以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態におけるインピーダンス測定装置の測定対象である積層電池の一例を示す図である。図1Aには、積層電池の一例として複数の電池セルが積層された燃料電池スタック1の外観斜視図が示されている。
図1Aに示されるように、燃料電池スタック1は、複数の発電セル10と、集電プレート20と、絶縁プレート30と、エンドプレート40と、4本のテンションロッド50とを備える。
発電セル10は、いわゆる電池セルのことであり、燃料電池スタック1に積層された複数の燃料電池のうちのひとつを指す。発電セル10は、例えば1V(ボルト)程度の起電圧を生じる。発電セル10の詳細な構成については図1Bを参照して後述する。
集電プレート20は、積層された発電セル10の外側にそれぞれ配置される。集電プレート20は、ガス不透過性の導電性部材、例えば緻密質カーボンで形成される。燃料電池スタック1の正(プラス)の電極(正極)に相当する集電プレート20には正極端子211が設けられ、燃料電池スタック1の負(マイナス)の電極(負極)に相当する集電プレート20には負極端子212が設けられている。なお、負極端子212から、発電セル10で生じた電子e-が外部に取り出される。
また、正極端子211と負極端子212との中途点にある発電セル10には中途点端子213が設けられる。本実施形態では、中途点端子213は、正極端子211から負極端子212へ積層された複数枚の発電セル10のうち中間(中点)に位置する発電セル10に設けられている。なお、中途点端子213は、正極端子211と負極端子212との中点から外れた位置であってもよい。
絶縁プレート30は、集電プレート20の外側にそれぞれ配置される。絶縁プレート30は、絶縁性の部材、例えばゴムなどで形成される。
エンドプレート40は、絶縁プレート30の外側にそれぞれ配置される。エンドプレート40は、剛性のある金属材料、例えば鋼などで形成される。
一方のエンドプレート40(図1Aでは、左手前のエンドプレート40)には、アノード供給口41aと、アノード排出口41bと、カソード供給口42aと、カソード排出口42bと、冷却水供給口43aと、冷却水排出口43bとが設けられている。本実施形態では、アノード排出口41b、冷却水排出口43b及びカソード供給口42aは図中右側に設けられている。またカソード排出口42b、冷却水供給口43a及びアノード供給口41aは図中左側に設けられている。
テンションロッド50は、エンドプレート40の四隅付近にそれぞれ配置される。燃料電池スタック1は内部に貫通した孔(不図示)が形成されている。この貫通孔にテンションロッド50が挿通される。テンションロッド50は、剛性のある金属材料、例えば鋼などで形成される。テンションロッド50は、発電セル10同士の電気短絡を防止するため、表面には絶縁処理されている。このテンションロッド50にナット(奥にあるため図示されない)が螺合する。テンションロッド50とナットとが燃料電池スタック1を積層方向に締め付ける。
アノード供給口41aにアノードガスとしての水素を供給する方法としては、例えば水素ガスを水素貯蔵装置から直接供給する方法、又は水素を含有する燃料を改質して供給する方法などがある。なお、水素を含有する燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリンなどがある。また、カソード供給口42aに供給するカソードガスとしては、一般的に空気が利用される。
図1Bは、燃料電池スタック1に積層された発電セル10の構造を示す分解図である。
図1Bに示されるように、発電セル10は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)11の両面に、アノードセパレーター(アノードバイポーラープレート)12a及びカソードセパレーター(カソードバイポーラープレート)12bが配置される構造である。
MEA11は、イオン交換膜からなる電解質膜111の両面に電極触媒層112が形成される。この電極触媒層112の上にガス拡散層(Gas Diffusion Layer;GDL)113が形成される。
電極触媒層112は、例えば白金が担持されたカーボンブラック粒子で形成される。
GDL113は、十分なガス拡散性及び導電性を有する部材、例えばカーボン繊維で形成される。
アノード供給口41aから供給されたアノードガスは、このGDL113aを流れてアノード電極触媒層112(112a)と反応し、アノード排出口41bから排出される。
カソード供給口42aから供給されたカソードガスは、このGDL113bを流れてカソード電極触媒層112(112b)と反応し、カソード排出口42bから排出される。
アノードセパレーター12aは、GDL113a及びシール14aを介してMEA11の片面(図1Bの裏面)に重ねられる。カソードセパレーター12bは、GDL113b及びシール14bを介してMEA11の片面(図1Bの表面)に重ねられる。アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bは、例えばステンレスなどの金属製のセパレーター基体がプレス成型されて、一方の面に反応ガス流路が形成され、その反対面に反応ガス流路と交互に並ぶように冷却水流路が形成される。図1Bに示すようにアノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bが重ねられて、冷却水流路が形成される。
MEA11、アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bには、それぞれ孔41a,41b,42a,42b,43a,43bが形成されており、これらが重ねられて、アノード供給口41a、アノード排出口41b、カソード供給口42a、カソード排出口42b、冷却水供給口43a及び冷却水排出口43bが形成される。
図2は、本発明の実施形態におけるインピーダンス測定装置5の基本的な構成を示す図である。
燃料電池スタック1は、負荷3と接続されて負荷3に電力を供給する積層電池であり、例えば車両に搭載される。燃料電池スタック1は、内部にインピーダンスを有する。
負荷3は、例えば、電動モータや、燃料電池スタック1の発電のために用いられる補機などの電気負荷である。燃料電池スタック1と接続される補機は、例えば、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するためのコンプレッサや、燃料電池スタック1を暖機するときに燃料電池スタック1を流れる冷却水を加熱するためのヒータなどである。
コントロールユニット(C/U)6は、燃料電池スタック1の発電状態や、湿潤状態、内部の圧力状態、温度状態などの燃料電池スタック1の運転状態を、負荷3の作動状態に応じて制御する。
例えばコントロールユニット6は、負荷3から要求される発電電力に応じて、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスやアノードガスの流量を制御する。
また、燃料電池スタック1では電解質膜111が乾いた状態になると発電性能が低下する。この対策としてコントロールユニット6は、電解質膜111の湿潤度と相関のある燃料電池スタック1の内部抵抗値を用いて、電解質膜111が乾いた状態や過剰に湿った状態にならないようにガス流量を調整する。
インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の発電性能を維持するために、燃料電池スタック1が有する内部インピーダンスを測定する。本実施形態では、インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の内部抵抗を測定し、その測定値をコントロールユニット6に送信する。コントロールユニット6は、インピーダンス測定装置5から燃料電池スタック1の内部抵抗の測定値を受信すると、その測定値に基づいて燃料電池スタック1の湿潤状態を制御する。
インピーダンス測定装置5は、正極側直流遮断部511と、負極側直流遮断部512と、中途点直流遮断部513と、正極側検出部521と、負極側検出部522と、正極側電源部531と、負極側電源部532と、交流調整部540と、演算部550とを含む。
正極側直流遮断部511、負極側直流遮断部512及び中途点直流遮断部513は、それぞれ直流信号を遮断するが交流信号を通す直流遮断部である。正極側直流遮断部511及び負極側直流遮断部512は、正極端子211及び負極端子212から正極側検出部521及び負極側検出部522に出力される交流信号を通過させる直流遮断部である。
直流遮断部511〜513の各々は、例えばコンデンサやトランスにより実現される。なお、波線により示された中途点直流遮断部513については省略することが可能である。
正極側検出部521及び負極側検出部522は、正極端子211と中途点端子213との間の交流電位差と、負極端子212と中途点端子213との間の交流電位差とのうち少なくとも一方の交流電位差を検出する検出手段である。
正極側検出部521は、正極端子211に生じる電位の交流成分である交流電位Vaと、中途点端子213に生じる電位の交流成分である交流電位Vcとの間の電位差(以下、「交流電位差V1」という。)を検出する。
正極側検出部521は、交流電位差V1の振幅に応じて値が変化する検出信号を、交流調整部540及び演算部550に出力する。例えば交流電位差V1が大きくなるほど検出信号のレベルは高くなり、交流電位差V1が小さくなるほど検出信号のレベルは低くなる。
正極側検出部521については、第1入力端子が直流遮断部511を介して正極端子211と接続され、第2入力端子が接地され、出力端子が交流調整部540及び演算部550の双方に接続される。
負極側検出部522は、負極端子212に生じる電位の交流成分である交流電位Vbと、中途点端子213に生じる電位の交流成分である交流電位Vcとの間の電位差(以下「交流電位差V2」という。)を検出する。
負極側検出部522は、交流電位差V2の振幅に応じて値が変化する検出信号を演算部550に出力する。負極側検出部522については、第1入力端子が直流遮断部512を介して負極端子212と接続され、第2入力端子が接地され、出力端子が交流調整部540及び演算部550の双方に接続される。
ここで、正極側直流遮断部511、負極側直流遮断部512、中途点直流遮断部513、正極側検出部521、及び負極側検出部522の詳細について、図3を参照して説明する。
正極側直流遮断部511は、燃料電池スタック1の正極端子211と正極側電源部531の出力端子との間に接続されるコンデンサ511Aと、正極端子211と正極側検出部521の第1入力端子との間に接続されるコンデンサ511Bとを含む。
負極側直流遮断部512は、燃料電池スタック1の負極端子212と負極側電源部532の出力端子との間に接続されるコンデンサ512Aと、負極端子212と負極側検出部522の第2入力端子との間に接続されるコンデンサ512Bとを含む。
中途点直流遮断部513は、燃料電池スタック1の中途点端子213と正極側検出部521の第2入力端子との間に接続されるコンデンサ513Aと、中途点端子213と負極側検出部522の第1入力端子との間に接続されるコンデンサ513Bとを含む。
正極側検出部521は、電位差検出回路5211と、帯域通過フィルタ(Band Pass filter;BPF)5212と、増幅回路5213と、同期検波回路5214とを含む。
電位差検出回路5211は、交流電位Vaから電位Vcを減算した検出信号を出力する。交流電位Vaは、正極端子211から出力される信号のうち、コンデンサ511Bを通過する信号成分であり、電位Vcは、中途点端子213から出力される信号のうち、コンデンサ513Aを通過する信号成分である。電位差検出回路5211は、差動アンプにより実現される。
電位差検出回路5211には、負荷3から正極端子211を介して電圧変動ノイズが混入する。負荷3からのノイズは周波数分布が広範囲に亘り、かつ、ノイズレベルが交流電位差V1に比べて3桁ほど大きい。このため、電位差検出回路5211から出力される検出信号には、負荷3から出力される不要信号が含まれてしまう。
帯域通過フィルタ5212は、検出信号に含まれる不要信号を除去して、検出に必要となる周波数帯域の信号成分のみを通過させる。具体的には、帯域通過フィルタ5212は、電位差検出回路5211から出力される検出信号のうち、交流電流I1の周波数と同一周波数を有する信号成分を通過させ、他の周波数帯域の信号成分を除去する。
増幅回路5213は、帯域通過フィルタ5212から出力される検出信号を増幅して出力する。増幅回路5213の増幅率(ゲイン)は、インピーダンス測定装置5のダイナミックレンジを考慮して定められる。
同期検波回路5214は、増幅回路5213から出力される検出信号のうち、交流電流I1と同じ周波数を有し、かつ、交流電流I1と位相が同じ信号成分、すなわち検出信号の実軸成分のみを抽出する抽出回路である。
具体的には、同期検波回路5214は、交流電流I1と同じ周波数を有する信号であって交流電流I1と位相が一致した同相の信号を検出信号に乗算し、その乗算された交流の検出信号を平滑化することによって直流の検出信号V1に変換する。平滑化された検出信号V1は、交流電位差V1の振幅の大きさに応じて変化する。
このように、正極側検出部521は、交流電位差V1の振幅に比例した検出信号を生成し、帯域通過フィルタ5212や同期検波回路5214によって不要信号を除去する。その検出信号V1は交流調整部540及び演算部550に出力される。
負極側検出部522は、電位差検出回路5221と、帯域通過フィルタ(BPF)5222と、増幅回路5223と、同期検波回路5224とを含む。これらの構成は、基本的に正極側検出部521と同じ構成であるため、ここでの説明を省略する。
次に正極側電源部531及び負極側電源部532の構成について説明する。
正極側電源部531及び負極側電源部532は、燃料電池スタック1の正極端子211及び負極端子212のうち両方の電極端子に同じ周波数を有する交流信号を出力する電源手段である。
正極側電源部531は、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定するために定められた基準周波数fbを有する交流電流I1を、正極側直流遮断部511を介して燃料電池スタック1の正極端子211へ出力する。正極側電源部531から出力される交流電流I1の振幅は、交流調整部540によって制御される。正極側電源部531は、例えばオペアンプ(Operational Amplifier;OA)を含んで構成される電圧電流変換回路により実現される。
正極側電源部531の詳細について図4を参照して説明する。
正極側電源部531は、電圧電流変換回路5311と同期検波回路5312とを含む。
電圧電流変換回路5311は、基準周波数fbの交流電圧Vi1を交流電流I1に変換し、その交流電流I1を正極側直流遮断部511へ出力する。交流電圧Vi1は、交流調整部540から正極側電源部531に出力される電流指令信号である。
電圧電流変換回路5311は、交流電圧Vi1に基づいて交流電流I1を出力するオペアンプOA1と、検出抵抗素子Rsと、検出抵抗素子Rsに生じる検出電圧Vi1sに応じて交流電流I1を調整するオペアンプOA2と、抵抗素子R1〜R5とを含む。
オペアンプOA1は、交流電圧Vi1に比例する交流電流I1を出力する。オペアンプOA1の非反転入力端子は、交流調整部540の正極側端子と接続されると共に、反転入力端子は、抵抗素子R5を介して電流調整用のオペアンプOA2と接続される。そしてオペアンプOA1の出力端子は、抵抗素子R2及び抵抗素子R3を介して接地される。
検出抵抗素子Rsは、オペアンプOA1から出力される交流電流I1の大きさを検出するために設けられた抵抗素子である。検出抵抗素子Rsの一端はオペアンプOA1の出力端子に接続され、検出抵抗素子Rsの他端はコンデンサ511Aと接続される。
検出抵抗素子Rsの両端に生じる検出電圧Vi1sは、交流電流I1の電流値と検出抵抗素子Rsの抵抗値とを乗算した値であり、交流電流I1の大きさに比例する。
オペアンプOA2は、検出抵抗素子Rsに生じる検出電圧Vi1sの大きさを検出する電流検出手段である。オペアンプOA2から出力される検出信号Vi1sは、オペアンプOA1の反転入力端子にフィードバックされる。そしてオペアンプOA1は、検出信号Vi1sに応じて交流電流I1を増減する。これにより、交流電流I1の振幅が交流電圧Vi1の振幅と比例するように調整される。
抵抗素子R1〜R5の抵抗値は、インピーダンス測定装置5の設計に応じて適宜設定される。
同期検波回路5312は、オペアンプOA2から出力される検出信号Vi1sに含まれる不要信号を除去するために、検出信号から交流電流I1と同一周波数fbであって位相が同じ信号成分のみを抽出する抽出回路である。同期検波回路5312の構成は、図3に示した同期検波回路5214と同じ構成である。
同期検波回路5312は、不要信号を除去した検出信号I1を演算部550に出力する。同期検波回路5312から出力される検出信号I1は、交流電流I1の振幅に比例する直流の信号である。
このように、正極側電源部531は、交流調整部540から出力される指令信号に基づいて交流電流I1を出力する。さらに検出抵抗素子Rs及びオペアンプOA2によって交流電流I1の大きさが検出され、同期検波回路5312によって不要信号が取り除かれた検出信号I1が演算部550に出力される。
負極側電源部532は、交流電流I1と同じ基準周波数fbを有する交流電流I2を、負極側直流遮断部512を介して燃料電池スタック1の負極端子212へ出力する。負極側電源部532から出力される交流電流I2の振幅は、交流調整部540によって制御される。なお、負極側電源部532の構成は、正極側電源部531と同じ構成であるため、ここでの詳細な説明を省略する。
次に交流調整部540の構成について図5を参照して説明する。
交流調整部540は、正極側の交流電位Vaと負極側の交流電位Vbとが互いに一致するように、正極側電源部531及び負極側電源部532のうち少なくとも一方の電源部から出力される交流電流の振幅及び位相を調整する調整手段である。
本実施形態では、交流調整部540は、正極側電源部531から出力される交流電流I1の振幅と、負極側電源部532から出力される交流電流I2の振幅とをそれぞれ調整する。交流調整部540は、例えばPI(Proportional Integral)制御回路により実現される。
交流調整部540は、正極側減算器5411と、正極側積分回路5421と、正極側乗算器5431と、負極側減算器5412と、負極側積分回路5422と、負極側乗算器5432とを含む。さらに交流調整部540は、基準電源545及び交流信号源546を備える。
基準電源545は、正極側の交流電位差V1と負極側の交流電位差V2とを一致させるために、0V(ボルト)を基準に設定された電圧(以下、「基準電圧Vs」という。)を出力する。基準電圧Vsは、実験等で定められた値である。
交流信号源546は、基準周波数fbの交流信号を発振させる発振源である。基準周波数fbは、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定するのに適した所定の値に設定される。基準周波数fbは、例えば1kHz(キロヘルツ)に設定される。
正極側減算器5411は、正極側検出部521から出力される検出信号V1から、基準電圧Vsを減算することにより、基準電圧Vsからのズレ幅に比例した差分信号を出力する。例えば、基準電圧Vsからのズレ幅が大きくなるほど差分信号のレベルは高くなる。
正極側積分回路5421は、正極側減算器5411から出力される差分信号を積分することにより、差分信号の平均化又は感度の調節をする。そして正極側積分回路5421は、積分された差分信号を正極側乗算器5431に出力する。
正極側乗算器5431は、交流信号源546から出力される基準周波数fbの交流信号に対して差分信号を乗算することにより、交流電位差V1の振幅を基準電圧Vsに収束させる交流電圧Vi1を生成する。例えば正極側減算器5411から出力される差分信号のレベルが大きくなるほど交流電圧Vi1の振幅は大きくなる。
正極側乗算器5431は、交流電圧Vi1を電流指令信号として正極側電源部531へ出力する。交流電圧Vi1は、正極側電源部531によって交流電流I1に変換される。
なお、負極側減算器5412、負極側積分回路5422及び負極側乗算器5432は、それぞれ、正極側減算器5411、正極側積分回路5421及び正極側乗算器5431と同じ構成であるため、これらの構成についての説明を省略する。
このように、交流調整部540は、交流電位差V1の振幅が基準電圧Vsとなるように、正極側電源部531から出力される交流電流I1の振幅を調整する。同様に交流調整部540は、交流電位差V2の振幅が基準電圧Vsとなるように、負極側電源部532から出力される交流電流I2の振幅を調整する。
これにより、交流電位Va及び交流電位Vbが互いに同じレベルに制御されるので、正極端子211に重畳される交流電位Vaと、負極端子212に重畳される交流電位Vbとが一致する。これにより、インピーダンス測定装置5から燃料電池スタック1へ出力された交流電流I1及びI2が負荷3の方に漏れ出るのを防ぐことができる。なお、以下では、交流電位Vaと交流電位Vbとが互いに等しくなるように正極側電源部531及び負極側電源部532を制御することを「等電位制御」という。
次に演算部550の構成について図6を参照して説明する。
演算部550は、交流調整部540により調整された交流電流I1及びI2の振幅と交流電位差V1及びV2の振幅とに基づいて、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを演算する演算手段である。
演算部550には、正極側検出部521及び負極側検出部522から交流電位差V1及びV2の振幅を示す検出信号が入力され、正極側電源部531及び負極側電源部532から交流電流I1及びI2の振幅を示す検出信号が入力される。
演算部550は、AD(Analog Digital)変換器551とマイコンチップ552とを含む。
AD変換器551は、交流電流I1及びI2の検出信号、及び交流電位差V1及びV2の検出信号をデジタル数値信号に変換し、マイコンチップ552に転送する。
マイコンチップ552には、燃料電池スタック1の内部抵抗Rn及び燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを算出するプログラムが予め記憶されている。マイコンチップ552は、所定の微小時間間隔で順次内部抵抗Rを演算し、又は、コントロールユニット6の要求に応じて内部抵抗R演算し、その演算結果をコントロールユニット6に出力する。なお、燃料電池スタック1の内部抵抗Rn及び燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rは、次式で演算される。
演算部550は、例えば、アナログ演算ICを含んで構成されるアナログ演算回路により実現される。アナログ演算回路を用いることにより、時間的に連続した抵抗値の変化をコントロールユニット6に出力することができる。
コントロールユニット6は、演算部550から出力される内部抵抗Rを受信すると、内部抵抗Rの大きさに応じて、燃料電池スタック1の運転状態を制御する。
例えば、コントロールユニット6は、内部抵抗Rが高い場合には燃料電池スタック1の電解質膜111が乾いた状態であると判断し、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を減らす。これにより、燃料電池スタック1から持ち出される水分量を減少させることができる。
次にインピーダンス測定装置5による等電位制御の作用効果を説明する。
図7は、燃料電池スタック1の正極端子211に生じる正極電位の変化と、負極端子212に生じる負極電位の変化とを例示する図である。
燃料電池スタック1の出力中は、正極端子211及び負極端子212の端子間に、燃料電池スタック1から負荷3に出力される直流電圧Vdcが生じる。インピーダンス測定装置5が起動(ON)される前は、正極端子211の正極電位、及び負極端子212の負極電位は、点線で示すように共に一定であり、正極電位と負極電位との電位差である直流電圧Vdcが負荷3に供給される。その後インピーダンス測定装置5が起動され、正極側電源部531及び負極側電源部532から交流電流I1及びI2が出力されると、正極電位に交流電位Vaが重畳され、負極電位に交流電位Vbが重畳される。
正極側電源部531から出力された交流電流I1は、正極側直流遮断部511を介して、燃料電池スタック1の正極端子211に出力され、中途点端子213及び中途点直流遮断部513を介して正極側検出部521に出力される。このとき、正極端子211と中途点端子213との間には、交流電流I1が内部抵抗R1に供給されることで内部抵抗R1での電圧降下により交流電位差V1(=Va−Vc)が生じる。この交流電位差V1は、正極側検出部521によって検出される。
一方、負極側電源部532から出力された交流電流I2は、負極側直流遮断部512を介して燃料電池スタック1の負極端子212に供給され、中途点端子213及び中途点直流遮断部513を介して負極側検出部522に出力される。このとき、負極端子212と中途点端子213との間には、交流電流I2が内部抵抗R2に供給されることで内部抵抗R2での電圧降下により交流電位差V2(=Vb−Vc)が生じる。この交流電位差V2は、負極側検出部522によって検出される。
交流調整部540は、正極側の交流電位差V1と、負極側の交流電位差V2との電位差(V1−V2)、すなわち交流電位Vaと交流電位Vbとの差(Va−Vb)が常に小さくなるように負極側電源部532を調節する。これにより、正極電位の交流成分Vaの振幅と負極電位の交流成分Vbの振幅とが等しくなるので、直流電圧Vdcは変動せずに一定となる。
そして演算部550は、正極側検出部521及び負極側検出部522から出力される交流電位差V1及びV2と、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流I1及びI2とに基づいてオームの法則を適用する。これにより、燃料電池スタック1の正極側の内部抵抗R1及び負極側の内部抵抗R2が算出される。
ここでは、正極端子211及び負極端子212の交流電位が同じ値になるので、仮に正極端子211及び負極端子212に対して走行用モータなどの負荷3が接続された状態であっても、交流電流I1又はI2が負荷3の方に漏洩するのを抑制できる。
さらに負荷3の作動状態によらず、稼働中の燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2の測定値に基づいて燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを正確に測定することができる。また、正極側電源部531及び負極側電源部532が使用されるので、燃料電池スタック1が停止中であっても内部抵抗Rを測定することができる。
インピーダンス測定装置5においては、正極端子211と正極側電源部531との間に正極側直流遮断部511が設けられ、負極端子212と負極側電源部532との間に負極側直流遮断部512が設けられている。
このため、正極端子211及び負極端子212の各々に一定レベルの交流電位Va及びVbを重畳するには、直流遮断部511及び512に対して双極性の交流信号を出力する必要がある。
双極性の交流信号とは、0Vを基準とし信号が正(プラス)の値と負(マイナス)の値とに交互に変化する交流信号のことである。仮に、0Vよりも高い値を基準に変化する交流信号を直流遮断部511に出力すると、交流信号の直流成分が0Vよりも高いため直流遮断部511に電荷が蓄積され飽和してしまい、直流遮断部511から正極端子211へ交流信号が伝達されなくなる。
これに対してインピーダンス測定装置5の内部回路を、双極性の交流信号を処理する回路構成にすると、交流信号が正のときに信号を処理する回路と交流信号が負のときに信号を処理する回路とを別々に設ける必要があり、内部回路の構成が複雑になってしまう。
そこで本実施形態では、正極側検出部521の同期検波回路5214に入力される交流の検出信号や、正極側電源部531の同期検波回路5312に入力される検出信号を双極性から単極性に変換する。単極性の交流信号とは、信号が正又は負のいずれか一方で、基準となる値を中心に変化する交流信号のことである。
図8は、本実施形態における同期検波回路5214の構成を示す図である。
同期検波回路5214は、単極性変換回路410と、信号乗算回路420と、信号抽出フィルタ430とを含む。
単極性変換回路410は、双極性の交流信号を単極性の交流信号に変換する極性変換手段である。
本実施形態では、単極性変換回路410は、増幅回路5213から出力される検出信号を、双極性の交流信号から単極性の交流信号に変換する。単極性変換回路410は、コンデンサ411と基準電位線412と抵抗素子413とを含む。
コンデンサ411は、交流信号の振幅の中心を0Vから基準電位(Vo/2)に変換するために用いられる。コンデンサ411の一方の電極は、増幅回路5213の出力端子と接続され、他方の電極は、信号乗算回路420の入力端子と接続される。
基準電位線412は、図示していない電源から直流の基準電位(Vo/2)が供給される信号線である。基準電位(Vo/2)は、増幅回路5213から出力される交流信号の振幅の半分の値に設定される。
抵抗素子413は、コンデンサ411の他方の電極に基準電位(Vo/2)を重畳するために設けられる。抵抗素子413の一端は、基準電位線412に接続され、抵抗素子413の他端は、他方の電極と信号乗算回路420の入力端子とに接続される。
このように、単極性変換回路410では、双極性の交流信号がコンデンサ411の一方の電極に入力されると、他方の電極には、同じ波形の交流信号が伝播されるとともに、抵抗素子413によって直流の基準電位(Vo/2)が重畳される。これにより、単極性の交流信号が生成されて信号乗算回路420に入力される。
信号乗算回路420は、単極性変換回路410から出力される検出信号に対して、図5に示した交流信号源546から出力される基準周波数fbの交流信号(以下「基準信号」という。)を乗算する。これにより、信号乗算回路420から出力される検出信号が全波整流波形となる。
具体的には、信号乗算回路420は、交流信号源546の基準信号が正のときは検出信号に「−1」を乗算した信号を出力し、交流信号源546の基準信号が負のときは検出信号に「+1」を乗算した信号を出力する。このように信号乗算回路420は、検出信号に全波整流波形処理を施す。
信号乗算回路420は、抵抗素子421〜123と、トランジスタ424と、オペアンプ425と、コンパレータ426とを含む。
抵抗素子421は、単極性変換回路410の出力端子とオペアンプ425の反転入力端子(−)との間に接続され、抵抗素子422は、単極性変換回路410の出力端子とオペアンプ425の非反転入力端子(+)との間に接続される。
抵抗素子423は、オペアンプ425の反転入力端子(−)とオペアンプ425の出力端子との間に接続される。抵抗素子423の抵抗値は、抵抗素子421の抵抗値と同じ値に設定される。
トランジスタ424は、オペアンプ425の非反転端子(+)とアースされた接地線との間に接続される。本実施形態では、トランジスタ424は、電界効果トランジスタ(Field effect transistor;FET)であり、トランジスタ424のドレイン(D)がオペアンプ425の非反転端子(+)に接続され、トランジスタ424のソース(S)が接地線と接続される。
トランジスタ424のゲート(G)は、交流電流I1と同一周波数fbの信号成分を検波するための検波信号を供給するコンパレータ426と接続される。検波信号は、図4に示した交流信号源546から出力される基準信号に基づいて生成される矩形のパルス信号である。例えば、基準信号が正のときには5V(ボルト)のパルス信号を出力し、基準信号が負のときには0Vのパルス信号を出力する。
トランジスタ424は、コンパレータ426から出力される検波信号に応じて、オペアンプ425の非反転端子(+)と接地線との間を接続又は遮断する。すなわち、トランジスタ424は、交流信号源546から出力される基準信号に基づいて、オペアンプ425の非反転端子(+)を接地状態(導通状態)又は非接地状態(非導通状態)に切り替える。
オペアンプ425の反転入力端子(−)及び非反転入力端子(+)には、単極性変換回路410から出力される単極性の交流信号が共に入力される。
オペアンプ425は、交流信号源546から出力される基準信号に基づいて、単極性変換回路410から出力される単極性の交流信号の位相を0度又は180度だけシフトさせる。
オペアンプ425では、交流信号源546の基準信号が正のときにはトランジスタ424が導通状態となって非反転入力端子(+)が0Vとなるので、反転入力端子(−)に入力される交流信号を反転させた信号が出力される。
一方、交流信号源546の基準信号が負のときにはトランジスタ424が非導通状態となって非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)とが同電位となるので、抵抗素子423を介して反転していない交流信号が出力される。
信号抽出フィルタ430は、信号乗算回路420によって全波整流波形処理が施された検出信号を平滑にする。信号抽出フィルタ430は、例えば低域通過フィルタ(LPF)により実現される。
本実施形態では、信号抽出フィルタ430は、抵抗素子131とコンデンサ132とにより構成される低域通過フィルタである。
抵抗素子131の一端はオペアンプ425の出力端子に接続され、抵抗素子131の他端はコンデンサ132の一方の電極と接続され、コンデンサ132の他方の電極は接地される。
これにより、信号乗算回路420から出力される検出信号は、直流の検出信号V1に変換される。変換された検出信号V1は、交流電位差V1の振幅に比例した信号であり、例えば交流電位差V1の振幅が大きくなるほど検出信号V1のレベルは高くなる。
図9は、単極性変換回路410によって変換される交流信号を示す図である。
単極性変換回路410によって、0Vを中心に正と負とに変化する双極性の交流信号は、最小値がゼロとなり、かつ、基準電位(Vo/2)を中心に正側で変化する単極性の交流信号に変換される。
このように、単極性変換回路410が信号乗算回路420よりも電位差検出回路5211側に配置されることで、信号乗算回路420に入力される交流信号が双極性から単極性に変換される。このため、信号乗算回路420では、1個のトランジスタ424によってオペアンプ425から出力される信号を全波整流波形に形成することが可能となる。すなわち、信号乗算回路420を簡素な構成にすることができる。
図8では同期検波回路5214の構成について説明したが、インピーダンス測定装置5に備えられる他の同期検波回路についても、同期検波回路5214と同じように簡素な構成にすることが可能である。例えば、負極側検出部522の同期検波回路5224や、正極側電源部531及び負極側電源部532の各同期検波回路5314についても、単極性変換回路410、信号乗算回路420及び信号抽出フィルタ430を含んだ構成にする。
これにより、信号乗算回路420に用いられるトランジスタの数を削減することできるので、インピーダンス測定装置5を小型にするとともに製造コストを抑制することができる。
なお、本実施形態ではトランジスタ424としてFETを用いる例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、トランジスタ424としてバイポーラトランジスタが用いられてもよい。この場合には、コレクタ(C)がオペアンプ425の非反転端子(+)に接続され、エミッタ(E)が接地線と接続され、ベース(B)がコンパレータ426と接続される。
また本実施形態では単極性変換回路410を増幅回路5213と信号乗算回路420との間に配置する例について説明したが、単極性変換回路410の位置は、直流遮断部511及び512と信号乗算回路420との間であればよい。
図10は、単極性変換回路410の配置例を示す図である。ここでは、図3に示した同期検波回路5214の単極性変換回路410が、正極側直流遮断部511(又はコンデンサ511B)と正極側検出部521の第1入力端子との間に配置される。さらに同期検波回路5224の単極性変換回路410が、負極側直流遮断部512(又はコンデンサ512B)と負極側検出部522の第1入力端子との間に配置される。
このように単極性変換回路410を、正極側直流遮断部511と正極側検出部521の信号乗算回路420との間、又は、負極側直流遮断部512と負極側検出部522の信号乗算回路420との間に配置すれば、信号乗算回路420に入力される信号は単極性の交流信号に変換されるので、信号乗算回路420の構成を簡素にできる。
本発明の第1実施形態によれば、正極側電源部531及び負極側電源部532で構成される電源手段は、積層電池1の正極211及び負極212に対して交流電流I1及びI2を出力する。正極側検出部521及び負極側検出部522の少なくとも一方で構成される検出手段は、正極211と積層電池1の中途点213との間の交流電位差V1と、負極212と中途点213との間の交流電位差V2とのうち少なくとも一方の交流電位差を検出する。演算部550で構成される演算手段は、検出手段により検出される交流電位差と、電源手段から出力される交流電流とに基づいて、積層電池1のインピーダンスを演算する。
そして単極性変換回路410を含んで構成される極性変換手段は、電源手段及び検出手段のうち少なくとも一方の手段により処理される交流信号を双極性と単極性との間で変換する。第1実施形態では、極性変換手段は、検出手段により検出(処理)される交流電位差を示す交流信号を双極性から単極性に変換する。
このように本実施形態によれば、極性変換手段によって、電源手段から双極性の交流信号が出力されるとともに、検出手段から単極性の交流信号が入力されることになるので、インピーダンス測定装置5を簡素にできるとともに製造コストを抑制できる。
また本実施形態では、インピーダンス測定装置5は、正極端子211及び負極端子212から検出部521及び522にそれぞれ出力される交流信号を通過させる直流遮断部511及び512で構成される直流遮断手段を含む。さらに、交流電流I1と同一周波数fbを有する基準信号に基づいて、検出手段から出力される交流電位差V1を示す交流信号のうち同一周波数fbの信号成分を抽出する信号乗算回路420で構成される抽出回路を含む。
そして単極性変換回路410は、直流遮断手段と抽出回路との間に接続され、直流遮断手段から出力される双極性の交流信号を単極性の交流信号に変換する。例えば、単極性変換回路410は、図3に示したコンデンサ511Bと電位差検出回路5211の第1入力端子との間、又は、電位差検出回路5211と信号乗算回路420との間に配置される。
これにより、正極側検出部521及び負極側検出部522の少なくとも一方の信号乗算回路420の回路構成を簡素にできる。
また本実施形態では、交流調整部540で構成される調整手段は、交流電位差V1と、交流電位差V2とが一致するように、電源手段から正極211及び負極212のうち少なくとも一方に出力される交流電流を調整する。そして図4で示した検出抵抗素子Rs及びオペアンプOA2で構成される電流検出手段は、電源手段から出力される交流電流I1を検出する。さらに同期検波回路5314の信号乗算回路420で構成される抽出回路は、交流電流I1と同一周波数fbを有する基準信号に基づいて、電流検出手段から出力される交流信号V1に含まれる同一周波数fbの信号成分を抽出する。
そして単極性変換回路410は、オペアンプOA2の出力端子と信号乗算回路420との間に接続され、電流検出手段から出力される双極性の交流信号を単極性の交流信号に変換する。
これにより、正極側電源部531及び負極側電源部532の少なくとも一方の信号乗算回路420の構成を簡素にできる。
また本実施形態では、信号乗算回路420で構成される抽出回路は、トランジスタ424及びオペアンプ425を含む。オペアンプ425は、単極性の交流信号が入力される非反転入力端子(+)と、非反転入力端子(+)と同じ単極性の交流信号が入力される反転入力端子(−)とを有する。そしてトランジスタ424は、交流電流I1と同一周波数fbを有する基準信号に基づいて、オペアンプ425の非反転入力端子(+)と接地端子との間を接続又は遮断する。これにより、トランジスタ424によって、オペアンプ425から出力される交流信号が整流される。
このように、オペアンプ425の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(−)の各々に単極性の交流信号を入力することにより、交流信号が正のときに必要となる回路と交流信号が負のときに必要となる回路とをそれぞれ設ける必要がなくなる。すなわち、交流信号が負のときに用いられる回路を省略できるので、抽出回路の構成を簡素にできる。
図11は、双極性の交流信号が入力される信号乗算回路900に用いられるスイッチ回路910の構成を示す参考図である。
スイッチ回路910は、NchトランジスタとPchトランジスタとドライブ回路Dとにより構成される。
信号乗算回路900に入力される交流信号が正のときには、オペアンプ425の非反転端子(+)が接地されるように、ドライブ回路DからNchトランジスタのゲート(G)に正のパルス信号Vgが供給される。
また、信号乗算回路900に入力される交流信号が負のときには、オペアンプ425の非反転端子(+)に負の電圧V−が印加されるように、ドライブ回路DからPchトランジスタのゲート(G)に負のパルス信号Vgを供給される。
このように双極性の交流信号を同期検波処理するためのスイッチ回路910には、Nchトランジスタに加えてPchトランジスタが必要になり、さらにパルス信号Vgを正と負との間で切替えるためのドライバ回路Dが必要となる。
これに対して、図8に示した信号乗算回路420では、スイッチ回路910の代わりに1個のトランジスタ424だけで、交流信号が全波整流波形となるように処理できるので、回路構成を小型にでき、かつ、製造コストを低減できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態におけるインピーダンス測定装置の構成について説明する。なお、本実施形態のインピーダンス測定装置の構成については、図2に示したインピーダンス測定装置5の構成と基本的に同じであるため、同一符号を付して説明する。
本実施形態では、正極側検出部521において、図3に示した同期検波回路5214が省略されるとともに、正極側電源部531において、図4に示した同期検波回路5312が省略されている。これらの同期検波回路5214及び5312の代わりに、交流調整部540に同期検波回路が設けられる。
図12は、本発明の第2実施形態における交流調整部540の構成を示す図である。ここでは、正極側の構成のみが示されている。
本実施形態の交流調整部540は、図5に示した交流調整部の構成に加えて、同期検波回路5401と、切替回路5402と、切替信号発生器5043とを備えている。
同期検波回路5401は、図8に示した同期検波回路5214と同じ構成であり、単極性変換回路410と、信号乗算回路420と、信号抽出フィルタ430とを含む。
切替回路5402は、同期検波回路5401を正極側検出部521と正極側電源部531とで兼用するために必要となる切替手段である。
切替回路5402は、同期検波回路5401に入力される双極性の交流信号を、正極側検出部521から出力される検出信号V1、又は、正極側電源部531から出力される検出信号I1に切り替える。これとともに切替回路5402は、同期検波回路5401から出力される検出信号を、同期検波回路5401に入力された検出信号の出力先に切替える。
切替回路5402は、入力切替器5402Aと出力切替器5402Bとを含む。入力切替器5402A及び出力切替器5402Bは、切替信号発生器5403から出力される切替信号により同時に切替えられる。
入力切替器5402Aにおいては、第1入力端子が、図4に示した正極側電源部531のオペアンプOA2の出力端子と接続され、第2入力端子が、図3に示した正極側検出部521の増幅回路5213の出力端子と接続される。そして出力端子が同期検波回路5401の入力端子に接続される。
出力切替器5402Bにおいては、入力端子が同期検波回路5401の出力端子に接続される。そして第1出力端子が演算部550の電流検出端子(I1)と接続され、第2出力端子が、正極側減算器5411の入力端子とともに演算部550の電圧検出端子(V1)と接続され、
切替信号発生器5403は、予め定められた周期により、切替回路5402に出力される切替信号を、H(High)レベルとL(Low)レベルとに交互に切替える。
例えば、切替信号発生器5403は、Hレベルの切替信号を、入力切替器5402A及び出力切替器5402Bに出力する。
これに伴い、入力切替器5402Aは、正極側電源部531のオペアンプOA2の出力端子と同期検波回路5401の入力端子との間を接続するとともに、出力切替器5402Bは、同期検波回路5401の出力端子と演算部550の電流検出端子(I1)との間を接続する。
これにより、入力切替器5402Aの第1入力端子から同期検波回路5401の単極性変換回路410に入力された双極性の交流信号は、単極性変換回路410によって単極性の交流信号に変換される。そして変換された交流信号は、信号乗算回路420及び信号抽出フィルタ430によって不要信号が除去されて、出力切替器5402Bの第1出力端子を介して演算部550の電流検出端子(I1)に入力される。
また、切替信号発生器5403は、Lレベルの切替信号を、入力切替器5402A及び出力切替器5402Bに出力する。
これに伴い、入力切替器5402Aは、正極側検出部521の増幅回路5213の出力端子と同期検波回路5401の入力端子との間を接続するとともに、出力切替器5402Bは、同期検波回路5401の出力端子と演算部550の電圧検出端子(V1)との間を接続する。
これにより、入力切替器5402Aの第2入力端子から単極性変換回路410に入力された双極性の交流信号は、単極性変換回路410によって単極性の交流信号に変換される。そして変換された交流信号は、信号乗算回路420及び信号抽出フィルタ430によって不要信号が除去されて、出力切替器5402Bの第2出力端子を介して演算部550の電圧検出端子(V1)及び正極側減算器542に入力される。
このように切替信号がLレベルからHレベルに切り替えられると、切替回路5402によって同期検波回路5401は、正極側電源部531から出力される検出信号のノイズを除去する処理回路として用いられる。
一方、切替信号がHレベルからLレベルに切り替えられると、切替回路5402によって同期検波回路5401は、正極側検出部521から出力される検出信号のノイズを除去する処理回路として用いられる。
本発明の第2実施形態によれば、切替回路5402で構成される切替手段は、正極側電源部531から出力される交流信号I1と、正極側検出部521から出力される交流信号V1とを交互に切り替えて単極性変換回路410に入力する。そして切替手段は、単極性変換回路410から出力される単極性の交流信号を、信号乗算回路420及び信号抽出フィルタ430を介して演算部550に出力する。
これにより、同期検波回路5401を、検出信号I1に含まれる不要信号を除去する回路として用いることができるとともに、検出信号V1に含まれる不要信号を除去する回路としても兼用することができる。このため、インピーダンス測定装置5内に設けられる同期検波回路5401の数を削減することができる。
さらにひとつの同期検波回路5401を兼用することにより、第1実施形態のように同期検波回路を別々に設けた場合に比べて、同期検波回路ごとの固体差に伴う測定精度の低下を抑制することができる。このため、同期検波回路5401に求められる精度を緩和することができので、同期検波回路5401の製造コストを抑制することができる。
したがって、切替回路5402を用いて同期検波回路5401を兼用することにより、内部インピーダンスを測定する精度を維持向上させつつ、インピーダンス測定装置5を小型にするとともに製造コストを抑制することができる。
なお、本実施形態では、正極側電源部531の同期検波回路を正極側検出部521の同期検波回路により兼用する例について説明したが、負極側電源部532の同期検波回路を負極側検出部522の同期検波回路により兼用するようにしてもよい。この場合には、交流調整部540の負極側の構成は、図12に示した正極側の構成と基本的に同一となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態におけるインピーダンス測定装置について説明する。なお、本実施形態のインピーダンス測定装置の構成については、図2に示したインピーダンス測定装置5の構成と基本的に同じであるため、同一符号を付して説明する。
本実施形態では、交流調整部540は、図5に示した双極性の交流信号を発生させる交流信号源546に代えて、単極性の交流信号を発生させる交流信号源を備えている。交流信号源546から出力される単極性の交流信号は、ゼロから予め定められた電圧値までの範囲で電圧値の半値を中心に信号が振幅する交流信号である。
このため、交流調整部540から正極側電源部521に出力される電流指令信号は、ゼロから電圧値Voまでの範囲で電圧値Voの半値を中心に変化する。
図13は、本発明の第3実施形態における正極側電源部531の構成を示す図である。
正極側電源部531は、検出抵抗素子Rsと双極性変換回路440とを含む。
検出抵抗素子Rsは、交流電流I1に比例する電流指令信号の大きさを検出するための抵抗素子である。検出抵抗素子Rsの一端は、図5に示した交流調整部540の正極側出力端子と接続され、検出抵抗素子Rsの他端は双極性変換回路440の入力端に接続される。検出抵抗素子Rsの両端に生じる検出電圧の振幅は、交流電流I1の振幅と比例する。
双極性変換回路440は、交流調整部540から出力された電流指令信号を、単極性の交流電圧から双極性の交流電流I1に変換する極性変換手段である。双極性変換回路440から出力される交流電流I1の振幅は、電流指令信号の振幅と比例する。例えば、電流指令信号の振幅が大きくなるほど、交流電流I1の振幅は大きくなる。
双極性変換回路440は、本実施形態ではトランスにより実現される。トランスは、1次コイルと2次コイルとにより構成される。
1次コイルの一端は、検出抵抗素子Rsを介して交流調整部540の正極側出力端子と接続され、1次コイルの他端は接地される。
2次コイルの一端は、図3に示したコンデンサ511Aと接続され、2次コイルの他端は接地される。
双極性変換回路440では、電流指令信号として単極性の交流電圧が1次コイルに供給されると、2次コイルには、トランスのインダクタンスL及び磁気結合係数に比例した双極性の交流電流I1が流れる。このため、双極性変換回路440からコンデンサ511Aへ交流電流I1が出力される。
図14は、双極性変換回路440によって変換される交流信号を示す図である。
双極性変換回路440によって、最小値がゼロとなる単極性の交流信号は、0Vを中心に正と負とに変化する双極性の交流信号に変換される。
このように本実施形態では、交流調整部540に単極性の交流信号を発生させる交流信号源546を設けるとともに、図4に示した電圧電流変換回路5311に代えて双極性変換回路440を正極側電源部531に設ける。
これにより、正極側電源部531を簡素にできるとともに、交流信号源546は、図5に示した交流信号源546とは異なり、両方の極性の電源を用いずに一方の極性の電源だけで済むので、交流信号源自体を簡素にできる。
また、1次コイルと2次コイルとは絶縁されていることから、検出抵抗素子Rsをトランスの1次コイル側に配置することにより、負荷3から2次コイルへノイズが伝播されても、1次コイルには負荷3からのノイズが伝播されない。したがって、負荷3からのノイズに伴う交流電流I1の検出精度の低下を抑制することができる。なお、検出抵抗素子Rsは、トランスの2次コイル側に配置されてもよい。この場合には、正極端子211に実際に入力される交流電流I1をより正確に検出することができる。
また、本実施形態では正極側電源部531に双極性変換回路440を設ける例について説明したが、負極側電源部532についても電流電圧変換回路に代えて双極性変換回路440を設けてもよい。これにより、負極側電源部532の構成を簡素にできる。
本発明の第3実施形態によれば、双極性変換回路440を含んで構成される極性変換手段は、例えば正極側直流遮断部511を含んで構成される直流遮断手段に入力される交流電流I1を、単極性の交流信号から双極性の交流信号に変換する。双極性変換回路440は、トランスにより構成され、トランスによって単極性の交流電圧Vi1を双極性の交流電流I1に変換する。
このように、極性変換手段は、正極側電源部531を含んで構成される電源手段により電圧電流変換(処理)される交流信号を単極性から双極性に変換する。これにより、双極性の交流電流I1が直流遮断部511に出力されるので、直流遮断部511を飽和させずに、電源手段から出力される交流電流I1と同じ波形の交流電流を正極端子211に出力することができる。
したがって、正極側電源部531及び負極側電源部532に双極性変換回路440としてトランスを用いることにより、インピーダンス測定装置5の測定精度を維持しつつ、正極側電源部531及び負極側電源部532の構成を簡素にできる。
また、第1乃至第3実施形態を組み合わせることによって、インピーダンス測定装置5内で処理される交流信号を単極性の交流信号に統一することができる。このため、信号乗算回路420や正極側電源部531及び負極側電源部532に用いられる部品の数を減らすことができる。これにより、インピーダンス測定装置5を簡素にできるとともに製造コストを抑制できる。
このように上記実施形態によれば、単極性変換回路410及び双極性変換回路440は、図2に示したように、正極側直流遮断部511及び負極側直流遮断部512のうち少なくとも一方の直流遮断部と演算部550との間に接続される。これにより、インピーダンス測定装置5に用いられる部品を削減できるので、インピーダンス測定装置5を小型化かつ低コスト化できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記実施形態では、図4に示した同期検波回路5214が、検出信号の実軸成分を抽出するものとして説明したが、検出信号の実軸成分の二乗値と虚軸成分の二乗値との和の平方根を演算してベクトル値を求め、これを検出信号V1として出力するものであってもよい。なお、検出信号の虚軸成分は、交流電流I1と位相が直交する直交信号を検出信号に乗算して平滑化することにより得られる。ベクトル値を利用することにより、交流電位差V1又はV2の振幅が正確に求められるので、等電位制御を適切に実行することができる。
また、上記実施形態では演算部550が、燃料電池スタック1の内部抵抗を求める例について説明したが、演算部550は、燃料電池スタック1の内部抵抗に加えて、交流電位差V1及びV2の虚軸成分を求めて燃料電池スタック1が有する静電容量を算出するものであってもよい。
また、上記実施形態では、インピーダンス測定装置5により燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定する例について説明したが、測定対象は、複数の電池セルが積層された積層電池であればよく、例えば積層型のリチウムイオンバッテリーであってもよい。
また、正極側及び負極側の内部抵抗が殆ど変動しないリチウムイオンバッテリーであれば、インピーダンス測定装置5の回路構成を簡略化してもよい。例えば、交流調整部540を省略して電源部531及び532からは、振幅と位相とが一致した交流電流I1及びI2を固定的に出力する。また検出部521及び522の一方を省略して他方の検出部(例えば正極側検出部521)のみで検出される交流電位差(例えば交流電位差V1)と、その交流電位差を生じさせる交流電流(例えば交流電流I1)とを用いて内部抵抗を演算する。このような回路構成であっても、上記実施形態と同じような効果を得ることができる。
また、本実施形態では、中途点端子213が燃料電池スタック1の中間に設けられ、交流調整部540によって交流電位差V1及びV2の振幅が同一の基準値Vsとなるように交流電流I1及びI2の振幅を制御する例について説明した。しかしながら、中途点端子213は、燃料電池スタック1の中間に位置する発電セル10から外れた発電セル10に設けられてもよい。この場合にも正極端子211に生じる交流電位Vaと、負極端子に生じる交流電位Vbとが一致すればよいので、中途点端子213が設けられた発電セル10の位置によって内部抵抗R1と内部抵抗R2との抵抗比を予め求め、その抵抗比に合わせて交流電位差V1及びV2の各振幅の基準値Vsをそれぞれ設定すればよい。
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。