JP6213744B2 - 空気調和機 - Google Patents

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Description

本開示は、物体から放射される赤外線を分析して当該物体の表面温度情報を用いて空調制御を行う空気調和機に関する。
一般的に、物体から放射される赤外線を分析して当該物体の表面温度を検知する装置としてはサーモグラフィ(熱画像形成装置)がある。サーモグラフィは物体の表面温度を非接触で検知することができるため、熱分析解析を行う研究機関、および品質管理を行う製造工場などの多くの温度検知の分野で用いられている。
最近、サーモグラフィにおける温度検知センサ(サーモパイルセンサ)を空気調和機に搭載し、空気調和機の周囲温度を検知して、空調制御を行うことが提案されている。特許文献1には、サーモパイルモジュールを用いて人の存在の有無、および人の移動を検知して空調制御を行う空気調和機が提案されている。また、最近、サーモグラフィにより得られた熱画像から推定された人の放熱量と、人の「温冷感」との間には高い相関関係を有することが報告されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
特開2001−304655号公報
式井愼一、楠亀弘一、田中友里、西村奈摘、久保博子、「夏期におけるサーモグラフィを用いた温冷感推定」、空気調和衛生工学会・近畿支部学術研究発表会論文集A-55、p220-223 式井愼一、楠亀弘一、田中友里、西村奈摘、久保博子、「冬期における温熱的快適性に関する研究、その2:サーモグラフィを用いた温冷感推定」、人間-生活環境系シンポジウム報告集、38、P281-284
例えば、非特許文献1,2において、人間が「暑い」、「暖かい」、「涼しい」、または「寒い」などと感じる「温冷感」は、当該人間の表面温度を示す熱画像から推定された放熱量と関連性を有することが確認されている。そこで、発明者らは、サーモグラフィにおける熱画像情報を用いて人の放熱量を推定し、推定された放熱量に基づいて「温冷感」を検知して空調制御を行うことを検討した。
しかしながら、一般的に用いられているサーモグラフィにおける二次元の温度分布を示す熱画像情報のみを用いて、人の存在位置を正確に検出して、その人が好適と感じる精度の高い空調制御を行うことは困難であった。特に、通常の熱画像情報からでは居住空間である空調対象領域においていずれの位置に人が存在するかを正確に検知することが非常に困難であった。
そこで、本開示は、空調対象領域における人の存在位置を正確に把握して、その人の状況に応じて、その人が最適と感じる空調制御を行うことができる空気調和機の提供を課題とするものである。
本開示の空気調和機は、
空調対象領域において放射される赤外線量の変化を検知して、前記空調対象領域内の人体検知を示す人体検知情報を出力する人感センサと、
前記空調対象領域において放射される赤外線量から二次元の温度分布を示す熱画像情報を出力する温冷感センサと、
前記人感センサからの人体検知情報と前記温冷感センサからの熱画像情報から、前記空調対象領域における空調制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記人体検知情報に基づいて、前記空調対象領域における人存在領域を特定し、前記熱画像情報に基づいて、前記特定された人存在領域の人の「温冷感」を検知し、検知された「温冷感」である「検知温冷感」に基づいて前記空調対象領域に対する空調制御を行うように構成され、
前記「検知温冷感」が、当該空調制御における設定温度において通常の人が感じる「標準温冷感」を中心値として所定幅を有する温冷感検知ゾーンの範囲外に、所定回数連続して検知された場合、前記「検知温冷感」が示す温冷感スケールの値とは異なる値を「温冷感」として、前記「検知温冷感」を検知した人存在領域に対してのみ特別条件空調制御を行うよう構成されている。
本開示の空気調和機によれば、空調対象領域における人の放射量からその人の「温冷感」を検知し、検知された「温冷感」に基づいてその人が最適と感じる空調制御となるように精度の高い空調制御を行うことができる。
本開示の実施の形態1の空気調和機における室内機の外観構成を示す斜視図 実施の形態1の空気調和機の内部構成を示す縦断面図 実施の形態1の空気調和機におけるセンサ保持部を分解して示す斜視図 実施の形態1の空気調和機における活動量の判定処理を示すフローチャート 実施の形態1の空気調和機における温冷感センサを示す斜視図 実施の形態1の空気調和機における温冷感センサを、センサ保持部の一部を破断して示す斜視図 実施の形態1の空気調和機において実行される温冷感検知制御のフィルタリング処理を示すフローチャート 実施の形態1において用いられる用語の定義を示す図 実施の形態1の空気調和機における複数の人体位置判別領域を示す図 実施の形態1の空気調和機において実行される温冷感検知制御のフィルタリング処理を示す具体的なフローチャート 実施の形態1の空気調和機における温冷感検知制御の空調処理を示すフローチャート 本開示の実施の形態2の空気調和機における温冷感検知制御の特別条件空調処理を説明するための「室温」と「温冷感」との関係を示すグラフ 実施の形態2の空気調和機における温冷感検知制御の特別条件空調処理を示すフローチャート
以下、本開示の空気調和機に係る実施の形態として、所謂、壁面に取り付ける室内機と、室外に設置する室外機とを有する空気調和機について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本開示の空気調和機は、以下の実施の形態において説明する空気調和機の構成に限定されるものではなく、以下の実施の形態において説明する技術的思想から想到できる各種空気調和機の構成を含むものである。
また、以下の実施の形態において示す数値、形状、構成、ステップ、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、本開示を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
先ず始めに、本開示の空気調和機における各種態様について例示する。
本開示の第1の態様の空気調和機は、
空調対象領域において放射される赤外線量の変化を検知して、前記空調対象領域内の人体検知を示す人体検知情報を出力する人感センサと、
前記空調対象領域において放射される赤外線量から二次元の温度分布を示す熱画像情報を出力する温冷感センサと、
前記人感センサからの人体検知情報と前記温冷感センサからの熱画像情報から、前記空調対象領域における空調制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記人体検知情報に基づいて、前記空調対象領域における人存在領域を特定し、前記熱画像情報に基づいて、前記特定された人存在領域の人の「温冷感」を検知し、検知された「温冷感」である「検知温冷感」に基づいて前記空調対象領域に対する空調制御を行うように構成され、
前記「検知温冷感」が、当該空調制御における設定温度において通常の人が感じる「標準温冷感」を中心値として所定幅を有する温冷感検知ゾーンの範囲外に、所定回数連続して検知された場合、前記「検知温冷感」が示す温冷感スケールの値とは異なる値を「温冷感」として、前記「検知温冷感」を検知した人存在領域に対してのみ特別条件空調制御を行うよう構成されている。
このように構成された第1の態様の空気調和機においては、人感センサからの人体検知情報および温冷感センサからの熱画像情報に基づいて、空調対象領域における人存在領域を特定し、人存在領域の人の放射量に基づいて検知された「温冷感」である「検知温冷感」が温冷感検知ゾーンの範囲外に所定回数以上連続して検知された場合には、その人に対応した最適な空調制御を行うことができる。
本開示の第2の態様の空気調和機においては、前記の第1の態様における前記制御部が、前記人体検知情報に基づいて、特定された人存在領域の人の活動量を検出し、検出された人の活動量が「小」以下(「活動量小」および「安静状態」を含む)の場合に、空調対象領域に対する空調制御を行うように構成されている。
このように構成された第2の態様の空気調和機においては、人の活動量を特定して温冷感センサからの熱画像情報により空調対象領域に存在する人の「温冷感」を精度高く検知することができる。
本開示の第3の態様の空気調和機においては、前記の第1または第2の態様における前記制御部が、冷房運転時または冷房除湿運転時において、前記「検知温冷感」が連続して所定回数、前記温冷感検知ゾーンから温冷感スケールの「−」の方向に外れて検知された場合、前記「検知温冷感」を検知した人存在領域に対して温冷感スケールの「+」の方向に外れている場合の風あて風向および/または風量を変更した空調制御を行うよう構成されている。
このように構成された第3の態様の空気調和機においては、例えば、夏期の冷房運転時における風呂上がりの状態、食事中や食後の放熱量が多いときでも、その人が最適と感じる温冷感検知制御の風あて風向および/または風量を変更した後述する特別条件空調処理を行うことができる。
本開示の第4の態様の空気調和機においては、前記の第1または第2の態様における前記制御部が、暖房運転時において、前記「検知温冷感」が連続して所定回数、前記温冷感検知ゾーンから温冷感スケールの「+」の方向に外れて検知された場合、前記「検知温冷感」を検知した人存在領域に対して温冷感スケールの「−」の方向に外れている場合の風あて風向および/または風量を変更した空調制御を行うよう構成されている。
このように構成された第4の態様の空気調和機においては、例えば、冬期の帰宅時における放熱量が少ないときでも、その人が最適と感じる温冷感検知制御の風あて風向および/または風量を変更した後述する特別条件空調処理を行うことができる。
本開示の第5の態様の空気調和機においては、前記の第1から第4の態様における前記温冷感検知ゾーンが、前記「標準温冷感」を中心値から温冷感スケールの「±1」の領域であり、前記「検知温冷感」が前記温冷感検知ゾーンの領域を2回連続して超えたとき、前記「検知温冷感」が示す温冷感スケールの値を逆の領域の値の「温冷感」であるとして風あて風向および/または風量を変更した空調制御を所定時間継続させるよう構成されている。
このように構成された第5の態様の空気調和機においては、一時的に突出した「検知温冷感」を2回連続して検知した場合において、そのときの人の状況に応じた最適な空調動作を行うことができる。
本開示は、以下の明細書において述べられた、または以下の図面において描かれた構成要素の詳細な構成および配置の適用に制限されるものではない。また、本明細書において使用される語法および用語は、本明細書のためのものであり、制限されるべきではない。例えば、ここにおける「含む」、「備える」または「有する」などの文言の使用およびその変化は、その後記載された要素、および追加の要素と同様にその等価物も包含することを意味する。
実施の形態においては、様々なステップは1つの順番でここでは説明するが、本開示の範囲から逸脱することなく、上記方法の他の実施の形態は、任意の順番で実行することができ、および/または上記ステップの全てが実行されない場合がある。
《実施の形態1》
以下、本開示における実施の形態1の空気調和機の構成について、添付の図面を参照しつつ説明する。
実施の形態1の空気調和機は、冷媒配管および制御用配線などにより互いに接続された室内機と室外機で構成されており、室内機が空調対象領域(居住空間)に配設され、圧縮機が設けられた室外機が空調対象領域外に配設されている。
図1は、実施の形態1の空気調和機における室内機の外観構成を示す斜視図である。図2は、実施の形態1の空気調和機の内部構成を示す縦断面図であり、当該空気調和機の中央部分を前後方向の面で切断した断面図(図2において左側が前面側であり、右側が背面側)である。
図1に示す室内機1は、室内の空気を取り込む吸込口2(図2参照)を有する天井側の天面と、正面側の前面と、両側面と、空気を室内に吹き出す吹出口3を有する底面と、壁面側となる背面とを有して外観が構成されている。室内機1の前面と両側面は、滑らかに連続する面で構成されており、両側面の高さ寸法が前面側に向かって徐々に短くなる構成である。このため室内機1の底面は、前方側に向くように傾斜している。
図1に示すように、室内機1の底面にある吹出口3には、上下風向ルーバー4が設けられており、吹出口3が開閉されるよう構成されている。図1は、上下風向ルーバー4が吹出口3を開いた状態の室内機1を示している。室内機1の天面に形成された吸込口2から取り込まれた室内空気は、室内機1の内部において塵芥が取り除かれて熱交換され、吹出口3から吹き出される。
図2の断面図に示すように、室内機1の内部には、取り込まれた室内空気に含まれる塵芥を捕捉するためのフィルタ10と、取り込まれた室内空気に対して熱交換する熱交換器11と、吸込口2からフィルタ10を介して吸い込み、熱交換器11を通して吹出口3から室内(居住空間)に吹き出る気流を発生させるための貫流式のファン12と、が設けられている。室内機1の前面は、前面パネル8により構成されており、前面パネル8は室内機1の内部のフィルタ10の交換などのために開放可能である。
吹出口3には、風向きを上下方向に変更する上下風向ルーバー4と、風向きを左右方向に変更する左右風向ルーバー5が設けられている。上下風向ルーバー4は、上羽根4aと下羽根4bとを有している。上羽根4aおよび下羽根4bのそれぞれは、左右両端のいずれか一方の回転軸に接続された上下風向ルーバー用の駆動モータ、例えばステッピングモータにより、風向きが上下方向となるように回動駆動される構成である。左右風向ルーバー5は、実質的に同形状の複数枚の左右風向変更羽根が並設されている。複数枚の左右風向変更羽根は、それぞれの左右風向変更羽根が連動するように連結桟に連結されている。この連結桟は、左右風向ルーバー用の駆動モータ、例えばステッピングモータの回転軸に連結されており、この駆動モータの回転により複数枚の左右風向変更羽根が連動して、左右方向に方向転換する構成である。
図2に示すように、実施の形態1の空気調和機の室内機1には、前面パネル8とフィルタ10と、そして天面を構成する天面パネル13と、により囲まれた前側上部空間の一部には電装ユニット14が設けられている。電装ユニット14には制御部25が含まれており、この制御部25において上下風向ルーバー4、左右風向ルーバー5、ファン12、および室外機の圧縮機などを駆動制御して、当該空気調和機の運転を制御している。電装ユニット14は、室内機1の枠体を構成する台枠の一部を利用して装着されている。電装ユニット14における制御部25は、マイクロコンピュータで構成されており、後述する複数のセンサからの各種情報に基づいて当該空気調和機の運転制御を行っている。
また、図2に示すように、前面パネル8と吹出口3との間にセンサ保持部9が設けられている。センサ保持部9の前面は略鉛直面を有する前面パネル8に対して傾斜している。センサ保持部9の前面には、赤外線透過型の1枚の樹脂製の装飾シート15が張り付けられている。センサ保持部9の内部には、人感センサ6、温冷感センサ7などが設けられている。したがって、人感センサ6および温冷感センサ7は、装飾シート15を介して居住空間である空調対象領域からの赤外線に基づいて人の存在、人の移動、および熱画像情報などを検出する構成である。また、実施の形態1の室内機1には、空調対象領域の床温度を検出する床温センサ、空調対象領域における日当たり状態を検出する日射センサ、および各種センサの検知状態などを表示するための発光表示部16が設けられている。
人感センサ6は、人体から放射される赤外線を検知する焦電素子型赤外線センサである。人感センサ6は、空調対象領域における赤外線量の変化により、人の存否、人の移動を検出する。人感センサ6は、空調対象領域における赤外線量の変化を検出する構成であるため、前方が装飾シート15で覆われていても、装飾シート15に起因して誤検知するおそれがなく、較正の必要がない。
一方、温冷感センサ7は、サーモパイルセンサであり、多数の熱電素子型のセンサ素子をマトリクス状に配置して構成されている。マトリクス状のセンサ素子の前方には集光レンズが設けられている。実施の形態1においては、例えば、センサ素子が8×8のマトリクス状に配置されている。実施の形態1の温冷感センサ7においては、マトリクス状に配設されたセンサ素子の縦・横が回転軸に対して斜めに傾けた状態で回動して走査され、熱画像情報を示す信号を出力するよう構成されている。例えば、温冷感センサ7の回転軸を傾けて走査することにより、左右視野角約180°、上下視野角約30°に相当する熱画像情報が形成される信号が出力される。
実施の形態1の空気調和機における温冷感センサ7であるサーモパイルセンサは、空調対象領域における床面および壁面などの熱画像情報(温度分布情報)および/または人体の熱画像情報(温度分布情報)の二次元の熱画像情報を形成している。この熱画像情報は、温冷感センサ7により検出された赤外線量により形成されている。このため、赤外線量の変化を検出する人感センサ6とは異なり、温冷感センサ7において装飾シート15を介して検出された熱画像情報においては較正が必要となる。温冷感センサ7における較正方法については後述する。
なお、実施の形態1の空気調和機においては、温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて空調対象領域における人の「温冷感」を検知する構成であるが、人が感じる「暑い」、「寒い」を示す「温冷感」の指標としては、一般的にはPMVスケール(Predicted Mean Vote:予測温冷感申告)が用いられている。PMVスケールにおいては、「+3(Hot:暑い)」〜「−3(Cold:寒い)」の7段階評価尺度となっている。
本開示の実施の形態1においては、空気調和・衛生工学会温冷感小委員会で提案された、9段階温冷感尺度を温冷感スケールとして用いている。9段階評価尺度は、PMVスケールの両極に、「+4(非常に暑い)」および「−4(非常に寒い)」を加えたものである。この温冷感スケールを用いて後述する温冷感検知制御を行っている。
なお、以下の実施の形態における説明において、「温冷感」とは温冷感スケールの「−4」〜「+4」の範囲内の数値を示すものである。また同様に、後述する「平均温冷感」、「標準温冷感」、「検知温冷感」などの「温冷感」に関する用語においても、それぞれが温冷感スケールの「−4」〜「+4」の範囲内の数値を示すものである。
実施の形態1の空気調和機の温冷感検知制御においては、当該空気調和機の設定温度に対して、一般的な人が標準的に感じる「温冷感」を「標準温冷感」として、その「標準温冷感」を「目標温冷感」として空調制御を行っている。実施の形態1の温冷感検知制御においては、「標準温冷感」との差が「±0.5」以内の目標温冷感ゾーンとなるように温度シフト制御、および吹き分け制御を行っている。温度シフト制御および吹き分け制御については後述する。なお、温冷感スケール「±1」以内であればPPD(Predicted Percentage of Dissatisfied:予測不満率)で8割の人が不満と感じていないという実験結果があり、この実験結果に基づいて、実施の形態1の温冷感検知制御においては、温冷感スケールの「目標温冷感」との差を「±0.5」以内としている。
図3は、人感センサ6および温冷感センサ7が設けられているセンサ保持部9を分解して示す斜視図である。室内機1の前面パネル8の下方に設けられたセンサ保持部9は、その前面側に設けられた装飾シート15が斜め下側前方を向く面を有して配置されている。前述のように、装飾シート15の裏面側に人感センサ6および温冷感センサ7が設けられており、人感センサ6および温冷感センサ7はセンサ保持部9により保持されている。センサ保持部9は、不透光性を有する樹脂で構成されており、装飾シート15より赤外線の透過率が低い材料で形成されている。
人感センサ6および温冷感センサ7が保持されるセンサ保持部9の内部空間は密閉されており、室内機内部における空気の流路から外れている。なお、センサ保持部9の両端部が室内機1の本体に枢支されており、センサ保持部9を手前側に回動させることにより、センサ保持部9の背面側に設けられているフィルタ10などを容易に着脱できる構成となっている。
また、センサ保持部9の中央部には、人感センサ6および温冷感センサ7などの動作状態、および検知状態を視覚的に認識できるように、例えば色の異なる光を発光する複数のLEDからの光を導光板により発光させるように構成した発光表示部16が設けられている。
[人感センサ]
実施の形態1の人感センサ6は3つの赤外線センサで構成されており、それぞれの検知対象領域が特定されている。図3に示すように、実施の形態1における人感センサ6は、センサ保持部9における左端側に3つの赤外線センサが水平方向に並んで配置されている。人感センサ6は、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する焦電型赤外線センサである。実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ6の各赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じてパルス信号を出力し、そのパルス信号に基づいて電装ユニット14の制御部25が人の在否を判定している。
実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ6から出力される信号に基づいて、人体が殆ど動かない安静状態か、若しくは人体が活動する活動状態かを判断している。実施の形態1の空気調和機においては、人体が活動する活動状態における「大」、「中」、「小」、および「安静状態」の4段階の人の活動量(動き)の大小を判断している。具体的には、制御部25が、所定の検出時間(例えば、2分間)内に人感センサ6から出力された信号が示す人体を検出した回数に応じて、活動量の「大」、「中」、「小」、および「安静状態」の活動量を決定している。より具体的には、制御部25が、人体検知の回数を予め決めた複数の閾値と比較して、活動量の「大」、「中」、「小」、および「安静状態」を判断している。
なお、実施の形態1において、活動量が「大」とは掃除しているときのように広い領域で大きく頻繁に活動している状態をいう。活動量が「中」とは炊事などの狭い領域で活動している状態をいう。活動量が「小」とは、食事をしているときのような狭い領域で多少活動している状態をいう。
また、実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ6における3つの赤外線センサから出力される信号に基づいて、空調対象領域における人体位置判別領域を7つ領域に区分けしている。当該空気調和機においては、人感センサ6における3つの赤外線センサのそれぞれにおいて、検知できる領域が重なるように構成されており、それぞれの赤外線センサからの信号に基づいて空調対象領域の7つの人体位置判別領域における人の在否を検知する構成となっている。
より具体的には、人感センサ6における3つの赤外線センサのうち左側の赤外線センサは、後述する図9における領域LM、領域LF、領域CM、領域CFを検知可能に設けられている。中央の赤外線センサは、領域N、領域LM、領域CM、領域RMを検知可能に設けられている。右側の赤外線センサは、領域RM、領域RF、領域CM、領域CFを検知可能に設けられている。
そして、例えば、左側の赤外線センサと中央の赤外線センサとが人を検出し、右側の赤外線センサが人を検出しない場合には、人は領域LMに存在すると判定できる。
また、活動量は、例えば、以下の方法で判定できる。図4は、活動量の判定する処理を示すフローチャートである。
まずステップ21において、所定時間T1毎に人感センサ6における3つの赤外線センサの反応頻度(出力パルス有り)を計測し、ステップ22において、計測回数が所定回数に達したかどうかを判定する。なお、所定時間T1は、上述した人の在否判定における所定の周期T1と同じであるが、ここでは、例えば2秒に設定され、計測回数の所定回数は、例えば15回に設定されるものと仮定し、15回の計測を総称して1ユニット計測(30秒間の計測)という。また、ここでいう「計測回数」とは、後述するブロックL、C、R(後述する図9参照)のいずれかのブロックにおける計測回数のことで、全てのブロックに対し同様の計測が行われる。
ステップ22において、計測回数が所定回数に達していないと判定されるとステップ21に戻り、計測回数が所定回数に達し1ユニット計測が終了したと判定されると、ステップ23において、4ユニット計測(2分間の計測)が終了したかどうかを判定する。ステップ23において、4ユニット計測が終了していない場合にはステップ21に戻り、4ユニット計測が終了している場合にはステップ24に移行する。
ステップ24においては、4ユニット計測(現在の1ユニット計測を含め過去4回のユニット計測)のセンサの合計反応頻度が所定数(例えば、5回)に達したかどうかを判定し、所定数に達していれば、ステップ25において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)がクリアされた後、ステップ26に移行する。
ステップ26においては、全てのブロックにおける赤外線センサの合計反応頻度が所定数(例えば、40回)に達したかどうかを判定し、所定数に達している場合には、ステップ27において、「安静」と判定された領域を除き在判定された全ての領域が「活動量大」と判定される一方、所定数に達していない場合には、ステップ28において、4ユニット計測の赤外線センサの合計反応頻度が所定数に達した領域が「活動量中」と判定される。
ステップ27あるいはステップ28における活動量判定後、ステップ29において、ユニット計測数(q)から1を減算してステップ21に戻る。すなわち、連続する4ユニット計測で各赤外線センサの合計反応頻度が所定数を超え「活動量大」あるいは「活動量中」と判定された領域は、さらに次回の1ユニット計測後、その時点における4ユニット計測の合計反応頻度が所定数を超えた場合には、引き続き「活動量大」あるいは「活動量中」と判定される。
また、ステップ24において、4ユニット計測でセンサの合計反応頻度が所定数未満と判定されると、ステップ30において、その領域が「安静」かどうかが判定され、「安静」でなければ、ステップ31において「活動量小」と判定される。次のステップ32において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)がカウントされ、ステップ33において、「活動量小」と判定された後60ユニット計測(30分間の計測)が終了したかどうかを判定する。
ステップ33において、60ユニット計測が終了していないと判定されると、ステップ29に移行する一方、60ユニット計測が終了したと判定されると、60ユニット計測のすべてにおいて「活動量小」と判定された領域が、ステップ34において「安静」と判定された後、ステップ29に移行する。すなわち、ステップ29に移行することで、次の1ユニット計測を含む過去4回のユニット計測で各センサの合計反応頻度に応じて、各領域は「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」あるいは「安静」と新たに判定されることになる。
空気調和機の電源をONした後の活動量計測当初は、どの領域の活動量も不明であるが、このフローチャートの処理によれば、計測開始から4ユニット計測が終了して初めて、各領域において「活動量大」、「活動量中」あるいは「活動量小」の判定が行われ、60ユニット計測が終了して初めて、「安静」の判定が行われることになる。したがって、計測開始後しばらくは「安静」の領域は存在しないので、ステップ30においてNOと判定され、ステップ31において「活動量小」と判定される。その後、「活動量小」と継続して判定された領域は、60ユニット計測終了後、ステップ34において「安静」と判定され、その後4ユニット計測のセンサの合計反応頻度が所定数未満であれば、引き続き「安静」と判定される。
なお、ステップ25において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)をクリアするのは、「安静」との判定は、「活動量小」の判定が起点となるからである。
上述のフローチャートの処理は、活動量を次のように判定している。
(1)安静
センサ反応頻度が5回未満/2分が30分以上継続した領域
(2)活動量大
全領域のセンサ反応頻度の総和が40回以上/2分で、少なくとも一つの領域でセンサ反応頻度が2分間で5回以上継続した場合において、「安静」と判定された領域を除く全ての領域
(3)活動量中
全領域のセンサ反応頻度の総和が40回未満/2分の場合に、センサ反応頻度が2分間で5回以上継続した領域
(4)活動量小
安静、活動量大、活動量中と判定されなかった領域
なお、本開示における実施の形態の説明においては、「人体位置判別領域」を単に「領域」と称する場合がある。
[温冷感センサ]
図3に示すように、温冷感センサ7は、センサ保持部9における右側に配置されており、下方に突出したセンサ部分である検出端部22が略180°回動して、空調対象領域I居住空間)の熱画像情報を取得する構成である。温冷感センサ7は、所定角度だけ回動走査されて、空調対象領域の赤外線量そのものを検出している。
従って、前述のように、実施の形態1においては、温冷感センサ7が装飾シート15を介して赤外線量を検出する構成であるため、後述するように較正処理が行われている。
図5は、センサ保持部9の右側に配置された温冷感センサ7を示す図である。図5においては、装飾シート15の一部を破断して、装飾シート15の背面側に設けられた温冷感センサ7を示している。図5に示すように、温冷感センサ7において下方に導出している検出端部(センサ部分)22の前方側、および両側方側が開口したセンサ窓17を有する前面板19が設けられている。前面板19はセンサ保持部9の前面を覆う樹脂板である。前面板19は、センサ窓17を中心として、その両側に凹部状の溝18が形成されており、温冷感センサ7の検出端部22の回動により、センサ窓17の開口および前面板19の溝18を通して、空調対象領域の全域を前面板19を介することなく走査できる構成となる。
温冷感センサ7の検出端部22には、センサ素子群を有するセンサ基板が設けられている。また温冷感センサ7には、検出端部22の上部に回転駆動部20(図6参照)、例えばステッピングモータが設けられており、検出端部22が回転駆動部20により回動可能(走査方向)に構成されている。
図6は、センサ保持部9の一部を破断して温冷感センサ7を示す斜視図である。図6に示すように、温冷感センサ7は、センサ基板を有する検出端部22と、検出端部22を回動可能に保持するセンサ筐体21と、検出端部22を回動させる回転駆動部20とを有して構成されている。検出端部22とセンサ筐体21とは、弾性部材、例えばコイルバネを介して一方向に付勢するよう結合されており、検出端部22の走査動作におけるギヤの遊びを無くす構成となっている。その結果、検出端部22の走査動作は、バックラッシュが防止されており、遊びのない精度の高い走査動作が可能となる。
また、図6に示すように、センサ保持部9は、温冷感センサ7のセンサ筐体21を所定位置に保持するためのセンサ保持リブ23が設けられており、センサ保持リブ23は検出端部22の一方の側方位置(実施の形態1においては右側方位置)に設けられている。なお、センサ保持リブ23の一部は、検出端部22の右側の側方走査において遮蔽しないように抉られている。さらに、センサ保持部9においては、検出端部22の他方の側方位置(実施の形態1においては左側方位置)にセンサ側方リブ24が設けられている。即ち、センサ側方リブ24は、センサ保持リブ23に対して、温冷感センサ7の検出端部22を間にして対向するように配設されている。実施の形態1においては、センサ側方リブ24が較正用温度検出領域となる。
実施の形態1における温冷感センサ7の検出端部22の走査動作においては、空調対象領域の領域を超えて検出端部22が回動するように構成されている。従って、温冷感センサ7の検出端部22は、較正用温度検出領域であるセンサ側方リブ24から放射される赤外線量を装飾シート15を介することなく直接検出する構成となる。その結果、センサ側方リブ24の温度を検知して、センサ保持部9の温度を間接的に検知して、装飾シート15を介して検出された熱画像情報を較正することが可能となる。
なお、実施の形態1においては、較正用温度検出領域としてセンサ側方リブ24を用いた構成で説明するが、本開示はこの構成に限定されるものではなく、検出端部22の走査動作において装飾シート15を介することなく検知することができる領域を較正用温度検出領域としてよい。較正用温度検出領域としては、例えば、反対側にあるセンサ保持リブ23、走査動作で装飾シート15を介することなく検知できるセンサ保持部9、装飾シート15より赤外線透過率の低いシートを装飾シート15の内面側に張り付けて、そのシート部分、などを用いることが可能である。
[空気調和機における温冷感検知]
次に、実施の形態1の空気調和機における温冷感センサ7であるサーモパイルセンサにより取得された熱画像情報による温冷感検知について説明する。
先ず始めに、温冷感センサ7であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報からの人体の放熱量の算出方法について説明する。
人体からの放熱量(H)[W/m]は、一般に下記式(1)で表される。
Figure 0006213744
式(1)において、Rは人体の放射による放熱量(受熱量)[W/m]であり、Cは人体の対流による放熱量(受熱量)[W/m]であり、Kは人体の伝導による放熱量(受熱量)[W/m]である。また、Eskは皮膚からの水分蒸発による放熱量[W/m]であり、Eresは呼気の水分蒸発による放熱量[W/m]であり、Cresは呼気の対流による放熱量[W/m]である。
また、着衣および皮膚の表面温度をtclとし、周囲の壁面温度をtrとし、周囲気温をtaとすると、RおよびCは以下の式(2)および式(3)で表される。
Figure 0006213744
Figure 0006213744
ここで、hrは放射熱伝導率[W/m℃]であり、hcは対流熱伝導率[W/m℃]である。
なお、人体における床などとの接触面積が小さく、人体の伝導による放熱量Kが無視できるほど少なく、呼気からの対流による放熱量(Cres)が少ない場合には、式(1)を下記式(4)で表すことができる。
Figure 0006213744
上記のように式(4)で表すことができる状態において、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、皮膚からの水分蒸発による放熱量Esk、および呼気の水分蒸発による放熱量Eresが、略一定とみなせる状況であれば、式(4)は下記式(5)となる。
Figure 0006213744
すなわち、人の表面温度(tcl)と壁面温度(tr)との差(tcl−tr)と、人の表面温度(tcl)と周囲気温(ta)との差(tcl−ta)が分かれば、その人の放熱量(H)を推定することが可能となる。
周囲気温(ta)には、空気調和機に搭載されている温度センサの検出値や、その検出値を運転状況や検知した人の状態により補正した値を採用することができる。
さらに、特に周囲気温(ta)と周囲の壁面温度(tr)がほぼ等しい(ta≒tr)場合、すなわち空調が充分安定した場合に於いては、式(1)を下記式(6)で表すことができる。
Figure 0006213744
つまり、式(4)で表すことができる状態において、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、皮膚からの水分蒸発による放熱量Esk、および呼気の水分蒸発による放熱量Eresが、略一定とみなせる状況であれば、式(4)の変数は(tcl−tr)のみとなる。
このため、人が安静状態および人の活動量が小さい場合であり、かつ空調運転が充分安定した状態に於いては、人の表面温度(tcl)と壁面温度(tr)との差(tcl−tr)が分かれば、その人の放熱量(H)を推定することが可能となる。
人の放熱量(H)とその人の代謝量(産熱量M)が釣り合っていれば(H=M)、その人の熱収支のバランスがとれており、その人は快適と感じていると推定できる。一方、放熱量(H)が代謝量(産熱量M)より大きければ(H>M)、その大きさの程度に応じてその人は寒く感じており、逆に放熱量(H)が代謝量より小さければ(H<M)、その人は暑く感じていると推定できる。
したがって、人が安静状態および人の活動量が小さい場合においては、周囲気温(ta)と、温冷感センサ7であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報から人の表面温度(tcl)と、周囲の壁面温度(tr)とを抽出して、その人の放熱量(H)を検知することにより、その人の「温冷感」を非接触で検知することが可能となる。
さらには、空調運転が充分安定した状態においては、温冷感センサ7であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報から人の表面温度(tcl)と、周囲の壁面温度(tr)とを抽出して、その人の放熱量(H)を検知することにより、その人の「温冷感」を非接触で検知することが可能となる。
実施の形態1の空気調和機においては、上記のように、人の活動量が小さい場合若しくは人が安静状態の場合における人の放熱量を非接触で推定し、推定された放熱量に基づいてその人の「温冷感」を検知して、空調制御が行われている。ただし、温冷感センサ7から得られた熱画像情報だけでは、空調対象領域(居住空間)における人が存在する領域(人存在領域)の特定が困難であり、さらに人の活動量が小さい状態であるか、若しくは人が安静状態かを検知することが困難である。
そこで、実施の形態1の空気調和機における温冷感検知に基づく温冷感検知制御においては、温冷感センサ7であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報からの温度分布情報と共に、人感センサ7の複数の赤外線センサからの人体検知情報、および空調対象領域である居住空間の他のセンサからの温度情報を用いて、空調対象領域(居住空間)における人の存在位置、人の活動状態、そして人の「温冷感」を検知する構成を有している。
なお、実施の形態1の空気調和機においては、温冷感センサ7からの熱画像情報、人感センサ6からの人体検知情報、および温度センサ(室温センサや床温センサなど)からの温度情報(室温情報)を用いて温冷感検知制御を行うものとして説明するが、本開示の空気調和機としては、室温情報を温冷感センサ7の熱画像情報から取得して、温冷感センサ7からの熱画像情報と、人感センサ6からの人体検知情報とを用いて実施の形態1における温冷感検知制御と同様の空調制御を行うよう構成することも可能である。
また、本実施の形態においては、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、すなわち、代謝量(産熱量M)が略一定値と見なせる場合について説明しているが、活動量がある一定以上である場合は、活動量に応じた代謝量(産熱量M)を算出し、代謝量(産熱量M)を放熱量Hとを比較することで、「温冷感」を検知するようにすればよい。
[温冷感検知制御におけるフィルタリング処理]
以下、実施の形態1の空気調和機における温冷感検知制御について説明する。前述のように、実施の形態1の空気調和機の温冷感検知制御においては、温冷感センサ7が検知した熱画像情報、人感センサ6からの人体検知情報、および温度センサ(床温センサなど)を用いた空調対象領域の温度情報(室温情報)を用いて温冷感検知制御を行っている。
温冷感検知制御においては、温冷感センサ7が検知した熱画像情報に基づいて「温冷感」を検知する構成であるが、温冷感センサ7が検知した熱画像情報にはノイズ、および/または外乱による誤検知が含まれるおそれがある。このため、実施の形態1の空気調和機の温冷感検知制御においては、以下に説明するフィルタリング処理(除外判定処理)が前段階で行われている。
空気調和機において空調動作が開始されると、温冷感検知制御におけるフィルタリング処理が開始する。図7は、当該空気調和機において実行される温冷感検知制御におけるフィルタリング処理を示す概略フローチャートである。なお、実施の形態1においては、図7に示すステップの順番で行う例で説明するが、他の実施の形態として本開示の範囲から逸脱しない範囲で、任意の順番で行ってもよく、また全てのステップを実行しない例も含まれる。
図7のフローチャートに示すように、先ず始めに、ステップ101において「温冷感センサ開始判定」が行われる。空調動作の開始直後における空調対象領域である居住空間は、室温が高すぎる場合、若しくは低すぎる場合がある。このため、空調動作の開始直後に算出される「温冷感」を示す数値においては、極端に高い値、若しくは極端に低い値しか検出されない場合があり、人の「温冷感」を検知する必要のない状態である。ステップ101の「温冷感センサ開始判定」は、室温が所定温度に到達するまでは温冷感検知制御を行わないフィルタリング処理の1つである。実施の形態1においては、当該空気調和機におけるその時の設定温度を「温冷感センサ開始判定」における閾値としての所定温度としている。
図7のフローチャートにおけるステップ102〜106は、温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて行われる処理であり、空調対象領域における人情報毎のフィルタリング処理(除外判定処理)である。
ステップ102においては、「温冷感異常値除外判定」が行われる。前述のように、実施の形態1における人の温冷感スケールの「温冷感」は「±4」の範囲内の指数である。しかしながら、温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて、制御部25においては空調対象領域内の「温冷感」を単純に計算しているため、人の「温冷感」としてあり得ない数値を算出する場合がある。即ち、制御部25においては、「温冷感」として「+4」を超える値、または「−4」未満の値が算出された場合、その値は不正規データ(不要データ)であると判定して、その算出結果を除外する。
ステップ103においては、「人検出正確度除外判定」が行われる。温冷感センサ7からの二次元の熱画像情報から、制御部25においては、基準となる背景温度と人領域温度との差に基づいて人領域温度を抽出して、空調対象領域における人の「温冷感」を算出している。このため、温冷感センサ7の測定開始直後などの背景温度のサンプリング回数が少ない場合には、「温冷感」の検出精度が低下する。従って、実施の形態1における温冷感検知制御においては、サンプリング回数が少ない場合には、その情報を除外している。
ステップ104においては、「人感センサ検出範囲除外判定」が行われる。温冷感検知制御は、人感センサ6からの人体検知情報による人位置判定結果と連動している。従って、人感センサ6による人位置判定結果において人が存在しない領域において、熱画像情報から算出された「温冷感」を示す情報は、温冷感検知制御を行うための情報として採用することができない。このため、そのような「温冷感」を示す算出結果は除外される。
また、ステップ104においては、当該空気調和機の室内機1が取付られている位置(設置位置)において、人が存在しない領域に熱画像情報から「温冷感」が算出された場合にも、その算出結果は除外される。例えば、室内機1の一方の側面近傍に壁がある設置位置の場合においては、その側面壁の裏側に人の「温冷感」が算出された場合には、人が存在しない領域であるため、その算出結果は除外される。
なお、温冷感センサによる熱画像情報において、人の位置に関しては、検知対象の人体の垂直角度、水平角度および距離から算出される。
なお、図8は、実施の形態1において用いられる「水平角度」、「垂直角度」、、および「床距離」の用語の定義を示す図である。図8の(a)に示すように、「水平角度」においては、室内機1を上から見て、温冷感センサ7(センサ位置:検出端部22)の真正面が水平角度「0」°の位置であり、左が「−」領域、右が「+」領域である。また、図8の(b)に示すように、「垂直角度」においては、温冷感センサ7(センサ位置:検出端部22)の水平面が垂直角度「0」°の位置であり、上方が「−」領域、下方が「+」領域である。また、床面において、温冷感センサ7(センサ位置)からの垂線の位置から検知対象の人体の位置までが「床距離」である。
ステップ105においては、「温冷感センサ検出範囲除外判定」が行われる。温冷感センサ7は、サーモパイルセンサであるため、一定距離以上離れた位置に関しては正確な「温冷感」の検知ができない。そこで、「温冷感」を算出する人までの床距離(図8の(b)参照)が所定の距離を超える場合には、その「温冷感」は正確ではないとして、そのような場合の算出結果は除外される。また、人位置が近すぎる場合には、熱画像情報における人が占める面積が極端に大きくなり正確な「温冷感」の検知ができない。このため、人感センサ6の検出部の位置の水平面に対して、その検出部と人体の足位置(床面)とを結ぶ線分がなす角度が所定の角度を超える場合には、熱画像情報における人が占める面積が大きく、正確な「温冷感」の検知ができないとして、そのような場合の算出結果を除外する。
ステップ106においては、「人情報の領域分配」が行われる。これまでのステップ101〜105のフィルタリング処理(除外判定処理)において人情報(人の「温冷感」の情報)を人感センサ6の人体位置判別領域の7つの領域に分配して、その人体位置判別領域毎の「温冷感」に変換する。なお、同じ領域内に複数の人情報が存在する場合には、その領域の「温冷感」の平均値をその領域の「温冷感(平均温冷感)」とする。
図9は、3つの赤外線センサを用いて7つの人体位置判別領域を区分けした各領域(N,LM,LF,CM,CF,RM,RF)を上から見た図である。また、実施の形態1においては、人感センサ6として3つの赤外線センサを用いて、各赤外線センサがそれぞれのブロック(ブロックL,ブロックC,ブロックR)の赤外線量の変化を測定するように構成されている。ブロックLは、領域Nの左側部と、領域LMと、領域LFとに対応している。ブロックCは、領域Nの中央部と、領域CMと、領域CFとに対応している。ブロックRは、領域Nの右側部と、領域RMと、領域RFとに対応している。
ステップ106の「人情報の領域分配」においては、温冷感センサ7により検出された「温冷感」を各人体位置判別領域に分配して、その領域の「温冷感」に変換する。実施の形態1においては、暖房時と、暖房以外の時とを区分けして検知された「温冷感」が配分される。なお、実施の形態1においては、暖房の時、または暖房以外の時(冷房、除湿などの時)に分けて、検知された「温冷感」が各人体位置判別領域に配分される。
図7に示した、ステップ102〜106は、温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて制御部25において処理されるフィルタリング処理(除外判定処理)であり、ステップ107〜109は、人感センサ6からの人体検知情報に基づいて制御部25において処理されるフィルタリング処理(除外判定処理)である。上記のフィルタリング処理は温冷感センサ7の測定毎に更新される。なお、図7のステップ102〜109は、フィルタリング処理の例示であり、本開示においては各ステップの順番を規定するものではなく、また全てのステップの実行を規定するものでもなく、任意のステップを選択的に実行してもよい。
図7に示すステップ107〜109においては、人体位置判別領域毎に振り分けられた「温冷感」に関する情報において、人感センサ6からの人体検知情報に照らし合わせて、更なる不要データを除外し、残った信頼の高いデータに基づいて精度の高い「温冷感」を検知している。
ステップ107においては、「人位置除外判定」が行われる。温冷感センサ7は、サーモパイルセンサであるため、動きのない熱源(例えば、テレビ、フロアスタンドなど)を人として認識し、誤検知する可能性がある。そこで、ステップ107において、人の動きを検知する人感センサ6からの人体検知情報と照らし合わせて、検知された「温冷感」が人体検知情報において人が存在しない領域であった場合には、そのときの温冷感センサ7の測定結果を除外する。
次に、ステップ108においては、「ブロック活動量除外判定」が行われる。実施の形態1における温冷感検知制御においては、人の安静状態、若しくは人の活動量が「小」の状態を基準として温冷感スケールの指数が設定されている。このため、空調対象領域における人間が一定以上の活動(活動量>小)を行っている場合、温冷感センサ7からの熱画像情報による人の「温冷感」の検知に意味がなく、またそのような場合に熱画像情報から人の活動量を検知することは困難である。そこで、実施の形態1においては、人感センサ6からの人体検知情報により人検出反応数に基づいて人の活動量(「大」、「中」、「小」または「安静状態」)を推定している。具体的には、人感センサ6における各赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じた信号に基づいて人の在否を判定し、そのときの所定時間(例えば、2分間)内で各人体位置判別領域において人の存在が検知された人検出反応数に基づいて人の活動量(「大」、「中」、「小」および「安静状態」)を推定している。
ステップ108においては、人感センサ6からの人体検知情報により人の活動量が「中」以上であると判定された場合には、そのときの「温冷感」の検知結果を除外する。
ステップ109においては、ステップ102〜108において実行されたフィルタリング処理(除外判定処理)により確定された「温冷感」が履歴として決定される。
図10は、実施の形態1の空気調和機において実行される温冷感検知制御のフィルタリング処理を示す具体的なフローチャートであり、前述の図7に示したフローチャート(ステップ101〜109)に対応するものである。
図10において、ステップ201は、図7のステップ101の「温冷感センサ開始判定」に対応しており、室温が所定温度、例えばその時の設定温度に到達したか否かを判断している。室温が所定温度に到達している場合には、人情報毎のフィルタリング処理が開始されてる(ステップ202)。
ステップ203は、図7のステップ102の「温冷感異常値除外判定」に対応し、検知した温冷感スケールの「温冷感」が「−4」以上、「+4」以下の正常値の範囲内であるか否かが判断される。
ステップ204は、図7のステップ103の「人検出正確度除外判定」に対応し、背景温度のサンプリング回数が少ない場合を除外するために、サンプリングが所定の回数以上であるか否かが判断される。
ステップ205は、図7のステップ104の「人感センサ検出範囲除外判定」に対応する。ステップ205においては、人感センサ6による人位置判定結果において、人が存在しない領域に「温冷感」が検知された場合には、その情報は除外される。
ステップ206は、図7のステップ105の「温冷感センサ検出範囲除外判定」に対応する。「温冷感」を算出する人までの床距離が所定の距離以内であり、且つ人感センサ6の検出部の位置の水平面に対して、その検出部と人体の足位置(床面)とを結ぶ線分がなす角度が所定の角度以内以内であるかが判定される。
ステップ207は、図7のステップ106の「人情報の領域分配」に対応し、検知された「温冷感」の情報を人感センサ6の7つの人体位置判別領域に分配して、その人体位置判別領域毎の「温冷感」に変換する。
なお、ステップ203〜206において該当しなかった人情報(人の「温冷感」の情報)は破棄される。ステップ209においては、検知された人情報に関するフィルタリング処理が完了したことが確認され、次の人体位置判別領域毎のフィルタリング処理に移行する(ステップ210)。
ステップ211は、図7のステップ107の「人位置除外判定」に対応する。ステップ211においては、温冷感センサ7による熱画像情報において検知された「温冷感」の該当する領域に人体検知情報において人が存在するか否かが判定される。人体検知情報において人が存在しない領域に「温冷感」が検知された場合には、そのときの検知情報は破棄される。
ステップ212は、図7のステップ108の「ブロック活動量除外判定」に対応する。ステップ212においては、人感センサ6からの人体検知情報に基づいて人の活動量が「中」未満であるか否かが判定される。即ち、人の活動量が「小」以下(「安静状態」を含む)であるか否かが判定される。ステップ212において、人の活動量が、「小」若しくは「安静状態」であると判定された場合には、ステップ213において、各領域の人の「温冷感」を決定し、全領域のフィルタリング処理が完了する(ステップ215)。
上記のステップ201〜215の温冷感検知制御における全領域のフィルタリング処理は、温冷感センサ7による熱画像情報が取得される毎に行われており、全領域の「温冷感」が当該空気調和機において常に精度高く把握され確定される。
[温冷感検知制御における空調処理]
上記のように全領域(全人体位置判別領域)の「温冷感」が確定される度に以下に説明する温冷感検知制御における空調処理が実行される。
図11は、温冷感検知制御における空調処理を示すフローチャートである。図11のステップ301においては、検知された「温冷感」が複数の領域に分かれているか否か、即ち複数の領域に人が存在しているか否かが判断される。検知された「温冷感」が複数の領域に存在する場合には、ステップ302において、人の存在が検知された複数の領域における「温冷感」の差が、所定値以上か否かが判断される。複数の領域における「温冷感」の差が、所定値以上であれば、その「温冷感」の差に応じて、該当する領域に対して上下風向ルーバー、左右風向ルーバー、およびファンによる吹き分け制御(風向・風量制御)が行われる(ステップ303)。即ち、検知された該当領域における人達の「温冷感」が、同じとなるように、および/またはそのときの設定温度により決まる「標準温冷感」となるように、制御部25は風向および/または風量が制御される。例えば、「温冷感」が異なる領域に対して、「温冷感」の差が「±0.5」以内となるように、吹き分け比率を変更する。
なお、実施の形態1において、「標準温冷感」とは、室温が設定温度の場合における通常の人が感じる「温冷感」をいう。例えば、設定温度が20℃のときに通常の人が感じる「標準温冷感」は略「−1」であり、設定温度が25℃のときに通常の人が感じる「標準温冷感」は略「+1」である。また、この「標準温冷感」は季節に応じて変更してもよい。
一方、ステップ301において、検知された「温冷感」が複数の領域に分かれておらず、1つの領域に複数の人が存在している場合には、複数の人が存在する領域の「平均温冷感」が算出される(ステップ304)。この「平均温冷感」に関しては、前述のステップ302においても各領域に複数の「温冷感」が存在する場合にも同様に適用され、各領域において「平均温冷感」が算出される。
ステップ305においては、算出された「平均温冷感」と、そのときの設定温度で決まる「標準温冷感」との差が所定値以上、例えば「±1」を超えているか否かが判定される。該当する領域の「平均温冷感」と「標準温冷感」との差が所定値以上の場合には、「平均温冷感」が「標準温冷感」との差が「±0.5」以内の目標温冷感ゾーン内となるように、空調対象領域に対する風向および/または風量の変更、および/または目標温度をシフトして空調制御を行う(ステップ306)。
上記のステップ301〜306の空調処理が所定時間毎に行われて、人の活動量が「小」若しくは「安静状態」における温冷感検知制御の空調処理が実行される。従って、人の存在がなくなったり、人の活動量が「大」又は「中」に変わった場合などにおいては、上記の温冷感検知制御は終了する。
なお、実施の形態1における温冷感センサ7から制御部25に送信される熱画像情報としては、検出した人の数、位置(垂直角度、水平角度および距離)、「温冷感」などのデータが含まれている(図8の(a)、(b)参照)。
本開示の実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ6からの人体検知情報および温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて、空調対象領域における人存在領域を特定し、人存在領域の人の放射量に基づいてその人の「温冷感」を推定検知して、その人が設定した温度において通常の人が感じる「標準温冷感」となるように空調制御を行う例で説明した。しかしながら、本開示の空気調和機としては、人感センサ6からの人体検知情報および温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて、空調対象領域における人存在領域を特定し、人存在領域の人の放射量に基づいてその人の「温冷感」を推定検知して、その人が好適と感じる「温冷感」、即ち温冷感スケール(9段階温冷感尺度とも呼ばれる、PMVスケールに「−4」(非常に寒い)、「+4」(非常に暑い)を付加したスケール)における「0」となるように、空調制御を行うことも可能である。
また、実施の形態1の空気調和機においては、特定された人存在領域における人の「温冷感」が当該空気調和機に設定された設定温度において通常感じる「標準温冷感」となるように空調対象領域に対する風向および/または風量を空調制御する例で説明したが、風向および/または風量の空調制御に加えて目標温度を変更する空調制御を行う構成も可能である。このように風向および/または風量を変更する空調制御に加えて、目標温度を変更する空調制御を行うことにより、人存在領域の人の「温冷感」に対するさらに精度の高い空調制御を行うことが可能となる。
上記のように、実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ6からの人体検知情報、温冷感センサ7からの熱画像情報、および空調対象領域の状態を示す各種情報に基づいて、精度の高い空調制御を行っている。特に、人感センサ6からの人体検知情報、および温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて、人の活動量が「小」若しくは安静状態において、その人が感じる「温冷感」を推定して、その人にとって好適な空調制御、若しくはそのときの設定温度において通常の人が感じる「温冷感」となる空調制御を行うことが可能となる。
以上のように、実施の形態1の空気調和機によれば、人感センサからの赤外線量の変化を示す信号に基づいて空調対象領域における人の存在する人存在領域を特定し、温冷感センサからの熱画像情報から空調対象領域における人の放射量に基づいて、その人が好適と感じる空調制御、および/またはその人が設定した温度において通常の人が感じる「標準温冷感」となるように精度の高い人に優しい空調制御を行うことができる。
《実施の形態2》
以下、本開示における実施の形態2の空気調和機の構成について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態2の説明において、前述の実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には同じ参照符号を付し、その説明は実施の形態1の説明と重複するため省略する。
実施の形態2の空気調和機は、前述の実施の形態1の空気調和機における温冷感検知制御において、特別な状況を検知したとき、特別な空調制御を行うよう構成した点が実施の形態1と異なっている。
実施の形態1において説明したように、人の放熱量(H)とその人の産熱量M(代謝量)が釣り合っているとき(H=M)、その人の熱収支のバランスがとれており、その人は快適と感じていると推定できる。一方、放熱量(H)が産熱量(M)より大きければ(H>M)、その大きさの程度に応じてその人は寒く感じており、逆に放熱量(H)が産熱量(M)より小さければ(H<M)、その人は暑く感じていると推定できる。
しかしながら、上記のような人の放熱量(H)と産熱量(M)との関係において、例外的な事例が存在する。実施の形態1における温冷感検知制御においては、空調対象領域(居住空間)における室温、風量などのそのときの空調対象領域の状況に対して、その人が感じている「温冷感」を、その人の放熱量から推定するものである。このため、空調対象領域内にいる人が、そのときの空調対象領域の状況とは関係なく、その人独自の状態により放熱量が決定している場合には、人の放熱量がそのときの空調対象領域の状況には対応しておらず、検知された「温冷感]がその人が実際に感じている温冷感から乖離した状態となっている。
例えば、夏期の風呂上がりで上半身裸の状態においては、その人は暑く感じており、放熱量(H)は「大」となる。このため、このとき検知された「温冷感」は「小」となる。従って、通常の温冷感検知制御においては、「温冷感」が「小」であれば、例えば、「−3:寒い」と判定されて、空調対象領域(居住空間)を温める方向の空調制御が行われる。同様に、食事中においては、若しくは食事直後においては、人は暑く感じて、放熱量(H)が「大」となり、「温冷感」としては「小」が検知される。この結果、通常の温冷感検知制御においては、その人は、例えば「−2:涼しい」と感じていると判定されて、空調対象領域(居住空間)の人存在領域に対して風あてを停止する風あて風向および/または風量を変更する空調制御、若しくは人存在領域に対して温める方向の空調制御が行われる。
また、冬期の帰宅時においては、その人は非常に寒く感じているが、全身が衣服で覆われており、その衣服は低温であるため、放熱量(H)が「小」であり、「温冷感」は「大」が検知される。従って、通常の温冷感検知制御においては、「温冷感」が「大」であれば、その人は「暑い」と感じていると判定されて、空調対象領域(居住空間)を冷やす方向の空調制御が行われる。
上記のように、着衣および皮膚の表面温度(tcl)がそのときの環境(室温、風量など)に関係なく特別(異常)な値を示す場合には、「温冷感」を誤検知するときがある。実施の形態2の空気調和機においては、人の放熱量がそのときの空調対象領域の状況に関係なく特別(異常)な値を示す場合には、以下に説明する温冷感検知制御における特別条件空調処理を行うよう構成されている。
図12は、一般的な「温冷感」と「室温」との関係を示すグラフである。図12において、縦軸が「温冷感」、横軸が「室温」である。一般的に、「温冷感」の値は室温に対して右肩上がりの比例となる。図12のグラフにおいて、実線は通常の人が設定温度において感じる「温冷感」を示す「標準温冷感」Sである。一般的に、「温冷感」は、個人差を考慮しても、「標準温冷感」Sを中心値として「±1」以内の範囲で示す温冷感検知ゾーンZの中に入る。図12において、温冷感検知ゾーンZは斜線で示す領域である。
しかしながら、前述のように、人の放熱量がそのときの空調対象領域の状況に関係なくその人の状態に応じて特別(異常)な値を示す場合が存在する。そのような場合においては、そのとき検知した「温冷感」の値は、温冷感検知ゾーンZの中にはなく、温冷感検知ゾーンZから離れた範囲外の領域となる。例えば、夏期の冷房運転時における風呂上がりの状態においては、温冷感検知ゾーンZよりさらに下方に外れた低い「温冷感」が検知される。このように、冷房運転時において検知した「温冷感」が、温冷感検知ゾーンZから下方に外れている場合、通常の温冷感検知制御ではその人が「寒い」と感じていると判定して、風量を下げ、室温を上げるなどの空調制御が行われる。しかしながら、実施の形態2の空気調和機においては、その時検知した「温冷感」は逆検知であると判定して、温冷感検知制御の特別条件空調制御が行われる。
一方、暖房運転時において、例えば、冬期の帰宅時においては、温冷感検知ゾーンZよりさらに上方に外れた高い「温冷感」が検知される。このように、暖房運転時において検知した「温冷感」が、温冷感検知ゾーンZから大きく上方に外れている場合には、通常の温冷感検知制御ではその人が「暑い」と感じていると判定して、風量を上げ、室温を下げるなどの空調制御が行われる。しかしながら、実施の形態2の空気調和機においては、その時検知した「温冷感」は、逆検知であると判定して、温冷感検知制御の特別条件空調制御が行われる。
図13は、実施の形態2の空気調和機における特別条件の温冷感検知制御を示すフローチャートである。実施の形態2の空気調和機においては、前述の実施の形態1の空気調和機において説明した「温冷感検知処理(図7および図10参照)」が実行された後、後述の「特別条件空調処理」が実行される。
図13のフローチャートに示すように、前述の「温冷感検知処理」が終了した後、「特別条件空調処理」が実行される。「特別条件空調処理」においては、「温冷感検知処理」で検知され決定された「温冷感」において、前述のように通常とは異なる特別(異常)な「温冷感」が検知されたか否かが判断される。以後の説明において、「温冷感検知処理」で検知され決定された「温冷感」を「検知温冷感」と称する。
「検知温冷感」において特別(異常)な「温冷感」が存在し、且つそのような特別(異常)な「温冷感」が連続して検知された場合には、空調対象領域の状況とは関係なく、その人独自の状態により放熱量が決定されているとして、通常の空調制御とは異なる、特別条件の風向および/または風量を制御する特別な空調制御が行われる。
以下、実施の形態2の空気調和機において実行される「温冷感検知処理」が終了した後の「特別条件空調処理」の具体的な動作について図13のフローチャートを用いて説明する。
「特別条件空調処理」においては、先ずステップ401において通常の人が設定温度で感じる「標準温冷感」と「検知温冷感」が比較される。「標準温冷感」と「検知温冷感」との差が予め決められた閾値以上であればステップ402へ移行する。即ち、「検知温冷感」が温冷感検知ゾーンZの範囲外の値を示した場合にステップ402へ移行する。但し、ステップ401においては、冷房運転時(冷房除湿運転時を含む)、暖房運転時においては異なる判定を行う。具体的には、例えば、夏期の冷房運転時においては、室内機1に取り込まれる空気の吸込温度が25℃以上であり、「検知温冷感」が「標準温冷感」に対して大きく離れており、例えば、「−1」を超えて離れており、温冷感検知ゾーンZから下方((−)の方向;図12参照)に外れている場合である。即ち、例えば、冷房運転時において、前述の風呂上がりのような状態であり、「検知温冷感」が逆検知していると判断して、「特別条件空調処理」を継続する。
一方、冬期の暖房運転時においては、室内機1に取り込まれる空気の吸込温度が25℃未満であり、「検知温冷感」が「標準温冷感」に対して大きく離れており、例えば、+1.0を超えて離れており、温冷感検知ゾーンZから上方((+)の方向;図11参照)に外れている場合である。即ち、例えば、暖房運転時において、前述の帰宅時のような状態であり、「検知温冷感」が逆検知していると判断して「特別条件空調処理」を継続する。
ステップ402においては、ステップ401で検出された「標準温冷感」と「検知温冷感」との差が閾値以上である状態を連続して複数回(N)検知したか否かが判断される。例えば、ステップ402においては、上記のような一時的に突出した同様の「検知温冷感」を、複数回(N)、例えば2回連続して検知した場合には、次のステップ403に移行する。
ステップ403においては、前回の「特別条件空調処理」により特別な空調制御(特別条件空調制御)を行ってから所定時間(T1)が経過しているか否かが判定される。前回の特別条件空調制御の実施から、例えば5分間(T1)経過しているか否かが判断される。ステップ403において、前回の特別条件空調制御の実施から所定時間(T1)経過していなければ前回の特別条件空調制御が継続される。
一方、ステップ403において、前回の特別条件空調制御の実施から所定時間(T1)経過していればステップ404へ移行して、人感センサ6からの人体検知情報に基づいて連続して検知された複数の「検知温冷感」の人存在領域が同様の領域の検知範囲内であるか否かが確認される。
また、ステップ405においては、温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて、連続して検知された複数の「検知温冷感」が温冷感スケールにおいて同様の領域の検知範囲内か否かが確認される。
ステップ404において人感センサ6からの人体検知情報により人存在領域が特定されているため、ステップ406においては、検知された人の人存在領域を狙って所定時間(T2)だけ、例えば、5分間だけ特別条件空調処理における空調制御が行われる。ステップ406の特別条件空調処理における具体的な空調制御としては、冷房運転時においては、例えば、風呂上がりの状態の暑いと感じている人の人存在領域を狙って5分だけ風を送るように風向および/または風量を制御する。一方、暖房運転時においては、例えば、冬期の帰宅時における、寒いと感じている人の人存在領域を狙って5分だけ風を送らないように風向および/または風量を制御する。
特別条件空調処理における空調対象領域としては、人感センサ6により検知された人存在領域の全てではなく、温冷感検知ゾーンZから外れた「検知温冷感」を検知した人の人存在領域のみであり、冷房運転時に「検知温冷感」が「標準温冷感」より「−1」を超えて離れた値を示す人の人存在領域のみである。この特定の人存在領域に対してのみ特別条件空調処理の特別条件空調制御が行われる。一方、暖房運転時においては、「検知温冷感」が「標準温冷感」より「+1」を超えて離れた値を示す人の人存在領域に対してのみ特別条件空調処理の特別条件空調制御、例えば、検知された人に対して風が当たらないような風あて風向および/または風量を制御する特別条件空調制御が行われる。
上記のように、実施の形態2の空気調和機は、制御部25が、冷房運転時または冷房除湿運転時において、「検知温冷感」が連続して所定回数、例えば連続して2回、温冷感検知ゾーンZから温冷感スケールの「−」の方向に外れて検知された場合、当該「検知温冷感」を検知した人存在領域に対して、温冷感スケールの「+」の方向に外れている場合の風あて風向および/または風量を変更した特別条件空調制御が行われる。一方、制御部25は、暖房運転時において、「検知温冷感」が連続して所定回数、例えば連続して2回、温冷感検知ゾーンZから温冷感スケールの「+」の方向に外れて検知された場合、当該「検知温冷感」を検知した人存在領域に対して、温冷感スケールの「−」の方向に外れている場合の風あて風向および/または風量を変更した空調制御が行われる。
実施の形態2の空気調和機における、上記のように特別条件空調処理の成立条件を満たしたときには、空調制御の制御内容として、上記のように「検知温冷感」が「標準温冷感」より所定の値(閾値、例えば、「±1」)の差を超える人の人存在領域に対してのみ、通常の空調制御における風あて制御とは異なる、特別条件の風あて風向および/または風量を制御する特別条件空調制御が行われる。なお、特別条件空調処理における成立条件が満たされているときには、空調対象領域の全ての領域に対する温冷感履歴は更新しない。
特別条件空調処理の空調制御が終了するのは、上記のような(1)特別条件空調処理における成立条件が満たされて、その空調動作が5分間経過したとき、(2)特別条件空調処理における成立条件の人存在領域に人がいなくなったとき、(3)温冷感検知処理において「検知温冷感」が温冷感検知ゾーンZの範囲内となったとき、若しくは(4)空気調和機の空調動作が停止(オフ状態)となったとき、である。
なお、図13の「特別条件空調処理」が終了した後、前述の実施の形態1において説明した通常の「温冷感検知制御の空調処理」(図11参照)に移行して実行される。
上記のように、実施の形態2の空気調和機においては、少なくとも人感センサ6からの人体検知情報、および温冷感センサ7からの熱画像情報に基づいて、そのときの人の状況に応じた最適な空調動作を行うことができる。
以上のように、本開示の空気調和機によれば、人感センサからの赤外線量の変化を示す信号に基づいて空調対象領域における人の存在領域を特定し、温冷感センサからの熱画像情報から空調対象領域における人の放射量に基づいて、その人が最適と感じる空調制御となるように精度の高い人に優しい空調制御を行うことができる。
本開示をある程度の詳細さをもって各実施の形態において説明したが、これらの実施の形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、実施の形態における要素の組合せや順序の変化は請求された本開示の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
本開示は、空調対象領域における人が感じる「温冷感」を検知して、検知された「温冷感」に基づいて、その人が好適と感じる最適な空調制御を行うことができる空気調和機を提供できるため、汎用性の高い空調機器となっている。
1 室内機
2 吸込口
3 吹出口
4 上下風向ルーバー
5 左右風向ルーバー
6 人感センサ
7 温冷感センサ
8 前面パネル
9 センサ保持部
10 フィルタ
11 熱交換器
12 ファン
13 天面パネル
14 電装ユニット
15 装飾シート
16 発光表示部
17 センサ窓
18 凹部状の溝
19 前面板
20 回転駆動部
21 センサ筐体
22 検出端部
23 センサ保持リブ
24 センサ側方リブ(補正用温度検出領域)
25 制御部

Claims (5)

  1. 空調対象領域において放射される赤外線量の変化を検知して、前記空調対象領域内の人体検知を示す人体検知情報を出力する人感センサ、
    前記空調対象領域において放射される赤外線量から二次元の温度分布を示す熱画像情報を出力する温冷感センサ、および
    前記人感センサからの人体検知情報と前記温冷感センサからの熱画像情報から、前記空調対象領域における空調制御を行う制御部、を備え、
    前記制御部は、前記人体検知情報に基づいて、前記空調対象領域における人存在領域を特定し、前記熱画像情報に基づいて、前記特定された人存在領域の人の「温冷感」を検知し、検知された「温冷感」である「検知温冷感」に基づいて前記空調対象領域に対する空調制御を行うように構成され、
    前記「検知温冷感」が、当該空調制御における設定温度において通常の人が感じる「標準温冷感」を中心値として所定幅を有する温冷感検知ゾーンの範囲外に、所定回数連続して検知された場合、前記「検知温冷感」が示す温冷感スケールの値とは異なる値を「温冷感」として、前記「検知温冷感」を検知した人存在領域に対してのみ風あて風向および/または風量を変更した空調制御を行うよう構成された空気調和機。
  2. 前記制御部は、前記人体検知情報に基づいて、特定された人存在領域の人の活動量を検出し、検出された人の活動量が「小」以下の場合に、空調対象領域に対する空調制御を行うように構成された請求項1に記載の空気調和機。
  3. 前記制御部は、冷房運転時または冷房除湿運転時において、前記「検知温冷感」が連続して所定回数、前記温冷感検知ゾーンから温冷感スケールの「−」の方向に外れて検知された場合、前記「検知温冷感」を検知した人存在領域に対して温冷感スケールの「+」の方向に外れている場合の風あて風向および/または風量を変更した空調制御を行うよう構成された請求項1または2に記載の空気調和機。
  4. 前記制御部は、暖房運転時において、前記「検知温冷感」が連続して所定回数、前記温冷感検知ゾーンから温冷感スケールの「+」の方向に外れて検知された場合、前記「検知温冷感」を検知した人存在領域に対して温冷感スケールの「−」の方向に外れている場合の風あて風向および/または風量を変更した空調制御を行うよう構成された請求項1または2に記載の空気調和機。
  5. 前記温冷感検知ゾーンは、前記「標準温冷感」を中心値から温冷感スケールの「±1」の領域であり、前記「検知温冷感」が前記温冷感検知ゾーンの領域を2回連続して超えたとき、前記「検知温冷感」が示す温冷感スケールの値を逆の領域の値の「温冷感」であるとして風あて風向および/または風量を変更した空調制御を所定時間継続させるよう構成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の空気調和機。
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