JP2016011358A - 樹脂組成物、樹脂組成物からなる放熱シート、及び放熱シートを含むパワーデバイス装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含む樹脂組成物により課題を解決する。
【選択図】図2
Description
パワー半導体デバイスは、一般的には、複数の半導体デバイスを共通のヒートシンク上に配してパッケージングしたパワー半導体モジュールとして利用される。
また、その他窒化ホウ素をフィラーとして樹脂組成物中に配合する技術は、特許文献2、3などが知られている。
本発明は、上記問題点を解決するものであり、保存安定性が改善され、かつ、塗布成膜性が改善された窒化ホウ素フィラーを含有する樹脂組成物を提供することを課題とする。
が高くフィラーの分散状態を維持することができ、塗布時になると粘度が低く良好な塗布成膜性を発揮できる樹脂組成物の存在に想到した。そして、このような樹脂組成物を用いて放熱シートを製造することで、組成物中でのフィラーの沈降を防ぎ、かつ、塗布時には良好な成膜性であることから、高品質な放熱シートを提供できることを見出した。
[1]XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含む樹脂組成物。
[2]更に溶剤を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記極性基を含有する化合物が、ウレア基、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルデヒド基からなる群から選択される1種以上を含む、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含み、
25℃において、ずり速度10-3sec-1における粘度をV1、ずり速度25sec-1における粘度をV2としたときのV1/V2が10以上である、樹脂組成物。
[5]前記樹脂がマトリクス樹脂である[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前期マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂はナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂を含む[5]に記載の樹脂組成物。
[7]放熱シート用スラリーである、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。[8][1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる、放熱シート。
[9][8]に記載の放熱シートを含むパワーデバイス装置。
本発明の樹脂組成物は、窒化ホウ素二次粒子(以下。窒化ホウ素フィラーともいう。)及び樹脂を含む。そして、必要に応じて溶剤を含んでもよい。
本発明の樹脂組成物は、25℃において、ずり速度10-3sec-1における粘度をV1、ずり速度10sec-1における粘度をV2としたときのV1/V2が10以上であることを特徴とする。
このような性質を有する樹脂組成物は、静止状態においては粘度が高く窒化ホウ素フィ
ラーの分散状態を維持することができ、塗布時になると粘度が低く良好な成膜性を発揮できる樹脂組成物である。
従来存在する窒化ホウ素二次粒子は、窒化ホウ素一次粒子の配向を極力抑えた窒化ホウ素二次粒子であり、例えば球状の窒化ホウ素二次粒子であっても、そのエッジ面がほとんど外側に露出していない。
一方で本発明者らは、特定の窒化ホウ素二次粒子、具体的にはXRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子は、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側に露出しており、エッジ面の表面積が増加することで、窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションを高めることを見出した。
このように、窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションが高いことで、静置状態、すなわちずり速度10-3sec-1における粘度は高く、窒化ホウ素二次粒子の沈降を生ぜず、塗布状態、すなわちずり速度25sec-1における粘度は低く、良好な塗布性能を発揮できる樹脂組成物となる。
より好ましくは窒化ホウ素一次粒子が板状であって、平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子であり、更に好ましくは窒化ホウ素一次粒子が多角形状であって、平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子である。
窒化ホウ素二次粒子の凝集形態は走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
一方上限は特段限定されず、通常10000以下である。
上記下限値を下回ると、静置状態で窒化ホウ素二次粒子の沈降が生じやすくなるか、塗布性能が悪化する。
また、上記V2の値は、良好な塗布性能を発揮する観点から、通常25Pa・s以下であり、20Pa・s以下であることが好ましく、15Pa・s以下であることがよりに好ましく、10Pa以下であることが更に好ましい。一方、通常は0.1Pa・s以上である。
上記粘度は、例えばRheologica Instruments社製のVAR-50を用いて測定することができる。
以下、本発明の樹脂組成物に含有される成分について説明する。
樹脂組成物に含有される窒化ホウ素二次粒子は、XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子である。このような性質を有する窒化ホウ素二次粒子は、窒化ホウ素一次粒子がa軸を外に向けるように法線方向へ成長させた二次粒子であり、窒化ホウ素二次粒子表面において、窒化ホウ素一次粒子が放射状に配置された窒化ホウ素二次粒子である。そのため、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側に露出しており、窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションが非常に高い。該窒化ホウ素二次粒子を含有する組成物は、組成物の動き(ずり速度)に応じて粘度を変化させる。
上記強度比I(100)/I(004)は、通常3.0以上、好ましくは3.2以上、より好ましくは3.4以上、更に好ましくは3.5以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。
なお、ピーク強度比は粉末X線回折測定により測定された該当するピーク強度の強度比から計算することができる。
なお、ここで、「平均結晶子径」とは、粉末X線回折測定によって得られる(002)面ピークからScherrer式にて求められる結晶子径をさす。なお、測定に供する試料は、樹脂が内包される前の窒化ホウ素二次粒子でもよく、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子でもよい。
窒化ホウ素二次粒子の比表面積は通常1m2/g以上であるが、好ましくは3m2/g以上50m2/g以下、より好ましくは5m2/g以上40m2/g以下である。
なお、比表面積は、BET1点法(吸着ガス:窒素)で測定することができる。
窒化ホウ素二次粒子の好ましい例としては、上記説明したように、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子であるが、窒化ホウ素一次粒子の長軸が通常0.5〜10μmに成長し、二次粒子の中心側から表面側へ向けて放射状に成長したウニ様の外観を形成していることも好ましい。窒化ホウ素二次粒子を構成する窒化ホウ素一次粒子の長軸は、好ましくは、0.6〜5μmであり、より好ましくは、0.8〜3μmであり、更に好ましくは、1.0〜3.0μmのh−BNが凝集した粒子である。
尚、長軸とは走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子1粒を拡大し、1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長を平均した値である。
窒化ホウ素二次粒子は、体積基準の最大粒子径Dmax(本明細書では、単に「最大粒子
径」と記載する場合がある。)が、通常2μm以上であり、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上である。また、通常300μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは80μm以下である。
窒化ホウ素二次粒子を製造する方法としては、制限はないが、特にI(100)/I(004)の値を上記範囲とするためには、原料となる窒化ホウ素(以下、これを粉砕したものとともに原料BN粉末と記することがある。)を粉砕工程で粉砕した後、造粒工程で凝集させることにより造粒し、更に加熱処理する加熱工程を経ることが好ましい。より具
体的には、原料BN粉末を一旦媒体中に分散させて原料BN粉末のスラリー(以下、「BNスラリー」と記することがある。)とした後、粉砕処理を施し、その後得られたスラリーを用いて球形の粒子に造粒し、造粒した凝集BN造粒粒子の結晶化を行うために加熱処理を施すことが好ましい。
窒化ホウ素二次粒子(以下、凝集BN粒子ともいう。)を製造する場合には、以下に説明する窒化ホウ素の粒子を原料として用いることが可能である。ただし、凝集BN粒子の原料としては以下のものに特に限定されない。
より具体的には、凝集BN粒子を製造する際の原料となる窒化ホウ素(原料BN粉末)としては、市販のh−BN、市販のαおよびβ−BN、ホウ素化合物とアンモニアの還元窒化法により作製されたBN、ホウ素化合物とメラミンなどの含窒素化合物から合成されたBN、ホウ水素ナトリウムと塩化アンモニウムから作製されるBNなど何れも制限なく使用できるが、特にh−BNが好ましく用いられる。
原料BN粉末の全酸素含有量を上記範囲に調整する方法としては、BN加熱時の加熱温度を2500℃以下の低温で行う方法などが挙げられる。
なお、原料BN粉末の酸素含有量は、不活性ガス融解−赤外線吸収法によりHORIBA製酸素・窒素分析計を用いて測定することができる。
り好ましくは0.5cm3/g以上1.0cm3/g以下である。
また、原料BN粉末の比表面積は通常20m2/g以上であるが、好ましくは20m2/g以上500m2/g以下、より好ましくは50m2/g以上200m2/g以下である。
全細孔容積が1.0cm3/g以下であることにより、原料BN粉末が密になっている
ために凝集BN粒子を構成する一次粒子として用いた場合に、球形度の高い造粒が可能となる。また、比表面積が20m2/g以上であることにより、造粒による球形化の際に用
いるBNスラリー中の分散粒子径を小さくすることができるため好ましい。
BNスラリーの調製に用いる媒体としては特に制限はなく、水及び/又は各種の有機溶剤を用いることができるが、噴霧乾燥の容易さ、装置の簡素化などの観点から、水(純水)を用いることが好ましい。
水の使用量は、多過ぎると噴霧乾燥時の負荷が増大し、少な過ぎると均一分散が困難であることから、原料BN粉末に対して通常0.5〜20質量倍、特に0.5〜10質量倍とすることが好ましい。
BNスラリーの、25℃1atmにおける粘度は、通常100mPa・s以上であり、好ましくは300mPa・s以上である。また通常3000mPa・s以下であり、好ましくは2000mPa・s以下である。この範囲であることで、樹脂を内包しやすい窒化ホウ素二次粒子を製造し易くなる。
BNスラリーには、後述の粉砕処理時のスラリーの粘度上昇を抑制すると共に、BN粒子の分散安定性(凝集抑制)の観点から、種々の界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、界面活性剤は、以下の粉砕処理の前に添加してもよく、粉砕処理後に添加してもよい。
BNスラリーは、原料BN粉末を効果的に凝集粒子に造粒するために、バインダーを含むことが好ましい。バインダーは、元来、粒子同士が接着性のない原料BN粉末を強固に結びつけ、造粒粒子の形状を安定化するために作用する。
これらのバインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
BNスラリーは、そのまま噴霧乾燥による造粒工程に供してもよいが、造粒に先立ち、スラリー中の原料BN粉末を粉砕処理して微細化することが好ましく、微細化することにより、凝集化を円滑に行うことができるようになる。
即ち、原料BN粉末の粒子径にもよるが、原料BN粉末をそのまま媒体中に分散させた場合、BN粉末は平板状粒子であるために、凝集化の工程で造粒されない粒子が多くなる傾向にあるが、微細化で、効率的な凝集化を行える。
BNスラリーから凝集BN粒子である造粒粒子を得るには、特に制限はないがスプレードライ法が好適に用いられる。スプレードライ法では、原料となるスラリーの濃度、装置に導入する単位時間当たりの送液量と送液したスラリーを噴霧する際の圧空圧力及び圧空量により、所望の大きさの造粒粒子を製造することが可能であって、球状の造粒粒子を得ることも可能である。球状化に際して使用するスプレードライ装置に制限はないが、より大きな球状BN造粒粒子とするためには、回転式ディスクによるものが最適である。このような装置としては、大川原化工機社製スプレードライヤーFシリーズ、藤崎電機社製スプレードライヤー「MDL−050M」などが挙げられる。
上記の造粒により得られた窒化ホウ素の造粒粒子は、更に非酸化性ガス雰囲気下に加熱処理されるのが好ましい。
ここで、非酸化性ガス雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、アンモニアガス、水素ガス、メタンガス、プロパンガス、一酸化炭素ガスなどの雰囲気のことである。ここで用いる雰囲気ガスの種類により凝集BN粒子の結晶化速度が異なるものとなり、例えばアルゴンガスでは、結晶化の速度が遅くなり、加熱処理時間が長時間に及ぶ。結晶化を短時間で行うためには特に窒素ガス、もしくは窒素ガスと他のガスを併用した混合ガスが好適に用いられる。この加熱処理の条件を適切に選択することも、凝集BN粒子の
比表面積や全細孔容積を特定の範囲としながら、表面に窒化ホウ素一次粒子を放射状に、かつ、カードハウス構造に配置させる上で、重要である。
加熱処理を施す焼成炉は、マッフル炉、管状炉、雰囲気炉などのバッチ式炉やロータリーキルン、スクリューコンベヤ炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、竪型連続炉などの連続炉が挙げられ、目的に応じて使い分けられる。
凝集BN粒子の粉砕の方法は特に限定されず、ジルコニアビーズ等の粉砕用メディアと共に攪拌混合する方法や、ジェット噴射等の従来公知の粉砕方法を適用できる。
上記加熱処理後の凝集BN粒子は、平均粒子径を大きくし、しかも組成物に配合したときの粘度上昇を抑制するために、好ましくは分級処理する。この分級は、通常、造粒粒子の加熱処理後に行われるが、加熱処理前の造粒粒子について行い、その後加熱処理に供してもよい。
ましく用いられる。
乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、分級精度の観点からは、風力分級が好ましく、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うことができる。これらの中で、サブミクロンからシングルミクロン領域の小さな微粒子を分級するには旋回気流式分級機を、それ以上の比較的大きな粒子を分級するには半自由渦遠心式分級機など、分級する粒子の粒子径に応じて適宜使い分ければよい。
上述のようにして、原料BN粉末を造粒し、加熱処理をすることによって、その形状を保持したままh−BNの結晶を成長させることで、上述した物性の別の態様として、表面に通常0.05μm以上5μm以下の窒化ホウ素一次粒子(以下、「BN一次粒子」と記載する場合がある。)を配置することが可能となり、カードハウス構造を有する凝集粒子とすることができる。好ましくは板状のBN一次粒子の平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子とすることができ、より好ましくは多角形状の窒化ホウ素一次粒子の平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子とすることができる。更に好ましくは、凝集BN粒子が球状であるという上記物性の別の形態として表すことができる。尚、「球状」とは、アスペクト比(長径と短径の比)が1以上2以下、好ましくは1以上1.5以下であることをさす。凝集BN粒子は、後述の原料BN粉末を凝集させて造粒された粒子であり、この造粒粒子が「球状」であることが好ましく、「球状であることが好ましい」とは、一次粒子の形状が球状であることが好ましいというものではない。凝集BN粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された画像から200個以上の粒子を任意に選択し、それぞれの長径と短径の比を求めて平均値を算出することにより決定する。
本発明に用いられる窒化ホウ素二次粒子では、このような特異的な結晶成長により得られることで、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側を向いており、樹脂組成物中において窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションを高めることができる。また、熱伝導性の等方性、マトリクス樹脂との混練性、耐崩壊性に優れるという効果を奏することから、好ましい。
へ成長し、かつ、カードハウス構造となるのに対して、全酸素含有量が1質量%未満の原料h−BNを用いた場合は、円周方向に結晶成長(h−BNのC面を外に向けるように成長)しており、この結果、カードハウス構造を形成せず、比表面積が小さく、全細孔容積も大きいものとなると考えられる。
樹脂組成物は樹脂を含み、マトリクス樹脂であってよい。熱伝導性の担い手は、上述のフィラーである窒化ホウ素二次粒子であるが、パワー半導体デバイス用の放熱シートは、10W/mK以上の高い熱伝導性を必要とされるため、放熱シートに用いられるマトリクス樹脂の熱伝導性も高いことが望ましい。
フィラーとの複合化で高い熱伝導性を得るために、マトリクス樹脂の熱伝導率は0.2W/mK以上であることが好ましく、特に0.22W/mK以上であることが好ましい。
マトリクス樹脂の硬化膜について、以下の装置を用いて、熱拡散率、比重、及び比熱を測定し、この3つの測定値を乗じることで熱伝導率を求める。
(1)熱拡散率:アイフェイズ社製 「アイフェイズ・モバイル 1u」
(2)比重:メトラー・トレド社製 「天秤 XS−204」
(固体比重測定キット使用)
(3)比熱:セイコーインスツル社製 「DSC320/6200」
エポキシ樹脂としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。中でも、耐熱性がより一層高められることから、フルオレン骨格及び/又はビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が特に好ましく、とりわけビルフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格及びビフェニル骨格のうちの少なくとも1つ以上の骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましい。
また、樹脂組成物中の窒化ホウ素二次粒子の含有量は、通常50wt%以上、好ましくは55wt%以上、より好ましくは65wt%以上であり、通常95wt%以下、好ましくは92wt%以下、より好ましくは88wt%以下である。
放熱シート中に上記範囲でマトリクス樹脂、及び窒化ホウ素二次粒子を含有させることで、高い熱伝導性を発揮することができる。
樹脂組成物には、極性基を有する化合物を有することが好ましい。
樹脂組成物中に含まれる窒化ホウ素二次粒子は、上述のとおり、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側を向いているため、窒化ホウ素二次粒子同士で高いインタラクションを生じるところ、極性基により当該インタラクションを更に高めることができる。そして、本発明の特徴である、樹脂組成物のV1/V2を所望の値とし易くすることができる。すなわち、エッジ面に存在する官能基と極性基の水素結合形成の増加によって、静止状態でより粘度の高い樹脂組成物を得ることができる。
また、樹脂組成物中において極性基を有する化合物の含有量は、通常0.05wt%以上、好ましくは0.1wt%以上であり、また通常10wt%以下、好ましくは5wt%以下である。
樹脂組成物は、適宜溶剤を含有させても良い。溶剤としては、水を用いてもよく、有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、以下に例示するアルコール系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、アルカン系溶剤、エチレングリコールエーテル及びエーテル・エステル系容剤、プロピレングリコールエーテル及びエーテル・エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤の中から、樹脂の溶解性等を考慮して、好適に選択して用いることができる。
樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤を含有していてもよい。
硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基等などの、マトリクス樹脂の架橋基間の架橋反応に寄与する物質を示す。
エポキシ樹脂においては、必要に応じて、エポキシ樹脂用の硬化剤、硬化促進剤が共に用いられる。
硬化剤の具体例としては、WO2013/081061に例示されたものを用いることができる。
これらの硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
上記硬化剤の中でも、イミダゾール又はその誘導体やジシアンジアミン化合物が好適に用いられる。
硬化剤の含有量は、マトリクス樹脂100質量部に対して、通常0.1〜60質量部であり、0.5〜40質量部が好ましい。
樹脂組成物には、機能性の更なる向上を目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の添加剤(その他の添加剤)を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、液晶性エポキシ樹脂等の、前記のマトリクス樹脂に機能性を付与した機能性樹脂、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、繊維状窒化ホウ素等の窒化物粒子、アルミナ、繊維状アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の絶縁性金属酸化物、ダイヤモンド、フラーレン等の絶縁性炭素成分、樹脂硬化剤、樹脂硬化促進剤、粘度調整剤、分散安定剤が挙げられる。
また、樹脂組成物には、成形時の流動性改良及び基材との密着性向上の観点より、熱可塑性のオリゴマー類を含有させることもできる。
これらは、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
添加剤の具体例については、WO2013/081061に例示されたものを用いることができ、添加量についてもWO2013/081061に記載の範囲とすることができる。
上記樹脂組成物は、放熱シート用スラリーとして好適に用いられる。
放熱シート用スラリーは上記特定の窒化ホウ素二次粒子、マトリクス樹脂、溶剤およびその他の添加剤を混合し、これらの構成材料を分散・混合することを目的として、ペイントシェーカーやビーズミル、プラネタリミキサ、攪拌型分散機、自公転攪拌混合機、三本ロール、ニーダー、単軸又は二軸混練機等の一般的な混練装置などを用いて混合することが好ましい。
放熱シート用塗布液の固形分濃度がこの上限以上の場合、スラリーが増粘しすぎて、レベリング性が悪くなり、均一な塗布膜を形成することができない。一方、この下限以下の場合、放熱シートに所望のドライ膜厚を得るためには、ウェット膜厚を厚くすることが必要となる。ウェット膜厚を厚くすると、それを乾燥するための製造コストが高くなるだけでなく、タクトタイムも長くなってしまう。さらに、乾燥におけるムラの発生が起こる恐れがある。
上記樹脂組成物及び放熱シート用スラリーを用いて、各種の成形体を製造することができる。
この成形体を成形する方法は、樹脂組成物の成形に一般に用いられる方法を用いることができる。
例えば、放熱シート用スラリーを所望の形状で、例えば、型へ充てんした状態で硬化させることによって成形することができる。このような成形体の製造法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、及び圧縮成形法を用いることができる。
また、放熱シート用スラリーがエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂組成物を含む場合、成形体の成形、すなわち硬化は、それぞれの組成に応じた硬化温度条件で行うことができる。
以下、放熱シートを製造する方法を具体的に説明する。
まず基板の表面に、放熱シート用スラリーで塗膜を形成する。
即ち、放熱シート用スラリーを用いて、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法、その他の任意の方法で塗膜を形成する。スラリーの塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの塗布装置を用いることにより、基板上に所定の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能であり、好ましい。
なお、基板としては、後述の厚さの銅箔が一般的に用いられるが、何ら銅基板に限定されるものではない。
放熱シート用スラリーを塗布することにより形成された塗膜を、溶剤や低分子成分の除去のために、通常10〜150℃、好ましくは25〜100℃、より好ましくは、30〜90℃、特に好ましくは、40〜80℃の任意の温度で乾燥することができる。ただし、溶剤の沸点を越えないことが望ましい。この温度範囲の上限以上の場合、溶剤除去時に、
溶剤の対流のために、塗布膜表面が荒れてしまうことがある。加えて、放熱シート用スラリーが熱硬化性樹脂を含む場合、スラリーが硬化してしまい、その後のプレスプロセスで樹脂が流れなくなり、ボイドを除去することができない恐れがある。なお、この温度範囲の下限以下であると、効果的に溶剤を取り除くことができず、溶剤除去に時間がかかってしまう恐れがある。乾燥時間は、通常5分〜10日間、好ましくは、10分〜3日間、より好ましくは20分〜1日間、特に好ましくは、30分から4時間の加熱処理を行って乾燥膜を形成する。
乾燥時間が短すぎると、十分に溶剤が除去できず、残留溶剤が放熱シート内のボイドになってしまう恐れがある。乾燥時間が長すぎると、生産性があげられず、製造プロセスコストが高くなる恐れがある。
乾燥工程の後には、加圧工程を行ってもよい。シート化工程は、窒化ホウ素同士を接合させヒートパスを形成する目的、シート内のボイドや空隙をなくす目的、基材との密着をさせる目的から加圧することが望ましい。加圧工程は、銅基板上の乾燥膜に通常10kgf/cm2〜2000kgf/cm2、好ましくは50kgf/cm2〜1000kgf/
cm2、より好ましくは80kgf/cm2〜800kgf/cm2、特に好ましくは10
0kgf/cm2〜500kgf/cm2の加重をかけて実施することが望ましい。この加圧時の加重を上記上限以下とすることにより、窒化ホウ素二次粒子が圧壊することなく、シート中に空隙などがない高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。また、加重を上記下限以上とすることにより、凝集BN粒子間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。
加圧工程では、銅基板に塗布、乾燥した組成物膜を通常25〜300℃、好ましくは40〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に好ましくは60〜160℃で加熱することが望ましい。この温度範囲でシート化工程を行うことにより、加熱は乾燥膜中の樹脂の溶融粘度を低下させることができ、シート内のボイドや空隙をなくすことができる。この温度範囲以上で行うと、有機成分が分解する恐れや残留溶剤が蒸気となり、ボイドを形成する恐れがある。
加圧工程は、通常30秒〜4時間、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは3分〜1時間、特に好ましくは5分〜45分である。この上限時間以上では、放熱シートの製造プロセス時間が長すぎ、生産コストが高くなる恐れがある。この下限時間以下では、シート内の空隙やボイドを十分に取り除けないため、熱伝達性能や耐電圧特性に影響を与える恐れがある。
特に加圧工程と硬化工程を経るシート化工程においては、上記の範囲の加重をかけて、後述の圧縮率の範囲となるように加圧、硬化を行うことが好ましい。
ことが出来る。
また、このような圧縮率で硬化させて得られる本発明の放熱シートの厚み方向の熱伝導率は、より好ましくは15〜40W/mK、特に好ましくは20〜40W/mKである。
また、上記放熱シートは、XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上であることが好ましい。上記範囲であることで、上記説明した特定の性質を有する窒化ホウ素二次粒子を含有しており、シートに成形する前の樹脂組成物において、本発明の粘度範囲を満たしている可能性が高い。
本発明の別の実施態様は、放熱シートを支持体に積層させてなる積層放熱シートである。支持体は特段限定されないが、熱伝導性を高くするために、特に銅箔を用いることが好まれ、例えば、上述の放熱シートの製造方法により製造され、銅箔が積層一体化されたものが好ましい。
また、銅箔の厚さは通常、十分な放熱性を確保するという理由から、30〜200μm、特に30〜150μmであることが好ましい。
上記放熱シート又は積層放熱シートは、放熱基板としてパワーデバイス装置に実装することができる。上記放熱シート及び積層放熱シートを備えたパワーデバイス装置は、高い熱伝導性による放熱効果で、高い信頼性のもとに、高出力、高密度化が可能である。パワー半導体デバイス装置において、放熱シート又は積層放熱シート以外のアルミ配線、封止材、パッケージ材、ヒートシンク、サーマルペースト、はんだというような部材は従来公知の部材を適宜採用できる。
<窒化ホウ素二次粒子の製造例1>
以下に記載する方法で、BN−A凝集粒子を調製した。
BN−A凝集粒子を作製するためには、原料として、粉末X線回折測定によりえられる(002)面ピークの半値幅が2θ=0.67°、酸素濃度が7.5質量%であるh−BN(以下原料h−BN粉末と記載)を用いた。
・BNスラリーからの凝集粒子の作製
[スラリーA]
以下の配合で粘度が810mPa・sのスラリーAを調製した。
スラリーA配合
原料h−BN粉末:10000g
純水:0g
バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%):11496g
界面活性剤(花王(株)製界面活性剤「アンモニウムラウリルサルフェート」:固形分濃度14質量%):250g
[スラリーの調製]
原料h−BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで純水、バインダーの順に所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボー
ルを添加して、ポットミル回転台で撹拌した。撹拌は、1〜5時間所望の粘度になるまで実施した。
[造粒]
BNスラリーからの造粒は、大河原化工機株式会社製FOC−20を用いて造粒した。
ディスク回転数20000〜23000rpm、乾燥温度80℃で実施した。
上記BN造粒粒子を、2000℃で5時間、窒素ガス流通下に加熱処理した。
加熱処理時の昇温および降温は、以下のように行った。
室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを導入しながら2000℃まで83℃/時で温度を上げ、2000℃到達後、5時間保持した。その後、室温まで冷却し、BN−A凝集粒子を得た。
[分級]
更に、上記加熱処理後のBN凝集粒子を、乳鉢および乳棒を用いて軽粉砕した後、目開き90μmの篩を用いて分級した。分級後、BN−A凝集粒子の平均結晶子径、D50、XRD測定による(100)面と(004)面のピーク強度比を測定した。測定結果は表1に示す。また、BN−AのSEM写真を図1に示す。
上記製造したBN−A7.3g、及びマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂(Tg:190℃)1.4gを溶剤(シクロヘキサノン)5.5gに添加して混合し、放熱シート用スラリーを調製した。
調製した放熱シート用スラリーに以下の添加剤を加え、スラリーを調製した。
スラリー1:高分子ゲル化剤(変性ウレア溶液BYK−410、ビックケミー・ジャパン株式会社)0.5%
スラリー2:高分子ゲル化剤(変性ウレア溶液BYK−410、ビックケミー・ジャパン株式会社)2%
スラリー3:チキソ材(フュームドシリカRX200、日本アエロジル株式会社)4%
スラリー4:添加剤なし。
図2のグラフのそれぞれ近似曲線から、ずり速度10-3sec-1及び25sec-1のときの粘度V1及びV2を読み取り、V1/V2を示した。スラリー1から4の近似曲線は以下の数式である。スラリー1 y=24.197x−0.582、スラリー2 y=66.319x−0.908、スラリー3 y=−2.474lnx+16.319、スラリー4 y=−0.22lnx+3.4083。
今回、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側を向いたカードハウス構造の窒化ホウ素二次粒子を用いることで、エッジ面の表面積が増加した。また、エッジ面の官能基と高分子ゲル化剤の極性基の水素結合形成の増加につながり、より粘度の高いスラリーが形成されたと考えられる。
Claims (9)
- XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含む樹脂組成物。
- 更に溶剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記極性基を含有する化合物が、ウレア基、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルデヒド基からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含み、
25℃において、ずり速度10-3sec-1における粘度をV1、ずり速度25sec-1における粘度をV2としたときのV1/V2が10以上である、樹脂組成物。 - 前記樹脂がマトリクス樹脂である、請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂はナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂を含む請求項5に記載の樹脂組成物。
- 放熱シート用スラリーである、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる、放熱シート。
- 請求項8に記載の放熱シートを含むパワーデバイス装置。
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