本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。最初に本願発明の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機の外観構成を示す説明図である。空気調和機Aは、例えばヒートポンプ技術等を用い、冷房等室内の空気調和を行う装置である。空気調和機Aは、大別して、室内の壁や天井、床等に設置される室内機100と、屋外等に設置される室外機200と、赤外線や電波、通信線等により室内機100と通信してユーザが空気調和機Aを操作するためのリモコン40(リモートコントローラ、空調制御端末)と、室温や外気温等の空気調和機の制御や表示に用いる情報を入手するための各種のセンサ部50(図5参照)とからなる。また、室内機100と室外機200とは、冷媒配管と通信ケーブル(図示せず)で接続されている。さらに、室内機100は、センサ部50のひとつのセンサとして、室内を撮影する撮像部110を有している。
室内の温度を検出する温度検知部130を撮像部110の一方に配置している。このような配置により、撮像部110と温度検知部130の検出対象までの距離や角度の検出誤差を減らすことができる。近赤外線光源120を撮像部110の他方に配置している。このような配置により、撮像部110の検出範囲や角度と近赤外線光源120の照射範囲や角度の差を減らすことができる。すなわち、撮像部110を挟んで両側に温度検知部130と近赤外線光源120を配置することが望ましい。
さらに、本実施形態では撮像部110または温度検知部130の横に足元モニター140を配置している。そして、後述するように、撮像部110または温度検知部130によって足元を検出した時、または、足元を推定した時に足元モニター140を点灯し、足元を検出できたことをユーザが確認することができる。なお、この足元モニター140は室内機100だけではなく、リモコン40に配置するようにしてもよい。
<室内機>
図2は、本実施形態に係る空気調和機の室内機の構成を示す説明図である。室内機100は、熱交換器102、送風ファン103、左右風向板104(風向部)、上下風向板105(風向部)、前面パネル106、筐体ベース101、各種のセンサ部50(図5参照)等を有している。センサ部50のうち、撮像部110、近赤外線光源120、温度検知部130および足元モニター140を吹出し風路上面109cの上方であって、ドレンパン99の下方の空間に配置している。これらのセンサ等は居住空間に向くよう斜め下方に傾けて設置する必要があり、本実施形態では、基板自体を斜め下方に向けて設置して、これらのセンサ等を基板に直接接続している。なお、必ずしも撮像部110、近赤外線光源120、温度検知部130および足元モニター140の全てを室内機100に搭載する必要はなく、実施形態に合わせて適宜室内機100に搭載するセンサ等を選択すればよい。また、センサの前面には光透過部材150を配置するとよい。
熱交換器102は、複数本の伝熱管102aを有し、送風ファン103により室内機100内に取り込まれた室内の空気を、伝熱管102aを通流する冷媒と熱交換させ、当該空気を冷却または加熱等するように構成されている。なお、伝熱管102aは、前記した冷媒配管に通じていて、公知の冷媒サイクルの一部を構成している。送風ファン103は、風速を調節可能である。左右風向板104は、その基端側が室内機下部に設けた回転軸を支点にして左右風向板用モータにより正逆回転される。そして、左右風向板104の先端側が室内側を向いていて、これにより左右風向板104の先端側は水平方向に振れるように動作可能である。上下風向板105は、室内機100の長手方向両端部に設けられた回転軸を支点にして上下風向板用モータにより正逆回転される。これにより、上下風向板105の先端側は、上下方向に振れるように動作可能である。前面パネル106は、室内機の前面を覆うように設置されており、下端部の回転軸を支点として前面パネル用モータにより正逆回転可能である。ちなみに、前面パネル106は、回転動作を行うことなく、室内機100の下端に固定されたものとしてもよい。
室内機100は、送風ファン103が回転することによって、空気吸込み口107およびフィルタ108を介して室内の空気を室内機100内に取り込み、この空気を熱交換器102で熱交換する。これにより、当該熱交換後の空気は、熱交換器102で冷却され、あるいは、加熱される。この熱交換後の空気は吹出し風路109aに導かれる。さらに、吹出し風路109aに導かれた空気は、空気吹出し口109bから室内機外部に送り出されて室内を空気調和する。そして、この熱交換後の空気吹出し口109bから室内に吹き出す際には、その水平方向の風向きは左右風向板104により調節され、その上下方向の風向きは上下風向板105により調節される。
<室外機>
図3は、本実施形態に係る空気調和機の室外機の構成を示す説明図である。空気調和機A(図1参照)の室外機200には、冷媒を圧縮する圧縮機202、高圧の冷媒を減圧する膨張弁、冷媒の流路を切り替える四方弁、外気と冷媒とを熱交換する熱交換器206等の装置を備えている。室外機200は、仕切り板211と電装品箱210とリード線支持部品209とにより、熱交換器室204と機械室205とを区分(分割)している。熱交換器室204には、冷媒配管を循環する冷媒の外気との熱交換を促進するプロペラファン207とその駆動用のモータ、プロペラファン207を回転自在に支持するファン支柱、および外気と循環する冷媒の熱交換を行う熱交換器206が配設されている。機械室205には、循環する冷媒を高温高圧のガス冷媒にする圧縮機202、常温・高圧の液状冷媒を低温・低圧の液状冷媒にする電動膨張弁、電気部品のリアクタ、および、冷媒が流れる冷媒配管の伝熱管が配設されている。電装品箱210には、室外機200を制御する電装品が収納されており、その上部には電装品蓋が被せられている。
<リモコン>
図4は、本実施形態に係る空気調和機のリモコンの外観を示す説明図である。適宜図8を参照する。リモコン40はユーザによって操作され、室内機100のリモコン受信部Q(図1参照)に対して赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求等の様々な指令である。空気調和機A(図1参照)は、これらの信号に基づいて、少なくとも室内の冷房、暖房、除湿等を行うことができる。また、空気清浄等、その他の空気調和の機能を備えていてもよい。空気調和機Aは、室内の空気を様々に調整することができる。
リモコン40の表示画面41には、図19等で説明する足元気流が実行中であるか否かを示す旨42が表示されている。具体的には、表示内容には、足元気流のほか、障害物上気流等がある。
自動運転ボタン43を押すことで、センサ部50(図5参照)の検知結果に基づいて、自動で冷房、暖房、除湿等を選択し、設定温度等も調整する自動運転を開始する。さらに、本実施形態では、自動運転ボタン43を押すことで、障害物検出部65および通り抜け可否検出部66の実行を開始し、風向制御に反映するようにしている。そのため、ユーザは1回の操作で運転を開始でき、別途、障害物検出部65および通り抜け可否検出部66の実行を操作する必要がない。
また、本実施形態では、リモコン40内部のボタン(図示せず)によって自動運転ボタン43を押しても障害物検出部65および通り抜け可否検出部66を実行させないよう、または、これらの検知結果に基づく風向制御を実行させないよう操作できるようにしている。
さらに、本実施形態では、自動運転ボタン43に加えて、足元気流ボタン44(操作部)を専用に設けている。本実施形態では、足元気流ボタン44をリモコン40の表面に設けており、暖房運転ボタン等で運転を開始するユーザに対しても、簡単に足元気流運転を開始できるようにしている。つまり、本実施形態では、少なくとも足元気流ボタン44で、人検出部62、壁検出部64、障害物検出部65および通り抜け可否検出部66の検出結果に基づく風向制御を開始できるようにしている。なお、足元気流ボタン44はリモコン40の内部に配置するようにしてもよい。
本実施形態では、停止ボタンの下に、使用頻度が高い機能についての専用ボタンとして、足元気流ボタン44と間取り気流ボタン45を配置している。ちなみに、間取り気流ボタン45は撮像部110によって室内の間取りを検知し、間取りに合わせたスイング運転を開始するボタンである。
<センサ部>
図5は、本実施形態に係る空気調和機のセンサ部の構成を示す図である。センサ部50は、室内機100と室外機200に備えられている。センサ部50は、室温センサ、人、物体および室内の表面温度を検知する温度検知部130(図1参照)、外気温センサ、湿度センサ、冷媒配管温度センサ、圧縮機温度センサ、撮像部110(図1参照)、時計等により構成される。撮像部110は、図1に示すように前面パネル106の左右方向中央の下部に設置されている。
温度検知部130がサーモパイルである場合、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成され、前面パネル106の左右方向中央の下部に設置されている。これ以外にも、赤外線センサ、近赤外線センサ、サーモグラフィーを使用してもよい。温度検知部130で検出するのは、室内の平均的な表面温度に限られず、検出範囲の内、人を除いた領域の室内の表面温度、人の着衣の表面温度、人の皮膚の温度、床の表面温度でもよい。
<撮像部>
図6は、本実施形態に係る可視光カットフィルタを有する撮像部の構成を示す説明図である。図6は撮像部110を上方からみた図である。撮像部110は、可視光および近赤外線を撮像できるものを用いている。従来、人を検出する場合等の撮像部では、撮像部内部に、赤外線カットフィルタを取り付けているが、本実施形態では、近赤外線をカットしないようにするために取り付けていない。可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の回りに配置し、可視光カットフィルタ112を回転させて撮像部本体111の前に移動させる構造としている。
具体的には、撮像部110は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである撮像部本体111の周囲に、開口部113を有する円環状の可視光カットフィルタ112を配置している。可視光カットフィルタ112は、フィルタ用モータ114でフィルタ用ギア115(フィルタ可動機構)を介して、撮像部本体111の周囲を回転させることができる。これにより、通常の撮像をするときは、可視光カットフィルタ112の開口部113を介して撮影することで、可視光カットフィルタ112を通さずに撮影することができる。一方、後記する物体を検出する場合には、可視光カットフィルタ112を回転させて、可視光カットフィルタ112を介して、撮像部本体111と連動して駆動できる。また、必要に応じて、近赤外線光源120(図1参照)を撮影前に点灯し、近赤外線を照射することにより、さらに鮮明に近赤外線の反射光を撮像することができる。
図7は、可視光カットフィルタを介して撮像した場合の波長域の一例を示す説明図である。紫外線および可視光がカットされ、近赤外線近傍(例えば、850nm)の波長域を利用して撮像することができる。近赤外線は、物体の色彩や模様が反映されず、物体の形状だけが反映される特徴がある。これにより物体の形状を鮮明にとらえることができる。また、色彩情報を使用しないので、必要とされる画像上の情報量が減り、物体を検出する際の精度向上につながる。
図22は、撮像部の水平方向の向きの移動と視野角を示す説明図である。図22を参照して、撮像部110の水平方向の向きの移動と視野角について説明する。図22は、室内機100および当該室内機100が設けられている室内を鉛直上方側からみた概念図であり、図22の上側は当該室内機100が取り付けられている壁側となり、下側は室内機100が取り付けられている室内の室内機100の前方側の空間となる。
この例で、撮像部110の水平方向の視野角はおよそ60°である。よって、撮像部110の水平方向の向きが真正面(方向311)にあるときに撮像部110で撮像すれば、矢印の範囲312の室内の画像の撮像を行うことができる。また、方向311から撮像部110の向きを室内機100に向かって右に例えば45°移動させ、方向313の向きで撮像すれば、矢印の範囲314の室内の画像の撮像を行うことができる。さらに、方向311から撮像部110の向きを室内機100に向かって左に例えば45°移動させ、方向315の向きで撮像すれば、矢印の範囲316の室内の画像の撮像を行うことができる。これにより、本例では室内機100が設置された室内を合計で約150°の視野角で撮像することができる。また、矢印の範囲312と矢印の範囲314とは一部(約15°の範囲)重なって画像を取得することができ、同様に矢印の範囲312と矢印の範囲316とは一部(約15°の範囲)重なって画像を取得することができる。また、前記の約150°の視野角で室内の画像を撮像するためには、方向313から方向315までの範囲で撮像部110の向きを水平方向に変動すればよい。なお、壁検出部64(図8参照)が検出した室内のコーナは、コーナ373と示されている。他の符号については後記する。
<制御部>
図8は、本実施形態に係る空気調和機の制御部の構成を示す説明図である。制御部60は、電装品に備えられている。制御部60は、送受信部47を介するリモコン40からの情報と、センサ部50からの情報に基づき、室内機100の送風ファン103、左右風向板104、上下風向板105を駆動し、室外機200の圧縮機202、プロペラファン207を駆動する。
制御部60は、後記する第1の撮影モードおよび第2の撮影モードで撮像部110を制御する撮像制御部61(図22、図23参照)と、撮像部110で撮影された画像に基づいて、室内の人の位置を検出する人検出部62(図24、図25参照)と、検出された人の足の位置または足の特徴から足の位置を検出する足検出部63(図16〜図18)と、撮像部110で撮影された画像に基づいて、室内の壁位置を検出する壁検出部64(図26〜図31参照)と、可視光カットフィルタ112を介して撮像部110で撮影された近赤外線画像に基づいて、気流が通る経路において障害物となる物体およびその位置(障害物の位置)を検出する障害物検出部65(図10、図11参照)と、障害物検出部65で検出された障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かを検出する通り抜け可否検出部66(図12〜図14参照)と、足検出部63が人の足元を検出できない場合(例えば、図19の処理S191,Noの場合)、障害物の有無および障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かに基づいて、送風する気流方向を変更する気流制御部68(図16〜図20参照)と、記憶部69とを有する。
<撮像制御部>
図23は、撮像制御部の処理を示すフローチャートである。図22を参照して、撮像制御部61の撮像処理について説明する。撮像部110での室内の撮像は所定時間t1(一例を挙げれば1時間)ごとに行う。すなわち、撮像制御部61(図8参照)は、前回の撮像部110による撮像処理の終了から所定時間t1を経過したときは(処理S1,Yes)、ステッピングモータを制御して取付け部材を駆動することにより、例えば一定の角速度で撮像部110の水平方向の向きの移動を開始する(処理S2)。この動作は、例えば図22に示す向き318側から向き317側に向かって開始する。そして、撮像制御部61は、撮像部110の向きが方向315に達したときは(処理S3,Yes)、必要に応じて一時停止して撮像部110で撮像を行い、画像データを「左画像」(左画面)として記憶部69(図8参照)に記憶する(処理S4)。次に、撮像部110の向きが方向311に達したときは(処理S5,Yes)、撮像制御部61は、必要に応じて一時停止して撮像部110で撮像を行い、画像データを「中画像」(中画面)として記憶部69に記憶する(処理S6)。次に、撮像部110の向きが方向313に達したときは(処理S7,Yes)、撮像制御部61は、必要に応じて一時停止して撮像部110で撮像を行い、画像データを「右画像」(右画面)として記憶部69に記憶する(処理S8)。
そして、図22に示すように撮像部110の向きが方向313に達したときは、ステッピングモータの回転方向を逆転して、方向313から方向318に向かって撮像部110の水平方向の向きの変動を開始する(処理S9)。この方向313から方向318に向かって撮像部110が移動している間は、撮像部110による撮像は行わない。そして、方向315に撮像部110の向きが戻ったときは(処理S10,Yes)、その時刻を記憶部69に記憶し、ステッピングモータを停止して(処理S11)、リターンする。時刻の記憶は画像データを「右画像」として記憶部69に記憶した後(処理S8)に行ってもよい。
また、撮像制御部61は、可視光カットフィルタ112と、室内を撮影する撮像部本体111とを有する撮像部110(図6参照)を制御する。この際に、撮像制御部61は、可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の前面に位置させた状態で撮像部本体111によって室内を撮影する第1の撮影モードと、可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の前面に位置させない状態で撮像部本体111によって室内を撮影する第2の撮影モードとを有する。
<人検出部>
人検出部62は、可視光カットフィルタ112(図6参照)を介する撮像部110で撮影(第1の撮影モードにより撮影)された画像に基づいて、室内の人の位置を検出する。撮像部110以外にも、赤外線センサ、近赤外線センサ、サーモグラフィー、焦電型センサ、超音波センサ、騒音センサを使用してもよい。人検出部62で検出するのは、人の有無に限られず、位置、活動量、生活シーン等を検出してもよい。
人の位置は、撮像部110で撮像された画像から人の頭部等の位置を検出し、頭部の位置を人の位置としている。さらに、本実施形態では、人の位置に加え、人の足元の位置も検出している。
<足検出部>
足検出部63は、人の足元の位置を撮像部110で撮像された画像に基づいて、直接人の足元の位置を検出するようにしてもよい。また、人検出部62が検出した人の頭部等の位置を検出し、人の頭部等の位置から人の足元の位置を推定するようにしてもよい。詳細については、図16〜図18を参照して後記する。
<壁検出部>
壁検出部64は、可視光カットフィルタ112を介さない撮像部110で撮影(第2の撮影モードにより撮影)された画像に基づいて、画像内のエッジの抽出し、太く長いエッジを抽出し、直線を延長し、交点を作成し、交点の重心点を消失点とする。このことにより、壁検出部64は、室内のコーナ373を検出し、検出したコーナ373(図22参照)を壁と壁あるいは壁と天井あるいは壁と床の接線とし、室内の壁や天井や床の面の位置を検出している。
なお、人検出部62で検出した人の位置を累積し、人の位置の累積値に基づいて、コーナ373の検出結果を補完してもよい。すなわち、人の位置の累積値よりも外側に室内の壁が存在し、人の位置の累積値よりも内側に室内の壁が存在することはないため、室内の壁が人の位置の累積値よりも内側の位置で検出された場合は、当該検出結果を除外するようにしてもよい。詳細については、図30および図31を参照して後記する。
<障害物検出部>
障害物検出部65は、可視光カットフィルタ112を介して撮像部110で撮影(第1の撮影モードにより撮影)された画像から、気流が通る経路の障害物となる物体およびその位置を検出する。具体的には、室内にある、テーブル、こたつ、椅子、ソファ、本棚、食器棚、箪笥等の家具や、壁、床、天井、戸、窓、小梁、欄間の建具等を検出する。詳細については図11を参照して後記する。
<通り抜け可否検出部>
通り抜け可否検出部66は、障害物検出部65が検出した物体の下方等の輝度を検出し、輝度が高ければ近赤外線を反射する物体があると推定し、輝度が低ければ、例えば、物体の足元は通り抜け可能であると推定することができる。これ以外にも、各種物体の具体的な通り抜け判定手段として下記がある。
(1)物体の重心を用いる方法(図12参照)
通り抜け可否検出部66は、障害物検出部65が検出した物体の下端からの重心位置の高さLと物体の高さHに基づき、脚長家具であるか脚短家具であるか否かを判定する。具体的には、通り抜け可否検出部66は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、70%)以上である場合に脚長家具と判定し、気流が通り抜けできると推定する。また、通り抜け可否検出部66は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合に脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。詳細については、図12を参照して後記する。
(2)物体の積算面積を用いる方法(図13参照)
通り抜け可否検出部66は、障害物検出部65が検出した物体の下端から所定の高さMまでの物体の積算面積が全面積に対する割合と、物体の下端からの所定の高さMの物体の高さHに対する割合とに基づき、脚長家具であるか脚短家具であるか否かを判定する。具体的には、通り抜け可否検出部66は、物体の下端から積算面積の物体の全面積に対する割合が所定値(例えば、30%)における、物体の下端からの高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、50%)以上である場合、脚長家具と判定し、気流が通り抜けることができると推定する。また、通り抜け可否検出部66は、物体の全面積に対する積算面積が所定値における、物体の下端からの高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合、脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。詳細については、図13を参照して後記する。
本実施形態の通り抜け可否検出部66が、画像内の所定の範囲内に占める物体の面積の割合が所定値以下である場合に、物体の足元は通り抜け可能であると推定することで、物体の方向に送風した場合に通り抜けられない程度を推定することが可能となる。通り抜けられない物体に対して単位時間当たりの供給熱量を下げることが可能となる。また、通り抜けられる方向に対して単位時間あたりに供給する熱量を上げることが可能となり、快適性を向上させることが可能となる。
図15は、物体が障害物であるか否かの判定処理を示す説明図であり、(a)および(b)は異なる大きさの物体を示すものである。物体が障害物であるか否かは、例えば、物体の幅、高さ、または、面積で判定するとよい。例えば、物体の幅で判定する場合は、所定値未満の場合、気流が通る経路の障害物でないと判定し、物体の高さが所定値以下である場合、気流が通る経路の障害物でないと判定する。
物体の大きさと室内機100から物体までの距離に基づいて障害物を判断するとよい。具体的には、物体の画面の面積および物体までの距離から物体の面積、横幅または縦幅の絶対値を算出し、物体の面積、横幅または縦幅が所定値以上であるか否かに基づいて、物体が障害物であるか否か判定するとよい。
面積で判定する場合について、図15を参照して説明する。撮像部110で撮影した左画面、中画面、右画面をひとつにまとめた室内の画像の全幅をXとし、全高さをYとする。その画像中にある物体の横幅をx、縦幅をyとする。物体が障害物であるか否かは、全画面の面積に対する物体の面積が所定値(例えば、8%)未満の場合、気流が通る経路の障害物でないと判定し、全画面の面積に対する物体の面積が所定値以上の場合、気流が通る経路の障害物であるとして判定するとよい。
図15(a)の場合、x/Xが20%であり、y/Yが15%とすると、全画面の面積に対する物体の面積は3%であり、気流が通る経路の障害物でないと判定される。一方、図15(b)の場合、全画面の面積に対する物体の面積は10%であり、気流が通る経路の障害物として判定される。
全ての物体について、風が通り抜けできるか判断しようとすると、マイコンの処理時間が長くなるため、本実施形態では、風の通り抜けに影響を与える程度の大きさの物体について判断するようにしている。すなわち、物体を検出したときに物体の縦方向の長さ、横方向の長さまたはその両方が所定値以上であるか否か判断し、小さなゴミ箱等の所定値以下の物体を検出対象から除外する。このようにすることで、マイコンの処理スピードを向上させることができる。
次に処理内容について説明する。
図9は、制御部の処理の全体概要を示すフローチャートである。制御部60は、運転を開始すると、人を検出し(処理S91)、人の足を検出する(処理S92)ことにより、人の位置を把握する。計測から1時間経過していない場合(処理S93,No)、処理S91に戻る。計測から1時間経過した場合(処理S93,Yes)、制御部60は、通り抜け検出処理を含む物体検出を行う(処理S94)。そして、物体検出処理後、再度人を検出し(処理S95)、室内のコーナ検出をし(処理S96)、人の検出をし(処理S97)、最後に間仕切りの開閉を検出し(処理S98)、一連の処理を終了する。処理S95〜処理S98の処理により、人の位置およびコーナ検出に基づいて、室内の大きさを判定している。なお、本実施形態では、撮像部110で撮影された画像に基づいて人の位置を把握しているが、撮像部110の代わりに、温度検知部130または焦電型赤外線センサを用いて人の位置を把握するようにしてもよい。
図10は、撮像制御部、障害物検出部および通り抜け可否検出部の処理を示すフローチャートである。図10は、図9の処理S94の詳細な処理である。図10の処理は、制御部60の処理であるが、撮像制御部61、障害物検出部65および通り抜け可否検出部66の主体を明瞭にして説明する。
障害物検出部65は、室内に太陽光が照射されているか否か(太陽光有無)を判定する(処理S901)。障害物検出部65の判定は、光源を検出して、太陽光が室内に入らない状態のとき、または、室内に入り込む太陽光の量が所定値以下であるときに実行するとよい。太陽光には近赤外線も含まれているため、窓から太陽光が入り込む場合、太陽光が照射された場所に物体があると誤検出するおそれがあるからである。そこで、本実施形態では、光源を検出して、太陽光が室内に入らない状態のときに、または、室内に入り込む太陽光の量が所定値以下であるときに実行する。他の太陽光有無の判定方法として、光源そのものの識別をしなくても、時間帯によって太陽が出ていない時間帯に物体検出モードを実行してもよい。なお、ユーザが間違った時間帯を設定した場合、物体検出することができなくなるおそれがあるため、また、白熱灯によっても物体検出の誤検出をするおそれがあるため、光源識別を実行できることが望ましい。
撮像制御部61は、開口部113(図6参照)に可視光カットフィルタ112をかけるように移動する(処理S902)。そして、撮像制御部61は、初期の撮像位置(例えば、左画面の撮影位置)に移動し(処理S903)、近赤外線光源120(図1参照)を点灯し、近赤外線を照射する(近赤外線照射ON)(処理S904)。撮像制御部61は、室内の撮像(撮影)をし(処理S905)、近赤外線光源120を消灯し、近赤外線の照射を停止する(近赤外線照射OFF)(処理S906)。
障害物検出部65は、物体の有無判定を行う(図11参照)(処理S907)。そして通り抜け可否検出部66は、障害物検出部65で検出された物体について、足元通り抜け推定を行う(図12参照、図13参照)(処理S908)。
次に、撮像制御部61は、左画面、中画面、右画面の3方向の撮影が終了したか否かを判定し(処理S909)、3方向の撮影が終了していない場合(処理S909,No)、処理S903に戻る。一方、3方向の撮影が終了している場合(処理S909,Yes)、撮像制御部61は、可視光カットフィルタ112を元の位置に移動する(処理S910)。
図9および図10の制御フロー、特に、物体検出処理(障害物検出処理、物体検出モード)および通り抜け可否検出は、リモコン40の自動運転ボタン43(図4参照)を押下すると、自動運転を実行するが、一定時間おきに物体検出モードを実行する。本実施形態の場合は、1時間おきに実行している。なお、物体検出モードを自動運転ボタン43(図4参照)とは別のボタンによって実行してもよい。
障害物検出部65で実行する物体検出モードでは、可視光カットフィルタ112を有する撮像部110を用いる。また、物体検出精度を高める場合、必要に応じて、近赤外線光源120(例えば、近赤外線LED(Light Emitting Diode))も用いる。撮像部110は、前記したように通常の撮像と同じように左右方向に駆動し、室内を撮像する。近赤外線光源120は、撮像部110による撮像の直前から室内を照射し、撮像部110による撮像が終了すると、照射を終了する。撮像部110による撮像するタイミングだけ近赤外線光源120を照射するようにすることで、物体検出モード実行中に、近赤外線光源120により近赤外線を照射し続ける場合に比べて、近赤外線光源120の寿命を延ばすことができる。
本実施形態では、撮像部110は左方向、中方向、右方向の3回撮像を行うため、近赤外線光源120も撮像部110による撮像のタイミングに合わせて3回照射をする。そして、障害物検出部65で撮像された画像の処理を行い、家具等の物体の形状を検出する。
ここで、通常、物体の形状を抽出する場合において、物体の色彩や模様により正確な物体の形状を抽出することができないおそれがある。そこで、本実施形態では、物体検出モード時に可視光カットフィルタ112を移動させて撮像部110の前面に位置させ、かつ、近赤外線光源120を照射させている。近赤外線は、物体の色彩や模様が反映されず、物体の形状だけが反映される特徴がある。この近赤外線の特徴を活かすことで、物体の色彩や模様による誤検出を防ぎ、物体の形状をより正確に検出することができる。このように検出精度を高めることで、物体が、脚付きのテーブルやイス等の風が通り抜けできる形状であるのか、ソファ等の風が通り抜けできない形状であるのかを精度よく判別することができる。
本実施形態の物体検出モードの際、撮像制御部61は、約850nm付近に波長のピークを持つ近赤外線光源120を照射するとよい。撮像した画像は、近赤外線を撮像部110の方向に反射するほど白く、撮像部110の方向に反射しないほど黒く写る。一般に、居住空間に存在する、木、布、金属、紙等は、表面が粗く、近赤外線はその表面で拡散反射する。拡散反射により撮像部110の方向に反射した近赤外線を撮像することで、反射する物体が反射した方向に存在することを検出することができる。このため、近赤外線光源120を照射することにより、一般に室内に多く存在する家具の材質を網羅することが可能となり、高い検出精度を得ることが可能となる。
なお、近赤外線光源120による約850nm付近にピークを持つ近赤外線は、可視光も含むため、近赤外線光源120を点灯しているときは、赤く点灯して見える。このため、点灯中であるか否かを表示する表示部が不要となり、コストを低減することが可能となる。
図11は、障害物検出部の物体の有無の判定処理を示す説明図である。障害物検出部65は、撮像制御部61で撮影した画像をマトリクスに分割し、分割した各領域をセルとして管理している。例えば、マトリクス1101は、空気調和機Aの室内機100側からみた画像のマトリクスであり、縦5セル×横10セルとして説明する。各セルの位置は、左右風向および上下風向を制御する場合の位置に対応する。
障害物検出部65は、画像の輝度値からそこに物体が存在するか否かを判別する。各セル内の数値は、各セル内に占める物体の占有面積の割合を、1〜5で示している。具体的には、0〜20%未満の占有面積の場合は「1」であり、20〜40%未満の占有面積の場合は「2」である。
障害物検出部65は、室内に常時設置されている家具等の物体であるか否か、たまたま一時的に置かれている物体であるか判別するため、複数回の検出を実施する。具体的には、1時間に1回撮影し、所定回数(例えば、10回)の検出結果のうち、多数決で物体の形状を特定する。例えば、10回のうち6回の検出結果で物体であると判別された場合は、常時設置されている物体と認識しその形状を特定する。
図11に示す例においては、マトリクス1101、…、マトリクス1110の10回の検出結果に基づき、多数決結果であるマトリクス1120が示されている。この場合、左から2列目から4列目に物体が検出されており、同様に、右から2列目および3列目に物体が検出されている。
図12は、通り抜け可否検出部の物体の重心を用いた判定処理を示す説明図であり、(a)は、物体の重心位置の例であり、(b)は物体の重心を用いた判定例を示す図である。図12(a)中には、物体の重心位置が示されており、通り抜け可否検出部66は、物体の底辺からの物体の高さHと重心位置の高さLとに基づき、物体の足元が、気流が通り抜けられるか形状であるか否かを判定する。
具体的には、通り抜け可否検出部66は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、70%)以上である場合に脚長家具と判定し、気流が通り抜けできると推定する。また、通り抜け可否検出部66は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合に脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。すなわち、物体の重心位置の高さLと物体の高さHを比較し、物体の重心位置の高さLが物体の高さHに対して所定の比率以上である場合に、気流(風)が通り抜けできる形状であると判断する。
図12(b)には、図11で検出されたセル(占有面積の記号が2から5)に対して、判定結果が、通り抜け可能である場合「1」、通り抜け不可の場合「2」として記載されている。マトリクス1201、…、マトリクス1210の10回の判定結果に基づき、多数決の結果であるマトリクス1220が示されている。この場合、左から2列目から4列目に検出された物体に対し、通り抜け不可として判定されている。一方、右から2列目および3列目に検出された物体に対し、通り抜け可能として判定されている。
図13は、通り抜け可否検出部の物体の積算面積を用いた判定処理を示す説明図であり、(a)は下端からの高さと積算面積の関係を示す図であり、(b)は物体の積算面積を用いた判定例を示す図である。図13(a)の左側の物体の場合、下端からの高さと積算面積とがほぼ線形の関係があるのに対し、図13(b)の右側の物体の場合、下端からの高さと積算面積とが線形の関係にないのが特徴である。
具体的には、通り抜け可否検出部66は、物体の下端からの積算面積の物体の全面積に対する割合が所定値(例えば、30%)における、物体の下端からの高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、50%)以上である場合、脚長家具であると判定し、気流が通り抜けることができると推定する。また、通り抜け可否検出部66は、物体の全面積に対する積算面積が所定値における、物体の下端からの高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合、脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。
図13(b)には、図11で検出されたセル(占有面積の記号が2から5)に対して、判定結果が、通り抜け可能である場合「1」、通り抜け不可の場合「2」として記載されている。マトリクス1301、…、マトリクス1310の10回の判定結果に基づき、多数決の結果であるマトリクス1320が示されている。この場合、左から2列目から4列目に検出された物体に対し、通り抜け不可として判定されている。一方、右から2列目および3列目に検出された物体に対し、通り抜け可能として判定されている。
図14は、各種家具の下端からの高さによる積算面積の割合を示す説明図である。横軸は下端から上端までの距離の割合を示し、縦軸は下端からの積算面積の全面積に対する割合を示す。図14に示す結果から、(1)、(3)、(5)の家具の場合、下端から上端までの距離の割合と、積算面積との割合は単調に比例していることがわかる。これに対し、(2)、(4)、(6)の家具は、下に凸の放物線状の関係がある。
(1)の家具は、脚短家具であり、同様に(5)の家具も脚短の家具(ソファ)である。(3)の家具(チェア)は、足元に車輪部分の領域があり、気流の流れを阻害することがわかる。図14の結果によれば、積算面線の割合が30%であって、下端から上端までの距離の割合が50%以上であるか否かで、足元に気流が通り抜ける形状であるか否かを判別できることがわかる。この結果は、図13の判定で示したものと同様である。
図16は、足検出の全体処理を示すフローチャートである。図16を参照して、図9の処理S91および処理S92の詳細な処理について説明する。近赤外線光源120(図1参照)を点灯し、近赤外線を照射する(近赤外線照射ON)(処理S921)。撮像制御部61は、室内の撮像(撮影)をし(処理S922)、近赤外線光源120を消灯し、近赤外線の照射を停止する(近赤外線照射OFF)(処理S923)。
人検出部62は、室内の人を検出し(処理S924)、人の移動量を算出する(処理S925)。人検出部62の子処理部である移動量算出部は、人検出部62によって検出される人体の位置及び大きさ、または、検出される顔の位置及び大きさの経時的変化に基づいて、ラベリング値で対応付けられる室内の人の移動量を算出する。そして、移動量算出部は、算出した移動量をラベリング値と対応付けて、人検出部62の子処理部である活動量算出部に出力する。活動量算出部は、移動量算出部によって算出される移動量に基づいて人の活動量を算出する。なお、「移動量」とは、実世界の空間内において室内の人が所定時間内に移動したと推定される距離を意味している。また、「活動量」とは、人体の単位表面積あたりの代謝量[W/m2]を意味し、移動量と正の相関がある。移動量算出部、活動量算出部は、特開2013−253717号公報に詳細に記載されている。
人検出部62は、検出した人の移動量が所定値以上であるか否か、動きがあるか否かを判定する(処理S926)。検出した人の移動量が所定値以上である場合(処理S926,大)、足検出部63は差分方式により足領域を推定する(処理S927、図17(a)参照)。一方、検出した人の移動量が所定値未満である場合(処理S926,小)、足検出部63は領域分割方式により足領域を推定する(処理S928、図17(b)参照)。また、動きがない場合(処理S926,無)、人検出部62は、n回動きがないか判定し(処理S929)、n回動きがない場合(処理S929、Yes)、検出した人はポスターであると判定する(処理S930、ポスター判定)。n回に満たない場合(処理S929、No)、処理S921に戻る。なお、処理S930については後記する。
図17は、足検出の差分方式および領域分割方式を示すフローチャートであり、(a)は差分方式、(b)は領域分割方式である。図18は、足検出の差分方式および領域分割方式を示す説明図である。
図17(a)に示す差分方式の場合、足検出部63は、今回撮像した撮像画像と前回撮像した撮像画像との差分を検出して差分画像を作成し(処理S701)、差分画像の差分領域のうち、人の検出した領域を含む差分領域を検出して人の領域と判断する(処理S702)。そして、足検出部63は、人の領域から足の領域を推定する(処理S703)。
図18(a)の例においては、前回撮像した画像が画像801であり、今回撮像した撮像画像が画像802である。画像801と画像802との差分が画像803であり、人の輪郭が検出されている。
図17(b)に示す領域分割方式の場合、足検出部63は、今回撮像した撮像画像を色調、濃淡等で領域を分割し(処理S711)、分割した領域から人を検出した領域を抽出し(処理S712)、人の領域から足の領域を推定する(処理S713)。
図18(b)の例においては、今回撮像した撮像画像が811であり、その中の顔は、領域810として認識される。足検出部63は、画像812に示すように、認識した顔から体の輪郭をなぞって塊として検出する(領域を分割する)。画像813には、分割した領域から人の輪郭が検出されている。
差分方式あるいは領域分割方式で検出した画像内の人の領域のうち、以下の項目のうち少なくとも一つを満たす部分を足と判断する。
(1)領域内の最下端部
(2)領域内で、頭部や顔を検出した部分から所定距離以上離れた部分
(3)領域内で、頭部や顔を検出した部分から所定面積以上離れた部分
(4)領域内で、頭部や顔を検出した位置から推定した足のある所定の範囲内にある部分のうちの最下端部
なお、所定距離、所定面積等は、検出した人の距離や人を検出した頻度、人の移動量または位置等に基づいて変更されてもよい。また、過去に人または足を高い所定の頻度以上で検出した場合は、足と判断する閾値を低く設定し、過去に人または足を所定値より低い頻度で検出した場合は、足と判断する閾値を高く設定してもよい。また、これらの項目のうち、ひとつだけ満たした場合に足を検出してもよく、複数の項目を満たした場合に足を検出してもよい。足を検出するために満たす必要のある項目が増えるほど検出の精度は高くなる。
<ポスター判定>
人検出部62は、撮像部110により得られた画像から人を検出するため、ポスターに写っている人や人形の置物等を人と誤検出する可能性がある。一方、ポスターや置物等は、人ではないため、それらの位置や数に基づき空調することは、過剰な冷房や在室者以外の誤検出した物への送風等、実際に在室する人の快適性を低下させる制御の原因となる。
人検出部62は、検出した人の移動量に基づいてポスターや置物等、実際の人ではない物を、人ではない物として検出する。すなわち、検出した人の移動量が所定値以下となることが所定の回数に達した場合、人ではないポスターや置物を人と検出していると判断し、制御の対象から除外する。または、人検出部62は、前回撮像した画像と今回撮像した画像のうち、人を検出した領域の変化領域の面積の程度から人ではないものを人と検知したことを検出してもよい。
ポスターや置物と判断する閾値は、ポスターや置物と判断された回数が増えるほど、より人ではないと判断しやすい側へ変更されてもよい。すなわち、頻繁にポスターと検出されるものに対しては、短時間でポスターと判断してもよい。一方、人と判断される閾値に達する場合と達しない場合とが混在する検出結果となる人に対しては、ポスターであると判断する閾値を、ポスターであると判断されにくい方向へ変更してもよい。
<気流制御部>
図19は、気流制御部の気流モード選択処理を示すフローチャートである。図20は、室内に複数の人を検出した場合の気流モードの選択例を示す説明図である。図21は、上下風向と左右風向の連動を示すタイムチャートである。
図19を参照して、気流制御部68が、人検出部62、足検出部63、壁検出部64、障害物検出部65、通り抜け可否検出部66の処理結果に基づいて暖房時の気流モードの選択方法について説明する。気流制御部68は、足検出部63が足を検出したか否かを判定し(処理S191)、足を検出した場合(処理S191,Yes)、足元に気流を風向する足元モードを選択する(処理S199)。一方、足が検出できない場合(処理S191,No)、気流制御部68は、人検出部62が人を検出したか否かを判定し(処理S192)、人を検出した場合(処理S192,Yes)、障害物検出部65が人の手前に障害物があるか否かを判定する(処理S193)。
人の手前に障害物がある場合(処理S193,Yes)、気流制御部68は、通り抜け可否検出部66が気流の通り抜けできるか否かを判定する(処理S194)。気流の通り抜け可能である場合(処理S194,Yes)、気流制御部68は、障害物の位置に基づき、障害物の下方に気流を風向する下気流モードを選択する(処理S195)。一方、気流の通り抜け可能でない場合(処理S194,No)、気流制御部68は、障害物の位置に基づき、障害物の上端に気流を風向する上端気流モードを選択する(処理S196)。
処理S193において、人の手前に障害物がない場合(処理S193,No)、気流制御部68は、人に対し風当てする風当てモードを選択する(処理S197)。処理S197は、人は検出できているが、足を検出できていないので、足元モードが選択できない場合である。
処理S192において、人を検出しない場合(処理S192,No)、室内の間取りに合わせて風向する間取りモードを選択する(処理S198)。例えば、間取りモードは、壁検出部64が検出したコーナ373(373a、373b)に対しスイングして風向するモードとなる。
本実施形態の空気調和機Aによれば、気流制御部68は、足検出部63が人の足元を検出できない場合(処理S191,No)、障害物の位置に基づいて、送風する気流方向を変更することができる(処理S195,S196)。空気調和機Aは、さらに、検出された障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かを検出する通り抜け可否検出部66を有し、気流制御部68は、足検出部63が人の足元を検出できない場合、障害物の位置および障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かに基づいて、送風する気流方向を変更することができる。
また、気流制御部68は、人の足元が検出できない場合(例えば、人の足元が障害物検出部63で検出された障害物で隠れている場合)、かつ、障害物の下側を気流が通り抜けできない場合、障害物の上端に気流を送風することができる(処理S196)。
また、気流制御部68は、人の足元が検出できない場合、かつ、障害物の下側を気流が通り抜けできる場合、障害物の下方に気流を送風することができる(処理S195)。
図20、図21を参照して、室内に複数の人を検出した場合のスイングの風向について説明する。図20には、図11と同様に、撮像制御部61で撮影した画像をマトリクスに分割し、各分割した領域をセルとして示している。マトリクス2000は、空気調和機Aの室内機100側からみた画像のマトリクスであり、縦5セル×横10セルとして説明する。各セルの位置は、左右風向および上下風向を制御する場合の位置に対応する。
左右風向の設定位置は、マトリクス2000の右側から左側へ、領域1,2,3,…,10とする。また、上下風向の設定位置は、マトリクス2000の下側から上側へ、領域1,2,3,4,5とする。よって、マトリクス2000の右下端はセル位置(1,1)とし、左上端はセル位置(10,5)として説明する。
マトリクス2000には、人M1,M2,M3の3名の人が検出されており、人M1の前には障害物F1である家具があり、人M3の前には障害物F3の家具がある。人M1の足元は検出されておらず、障害物F1は、気流が通り抜けできないと判定されている。この際、暖房運転する際に、風向を制御することを検討する。デフォルトの上下風向の風向位置は、室内機100に近い位置(セル位置(*,1)として説明する。なお、*は、左右風向の領域1〜10に対応する。
本実施形態では、気流制御部68は、左右風向と上下風向とを連動して制御する方式を採用している。すなわち、上下風向が所定位置に到達後、左右風向が所定位置へ移動する。また、左右風向が所定位置に到達後、上下風向が所定位置へ移動する方式を採用した。なお、所定位置が変化しない場合、となりのセルへの移動時間経過後に、移動を開始するものとなる。
具体的には、人M1の場合、図19の処理において、足が検出されず、人が検出され、障害物があり、通り抜け不可の場合であり、気流制御部68は障害物の上端気流モードを選択する。その場合の風向位置としてセル位置(9,4)が所定位置となる。
人M2の場合、図19の処理において、足が検出されているので、気流制御部68は、足元モードを選択する。その場合の風向位置としてセル位置(6,2)となる。同様に、人M3の場合、足が検出されているので、気流制御部68は、足元モードを選択する。その場合の風向位置としてセル位置(3,2)となる。
図21は、左右風向と上下風向のタイムチャートであり、マトリクス2000の左端側から右端にスイングし、折り返して右端から左端へスイングする際の風向位置を示している。当初、セル位置(10、1)にあり、時間の経過とともに、セル位置(10,4),(9,4),(9、1),(8,1),(7,1),(7,2),・・・・と順次、風向が制御される。
本実施形態では、人と室内機100との間に障害物である家具がある場合、人検出部62で人を検出できても足検出部63で足を検出できない場合がある。すなわち、人検出部62で人がいることを検出しても、体の下半分がテーブルに隠れていたり、こたつに入っていたり、ソファに座っている人体を背面から検出している状態だったりすることで、図17で説明した差分方式または領域分割方式で足を検出できない場合がある。その場合、以下の制御とすることで、在室者の快適性を高めることが可能となる。
すなわち、足がテーブル等で隠れている場合でテーブルの下を風が通り抜けできない場合、テーブルの上の領域のうち、最も下側の領域に送風する。すなわち、人と室内機100との間に障害物である家具があり人の足を検出できない範囲内において、人の前後方向の位置に関わらず、送風の方向はテーブルを上側でよけられる風向のうちで最も下側となる。一方、家具の下を風が通り抜けられる場合で、人の足が家具で隠れて検出できない場合、家具の下側を通して送風する風向となり、人の足が家具で隠れて検出できない範囲内においてその方向は一定となる。これにより、足を検出できない場合でも、暖気を在室者の足に供給し快適性を向上させることや、暖気が顔にあたり不快に感じることを避けることが可能となる。
気流制御部68は、足検出部63の出力に応じて空気調和機を制御する。すなわち、暖房運転時には足検出部63で検出した足に向けて、足を直接温めることが可能となる。また、足に向けて送風することで足付近の床も温められ、そこに足が触れる在室者の快適性を高めることが可能となる。また、足検出部63で検出した足の手前側に暖気を供給することで、温かい気流を体に直接当てることなく、足の手前側の床にぶつかり速度の落ちた温かい空気を、気流感を低減して在室者に供給することが可能となり、在室者の快適性を高めることが可能となる。
足検出部63で検出した足の位置に基づき、上下風向板105および/または左右風向板104を制御することで、前記のような在室者の快適性を高めることが可能となる。また、足検出部63で検出した足の位置に基づき風速を変えることで在室者の快適性をより高めることが可能となる。すなわち、足の位置が遠ければ送風ファンの回転数を上げ、風速を上げることで、気流を足に確実に届けることが可能となる。また、足の位置が室内機100の正面ではなく右側あるいは左側に偏った位置にある場合、左右風向板104による気流の偏向により風速が低下するため、送風ファンの回転数を上げ、風速を上げることで、気流を足に確実に届けることが可能となる。
また、温度検知部130(図1参照)が足の温度あるいは足の周囲の温度を検出することで、足が触れる環境が足からの放熱を促進し、足を冷やす環境であるか、足が触れる環境から足への放熱が促進され足を温める環境であるのかを判断することが可能となる。すなわち、足が冷える環境であれば、風向を足に向け、風速を上げ、足に気流を供給する風向時間を長くし、設定温度を高くすることで、足付近の温熱環境を、足を温める環境へ変えることが可能となり、在室者の快適性を向上させることが可能となる。
本実施形態では、人検出部62で人を検出したものの足検出部63で足を検出できない場合、人の位置から足の位置を推定し、推定した足の位置に基づき風向、風速、風向時間、吹き出し空気温度を制御してもよい。
また、障害物検出部65で検出した障害物の家具が、足元を気流が通り抜けられる家具であり、人(在室者)と室内機100の間にその家具がある場合、在室者の足を足検出部63が検出できない場合でも家具の下に送風し、在室者の足に暖気を供給することが可能となり、在室者の快適性を向上させることが可能となる。
また、障害物検出部65で検出した障害物である家具が、人(在室者)と室内機100の間にある場合でも、在室者の足を検出できている場合(例えば、図20の人M3の場合)、検出した家具は障害物とはならず、在室者の足に暖気を直接送風することが可能となる。また、室内機100と在室者の間に家具がある場合でも、家具と在室者の間に所定の距離がある場合、在室者の足の手前側に暖気を送風することで、家具を障害物とすることなく、床にぶつかって速度の落ちた温かい空気を在室者に供給することが可能となり、在室者の快適性を向上させることが可能となる。
また、室内に複数の足や複数の在室者を検出した場合、左右風向板104は足や人を検出した間あるいはその一つ外側の領域の間をスイング運転する。上下風向板105は最も手前の人の足元を基準にして送風するとよい。
本実施形態において、風向、風速、風向時間、吹き出し空気温度は以下を意味する。適宜図1〜図3を参照する。
<風向>
風向とは、上下風向板105および/または左右風向板104により制御される、室内機100から吹き出される空気の方向である。一方向のみで固定されるだけでなく、連続してスイング運転する制御、所定のタイミングで一時停止するスイング制御、所定のタイミングのみスイング運転するスイング制御、所定のタイミングでスイング範囲を更新するスイング制御、人の位置や足の位置のセンサ出力により変更される制御、1/fの所定の周期でのゆらぎ制御等、上下風向板105および/または左右風向板104で実施することのできる風向を指す。
<風速>
風速とは、送風ファン103の回転数、上下風向板105および/または左右風向板104の開き具合や向きにより制御される、室内機100から吹き出される空気の速度を指す。一定の風速で固定されるだけでなく、1/fの所定の周期でのゆらぎ制御、所定のタイミングで更新される制御、人の位置・足の位置の出力により変更される制御等、送風ファン103の回転数、上下風向板105および/または左右風向板104の開き具合や向きにより制御される、室内機100から吹き出される空気の速度を指す。
<風向時間>
風向時間とは、上下風向板105および/または左右風向板104のスイング中の所定の方向での一時停止時間を指す。一定の時間だけ一時停止するだけでなく、上下風向板105および/または左右風向板104の位置に基づく停止時間、人の位置・足の位置の出力により変更される停止時間等、上下風向板105および/または左右風向板104のスイング中の所定の方向での一時停止時間を指す。
<吹き出し空気温度>
吹出し空気温度とは、設定温度、熱交換器206の温度、圧縮機202の回転数、送風ファン103の回転数、上下風向板105および/または左右風向板104の開き具合や向きにより制御される、室内機100から吹き出される空気の温度を指す。サーモオンやサーモオフによる吹き出し空気温度の変化や熱負荷の変動等による吸い込み温度の変化に伴う吹き出し温度の変化だけでなく、設定温度、熱交換器206の温度、圧縮機202の回転数、送風ファン103の回転数、上下風向板105および/または左右風向板104の開き具合や向きにより制御される、積極的な温度変化を含む、室内機100から吹き出される空気の温度を指す。
<足の状況>
足の状況とは、足の検出の有無、足の位置、室内機から足までの距離、壁から足までの距離、足付近の温度等、足を基準に空気調和を行う際に、空気調和機で制御できる風向、風速、風向時間、吹き出し空気温度により影響を与えることのできる要素を指す。足付近とは、足の周囲を指し、足を含んでもよいが、理想は足を含まない足近傍の領域を指す。足付近の温度とは、足近傍の物体の表面温度を指し、足の温度を含んでもよいが、理想は足を含まない床や壁、家具等の物体の表面温度を指す。
<足元モニター(足ランプ)>
室内機100には、人(在室者)から視認できる部分に、足元モニター140(図1参照)を備える。足元モニター140はLEDであり、以下の場合に点灯や点滅するとよい。
(1)足を検出中は点滅
(2)足を検出した時は点灯
(3)足を検出していないときは消灯
(4)人を検出したが足を検出していないときは減光して点灯
(5)足に気流を届けられるときは点灯
(6)足に気流を届けられないときは減光して点灯
(7)足元モニターにより足検出の状況を把握できることで、在室者は空気調和機Aが何をしているのかを把握することが可能となり、安心して空気調和機Aを使用することが可能となる。なお、足元モニター140の点灯、点滅方法は上記に限らない。
次に、人検出部62、壁検出部64(図8参照)の詳細について説明する。
<人検出部>
図24は、人検出部の人位置判定処理を示すフローチャートである。図25は、人検出部の人位置判定処理を示す説明図であり、(a)〜(c)はそれぞれ具体的な計算について説明する説明図である。まず、人検出部62(図8参照)は、図23の撮像処理で取得した左画像、中画像、右画像から人の位置を検出する(処理S31)。次に、人検出部62は、この検出した人の位置に関し、画面上の座標系から実空間の座標系に変換する(処理S32)。これにより、室内のどこに人が存在していたかを判定することができる。このようにして、人の実空間の座標を判定すると、人検出部62は、当該座標の情報を記憶部69に記憶する(処理S33)。
図25は、図24の室内の人位置判定処理について詳細に説明する説明図である。図24の処理S32においては、具体的には以下の処理により室内の人の実空間の座標を判定する。まず、人の体の部位のうち、頭部の大きさは、身長、性別に比較的依存しない。そこで、処理S31で検出した人ごとに当該人の顔中心の位置を算出するとともに、その頭部の大きさ(縦方向の長さ)D0を算出する。
図25(a)は、撮像部110の光軸Pと垂直面Sとの関係を示す説明図である。図25(a)に示すように、撮像部110の光軸Pは、水平面に対して俯角εを有している。垂直面Sは、光軸Pに垂直であるとともに、人391の顔中心を通る仮想平面である。距離Lは、撮像部110が有するレンズ(図示せず)の焦点131aと、人391の顔中心との距離である。また、室内機100が設置される壁331とレンズの焦点131aとの距離はΔdである。
図25(b)は、画像面に撮像される画像と、実空間に存在する人391との関係を示す説明図である。図25(b)に示す画像面Rは、撮像部110が有する複数の受光素子(図示せず)を通る平面である。算出した前記の頭部の大きさD0に対応する縦方向の画角γyは、以下に示す式(1)で表される。ちなみに、式(1)で角度βy[deg/pixel]は、1ピクセル当たりの画角(y方向)の平均値であり、既知の値である。
そうすると、撮像部110が有するレンズ(図示せず)の焦点131aから顔中心までの距離L[m]は、一般的な人の顔の縦方向の長さの平均値をD1[m](既知の値)とすると、以下に示す式(2)で表される。前記したように、俯角εは、前記レンズの光軸が水平面となす角度である。
図25(c)は、前記レンズの焦点から顔中心までの距離Lと、画角δx,δyとの関係を示す説明図である。画像面Rの中心から画像上の顔中心までのx方向、y方向の画角をそれぞれδx,δyとすると、これらは以下に示す式(3)、式(4)で表される。ここで、xc,ycは、画像内の人391の人中心の位置(画像内でのx座標、y座標)である。また、Tx[pixel]は撮像画面の横サイズであり、Ty[pixel]は撮像画面の縦サイズであり、それぞれ既知の値である。
したがって、実空間における人中心の位置座標は、以下に示す式(5)〜式(7)によって表される。
すなわち、このx,y,zの各値は図25に図示のとおりであり、これらの値から室内機100の空気吹出し口109b側からみたX方向(図12の左右方向)、Y方向(図12の上下方向)、Z方向(図12に垂直な方向)の座標が求められる。以上の処理により、処理S32の処理を実現している。
<壁検出部・コーナ方向判定処理>
図26は、壁検出部のコーナ方向判定処理を示すフローチャートである。図27は、壁検出部のコーナ方向判定処理で行う画像処理を示す図であり、(a)〜(e)はこの順に画像処理の手順を示している。このコーナ方向判定処理は、図23の撮像処理が実行されるたびに行う。
すなわち、図23の撮像処理で取得した左画像、中画像、右画像をそれぞれ対象として、次のような画像処理を行う。まず、壁検出部64(図8参照)は、図23の撮像処理で取得した画像(図27(a)に、その例を示す)からエッジを検出する(処理S21)。次に、壁検出部64は、検出したエッジにフィルタリング処理を行い、所定値以上に太く、所定値以上に長く、かつ、所定値以上に明瞭なエッジのみを残す(処理S22)。図27(b)には、このようにして図27(a)の画像から得られたエッジ371を白い線図で示している。次に、壁検出部64は、各エッジ371を、その長さ方向に延長する(処理S23)。図27(c)には、このようにして延長した各エッジ371を示している。そして、壁検出部64は、このように延長した各エッジ371の交点(図27(d)に示す交点372)を求める(処理S24)。そして、各交点372の重心(図27(e)に示す重心373)を求める(処理S25)。この重心373の座標は、各交点372の画像上の基準位置からのX方向(横方向)、Y方向(縦方向)の距離の平均をそれぞれ求めることにより算出することができる。そして、この重心373の画像上の位置を部屋のコーナ(角部)の位置と推定することができる。これにより、室内のコーナ(重心373)の撮像部110からみた水平方向の方向がわかるので(前記の左画像、中画像、右画像のうちの何れの画像であるか、その画像中で重心373の位置は横方向の基準位置から何ピクセル目にあるかにより、当該方向がわかる)、当該コーナの方向を記憶部69に記憶(設定)する(処理S26)。この場合の記憶処理では、過去の所定回数分(例えば過去10回分)のみのコーナ(重心373)の方向を記憶部69に蓄積することとし、それより古い情報は削除する。そして、その過去の所定回数分の情報の平均値(移動平均の値)を、最終的なコーナ(重心373)の方向として確定し、記憶部69に記憶する。これは、室内における家具や器物の配置移動により、記憶部69に蓄積されている情報が示す室内の左右のコーナの方向は時間帯にばらつきを生じる場合があるからである。そのため、前記のとおり平均値を求めることで情報の中に含まれているノイズを除去して、最も確からしい方向を室内の左右のコーナ(重心373)の方向とすることができる。以下、重心373を適宜コーナ373という。処理S26により、後記の方向376,377が設定される。
なお、図27(e)の例では、室内機100が設置されている部屋の引き戸374が開いているため、その開口部の奥のエッジが検出されて、重心373の位置が同図に示す位置となっている。しかし、引き戸374が閉められた状態の画像が撮像された場合であれば、符号375またはその近傍の位置が重心373となる可能性が高い。
図1に示すように、撮像部110は、空気吹出し口109b(図2参照)の長手方向の中央部近傍に位置するので、前記のようにして特定した重心373は、空気吹出し口109b側からみた室内のコーナとみなすことができる。
また、壁検出部64は、図22に示すように、処理S25で求めた部屋のコーナ373(室内機100に向かって左右のコーナ373a,373b。以下、コーナ373(コーナ373a,373b)というときは、撮像部110でみた空気吹出し口109b側からの画像上での重心(図27(e))を意味する)の方向376,377のそれぞれの室内機100の正面の方向311からみた角度が何度になるか判断する(処理S27)。そして、この角度の小さい方の壁は大きい方の壁より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する(処理S28)。すなわち、方向376と方向311とがなす角度が方向377と方向311とがなす角度より小さければ、壁336の方が壁335(図28参照)より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する。方向377と方向311とがなす角度が方向376と方向311とがなす角度より小さければ、壁335の方が壁336より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する。このような、左右の壁336と壁335とのうち空気吹出し口109b側からみて近いのは、あるいは遠いのはどちらであるかの情報も記憶部69に記憶する(処理S29)。
図28は、壁検出部のコーナ方向判定処理での室内の平面を示す説明図である。図22と同様の構成に対しては、同一符号を付す。図29を参照して、処理S27,処理S28の処理を具体的に説明する。まず、角度aを算出する。これは、撮像部110の例えば水平方向の画素数が例えば640[pixel]であり、角度aの範囲の(上下、左右方向の)画素数がβ[pixel]であったとすれば、“640[pixel]:β[pixel]=60°:a°”、“a°=60°×β[pixel]/640[pixel]”から求められる。そして、“A°=30°+a°”で角度Aが求められる(範囲312の角度が約60°で、30°はその半分)。同様の考え方で、角度bを求め、“B°=30°−b°”で角度Bが求められる。そして、この例では、“A°>B°”であるから、図18において、壁335の方が壁336より空気吹出し口109b側からみて遠いと判断できる。
図29は、壁検出部のコーナ方向判定処理を示す説明図であり、(a)は室内の平面図であり、(b)は画像中の重心の決定について説明する説明図である。図22と同様の構成に対しては、同一符号を付す。図29(a)の平面図で示す室内のように、室内の形状が長方形、正方形ではなく、例えば、室内のコーナ部分378が室内側に角柱状に飛び出しているような形状の場合、撮影した画像379の例は図29(b)のようになる。このような場合には、図29(b)に示すように、コーナ(重心)373の候補(符号373c)が複数求められることがある。
このような場合には、複数の候補373cの画像上の基準位置からのX方向(横方向)、Y方向(縦方向)の距離の平均をそれぞれ求めることにより、当該平均後の座標をコーナ(重心)373として求めることができる。
以上の処理により、壁検出部64は、空気吹出し口109b側からみた部屋の左右のコーナ373a,373b(図28参照)の方向376,377を的確に判断することができる。また、壁検出部64は、空気吹出し口109b側からみて室内の左右の壁335,336のうちどちらが近く、どちらが遠いかも判断することができる。
<壁検出部・拡がり範囲判定処理>
図30は、壁検出部の拡がり範囲判定処理を示すフローチャートである。図31は、壁検出部の拡がり範囲判定処理での室内配置を示す平面図である。図30、図31を参照して、図24に示した人位置判定処理の結果を用いて室内の拡がりの範囲を判定する処理について説明する。まず、所定時間t1ごとに図23の撮像処理が行われ、その度に図24の処理が実行され、その結果が記憶部69に記憶されている。そこで、壁検出部64は、前記処理S33(図24参照)により、新たに人の座標情報が記憶部69に記憶されると(処理S41,Yes)、当該人の座標情報から、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383の外側の領域381に人の座標が存在するか否かを判断する(処理S42)。領域381に人の座標が存在するときは(図31の符号382で当該人の例を示している)(処理S42,Yes)、当該人のX方向の座標(図31の左右方向)位置を室内機100に向かって右側の壁336(または左側の壁335)の位置と推定する(処理S43)。これは当該座標に人382が位置するということは、壁336(または左側の壁335)は少なくとも当該座標の位置あるいはさらにその外側にあることになるので、その人382の位置を現時点での壁336(または左側の壁335)の位置とするものである。
これにより、壁336(または壁335)の現時点における推定位置がわかるので、室内の各コーナおよび各壁の位置を推定する(処理S44)。すなわち、この壁336(または壁335)の位置のY方向を延長していき、コーナの方向376(またはコーナーの方向377)との交点が現実のコーナ422a(またはコーナ422b)であると推定できる。また、当該コーナ422a(またはコーナ422b)の位置をX方向に延長していき、他のコーナの方向377(またはコーナ376)に達するまでが正面の壁334の位置と推定できる。そして、そのコーナの方向377(またはコーナ376)と交わった位置が他の現実のコーナ422b(またはコーナ422a)であると判定できる。さらに当該位置からY方向に延長していった位置が壁335及び壁336のうちの他方の壁の位置であると推定することができる。
一方、処理S44の後、または、領域381に人の座標が存在しなかった場合には(処理S42,No)、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383に人の座標が存在するときは(図31の符号384で当該人の例を示している)(処理S45,Yes)、当該人のY方向の座標位置を室内機100の正面の壁334の位置と推定する(処理S46)。これは当該座標に人384が位置するということは、壁334は少なくとも当該座標の位置あるいはさらにその外側にあることになるので、その人384の位置を現時点での壁334の位置とするものである。
これにより、正面の壁334の位置がわかるので、室内の各コーナおよび各壁の位置を判断する(処理S47)。すなわち、この正面の壁334をX方向に延長していき、コーナの方向376およびコーナの方向377との交点が、現実のコーナ421aおよびコーナ421bであると推定できる。そして、この現実の各コーナ421a及びコーナ421bをY方向に延長していくと、当該位置が壁336および壁335であると推定することができる。
処理S47の後、または、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383に人の座標が存在しなかったときは(処理S45,No)、処理S44および処理S47で推定された現実の各コーナおよび各壁の位置のうち、室内機100側から最も遠いものを各コーナおよび各壁の位置の最終的な判定結果とする(処理S48)。
図31には、人384に基づいて推定される壁331,334,335,336の位置をそれぞれ331a,334a,335a,336a(破線)として示している。同様に、人382に基づいて推定される壁331,334,335,336の位置をそれぞれ331b,334b,335b,336b(実線)として示している。
この場合、処理S44または処理S47でしか判定結果が得られなかったときは、当該得られた判定結果(人を複数検出したときは、室内機100側から最も遠いものの判定結果)を各壁および各コーナの位置の判定結果とする。そして、この判定結果を記憶部69に記憶する(処理S49)。この各壁及び各コーナの情報は所定時間t1ごとに取得するので、この情報の記憶は、所定時間t1ごとに行われる。そして、この情報の記憶は、所定の基準時以後(例えば、直近の過去30回分)の各壁及び各コーナの情報のうち、壁の位置が室内機100側から最も遠いものの情報で更新するように行う。これにより、所定の基準時以後に取得した情報のうち、各壁及び各コーナの位置が室内機100側から最も遠いものの情報が処理S49で記憶される。
なお、このようにして特定した空気吹出し口109b側からの室内の左右における現実のコーナ421a,421b,422a,422b(と推定される位置)までのそれぞれの距離も、次のように求められる。すなわち、
“コーナ421aまでの距離=√((壁336aまでの距離)2+(壁334aまでの距離)2)”、
“コーナ421bまでの距離=√((壁335aまでの距離)2+(壁334aまでの距離)2)”である。コーナ422aまでの距離、コーナ422bまでの距離も同様に求められる。
以上説明したように、壁検出部64は、撮像部110で撮影された画像から、風向部の水平方向の向きにおいて、空気吹出し口109bの前方側の右のコーナの方向と、空気吹出し口109bの前方側の左のコーナの方向と、人検出部62で検知した人の位置とに基づいて室内の壁の位置を検知することができる。
本実施形態では、撮像部110の画像を用いた壁検出部64について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、近赤外線を室内に向けて照射し、赤外線透過フィルタ(IR透過フィルタ)を備えたCCDイメージセンサで撮像し、画像の上方の輝度と、輝度と距離のデータベースとの比較から、側面の壁や正面の壁までの距離を推定してもよい。
また、近赤外線を複数本の平行線状に室内に向けて照射し、IR透過フィルタを備えたCCDイメージセンサで撮像し、平行線の間隔の違いから側面や正面の壁までの距離を推定してもよい。
さらに、撮像部110は、室内機100の前面に据え付けられているとして説明したが、同様の方法で天井に据え付けられる撮像部により、床を検出することで壁を検出してもよい。
人検出部62、足検出部63は、撮像部110の画像に基づいて人を検知しているがこれに限定されるものではない。例えば、センサ部50として、赤外線センサ、サーモパイル、サーモグラフィー、焦電型センサ、超音波センサ、騒音センサを使用してもよい。人検出部62で検出するのは、人の位置に限られず、活動量、生活シーンであってもよい。温度検知センサとしてサーモパイルを用いる場合、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成されるサーモパイルとし、前面パネルの左右方向中央の下部に設置するとよい。温度検知センサは、室内の平均的な表面温度に限られず、検出範囲の内の人を除いた領域の室内の表面温度、人の着衣の表面温度、人の皮膚の温度、床や壁や天井の各部の表面温度を検出することができる。
本実施形態の変形例として、撮像部は、物体の表面の温度分布を画像として撮影可能なものであってもよい。すなわち、空気調和機Aは、撮像部で撮影された画像に基づき室内の人を検出する人検出部62と、撮像部で撮影された画像に基づき検出された人の足元を検出する足検出部63と、撮像部で撮影された画像に基づき室内の障害物の位置を検出する障害物検出部65と、検出された障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かを検出する通り抜け可否検出部66と、足検出部が人の足元を検出できない場合、障害物の有無および障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かに基づいて、送風する気流方向を変更する気流制御部68とを有することを特徴としてもよい。なお、障害物検出部66が温度画像に基づき判定する場合、例えば、暖房時の温風気流を床面に送風した際の床と家具との温度差を検知して行うとよい。
本実施形態の空気調和機によれば、室内の人、障害物の位置および形状を立体的にみることにより気流が通る経路をみつけ、図19に示した各種気流モードにより、適切に風向を制御できる。