JP2016001600A - 固体電池及びそれを用いた組電池。 - Google Patents

固体電池及びそれを用いた組電池。 Download PDF

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Abstract

【課題】外力による損傷の発生を抑制する固体電池及びそれを用いた組電池を提供する。【解決手段】固体電池の中央部の厚みを端部の厚みと比べ厚くすることで、力の加わる面の表面積が大きくなり、また、力が分散される。このため、衝撃による固体電池の損傷発生を防ぐことができる。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電池及びそれを用いた組電池に関する。
近年、携帯電話やスマートフォンに代表される情報端末やゲーム機等の民間用電子機器の電源、蓄電装置としてリチウムイオン二次電池は広く利用されている。一般的な非水系リチウムイオン二次電池は電解質として有機溶剤が用いられている。そのため予期せぬ衝撃により液漏れが発生する恐れがあり、より信頼性の高いリチウムイオン二次電池が望まれている。
より高信頼性のリチウムイオン電池として、電解質として有機溶剤の代わりに無機材料の固体電解質を用いた固体電池の研究開発が盛んに行われている。たとえば特許文献1に記載されているように有機溶剤を無機材料の固体電解質に置き換えることで液漏れの恐れはなくなり、高信頼性のリチウムイオン二次電池を得ることができる。
特開2013−239435号公報
しかしながら無機材料の固体電解質を用いた固体電池は可撓性に乏しく、運搬時や基板実装時の取扱い時に加わる外部からの衝撃、圧力によって破損する恐れがある。本発明は外力が加わることで生じる損傷を防ぐ固体電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の固体電池は第一の電極層と第二の電極層の間に固体電解質層を有する蓄電要素を一つ以上備えた蓄電素体を備え、蓄電素体の表面に樹脂層を有する固体電池において、固体電池の少なくとも一対の対向する面間は、固体電池の端部の厚みに対する固体電池の中央部の厚みの比が1.05以上かつ1.40以下となることを特徴とする。
かかる固体電池によれば、固体電池に衝撃の加わった際、その衝撃が与えられる面の表面積が大きくなるため固体電池へのダメージが少なくなる。これにより、固体電池の損傷を防止できる。
本発明にかかる固体電池は、さらに樹脂層の表面は、その一部が、固体電池の厚みの変化する一対の対向する面が、厚みが厚くなる方向に湾曲していることが好ましい。
かかる固体電池によれば、固体電池に衝撃が加わった際、その衝撃が加えられる面の面積が大きく、衝撃の伝わりが分散されるため固体電池へのダメージが少なく、損傷を防止できる。
本発明にかかる固体電池は、さらに樹脂層の表面のうち中央部が、固体電池の厚みが厚くなる方向に湾曲していることが好ましい。
かかる固体電池は、樹脂層の表面のうち中央部が湾曲していることで、より効率的に衝撃の伝わりを分散することができ、損傷発生をより確実に防止することができる。
本発明にかかる固体電池は、固体電池の厚みが厚くなる方向に屈曲する屈曲部を、樹脂層の表面に有することが好ましい。なお、屈曲とは固体電池の表面に対し鈍角に立ち上がる角部を有するものを示し、たとえば段差を有する状態を示す。
かかる固体電池は、固体電池の中央部に厚みを持たせることで、衝撃が加わる面の表面積が大きくなるため、固体電池へのダメージが少なく、損傷を防止できる。
本発明にかかる固体電池は、蓄電素体は直方体形状であり、少なくとも一対の対向する面のうち一方の面に垂直な方向で切断した断面を観察した時の角部が面取りされていることが好ましい。
角部の面取りをすることで、力が局所的に加わることを防ぎ、欠けや割れを防ぐことができる。
本発明にかかる組電池は、本発明にかかる固体電池を直列に複数並べて接続し、それをケースに収納することが好ましい。
熱の流れに方向性ができるので組電池にしたときの熱の分布ができにくく、また、電池の充放電による膨れにも対応できる。
本発明によれば外力が加わることで生じる損傷を防止する固体電池およびかかる固体電池を利用した組電池を提供することができる。
固体電池の模式断面図である。 固体電池の模式断面図である。 固体電池内部の蓄電要素の模式図である。 本発明にかかる固体電池を用いた組電池の模式図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(固体電池)
図1および図2は、本実施形態の一例にかかる固体電池20の概念的構造を示す断面図である。また、図3は固体電池20の内部の積層構造を模式的に表した図である。図1及び図2に示す本実施形態の固体電池20は、いずれも第一の電極として正極層1を、第二の電極層として負極層2を備えている。正極層1と負極層2の間に固体電解質層3を有し、正極層1は正極集電体層4と正極活物質層5からなり、負極層2は負極集電体層6と負極活物質層7からなる。また、固体電解質層3は固体電解質10からなり、正極集電体層は正極集電体11からなり、正極活物質層は正極活物質12からなり、負極集電体層6は負極集電体13からなり、負極活物質層7は負極活物質14からなる。正極層1と負極層2と固体電解質層3からなる蓄電素体は樹脂層15で覆われている。正極集電体層4と負極集電体層6にはそれぞれ端子電極16が電気的に接続されている。
尚、図1および図2では、5個の電池セルが積層された並列型の固体電池20の断面図が示されている。しかし、本実施形態の固体電池20に関する技術は、図1に示す5個の電池セルが積層された並列型の場合に限らず、例えば、直列型の固体電池や任意の複数層が積層した固体電池にも適用でき、要求される固体電池20の容量や電流仕様に応じて幅広く変化させることが可能である。
(固体電解質)
本実施形態の固体電池20の固体電解質層3は固体電解質10を含有している。固体電解質層3には固体電解質10以外に焼結助剤などを含んでもよい。図1に示す固体電池20の固体電解質層3は、図にて明らかなように、最上層及び最下層の膜厚を固体電池20の中央部の厚みが厚くなるように形成している。もちろん、このように固体電解質層3にて固体電池の厚みを制御する場合、最上層のみであっても、最下層のみであっても、どの層に厚みが厚くなる層を設けてもよいが、少なくとも最上層に形成するのが好ましい。
また、固体電解質10は、電子の伝導性が小さく、リチウムイオンの伝導性が高い材料を用いるのが好ましい。なかでも、大気雰囲気で高温焼成できる無機材料が好適である。例えば、La0.5Li0.5TiOなどのペロブスカイト型化合物や、Li14Zn(GeOなどのリシコン型化合物、LiLaZr12などのガーネット型化合物、Li1.3Al0.3Ti1.7(POやLi1.5Al0.5Ge1.5(POなどのナシコン型化合物、Li3.25Ge0.250.75やLiPSなどのチオリシコン型化合物、LiS−PやLiO−V−SiOなどのガラス化合物、LiPOやLi3.5Si0.50.5やLi2.9PO3.30.46などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
(正極活物質及び負極活物質)
本実施形態の固体電池20の正極活物質層5及び負極活物質層7を構成する正極活物質12及び負極活物質14としては、リチウムイオンを効率よく挿入、脱離できる材料を用いるのが好ましい。例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物を用いるのが好ましい。具体的には、リチウムマンガン複合酸化物LiMnx3Ma1−x3(0.8≦x3≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNix4Coy4Mnz4(x4+y4+z4=1、0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMbPO(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO又はLiVOPO)、Li過剰系固溶体正極LiMnO−LiMcO(Mc=Mn、Co、Ni)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNix5Coy5Alz5(0.9<a<1.3、0.9<x5+y5+z5<1.1)で表される複合金属酸化物のいずれかであることが好ましい。
特に、固体電解質層3にLi1+x2Alx2Ti2−x2(PO(0≦x2≦0.6)、正極活物質層5及び負極活物質層7の一方又は両方にLiVOPO及びLi(POのうち一方又は両方を用いると、正極活物質層5及び負極活物質層7の一方又は両方と固体電解質3の界面における接合が強固なものになると同時に、接触面積を広くできるため望ましい。
また、正極活物質層5又は負極活物質層7を構成する活物質には明確な区別がなく、2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質12として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質14として用いることができる。
(正極集電体及び負極集電体)
本実施形態の固体電池20の正極集電体層4及び負極集電体層6を構成する正極集電体11及び負極集電体13としては、導電率が大きい材料を用いるのが好ましく、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケルなどを用いるのが好ましい。特に、銅は正極活物質12、負極活物質14及び固体電解質10と反応し難く、さらに固体電池20の内部抵抗の低減に効果があるため好ましい。また、正極集電体層4及び負極集電体層6を構成する正極集電体11及び負極集電体13は、正極と負極で同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、正極集電体層4及び負極集電体層6は、それぞれ正極活物質12及び負極活物質14を含むことが好ましい。その場合の含有比は、集電体として機能する限り特に限定はされないが、正極集電体11/正極活物質12、又は負極集電体13/負極活物質14が体積比率で90/10から70/30の範囲であることが好ましい。
正極集電体層4及び負極集電体層6がそれぞれ正極活物質12及び負極活物質14を含むことにより、正極集電体層4と正極活物質層5及び負極集電体層6と負極活物質層7との密着性が向上するため望ましい。
(樹脂層)
本実施形態の固体電池20の樹脂層15は固体電池の最外層に形成されるもので、固体電池20を電気的、物理的、化学的に保護するためものである。
図2に示す固体電池20の樹脂層15は、図にて明らかなように、最上層及び最下層の膜厚を固体電池20の中央部の厚みが厚くなるように形成している。もちろん、樹脂層15にて固体電池の厚みを制御する場合、最上層のみであっても、最下層のみであっても、どの層に厚みが厚くなる層を設けてもよいが、少なくとも最上層に形成するのが好ましい。
樹脂層15を構成する材料としては絶縁性、耐久性、耐湿性に優れ、環境的に安全であることが好ましい。たとえば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を含有することが好ましい。また樹脂層中には、ガラス粒子や、セラミックス粒子のようなフィラーを含有することが好ましい。樹脂層の材料は1種類だけでも良いし、複数を併用してもよい。また、樹脂層は単層でもよいが、複数層備えていた方が好ましい。
(端子電極)
本実施形態の固体電池20の端子電極16は、導電率が大きい材料を用いるのが好ましく、例えば銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズ、ニッケルを用いるのが望ましい。端子電極16の材料は1つでもよいし、複数の材料を併用して用いてもよい。また、単層でも複数層からなっていてもよい。
(固体電池の製造方法)
本実施形態の固体電池20は、正極集電体層4、正極活物質層5、固体電解質層3、負極活物質層7、及び、負極集電体層6の各材料をペースト化し、塗布乾燥してグリーンシートを作製し、かかるグリーンシートを積層し、作製した積層体を焼成して蓄電素体を作製し、蓄電素体に樹脂層16を付与することにより製造する。
ペースト化の方法は、特に限定されないが、例えば、ビヒクルに上記各材料の粉末を混合してペーストを得ることができる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。かかる方法により、正極集電体層4用のペースト、正極活物質層5用のペースト、固体電解質層3用のペースト、負極活物質層7用のペースト、及び、負極集電体層6用のペーストを作製する。
ペーストの組成は特に限定しない。正極活物質層14用のペーストおよび負極活物質層16用のペーストには活物質のほかに固体電解質や焼結助剤、導電性材料が含まれていても良いし、正極集電体層15及び負極集電体17用のペーストに活物質や固体電解質、焼結助剤が含まれていても良い。
作製したペーストをPET(ポリエチレンテレフタレート)などの基材上に所望の順序で塗布し、必要に応じ乾燥させた後、基材を剥離し、グリーンシートを作製する。ペーストの塗布方法は、特に限定されず、スクリーン印刷、塗布、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用することができる。
作製した正極集電体層4用、正極活物質層5用、固体電解質層3用、負極活物質層7用、及び、負極集電体層6用のそれぞれのグリーンシートを所望の順序、積層数で積み重ね、必要に応じアライメント、切断等を行い、積層体を作製する。並列型又は直並列型の電池を作製する場合は、正極層の端面と負極層の端面が一致しないようにアライメントを行い積み重ねるのが好ましい。
積層ブロックを作製するに際し、以下に説明する正極活物質層ユニット及び負極活物質層ユニットを準備し、積層ブロックを作製してもよい。
その方法は、まずPETフィルム上に固体電解質層3用ペーストをドクターブレード法でシート状に形成し、固体電解質層3用シートを得た後、その固体電解質層3用シート上に、スクリーン印刷により正極活物質層5用ペーストを印刷し乾燥する。次に、その上に、スクリーン印刷により正極集電体層4用ペーストを印刷し乾燥する。更にその上に、スクリーン印刷により正極活物質層5用ペーストを再度印刷し、乾燥し、次いでPETフィルムを剥離することで正極活物質層ユニットを得る。このようにして、固体電解質層3用シート上に、正極活物質層5用ペースト、正極集電体層4用ペースト、正極活物質層5用ペーストがこの順に形成された正極活物質層ユニットを得る。同様の手順にて負極活物質層ユニットも作製し、固体電解質層3用シート上に、負極活物質層7用ペースト、負極集電体層6用ペースト、負極活物質層7用ペーストがこの順に形成された負極活物質層ユニットを得る。
正極活物質層ユニット一枚と負極活物質層ユニット一枚を、正極活物質層5用ペースト、正極集電体層4用ペースト、正極活物質層5用ペースト、固体電解質層3用シート、負極活物質層7用ペースト、負極集電体層6用ペースト、負極活物質層7用ペースト、固体電解質層3用シートの順に形成されるように積み重ねる。このとき、一枚目の正極活物質層ユニットの正極集電体層4用ペーストが一の端面にのみ延出し、二枚目の負極活物質層ユニットの負極集電体層6用ペーストが他の面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねる。この積み重ねられたユニットの両面に所定厚みの固体電解質層3用シートをさらに積み重ね積層ブロックを作製する。
作製した積層体を一括して圧着する。圧着は加熱しながら行うが、加熱温度は、例えば、40〜95℃とする。
圧着する際、例えば、固体電池20の中央部と端部の厚みが異なるよう設計された金型と一軸プレスを用いてもよい。
固体電池20の中央部が端部に比べ厚みを持つように、例えば、圧着した積層体の上にさらに電解質層3を付加してもよい。
圧着した積層体を、例えば、窒素雰囲気下で600℃〜1000℃に加熱し焼成を行い、蓄電素体を作製する。焼成時間は、例えば、0.1〜3時間とする。
蓄電素体をアルミナなどの研磨材とともに円筒型の容器に入れ、バレル研磨してもよい。これにより蓄電素体の角を面取りすることができる。その他の面取りの方法として、サンドブラストにて研磨してもよい。この方法では特定の角部のみを削ることができるため好ましい。
(端子電極端子電極形成)
蓄電素体に端子電極端子電極16をつける。端子電極端子電極16は正極集電体層4と負極集電体層6にそれぞれ電気的に接触するようにつける。この限りではないが、スパッタやディッピングにより形成することが好ましい。
(樹脂層の形成)
方法はこの限りではないが、樹脂層15の形成にはスパッタやディッピング、スプレーコートで行うのが好ましい。端子電極端子電極16が樹脂層15で完全におおわれないことが好ましい。たとえば、マスキングをするか、あるいは樹脂層15の材料としては端子電極端子電極がはじく材料を選択することが望ましい。樹脂層15をつけるのは基板実装後でもよいが、空気中の水分と反応する恐れがあるため基板実装前につけることが好ましい。
上述したように、図2のように樹脂層の中央部を端部付近と比べ厚くしてもよい。例えば、中央部への樹脂層の重ね付や粘度の高い樹脂を滴下することで中央部が厚い形状を得ることができる。
固体電池の中央部と端部の厚みの差は、図1のように正極層1と負極層2と電解質層3からなる蓄電素体に由来しても良いし、図2のように樹脂層に由来していてもよいし、蓄電素体と樹脂層の両方に由来するものであってもよい。また、図1及び図2はいずれも蓄電要素の積層方向の厚みが変化している。しかし、一対の対向する面のうち、面間の厚みが変化する一対の対向する面の選び方は、蓄電素体の向きによらない。一対の対向する面のうち、どの面間の厚みを制御してもよい。
固体電池の中央部と端部の厚みの差は、小さすぎると効果が小さく、大きすぎるとエネルギー密度が低下する恐れがある。そのため、固体電池の端部の厚みに対する中央部の厚みの比が1.05以上かつ1.40以下であることが好適である。
(実施例1)
以下に実施例及び比較例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、部表示は特に断りのない限り重量部である。
(正極活物質及び負極活物質の作製)
正極活物質及び負極活物質として、以下の方法で作製したLi(POを用いた。LiCOとVとNHPOとを出発材料とし、ボールミルで16時間湿式混合を行い、脱水乾燥した後に得られた粉体を850℃で2時間、窒素水素混合ガス中で仮焼した。仮焼品をボールミルで湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して正極活物質粉末及び負極活物質粉末を得た。作製した粉体の組成がLi(POであることは、X線回折装置を使用して確認した。
(正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストの作製)
正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストは、この正極活物質粉末及び負極活物質粉末100部に、バインダーとしてエチルセルロース15部と、溶媒としてジヒドロターピネオール65部とを加えて、混合・分散して正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストを作製した。
(固体電解質層用ペーストの作製)
固体電解質として、以下の方法で作製したLi1.3Al0.3Ti1.7(POを用いた。LiCOとAlとTiOとNHPOを出発材料として、ボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を800℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品をボールミルで24時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して固体電解質の粉末を得た。作製した粉体の組成がLi1.3Al0.3Ti1.7(POであることは、X線回折装置を使用して確認した。
次いで、この粉末に、溶媒としてエタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合した。その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して固体電解質層用ペーストを調製した。
(固体電解質層用シートの作製)
この固体電解質層用ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形し、厚さ15μmの固体電解質層用シートを得た。
(正極集電体層用ペースト及び負極集電体層用ペーストの作製)
正極集電体及び負極集電体として用いたCuとLi(POとを体積比率で80/20となるように混合した後、バインダーとしてエチルセルロース10部と、溶媒としてジヒドロターピネオール50部を加えて混合・分散して正極集電体層用ペースト及び負極集電体層用ペーストを作製した。Cuの平均粒径は0.9μmであった。
(端子電極ペーストの作製)
銀粉末とエポキシ樹脂、溶剤とを三本ロールで混錬・分散し、熱硬化型の導電ペーストを作製した。
これらのペーストを用いて、以下のようにして固体電池を作製した。
(正極活物質ユニットの作製)
上記の固体電解質層用シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。次に、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極集電体層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質層用ペーストを再度印刷し、80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質層用シート上に、正極活物質層用ペースト、正極集電体層用ペースト、正極活物質層用ペーストがこの順に印刷・乾燥された正極活物質ユニットのシートを得た。
(負極活物質ユニットの作製)
上記の固体電解質層用シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。次に、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極集電体層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質層用ペーストを再度印刷し、80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質層用シート上に、負極活物質層用ペースト、負極集電体層用ペースト、負極活物質層用ペーストがこの順に印刷・乾燥された負極活物質ユニットのシートを得た。
(蓄電素体の作製)
固体電解質層用シートを15枚積み重ねた上に、正極活物質ユニットのシートと負極活物質ユニットのシートをそれぞれ25枚、正極活物質層用ペースト、正極集電体層用ペースト、正極活物質層用ペースト、固体電解質層用シート、負極活物質層用ペースト、負極集電体層用ペースト、負極活物質層用ペースト、固体電解質層用シートの順に形成されるように積み重ねた。このとき、奇数枚目の正極活物質ユニットのシートの正極集電体層用ペーストが一方の端面にのみ延出し、偶数枚目の負極活物質ユニットのシートの負極集電体層用ペーストが反対側の端面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねた。この積み重ねられたユニットの上に、固体電解質層用シートを15枚重ねた。その後、これを温度80℃で圧力1000kgf/cm〔98MPa〕で一軸プレスを用いて成形した。この時使用した金型には、中央部が端部に比べ厚くなるような湾曲した金型を用い、固体電池中央部が端部に比べ厚くなるように積層ブロックを作製した。次いで切断して積層体を作製し、その後、積層体を同時焼成して蓄電素体を得た。同時焼成は、窒素中で昇温速度200℃/時間で焼成温度840℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。同時焼成後、積層方向に垂直な面のサイズは3.2mm×2.5mmであった。
(端子電極形成工程)
蓄電素体の端面に端子電極ペーストを塗布した。150℃、30分の熱硬化を行い、一対の端子電極を形成した。
(樹脂層作製工程)
端子電極が樹脂層で覆われないよう端部をマスキングし、その上からエポキシ樹脂を滴下し、その後150℃で30分間硬化し、実施例1の固体電池を得た。走査型電子顕微鏡で固体電池の断面観察を行い、樹脂層の厚みを測定した。樹脂層は蓄電素体外周を覆っており、厚みは2μm程度であった。
固体電池の、厚みの変化する面に垂直な方向の、厚みを測定した。固体電池の中央部の厚みは1.41mmから1.57mm、端部の厚みは1.13mmから1.29であり、積層方向に垂直な面間の端部の厚みに対する中央部の厚みの比は1.09から1.39であった。
(実施例2〜4)
積層体を圧着する際の金型を変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2乃至4の固体電池を作製した。固体電池の中央部の厚みと端部の厚みは、それぞれ、実施例2は1.48mmと1.32mm、実施例3では1.52mmと1.21mm、実施例4では1.57mmと1.15mmであった。
(比較例1〜2)
積層体を圧着する際に使用する金型を変更したこと以外は、実施例1と同様にして固体電池を作製した。比較例1の固体電池の中央部の厚みは1.37mm、端部の厚みは1.33mmであった。また、比較例2の固体電池の中央部の厚みは1.62mm、端部の厚みは1.11mmであった。樹脂層は蓄電素体外周を覆っており、厚さはいずれも2μm程度であった。
(衝撃試験の評価方法)
JISC60068−2−27に基づく衝撃試験を行った。衝撃波には正弦半波パルスを用い、ピーク加速度500m/sとした。衝撃は、積層方向に平行な方向から樹脂層の中央部に対して加えた。衝撃回数は10000回とし、それぞれの試料ついて100個ずつに対し試験を行った。ヒビ、割れ及び欠け、割れがあるものを不良とし、不良の判定は目視でおこなった。
(試験結果)
表1に実施例1乃至4と比較例1乃至2の固体電池の中央部の厚みD、端部の厚みd、端部の厚みに対する中央部の厚みの比D/d、及び、判定時に見つかった不良数を示す。
Figure 2016001600
実施例1乃至4における不良数は比較例1乃至2にくらべ小さかった。この結果から中央部が端部に比べて厚みのある構造を有し、端部に対する中央部の厚みの比D/dを、1.05以上かつ1.40以下とすることで、衝撃に対する耐久性が向上したことがわかる。
実施例1の固体電池を直列に3つ並べケースに搭載し、図4に示す組電池を作製した。この組電池は、0Vから5Vまで2μAの一定電流条件にて充放電したところ特性の変動なく安定して動作した。これは実施例1で作製した固体電池がケース内で熱がこもることなく排熱可能なものであるため安定した動作が得られたと考えられる。
以上のように、本発明にかかる固体電池は外力が加わることによる損傷防止に効果がある。そのため、本発明の固体電池を用いることにより歩留まりを改善することができ、特に、エレクトロニクスの分野で大きく寄与する。
1 正極層
2 負極層
3 固体電解質層
4 正極集電体層
5 正極活物質層
6 負極集電体層
7 負極活物質層
10 固体電解質
11 正極集電体
12 正極活物質
13 負極集電体
14 負極活物質
15 樹脂層
16 端子電極
17 ケース
18 外部端子
20 固体電池
21 固体電池内部の蓄電要素
22 組電池

Claims (6)

  1. 第一の電極層と第二の電極層の間に固体電解質層を有する蓄電要素を一つ以上備えた蓄電素体を備え、前記蓄電素体の表面には樹脂層を有する固体電池において、前記固体電池の少なくとも一対の対向する面は、前記固体電池の端部の厚みに対する前記固体電池の中央部の厚みの比が1.05以上かつ1.40以下となることを特徴とする固体電池。
  2. 前記樹脂層の表面は、その一部が、前記固体電池の厚みの変化する一対の対向する面が厚みの厚くなる方向に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の固体電池。
  3. 前記樹脂層の表面のうち中央部が、前記固体電池の厚みが厚くなる方向に湾曲していることを特徴とする請求項1または2に記載の固体電池。
  4. 前記固体電池は、厚みが厚くなる方向に屈曲する屈曲部を、前記樹脂層の表面に有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の固体電池。
  5. 前記蓄電素体は直方体形状であり、少なくとも一対の対向する面のうち一方の面に垂直な方向で切断した断面を観察した時の角部が面取りされていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の固体電池。
  6. 請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の前記固体電池を直列に複数個並べて接続し、それをケースに収納したことを特徴とする組電池。
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