JP2016003237A - エマルジョンの製造方法 - Google Patents

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光夫 渋谷
博秋 五十嵐
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Abstract

【課題】保護コロイドとして含有されるPVA系樹脂の含有比率を高めた水中油滴型エマルジョンであっても、低粘度で優れたハンドリング性、塗工作業性を有するエマルジョンの製造方法を提供する【解決手段】 ポリビニルアルコール系樹脂及びビニル系モノマーの重合体を含有する水性エマルジョン(第1のエマルジョン)を湿式で解砕処理する工程を含み、前記第1のエマルジョンにおける前記重合体100重量部に対する前記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が5.5重量部以上である。【選択図】 なし

Description

本発明は、ビニル系ポリマー粒子を分散質とし、ポリビニルアルコール系樹脂を保護コロイドとして含む水中油滴型エマルジョンの製造方法に関する。
重合体粒子を分散質とし、界面活性剤を安定剤として用いた水中油滴型エマルジョンは、従来より機械安定性に乏しいという欠点が知られている。
このため、セメント、モルタル等の混和剤などの機械的安定性が必要とされる用途では、界面活性剤に代えてポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を分散剤として使用し、PVA系樹脂存在下で、分散質合成用モノマーを乳化重合してえられるエマルジョンが用いられている。
例えば、国際公開第2004/089993号(特許文献1)には、被膜強度、被膜透明性、及び機械的安定性に優れる(メタ)アクリル系エマルジョンとして、分散質合成用のアクリル系モノマー100重量部に対して、分散剤としてPVA系重合体1〜20重量部の存在下で、前記アクリル系モノマーを重合してえられるエマルジョンが開示されている。当該エマルジョンは、動的光散乱法(大塚電子(株)製のレーザーゼータ電位計ELS−8000)により測定された平均粒子径が0.5〜1.4μm、粒子径分布幅を示す尺度aが0.3以上であることが示されている(実施例の表1)。なお、実施例では、アクリル系モノマー100重量部に対して、PVA系重合体7.5重量部が用いられている。
また、特開2007−254712号公報(特許文献2)には、PVAの優れた保護力により静置保存時の粘度が安定した水性エマルジョンとして、(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体、及びジエン系単量体からなる群から選ばれた少なくとも1種以上のモノマーからなる重合体を分散質とし、グラフト化できる2種類のPVA系樹脂の組合せを分散剤として含む水性エマルジョンが提案されている。当該水性エマルジョンは、2種類のPVA樹脂水溶液中で、分散質合成用のモノマー混合物を重合することにより得られる。この水性エマルジョンの、HORIBA製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される分散粒子の平均粒径は、0.23〜0.56μmであることが示されている(実施例)。かかる水性エマルジョンにおいて、PVA系樹脂と分散質合成用モノマーとの含有量比率は、分散質合成用モノマー330gに対して、PVA系樹脂約13〜30g(分散質合成用モノマー100重量部あたりPVA系樹脂4〜9重量部に該当)である(実施例)。
このように、分散剤としてのPVA系樹脂存在下で分散質合成用モノマーを重合して得られる水性エマルジョンの場合、PVA系樹脂は、通常、分散質合成用モノマー100重量部あたり1〜10重量部程度含有される。保護コロイドとしてPVA系樹脂を含むエマルジョンについて、無機物に対する接着力の更なる向上、得られる被膜の耐熱性アップのために、分散剤として含有する量よりも多くPVA系樹脂を含有させたい場合がある。
例えば、国際公開第2009/008260号(特許文献3)には、セメントモルタル混和剤として使用した場合に、良好な流動性、作業性を示すことができるエマルジョンとして、平均ケン化度85モル%以上、平均重合度50〜3000で、側鎖1、2−ジオール結合を1〜15モル%有するPVA系樹脂を保護コロイドとし、アクリル系モノマー及びスチレン系モノマーの少なくとも1種と、特定の官能基含有モノマーとの共重合体を分散質とするエマルジョンが開示されている。
この水性エマルジョンは、分散質を構成する共重合体100重量部に対してPVA系樹脂を3〜20質量部含有する。
さらに、特開2004−249642号公報(特許文献4)には、シリカ等の無機充填剤に対するバインダー力に優れ、インク受理層の表面強度が高く、更にインクジェット記録用インクの吸収性や印刷特性に優れたコーティング組成物として、PVA系樹脂100重量部を含有する水溶液中で、(メタ)アクリル系モノマー30〜300重量部を重合して得られるエマルジョンが開示されている。
かかるコーティング組成物では、PVA系樹脂を、通常の分散助剤量よりも多量に配合することで、無機充填剤に対するバインダー力やコーティング層の各種物性を向上させている。
国際公開第2004/089993号 特開2007−254712号公報 国際公開第2009/008260号 特開2004−249642号公報
ところで、PVA系樹脂を保護コロイドとして含有する水中油滴型エマルジョンにおいて、各種物性を調整するためにPVA系樹脂を、分散剤として含有させる量よりも多く含有させた場合、PVA系樹脂の含有割合が高くなるほど、エマルジョンの粘度が高くなる傾向があることがわかった。
塗工作業性を確保するためには、エマルジョンの粘度を下げることが望まれる。
エマルジョンの粘度低減方法としては、分散媒を追加し、固形分濃度を低下させる方法が一般的である。しかしながら、固形分濃度を低減した接着剤、コーティング用エマルジョンは、何度も重ね塗りをする必要があり、生産効率の向上につながらないばかりか、塗膜の均一性の低下をもたらす原因ともなる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保護コロイドとして含有されるPVA系樹脂の含有比率を高めた水中油滴型エマルジョンであっても、低粘度で優れたハンドリング性、塗工作業性を有するエマルジョンの製造方法を提供することにある。
一般に分散質粒子の組成が同じ場合、流体粘度は固形分濃度に比例すると考えられている。そこで、エマルジョンの固形分濃度が変わらないにもかかわらず、固形分におけるPVA系樹脂の含有量比率の増大に伴って、粘度が高くなる原因について鋭意検討したところ、レーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定される粒径が増大していることがわかった。このことは、PVA系樹脂の含有量比率が上がると、分散質としてのポリマー粒子周囲に存在するPVA系樹脂鎖同士が絡み合いやすくなり、隣接する分散質ポリマー粒子の周囲に存在するPVA系樹脂鎖と絡み合った結果、分散質たるポリマー粒子を凝集させたことによるものではないかと考えた。
そこで、本発明者らは、エマルジョンの固形分濃度、分散質であるポリマー粒子と保護コロイドとしてのPVA系樹脂の含有量比率を変えなくても、エマルジョンの粘度を低減する方法として、凝集体を解砕することにより粘度を低減できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のエマルジョンの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂及びビニル系モノマーの重合体を含有する水性エマルジョン(第1のエマルジョン)を湿式で解砕処理する工程を含み、
前記第1のエマルジョンにおける前記重合体100重量部に対する前記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が5.5重量部以上である、エマルジョン(第2のエマルジョン)の製造方法である。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、下記式で表される側鎖1,2ジオール構造単位を有しているポリビニルアルコール系樹脂を含むことが好ましく、前記ビニル系モノマーは、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、及びニトリル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表す。
Figure 2016003237
前記解砕処理は、加圧した前記第1のエマルジョン同士を衝突、又は加圧した前記第1のエマルジョンにせん断力を生じさせることにより行われることが好ましく、前記加圧は、50MPa以上であることが好ましい。
前記第1のエマルジョンをレーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定して得られた平均粒子径(A)と、前記第2のエマルジョンをレーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定して得られた平均粒径(B)との比(B/A)が1未満であることが好ましい。
また、前記第1のエマルジョンにおけるレーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定される算術標準偏差を、前記レーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定された平均粒径で割った値(算術標準偏差/平均粒径=α値)が0.7以上の場合に、本発明の製造方法は特に効果的である。前記第1のエマルジョンにおける前記α値(α1)に対する、前記第2のエマルジョンにおける前記α値(α2)の比率(α2/α1)が1未満とすることができる。
またさらに、前記第1のエマルジョンの粘度(X)と前記第2のエマルジョンの粘度(Y)との比(Y/X)が1未満であることが好ましい。
なお、本明細書にいう「レーザー回折/散乱式粒度測定分布測定法により測定される粒径」は、具体的には、フラウンホーファー回折とミー散乱理論を用いたマルチ光学系を搭載した測定装置により測定される粒径は、エマルジョンに分散している粒子の粒径であって、分散質であるビニル系モノマーの重合体の一次粒子の粒径と同義でない。測定される粒径は、アグロメレイト(融解又は固結した粒子)又はアグリゲイト(付着性粒子の塊)で、非球形の場合には球形粒子であると仮定して測定される。したがって、当該測定方法により測定される粒径は、ビニル系ポリマー粒子が凝集した状態の粒子(凝集状態の粒子を「エマルジョン中の分散粒子」と称して、分散質であるビニル系ポリマー粒子の粒径と区別する)である。
また、本明細書において、アクリルとメタクリルを特段区別しない場合には、(メタ)アクリルと総称し、アクリレートとメタクリレートを特段区別しない場合には(メタ)アクリレートと総称する。
本発明のエマルジョンの製造方法によれば、保護コロイドとして含有するPVA系樹脂の含有量が多くても、ビニル系ポリマー粒子の凝集が抑制され、過度な粘度増大が抑制されたエマルジョンを製造することができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
<第1のエマルジョン(解砕処理前エマルジョン)>
解砕処理に供されるエマルジョン(「第1のエマルジョン」又は「解砕処理前エマルジョン」と称する)は、PVA系樹脂及びビニル系モノマーの重合体を含有する水性エマルジョンである。なお、本発明にいう水性エマルジョンとは、分散媒として水を主体として用いるエマルジョンをいう。
かかる水性エマルジョンは、通常、分散媒中にPVA系樹脂を溶解させたPVA系水溶液中に、ビニル系モノマーを分散させた後、乳化重合することにより得られるエマルジョンである。
このような第1のエマルジョンは、通常、乳化重合により得られたビニル系モノマーの重合体(「ビニル系ポリマー」という)粒子を分散質とし、PVA系樹脂を保護コロイドとして含有する水中油滴型エマルジョンとなっている。
PVA系樹脂の含有量は、前記ビニル系ポリマー100重量部あたり、5.5重量部以上、好ましくは5.7重量部以上、より好ましくは6重量部以上、さらに好ましくは10重量部超、特に好ましくは20重量部超である。PVA系樹脂をビニル系ポリマー量と同等量以上(PVA系ポリマー量/ビニル系ポリマー量=1.0以上)の場合であっても、適用可能であり、期待する効果を得ることができる。具体的には、前記ビニル系ポリマー100重量部あたり、PVA系樹脂の含有量は、通常500重量部以下であり、好ましくは400重量部以下、より好ましくは300重量部以下、さらに好ましくは200重量部以下である。
従来、乳化重合の分散剤としてPVA系樹脂を含有する場合、モノマー量100重量部あたり、PVA系樹脂5重量部程度以下が、重合反応系に含有される。しかしながら、水性エマルジョンの用途との関係で、例えば耐熱性や被膜強度の向上が求められているバインダー、セメント混和剤のように無機物との接着力が求められる用途に用いる場合、PVA系樹脂の含有量を、通常の分散剤として配合される量よりも多い量を含有させることになる。このような場合に、粘度が高くなる傾向があるため、粘度を下げたいという要求があると考えられる。
本願発明のエマルジョンの製造方法は、PVA系樹脂を、分散質としてのポリマー粒子と同等程度以上の量を含有する場合に生じるポリマー粒子の凝集体に起因する問題を解決するものであることから、原料となる第1エマルジョンとして、5.5重量部以上、含有するエマルジョンが好ましく用いられる。
以下、各成分について詳述する。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)
第1のエマルジョンに含有されるPVA系樹脂としては、特に限定しないが、ケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、85〜100モル%であり、特に90〜99.9モル%であることが好ましい。かかるケン化度が低すぎると、乳化重合時の重合安定性が極端に低下して分散粒子が安定したエマルジョンが得られにくい傾向がある。
また、平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常100〜4000であり、好ましくは200〜3500、より好ましくは250〜3000である。かかる平均重合度が低すぎると、PVA系樹脂の保護コロイド機能が低下する傾向があり、逆に高すぎると、重合反応溶液の粘度が高くなりすぎ、重合中に攪拌できず、重合困難となる傾向がある。
PVA系樹脂とは、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーの重合体のケン化物であって、水溶性を損なわない範囲で、他のビニル系モノマーが共重合されていてもよいビニルアルコール系樹脂である。
前記酢酸ビニルエステル以外のビニルエステル系モノマーとしては、例えばギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の通常、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステル;安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル;トリフロロ酢酸ビニル等のハロゲン含有脂肪族ビニルエステルなどが挙げられる。
前記共重合されていてもよいビニル系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタドデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基を有する化合物、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等のオキシアルキレン基を有するビニル系化合物が挙げられる。
第1エマルジョンに用いることができるPVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーの重合体、所望により共重合される上記ビニル系モノマーとの共重合体で、さらにはオキシアルキレンエーテル化、シアノエチル化、アセタール化、ウレタン化、エステル化、アセトアセチル化、スチルバゾリウム4級塩ペンダンド型等の、いわゆる「後変性」された変性PVA系樹脂、更にはメルカプタン等で末端修飾したものであってもよい。
第1エマルジョンに用いられるPVA系樹脂は、下記一般式(1)で示される側鎖1,2−ジオール単位を有するポリビニルアルコール(以下「側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂」という)を含むことが好ましい。側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂を含有することにより、分散質合成用のビニル系モノマーの重合安定性が向上するといった効果がある。
Figure 2016003237
上記一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表す。R〜Rは、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよい。該有機基としては特に限定しないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じてハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、結晶性の向上や非晶部におけるフリーボリューム(分子間空隙)低減の点から単結合であることが好ましい。上記結合鎖としては、特に限定しないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、−O−、−(CHO)m−、−(OCH)m−、−(CHO)mCH−、−CO−、−COCO−、−CO(CH)mCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等が挙げられる。Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である。なかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CHOCH−が好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、R〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である。すなわち、下記構造式(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
Figure 2016003237
側鎖1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常0.5〜15モル%であり、好ましくは1〜10モル%、より好ましくは1〜8モル%である。側鎖1,2−ジオール構造の含有率が高くなりすぎると、乳化重合安定性が低下する傾向にある。
なお、PVA系樹脂中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、ケン化度100%のPVA系樹脂の1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2−ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出すればよい。
(2)分散媒
水性エマルジョンである第1エマルジョンの分散媒は、通常、水である。所望により、水と混合可能な有機溶媒(例えば炭素数1〜3の低級アルコール等)を水と併用することも可能である。しかしながら、乳化重合に供するモノマーの分散性の点から、好ましくは水のみである。
(3)ビニル系ポリマー
第1エマルジョンの分散質として含有されるビニル系ポリマーは、エチレン性不飽和結合に由来するビニル系モノマーの1種又は2種以上を重合して得られる水不溶性の重合体であればよく、好ましくはアクリル系モノマー、スチレン系モノマー、及びニトリル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーの重合体または2種以上のモノマーの共重合体である。
水不溶性のビニル系ポリマーは、水溶性のPVA系樹脂が水を主体とした分散媒中に溶解したPVA水溶液中に、粒状に分散して存在する。以下、エマルジョン中に粒状で分散しているビニル系ポリマーを「ビニル系ポリマー粒子」と称する場合がある。
前記アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの脂肪族系(メタ)アクリレートや、フェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチルなどがあげられる。中でもアルキル基の炭素数が1〜18、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜8の脂肪族系(メタ)アクリレートが好適である。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体モノマー、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの芳香族置換ビニル化合物が挙げられる。好ましくはスチレン誘導体モノマーであり、特に好ましくはスチレンである。
ニトリル系モノマーとしては、α,β−不飽和ニトリル化合物が用いられる。具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー;シアン化ビニリデン等のシアノ基2置換ビニルモノマー;メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート等の不飽和基含有シアノアクリレートやテトラシアノキノジメタン、2,2−ジアリールマロノニトリル等が挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリル系モノマーが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロニトリルであり、特に好ましくはアクリロニトリルである。
これらのビニル系モノマーは、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ニトリル系モノマーの他、これらのモノマーと共重合体可能なビニル系モノマーを用いることもできる。例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、ウンデシレン酸等のモノカルボン酸モノマー、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸およびその無水物モノマー等の不飽和カルボン酸系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアミド;モノアルキルエステル;モノアミド類;アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミド、架橋性モノマー等を適宜用いることができる。
ビニル系ポリマーは、以上のようなビニル系モノマー又はビニル系モノマーの混合物を、PVA系樹脂の共存下、分散媒中で、乳化重合することにより得られる。
乳化重合は、i)水、PVA系樹脂及び重合触媒の存在下に、分散質合成用のビニル系モノマーを一時又は連続的に配合して、加熱、撹拌することにより乳化重合する方法;ii)分散質合成用ビニル系モノマーをPVA系樹脂の水溶液に混合分散させた分散液を調製し、この調製した分散液を、水、PVA系樹脂及び重合触媒が配合された系内に、一時又は連続的に配合して、加熱、撹拌して、乳化重合する方法等により行うことができる。
乳化重合は、1段階で行ってもよいし、2段階に分けて行ってもよい。2段階で行う場合、1段目と2段目でモノマー仕込み量(仕込み比率)を変えることにより、1段目で形成した内層と2段目で形成した外層のガラス転移点(Tg)を変えることも可能となる。具体的には、分散媒、分散剤を含有する反応容器に、重合しようとするモノマーの一部を仕込み、1段目の乳化重合を行った後、1段目の重合が終了した反応容器に、残りのモノマーを投入することにより2段目の重合反応を行ってもよい。
また、滴下するモノマー組成比を連続的に変えながら滴下するパワーフィード重合法を用いることも可能である。
必要に応じて、かかる工程の後に通常1〜6時間の追い込み重合を行うことも可能である。かかる重合中に重合触媒を投入してもよい。
(4)その他の成分
本発明で用いる第1のエマルジョンには、PVA系樹脂及びビニル系ポリマー粒子の他に、必要に応じて、乳化重合に用いられる添加剤、例えば、重合開始剤、重合調整剤、補助乳化剤、可塑剤、造膜助剤等を含有してもよい。
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;有機過酸化物、アゾ系開始剤、過酸化水素、ブチルパーオキサイド等の過酸化物;およびこれらと酸性亜硫酸ナトリウムやL−アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤等があげられる。
前記重合調整剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類などの連鎖移動剤;酢酸ソーダ、酢酸アンモニウム、第二リン酸ソーダ、クエン酸ソーダなどのバッファーなどがあげられる。
重合触媒としては、通常、乳化重合の分野で用いられる重合触媒を用いることができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、臭素酸カリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、過酸化水素−酒石酸、過酸化水素−鉄塩、過酸化水素−アスコルビン酸−鉄塩、過酸化水素−ロンガリット、過酸化水素−ロンガリット−鉄塩等の水溶性のレドックス系の重合触媒などが挙げられ、これらは単独で、又は2種以上混合して用いることができる。具体的には化薬アクゾ社製『カヤブチルB』や同社製『カヤブチルA−50C』等の有機過酸化物とレドックス系からなる触媒を用いることもできる。
また、PVA系樹脂以外の水溶性高分子をさらに含有してもよい。例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類;デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸又はその塩ポリメタクリル酸又はその塩;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド糖のアクリルアミド類;酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等不飽和酸との共重合体;スチレンと上記不飽和酸との共重合体;ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体;及び前記不飽和酸と各共重合体の塩類又はエステル類が挙げられる。
さらに、ビニル系ポリマーの合成工程において、PVA系樹脂による分散安定効果を阻害しない範囲で、非イオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤等の界面活性剤を系内に併存させてもよい。かかる界面活性剤の配合量は、通常乳化重合反応系の全体に対して通常10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン−アルキルエーテル型、ポリオキシエチレン−アルキルフェノール型、ポリオキシエチレン−多価アルコールエステル型、多価アルコールと脂肪酸とのエステル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコール硫酸塩、高級脂肪酸アルカリ塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等が挙げられる。
更に、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤等も併用され得る。
(5)第1のエマルジョンの特性(固形分濃度、成分含有量比率、粘度)
第1のエマルジョンの固形分含有量(不揮発分)は特に限定しないが、通常10〜60重量%であり、より好ましくは15〜58重量%であり、さらに好ましくは20〜55重量%であり、特に好ましくは35〜53重量%である。なお、エマルジョンの固形分は、ケットにより測定された値を採用する。
固形分におけるPVA系樹脂とビニル系ポリマーとの含有量比率(PVA/ビニル系ポリマー)は、最終的に得ようとするエマルジョン(第2エマルジョン)の固形分に対するPVA含有量比率に対応する。従って、第2エマルジョンの用途、所望の特性により異なるが、ビニル系ポリマー100重量部に対するPVA系樹脂の含有量は、通常5.5重量部以上、好ましくは5.7重量部以上、より好ましくは6重量部以上、さらに好ましくは10重量部超、特に好ましくは20重量部超である。通常、分散剤として配合される量よりも多い量を含有するエマルジョンにおいて、本発明の製造方法の効果が得られやすく、また固形分におけるPVA系樹脂の含有量を、ビニル系ポリマー100重量部に対するPVA系樹脂の含有量を5.5重量部以上とすることにより、塗膜の機械的強度、耐熱性、無機フィラーとの接着強度アップなど、PVA系樹脂による効果を得ることができる。ビニル系ポリマーと同等量以上にPVA系樹脂を含有する場合であっても適用可能であるが、好ましくは、ビニル系ポリマー100重量部に対するPVA系樹脂の含有量の上限は通常500重量部以下、好ましくは400重量部以下、より好ましくは300重量部以下、さらに好ましくは200重量部以下である。
第1のエマルジョンにおけるレーザー回折/散乱式粒度測定分布測定装置で測定される平均粒子径は、固形分濃度、分散質の種類、固形分におけるPVA系樹脂の含有量比率などにより異なるが、一般に、10nm以上で5μm以下であり、好ましくは10nm以上で3μm以下である。ここで、レーザー回折/散乱式粒度測定分布測定装置により測定される平均粒子径は、ビニル系ポリマー粒子がその周囲に存在するPVA系樹脂の作用により凝集した状態を、球形と仮定して測定される粒径である。通常、ビニル系ポリマー100重量部に対するPVA系樹脂の含有量が5.5重量部以上の場合に、凝集の程度が大きいと考えられるので、本発明のエマルジョンの製造方法、すなわち解砕処理を行うことに意義がある。
また、レーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定される粒径の算術標準偏差(μm)を、同方法で測定される平均粒径で割った値(算術標準偏差/平均粒径=変動係数)をα値として、前記第1のエマルジョンにおける粒径のα値(α1)は、特に限定しないが、一般に0.7以上である。かかる場合に、エマルジョン中に分散している凝集体に含まれるビニル系ポリマー粒子個数のばらつきが大きいと考えられるため、塗膜物性の安定性、向上の観点から、本発明のエマルジョンの製造方法、すなわち解砕処理を行うことに意義がある。
第1のエマルジョンの粘度は、不揮発分20%において、通常800mPa・s以上であり、好ましくは1000mPa・s以上である。なお、エマルジョンの粘度は、B型粘度計により測定された値を採用する。
<エマルジョンの製造方法>
本発明の製造方法は、上記のような第1のエマルジョンを湿式で解砕する工程を含むことを特徴とする。
ここで、解砕処理とは、第1のエマルジョン中の分散粒子を湿式で解砕する操作であり、加圧したエマルジョン同士を衝突させる方式(液−液衝突方式);ビーズ等のメディアを用いて、高速攪拌のせん断力を利用する方法(ビーズミル法);エアや窒素ガスなどの気体で加圧噴射された粒子同士を衝突させて微粒化する方法(ジェットミル法);エマルジョンを高圧に加圧し、スリットを抜ける際のせん断を利用する方法(スリット方式);加圧したエマルジョンを微細な流路を通過させ、このときの急激な圧力低下により発生するキャビティを広い流路に通過させることにより消滅させ、消滅時に発生する衝撃力で粒子、凝集体を破壊させるキャビテーションとせん断力を利用した方法(ホモゲナイザーを用いる方法);硬質体に加圧したエマルジョンを衝突させる方式(硬質体衝突方式)により行うことができる。
これらのうち、不純物の混入が少なく、噴射圧力によるポリマー粒子自体の粉砕の防止、粒度分布のバラツキが小さいといった観点から、液−液衝突方式、スリット方式、ホモジナイザー方式、硬質体衝突方式が好ましく用いられる。
このような解砕処理は、具体的には、加圧流体を衝突させるチャンバーや加圧流体にせん断力を生じさせるチャンバーを搭載した湿式微粒化装置を用いて行うことができる。
例えば、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社製)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン製)、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械株式会社製)、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)、スターバースト(スギノマシン製)などを用いて行うことができる。
以上のような湿式微粒化装置は、通常、粒子の粉砕、微粒化装置として知られている。本発明では、分散質であるビニル系ポリマー粒子の周囲を取り囲んでいるPVA系樹脂の分子鎖同士が絡み合うことにより、ビニル系ポリマー粒子が凝集した状態が、対向衝突する際に、または、急激に絞られた装置内の流路を通過する際に高い剪断力、さらにはキャビテーション崩壊に伴うエネルギーにより、PVA系樹脂の分子鎖の絡み合いをほどき、凝集体を解砕すると考えられる。
湿式微粒化装置による処理温度は、PVA系樹脂及び分散質ポリマー粒子の分解点などを考慮して、適宜好ましい範囲を選択することができる。
処理時の圧力、すなわち第1エマルジョンを加圧する圧力は、50MPa以上であることが好ましく、より好ましくは50〜300MPaであり、さらに好ましくは100〜280MPaであり、特に好ましくは100〜250MPaである。尚、チャンバー型高圧ホモジナイザーを用いる場合、第1のエマルジョンをチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に冷却器を通して冷却することが、解砕処理後の粒径保持の観点から好ましい。
湿式微粒化装置による解砕処理は、チャンバー内を1回通過させることにより行ってもよいし、複数回、通過させることにより行ってもよい。また、湿式微粒化装置による粉砕処理に、他の分散処理法、例えば超音波法などを組み合せてもよい。
解砕の程度、すなわち解砕後エマルジョンの平均粒子径は、粉砕処理時の圧力や湿式微粒化装置への水分散液の流量を調整することで制御できる。
<解砕処理後エマルジョン:第2のエマルジョン>
解砕処理して得られるエマルジョン(「解砕処理後エマルジョン」又は「第2エマルジョン」という)の組成(分散媒、分散質、保護コロイドとしてのPVA系樹脂、その他の添加剤、固形分濃度)は、第1のエマルジョンと同じである。
解砕処理後のエマルジョン(第2のエマルジョン)の特徴は、凝集体に含まれるビニル系ポリマー粒子の凝集個数が減少し、レーザー回折/散乱式粒度測定分布法で測定される粒径が解砕処理前(第1のエマルジョン)と比べて小さくなっていることである。解砕後エマルジョンでは、解砕操作により、PVA系樹脂分子鎖の絡み合いがほぐれ、凝集体サイズが小さくなったと考えられる。
また、個々の凝集体に含まれるポリマー粒子個数の減少に伴って凝集体サイズのばらつきが低減されることから、粒度分布に対応する標準偏差も、第1エマルジョンと比べて小さくなっている。
粒径、標準偏差の減少の程度は、第1のエマルジョンの組成、解砕処理条件等によって異なるが、第1のエマルジョンをレーザー回折/散乱式粒度測定分布法で測定して得られる平均粒径(A)に対する解砕処理後エマルジョンを同方法で測定して得られる平均粒径(B)の比(A/B)で、1未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下である。
具体的には、レーザー回折/散乱式粒度測定分布法で測定される平均粒径が、第1のエマルジョンの性質(固形分濃度、PVA含有量比、PVAの種類、分散質ポリマー粒子の組成など)及び解砕処理条件により異なるが、通常、5μm以下、好ましくは3μm以下である。
さらに、レーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定される、粒径の算術標準偏差(μm)を平均粒径で割った値(算術標準偏差/平均粒径=変動係数)をα値として、前記第1のエマルジョンにおける粒径のα値(α1)に対する前記第2のエマルジョンのα値(α2)の比(α2/α1)が1未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.35以下である。つまり、凝集体としてのばらつきが1/2以下、好ましくは1/3以下にできるということは、分散質の粒径の均一性、微分散性を向上できることを意味する。
また、解砕後エマルジョンは、第1エマルジョンと比べて粘度が減少している。粘度減少の程度は、分散質の種類、エマルジョンの固形分濃度、解砕条件により異なるが、解砕前エマルジョンの粘度(X)、解砕後エマルジョンの粘度(Y)の比(X/Y)で、1未満、好ましくは0.8未満、より好ましくは0.5以下である。
水性エマルジョンの解砕操作による粘度減少は驚くべきことである。通常、同じ固形分濃度のスラリーでは、分散質粒子の粒径が小さくなるほど、粘度が上昇する傾向にあると考えられるが、本発明では、凝集体の解砕による平均粒径の低減により、粘度が低下した。
以上のようにして得られるエマルジョン(第2のエマルジョン)は、保護コロイドとしてPVA系樹脂を含み、ビニル系ポリマー粒子が微細に分散した水中油滴型エマルジョンである。かかるエマルジョンは、接着剤や塗工液として用いた場合に、PVA系樹脂の含有量増大に基づく耐熱性、無機フィラーとの接着強度が増大しているだけでなく、ビニル系ポリマー粒子の微分散に基づき、被膜透明性の向上やフィラー分散性の向上といった物性の向上が期待できる。しかも、粘度が低減することにより、塗工作業性、ハンドリング性も満足できることから、耐熱性、機械的強度、無機フィラーとの接着強度アップが要求される分野で好ましく用いられる。具体的には、各種接着剤、粘着剤、リチウムイオン電池及びその他の電池に用いられる電極用又はセパレータ用コート剤、セメント混和剤、インクジェット記録紙に用いられるコート剤などとして好ましく用いることができる。
本発明のエマルジョン(第2エマルジョン)には、各種用途に応じて、さらに架橋剤、耐水化剤、顔料、分散剤、消泡剤、油剤、粘性改質剤、増粘剤、保水剤、繊維柔軟剤、平滑剤、帯電防止剤などの添加剤が、第1エマルジョンに添加されていない場合、必要に応じて後添加されてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
〔測定評価方法〕
はじめに、以下の実施例で採用した測定評価方法について説明する。
(1)エマルジョンの分散粒子の平均粒径及び粒径の変動係数(α値)
堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA‐950V2を用いて測定し、平均粒径(μm)、算術標準偏差(μm)を得た。得られた算術標準偏差(μm)を平均粒径で割った値(算術標準偏差/平均粒径=変動係数:α値)を算出した。
(2)粘度(mPa・s)
B型粘度計を用いて、回転数5rpm、10rpm、20rpmの場合について、粘度を測定した。
第1のエマルジョンと解砕処理後エマルジョン(第2エマルジョン)のそれぞれについて粘度を測定した。第1のエマルジョンの粘度(X)と第2エマルジョンの粘度(Y)の比(Y/X)を算出した。
〔第1のエマルジョンの調製〕
(1)第1エマルジョンNo.1
還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備え付けたセパラブルフラスコに、分散媒としての水860部、上記(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(ケン化度:99.0%、粘度平均重合度:1200、上記(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:3.0%)225部、酢酸ナトリウム0.69部を流し込み、撹拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温して、1時間かき混ぜた。
この温浴中に、1段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)5.3部及びアクリロニトリル(AN)12.3部、重合開始剤として亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.41部及び過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)2.34部を添加し、1段目の乳化重合を開始した。反応温度を75℃〜80℃に保持しながら、1時間重合を行った。
次に、2段目の乳化重合を行なった。1段階目の乳化重合を行った反応系の温度を75℃〜80℃の範囲に保ちながら、2段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)47.7部及びアクリロニトリル(AN)110.7部の混合モノマー溶液を、3時間半かけて滴下した。かかる滴下中に、過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)6.08部を14分割して15分毎に配合した。その後、温度を75℃に保ちながら、90分間重合を続けた。この間、過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)0.94部を2分割して45分毎に配合した。
2段目の乳化重合の後、反応温度を50℃まで低下させて、1時間追い込み重合を行った。かかる追い込み重合中はt−ブチルヒドロパーオキシ水溶液(2重量%)10部及びL−アスコルビン酸水溶液(3重量%)10部をそれぞれ2分割して30分毎に配合した。その後、室温まで冷却してエマルジョンを得た。かかるエマルジョンにおける固形分は30.4重量%であった。
(2)第1のエマルジョンNo.2
還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備え付けたセパラブルフラスコに、分散媒としての水860部、上記(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(ケン化度:99.0%、粘度平均重合度:1200、上記(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:3.0%)225部、酢酸ナトリウム0.69部を流し込み、撹拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温して、1時間かき混ぜた。
この温浴中に、1段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)9.7部及びスチレン(St)7.9部、重合開始剤として亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.41部及び過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)2.34部を添加し、1段目の乳化重合を開始した。反応温度を75℃〜80℃に保持しながら、1時間重合を行った。
次に、2段目の乳化重合を行なった。1段階目の乳化重合を行った反応系の温度を75℃〜80℃の範囲に保ちながら、2段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)87.3部及びスチレン(St)71.1部の混合モノマー溶液を、3時間半かけて滴下した。かかる滴下中に、過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)6.08部を14分割して15分毎に配合した。その後、温度を75℃に保ちながら、90分間重合を続けた。この間、過硫酸アンモニウム水溶液(5重量%)0.94部を2分割して45分毎に配合した。
2段目の乳化重合の後、反応温度を50℃まで低下させて、1時間追い込み重合を行った。かかる追い込み重合中はt−ブチルヒドロパーオキシ水溶液(2重量%)10部及びL−アスコルビン酸水溶液(3重量%)10部をそれぞれ2分割して30分毎に配合した。その後、室温まで冷却してエマルジョンを得た。かかるエマルジョンにおける固形分は30.4重量%であった。
(3)第1のエマルジョンNo.3
第1のエマルジョンNo.3は、PVA系樹脂として、側鎖1,2−ジオール構造単位の含有率が異なるPVA系樹脂(ケン化度:99.0%、粘度平均重合度:1200、上記(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6.0%)を用いた以外は、第1のエマルジョンNo.2と同様にして、ブチルアクリレート(BA)及びスチレン(St)を2段階で乳化重合することにより得られたエマルジョン(固形分は30.4重量%)である。
〔解砕処理〕
上記で調製した第1エマルジョンNo.1,2、3に水を追加して、固形分濃度20.0%に調整した後、解砕処理に供し、解砕処理後エマルジョン(第2のエマルジョン)を得た。解砕処理条件は以下のとおりである。
スギノマシン製の湿式微粒化装置「スターバースト」HJP−25003を用いた。当該装置は、加圧流体を噴射した際のキャビテーションや乱流を利用したシングルシングルノズルチャンバーを用いた。エマルジョンの加圧圧力200MPa、処理温度23℃で、チャンバー内を3回通過させることにより、解砕処理を行った。
第1のエマルジョン及び第2のエマルジョンについて、上記測定方法に基づき、粘度、平均粒径、算術標準偏差を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2016003237
表1から、エマルジョンNo.1,2,3のいずれも、解砕処理により粘度が低下し、平均粒径、α値が小さくなったことがわかる。具体的には、測定される平均粒径が1/2程度となり、粘度は1/2〜1/3程度にまで低下することができた。また、α値も1/3以下となり、本発明の製造方法により、PVA系樹脂を分散剤として通常、含有させる量よりも多い量を含有させた水性エマルジョンであっても、ビニル系ポリマーの微分散を達成できることがわかった。
本発明のエマルジョンの製造方法は、特定量以上のPVA系樹脂を保護コロイドとして含むエマルジョンのハンドリング性、塗工作業性を改善したい場合に、広範に利用できる。

Claims (9)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂及びビニル系モノマーの重合体を含有する水性エマルジョン(第1のエマルジョン)を湿式で解砕処理する工程を含み、
    前記第1のエマルジョンにおける前記重合体100重量部に対する前記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が5.5重量部以上である、エマルジョン(第2のエマルジョン)の製造方法。
  2. 前記ポリビニルアルコール系樹脂は、下記式で表される側鎖1,2ジオール構造単位を有しているポリビニルアルコール系樹脂を含む請求項1に記載のエマルジョンの製造方法。
    Figure 2016003237
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表す。)
  3. 前記ビニル系モノマーは、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、及びニトリル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のエマルジョンの製造方法。
  4. 前記解砕処理は、加圧した前記第1のエマルジョン同士を衝突、又は加圧した前記第1のエマルジョンにせん断力を生じさせることにより行われる請求項1〜3のいずれかに記載のエマルジョンの製造方法。
  5. 前記加圧は、50MPaである請求項4に記載のエマルジョンの製造方法。
  6. 前記第1のエマルジョンをレーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定して得られた平均粒径(A)と、前記第2のエマルジョンをレーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定して得られた平均粒径(B)との比(B/A)が1未満である請求項1〜5のいずれかに記載のエマルジョンの製造方法。
  7. 前記第1のエマルジョンにおけるレーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定される算術標準偏差を、前記レーザー回折/散乱式粒度測定分布法により測定された平均粒径で割った値(算術標準偏差/平均粒径=α値)が0.7以上である請求項1〜6のいずれかに記載のエマルジョンの製造方法。
  8. 前記第1のエマルジョンにおける前記α値(α1)に対する、前記第2のエマルジョンにおける前記α値(α2)の比率(α2/α1)が1未満である請求項1〜7のいずれかに記載のエマルジョンの製造方法。
  9. 前記第1のエマルジョンの粘度(X)と前記第2のエマルジョンの粘度(Y)との比(Y/X)が1未満である請求項1〜8のいずれかに記載のエマルジョンの製造方法。
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