JP2016007878A - タイヤ用耐空気透過性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた耐空気透過性を維持しつつ、低温度領域での耐久性を向上する。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムを溶融混練し動的架橋させることにより得られた、前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーを連続相とし、前記ゴムを分散相とする、動的架橋体からなるタイヤ用耐空気透過性フィルムである。該耐空気透過性フィルムは、JIS K7210に準拠した測定温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが5g/10分以下である重合体であって、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系重合体を、前記動的架橋体中に1〜10質量%含有する。
【選択図】図1
【解決手段】熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムを溶融混練し動的架橋させることにより得られた、前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーを連続相とし、前記ゴムを分散相とする、動的架橋体からなるタイヤ用耐空気透過性フィルムである。該耐空気透過性フィルムは、JIS K7210に準拠した測定温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが5g/10分以下である重合体であって、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系重合体を、前記動的架橋体中に1〜10質量%含有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、空気入りタイヤに用いられる耐空気透過性フィルム、及びその製造方法、並びに該耐空気透過性フィルムをインナーライナー又はその他の空気透過抑制層として用いた空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤの内側面には、タイヤの空気圧を一定に保持するために空気透過抑制層としてインナーライナーが設けられている。インナーライナーは、一般に、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴムなどの気体が透過しにくいゴム層で構成されているが、タイヤの軽量化のため、薄肉化が可能な樹脂フィルムの使用が検討されている。
特許文献1には、ポリアミド樹脂連続相中にハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体ゴムを分散させた耐空気透過性フィルムにおいて、ポリアミド樹脂に変性基を導入することにより、低温耐久性を向上することが開示されている。特許文献2には、酸無水物変性ゴムをエチレンビニルアルコール共重合体樹脂中に分散させた樹脂組成物と、架橋可能なエラストマーをポリアミド樹脂中で動的架橋させた樹脂組成物と、を溶融混練することにより、低温耐久性を向上することが開示されている。これらの文献には低温耐久性について開示されているが、特定のメルトフローレートを有するエチレン系重合体を添加することにより、耐空気透過性フィルムの低温耐久性が向上することは開示されていない。
一方、特許文献3には、連続相である熱可塑性樹脂と分散相であるエラストマー成分との動的架橋体からなる耐空気透過性フィルムが開示され、また第三成分としてポリエチレンなどの相溶化剤を添加することが開示されている。また、特許文献4には、連続相である熱可塑性ポリエステル系エラストマーと分散相であるゴムとの動的架橋体からなる耐空気透過性フィルムが開示され、また相溶化剤としてエチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体を配合することが開示されている。しかしながら、これらの文献にも、特定のメルトフローレートを有するエチレン系重合体が、耐空気透過性フィルムの低温耐久性を向上させることは開示されていない。
空気入りタイヤに用いられる耐空気透過性フィルムにおいては、その優れた耐空気透過性を維持しつつ、低温度領域での耐久性を向上することが求められる。本発明は、熱可塑性エラストマーとゴムとの動的架橋体である耐空気透過性フィルムにおいて、耐空気透過性の低下を抑制しつつ、低温耐久性を向上することを目的とする。
本発明に係るタイヤ用耐空気透過性フィルムは、熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムを溶融混練し動的架橋させることにより得られた、前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーを連続相とし、前記ゴムを分散相とする、動的架橋体からなる耐空気透過性フィルムにおいて、JIS K7210に準拠した測定温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが5g/10分以下である重合体であって、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系重合体を、前記動的架橋体中に1〜10質量%含有するものである。
本発明に係るタイヤ用耐空気透過性フィルムの製造方法は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムを溶融混練し動的架橋させることにより、前記熱可塑性エラストマーを連続相とし、前記ゴムを分散相とした動的架橋体を得る工程を含むものにおいて、溶融混練時に、JIS K7210に準拠した測定温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが5g/10分以下である重合体であって、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系重合体を、前記動的架橋体中の含有量が1〜10質量%となるように添加するものである。
本発明によれば、熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムとの動的架橋体に、上記メルトフローレートを有するポリエチレン系重合体を添加することにより、耐空気透過性の低下を抑えながら、低温耐久性を向上することができる。
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムは、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)とゴム(B)を溶融混練し動的架橋させることにより得られたものであり、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)を連続相(マトリックス相)とし、ゴム(B)を分散相(ドメイン相)とした海島構造を持つ動的架橋体からなる。このように連続相が熱可塑性エラストマーからなるため、熱可塑性樹脂からなる場合に比べてフィルムの柔軟性を向上することができる。連続相にゴムよりも耐空気透過性の良い熱可塑性エラストマーを使用することにより、ゴム単体のインナーライナーに比べて薄肉化を図ることができる。
連続相を構成する熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)としては、ポリエステルからなるハードセグメントと、ゴム弾性を示すソフトセグメントとからなるブロック共重合体を用いることができる。ハードセグメントのポリエステルは、ジカルボン酸とジオールを反応させてなるものである。
上記ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸を用いることができ、主たる芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸とイソフタル酸を併用してもよい。ジカルボン酸に占めるテレフタル酸の含有量としては、90〜70モル%が好ましい。イソフタル酸は10〜30モル%であることが好ましい。その他の酸成分としては、特に限定されず、例えば、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
上記ジオールとしては、脂肪族又は脂環族ジオールを用いることができ、例えば、炭素数2〜8のアルキレングリコール類が挙げられる。一実施形態において、ジオールは、主たる構成成分が1,4−ブタンジオールであり、ジオールに占める1,4−ブタンジオールの含有量は80モル%以上が好ましい。その他のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。
上記ハードセグメントを構成する芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。その数平均分子量は特に限定されず、例えば10000〜40000でもよい。
上記ソフトセグメントの構成成分としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中でもポリカーボネートが好ましい。ポリカーボネートとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどの炭酸エステルと炭素数2〜12の脂肪族グリコールなどから製造される脂肪族ポリカーボネートジオールが挙げられる。
熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)としては、ハードセグメントがブチレンテレフタレート単位とブチレンイソフタレート単位を含み、ソフトセグメントが脂肪族ポリカーボネートからなるものが好ましく用いられる。熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)において、ハードセグメントとソフトセグメントの比率は特に限定されないが、質量比が、ハードセグメント:ソフトセグメント=30:70〜95:5であることが好ましく、より好ましくは40:60〜90:10の範囲である。
上記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の融点は特に限定しないが、180〜220℃であることが好ましく、より好ましく185〜215℃である。
分散相を構成するゴム(B)としては、一般に架橋(加硫)して使用される各種ゴムが用いられ、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、水素化スチレンブタジエンゴムなどのジエン系ゴム及びその水素添加ゴム; エチレンプロピレンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性エチレンブチレンゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)などのオレフィン系ゴム; ハロゲン化ブチルゴム(例えば、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR))、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンなどの含ハロゲンゴム; その他、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリスルフィドゴムなどが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐空気透過性の点から、ブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム、ニトリルゴム(NBR)及び水素化ニトリルゴム(H−NBR)から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
分散相を構成するゴム(B)としては、上述したゴムポリマーのいずれか1種又は2種以上のブレンドでもよいが、これらに充填剤や軟化剤、老化防止剤、加工助剤、架橋剤などの一般にゴム組成物に配合される各種配合剤を添加してもよい。すなわち、ゴム(B)は、ゴムポリマーに各種配合剤を添加したゴム組成物からなるものであってもよい。
上記熱可塑性エラストマー(A)とゴム(B)との配合比(充填剤などの配合剤を除いたポリマー成分としての比率)は、特に限定されず、例えば、質量比(A)/(B)で、90/10〜30/70であり、より好ましくは70/30〜40/60である。
実施形態に係る耐空気透過性フィルムは、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)とゴム(B)を架橋剤とともに溶融混練し、該架橋剤でゴムを動的架橋させることで得ることができる。このようにゴム(B)を動的架橋(TPV)させることにより、分散相の粒子サイズを小さくして柔軟性を向上することができる。
ゴム(B)を動的架橋するための架橋剤としては、硫黄や硫黄含有化合物等などの加硫剤、加硫促進剤の他、フェノール系樹脂などが挙げられる。好ましくは、耐熱性の点から、フェノール系樹脂を用いることである。フェノール系樹脂としては、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる樹脂が挙げられ、より好ましくは、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合体を用いることである。架橋剤の配合量は、ゴム(B)を適切に架橋できるものであれば、特に限定されないが、ゴム(B)(充填剤などの配合剤を除いたポリマーとしての量)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムは、上記動的架橋体中にエチレン系重合体を含有するものである。該エチレン系重合体は、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である。また、エチレン系重合体は、メルトフローレート(MFR)が5g/10分以下のものである。ここで、メルトフローレートは、JIS K7210(A法)に準拠して測定温度190℃、荷重2.16kgで測定される値である。
このようなエチレン系重合体を添加することにより、次の作用効果が奏される。エチレン系重合体自体の優れた耐寒性により、耐空気透過性フィルムの低温耐久性を向上することができる。また、エチレン系重合体は、混練時にその極性からゴム(B)ないしその界面に分布しやすい。通常、熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムとの混合時には両者の溶融粘度が離れているため、なかなか混ざらず、動的架橋において大きな海島構造となりやすい。これに対し、上記エチレン系重合体を添加すると、なじみのいいゴム(B)の粘度を下げることができ、熱可塑性ポリエステル系エラストマーと溶融粘度が近くなり、小さな海島構造となる。この小さな海島構造の影響で耐空気透過性フィルムの低温耐久性が良くなる。しかも、上記エチレン系重合体であると、耐空気透過性の低下を抑制しつつ、低温耐久性を向上することができる。
上記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体であるポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、及び、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体のいずれか1種又は2種以上が用いられる。エチレン−酢酸ビニル共重合体について、構成成分中の酢酸ビニル含有量は、特に限定されず、例えば10〜40質量%でもよく、10〜30質量%でもよい。エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体について、構成成分中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有量は、特に限定されず、例えば10〜40質量%でもよく、10〜30質量%でもよい。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルのいずれか一方又は双方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどの、炭素数1〜20のアルキル基を持つものが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基を持つものが好ましく用いられる。なお、これらの共重合体としては、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。
これらのエチレン系重合体としては、メルトフローレート(MFR)が5g/10分以下のものが用いられる。このようなメルトフローレートの小さいものを用いることにより、低温耐久性を向上することができる。メルトフローレートが大きすぎると、エチレン系重合体の分子量が低下することで、エチレン系重合体自体の耐寒性が低下することにより、耐空気透過性フィルムの低温耐久性が低下すると考えられる。エチレン系重合体のメルトフローレートは、4g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは2g/10分以下である。メルトフローレートの下限は特に限定しないが、0.1g/10分以上であることが好ましく、より好ましくは0.4g/10分以上である。
上記動的架橋体中に占めるエチレン系重合体の含有量は1〜10質量%であることが好ましい。このような含有量に設定することにより、耐空気透過性の低下を抑制しつつ、低温耐久性を向上することができる。また、エチレン系重合体の含有量を10質量%以下とすることで、タイヤ作製時に隣接するゴム部材と貼り合わせる際のエチレン系重合体の溶け出しを抑制することができ、タイヤの加硫成形性を向上することができる。エチレン系重合体の含有量は、1.0〜7.0質量%であることが好ましく、より好ましくは2.0〜5.5質量%であり、2.5〜5.0質量%でもよい。
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムを構成する動的架橋体は、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)とゴム(B)とともに、相溶化剤を混合してなるものであってもよい。相溶化剤は、熱可塑性エラストマー(A)とゴム(B)との界面張力を低下させて、両者を相溶化させるものである。相溶化剤としては、一実施形態として、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体(即ち、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、及び/又は、エチレン−グリシジルアクリレート共重合体)を用いてもよい。該相溶化剤の配合量は特に限定されないが、熱可塑性エラストマー(A)とゴム(B)(充填剤などの配合剤を除いたポリマーとしての量)の合計量100質量部に対して0.5〜10質量部とすることができる。
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムを構成する動的架橋体には、接着剤としてレゾルシン系ホルムアルデヒド縮合体を含有させてもよい。該接着剤は、タイヤにおいて耐空気透過性フィルムと隣接するゴム部材との接着性を向上するために配合されるものである。レゾルシン系ホルムアルデヒド縮合体としては、レゾルシンを少なくとも一部に含むフェノール類化合物と、ホルムアルデヒドとが縮合して得られた化合物が用いられる。好ましくは、レゾルシン−アルキルフェノール−ホルムアルデヒド共縮合体または改質レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を用いることである。改質レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂としては、骨格をなすフェノール化合物の少なくとも一部に不飽和基含有モノマーが結合して、アリールアルキル基(アラルキル基)の側鎖またはグラフト状のポリマー鎖などを形成したもの、または、不飽和基含有モノマーの重合物もしくはこれとレゾルシンとの共重合物などが混在するものなどが挙げられる。また、部分的にホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物を含むものであってもよい。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、インデン、及びビニルトルエンから選ばれた少なくとも1つ(特に好ましくはスチレン)を、レゾルシン及びホルムアルデヒドと共存させて得られた反応生成物であってもよく、また、ブチルアルデヒドまたはその他のアルデヒドを、少量混合して得られた反応生成物であってもよい。レゾルシン系ホルムアルデヒド縮合体の配合量は特に限定されないが、熱可塑性エラストマー(A)とゴム(B)(充填剤などの配合剤を除いたポリマーとしての量)の合計量100質量部に対して1〜10質量部とすることができる。
実施形態に係る耐空気透過性フィルムを製造するに際しては、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)とゴム(B)を溶融混練し、動的架橋させる。かかる溶融混練時に上記エチレン系重合体を添加する。架橋剤などの添加剤は、上記混練中に添加してもよく、混練前に予め混合しておいてもよい。混練に使用する混練機としては、特に限定されず、例えば、二軸押出機、スクリュー押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。
一実施形態として、ゴム(B)に架橋剤を添加してゴムマスターバッチのペレットを作製し、該ペレットを、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)、相溶化剤及びエチレン系重合体とともに混練機に投入し、溶融混練して動的架橋することにより動的架橋体のペレットを得てもよい。また、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(A)、ゴム(B)、架橋剤、相溶化剤及びエチレン系重合体を事前混合せずに混練機に投入し、溶融混練して動的架橋することにより動的架橋体のペレットを得てもよい。上記接着剤は、ゴム(B)と同時に添加してもよく、動的架橋前でも後でもよいが、架橋剤としてのフェノール系樹脂を添加する場合、接着剤は動的架橋後に添加することが好ましい。このようにして得られた動的架橋体のペレットをフィルム化する方法は特に限定されず、例えば押し出し成形やカレンダー成形など、通常の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーをフィルム化する方法を用いることができ、耐空気透過性フィルムが得られる。
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムは、80℃での空気透過係数が5×1013fm2/Pa・s以下であることが好ましく、インナーライナーの薄肉化によるタイヤの軽量化を図ることができる。該空気透過係数の下限は特に限定されないが、事実上は0.5×1013fm2/Pa・s以上である。
耐空気透過性フィルムの厚みは、特に限定されず、例えば、0.02〜1.0mmとすることができ、より好ましくは0.05〜0.5mmであり、更に好ましくは0.3mm以下である。
本実施形態に係る耐空気透過性フィルムは、例えば、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどの重荷重用タイヤを含む各種の自動車用タイヤ、また自転車を含む二輪車用タイヤなど、各種の空気入りタイヤに適用することができる。
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤ1の断面図である。図示するように、空気入りタイヤ1は、リム組みされる一対のビード部2,2と、該ビード部2からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部3,3と、該一対のサイドウォール部3,3間に設けられた路面に接地するトレッド部4とから構成される。一対のビード部2,2には、それぞれリング状のビードコア5が埋設されている。有機繊維コードを用いたカーカスプライ6が、ビードコア5,5の周りを折り返して係止されるとともに、左右のビード部2,2間に架け渡して設けられている。また、カーカスプライ6のトレッド部4における外周側には、スチールコードやアラミド繊維などの剛直なタイヤコードを用いた2枚のベルトプライからなるベルト7が設けられている。
カーカスプライ6の内側にはタイヤ内面の全体にわたってインナーライナー8が設けられている。本実施形態では、このインナーライナー8として上記耐空気透過性フィルムが用いられている。インナーライナー8は、図1中の拡大図に示すように、タイヤ内面側のゴム層であるカーカスプライ6の内面に貼り合わされており、より詳細には、カーカスプライ6のコードを被覆するトッピングゴム層の内面に貼り合わされている。
かかる空気入りタイヤの製造方法としては、例えば、耐空気透過性フィルムをインナーライナーとして用いて、成形ドラムの外周にインナーライナーを筒状に装着し、その上にカーカスプライを貼り付け、更にベルト、トレッドゴム及びサイドウォールゴムなどの各タイヤ部材を貼り重ね、インフレートすることによりグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)が作製され、該グリーンタイヤをモールド内で加硫成形することにより、空気入りタイヤが得られる。なお、図1に示す例では、耐空気透過性フィルムをカーカスプライの内面側に設けたが、タイヤ内部からの空気の透過を防止して、タイヤの空気圧を保持することができる態様、即ち内圧保持のための空気透過抑制層として設けられるものであれば、例えば、カーカスプライの外面側などの種々の位置に設けることができ、特に限定されない。
以下に、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
[使用原材料]
以下の実施例で使用した原材料の詳細は以下の通りである。
以下の実施例で使用した原材料の詳細は以下の通りである。
・ブチルゴム:エクソンモービルケミカル製「IIR268」
・相溶化剤:住友化学(株)製「ボンドファーストE」、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(グリシジルメタクリレート含有率=12質量%)
・架橋剤:田岡化学工業(株)製「タッキロール201」、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合体
・接着剤:田岡化学工業(株)製「スミカノール620」、レゾルシン−アルキルフェノール−ホルムアルデヒド共縮合体
・PE−1:ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット0520F」、MFR=2g/10分
・PE−2:ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット0540F」、MFR=4g/10分
・PE−3:ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット613A」、MFR=30g/10分
・EVA−1:エチレン−酢酸ビニル共重合体、宇部丸善ポリエチレン(株)製「V115」、酢酸ビニル含有量=15質量%、MFR=0.8g/10分
・EVA−2:エチレン−酢酸ビニル共重合体、宇部丸善ポリエチレン(株)製「V120T」、酢酸ビニル含有量=20質量%、MFR=1g/10分
・E/EA−1:エチレン−アクリル酸エチル共重合体、日本ポリエチレン(株)製「レクスパールEEA A1150」アクリル酸エチル含有量=15質量%、MFR=0.8g/10分
・E/EA−2:エチレン−アクリル酸エチル共重合体、日本ポリエチレン(株)製「レクスパールEEA A4200」、アクリル酸エチル含有量=20質量%、MFR=5g/10分。
・相溶化剤:住友化学(株)製「ボンドファーストE」、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(グリシジルメタクリレート含有率=12質量%)
・架橋剤:田岡化学工業(株)製「タッキロール201」、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合体
・接着剤:田岡化学工業(株)製「スミカノール620」、レゾルシン−アルキルフェノール−ホルムアルデヒド共縮合体
・PE−1:ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット0520F」、MFR=2g/10分
・PE−2:ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット0540F」、MFR=4g/10分
・PE−3:ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット613A」、MFR=30g/10分
・EVA−1:エチレン−酢酸ビニル共重合体、宇部丸善ポリエチレン(株)製「V115」、酢酸ビニル含有量=15質量%、MFR=0.8g/10分
・EVA−2:エチレン−酢酸ビニル共重合体、宇部丸善ポリエチレン(株)製「V120T」、酢酸ビニル含有量=20質量%、MFR=1g/10分
・E/EA−1:エチレン−アクリル酸エチル共重合体、日本ポリエチレン(株)製「レクスパールEEA A1150」アクリル酸エチル含有量=15質量%、MFR=0.8g/10分
・E/EA−2:エチレン−アクリル酸エチル共重合体、日本ポリエチレン(株)製「レクスパールEEA A4200」、アクリル酸エチル含有量=20質量%、MFR=5g/10分。
・TPEE−A:熱可塑性ポリエステル系エラストマー。合成方法は以下の通り。
(1)ポリブチレンテレフタレート共重合体の調製
テレフタル酸100質量部、イソフタル酸18.5質量部、1,4−ブタンジオール110質量部を攪拌機付きのステンレス製オートクレーブに入れ、チタン酸テトラ−n−ブチルモノマーのn−ブタノール溶液(68g/L)を56.5mL加えて、常圧で180〜220℃、2.5時間攪拌してエステル交換を行った。その後、220℃で常圧から20分かけて130Paまで減圧し、過剰なジオール成分を留去して重合した。1.5時間後、内容物を冷却して取出し、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(ポリマーa)を得た。得られたポリマーaの数平均分子量は38000であった。
(2)脂肪族ポリカーボネートジオールの調製
脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製カーボネートジオールT6002、分子量2150、1,6−ヘキサンジオールタイプ)100質量部とジフェニルカーボネート7.0質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却して取出し、脂肪族ポリカーボネートジオール(ポリマーb)を得た。得られたポリマーbの数平均分子量は7500であった。
(3)熱可塑性ポリエステルエラストマーの調製
上記方法で調製した100質量部のポリマーaと33質量部のポリマーbを220〜245℃、130Pa下で1.5時間攪拌し、エステル交換反応させ、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を冷却して取り出した。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーに含有されるハードセグメント量は75質量%、ハードセグメントを構成するイソフタル酸量は15モル%であり、融点は187℃、ヤング率は180MPaであった。
(1)ポリブチレンテレフタレート共重合体の調製
テレフタル酸100質量部、イソフタル酸18.5質量部、1,4−ブタンジオール110質量部を攪拌機付きのステンレス製オートクレーブに入れ、チタン酸テトラ−n−ブチルモノマーのn−ブタノール溶液(68g/L)を56.5mL加えて、常圧で180〜220℃、2.5時間攪拌してエステル交換を行った。その後、220℃で常圧から20分かけて130Paまで減圧し、過剰なジオール成分を留去して重合した。1.5時間後、内容物を冷却して取出し、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(ポリマーa)を得た。得られたポリマーaの数平均分子量は38000であった。
(2)脂肪族ポリカーボネートジオールの調製
脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製カーボネートジオールT6002、分子量2150、1,6−ヘキサンジオールタイプ)100質量部とジフェニルカーボネート7.0質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却して取出し、脂肪族ポリカーボネートジオール(ポリマーb)を得た。得られたポリマーbの数平均分子量は7500であった。
(3)熱可塑性ポリエステルエラストマーの調製
上記方法で調製した100質量部のポリマーaと33質量部のポリマーbを220〜245℃、130Pa下で1.5時間攪拌し、エステル交換反応させ、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を冷却して取り出した。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーに含有されるハードセグメント量は75質量%、ハードセグメントを構成するイソフタル酸量は15モル%であり、融点は187℃、ヤング率は180MPaであった。
・TPEE−B:熱可塑性ポリエステル系エラストマー。合成方法は以下の通り。
特許4244067号公報の実施例1に記載の方法に準じて、ハードセグメントがブチレンテレフタレート単位からなり、ソフトセグメントが脂肪族ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールタイプ)からなる熱可塑性ポリエステルエラストマーB’を得た。別途、常法によりテレフタル酸/イソフタル酸//1,4−ブタンジオール(モル比35/65//100)からなるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(ポリマーc:数平均分子量は22000)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーB’100質量部に対して、ポリマーcを25質量部添加し、ドライブレンドを行った後、この混合物を温度180〜230℃、スクリュー回転数100rpmの条件でTEM−26SS二軸押出機(東芝機械(株)製)で溶融混練し、エステル交換反応を進行させた。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーBに含有されるハードセグメント量は75質量%、ハードセグメントを構成するイソフタル酸量は15モル%であり、融点は203℃、ヤング率は235MPaであった。
特許4244067号公報の実施例1に記載の方法に準じて、ハードセグメントがブチレンテレフタレート単位からなり、ソフトセグメントが脂肪族ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールタイプ)からなる熱可塑性ポリエステルエラストマーB’を得た。別途、常法によりテレフタル酸/イソフタル酸//1,4−ブタンジオール(モル比35/65//100)からなるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(ポリマーc:数平均分子量は22000)を得た。熱可塑性ポリエステルエラストマーB’100質量部に対して、ポリマーcを25質量部添加し、ドライブレンドを行った後、この混合物を温度180〜230℃、スクリュー回転数100rpmの条件でTEM−26SS二軸押出機(東芝機械(株)製)で溶融混練し、エステル交換反応を進行させた。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーBに含有されるハードセグメント量は75質量%、ハードセグメントを構成するイソフタル酸量は15モル%であり、融点は203℃、ヤング率は235MPaであった。
ここで、ポリマーa、c(ポリエステル)及びポリマーb(脂肪族ポリカーボネートジオール)の数平均分子量、並びに熱可塑性ポリエステルエラストマーA、Bの融点の測定方法は以下の通りに行った。
・ポリエステルの数平均分子量(Mn):ポリエステル0.05gを25mLの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比))に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃での還元粘度ηsp/cを測定した。求めた還元粘度ηsp/cの値を用いて、下記式に従って算出した。
ηsp/c=1.019×10-4 × Mn0.8929−0.0167
・脂肪族ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn):重水素化クロロホルム(CDCl3)に脂肪族ポリカーボネートジオールサンプルを溶解させ、1H−NMRを測定することにより末端基を算出し、下記式にて求めた。
Mn=1000000/((末端基量(当量/トン))/2)
・熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点(Tm):50℃で15時間減圧乾燥した熱可塑性ポリエステルエラストマーを示差走査熱量計DSC220C(TAインスツルメンツ社製2920)を用いて、一旦250℃まで昇温、溶融し、50℃まで冷却させ、再度、20℃/分で昇温し測定し、融解による吸熱のピーク温度を融点とした。なお、測定試料は、アルミニウム製パン(TAインスツルメンツ社製2920)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TAインスツルメンツ社製2920)で密封状態にして、窒素雰囲気で測定した。
[評価測定方法]
以下の実施例での評価測定方法は以下の通りである。
以下の実施例での評価測定方法は以下の通りである。
・加硫成形性:耐空気透過性フィルムとそれに接着可能な未加硫ゴムを貼り合わせ、それを(60mm×40mmの試験片に切り出し)、160℃×30分で加硫接着した後、目視によるフィルムの外観をチェックした。フィルムの破れや溶融による流れがないものを「OK」とし、フィルムの破れや溶融による流れがあるものを「NG」とした。
・空気透過係数:JIS K7126−1「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第1部:差圧法」に準じて、試験気体:空気、試験温度:80℃にて測定される値である。
・空気透過(指数):表1では比較例1、表2では比較例4、表3では比較例6の空気透過係数を、それぞれ100とした指数で表示した。数値が大きいほど、空気が透過しやすく、耐空気透過性に劣る。
・低温耐久性:耐空気透過性フィルムとそれに接着可能な未加硫ゴムを貼り合わせ、160℃×30分で加硫を行った。加硫した複合体の厚みは2mm(但し、フィルムの厚みは0.2mm)として、JIS K6270のダンベル3号形の試験片を作製し、−20℃の雰囲気下で、該ダンベル状の試験片をチャック間3cmにて挟み込み、5Hzの振動数で50%の繰り返し伸張をかけた。試験片の数は10個で300万回伸張後、フィルムの破断が起こったものの数を調べた。破断数が少ないほど、低温耐久性に優れる。
上記の加硫成形性及び低温耐久性の評価方法において使用した未加硫ゴムの配合は、天然ゴム(RSS#3)100質量部、カーボンブラック(東海カーボン(株)製「シースト3」)50質量部、亜鉛華(三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」)2質量部、ステアリン酸(花王(株)製「ルナックS−20」)2質量部、硫黄(鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄)2質量部、加硫促進剤(住友化学(株)製「ソクシノールCZ」)1.5質量部とした。
[第1実施例]
54質量部のTPEE−Aと、40質量部のブチルゴムと、6質量部のPE−1(ポリエチレン)と、6質量部の相溶化剤と、2質量部の架橋剤とを仕込み、二軸混練機(プラスチック工学研究所製)にて溶融混練することにより動的架橋してペレット化した。得られた動的架橋体108質量部に、二軸混練機を用いて、接着剤2.5質量部を添加し、溶融混練することによりペレットを得た。得られたペレットを、単軸押出機を用いて溶融させて、Tダイにて実施例1に係るフィルム(厚み:0.2mm)を作製した。表1に示す配合(質量部)に従い、実施例1と同様にして実施例2〜7及び比較例1〜3のフィルムを作製した。比較例1では、溶融混練時にポリエチレン系重合体を添加しなかった。
54質量部のTPEE−Aと、40質量部のブチルゴムと、6質量部のPE−1(ポリエチレン)と、6質量部の相溶化剤と、2質量部の架橋剤とを仕込み、二軸混練機(プラスチック工学研究所製)にて溶融混練することにより動的架橋してペレット化した。得られた動的架橋体108質量部に、二軸混練機を用いて、接着剤2.5質量部を添加し、溶融混練することによりペレットを得た。得られたペレットを、単軸押出機を用いて溶融させて、Tダイにて実施例1に係るフィルム(厚み:0.2mm)を作製した。表1に示す配合(質量部)に従い、実施例1と同様にして実施例2〜7及び比較例1〜3のフィルムを作製した。比較例1では、溶融混練時にポリエチレン系重合体を添加しなかった。
実施例1,4,6のフィルムについて、SPM(走査型プローブ顕微鏡)により位相像を確認したところ、熱可塑性エラストマーを連続相とし、ゴムを分散相とする海島構造であり、比較例1よりも微小化された分散相を持つ小さな海島構造であった。
得られた耐空気透過性フィルムを用い、加硫成形性、空気透過係数、空気透過(指数)及び低温耐久性を評価した。結果は表1に示す通りである。
ポリエチレン系重合体を配合していない比較例1では、耐空気透過性には優れていたものの、低温耐久性に劣っていた。これに対し、所定のMFRを持つポリエチレンを溶融混練時に添加した実施例1,2では、耐空気透過性の悪化を抑えながら、低温耐久性が顕著に改善されていた。一方、ポリエチレンのMFRが大きすぎる比較例2では、低温耐久性の改善効果は見られなかった。
また、実施例3〜7に示されたように、ポリエチレンを用いた場合だけでなく、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸エチル共重合体を用いた場合でも、コントロールである比較例1に対して、耐空気透過性の悪化を抑えながら、低温耐久性が顕著に改善されていた。一方、上記所定のポリエチレン系重合体を添加する代わりに、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を、比較例1に対して増量した比較例3では、低温耐久性の改善効果は見られたものの、実施例に比べてその効果は小さく、また、上記所定のポリエチレン系重合体と比べて、耐空気透過性の悪化が大きかった。このことから、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステルを配合した場合、グリシジル基という反応性相溶化剤を増量した場合では得られない有利な効果が得られることが分かる。
[第2実施例]
熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしてTPEE−Aの代わりにTPEE−Bを用い、かつ表2に示す配合(質量部)に従い、第1実施例と同様にして実施例8〜12及び比較例4,5のフィルムを作製した。実施例8のフィルムについて、SPM(走査型プローブ顕微鏡)により位相像を確認したところ、熱可塑性エラストマーを連続相とし、ゴムを分散相とする海島構造であり、比較例4よりも微小化された分散相を持つ小さな海島構造であった。
熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしてTPEE−Aの代わりにTPEE−Bを用い、かつ表2に示す配合(質量部)に従い、第1実施例と同様にして実施例8〜12及び比較例4,5のフィルムを作製した。実施例8のフィルムについて、SPM(走査型プローブ顕微鏡)により位相像を確認したところ、熱可塑性エラストマーを連続相とし、ゴムを分散相とする海島構造であり、比較例4よりも微小化された分散相を持つ小さな海島構造であった。
得られた耐空気透過性フィルムを用い、加硫成形性、空気透過係数、空気透過(指数)及び低温耐久性を評価した。
結果は表2に示す通りであり、熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしてTPEE−Bを用いた場合でも、第1実施例と同様に、所定のMFRを持つポリエチレンを溶融混練時に添加した実施例8〜12では、コントロールである比較例4に対し、耐空気透過性の悪化を抑えながら、低温耐久性が顕著に改善されていた。また、上記所定のポリエチレン系重合体を添加する代わりに、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を増量した比較例5では、低温耐久性の改善効果は見られたものの、実施例に比べてその効果は小さく、また、上記所定のポリエチレン系重合体と比べて、耐空気透過性の悪化が大きかった。
[第3実施例]
エチレン系重合体の添加量と効果との関係を示すために、表3に示す配合(質量部)に従い、第1実施例と同様にして実施例13,14及び比較例6〜8のフィルムを作製した。 得られた耐空気透過性フィルムを用い、加硫成形性、空気透過係数、空気透過(指数)及び低温耐久性を評価した。
エチレン系重合体の添加量と効果との関係を示すために、表3に示す配合(質量部)に従い、第1実施例と同様にして実施例13,14及び比較例6〜8のフィルムを作製した。 得られた耐空気透過性フィルムを用い、加硫成形性、空気透過係数、空気透過(指数)及び低温耐久性を評価した。
結果は表3に示す通りであり、エチレン系重合体の添加量が多すぎると、低温耐久性が悪化する傾向が見られた。また、エチレン系重合体の添加量が多すぎると、耐空気透過性も劣る傾向があり、更に、隣接ゴム部材との加硫接着時にポリエチレン系重合体の溶け出しが起こり、加硫成形性に劣っていた。
1…空気入りタイヤ、6…カーカスプライ、8…インナーライナー
Claims (6)
- 熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムを溶融混練し動的架橋させることにより得られた、前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーを連続相とし、前記ゴムを分散相とする、動的架橋体からなるタイヤ用耐空気透過性フィルムにおいて、
JIS K7210に準拠した測定温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが5g/10分以下である重合体であって、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系重合体を、前記動的架橋体中に1〜10質量%含有する、
タイヤ用耐空気透過性フィルム。 - 前記動的架橋体は、前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーと前記ゴムとともに相溶化剤としてエチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体を混合してなるものである、請求項1記載のタイヤ用耐空気透過性フィルム。
- 前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメントがブチレンテレフタレート単位を含むものであり、ソフトセグメントが脂肪族ポリカーボネートからなる、請求項1又は2記載のタイヤ用耐空気透過性フィルム。
- 前記ゴムが、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ニトリルゴム及び水素化ニトリルゴムから選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ用耐空気透過性フィルム。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐空気透過性フィルムを、インナーライナー又はその他の空気透過抑制層として備えた空気入りタイヤ。
- 熱可塑性ポリエステル系エラストマーとゴムを溶融混練し動的架橋させることにより、前記熱可塑性エラストマーを連続相とし、前記ゴムを分散相とした動的架橋体を得る工程を含み、前記溶融混練時に、JIS K7210に準拠した測定温度190℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが5g/10分以下である重合体であって、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のエチレン系重合体を、前記動的架橋体中の含有量が1〜10質量%となるように添加する、
タイヤ用耐空気透過性フィルムの製造方法。
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WO2020059872A1 (ja) * | 2018-09-21 | 2020-03-26 | 横浜ゴム株式会社 | タイヤ用インナーライナーおよび空気入りタイヤ |
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WO2020059878A1 (ja) * | 2018-09-21 | 2020-03-26 | 横浜ゴム株式会社 | タイヤ用インナーライナーおよび空気入りタイヤ |
CN112654680A (zh) * | 2018-09-21 | 2021-04-13 | 横滨橡胶株式会社 | 轮胎用内衬层和充气轮胎 |
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