JP2016003980A - 試験装置及び恒温装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】恒温装置の試験室に被試験物を設置して引っ張り試験を実施する複合試験装置を改良するものであり、ロッド等が貫通孔内を移動する際に抵抗が小さく、且つ貫通孔の内部やその近傍に結氷や結露が生じ難い試験装置を開発する。【解決手段】恒温装置2のロッド挿通用貫通孔20,21の断熱領域側開口18は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開いている。ロッド挿通用貫通孔20,21の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の窒素ガスを供給する配管(気体供給部)28を有している。【選択図】図5

Description

本発明は、所望の環境下で材料試験等の試験を行う試験装置に関するものである。また本発明は、内部の試験室内で材料試験等を実施する恒温装置に関するものである。
金属素材やゴム等の基本特性を試験する材料試験装置が知られている。材料試験装置には、例えば引っ張り試験機、圧縮試験機、剪断試験機、硬さ試験機、衝撃試験機等がある。
引っ張り試験機は、一対の掴み具と、一方の掴み具を移動させる移動装置と、掴み具の移動量を検知する伸び量計と、引っ張り荷重を検知する荷重計を有するものである。引っ張り試験は、所定形状に成形された試料(被試験物)の両端を、前記した一対の掴み具で掴み、移動装置で一方の掴み具を他方から離れる方向に移動させる。そしてその間の試料の伸びを伸び量計で測定し、試料に掛かっている引っ張り荷重を荷重計で測定し、試料の応力・歪み線図等を作成するときの資料とする。
また低温環境下や高温環境下における素材の性能を試験する試験装置が知られている。 例えば引っ張り試験を行う装置であるならば、恒温装置を備え、恒温装置の試験室に被試験物を設置して引っ張り試験を実施するものである。以下、恒温装置を備える試験装置を通常の試験装置と区別するために「複合試験装置」と称する。
特許文献1に開示された恒温槽は、複合試験装置の構成部材として利用されるものであり、恒温槽の上部に掴み具等の試験治具を貫通させる貫通孔が設けられている。
複合試験装置の一つたる複合型の引っ張り試験装置は、恒温装置と、被試験物を引っ張る引っ張り装置によって構成されている。引っ張り装置は、前記した引っ張り試験機と同様に、一対の掴み具と、一方の掴み具を移動させる移動装置と、掴み具の移動量を検知する伸び量計と、荷重計を有するものである。
複合型の引っ張り試験装置で使用される引っ張り装置は、移動装置にロッドが設けられている。そしてロッドの先端に掴み具が取り付けられている。
複合型の引っ張り試験装置は、前記したロッドを恒温槽の貫通孔に挿通し、掴み具を恒温装置の試験室内に設置したものである。
複合型の引っ張り試験装置では、一対の掴み具はいずれも恒温装置の試験室内にあり、試験室内で試料が掴まれる。
そしてロッドを移動して試験室内で試料を引っ張り、その間の試料の伸びと試料に掛けられた荷重を測定する。
複合試験装置に使用される恒温装置には、前記した様にロッド等を挿通するための貫通孔が設けられている。
そのため貫通孔からの外気の進入や、貫通孔からの試験室内の空気の漏れを防止するため、ロッドの外周と、貫通孔の内壁の間に、シール部材が設けられている。
特開2000−314692号公報
引っ張り試験は、金属素材やゴム等の基本性能を試験するものとして広く普及しているが、近年、膜の様な薄い部材を引っ張り試験の対象とする要望がある。
例えば、近年盛んなエナジーデバイスであるリチウムイオンバッテリーの絶縁材や、燃料電池の発電膜等を引っ張り試験の対象とする事例が生じてきた。
リチウムイオンバッテリーの絶縁材や、燃料電池の発電膜等は、厚さが極めて薄いため、引っ張り試験に際して試料に掛ける引っ張り荷重は、極めて小さい。
そのため引っ張り試験に際してロッドを移動する際における、ロッドとシール部材の間の摺動抵抗を無視することができない。
例えば金属素材やゴム等を引っ張り試験する場合には、金属素材をJIS等で規格された大きさや形状に成形し、これを試験対象として試験を行う。そのため試験対象は、相当の断面積を有しており、破断に至るまでに掛ける引っ張り荷重は相当に大きい。
これに対してリチウムイオンバッテリーの絶縁材等は、破断に至るまでの応力はある程度あるものの、試料の断面積が小さいために、引っ張り試験に際して試料に掛ける荷重は極めて小さいものとなる。
そのためリチウムイオンバッテリーの絶縁材等を試験対象とする場合には、シール材の摺動抵抗を無視することができず、ロッドと貫通孔の内壁間のシール部材を外した状態で試験を行わざるを得ない。
しかしながら、ロッドと貫通孔の内壁間のシール部材を外した状態で引っ張り試験を行うと、数々の弊害が生じる。
そのうちの一つに結氷の問題がある。
即ちエナジーデバイスは、摂氏マイナス40度から摂氏プラス100度程度の温度幅で引っ張り試験を行う。例えば、摂氏マイナス40度で試験を行うと、試験室内の低温の空気が外部に漏れ、外の空気を冷却して結露し、さらに結氷させる。そのため低温環境下で試験を行うと、貫通孔の内部やその近傍が結氷する。
そのため従来技術の複合試験装置では、連続して引っ張り試験を実施することができない。即ち引っ張り試験は、一つの試料だけに対して実施することは稀であり、複数の試料を作成して連続的に試験を行い、平均値や標準偏差をとる場合が多い。
一回の引っ張り試験は短時間で終わるが、複数の試料を対象として引っ張り試験を行うにはある程度の時間が掛かる。そのため従来技術の複合試験装置では、試験の最中で作業を中断し、結氷を取り除く作業を行う必要があった。
また試料に一定の荷重をかけた状態で、耐久試験を行う場合がある。即ち、過酷な環境下に試料を晒した上で、試料に一定の引っ張り力等を負荷し、長時間放置してその変化を調べる。耐久試験を行う上で、試験期間の長短は、試験の信頼性に大きな影響を与える。しかしながら、従来技術の試験装置では、エナジーデバイス等に対してこの種の試験を実施することができない。
また従来技術の試験装置では、疲労試験についても、実施が困難である。
疲労試験は、試料に繰り返し応力を負荷して破断に至るまでの繰り返し回数を調べるものであり、一週間以上の期間を有することが普通である。従来技術の試験装置は、低温環境下における連続使用が困難であるから、低温環境下における疲労試験を実施することが困難である。
また燃料電池の発電膜等の耐久試験では、摂氏90度、湿度90パーセントといった、高温高湿環境で実施する場合があるが、従来技術の複合試験装置では、貫通孔から高温高湿の空気が漏れ、外気で冷やされて大量に結露が発生する。大量の結露は、装置の故障を誘発することとなる。
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、ロッド等が貫通孔内を移動する際に抵抗が小さく、且つ貫通孔の内部やその近傍に結氷や結露が生じにくく、長時間に渡って連続使用をすることが可能な試験装置(複合試験装置)を提供することを課題とする。また本発明は、複合試験装置に採用することが望ましい恒温装置を提供することを課題とする。
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、恒温装置と、被試験物に外力を与える外力付与装置を有し、前記恒温装置は、断熱壁で囲まれた断熱領域と、断熱領域の一部または全部であって所定の環境を形成することができる試験室と、断熱領域内と恒温装置外とを連通する貫通孔を有し、外力付与装置は、被試験物と接する作用部と、作用部を動作させる駆動部を有し、外力付与装置の作用部は試験室内にあり、駆動部は断熱領域の外にあり、外力付与装置の一部が前記貫通孔を貫通して駆動部と作用部がつながっている試験装置において、恒温装置は、空調機部を有し、試験室と空調機部の間で空気を循環させて試験室内を所望の環境に維持するものであり、前記貫通孔の断熱領域側は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開き、貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部を有していることを特徴とする試験装置である。
空調機部と試験室は、共通の筐体に収容されたものであってもよく、別々の筐体を有していてダクト等で接続されているものであってもよい。
本発明の試験装置は、恒温装置と外力付与装置を構成要件とするものであり、複合試験装置である。
恒温装置は、従来技術と同様に、断熱壁で囲まれた断熱領域と、断熱領域の一部または全部であって所定の環境を形成することができる試験室と、断熱領域の内外を連通する貫通孔を有している。
外力付与装置は、例えば掴み具の様な被試験物と接する作用部と、作用部を動作させる駆動部を有している。そして外力付与装置の作用部は試験室内にあり、駆動部は断熱領域の外にあり、外力付与装置の一部が恒温装置の貫通孔を貫通して駆動部と作用部がつながっている。
本発明の試験装置では、恒温装置に形成された貫通孔は、断熱領域側において、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開いている。また貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部を有している。
本発明の試験装置では、試験の最中に、気体供給部によって貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体が供給される。そのためロッド等と貫通孔の内壁との間の隙間が低露点の気体で満たされ、断熱領域と外部とが低露点の気体で遮蔽される。
また貫通孔は、断熱領域の内外を連通するものであるから、貫通孔は恒温装置の外側に開く外部側開口と、断熱領域側に開く断熱領域側開口がある。
貫通孔の内周側から貫通孔内に供給された気体は、貫通孔とロッド等の間の隙間を流れ、一部が外部側開口から大気開放される。そのため貫通孔の外部側開口の近傍は、低露点の気体雰囲気となる。従って、貫通孔の外部側開口の近傍には、結氷や結露が生じにくい。
また貫通孔の内周側から貫通孔内に供給された気体の残部は、断熱領域側開口から恒温装置の断熱領域に流れ込む。ここで貫通孔の断熱領域側は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開いている。そのため恒温装置の断熱領域に流れ込んだ気体は、被試験物設置領域には拡散せず、試験環境に影響を与えにくい。
請求項2に記載の発明は、空調機部は、試験室に空気を吹き込む空気吐出側と、試験室内の空気を吸引する空気吸引側を有し、断熱領域の一部に試験室が設けられ、試験室の外側に壁で仕切られた空気流通路があり、当該空気流通路は空調機部の空気吸引側に連通し、前記貫通孔は空気流通路内に開いていることを特徴とする請求項1に記載の試験装置である。
本発明の試験装置では、試験室の外側に壁で仕切られた空気流通路があり、空気流通路は空調機部の空気吸引側に連通している。そのため空気流通路内における空気の流れは、試験室側から空調機部側に流れる一方通行状態である。本発明の試験装置では、断熱領域の内外を連通する貫通孔は空気流通路内に開いている。そのため貫通孔の内周側から貫通孔内に供給された気体であって、恒温装置の断熱領域に流れこんだ気体は、空気流通路内の空気流に沿って進み、被試験物側には拡散せず、試験環境に影響を与えにくい。
請求項3に記載の発明は、貫通孔内には、貫通孔の軸線に対して垂直方向の断面積が他に比べて大きいサブチャンバー領域があり、前記低露点の気体が前記サブチャンバー領域に供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の試験装置である。
本発明の試験装置では、貫通孔の軸線に対して垂直方向の断面積が他に比べて大きいサブチャンバー領域がある。ここで貫通孔にはロッド等が挿通されるが、サブチャンバー領域は、他の部位に比べて貫通孔の軸線に対して垂直方向の断面積が大きいので、ロッド等の周囲に必ず空隙ができる。そして本発明では、サブチャンバー領域に低露点の気体が供給される。そのため少なくともサブチャンバー領域によって形成されるロッド等の周囲の空間は、低露点の気体で満たされ、断熱領域の内外がサブチャンバー領域内の低露点の空気で遮蔽される。従って、試験室内の空気が外に漏れたり、外気が試験室内に侵入することが防がれる。
また低露点の気体は、一旦サブチャンバー領域に入り、サブチャンバー領域内で圧力や流速が安定する。そして前記した気体は、その後に外部側や断熱領域側に流れるから、前記気体はロッド等の周囲に均等に流れ、ロッド等を前記気体で均一的に包み込むことができる。
請求項4に記載の発明は、断熱壁で囲まれた断熱領域と、断熱領域の一部または全部であって所定の環境を形成することができる試験室と、空調機部を有し、試験室と空調機部の間で空気を循環させて試験室内を所望の環境に維持する恒温装置であって、断熱領域内と恒温装置外とを連通する貫通孔を有する恒温装置において、前記貫通孔の断熱領域側は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開き、貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部を有していることを特徴とする恒温装置である。
本発明は、恒温装置に関する発明であり、複合試験装置の構成部材として使用されるものである。
本発明の恒温装置においても、断熱領域の内外が低露点の空気で遮蔽される。また本発明の恒温装置においても、貫通孔の内周側から貫通孔内に供給された低露点の気体が、外部側開口から大気開放される。そのため貫通孔の外部側開口の近傍は、低露点の気体雰囲気となる。
貫通孔の内周側から貫通孔内に供給された気体の残部は、断熱領域側開口から恒温装置の断熱領域に流れ込むが、この気体は、被試験物側には拡散せず、試験環境に影響を与えにくい。
請求項5に記載の発明は、断熱壁で囲まれた断熱領域と、断熱領域の一部または全部であって所定の環境を形成することができる試験室を有し、試験室と他の領域または他の装置との間で空気を循環させて試験室内を所望の環境に維持する恒温装置であって、断熱領域内と恒温装置外とを連通する貫通孔を有する恒温装置において、前記貫通孔の断熱領域側は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開き、貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部を有していることを特徴とする恒温装置である。
本発明の恒温装置についても、貫通孔が低露点の気体で満たされ、結氷や結露が生じ難い。
本発明の試験装置は、ロッド等が貫通孔内を移動する際の抵抗が小さい。そのため被試験物に掛かる荷重等を正確に検知することができる効果がある。また本発明の試験装置は、貫通孔の内部やその近傍に結氷や結露が生じ難く、長時間に渡って連続使用をすることができる。
本発明の恒温装置は、引っ張り装置等の外力付与装置と組み合わせることによって複合試験装置として使用することができる。そしてこの試験装置は、結氷や結露が生じにくく、長時間に渡って連続使用をすることができる。
本発明の実施形態の試験装置の斜視図であり、恒温装置の扉を閉じた状態における斜視図である。 図1に示す試験装置の斜視図であり、恒温装置の扉を開いた状態における斜視図である。 図1に示す試験装置の恒温装置本体の断面斜視図である。 図1に示す試験装置の恒温装置本体の内部の分解斜視図である。 図1に示す試験装置の恒温装置本体の縦断面図と、恒温装置本体に接続される空調機部の断面図である。 図1に示す試験装置の恒温装置本体を図5とは異なる方向から切断した断面図である。 図5に示す試験装置の恒温装置本体の天面部分の拡大断面図である。 図1に示す試験装置の恒温装置本体の天面部分の分解斜視図である。 図1に示す試験装置の恒温装置本体に、掴み具を入れた状態における図5と同じ方向からの断面図である。 図1に示す試験装置の恒温装置本体に、掴み具を入れた状態における図6と同じ方向からの断面図である。 本発明の他の実施形態の試験装置の断面図である。
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の試験装置1は、複合試験装置であり、より詳細には複合型の引っ張り試験装置である。
試験装置1は、恒温装置2と、外力付与装置3によって構成されている。また本実施形態で採用する恒温装置2は、恒温装置本体5と空調機部6が分離されており、それぞれ独立した装置となっている。
また本実施形態の試験装置1は、補助器材として外力付与装置載置台130と、恒温槽用架台131を有している。
恒温装置2の恒温装置本体5は、図3の様に断熱壁10で覆われた筐体であり、本体側筐体部7と、扉9を有している。
本体側筐体部7は、天面壁11、底面壁12、奥面壁13、左右側面壁15,16を有しており、前面側が開口している。そして本体側筐体部7の開口部分に扉9が取り付けられている。
そのため扉9を閉じることによって本体側筐体部7が閉空間となる。
恒温装置本体5内は、天面壁11、底面壁12、奥面壁13、左右側面壁15,16及び扉9で囲まれた断熱領域17となっている。
恒温装置本体5の本体側筐体部7には、外部と連通する部位が4か所に設けられている。
即ち天面壁11と底面壁12に、ロッド挿通用貫通孔20,21が設けられている。
また奥面壁13に空気吐出側貫通孔22と、空気吸引側貫通孔23が設けられている。
天面壁11に設けられたロッド挿通用貫通孔20は、図1乃至図3の様に、断面形状が円形の孔である。ロッド挿通用貫通孔20は、天面壁11に設けられたものであって鉛直方向に延び、その軸線は、後記する試験室8の中心線に略一致する。
ロッド挿通用貫通孔20は、天面壁11を貫通し、一方の開口は断熱領域17に開いている。またロッド挿通用貫通孔20の他方の開口は、恒温装置本体5の外に開いている。
即ちロッド挿通用貫通孔20には、断熱領域側開口18と、外部側開口26がある。
ロッド挿通用貫通孔20の特徴的構成として、中間部にロッド挿通用貫通孔20より断面積が大きいサブチャンバー領域27が設けられている。
サブチャンバー領域27は、図3,5,6,7の様に、断熱領域側開口18及び外部側開口26よりも内径が大きく作られている。サブチャンバー領域27の内径は、断熱領域側開口18及び外部側開口26の1.2倍から5倍程度の大きさがある。またサブチャンバー領域27の内径は、少なくとも断熱領域側開口18及び外部側開口26の小さい方の内径よりも1cm以上大きい。
サブチャンバー領域27の天地方向の長さは、天面壁11の厚さの6分の1から4分の3であり、より望ましくは、4分の1から2分の1である。本実施形態では、サブチャンバー領域27の天地方向の長さは、天面壁11の厚さの約3分の1である。サブチャンバー領域27の高さ方向の位置は、天面壁11の外側にやや寄った位置である。
尚、本実施例においてはサブチャンバー領域27以外の部分の内径は、いずれの部分についても同一である。以下の説明において、ロッド挿通用貫通孔20のサブチャンバー領域27以外の部分を小径部と称することがある。
天面壁11には、図5、図7の様に配管28が埋設されており、当該配管28の端部がサブチャンバー領域27内に開いている。配管28は、ロッド挿通用貫通孔20の内周側からロッド挿通用貫通孔20内に外気又は試験室8内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部である。
ロッド挿通用貫通孔20の具体的な構造は図8の様であり、本体側筐体部7の天面壁11の一部と後記する仕切り部材46の一部に切り欠き部30が設けられ、当該切り欠き部30にブロック状の嵌合片42が嵌め込まれたものである。
即ち切り欠き部30は、半円筒部31と、保持部33によって構成されている。保持部33は、略直方体形状の切り欠き部分である。半円筒部31は、保持部33の奥辺34の中央部をさらに切り欠いた部位であり、切り欠かれた部位の形状は、半円筒形状である。
また半円筒部31の内周には、他の部位に比べて内径が大きく成形されたサブチャンバー構成部35がある。
嵌合片42は、略直方体であり、前記した切り欠き部30の保持部33と合致する形状に成形されている。
そして嵌合片42の一辺側に、半円筒部36が設けられている。半円筒部36にはサブチャンバー構成部37(図3)が形成されている。
嵌合片42には仕切り部材46の一部を構成する板47が設けられている。嵌合片42は、切り欠き部30に嵌め込まれ、嵌合片42の半円筒部36と天面壁11側の半円筒部31が合致して円筒形のロッド挿通用貫通孔20が構成されている。
底面壁12に設けられたロッド挿通用貫通孔21の構造は、天面壁11に設けられたロッド挿通用貫通孔20と同一であり、底面壁12を貫通し、中間部にロッド挿通用貫通孔21より断面積が大きいサブチャンバー領域27が設けられている。底面壁12には、配管(気体供給部)28が埋設されており、当該配管28の端部がサブチャンバー領域27内に開いている。
ロッド挿通用貫通孔21の構造は、天面壁11に設けられたロッド挿通用貫通孔20と同一であるから、同一の部材に同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
次に奥面壁13に形成された空気吐出側貫通孔22と空気吸引側貫通孔23について説明する。
空気吐出側貫通孔22と空気吸引側貫通孔23は、空気を流通させるための孔であり、いずれも奥面壁13に大径の管38,39が挿通されて形成されている。
管38,39は、いずれも奥面壁13を貫通する。管38,39の断熱領域17側の開口端40,41は、奥面壁13と同一の平面にある。
これに対して管38,39の外部側の開口端43,45は、恒温装置本体5の背面側に突出している。
空気吐出側貫通孔22は、奥面壁13に設けられたものであって水平方向に延び、その軸線は、後記する試験室8の中心線と略直交する。
空気吸引側貫通孔23は、空気吐出側貫通孔22の真下にずれた位置に設けられている。
次に断熱領域17の内部構造について説明する。断熱領域17の内部には、仕切り部材46が設けられ、試験室8と、流路形成部55とに区切られている。
仕切り部材46の形状は、図3、図4の通りであり、天面対向部50と、奥面対向部51及び底面対向部52を有している。また仕切り部材46は、天面対向部50と底面対向部52の自由端側が外側に折り曲げられて末端封鎖部53が形成されている。
仕切り部材46は、断熱領域17の内壁と平行であって断熱領域17の内壁から一定の距離をおいた位置に設置されている。
即ち仕切り部材46の天面対向部50は、断熱領域17の天面壁11に対して一定の距離をおいて平行に対峙している。同様に、奥面対向部51は奥面壁13と対峙し、底面対向部52は底面壁12と対峙している。そして仕切り部材46の末端封鎖部53が、本体側筐体部7の開口辺に取り付けられている。
そのため断熱領域17の内壁と、仕切り部材46によって流路形成部55が形成されている。
仕切り部材46の天面対向部50と底面対向部52には、図3、図4の様に大孔56,57が設けられている。
大孔56,57の大きさは、前記したロッド挿通用貫通孔20,21と同等である。大孔56,57の中心軸線は、ロッド挿通用貫通孔20,21の中心軸線と一致する。即ちロッド挿通用貫通孔20と、大孔56,57と、ロッド挿通用貫通孔21の各軸線は、垂直であって一致する。
また仕切り部材46の天面対向部50と底面対向部52には通気用の小孔58が多数設けられている。天面対向部50と底面対向部52に設けられた通気用の小孔58は、天面対向部50と底面対向部52に一様に設けられている。なお本実施形態では、天面対向部50と底面対向部52がパンチングメタルで作られており、パンチングメタルの開口が通気用の小孔58として機能する。
仕切り部材46の奥面対向部51にも通気用の小孔60が設けられている。奥面対向部51に設けられた通気用の小孔60は、奥面対向部51の中心部に集中的に設けられている。
そして本体側筐体部7の空気吐出側貫通孔22と、仕切り部材46の奥面対向部51の小孔60が設けられた領域との間が、接続ダクト61で接続されている。接続ダクト61は外観形状がテーパー状であり、空気吐出側貫通孔22に接続される部位の内径が小さく、仕切り部材46に接続される側の内径は大きい。
空気吐出側貫通孔22と、奥面対向部51の小孔60が設けられた領域との間が、接続ダクト61で接続されているから、空気吐出側貫通孔22は、奥面対向部51の小孔60とのみ連通し、天面対向部50及び底面対向部52に設けられた通気用の小孔58とは連通しない。
逆に空気吸引側貫通孔23は、天面対向部50と底面対向部52に設けられた通気用の小孔58とのみ連通し、奥面対向部51の小孔60とは連通しない。
この様に本実施形態では、断熱領域17内であって試験室8の外側に流路形成部55があり、さらに流路形成部55は、接続ダクト61によって2系統の流路に分割されている。即ち流路形成部55は、図5に示すように空気吐出側貫通孔22から接続ダクト61を経て奥面対向部51の小孔60に繋がり、試験室8に至る往き側空気流通路110と、試験室8と連通する小孔58(天面対向部50及び底面対向部52に設けられた通気用の小孔58)と、空気吸引側貫通孔23とを繋ぐ戻り側空気流通路111に分かれている。
後記する様に、試験中においては、空気は、空気吐出側貫通孔22、接続ダクト61、小孔60を順次通過して試験室8に入り、試験室8から小孔58、流路形成部55(戻り側空気流通路111)、空気吸引側貫通孔23を順次通過して恒温装置本体5から排出される。そのため本実施形態の試験装置1では、戻り側空気流通路111は、試験室8に対して常に下流側となる。
次に空調機部6について説明する。空調機部6は、図5の様に、内部に一連の空気流路63を有している。空気流路63は、断熱壁64で覆われている。
本実施形態では、図面下側の開口が空気戻り口65であり、上側の開口が空気往き口66として機能する。そして空気流路63内には、空気戻り口65から順にプレクーラ67、メインクーラ68及び加熱器70が設置されている。また加熱器70と空気往き口66との間に送風機71が設けられている。
空調機部6は、空気戻り口65から空気を導入し、プレクーラ67、メインクーラ68及び加熱器70を通過させて空気を所定の温度に調整して空気往き口66から排出するものである。
次に外力付与装置3について説明する。
外力付与装置3は、引っ張り試験機である。外力付与装置3は、図2に示すように基台部72と、門型フレーム73を有している。
門型フレーム73には、図示しないガイドレールがあり、門型フレーム73のガイドレールに昇降桟(駆動部)75が係合している。
そして昇降桟75の下部に上ロッド76が設けられており、当該上ロッド76の先端に上側掴み具(作用部)77が設けられている。即ち駆動部たる昇降桟75に、上ロッド76を介して作用部たる上側掴み具77が取り付けられている。
また基台部72には、下ロッド78が設けられており、当該下ロッド78の先端に下側掴み具(作用部)79が設けられている。
外力付与装置3には、公知の引っ張り試験機と同様に、上側掴み具77を上方に移動させる移動装置と、掴み具の移動量を検知する伸び量計と、引っ張り荷重を検知する荷重計を有している(いずれも図示せず)。
次に補助器材について説明する。本実施形態の試験装置1は、補助器材として外力付与装置載置台130と、恒温槽用架台131を有している。
外力付与装置載置台130は、単なるテーブルであり、外力付与装置3を載せる載置板132と、載置板132を中空に支持する脚部133とを有している。
恒温槽用架台131は、台座部135と、テレスコピックガイド136を有している。台座部135は、略立法体であり、ある程度の重量を有している。
テレスコピックガイド136は、台座部135の上面に配されたものであり、2本の伸縮棹137a,137bが平行に設けられたものである。伸縮棹137a,137bは、固定側部材と可動側部材を有しており、固定側部材に対して可動側部が直線方向に移動可能である。従って伸縮棹137a,137bは、可動側部を移動させることによってその全長を伸縮させることができる。
テレスコピックガイド136は、各伸縮棹137a,137bの固定側部材が台座部135の上面に固定されている。そして伸縮棹137a,137bの全長を伸ばすと、可動側部が台座部135から片持ち状に張り出す。
次に試験装置1を構成する各部材間の関係について説明する。
本実施形態の試験装置1は、前記した様に恒温装置2と、外力付与装置3によって構成されており、さらに恒温装置2は、恒温装置本体5と空調機部6によって構成されている。
恒温装置2を構成する恒温装置本体5と空調機部6とは、図5の様に2本のダクト80,81によって接続されている。
即ち恒温装置本体5の空気吸引側貫通孔23を構成する管39と、空調機部6の空気戻り口65が、戻り側ダクト81によって接続されている。
また恒温装置本体5の空気吐出側貫通孔22を構成する管38と、空調機部6の空気往き口66が、往き側ダクト80によって接続されている。
そのため恒温装置本体5の断熱領域17と、空調機部6の空気流路63は、一連の循環流路を構成する。
また、往き側ダクト80を含む空気吐出側ダクト、戻り側ダクト81を含む空気吸引側ダクトには、それぞれ断熱材501,502が施工され、エネルギーロスが少なくなっている。
外力付与装置3は、図1、図2の様に、外力付与装置載置台130の載置板132上に載置されている。
恒温装置2の恒温装置本体5は、外力付与装置3の門型フレーム73に囲まれた空間に設置されている。
より詳細には、図1、図2の様に、外力付与装置3の背面側に恒温槽用架台131が配置されており、恒温槽用架台131のテレスコピックガイド136の可動側部によって恒温装置本体5が恒温槽用架台131の台座部135から張出した状態で支持されている。そして恒温装置本体5は、恒温槽用架台131のテレスコピックガイド136で片持ち状に支持され、外力付与装置3の門型フレーム73内に差し入れられている。
恒温装置本体5は、恒温槽用架台131によって中空に支持されて外力付与装置3の門型フレーム73内に配置されており、外力付与装置の基台部72とは接していない。
そして外力付与装置3の上ロッド76が、恒温装置本体5のロッド挿通用貫通孔20を貫通し、先端の上側掴み具77が、試験室8の中央に至っている。
より詳細には、上ロッド76は、恒温装置本体5のロッド挿通用貫通孔20と仕切り部材46の天面対向部50に設けられた大孔56を連通し、上側掴み具77が、奥面対向部51の小孔60の高さ近傍に至っている。
また外力付与装置3の下ロッド78が、恒温装置本体5のロッド挿通用貫通孔21を貫通し、先端の下側掴み具79が、試験室8の中央に至っている。
より詳細には、下ロッド78は、恒温装置本体5のロッド挿通用貫通孔21と仕切り部材46の底面対向部52に設けられた大孔57を連通し、下側掴み具79が、奥面対向部51の小孔60の高さ近傍に至っている。
本実施形態では、上側掴み具77と下側掴み具79で試料(被試験物)の両端が保持される。そのため試料は、試験室8内であって特に上側掴み具77と下側掴み具79の間の領域に設置されることとなる。従って本実施形態の試験装置1では、上側掴み具77と下側掴み具79の間の領域が、被試験物設置領域115となる。
また恒温装置本体5の天面壁11及び底面壁12に埋設された配管(気体供給部)28に、図示しない減圧弁と、開閉弁85を介して、窒素ボンベ86が接続されている。周知の通り、窒素ボンベ86から供給される窒素ガスは、露点が極めて低い。窒素ボンベ86から供給される窒素ガスの露点は、大気の露点よりも低く、さらに試験室8内の環境温度よりも低い。
次に、本実施形態の試験装置1の作用について説明する。
本実施形態の試験装置1を使用して引っ張り試験を行う場合は、試料(被試験物)を所定の形状に成形する。そして恒温装置本体5の扉9を開き、試料の両端を上側掴み具77と下側掴み具79で掴む。そして恒温装置本体5の扉9を閉じる。
その後、開閉弁85を開いて窒素ボンベ86から配管(気体供給部)28に窒素を供給し、配管28の末端からロッド挿通用貫通孔20,21のサブチャンバー領域27に窒素を導入する。
また空調機部6を起動して、所定の温度に調整された空気を試験室8に供給し、試験室8内を所定の温度環境に維持する。
そして外力付与装置3を起動し、上ロッド76を一定の速度で上昇させて試料(被試験物)に引っ張り荷重を掛け、破断する。そしてその間の試料の伸びと荷重の関係を記録する。
試験中における恒温装置2(恒温装置本体5と空調機部6)の空気の流れは、図5の矢印の通りである。即ち空調機部6の送風機71を起動することにより、恒温装置本体5の空気吸引側貫通孔23から戻り側ダクト81を経由して断熱領域17内の空気が空調機部6に導入される。そして空調機部6に導入された空気は、空調機部6の空気流路63を流れ、その間に所望の温度に調整される。そして調整後の空気が、往き側ダクト80を経由して、恒温装置本体5の空気吐出側貫通孔22に導入される。
ここで空気吐出側貫通孔22は、接続ダクト61で、直接的に仕切り部材46の奥面対向部51の小孔60が形成された部位に接続されている。即ち空気吐出側貫通孔22から接続ダクト61を経由して小孔60に繋がり、試験室8に至る往き側空気流通路110は、流路形成部55の他の領域から遮断された空気流路となっている。そのため空調機部6から恒温装置本体5に供給された空気は、仕切り部材46の奥面対向部51に設けられた小孔60からのみ試験室8内に供給される。
試験室8内には奥面対向部51に設けられた小孔60から次々と空気が供給されるので、試験室8内は高圧雰囲気となり、仕切り部材46の天面対向部50と底面対向部52に設けられた小孔58から、試験室8の外側に形成された流路形成部55に空気が流れ込む。ここで天面対向部50と底面対向部52に設けられた小孔58と連通する流路形成部55は、戻り側空気流通路111の一部であり、断熱領域17の奥面壁13に設けられた空気吸引側貫通孔23に連通している。また空気吸引側貫通孔23は、空調機部6の空気戻り口65に連通しており、当該空気戻り口65は、送風機71の機能によって負圧傾向となっている。
そのため小孔58から流路形成部55の戻り側空気流通路111に流れ込んだ空気は、その全てが空気吸引側貫通孔23側に向かって流れる。即ち流路形成部55(戻り側空気流通路111)内の空気の流れは、空気吸引側貫通孔23に向かう一方通行状態となる。
また試験中は、前記した様に、窒素ボンベ86からロッド挿通用貫通孔20,21のサブチャンバー領域27に窒素ガスが導入され続ける。即ち気体供給部たる配管28から、ロッド挿通用貫通孔20,21の内周側からロッド挿通用貫通孔20,21内に試験室8内の空気よりも低露点の気体が供給され続ける。
気体の供給量の目安は、断熱領域側開口18と、外部側開口26の双方から常にわずかずつ窒素ガスがオーバーフローする程度であり、ロッド挿通用貫通孔20,21の内径と、ロッドの径によって決まる。気体の供給量は、概ね3L/minから30L/min程度であり、通常は5L/minから15L/min程度である。
ここで上部側のロッド挿通用貫通孔20には、上ロッド76が挿通されているから、ロッド挿通用貫通孔20の小径部と、上ロッド76の外周部との間の隙間112は狭い。下部側のロッド挿通用貫通孔21についても同様であり、下ロッド78が挿通されているから、ロッド挿通用貫通孔21の小径部分と、下ロッド78の外周部との間の隙間112も狭い。
これに対して、サブチャンバー領域27は、内径が他の部位に比べて大きいから、サブチャンバー領域27が窒素ガスで満たされる。
そして窒素ガスは、上ロッド76及び下ロッド78と、ロッド挿通用貫通孔20,21の小径部の間の狭い空隙を流れ、一部は、ロッド挿通用貫通孔20,21の外部側開口26から外部に放出される。
なお窒素ガスは、埋設された配管28からある程度の流速をもってサブチャンバー領域27に供給されるが、サブチャンバー領域27には、上ロッド76及び下ロッド78との間に、配管28やロッド挿通用貫通孔20,21の他の領域に比べて大きな空間があるから、サブチャンバー領域27内において窒素ガスの動圧は消失し、サブチャンバー領域27内の圧力が均一化する。そして圧力が均一になった後に、窒素ガスがロッド76,ロッド78と、ロッド挿通用貫通孔20,21の小径部の間の隙間112に入る。そのため隙間112を流れる窒素ガスの流速が周方向に均一化する。
また上ロッド76及び下ロッド78の中心線と、ロッド挿通用貫通孔20,21の中心線は、必ずしも一致せず、上ロッド76及び下ロッド78がロッド挿通用貫通孔20,21に対して多少偏心している場合もあり、隙間112は周方向の位置によって一定ではないこともあるが、窒素ガスは動圧が消失して均圧化した後に、隙間112を流れるので、窒素ガスは、ロッド76,78の全周を取り巻いて流れる。
即ちサブチャンバー領域27が無い場合は、隙間112の広い部分にだけ窒素ガスが流れ、隙間112が狭い部分には窒素ガスが流れないことが懸念されるが、サブチャンバー領域27を設けることによって、ロッド76,78の全周を窒素ガスで包むことができる。
また窒素ガスの残部は、ロッド挿通用貫通孔20,21の断熱領域側開口18から断熱領域17に入る。ここでロッド挿通用貫通孔20,21の断熱領域側開口18は、試験室8の外側に形成された流路形成部55であって、戻り側空気流通路111内に開いている。また前記した様に流路形成部55内の空気の流れは、空気吸引側貫通孔23に向かう一方通行状態となっている。流路形成部55内には大きな空気の流れがあり、それに比べてロッド挿通用貫通孔20,21の断熱領域側開口18から入りこんで来る窒素の量は、極僅かである。
そのためロッド挿通用貫通孔20,21の断熱領域側開口18から断熱領域17に入った窒素ガスは、その全てが空気と共に空気吸引側貫通孔23に向かって流れ、試験室8側には流れないことが多い。
即ち試験中における恒温装置本体5内の空気の流れは、空気吐出側貫通孔22から接続ダクト61を経由して小孔60に至り、小孔60から、試験室8の中央の被試験物設置領域115に入る。さらに空気は、試験室8の中央の被試験物設置領域115から試験室8の天面対向部50側と底面対向部52側に分かれて流れ、通気用の小孔58に入り、戻り側空気流通路111に入る。さらに空気は、戻り側空気流通路111から空気吸引側貫通孔23に向かって流れ、恒温装置本体5から出てゆく。
この様に、戻り側空気流通路111は、試験室8に対して空気の流れ方向の下流である。少なくとも、戻り側空気流通路111は、試験室8の被試験物設置領域115から下流にあたる。そのためロッド挿通用貫通孔20,21の断熱領域側開口18から断熱領域17に入った窒素ガスは、試験室8側に流れ込まない。少なくとも試験室8の被試験物設置領域115には流れ込まない。そのためロッド挿通用貫通孔20,21の断熱領域側開口18から断熱領域17に入った窒素ガスは、試験室8、特に被試験物設置領域115の環境に影響与えない。
またロッド挿通用貫通孔20,21と上ロッド76及び下ロッド78の間の空隙は、窒素ガスが満たされている。特に、サブチャンバー領域27には、厚い窒素層がある。そのため断熱領域17と外部とは、窒素ガスによって遮蔽される。従って断熱領域17の空気が外に漏れにくい。また外の空気は、断熱領域17内に入り込み難い。
そのため仮に断熱領域17内の空気が極低温であったとしても、断熱領域17内の空気が直接外気と接触することはなく、外気を冷却することは少ない。そのため外気中の水蒸気を凝縮することは少なく、結露や結氷が発生しにくい。また外部側開口26の周囲には、少量ずつ窒素ガスがオーバーフローするので、外部側開口26は、低露点ガス雰囲気となり、結露や結氷が発生しにくい。
またボンベ86から供給される窒素は、断熱領域17側にも流れ込むことがあるが、ボンベ86から供給される窒素ガスは、露点が摂氏マイナス45度程度であって極めて低く、仮に断熱領域17が極低温であったとしても、結露や結氷が生じ難い。
また上ロッド76及び下ロッド78と、ロッド挿通用貫通孔20,21は、直接的に接触しない。そのため引っ張り試験の実施中は、上ロッド76又は下ロッド78が上又は下に移動するが、接触による抵抗は発生せず、荷重計は、試料に掛けられた引っ張り荷重を正確に検知することができる。
以上説明した実施形態では、恒温装置2は、恒温装置本体5と空調機部6が分離されており、それぞれ独立した装置となっている。しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、図11に示す試験装置90の様に、一つの断熱筐体91内に、空調機部92が内蔵された恒温装置88を採用してもよい。
図11に示す試験装置90で採用する恒温装置88では、断熱筐体91によって断熱領域93が形成されている。断熱筐体91の中央には仕切り箱95があり、仕切り箱95の内部が試験室96となっている。また試験室96を構成する仕切り箱95と、断熱領域93の内壁との間には空間があり、当該空間内に、加湿装置97と、冷却器98と、ヒータ100及び送風機101が設けられている。本実施形態では、これらの機器が内蔵された部位によって空調機部92が形成されている。
また送風機101の吐出口は、試験室96内に開いている。
仕切り箱95の天面対向部102と、底面対向部103には、前記した実施形態と同様に、大孔116が設けられている。また仕切り箱95の天面対向部102と、底面対向部103には、前記した実施形態と同様に、通気用の小孔117が多数設けられている。
本実施形態の試験装置90においても、恒温装置88の断熱筐体91の天面壁120と底面壁121に、ロッド挿通用貫通孔20,21が設けられている。ロッド挿通用貫通孔20,21の形状は、前記した実施形態と同一である。
上記した実施形態では、ロッドを挿通する貫通孔20,21を上下に2個設けた例を示したが、貫通孔は、天面壁又は底面壁のいずれかだけに設けられていてもよい。側面壁に貫通孔が設けられていてもよい。また3以上の貫通孔を有していてもよい。
上記した実施形態は、いずれも複合型の引っ張り試験機であるが、本発明は、引っ張り試験機に限定されるものではなく、圧縮試験機、剪断試験機、硬さ試験機、衝撃試験機等にも応用することができる。
本実施形態では、ロッド挿通用貫通孔20,21に窒素ボンベ86から窒素ガスを供給したが、露点の低い気体であれば必ずしも窒素ガスでなくてもよい。例えば、乾燥機によって含有する水蒸気を除去したり低下させた空気をロッド挿通用貫通孔20,21に供給してもよい。
気体の露点は、少なくとも外気よりも低いことが必要である。また気体の露点は、試験室8内の環境温度よりも低いことが望ましい。
上記した二つの恒温装置2、88の内、最初に説明した恒温装置2は、温度環境を調整する機能を持つが、湿度については調整する機能を持たない例を示している。これに対して後者の恒温装置88は、温度環境を調整する機能と湿度環境を調整する機能を有している例を示している。
本発明で採用可能な恒温装置は、上記のものに限定されず、温度と湿度のいずれか、もしくは両方を調整することができるものであればよい。
1 試験装置
2 恒温装置
3 外力付与装置
5 恒温装置本体
6 空調機部
7 本体側筐体部
8 試験室
10 断熱壁
17 断熱領域
18 断熱領域側開口
20,21 ロッド挿通用貫通孔
22 空気吐出側貫通孔
23 空気吸引側貫通孔
26 外部側開口
27 サブチャンバー領域
28 配管(気体供給部)
55 流路形成部
72 基台部
73 門型フレーム
75 昇降桟(駆動部)
76 上ロッド
77 上側掴み具(作用部)
78 下ロッド
79 下側掴み具(作用部)
88 恒温装置
115 被試験物設置領域

Claims (5)

  1. 恒温装置と、被試験物に外力を与える外力付与装置を有し、
    前記恒温装置は、断熱壁で囲まれた断熱領域と、断熱領域の一部または全部であって所定の環境を形成することができる試験室と、断熱領域内と恒温装置外とを連通する貫通孔を有し、
    外力付与装置は、被試験物と接する作用部と、作用部を動作させる駆動部を有し、外力付与装置の作用部は試験室内にあり、駆動部は断熱領域の外にあり、外力付与装置の一部が前記貫通孔を貫通して駆動部と作用部がつながっている試験装置において、
    恒温装置は、空調機部を有し、試験室と空調機部の間で空気を循環させて試験室内を所望の環境に維持するものであり、
    前記貫通孔の断熱領域側は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開き、
    貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部を有していることを特徴とする試験装置。
  2. 空調機部は、試験室に空気を吹き込む空気吐出側と、試験室内の空気を吸引する空気吸引側を有し、断熱領域の一部に試験室が設けられ、試験室の外側に壁で仕切られた空気流通路があり、当該空気流通路は空調機部の空気吸引側に連通し、前記貫通孔は空気流通路内に開いていることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
  3. 貫通孔内には、貫通孔の軸線に対して垂直方向の断面積が他に比べて大きいサブチャンバー領域があり、前記低露点の気体が前記サブチャンバー領域に供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の試験装置。
  4. 断熱壁で囲まれた断熱領域と、断熱領域の一部または全部であって所定の環境を形成することができる試験室と、空調機部を有し、試験室と空調機部の間で空気を循環させて試験室内を所望の環境に維持する恒温装置であって、断熱領域内と恒温装置外とを連通する貫通孔を有する恒温装置において、
    前記貫通孔の断熱領域側は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開き、
    貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部を有していることを特徴とする恒温装置。
  5. 断熱壁で囲まれた断熱領域と、断熱領域の一部または全部であって所定の環境を形成することができる試験室を有し、試験室と他の領域または他の装置との間で空気を循環させて試験室内を所望の環境に維持する恒温装置であって、断熱領域内と恒温装置外とを連通する貫通孔を有する恒温装置において、
    前記貫通孔の断熱領域側は、被試験物が設置される被試験物設置領域よりも、空気の流れ方向の下流側となる領域に開き、
    貫通孔の内周側から貫通孔内に外気又は試験室内の空気よりも低露点の気体を供給する気体供給部を有していることを特徴とする恒温装置。
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