JP2016007812A - インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ - Google Patents

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Abstract

【課題】サテライトの発生を抑制し、高品質かつ高速の印字に対応できるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】圧力室の容積を膨張させる拡張パルスと圧力室の容積を収縮させる圧縮パルスとを含む駆動パルス信号の波形パターンを発生するパターンジェネレータ301と、駆動パルス信号の駆動周波数を設定する周波数設定部303とを備える。パターンジェネレータ301は、駆動電圧を高めても吐出速度が飽和する波形パターンを発生する。周波数設定部303は、飽和したときの吐出速度においてサテライトが発生しない駆動周波数を設定する。
【選択図】図6

Description

本発明の実施形態は、インクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタに関する。
インクジェットヘッドにおいて、ノズルからインク滴を吐出させる際、メインのインク滴に付随してサテライトと称される微小な液滴が飛翔する場合がある。サテライトは、メインのインク滴と比較して飛翔速度が遅い。このため、メインのインク滴から離れてサテライトが着弾し、印字ムラやゴースト等が発生して、印字品質が低下する。
そこで、サテライトが極力発生しないように、インクジェットヘッドの駆動電圧を小さくしてインク滴の吐出速度を遅くすることが考えられる。しかしインクジェットヘッドは、製造等に起因してノズル毎の吐出速度にばらつきがある。ばらつきは、吐出速度を遅くすればするほど顕著となる。このため、インク滴の吐出速度をサテライトが発生しない程度まで遅くすることは困難である。
また、メインのインク滴とサテライトとの着弾位置のずれは、インクジェットヘッドと記録媒体との相対的な搬送速度にも依存する。すなわち、搬送速度が速くなればなるほど、ずれは大きくなる。したがって、インクジェットヘッドの駆動周波数を低くして、インクジェットヘッドと記録媒体との相対的な搬送速度を遅くすることも考えられるが、その場合は印字速度が遅くなるため、生産性が悪化する。
特開2013‐075509号公報
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、インク滴の吐出速度について適切な速度が得られる駆動電圧で、かつ、インクジェットヘッドと記録媒体との相対的な搬送速度について適切な速度が得られる駆動周波数で駆動しても、サテライトの発生を極力抑制することができ、高品質かつ高速印字に対応できるインクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタを提供しようとするものである。
一実施形態において、インクジェットヘッドは、インクが充填される圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室の容積を膨張させる拡張パルスと収縮させる圧縮パルスとを含む駆動パルス信号の波形パターンを発生する発生部と、前記駆動パルス信号の駆動周波数を設定する設定部と、前記発生部から発生される波形パターンと前記設定部で設定された駆動周波数とに基づいて前記駆動パルス信号を生成する生成部と、この生成部で生成された駆動パルス信号により前記圧力室の容積を変化させて当該圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出させるアクチュエータと、を備える。そして前記発生部は、駆動電圧を高めても吐出速度が飽和する波形パターンを発生する。前記設定部は、前記飽和したときの吐出速度においてサテライトが発生しない駆動周波数を設定する。
インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図。 インクジェットヘッドの前方部における横断面図。 インクジェットヘッドの前方部における縦断面図。 インクジェットヘッドの動作原理を説明するための図。 インクジェットプリンタのハードウェア構成を示すブロック図。 ヘッド駆動回路の要部構成を示すブロック図。 3分割駆動のインクジェットヘッドに対するマルチドロップ方式の駆動パルス信号を示す波形図。 波形パターンの異なる駆動パルス信号P1,P2,P3を例示する波形図。 駆動パルス信号P1,P2,P3をそれぞれ用いて同一の駆動周波数でインクジェットヘッドを駆動したときの駆動電圧とインク滴の吐出速度との対応関係を示すグラフ。 異なる駆動周波数でインクジェットヘッドを駆動する場合において、駆動電圧とインク滴の吐出速度との関係を示す図。 駆動周波数の別に、図10に示した駆動電圧と吐出速度との対応関係を示すグラフ。
以下、実施形態に係るインクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタについて、図面を用いて説明する。因みにこの実施形態では、インクジェットヘッドとしてシェアモードタイプのインクジェットヘッド100(図1を参照)を例示する。
はじめに、インクジェットヘッド100(以下、ヘッド100と略称する)の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、ヘッド100の一部を分解して示す斜視図、図2は、ヘッド100の前方部における横断面図、図3は、ヘッド100の前方部における縦断面図である。
ヘッド100は、ベース基板9を有する。ヘッド100は、ベース基板9の前方側の上面に第1の圧電部材1を接合し、この第1の圧電部材1の上に第2の圧電部材2を接合する。接合された第1の圧電部材1と第2の圧電部材2とは、図2の矢印で示すように、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極する。
ベース基板9は、誘電率が小さく、かつ圧電部材1,2との熱膨張率の差が小さい材料を用いて形成する。ベース基板9の材料としては、例えばアルミナ(Al203)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等がよい。一方、圧電部材1,2の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等が用いられる。
ヘッド100は、接合された圧電部材1,2の先端側から後端側に向けて、多数の長尺な溝3を設ける。各溝3は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝3は、先端が開口し、後端が上方に傾斜する。
ヘッド100は、各溝3の側壁及び底面に電極4を設ける。電極4は、ニッケル(Ni)と金(Au)との二層構造となっている。電極4は、例えばメッキ法によって各溝3内に均一に成膜される。電極4の形成方法は、メッキ法に限定されない。他に、スパッタ法や蒸着法等を用いることもできる。
ヘッド100は、各溝3の後端から第2の圧電部材2の後部上面に向けて引出し電極10を設ける。引出し電極10は、前記電極4から延出する。
ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とを備える。天板6は、各溝3の上部を塞ぐ。オリフィスプレート7は、各溝3の先端を塞ぐ。ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とで囲まれた各溝3によって、複数の圧力室15を形成する。圧力室15は、例えば深さが300μmで幅が80μmの形状を有し、169μmのピッチで平行に配列される。このような圧力室15は、インク室とも称される。
天板6は、その内側後方に共通インク室5を備える。オリフィスプレート7は、各溝3と対向する位置にノズル8を穿設する。ノズル8は、対向する溝3つまりは圧力室15と連通する。ノズル8は、圧力室15側から反対側のインク吐出側に向けて先細りの形状をなす。ノズル8は、隣り合う3つの圧力室15に対応したものを1セットとし、溝3の高さ方向(図2の紙面の上下方向)に一定の間隔でずれて形成される。
ヘッド100は、ベース基板9の後方側の上面に、導電パターン13が形成されたプリント基板11を接合する。そしてヘッド100は、このプリント基板11に、後述するヘッド駆動回路101を実装したドライブIC12を搭載する。ドライブIC12は、導電パターン13に接続する。導電パターン13は、各引出し電極10とワイヤボンディングにより導線14で結合する。
ヘッド100が有する圧力室15、電極4及びノズル8の組をチャネルと称する。すなわちヘッド100は、溝3の数Nだけチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nを有する。
次に、上記の如く構成されたヘッド100の動作原理について、図4を用いて説明する。
図4の(a)は、中央の圧力室15bと、この圧力室15bに隣接する両隣の圧力室15a,15cとの各壁面にそれぞれ配設された電極4の電位がいずれもグラウンド電位GNDである状態を示している。この状態では、圧力室15aと圧力室15bとで挟まれた隔壁16a及び圧力室15bと圧力室15cとで挟まれた隔壁16bは、いずれも何ら歪み作用を受けない。
図4の(b)は、中央の圧力室15bの電極4に負極性の電圧−Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に正極性の電圧+Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を拡張するようにそれぞれ外側に変形する。
図4の(c)は、中央の圧力室15bの電極4に正極性の電圧+Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に負極性の電圧−Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、図4(b)のときとは逆の方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形する。
圧力室15bの容積が拡張または収縮された場合、圧力室15b内に圧力振動が発生する。この圧力振動により、圧力室15b内の圧力が高まり、圧力室15bに連通するノズル8からインク滴が吐出される。
このように、各圧力室15a,15b,15cを隔てる隔壁16a,16bは、当該隔壁16a,16bを壁面とする圧力室15bの内部に圧力振動を与えるためのアクチュエータとなる。つまり各圧力室15は、それぞれ隣接する圧力室15とアクチュエータを共有する。このため、ヘッド駆動回路101は、各圧力室15を個別に駆動することができない。ヘッド駆動回路101は、各圧力室15をn(nは2以上の整数)個おきに(n+1)個のグループに分割して駆動する。本実施形態では、ヘッド駆動回路101が、各圧力室15を2つおきに3つの組に分けて分割駆動する、いわゆる3分割駆動の場合を例示する。なお、3分割駆動はあくまでも一例であり、4分割駆動または5分割駆動などであってもよい。
次に、図5,図6を用いて、インクジェットヘッド100を搭載したインクジェットプリンタ200(以下、プリンタ200と略称する)について説明する。図5は、プリンタ200のハードウェア構成を示すブロック図、図6は、プリンタ200に含まれるヘッド駆動回路101の構成を示す回路図である。
プリンタ200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、操作パネル204、通信インターフェース205、搬送モータ206、モータ駆動回路207、ポンプ208、ポンプ駆動回路209及びヘッド100を備える。またプリンタ200は、アドレスバス,データバスなどのバスライン211を含む。そしてプリンタ200は、このバスライン211に、CPU201、ROM202、RAM203、操作パネル204、通信インターフェース205、モータ駆動回路207、ポンプ駆動回路209及びヘッド100の駆動回路101をそれぞれ直接あるいは入出力回路を介して接続する。
CPU201は、コンピュータの中枢部分に相当する。CPU201は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、プリンタ200としての各種の機能を実現するべく各部を制御する。
ROM202は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。ROM202は、上記のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムを記憶する。ROM202は、CPU201が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを記憶する場合もある。
RAM203は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。RAM203は、CPU201が処理を実行する上で必要なデータを記憶する。またRAM203は、CPU201によって情報が適宜書き換えられるワークエリアとしても利用される。ワークエリアは、印刷データが展開される画像メモリを含む。
操作パネル204は、操作部と表示部とを有する。操作部は、電源キー、用紙フィードキー、エラー解除キー等のファンクションキーを配置したものである。表示部は、プリンタ200の種々の状態を表示可能なものである。
通信インターフェース205は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続されるクライアント端末から印刷データを受信する。通信インターフェース205は、例えばプリンタ200にエラーが発生したとき、エラーを通知する信号をクライアント端末に送信する。
モータ駆動回路207は、搬送モータ206の駆動を制御する。搬送モータ206は、印刷用紙などの記録媒体を搬送する搬送機構の駆動源として機能する。搬送モータ206が駆動すると、搬送機構が記録媒体の搬送を開始する。搬送機構は、記録媒体をヘッド100による印刷位置まで搬送する。搬送機構は、印刷を終えた記録媒体を図示しない排出口からプリンタ200の外部に排出する。
ポンプ駆動回路209は、ポンプ208の駆動を制御する。ポンプ208が駆動すると、図示しないインクタンク内のインクがヘッド100に供給される。
ヘッド駆動回路101は、印刷データに基づきヘッド100のチャネル群(ch.1,ch.2,…,ch.N)102を駆動する。ヘッド駆動回路101は、図6に示すように、パターンジェネレータ301、周波数設定部302、駆動信号生成部303及びスイッチ回路304を含む。
パターンジェネレータ301は、駆動パルス信号の波形パターンを生成する。駆動パルス信号は、通常、図4の(b)に示すように、圧力室15の容積を所定時間膨張させる拡張パルス(または吐出パルス)と、図4の(c)に示すように、圧力室15の容積を所定時間収縮させる圧縮パルス(またはダンピングパルス)と、拡張パルスと圧縮パルスとの間の休止時間とからなる。拡張パルスと圧縮パルスとは、極性が逆である。拡張パルス時間と休止時間と圧縮パルス時間との和が、1ドロップのインク滴を吐出させるための区間、いわゆる1ドロップ周期となる。
周波数設定部302は、ヘッド100の駆動周波数Fを設定する。ここで駆動周波数Fについて、図7を用いて説明する。図7は、3分割駆動のヘッド100に対するマルチドロップ方式の駆動パルス信号を示す波形図である。ヘッド100は3分割駆動なので、連続する3つのチャネルch.A、ch.B、ch.Cが1つのグループとなる。そして、グループ毎に階調数に応じた駆動パルス信号を出力する。
図7において、区間Tpは、1つのチャネルから最大階調数mのインク滴を吐出させる際の駆動パルス信号の出力に要する時間である。区間Tdは、グループ間の休止時間(または遅延時間)である。区間Tcは、1グループ内の3つのチャネルch.A、ch.B、ch.Cからインク滴が吐出し終わるのに要する時間、いわゆるサイクルタイムである。サイクルタイムTcは次の(1)式で表される。
Tc=(Tp+Td)*3 …(1)
駆動周波数Fは、サイクルタイムTcの逆数である。すなわち駆動周波数Fは、次の(2)式で表される。
F=1/Tc …(2)
1ドロップの液滴をノズル8から吐出するために要する時間である1ドロップ周期(Tp/m)は一定である。したがって、駆動周波数Fが低いと、休止時間Tdが長くなる。逆に、駆動周波数Fが高いと、休止時間Tdが短くなる。
駆動信号生成部303は、バスライン211から入力される印刷データに従い、パターンジェネレータ301で生成される波形パターンと、周波数設定部302で設定される駆動周波数Fとを基に、チャネル毎の駆動パルス信号を生成する。チャネル毎の駆動パルス信号は、駆動信号生成部303からスイッチ回路304に出力される。
スイッチ回路304は、駆動信号生成部303から出力されるチャネル毎の駆動パルス信号に応じて、各チャネルの電極4に印加される電圧を切り替える。この電圧の切り替えにより、各チャネルの圧力室15の容積が膨張し、または収縮して、各チャネルのノズル8からインク滴が階調数分吐出される。
図8は、波形パターンの異なる駆動パルス信号P1,P2,P3を例示する。図8は、2ドロップのインク滴を吐出する場合である。図8において、区間ULは、圧力伝播時間(圧力室15の後端から先端まで圧力波が伝播する時間)を示す。すなわち、駆動パルス信号P1は、期間t0〜t1の拡張パルスEPと、期間t2〜t3の圧縮パルスCPと、期間t1〜t2の休止時間とをいずれも圧力伝播時間ULと等しくした波形パターンの信号である。なお、拡張パルスEPの前に出力されるパルスは、1滴目のインク滴の吐出速度を高めるために、圧力室15をインク滴が吐出しない程度に収縮させるブーストパルスBPである。駆動パルス信号P2は、拡張パルスEPを駆動パルス信号P1と同じとするが、休止時間を圧力伝播時間ULよりも十分に短くし、その分、圧縮パルスCPの幅を長くした波形パターンの信号である。駆動パルス信号P3は、圧縮パルスEPを駆動パルス信号P1と同じとするが、休止時間を圧力伝播時間ULよりも十分に長くし、その分、圧縮パルスCPの幅を短くした波形パターンの信号である。
図9は、駆動パルス信号P1,P2,P3をそれぞれ用いて同一の駆動周波数F[kHz]でインクジェットヘッド100を駆動したときの駆動電圧E[V]とメイン液滴の吐出速度S[m/s]との対応関係を示すグラフである。グラフは、横軸を駆動電圧E[V]とし、縦軸を吐出速度S[m/s]とする。駆動電圧E[V]は、図に向かって右側に行けばいくほど大きい値をとる。吐出速度S[m/s]は、図に向かって上に行けばいくほど大きい値をとる。駆動周波数F[kHz]は、必要十分な生産性が得られる程度の印字速度に対応した任意の値である。
同図において、実線のグラフG1は、駆動パルス信号P1を印加した場合である。破線のグラフG2は、駆動パルス信号P2を印加した場合である。一点鎖線のグラフG3は、駆動パルス信号P3を印加した場合である。グラフG2,G3に示すように、駆動パルス信号P2または駆動パルス信号P3を使用した場合、駆動電圧E[V]の上昇に伴って吐出速度S[m/s]が速くなる。ところが、駆動パルス信号P1を使用した場合には、グラフG1に示すように、駆動電圧E[V]がある程度まで上昇すると吐出速度S[m/s]が飽和する。そして駆動電圧E[V]をさらに上げても、吐出速度S[m/s]は速くならない。吐出速度S[m/s]が上昇しなければ、製造等に起因したノズル8毎の吐出速度のばらつきを吸収するために、駆動電圧E[V]を上げてもサテライトが発生しない可能性がある。そこで本実施形態では、パターンジェネレータ301で生成される駆動パルス信号の波形パターンとして、駆動パルス信号P1で示される波形パターンを使用する。
図10は、駆動パルス信号P1で示される波形パターンを使用し、4種類の駆動周波数f1,f2,f3,f4(f1<f2<f3<f4)でヘッド100を駆動する場合において、駆動電圧E[V]をe1,e2,e3,e4,e5,e6,e7(e1<e2<e3<e4<e5<e6<e7)と変化させた場合のインク滴の吐出速度S[m/s]を示す図である。
ここで、駆動周波数f1,f2,f3,f4は、いずれも十分な生産性が得られる高速印字に対応した値である。具体的には、駆動周波数f1は18[kHz]であり、駆動周波数f2は20[kHz]であり、駆動周波数f3は22[kHz]であり、駆動周波数f4は24[kHz]である。
駆動電圧e1,e2,e3,e4,e5,e6,e7は、製造等に起因したノズル毎の吐出速度のばらつきを吸収できる程度に十分高い値である。具体的には、駆動電圧e1は19[V]であり、駆動電圧e2は20[V]であり、駆動電圧e3は21[V]であり、駆動電圧e4は22[V]であり、駆動電圧e5は23[V]であり、駆動電圧e6は24[V]であり、駆動電圧e7は25[V]である。
図11は、駆動周波数F[kHz]がf1,f2,f3,f4の別に、図10に示した駆動電圧E[V]と吐出速度S[m/s]との対応関係を示すグラフである。グラフは、横軸を駆動電圧とし、縦軸を吐出速度とする。同図において、破線のグラフG11は、駆動周波数F[kHz]がf1(18[kHz])の場合である。一点鎖線のグラフG12は、駆動周波数F[kHz]がf2(20[kHz])の場合である。二点鎖線のグラフG13は、駆動周波数F[kHz]がf3(22[kHz])の場合である。実線のグラフG14は、駆動周波数F[kHz]がf4(24[kHz])の場合である。
図10,図11に示すように、駆動電圧E[V]が等しい場合、駆動周波数F[kHz]が大きくなるにつれて吐出速度S[m/s]は低下する。しかも、吐出速度S[m/s]の低下の度合いは、駆動周波数F[kHz]が大きくなればなるほど大きくなる。そして、駆動周波数F[kHz]がf4のとき、駆動電圧E[V]をe5(23[V])程度まで上げたならばそれ以上上げても吐出速度S[m/s]は殆ど変化しなくなり、飽和する。この飽和という現象は、駆動電圧E[V]がe1〜e7の範囲内においては駆動周波数F[kHz]がf4のときだけであり、駆動周波数F[kHz]がf1,f2,f3のときには見られない。
一方、図10において、ハッチングで塗り潰した部分は、サテライトが発生しない吐出速度S[m/s]を示している。すなわち、駆動周波数F[kHz]がf1(18[kHz])の場合、駆動電圧E[V]がe2(20[V])までは吐出速度Sが4.9[m/s]以下でありサテライトが発生しないが、駆動電圧E[V]がe3(21[V])以上になると吐出速度Sが6.5[m/s]以上となってサテライトが発生する。駆動周波数F[kHz]がf2(20[kHz])の場合、駆動電圧E[V]がe3(21[V])までは吐出速度Sが6.2[m/s]以下でありサテライトが発生しないが、駆動電圧E[V]がe4(22[V])以上になると吐出速度Sが7.1[m/s]以上となってサテライトが発生する。駆動周波数F[kHz]がf3(22[kHz])の場合、駆動電圧E[V]がe5(23[V])までは吐出速度Sが6.2[m/s]以下でありサテライトが発生しないが、駆動電圧E[V]がe6(24[V])以上になると吐出速度Sが6.6[m/s]以上となってサテライトが発生する。
一方、駆動周波数F[kHz]がf4(24[kHz])の場合には、駆動電圧E[V]がe7(25[V])まで高くなっても吐出速度Sが6.0[m/s]以下でありサテライトが発生しない。しかも、駆動周波数F[kHz]がf4の場合には、駆動電圧E[V]がe5以上で吐出速度S[m/s]がほぼ飽和するので、駆動電圧E[V]をe7よりさらに高くしてもサテライトが発生しないものと推測できる。
因みに、駆動周波数F[kHz]がf1,f2,f3の場合には、駆動電圧E[V]をe7よりさらに高めることで飽和すると考えられるが、飽和したときの吐出速度S[m/s]ではサテライトが発生するので、印字品質の低下は避けられない。
以上の観点から、本実施形態のインクジェットヘッド100は、吐出速度S[m/s]が6.4[m/s]以下であればサテライトが発生しないが、6.4[m/s]を超えるとサテライトが発生する。そこで、周波数設定部302で設定される駆動周波数F[kHz]は、駆動電圧E[V]を高めても、吐出速度S[m/s]が6.4[m/s]以下で飽和してサテライトが発生しない周波数f4とする。
このように本実施形態では、駆動パルス信号の波形として、駆動電圧がある程度まで上昇すると吐出速度が飽和して、それ以上駆動電圧を上げても吐出速度が速くならないパターンの波形を使用する。すなわち、圧縮パルスEP及び圧縮パルスCPと、圧縮パルスEPと圧縮パルスCPとの間の休止時間とを、いずれも圧力伝播時間ULと等しくしたパターンの波形を使用する。また、駆動周波数としては、十分な生産性が得られる印字速度に対応した値の範囲内で、飽和したときの吐出速度においてサテライトが発生しない駆動周波数f4を設定する。そうすることにより、高速印字に対応できるとともに、サテライトによる印字ムラやゴースト等の印字品質低下を招く現象も抑制できるインクジェットヘッド100を提供することができる。
なお、前記実施形態では、シェアモードタイプのインクジェットヘッド100について説明したが、本発明を適用可能なインクジェットヘッドはシェアモードタイプに限定されるものではない。1つのノズルからインクを吐出させる際に1つのアクチュエータだけを動作させるタイプ、すなわちシェアモードタイプ以外のインクジェットヘッドに対しても、同様に適用することができる。
また、前記実施形態では、駆動パルス信号の波形として、図8のパターンP1で示す波形を示したが、必ずしもこのパターンP1の波形に限定されるものではない。要は、駆動電圧がある程度まで上昇すると吐出速度が飽和して、それ以上駆動電圧を上げても吐出速度が速くならないパターンの波形を使用すればよい。
同様に、駆動周波数としては、図10の周波数f4を使用すると説明したが、必ずしも周波数f4に限定されるものではない。要は、十分な生産性が得られる印字速度に対応した値の範囲内で、飽和したときの吐出速度においてサテライトが発生しない駆動周波数であればよい。
この他、前記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100…インクジェットヘッド、101…ヘッド駆動回路、200…インクジェットプリンタ、301…パターンジェネレータ、302…周波数設定部、303…駆動信号生成部、304…スイッチ回路。

Claims (4)

  1. インクが充填される圧力室と、
    前記圧力室に連通するノズルと、
    前記圧力室の容積を膨張させる拡張パルスと収縮させる圧縮パルスとを含む駆動パルス信号の波形パターンを発生する発生部と、
    前記駆動パルス信号の駆動周波数を設定するものであり飽和したときの吐出速度においてサテライトが発生しない駆動周波数を設定する設定部と、
    前記発生部から発生される波形パターンと前記設定部で設定された駆動周波数とに基づいて前記駆動パルス信号を生成し、駆動電圧を高めても吐出速度が飽和する波形パターンを発生する生成部と、
    この生成部で生成された駆動パルス信号により前記圧力室の容積を変化させて当該圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出させるアクチュエータと、
    を具備するインクジェットヘッド。
  2. 前記発生部から発生される波形パターンは、圧縮パルス及び圧縮パルスと、圧縮パルスと圧縮パルスとの間の休止時間とを、いずれも圧力伝播時間とするパターンである、請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記設定部で設定される駆動周波数は、十分な生産性が得られる印字速度に対応した周波数である、請求項1または2記載のインクジェットヘッド。
  4. 請求項1乃至3のうちいずれか1に記載のインクジェットヘッドと、
    インクタンク内のインクを前記インクジェットヘッドに供給するポンプと、
    を具備するインクジェットプリンタ。
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