JP2016009633A - 電池システム - Google Patents

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達哉 古賀
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修二 戸村
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Yasuki Hirota
靖樹 廣田
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Abstract

【課題】 活性リチウムは、リチウムイオンに溶解することができるが、活性リチウムの切断によって、溶解できない活性リチウムが発生することがある。【解決手段】 コントローラ(40)は、析出反応および溶解反応が行われたときの反応電流に基づいて、析出反応および溶解反応が行われたときの活性リチウムの総量(Q3)を算出する。活性リチウムの総量と、活性リチウムの切断によって生成され、溶解反応が行われない活性リチウムの量との比率(γ)は、リチウムイオン二次電池の充電時の電流値および、充電時の継続時間のうちの少なくとも一方に基づいて算出できる。充電時の電流値が大きいほど比率が高くなり、継続時間が長いほど比率が高くなる。活性リチウムの総量(Q3)および比率(γ)を算出すれば、溶解反応が行われない活性リチウムの量(Q3_b)を算出できる。【選択図】 図5

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池における活性リチウムの析出量を推定する技術に関する。
特許文献1では、リチウム二次電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させるときの電流に基づいて、リチウム二次電池の内部に析出しているデンドライト(活性リチウム)の析出量を推定している。
特開2010−086901号公報 特開2012−038463号公報
析出した活性リチウムは、リチウムイオンおよび電子に溶解させることができ、この溶解反応によって、活性リチウムの量を減らすことができる。ここで、活性リチウムの析出状態によっては、活性リチウムが切断されてしまうことが分かった。活性リチウムの切断によって、活性リチウムが分離され、負極と電気的に接続された活性リチウムと、負極と電気的に接続されていない活性リチウムとが発生する。
活性リチウムを溶解させるためには、活性リチウムが負極と電気的に接続されている必要がある。上述したように活性リチウムが切断されると、負極と電気的に接続されていない活性リチウムは、溶解させることができなくなり、析出したままとなってしまう。このため、活性リチウムの析出量を推定する上では、負極と電気的に接続されていない活性リチウムの量を考慮する必要がある。
本発明の電池システムは、充放電を行うリチウムイオン二次電池と、活性リチウムを析出させる析出反応と、活性リチウムを溶解させる溶解反応とが行われたときの反応電流に基づいて、析出反応および溶解反応が行われたときの活性リチウムの総量を算出するコントローラと、を有する。
活性リチウムには、活性リチウムの切断によって生成され、溶解反応が行われない活性リチウムが含まれることがある。活性リチウムの総量と、溶解反応が行われない活性リチウムの量との比率は、リチウムイオン二次電池の充電時の電流値および、充電時の継続時間のうちの少なくとも一方に基づいて算出できる。ここで、充電時の電流値が大きいほど比率が高くなり、継続時間が長いほど比率が高くなる。活性リチウムの総量および比率を算出すれば、溶解反応が行われない活性リチウムの量を算出できる。
本発明によれば、活性リチウムの総量を算出(推定)した上で、比率に基づいて、溶解反応が行われない活性リチウムの量、すなわち、負極と電気的に接続されていない活性リチウムの量を把握することができる。
電池システムの構成を示す図である。 析出反応、溶解反応および不活性化反応を示す図である。 非導電活性リチウムおよび導電活性リチウムが生成する過程を示す概略図である。 充電時の電流値、充電継続時間および比率の対応関係を示す図である。 リチウム析出量を算出する処理を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1である電池システムについて、図1を用いて説明する。二次電池10は、正極ラインPLおよび負極ラインNLを介して負荷20に接続されている。二次電池10としては、リチウムイオン二次電池が用いられる。二次電池10は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に配置されたセパレータとを有する。正極板は、集電板と、集電板の表面に形成された正極活物質層とを有する。正極活物質層は、正極活物質や導電材などを含む。負極板は、集電板と、集電板の表面に形成された負極活物質層とを有する。負極活物質層は、負極活物質や導電材などを含む。正極活物質層、負極活物質層およびセパレータには、電解液が染み込んでいる。
正極ラインPLには、システムメインリレーSMR−Bが設けられ、負極ラインNLには、システムメインリレーSMR−Gが設けられている。システムメインリレーSMR−B,SMR−Gは、コントローラ40からの制御信号を受けて、オンおよびオフの間で切り替わる。
負荷20は、二次電池10の放電電力を受けて動作したり、二次電池10に電力(充電電力)を供給したりする。本実施例の電池システムを車両に搭載したとき、負荷20としては、モータ・ジェネレータを用いることができる。モータ・ジェネレータは、二次電池10の放電電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。また、モータ・ジェネレータは、車両の制動時に発生する運動エネルギを電力に変換し、この電力(回生電力)を二次電池10に出力することができる。なお、二次電池10を車両に搭載するときには、複数の二次電池10を直列に接続することによって構成された組電池を車両に搭載することができる。
電圧センサ31は、二次電池10の電圧値Vbを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。電流センサ32は、二次電池10の電流値Ibを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。本実施例において、二次電池10を放電しているときの電流値Ibを正の値とし、二次電池10を充電しているときの電流値Ibを負の値とする。温度センサ33は、二次電池10の温度(電池温度)Tbを検出し、検出結果をコントローラ40に出力する。コントローラ40は、メモリ41およびタイマ42を有する。メモリ41は、所定の情報を記憶している。タイマ42は、時間の計測に用いられる。
二次電池10を充放電したとき、正極板および負極板の間において、リチウムイオンが移動する。具体的には、二次電池10を放電したとき、正極板では、リチウムイオンおよび電子を吸収する反応が行われ、負極板では、リチウムイオンおよび電子を放出する反応が行われる。一方、二次電池10を充電したとき、正極板では、リチウムイオンおよび電子を放出する反応が行われ、負極板では、リチウムイオンおよび電子を吸収する反応が行われる。このように、二次電池10の充放電に応じて、リチウムイオンが負極活物質層に挿入されたり、リチウムが負極活物質層から脱離したりする。
一方、二次電池10の負極板では、図2に示す副反応が行われる。析出反応(副反応)では、リチウムイオンおよび電子が反応することにより、活性リチウム(金属リチウム)が生成される。この析出反応は、二次電池10の充電に応じて、負極活物質層にリチウムイオンが挿入する反応とは異なる。溶解反応(副反応)は、活性リチウムがリチウムイオンおよび電子に分離する反応であり、溶解反応の発生は、二次電池10の負極電位に依存する。二次電池10を放電したり、二次電池10に逆電圧を印加したりすると、二次電池10の負極電位を上昇させることができ、溶解反応を発生させることができる。
不活性化反応(副反応)は、活性リチウムが電解液と反応して不活性リチウム(リチウム化合物)を生成する反応(不可逆反応)である。不活性リチウムは、二次電池10の負極板において、被膜として形成され、二次電池10の充放電に関与しなくなる。このため、不活性リチウムの量が増えるほど、二次電池10の満充電容量が低下してしまう。
図3には、二次電池10の負極板に活性リチウムが析出する状態を示している。図3中の(A)に示すように、負極板の表面に活性リチウムが析出したとき、二次電池10の充電が継続されることに伴い、図3中の(B)に示すように、析出物(活性リチウム)が針状に成長する。析出物の成長が進行すると、図3中の(C)に示すように、析出物が切断されることがある。
図3中の(C)に示す状態では、負極板と電気的に接続された活性リチウム(導電活性リチウムという)と、負極板と電気的に接続されていない活性リチウム(非導電活性リチウム)とが存在する。導電活性リチウムおよび負極板の間では、電子が流れるため、導電活性リチウムの溶解反応を発生させることができる。一方、非導電活性リチウムおよび負極板の間では、電子が流れないため、非導電活性リチウムの溶解反応を発生させることができない。すなわち、非導電活性リチウムは、このままの状態で存在し続けてしまう。
本実施例では、活性リチウムとして存在する量(総量)Qと、不活性リチウムとして存在する量(総量)Qと、リチウム析出量QLiとを規定している。ここで、リチウム析出量QLiは、活性リチウムの総量Qと、不活性リチウムの総量Qとを合わせた量(総量)となる。
図2を用いて説明したように、まず、析出反応によって活性リチウムが生成される。この活性リチウムに対しては、溶解反応が行われる。この点を考慮すると、活性リチウムとして存在する量Qは、析出反応および溶解反応が行われたときの活性リチウムの量になる。析出反応および溶解反応が行われたときの活性リチウムとは、析出反応によって生成された活性リチウムであって、溶解反応が行われた後に残存している活性リチウムである。
ここで、上述したように、活性リチウムからは導電活性リチウムおよび非導電活性リチウムが発生することを考慮すると、活性リチウムの量Qは、溶解反応を発生させることができる導電活性リチウムの量Q3_aと、溶解反応を発生させることができない非導電活性リチウムの量Q3_bとに分けることができる。
リチウム析出量QLiおよび量Q,Q,Q3_a,Q3_bは、下記式(1)〜(4)に示す関係を有する。
上記式(3),(4)に示すγは、活性リチウムの量Qに対して、非導電活性リチウムが占める量Q3_bの割合であり、言い換えれば、活性リチウムの量Qと、非導電活性リチウムの量Q3_bとの比率である。具体的には、比率γは、非導電活性リチウムの量Q3_bを活性リチウムの量Qで除算した値であり、0以上で1以下の範囲内の値である。
比率γは、二次電池10を充電したときの電流値Ibと、二次電池10の充電を継続している時間(充電継続時間という)t_chとに依存する。したがって、実験に基づいて、比率γ、充電時の電流値Ibおよび充電継続時間t_chの対応関係を予め求めておけば、充電時の電流値Ibおよび充電継続時間t_chに基づいて、比率γを特定することができる。ここで、タイマ42を用いて、充電継続時間t_chを計測できる。
比率γ、充電時の電流値Ibおよび充電継続時間t_chの対応関係は、マップ又は演算式として表すことができる。図4には、比率γ、充電時の電流値Ibおよび充電継続時間t_chの対応関係を示す。上述したように、充電時の電流値Ibを負の値としているため、図4では、充電時の電流値Ibの絶対値を示している。図4に示すように、充電時の電流値(絶対値)Ibが大きいほど、比率γが高くなり、充電時の電流値(絶対値)Ibが小さいほど、比率γが低くなる。また、充電継続時間t_chが長いほど、比率γが高くなり、充電継続時間t_chが短いほど、比率γが低くなる。
ここで、二次電池10を充放電するときの充放電パターンが固定されているときには、充電時の電流値Ibや充電継続時間t_chが固定されることになる。この場合には、比率γを固定値として予め設定しておくことができる。また、本実施例では、充電時の電流値Ibおよび充電継続時間t_chに基づいて、比率γを算出しているが、これに限るものではない。具体的には、充電時の電流値Ib又は充電継続時間t_chに基づいて、比率γを算出することもできる。
上記式(3),(4)によれば、活性リチウムの量Qを算出すると、比率γに基づいて、導電活性リチウムの量Q3_aおよび非導電活性リチウムの量Q3_bを算出することができる。上述したように、導電活性リチウムは溶解させることができるため、導電活性リチウムの量Q3_aは減少させることができる。一方、非導電活性リチウムは溶解させることができないため、非導電活性リチウムの量Q3_bは減少させることができない。
そこで、非導電活性リチウムの量Q3_bを算出した後では、リチウム析出量QLiは、下記式(5)に基づいて算出される。下記式(5)に示す量Qは、非導電活性リチウムの総量であり、非導電活性リチウムの量Q3_bが算出されるたびに、非導電活性リチウムの量Q3_bを積算した量となる。
次に、リチウム析出量QLiを算出する方法について説明する。上述したように、リチウム析出量QLiは、活性リチウムの量Qと、不活性リチウムの量Qとの和になる。本実施例において、活性リチウムの量Qを、活性リチウムの電荷量(単位[Ah])として規定し、不活性リチウムの量Qを、不活性リチウムの電荷量(単位[Ah])として規定する。なお、以下の各式(6)〜(35)で説明した記号と重複する記号については、繰り返して説明しない。
活性リチウムの量Qは、下記式(6)に基づいて算出され、不活性リチウムの量Qは、下記式(7)に基づいて算出される。
活性リチウムの量Qは、析出反応および溶解反応に依存する。また、活性リチウムの量Qを電荷量として規定することにより、活性リチウムの量Qは、析出反応および溶解反応の両方向を考慮した電流値を所定時間tの間で積算した値となる。この電流値は、析出反応および溶解反応における反応電流密度I’(単位[A/cm])に対して、電極の反応面積S(単位[cm])を乗算することによって算出される。したがって、活性リチウムの量Qは、上記式(6)によって表すことができる。反応面積Sとは、二次電池10において、正極板(正極活物質層)および負極板(負極活物質層)が対向する領域における電極板(正極板や負極板)上の面積であり、予め求めておくことができる。
不活性リチウムの量Qは、不活性化反応に依存する。また、不活性リチウムの量Qを電荷量として規定することにより、不活性リチウムの量Qは、不活性化反応における電流値を所定時間tの間で積算した値となる。この電流値は、不活性化反応における反応電流密度I’ (単位[A/cm])に対して、電極の反応面積Sを乗算することによって算出される。したがって、不活性リチウムの量Qは、上記式(7)によって表すことができる。
反応電流密度I’,I’は、下記式(8),(9)に示すように規定することができる。
上記式(8)において、i’は、析出反応および溶解反応において、二次電池10の負極の界面における反応電流密度(単位[A/cm])である。Aは、析出反応および溶解反応において、単位電極反応面積当たりの反応表面積を示す面積比(単位[cm/cm])である。すなわち、面積比Aは、反応表面積を反応面積Sで除算した値である。反応表面積とは、負極板の表面のうち、活性リチウムが析出する領域における総面積である。
上記式(9)において、i’は、不活性化反応において、二次電池10の負極の界面における反応電流密度(単位[A/cm])である。Aは、単位電極反応面積当たりの反応表面積を示す面積比(単位[cm/cm])である。すなわち、面積比Aは、反応表面積を反応面積Sで除算した値である。ここで、面積比Aは、面積比Aに等しいとみなすことができる。
反応電流密度i’および面積比Aを算出すれば、活性リチウムの量Qを算出でき、反応電流密度i’および面積比A(面積比A)を算出すれば、不活性リチウムの量Qを算出できる。そして、算出した量Q,Qに基づいて、リチウム析出量QLiを算出できる。なお、非導電活性リチウムの量Q3_bを算出したときには、上記式(5)に基づいて、リチウム析出量QLiが算出される。
析出反応および溶解反応における反応電流密度i’を算出する方法について、以下に説明する。
図2に示すように、析出反応および溶解反応は、互いに逆方向の反応となる。析出反応および溶解反応の両者を考慮したときの反応電流密度i’は、バトラー・ボルマー式に基づいて下記式(10)によって表すことができる。下記式(10)に示す右辺第1項は、析出反応における反応電流密度を示し、下記式(10)に示す右辺第2項は、溶解反応における反応電流密度を示す。
上記式(10)において、i03は、単位反応表面積当たりの交換電流密度(単位[A/cm])であり、αa3は酸化反応(すなわち、析出反応)の移動係数であり、αc3は還元反応(すなわち、溶解反応)の移動係数である。移動係数αa3,αc3は、予め求めておくことができる。Fはファラデー定数、Rはガス定数、Tは温度(すなわち、電池温度Tb)、η’は反応過電圧である。
反応過電圧η’は、負極電位V’と、析出反応および溶解反応における平衡電位(常数)Uとの差になるため、下記式(11)によって表すことができる。下記式(11)では、負極板の表面に形成された被膜の抵抗値(被膜抵抗という)Rf3’に伴う電圧降下量も考慮している。この被膜は、二次電池10を初めて充電したときに負極板(負極活物質層)の表面に形成されるSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜である。
上記式(11)に示す反応過電圧η’を上記式(10)に代入することにより、反応電流密度i’を算出することができる。
上記式(10)に示す交換電流密度i03は、下記式(12)に基づいて算出される。交換電流密度i03は、負極板(負極活物質層)に含まれる電解液中の塩濃度ce2および温度T(すなわち、電池温度Tb)に依存するため、下記式(12)によって表すことができる。後述するように塩濃度ce2を算出し、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、下記式(12)に基づいて、交換電流密度i03を算出できる。
上記式(12)において、交換電流密度i03(Tref)は、参照温度(所定値)Trefにおいて、交流インピーダンス測定から同定される。塩濃度ce,iniは、電解液中の平均塩濃度の初期値である。Ei03は、温度依存性を表す活性化エネルギである。参照温度Trefにおける交換電流密度i03を予め求めておき、温度Tの依存性も考慮して、アレニウス式を適用すると、交換電流密度i03は、上記式(12)によって表すことができる。
下記式(13)に示す被膜抵抗Rf3’は、析出反応における被膜抵抗Rf3depoと、溶解反応における被膜抵抗Rf3dissとに分けられる。析出反応では、反応過電圧η’が0よりも小さくなるため、反応過電圧η’が0よりも小さいときには、被膜抵抗Rf3’として被膜抵抗Rf3depoが用いられる。溶解反応では、反応過電圧η’が0以上となるため、反応過電圧η’が0以上であるときには、被膜抵抗Rf3’として被膜抵抗Rf3dissが用いられる。このため、析出反応においては、下記式(13)に基づいて被膜抵抗Rf3’を算出できる。また、溶解反応においては、下記式(14)に基づいて被膜抵抗Rf3’を算出できる。
析出反応における被膜抵抗Rf3depoは、負極板の被膜におけるイオン伝導の抵抗値(被膜抵抗という)Rfi2に相当する。イオン伝導とは、被膜中におけるリチウムイオンの伝導である。被膜抵抗Rfi2は、負極活物質の単位表面積当たりの被膜抵抗(単位[Ωcm])である。ここで、参照温度Trefにおける被膜抵抗Rfi2を予め求めておき、温度Tの依存性も考慮して、アレニウス式を適用すると、析出反応における被膜抵抗Rf3depoは、上記式(13)によって表すことができる。上記式(13)に示すERfi2は、温度依存性を有する活性化エネルギである。温度T(電池温度Tb)を検出すれば、上記式(13)に基づいて、析出反応における被膜抵抗Rf3depoを算出できる。
一方、溶解反応における被膜抵抗Rf3dissは、単位反応表面積当たりの活性リチウムの量(Q/AS)に比例して増加し、活性リチウムの量Qがゼロであるときには、負極板の被膜における電子伝導の抵抗値(被膜抵抗という)Rfe2に相当する。電子伝導とは、被膜中における電子の伝導である。したがって、参照温度Trefにおける被膜抵抗Rfe2を予め求めておき、温度Tの依存性を考慮してアレニウス式を適用すると、溶解反応における被膜抵抗Rf3’は、上記式(14)によって表すことができる。上記式(14)に示すERfe2は、温度依存性を有する活性化エネルギである。上記式(14)に示すkrqは、被膜抵抗の増加係数(単位[cm/Ah])であり、この増加係数krqは、単位反応表面積当たりの活性リチウムの量に対する値である。増加係数krpは予め求めておくことができる。量Qおよび面積比Aを更新し、温度T(電池温度Tb)を検出すれば、上記式(14)に基づいて、溶解反応における被膜抵抗Rf3dissを算出できる。ここで、導電活性リチウムの量Q3_aが算出されたときには、上記式(14)に示す量Qとして、量Q3_aが用いられる。
面積比Aは、下記式(15)に基づいて算出することができる。
上記式(15)において、A30は面積比Aの初期値、kは活性リチウムによる反応表面積の増加係数、kは不活性リチウムによる反応表面積の増加係数である。初期値A30および増加係数k,kは、予め定めておくことができる。また、量Q,Qの初期値としては、例えば、0に設定することができる。量Q,Qを算出するたびに、面積比Aを更新することができる。ここで、導電活性リチウムの量Q3_aが算出されたときには、上記式(15)に示す量Qとして、量Q3_aが用いられる。
次に、不活性化反応における反応電流密度i’を算出する方法について説明する。
反応電流密度i’は、バトラー・ボルマー式に基づいて、下記式(16)によって表すことができる。図2に示すように、不活性化反応は不可逆的な還元反応であるため、下記式(16)では、還元反応の電流だけを考慮している。
上記式(16)において、i04は、単位反応表面積当たりの交換電流密度(単位[A/cm])である。αc4は還元反応(すなわち、不活性化反応)の移動係数であり、予め求めておくことができる。η’は反応過電圧である。反応過電圧η’は、負極電位V’と、不活性化反応における平衡電位(定数)Uとの差になるため、下記式(17)によって表すことができる。下記式(17)では、被膜抵抗Rf4’に伴う電圧降下量も考慮している。
上記式(17)に示す反応過電圧η’を上記式(16)に代入することにより、反応電流密度i’を算出することができる。
上記式(16)に示す交換電流密度i04は、下記式(18)に基づいて算出される。交換電流密度i04は、温度T(すなわち、電池温度Tb)に依存する。このため、参照温度Trefにおける交換電流密度i04を予め求めておき、温度Tの依存性も考慮して、アレニウス式を適用すると、交換電流密度i04は、下記式(18)によって表すことができる。ここで、交換電流密度i04は、電解液中の塩濃度ce2に依存しないものとしている。
上記式(18)において、交換電流密度i04(Tref)は、参照温度Trefにおいて、交流インピーダンス測定から同定される。Ei04は、温度依存性を表す活性化エネルギである。温度T(電池温度Tb)を検出すれば、上記式(18)に基づいて、交換電流密度i04を算出できる。
上記式(17)に示す被膜抵抗Rf4’は、析出反応時に発生する不活性化反応における被膜抵抗Rf4depoと、溶解反応時に発生する不活性化反応における被膜抵抗Rf4dissとに分けられる。被膜抵抗Rf4depoについては、下記式(19)に示すように、被膜抵抗Rf3depoとみなすことができる。被膜抵抗Rf4dissについては、下記式(20)に示すように、被膜抵抗Rf3dissとみなすことができる。
二次電池10の負極板では、下記式(21)に示す電荷保存則が成り立つ。
上記式(21)において、Iは電流センサ32によって検出される電流値(電流値Ib)であり、Lは正極活物質層の厚さであり、Lは負極活物質層の厚さである。iは、単位正極活物質表面積当たりの電流密度であり、iは、単位活物質表面積当たりの電流密度である。電流密度i,iについては後述する。as1は、単位正極体積当たりの正極活物質の表面積を示す比表面積(単位[cm/cm])である。すなわち、比表面積as1は、正極活物質の表面積を、正極活物質層の体積で除算した値である。as2は、単位負極体積当たりの負極活物質の表面積を示す比表面積(単位[cm/cm])である。すなわち、比表面積as2は、負極活物質の表面積を、負極活物質層の体積で除算した値である。厚さL,Lおよび比表面積as1,as2は、予め求めておくことができる。
上記式(11),(17),(21)を満足するように、上記式(11),(17),(21)を連立して解くことにより、反応過電圧η’,η’を算出できる。反応過電圧η’ ,η’を算出すれば、上記式(10),(16)に基づいて反応電流密度i’,i’を算出できる。上記式(8)に基づいて反応電流密度I’を算出すれば、上記式(6)に基づいて活性リチウムの量Qを算出できる。上記式(9)に基づいて反応電流密度I’を算出すれば、上記式(7)に基づいて不活性リチウムの量Qを算出できる。量Q,Qを算出すれば、上記式(1)に基づいて、リチウム析出量QLiを算出できる。なお、非導電活性リチウムの量Q3_bを算出したときには、上記式(5)に基づいて、リチウム析出量QLiが算出される。
ここで、反応過電圧η’,η’を算出するためには、上記式(11),(17)に示す負極電位V’を推定する必要がある。負極電位V’は、下記式(22)に基づいて算出(推定)できる。
上記式(22)において、Vは負極電位(平均値)である。κ effは負極板における実効イオン伝導率であり、塩濃度ce2および温度Tに依存する。このため、実効イオン伝導率κ eff、塩濃度ce2および温度Tの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけば、塩濃度ce2を算出し、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、実効イオン伝導率κ effを算出できる。σ effは負極活物質内の実効電子伝導率であり、予め決めておくことができる。
上記式(22)に示す負極電位(平均値)Vは、下記式(23)に示す関係を有する。
上記式(23)において、Vは電圧センサ31によって検出された電圧値(電圧値Vb)、Vは正極電位(平均値)である。Rは二次電池10の直流抵抗、Δφは、正極板および負極板の間における濃度過電圧である。
上記式(23)に示す直流抵抗Rは、下記式(24)に基づいて算出される。
上記式(24)において、Rd,mapは、塩濃度(初期値)ce,iniにおいて温度Tに依存する直流抵抗成分である。直流抵抗成分Rd,mapは、温度T毎に交流インピーダンス測定から同定される。このため、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、直流抵抗成分Rd,mapを算出できる。
上記式(24)の右辺第2項および第3項では、塩濃度の変化に伴う直流抵抗成分の変化を算出している。具体的には、塩濃度ce1,ce2,cesおよび温度Tに依存する直流抵抗成分Rd,esから、塩濃度(初期値)ce,iniおよび温度Tに依存する直流抵抗成分Rd,esを減算している。ここで、塩濃度ce1は、正極板(正極活物質層)に含まれる電解液中の塩濃度であり、塩濃度cesは、セパレータに含まれる電解液中の塩濃度である。
上記式(24)の右辺第2項に示す直流抵抗成分Rd,esは、上記式(25)に基づいて算出できる。正極板の実効イオン伝導率κ effは、塩濃度ce1および温度Tに依存するため、実効イオン伝導率κ eff、塩濃度ce1および温度Tの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけば、塩濃度ce1を算出し、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、実効イオン伝導率κ effを算出できる。
また、セパレータの実効イオン伝導率κ effは、塩濃度cおよび温度Tに依存するため、実効イオン伝導率κ eff、塩濃度cおよび温度Tの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけば、塩濃度cを算出し、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、実効イオン伝導率κ effを算出できる。正極の実効電子伝導率σ effおよびセパレータの厚さLは、予め求めておくことができる。
上記式(24)の右辺第3項に示す直流抵抗成分Rd,esおよび温度Tの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけば、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、上記式(24)の右辺第3項に示す直流抵抗成分Rd,esを算出できる。
上記式(23)に示す濃度過電圧Δφは、下記式(26)に基づいて算出できる。下記式(26)において、t はカチオンの輸率、「1+dlnf±/dlnc」は、塩濃度cの変化量に対する濃度過電圧の平均の活量係数に関する相関係数である。塩濃度ce1,ce2を算出し、温度T(電池温度Tb)を検出すれば、下記式(26)に基づいて、濃度過電圧Δφを算出できる。
塩濃度cesを塩濃度(初期値)ce,iniとすると、塩濃度ce1,ce2は、下記式(27)に基づいて算出できる。
上記式(27)において、tは時間、Δtは、塩濃度の変化量Δcを算出する周期(所定時間)である。Dは電解液中のリチウムの化学拡散係数である。化学拡散係数Dは、温度Tに依存する。このため、化学拡散係数Dおよび温度Tの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけば、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、化学拡散係数Dを算出できる。係数α,βは、予め定めておくことができる。塩濃度の変化量(初期値)Δc(0)としては、0が設定される。そして、所定時間Δtが経過するたびに、今回の電流値I(電流値Ib)と、前回の塩濃度の変化量Δc(t)に基づいて、今回の塩濃度の変化量Δc(t+Δt)を算出できる。また、塩濃度の変化量Δcに基づいて、塩濃度ce1,ce2を算出できる。
一方、電極電位Vは、下記式(28),(29)に基づいて算出される。下記式(28),(29)において、添字jが1であるときには正極に関する値を示し、添字jが2であるときには負極に関する値を示す。例えば、Vは正極電位を示し、Vは負極電位を示す。なお、下記式(30),(31),(33)〜(35)に付された添字jについても同様である。
上記式(28)において、Uは電極(正極又は負極)の開放電位であり、後述する局所的SOCθに依存する。開放電位Uおよび局所的SOCθの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけば、局所的SOCθを算出することにより、開放電位Uを算出できる。ηは電極の反応過電圧である。ictjは、活物質に対してリチウムイオンが挿入・脱離する反応における反応電流密度であり、上記式(29)に基づいて算出される。Rfijは、電極板の被膜におけるイオン伝導の抵抗値(被膜抵抗という)である。
上記式(29)において、αajは、電極板(正極板又は負極板)の酸化反応における移動係数であり、αcjは、電極の還元反応における移動係数である。ここで、負極の酸化反応は、二次電池10の放電時の反応に相当し、負極の還元反応は、二次電池10の充電時の反応に相当する。正極の酸化反応は、二次電池10の充電時の反応に相当し、正極の還元反応は、二次電池10の放電時の反応に相当する。i0jは、電極の交換電流密度であり、下記式(30)に基づいて算出できる。
交換電流密度i0jは、後述する局所的SOCθ、塩濃度cejおよび温度Tに依存する。したがって、上記式(30)に基づいて、交換電流密度i0jを算出できる。Ei0jは温度依存性を有する活性化エネルギである。局所的SOCθおよび塩濃度cejを算出し、温度T(電池温度Tb)を検出すれば、上記式(30)に基づいて、交換電流密度i0jを算出できる。
上記式(28)に示す被膜抵抗Rfijは、上記式(13)と同様に、下記式(31)に基づいて算出できる。下記式(31)に示すERfijは、温度依存性を有する活性化エネルギである。
二次電池10を充放電するときには、下記式(32)に示す電荷保存則が成り立つ。なお、下記式(32)では、反応電流密度ictjだけを考慮しているが、これに限るものではない。二次電池10の内部では、電気二重層キャパシタンス成分が存在するため、電気二重層キャパシタンス成分に関して、単位活物質表面積当たりの電流密度idljを考慮することもできる。ここで、電荷保存則に関して、電流密度idljは支配的ではないため、下記式(32)では、電流密度idljを省略している。
ここで、上記式(21)に示す電流密度iとしては、反応電流密度ict1とすることもできるし、電流密度ict1,idl1の合計値とすることもできる。また、上記式(21)に示す電流密度iとしては、反応電流密度ict2とすることもできるし、電流密度ict2,idl2の合計値とすることもできる。
電圧値V(電圧値Vb)および電流値I(電流値Ib)を検出すれば、上記式(32)を満足する条件の下で、上記式(23),(28)に基づいて、反応過電圧η,ηを算出できる。これにより、負極電位V,V’を算出できる。
ここで、電極の局所的SOCθ(θ又はθ)は、下記式(33)に基づいて算出できる。局所的SOCθとは、活物質の界面における塩濃度によって特定されるSOCである。
上記式(33)に示すrは、活物質を球体と見なしたときの半径を示し、rsjは、球体の活物質の表面(界面)を示す。局所的SOCθを算出するときには、球体の活物質の表面における塩濃度csjが用いられる。csj,maxは、活物質の内部における限界塩濃度であり、予め求めておくことができる。活物質内の塩濃度分布は、下記式(34)に示す拡散方程式に基づいて算出できる。活物質内の塩濃度分布とは、球体の活物質の半径方向における塩濃度csjの分布である。
上記式(34)に示すDsjは、活物質内におけるリチウムの拡散係数であり、温度Tに依存する。拡散係数Dsjおよび温度Tの対応関係(マップ又は演算式)を予め求めておけば、温度T(電池温度Tb)を検出することにより、拡散係数Dsjを算出できる。上記式(34)を適用するとき、下記式(35)に示す境界条件が設定される。
上記式(34),(35)に基づいて、活物質の界面における塩濃度csjを算出すれば、上記式(33)に基づいて、局所的SOCθを算出できる。
ここで、リチウム析出量QLiを算出する処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。図5に示す処理は、コントローラ40によって実行される。図5に示す処理は、所定時間Δtを周期として繰り返し行われる。なお、上述したように、所定時間Δtを周期として、塩濃度csj、局所的SOCθや塩濃度の変化量Δcが更新されるとともに、これに依存するパラメータも更新される。
ステップS101において、コントローラ40は、電圧センサ31、電流センサ32および温度センサ33を用いて、電圧値Vb、電流値Ibおよび電池温度Tbを検出する。ここで、二次電池10を充電しているとき、コントローラ40は、タイマ42を用いて、充電継続時間t_chを計測する。
ステップS102において、コントローラ40は、上記式(12),(18)に基づいて、交換電流密度i03,i04を算出する。ステップS103において、コントローラ40は、上記式(13)又は(14)と、上記式(19)又は(20)とに基づいて、被膜抵抗Rf3’,Rf4’を算出する。ステップS104において、コントローラ40は、上記式(15)に基づいて、面積比Aを算出する。ここで、面積比Aは、面積比Aと同じである。
ステップS105において、コントローラ40は、反応過電圧η’,η’を更新する。ステップS106において、コントローラ40は、ステップS105の処理で更新された反応過電圧η’,η’に基づいて、反応電流密度I’,I’を算出する。具体的には、上記式(8),(10)に基づいて、反応電流密度I’が算出されるとともに、上記式(9),(16)に基づいて、反応電流密度I’が算出される。
ステップS107において、コントローラ40は、ステップS106の処理で算出された反応電流密度I’,I’に基づいて、上記式(21)に示す電荷保存則が成立するか否かを判別する。電荷保存則が成立しないとき、コントローラ40は、ステップS105の処理に戻り、反応過電圧η’,η’を更新する。このように、電荷保存則が成立するまで、反応過電圧η’,η’が更新される。
電荷保存則が成立するとき、コントローラ40は、ステップS108において、上記式(6),(7)に基づいて、活性リチウムの量Qおよび不活性リチウムの量Qを算出する。また、ステップS108において、コントローラ40は、上記式(3),(4)に基づいて、導電活性リチウムの量Q3_aおよび非導電活性リチウムの量Q3_bを算出するとともに、上記式(1)又は(5)に基づいて、リチウム析出量QLiを算出する。
10:二次電池(リチウムイオン二次電池)、20:負荷、31:電圧センサ、
32:電流センサ、33:温度センサ、40:コントローラ、41:メモリ

Claims (1)

  1. 充放電を行うリチウムイオン二次電池と、
    活性リチウムを析出させる析出反応と、前記活性リチウムを溶解させる溶解反応とが行われたときの反応電流に基づいて、前記析出反応および前記溶解反応が行われたときの前記活性リチウムの総量を算出するコントローラと、を有し、
    前記コントローラは、
    前記リチウムイオン二次電池の充電時の電流値および、前記充電時の継続時間のうちの少なくとも一方に基づいて、前記活性リチウムの総量と、前記活性リチウムの切断によって生成され、前記溶解反応が行われない前記活性リチウムの量との比率を算出し、
    前記活性リチウムの総量および前記比率に基づいて、前記溶解反応が行われない前記活性リチウムの量を算出し、
    前記比率を算出するとき、前記電流値が大きいほど前記比率が高く、前記継続時間が長いほど前記比率が高くなる関係を用いる、
    ことを特徴とする電池システム。
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