本発明におけるゴム組成物は、ゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び、特定のポリスルフィド化合物を含むものである。ゴム成分とシリカを含む配合において、低燃費性などの性能向上の効果が期待できるものの、加工性の低下が懸念されるメルカプト基を有するシランカップリング剤と、特定のポリスルフィド化合物とを配合することで、加工性が改善されると同時に、低燃費性、雪氷上性能、耐摩耗性の改善効果も発揮され、これらの性能バランスを相乗的に改善できる。すなわち、特定のポリスルフィド化合物を単独で配合した場合には、加工性、雪氷上性能、耐摩耗性が悪化し、低燃費性もほとんど改善できないにも関わらず、単独で配合した場合には加工性の悪化を招くメルカプト基を有するシランカップリング剤と共に配合することにより、ウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、加工性を改善でき、雪氷上性能、耐摩耗性、低燃費性においても足し合わせ以上の効果が得られる。
また、本発明におけるゴム組成物は、通常、硫黄、加硫促進剤などの加硫薬品(加硫剤及び加硫促進剤)以外の薬品を混練するベース練り工程と、該工程で得られた混練物に加硫薬品を添加して混練する仕上げ練り工程とをこの順に行って製造されるが、ここで本発明においては、上記ポリスルフィド化合物を仕上げ練り工程より前に行われるベース練り工程で混練するものである。これにより、加工性が劇的に向上するとともに、前記性能バランスをより顕著に改善することができる。
本発明の冬用空気入りタイヤは、このようにして得られるゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するものであるので、ウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、転がり抵抗(低燃費性)、雪氷上での制動力(雪氷上性能)、耐摩耗性をバランス良く改善したものとなる。また、未加硫ゴムの加工性が改善されているため、該タイヤを生産性良く製造できる。
上記ゴム成分は、ゴム成分100質量%中、ジエン系ゴムを40〜80質量%、ポリイソプレン系ゴムを20〜60質量%含むことが好ましい。また、更にジエン系ゴム及びポリイソプレン系ゴム以外のその他のゴム成分を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、ジエン系ゴムとは、ポリイソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムを意味する。上述の相乗的な改善効果は、ゴム成分としてポリイソプレン系ゴムを配合した場合に特に発揮されるものである。
上記ジエン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。40質量%未満であると雪氷上性能、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。80質量%を超えると加工性を担保できない傾向がある。
上記ポリイソプレン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。また、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。20質量%未満である場合、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。一方、60質量%を超える場合、加工性が悪化したり、耐摩耗性が悪化したり、充分な雪氷上性能が得られなかったりする傾向にある。
本発明においては、前記効果が充分に得られるという点から、ゴム成分100質量%中のジエン系ゴム及びポリイソプレン系ゴムの合計含有量が、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
上記ジエン系ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。これらの中でも、BR、SBRが好ましく、耐摩耗性、雪氷上性能、低燃費性、操縦安定性、ウェットグリップ性能の観点から、BRがより好ましい。
上記BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、JSR(株)製のBR51、T700、BR730等の高シス含有量のBR(高シスBR)や、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、ヒステリシスロスを低減して低燃費性を改善でき、また力学強度、操縦安定性の観点から高シスBRが好ましい。ここで、高シスBRのシス含有量は、95質量%以上が好ましい。また、上記SBRとしては、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)や、これらの変性SBRなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
上記ポリイソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)やポリイソプレンゴム(IR)などが挙げられる。NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。同様に、IRについても、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。ポリイソプレン系ゴムを配合することで、ゴムの硬度や強度が向上するとともに、混練り時のゴムの纏まりが良くなり、加工性を改善できる。上記ポリイソプレン系ゴムとしては、なかでも、NRが好ましい。
上記その他のゴム成分としては、例えば、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。
本発明におけるゴム成分としては、上述したもののうち、雪氷上性能、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び加工性をバランス良く改善できるという点から、NRとBRとを含む形態が好ましく、NRとBRとからなる形態、NR、BR及びSBRからなる形態がより好ましい。特に、ゴム成分がNRとBRとからなる形態であることは本発明の好適な実施形態の1つである。ゴム成分がNRとBRとを含む場合に、上述の相乗的な改善効果がより好適に得られる。
本発明におけるゴム組成物はシリカを含有する。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。使用できるシリカとしては、例えば、後述するシリカ(1)又は(2)として例示されるものを挙げることができる。シリカは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは20m2/g以上、より好ましくは30m2/g以上、更に好ましくは50m2/g以上、特に好ましくは100m2/g以上である。20m2/g未満では、補強効果が小さく、耐摩耗性や破壊強度が低下する傾向がある。また、操縦安定性やウェットグリップ性能も低下する傾向がある。シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは400m2/g以下、より好ましくは360m2/g以下、更に好ましくは300m2/g以下、特に好ましくは240m2/g以下である。400m2/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、低燃費性や加工性が悪化する傾向がある。一方で、シリカの窒素吸着比表面積が上記範囲内であれば、低燃費性及び加工性がバランス良く得られる。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましく、30質量部以上がより更に好ましく、45質量部以上が特に好ましい。最も好ましくは60質量部以上である。10質量部未満であると、シリカを配合した効果が充分に得られず、低燃費性、耐摩耗性、操縦安定性、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、シリカの含有量は、150質量部以下であることが好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下が更に好ましい。特に好ましくは75質量部以下、最も好ましくは70質量部以下である。150質量部を超えると、ゴム組成物中においてシリカが均一に分散することが困難となり、ゴム組成物の加工性が悪化するおそれがあり、また、低燃費性、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
本発明では、シリカとして、下記条件を満たすシリカ(1)及びシリカ(2)を併用してもよい。シリカ(1)とシリカ(2)とを併用することにより、転がり抵抗の低減と破壊強度の向上とを両立でき、また、加工性を更に顕著に向上させることができ、低燃費性、雪氷上性能も更に良好なものとなる。
シリカ(1)の窒素吸着比表面積(N2SA)は好ましくは125m2/g以下、より好ましくは100m2/g以下、更に好ましくは80m2/g以下、特に好ましくは60m2/g以下である。125m2/gを超えると、シリカ(2)とブレンドすることによる効果が小さい。また、シリカ(1)のN2SAは好ましくは20m2/g以上、より好ましくは30m2/g以上である。20m2/g未満では、得られるゴム組成物のゴムの硬度や破壊強度が低下する傾向がある。
シリカ(1)としては特に限定されず、たとえば、デグッサ社製のウルトラジル360、ローディア社製のZ40、ローディア社製のRP80などとして入手できる。
シリカ(1)としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ(1)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましい。5質量部未満では、転がり抵抗を充分に低減させられない傾向がある。また、シリカ(1)の含有量は70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。70質量部を超えると、転がり抵抗を低減させることはできても、加工性、ゴムの硬度や破壊強度が低下する傾向がある。
シリカ(2)の窒素吸着比表面積(N2SA)は好ましくは155m2/g以上、より好ましくは170m2/g以上、更に好ましくは180m2/g以上、特に好ましくは190m2/g以上である。155m2/g未満では、シリカ(1)とブレンドすることによる転がり抵抗の低減とウェットグリップ性能の向上との両立が充分とはならないおそれがある。また、シリカ(2)のN2SAは好ましくは400m2/g以下、より好ましくは360m2/g以下、更に好ましくは300m2/g以下、特に好ましくは240m2/g以下、最も好ましくは210m2/g以下である。400m2/gを超えると、加工性が悪化するだけでなく、転がり抵抗も充分に低減させられない傾向がある。
シリカ(2)としては特に限定されず、たとえば、ローディア社製のゼオシル1205MP、デグッサ社製のウルトラジルVN3−Gなどとして入手できる。
シリカ(2)としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ(2)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましい。5質量部未満では、充分な破壊強度が得られない傾向がある。また、シリカ(2)の含有量は70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、55質量部以下が更に好ましい。70質量部を超えると、破壊強度は向上しても、加工性が悪化する傾向がある。
シリカ(1)とシリカ(2)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上、最も好ましくは45質量部以上である。10質量部未満では、シリカ(1)とシリカ(2)をブレンドすることによる充分な補強効果が得られないおそれがある。また、シリカ(1)とシリカ(2)の合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。150質量部を超えると、ゴム組成物中において、シリカが均一に分散することが困難となり、ゴム組成物の加工性が悪化するだけでなく、転がり抵抗も増大するおそれがある。
シリカ(1)の含有量及びシリカ(2)の含有量は、以下の式を満たすことが好ましい。なお、ここで、シリカの含有量とは、ゴム成分100質量部に対する含有量(質量部)を意味する。
〔シリカ(1)の含有量〕×0.2≦〔シリカ(2)の含有量〕≦〔シリカ(1)の含有量〕×6.5
シリカ(2)の含有量は、シリカ(1)の含有量の0.2倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましい。0.2倍未満では、破壊強度が低下するおそれがある。また、シリカ(2)の含有量は、シリカ(1)の含有量の6.5倍以下が好ましく、4倍以下がより好ましく、2倍以下が更に好ましい。6.5倍を超えると、転がり抵抗が増大するおそれがある。
本発明におけるゴム組成物は、メルカプト基(−SH)を有するシランカップリング剤を含有する。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、下記式(1)で表される化合物、及び/又は、下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物を好適に使用できる。
上記式(1)中、R101〜R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は、−O−(R111−O)z−R112(z個のR111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、又は、炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは、1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R101〜R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
上記式(2)及び式(3)中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R201は、水素原子、ハロゲン原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は、該アルキル基の末端の水素原子が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R202は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。
以下、上記式(1)で表される化合物について説明する。
上記式(1)で表される化合物を使用することで、シリカが良好に分散し、本発明の効果が良好に得られ、特に、雪氷上性能、低燃費性をより顕著に改善できる。
R101〜R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は、−O−(R111−O)z−R112で表される基を表す。本発明の効果が良好に得られるという点から、R101〜R103は、少なくとも1つが−O−(R111−O)z−R112で表される基であることが好ましく、2つが−O−(R111−O)z−R112で表される基であり、かつ、1つが分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基であることがより好ましい。
R101〜R103の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基などがあげられる。
R101〜R103の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトシキ基、tert−ブトシキ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、へプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基などがあげられる。
R101〜R103の−O−(R111−O)z−R112において、R111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。
該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基などがあげられる。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基が好ましい。
R111の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。
R111の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。
R111の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。
R111の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などがあげられる。
zは1〜30(好ましくは2〜20、より好ましくは3〜7、さらに好ましくは5〜6)の整数を表す。
R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
R112の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などがあげられる。
R112の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基などがあげられる。
R112の炭素数6〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などがあげられる。
R112の炭素数7〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
−O−(R111−O)z−R112で表される基の具体例としては、例えば、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C12H25、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C14H29、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)3−C13H27、−O−(C2H4−O)4−C13H27、−O−(C2H4−O)6−C13H27、−O−(C2H4−O)7−C13H27などがあげられる。中でも、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)6−C13H27が好ましい。
R104の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、R111の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基をあげることができる。
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式で表される化合物(EVONIK−DEGUSSA社製のSi363)などがあげられ、下記式で表される化合物を好適に使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
次に、上記式(2)で示される結合単位Aと上記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物について説明する。
上記式(2)で示される結合単位Aと上記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物は、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
また、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C7H15部分が結合単位Bの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
上述した加工中の粘度上昇を抑制する効果や、スコーチ時間の短縮を抑制する効果を高めることができるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(2)、(3)と対応するユニットを形成していればよい。
R201のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などがあげられる。
R201の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R201の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R201の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R202の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R202の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R202の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
上記式(2)で示される結合単位Aと上記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C7H15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
上記式(2)で示される結合単位Aと上記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記メルカプト基を有するシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、特に好ましくは4質量部以上である。0.5質量部未満では、低燃費性などの改善効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは9質量部以下である。20質量部を超えると、ゴム強度、耐摩耗性が低下する傾向がある。
本発明においては、ゴム組成物は、上記メルカプト基を有するシランカップリング剤に加えて更にその他のシランカップリング剤を含有していてもよい。
上記その他のシランカップリング剤としては、例えば、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどが挙げられる。
本発明におけるゴム組成物は、下記式(I)及び/又は(II)で示されるポリスルフィド化合物を含有する。
上記式(I)中、R1は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基を表す。nは、2〜6の整数を表す。
上記式(II)中、R2は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基を表す。mは、2〜6の整数を表す。
上記式(I)において、R1は、置換基を有してもよい炭素数3〜15の1価の炭化水素基であるが、該炭素数は、好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10である。R1の1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基が好ましい。
R1としては、例えば、炭素数3〜15のアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基などが挙げられ、なかでも、アラルキル基、置換アラルキル基が好ましい。ここで、アルキル基としては、ブチル基、オクチル基;シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基;アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基;などが挙げられ、置換基としては、オキソ基(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アセチル基、アミド基、イミド基などの極性基などが挙げられる。
上記式(I)において、nは、2〜6の整数であるが、好ましくは2〜3、より好ましくは2である。
上記式(II)において、R2は、置換基を有してもよい炭素数3〜15の2価の炭化水素基であるが、該炭素数は、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜8である。R2の2価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましい。
R2としては、例えば、炭素数3〜15のアルキレン基、置換アルキレン基などが挙げられる。ここで、アルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基などが挙げられ、置換基としては、R1の置換基と同様のものなどが挙げられる。
上記式(II)において、mは、2〜6の整数であるが、好ましくは2〜3、より好ましくは2である。
上記式(I)、(II)で示されるポリスルフィド化合物の具体例としては、N,N′−ジ(γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−メチル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−エチル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−イソプロピル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−メトキシ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−エトキシ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−クロル−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−ニトロ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(5−アミノ−γ−ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−バレロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−メチル−δ−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−エチル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−イソプロピル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−メトキシ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−エトキシ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−クロル−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(δ−ニトロ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(3−アミノ−ε−カプロラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(ω−ヘプタラクタム)ジスルフィド、N,N′−ジ(ω−オクタラクタム)ジスルフィド、ジチオジカプロラクタム、モルホリン・ジスルフィド、N−benzyl−N−[(dibenzylamino)disulfanyl]phenylmethanamine(N,N′−ジチオビス(ジベンジルアミン))などが挙げられる。中でも、ジチオジカプロラクタム、N−benzyl−N−[(dibenzylamino)disulfanyl]phenylmethanamineが特に好ましい。
これらのポリスルフィド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリスルフィド化合物の含有量は、前記シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。0.5質量部未満では、良好な加工性を確保できず、前記性能バランスを充分に改善できないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは13質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えると、ゴム強度、加工性が低下する傾向にあり、コスト面でも望ましくない結果になる場合がある。
また、上記ポリスルフィド化合物の含有量は、メルカプト基を有するシランカップリング剤100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは250質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。下限未満である場合、上限を超える場合、前記と同様の傾向がある。
本発明におけるゴム組成物は、補強用充填剤としてシリカの他に、カーボンブラックを含有することが好ましい。シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤、特定のポリスルフィド化合物と共に、更にカーボンブラックを配合することにより、本発明の効果がより好適に得られる。使用できるカーボンブラックとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できるが、例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF、ECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT、MTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC、CCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイトなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、通常、5〜200m2/gであり、下限は50m2/gが好ましく、80m2/gがより好ましく、85m2/gが更に好ましい。一方、上限は150m2/gが好ましく、120m2/gがより好ましく、105m2/gが更に好ましい。また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、通常、5〜300ml/100gであり、下限は80ml/100gが好ましく、100ml/100gがより好ましく、110ml/100gが更に好ましい。一方、上限は180ml/100gが好ましく、140ml/100gがより好ましい。カーボンブラックのN2SAやDBP吸収量が上記範囲の下限未満では、補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、充分な操縦安定性が得られないおそれがある。また、上記範囲の上限を超えると、分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し低燃費性が低下する傾向があり、加工性が悪化するおそれがある。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定され、DBP吸収量は、JIS K 6217−4:2001に準拠して測定される。
カーボンブラックの市販品としては、東海カーボン社製のシースト6、シースト7HM、シーストKH、デグッサ社製のCK3、SpecialBlack4A、三菱化学社製のダイアブラックN339等を用いることができる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。また、充分な操縦安定性も得られないおそれがある。カーボンブラックの含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、更により好ましくは30質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。90質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
本発明におけるゴム組成物は、カーボン比率が40以上であることが好ましい。40未満であると、高荷重での耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該カーボン比率は、90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。90を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
なお、カーボン比率は、JIS K 6226−1:2003にて求められるカーボンブラック質量分率をA、灰分質量分率をBとし、下記式により算出される。
(カーボン比率)=A/(A+B)×100
本発明におけるゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは55質量部以上である。40質量部未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。該合計含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。200質量部を超えると、充分な低燃費性、加工性が得られないおそれがある。
本発明におけるゴム組成物がシリカ及びカーボンブラックを含む場合、上記性能バランスの観点から、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカの含有率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。また、95質量%以下が好ましい。
本発明におけるゴム組成物は、更に、軟化点が60〜120℃の固体樹脂を、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下含むことも好ましい。このような固体樹脂を所定量配合することにより、ウェットグリップ性能を更に向上させることが可能となる。これにより、フィラー量を減じた場合であっても良好なウェットグリップ性能が得られ、良好な雪氷上性能とウェットグリップ性能を高次元で両立できる。また、操縦安定性、耐摩耗性も改善できる。本発明におけるゴム組成物が上記固体樹脂を含む場合の含有量としては、ゴム成分100質量部に対して3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。本発明におけるゴム組成物が上記固体樹脂を含まない場合、充分なウェットグリップ性能、操縦安定性、耐摩耗性(特に、ウェットグリップ性能)が得られない場合がある。また、該含有量は、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。30質量部を超えると、低温領域におけるゴム組成物の弾性率が大幅に上昇し、雪上路面でのグリップ性能や寒冷地域でのウェットグリップ性能が悪化する傾向にある。
上記固体樹脂の軟化点としては、60℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。60℃未満では、充分なウェットグリップ性能改善効果が得られない場合がある。また、上記固体樹脂の軟化点は120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。120℃を超えると、高温領域での損失弾性率が大幅に上昇し、低燃費性能が悪化する傾向にある。
なお、固体樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
上記固体樹脂としては、軟化点が60〜120℃の範囲であれば特に限定されず、例えば、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られるα−メチルスチレン系樹脂等の芳香族ビニル重合体;樹脂の主鎖骨格を構成するモノマー成分としてクマロン及びインデンを含む樹脂であるクマロンインデン樹脂等のクマロン系樹脂;樹脂の主鎖骨格を構成するモノマー成分としてインデンを含む樹脂であるインデン樹脂等のインデン系樹脂;テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;ロジン系樹脂などが挙げられる。上記固体樹脂としては、中でも、未加硫時の粘着性や、低燃費性能が良好となることから、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、及び、これらの樹脂の誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、芳香族ビニル重合体がより好ましい。
上記芳香族ビニル重合体では、芳香族ビニル単量体(単位)として、スチレン、α−メチルスチレンが使用され、それぞれの単量体の単独重合体、両単量体の共重合体のいずれでもよい。上記芳香族ビニル重合体としては、経済的で、加工しやすく、ウェットグリップ性能に優れていることから、α−メチルスチレン若しくはスチレンの単独重合体又はα−メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
上記芳香族ビニル重合体としては、たとえばアリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85、SA100、SA120、SA140、イーストマンケミカル社製のR2336などの市販品を好適に用いることができる。
本発明におけるゴム組成物はまた、更に、ガラス転移温度が−40〜45℃の樹脂を、ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部含むことも好ましい。このような樹脂を所定量配合することにより、ウェットグリップ性能を更に向上させることが可能となる。また、幅広い温度領域でのグリップ性能、特に雪氷上性能、を改善でき、低燃費性能を維持したままゴム破壊強度、耐摩耗性を改善できる。本発明におけるゴム組成物が上記樹脂を含む場合の含有量としては、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。1質量部未満では、ウェットグリップ性能、ゴム破壊強度の充分な改善効果が得られない場合がある。また、該含有量は、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。30質量部を超えると、ゴム組成物の可塑が進行し、操縦安定性、ウェットグリップ性能が悪化する傾向にある。
上記樹脂のガラス転移温度としては、−40℃以上が好ましく、−20℃以上がより好ましい。−40℃未満では、可塑剤としての効果が際立つようになり、耐摩耗性が悪化する傾向にある。あるいは、充分なウェットグリップ性能の改善効果が得られない場合がある。また、上記樹脂のガラス転移温度は45℃以下が好ましい。45℃を超えると、損失弾性率が悪化し、低燃費性能が悪化する傾向にある。
なお、樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
上記樹脂としては、ガラス転移温度が−40〜45℃の範囲であれば特に限定されず、例えば、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られるα−メチルスチレン系樹脂等の芳香族ビニル重合体;樹脂の主鎖骨格を構成するモノマー成分としてクマロン及びインデンを含む樹脂であるクマロンインデン樹脂等のクマロン系樹脂;樹脂の主鎖骨格を構成するモノマー成分としてインデンを含む樹脂であるインデン樹脂等のインデン系樹脂;テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;ロジン系樹脂などが挙げられる。上記樹脂としては、中でも、未加硫時の粘着性や、低燃費性能が良好となることから、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、及び、これらの樹脂の誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、芳香族ビニル重合体がより好ましい。
上記芳香族ビニル重合体では、芳香族ビニル単量体(単位)として、スチレン、α−メチルスチレンが使用され、それぞれの単量体の単独重合体、両単量体の共重合体のいずれでもよい。上記芳香族ビニル重合体としては、経済的で、加工しやすく、ウェットグリップ性能に優れていることから、α−メチルスチレン若しくはスチレンの単独重合体又はα−メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
上記芳香族ビニル重合体としては、たとえばアリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85、SA100、SA120、SA140、イーストマンケミカル社製のR2336などの市販品を好適に用いることができる。
本発明におけるゴム組成物は、通常、仕上げ練り工程で添加、混練される加硫薬品を含む。加硫薬品としては、加硫剤、加硫促進剤が挙げられる。
加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄が挙げられる。
本発明におけるゴム組成物が硫黄を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。0.5質量部未満では、架橋が少なく、各種ゴム物性が悪化するおそれがある。また、該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下、特に好ましくは2.3質量部以下である。6.0質量部を超えると、ゴム強度が低下する傾向がある。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、加硫特性に優れる点から、スルフェンアミド系、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等が挙げられる。なかでも、CBSが好ましく、CBSとDPGを併用することがより好ましい。
本発明のゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上、特に好ましくは1.2質量部以上である。0.1質量部未満では、加硫開始時間が遅くなる傾向がある。また、該含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下である。5.0質量部を超えると、加硫速度が早く、加工中に焼け(スコーチ)が発生するおそれがある。
本発明におけるゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、そのような添加剤としては、ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;伸展油(オイル)、可塑剤、滑剤、ワックスなどの加工助剤;老化防止剤を例示することができる。
上記伸展油としては、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900〜1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850〜0.899)、パラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790〜0.849)などを挙げることができる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。これらの伸展油は、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
本発明におけるゴム組成物の製造方法としては、通常採用される製造方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫(架橋)する方法等により製造できる。ただし、本発明においては、加硫薬品の混練工程より前の工程において、前記ポリスルフィド化合物を混練する。このようにすることによって、加工性を向上させつつ、良好な雪氷上性能、低燃費性、耐摩耗性が得られるが、加硫薬品の混練工程時に前記ポリスルフィド化合物を混練すると、上記性能も低下し、特に充分な硬度が得られない。本発明におけるゴム組成物は、例えば、ゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤及び上記ポリスルフィド化合物を混練する工程1と、該工程1で得られた混練物及び加硫薬品を混練する工程2とを含む製造方法により好適に製造できる。この場合、加工性が劇的に改善されるとともに、低燃費性などの前記性能も顕著に改善される。
(工程1(ベース練り工程))
工程1では、前記ゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤及び上記ポリスルフィド化合物を混練する。混練方法としては特に限定されず、バンバリーミキサー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される混練機を使用できる。なお、ベース練り工程は1回でもよいが、添加剤を分割したり、練り増ししたりするなど、練り回数は特に限定されない。
工程1の混練温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下である。また、混練時間は特に限定されないが、通常30秒〜30分であり、好ましくは1〜30分間である。下限未満であると、シランカップリング剤とシリカの反応が充分に進まず、シリカを良好に分散させることができなくなり、ゴム物性の改善効果が小さくなる傾向がある。一方、上限を超えると、ムーニー粘度が上昇し、加工性が悪化する傾向がある。
本発明の効果が良好に得られるという点から、工程1で混練するゴム成分は、全量を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
(工程2(仕上げ練り工程))
工程1を行った後、工程1で得られた混練物を必要に応じて冷却して、更に加硫剤、加硫促進剤の加硫薬品を添加して混練し、未加硫ゴム組成物を得る。
工程2の混練温度は、通常100℃以下であり、室温(20℃)〜80℃が好ましい。100℃を超えると、ゴム焼け(スコーチ)が生じるおそれがある。工程2の混練時間は特に限定されないが、通常30秒以上であり、好ましくは1〜30分間である。
(工程3(加硫工程))
工程2で得られた未加硫ゴム組成物をプレス加硫など公知の方法で加硫することにより、加硫ゴム組成物が得られる。工程3の加硫温度は、本発明の効果が良好に得られるという点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
なお、適宜添加される配合材料(カーボンブラック、ステアリン酸、酸化亜鉛、伸展油、可塑剤、滑剤、ワックス、老化防止剤など)を混練する時期は特に限定されないが、工程1で混練することが好ましい。
上記加硫ゴム組成物は、ウェットグリップ性能、雪氷上性能、低燃費性、耐摩耗性や、未加硫時における加工性に優れており、これらの性能の顕著な改善効果を得ることができる。
本発明におけるゴム組成物は、タイヤの各部材に好適に用いることができ、特にトレッドに好適に用いることができる。
本発明の冬用空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッド(ベーストレッド及びキャップトレッドからなる2層のトレッドを含む)の形状に合わせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の冬用空気入りタイヤを製造できる。これにより、前述のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する冬用空気入りタイヤが得られる。
本発明の冬用空気入りタイヤは、スタッドレスタイヤ(特に、乗用車用)として好適に用いることができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:天然ゴムTSR20
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(高シスBR、シス含有量:97質量%)
シリカ1:デグッサ社製のウルトラジルVN3−G(N2SA:175m2/g)
シリカ2:デグッサ社製のウルトラジル360(N2SA:50m2/g)
シリカ3:ローディア社製のゼオシル1205MP(N2SA:200m2/g)
シランカップリング剤1:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位A及び結合単位Bを有する共重合体、上記式(2)〜(3)において、結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%)
シランカップリング剤3:EVONIK−DEGUSSA社製のSi363(下記式で表される化合物)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m2/g、DBP吸収量:124ml/100g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のX−140
α−メチルスチレン系樹脂:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:90℃、ガラス転移温度:43℃)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン3C(N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
ポリスルフィド化合物1:ジチオジカプロラクタム(三新化学社製、下記式で示される化合物)
ポリスルフィド化合物2:N−benzyl−N−[(dibenzylamino)disulfanyl]phenylmethanamine(Aldrich社製、下記式で示される化合物)
ポリスルフィド化合物3:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジベンゾチアゾリルジスルフィド)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:住友化学(株)製のソクシノールCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)
加硫促進剤2:住友化学(株)製のソクシノールD(ジフェニルグアニジン)
(実施例及び比較例)
(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、表1中のベース練りの項目に記載の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た(ベース練り工程)。次に、得られた混練り物に、表1中の仕上げ練りの項目に記載の材料を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た(仕上げ練り工程)。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成した後、170℃で12分間プレス加硫し、試験用冬用空気入りタイヤ(サイズ:195/65R15、DS−2パターン、スタッドレスタイヤ)を製造した。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物及び試験用冬用空気入りタイヤを使用して、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(加工性(ムーニー粘度))
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300に準拠したムーニー粘度を130℃で測定した。比較例1のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(加工性指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れ、タイヤ製造時の生産性に優れる。なお、指数100以上であれば、実用的に問題ない加工性といえる。
(加工性指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃で、加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定した。tanδの逆数の値について比較例1を100として指数表示した(低燃費性指数)。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、タイヤの低燃費性に優れることを示している。
なお、低燃費性指数は120以上であれば、低燃費性に特に優れているといえる。
(雪氷上性能)
上記試験用冬用空気入りタイヤを国産2000ccのFF車に装着し、下記条件下で雪氷上を実車走行し、雪氷上性能を評価した。
(氷上) (雪上)
試験場所 : 北海道名寄テストコ−ス 北海道名寄テストコース
気温 : −1〜−6℃ −2℃〜−10℃
雪氷上性能評価としては、上記車両を用いて雪氷上を走行し、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要した雪氷上の停止距離(制動停止距離)を測定した。そして、比較例1をリファレンスとして、下記式から計算し、指数表示した(雪氷上性能指数)。指数が大きいほど、雪氷上でのグリップ性能が良好である。なお、雪氷上性能指数は、105よりも大きければ、雪氷上性能に特に優れているといえる。
(雪氷上性能指数)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の制動停止距離)×100
(ウェット制動性能)
上記試験用冬用空気入りタイヤを国産2000ccのFF車の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求めた、結果は指数で表し、数値が大きいほどウェット制動性能(ウェットグリップ性能)が良好である。指数は次の式で求めた。
(ウェット制動性能指数)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の制動停止距離)×100
(耐摩耗性)
上記試験用冬用空気入りタイヤを国産FF車に装着し、8000km走行した後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し下記の式により指数化した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である。なお、耐摩耗性指数は、105以上であれば、耐摩耗性に特に優れているといえる。
(耐摩耗性指数)=(1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
表1の結果より、ゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び、特定のポリスルフィド化合物を含むゴム組成物であって、当該特定のポリスルフィド化合物を加硫薬品の混練工程より前の工程において混練して作製されるゴム組成物を用いた実施例では、ゴムの加工性を向上させつつ、ウェットグリップ性能を維持又は改善し、転がり抵抗(低燃費性)、雪氷上での制動力(雪氷上性能)、耐摩耗性を相乗的にバランス良く改善できることが明らかとなった。
比較例1、2、5と実施例1との比較により、シリカ配合系において、メルカプト基を有するシランカップリング剤、又は、特定のポリスルフィド化合物をそれぞれ単独で用いた場合に比べて、メルカプト基を有するシランカップリング剤と特定のポリスルフィド化合物とを併用した場合に、加工性、低燃費性、雪氷上性能、耐摩耗性の改善において、足し合わせ以上の改善効果が得られることが分かった。
また、ゴム成分、シリカ、メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び、上記式(I)及び/又は(II)で示されるポリスルフィド化合物に該当しないポリスルフィド化合物(ポリスルフィド化合物3)を含むゴム組成物を用いた比較例8が、実施例1、2に比べて、加工性が悪く、特に雪氷上性能、耐摩耗性に劣るものであることからも、上述した本発明の効果が、メルカプト基を有するシランカップリング剤と特定のポリスルフィド化合物とを併用することによって得られる特異的な相乗効果であることが分かる。