以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態におけるインピーダンス測定装置の測定対象である積層電池の一例を示す図である。図1Aには、積層電池の一例として複数の電池セルが積層された燃料電池スタック1の外観斜視図が示されている。
図1Aに示されるように、燃料電池スタック1は、複数の発電セル10と、集電プレート20と、絶縁プレート30と、エンドプレート40と、4本のテンションロッド50とを備える。
発電セル10は、いわゆる電池セルのことであり、燃料電池スタック1に積層された複数の燃料電池のうちのひとつを指す。発電セル10は、例えば1V(ボルト)程度の起電圧を生じる。発電セル10の詳細な構成については図1Bを参照して後述する。
集電プレート20は、積層された発電セル10の外側にそれぞれ配置される。集電プレート20は、ガス不透過性の導電性部材、例えば緻密質カーボンで形成される。燃料電池スタック1の正(プラス)の電極(正極)に相当する集電プレート20には、正極端子211が設けられ、燃料電池スタック1の負(マイナス)の電極(負極)に相当する集電プレート20には、負極端子212が設けられている。なお、負極端子212から発電セル10で生じた電子e-が外部に取り出される。
また、正極端子211と負極端子212との中途点にある発電セル10には中途点端子213が設けられる。本実施形態では、中途点端子213は、正極端子211から負極端子212へ積層された複数枚の発電セル10のうち中間(中点)に位置する発電セル10に設けられている。なお、中途点端子213は、正極端子211と負極端子212との中点から外れた位置に設けられてもよい。
絶縁プレート30は、集電プレート20の外側にそれぞれ配置される。絶縁プレート30は、絶縁性の部材、例えばゴムなどで形成される。
エンドプレート40は、絶縁プレート30の外側にそれぞれ配置される。エンドプレート40は、剛性のある金属材料、例えば鋼などで形成される。
一方のエンドプレート40(図1Aでは、左手前のエンドプレート40)には、アノード供給口41aと、アノード排出口41bと、カソード供給口42aと、カソード排出口42bと、冷却水供給口43aと、冷却水排出口43bとが設けられている。本実施形態では、アノード排出口41b、冷却水排出口43b及びカソード供給口42aは図中右側に設けられている。またカソード排出口42b、冷却水供給口43a及びアノード供給口41aは図中左側に設けられている。
テンションロッド50は、エンドプレート40の四隅付近にそれぞれ配置される。燃料電池スタック1は内部に貫通した孔(不図示)が形成されている。この貫通孔にテンションロッド50が挿通される。テンションロッド50は、剛性のある金属材料、例えば鋼などで形成される。テンションロッド50は、発電セル10同士の電気短絡を防止するため、表面には絶縁処理されている。このテンションロッド50にナット(奥にあるため図示されない)が螺合する。テンションロッド50とナットとが燃料電池スタック1を積層方向に締め付ける。
アノード供給口41aにアノードガスとしての水素を供給する方法としては、例えば水素ガスを水素貯蔵装置から直接供給する方法、又は水素を含有する燃料を改質して供給する方法などがある。なお、水素を含有する燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリンなどがある。また、カソード供給口42aに供給するカソードガスとしては、一般的に空気が利用される。
図1Bは、燃料電池スタック1に積層された発電セル10の構造を示す分解図である。
図1Bに示されるように、発電セル10は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)11の両面に、アノードセパレーター(アノードバイポーラープレート)12a及びカソードセパレーター(カソードバイポーラープレート)12bが配置される構造である。
MEA11は、イオン交換膜からなる電解質膜111の両面に電極触媒層112が形成される。この電極触媒層112の上にガス拡散層(Gas Diffusion Layer;GDL)113が形成される。
電極触媒層112は、例えば白金が担持されたカーボンブラック粒子で形成される。
GDL113は、十分なガス拡散性及び導電性を有する部材、例えばカーボン繊維で形成される。
アノード供給口41aから供給されたアノードガスは、このGDL113aを流れてアノード電極触媒層112(112a)と反応し、アノード排出口41bから排出される。
カソード供給口42aから供給されたカソードガスは、このGDL113bを流れてカソード電極触媒層112(112b)と反応し、カソード排出口42bから排出される。
アノードセパレーター12aは、GDL113a及びシール14aを介してMEA11の片面(図1Bの裏面)に重ねられる。カソードセパレーター12bは、GDL113b及びシール14bを介してMEA11の片面(図1Bの表面)に重ねられる。アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bは、例えばステンレスなどの金属製のセパレーター基体がプレス成型されて、一方の面に反応ガス流路が形成され、その反対面に反応ガス流路と交互に並ぶように冷却水流路が形成される。図1Bに示すようにアノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bが重ねられて、冷却水流路が形成される。
MEA11、アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bには、それぞれ孔41a,41b,42a,42b,43a,43bが形成されており、これらが重ねられて、アノード供給口41a、アノード排出口41b、カソード供給口42a、カソード排出口42b、冷却水供給口43a及び冷却水排出口43bが形成される。
図2は、本発明の実施形態におけるインピーダンス測定装置5の基本的な構成を示す図である。
燃料電池スタック1は、負荷3と接続されて負荷3に電力を供給する積層電池であり、例えば車両に搭載される。燃料電池スタック1は、内部にインピーダンスを有する。
負荷3は、例えば、電動モータや、燃料電池スタック1の発電のために用いられる補機などの電気負荷である。燃料電池スタック1と接続される補機は、例えば、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するためのコンプレッサや、燃料電池スタック1を暖機するときに燃料電池スタック1に循環される冷却水を加熱するためのヒータなどである。
コントロールユニット(C/U)6は、燃料電池スタック1の発電状態や、湿潤状態、内部の圧力状態、温度状態などの燃料電池スタック1の運転状態を、負荷3の作動状態に応じて制御する。
例えば、コントロールユニット6は、負荷3から要求される発電電力に応じて、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスやアノードガスの流量を制御する。
また、燃料電池スタック1では電解質膜111が乾いた状態になると発電性能が低下する。この対策としてコントロールユニット6は、電解質膜111の湿潤度と相関のある燃料電池スタック1の内部抵抗値を利用して、電解質膜111が乾いた状態や過剰に湿った状態にならないようにガス流量を調整する。
インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の発電性能を維持するために、燃料電池スタック1が有する内部インピーダンスを測定する。本実施形態では、インピーダンス測定装置5は、燃料電池スタック1の内部抵抗を測定し、その測定値をコントロールユニット6に送信する。
インピーダンス測定装置5は、正極側直流遮断部511と、負極側直流遮断部512と、中途点直流遮断部513と、正極側検出部521と、負極側検出部522と、正極側電源部531と、負極側電源部532と、交流調整部540と、演算部550とを含む。
正極側直流遮断部511、負極側直流遮断部512及び中途点直流遮断部513は、それぞれ直流信号を遮断するが交流信号を通す直流遮断手段である。直流遮断部511〜513の各々は、例えば、コンデンサやトランスなどにより実現される。なお、波線により示された中途点直流遮断部513については省略することが可能である。
正極側検出部521及び負極側検出部522は、正極端子211と中途点端子213との間に生じる交流電位差と、負極端子212と中途点端子213との間に生じる交流電位差とのうち少なくとも一方の交流電位差を検出する検出手段である。
正極側検出部521は、正極端子211に生じる電位の交流成分となる交流電位Vaと、中途点端子213に生じる電位の交流成分となる交流電位Vcとの間の電位差(以下、「交流電位差V1」という。)を検出する。
正極側検出部521は、交流電位差V1の振幅に応じて値が変化する検出信号を、交流調整部540及び演算部550に出力する。例えば、交流電位差V1が大きくなるほど検出信号のレベルは高くなり、交流電位差V1が小さくなるほど検出信号のレベルは低くなる。
正極側検出部521については、第1入力端子が直流遮断部511を介して正極端子211と接続され、第2入力端子が接地され、出力端子が交流調整部540及び演算部550の各々に接続される。
負極側検出部522は、負極端子212に生じる電位の交流成分となる交流電位Vbと、中途点端子213に生じる電位の交流成分となる交流電位Vcとの間の電位差(以下「交流電位差V2」という。)を検出する。
負極側検出部522は、交流電位差V2の振幅に応じて値が変化する検出信号を演算部550に出力する。負極側検出部522については、第1入力端子が直流遮断部512を介して負極端子212と接続され、第2入力端子が接地され、出力端子が交流調整部540及び演算部550の各々に接続される。
次に、正極側直流遮断部511、負極側直流遮断部512、中途点直流遮断部513、正極側検出部521、及び負極側検出部522の詳細について図3を参照して説明する。
ここでは、正極側直流遮断部511〜513の各々は、コンデンサにより実現される。
正極側直流遮断部511は、燃料電池スタック1の正極端子211から出力される直流信号を遮断する第2直流遮断部である。正極側直流遮断部511を構成するコンデンサの一方の電極は、燃料電池スタック1の正極端子211と接続され、他方の電極は、正極側電源部531の出力端子との間に接続される。
負極側直流遮断部512は、燃料電池スタック1の負極端子212から出力される直流信号を遮断する第3直流遮断部である。負極側直流遮断部512を構成するコンデンサの一方の電極は、燃料電池スタック1の負極端子212と接続され、他方の電極は、負極側電源部532の出力端子との間に接続される。
中途点直流遮断部513は、燃料電池スタック1の中途点端子213から出力される直流信号を遮断する第1直流遮断部である。中途点直流遮断部513を構成するコンデンサの一方の電極は、燃料電池スタック1の中途点端子213と接続され、他方の電極は、正極側検出部521の第2入力端子と共に負極側検出部522の第2入力端子と接続される。さらに他方の電極は、接地線533と接続される。
接地線533は、電位が0V(ボルト)となるようにアース(GND)された電源線(電源手段)である。このため、接地線533には、0Vの接地信号(電位信号)が出力される。
正極側検出部521は、電位差検出回路5211と、帯域通過フィルタ(Band Pass filter;BPF)5212と、増幅回路5213と、同期検波回路5214とを含む。
電位差検出回路5211は、交流電位Vaから電位Vcを減算した交流電位差V1に応じた検出信号を出力する。交流電位Vaは、正極端子211から出力される信号のうち、正極側直流遮断部511を通過する信号成分であり、電位Vcは、中途点端子213から出力される信号のうち、中途点直流遮断部513を通過する信号成分である。電位差検出回路5211は、本実施形態では差動アンプにより実現される。
電位差検出回路5211には、負荷3から正極端子211を介してノイズが混入する。負荷3からのノイズに関しては、ノイズの周波数分布が広範囲に亘り、かつ、ノイズレベルが交流電位差V1に比べて3桁ほど大きい。このため、検出信号に含まれる負荷3からの不要信号を除去することが好ましい。
帯域通過フィルタ5212は、検出信号に含まれる不要信号を除去して、検出に必要となる周波数帯域の信号成分のみを通過させる。具体的には、帯域通過フィルタ5212は、電位差検出回路5211から出力される検出信号のうち、交流電流I1の周波数と同一周波数を有する信号成分を通過させ、他の周波数帯域の信号成分を除去する。
増幅回路5213は、帯域通過フィルタ5212から出力される検出信号を増幅して出力する。増幅回路5213の増幅率(ゲイン)は、インピーダンス測定装置5のダイナミックレンジを考慮して定められる。
同期検波回路5214は、増幅回路5213から出力される検出信号のうち、交流電流I1と同じ周波数を有し、かつ、交流電流I1と位相が同じ信号成分、すなわち検出信号の実軸成分のみを抽出する抽出回路である。
具体的には、同期検波回路5214は、交流電流I1と同じ周波数fbを有する信号であって交流電流I1と位相が一致した同相の信号を検出信号に乗算し、その乗算された交流の検出信号を平滑化することによって直流の検出信号V1に変換する。平滑化された検出信号V1は、交流電位差V1の振幅の大きさに応じて変化する。
このように、正極側検出部521は、帯域通過フィルタ5212や同期検波回路5214によって不要信号を除去し、交流電位差V1の振幅に比例した検出信号V1を交流調整部540及び演算部550に出力する。
負極側検出部522は、電位差検出回路5221と、帯域通過フィルタ(BPF)5222と、増幅回路5223と、同期検波回路5224とを含む。これらの構成は、基本的に正極側検出部521と同じ構成であるため、ここでの説明を省略する。
次に、正極側電源部531及び負極側電源部532の構成について説明する。
正極側電源部531及び負極側電源部532は、燃料電池スタック1の正極端子211及び負極端子212の各々に対して、同一周波数を有する交流電流を出力する電源手段である。
正極側電源部531は、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定するために定められた基準となる周波数fbを有する交流電流I1を、正極側直流遮断部511を介して正極端子211へ出力する。正極側電源部531から出力される交流電流I1の振幅は、交流調整部540によって制御される。正極側電源部531は、例えばオペアンプ(Operational Amplifier;OA)を含んで構成される電圧電流変換回路により実現される。以下、基準となる周波数fbは「基準周波数fb」という。
正極側電源部531の詳細について図4を参照して説明する。
正極側電源部531は、電圧電流変換回路5311と同期検波回路5312とを含む。
電圧電流変換回路5311は、基準周波数fbで変化する交流電圧Vi1を交流電流I1に変換し、その交流電流I1を直流遮断部511へ出力する。交流電圧Vi1は、交流調整部540から正極側電源部531に出力される電流指令信号である。
電圧電流変換回路5311は、交流電圧Vi1に基づいて交流電流I1を出力するオペアンプOA1と、検出抵抗素子Rsと、検出抵抗素子Rsに生じる検出電圧Vi1sに応じて交流電流I1の増幅率を調整するオペアンプOA2と、抵抗素子R1〜R5とを含む。
オペアンプOA1は、交流電圧Vi1に比例する交流電流I1を出力する。オペアンプOA1の非反転入力端子(+)は、交流調整部540の正極側端子と接続され、反転入力端子(−)は、抵抗素子R5を介して電流調整用のオペアンプOA2の出力端子と接続される。またオペアンプOA1の出力端子は、抵抗素子R2及び抵抗素子R3を介して接地される。
検出抵抗素子Rsは、オペアンプOA1から出力される交流電流I1の大きさを検出するために設けられた抵抗素子である。検出抵抗素子Rsの一端はオペアンプOA1の出力端子に接続され、検出抵抗素子Rsの他端は、オペアンプOA2の反転入力端子(−)と正極側直流遮断部511とに接続される。
検出抵抗素子Rsの両端に生じる検出電圧Vi1sは、交流電流I1の電流値と検出抵抗素子Rsの抵抗値とを乗算した値(I×R)であり、交流電流I1の大きさに比例する。
オペアンプOA2は、検出抵抗素子Rsに生じる検出電圧Vi1sの大きさを検出する検出回路である。オペアンプOA2から出力される検出信号Vi1sは、オペアンプOA1の反転入力端子(−)にフィードバックされる。そしてオペアンプOA1は、検出信号Vi1sに応じて交流電流I1を増減する。これにより、交流電流I1の振幅が交流電圧Vi1の振幅と比例するように調整される。
抵抗素子R1〜R5の抵抗値は、インピーダンス測定装置5の設計に応じて適宜設定される。
同期検波回路5312は、オペアンプOA2から出力される検出信号Vi1sから不要信号を除去するために、検出信号Vilsのうち、交流電流I1と同一周波数fbであって位相が同じ信号成分のみを抽出する抽出回路である。なお、同期検波回路5312の構成は、図3に示した同期検波回路5214と同じ構成である。
同期検波回路5312は、不要信号を除去した検出信号I1を演算部550に出力する。同期検波回路5312から出力される検出信号I1は、交流電流I1の振幅に比例する直流の信号である。
このように、正極側電源部531は、交流調整部540から出力される電流指令信号に基づいて交流電流I1を出力する。さらに検出抵抗素子Rs及びオペアンプOA2によって交流電流I1の大きさが検出され、同期検波回路5312によって不要信号が取り除かれた検出信号I1が演算部550に出力される。
負極側電源部532は、交流電流I1と同じ基準周波数fbを有する交流電流I2を、負極側直流遮断部512を介して負極端子212へ出力する。負極側電源部532から出力される交流電流I2の振幅は、交流調整部540によって制御される。なお、負極側検出部522の構成は、正極側検出部521と同じ構成であるため、ここでの詳細な説明を省略する。
次に交流調整部540の構成について図5を参照して説明する。
交流調整部540は、正極側の交流電位Vaと負極側の交流電位Vbとが互いに一致するように、正極側電源部531及び負極側電源部532のうち少なくとも一方の電源部から出力される交流電流の振幅及び位相を調整する調整手段である。
本実施形態では、交流調整部540は、正極側電源部531から出力される交流電流I1の振幅と、負極側電源部532から出力される交流電流I2の振幅とを互いに調整する。交流調整部540は、例えばPI(Proportional Integral)制御回路により実現される。
交流調整部540は、正極側減算器5411と、正極側積分回路5421と、正極側乗算器5431と、負極側減算器5412と、負極側積分回路5422と、負極側乗算器5432とを含む。さらに交流調整部540は、基準電源545及び交流信号源546を備える。
基準電源545は、正極側の交流電位差V1と負極側の交流電位差V2とを一致させるために、0V(ボルト)を基準に設定された電圧(以下、「基準電圧Vs」という。)を出力する。基準電圧Vsは、実験等によって定められた値に設定される。ここでは、正極側減算器5411に基準電圧Vsを出力する基準電源545と負極側減算器5412に基準電圧Vsを出力する基準電源545とを便宜上、別々に示しているが、共通の基準電源545から出力するようにしてもよい。
交流信号源546は、基準周波数fbを含む交流信号を発振させる発振源である。基準周波数fbは、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定するのに適した所定の値に設定される。基準周波数fbは、例えば1kHz(キロヘルツ)に設定される。
交流信号源546から出力される信号は、正極側乗算器5431及び負極側乗算器5432に出力されると共に、図3に示した同期検波回路5214及び5224に対して、交流電流I1及びI2と同じ周波数成分を検波するための検波信号として出力される。
正極側減算器5411は、正極側検出部521から出力される検出信号V1から、基準電圧Vsを減算することにより、基準電圧Vsからのズレ幅に比例した差分信号を出力する。例えば、基準電圧Vsからのズレ幅が大きくなるほど差分信号のレベルは高くなる。
正極側積分回路5421は、正極側減算器5411から出力される差分信号を積分することにより、差分信号を平均化する又は感度を調節する。そして正極側積分回路5421は、積分された差分信号を正極側乗算器5431に出力する。
正極側乗算器5431は、交流信号源546から出力される交流信号に対して差分信号を乗算することにより、交流電位差V1の振幅を基準電圧Vsに収束させる交流電圧Vi1を生成する。例えば減算器541から出力される差分信号のレベルが大きくなるほど交流電圧Vi1の振幅は大きくなる。
正極側乗算器5431は、交流電圧Vi1を指令信号として正極側電源部531へ出力する。交流電圧Vi1は、正極側電源部531によって交流電流I1に変換される。
なお、負極側減算器5412、負極側積分回路5422及び負極側乗算器5432は、それぞれ、正極側減算器5411、正極側積分回路5421及び正極側乗算器5431と同じ構成であるため、これらの構成についての説明を省略する。
このように、交流調整部540は、交流電位差V1の振幅が基準電圧Vsとなるように、正極側電源部531から出力される交流電流I1の振幅を調整する。同様に交流調整部540は、交流電位差V2の振幅が基準電圧Vsとなるように、負極側電源部532から出力される交流電流I2の振幅を調整する。
これにより、交流電位Va及び交流電位Vbが互いに同じレベルに制御されるので、正極端子211に重畳される交流電位Vaと、負極端子212に重畳される交流電位Vbとが一致するようになる。このため、インピーダンス測定装置5から燃料電池スタック1へ出力された交流電流I1及びI2が負荷3の方に漏れ出るのを抑制できる。なお、以下では、交流電位Vaと交流電位Vbとが互いに等しくなるように正極側電源部531及び負極側電源部532を制御することを「等電位制御」という。
次に演算部550の構成について図6を参照して説明する。
演算部550は、交流調整部540により調整された交流電流I1及びI2の振幅と交流電位差V1及びV2の振幅とに基づいて、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを演算する演算手段である。
演算部550には、正極側検出部521及び負極側検出部522から、それぞれ交流電位差V1及びV2の振幅を示す検出信号が入力され、正極側電源部531及び負極側電源部532から、それぞれ交流電流I1及びI2の振幅を示す検出信号が入力される。
演算部550は、AD(Analog Digital)変換器551とマイコンチップ552とを含む。
AD変換器551は、交流電流I1及びI2の検出信号、及び交流電位差V1及びV2の検出信号をデジタル数値信号に変換し、マイコンチップ552に転送する。
マイコンチップ552には、燃料電池スタック1の内部抵抗Rn及び燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを算出するプログラムが予め記憶されている。マイコンチップ552は、所定の微小時間間隔で順次内部抵抗Rを演算し、又は、コントロールユニット6の要求に応じて内部抵抗R演算し、その演算結果をコントロールユニット6に出力する。なお、燃料電池スタック1の内部抵抗Rn及び燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rは、次式で演算される。
演算部550は、例えば、アナログ演算ICを含んで構成されるアナログ演算回路により実現される。アナログ演算回路を用いることにより、時間的に連続した抵抗値の変化をコントロールユニット6に出力することができる。
コントロールユニット6は、演算部550から出力される内部抵抗Rを受信すると、内部抵抗Rの大きさに応じて、燃料電池スタック1の運転状態を制御する。
例えば、コントロールユニット6は、内部抵抗Rが高い場合には燃料電池スタック1の電解質膜111が乾いた状態であると判断し、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を減らす。これにより、燃料電池スタック1から持ち出される水分量を減少させることができる。
図7は、交流調整部540で行われる制御をコントローラーによって実現するときの制御方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS1においてコントローラーは、正極側の交流電位Vaが所定値よりも大きいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS2へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS3へ処理を移行する。
ステップS2においてコントローラーは、正極側の交流電位Vaが所定値よりも小さいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS4へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS5へ処理を移行する。
ステップS3においてコントローラーは、正極側電源部531の出力を下げる。すなわち、コントローラーは、交流電流I1の振幅を小さくする。これによって正極交流電位Vaが下がる。
ステップS4においてコントローラーは、正極側電源部531の出力を維持する。これによって正極交流電位Vaが維持される。
ステップS5においてコントローラーは、正極側電源部531の出力を上げる。これによって正極交流電位Vaが上がる。
ステップS6においてコントローラーは、負極の交流電位Vbが所定値よりも大きいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS7へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS8へ処理を移行する。
ステップS7においてコントローラーは、負極の交流電位Vbが所定値よりも小さいか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS9へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS10へ処理を移行する。
ステップS8においてコントローラーは、負極側電源部532の出力を下げる。これによって負極交流電位Vbが下がる。
ステップS9においてコントローラーは、負極側電源部532の出力を維持する。これによって負極交流電位Vbが維持される。
ステップS10においてコントローラーは、負極側電源部532の出力を上げる。これによって負極交流電位Vbが上がる。
ステップS11においてコントローラーは、交流電位Va及び交流電位Vbが所定値であるか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が肯であればステップS12へ処理を移行し、判定結果が否であれば処理を抜ける。
ステップS12においてコントローラーは、上述の式(5−1)及び式(5−2)に基づいて内部抵抗値を演算する。
図8は、インピーダンス測定装置5の制御をコントローラーが実行したときのタイムチャートである。なおフローチャートとの対応が判りやすくなるようにステップ番号を併記する。
図8の初期は、正極側の内部抵抗値R1が、負極側の内部抵抗値R2よりも高い状態である(図8(A))。このような状態でコントローラーが制御を開始する。
時刻t0では、正極交流電位Vaも負極交流電位Vbも制御レベルに達していない(図8(C))。この状態では、コントローラーは、ステップS1→S2→S5→S6→S7→S10→S11を繰り返す。これによって正極側の交流電流I1及び負極側の交流電流I2が増大する(図8(B))。
時刻t1で正極の交流電位Vaが制御レベルに達したら(図8(C))、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S7→S10→S11を繰り返す。これによって正極側交流電流I1が維持されるとともに、負極側の交流電流I2は増大する(図8(B))。
時刻t2で負極交流電位Vbも制御レベルに達して正極の交流電位Vaと同レベルになったら(図8(C))、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S7→S9→S11→S12を処理する。これによって正極側の交流電流I1及び負極側の交流電流I2が維持される。そして式(1−1)に基づいて、正極側の内部抵抗値R1及び負極側の内部抵抗値R2が演算される。そして正極側の内部抵抗値R1と負極側の内部抵抗値R2とが足し合わされて全体の内部抵抗Rが求められる。
時刻t3以降は燃料電池スタックの湿潤状態が変化するなどして負極側の内部抵抗値R2が上昇している(図8(A))。この場合には、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S8→S11→S12を繰り返す。このように処理することで負極側の内部抵抗値R2が上昇に合わせて負極側の交流電流I2を下げるので、負極の交流電位Vbは正極の交流電位Vaと同レベルに維持される。したがってこの状態でも内部抵抗Rが演算される。
時刻t4以降は負極側の内部抵抗値R2が正極側の内部抵抗値R1に一致するようになる(図8(A))。この場合には、コントローラーは、ステップS1→S2→S4→S6→S7→S9→S11→S12を繰り返す。このように処理することで正極側の交流電位Vaと負極側の交流電位Vbとが同レベルに維持され(図8(C))、内部抵抗Rが演算される。
次にインピーダンス測定装置5による等電位制御の作用効果を説明する。
図9は、燃料電池スタック1の正極端子211に生じる正極電位の変化と、負極端子212に生じる負極電位の変化とを例示する図である。
燃料電池スタック1の出力中は、正極端子211及び負極端子212の端子間に、燃料電池スタック1から負荷3に出力される直流電圧Vdcが生じる。インピーダンス測定装置5が起動(ON)される前は、正極端子211の正極電位、及び負極端子212の負極電位は、点線で示すように共に一定であり、正極電位と負極電位との電位差である直流電圧Vdcが負荷3に供給される。その後インピーダンス測定装置5が起動され、正極側電源部531及び負極側電源部532から交流電流I1及びI2が出力されると、正極電位に交流電位Vaが重畳され、負極電位に交流電位Vbが重畳される。
正極側電源部531から出力された交流電流I1は、正極側直流遮断部511を介して、燃料電池スタック1の正極端子211に出力され、中途点端子213及び中途点直流遮断部513を介して正極側検出部521に出力される。このとき、正極端子211と中途点端子213との間には、交流電流I1が内部抵抗R1に供給されることで内部抵抗R1での電圧降下により交流電位差V1(=Va−Vc)が生じる。この交流電位差V1は、正極側検出部521によって検出される。
一方、負極側電源部532から出力された交流電流I2は、負極側直流遮断部512を介して燃料電池スタック1の負極端子212に供給され、中途点端子213及び中途点直流遮断部513を介して負極側検出部522に出力される。このとき、負極端子212と中途点端子213との間には、交流電流I2が内部抵抗R2に供給されることで内部抵抗R2での電圧降下により交流電位差V2(=Vb−Vc)が生じる。この交流電位差V2は、負極側検出部522によって検出される。
交流調整部540は、正極側の交流電位差V1と、負極側の交流電位差V2との電位差(V1−V2)、すなわち交流電位Vaと交流電位Vbとの差(Va−Vb)が常に小さくなるように負極側電源部532を調節する。これにより、正極電位の交流成分Vaの振幅と負極電位の交流成分Vbの振幅とが等しくなるので、直流電圧Vdcは変動せずに一定となる。
そして演算部550は、正極側検出部521及び負極側検出部522から出力される交流電位差V1及びV2と、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流I1及びI2とに基づいてオームの法則を適用する。これにより、燃料電池スタック1の正極側の内部抵抗R1及び負極側の内部抵抗R2が算出される。
ここでは、正極端子211及び負極端子212の交流電位が同じ値になるので、仮に正極端子211及び負極端子212に対して走行用モータなどの負荷3が接続された状態であっても、交流電流I1又はI2が負荷3の方に漏洩するのを抑制できる。
さらに負荷3の作動状態によらず、稼働中の燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2の測定値に基づいて燃料電池スタック1全体の内部抵抗Rを正確に測定することができる。また、正極側電源部531及び負極側電源部532が使用されるので、燃料電池スタック1が停止中であっても内部抵抗Rを測定することができる。
このようなインピーダンス測定装置においては、直流遮断部511〜513を構成するキャパシタンス(静電容量)及び耐電圧によって直流遮断部511〜513のサイズが決められる。このため、直流遮断部511〜513のキャパシタンスを小さくするほど、コンデンサのサイズを小さくすることができる。
しかしながら、次式に示すように、例えば直流遮断部511のキャパシタンスCを小さくすると、基準周波数fbの交流電流I1によって直流遮断部511に生じる電圧降下Vcは大きくなってしまう。
このため、交流電流I1が一定のときには、電圧降下Vcが大きくなる分だけ、燃料電池スタック1の内部抵抗R1によって生じる交流電位差V1は小さくなり、正極側検出部521から出力される検出信号V1が低くなる。したがって、S/N比(Noise to Ratio)が悪くなる。
一方、交流電流I1及びI2の基準周波数fbを高くすることにより直流遮断部511〜513での電圧降下Vcを小さくできるが、交流電流I1及びI2の周波数を基準周波数fbよりも高くすると、内部抵抗R1を測定する精度が低下してしまう。具体的には、交流電流I1及びI2の周波数を基準周波数fbよりも高い周波数に設定すると、電解質膜111の湿潤度と相関のある内部抵抗R1とは異なる成分によって検出信号V1のレベルが変動する。
そこで本実施形態では、交流電流I1及びI2の振幅や基準周波数fbなどのパラメータを変えずに直流遮断部511〜533のサイズが小さくなるように、基準周波数fbの交流電流I1及びI2に対して基準周波数fbよりも高い周波数の交流信号を合成する。
図10は、本発明の第1実施形態における交流信号源546の構成を示す図である。
本実施形態の交流信号源546は、直流遮断部511〜513に出力される信号である交流電流I1及びI2に対して異なる交流信号を合成する合成手段である。
交流信号源546は、混合回路546Aと、基準パルス変換器5464と、搬送パルス変換器5465とを含む。
混合回路546Aは、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流I1及びI2に対して、交流電流I1及びI2の基準となる周波数fbよりも高い周波数fcの交流信号を混合する。混合回路546Aは、基準信号発生器5461と、搬送波信号発生器5462と、乗算器5463とを含む。
基準信号発生器5461は、基準周波数fbで変化する交流信号を発生させる。例えば、基準周波数fbは、図5で述べたとおり1kHzに設定される。基準信号発生器5461から出力される交流信号は、搬送周波数fcの交流信号を変調するための信号であるため、以下では「変調信号」という。
搬送波信号発生器5462は、基準周波数fbよりも高い搬送周波数fcで変化する交流信号を発生させる。例えば、搬送周波数fcは、20kHz以上の値に設定される。搬送波信号発生器5462から出力される交流信号は、以下では「搬送波信号」という。搬送波信号は、交流電流I1及びI2の基準周波数fbの変調信号とは異なる信号である。
乗算器5463は、基準周波数fbよりも高い周波数fcの搬送波信号に対して、基準周波数fbの変調信号を乗算する。これにより、基準周波数fbの交流信号と搬送周波数fcの交流信号とを混合した混合信号(fc±fb)が乗算器5463から出力される。
図11は、混合回路546Aにおいて生成される混合信号の波形を示す図である。
図11(a)は、基準周波数fbの変調信号の波形を示す図である。図11(b)は、搬送周波数fcの搬送波信号の波形を示す図である。図11(c)は、乗算器5463から出力される混合信号の波形を示す図である。図11(a)から図11(c)まで各図面において、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。
乗算器5463によって、基準信号発生器5461から出力される変調信号Sb(t)と、搬送波信号発生器5462から出力される搬送波信号Sc(t)とが合成される。
図11(c)に示すように、乗算器5463から出力される混合信号Smix(t)は、基準周波数fbの変調信号を180度シフトさせた反転信号と変調信号とを重ね合わせた波形を包絡線とする搬送周波数fcの交流信号となる。
この混合信号Smix(t)は、正極側乗算器5431及び負極側乗算器5432の各々に入力されるので、正極側電源部531及び負極側電源部532から出力される交流電流I1及びI2の波形も、乗算器5463から出力される混合信号と同じ波形となる。
図12は、乗算器5463から出力される混合信号Smix(t)の周波数成分を示す図である。
図12(a)は、混合信号の波形と直流遮断部511〜513での電圧降下Vcとの関係を示す図である。図12(b)は、混合信号の周波数分布を示す図である。
図12(a)に示すように、直流遮断部511〜513での電圧降下Vcは、混合信号Smix(t)の包絡線を形成する変調信号Sb(t)の最大値によって決まる。このため、変調信号Sb(t)の振幅が小さくなるほど、電圧降下Vcは小さくなる。
図12(b)には、基準周波数fbの変調信号Sb(t)の周波数成分と搬送周波数fcの搬送波信号Sc(t)の周波数成分とが破線により示され、変調信号と搬送波信号とを混合した混合信号Smix(t)の周波数成分が実線により示されている。
ここで、基準信号発生器5461から出力される正弦波の変調信号Sb(t)は、次式のとおり表わされる。
また、搬送波信号発生器5462から出力される正弦波の搬送波信号Sc(t)は、次式のとおり表わされる。
そして、乗算器5463によって変調信号変調信号Sb(t)が搬送波信号Sc(t)に乗算された混合信号Smix(t)は、次式のとおり表わされる。
このように、混合信号Smix(t)には、搬送周波数fcと基準周波数fbとを加算した周波数(fb+fc)の和信号成分faと、搬送周波数fcから変調周波数fbを減算した周波数(fc−fb)の差信号成分fdとが含まれる。
例えば、基準周波数fbが1kHzに設定され、搬送周波数fcが20kHzに設定される場合には、搬送周波数fcから周波数fbを減算した周波数(fc−fb)は、19kHzとなり、基準周波数fbよりも大きくなる。
したがって、式(2)に示したように、交流信号I1及びI2の周波数fが大きくなるほど、直流遮断部511〜513での電圧降下Vcは小さくなるので、電圧降下Vcの低下分だけ直流遮断部511〜513のキャパシタンスを小さくできる。
このように、搬送周波数fcは、混合信号に含まれる周波数成分のうち差信号の周波数(fc−fb)が基準周波数fbよりも大きくなるように、基準周波数fbを2倍した周波数(2×fb)よりも大きな値に設定される。
そして基準周波数fbの交流電流I1及びI2に対し基準周波数fbよりも高い周波数fcの搬送波信号を乗算することにより、直流遮断部511〜513での電圧降下Vcが小さくなるので、その分だけ直流遮断部511〜513のサイズを小さくできる。
次に、本実施形態における同期検波回路5214及び5224の構成について説明する。まず、同期検波回路5214及び5224に入力される検波信号について図10を参照して説明する。
図10には、同期検波回路5214及び5224に入力される検波信号を生成する構成として、基準パルス変換器5464及び搬送パルス変換器5465が示されている。
基準パルス変換器5464は、基準周波数fbの変調信号を矩形波のパルス信号Dmに変換する。例えば、基準パルス変換器5464は、変調信号がゼロ(0)よりも大きい間は「+1」のパルス信号Dmを出力し、変調信号がゼロよりも小さい間は「−1」のパルス信号Dmを出力する。
搬送パルス変換器5465は、基準周波数fbよりも大きな搬送周波数fcの搬送波信号を矩形波のパルス信号Dcに変換する。例えば、搬送パルス変換器5465は、搬送波信号がゼロよりも大きい間は「+1」のパルス信号Dcを出力し、搬送波信号がゼロよりも小さい間は「−1」のパルス信号Dcを出力する。
図13は、本実施形態における同期検波回路5214及び同期検波回路5224の構成を示す図である。
同期検波回路5214は、搬送パルス乗算器411と、変調パルス乗算器421と、低域通過フィルタ(Low Pass Filter:LPF)431とを含む。
増幅回路5213から搬送パルス乗算器411に入力される検出信号は、図11(c)に示された混合信号と同じ波形である。
搬送パルス乗算器411は、増幅回路5213から出力される検出信号に対して、搬送周波数fcのパルス信号Dcを乗算する。
これにより、検出信号のうち、基準周波数fbの変調信号と位相が同じ交流信号を包絡線とする搬送周波数fcの混合信号は、正(プラス)側で全波整流波形となるように処理される。そして基準周波数fbの変調信号に対して位相が180度回転した反転信号を包絡線とする搬送周波数fcの混合信号は、負(マイナス)側で全波整流波形となるように処理される。
すなわち、変調信号がゼロよりも大きいときには、混合信号が正側で全波整流波形となるように処理され、変調信号がゼロよりも小さいときには、混合信号が負側で全波整流波形となるように処理される。
搬送パルス乗算器411は、正側の全波整流波形と負側の全波整流波形とが交互に形成された検出信号を、変調パルス乗算器421に出力する。
変調パルス乗算器421は、搬送パルス乗算器411から出力される検出信号に対して、基準周波数fbのパルス信号Dmを乗算する。これにより、負側の全波整流波形が正側に反転するので、検出信号の全てが正側で全波整流波形となる。
変調パルス乗算器421は、全波整流波形処理が施された検出信号を、低域通過フィルタ431に出力する。
低域通過フィルタ431は、変調パルス乗算器421から出力される検出信号のうち高周波成分を除去する。これにより、全波整流波形の検出信号が平滑化されて直流の検出信号V1に変換される。低域通過フィルタ431は、例えば、検出信号が出力される抵抗素子の端部を、コンデンサを介して接地した回路構成により実現される。
低域通過フィルタ431は、平滑化された検出信号V1を交流調整部540に出力する。検出信号V1のレベルは、交流電流I1の振幅に比例し、交流電流I1の包絡線の振幅値が大きくなるほど、検出信号V1のレベルが高くなる。
図14は、同期検波回路5214において生成される検出信号の波形を示す図である。
図14(a)は、基準周波数fbのパルス信号Dmの波形を示す図である。図14(b)は、搬送周波数fcのパルス信号Dcの波形を示す図である。
図14(c)は、変調パルス乗算器421から出力される全波整流波形の検出信号が、低域通過フィルタ431によって直流信号V1に変換されたときの波形を示した図である。図14(a)から図14(c)までの各図面において、縦軸が振幅を示し、横軸が共通の時間軸である。
パルス信号Dmが「+1」のときには、パルス信号Dcが「+1」に設定されると、検出信号のうち正側の半波長の正弦波を反転させず、パルス信号Dcが「−1」に設定されると、検出信号のうち負側の半波長の正弦波を正側に反転させる。
一方、パルス信号Dmが「−1」のときには、パルス信号Dcが「+1」に設定されると、検出信号のうち負側の半波長の正弦波を正側に反転させ、パルス信号Dcが「−1」に設定されると、検出信号のうち正側の半波長の正弦波を反転させない。
このように、基準周波数fbに基づいて生成されるパルス信号Dmと、搬送周波数fcに基づいて生成されるパルス信号Dcとを検出信号に乗算することにより、図14(c)に示されるように、検出信号が全波整流波形となるように処理される。そして低域通過フィルタ431によって、全波整流波形の処理が施された検出信号が平滑化される。
図14(c)に示されるように、検出信号の包絡線は、基準周波数fbの変調信号Sb(t)の全波整流波形と同じ波形になるため、基準周波数fbの変調信号の振幅が大きくなるほど、平滑化された検出信号V1のレベルは高くなる。
このように同期検波回路5214は、増幅回路5213から出力される検出信号のうち、基準周波数fbの交流信号と基準周波数fbよりも高い周波数fcの交流信号とに基づいて、交流電流I1と同じ周波数成分の信号を抽出する。
また、同期検波回路5224は、同期検波回路5214と同様に、搬送パルス乗算器412と、変調パルス乗算器422と、低域通過フィルタ(LPF)432とを含む。これらの構成は、それぞれ搬送パルス乗算器411、変調パルス乗算器421、及び低域通過フィルタ431と同じ構成である。このため、同期検波回路5224は、増幅回路5223から出力される検出信号のうち、基準周波数fbの交流信号と基準周波数fbよりも高い周波数fcの交流信号とに基づいて、交流電流I2と同じ周波数成分の信号を抽出する。
このように、基準周波数fbの交流電流I1及びI2に対して基準周波数fbよりも高い周波数fcの交流信号を合成しても、同期検波回路5214及び5224によって、正極側検出部521及び負極側検出部522から出力される検出信号を同期検波することができる。
本発明の第1実施形態によれば、正極側電源部531及び負極側電源部532で構成される電源手段は、燃料電池スタック1の正極端子211及び負極端子212に対して交流電流I1及びI2をそれぞれ出力する。そして正極側検出部521及び負極側検出部522のうち少なくとも一方で構成される検出手段は、正極端子211と中途点端子213との間の交流電位差V1と、負極端子212と中途点端子213との間の交流電位差V2とのうち少なくとも一方の交流電位差を検出する。演算部550で構成される演算手段は、検出手段により検出される交流電位差と、電源手段から出力される交流電流とに基づいて、燃料電池スタック1のインピーダンスを演算する。
さらに、直流遮断部511乃至513で構成される直流遮断手段は、燃料電池スタック1の正極端子211、負極端子212、及び中途点端子213から出力される直流信号を遮断する。そして、交流信号源546で構成される合成手段は、直流遮断手段を介して燃料電池スタック1の正極端子211及び負極端子212に出力される交流電流I1及びI2の変調信号に対して、変調信号とは異なる搬送波信号を合成する。
これにより、式(2)に示したように、直流遮断部511〜513のキャパシタンスCを小さくしても、リアクタンス(1/2π(fc−fb)C)を低く抑えられるので、直流遮断手段の両端に生じる電位差Vcを小さくできる。このため、直流遮断部511〜513のサイズを小さくできる。したがって、インピーダンス測定装置5を小型にすることができるとともに製造コストを抑制することができる。
本実施形態では、交流信号源546は、電源手段から出力される交流電流I1及びI2に対して、交流電流I1及びI2の基準となる周波数fbよりも高い周波数fcを有する交流信号(搬送波信号)を混合する。これにより、電源手段は、直流遮断部511〜513に対して、基準周波数fbよりも高い周波数fcを有する搬送波信号が混合された交流電流I1及びI2を出力する。
これにより、交流電流I1及びI2は、基準周波数fbよりも高い周波数の信号成分を有することになるので、式(2)に示したように、直流遮断部511〜513を構成するコンデンサでの電圧降下Vcを小さくすることができる。
また本実施形態では、抽出回路である同期検波回路5214は、正極側検出部521から出力される検出信号V1のうち、基準周波数fbの交流信号と、基準周波数fbよりも高い周波数fcの交流信号とに基づいて、交流電流I1と同じ周波数成分を抽出する。
これにより、基準周波数fbよりも高い周波数fcの搬送波信号が混合された交流電流I1によって燃料電池スタック1の内部抵抗R1に生じる交流電位差の検出信号V1を同期検波することが可能となる。同様に、同期検波回路5224についても、基準周波数fbの交流信号と、基準周波数fbよりも高い周波数fcの交流信号とに基づいて、検出信号V2を同期検波することが可能となる。
また本実施形態では、交流調整部540は、正極側検出部521により検出された交流電位差V1の検出信号と、負極側検出部522により検出された交流電位差V2の検出信号とが一致するように交流電流I1及びI2の包絡線の振幅を調整する。
これにより、基準周波数fbよりも高い周波数fcの搬送波信号が重畳された交流電流I1及びI2の振幅が調整されるので、交流電位差V1と交流電位差V2とを一致させることができる。このため、燃料電池スタック1の内部抵抗R1及びR2が変動しても、測定精度を維持することができる。
(第2実施形態)
図15は、本発明の第2実施形態における交流信号源546の構成を示す図である。
本実施形態のインピーダンス測定装置は、図2に示したインピーダンス測定装置5と基本的に構成が同じである。このため、インピーダンス測定装置5と構成が同じものについては、同一符号を付してここでの説明を省略する。
本実施形態では、交流信号源546は、図10に示した混合回路546Aに代えて混合回路546Bを備えている。混合回路546Bは、交流電流I1及びI2に対して振幅変調(Amplitude Modulation:AM)処理を施す。混合回路546Bは、基準信号発生器5461と乗算器5463との間に加算器5466を備えている。
加算器5466には、搬送波信号のレベル(振幅)を設定するためのレベル設定電圧Vhが入力される。加算器5466は、基準信号発生器5461から出力される変調信号にレベル設定電圧Vhを加算して、レベル設定電圧Vhが加算された変調信号を乗算器5463に出力する。
乗算器5463は、搬送波信号発生器5462から出力される搬送波信号に対して、レベル設定電圧Vhが加算された変調信号を乗算する。これにより、搬送波信号が振幅変調された混合信号(fc−fb、fc、fc+fb)を出力する。
図16は、本実施形態における混合回路546Bにおいて生成される混合信号に関する図である。
図16(a)は、レベル設定電圧Vhが加算された変調信号と搬送波信号とを乗算した混合信号Smix(t)の波形を示す図である。図16(b)は、混合信号Smix(t)の周波数成分を示す図である。
レベル設定電圧Vhが加算された変調信号Sm(t)は、次式のとおり表わされる。
また、搬送波信号Sc(t)は、上述のとおり式(4)により表わされる。
そして、変調信号Sm(t)を搬送波信号Sc(t)に乗算した混合信号Smix(t)は、次式のとおり表わされる。
このように、混合信号Smix(t)は、搬送波周波数fcと、搬送周波数fcと基準周波数fbとを加算した周波数(fb+fc)の和信号成分と、搬送周波数fcから変調周波数fbを減算した周波数(fc−fb)の差信号成分とで構成される。
このため、搬送波周波数fcを基準周波数fbの2倍よりも大きな値に設定することにより、第1実施形態と同様、基準周波数fbのみの交流電流I1及びI2に比べて直流遮断部511〜513での電圧降下Vcを小さくでき、キャパシタンスCを小さくできる。
(第3実施形態)
図17は、本発明の第3実施形態におけるインピーダンス測定装置の構成を示す図である。
本実施形態のインピーダンス測定装置は、図2に示したインピーダンス測定装置5の構成に加えて、分圧回路560を備えている。なお、中途点直流遮断部513、正極側直流遮断部511及び負極側直流遮断部512は、それぞれ第1直流遮断部、第2直流遮断部及び第3直流遮断部と呼ぶことができる。
分圧回路560は、燃料電池スタック1と直流遮断部511〜513の間に接続され、正極端子211と負極端子212との間に生じる直流電圧Vdcを分割する。そして分圧回路560は、交流電流I1及びI2の基準となる0Vの電位(GND_C)に対して、直流電圧Vdcが分割された分圧信号Vb1及びVb2を共に結合させる。
本実施形態では、分圧回路560は、燃料電池スタック1の正極端子211と正極側直流遮断部511とを接続する信号線501と、負極端子212と負極側直流遮断部512とを接続する信号線502との間に接続される。
分圧回路560は、接地線533に接続される。接地線533には、アース(GND_C)されて0Vの接地信号が出力される。接地線533は、正極側電源部531及び負極側電源部532の両方で用いられる共通の接地線である。
例えば、直流電圧Vdcは、300V〜600V(ボルト)である。また、正極端子211と中途点端子213との間に生じる正極側電圧Vd1と、負極端子212と中途点端子213との間に生じる負極側電圧とは、150V〜300Vである。
分圧回路560は、互いに直列に接続された抵抗素子561及び抵抗素子562を有する。
抵抗素子561及び抵抗素子562は、直流電圧Vdcを分割するための分圧素子である。抵抗素子561及び抵抗素子562は、共に同じ抵抗値であり、直流遮断部511乃至513の絶縁抵抗の最小値よりも小さい抵抗値、例えば100MΩ(メガオーム)に設定される。
抵抗素子561の一端は信号線501に接続され、抵抗素子561の他端は抵抗素子562の一端と接続され、抵抗素子562の他端は信号線502に接続される。抵抗素子561と抵抗素子562との間の接点NDは、接地線533と接続される。
抵抗素子561の両端に生じる電圧Vb1は、抵抗素子562の両端に生じる電圧Vb2は同じ電圧値であり、例えば150〜300Vである。
このため、正極側直流遮断部511及び負極側直流遮断部512の各々には、燃料電池スタック1から直流電圧Vdcの半分(1/2)の電圧が印加されることになる。したがって、正極側直流遮断部511及び負極側直流遮断部512の耐電圧を、燃料電池スタック1から出力される直流電圧Vdcの最大値(上限値)の半分に抑えることができる。
また、中途点直流遮断部513の一方の電極には、燃料電池スタック1の中途点端子213から、負極側電圧Vd2が供給される。そして他方の電極には、分圧回路560の接点NDから、直流電圧Vdcを半分に分割した分圧((Vd1+Vd2)/2)が供給される。
したがって、中途点直流遮断部513の両方の電極には、直流電圧Vdcの半分の分圧と負極側電圧Vd2との差分((Vd2−Vd1)/2)である電圧Vb3が印加されることになる。すなわち、中途点直流遮断部513には、正極側電圧Vd1と負極側電圧Vd2との差分をさらに半分にした電圧が印加されるだけである。
例えば、燃料電池スタック1の発電状態に関わらず、電圧Vd1と電圧Vd2とがほぼ等しい状態で維持される燃料電池スタック1であれば、中途点直流遮断部513の両極に印加される電圧はほぼゼロとなる。このような場合には、中途点直流遮断部513として、低耐電圧のコンデンサを使用するか、あるいは省略することも可能である。
このように分圧回路560は、一方の抵抗素子561を介して正極端子211から出力される電圧信号Vd1と、他方の抵抗素子562を介して負極端子212から出力される電圧信号Vd2とを接地線533の電位(0V)を基準として足し合わせる(合成させる)。
本発明の第2実施形態によれば、分圧回路560は、直流遮断部511〜513と燃料電池スタック1の電極端子211〜213との間に接続され、正極端子211と負極端子212との間に生じる直流電圧Vdcを分割する。そして分圧回路560は、交流電流I1及びI2の基準となる電位の接地線533に対して、直流電圧Vdcが分割された分圧信号Vb1及びVb2を結合させる。
これにより、正極端子211及び負極端子212から直流遮断部511及び512に印加される電圧が低減されるので、直流遮断部511及び512の耐電圧を下げることができ、直流遮断部511及び512のサイズを小さくできる。
また本実施形態では、分圧回路560は、燃料電池スタック1から出力される直流電圧Vdcを分割する複数の分圧素子として、正極端子211と負極端子212との間に直列に接続された抵抗素子561及び抵抗素子562を有する。そして抵抗素子561と抵抗素子562との間の接点NDに接地線533が接続される。
これにより、直流電圧Vdが抵抗素子561及び562によって半分に分割されるとともに、分割された電圧信号(分圧信号)Vd1及びVd2が接地線533において結合されるので、中途点直流遮断部513に加えられる電圧を低減することができる。このため、中途点直流遮断部513の耐電圧を小さくできるので、中途点直流遮断部513のサイズを小さくできる。
これに加えて、正極端子211から正極側直流遮断部511に供給される直流電圧と、負極端子212から負極側直流遮断部512に供給される直流電圧とが共に半分になるので、正極側直流遮断部511及び負極側直流遮断部512のサイズも小さくすることができる。
また本実施形態では、正極端子211と接点NDとの間に接続された抵抗素子561の抵抗値と、負極端子212と接点NDとの間に接続された抵抗素子562の抵抗値とは、互いに同じ値に設定される。これにより、中途点直流遮断部513の両極に印加される電圧を小さくできる。
なお、本実施形態では、直流電圧Vdcを分割する分圧素子として、抵抗素子561及び562を用いる例について説明したが、容量素子などが用いられてもよい。
(第4実施形態)
図18は、本発明の第4実施形態におけるインピーダンス測定装置の構成を示す図である。
本実施形態のインピーダンス測定装置は、図17に示した中途点直流遮断部513及び分圧回路560に代えて、中途点直流遮断部570と分圧回路580とを備えている。中途点直流遮断部570及び分圧回路580以外の構成については、図17に示した構成と同じである。
中途点直流遮断部570は、燃料電池スタック1の中途点端子213から出力される直流信号を遮断する直流遮断手段である。中途点直流遮断部570は、コンデンサ571とコンデンサ572とを含む。
コンデンサ571は、正極側電源部531の接地線(GND_A)と接続される第1コンデンサである。コンデンサ571の一方の電極は、中途点端子213と接続され、他方の電極は、接地線5331と接続される。
接地線5331は、電位が0Vとなるようにアース(GND_A)された第1接地線であり、正極側電源部531で用いられる接地線(GND_A)と共通のものである。
コンデンサ572は、負極側電源部532の接地線(GND_B)と接続される第2コンデンサである。コンデンサ572の一方の電極は、コンデンサ571の一方の電極とともに中途点端子213と接続され、他方の電極は、接地線5331から絶縁された接地線5332と接続される。
接地線5332は、電位が0Vとなるようにアース(GND_B)された接地線であって接地線5331とは独立した第2接地線である。接地線5332は、負極側電源部532で用いられる接地線(GND_B)と共通のものである。
分圧回路580は、直列に接続された抵抗素子581〜584を有する。抵抗素子581〜584の各々は、第3実施形態と同じように互いに同じ抵抗値である。
抵抗素子581及び抵抗素子582は、燃料電池スタック1の正極端子211と中途点端子213との間に直列に接続され、抵抗素子583及び抵抗素子584は、燃料電池スタック1の負極端子212と中途点端子213との間に直列に接続される。
抵抗素子581の一端は信号線501と接続され、抵抗素子581の他端は抵抗素子582の一端と接続され、抵抗素子582の他端は抵抗素子583の一端と接続される。そして、抵抗素子583の他端は抵抗素子584の一端と接続され、抵抗素子584の他端は信号線502と接続される。
互いに隣接する抵抗素子581及び抵抗素子582の間の接点ND1は、接地線5331と接続され、互いに隣接する抵抗素子583及び抵抗素子584の間の接点ND2は、接地線5332と接続される。
抵抗素子581〜584に生じる電圧Vb1〜Vb4の各々は同じ電圧値である。すなわち、抵抗素子581〜584によって、直流電圧Vdcが互いに等しく4つに分割される。例えば、直流電圧Vdcが600Vであれば、各電圧Vb1〜Vb4は150Vとなる。
正極側直流遮断部511は、燃料電池スタック1の正極端子211から、直流電圧Vdcの1/4の電圧が印加されるだけである。負極側直流遮断部512についても、燃料電池スタック1の負極端子212から、直流電圧Vdcの1/4の電圧が印加されるだけである。したがって、正極側直流遮断部511及び負極側直流遮断部512の耐電圧を、直流電圧Vdcの最大値の1/4に抑えることができる。
また、コンデンサ571の両方の電極には、直流電圧Vdcを4等分した分圧((Vd1+Vd2)/4)である電圧Vb2が印加されるだけである。コンデンサ572の両方の電極についても、直流電圧Vdcを4等分した分圧((Vd1+Vd2)/4)である電圧Vb3が印加されるだけである。したがって、コンデンサ571及びコンデンサ572の耐電圧についても、直流電圧Vdcの最大値の1/4に抑えることができる。
本発明の第4実施形態によれば、中途点直流遮断部513の代わりに、正極側検出部521のためのコンデンサ571と、負極側検出部522のためのコンデンサ572とが別々に設けられる。コンデンサ571には正極側電源部531と共通の接地線5331が接続され、コンデンサ572には負極側電源部532と共通の接地線5332が接続される。
また、分圧回路580を構成する抵抗素子581〜584のうち、正極端子211と中途点端子213との間に直列に接続された抵抗素子581及び582は、正極の方の分圧素子群として用いられる。また、負極端子212と中途点端子213との間に直列に接続された抵抗素子583及び584は、負極の方の分圧素子群として用いられる。
一方の分圧素子群である抵抗素子581及び582同士の接点ND1は、第1接地線5331と接続され、他方の分圧素子群である抵抗素子581及び582同士の接点ND2は、第2接地線5332と接続される。
これにより、正極側直流遮断部511、負極側直流遮断部512、並びに中途点直流遮断部570を構成するコンデンサ571及び562の両極に生じる電位差を、直流電圧Vcの1/4の電圧値に抑えることができる。したがって、コンデンサの耐電圧が直流電圧Vcの最大値の1/4のものを用意すればよいので、直流遮断部511〜513のサイズを小さくできる。
上記第1乃至第4実施形態を組み合わせることで、交流電流I1及びI2に搬送波信号を混合する混合回路546Aによって直流遮断部511〜513のキャパシタンスを小さくでき、分圧回路560によって直流遮断部511〜513の耐電圧を小さくできる。
したがって、直流遮断部511〜513のサイズを小さくすることができるので、インピーダンス測定装置5の構成を簡素にするとともに製造コストを抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記実施形態では、図4に示した同期検波回路5214は、検出信号の実軸成分を抽出する例について説明したが、検出信号の実軸成分の二乗値と虚軸成分の二乗値との和の平方根を演算してベクトル値を求め、これを検出信号V1として出力してもよい。なお、検出信号の虚軸成分は、交流電流I1と位相が直交する直交信号を検出信号に乗算して平滑化することにより得られる。ベクトル値を利用することにより、交流電位差V1又はV2の振幅が正確に求められるので、等電位制御を適切に実行することができる。
また、上記実施形態では演算部550が、燃料電池スタック1の内部抵抗を求める例について説明したが、演算部550は、燃料電池スタック1の内部抵抗に加えて、交流電位差V1及びV2の虚軸成分を求めて燃料電池スタック1が有する静電容量を算出するものであってもよい。
また、上記実施形態では、インピーダンス測定装置5により燃料電池スタック1の内部インピーダンスを測定する例について説明したが、測定対象は、複数の電池セルが積層された積層電池であればよく、例えば積層型のリチウムイオンバッテリーであってもよい。
また、正極側及び負極側の内部抵抗が殆ど変動しないリチウムイオンバッテリーであれば、インピーダンス測定装置5の回路構成を簡略化してもよい。例えば、交流調整部540を省略して電源部531及び532からは、振幅と位相とが一致した交流電流I1及びI2を固定的に出力する。また検出部521及び522の一方を省略して他方の検出部(例えば正極側検出部521)のみで検出される交流電位差(例えば交流電位差V1)と、その交流電位差を生じさせる交流電流(例えば交流電流I1)とを用いて内部抵抗を演算する。このような回路構成であっても、上記実施形態と同じような効果を得ることができる。
また、本実施形態では、中途点端子213が燃料電池スタック1の中間に設けられ、交流調整部540によって交流電位差V1及びV2の振幅が同一の基準値Vsとなるように交流電流I1及びI2の振幅を制御する例について説明した。しかしながら、中途点端子213は、燃料電池スタック1の中間に位置する発電セル10から外れた発電セル10に設けられてもよい。この場合にも正極端子211に生じる交流電位Vaと、負極端子に生じる交流電位Vbとが一致すればよいので、中途点端子213が設けられた発電セル10の位置によって内部抵抗R1と内部抵抗R2との抵抗比を予め求め、その抵抗比に合わせて交流電位差V1及びV2の各振幅の基準値Vsをそれぞれ設定すればよい。
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。