品の公差を緩くすることが可能となる。
また、筐体50に固定される制御回路基板40は、配線板30に対してコンデンサ10,パワーモジュール20が配置される領域とは反対側に配置される。そのような構成とすると、端子接続作業の後に制御回路基板40の筐体50への固定を行うことができるので、端子接続作業の作業効率向上を図ることができる。
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、端子100,200,201に斜面を形成したが、配線板30に斜面を形成しても良い。