本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機の外観構成を示す説明図である。図2は、本実施形態に係る空気調和機の室内機の構成を示す説明図である。図3は、中央羽根の回動軸と左右羽根の回動軸とが非同一直線上にあることを示す説明図である。
空気調和機Aは、室内機100と室外機200とを接続配管で繋ぎ、室内を空気調和する。室内機100は、筐体ベース101(図2参照)の中央部に熱交換器102を置き、熱交換器102の下に送風ファン103を配置し、ドレンパン99(露受皿、筐体)等を取り付け、これらを化粧枠101cで覆い、化粧枠101cの前面に前面パネル106を取り付けている。
送風ファン103からの吹出し気流を送風ファン103の長さに略等しい幅を持つ吹出し風路109aに流し、吹出し風路109aの途中に配した左右風向板160で気流の左右方向を偏向する。更に、空気吹出し口109bに配した上側上下風向板170(第1の上下風向板)と下側上下風向板180(第2の上下風向板)で気流の上下方向を偏向して室内に吹出すことができるようになっている。
上側上下風向板170は、左右方向に概略3分割され、左右羽根170a、中央羽根170b、左右羽根170cとで構成されている。下側上下風向板180は、左右方向において分割されておらず、1枚の羽根で構成されている。
筐体ベース101には、送風ファン103、フィルタ108、熱交換器102、ドレンパン99、左右風向板160、上側上下風向板170、下側上下風向板180等の基本的な内部構造体が取り付けられる。そして、これらの基本的な内部構造体は、筐体ベース101、化粧枠101c、前面パネル106からなる筐体に内包され室内機100を構成する。また、前面パネル106の下部側には、運転状況を表示する表示部と、センサ部50(図7参照)と、別体のリモコン40(リモートコントローラ、空調制御端末)からの赤外線の操作信号を受ける受光部Qとが配置されている。
室内機100は、センサ部50として、室内を撮影する撮像部110、温度検知部130を有している。室内の温度を検出する温度検知部130を撮像部110の一方に配置している。このような配置により、撮像部110と温度検知部130の検出対象までの距離や角度の検出誤差を減らすことができる。近赤外線光源120を撮像部110の他方に配置している。このような配置により、撮像部110の検出範囲や角度と近赤外線光源120の照射範囲や角度の差を減らすことができる。すなわち、撮像部110を挟んで両側に温度検知部130と近赤外線光源120を配置することが望ましい。なお、近赤外線光源120を撮影前に点灯し、近赤外線を室内に照射することにより、撮像部110は、鮮明に近赤外線の反射光を撮像することができる。
さらに、本実施形態では撮像部110または温度検知部130の横に足元モニター140を配置している。そして、撮像部110または温度検知部130によって足元を検出した時、または、足元を推定した時に足元モニター140を点灯し、足元を検出できたことをユーザが確認することができる。なお、この足元モニター140は室内機100だけではなく、リモコン40に配置するようにしてもよい。
前面パネル106は、下部に設けた回動軸を支点として駆動モータにより回動され、空気調和機Aの運転時に空気吸込み口107aを開くように構成されている。これにより、運転時には上側の空気吸込み口107に加えて、前側の空気吸込み口107aからも室内機100内に室内空気が吸引される。
化粧枠101cの下面に形成される空気吹出し口109bは、奥の吹出し風路109aに連通している。上側上下風向板170および下側上下風向板180は、閉鎖状態で、空気吹出し口109bをほぼ隠蔽して室内機100の底面に連続する大きな曲面を有するように構成されている。
下側上下風向板180は、両端部に設けた回動軸を支点にして、リモコン40からの指示に応じて、駆動モータにより空気調和機の運転時に回動して、空気吹出し口109bを開き、その状態に保持する。
また、上側上下風向板170の左右羽根170a,170cおよび中央羽根170bは、両端部に設けた回動軸を支点にして、一端に設けた駆動モータにより空気調和機の運転時に回動して、空気吹出し口109bを開き、その状態に保持する。詳細については、後記する。
室内機100は、制御部60(図9参照)を備え、この制御部60にマイコンが設けられる。このマイコンは、室内温度センサ、室内湿度センサ等の各種のセンサからの信号を受けると共に、リモコン40からの操作信号を受光部で受ける。このマイコンは、これらの信号に基づいて、送風ファン103,前面パネル駆動モータ,上下風向板駆動モータ,左右風向板駆動モータ等を制御すると共に、室外機200との通信を司り、室内機100を統括して制御する。なお、左右風向板160は2分割されている。分割された左右風向板160の羽根、上側上下風向板170の3枚の羽根、および下側上下風向板180の羽根は独立して制御できるように、羽根毎の駆動モータによって制御している。
空気調和機Aの運転停止時には、前面パネル106は空気吸込み口107aを閉じるように、また、上側上下風向板170および下側上下風向板180は空気吹出し口109bを閉じるように制御される。
左右風向板160は、下端部に設けた回動軸を支点にして駆動モータにより回動され、リモコン40からの指示に応じて回動されてその状態に保持される。これによって、吹出し空気が左右の所望の方向に吹出される。なお、リモコン40から指示することにより、空気調和機の運転中に左右風向板160、上側上下風向板170、下側上下風向板180を周期的に揺動させ、室内の広範囲に周期的に吹出し空気を送ることもできる。
ドレンパン99は、図2に示すように、熱交換器102の前後両側の下端部下方に配置され、冷房運転時や除湿運転時に熱交換器102に発生する凝縮水を受けるために設けられている。受けて集められた凝縮水はドレン配管を通して室外に排出される。
室外機200は、ベースに圧縮機,室外熱交換器,室外ファンを搭載し、外箱で覆い、配管接続バルブに室内機100からの接続配管を接続している。
室外機200の外箱は前面板,天板,側面板等からなり、室外熱交換器に対向する外面に室外空気の吸込み部が設けられ、室外ファンに対向する前面板に自在に空気の流通ができるファンカバーが設けられている。室外ファンは室外熱交換器が上流側に、ファンカバーが下流側になるように回転駆動され、前述のように室外空気を室外熱交換器に流通させる。
この空気調和機Aを運転する時には、電源に接続してリモコン40を操作し、所望の暖房,除湿,冷房等の運転を行う。暖房等の運転の場合、リモコン40から運転操作がなされると、マイコンは、リモコン40からの操作信号または自動運転が設定されていれば各種センサからの情報に基づいて暖房等の運転モードを決定する。
次に、室外機200の制御部に決定した運転モードに応じた運転を指示すると共に、決定した運転モードに従って送風ファン103を駆動し、空気吸込み口107,107aから熱交換器102に室内空気を流通させる。室外機200の制御部は室内機100からの指示に従い、圧縮機202、プロペラファン207(図9参照)、制御弁等を制御し、圧縮機202からの冷媒を冷凍サイクルに循環させると共に、室外空気吸込み部から室外熱交換器に室外空気を流通させる。かくして、暖房等の運転が行われる。
次に、本願発明の特徴である回動軸のずらし構造(非同一直線上構造)について、図3を参照して説明する。図3(a)には、暖房運転時における上側上下風向板170、下側上下風向板180の回動後の状況を示す。図3(b)にはA部の拡大図、図3(c)にはB部の拡大図を示す。
上側上下風向板170の中央羽根170bと左右羽根170a,170cとは、羽根の回動軸をあえてずらすことにより、3枚の羽根の動的および静的な美観(意匠性)を高めている。
ここで、比較例として3枚の羽根の回動軸を同一直線上に配置し、羽根先を揃えるように制御することを考える。一般に、羽根を回動する回動軸(回転軸)とステッピングモータの駆動軸を、ギアを介して接続するものがある。ステップ数の小さなステッピングモータであっても、ギア比を選択することにより所望の回転角を得ることができる。または、羽根を回動する回転軸とステッピングモータの駆動軸を、リンクにより接続し、回転運動を揺動運動に変換することができる。
前述のギアまたはリンクにより駆動軸の接続をおこなった場合は、ギアのバックラッシュやリンクの“あそび”により、回動位置精度に誤差が生じることがある。このため、羽根の回動方向の“あそび”による回動角の誤差が生じないようにすることが望ましい。しかし、誤差を生じないようにしようとすると、公差を狭くしなければならずコスト高となる。また、予め“あそび”を吸収する調整量を求めておき、回動方向が反転する際に調整を行うようにしてもよいが、経年変化も考慮して完全に調整することがむずかしい場合がある。この場合、同一の回動位置に制御しても3枚の羽根先が必ずしも一致しないことがまま生じる。ユーザにとって、3枚の羽根の動きが少しでもずれると、故障しているのではないか、または、動きが変だと感じることがある。
本実施形態では、当初から3枚の羽根の回動軸を同一直線上に配置させず、中央羽根170bと左右羽根170a,170cとの回動軸の中心をずらしている。また、左右羽根170aと左右羽根170cとは、中央羽根170bを隔てて配置されているため、少しの回動位置精度に誤差が生じても、ずれることが前提であるので目立たない。よって、空調運転時の動的な状態時または静的な状態時にも、インテリアの雰囲気を乱すことが無い空気調和機を提供することができる。また、後記するように、閉じたときはずれが無く、開くとずれが生じるという一定の動きを当初から行うので、同じように動かそうとしてずれてしまうのと異なり、故障と思わせてしまうようなこともない。
本実施形態では、図3(b)に示すように、左右羽根170aの軸中心171aと、中央羽根170bの軸中心171bとがずれている。また、図3(c)に示すように、中央羽根170bの軸中心171bと、左右羽根170cの軸中心171cも同様にずれている。具体的には、中央羽根170bの軸中心171bは、左右羽根170cの軸中心171cまたは左右羽根170aの軸中心171aに対し、前面パネル106側の前方(水平方向前側)に約8mm、下側(鉛直方向下側)に約4mmずれている。図4、図5を参照してさらに説明する。なお、他の符号については図4で後記する。
図4は、上側上下風向板の羽根の軸周りを示す説明図である。適宜図2を参照する。なお、図4では、左右羽根170a,170cの記載は省略している。上側上下風向板170の中央羽根170bの両側には、ドレンパン99(筐体)に支持されている左支柱191と右支柱192が配置されている。左支柱191には、中央羽根170bの駆動軸の軸部194aと左右羽根170a(図示省略)の非駆動軸(従動軸)の軸部193bがある。右支柱192には、中央羽根170bの非駆動軸(従動軸)の軸部194bと左右羽根170c(図示省略)の非駆動軸の軸部195aがある。また、上側上下風向板170の左右羽根170aの一端には、空気吹出し風路109aの側壁109dに設けられている貫通孔に挿通された駆動軸の軸部193aがある。同様に、上側上下風向板170の左右羽根170cの一端には、空気吹出し風路109aの側壁109eに設けられている貫通孔に挿通された駆動軸の軸部195bがある。
中央羽根170bの両端には、軸の連結部174cを有する軸支持腕部174a、滑り軸受部174dを有する軸支持腕部174bが設けられている。軸支持腕部174aの連結部174cは、駆動部である軸部194aに挿入され固着される。軸支持腕部174bの滑り軸受部174dは、軸部194bに挿入され、中央羽根170bを摺動可能に保持される。
左右羽根170aの両端には、軸の連結部173cを有する軸支持腕部173a、滑り軸受部173dを有する軸支持腕部173bが設けられている。軸支持腕部173aの連結部173cは、駆動部である軸部193aに挿入され固着される。軸支持腕部173bの滑り軸受部173dは、軸部193bに挿入され、左右羽根170aを摺動可能に保持される。
左右羽根170cの両端には、滑り軸受部175cを有する軸支持腕部175a、軸の連結部175dを有する軸支持腕部175bが設けられている。軸支持腕部175bの連結部175dは、駆動部である軸部195bに挿入され固着される。軸支持腕部175aの滑り軸受部175cは、軸部195aに挿入され、左右羽根170cを摺動可能に保持される。
図5は、中央羽根と左右羽根との位置関係を示す説明図である。図5(a)は、図4に示すBB視図であり、図5(b)は、図4に示すAA視図である。図5(a)を示すように、中央羽根170bの軸中心171bは、左右羽根170aの軸中心171aに対し、図面の左方向かつ下方向にずれて配置されている。
また、図5(b)に示すように、中央羽根170bの軸中心171bは、軸中心171aとのずれに対応して左右羽根170cの軸中心171cに対し、図面の右方向かつ下方向にずれて配置されている。また、図5(b)に示すように、中央羽根170bを全閉したときの位置関係を、中央羽根170bおよび左右羽根170c(2点鎖線)として記載している。なお、後記するが、中央羽根170bを回動自在に軸支するギアを内蔵する支柱として、左支柱191を示している。
軸中心と羽根との関係を、図5(a)を参照して詳細に説明すると、中央羽根170bは軸中心171bに対し軸支持腕部174bにより支持されている。同様に、左右羽根170aは、軸中心171aに対し軸支持腕部173bにより支持されている。軸支持腕部173b,174bの半径により羽根の旋回半径が異なる。本実施形態においては、軸中心171bと中央羽根170bとの最短距離Rbは、軸中心171aと左右羽根170aとの最短距離Raよりも短く設定されている。これにより、中央羽根170bと左右羽根170aとの旋回半径を異なるようにしている。さらに、中央羽根170bと左右羽根170aとをずらすことと相まって、開いたときには、左右羽根170aと中央羽根170bとの側面視したずれが大きくなり、閉じると左右羽根170aと中央羽根170bとの側面視したずれがゼロになる。
また、本実施形態では、左右羽根170a,170cには、旋回角度の角度調整突起177を設けることにより、許容される旋回角度について、中央羽根170bと、左右羽根170a,170cとでほぼ同じにしている。しかしながら、角度調整突起177の大きさを変更することにより、左右羽根170aの旋回角度を大きくして左右羽根170aとドレンパン99との隙間を小さくしてもよい。これにより、左右羽根170aとドレンパン99との隙間を通る気流を絞り込むことができる。
図6は、本実施形態に係る空気調和機のリモコンの外観を示す説明図である。リモコン40はユーザによって操作され、室内機の受光部Q(図1参照)に対して赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求等の様々な指令である。空気調和機Aは、これらの信号に基づいて、少なくとも室内の冷房、暖房、除湿等を行うことができる。また、空気清浄等、その他の空気調和の機能を備えていてもよい。空気調和機Aは、室内の空気を様々に調整することができる。
リモコン40の表示画面41には、足元気流が実行中であるかことを示す旨42が表示されている。具体的には、表示内容には、足元気流のほか、間取り気流等がある。
自動運転ボタン43を押すことで、センサ部50(図7参照)の検知結果に基づいて、自動で冷房、暖房、除湿等を選択し、設定温度等も調整する自動運転を開始する。さらに、本実施形態では、自動運転ボタン43を押すことで、障害物検出部64(図9参照)および通り抜け可否検出部65(図9参照)の実行を開始し、風向制御に反映するようにしている。そのため、ユーザは1回の操作で運転を開始でき、別途、障害物検出部64および通り抜け可否検出部65の実行を操作する必要がない。
また、本実施形態では、リモコン40内部のボタン(図示せず)によって自動運転ボタン43を押しても障害物検出部64および通り抜け可否検出部65を実行させないよう、または、これらの検知結果に基づく風向制御を実行させないよう操作できるようにしている。
さらに、本実施形態では、自動運転ボタン43に加えて、足元気流ボタン44を専用に設けている。本実施形態では、足元気流ボタン44をリモコン40の表面に設けており、暖房運転ボタン等で運転を開始するユーザに対しても、簡単に足元気流運転を開始できるようにしている。つまり、本実施形態では、少なくとも足元気流ボタン44で、人検出部62(図9参照)、壁検出部63(図9参照)、障害物検出部64および通り抜け可否検出部65の検出結果に基づく風向制御を開始できるようにしている。なお、足元気流ボタン44はリモコン40の内部に配置するようにしてもよい。
本実施形態では、停止ボタンの下に、使用頻度が高い機能についての専用ボタンとして、足元気流ボタン44と間取り気流ボタン45を配置している。ちなみに、間取り気流ボタン45は撮像部110によって室内の間取りを検知し、間取りに合わせたスイング運転を開始するボタンである。
<センサ部>
図7は、本実施形態に係る空気調和機のセンサ部の構成を示す図である。センサ部50は、室内機100と室外機200に備えられている。センサ部50は、室温センサ、人、物体および室内の表面温度を検知する温度検知部130(図1参照)、外気温センサ、湿度センサ、冷媒配管温度センサ、圧縮機温度センサ、撮像部110(図1参照)、時計等により構成される。撮像部110は、前面パネル106の左右方向中央の下部に設置されている。
温度検知部130がサーモパイルである場合、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成され、前面パネル106の左右方向中央の下部に設置されている。これ以外にも、赤外線センサ、近赤外線センサ、サーモグラフィーを使用してもよい。温度検知部130で検出するのは、室内の平均的な表面温度に限られず、検出範囲の内、人を除いた領域の室内の表面温度、人の着衣の表面温度、人の皮膚の温度、床の表面温度でもよい。
<撮像部>
図8は、本実施形態に係る可視光カットフィルタを有する撮像部の構成を示す説明図である。図8は撮像部110を上方からみた図である。撮像部110は、可視光および近赤外線を撮像できるものを用いている。従来、人を検出する場合等の撮像部では、撮像部内部に、赤外線カットフィルタを取り付けているが、本実施形態では、近赤外線をカットしないようにするために取り付けていない。可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の回りに配置し、可視光カットフィルタ112を回転させて撮像部本体111の前に移動させる構造としている。
具体的には、撮像部110は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである撮像部本体111の周囲に、開口部113を有する円環状の可視光カットフィルタ112を配置している。可視光カットフィルタ112は、フィルタ用モータ114でフィルタ用ギア115(フィルタ可動機構)を介して、撮像部本体111の周囲を回転できる。これにより、通常の撮像をするときは、可視光カットフィルタ112を通さずに撮影することができる。一方、後記する物体を検出する場合には、可視光カットフィルタ112を回転させて、可視光カットフィルタ112を介して、撮像部本体111と連動して駆動できる。また、必要に応じて、近赤外線光源120(図1参照)を撮影前に点灯し、近赤外線を照射することにより、さらに鮮明に近赤外線の反射光を撮像することができる。
可視光カットのフィルタを介して撮像した場合、紫外線および可視光がカットされ、近赤外線近傍(例えば、850nm)の波長域を利用して撮像することができる。近赤外線は、物体の色彩や模様が反映されず、物体の形状だけが反映される特徴がある。これにより物体の形状を鮮明にとらえることができる。また、色彩情報を使用しないので、必要とされる画像上の情報量が減り、物体を検出する際の精度向上につながる。
図26は、撮像部の水平方向の向きの移動と視野角を示す説明図である。図26を参照して、撮像部110の水平方向の向きの移動と視野角について説明する。図26は、室内機100および当該室内機100が設けられている室内を鉛直上方側からみた概念図であり、図26の上側は当該室内機100が取り付けられている壁側となり、下側は室内機100が取り付けられている室内の室内機100の前方側の空間となる。
この例で、撮像部110の水平方向の視野角はおよそ60°である。よって、撮像部110の水平方向の向きが真正面(方向311)にあるときに撮像部110で撮像すれば、矢印の範囲312の室内の画像の撮像を行うことができる。また、方向311から撮像部110の向きを室内機100に向かって右に例えば45°移動させ、方向313の向きで撮像すれば、矢印の範囲314の室内の画像の撮像を行うことができる。さらに、方向311から撮像部110の向きを室内機100に向かって左に例えば45°移動させ、方向315の向きで撮像すれば、矢印の範囲316の室内の画像の撮像を行うことができる。これにより、本例では室内機100が設置された室内を合計で約150°の視野角で撮像することができる。また、矢印の範囲312と矢印の範囲314とは一部(約15°の範囲)重なって画像を取得することができ、同様に矢印の範囲312と矢印の範囲316とは一部(約15°の範囲)重なって画像を取得することができる。また、前記の約150°の視野角で室内の画像を撮像するためには、方向313から方向315までの範囲で撮像部110の向きを水平方向に変動すればよい。なお、壁検出部63(図9参照)が検出した室内のコーナは、コーナ373と示されている。
<制御部>
図9は、本実施形態に係る空気調和機の制御部の構成を示す説明図である。制御部60は、電装品に備えられている。制御部60は、送受信部47を介するリモコン40からの情報と、センサ部50からの情報に基づき、室内機100の送風ファン103、左右風向板160、上側上下風向板170、下側上下風向板180を駆動し、室外機200の圧縮機202、プロペラファン207を駆動する。室内機100の駆動機能について図16を用いて説明する。
図36は、室内機の駆動機構の構成を示す説明図である。送風ファン103は、モータドライバおよび駆動モータを有する駆動機構103mで制御される。左右風向板160(図2参照)は、2分割されており左側用・右側用に独立に制御でき、モータドライバおよび駆動モータを有する駆動機構103mで制御される。上側上下風向板170の左羽根(左右羽根170a)、中央羽根170b、右羽根(左右羽根170c)の3枚の各羽根は独立して制御でき、モータドライバおよび駆動モータを有する駆動機構170m(第1の駆動機構)で制御される。駆動機構170mは、第1の上下風向板の羽根を上下方向に駆動させる際に、少なくとも1枚の羽根の角度を他の羽根の角度とは異なる角度に駆動可能である。下側上下風向板180の羽根は、左右の二つのモータドライバおよび駆動モータを有する駆動機構180m(第2の駆動機構)で制御される。前面パネル106は、モータドライバおよび駆動モータを有する駆動機構106mで制御される。なお、駆動機構には、回転速度調整用の駆動ギア等が含まれる。
制御部60は、後記する第1の撮影モードおよび第2の撮影モードで撮像部110を制御する撮像制御部61(図26、図27参照)と、撮像部110で撮影された画像に基づいて、室内の人の位置を検出する人検出部62(図28、図29参照)と、撮像部110で撮影された画像に基づいて、室内の壁位置を検出する壁検出部63(図30〜図35参照)と、可視光カットフィルタ112を介して撮像部110で撮影された近赤外線画像に基づいて、気流が通る経路において障害物となる物体を検出する障害物検出部64と、障害物検出部64で検出された障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かを検出する通り抜け可否検出部65と、人の位置または人の足元に気流を送風する気流制御部66(図16〜図25参照)と、記憶部67とを有する。
<撮像制御部>
図27は、撮像制御部の処理を示すフローチャートである。図27を参照して、撮像制御部61の撮像処理について説明する。撮像部110での室内の撮像は所定時間t1(一例を挙げれば1時間)ごとに行う。すなわち、撮像制御部61(図9参照)は、前回の撮像部110による撮像処理の終了から所定時間t1を経過したときは(処理S1,Yes)、ステッピングモータを制御して取付け部材を駆動することにより、例えば一定の角速度で撮像部110の水平方向の向きの移動を開始する(処理S2)。この動作は、例えば図26に示す向き318側から向き317側に向かって開始する。そして、撮像制御部61は、撮像部110の向きが方向315に達したときは(処理S3,Yes)、必要に応じて一時停止するなどして撮像部110で撮像を行い、画像データを「左画像」(左画面)として記憶部67(図9参照)に記憶する(処理S4)。次に、撮像部110の向きが方向311に達したときは(処理S5,Yes)、撮像制御部61は、必要に応じて一時停止するなどして撮像部110で撮像を行い、画像データを「中画像」(中画面)として記憶部67に記憶する(処理S6)。次に、撮像部110の向きが方向313に達したときは(処理S7,Yes)、撮像制御部61は、必要に応じて一時停止するなどして撮像部110で撮像を行い、画像データを「右画像」(右画面)として記憶部67に記憶する(処理S8)。
そして、図26に示すように撮像部110の向きが方向313に達したときは、ステッピングモータの回転方向を逆転して、方向313から方向318に向かって撮像部110の水平方向の向きの変動を開始する(処理S9)。この方向313から方向318に向かって撮像部110が移動している間は、撮像部110による撮像は行わない。そして、方向315に撮像部110の向きが戻ったときは(処理S10,Yes)、その時刻を記憶部67に記憶し、ステッピングモータを停止して(処理S11)、リターンする。時刻の記憶は画像データを「右画像」として記憶部67に記憶した後(処理S8)に行ってもよい。
また、撮像制御部61は、可視光カットフィルタ112と、室内を撮影する撮像部本体111とを有する撮像部110を制御する際に、可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の前面に位置させた状態で撮像部本体111によって室内を撮影する第1の撮影モードと、可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の前面に位置させない状態で撮像部本体111によって室内を撮影する第2の撮影モードとを有する。
<人検出部>
人検出部62は、可視光カットフィルタ112(図8参照)を介さない撮像部110で撮影(第2の撮影モードにより撮影)された画像に基づいて、室内の人の位置を検出する。撮像部110以外にも、赤外線センサ、近赤外線センサ、サーモグラフィー、焦電型センサ、超音波センサ、騒音センサを使用してもよい。人検出部62で検出するのは、人の有無に限られず、位置、活動量、生活シーン等を検出してもよい。
人の位置は、撮像部110で撮像された画像から人の頭部等の位置を検出し、頭部の位置を人の位置としている。さらに、本実施形態では、人の位置に加え、人の足元の位置も検出している。人の足元の位置は、撮像部110で撮像された画像に基づいて、直接人の足元の位置を検出するようにしてもよいし、人の頭部等の位置を検出し、人の頭部等の位置から人の足元の位置を推定するようにしてもよい。
<壁検出部>
壁検出部63は、可視光カットフィルタ112を介さない撮像部110で撮影(第2の撮影モードにより撮影)された画像に基づいて、画像内のエッジの抽出し、太く長いエッジを抽出し、直線を延長し、交点を作成し、交点の重心点を消失点とすることにより、室内のコーナ373を検出し、検出したコーナ373(図26参照)を壁と壁あるいは壁と天井あるいは壁と床の接線とし、室内の壁や天井や床の面の位置を検出している。
なお、人検出部62で検出した人の位置を累積し、人の位置の累積値に基づいて、コーナ373の検出結果を補完してもよい。すなわち、人の位置の累積値よりも外側に室内の壁が存在し、人の位置の累積値よりも内側に室内の壁が存在することはないため、室内の壁が人の位置の累積値よりも内側の位置で検出された場合は、当該検出結果を除外するようにしてもよい。詳細については、図34および図35を参照して後記する。
<障害物検出部>
障害物検出部64は、可視光カットフィルタ112を介して撮像部110で撮影(第1の撮影モードにより撮影)された画像から、気流が通る経路の障害物となる物体を検出する。具体的には、室内にある、テーブル、こたつ、椅子、ソファ、本棚、食器棚、箪笥等の家具や、壁、床、天井、戸、窓、小梁、欄間の建具等を検出する。
<通り抜け可否検出部>
通り抜け可否検出部65は、障害物検出部64が検出した物体の下方等の輝度を検出し、輝度が高ければ近赤外線を反射する物体があると推定し、輝度が低ければ、例えば、物体の足元は通り抜け可能であると推定することができる。これ以外にも、各種物体の具体的な通り抜け判定手段として下記がある。
(1)物体の重心を用いる方法
通り抜け可否検出部65は、障害物検出部64が検出した物体の下端からの重心位置の高さLと物体の高さHに基づき、脚長家具であるか脚短家具であるか否かを判定する。具体的には、通り抜け可否検出部65は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、70%)以上である場合に脚長家具と判定し、気流が通り抜けできると推定する。また、通り抜け可否検出部65は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合に脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。
(2)物体の積算面積を用いる方法
通り抜け可否検出部65は、障害物検出部64が検出した物体の下端から所定の高さMまでの物体の積算面積が全面積に占める割合と、物体の下端からの所定の高さMの物体の高さHに対する割合とに基づき、脚長家具であるか脚短家具であるか否かを判定する。具体的には、物体の下端から物体の面積を積算していき、積算した面積が物体の全面積の例えば30%(=所定値)に達するような高さをMとする。高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、50%)以上である場合、通り抜け可否検出部65は、脚長家具と判定し、気流が通り抜けることができると推定する。また、通り抜け可否検出部65は、物体の全面積に対する積算面積が所定値における、物体の下端からの高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合、脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。
本実施形態の通り抜け可否検出部65が、画像内の所定の範囲内に占める物体の面積の割合が所定値以下である場合に、物体の足元は通り抜け可能であると推定することで、物体の方向に送風した場合に通り抜けられない程度を推定することが可能となる。通り抜けられない物体に対して単位時間当たりの供給熱量を下げることが可能となる。また、通り抜けられる方向に対して単位時間あたりに供給する熱量を上げることが可能となり、快適性を向上させることが可能となる。
次に処理内容について説明する。
図10は、制御部の処理の全体概要を示すフローチャートである。制御部60は、運転を開始すると、人を検出し(処理S91)、人の足を検出する(処理S92)ことにより、人の位置を把握する。計測から1時間経過していない場合(処理S93,No)、処理S91に戻る。計測から1時間経過した場合(処理S93,Yes)、制御部60は、通り抜け検出処理を含む物体検出を行う(処理S94)。そして、物体検出処理後、再度人を検出し(処理S95)、室内のコーナ検出をし(処理S96)、人の検出をし(処理S97)、最後に間仕切りの開閉を検出し(処理S98)、一連の処理を終了する。処理S95〜処理S98の処理により、人の位置およびコーナ検出に基づいて、室内の大きさを判定している。なお、本実施形態では、撮像部110で撮影された画像に基づいて人の位置を把握しているが、撮像部110の代わりに、温度検知部130または焦電型赤外線センサを用いて人の位置を把握するようにしてもよい。なお、処理S93において、1時間経過後としているのは、処理S94の物体検出は1時間毎に設定しているためである。
図11は、撮像制御部、障害物検出部および通り抜け可否検出部の処理を示すフローチャートである。図11は、図10の処理S94の詳細な処理である。図11の処理は、制御部60の処理であるが、撮像制御部61、障害物検出部64および通り抜け可否検出部65の主体を明瞭にして説明する。
障害物検出部64は、室内に太陽光が照射されているか否か(太陽光有無)を判定する(処理S901)。障害物検出部64の判定は、光源を検出して、太陽光が室内に入らない状態のとき、または、室内に入り込む太陽光の量が所定値以下であるときに実行するとよい。太陽光には近赤外線も含まれているため、窓から太陽光が入り込む場合、太陽光が照射された場所に物体があると誤検出するおそれがあるからである。そこで、本実施形態では、光源を検出して、太陽光が室内に入らない状態のときに、または、室内に入り込む太陽光の量が所定値以下であるときに実行する。他の太陽光有無の判定方法として、光源そのものの識別をしなくても、時間帯によって太陽が出ていない時間帯に物体検出モードを実行してもよい。なお、ユーザが間違った時間帯を設定した場合、物体検出することができなくなるおそれがあるため、また、白熱灯によっても物体検出の誤検出をするおそれがあるため、光源識別を実行できることが望ましい。
撮像制御部61は、開口部113(図8参照)に可視光カットフィルタ112をかけるように移動する(処理S902)。そして、撮像制御部61は、初期の撮像位置(例えば、左画面の撮影位置)に移動し(処理S903)、近赤外線光源120(図1参照)を点灯し、近赤外線を照射する(近赤外線照射ON)(処理S904)。撮像制御部61は、室内の撮像(撮影)をし(処理S905)、近赤外線光源120を消灯し、近赤外線の照射を停止する(近赤外線照射OFF)(処理S906)。
障害物検出部64は、物体の有無判定を行う(処理S907)。そして通り抜け可否検出部65は、障害物検出部64で検出された物体について、足元通り抜け推定を行う(処理S908)。
次に、撮像制御部61は、左画面、中画面、右画面の3方向の撮影が終了したか否かを判定し(処理S909)、3方向の撮影が終了していない場合(処理S909,No)、処理S903に戻る。一方、3方向の撮影が終了している場合(処理S909,Yes)、撮像制御部61は、可視光カットフィルタ112を元の位置に移動する(処理S910)。
図10および図11の制御フロー、特に、物体検出処理(障害物検出処理)および通り抜け可否検出は、リモコン40の自動ボタンが押下されると、自動運転を実行するが、一定時間おきに物体検出モードを実行する。本実施形態の場合は、1時間おきに実行している。なお、物体検出モードを自動ボタンとは別のボタンによって実行してもよい。
障害物検出部64で実行する物体検出モードでは、可視光カットフィルタ112を有する撮像部110を用いる。また、物体検出精度を高めるため必要とする場合、近赤外線光源120(例えば、近赤外線LED(Light Emitting Diode))も用いる。撮像部110は、前記したように通常の撮像と同じように左右方向に駆動し、室内を撮像する。近赤外線光源120は、撮像部110による撮像の直前から室内を照射し、撮像部110による撮像が終了すると、照射を終了する。撮像部110による撮像するタイミングだけ近赤外線光源120を照射するようにすることで、物体検出モード実行中に、近赤外線光源120を照射し続ける場合に比べて、近赤外線光源120の寿命を延ばすことができる。
本実施形態では、撮像部110を左方向、中方向、右方向の3回撮像を行うため、近赤外線光源120も撮像部110による撮像のタイミングに合わせて3回照射をする。そして、障害物検出部64で撮像された画像の処理を行い、家具等の物体の形状を検出する。
ここで、通常、物体の形状を抽出する場合において、物体の色彩や模様により正確な物体の形状を抽出することができないおそれがある。そこで、本実施形態では、物体検出モード時に可視光カットフィルタ112を移動させて撮像部110の前面に位置させ、かつ、近赤外線光源120を照射させている。近赤外線は、物体の色彩や模様が反映されず、物体の形状だけが反映される特徴がある。この近赤外線の特徴を活かすことで、物体の色彩や模様による誤検出を防ぎ、物体の形状をより正確に検出することができる。このように検出精度を高めることで、物体が、脚付きのテーブルやイス等の風が通り抜けできる形状であるのか、ソファ等の風が通り抜けできない形状であるのかを判別することができる。
本実施形態の物体検出モードの際、撮像制御部61は、約850nm付近に波長のピークを持つ近赤外線光源120を照射するとよい。撮像した画像は、近赤外線を撮像部110の方向に反射するほど白く、撮像部110の方向に反射しないほど黒く写る。一般に、居住空間に存在する、木、布、金属、紙等は、表面が粗く、近赤外線はその表面で拡散反射する。拡散反射により撮像部110の方向に反射した近赤外線を撮像することで、反射する物体が反射した方向に存在することを検出することができる。このため、近赤外線光源120を照射することにより、一般に室内に多く存在する家具の材質を網羅することが可能となり、高い検出精度を得ることが可能となる。
なお、約850nm付近にピークを持つ近赤外線は可視光も含むため、近赤外線光源120を点灯しているときは、近赤外線光源120は赤く点灯して見える。このため、点灯中であるか否かを表示する表示部が不要となり、コストを低減することが可能となる。
<気流制御部>
図12は、気流制御部による上側上下風向板および下側上下風向板の設定角度を示す説明図である。図13は、室内機の運転停止時の状態を示す側面図と空気吹出し口の斜視図である。図14は、室内機の冷房運転時の状態を示す側面図と空気吹出し口の斜視図である。図15は、室内機の暖房運転時の状態を示す側面図と空気吹出し口の斜視図である。図12〜図15を参照して、気流制御部66による、風向板、特に上側上下風向板170および下側上下風向板180の基本動作について説明する。
本実施形態では、図3において、上下風向板の回動軸のずらし構造(非同一直線上構造)により、複数に分割した上側上下風向板170の制御について示したが、上側上下風向板170と下側上下風向板180との連動制御は、室内の複数位置に適切に風向を制御するには重要である。まず、基本的な上側上下風向板170と下側上下風向板180との連動制御について説明する。
図12は、運転時の上下風向板の設定角度を示す説明図である。左右羽根170aと鉛直線VLとのなす角度をβ1、中央羽根170bと鉛直線VLとのなす角度をそれぞれβ2、左右羽根170cと鉛直線VLとのなす角度をβ3とする。また、下側上下風向板180と鉛直線VLとのなす角度をαとする。なお、角度β1,β2,β3を総称する場合には、角度βとして以下説明する。
気流制御部66は、室内の複数位置に適切に風向を制御するため、角度β1,β2,β3)および角度αを制御する。角度β1,β2,β3が同一角度であれば、角度αをひとつに決定することができるが、本実施形態の場合、上側上下風向板170は、3枚の羽根を有しているため、どのように角度β1,β2,β3と、角度αとを決定するかが課題である。
ここで、左右羽根170a、170cの角度β1、β3が、中央羽根170bの角度β2より小さい時、左右羽根170a、170cはより下側上下風向板180に近づくので、より下側上下風向板180の角度αの影響を受けやすい。
そこで、気流制御部66は、式(1)に従い制御する。
なお、MINは最小値であり、aは係数である。例えば、MIN(β1,β2,β3)=10°、a=0.8(≦1)とすると、α=8°となる。
気流制御部66は、角度β1,β2,β3が、同じ角度、また、異なる角度であっても、安定的に上側上下風向板170と下側上下風向板180とを連動制御することができる。
また、上側上下風向板170のうち角度が大きい羽根は、下側上下風向板180と連動させなくてもコアンド効果によって単独で気流の向きを制御することも可能である為、下側上下風向板180の角度をMIN(β1,β2,β3)に基づいて制御することで、上下方向において複数の向きに気流を吹き分けることができる。
なお、気流制御部66は、足元暖房時、上側上下風向板170の羽根と下側上下風向板180の羽根の距離を、通常の暖房運転時よりも狭めてもよい。この場合、係数aは、足元暖房時の係数a1と、通常暖房時a2とすると、1≧a1>a2とするとよい。
図12において、上側上下風向板170の開度の相違による状態を、状態C1(図13の上側上下風向板170参照)、状態C2(図14の上側上下風向板170参照)、状態C3、状態C4(図15の上側上下風向板170および下側上下風向板180)に示す。状態C1は上側上下風向板170が閉じた状態であり、左右羽根170a,170cと中央羽根170bとの羽根の位置が一致している。また、上側上下風向板170の開度が増す(角度α, β1, β2,β3が小さくなる)につれて、状態C2,C3,C4になり、左右羽根170a,170cと中央羽根170bとの段差d(図15参照)が増している。なお、可動範囲は状態C1から状態C4である。
次に各運転状態時における基本的な上下風向板の配置関係を示す。
図13は、室内機の運転停止時の状態を示す側面図と空気吹出し口の斜視図であり、(a)は室内機の側面図であり、(b)は室内機を斜め下側から見た斜視図である。適宜図2、図5を参照する。
空気調和機Aを使用しない運転停止時は、図13のように、上側上下風向板170,下側上下風向板180は、気流制御部66により空気吹出し口109bを閉じるように制御される。これにより、上側上下風向板170は吹出し風路109aの上方の前方の位置に回動し収納され、吹出し風路上面109c側を遮蔽し、下側上下風向板180と協働して空気吹出し口109bを閉じる。
このとき、上側上下風向板170の左右羽根170a,170cおよび中央羽根170b、下側上下風向板180は外面となる風向面で室内機100の前面から底面にかけての外形を連続的に滑らかに形成することができる。このため、空気調和機Aを使用しないとき、不必要な凹凸の無い、柔らかな落ち着いた外観となり、室内の雰囲気を乱すことがない。
このように、実施形態の室内機100は、複数に水平方向に分割した上側上下風向板170を閉じた時に、室内機100の底面から前面パネル106に至る外形が上下風向板の冷房運転時に下面となる風向面で滑らかに形成される。
これにより、空気調和機Aを停止した時に、その外形が前面パネル106から下部に続く滑らかな形状になって、余分な凹凸の無いすっきりした意匠となる。このため、運転の停止時にもインテリアの雰囲気を乱すことが無い空気調和機を提供することができる。
本実施形態では、中央羽根170bの水平方向の長さLbが、左右羽根170aの水平方向の長さLaおよび左右羽根170cの水平方向の長さLcよりも、約10%長くしている。長さLa,Lb,Lcを同じ長さにすると、中央羽根170bの長さが短く見えるのを防ぐためである。また、中央羽根170bで制御可能な風量を多くするためである。
図14は、室内機の冷房運転時の状態を示す側面図と空気吹出し口の斜視図であり、(a)は室内機の側面図であり、(b)は室内機を斜め下側から見た斜視図である。適宜図2、図4を参照する。
空気調和機Aを冷房運転する時には、上側上下風向板170(左右羽根170a,170c、中央羽根170b)、下側上下風向板180は吹出し風路上面109cと略平行な姿勢または水平な向きにして使用される。吹出される冷風が直接、在室者(ユーザ)に当ると不快感が生じるので、このようにして、吹出される冷風が直接、在室者に当らないように、適宜、上下風向板の方向をリモコン40で変更し、室内を快適な温湿度に保つ。
このとき、室内機100を見ると、室内機100が室内の壁の高所に据付けられているので、左右羽根170a,170c、中央羽根170bの下面となる風向面(閉じた時に外面となる風向面)が目に入り、羽根の先端がもしあっていないと、回動位置精度に誤差があるなど、違和感をユーザが抱くおそれがある。
本実施形態では、当初から、中央羽根170bと、左右羽根170a,170cとの上下方向の先端位置をずらした回動位置に制御しているので、ユーザに違和感なく受け入れられる。例えば、図714(a)において、中央羽根170bの先端位置は、左右羽根170a,170cの先端位置に対し、図面左方向に約3mm突出している(図12の状態C2の位置参照)。ユーザに、冷房運転時、違和感なく期待している風向と上下風向板を見たときの風向の印象を合致させることができる。
また、一般的に、上下風向板はほぼ水平の姿勢に保持されるため、上下風向板の自重による変形が大きくなる。室内機100では空気吹出し口109bの付近は注目を集め易いので、上下風向板の変形が大きくなり過ぎないように、上下風向板の材質や形状を考慮する。本実施形態では、上側上下風向板170は3枚の風向板で形成されているため、重量が分散されて自重による変形が少ないのが特徴である。
図15は、室内機の暖房運転時の状態を示す側面図と空気吹出し口の斜視図であり、(a)は室内機の側面図であり、(b)は室内機を斜め下側から見た斜視図である。適宜図2、図4を参照する。
空気調和機Aを暖房運転する時には、上側上下風向板170(左右羽根170a,170c、中央羽根170b)は、例えば、図15のように垂直方向に近い姿勢にして使用される。また、下側上下風向板180は、垂直面に対し所定の角度の姿勢にして使用される。このようにすることにより、空気吹出し風路109aを流れる温風は室内機100から下方に向かって吹出し、床面近くまで到達して、足もと近くを暖め、室内を快適な環境にする。
このとき、室内機100を見ると、室内機100が室内の壁の高所に据付けられているので、左右羽根170a,170c、中央羽根170bの上面となる風向面(閉じた時に内面となる風向面)が目に入り、先端がもしあっていないと、回動位置精度に誤差があるなど、違和感をユーザが抱くおそれがある。
本実施形態では、当初から、中央羽根170bと、左右羽根170a,170cとの上下方向の先端位置をずらした回動位置に制御しているので、ユーザに違和感なく受け入れられる。例えば、中央羽根170bと左右羽根170a,170cとの段差dは、図815(a)において側面視して、約13mm(所定距離)ある。ユーザに、暖房運転時、違和感なく期待している風向と上下風向板を見たときの風向の印象を合致させることができる。図15の場合、図14と比較して中央羽根170bと左右羽根170a,170cとの段差dは大きくなっている。中央羽根170bと左右羽根170a,170cとの軸のずれの関係から、開度が増すにつれて羽根のずれが大きくなる。
一般に、暖房時の室温と吹出す温風温度との差は、冷房時の室温と吹出す冷風温度との差よりも大きい。このため、下側上下風向板180の表裏の風向面間の温度差が大きくなり、熱膨張の差により下側上下風向板180が撓む現象を生ずる。特に、暖房時には温度差による撓みの現象を考慮する。このため、下側上下風向板180は、例えば、中空にすることにより、中空部が空気断熱の役割を果たして、上下風向板の表裏の風向面間の熱移動が減少する。
暖房運転時の温風は下向きに吹出され、すばやく室内を快適な状態にする。このとき、上側上下風向板170の中央羽根170bと、左右羽根170a,170cの風向面に温風が当り、気流を下向きにする。このとき、中央羽根170bと、左右羽根170a,170cとに段差dがあるため、中央羽根170bの下面に当たった気流が左右羽根170a,170cの上面に回り込む。このため、左右羽根170a,170cの上面および下面の温度差が減少され、左右羽根170a,170cは表裏の熱膨張の差による撓みが小さくなる効果がある。
なお、冷房運転時に、このように上下風向板を下に向ける場合は少ないが、この場合も中央羽根170bと、左右羽根170a,170cとに段差dがあるため、中央羽根170bの下面に当たった気流が左右羽根170a,170cの上面に回り込む。このため、左右羽根170a,170cの上面および下面の温度差が減少され、左右羽根170a,170cの上面に結露が発生するのを抑制する効果がある。
以上説明したように、運転中も空気吹出し口109bの外観が良好に保持される空気調和機Aを提供することができる。
次に、室内の人の位置に基づく具体的な風向制御について説明する。
図16は、気流制御部の風向板の角度設定処理を示すフローチャートである。図17は、壁からの距離と上下風向板の制御角度との関係を示す説明図である。図18〜図23は、室内に人を検出した場合の例を示す説明図である。
気流制御部66は、室内で検出された人の位置または足の位置に基づいて、上側上下風向板170の中央羽根170b、左右羽根170a,170cの領域を設定し(処理S71)、上側上下風向板170のうち、室内機100が設置されている壁331(図18参照)に近い羽根の角度を設定する(処理S72)。そして、気流制御部66は、処理S71の結果に基づき、下側上下風向板180の角度設定をし(処理S73)、上側上下風向板170のうち他の羽根の角度を設定する(処理S74)。最後に、気流制御部66は、室内で検出された人の位置または足の位置に基づいて、左右風向板160の角度設定をし(処理S75)、風向板の角度設定処理を終了する。
図17は、壁からの距離と上下風向板の制御角度との関係を示す説明図である。横軸は、壁331(図18参照)からの風向対象物(室内で検出された人の位置または足の位置)までの距離である。縦軸は上側上下風向板170の角度βおよび下側上下風向板180の角度αである。暖房時(図15参照)足元に気流を風向するため、角度α,βとも、冷房時(図14参照)と比較して、相対的に小さな角度となっている。つまり、上側上下風向板170および下側上下風向板180は下を向いている。また、角度α,βとも、距離が大きくなるにつれに、遠方に風向するため、角度が大きくなる。つまり、上側上下風向板170および下側上下風向板180は水平に近い方を向いている。また、図17に示すように壁からの距離に対する角度αは同じ壁からの距離に対する角度βよりも所定角度だけ小さな角度となっている。また、図17に示すように角度αと角度βの上限値及び下限値は異なっている。
図18は、室内に人を検出した場合の例(その1)を示す説明図である。図18(a)は、図17に示した距離と上下風向板の角度を示す図であり、(b)は室内の人の位置を示す上面図である。室内機100の上側上下風向板170は、左右羽根170a、中央羽根170b、左右羽根170cを示し、独立して風向制御できる。
室内は、壁検出部63で検出された壁335,336,334で構成されている。壁331は、室内機100が設置されている壁であり、壁336,335は壁331の側壁であり、壁334は、壁331の対向面である壁である。人検出部62により、室内機100が設置されている壁331からどの距離に人がいるかを検出しできている。また、障害物検出部64により、テーブル、椅子等の障害物(例えば、図21参照、物体F1)があるか否かを検出する。気流制御部66は、室内の人、障害物の位置および形状を立体的にみることにより気流が通る経路に、適切に気流を送風することができる。
図18(b)の場合、室内に人M1,M2,M3の3人が検出されており、人M1が壁331から最も近い。気流制御部66は、暖房時の場合、人M1の足元に対し中央羽根170bの向きを合わせる。この際、気流を効果的に風向するため、下側上下風向板180は、中央羽根170bと連動して羽根の向きを合わせる。また、気流制御部66は、人M3の足元に対し左右羽根170cの向きを合わせ、人M2の足元に対し左右羽根170aの向きを合せる。
上下風向板の羽根の角度はそれぞれ図18(a)により決定することができる。この時、図18(a)に示すように人M1に対する中央羽根170bの角度β2と人M1に対する下側上下風向板180の角度αは異なっている。角度α,β1,β2,β3は、図12に基づき、図18(a)で決定された角度により、人に対し最適な気流を送風することができる。なお、左右風向板160については、図25を参照して説明する。
図25は、左右風向板のスイング制御を示す説明図である。左右風向板160が2分割して独立して制御できる場合は、撮像部110から見て、人M3と人M2の成す角度の中心線CLに対し、人M1がいる側の分割された左右風向板160をスイングさせて、人M3と人M1に対し気流を向ける。一方、他方の分割された左右風向板160は、人M2の近傍をスイング制御するとよい。なお、左右風向板160が3分割して独立して制御できる場合は、人M1、人M2、人M3に対し向きを合せる。左右風向板160が分割されていない場合、または、左右風向板160が分割されている場合であっても各風向板を独立させずにスイングさせる場合は、人M3から人M2に対しスイング制御するとよい。なお、以下の図19〜図23での左右風向板160の制御は、図25と同様であるので説明を省略する。
図19は、室内に人を検出した場合の例(その2)を示す説明図である。図19(a)は、図17に示した距離と上下風向板の角度を示す図であり、(b)は室内の人の位置を示す上面図である。図19(b)の場合、室内に人M1,M2,M3の3人が検出されており、人M3が壁331から最も近い。気流制御部66は、暖房時の場合、人M3の足元に対し左右羽根170cの向きを合わせる。この際、気流を効果的に風向するため、下側上下風向板180は、左右羽根170cと連動して羽根の向きを合わせる。また、気流制御部66は、人M2の足元に対し左右羽根170aの向きを合わせ、人M1の足元に対し中央羽根170bの向きを合せる。上下風向板の羽根の角度α,β1,β2,β3はそれぞれ図19(a)により決定することができる。
図20は、室内に人を検出した場合の例(その3)を示す説明図である。図20(a)は、図17に示した距離と上下風向板の角度を示す図であり、(b)は室内の人の位置を示す上面図である。図20(b)の場合、室内に人M2,M3の2人が検出されており、人M3が壁331から最も近い。気流制御部66は、暖房時の場合、人M3の足元に対し左右羽根170cの向きを合わせる。この際、気流を効果的に風向するため、下側上下風向板180は、左右羽根170cと連動して羽根の向きを合わせる。また、気流制御部66は、人M2の足元に対し左右羽根170aの向きを合せる。上下風向板の羽根の角度α,β1,β3はそれぞれ図20(a)により決定することができる。
気流制御部66は、中央羽根170bと下側上下風向板180との距離を、左右羽根170aと下側上下風向板180の羽根との距離、および、左右羽根170cと下側上下風向板180の羽根との距離よりも狭めるとよい。例えば、図20(a)に示す角度β2にする。これにより、気流は、左右側に流れるため人M2,M3へ効果的に気流を送風することができる。なお、上側上下風向板170の羽根と下側上下風向板180の羽根との距離とは、例えば、羽根先端の距離である。
図21は、室内に人を検出した場合の例(その4)を示す説明図である。図21(a)は、図17に示した距離と上下風向板の角度を示す図であり、(b)は室内の人の位置を示す上面図である。図21(b)の場合、室内に人M1が検出されており、障害物検出部64により、家具である物体F1が検出されており、通り抜け可否検出部65で通り抜けできると判定されている場合である。図21(b)の場合は、室内機100から室内を見て中央風向時の場合である。
気流制御部66は、暖房時の場合、人M1の足元に対し、左右羽根170a,170cの向きを合わせるが、中央羽根170bは、足元よりも上方に向きを合せる。下側上下風向板180は、左右羽根170a,170cと連動して羽根の向きを合わせる。上下風向板の羽根の角度α,β1,β2、β3はそれぞれ図21(a)により決定することができる。
すなわち、気流制御部66は、中央羽根170bと下側上下風向板180との距離を、左右羽根170aと下側上下風向板180の羽根との距離、および、左右羽根170cと下側上下風向板180の羽根との距離よりも広げるとよい。これにより、気流は、人M1の足元とともに、物体F1の上面にも送風することができる。
図22は、室内に人を検出した場合の例(その5)を示す説明図である。図22(a)は、図17に示した距離と上下風向板の角度を示す図であり、(b)は室内の人の位置を示す上面図である。図22(b)の場合、室内機100から室内を見て、人M1が右側(壁335側)に検出されており、右側風向時の場合である。
気流制御部66は、暖房時の場合、人M1の足元に対し羽根の向きを合わせるが、3枚の羽根のうち左右羽根170cをその向きに合せ、下側上下風向板180は、左右羽根170cと連動して羽根の向きを合わせる。上下風向板の羽根の角度α,β3はそれぞれ図22(a)により決定することができる。他の中央羽根170bの角度β2、左右羽根170aの角度β1は、例えば、図22(a)のように設定する。
すなわち、気流制御部66は、室内機100から室内を見て右側風向時に、右側ほど上側上下風向板170の羽根と下側上下風向板180との距離が大きいように設定する。これにより、気流は、左側よりも相対的に右側に送風することができる。
図23は、室内に人を検出した場合の例(その6)を示す説明図である。図23(a)は、図17に示した距離と上下風向板の角度を示す図であり、(b)は室内の人の位置を示す上面図である。図23(b)の場合、室内機100から室内を見て、人M1が左側(壁336側)に検出されており、左側風向時の場合である。
気流制御部66は、暖房時の場合、人M3の足元に対し羽根の向きを合わせるが、3枚の羽根のうち左右羽根170aをその向きに合せ、下側上下風向板180は、左右羽根170aと連動して羽根の向きを合わせる。上下風向板の羽根の角度α,β1はそれぞれ図23(a)により決定することができる。他の中央羽根170bの角度β2、左右羽根170cの角度β3は、例えば、図23(a)のように設定する。
すなわち、気流制御部66は、室内機100から室内を見て左側風向時に、左側ほど上側上下風向板170の羽根と下側上下風向板180との距離が大きいように設定する。これにより、気流は、右側よりも相対的に左側に送風することができる。
図18および図19で示したように、本実施形態では、複数の人を検出した場合、壁331に最も近い人に合わせて上側上下風向板170の1枚の羽根と下側上下風向板180との角度を設定している。しかしながらこれに限定されるわけではない。例えば、最も上側に向いている上側上下風向板170の羽根の角度βと下側上下風向板180の羽根との角度αとの差が、所定値以上の場合、所定時間毎に上側上下風向板170の羽根と下側上下風向板180の羽根との角度差を狭めるように制御してもよい。これにより、角度差が大きい場合の風向性の低下を抑制することができる。
図24は、上下風向板のスイング制御を示す説明図である。図24に示す場合、中央羽根170bと下側上下風向板180の羽根との角度差が大きい。このような場合、所定時間毎に、下側上下風向板180をスイング制御することにより、中央羽根170bとの角度差を狭めることにより、風向性を高めることができる。
次に、人検出部62、壁検出部63(図9参照)の詳細について説明する。
<人検出部>
図28は、人検出部の人位置判定処理を示すフローチャートである。図29は、人検出部の人位置判定処理を示す説明図であり、(a)〜(c)はそれぞれ具体的な計算について説明する説明図である。まず、人検出部62(図9参照)は、図27の撮像処理で取得した左画像、中画像、右画像から人の位置を検出する(処理S31)。次に、人検出部62は、この検出した人の位置に関し、画面上の座標系から実空間の座標系に変換する(処理S32)。これにより、室内のどこに人が存在していたかを判定することができる。このようにして、人の実空間の座標を判定すると、人検出部62は、当該座標の情報を記憶部67に記憶する(処理S33)。
図29は、図28の室内の人位置判定処理について詳細に説明する説明図である。図28の処理S32においては、具体的には以下の処理により室内の人の実空間の座標を判定する。まず、人の体の部位のうち、頭部の大きさは、身長、性別に比較的依存しない。そこで、処理S31で検出した人ごとに当該人の顔中心の位置を算出するとともに、その頭部の大きさ(縦方向の長さ)D0を算出する。
図29(a)は、撮像部110の光軸Pと垂直面Sとの関係を示す説明図である。図29(a)に示すように、撮像部110の光軸Pは、水平面に対して俯角εを有している。垂直面Sは、光軸Pに垂直であるとともに、人391の顔中心を通る仮想平面である。距離Lは、撮像部110が有するレンズ(図示せず)の焦点131aと、人391の顔中心との距離である。また、室内機100が設置される壁331とレンズの焦点131aとの距離はΔdである。
図29(b)は、画像面に撮像される画像と、実空間に存在する人391との関係を示す説明図である。図29(b)に示す画像面Rは、撮像部110が有する複数の受光素子(図示せず)を通る平面である。算出した前記の頭部の大きさD0に対応する縦方向の画角γyは、以下に示す式(2)で表される。ちなみに、式(2)で角度βy[deg/pixel]は、1ピクセル当たりの画角(y方向)の平均値であり、既知の値である。
そうすると、撮像部110が有するレンズ(図示せず)の焦点131aから顔中心までの距離L[m]は、一般的な人の顔の縦方向の長さの平均値をD1[m](既知の値)とすると、以下に示す式(3)で表される。前記したように、俯角εは、前記レンズの光軸が水平面となす角度である。
図29(c)は、前記レンズの焦点から顔中心までの距離Lと、画角δx,δyとの関係を示す説明図である。画像面Rの中心から画像上の顔中心までのx方向、y方向の画角をそれぞれδx,δyとすると、これらは以下に示す式(4)、式(5)で表される。ここで、xc,ycは、画像内の人391の人中心の位置(画像内でのx座標、y座標)である。また、Tx[pixel]は撮像画面の横サイズであり、Ty[pixel]は撮像画面の縦サイズであり、それぞれ既知の値である。
したがって、実空間における人中心の位置座標は、以下に示す式(6)〜式(8)によって表される。
すなわち、このx,y,zの各値は図29に図示のとおりであり、これらの値から室内機100の空気吹出し口109b側からみたX方向、Y方向、Z方向の座標が求められる。以上の処理により、処理S32の処理を実現している。
<壁検出部・コーナ方向判定処理>
図30は、壁検出部のコーナ方向判定処理を示すフローチャートである。図31は、壁検出部のコーナ方向判定処理で行う画像処理を示す図であり、(a)〜(e)はこの順に画像処理の手順を示している。このコーナ方向判定処理は、図27の撮像処理が実行されるたびに行う。
すなわち、図27の撮像処理で取得した左画像、中画像、右画像をそれぞれ対象として、次のような画像処理を行う。まず、壁検出部63(図9参照)は、図27の撮像処理で取得した画像(図31(a)に、その例を示す)からエッジを検出する(処理S21)。次に、壁検出部63は、検出したエッジにフィルタリング処理を行い、所定値以上に太く、所定値以上に長く、かつ、所定値以上に明瞭なエッジのみを残す(処理S22)。図31(b)には、このようにして図31(a)の画像から得られたエッジ371を白い線図で示している。次に、壁検出部63は、各エッジ371を、その長さ方向に延長する(処理S23)。図31(c)には、このようにして延長した各エッジ371を示している。そして、壁検出部63は、このように延長した各エッジ371の交点(図31(d)に示す交点372)を求める(処理S24)。そして、各交点372の重心(図31(e)に示す重心373)を求める(処理S25)。この重心373の座標は、各交点372の画像上の基準位置からのX方向(横方向)、Y方向(縦方向)の距離の平均をそれぞれ求めることにより算出することができる。そして、この重心373の画像上の位置を部屋のコーナ(角部)の位置と推定することができる。これにより、室内のコーナ(重心373)の撮像部110からみた水平方向の方向がわかるので(前記の左画像、中画像、右画像のうちの何れの画像であるか、その画像中で重心373の位置は横方向の基準位置から何ピクセル目にあるかにより、当該方向がわかる)、当該コーナの方向を記憶部67に記憶(設定)する(処理S26)。この場合の記憶処理では、過去の所定回数分(例えば過去10回分)のみのコーナ(重心373)の方向を記憶部67に蓄積することとし、それより古い情報は削除する。そして、その過去の所定回数分の情報の平均値(移動平均の値)を、最終的なコーナ(重心373)の方向として確定し、記憶部67に記憶する。これは、室内における家具や器物の配置移動により、記憶部67に蓄積されている情報が示す室内の左右のコーナの方向は時間帯にばらつきを生じる場合があるからである。そのため、前記のとおり平均値を求めることで情報の中に含まれているノイズを除去して、最も確からしい方向を室内の左右のコーナ(重心373)の方向とすることができる。以下、重心373を適宜コーナ373という。処理S26により、後記の方向376,377が設定される。
なお、図31(e)の例では、室内機100が設置されている部屋の引き戸374が開いているため、その開口部の奥のエッジが検出されて、重心373の位置が同図に示す位置となっている。しかし、引き戸374が閉められた状態の画像が撮像された場合であれば、符号375またはその近傍の位置が重心373となる可能性が高い。
図1に示すように、撮像部110は、空気吹出し口109b(図2参照)の長手方向の中央部近傍に位置するので、前記のようにして特定した重心373は、空気吹出し口109b側からみた室内のコーナとみなすことができる。
また、壁検出部63は、図26に示すように、処理S25で求めた部屋のコーナ373(室内機100に向かって左右のコーナ373a,373b。以下、コーナ373(コーナ373a,373b)というときは、撮像部110でみた空気吹出し口109b側からの画像上での重心(図31(e))を意味する)の方向376,377のそれぞれの室内機100の正面の方向311からみた角度が何度になるか判断する(処理S27)。そして、この角度の小さい方の壁は大きい方の壁より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する(処理S28)。すなわち、方向376と方向311とがなす角度が方向377と方向311とがなす角度より小さければ、壁336の方が壁335(図32参照)より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する。方向377と方向311とがなす角度が方向376と方向311とがなす角度より小さければ、壁335の方が壁336より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する。このような、左右の壁336と壁335とのうち空気吹出し口109b側からみて近いのは、あるいは遠いのはどちらであるかの情報も記憶部67に記憶する(処理S29)。
図32は、壁検出部のコーナ方向判定処理での室内の平面を示す説明図である。図33を参照して、処理S27,処理S28の処理を具体的に説明する。まず、角度aを算出する。これは、撮像部110の例えば水平方向の画素数が例えば640[pixel]であり、角度aの範囲の(上下、左右方向の)画素数がβ[pixel]であったとすれば、“640[pixel]:β[pixel]=60°:a°”、“a°=60°×β[pixel]/640[pixel]”から求められる。そして、“A°=30°+a°”で角度Aが求められる(範囲312の角度が約60°で、30°はその半分)。同様の考え方で、角度b°を求め、“B°=30°−b°”で角度Bが求められる。そして、この例では、“A°>B°”であるから、図32において、壁335の方が壁336より空気吹出し口109b側からみて遠いと判断できる。
図33は、壁検出部のコーナ方向判定処理を示す説明図であり、(a)は室内の平面図であり、(b)は画像中の重心の決定について説明する説明図である。図33(a)の平面図で示す室内のように、室内の形状が長方形、正方形ではなく、例えば、室内のコーナ部分378が室内側に角柱状に飛び出しているような形状の場合、撮影した画像379の例は図33(b)のようになる。このような場合には、図33(b)に示すように、コーナ(重心)373の候補(符号373c)が複数求められることがある。
このような場合には、複数の候補373cの画像上の基準位置からのX方向(横方向)、Y方向(縦方向)の距離の平均をそれぞれ求めることにより、当該平均後の座標をコーナ(重心)373として求めることができる。
以上の処理により、壁検出部63は、空気吹出し口109b側からみた部屋の左右のコーナ373a,373b(図32参照)の方向376,377を的確に判断することができる。また、壁検出部63は、空気吹出し口109b側からみて室内の左右の壁336,337のうちどちらが近く、どちらが遠いかも判断することができる。
<壁検出部・拡がり範囲判定処理>
図34は、壁検出部の拡がり範囲判定処理を示すフローチャートである。図35は、壁検出部の拡がり範囲判定処理での室内配置を示す平面図である。図34、図35を参照して、図28に示した人位置判定処理の結果を用いて室内の拡がりの範囲を判定する処理について説明する。まず、所定時間t1ごとに図27の撮像処理が行われ、その度に図28の処理が実行され、その結果が記憶部67に記憶されている。そこで、壁検出部63は、前記処理S33(図28参照)により、新たに人の座標情報が記憶部67に記憶されると(処理S41,Yes)、当該人の座標情報から、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383の外側の領域381に人の座標が存在するか否かを判断する(処理S42)。領域381に人の座標が存在するときは(図35の符号382で当該人の例を示している)(処理S42,Yes)、当該人のX方向の座標(図35の左右方向)位置を室内機100に向かって右側の壁336(または左側の壁335)の位置と推定する(処理S43)。これは当該座標に人382が位置するということは、壁336(または左側の壁335)は少なくとも当該座標の位置あるいはさらにその外側にあることになるので、その人382の位置を現時点での壁336(または左側の壁335)の位置とするものである。
これにより、壁336(または壁335)の現時点における推定位置がわかるので、室内の各コーナおよび各壁の位置を推定する(処理S44)。すなわち、この壁336(または壁335)の位置のY方向を延長していき、コーナの方向376(またはコーナーの方向377)との交点が現実のコーナ422a(またはコーナ422b)であると推定できる。また、当該コーナ422a(またはコーナ422b)の位置をX方向に延長していき、他のコーナの方向377(またはコーナ376)に達するまでが正面の壁334の位置と推定できる。そして、そのコーナの方向377(またはコーナ376)と交わった位置が他の現実のコーナ422b(またはコーナ422a)であると判定できる。さらに当該位置からY方向に延長していった位置が壁335及び壁336のうちの他方の壁の位置であると推定することができる。
一方、処理S44の後、または、領域381に人の座標が存在しなかった場合には(処理S42,No)、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383に人の座標が存在するときは(図35の符号384で当該人の例を示している)(処理S45,Yes)、当該人のY方向の座標位置を室内機100の正面の壁334の位置と推定する(処理S46)。これは当該座標に人384が位置するということは、壁334は少なくとも当該座標の位置あるいはさらにその外側にあることになるので、その人384の位置を現時点での壁334の位置とするものである。
これにより、正面の壁334の位置がわかるので、室内の各コーナおよび各壁の位置を判断する(処理S47)。すなわち、この正面の壁334をX方向に延長していき、コーナの方向376およびコーナの方向377との交点が、現実のコーナ421aおよびコーナ421bであると推定できる。そして、この現実の各コーナ421a及びコーナ421bをY方向に延長していくと、当該位置が壁336および壁335であると推定することができる。
処理S47の後、または、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383に人の座標が存在しなかったときは(処理S45,No)、処理S44および処理S47で推定された現実の各コーナおよび各壁の位置のうち、室内機100側から最も遠いものを各コーナおよび各壁の位置の最終的な判定結果とする(処理S48)。
図35には、人384に基づいて推定される壁331,334,335,336の位置をそれぞれ331a,334a,335a,336a(破線)として示している。同様に、人382に基づいて推定される壁331,334,335,336の位置をそれぞれ331b,334b,335b,336b(実線)として示している。
この場合、処理S44または処理S47でしか判定結果が得られなかったときは、当該得られた判定結果(人を複数検出したときは、室内機100側から最も遠いものの判定結果)を各壁および各コーナの位置の判定結果とする。そして、この判定結果を記憶部67に記憶する(処理S49)。この各壁及び各コーナの情報は所定時間t1ごとに取得するので、この情報の記憶は、所定時間t1ごとに行われる。そして、所定の基準時以後(例えば、直近の過去30回分)の各壁及び各コーナの情報のうち、壁の位置が室内機100側から最も遠いものの情報で更新される。これにより、所定の基準時以後に取得した情報のうち、各壁及び各コーナの位置が室内機100側から最も遠いものの情報が処理S49で記憶される。
なお、このようにして特定した空気吹出し口109b側からの室内の左右における現実のコーナ421a,421b,422a,422b(と推定される位置)までのそれぞれの距離も、次のように求められる。すなわち、
“コーナ421aまでの距離=√((壁336aまでの距離)2+(壁334aまでの距離)2)”、
“コーナ421bまでの距離=√((壁335aまでの距離)2+(壁334aまでの距離)2)”である。コーナ422aまでの距離、コーナ422bまでの距離も同様に求められる。
以上説明したように、壁検出部63は、撮像部110で撮影された画像から、風向部の水平方向の向きにおいて、空気吹出し口109bの前方側の右のコーナの方向と、空気吹出し口109bの前方側の左のコーナの方向と、人検出部62で検知した人の位置とに基づいて室内の壁の位置を検知することができる。
本実施形態では、撮像部110の画像を用いた壁検出部63について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、近赤外線を室内に向けて照射し、赤外線透過フィルタ(IR透過フィルタ)を備えたCCDイメージセンサで撮像し、画像の上方の輝度と、輝度と距離のデータベースとの比較から、側面の壁や正面の壁までの距離を推定してもよい。
また、近赤外線を複数本の平行線状に室内に向けて照射し、IR透過フィルタを備えたCCDイメージセンサで撮像し、平行線の間隔の違いから側面や正面の壁までの距離を推定してもよい。
さらに、撮像部110は、室内機100の前面に据え付けられているとして説明したが、同様の方法で天井に据え付けられる撮像部により、床を検出することで壁を検出してもよい。
人検出部62は、撮像部110の画像に基づいて人を検知しているがこれに限定されるものではない。例えば、センサ部50として、赤外線センサ、サーモパイル、サーモグラフィー、焦電型センサ、超音波センサ、騒音センサを使用してもよい。人検出部62で検出するのは、人の位置に限られず、活動量、生活シーン等であってもよい。温度検知センサとしてサーモパイルを用いる場合、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成されるサーモパイルとし、前面パネルの左右方向中央の下部に設置するとよい。温度検知センサで検出するのは、室内の平均的な表面温度に限られず、検出範囲の内の人を除いた領域の室内の表面温度、人の着衣の表面温度、人の皮膚の温度、床や壁や天井の各部の表面温度を検出することができる。
本実施形態の空気調和機Aは、気流を吹き出す空気吹出し口109bと、左右方向に並ぶ複数の羽根で構成され、空気吹出し口109bから吹き出す気流の風向を上下方向に変える上側上下風向板170(第1の上下風向板)と、上側上下風向板170の下側に配置され、空気吹出し口109bから吹き出す気流の風向を上下方向に変える下側上下風向板180(第2の上下風向板)と、上側上下風向板170の複数の羽根のうち、最も下側を向いている羽根の角度に基づいて、下側上下風向板180を下側に向ける気流制御部66とを有する。上側上下風向板170は、図1では3分割の場合について示したが、2分割、あるいは、4分割以上の場合についても同様に、適用することができる。
具体的には、空気調和機Aは、気流を吹き出す空気吹出し口109bと、左右方向に2分割された第1の羽根と第2の羽根とで構成される空気吹出し口から吹き出す気流の風向を上下方向に変える上側上下風向板170と、上側上下風向板170の下側に配置され、空気吹出し口109bから吹き出す気流の風向を上下方向に変える下側上下風向板180と、第1の羽根または第2の羽根のうち、最も下側を向いている羽根の角度に基づいて、下側上下風向板180を下側に向ける気流制御部66とを有していてもよい。また、第2の上下風向板は、第1の上下風向板の下側に配置しているがこれに限定されるものではなく、第1の上下風向板の上側に配置してもよい。この場合、気流制御部66は第1の上下風向板の前記複数の羽根のうち最も上側を向いている羽根の角度に基づいて、第2の駆動機構180mの駆動を制御するとよい。また、第1の上下風向板は前側上下風向板であり、第2の上下風向板は下側上下風向板であってもよい。