JP2016012537A - 燃料電池用ガス拡散シートおよび燃料電池 - Google Patents

燃料電池用ガス拡散シートおよび燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】カソード触媒層に効率よく空気を供給することができる燃料電池用ガス拡散シート、およびその燃料電池用ガス拡散シートを用いた燃料電池を提供すること。【解決手段】ガスを透過させるための気孔を有するカソード側GDL72と、カソード側GDL72に積層されるカソード側MPL73とを備え、燃料電池3のカソード電極66に積層されるカソード側拡散シート68において、カソード側MPL73の一方面(カソード電極66に対向する面)に、カソード側MPL73を貫通しないように溝74を形成する。【選択図】図2

Description

本発明は、車両などに搭載される燃料電池に用いられる燃料電池用ガス拡散シート、およびその燃料電池用ガス拡散シートを用いた燃料電池に関する。
従来、燃料電池として、燃料が供給されるアノードと、空気が供給されるカソードとが、固体高分子膜からなる電解質層を挟んで対向配置されている固体高分子形燃料電池が知られている。
また、燃料電池に採用される電極として、電解質膜と、電解質膜の一方の面に接合されたアノード電極(燃料側触媒層)と、電解質膜の他方の面に接合されたカソード電極(空気側触媒層)とを備える膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)が知られている。
このような膜電極接合体(MEA)では、通常、触媒層にガス拡散層(Gas DiffusionLayer:GDL)が積層されており、また、例えば、導電性やガス拡散性の向上を図るため、それら触媒層とガス拡散層との間に、中間層としてマイクロポーラス層(Micro Porous Layer:MPL)を介在させることが知られている。
具体的には、例えば、鱗片状黒鉛、アセチレンブラックおよびポリテトラフルオロエチレンを含むMPLインクを調製し、そのMPLインクを耐熱性保持シート上に塗布し、乾燥および焼成することによって、MPLシートを作成し、その後、得られたMPLシートと、撥水処理したカーボンペーパーからなるGDL基材上とを、ホットプレスによって接合し、GDLを形成することが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
国際公開パンフレット2012/172993
ここで、通常、電解質膜としてアニオン交換型の固体高分子膜を用いる燃料電池のカソードでは、空気中の酸素と、外部から供給される水とが反応することによって、水酸化物イオンが生成される。生成された水酸化物イオンは、膜電極接合体を通過して、燃料電池のアノードにおいて燃料と反応し、起電力を生じさせる。
ここで、アノードに供給された燃料が、アノードにおいて反応することなく電解質膜を透過して、カソードに漏出する場合がある。
特許文献1では、MPLシートがカソードに密着しているので、カソードに漏出した燃料がMPLシートとカソードとの間に保持されて、カソードへの空気の供給が阻害される場合がある。
そこで、本発明の目的は、カソード触媒層に効率よく空気を供給することができる燃料電池用ガス拡散シート、およびその燃料電池用ガス拡散シートを用いた燃料電池を提供することにある。
本発明の燃料電池用ガス拡散シートは、燃料電池のカソード触媒層に積層される燃料電池用ガス拡散シートであって、ガスを透過させるための気孔を有するガス拡散層と、前記ガス拡散層に積層されるマイクロポーラス層とを備え、前記マイクロポーラス層は、前記ガス拡散層に向かい合う第1面と、前記マイクロポーラス層の厚み方向において、前記第1面と反対側の第2面と、前記マイクロポーラス層を貫通しないように前記第2面から前記ガス拡散層へ向かって凹む凹部とを有することを特徴としている。
このような構成によれば、カソード触媒層に積層される燃料電池用ガス拡散シートの第2面に凹部が形成されている。
そのため、マイクロポーラス層の第2面をカソード触媒層に対向配置すれば、カソード触媒層に漏出した燃料を凹部内に流通させて、マイクロポーラス層とカソード触媒層との間から効率よく排出することができる。
その結果、カソード触媒層に効率よく空気を供給することができ、カソード触媒層において、確実に電気化学反応を生じさせて、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
また、本発明の燃料電池用ガス拡散シートでは、前記凹部は、前記厚み方向と直交する面方向の一方向に延びていることが好適である。
このような構成によれば、カソード触媒層に漏出した燃料を面方向の一方向に流通させて、マイクロポーラス層とカソード触媒層との間から効率よく排出することができる。
本発明の燃料電池は、膜・電極接合体を備える燃料電池であって、前記膜・電極接合体は、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に形成されるアノード触媒層と、前記電解質膜の他方面に形成されるカソード触媒層と、上記の燃料電池用ガス拡散シートとを備え、前記燃料電池用ガス拡散シートは、前記第2面が前記カソード触媒層に向かい合うように、前記電解質膜に積層されることを特徴としている。
このような構成によれば、凹部が形成された第2面がカソード触媒層に対向配置されている。
そのため、カソード触媒層に漏出した燃料を凹部内に流通させて、マイクロポーラス層とカソード触媒層との間から効率よく排出することができる。
その結果、カソード触媒層に効率よく空気を供給することができ、カソード触媒層において、確実に電気化学反応を生じさせて、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
本発明の燃料電池用ガス拡散シートおよび燃料電池によれば、カソード触媒層に効率よく空気を供給することができ、カソード触媒層において、確実に電気化学反応を生じさせて、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
図1は、本発明の燃料電池の一実施形態を搭載した電動車両の概略構成図を示す。 図2は、図1に示す燃料電池のセルを示す概略構成図である。 図3は、図2に示す燃料電池用ガス拡散シートを示す概略図である。 図4A〜図4Dは、燃料電池用ガス拡散シートの製造方法を示す工程図であって、図4Aは、ガス拡散層を用意する工程、図4Bは、ガス拡散層の表面にカーボンスラリーを塗布してカーボン層を形成する工程、図4Cは、カーボンスラリーが塗布されたガス拡散層を熱処理し、マイクロポーラス層を形成する工程、図4Dは、マイクロポーラス層に凹部を形成する工程を、それぞれ示す。 図5A〜図5Cは、図2に示す燃料電池のセルを製造するための製造工程図であって、図5Aは、膜・電極接合体を作製する工程、図5Bは、膜・電極接合体にアノード側拡散シートおよびカソード側拡散シートを積層する工程、図5Cは、膜・電極接合体に、燃料供給部材および空気供給部材を組み付ける工程を、それぞれ示す。
1.電動車両の全体構成
図1に示すように、電動車両1は、燃料電池3およびバッテリー53を選択的に動力源とするハイブリッド車両であって、燃料電池システム2を搭載している。
燃料電池システム2は、燃料電池3と、燃料給排部4と、空気給排部5と、制御部6と、動力部7とを備えている。
(1)燃料電池
燃料電池3は、液体燃料が直接供給される直接液体燃料形燃料電池であり、電動車両1の中央下側に配置されている。
(2)燃料給排部
燃料給排部4は、電動車両1において燃料電池3の後側に配置されている。燃料給排部4は、燃料タンク21と、燃料供給ライン23と、燃料還流ライン24と、排気ライン25とを備えている。
燃料タンク21は、燃料電池3の後側に間隔を隔てて配置されている。燃料タンク21は、略ボックス形状を有し、燃料成分を含む液体燃料を貯蔵するように構成されている。
燃料成分としては、例えば、分子中に水素原子を含有する含水素液体燃料が挙げられ、具体的には、メタノールなどのアルコール類、ジメチルエーテルなどのアルキル基を有するエーテル類、ヒドラジン類などが挙げられ、好ましくは、アルコール類およびヒドラジン類が挙げられ、さらに好ましくは、ヒドラジン類が挙げられる。
ヒドラジン類としては、例えば、ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、塩酸ヒドラジン(NHNH・HCl)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、カルボンヒドラジド((NHNHCO)などが挙げられる。
このようなヒドラジン類のうち、好ましくは、炭素を含まないヒドラジン類、すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどが挙げられる。ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどは、COおよびCOの生成がなく、触媒の被毒が生じないことから、耐久性の向上を図ることができ、実質的なゼロエミッションを実現することができる。
このような燃料成分は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
燃料供給ライン23は、燃料タンク21から燃料電池3へ液体燃料を供給するための配管である。燃料供給ライン23の供給方向上流端は、燃料タンク21の下端部に接続されている。燃料供給ライン23の供給方向下流端は、燃料電池3の燃料供給口82(後述、図2参照)に接続されている。燃料供給ライン23は、第1ポンプ26を備えている。
第1ポンプ26は、燃料供給ライン23の途中に介在されている。第1ポンプ26としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが挙げられる。第1ポンプ26は、駆動することにより、燃料タンク21内の液体燃料を燃料電池3に供給する。
燃料還流ライン24は、燃料電池3から燃料タンク21へ液体燃料を還流するための配管である。燃料還流ライン24の還流方向上流端は、燃料電池3の燃料排出口83(後述、図2参照)に接続されている。燃料還流ライン24の還流方向下流端は、燃料タンク21の上端部に接続されている。燃料還流ライン24は、気液分離器27を備えている。
気液分離器27は、燃料還流ライン24の途中に介在されている。気液分離器27は、液体燃料とガス(気体)とを分離する。
排気ライン25は、気液分離器27で分離されたガスを電動車両1から外へ排気するための配管である。排気ライン25の排気方向上流端は、気液分離器27に接続されている。排気ライン25の排気方向下流端は、大気開放されている。なお、排気ライン25の途中には、ガスを無害化および無臭化するための図示しない浄化装置が介在されている。
(3)空気給排部
空気給排部5は、電動車両1において燃料電池3の前側に配置されている。空気給排部5は、空気供給ライン41と、空気排出ライン42とを備えている。
空気供給ライン41は、電動車両1の外から燃料電池3へ空気を供給するための配管である。空気供給ライン41の供給方向上流端は、大気開放されている。空気供給ライン41の供給方向下流端は、燃料電池3の空気供給口85(後述、図2参照)に接続されている。空気供給ライン41は、第2ポンプ43を備えている。
第2ポンプ43は、空気供給ライン41の途中に介在されている。第2ポンプ43としては、例えば、エアコンプレッサなどの公知の送気ポンプが挙げられる。第2ポンプ43は、駆動することにより、電動車両1外からの空気を燃料電池3に供給する。
空気排出ライン42は、燃料電池3から電動車両1の外へ空気を排出するための配管である。空気排出ライン42の排出方向上流端は、燃料電池3の空気排出口86(後述、図2参照)に接続されている。空気排出ライン42の排出方向下流端は、大気開放されている。
(4)制御部
制御部6は、ECU51を備えている。
ECU51は、電動車両1における電気的な制御を実行するコントロールユニット(すなわち、Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
ECU51は、第1ポンプ26および第2ポンプ43のそれぞれと電気的に接続されている。
(5)動力部
動力部7は、電動車両1の前端部において、いわゆるエンジンルーム内に配置されている。動力部7は、モータ52と、バッテリー53とを備えている。
モータ52は、燃料電池3に電気的に接続されている。モータ52は、燃料電池3から出力される電気エネルギーを電動車両1の駆動力として機械エネルギーに変換する。モータ52としては、例えば、三相誘導電動機、三相同期電動機などの公知の三相電動機などが挙げられる。
バッテリー53は、燃料電池3とモータ52との間の配線に電気的に接続されている。バッテリー53としては、例えば、ニッケル水素電池や、リチウムイオン電池などの公知の二次電池などが挙げられる。
2.燃料電池
燃料電池3は、図2に示すように、膜・電極接合体61、膜・電極接合体61の一方側(アノード側)に配置された燃料供給部材62、および、膜・電極接合体61の他方側(カソード側)に配置された空気供給部材63を有する燃料電池セル(単位セル)が、複数積層されたスタック構造に形成されている。なお、図2では、複数の単位セルのうち1つだけを燃料電池3として表し、その他の単位セルについては省略している。
膜・電極接合体61は、電解質膜64、電解質膜64の厚み方向一方側の面(以下、単に一方面と記載する。)に形成されるアノード触媒層の一例としてのアノード電極65、電解質膜64の厚み方向他方側の面(以下、単に他方面と記載する。)に形成されるカソード触媒層の一例としてのカソード電極66、アノード電極65に積層されるアノード側拡散シート67、および、カソード電極66に積層される燃料電池用ガス拡散シートの一例としてのカソード側拡散シート68を備えている。
電解質膜64は、アニオン交換型の高分子電解質膜(アニオン交換膜)から形成されている。
電解質膜64の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、50μm以下、好ましくは、35μm以下である。
アノード電極65は、例えば、触媒を担持した触媒担体により形成されている。また、触媒担体を用いずに、触媒を、直接、アノード電極65として形成してもよい。
アノード電極65の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
カソード電極66は、例えば、アノード電極65と同様に、触媒を担持した触媒担体により形成されている。
また、カソード電極66は、例えば、錯体形成有機化合物および/または導電性高分子とカーボンとからなる複合体(以下、この複合体を「カーボンコンポジット」という。)に、遷移金属が担持されている材料により形成されてもよい。
カソード電極66の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、例えば、300μm以下、好ましくは、150μm以下である。
カソード側拡散シート68は、ガスを透過させるための気孔を有するガス拡散層(GDL)としてのカソード側GDL72と、カソード側GDL72に積層されるマイクロポーラス層(MPL)としてのカソード側MPL73とを備えている。
カソード側GDL72は、ガス透過性材料から形成されている。
ガス透過性材料としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、炭素繊維不織布などが挙げられる。好ましくは、カーボンクロスが挙げられる。また、ガス透過性材料は、必要によりフッ素処理されていてもよい。
また、カソード側GDL72は、ガスを透過させるための気孔を有している。例えば、ガス透過性材料として用いられるカーボンクロスは、カーボン繊維の束を、織ることにより得られる。そのため、カーボン繊維を束ねることにより生じる繊維間の空隙(比較的小さい孔)や、さらには、編み目(比較的大きい孔)などとして、気孔を有する。
カソード側GDL72の最小気孔径は、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
また、カソード側GDL72の最大気孔径は、例えば、50μm以上、好ましくは、75μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
また、このようなカソード側GDL72は、集電体としても作用する。
また、カソード側GDL72は、市販品として入手可能であり、例えば、B−1 Carbon Cloth Type A No wet proofing(BASF社製)、ELAT(登録商標) LT 1400−W(BASF社製)などが挙げられる。
カソード側GDL72の厚みは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、例えば、600μm以下、好ましくは、500μm以下である。
カソード側MPL73は、例えば、カーボン粒子およびバインダ樹脂から形成されている。
カーボン粒子としては、特に制限されないが、例えば、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、例えば、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。
これらカーボン粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
カーボン粒子の一次粒子の平均粒子径(測定方法:レーザー回折式粒度分布測定法)は、例えば、5nm以上であり、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下である。
バインダ樹脂は、カーボン粒子間を結着させ、カソード側MPL73の強度を確保することができれば、特に制限されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
これらバインダ樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
カソード側MPL73において、カーボン粒子とバインダ樹脂との含有割合は、それらの総量100質量部に対して、カーボン粒子が、例えば、50質量部以上、好ましくは、55質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。また、バインダ樹脂が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、45質量部以下である。
カソード側MPL73の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
また、カソード側MPL73には、図3に示すように、複数の凹部の一例としての溝74が、形成されている。
複数の溝74のそれぞれは、カソード側MPL73を貫通しないように、カソード側MPL73の第2面の一例としての一方面から他方へ向かって凹み、上下方向に延びている。複数の溝74は、幅方向において、互いに間隔を隔てて並列配置されている。なお、カソード側MPL73の他方面は、第1面の一例である。
複数の溝74のそれぞれの溝幅(幅方向内寸)は、例えば、20μm以上、好ましくは、50μm以上であり、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
複数の溝74のそれぞれの溝幅が上記範囲内であると、カソード電極66に漏出した液体燃料を、カソード電極66とカソード側MPL73との間から効率よく排出し、カソード電極66に効率よく空気を供給することができる。また、複数の溝74のそれぞれの溝幅が上記下限値未満であると、カソード電極66に漏出した液体燃料を排出することが困難となり、カソード電極66への空気の供給量が低下する場合がある。
複数の溝74のそれぞれの開口面積の合計は、例えば、カソード側MPL73の総面積の1.3%以上、好ましくは、4.0%以上であり、例えば、40%以下、好ましくは、14%以下である。
複数の溝74のそれぞれの深さ(厚み方向内寸)は、例えば、カソード側MPL73の厚みの10%以上、好ましくは、20%以上であり、例えば、60%以下、好ましくは、50%以下であり、具体的には、10μm以上、好ましくは、15μm以上であり、例えば、40μm以下、好ましくは、35μm以下である。
複数の溝74のそれぞれの深さが上記範囲内であると、カソード電極66に漏出した液体燃料を、カソード電極66とカソード側MPL73との間から効率よく排出し、カソード電極66に効率よく空気を供給することができる。複数の溝74のそれぞれの深さが上記下限値未満であると、カソード電極66に漏出した液体燃料を排出することが困難となり、カソード電極66への空気の供給量が低下する場合がある。
複数の溝74のそれぞれの幅方向間隔は、例えば、300μm以上、好ましくは、650μm以上であり、例えば、1480μm以下、好ましくは、1200μm以下である。
アノード側拡散シート67は、ガスを透過させるための気孔を有するガス拡散層(GDL)としてのアノード側GDL69を備えている。
アノード側GDL69としては、例えば、カソード側GDL72として例示した、ガス透過性材料などが挙げられる。アノード側GDL69として、好ましくは、カーボンクロスが挙げられる。
また、アノード側GDL69は、カソード側GDL72と同様に、ガスを透過させるための気孔を有している。
アノード側GDL69の最小気孔径は、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
また、アノード側GDL69の最大気孔径は、例えば、50μm以上、好ましくは、75μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
また、アノード側GDL69は、カソード側GDL72と同様に、集電体としても作用する。
アノード側GDL69の厚みは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、例えば、600μm以下、好ましくは、500μm以下である。
図2に示すように、燃料供給部材62は、ガス不透過性の導電性部材からなり、アノード電極65に液体燃料を供給する。燃料供給部材62には、その表面から凹む、例えば、葛折状などの溝が形成されている。そして、燃料供給部材62は、溝の形成された表面が、アノード側拡散シート67を介して、アノード電極65に対向接触されている。これにより、アノード電極65の一方面と燃料供給部材62の他方面(溝の形成された表面)との間には、アノード電極65全体に燃料成分を接触させるための燃料供給路81が形成される。
燃料供給路81には、燃料成分を燃料供給部材62内に流入させるための燃料供給口82が一端側(図2における紙面下側)に形成され、燃料成分を燃料供給部材62から排出するための燃料排出口83が他端側(図2における紙面上側)に形成されている。
空気供給部材63は、ガス不透過性の導電性部材からなり、カソード電極66に空気を供給する。空気供給部材63には、その表面から凹む、例えば、葛折状などの溝が形成されている。そして、空気供給部材63は、溝の形成された表面が、カソード側拡散シート68を介して、カソード電極66に対向接触されている。これにより、カソード電極66の他方面と空気供給部材63の一方面(溝の形成された表面)との間には、カソード電極66全体に空気を接触させるための空気供給路84が形成される。
空気供給路84には、空気を空気供給部材63内に流入させるための空気供給口85が他端側(図2における紙面上側)に形成され、空気を空気供給部材63から排出するための空気排出口86が一端側(図2における紙面下側)に形成されている。
2.燃料電池用ガス拡散シートの製造方法
次に、カソード側拡散シート68の製造方法について説明する。
まず、この方法では、図4Aに示すように、カソード側GDL72を用意する。なお、カソード側GDL72は、必要により、撥水処理されていてもよい。
次いで、この方法では、図4Bに示すように、カソード側GDL72の表面に、カーボンスラリーを塗布し、カーボン層91を形成する。
カーボンスラリーは、例えば、上記したカーボン粒子(カソード側MPL73を形成するためのカーボン粒子)と、上記したバインダ樹脂(カソード側MPL73を形成するためのバインダ樹脂)とを、水に分散させることにより得ることができる。
カーボンスラリーにおけるカーボン粒子の濃度は、カーボンスラリーの総量に対して、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
また、カーボンスラリーにおけるバインダ樹脂の濃度は、カーボンスラリーの総量に対して、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
また、カーボンスラリーには、公知の界面活性剤、公知の増粘剤などの添加剤を配合することもできる。なお、添加剤の配合割合は、特に制限されず、適宜設定される。
また、塗布方法としては、特に制限されないが、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法などによる塗布や、バーコーター、アプリケーターなどを用いたキャスティングなどが挙げられる。
次いで、この方法では、図4Cに示すように、カーボンスラリーが塗布されたカソード側GDL72を熱処理し、カソード側MPL73を形成する。
熱処理条件としては、加熱温度が、例えば、200℃以上、好ましくは、300℃以上であり、例えば、450℃以下、好ましくは、400℃以下である。また、加熱時間が、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
これにより、カソード側GDL72の表面に、カーボン粒子およびバインダ樹脂からなるカソード側MPL73を形成することができる。
次いで、この方法では、図4Dに示すように、カソード側拡散シート68のカーボン層91に凹部92を形成する。
凹部92は、例えば、凹部92に対応する形状の突条を有する型などをカソード側MPL73の上に積層して、プレスすることにより、形成される。
このようにして、カソード側拡散シート68を得ることができる。
3.燃料電池の製造方法
図2に示される燃料電池3を製造するには、図5Aに示すように、例えば、まず、電解質膜64と、電解質膜64を挟むように積層されるアノード電極65およびカソード電極66とを備える膜・電極接合体61を作製する。
膜・電極接合体61を作製するには、例えば、スプレー法、ダイコーター法、インクジェット法など公知の塗布方法により、電解質膜64の一方面にアノード電極65用の触媒インクを塗布し、電解質膜64の他方面にカソード電極66用の触媒インクを塗布し、乾燥させ、必要により、加圧する。これにより、アノード電極65およびカソード電極66が電解質膜64に積層される膜・電極接合体61が形成される。触媒インクには、触媒、電解質樹脂(アイオノマ)および溶媒などが含まれる。
次いで、この製造方法では、図5Bに示すように、膜・電極接合体61に接触するように、アノード側拡散シート67およびカソード側拡散シート68を、積層する。
アノード側拡散シート67およびカソード側拡散シート68を膜・電極接合体61に積層するには、膜・電極接合体61の両側に、アノード側拡散シート67がアノード電極65の表面を被覆し、カソード側拡散シート68のカソード側MPL73がカソード電極66の表面を被覆するように、アノード側拡散シート67およびカソード側拡散シート68を配置して、必要により加圧する。また、必要に応じて、ガスケット(図示せず)などで固定する。
なお、このとき、アノード電極65は、厚み方向に押圧されることによって、アノード側GDL69に埋設される。また、カソード側MPL73およびカソード電極66は、厚み方向に押圧されることによって、カソード側GDL72に埋設される。
次いで、この製造方法では、図5Cに示すように、アノード側拡散シート67のアノード側GDL69に接触するように、燃料供給部材62を膜・電極接合体61に組付けるとともに、カソード側拡散シート68のカソード側GDL72に接触するように、空気供給部材63を膜・電極接合体61に組付ける。
燃料供給部材62および空気供給部材63の組付けでは、例えば、膜・電極接合体61の両側に、燃料供給部材62がアノード側拡散シート67のアノード側GDL69を被覆し、空気供給部材63がカソード側拡散シート68のカソード側GDL72を被覆するように、燃料供給部材62および空気供給部材63を配置して、膜・電極接合体61を挟むように、それらを固定具にて固定する。
これにより、燃料電池3の単位セルを作製することができる。
なお、必要に応じて、単位セルを複数スタックすることにより、燃料電池スタックを作製することもできる。単位セルをスタックする方法は、特に制限されず、公知の手法に準拠する。
4.燃料電池による発電
第1ポンプ26および第2ポンプ43が作動させると、図2に示すように、燃料成分が燃料供給口82からアノード電極65に供給される。また、空気が空気供給口85からカソード電極66に供給される。液体燃料は、、アノード電極65と接触しながら燃料供給路81を通過する。また、空気は、カソード電極66と接触しながら空気供給路84を通過する。
そして、各電極(アノード電極65およびカソード電極66)において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、電解質膜64がアニオン交換型の固体高分子膜であり、燃料成分がヒドラジンである場合には、電気化学反応は、下記式(1)〜(3)の通りとなる。
(1)N+4OH→N+4HO+4e (アノード電極65での反応)
(2)O+2HO+4e→4OH (カソード電極66での反応)
(3)N+O→N+2HO (燃料電池3全体での反応)
すなわち、ヒドラジンが供給されたアノード電極65では、ヒドラジン(N)とカソード電極66での反応で生成した水酸化物イオン(OH)とが反応して、窒素(N)および水(HO)が生成するとともに、電子(e)が発生する(上記式(1)参照)。
ここで、上記の発電において、アノード電極65に供給された液体燃料が、アノード電極65において反応することなく電解質膜64を透過し、カソード電極66に漏出する場合がある(クロスリーク)。
カソード電極66に漏出した液地燃料は、カソード側MPL73の溝74を介して、カソード電極66とカソード側MPL73との間から排出される。
一方、カソード電極66では、電子(e)と、外部からの供給もしくは燃料電池3での反応で生成した水(HO)と、空気供給路84を流れる空気中の酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)が生成する(上記式(2)参照)。
生成した水酸化物イオン(OH)が、電解質膜64を通過してアノード電極65に到達し、上記式(1)の反応が生じる。
そして、このようなアノード電極65およびカソード電極66での電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池3全体として上記式(3)で表わされる反応が生じて、燃料電池3に起電力が発生する。すなわち、燃料電池3は、燃料成分を消費して発電する。
なお、上記の電気化学的反応は、電解質膜64がアニオン交換型の固体高分子膜であり、液体燃料がメタノールである場合には、下記式(4)〜(6)の通りとなる。
(4)CHOH+6OH→CO+5HO+6e(アノード電極65での反応)
(5)O+2HO+4e→4OH (カソード電極66での反応)
(6)CHOH+3/2O→CO+2HO (燃料電池3全体での反応)
5.作用効果
このカソード側MPL73および燃料電池3によれば、図2に示すように、カソード電極66に積層されるカソード側MPL73の一方面に溝74が形成されている。
そのため、カソード電極66に漏出した液体燃料を溝74内に流通させて、カソード電極66とカソード側MPL73との間から効率よく排出することができる。
その結果、カソード電極66に効率よく空気を供給することができ、カソード電極66において、確実に電気化学反応(上記式(2)、(5)参照)を生じさせて、燃料電池3の発電効率を向上させることができる。
また、カソード側MPL73および燃料電池3では、図3に示すように、溝74は、厚み方向と直交する面方向に一方向、具体的には上下方向に延びている。
そのため、カソード電極66に漏出した液体燃料をカソード側MPL73の面方向に流通させて、効率よく排出することができる。
なお、上記した説明では、燃料電池3の燃料として液体燃料を用いているが、燃料としては特に制限されず、例えば、水素ガスなどの気体燃料を用いることもできる。
また、上記した説明では、溝74は、上下方向に延びているが、幅方向に延びてもよい。また、溝74は、上下方向に延びる溝と幅方向に延びる溝とが互いに交差した格子状に形成されてもよい。
3 燃料電池
61 膜・電極接合体
64 電解質膜
65 アノード電極
66 カソード電極
68 カソード側拡散シート
72 カソード側GDL
73 カソード側MPL
74 溝

Claims (3)

  1. 燃料電池のカソード触媒層に積層される燃料電池用ガス拡散シートであって、
    ガスを透過させるための気孔を有するガス拡散層と、
    前記ガス拡散層に積層されるマイクロポーラス層とを備え、
    前記マイクロポーラス層は、
    前記ガス拡散層に向かい合う第1面と、
    前記マイクロポーラス層の厚み方向において、前記第1面と反対側の第2面と、
    前記マイクロポーラス層を貫通しないように前記第2面から前記ガス拡散層へ向かって凹む凹部とを有する
    ことを特徴とする、燃料電池用ガス拡散シート。
  2. 前記凹部は、前記厚み方向と直交する面方向の一方向に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散シート。
  3. 膜・電極接合体を備える燃料電池であって、
    前記膜・電極接合体は、
    電解質膜と、
    前記電解質膜の一方面に形成されるアノード触媒層と、
    前記電解質膜の他方面に形成されるカソード触媒層と、
    請求項1または2に記載の燃料電池用ガス拡散シートと
    を備え、
    前記燃料電池用ガス拡散シートは、前記第2面が前記カソード触媒層に向かい合うように、前記電解質膜に積層されることを特徴とする、燃料電池。
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