JP2016022623A - インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ - Google Patents
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Abstract
【課題】インクジェットヘッドの消費電力を削減する。【解決手段】インクが充填される圧力室と、圧力室に連通するノズルと、圧力室内の容積を変化させて当該圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出させるアクチュエータと、圧力室の容積を拡張させる拡張パルスと収縮させる収縮パルスとを含む駆動パルス信号をアクチュエータに出力し、インク滴の吐出に係る時間にアクチュエータに印加される電界よりもインク滴の吐出に係らない時間にアクチュエータに印加される電界の方が小さくなる駆動パルス信号をアクチュエータに出力する駆動回路とを備える。【選択図】 図11
Description
本発明の実施形態は、インクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタに関する。
インクジェットヘッドは、インクが充填される圧力室と、圧力室に設けられたアクチュエータと、圧力室に連通するノズルとを備える。そしてインクジェットヘッドは、アクチュエータに駆動パルス信号が印加されると、このアクチュエータの作用により圧力室が振動し、圧力室内部の容積が変化して、この圧力室に連通するノズルからインク滴が吐出される。
ところで、圧力室に生じた振動は、インク滴が吐出された後も残留する。この残留振動は、その後のインク滴の安定吐出の妨げとなる。そこで、駆動パルス信号としてインク滴を吐出させるためのパルス信号、いわゆる吐出パルスの後に、圧力室に生じた振動を抑制するためのパルス信号、いわゆるダンピングパルスを出力することで、圧力室に生じた残留振動を抑制する技術が知られている。
従来、ダンピングパルスの電位は吐出パルスの電位と等しかった。このため、インク滴の吐出に係る時間、すなわち吐出パルスが印加される時間だけでなく、インク滴の吐出に係わらない時間、すなわちダンピングパルスが印加される時間においても、アクチュエータに対して同じ電界が印加されていたため、余分な電力を消費している懸念があった。
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、インク滴の吐出に係る時間に対し、インク滴の吐出に係わらない時間にアクチュエータに対して印加される電界を減らすことで、消費電力を削減し得るインクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタを提供しようとするものである。
一実施形態において、インクジェットヘッドは、インクが充填される圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内の容積を変化させて当該圧力室に連通する前記ノズルからインク滴を吐出させるアクチュエータと、前記圧力室の容積を拡張させる拡張パルスと収縮させる収縮パルスとを含む駆動パルス信号を前記アクチュエータに出力し、前記インク滴の吐出に係る時間に前記アクチュエータに印加される電界よりも前記インク滴の吐出に係らない時間に前記アクチュエータに印加される電界の方が小さくなる前記駆動パルス信号を前記アクチュエータに出力する駆動回路とを備える。
以下、実施形態に係るインクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタについて、図面を用いて説明する。因みにこの実施形態では、インクジェットヘッドとしてシェアモードタイプのインクジェットヘッド100(図1を参照)を例示する。
はじめに、インクジェットヘッド100(以下、ヘッド100と略称する)の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、ヘッド100の一部を分解して示す斜視図、図2は、ヘッド100の前方部における横断面図、図3は、ヘッド100の前方部における縦断面図である。
ヘッド100は、ベース基板9を有する。ヘッド100は、ベース基板9の前方側の上面に第1の圧電部材1を接合し、この第1の圧電部材1の上に第2の圧電部材2を接合する。接合された第1の圧電部材1と第2の圧電部材2とは、図2の矢印で示すように、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極する。
ベース基板9は、誘電率が小さく、かつ圧電部材1,2との熱膨張率の差が小さい材料を用いて形成する。ベース基板9の材料としては、例えばアルミナ(Al203)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等がよい。一方、圧電部材1,2の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等が用いられる。
ヘッド100は、接合された圧電部材1,2の先端側から後端側に向けて、多数の長尺な溝3を設ける。各溝3は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝3は、先端が開口し、後端が上方に傾斜する。
ヘッド100は、各溝3の側壁及び底面に電極4を設ける。電極4は、ニッケル(Ni)と金(Au)との二層構造となっている。電極4は、例えばメッキ法によって各溝3内に均一に成膜される。電極4の形成方法は、メッキ法に限定されない。他に、スパッタ法や蒸着法等を用いることもできる。
ヘッド100は、各溝3の後端から第2の圧電部材2の後部上面に向けて引出し電極10を設ける。引出し電極10は、前記電極4から延出する。
ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とを備える。天板6は、各溝3の上部を塞ぐ。オリフィスプレート7は、各溝3の先端を塞ぐ。ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とで囲まれた各溝3によって、複数の圧力室15を形成する。圧力室15は、例えば深さが300μmで幅が80μmの形状を有し、169μmのピッチで平行に配列される。このような圧力室15は、インク室とも称される。
天板6は、その内側後方に共通インク室5を備える。オリフィスプレート7は、各溝3と対向する位置にノズル8を穿設する。ノズル8は、対向する溝3つまりは圧力室15と連通する。ノズル8は、圧力室15側から反対側のインク吐出側に向けて先細りの形状をなす。ノズル8は、隣り合う3つの圧力室15に対応したものを1セットとし、溝3の高さ方向(図2の紙面の上下方向)に一定の間隔でずれて形成される。
ヘッド100は、ベース基板9の後方側の上面に、導電パターン13が形成されたプリント基板11を接合する。そしてヘッド100は、このプリント基板11に、後述するヘッド駆動回路101を実装したドライブIC12を搭載する。ドライブIC12は、導電パターン13に接続する。導電パターン13は、各引出し電極10とワイヤボンディングにより導線14で結合する。
ヘッド100が有する圧力室15、電極4及びノズル8の組をチャネルと称する。すなわちヘッド100は、溝3の数Nだけチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nを有する。
次に、上記の如く構成されたヘッド100の動作原理について、図4を用いて説明する。
図4の(a)は、中央の圧力室15bと、この圧力室15bに隣接する両隣の圧力室15a,15cとの各壁面にそれぞれ配設された電極4の電位がいずれもグラウンド電位GNDである状態を示している。この状態では、圧力室15aと圧力室15bとで挟まれた隔壁16a及び圧力室15bと圧力室15cとで挟まれた隔壁16bは、いずれも何ら歪み作用を受けない。
図4の(a)は、中央の圧力室15bと、この圧力室15bに隣接する両隣の圧力室15a,15cとの各壁面にそれぞれ配設された電極4の電位がいずれもグラウンド電位GNDである状態を示している。この状態では、圧力室15aと圧力室15bとで挟まれた隔壁16a及び圧力室15bと圧力室15cとで挟まれた隔壁16bは、いずれも何ら歪み作用を受けない。
図4の(b)は、中央の圧力室15bの電極4に負極性の電圧−Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に正極性の電圧+Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を拡張するようにそれぞれ外側に変形する。
図4の(c)は、中央の圧力室15bの電極4に正極性の電圧+Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に負極性の電圧−Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、図4(b)のときとは逆の方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形する。
圧力室15bの容積が拡張または収縮された場合、圧力室15b内に圧力振動が発生する。この圧力振動により、圧力室15b内の圧力が高まり、圧力室15bに連通するノズル8からインク滴が吐出される。
このように、各圧力室15a,15b,15cを隔てる隔壁16a,16bは、当該隔壁16a,16bを壁面とする圧力室15bの内部に圧力振動を与えるためのアクチュエータとなる。つまり各圧力室15は、それぞれ隣接する圧力室15とアクチュエータを共有する。このため、ヘッド駆動回路101は、各圧力室15を個別に駆動することができない。ヘッド駆動回路101は、各圧力室15をn(nは2以上の整数)個おきに(n+1)個のグループに分割して駆動する。本実施形態では、ヘッド駆動回路101が、各圧力室15を2つおきに3つの組に分けて分割駆動する、いわゆる3分割駆動の場合を例示する。なお、3分割駆動はあくまでも一例であり、4分割駆動または5分割駆動などであってもよい。
次に、インクジェットプリンタ200(以下、プリンタ200と略称する)の構成について、図5〜図7を用いて説明する。図5は、プリンタ200のハードウェア構成を示すブロック図、図6は、ヘッド駆動回路101の具体的構成を示すブロック図、図7は、ヘッド駆動回路101に含まれるバッファ回路1013とスイッチ回路1014との概略回路図である。
プリンタ200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、操作パネル204、通信インターフェース205、搬送モータ206、モータ駆動回路207、ポンプ208、ポンプ駆動回路209及びヘッド100を備える。またプリンタ200は、アドレスバス,データバスなどのバスライン211を含む。そしてプリンタ200は、このバスライン211に、CPU201、ROM202、RAM203、操作パネル204、通信インターフェース205、モータ駆動回路207、ポンプ駆動回路209及びヘッド100の駆動回路101をそれぞれ直接あるいは入出力回路を介して接続する。
CPU201は、コンピュータの中枢部分に相当する。CPU201は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、プリンタ200としての各種の機能を実現するべく各部を制御する。
ROM202は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。ROM202は、上記のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムを記憶する。ROM202は、CPU201が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを記憶する場合もある。
RAM203は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。RAM203は、CPU201が処理を実行する上で必要なデータを記憶する。またRAM203は、CPU201によって情報が適宜書き換えられるワークエリアとしても利用される。ワークエリアは、印刷データが展開される画像メモリを含む。
操作パネル204は、操作部と表示部とを有する。操作部は、電源キー、用紙フィードキー、エラー解除キー等のファンクションキーを配置したものである。表示部は、プリンタ200の種々の状態を表示可能なものである。
通信インターフェース205は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続されるクライアント端末から印刷データを受信する。通信インターフェース205は、例えばプリンタ200にエラーが発生したとき、エラーを通知する信号をクライアント端末に送信する。
モータ駆動回路207は、搬送モータ206の駆動を制御する。搬送モータ206は、印刷用紙などの記録媒体を搬送する搬送機構の駆動源として機能する。搬送モータ206が駆動すると、搬送機構が記録媒体の搬送を開始する。搬送機構は、記録媒体をヘッド100による印刷位置まで搬送する。搬送機構は、印刷を終えた記録媒体を図示しない排出口からプリンタ200の外部に排出する。
ポンプ駆動回路209は、ポンプ208の駆動を制御する。ポンプ208が駆動すると、図示しないインクタンク内のインクがヘッド100に供給される。
ヘッド駆動回路101は、印刷データに基づきヘッド100のチャネル群102を駆動する。ヘッド駆動回路101は、図6に示すように、パターンジェネレータ1011、ロジック回路1012、バッファ回路1013及びスイッチ回路1014を含む。
パターンジェネレータ1011は、吐出当該波形、吐出両隣波形、非吐出当該波形、非吐出両隣波形等の波形パターンを生成する。パターンジェネレータ1011で生成された波形パターンのデータは、ロジック回路1012に供給される。
ロジック回路1012は、画像メモリから1ラインずつ読み出される印刷データの入力を受け付ける。印刷データが入力されると、ロジック回路1012は、ヘッド100の隣り合う3つのチャネルch.(i-1),ch.i,ch.(i+1)を1セットとし、その中央のチャネルch.iがインクを吐出する吐出チャネルなのか、インクを吐出しない非吐出チャネルなのかを決定する。そして、チャネルch.iが吐出チャネルの場合、ロジック回路1012は、このチャネルch.iに対して吐出当該波形のパターンデータを出力し、かつ、その両隣のチャネルch.(i-1),ch.(i+1)に対して吐出両隣波形のパターンデータを出力する。チャネルch.iが非吐出チャネルの場合、ロジック回路1012は、このチャネルch.iに対して非吐出当該波形のパターンデータを出力し、かつ、その両隣のチャネルch.(i-1),ch.(i+1)に対して非吐出両隣波形のパターンデータを出力する。ロジック回路1012から出力される各パターンデータは、バッファ回路1013に与えられる。
バッファ回路1013は、正電圧Vccの電源と負電圧−Vの電源とを接続する。またバッファ回路1013は、図7に示すように、ヘッド100のチャネルch.1,ch.2,…,ch.N毎にプリバッファPB1,PB2,…,PBNを備える。なお、図7では、隣り合う3つのチャネルch.(i-1),ch.i,ch.(i+1)にそれぞれ対応したプリバッファPB(i-1),PBi,PB(i+1)を示す。
各プリバッファPB1,PB2,…,PBNは、それぞれ第1〜第3の3つのバッファB1,B2,B3を有する。各バッファB1,B2,B3は、それぞれ正電圧Vccの電源と負電圧−Vの電源とに接続される。
各プリバッファPB1,PB2,…,PBNにおいて、第1〜第3のバッファB1,B2,B3の出力は、ロジック回路1012から供給される信号のレベルに応じて変化する。ロジック回路1012からは、対応するチャネルch.k(1≦k≦N)が吐出チャネルなのか、非吐出チャネルなのか、吐出チャネルまたは非吐出チャネルに隣接するチャネルなのかによってそれぞれ異なるレベルの信号が供給される。ハイレベル信号が供給された第1〜第3のバッファB1,B2,B3は、正電圧Vccレベルの信号を出力する。ローレベル信号が供給された第1〜第3のバッファB1,B2,B3は、負電圧−Vレベルの信号を出力する。
各プリバッファPB1,PB2,…,PBNの出力、すなわち第1〜第3のバッファB1,B2,B3の出力信号は、スイッチ回路1014に与えられる。
スイッチ回路1014は、正電圧Vccの電源と、正電圧+Vの電源と、負電圧−Vの電源とグラウンド電位GNDとを接続する。正電圧Vccは正電圧+Vよりも高い。その代表的な値としては、正電圧Vccが24ボルトであり、正電圧+Vが15ボルトである。この場合、負電圧−Vは−15ボルトである。
スイッチ回路1014は、図7に示すように、ヘッド100のチャネルch.1,ch.2,…,ch.N毎にドライバDR1,DR2,…,DRNを有する。なお、図7では、隣り合う3つのチャネルch.(i-1),ch.i,ch.(i+1)にそれぞれ対応したドライバDR (i-1),DRi,DR(i+1)を示す。
各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれPMOSタイプの電界効果トランジスタT1(以下、第1トランジスタT1と称する)と、NMOSタイプの2つの電界効果トランジスタT2,T3(以下、第2トランジスタT2,第3トランジスタT3と称する)とを含む。各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ正電圧Vの電源とグラウンド電位GNDとの間に、第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との直列回路を接続し、さらにこの第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との接続点と負電圧−Vの電源との間に、第3トランジスタT3を接続する。また各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ第1トランジスタT1のバックゲートを正電圧Vccの電源に接続し、第2トランジスタ及び第3トランジスタのバックゲートをそれぞれ負電圧−Vの電源に接続する。さらに各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ対応するプリバッファPB1,PB2,…,PBNの第1のバッファB1を第2トランジスタT2のゲートに接続し、第2のバッファB2を第1トランジスタT1のゲートに接続し、第3のバッファB3を第3トランジスタT3のゲートに接続する。そして各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との接続点の電位を、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4に印加する。
したがって、第1トランジスタT1は、第2のバッファB2から正電圧Vccレベルの信号が入力されるとオフし、負電圧−Vレベルの信号が入力されるとオンする。第2トランジスタT2は、第1のバッファB1から正電圧Vccレベルの信号が入力されるとオンし、負電圧−Vレベルの信号が入力されるとオフする。第3トランジスタT3は、第3のバッファB3から正電圧Vccレベルの信号が入力されるとオンし、負電圧−Vレベルの信号が入力されるとオフする。
このような構成のドライバDR1,DR2,…,DRNは、第1トランジスタT1がオンし、第2トランジスタT2と第3トランジスタT3とがオフすると、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4に正電圧Vを印加する。第1トランジスタT1と第3トランジスタT3とが同時にオフし、第2トランジスタT2がオンすると、ドライバDR1,DR2,…,DRNは、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4の電位をグラウンドGNDレベルとする。第1トランジスタT1と第2トランジスタT2とが同時にオフし、第3トランジスタT3がオンすると、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4に負電圧−Vを印加する。
次に、ヘッド駆動回路101からチャネル群102に供給される駆動パルス信号について説明する。はじめに、従来の駆動パルス信号について、図8,図9を用いて説明する。
図8は、3つの隣接するチャネルch.a、ch.b、ch.cのうち中央のチャネルch.bからインク滴を1滴吐出する場合に、各チャネルch.a、ch.b、ch.cに供給される駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを示している。すなわち駆動パルス信号Pbは、パターンジェネレータ1011で生成される第1の吐出当該波形のパターンデータに従った信号である。他の駆動パルス信号Pa及びPcは、パターンジェネレータ1011で生成される第1の吐出両隣波形のパターンデータに従った信号である。
期間Tは、インク滴を1滴吐出するのに必要な期間である。この期間内Tに、ヘッド駆動回路101は先ず、第1の時間t1だけ、中央のチャネルch.bに対して負電圧−Vが印加され、両隣のチャネルch.a,ch.cに対して正電圧+Vが印加されるように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(b)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bが拡張して、圧力室15bにインクが供給される。
続いてヘッド駆動回路101は、第2の時間t2だけ、各チャネルch.a,ch.b ch.cに印加される電圧がグラウンド電位GNDに戻るように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(a)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bの容積が定常状態に戻る。この容積変動により、圧力室15bの圧力が高まって、圧力室15bに連通したノズル8からインク滴が吐出される。
続いてヘッド駆動回路101は、第3の時間t3だけ、中央のチャネルch.bに対して正電圧+Vが印加され、両隣のチャネルch.a,ch.cに負電圧−Vが印加されるように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(c)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bが収縮する。この容積変動により、圧力室15bにおけるインク吐出後の圧力振動が抑制される。
その後、ヘッド駆動回路101は、各チャネルch.a,ch.b ch.cに印加される電圧がグラウンド電位GNDに戻るように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(a)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bの容積が定常状態に戻る。
図9は、図8に示した駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを各チャネルch.a,ch.b,ch.cに供給したときの一方の隔壁16bであるアクチュエータに生じる電界の変動と、圧力室15b内の圧力変動とを示す。因みに、他方の隔壁16aであるアクチュエータに生じる電界の向きは、隔壁16bであるアクチュエータに生じる電界の向きと正負が反転する。
図9に示すように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcの場合、第1の時間t1、いわゆる吐出パルスによってアクチュエータに生じる電界を“−E”としたとき、第3の時間t3、いわゆるダンピングパルスによってアクチュエータに生じる電界は“E”となる。
一方、圧力室15b内の圧力は、吐出パルスの終了時点で急激に上昇する。この圧力変動によって、圧力室15bに連通したノズル8からインク滴が吐出される。インク滴が吐出された後、圧力室15b内の圧力は、第2の時間t2の経過とともに負圧まで低下するが、ダンピングパルスの入力によって再び正圧まで上昇する。そして、ダンピングパルスの終了によって略ゼロに戻る。すなわち、圧力室15に生じた残留振動が抑制される。
次に、本実施形態の駆動パルス信号について、図10,図11を用いて説明する。
図10は、3つの隣接するチャネルch.a,ch.b,ch.cのうち中央のチャネルch.bからインク滴を1滴吐出する場合に、各チャネルch.a,ch.b,ch.cに供給される駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを示している。すなわち駆動パルス信号Pbは、パターンジェネレータ1011で生成される第1の吐出当該波形のパターンデータに従った信号である。他の駆動パルス信号Pa及びPcは、パターンジェネレータ1011で生成される第1の吐出両隣波形のパターンデータに従った信号である。
期間T’は、インク滴を1滴吐出するのに必要な期間である。この期間内T’に、ヘッド駆動回路101は先ず、第1の時間t1’だけ、中央のチャネルch.bに対して負電圧−Vが印加され、両隣のチャネルch.a,ch.cに対して正電圧+Vが印加されるように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(b)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bが拡張して、圧力室15bにインクが供給される。第1の時間t1’は、従来例における第1の時間t1と等しい。
続いてヘッド駆動回路101は、第2の時間t2’だけ、各チャネルch.a,ch.b,ch.cに印加される電圧がグラウンド電位GNDに戻るように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(a)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bの容積が定常状態に戻る。この容積変動により、圧力室15bの圧力が高まって、圧力室15bに連通したノズル8からインク滴が吐出される。第2の時間t2’は、従来例における第2の時間t2よりも短い。
続いてヘッド駆動回路101は、第3の時間t3’だけ、両隣のチャネルch.a,ch.cに負電圧−Vが印加され、中央のチャネルch.bではグラウンド電位GNDが維持されるように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(c)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bが収縮する。この容積変動により、圧力室15bにおけるインク吐出後の圧力振動が抑制される。第3の時間t3’は、従来例における第3の時間t3よりも長い。
その後、ヘッド駆動回路101は、各チャネルch.a,ch.b ch.cに印加される電圧がグラウンド電位GNDに戻るように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを出力する。この駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにより、図4の(a)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bの容積が定常状態に戻る。
図11は、図10に示した駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを各チャネルch.a,ch.b,ch.cに供給したときの一方の隔壁16bであるアクチュエータに生じる電界の変動と、圧力室15b内の圧力変動とを示す。因みに、他方の隔壁16aであるアクチュエータに生じる電界の向きは、隔壁16bであるアクチュエータに生じる電界の向きと正負が反転する。
図11に示すように、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcの場合、第1の時間t1’、いわゆる吐出パルスによってアクチュエータに生じる電界を“−E”としたとき、第3の時間t3’、いわゆるダンピングパルスによってアクチュエータに生じる電界は“E/2”となる。
一方、圧力室15b内の圧力は、吐出パルスの終了時点で急激に上昇する。この圧力変動によって、圧力室15bに連通したノズル8からインク滴が吐出される。インク滴が吐出された後、圧力室15b内の圧力は、第2の時間t2’の経過とともに負圧まで低下するが、ダンピングパルスの入力によって再び正圧まで上昇する。そして、ダンピングパルスが印加されている間、正負を繰り返し、ダンピングパルスの終了によって略ゼロに戻る。すなわち、圧力室15に生じた残留振動が抑制される。
このように、図10に示す駆動パルス信号Pa,Pb,Pcを用いることで、ダンピングパルスによってアクチュエータに生じる電界を“E/2”としても、圧力室15の残留振動抑制効果を得ることができる。
ここで、ダンピングパルスに生じる電界を“E”から“E/2”に減らすことによる効果について検証する。なお、この検証を行うにあたり、図8に示した従来の駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにおいて、第1の時間t1を1.6μsecとし、第2の時間t2を2.00μsecとし、第3の時間t3を0.73μsecとした。また、駆動電源Vを15[V]とー15[V]とし、駆動ノズル数を200本とした。一方、図10に示した本実施形態の駆動パルス信号Pa,Pb,Pcにおいては、第1の時間t1’を1.6μsecとし、第2の時間t2’を1.70μsecとし、第3の時間t3’を4.60μsecとした。駆動電源Vと、駆動ノズル数とは、従来と同様とした。そして、駆動電源Vからヘッド100の+V電源端子に流れる電流を正側の駆動電源電流とし、ヘッド100の−V電源端子から駆動電源−Vに流れる電流を負側の駆動電源電流とした。
従来例の場合、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcが出力されるのに十分な時間内の正側の駆動電源電流の平均電流は535mAであり、負側の駆動電源電流の平均電流は612mAであった。これに対し、本実施形態の場合、駆動パルス信号Pa,Pb,Pcが出力されるのに十分な時間内の正側の駆動電源電流の平均電流は270mAであり、負側の駆動電源電流の平均電流は488mAであった。
このように、ダンピングパルスの電界を“E”としたときと比べて、“E/2”としたときには、静電容量に充電する電圧が半分になるため、充電電流を削減することができる。また、ダンピングパルスの幅は広がるものの、容量性負荷の駆動に対しては不都合がない。したがって、高速動作よりも消費電力低減を目的としたインクジェットプリンタにおいては、大変効果的である。
なお、前記実施形態では、前記インク滴の吐出に係る時間に前記アクチュエータに印加される電界を“E”としたとき、前記インク滴の吐出に係らない時間に前記アクチュエータに印加される電界が“E/2”となる前記駆動パルス信号を前記アクチュエータに出力したが、前記インク滴の吐出に係らない時間に前記アクチュエータに印加される電界は“E/2”に限定されるものではない。この電界が“E”より小さければ、消費電力削減の効果を奏し得るので、適用可能である。
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
8…ノズル、15…圧力室、100…インクジェットヘッド、101…ヘッド駆動回路、200…インクジェットプリンタ、201…CPU、206…搬送モータ、208…ポンプ、1011…パターンジェネレータ、1012…ロジック回路、1013……バッファ回路、1014…スイッチ回路。
Claims (5)
- インクが充填される圧力室と、
前記圧力室に連通するノズルと、
前記圧力室内の容積を変化させて当該圧力室に連通する前記ノズルからインク滴を吐出させるアクチュエータと、
前記圧力室の容積を拡張させる拡張パルスと収縮させる収縮パルスとを含む駆動パルス信号を前記アクチュエータに出力し、前記インク滴の吐出に係る時間に前記アクチュエータに印加される電界よりも前記インク滴の吐出に係らない時間に前記アクチュエータに印加される電界の方が小さくなる前記駆動パルス信号を前記アクチュエータに出力する駆動回路と、
を具備するインクジェットヘッド。 - 前記インク滴の吐出に係る時間は、前記圧力室の容積を拡張させた後、定常状態に戻すことで前記インク滴を前記ノズルから吐出させる前記拡張パルスのパルス幅時間である請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 前記インク滴の吐出に係らない時間は、前記圧力室の容積を収縮させた後、定常状態に戻すことで前記圧力室に生じた残留振動を抑制する前記収縮パルスのバルス幅時間である請求項1または2記載のインクジェットヘッド。
- 前記駆動回路は、前記インク滴の吐出に係る時間に前記アクチュエータに印加される電界を“E”としたとき、前記インク滴の吐出に係らない時間に前記アクチュエータに印加される電界が“E/2”となる前記駆動パルス信号を前記アクチュエータに出力する請求項1乃至3のうちいずれか1に記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1乃至4のうちいずれか1に記載のインクジェットヘッドと、
インクタンク内のインクを前記インクジェットヘッドに供給するポンプと、
を具備するインクジェットプリンタ。
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