JP6364883B2 - 窒化ホウ素粒子および窒化ホウ素粒子の製造方法、該窒化ホウ素粒子を含む放熱シート用塗布液、該窒化ホウ素粒子を含む放熱シート、並びにパワーデバイス装置 - Google Patents
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Description
パワー半導体デバイスは、一般的には、複数の半導体デバイスを共通のヒートシンク上に配してパッケージングしたパワー半導体モジュールとして利用される。
しかし、以下の通り、従来において、樹脂を用いた放熱シートでは、セラミックス基板に匹敵するような熱伝導性を有するものは未だに開発されていない。
れた放熱シートを形成し得ると考えられる。前述の特許文献1以外にも、従来から窒化ホウ素粉体を用いる技術が知られており、そのような窒化ホウ素として、例えば、特定の粒径、粒度分布を有する窒化ホウ素粉体が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、これとは別に表面積、粒度、タップ密度等の粒子特性の異なる二種の混合窒化ホウ素を用いる技術(例えば、特許文献3参照)が知られている。
さらに、シートの厚み方向への放熱性を上げるため使用する窒化ホウ素の二次粒子は、一次粒子の間に形成される空隙を有している。塗布により放熱シートを形成する場合、少なくとも窒化ホウ素二次粒子と溶剤を含むスラリーを調製するが、窒化ホウ素二次粒子の空隙に溶剤が吸収され、塗布性能が著しく劣る場合がある。そのため、塗布性能を上げるために溶剤を多量に加えた場合、スラリーの保存安定性(フィラーの沈降)が悪化すると
いう問題点や、シート化のために溶剤を飛ばす際にプロセスコストが高くなるなどの問題点を有している。
加えて、窒化ホウ素二次粒子内の空隙により、高熱伝導率・高耐電圧が実現できないなどの問題点も有している。
[1]窒化ホウ素二次粒子に、樹脂が内包されていることを特徴とする窒化ホウ素粒子。[2]該窒化ホウ素粒子に内包される樹脂の割合が、窒化ホウ素粒子全量に対し5wt%以上、50wt%以下であることを特徴とする[1]に記載の窒化ホウ素粒子。
[3]前記窒化ホウ素二次粒子が、カードハウス構造を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の窒化ホウ素粒子。
[4]該窒化ホウ素粒子のXRD測定において、(100)面と(004)面の強度比が3以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の窒化ホウ素粒子。
[5]該樹脂が、水への25℃における溶解度が5wt%以下の疎水性樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の窒化ホウ素粒子。
[6]該樹脂が、硬化性樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の窒化ホウ素粒子。
[7]該樹脂がエポキシ樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の窒化ホウ素粒子。
[8]窒化ホウ素二次粒子と樹脂とを溶剤中で混合し、混合物を調製するステップ、及び該混合物から溶剤を除去するステップ、を含む樹脂内包窒化ホウ素粒子の製造方法。
[9][1]〜[7]のいずれかに記載の窒化ホウ素粒子又は[8]に記載の方法で製造された窒化ホウ素粒子、マトリクス樹脂、及び溶剤を含む放熱シート用塗布液。
[10][1]〜[7]のいずれかに記載の窒化ホウ素粒子又は[8]に記載の方法で製造された窒化ホウ素粒子を含む放熱シート。
[11][10]に記載の放熱シートが支持体に積層されてなる積層放熱シート。
[12][10]に記載の放熱シート又は[11]に記載の積層放熱シートを含む、パワーデバイス装置。
さらに、本発明の窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素の二次粒子の空隙が樹脂によって埋められているために、本発明の窒化ホウ素粒子と溶剤を混合して放熱シート用スラリーを調製する際に、溶剤が窒化ホウ素の二次粒子の空隙に吸収されることなく、本発明の窒化ホウ素粒子と溶剤が馴染み、塗布性能を上げることができる。これにより、スラリー調製時に溶剤量を抑えることができ、放熱シートの製造時の溶剤除去工程におけるプロセスコス
トを抑え、さらにタクトタイムも上げることができる。
さらに別の視点からは、本発明の窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素の二次粒子の空隙が樹脂によって埋められているために、窒化ホウ素粒子の機械的強度が増している。つまり本発明の窒化ホウ素粒子を用いた放熱シートは、クラックの起点となる空隙が窒化ホウ素粒子の中に少なく、耐クラック性の向上にも寄与していると考えられる。
本発明の窒化ホウ素粒子は、樹脂が内包されていることを特徴とする(以下、本発明の窒化ホウ素粒子を「樹脂内包窒化ホウ素粒子」ともいう)。窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素二次粒子は、その内部に一次粒子が凝集した際に生じた空隙が存在する。本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子は、該空隙が樹脂により埋められていることを特徴とする。
以下、本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子の、好ましい物性について説明する。
本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子は、体積基準の最大粒子径Dmax(本明細書では、単に「最大粒子径」と記載する場合がある。)が、通常2μm以上であり、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上である。また、通常300μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは80μm以下である。
果、熱抵抗が小さくなり、高熱伝導化を達成できるとともに、表面荒れなどのない良質な膜を形成できる。最大粒子径が上記下限より小さいと、パワー半導体デバイスに求められる熱伝導性フィラーとしての熱伝導性向上効果が小さくなる。高熱伝導性のフィラーを用いた場合、複合材料として熱伝導性を発現するためには、熱伝導性フィラーと樹脂の界面密着性、複合材料と基材の密着性などが重要であり、これらの界面が最も熱伝導性減衰の要因となると考えられている。特に、パワー半導体デバイス用の放熱シートとしては、200μm〜300μm厚みの放熱シートが適用されるケースが多いが、シートの厚みに対して上述の界面の影響が顕著になるのは放熱シート厚みに対する熱伝導性フィラーの大きさが1/10以下の場合であると考えられる。したがって、熱伝導性の観点からはフィラーの体積基準の最大粒子径は上記下限より大きいことが好ましい。フィラーの体積基準の最大粒子径が上記上限を超えると、硬化した後の放熱シートの表面にフィラーが突出して、放熱シートの表面形状が悪化し、銅基板との張り合わせシートを作製する際の密着性が低下し、耐電圧特性が低下する傾向となる。一方で、フィラーの最大粒子径が小さ過ぎると、熱伝導性に及ぼす上述の界面の影響が顕著になる以外に、フィラー粒子が小さいことにより必要となる熱伝導パス数が増加して、放熱シートの厚み方向に一方の面から他方の面まで繋がる確率が小さくなり、熱伝導性の高いマトリクス樹脂と組み合わせても、放熱シートの厚み方向の熱伝導率向上効果が不十分となったり、マトリクス樹脂とフィラーの界面面積が大きくなり、耐電圧特性が低下する傾向がある。
樹脂が内包されていない、窒化ホウ素二次粒子の平均粒径及び最大粒子径についても同様に、これを適当な溶剤に分散させ、上記と同様の装置で測定することが可能である。
本発明の窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素二次粒子内部の細孔が樹脂により埋められていることから、その細孔容積が小さく、破壊強度が大きくなる。細孔容積は通常1.5mL/g以下であり、好ましくは1.0mL/g以下であり、より好ましくは0.5mL/g以下である。
窒化ホウ素粒子の細孔容積は、水銀圧入法により測定することができる。
窒化ホウ素粒子の粉末X線回折(XRD)による(100)面と(004)面のピーク強度比は、通常3.0以上、好ましくは3.2以上、より好ましくは3.4以上、更に好ましくは3.5以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。上記上限より大きいと、成形体とした際に粒子が圧壊しやすくなる傾向があり、また、毛管現象が生じにくく、樹脂の内包が十分に行われない傾向にある。また、上記下限未満だと、厚み方向の熱伝導性が向上しない傾向がある。
なお、ピーク強度比は粉末X線回折測定により測定された該当するピーク強度の強度比から計算することができる。なお、測定に供する試料は、樹脂が内包される前の窒化ホウ素二次粒子でもよく、樹脂内包窒化ホウ素粒子でもよい。また、樹脂内包窒化ホウ素粒子を含有する成形体でもよい。
次に、樹脂が内包される前の窒化ホウ素二次粒子について説明する。
<細孔直径>
本発明の窒化ホウ素二次粒子は、毛管現象による窒化ホウ素二次粒子中への樹脂の導入を容易にする観点から、細孔直径が10nm以上であることが好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましい。一方細孔直径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。細孔直径は、水銀圧入法により測定することができる。
本発明の窒化ホウ素粒子は、毛管現象によって樹脂を空隙に導入しているので、樹脂が内包される前の窒化ホウ素二次粒子は、適度な細孔容積が必要となる。
窒化ホウ素二次粒子の細孔容積は、通常0.05mL/g以上、好ましくは0.15mL/g以上、より好ましくは0.2mL/g以上である。一方通常、5 mL/g以下、好ましくは3mL/g以下、より好ましくは1.5 mL/g以下である。
細孔容積が小さいものは、窒化ホウ素二次粒子内が密になっているために、熱伝導を阻害する境界面を少なくすることが可能となるものの、窒化ホウ素二次粒子の空隙に樹脂が入りにくくなり、十分に窒化ホウ素二次粒子の空隙を樹脂で埋めることができなくなる。一方、全細孔容積が大きくなりすぎた場合も、通常は空隙の間隔が大きくなりすぎ、毛管現象が起こりにくくなり、樹脂が窒化ホウ素二次粒子内部に取り込まれにくくなる。
なお、窒化ホウ素二次粒子の細孔容積は、水銀圧入法で測定することができる。
また、特に制限はないが、窒化ホウ素二次粒子の比表面積は、通常1 m2/g以上、好ましくは2 m2/g以上、より好ましくは3 m2/g以上、更に好ましくは3.5 m2/g以上である。一方通常20m2/g以下、好ましくは18m2/g以下、より好ましくは16m2/g以下、さらに好ましくは14m2/g以下である。この下限以下だと、毛管現象が働きにくく、この上限以上だと、一次粒子が小さすぎ、どちらにしろ樹脂が窒化ホウ素二次粒子の空隙に入りにくくなる。
なお、比表面積は、BET1点法(吸着ガス:窒素)で測定することができる。
本発明に用いる窒化ホウ素二次粒子の粉末X線回折(XRD)による(002)面ピークから求めた平均結晶子径は、200Å以上であり、好ましくは250Å以上、より好ましくは280Å以上、更に好ましくは300Å以上であり、通常5000Å以下、好ましくは2000Å以下、更に好ましくは1000Å以下である。上記上限より大きいと、二次粒子を構成する一次粒子が成長しすぎるため、二次粒子内の間隙が多くなり、毛管現象が生じにくくなり、上記下限未満だと、二次粒子を構成する一次粒子内の粒界が増えるため、フォノン散乱が結晶粒界で発生し、低熱伝導になる傾向がある。
なお、ここで、「平均結晶子径」とは、粉末X線回折測定によって得られる(002)面ピークからScherrer式にて求められる結晶子径をさす。なお、測定に供する試料は、樹脂が内包される前の窒化ホウ素二次粒子でもよく、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子でもよい。
なお、ピーク強度比は粉末X線回折測定により測定された該当するピーク強度の強度比から計算することができる。
より好ましくは窒化ホウ素一次粒子が板状であって、平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子であり、更に好ましくは窒化ホウ素一次粒子が多角形状であって、平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子である。
窒化ホウ素二次粒子の凝集形態は走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
窒化ホウ素二次粒子の好ましい例としては、上記説明したように、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子であるが、窒化ホウ素一次粒子の長軸が通常0.5〜10μmに成長し、二次粒子の中心側から表面側へ向けて放射状に成長したウニ様の外観を形成していることも好ましい。窒化ホウ素二次粒子を構成する窒化ホウ素一次粒子の長軸は、好ましくは、0.6〜5μmであり、より好ましくは、0.8〜3μmであり、更に好ましくは、1.0〜3.0μmのh−BNが凝集した粒子である。
尚、長軸とは走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子1粒を拡大し、1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長を平均した値である。
本発明に用いる窒化ホウ素二次粒子を製造する方法としては、制限はないが、特に、原料となる窒化ホウ素(以下、これを粉砕したものとともに原料BN粉末と記することがある。)を粉砕工程で粉砕した後、造粒工程で凝集させることにより造粒し、更に加熱処理する加熱工程を経ることが好ましい。より具体的には、原料BN粉末を一旦媒体中に分散させて原料BN粉末のスラリー(以下、「BNスラリー」と記することがある。)とした後、粉砕処理を施し、その後得られたスラリーを用いて球形の粒子に造粒し、造粒した凝集BN造粒粒子の結晶化を行うために加熱処理を施すことが好ましい。
本発明に用いる窒化ホウ素二次粒子(以下、凝集BN粒子ともいう。)を製造する場合には、以下に説明する窒化ホウ素の粒子を原料として用いることが可能である。ただし、凝集BN粒子の原料としては以下のものに特に限定されない。
より具体的には、市販のh−BN、市販のαおよびβ−BN、ホウ素化合物とアンモニアの還元窒化法により作製されたBN、ホウ素化合物とメラミンなどの含窒素化合物から合成されたBN、ホウ水素ナトリウムと塩化アンモニウムから作製されるBNなど何れも制限なく使用できるが、特にh−BNが好ましく用いられる。
本発明の窒化ホウ素粒子に用いる凝集BN粒子が、一次粒子を表面で放射状に、かつ、BN一次粒子の平面部と端面部が接触するように配置することにより、毛管現象により、樹脂が窒化ホウ素二次粒子内の中心部まで導入されやすくなるという利点もある。
原料BN粉末の全酸素含有量を上記範囲に調整する方法としては、BN加熱時の加熱温度を2500℃以下の低温で行う方法などが挙げられる。
なお、原料BN粉末の酸素含有量は、不活性ガス融解−赤外線吸収法によりHORIBA製酸素・窒素分析計を用いて測定することができる。
また、原料BN粉末の比表面積は通常20m2/g以上であるが、好ましくは20m2/g以上500m2/g以下、より好ましくは50m2/g以上200m2/g以下である。
全細孔容積が1.0cm3/g以下であることにより、原料BN粉末が密になっているために凝集BN粒子を構成する一次粒子として用いた場合に、球形度の高い造粒が可能となる。また、比表面積が20m2/g以上であることにより、造粒による球形化の際に用いるBNスラリー中の分散粒子径を小さくすることができるため好ましい。
BNスラリーの調製に用いる媒体としては特に制限はなく、水及び/又は各種の有機溶
剤を用いることができるが、噴霧乾燥の容易さ、装置の簡素化などの観点から、水(純水)を用いることが好ましい。
水の使用量は、多過ぎると噴霧乾燥時の負荷が増大し、少な過ぎると均一分散が困難であることから、原料BN粉末に対して通常0.5〜20質量倍、特に0.5〜10質量倍とすることが好ましい。
BNスラリーの、25℃1atmにおける粘度は、通常100mPa・s以上であり、好ましくは300mPa・s以上である。また通常3000mPa・s以下であり、好ましくは2000mPa・s以下である。この範囲であることで、樹脂を内包しやすい窒化ホウ素二次粒子を製造し易くなる。
BNスラリーには、後述の粉砕処理時のスラリーの粘度上昇を抑制すると共に、BN粒子の分散安定性(凝集抑制)の観点から、種々の界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、界面活性剤は、以下の粉砕処理の前に添加してもよく、粉砕処理後に添加してもよい。
BNスラリーは、原料BN粉末を効果的に凝集粒子に造粒するために、バインダーを含むことが好ましい。バインダーは、元来、粒子同士が接着性のない原料BN粉末を強固に結びつけ、造粒粒子の形状を安定化するために作用する。
これらのバインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Nの含有量が少なくなり、結晶成長に影響するばかりか熱伝導性のフィラーとして用いた場合に熱伝導率改善効果が小さくなるおそれがある。
BNスラリーは、そのまま噴霧乾燥による造粒工程に供してもよいが、造粒に先立ち、スラリー中の原料BN粉末を粉砕処理して微細化することが好ましく、微細化することにより、凝集化を円滑に行うことができるようになる。
即ち、原料BN粉末の粒子径にもよるが、原料BN粉末をそのまま媒体中に分散させた場合、BN粉末は平板状粒子であるために、凝集化の工程で造粒されない粒子が多くなる傾向にあるが、微細化で、効率的な凝集化を行える。
BNスラリーから凝集BN粒子である造粒粒子を得るには、特に制限はないがスプレードライ法が好適に用いられる。スプレードライ法では、原料となるスラリーの濃度、装置に導入する単位時間当たりの送液量と送液したスラリーを噴霧する際の圧空圧力及び圧空量により、所望の大きさの造粒粒子を製造することが可能であって、球状の造粒粒子を得ることも可能である。球状化に際して使用するスプレードライ装置に制限はないが、より大きな球状BN造粒粒子とするためには、回転式ディスクによるものが最適である。このような装置としては、大川原化工機社製スプレードライヤーFシリーズ、藤崎電機社製スプレードライヤー「MDL−050M」などが挙げられる。
上記の造粒により得られた窒化ホウ素の造粒粒子は、更に非酸化性ガス雰囲気下に加熱処理されるのが好ましい。
ここで、非酸化性ガス雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、アンモニアガス、水素ガス、メタンガス、プロパンガス、一酸化炭素ガスなどの雰囲気のことである。ここで用いる雰囲気ガスの種類により凝集BN粒子の結晶化速度が異なるものとなり、例えばアルゴンガスでは、結晶化の速度が遅くなり、加熱処理時間が長時間に及ぶ。結晶化を短時間で行うためには特に窒素ガス、もしくは窒素ガスと他のガスを併用した混合ガスが好適に用いられる。この加熱処理の条件を適切に選択することも、凝集BN粒子の比表面積や全細孔容積を特定の範囲としながら、表面に窒化ホウ素一次粒子を放射状に、かつ、カードハウス構造に配置させる上で、重要である。
小さくなる。加熱処理温度が、上記上限を超えると、添加したバインダー成分が溶融・分解して凝集BN粒子同士が凝集し、本来の形状を保てなくなったり、BNの分解などが生じてしまうおそれがある。
加熱処理を施す焼成炉は、マッフル炉、管状炉、雰囲気炉などのバッチ式炉やロータリーキルン、スクリューコンベヤ炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、竪型連続炉などの連続炉が挙げられ、目的に応じて使い分けられる。
凝集BN粒子の粉砕の方法は特に限定されず、ジルコニアビーズ等の粉砕用メディアと共に攪拌混合する方法や、ジェット噴射等の従来公知の粉砕方法を適用できる。
上記加熱処理後の凝集BN粒子は、平均粒子径を大きくし、しかも組成物に配合したときの粘度上昇を抑制するために、好ましくは分級処理する。この分級は、通常、造粒粒子の加熱処理後に行われるが、加熱処理前の造粒粒子について行い、その後加熱処理に供してもよい。
乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、分級精度の観点からは、風力分級が好ましく、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うことができる。これらの中で、サブミクロンからシングルミクロン領域の小さな微粒子を分級するには旋回気流式分級機を、それ以上の比較的大きな粒子を分級するには半自由渦遠心式分級機など、分
級する粒子の粒子径に応じて適宜使い分ければよい。
上述のようにして、原料BN粉末を造粒し、加熱処理をすることによって、その形状を保持したままh−BNの結晶を成長させることで、上述した物性の別の態様として、表面に通常0.05μm以上5μm以下の窒化ホウ素一次粒子(以下、「BN一次粒子」と記載する場合がある。)を配置することが可能となり、カードハウス構造を有する凝集粒子とすることができる。好ましくは板状のBN一次粒子の平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子とすることができ、より好ましくは多角形状の窒化ホウ素一次粒子の平面部と端面部が接触しているカードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子とすることができる。更に好ましくは、凝集BN粒子が球状であるという上記物性の別の形態として表すことができる。尚、「球状」とは、アスペクト比(長径と短径の比)が1以上2以下、好ましくは1以上1.5以下であることをさす。凝集BN粒子は、後述の原料BN粉末を凝集させて造粒された粒子であり、この造粒粒子が「球状」であることが好ましく、「球状であることが好ましい」とは、一次粒子の形状が球状であることが好ましいというものではない。凝集BN粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された画像から200個以上の粒子を任意に選択し、それぞれの長径と短径の比を求めて平均値を算出することにより決定する。
本発明に用いられる窒化ホウ素二次粒子では、このような特異的な結晶成長により得られることで、熱伝導性の等方性、マトリクス樹脂との混練性、耐崩壊性に優れるという効果を奏する。
本発明の窒化ホウ素粒子が内包する樹脂は、その種類は特に限定されず、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも制限なく用いることが出来る。
本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子を含む放熱シートは、複数のパワー半導体デバイスが集積されたパワー半導体モジュールに好適に適用される。通常、熱伝導性の担い手は、フィラーである窒化ホウ素二次粒子であるが、パワー半導体デバイス用の放熱シートは、10W/mK以上の高い熱伝導性を必要とされるため、窒化ホウ素二次粒子内に内包される樹脂の熱伝導性も高いことが望ましい。熱伝導率は0.2W/mK以上であることが好ましく、特に0.22W/mK以上であることが好ましい。
また、内包樹脂には、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の添加量としては、内包樹脂全量に対して通常0.001〜5質量%であり、0.005〜3質量%が好ましい。界面活性剤の添加量が上記下限未満では、内包樹脂が窒化ホウ素二次粒子内に十分に浸透できない場合があり、また上記上限を超えると窒化ホウ素と内包樹脂との密着性が劣り、好ましくない。
以下に本発明の窒化ホウ素粒子の製造方法を示す。窒化ホウ素粒子の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
窒化ホウ素二次粒子内部に樹脂を導入する方法は、いかなる方法でも構わないが、プロセスコストを削減するため、溶媒キャスト法で行うことができる。溶媒キャスト法とは、上述の窒化ホウ素二次粒子と上述の内包樹脂を溶剤で分散・混合しスラリー化した後、溶剤を除去することで窒化ホウ素二次粒子の中を樹脂で満たす方法である。
窒化ホウ素二次粒子の種類によって、毛管現象によっても樹脂の導入が不十分である場合等は、必要に応じ適当な界面活性剤等を混合物中に添加することや、混合物を脱気したりすることが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶剤としては、例えば、以下に例示するアルコール系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、アルカン系溶剤、エチレングリコールエーテル及びエーテル・エステル系溶剤、プロピレングリコールエーテル及びエーテル・エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤の中から、樹脂の溶解性等を考慮して、好適に選択して用いることができる。
有機溶剤の具体例としては、WO2013/081061に例示されたものを用いることができる。
有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
本発明の窒化ホウ素粒子は、必要に応じて平板状窒化ホウ素、本発明の凝集BN粒子以外の凝集窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウムの中から選ばれる1種以上の無機フィラーを含有してもよい。
これらの無機フィラーの含有量は、樹脂内包窒化ホウ素粒子に対し通常50wt%以下、好ましくは40wt%以下、より好ましくは30wt%以下である。また、通常0.5wt%以上である。
本発明の別の実施形態は、上記の樹脂内包窒化ホウ素粒子(以下、単にフィラーともいう。)、マトリクス樹脂(以下、マトリクス樹脂ともいう。)、及び溶剤を含む樹脂組成物である。
フィラーとの複合化で高い熱伝導性を得るために、組成物中のマトリクス樹脂の熱伝導率は0.2W/mK以上であることが好ましく、特に0.22W/mK以上であることが好ましい。
なお、マトリクス樹脂の熱伝導率は、樹脂組成物を構成する成分のうち、マトリクス樹脂と有機溶剤と、更に組成物中に硬化剤を含む場合には硬化剤のみを用いて、通常の硬化方法に従って硬化膜を形成し、この硬化膜について、以下の方法で求めた値である。
マトリクス樹脂の硬化膜について、以下の装置を用いて、熱拡散率、比重、及び比熱を測定し、この3つの測定値を乗じることで熱伝導率を求める。
(1)熱拡散率:アイフェイズ社製 「アイフェイズ・モバイル 1u」
(2)比重:メトラー・トレド社製 「天秤 XS−204」
(固体比重測定キット使用)
(3)比熱:セイコーインスツル社製 「DSC320/6200」
エポキシ樹脂としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。中でも、耐熱性がより一層高められることから、フルオレン骨格及び/又はビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が特に好ましく、とりわけビルフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格及びビフェニル骨格のうちの少なくとも1つ以上の骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましい。
また、樹脂組成物中におけるフィラー(樹脂内包窒化ホウ素粒子)の含有量は、通常30wt%以上、好ましくは40wt%以上、より好ましくは50wt%以上であり、通常99wt%以下、好ましくは98wt%以下、より好ましくは95wt%以下である。
樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤を含有していてもよい。
硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基等などのマトリクス樹脂の架橋基間の架橋反応に寄与する物質を示す。
エポキシ樹脂においては、必要に応じて、エポキシ樹脂用の硬化剤、硬化促進剤が共に用いられる。
硬化剤、第3級アミン、イミダゾール及びその誘導体、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
硬化剤の具体例としては、WO2013/081061に例示されたものを用いることができる。
これらの硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
硬化剤の中でも、イミダゾール又はその誘導体やジシアンジアミン化合物が好適に用いられる。
硬化剤の含有量は、マトリクス樹脂100質量部に対して、通常0.1〜60質量部であり、0.5〜40質量部が好ましい。
樹脂組成物には、機能性の更なる向上を目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の添加剤(その他の添加剤)を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、液晶性エポキシ樹脂等の、前記のマトリクス樹脂に機能性を付与した機能性樹脂、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、繊維状窒化ホウ素等の窒化物粒子、アルミナ、繊維状アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の絶縁性金属酸化物、ダイヤモンド、フラーレン等の絶縁性炭素成分、樹脂硬化剤、樹脂硬化促進剤、粘度調整剤、分散安定剤が挙げられる。
また、樹脂組成物には、成形時の流動性改良及び基材との密着性向上の観点より、熱可塑性のオリゴマー類を添加することもできる。
これらは、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
添加剤の具体例については、WO2013/081061に例示されたものを用いることができ、添加量についてもWO2013/081061に記載の範囲とすることができる。
本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子は、溶剤に分散させ、スラリー化することで、放熱シートを製造するための塗布液とすることができる。
溶剤については、樹脂組成物を製造する時に使用する上述した溶剤を使うことができ、さらに付け加えると水を用いることができる。窒化ホウ素粒子は樹脂を内包するため、疎水的なベーサル面が樹脂で覆われていることで、上述の界面活性剤を用いることにより、水を溶媒としてスラリー化することができる。水を用いることは、グリーンケミストリーの観点や放熱シートの製造コストカットの観点からも好ましい。
下である。
なお、樹脂内包窒化ホウ素粒子を用いた放熱シート用塗布液に、溶剤として水を用いた場合、マトリクス樹脂は、親水樹脂を用いてもよい。親水樹脂は、ポリアクリル酸、PVA、PVBなどが用いられる。
本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子を用いて放熱シート用塗布液を製造する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、上記放熱シート用塗布液の構成成分を混合することで製造することができる。分散・混合方法は、本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子を製造する際に説明した、上述の分散機・混合機を用いることができる。
上記樹脂組成物、または放熱シート用塗布液を用いて、各種の成形体を製造することができる。
この成形体を成形する方法は、樹脂組成物の成形に一般に用いられる方法を用いることができる。
また、樹脂組成物や放熱シート用塗布液がエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性
樹脂組成物を含む場合、成形体の成形、すなわち硬化は、それぞれの組成に応じた硬化温度条件で行うことができる。
以下、放熱シート用塗布液を用いて放熱シートを製造する方法を具体的に説明する。
まず基板の表面に、放熱シート用塗布液で塗膜を形成する。
即ち、放熱シート用塗布液を用いて、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法、その他の任意の方法で塗膜を形成する。塗布液の塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの塗布装置を用いることにより、基板上に所定の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能であり、好ましい。
なお、基板としては、後述の厚さの銅箔が一般的に用いられるが、何ら銅基板に限定されるものではない。
放熱シート用塗布液を塗布することにより形成された塗膜を、溶剤や低分子成分の除去のために、通常10〜150℃、好ましくは25〜100℃、より好ましくは、30〜90℃、特に好ましくは、40〜80℃の任意の温度で乾燥することができる。ただし、溶剤の沸点を越えないことが望ましい。この温度範囲の上限以上の場合、溶剤除去時に、溶剤の対流のために、塗布膜表面が荒れてしまうことがある。加えて、放熱シート塗布液が熱硬化性樹脂を含む場合、塗布液が硬化してしまい、その後のプレスプロセスで樹脂が流れなくなり、ボイドを除去することができない恐れがある。なお、この温度範囲の下限以下であると、効果的に溶剤を取り除くことができず、溶剤除去に時間がかかってしまう恐れがある。乾燥時間は、通常5分〜10日間、好ましくは、10分〜3日間、より好ましくは20分〜1日間、特に好ましくは、30分から4時間の加熱処理を行って乾燥膜を形成する。
乾燥時間が短すぎると、十分に溶剤が除去できず、残留溶剤が放熱シート内のボイドになってしまう恐れがある。乾燥時間が長すぎると、生産性があげられず、製造プロセスコストが高くなる恐れがある。
乾燥工程の後には、加圧工程を行ってもよい。シート化工程は、窒化ホウ素同士を接合させヒートパスを形成する目的、シート内のボイドや空隙をなくす目的、基材との密着をさせる目的、窒化ホウ素粒子に含まれる内包樹脂を押し出しシート内の結合を行う目的から加圧することが望ましい。加圧工程は、銅基板上の乾燥膜に通常10kgf/cm2〜2000kgf/cm2、好ましくは50kgf/cm2〜1000kgf/cm2、より好ましくは80kgf/cm2〜800kgf/cm2、特に好ましくは100kgf/cm2〜500kgf/cm2の加重をかけて実施することが望ましい。この加圧時の加重を上記上限以下とすることにより、窒化ホウ素二次粒子が圧壊することなく、シート中に空隙などがない高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。また、加重を上記下限以上とすることにより、凝集BN粒子間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。
加圧工程では、銅基板に塗布、乾燥した組成物膜を通常25〜300℃、好ましくは40〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に好ましくは60〜160℃で加熱す
ることが望ましい。この温度範囲でシート化工程を行うことにより、加熱は乾燥膜中の樹脂の溶融粘度を低下させることができ、シート内のボイドや空隙をなくすことができる。この温度範囲以上で行うと、有機成分が分解する恐れや残留溶剤が蒸気となり、ボイドを形成する恐れがある。
加圧工程は、通常30秒〜4時間、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは3分〜1時間、特に好ましくは5分〜45分である。この上限時間以上では、放熱シートの製造プロセス時間が長すぎ、生産コストが高くなる恐れがある。この下限時間以下では、シート内の空隙やボイドを十分に取り除けないため、熱伝達性能や耐電圧特性に影響を与える恐れがある。
特に加圧工程と硬化工程を経るシート化工程においては、上記の範囲の加重をかけて、後述の圧縮率の範囲となるように加圧、硬化を行うことが好ましい。
従来の窒化ホウ素を用いて、放熱シートを製造した場合、窒化ホウ素二次粒子は、加圧工程において圧壊され、シート面内方向に低熱伝導面が配向してしまって、シート厚み方向では、低熱伝導性しか得られない。これに対して、本発明の窒化ホウ素粒子は樹脂が内包されており、窒化ホウ素二次粒子内部に空隙が少なく、そのため、加圧工程において窒化ホウ素二次粒子の構造が圧壊されにくく、加圧圧縮することにより効率的にシート中で粒子の接触による熱伝導パスを形成することが出来る。このようなことから、本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子を用いた場合には、シート化工程の加圧により、厚み方向に高い熱伝導性を有するシートとすることができる。
上記のように高い粒子強度を持つ本発明の樹脂内包窒化ホウ素粒子を含有する放熱シートは、上述のように大きな加重下でシート化を行って製造されるが、特に加重をかける前の硬化前シート厚みと加重をかけて完全に硬化させた後の硬化シート厚みの比((硬化シート厚み)/(硬化前シート厚み))から計算される圧縮率(1−(硬化シート厚み)/(硬化前シート厚み))が0.2以上0.8以下の圧縮率の時に、厚み方向に10W/mK以上50W/mK以下の高熱伝導性が発現する。この圧縮率は、より好ましくは0.3以上0.7以下、更に好ましくは0.4以上0.7以下、特に好ましくは0.5以上0.7以下である。圧縮率を上記上限以下とすることにより、窒化ホウ素二次粒子を圧壊することなく、シート中に空隙などがない高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。また、圧縮率を上記下限以上とすることにより、窒化ホウ素二次粒子間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る。
また、このような圧縮率で硬化させて得られる本発明の放熱シートの厚み方向の熱伝導率は、より好ましくは15〜40W/mK、特に好ましくは20〜40W/mKである。
また、上記放熱シートは、XRD測定で100軸と004軸の強度比I(100)/I(004)が3.0以上であることが好ましい。上記範囲であることで、加圧工程においても窒化ホウ素二次粒子が圧壊せず、板状窒化ホウ素粒子がランダムに配向されており、放熱シートの厚み方向において高い熱伝導率を達成できる。
上記放熱シートは、熱伝導性を高くするために基板張り合わせ積層放熱シートとしてもよい。特に銅箔を用いることが好まれ、例えば、上述の放熱シートの製造方法により製造
され、銅箔が積層一体化されたものが好ましい。
また、銅箔の厚さは通常、十分な放熱性を確保するという理由から、30〜200μm、特に30〜150μmであることが好ましい。
上記放熱シート又は銅張り合わせ放熱シートは、放熱基板としてパワーデバイス装置に実装することができる。本発明の窒化ホウ素凝集粒子を用いることで、その高い熱伝導性による放熱効果で、高い信頼性のもとに、高出力、高密度化が可能である。パワー半導体デバイス装置において、放熱シート又は銅張り合わせ放熱シート以外のアルミ配線、封止材、パッケージ材、ヒートシンク、サーマルペースト、はんだというような部材は従来公知の部材を適宜採用できる。
<窒化ホウ素二次粒子の調製>
以下に記載する方法で、BN−A凝集粒子を調製した。
BN−A凝集粒子を作製するためには、原料として、粉末X線回折測定によりえられる(002)面ピークの半値幅が2θ=0.67°、酸素濃度が7.5質量%であるh−BN(以下原料h−BN粉末と記載)を用いた。
・BNスラリーからの凝集粒子の作製
[スラリーA]
以下の配合で粘度が810mPa・sのスラリーAを調製した。
スラリーA配合
原料h−BN粉末:10000g
純水:0g
バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%):11496g
界面活性剤(花王(株)製界面活性剤「アンモニウムラウリルサルフェート」:固形分濃度14質量%):250g
[スラリーの調製]
原料h−BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで純水、バインダーの順に所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で撹拌した。撹拌は、1〜5時間所望の粘度になるまで実施した。
[造粒]
BNスラリーからの造粒は、大河原化工機株式会社製FOC−20を用いて造粒した。
ディスク回転数20000〜23000rpm、乾燥温度80℃で実施した。
上記BN造粒粒子を、1600℃で2時間、1500℃で24時間、窒素ガス流通下に加熱処理した。その後、室温まで冷却し、BN−A凝集粒子を得た。
[分級]
更に、上記加熱処理後のBN凝集粒子を、乳鉢および乳棒を用いて軽粉砕した後、目開き90μmの篩を用いて分級した。分級後、BN−A凝集粒子の平均結晶子径、D50、X
RD測定による(100)面と(004)面のピーク強度比を測定した。測定結果は表1に示す。
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン混合液6.1gに、上記調製したBN−A凝集粒子7.3g及びエポキシ樹脂1.0gを添加し、分散機により3分間撹拌した。撹拌後、60℃で1時間保持して溶剤を除去し、溶剤除去物を乳鉢により15分間粉砕することで、平均粒子径50μmの樹脂内包窒化ホウ素凝集粒子を得た。
得られた粒子のSEM画像を図1及び2に示す。なお、図2の(d)は、樹脂を内包させる前の、窒化ホウ素二次粒子のSEM画像である。
Claims (11)
- カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子に、樹脂が内包されていることを特徴とする窒化ホウ素粒子。
- 該窒化ホウ素粒子に内包される樹脂の割合が、窒化ホウ素粒子全量に対し5wt%以上、50wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ホウ素粒子。
- 該窒化ホウ素粒子のXRD測定において、(100)面と(004)面の強度比が3以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粒子。
- 該樹脂が、水への25℃における溶解度が5wt%以下の疎水性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化ホウ素粒子。
- 該樹脂が、硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化ホウ素粒子。
- 該樹脂がエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒化ホウ素粒子。
- 窒化ホウ素二次粒子と樹脂とを溶剤中で混合し、混合物を調製するステップ、及び該混合物から溶剤を除去するステップ、を含む樹脂内包窒化ホウ素粒子の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の窒化ホウ素粒子又は請求項7に記載の方法で製造された窒化ホウ素粒子、マトリクス樹脂、及び溶剤を含む放熱シート用塗布液。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の窒化ホウ素粒子又は請求項7に記載の方法で製造された窒化ホウ素粒子を含む放熱シート。
- 請求項9に記載の放熱シートが支持体に積層されてなる積層放熱シート。
- 請求項9に記載の放熱シート又は請求項10に記載の積層放熱シートを含む、パワーデバイス装置。
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