JP6394115B2 - 樹脂組成物、樹脂組成物からなる放熱シート、及び放熱シートを含むパワーデバイス装置 - Google Patents

樹脂組成物、樹脂組成物からなる放熱シート、及び放熱シートを含むパワーデバイス装置 Download PDF

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Description

本発明は、窒化ホウ素二次粒子を含む樹脂組成物に関する。また、当該樹脂組成物からなる放熱シート、及び該放熱シートを含むパワーデバイスに関する。
近年、鉄道、自動車、一般家電などの様々な分野で使用されているパワー半導体デバイスは、更なる小型・低コスト・高効率化などのために、従来のSiパワー半導体からSiC、AlN、GaNなどを使用したパワー半導体へ移行しつつある。
パワー半導体デバイスは、一般的には、複数の半導体デバイスを共通のヒートシンク上に配してパッケージングしたパワー半導体モジュールとして利用される。
このようなパワー半導体デバイスの実用化に向けて、種々の課題が指摘されているが、その内の一つにデバイスから発する熱の放熱問題がある。この問題は、一般的に、パワー半導体デバイスは、高出力・高密度化で作動させることにより高温となり、パワー半導体デバイスの信頼性に影響を与える。また、デバイスのスイッチングに伴う発熱なども、信頼性を低下させることが懸念されている。
近年、特に電気・電子分野では集積回路の高密度化に伴う発熱が大きな問題となっており、いかに熱を放熱するかが緊急の課題となっている。
この課題を解決するため、組成物の樹脂成分を構成する熱硬化性樹脂として、高熱伝導性のエポキシ樹脂を使用したり、このような高熱伝導性樹脂と高熱伝導性無機フィラーとを複合化したりすることで、組成物を高熱伝導化することが行われている。例えば、特許文献1には、球状の窒化ホウ素凝集体をフィラーとして配合した組成物が記載されており、これらの組成物からなる放熱シート(テープ)などの部材が提案されている。
また、その他窒化ホウ素をフィラーとして樹脂組成物中に配合する技術は、特許文献2、3などが知られている。
特表2008−510878号公報 特開2008−189818号公報 特表2010−505729号公報
高熱伝導性を得るために窒化ホウ素フィラーを大量に含有させると、放熱シートを塗布法により製造する際のスラリーにおいて窒化ホウ素フィラーが沈降し易くなり、スラリーにおけるフィラーの沈降は、放熱シートの成膜を阻害する。そのため、スラリー中でのフィラーの沈降を防ぐため、スラリーの粘度を高くする方法も採り得るが、スラリーの粘度を高くすると塗布の際にスラリーの流動性が悪くなり、塗布成膜性に影響を与える。
本発明は、上記問題点を解決するものであり、保存安定性が改善され、かつ、塗布成膜性が改善された窒化ホウ素フィラーを含有する樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、静止状態においては粘度
が高くフィラーの分散状態を維持することができ、塗布時になると粘度が低く良好な塗布成膜性を発揮できる樹脂組成物の存在に想到した。そして、このような樹脂組成物を用いて放熱シートを製造することで、組成物中でのフィラーの沈降を防ぎ、かつ、塗布時には良好な成膜性であることから、高品質な放熱シートを提供できることを見出した。
すなわち本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含む樹脂組成物。
[2]更に溶剤を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記極性基を含有する化合物が、ウレア基、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルデヒド基からなる群から選択される1種以上を含む、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含み、
25℃において、ずり速度10-3sec-1における粘度をV1、ずり速度25sec-1における粘度をV2としたときのV1/V2が10以上である、樹脂組成物。
[5]前記樹脂がマトリクス樹脂である[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前期マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂はナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂を含む[5]に記載の樹脂組成物。
[7]放熱シート用スラリーである、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。[8][1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる、放熱シート。
[9][8]に記載の放熱シートを含むパワーデバイス装置。
本発明により、フィラーの沈降が生じず、良好な塗布成膜性を有する樹脂組成物を提供することができる。該樹脂組成物を用いて製造された放熱シートは、高品質な放熱シートとなる。
実施例で製造した窒化ホウ素二次粒子の表面を表すSEM画像である(図面代用写真)。 実施例で調製した窒化ホウ素二次粒子含有スラリーの粘度を表すグラフである。 (a)窒化ホウ素二次粒子のカードハウス構造を示すSEM写真であり、(b)窒化ホウ素二次粒子の断面におけるカードハウス構造の模式図である。
以下、本発明を詳しく説明するが、本発明は以下の説明に限定して解釈されるものではなく、その要旨の範囲内で任意に実施することが可能である。
[1.樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、窒化ホウ素二次粒子(以下。窒化ホウ素フィラーともいう。)及び樹脂を含む。そして、必要に応じて溶剤を含んでもよい。
本発明の樹脂組成物は、25℃において、ずり速度10-3sec-1における粘度をV1、ずり速度10sec-1における粘度をV2としたときのV1/V2が10以上であることを特徴とする。
このような性質を有する樹脂組成物は、静止状態においては粘度が高く窒化ホウ素フィ
ラーの分散状態を維持することができ、塗布時になると粘度が低く良好な成膜性を発揮できる樹脂組成物である。
上記性質を有する樹脂組成物は、以下に説明する特定の窒化ホウ素二次粒子を含有する。通常窒化ホウ素一次粒子は板状(平板状)であり、その平板部分は活性を有さない。一方で、そのエッジ面には反応性の官能基が存在する。
従来存在する窒化ホウ素二次粒子は、窒化ホウ素一次粒子の配向を極力抑えた窒化ホウ素二次粒子であり、例えば球状の窒化ホウ素二次粒子であっても、そのエッジ面がほとんど外側に露出していない。
一方で本発明者らは、特定の窒化ホウ素二次粒子、具体的にはXRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子は、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側に露出しており、エッジ面の表面積が増加することで、窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションを高めることを見出した。
このように、窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションが高いことで、静置状態、すなわちずり速度10-3sec-1における粘度は高く、窒化ホウ素二次粒子の沈降を生ぜず、塗布状態、すなわちずり速度25sec-1における粘度は低く、良好な塗布性能を発揮できる樹脂組成物となる。
また、窒化ホウ素二次粒子は、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子であることが好ましい。カードハウス構造とは、例えばセラミックス 43 No.2(2008年 日本セラミックス協会発行)に記載されており、板状粒子が配向せずに複雑に積層した構造である。より具体的には、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子とは、窒化ホウ素一次粒子の集合体であって、一次粒子の平面部と端面部が接触している構造を有する窒化ホウ素二次粒子である(図3(a)(b)参照)。
より好ましくは窒化ホウ素一次粒子が板状であって、平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子であり、更に好ましくは窒化ホウ素一次粒子が多角形状であって、平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子である。
窒化ホウ素二次粒子の凝集形態は走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
上記V1/V2は通常10以上であるが、50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましく、500以上であることが特に好ましい。
一方上限は特段限定されず、通常10000以下である。
上記下限値を下回ると、静置状態で窒化ホウ素二次粒子の沈降が生じやすくなるか、塗布性能が悪化する。
なお、上記V1の値は、静置状態で窒化ホウ素二次粒子の沈降を生じにくくする観点から、通常50Pa・s以上であり、100Pa・s以上であることが好ましく、500Pa・s以上であることがより好ましく、1000Pa・s以上であることが更に好ましい。一方、通常100000Pa・s以下である。
また、上記V2の値は、良好な塗布性能を発揮する観点から、通常25Pa・s以下であり、20Pa・s以下であることが好ましく、15Pa・s以下であることがよりに好ましく、10Pa以下であることが更に好ましい。一方、通常は0.1Pa・s以上である。
上記粘度は、例えばRheologica Instruments社製のVAR-50を用いて測定することができる。
以下、本発明の樹脂組成物に含有される成分について説明する。
[1−1.窒化ホウ素二次粒子]
樹脂組成物に含有される窒化ホウ素二次粒子は、XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子である。このような性質を有する窒化ホウ素二次粒子は、窒化ホウ素一次粒子がa軸を外に向けるように法線方向へ成長させた二次粒子であり、窒化ホウ素二次粒子表面において、窒化ホウ素一次粒子が放射状に配置された窒化ホウ素二次粒子である。そのため、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側に露出しており、窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションが非常に高い。該窒化ホウ素二次粒子を含有する組成物は、組成物の動き(ずり速度)に応じて粘度を変化させる。
上記強度比I(100)/I(004)は、通常3.0以上、好ましくは3.2以上、より好ましくは3.4以上、更に好ましくは3.5以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。
なお、ピーク強度比は粉末X線回折測定により測定された該当するピーク強度の強度比から計算することができる。
また、窒化ホウ素二次粒子の粉末X線回折(XRD)による(002)面ピークから求めた平均結晶子径は、375Å以上であり、好ましくは380Å以上、より好ましくは390Å以上、更に好ましくは400Å以上であり、通常5000Å以下、好ましくは2000Å以下、更に好ましくは1000Å以下である。上記上限より大きいと、二次粒子を構成する一次粒子が成長しすぎるため、二次粒子内の間隙が多くなる。一方、上記下限未満だと、二次粒子を構成する一次粒子内の粒界が増えるため、フォノン散乱が結晶粒界で発生し、低熱伝導になる傾向がある。
なお、ここで、「平均結晶子径」とは、粉末X線回折測定によって得られる(002)面ピークからScherrer式にて求められる結晶子径をさす。なお、測定に供する試料は、樹脂が内包される前の窒化ホウ素二次粒子でもよく、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子でもよい。
<比表面積>
窒化ホウ素二次粒子の比表面積は通常1m2/g以上であるが、好ましくは3m2/g以上50m2/g以下、より好ましくは5m2/g以上40m2/g以下である。
なお、比表面積は、BET1点法(吸着ガス:窒素)で測定することができる。
<窒化ホウ素一次粒子の大きさ>
窒化ホウ素二次粒子の好ましい例としては、上記説明したように、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子であるが、窒化ホウ素一次粒子の長軸が通常0.5〜10μmに成長し、二次粒子の中心側から表面側へ向けて放射状に成長したウニ様の外観を形成していることも好ましい。窒化ホウ素二次粒子を構成する窒化ホウ素一次粒子の長軸は、好ましくは、0.6〜5μmであり、より好ましくは、0.8〜3μmであり、更に好ましくは、1.0〜3.0μmのh−BNが凝集した粒子である。
尚、長軸とは走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子1粒を拡大し、1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長を平均した値である。
<体積基準の最大粒子径Dmax、平均粒子径D50
窒化ホウ素二次粒子は、体積基準の最大粒子径Dmax(本明細書では、単に「最大粒子
径」と記載する場合がある。)が、通常2μm以上であり、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上である。また、通常300μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは80μm以下である。
最大粒子径が、上記上限以下であることにより、マトリクス樹脂とフィラー界面が減少する結果、熱抵抗が小さくなり、高熱伝導化を達成できるとともに、表面荒れなどのない良質な膜を形成できる。最大粒子径が上記下限より小さいと、パワー半導体デバイスに求められる熱伝導性フィラーとしての熱伝導性向上効果が小さくなる。高熱伝導性のフィラーを用いた場合、複合材料として熱伝導性を発現するためには、熱伝導性フィラーと樹脂の界面密着性、複合材料と基材の密着性などが重要であり、これらの界面が最も熱伝導性減衰の要因となると考えられている。特に、パワー半導体デバイス用の放熱シートとしては、200μm〜300μm厚みの放熱シートが適用されるケースが多いが、シートの厚みに対して上述の界面の影響が顕著になるのは放熱シート厚みに対する熱伝導性フィラーの大きさが1/10以下の場合であると考えられる。したがって、熱伝導性の観点からはフィラーの体積基準の最大粒子径は上記下限より大きいことが好ましい。フィラーの体積基準の最大粒子径が上記上限を超えると、硬化した後の放熱シートの表面にフィラーが突出して、放熱シートの表面形状が悪化し、銅基板との張り合わせシートを作製する際の密着性が低下し、耐電圧特性が低下する傾向となる。一方で、フィラーの最大粒子径が小さ過ぎると、熱伝導性に及ぼす上述の界面の影響が顕著になる以外に、フィラー粒子が小さいことにより必要となる熱伝導パス数が増加して、放熱シートの厚み方向に一方の面から他方の面まで繋がる確率が小さくなり、熱伝導性の高いマトリクス樹脂と組み合わせても、放熱シートの厚み方向の熱伝導率向上効果が不十分となったり、マトリクス樹脂とフィラーの界面面積が大きくなり、耐電圧特性が低下する傾向がある。
一般的には、パワー半導体デバイス用放熱シートは、更なる高速化・高容量化などの性能向上のために、200℃〜300℃の高温で使用されることが想定されているが、この200℃以上の高温下での使用でも周辺部材の寿命を延ばし、高熱伝導性および耐電圧特性などの信頼性を確保するためには、配合されるフィラーの最大粒子径は、放熱シートの厚みに対して通常1/10以上、好ましくは1/5以上、より好ましくは1/4以上であり、通常1/2以下、好ましくは1/3以下である。
また、窒化ホウ素二次粒子の体積基準の平均粒子径D50(以下、単に「平均粒径」と記載する場合がある。)については特に制限はないが、上記体積基準の最大粒子径の値と同様な理由から、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、通常250μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは70μm以下である。平均粒径D50を上記範囲とすることにより、放熱シートの厚み方向に十分な熱伝導率を有し、耐電圧特性も良好な放熱シートを得ることができる。
上記最大粒子径及び平均粒径は、例えば、これを適当な溶剤に分散させ、具体的には、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中に窒化ホウ素二次粒子を分散させた試料に対して、堀場製作所社製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920にて粒度分布を測定し、得られた粒度分布から窒化ホウ素二次粒子の最大粒子径及び平均粒径を求めることができる。
窒化ホウ素球状二次粒子は、上記I(100)/I(004)の値を満たし、好ましくは上記物性を満たすものであれば、その製造方法は限定されない。以下に、窒化ホウ素二次粒子の製造方法の詳細を例示する。
[1−2.窒化ホウ素二次粒子の製造方法]
窒化ホウ素二次粒子を製造する方法としては、制限はないが、特にI(100)/I(004)の値を上記範囲とするためには、原料となる窒化ホウ素(以下、これを粉砕したものとともに原料BN粉末と記することがある。)を粉砕工程で粉砕した後、造粒工程で凝集させることにより造粒し、更に加熱処理する加熱工程を経ることが好ましい。より具
体的には、原料BN粉末を一旦媒体中に分散させて原料BN粉末のスラリー(以下、「BNスラリー」と記することがある。)とした後、粉砕処理を施し、その後得られたスラリーを用いて球形の粒子に造粒し、造粒した凝集BN造粒粒子の結晶化を行うために加熱処理を施すことが好ましい。
<原料BN粉末>
窒化ホウ素二次粒子(以下、凝集BN粒子ともいう。)を製造する場合には、以下に説明する窒化ホウ素の粒子を原料として用いることが可能である。ただし、凝集BN粒子の原料としては以下のものに特に限定されない。
より具体的には、凝集BN粒子を製造する際の原料となる窒化ホウ素(原料BN粉末)としては、市販のh−BN、市販のαおよびβ−BN、ホウ素化合物とアンモニアの還元窒化法により作製されたBN、ホウ素化合物とメラミンなどの含窒素化合物から合成されたBN、ホウ水素ナトリウムと塩化アンモニウムから作製されるBNなど何れも制限なく使用できるが、特にh−BNが好ましく用いられる。
h−BN結晶成長の観点からは、原料となるh−BN等の原料BN粉末中に酸素がある程度存在することが好ましく、原料BN粉末中の全酸素含有量は1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、原料BN粉末中の全酸素含有量はより好ましくは3質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上9質量%以下である。
全酸素含有量が上記範囲内である原料BN粉末は、一次粒子径が小さく、結晶が未発達のものが多いため、加熱処理により結晶が成長し易い。造粒により原料BN粉末が凝集したBN造粒粒子を加熱処理することでBN結晶を成長させることが好ましいが、上記全酸素含有量の範囲の原料BN粉末を用いることで、BN結晶の一次粒子がa軸を外に向けるように法線方向へ成長させる、すなわちBN一次粒子を得られる凝集BN粒子表面において放射状に配置することができる。
原料BN粉末の全酸素含有量が上記下限未満の場合、原料BN自体の純度、結晶性が良いために、C面の結晶成長が十分になされず、凝集BN粒子表面において、BN一次粒子を放射状に配置することができず、逆に上記上限を超えると、加熱処理後も酸素含有量が高い状態となって、放熱シートとして用いた際に高熱伝導化が図れなくなるため好ましくない。
原料BN粉末の全酸素含有量を上記範囲に調整する方法としては、BN加熱時の加熱温度を2500℃以下の低温で行う方法などが挙げられる。
また、全酸素含有量が上記好適範囲の原料BN粉末としては市販品を用いることもでき、例えば、日新リフラテック社製のh−BN「ABN」やMARUKA社製のh−BN「AP170S」などが挙げられる。
なお、原料BN粉末の酸素含有量は、不活性ガス融解−赤外線吸収法によりHORIBA製酸素・窒素分析計を用いて測定することができる。
また、原料BN粉末の他の物性としては、例えば、原料BN粉末の全細孔容積は通常1.0cm3/g以下であるが、好ましくは0.3cm3/g以上1.0cm3/g以下、よ
り好ましくは0.5cm3/g以上1.0cm3/g以下である。
また、原料BN粉末の比表面積は通常20m2/g以上であるが、好ましくは20m2/g以上500m2/g以下、より好ましくは50m2/g以上200m2/g以下である。
全細孔容積が1.0cm3/g以下であることにより、原料BN粉末が密になっている
ために凝集BN粒子を構成する一次粒子として用いた場合に、球形度の高い造粒が可能となる。また、比表面積が20m2/g以上であることにより、造粒による球形化の際に用
いるBNスラリー中の分散粒子径を小さくすることができるため好ましい。
なお、原料BN粉末の全細孔容積は、水銀圧入法で測定することができ、比表面積は、BET1点法(吸着ガス:窒素)で測定することができる。
<BNスラリーの調製>
BNスラリーの調製に用いる媒体としては特に制限はなく、水及び/又は各種の有機溶剤を用いることができるが、噴霧乾燥の容易さ、装置の簡素化などの観点から、水(純水)を用いることが好ましい。
水の使用量は、多過ぎると噴霧乾燥時の負荷が増大し、少な過ぎると均一分散が困難であることから、原料BN粉末に対して通常0.5〜20質量倍、特に0.5〜10質量倍とすることが好ましい。
BNスラリーの、25℃1atmにおける粘度は、通常100mPa・s以上であり、好ましくは300mPa・s以上である。また通常3000mPa・s以下であり、好ましくは2000mPa・s以下である。この範囲であることで、樹脂を内包しやすい窒化ホウ素二次粒子を製造し易くなる。
<界面活性剤>
BNスラリーには、後述の粉砕処理時のスラリーの粘度上昇を抑制すると共に、BN粒子の分散安定性(凝集抑制)の観点から、種々の界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
BNスラリーに界面活性剤を添加して用いる場合、BNスラリーの界面活性剤濃度は通常0.1質量%以上10質量%以下、特に0.5質量%以上5質量%以下の割合となるように用いることが好ましい。BNスラリーの濃度が上記下限以上であることにより、界面活性剤を添加したことによる上記効果を十分に得ることができ、また、上記上限以下であることにより、原料BN粉末の含有量の高いBNスラリーを調製した後、造粒し、さらに加熱処理を施した際の残存炭素の影響を小さくすることができる。
なお、界面活性剤は、以下の粉砕処理の前に添加してもよく、粉砕処理後に添加してもよい。
<バインダー>
BNスラリーは、原料BN粉末を効果的に凝集粒子に造粒するために、バインダーを含むことが好ましい。バインダーは、元来、粒子同士が接着性のない原料BN粉末を強固に結びつけ、造粒粒子の形状を安定化するために作用する。
BNスラリーに用いるバインダーとしては、BN粉末同士の接着性を高めることができるものであればよいが、造粒粒子は凝集化後に加熱処理されるため、この加熱処理工程における高温条件に対する耐熱性を有するものが好ましい。
このようなバインダーとしては金属酸化物が好ましく、具体的には酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化ホウ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどが好ましく用いられる。これらの中でも、酸化物としての熱伝導性と耐熱性、BN粉末同士を結合する結合力などの観点から、酸化アルミニウム、酸化イットリウムが好適である。なお、バインダーはアルミナゾルのような液状バインダーであってもよく、有機金属化合物のように焼成により金属酸化物に変換されるものを用いてもよい。
これらのバインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
バインダーの使用量(液状バインダーの場合は、固形分としての使用量)は、BNスラリー中の原料BN粉末に対して、通常1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。バインダーの使用量が上記下限未満の場合、BN粉末同士を結着させる効果が小さくなるため造粒粒子が造粒後の形状を保てなくなるおそれがあり、上記上限を超えると造粒粒子中のBNの含有量が少なくなり、結晶成長に影響するばかりか熱伝導性のフィラーとして用いた場合に熱伝導率改善効果が小さくなるおそれがある。
<粉砕処理>
BNスラリーは、そのまま噴霧乾燥による造粒工程に供してもよいが、造粒に先立ち、スラリー中の原料BN粉末を粉砕処理して微細化することが好ましく、微細化することにより、凝集化を円滑に行うことができるようになる。
即ち、原料BN粉末の粒子径にもよるが、原料BN粉末をそのまま媒体中に分散させた場合、BN粉末は平板状粒子であるために、凝集化の工程で造粒されない粒子が多くなる傾向にあるが、微細化で、効率的な凝集化を行える。
粉砕には、ビーズミル、ボールミル、ピンミルなど通常の粉砕方法を用いることができるが、スラリーとして大量に循環粉砕可能で粉砕粒子径を制御しやすいという観点からビーズミルが好適である。また、粉砕によりBN粒子が微粒子化することで、BNスラリーの粘度が上昇するため、より高濃度、高粘度でも粉砕が可能なものがよく、加えて、粉砕が進むにつれてBNスラリーの温度上昇も生じるため、冷却システムが備えられているものが好ましい。このような装置としては、例えばフロイントターボ社製「OBミル」、アシザワ・ファインテック社製「スターミルLMZシリーズ」などが挙げられる。
<造粒(凝集化)>
BNスラリーから凝集BN粒子である造粒粒子を得るには、特に制限はないがスプレードライ法が好適に用いられる。スプレードライ法では、原料となるスラリーの濃度、装置に導入する単位時間当たりの送液量と送液したスラリーを噴霧する際の圧空圧力及び圧空量により、所望の大きさの造粒粒子を製造することが可能であって、球状の造粒粒子を得ることも可能である。球状化に際して使用するスプレードライ装置に制限はないが、より大きな球状BN造粒粒子とするためには、回転式ディスクによるものが最適である。このような装置としては、大川原化工機社製スプレードライヤーFシリーズ、藤崎電機社製スプレードライヤー「MDL−050M」などが挙げられる。
造粒により得られた造粒粒子の最大粒子径は、加熱処理後に凝集BN粒子として体積基準の最大粒子径の範囲を25μmより大きく200μm以下とするために、体積基準の平均粒子径D50で通常1μm以上、特に10μm以上150μm以下、とりわけ10μm以上100μm以下であることが好ましい。ここで、造粒粒子の体積基準の平均粒子径D50は、例えば、日機装社製「マイクロトラックHRA」で測定することができる。
<加熱処理>
上記の造粒により得られた窒化ホウ素の造粒粒子は、更に非酸化性ガス雰囲気下に加熱処理されるのが好ましい。
ここで、非酸化性ガス雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、アンモニアガス、水素ガス、メタンガス、プロパンガス、一酸化炭素ガスなどの雰囲気のことである。ここで用いる雰囲気ガスの種類により凝集BN粒子の結晶化速度が異なるものとなり、例えばアルゴンガスでは、結晶化の速度が遅くなり、加熱処理時間が長時間に及ぶ。結晶化を短時間で行うためには特に窒素ガス、もしくは窒素ガスと他のガスを併用した混合ガスが好適に用いられる。この加熱処理の条件を適切に選択することも、凝集BN粒子の
比表面積や全細孔容積を特定の範囲としながら、表面に窒化ホウ素一次粒子を放射状に、かつ、カードハウス構造に配置させる上で、重要である。
加熱処理温度は通常1300℃〜2500℃であるが、好ましくは1300℃〜2300℃、更に好ましくは1400℃〜2200℃である。加熱処理温度が上記下限未満では、h−BNの結晶化が不十分となり、熱伝導性フィラーとした場合の熱伝導率改善効果が小さくなる。加熱処理温度が、上記上限を超えると、添加したバインダー成分が溶融・分解して凝集BN粒子同士が凝集し、本来の形状を保てなくなったり、BNの分解などが生じてしまうおそれがある。
加熱処理時間は、通常1時間以上50時間以下であり、より好ましくは3時間以上40時間以下、特に好ましくは5時間以上30時間以下である。更に、上記加熱処理時間内に、特に1300℃〜1500℃で3時間以上の保持工程を導入することが好ましい。前記温度範囲で保持工程を導入することにより、より効率的にh−BNの結晶化が行われるため、上限の加熱処理温度を低下できる傾向にある。加熱処理時間が上記下限未満の場合、結晶化が不十分となり、上記上限を超えるとh−BNが一部分解するおそれがある。
加熱処理は、非酸化性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、このためには、通常、炉内を真空ポンプで引きながら加熱し、加熱に伴う分解ガスなどが少なくなるまで排気を行った後、非酸化性ガスを導入しながら、続けて所望の温度まで加熱して昇温することが好ましい。真空ポンプで排気を行う温度の目安としては、200〜500℃、例えば、400℃付近まで30〜60分程度で加熱昇温した後、その温度を保持しながら30〜60分程度排気を続け、真空度が10Pa以下となるまで真空引きを行い、その後、非酸化性ガスを導入することが好ましい。非酸化性ガスの流量は、炉の大きさにもよるが、通常2L(リットル)/分以上であれば問題ない。その後、非酸化性ガスを導入しながら1500℃程度まで50〜100℃/時で昇温し、その後1500℃から所定の加熱処理温度まで30〜50℃/時で昇温する。この温度で上記加熱処理時間中、加熱した後、5〜50℃/分程度で室温まで降温することが好ましい。
例えば、窒素ガス雰囲気下で加熱処理を行う場合は、2000℃前後で5時間程度、アルゴンガス雰囲気の場合は、2000℃前後で5〜15時間程度の条件とすることで、放射状に成長させることができる。
加熱処理を施す焼成炉は、マッフル炉、管状炉、雰囲気炉などのバッチ式炉やロータリーキルン、スクリューコンベヤ炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、竪型連続炉などの連続炉が挙げられ、目的に応じて使い分けられる。
なお、凝集BN粒子は、製造直後では、得られた粒子が更に凝集して、本発明に好適な粒子径の範囲を満たさない場合がある。そのため、凝集BN粒子は、必要に応じて、本発明に好適な粒子径の範囲を満たすように粉砕してもよい。
凝集BN粒子の粉砕の方法は特に限定されず、ジルコニアビーズ等の粉砕用メディアと共に攪拌混合する方法や、ジェット噴射等の従来公知の粉砕方法を適用できる。
<分級>
上記加熱処理後の凝集BN粒子は、平均粒子径を大きくし、しかも組成物に配合したときの粘度上昇を抑制するために、好ましくは分級処理する。この分級は、通常、造粒粒子の加熱処理後に行われるが、加熱処理前の造粒粒子について行い、その後加熱処理に供してもよい。
分級は湿式、乾式のいずれでも良いが、h−BNの分解を抑制するという観点からは、乾式の分級が好ましい。特に、バインダーが水溶性を有する場合には、特に乾式分級が好
ましく用いられる。
乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、分級精度の観点からは、風力分級が好ましく、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うことができる。これらの中で、サブミクロンからシングルミクロン領域の小さな微粒子を分級するには旋回気流式分級機を、それ以上の比較的大きな粒子を分級するには半自由渦遠心式分級機など、分級する粒子の粒子径に応じて適宜使い分ければよい。
体積基準の最大粒子径が25μm以上200μm以下の凝集BN粒子を得るために、旋回気流式分級機を用いて微粒子の除去のための分級操作および/又は半自由渦遠心式分級を行うことが好ましい。
<窒化ホウ素二次粒子の形状>
上述のようにして、原料BN粉末を造粒し、加熱処理をすることによって、その形状を保持したままh−BNの結晶を成長させることで、上述した物性の別の態様として、表面に通常0.05μm以上5μm以下の窒化ホウ素一次粒子(以下、「BN一次粒子」と記載する場合がある。)を配置することが可能となり、カードハウス構造を有する凝集粒子とすることができる。好ましくは板状のBN一次粒子の平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子とすることができ、より好ましくは多角形状の窒化ホウ素一次粒子の平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子とすることができる。更に好ましくは、凝集BN粒子が球状であるという上記物性の別の形態として表すことができる。尚、「球状」とは、アスペクト比(長径と短径の比)が1以上2以下、好ましくは1以上1.5以下であることをさす。凝集BN粒子は、後述の原料BN粉末を凝集させて造粒された粒子であり、この造粒粒子が「球状」であることが好ましく、「球状であることが好ましい」とは、一次粒子の形状が球状であることが好ましいというものではない。凝集BN粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された画像から200個以上の粒子を任意に選択し、それぞれの長径と短径の比を求めて平均値を算出することにより決定する。
なお、凝集BN粒子の表面には、平均粒子径0.05μm以上のBN一次粒子が存在するが、「平均粒子径0.05μm以上のBN一次粒子」の「0.05μm以上」とは、当該BN一次粒子の粒子径に相当する長さを指す。このBN一次粒子の結晶の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、2万倍程度の倍率で観察して、表面に観察される任意の100個の粒子の最大粒子サイズを計測して、平均値を求めることで測定することができる。
凝集BN粒子において、結晶がどのように成長しているかは、高熱伝導性フィラーとしての用途において重要な要件の一つである。
本発明に用いられる窒化ホウ素二次粒子では、このような特異的な結晶成長により得られることで、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側を向いており、樹脂組成物中において窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションを高めることができる。また、熱伝導性の等方性、マトリクス樹脂との混練性、耐崩壊性に優れるという効果を奏することから、好ましい。
このような好ましい凝集BN粒子の調製方法の一手段として、全酸素含有量が通常1質量%以上10質量%以下のh−BN粉末を原料に用い、更に、加熱処理の条件を前述のように制御することで製造が可能になる。
具体的には、本発明で用いる好ましい凝集BN粒子では、h−BNの結晶成長方向は球に対して中心から放射状、即ち、BN結晶の一次粒子がa軸を外に向けるように法線方向
へ成長し、かつ、カードハウス構造となるのに対して、全酸素含有量が1質量%未満の原料h−BNを用いた場合は、円周方向に結晶成長(h−BNのC面を外に向けるように成長)しており、この結果、カードハウス構造を形成せず、比表面積が小さく、全細孔容積も大きいものとなると考えられる。
[1−3.マトリクス樹脂]
樹脂組成物は樹脂を含み、マトリクス樹脂であってよい。熱伝導性の担い手は、上述のフィラーである窒化ホウ素二次粒子であるが、パワー半導体デバイス用の放熱シートは、10W/mK以上の高い熱伝導性を必要とされるため、放熱シートに用いられるマトリクス樹脂の熱伝導性も高いことが望ましい。
フィラーとの複合化で高い熱伝導性を得るために、マトリクス樹脂の熱伝導率は0.2W/mK以上であることが好ましく、特に0.22W/mK以上であることが好ましい。
なお、放熱シート中のマトリクス樹脂の熱伝導率は、樹脂組成物を構成する成分のうち、マトリクス樹脂と、後述する極性基を有する化合物、溶剤及び硬化剤を含む場合にはこれらを含有させ、通常の硬化方法に従って硬化膜を形成し、この硬化膜について、以下の方法で求めた値である。
<マトリクス樹脂の熱伝導率の測定方法>
マトリクス樹脂の硬化膜について、以下の装置を用いて、熱拡散率、比重、及び比熱を測定し、この3つの測定値を乗じることで熱伝導率を求める。
(1)熱拡散率:アイフェイズ社製 「アイフェイズ・モバイル 1u」
(2)比重:メトラー・トレド社製 「天秤 XS−204」
(固体比重測定キット使用)
(3)比熱:セイコーインスツル社製 「DSC320/6200」
マトリクス樹脂としては、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも制限なく用いることが出来る。硬化性樹脂としては、熱硬化性、光硬化性、電子線硬化性などの架橋可能なものであればよいが、耐熱性、吸水性、寸法安定性などの点で、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂としては、例えばWO2013/081061に例示されたものを用いることができる。このうち、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。中でも、耐熱性がより一層高められることから、フルオレン骨格及び/又はビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が特に好ましく、とりわけビルフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格及びビフェニル骨格のうちの少なくとも1つ以上の骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましい。
樹脂組成物中のマトリクス樹脂の含有量は、通常5wt%以上、好ましくは8wt%以上、より好ましくは10wt%以上であり、通常50wt%以下、好ましくは45wt%以下、より好ましくは35wt%以下である。
また、樹脂組成物中の窒化ホウ素二次粒子の含有量は、通常50wt%以上、好ましくは55wt%以上、より好ましくは65wt%以上であり、通常95wt%以下、好ましくは92wt%以下、より好ましくは88wt%以下である。
放熱シート中に上記範囲でマトリクス樹脂、及び窒化ホウ素二次粒子を含有させることで、高い熱伝導性を発揮することができる。
[1−4.極性基を有する化合物]
樹脂組成物には、極性基を有する化合物を有することが好ましい。
樹脂組成物中に含まれる窒化ホウ素二次粒子は、上述のとおり、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側を向いているため、窒化ホウ素二次粒子同士で高いインタラクションを生じるところ、極性基により当該インタラクションを更に高めることができる。そして、本発明の特徴である、樹脂組成物のV1/V2を所望の値とし易くすることができる。すなわち、エッジ面に存在する官能基と極性基の水素結合形成の増加によって、静止状態でより粘度の高い樹脂組成物を得ることができる。
化合物が有する極性基は特段限定されず、通常極性基として知られているものであればよく、例えばウレア基、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミド基などがあげられる。また、極性基を有する化合物としては、高分子ゲル化剤として用いられる化合物が挙げられ、より具体的には、ビックケミー・ジャパン株式会社製BYK−405、BYK−410、BYK−411などがあげられる。これらの化合物のうち、ウレア基を含むことが、フィラーのエッジ面の官能基と極性基の水素結合の観点から好ましい。
極性基を有する化合物が高分子ゲル化剤である場合には、その平均分子量は通常1000以上、好ましくは3000以上であり、また通常500000以下、好ましくは100000以下である。
また、樹脂組成物中において極性基を有する化合物の含有量は、通常0.05wt%以上、好ましくは0.1wt%以上であり、また通常10wt%以下、好ましくは5wt%以下である。
[1−5.溶剤]
樹脂組成物は、適宜溶剤を含有させても良い。溶剤としては、水を用いてもよく、有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、以下に例示するアルコール系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、アルカン系溶剤、エチレングリコールエーテル及びエーテル・エステル系容剤、プロピレングリコールエーテル及びエーテル・エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤の中から、樹脂の溶解性等を考慮して、好適に選択して用いることができる。
樹脂組成物において溶剤の含有量は、通常10wt%以上、好ましくは20wt%以上であり、また通常95wt%以下、好ましくは80wt%以下である。
[1−6.硬化剤]
樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤を含有していてもよい。
硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基等などの、マトリクス樹脂の架橋基間の架橋反応に寄与する物質を示す。
エポキシ樹脂においては、必要に応じて、エポキシ樹脂用の硬化剤、硬化促進剤が共に用いられる。
硬化促進剤は、用いられるマトリクス樹脂や硬化剤の種類に応じて適宜選べばよい。例えば前記酸無水系硬化剤用の硬化促進剤としては、例えば三フッ化ホウ素モノエチルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの硬化促進剤は、通常、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
硬化剤としては、特に制限はなく、用いる熱硬化性樹脂の種類に応じて選択使用される。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミド系硬化剤、第3級アミン、イミダゾール及びその誘導体、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
硬化剤の具体例としては、WO2013/081061に例示されたものを用いることができる。
これらの硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
上記硬化剤の中でも、イミダゾール又はその誘導体やジシアンジアミン化合物が好適に用いられる。
硬化剤の含有量は、マトリクス樹脂100質量部に対して、通常0.1〜60質量部であり、0.5〜40質量部が好ましい。
[1−7.その他の添加剤]
樹脂組成物には、機能性の更なる向上を目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の添加剤(その他の添加剤)を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、液晶性エポキシ樹脂等の、前記のマトリクス樹脂に機能性を付与した機能性樹脂、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、繊維状窒化ホウ素等の窒化物粒子、アルミナ、繊維状アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の絶縁性金属酸化物、ダイヤモンド、フラーレン等の絶縁性炭素成分、樹脂硬化剤、樹脂硬化促進剤、粘度調整剤、分散安定剤が挙げられる。
さらに、その他の添加剤としては、基材との接着性やマトリクス樹脂と窒化ホウ素二次粒子(以下、フィラーともいう。)との接着性を向上させるための添加成分として、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤、保存安定性向上のための紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、分散剤、流動性改良剤、基材との密着性向上剤等が挙げられる。
また、樹脂組成物には、成形時の流動性改良及び基材との密着性向上の観点より、熱可塑性のオリゴマー類を含有させることもできる。
その他、組成物或いは塗布液中での各成分の分散性を向上させる、界面活性剤や、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤等を添加することもできる。
これらは、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
添加剤の具体例については、WO2013/081061に例示されたものを用いることができ、添加量についてもWO2013/081061に記載の範囲とすることができる。
[1−7.放熱シート用スラリー]
上記樹脂組成物は、放熱シート用スラリーとして好適に用いられる。
放熱シート用スラリーは上記特定の窒化ホウ素二次粒子、マトリクス樹脂、溶剤およびその他の添加剤を混合し、これらの構成材料を分散・混合することを目的として、ペイントシェーカーやビーズミル、プラネタリミキサ、攪拌型分散機、自公転攪拌混合機、三本ロール、ニーダー、単軸又は二軸混練機等の一般的な混練装置などを用いて混合することが好ましい。
放熱シート用スラリーの固形分濃度は、通常5wt%以上、好ましくは10wt%以上、より好ましくは15wt%以上、特に好ましくは20wt%以上である。また通常90wt%以下であり、好ましくは80wt%以下であり、より好ましくは70wt%以下であり、特に好ましくは60wt%以下である。
放熱シート用塗布液の固形分濃度がこの上限以上の場合、スラリーが増粘しすぎて、レベリング性が悪くなり、均一な塗布膜を形成することができない。一方、この下限以下の場合、放熱シートに所望のドライ膜厚を得るためには、ウェット膜厚を厚くすることが必要となる。ウェット膜厚を厚くすると、それを乾燥するための製造コストが高くなるだけでなく、タクトタイムも長くなってしまう。さらに、乾燥におけるムラの発生が起こる恐れがある。
放熱シート用スラリーでは、上述の樹脂組成物に添加することができる添加剤(上述の窒化ホウ素以外の無機材料、硬化剤、分散剤など)を適宜用いることができる。
放熱シート用スラリーの各配合成分の混合順序も、反応や沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り任意であり、樹脂組成物の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め混合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
[2.成形体(放熱シート)の製造方法]
上記樹脂組成物及び放熱シート用スラリーを用いて、各種の成形体を製造することができる。
この成形体を成形する方法は、樹脂組成物の成形に一般に用いられる方法を用いることができる。
例えば、放熱シート用スラリーを所望の形状で、例えば、型へ充てんした状態で硬化させることによって成形することができる。このような成形体の製造法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、及び圧縮成形法を用いることができる。
また、放熱シート用スラリーがエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂組成物を含む場合、成形体の成形、すなわち硬化は、それぞれの組成に応じた硬化温度条件で行うことができる。
また、放熱シート用スラリーが熱可塑性樹脂組成物を含む場合、成形体の成形は、熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度及び所定の成形速度や圧力の条件で行うことができる。また、放熱シート用スラリーを成形硬化した固形状の材料から所望の形状に削り出すことによって成形体を得ることもできる。
以下、放熱シートを製造する方法を具体的に説明する。
<塗布工程>
まず基板の表面に、放熱シート用スラリーで塗膜を形成する。
即ち、放熱シート用スラリーを用いて、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法、その他の任意の方法で塗膜を形成する。スラリーの塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの塗布装置を用いることにより、基板上に所定の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能であり、好ましい。
なお、基板としては、後述の厚さの銅箔が一般的に用いられるが、何ら銅基板に限定されるものではない。
<乾燥工程>
放熱シート用スラリーを塗布することにより形成された塗膜を、溶剤や低分子成分の除去のために、通常10〜150℃、好ましくは25〜100℃、より好ましくは、30〜90℃、特に好ましくは、40〜80℃の任意の温度で乾燥することができる。ただし、溶剤の沸点を越えないことが望ましい。この温度範囲の上限以上の場合、溶剤除去時に、
溶剤の対流のために、塗布膜表面が荒れてしまうことがある。加えて、放熱シート用スラリーが熱硬化性樹脂を含む場合、スラリーが硬化してしまい、その後のプレスプロセスで樹脂が流れなくなり、ボイドを除去することができない恐れがある。なお、この温度範囲の下限以下であると、効果的に溶剤を取り除くことができず、溶剤除去に時間がかかってしまう恐れがある。乾燥時間は、通常5分〜10日間、好ましくは、10分〜3日間、より好ましくは20分〜1日間、特に好ましくは、30分から4時間の加熱処理を行って乾燥膜を形成する。
乾燥時間が短すぎると、十分に溶剤が除去できず、残留溶剤が放熱シート内のボイドになってしまう恐れがある。乾燥時間が長すぎると、生産性があげられず、製造プロセスコストが高くなる恐れがある。
<加圧工程>
乾燥工程の後には、加圧工程を行ってもよい。シート化工程は、窒化ホウ素同士を接合させヒートパスを形成する目的、シート内のボイドや空隙をなくす目的、基材との密着をさせる目的から加圧することが望ましい。加圧工程は、銅基板上の乾燥膜に通常10kgf/cm2〜2000kgf/cm2、好ましくは50kgf/cm2〜1000kgf/
cm2、より好ましくは80kgf/cm2〜800kgf/cm2、特に好ましくは10
0kgf/cm2〜500kgf/cm2の加重をかけて実施することが望ましい。この加圧時の加重を上記上限以下とすることにより、窒化ホウ素二次粒子が圧壊することなく、シート中に空隙などがない高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。また、加重を上記下限以上とすることにより、凝集BN粒子間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。
加圧工程では、銅基板に塗布、乾燥した組成物膜を通常25〜300℃、好ましくは40〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に好ましくは60〜160℃で加熱することが望ましい。この温度範囲でシート化工程を行うことにより、加熱は乾燥膜中の樹脂の溶融粘度を低下させることができ、シート内のボイドや空隙をなくすことができる。この温度範囲以上で行うと、有機成分が分解する恐れや残留溶剤が蒸気となり、ボイドを形成する恐れがある。
加圧工程は、通常30秒〜4時間、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは3分〜1時間、特に好ましくは5分〜45分である。この上限時間以上では、放熱シートの製造プロセス時間が長すぎ、生産コストが高くなる恐れがある。この下限時間以下では、シート内の空隙やボイドを十分に取り除けないため、熱伝達性能や耐電圧特性に影響を与える恐れがある。
完全に硬化反応を行わせる硬化工程は、加圧下で行ってもよく、無加圧で行ってもよいが、加圧する場合は、上記と同様の理由から、上記の加圧工程と同様の条件で行うことが望ましい。なお、加圧工程と硬化工程を同時におこなっても構わない。
特に加圧工程と硬化工程を経るシート化工程においては、上記の範囲の加重をかけて、後述の圧縮率の範囲となるように加圧、硬化を行うことが好ましい。
放熱シートは、上述のように大きな加重下でシート化を行って製造されるが、特に加重をかける前の硬化前シート厚みと加重をかけて完全に硬化させた後の硬化シート厚みの比((硬化シート厚み)/(硬化前シート厚み))から計算される圧縮率(1−(硬化シート厚み)/(硬化前シート厚み))が0.2以上0.8以下の圧縮率の時に、厚み方向に10W/mK以上50W/mK以下の高熱伝導性が発現する。この圧縮率は、より好ましくは0.3以上0.7以下、更に好ましくは0.4以上0.7以下、特に好ましくは0.5以上0.7以下である。圧縮率を上記上限以下とすることにより、窒化ホウ素二次粒子を破壊することなく、シート中に空隙などがない高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。また、圧縮率を上記下限以上とすることにより、窒化ホウ素二次粒子間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有するシートを得る
ことが出来る。
また、このような圧縮率で硬化させて得られる本発明の放熱シートの厚み方向の熱伝導率は、より好ましくは15〜40W/mK、特に好ましくは20〜40W/mKである。
また、上記放熱シートは、XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上であることが好ましい。上記範囲であることで、上記説明した特定の性質を有する窒化ホウ素二次粒子を含有しており、シートに成形する前の樹脂組成物において、本発明の粘度範囲を満たしている可能性が高い。
[3.積層放熱シート]
本発明の別の実施態様は、放熱シートを支持体に積層させてなる積層放熱シートである。支持体は特段限定されないが、熱伝導性を高くするために、特に銅箔を用いることが好まれ、例えば、上述の放熱シートの製造方法により製造され、銅箔が積層一体化されたものが好ましい。
本発明の放熱シート又は上記積層放熱シートの厚さについては特に制限はないが、通常100〜300μm、特に150〜250μmであることが好ましい。放熱シートの厚さが上記下限未満では、硬化膜の厚さが薄すぎて、耐電圧特性が悪化し、絶縁破壊電圧が低くなるため好ましくなく、上記上限を超えるとパワー半導体デバイスの小型化や薄型化が達成できなくなるため好ましくない。
また、銅箔の厚さは通常、十分な放熱性を確保するという理由から、30〜200μm、特に30〜150μmであることが好ましい。
[4.パワーデバイス装置]
上記放熱シート又は積層放熱シートは、放熱基板としてパワーデバイス装置に実装することができる。上記放熱シート及び積層放熱シートを備えたパワーデバイス装置は、高い熱伝導性による放熱効果で、高い信頼性のもとに、高出力、高密度化が可能である。パワー半導体デバイス装置において、放熱シート又は積層放熱シート以外のアルミ配線、封止材、パッケージ材、ヒートシンク、サーマルペースト、はんだというような部材は従来公知の部材を適宜採用できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
<窒化ホウ素二次粒子の製造例1>
以下に記載する方法で、BN−A凝集粒子を調製した。
BN−A凝集粒子を作製するためには、原料として、粉末X線回折測定によりえられる(002)面ピークの半値幅が2θ=0.67°、酸素濃度が7.5質量%であるh−BN(以下原料h−BN粉末と記載)を用いた。
・BNスラリーからの凝集粒子の作製
[スラリーA]
以下の配合で粘度が810mPa・sのスラリーAを調製した。
スラリーA配合
原料h−BN粉末:10000g
純水:0g
バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%):11496g
界面活性剤(花王(株)製界面活性剤「アンモニウムラウリルサルフェート」:固形分濃度14質量%):250g
[スラリーの調製]
原料h−BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで純水、バインダーの順に所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボー
ルを添加して、ポットミル回転台で撹拌した。撹拌は、1〜5時間所望の粘度になるまで実施した。
[造粒]
BNスラリーからの造粒は、大河原化工機株式会社製FOC−20を用いて造粒した。
ディスク回転数20000〜23000rpm、乾燥温度80℃で実施した。
[BN−A凝集粒子の作製]
上記BN造粒粒子を、2000℃で5時間、窒素ガス流通下に加熱処理した。
加熱処理時の昇温および降温は、以下のように行った。
室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを導入しながら2000℃まで83℃/時で温度を上げ、2000℃到達後、5時間保持した。その後、室温まで冷却し、BN−A凝集粒子を得た。
[分級]
更に、上記加熱処理後のBN凝集粒子を、乳鉢および乳棒を用いて軽粉砕した後、目開き90μmの篩を用いて分級した。分級後、BN−A凝集粒子の平均結晶子径、D50、XRD測定による(100)面と(004)面のピーク強度比を測定した。測定結果は表1に示す。また、BN−AのSEM写真を図1に示す。
<樹脂組成物の調製>
上記製造したBN−A7.3g、及びマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂(Tg:190℃)1.4gを溶剤(シクロヘキサノン)5.5gに添加して混合し、放熱シート用スラリーを調製した。
調製した放熱シート用スラリーに以下の添加剤を加え、スラリーを調製した。
スラリー1:高分子ゲル化剤(変性ウレア溶液BYK−410、ビックケミー・ジャパン株式会社)0.5%
スラリー2:高分子ゲル化剤(変性ウレア溶液BYK−410、ビックケミー・ジャパン株式会社)2%
スラリー3:チキソ材(フュームドシリカRX200、日本アエロジル株式会社)4%
スラリー4:添加剤なし。
上記調製したスラリー1乃至4について、ずり速度を変化させて、25℃における粘度を測定した。粘度測定には、Rheologica Instruments社製のVAR-50を用いた。結果を図2に示す。なお、表2記載の各スラリーの粘度V1及びV2は、以下のように求めた。
図2のグラフのそれぞれ近似曲線から、ずり速度10-3sec-1及び25sec-1のときの粘度V1及びV2を読み取り、V1/V2を示した。スラリー1から4の近似曲線は以下の数式である。スラリー1 y=24.197x−0.582、スラリー2 y=66.319x−0.908、スラリー3 y=−2.474lnx+16.319、スラリー4 y=−0.22lnx+3.4083。
このように、特定の性質を有する窒化ホウ素二次粒子を用い、該窒化ホウ素二次粒子同士のインタラクションを高くすることで、V1/V2の値を大きくすることができ、静置状態における粘度が高く窒化ホウ素二次粒子の沈降を生ぜず、塗布状態における粘度は低く良好な塗布性能を発揮できる樹脂組成物が得られることが理解される。
今回、窒化ホウ素一次粒子のエッジ面が外側を向いたカードハウス構造の窒化ホウ素二次粒子を用いることで、エッジ面の表面積が増加した。また、エッジ面の官能基と高分子ゲル化剤の極性基の水素結合形成の増加につながり、より粘度の高いスラリーが形成されたと考えられる。

Claims (9)

  1. XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上であり、体積基準の平均粒子径D 50 が5μm以上(ただし5μmを除く)、150μm以下である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含む放熱シート用樹脂組成物。
  2. 前記窒化ホウ素二次粒子の最大粒子径が25μm以上、200μm以下である請求項1に記載の放熱シート用樹脂組成物。
  3. 更に溶剤を含む、請求項1または2に記載の放熱シート用樹脂組成物。
  4. 前記極性基を含有する化合物が、ウレア基、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルデヒド基からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱シート用樹脂組成物。
  5. XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上である窒化ホウ素二次粒子、樹脂、及び極性基を有する化合物を含み、
    25℃において、ずり速度10-3sec-1における粘度をV1、ずり速度25sec-1における粘度をV2としたときのV1/V2が10以上である、樹脂組成物。
  6. 前記樹脂がマトリクス樹脂である、請求項1からのいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂はナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂を含む請求項に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の樹脂組成物成形体からなる、放熱シート。
  9. 請求項8に記載の放熱シートを含むパワーデバイス装置。
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