JP2016003386A - 成膜ホルダ - Google Patents
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マスク成膜法は簡便でありプロセスコストが安いという利点があるが、マスクが基板から離間して密着性が低下し易い。このようにマスクが基板から浮いた状態でスパッタリング等による成膜を行うと、形成されたパターンに欠陥が発生し易くなり、このマスクの浮きという問題が解決されない限り微細なパターン形成には適さない。このため、微細なパターンを形成するため、マスクが基板から浮かないよう、マスクを成膜処理用マスクホルダに強力な磁力で吸着する必要がある。
また、特許文献2(特開平07−145481号公報)にはスパッタ装置に使用する基板ホルダ上に基板とマスク(磁性体)を順次積層配置した状態で、基板ホルダ内に埋め込まれた磁石を用いてマスクを吸引することにより、基板、及びマスクを基板ホルダ上に固定するようにした技術が開示されている。
何れの従来技術においても、基板ホルダ上に基板とマスクをセットする際の位置決め作業性が磁力によって低下することを避ける必要がある。このため、磁石からの磁力の影響のない離隔位置で基板上にマスクを位置決めしてセットした後で、マスクをセットし終わった基板を磁石を内蔵した基板ホルダ上に位置決め載置する作業手順となる。しかし、この場合も、基板ホルダに内蔵された磁石からの強い吸引力の影響により、基板と基板ホルダとの位置合わせに際しての微調整が難しくなる。
つまり、基板とマスクの位置決め時には磁石からの影響がないことが必要であり、磁石の影響を受けない場所で基板上にマスクをセットした後に、この基板をホルダ上にセットして磁石によるマスクの吸着を行うことになる。しかし、ホルダ側に磁石が配置された状態で基板を正確に位置決めする作業は磁力の影響を受けるために容易ではない。
即ち、図8は2つのプレートから構成した二層構造のホルダ上に、基板とマスクを位置合わせする手順を説明するための断面図である。
ホルダ100は、上面に基板110を載置する薄板、平板状、且つ非磁性体から成る第1プレート101と、上面に磁石115を収容する凹所106を有し、第1プレートの下面を支持する厚肉の非磁性体から成る第2プレート105と、を備えている。凹所106の深さは、各磁石115の高さ寸法とほぼ一致しており、各凹所106内に磁石115を収容した場合には第2プレート上面と各磁石上面とが面一となる。磁石の突出による段差が存在しない第2プレートの上面に第1プレートを配置することにより、ホルダ100の組付けが完了する。
このホルダ100上に基板110、及びマスク120を位置決めする場合には、まず磁石の磁力の影響のない場所で基板110上にマスク120を位置決めしてセットする。ホルダ100は、第1プレート101と、磁石115を保持した状態の第2プレート105とを分離しておき、磁石の影響のない場所で単体の第1プレートの上面にマスクをセットされた基板110を位置決めする。
次いで、基板110をセットした第1プレート101の下面に磁石115を保持した第2プレート105を組み付けることにより、磁力によってマスク120を吸引して基板を第1プレート上に位置決め固定する。これにより、マスク120は磁力により基板に対して強固な接触状態を保つ。成膜が完了した後はこの逆の手順で基板の取り外しを行う。
この応力によって第1プレートが変形すると、基板とマスクとの位置関係にずれが発生して位置精度に影響がでて成膜精度が低下するため、第1プレートはこの応力に耐えるに充分な強度を有した十分な材厚とする必要がある。
また、スパッタリング等による成膜工程で発生する基板への自由電子の流入による基板の過熱と、それに起因した成膜不良を効果的に防止するためには、ホルダの下面に冷却ステージを配置することによりマスク、及び基板の発熱をホルダを経由して冷却ステージ側に伝導する必要があるが、ホルダの厚さが大きい程、冷却ステージまでの伝熱距離が長くなって放熱効果が低下する。このため、放熱効果の上からもホルダは薄い方が好ましい。
なお、第1プレート101の適切な厚さは対象とする基板の面積、使用する磁石の磁力との相関によって一意に定義できないが、第1プレートを加工、研磨するプロセスを考慮すると、直径100mm以上の基板を支持するホルダでは、第1プレートの厚さは3mm程度が限界であり、磁力による反りを防止するためには3mmよりも薄くすることができないのが実情である。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、マスクを一面にセットした基板を一面に載置する第1プレートと、第1プレートの他面側に配置されて磁石を収容する凹所を有した第2プレートとから構成した磁石内蔵型の成膜ホルダにおいて、第1プレートの機械的強度を高めながらも磁石とマスクとの距離が拡大することを防止した成膜ホルダを提供することを目的としている。
請求項2に記載の成膜ホルダは、前記第1プレートと第2のプレートとは、前記第1凹所、及び前記第2凹所を除いた全ての対向面で接触していることを特徴とする。
請求項3に記載の成膜ホルダは、前記第2凹所は有底の止まり穴であり、該凹所の底部は前記第2プレートと一体化されていることを特徴とする。
請求項4に記載の成膜ホルダは、前記磁石は円筒体であることを特徴とする。
また、マスクからの入熱を第1プレートから第2プレートを介して効果的に放熱することが可能となる。
まず、成膜ホルダの全体構造について説明する。
図1(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る成膜ホルダの構成を示す平面図、右側面図、及びA−A断面図であり、図2はこの成膜ホルダの分解斜視図であり、図3は第1プレートの底面側斜視図である。
成膜ホルダ1は、例えば純銅により構成するが、純銅に限定されるわけではなく、アルミ等、他の金属素材で製作することもできる。
なお、基板50の形状は、図示した四角形に限らないが、本例では四角形の基板を一例として説明する。
第1プレート2、及び第2プレート10は、加工性と熱伝導性を考慮し純銅材で製作することが望ましい。また、第1プレート2と第2プレート10は、ネジ、その他の固定手段によって着脱自在に組み付けられる。
磁石30は、例えば、ネオジウムやサマリウムコバルト等の焼結マグネットであり、本例では柱体状である円柱として構成されている。磁石30は、円柱中実形状で直径4mm、高さ5mmの希土類マグネットを使用する。磁石の高さ寸法hは、ホルダ1の全体厚T1の範囲内に留めることがあることは勿論であるが、高さ寸法hが過小である場合には充分な磁力が確保できなくなるというデメリットがあり、過大である場合にはホルダ全体の重量が増大するデメリットがある一方で、磁力が増加するメリットが薄れる。
図4(a)及び(b)において吸着面までの距離Pとは、図1(c)における磁石の他端部30bとマスクの下面までの距離を意味する。
図4(c)(d)から明らかなように磁石の厚みCが10mmを越えると磁力の増加メリットが低下することが明らかである。
このため、磁石の厚さCの上限は10mmが適正であり、厚さの下限はホルダの全厚等、関連部材との寸法関係で決定されることとなるが、薄すぎる場合には磁力が著しく低下するため、3mm以上であることが必要である。
本実施形態では、ホルダ1の全体厚T1を10mmとしているため、磁石の厚さ(高さ)Cは、5mmとしている。
本例では第1プレート2側に設ける第1凹所5の深さを2mm、或いは2mm以上とすることにより第1凹所5内に磁石の突出部全体を収容することができると共に、第1凹所による開口部分を除いた第1プレートの下面(対向面)2bを、第2凹所による開口部分を除いた第2プレート10の一面(対向面)10aと広い範囲で密着させることができる。この結果、組み付け完了時の第1プレートと第2プレートとは、第1凹所、及び第2凹所を除いた全ての対向面で接触した状態となり、スパッタリング、その他の成膜方法による成膜時にマスクに発生する熱を第1プレートと第2プレートとの接触面から第2プレート下方に位置する図示しない冷却ステージへ向けて効果的に放熱させることが可能となる。
第1プレート2の全体厚さを3mm程度に厚くすることができた結果として、基板50をセットした第1プレート2の外周縁を保持具によって保持した状態で第2プレート10に対して組み付ける際に、磁石からの吸引力が作用しても第1プレートが反りを起こすことがなくなる。このため、ホルダ(第1プレート)と基板との位置決め決めに際しての位置ズレをなくして、成膜精度を高めることが可能となる。
なお、本実施形態では磁石を直接第2凹所内に収容する構成としたが、図示しない係止具を第2凹所内壁と磁石との間に介在させるタイプもある。本発明の成膜ホルダはこの係止具を用いるタイプにも適用することができる。
図5(b)に示したホルダ70では、第2プレート10に磁石を収容するための段付きの貫通穴71を形成しており、貫通穴の内壁に設けた段差部71aによって筒状の磁石30の底部を係止している。
磁石を収容するために第2プレート側に形成する穴を貫通穴71とするメリットは、ホルダ重量を軽量化できるという点にあるが、磁石の下部に位置する第2プレート部分の熱伝導性を高めるためには、ある程度以上の厚みを有した底部15aを備えている方がよい。即ち、第2プレートの底面に水冷式の冷却ステージ80を密着させた状態で成膜を行う場合には、第2プレートに貫通穴が形成されていない方がマスクと基板からの伝導熱をより効率的に放熱させることが可能となる。これは熱拡散が等方的に伝達することに起因している。
即ち、本実験では縦横サイズが20mmで、厚さが6.7mmの第2プレート10を用いた。図5(a)の本発明に係る第2プレート10は直径5.3mmで深さ4mmの第2凹所15を6個有し、図5(b)の比較例に係る第2プレート10は直径5.3の貫通穴71を6個有している。各第2プレートの表面からの熱流束を100W/m2とし、底面の定常温度を30℃とした実験において、本発明に係る第2プレートの最大表面温度が47.7℃であったのに対して、比較例に係る第2プレートの最大表面温度は48.7℃であった。
なお、ホルダ1は真空環境下で使用されるため、成膜工程中に生成されるガスによって磁石周辺に形成されるガス溜まりを排気する為に第2プレートの他所に形成する図示しない開口や、磁石脱着の利便性確保の為に第2プレートに形成する図示しない貫通穴は、磁石を収容するための凹所とは明らかに区別される。
図7(a)は上記各実施形態において用いた円筒状の磁石30を第2凹所15内に収容した状態を示しており、この例では縦横20mmの四角形の面積内に、直径5mmの磁石を1mm間隔でマトリクス状に配置している。各磁石の端面の面積は19.63mm2である。また、縦横20mmの部分の面積から6個の第2凹所15の合計面積を減じた接地面積(伝熱面積)は223.38mm2である。
図7(a)の円筒状の磁石を用いた例では、冷却ステージへの熱伝導経路となる接地面積を確保する必要からこれ以上磁石間の距離を接近させることができない。
図7(a)(b)何れの場合も、磁石30、30Aは、隣接する他の磁石と磁極が逆転するように配置される。このように磁極を設定すると、各磁石の端面のエッジ部(外周縁)間で高い密度の磁束が流れることとなり、この磁束ループがマスク60に作用して強い吸引力を発揮する。
また、磁石間の距離を接近させることによりマスク吸引力が高まることは明かである。
ここで図7(a)と(b)とを比較した場合、端面形状が四角い磁石30Aを用いた場合の磁石間隔は、端面形状が丸い磁石30を用いた場合の磁石間隔に比して広くなっているため、マスク吸引力が円筒状の磁石30に劣る。
このため、マスク吸引力よりも熱伝導面積の確保を優先する場合には図7(a)に示した円筒状の磁石を使用することが好ましい。
一方、熱伝導面積よりも、マスク吸引力を優先する場合には図7(c)の構成を採用すればよい。
第1の本発明に係る成膜ホルダ1は、磁力により吸引されるマスク60を一面(成膜面)に配置した成膜対象物である基板50の他面(非成膜面)を一面(ワーク支持面)で支持する第1プレート2と、第1プレート2の他面側に配置され、複数の磁石30を夫々収容する複数の第2凹所15を一面に備えた第2プレート10と、を備える。各第2凹所15は各磁石の一端30aを収容したときに第2プレートの一面10aより各磁石の他端30bを突出させる深さ(構成)を有し、第1プレート2の他面2bには各磁石の他端を夫々収容する複数の第1凹所5を備えていることを特徴とする。
ホルダに対しては、薄型化、軽量化が求められているが、一定以上の強度も必要である。磁石を内蔵したホルダとしては、成膜対象物を直接支持する第1プレートと、第1プレートの裏面側に着脱されて第1プレートとの間で磁石を収容する第2プレートとからなるものが知られている。第1プレートを可能な限り薄くすることによってマスクと磁石との距離を短縮して磁石による吸引力を高めることができる。しかし、第1プレートを薄くし過ぎると強度が低下して、第2プレートに対してセットする際に磁石からの磁力によって第1プレートが変形する。
このような二律背反の要請を同時に満たすために本発明では、第2プレートの内面に設けた第2凹所内に磁石を収容したときに磁石の端部が第2プレート内面から突出させるように構成し、更に磁石の突出した端部を第1プレートの内面に設けた第1凹所内に収容するようにした。
また、磁石の端部30a側は第2プレートの第2凹所15内に収容されるので、可能な限り使用する磁石の高さ寸法(厚さ)を増大させることも可能となり、必要充分な磁力を確保することが可能となる。
成膜中にマスクに発生した熱を伝達する経路として、第1プレートと第2プレートの接触面積の確保が重要である。接触面積を可能な限り広く確保することにより、成膜対象物の膜の温度の上昇を抑えることが可能となるからである。磁石が占有する面積(各凹所の合計面積)は伝熱経路として使えないが、これを除いた第1プレートと第2プレートの対向面を全て接触させることで、伝熱経路を最大限確保することが可能となる。換言すれば、第1プレートの第1凹所5の開口面積は磁石を収容するのに必要な最低限の面積とする。
即ち、スパッタリング等を用いたマスク成膜法では、例えば100℃程度の低温での成膜が理想的であるが、プラズマ内の自由電子は基板の成膜面に流入してジュール熱となって成膜面の温度を例えば200℃程度まで上昇させて成膜不良を発生させる要因となる。このような不具合を解消するためには、マスクで発生した熱をホルダを経由して冷却装置へ放熱させる必要がある。ホルダ内に上記の如き2つのプレート同志の接触面から成る伝熱経路を確保することにより、効果的な放熱を期待することができる。
成膜装置にはホルダを搭載する冷却ステージが備わっており、成膜中はホルダ底面と冷却ステージとは密着している。マスクからの入熱が第1プレートから第2プレートを経由しその底面から冷却ステージへ熱伝導する場合、第2プレートの磁石を配置する穴が有底であることにより、放熱効果をより高めることができる。
第2プレートの内面に設けた複数の円筒状の第2凹所内に円筒状の磁石を個別に収容した場合に、充分な放熱面積(第1プレートと第2プレートとの対向面積)を確保しつつ、必要充分な磁力を確保することが可能となる。
Claims (4)
- 磁力により吸引されるマスクを一面に配置した成膜対象物の他面を一面で支持する第1プレートと、前記第1プレートの他面側に配置され、複数の磁石を夫々収容する複数の第2凹所を一面に備えた第2プレートと、を備え、
前記各第2凹所は前記各磁石の一端を収容したときに前記第2プレートの一面より前記各磁石の他端を突出させる深さを有し、前記第1プレートの他面には前記各磁石の前記他端を夫々収容する複数の第1凹所を備えていることを特徴とする成膜ホルダ。 - 前記第1プレートと第2のプレートとは、前記第1凹所、及び前記第2凹所を除いた全ての対向面で接触していることを特徴とする請求項1に記載の成膜ホルダ。
- 前記第2凹所は有底の止まり穴であり、該凹所の底部は前記第2プレートと一体化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜ホルダ。
- 前記磁石は円筒体であることを特徴とする請求項1に記載の成膜ホルダ。
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