JP2016018037A - 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2には、ポリアミック酸エステルと可溶性ポリイミドとを含有する液晶配向剤が提案されている。この特許文献2に記載のものでは、イミド化率が高くても塗膜形成時において白化現象を起こさず、印刷性及び塗膜の耐ラビング性が良好であり、液晶表示素子における液晶配向性及び電気的特性を改善できると記載されている。
本発明の液晶配向剤は、重合体成分として1種又は2種以上の重合体を含み、該重合体成分中に、上記式(1)で表される部分構造(a−1)と、上記式(2)で表される部分構造(a−2)とを含有する。
ここで、炭素数1〜12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。膜形成時のポストベークによって気化させる観点から、アルキル基は、好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3、更に好ましくはメチル基又はエチル基である。
上記フッ素原子を有する1価の基としては、例えばフッ化アルキル基、フッ化アルコキシ基、フッ化アルキルエステル基等が挙げられ、好ましくはフッ化アルキル基である。フッ化アルキル基は、炭素数1〜5が好ましく、炭素数1〜3がより好ましい。
上記(メタ)アクリロイル基を有する1価の基としては、例えば「−R8−A3」(ただし、R8は2価の有機基であり、A3は(メタ)アクリロイル基である。)で表される基などが挙げられる。R8の2価の有機基としては、例えば−CH2−CH2−O−*、−CH2−CH2−NH−*、−CH(CH3)−CH2−O−*、及び−CH(CH3)−CH2−NH−*(ただし、「*」を付した結合手がA3と結合する。)を好ましい具体例として挙げることができる。なお、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを含む意味である。
なお、以下では、上記式(1)で表される部分構造のうち、R1及びR2が共に水素原子である構造を「アミック酸構造」と称し、R1及びR2の少なくともいずれかが水素原子以外である構造を「アミック酸エステル構造」とも称する。また、上記式(2)で表される部分構造を「イソイミド環構造」とも称する。
[1]重合体成分として、一分子内に部分構造(a−1)と部分構造(a−2)とを有する重合体(以下、「重合体(P)」とも称する。)を含む態様。
[2]部分構造(a−1)を有する重合体(以下、「重合体(Q)」とも称する。)と、部分構造(a−2)を有する重合体(ポリイソイミド)とを含む態様。
これらのうち、塗膜の表面凹凸性や液晶配向剤の保存安定性の観点からすると、好ましくは重合体(P)を含む態様である。
重合体(P)は有機化学の定法に従って合成することができる。その一例としては、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させてポリアミック酸を合成し、次いで、得られたポリアミック酸が有するアミック酸構造を、脱水縮合剤を用いてイソイミド化してポリイソイミドを得た後、得られたポリイソイミドとエステル化剤とを反応させる方法などが挙げられる。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸2:4,6:8−二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。なお、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸の合成に使用するジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。
これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などを;
で表される化合物などのほか、
2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、下記式(d−1)〜(d−3)
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
分子量調節剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
特に好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。
続いて、上記の如く合成されたポリアミック酸をイソイミド化してポリイソイミドとする。ここで得られるポリイソイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造の全てを脱水縮合した完全イソイミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水縮合した部分イソイミド化物であってもよい。好ましくは前者である。
イソイミド化に使用する脱水縮合剤としては、無水トリフルオロ酢酸、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、塩化チオニル等が挙げられる。脱水縮合剤の使用割合は、所望とするイソイミド化の比率にもよるが、ポリアミック酸が有するアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。
上記触媒としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン等の三級アミンを用いることができる。触媒の使用割合は、使用する脱水縮合剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。
イソイミド化反応に使用する有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に使用する有機溶媒として例示した化合物を挙げることができる。イソイミド化の反応温度は、好ましくは−20℃〜150℃であり、より好ましくは0〜100℃である。反応時間は、好ましくは1〜120時間であり、より好ましくは2〜50時間である。
続いて、上記合成反応により得られたポリイソイミドとエステル化剤とを反応させる。ここで使用するエステル化剤としては、例えばアルコール類、エポキシ化合物等などを挙げることができる。これらの具体例としては、アルコール類として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、トリフルオロメタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアルコール、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−プロピルアルコール、2−(メタ)アクリルアミドエチルアルコール、1−(メタ)アクリルアミド−2−プロピルアルコール等を;エポキシ化合物として、例えば上記式(x−1)で表される基及びエポキシ基を有する化合物、上記式(x−2)で表される基及びエポキシ基を有する化合物等を、それぞれ挙げることができる。エステル化剤としては、中でもアルコール類を好ましく用いることができる。
反応に使用する有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に使用する有機溶媒として例示した化合物を挙げることができ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどを好ましく使用することができる。有機溶媒の使用量は、ポリイソイミドが、反応溶液の全量に対して0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。
本発明の液晶配向剤は、重合体成分として上記重合体(P)のみを含んでいてもよいが、コスト等の観点から、重合体(P)と共にポリアミック酸を含むものとすることができる。本発明の液晶配向剤に含有させるポリアミック酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。なお、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの具体例、並びに反応条件については、上記重合体(P)の説明を適用することができる。
上記窒素含有複素環としては、例えばピペリジン環、ピロリジン環、ピリジン環、ピラジン環、ピペラジン環、ピリミジン環、ホモピペラジン環等が挙げられる。これらのうち、蓄積した残留電荷を緩和させる効果が高い点で、ピペリジン環又はピペラジン環が好ましく、ピペリジン環がより好ましい。
ポリアミック酸の合成に際し、特定構造(x)を有するモノマーの使用割合は、合成に使用するモノマーの合計量に対して、1〜30モル%とすることが好ましく、2〜20モル%とすることがより好ましい。
光配向法により塗膜に液晶配向能を付与する場合、光配向性構造を有する重合体の使用割合は、液晶配向剤に含有させる重合体成分の合計量に対して、50重量%以上とすることが好ましく、60重量%以上とすることがより好ましく、70重量%以上とすることが更に好ましい。
重合体(Q)としては、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルが含まれる。ここで、本明細書におけるポリアミック酸は、上記式(1)中のR1及びR2が共に水素原子である部分構造(アミック酸構造)からなる重合体を意味する。また、ポリアミック酸エステルは、上記式(1)中のR1及びR2の少なくともいずれかが水素原子以外である部分構造(アミック酸エステル構造)を有する重合体である。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよいし、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
本発明の液晶配向剤は、必要に応じて、上記重合体以外のその他の成分をさらに含有していてもよい。当該その他の成分としては、例えば、重合体(P)、重合体(Q)及びポリイソイミド以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という。)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
上記その他の重合体は、溶液特性や電気的特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体としては、例えばポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、該組成物中の全重合体100重量部に対して、30重量部以下とすることが好ましく、0.1〜20重量部とすることがより好ましく、0.1〜10重量部とすることが更に好ましい。
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性を向上させるために使用することができる。ここで、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン等を好ましいものとして挙げることができる。
これらエポキシ基含有化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
上記官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性を向上させるために使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、上記の重合体及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶剤中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
上記に説明した本発明の液晶配向剤を用いることにより液晶配向膜を製造することができる。また、本発明の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜は、液晶表示素子用(液晶セル用)の液晶配向膜及び位相差フィルム用の液晶配向膜に好ましく適用することができる。以下に、本発明の液晶表示素子及び位相差フィルムについて説明する。
本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。本発明の液晶表示素子の動作モードは特に限定せず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB型など種々の動作モードに適用することができる。本発明の液晶表示素子は、例えば以下の(1−1)〜(1−3)を含む工程により製造することができる。工程(1−1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(1−2)及び工程(1−3)は各動作モード共通である。
先ず、基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1A)例えばTN型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法;透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法;などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1)で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで塗膜を一定方向に擦るラビング処理;塗膜に対して光を照射する光配向処理、などが挙げられる。一方、垂直配向型の液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
塗膜に照射する光は、偏光又は非偏光とすることができる。光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。偏光とする場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる光が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の光を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量は、好ましくは100〜50,000J/m2であり、より好ましくは300〜20,000J/m2である。また、塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。加温の際の温度は、通常30〜250℃であり、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール材を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール材により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール材を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
次に、本発明の液晶配向剤を用いて位相差フィルムを製造する方法について説明する。本発明の位相差フィルムの製造に際しては、工程中にほこりや静電気が発生するのを抑えつつ均一な液晶配向膜を形成することが可能である点、光の照射時に適当なフォトマスクを使用することによって基板上に液晶配向方向が異なる複数の領域を任意に形成できる点において光配向法を利用することが好ましい。具体的には、以下の工程(2−1)〜工程(2−3)を経ることによって製造することができる。
工程(2−1):液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程。
工程(2−2):上記塗膜に光照射する工程。
工程(2−3):光照射した後の塗膜上に重合性液晶を塗布して硬化させる工程。
先ず、本発明の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する。ここで使用される基板としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなどの合成樹脂からなる透明基板を好適に例示することができる。これらのうち、TACは、液晶表示素子における偏光フィルムの保護層として一般的に使用されている。また、ポリメチルメタクリレートは、溶媒の吸湿性が低い点、光学特性が良好である点及び低コストである点において、位相差フィルム用の基板として好ましく使用することができる。なお、液晶配向剤の塗布に使用する基板に対しては、基板表面と塗膜との密着性を更に良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に従来公知の前処理が実施されていてもよい。
塗布後、塗布面を加熱(ベーク)して塗膜を形成する。この時の加熱温度は、40〜150℃とすることが好ましく、80〜140℃とすることがより好ましい。加熱時間は、0.1〜15分とすることが好ましく、1〜10分とすることがより好ましい。基板上に形成される塗膜の膜厚は、好ましくは1〜1,000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmである。
次いで、上記のようにして基板上に形成された塗膜に対し光を照射することにより、塗膜に液晶配向能を付与して液晶配向膜とする。照射する光の種類、照射方向及び光源については、上記工程(1−2)の説明を適用できる。光の照射量は、0.1〜1,000mJ/cm2とすることが好ましく、1〜500mJ/cm2とすることがより好ましく、2〜200mJ/cm2とすることがさらに好ましい。
次いで、上記のようにして光照射した後の塗膜上に、重合性液晶を塗布して硬化させる。これにより、重合性液晶を含む塗膜(液晶層)を形成する。ここで使用される重合性液晶は、加熱及び光照射のうちの少なくとも1種の処理によって重合する液晶化合物又は液晶組成物である。このような重合性液晶としては、従来公知のものを使用することができ、具体的には、例えば非特許文献1(「UVキュアラブル液晶とその応用」、液晶、第3巻第1号(1999年)、pp34〜42)に記載されているネマチック液晶を挙げることができる。また、コレステリック液晶;ディスコティック液晶;カイラル剤を添加されたツイストネマティック配向型液晶などであってもよい。重合性液晶は、複数の液晶化合物の混合物であってもよい。重合性液晶は、さらに、公知の重合開始剤、適当な溶媒などを含有する組成物であってもよい。
形成された液晶配向膜上に上記のような重合性液晶を塗布するには、例えばバーコーター法、ロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法を採用することができる。
塗膜の加熱温度は、使用する重合性液晶の種類によって適宜に選択される。例えばメルク社製のRMS03−013Cを使用する場合、40〜80℃の範囲の温度で加熱することが好ましい。加熱時間は、好ましくは0.5〜5分である。
照射光としては、200〜500nmの範囲の波長を有する非偏光の紫外線を好ましく使用することができる。光の照射量としては、50〜10,000mJ/cm2とすることが好ましく、100〜5,000mJ/cm2とすることがより好ましい。
形成される液晶層の厚さは、所望の光学特性によって適宜に設定される。例えば波長540nmの可視光における1/2波長板を製造する場合は、形成した位相差フィルムの位相差が240〜300nmとなるような厚さが選択され、1/4波長板であれば、位相差が120〜150nmとなるような厚さが選択される。目的の位相差が得られる液晶層の厚さは、使用する重合性液晶の光学特性によって異なる。例えばメルク製のRMS03−013Cを使用する場合、1/4波長板を製造するための厚さは、0.6〜1.5μmの範囲である。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドを含有する溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で1H−NMRを測定した。得られた1H−NMRスペクトルから、下記数式(1)を用いてイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−A1/A2×α)×100 …(1)
(数式(1)中、A1は化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、A2はその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度[mPa・s]は、所定の溶媒を用い、重合体濃度15重量%に調製した溶液についてE型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[合成例1;重合体(PAA−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を90モル部及びピロメリット酸二無水物を10モル部、ジアミンとしてp−フェニレンジアミンを98モル部及び3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタンを2モル部、をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、60℃で6時間反応を行い、固形分濃度15重量%のポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、測定した溶液粘度は420mPa・sであった。
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1に記載のとおり変更した点以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸を含有する溶液を得た。
[合成例4;重合体(PHF−1)の合成]
合成例1と同様の操作により、固形分濃度15重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にトリエチルアミン(TEA)を、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して200モル部添加し、その後室温で24時間撹拌した。次いで、0℃で撹拌しながら、反応溶液に無水トリフルオロ酢酸(TFAA)を、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して200モル部、1時間かけて添加し、その後、室温で24時間撹拌した。反応終了後、得られた溶液を大過剰のアセトン中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。回収した沈殿物をアセトンで洗浄した後、減圧下、40℃において15時間乾燥することにより重合体を得た。
次いで、得られた重合体をNMPに再溶解し、ここにメタノールを、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して100モル部添加し、24時間撹拌した。これにより、アミック酸エステル構造とイソイミド環構造とを有する重合体(PHF−1)を含有する溶液を得た。
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量、並びにメタノールの使用量を下記表1に記載のとおり変更した点以外は、合成例4と同様にして重合体(PHF−2)〜重合体(PHF−5)をそれぞれ含有する溶液を得た。
合成例1と同様の操作により、固形分濃度15重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にトリエチルアミン(TEA)を、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して100モル部添加し、その後室温で24時間撹拌した。次いで、0℃で撹拌しながら、反応溶液に無水トリフルオロ酢酸(TFAA)を、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して100モル部、1時間かけて添加し、その後、室温で24時間撹拌した。反応終了後、得られた溶液を大過剰のアセトン中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。回収した沈殿物をアセトンで洗浄した後、減圧下、40℃において15時間乾燥することにより、アミック酸構造とイソイミド環構造とを有する重合体(PHF−6)を得た。
[合成例10;重合体(PI−1)の合成]
合成例1と同様の操作により、固形分濃度15重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にNMPを追加して固形分濃度10重量%にし、ピリジン及び無水酢酸を、それぞれテトラカルボン酸二無水物の合計100モル部に対して300モル部添加し、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶剤置換して(本操作によりイミド化反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。)、イミド化率約85%のポリイミドを含有する溶液を得た。得られた重合体(PI−1)をNMPにて15重量%となるように調製した溶液の粘度を測定したところ520mPa・sであった。
[合成例11;重合体(Piso−1)の合成]
合成例1と同様の操作により、固形分濃度15重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にトリエチルアミン(TEA)を、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して200モル部添加し、その後室温で24時間撹拌した。次いで、0℃で撹拌しながら、反応溶液に無水トリフルオロ酢酸(TFAA)を、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して200モル部、1時間かけて添加し、その後、室温で24時間撹拌した。反応終了後、得られた溶液を大過剰のアセトン中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。回収した沈殿物をアセトンで洗浄した後、減圧下、40℃において15時間乾燥することによりポリイソイミドを得た。得られた重合体(Piso−1)をNMPにて15重量%となるように調製した溶液の粘度を測定したところ540mPa・sであった。
[合成例12;重合体(PAE−1)の合成]
合成例11と同様の操作により、固形分濃度15重量%のポリイソイミド溶液を得た。このポリイソイミド溶液に、メタノールを、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の全体量100モル部に対して300モル部添加して24時間撹拌した。反応終了後、得られた溶液を大過剰のアセトン中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。回収した沈殿物をアセトンで洗浄した後、減圧下、40℃において15時間乾燥することによりポリアミック酸エステルを得た。得られた重合体(PAE−1)をNMPにて15重量%となるように調製した溶液の粘度を測定したところ400mPa・sであった。
表1中、化合物の略称はそれぞれ以下の意味である。
(テトラカルボン酸二無水物)
AN−1;1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
AN−2;2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
AN−3;ピロメリット酸二無水物
(ジアミン)
DA−1;p−フェニレンジアミン
DA−2;上記式(d−1)で表される化合物
DA−3;3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン
DA−4;3−(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン
DA−5;2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
DA−6;3,5−ジアミノ安息香酸
(1)液晶配向剤の調製
合成例4で得た重合体(PHF−1)を含有する溶液に、γ−ブチルラクトン(BLANT)、NMP及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を加えて溶解し、BLANT:NMP:DEDG=55:30:15(重量比)、固形分濃度が6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤を調製した。
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてシリコンウエハ上に塗布したのち、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、230℃のホットプレートで15分間加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚100nmの塗膜を形成した。この塗膜を原子間力顕微鏡(Nano ScopeIIIa、Digital Instrument社製)にて観察し、塗膜の表面粗さRa(算術平均高さ)を測定した。評価は、Raが2.0nm未満であった場合を表面凹凸性「良好」、2.0nm以上5.0nm未満であった場合を「可」、5.0nm以上であった場合を「不良」として行った。本実施例では、Raが0.3nmであり、表面凹凸性は「良好」であった。
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察して、膜厚ムラ、柚子肌ムラ及び線状ムラの有無を調べた。評価は、膜厚ムラが無く、塗布面内が均一のものを印刷性「良好」、柚子肌ムラが観察された場合を印刷性「可」、柚子肌ムラ及び線状ムラが観察された場合を印刷性「不良」として行った。本実施例では、膜厚ムラが観察されず、また塗布面内が均一であり、印刷性は「良好」であった。
・析出性による評価
上記で調製した液晶配向剤を5℃で1か月間保管し、保管後の液晶配向剤を目視で観察した。不溶物の析出が観察されなかった場合を「良好」、不溶物の析出が観察された場合を「不良」とした。その結果、本実施例では「良好」の評価であった。
・粘度変化による評価
上記で調製した液晶配向剤について、調製した直後及び5℃で1か月間保管した後の溶液粘度をそれぞれ測定し、下記式(2)により粘度変化率Δηを求めた。なお、液晶配向剤の溶液粘度[mPa・s]はE型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
Δη=((ηAF−ηBF)÷ηBF)×100…(2)
(数式(2)中、ηBFは調製した直後に測定した溶液粘度であり、ηAFは5℃で1か月間保管した後に測定した溶液粘度である。)
保存安定性の評価は、粘度変化率Δηが5%以下であれば保存安定性「良好」、5%よりも大きく10%未満であれば「可」、10%以上であれば「不良」として行った。その結果、本実施例では「良好」の評価であった。
上記(1)で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数500rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間、超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。また、上記の操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化型接着剤で液晶注入口を封止することにより、TN型液晶セルを製造した。
上記(5)で製造した液晶セルにつき、クロスニコル下で5Vの電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を顕微鏡によって倍率50倍で観察した。評価は、異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「良好」、異常ドメインが観察された場合を液晶配向性「不良」として行った。この液晶セルでは液晶配向性「良好」であった。
上記(5)で製造した液晶セルにつき、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR)を測定した。なお、測定装置としては、(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。この液晶セルの電圧保持率は97.8%であった。
上記(5)で製造した液晶セルにつき、上記(7)と同様に電圧保持率を測定し、その値を初期VHR(VHRBF)とした。次いで、初期VHR測定後の液晶表示素子につき、100℃のオーブン中に300時間静置した。その後、この液晶表示素子を室温下に静置して室温まで放冷した後、上記同様にして電圧保持率(VHRAF)を測定した。また、下記数式(3)により、熱ストレスの付与前後の電圧保持率の変化率(△VHR(%))を求めた。
△VHR=((VHRBF−VHRAF)÷VHRBF)×100…(3)
耐熱性の評価は、変化率ΔVHRが4%未満であった場合を耐熱性「良好」、4%以上5%未満であった場合を「可」、5%以上であった場合を耐熱性「不良」として行った。その結果、本実施例ではΔVHR=3.1%であり、耐熱性は「良好」であった。
上記実施例1において、下記表2に示す種類及び量の重合体をそれぞれ使用したほかは実施例1と同様にして液晶配向剤を調製するとともに、TN型液晶セルを製造して各種評価を行った。評価結果は下記表3に示した。
これに対し、比較例では、塗膜の表面凹凸性、印刷性、液晶配向剤の保存安定性、電圧保持率及び耐熱性のいずれかの特性が「不良」の評価であった。
(1)液晶配向剤の調製
合成例2で得た重合体(PAA−2)を含有する溶液、及び合成例5で得た重合体(PHF−2)を含有する溶液を用い、重合体(PAA−2):重合体(PHF−2)=80:20(重量比)となるように混合した後、γ−ブチルラクトン(BLANT)、NMP及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を加え、溶媒組成がBLANT:NMP:DEDG=55:30:15(重量比)、固形分濃度が6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤を調製した。
上記(1)で調製した液晶配向剤を用いて、実施例1の(2),(3)及び(4)と同様にして塗膜の表面凹凸性、印刷性及び液晶配向剤の保存安定性の評価を行った。その結果、いずれの特性も「良好」と判断された。
図1に示すFFS型液晶表示素子10を作製した。先ず、パターンを有さないボトム電極15、絶縁層14としての窒化ケイ素膜、及び櫛歯状にパターニングされたトップ電極13がこの順で形成された電極対を片面に有するガラス基板11aと、電極が設けられていない対向ガラス基板11bとを一対とし、ガラス基板11aの透明電極を有する面と対向ガラス基板11bの一面とに、それぞれ上記(1)で調製した液晶配向剤を、スピンナーを用いて塗布して塗膜を形成した。次いで、この塗膜を80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で230℃にて15分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚1,000Åの塗膜を形成した。ここで使用したトップ電極13の平面模式図を図2に示した。なお、図2(a)は、トップ電極13の上面図であり、図2(b)は、図2(a)の破線で囲った部分C1の拡大図である。本実施例では、電極の線幅d1を4μm、電極間の距離d2を6μmとした。また、トップ電極13としては、電極A、電極B、電極C及び電極Dの4系統の駆動電極を用いた。図3に、用いた駆動電極の構成を示した。この場合、ボトム電極15は、4系統の駆動電極のすべてに作用する共通電極として働き、4系統の駆動電極の領域のそれぞれが画素領域となる。
その後、基板の外側両面に偏光板を貼り合わせることにより、FFS型液晶表示素子を製造した。このとき、偏光板のうちの1枚は、その偏光方向が液晶配向膜の偏光紫外線の偏光面の基板面への射影方向と平行となるように貼付し、もう1枚はその偏光方向が先の偏光板の偏光方向と直交するように貼付した。
上記(3)で製造した光FFS型液晶表示素子につき、実施例1の(5)と同様に液晶配向性の評価を行ったところ、この液晶表示素子の液晶配向性は「良好」であった。また、実施例1の(6)と同様にして電圧保持率(VHRBF)を測定するとともに、上記実施例1の(7)と同様にして耐熱性(熱ストレス付与前後の電圧保持率の変化率)の評価を行った。その結果、VHRBFは99.5%であった。また、ΔVHRは2.8%であり、耐熱性「良好」と判断された。
(1)液晶配向剤の調製
重合体として、合成例2で得た重合体(PAA−2)80重量部、及び合成例6で得た重合体(PHF−3)20重量部を、γ−ブチルラクトン(BLANT)、NMP及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)からなる混合溶媒(BLANT:NMP:DEDG=55:30:15(重量比))に溶解し、固形分濃度が6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤を調製した。
上記(1)で調製した液晶配向剤を使用した以外は、実施例1の(2),(3)及び(4)と同様にして塗膜の表面凹凸性、印刷性及び液晶配向剤の保存安定性の評価を行った。その結果、いずれの特性も「良好」と判断された。
上記(1)で調製した液晶配向剤を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板(厚さ1mm)の透明電極面上に、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)し、さらに200℃のホットプレート上で60分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚800Åの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、透明導電膜上に液晶配向膜を有するガラス基板を一対(2枚)得た。次に、上記一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することによりVA型液晶セルを製造した。
上記(3)で製造した液晶セルにつき、実施例1の(5)と同様に液晶配向性の評価を行ったところ、この液晶表示素子の液晶配向性は「良好」であった。また、実施例1の(6)と同様にして電圧保持率(VHRBF)を測定するとともに、上記実施例1の(7)と同様にして耐熱性(熱ストレス付与前後の電圧保持率の変化率)の評価を行った。その結果、VHRBFは98.9%であった。また、ΔVHRは1.9%であり、耐熱性「良好」と判断された。
Claims (11)
- 重合体成分として1種又は2種以上の重合体を含有し、前記重合体成分中に、下記式(1)で表される部分構造(a−1)と、下記式(2)で表される部分構造(a−2)と、を含む液晶配向剤。
- 一分子内に前記部分構造(a−1)と前記部分構造(a−2)とを有する重合体(P)を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
- 前記重合体(P)が有する前記部分構造(a−1)と前記部分構造(a−2)との含有割合が、部分構造(a−1)/部分構造(a−2)のモル比で1/99〜99/1である、請求項2に記載の液晶配向剤。
- ポリアミック酸を更に含有する、請求項2又は3に記載の液晶配向剤。
- 前記重合体(P)と前記ポリアミック酸との含有割合が、重合体(P)/ポリアミック酸の重量比で1/99〜99/1である、請求項4に記載の液晶配向剤。
- 前記ポリアミック酸は、下記式(3−1)で表される構造、下記式(3−2)で表される構造(ただし、テトラカルボン酸二無水物が有する酸無水物基と、ジアミンが有するアミノ基との反応に伴い形成されるアミド結合中に含まれるものを除く。)及び窒素含有複素環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を有する、請求項4又は5に記載の液晶配向剤。
- 前記部分構造(a−1)を有する重合体と、前記部分構造(a−2)を有する重合体とを含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
- 前記R1及び前記R2は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 前記X1及び前記X2は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2:3,5:6−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸2:4,6:8−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する4価の基である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
- 請求項10に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
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