<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な構成図である。第1実施形態の印刷装置100は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の印刷媒体200に噴射する液体噴射装置であり、制御装置12と搬送機構14と液体噴射ヘッド16とを具備する。制御装置12は、印刷装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構14は、制御装置12による制御のもとで印刷媒体200を所定の方向Aに搬送する。印刷装置100には、インクが充填されたインクカートリッジ300が装着される。図1の液体噴射ヘッド16は、インクカートリッジ300から供給されるインクを制御装置12による制御のもとで複数のノズルNの各々から印刷媒体200に噴射するラインヘッドである。
図2は、液体噴射ヘッド16の分解斜視図である。図2に例示される通り、第1実施形態の液体噴射ヘッド16は、固定板22と複数のヘッドユニット24とケース部材26とを具備する。概略的には、固定板22とケース部材26とで形成される空間に複数のヘッドユニット24が収容および支持される。
固定板22は、第1面222と第1面222の反対側の第2面224とを含む平板状の部材である。固定板22の材料は任意であるが、高剛性の金属で形成された平板材が固定板22として好適である。具体的には、第1実施形態の固定板22はステンレス鋼で形成される。例えばSUS430やSUS304等のステンレス鋼が固定板22の材料として好適であるが、固定板22の熱変形を抑制するという観点からは線膨張係数が比較的に小さいSUS430が固定板22の材料として格別に好適である。固定板22の板厚は、例えば50μm以上かつ1000μm以下の範囲内の好適な寸法(例えば80μm)に選定される。以上のように第1実施形態では固定板22がステンレス鋼で形成されるから、例えばアルミナセラミックス等の材料で固定板22を形成する場合と比較して製造コストを削減することが可能である。
以下の説明では、固定板22の第1面222(または第2面224)に平行なX-Y平面を想定し、第1面222に垂直な方向をZ方向と表記する。第1面222は固定板22のうちZ方向の正側に位置し、第2面224はZ方向の負側に位置する。液体噴射ヘッド16は、固定板22の第1面222が印刷媒体200に対向する姿勢(Z方向が鉛直方向の下側を向く姿勢)で設置される。したがって、X-Y平面は、印刷媒体200に略平行な平面(水平面)に相当する。図2から理解される通り、第1実施形態の固定板22は、平面視で(すなわちZ方向からみて)X方向に長尺な矩形状に成形される。Y方向は、X方向およびZ方向に直交する方向(固定板22の短手方向)である。
複数のヘッドユニット24は、複数のノズルNからインクを噴射するヘッドチップであり、固定板22のうちZ方向の負側に位置する第2面224に固定される。第1実施形態の複数のヘッドユニット24は、Y方向の位置が相違する第1列と第2列とに配列され、各ヘッドユニット24のX方向の位置が第1列と第2列とで相違する。すなわち、第1実施形態では複数のヘッドユニット24が千鳥配置(スタガ配置)される。
図3は、液体噴射ヘッド16の任意の1個のヘッドユニット24の分解斜視図であり、図4は、図3におけるIV−IV線の断面図(Y-Z平面に平行な断面)である。図3に例示される通り、第1実施形態のヘッドユニット24は、流路形成板32のうちZ方向の負側の面上に圧力室形成板34と振動板36と保護板38と筐体40とを以上の順番で積層するとともに、流路形成板32のうちZ方向の正側の面上にノズルプレート42とコンプライアンス基板44とを設置した構造体である。ヘッドユニット24の各要素は、概略的にはX方向に長尺な略平板状の部材であり、例えば接着剤を利用して相互に接続される。
ノズルプレート42は、X方向に配列する複数のノズル(噴射口)Nが形成された平板状の部材である。図3および図4に例示される通り、各ノズルNは、インクが通過する貫通孔である。ノズルプレート42の材料や製法は任意であるが、例えばシリコン(Si)の単結晶基板をフォトリソグラフィやエッチング等の半導体製造技術により選択的に除去することで、所期の形状のノズルプレート42を簡便かつ高精度に形成することが可能である。
複数のノズルNは、ノズル列GAとノズル列GBとに区分される。ノズル列GAおよびノズル列GBの各々は、X方向に沿って配列された複数のノズルNの集合である。図1から理解される通り、印刷媒体200の横幅(方向Aに直交する方向の寸法)を上回る範囲にわたり複数のヘッドユニット24のノズルNが分布する。搬送機構14による印刷媒体200の搬送に並行してヘッドユニット24の各ノズルNから印刷媒体200にインクを噴射することで印刷媒体200には任意の画像が印刷される。なお、図4から理解される通り、ヘッドユニット24には、ノズル列GAに対応する構造とノズル列GBに対応する構造とが略線対称に形成され、両構造は実質的に共通するから、以下の説明ではノズル列GAに対応する要素に着目し、ノズル列GBに対応する要素の説明を便宜的に省略する。
流路形成板32は、インクの流路を形成するための平板状の部材である。第1実施形態の流路形成板32には、開口部322と複数の供給流路324と複数の連通流路326とが形成される。供給流路324と連通流路326とはノズルN毎に形成された貫通孔であり、開口部322は複数のノズルNにわたり共通する貫通孔(開口)である。各供給流路324は開口部322に連通する。流路形成板32の材料や製法は任意であるが、例えばシリコンの単結晶基板を半導体製造技術により選択的に除去することで、以上に例示した形状の流路形成板32を簡便かつ高精度に形成することが可能である。
図4に例示される通り、コンプライアンス基板44は、封止板442と支持体444とを含んで構成される。封止板442は、可撓性を有するシート状(膜状)の部材である。支持体444は、流路形成板32の開口部322および各供給流路324が閉塞されるように封止板442を流路形成板32に固定する。支持体444は、固定板22と同様にステンレス鋼(例えばSUS430)で形成される。コンプライアンス基板44(封止板442)にはX方向に長尺な開口部446が形成され、ノズルプレート42は開口部446の内側で流路形成板32の表面に固定される。図4から理解される通り、ノズルプレート42の板厚TNは、コンプライアンス基板44の板厚TC(封止板442の板厚と支持体444の板厚との合計)を上回る(TN>TC)。したがって、ノズルプレート42の表面はコンプライアンス基板44の表面と比較してZ方向の正側に突出する。
図4に例示される通り、流路形成板32には筐体40が固定される。筐体40の材料や製法は任意であるが、例えば樹脂材料(プラスチック)の射出成形で一体に成形される。第1実施形態の筐体40には凹部402とスリット404と液体流路406とが形成される。凹部402は、平面視で流路形成板32の開口部322に対応する外形の窪みであり、液体流路406は、凹部402に連通する流路である。図4から理解される通り、流路形成板32の開口部322と筐体40の凹部402とを相互に連通させた空間が液体貯留室R(リザーバー)として機能する。液体流路406を介して供給されるインクが液体貯留室Rに貯留される。以上の説明から理解される通り、コンプライアンス基板44(封止板442)は、液体貯留室Rの壁面(底面)を構成し、液体貯留室R内のインクの圧力変動を吸収する。
流路形成板32のうちZ方向の負側の面上には圧力室形成板34が設置される。図3および図4に例示される通り、圧力室形成板34には、相異なるノズルNに対応する複数の開口部342が形成される。圧力室形成板34の材料や製法は任意であるが、例えば前述の流路形成板32と同様に、シリコンの単結晶基板を半導体製造技術により選択的に除去することで圧力室形成板34を形成することが可能である。
圧力室形成板34のうち流路形成板32とは反対側の表面には振動板36が設置される。振動板36は、弾性的に振動可能な平板状の部材である。図4から理解される通り、振動板36と流路形成板32とは、圧力室形成板34に形成された各開口部342の内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室形成板34の開口部342の内側で流路形成板32と振動板36とに挟まれた空間は、インクに圧力を付与する圧力室C(キャビティ)として機能する。流路形成板32の各供給流路324は液体貯留室Rと圧力室Cとを連通し、流路形成板32の各連通流路326は圧力室CとノズルNとを連通する。以上の説明から理解される通り、液体貯留室Rに貯留されたインクが複数の供給流路324に分岐して各圧力室Cに並列に供給され、各圧力室Cから連通流路326とノズルNとを通過して外部に噴射される。
振動板36のうち圧力室形成板34とは反対側の表面には、相異なるノズルN(圧力室C)に対応する複数の圧電素子362が形成される。各圧電素子362は、相互に対向する電極間に圧電体を介在させた積層体である。各圧電素子362は、駆動信号の供給により個別に振動する。保護板38は、各圧電素子362を保護する要素であり、圧力室形成板34(振動板36)の表面に例えば接着剤で固定される。保護板38のうち振動板36側の表面に形成された凹部382に各圧電素子362が収容される。
各ヘッドユニット24には配線基板28が実装される。具体的には、図4に例示される通り、振動板36のうち圧力室形成板34とは反対側の表面に配線基板28の端部が固定される。配線基板28は、保護板38に形成されたスリット384と筐体40に形成されたスリット404とを通過して外部に到達する。配線基板28を介して制御装置12から供給される駆動信号に応じて各圧電素子362は振動する。圧電素子362に連動して振動板36が振動することで圧力室C内のインクの圧力が変動してノズルNからインクが噴射される。以上の説明から理解される通り、圧電素子362は、圧力室C内の圧力を変動させて圧力室C内のインクをノズルNから噴射させる圧力発生素子として機能する。以上が第1実施形態のヘッドユニット24の構成である。
図5は、液体噴射ヘッド16の断面図であり、図2におけるV-V線の断面図に相当する。図2および図5に例示される通り、以上に説明した構造の複数のヘッドユニット24は固定板22の第2面224に固定される。固定板22には、各ヘッドユニット24のノズルプレート42に対応する形状(X方向に長尺な矩形状)の開口部226がヘッドユニット24毎に形成される。図2および図5に例示される通り、開口部226の内側にノズルプレート42が位置する状態で各ヘッドユニット24は固定板22の第2面224に固定される。各ヘッドユニット24は、例えば接着剤を利用して固定板22の第2面224に固定される。具体的には、コンプライアンス基板44の支持体444の表面が接着剤で第2面224に接合される。以上の説明から理解される通り、ヘッドユニット24の各ノズルNから噴射したインクは固定板22の開口部226を通過してZ方向の正側に進行する。
図5から理解される通り、固定板22の第2面224にヘッドユニット24が固定された状態では、ノズルプレート42が第2面224に対して第1面222側に突出する。ノズルプレート42のうち第2面224から第1面222側に突出する部分の高さhは、固定板22の板厚TBを下回る(h<TB)。コンプライアンス基板44の板厚TCと固定板22の板厚TBとの合計がノズルプレート42の板厚TNを上回る(TC+TB>TN)とも換言され得る。したがって、第1実施形態のノズルプレート42の表面は、固定板22の第1面222に対して第2面224側に位置する。すなわち、ノズルプレート42の表面は第1面222に対して窪んだ状態にある。
図2のケース部材26は、複数のヘッドユニット24を収容および支持する中空の構造体である。図6は、固定板22側(Z方向の正側)からみたケース部材26の平面図である。図2および図6に例示される通り、第1実施形態のケース部材26は、対向部262と枠状部264と複数の区画部266とを含んで構成される。例えば樹脂材料(プラスチック)の射出成形で、対向部262と枠状部264と複数の区画部266とが一体に成形される。ただし、ケース部材26の材料や製法は以上の例示に限定されない。
対向部262は、X方向に長尺な平板状の部分であり、図5に例示される通り、固定板22の第2面224に所定の間隔Dをあけて対向する。すなわち、対向部262は、複数のヘッドユニット24を挟んで固定板22とは反対側に位置する。枠状部264は、図2および図6に例示される通り、対向部262の周縁からZ方向の正側に突起する部分であり、平面視で固定板22の外形に対応するようにX方向に長尺な矩形枠状に形成される。複数の区画部266の各々は、枠状部264の内周面に形成され、X方向に相互に隣合う各ヘッドユニット24の間に位置する。各区画部266は相互に離間して形成される。
図5および図6に例示される通り、各ヘッドユニット24は、枠状部264と各区画部266とで区画された空間(以下「収容空間」という)Sに収容される。すなわち、枠状部264と各区画部266とは、平面視でヘッドユニット24を包囲するように形成された壁部60として機能する。壁部60(枠状部264,各区画部266)は、各ヘッドユニット24の側面に対向する部分とも換言され得る。なお、図5では、壁部60がヘッドユニット24の側面に間隔をあけて対向する状態を例示したが、壁部60をヘッドユニット24の側面に接触させることも可能である。
図5に例示される通り、枠状部264と各区画部266とを含む壁部60のうち固定板22側の端面(対向部262とは反対側の端面)が固定板22の第2面224に固定される。具体的には、矩形枠状の枠状部264の端面が固定板22の全周にわたり第2面224に固定され、かつ、各区画部266の端面が枠状部264の内側で固定板22の第2面224に固定される。固定板22とケース部材26との接合には例えば接着剤74が好適に利用される。具体的には、ケース部材26の壁部60の端面に塗布された接着剤74を介して固定板22とケース部材26とが相互に接合される。
図5に例示される通り、対向部262には複数(2個)の液体流路267とスリット268とが収容空間S毎(ヘッドユニット24毎)に形成される。液体流路267は、インクカートリッジ300から供給されるインクが流通する流路であり、スリット268はX方向に長尺な貫通孔である。図5に例示される通り、各ヘッドユニット24の筐体40の液体流路406と対向部262の液体流路267とが連通するようにヘッドユニット24とケース部材26とは相互に固定される。ヘッドユニット24とケース部材26との接合には例えば接着剤72が利用される。具体的には、筐体40の表面のうち液体流路406の周縁近傍の領域に塗布された接着剤72を介してヘッドユニット24とケース部材26とが相互に接合される。
第1実施形態におけるヘッドユニット24の筐体40とケース部材26とは、線膨張係数が実質的に一致する材料(例えば同種の樹脂材料)で形成される。すなわち、筐体40とケース部材26とで熱変形の度合が略一致する。したがって、第1実施形態では、筐体40とケース部材26との線膨張係数の相違に起因した熱応力が低減されるという利点がある。
図7は、図6の領域VIIを拡大して図示した斜視図である。図5および図7に例示される通り、ケース部材26の壁部60(枠状部264および各区画部266)のうち固定板22に対向する端面には複数の突起部62が形成される。各突起部62は、壁部60の端面から固定板22側(Z方向の正側)に突起した部分であり、相互に離間した位置に形成される。具体的には、壁部60のうちX方向に延在する部分とY方向に延在する部分との交差点の位置や各交差点間を等分する各位置に突起部62が形成される。複数の突起部62は、平面視で略均等に分布するようにX-Y平面内に分散して形成される。なお、図7では円柱状の突起部62を例示したが、突起部62の形状は任意である。図5から理解される通り、各突起部62が固定板22の第2面224に接触した状態でケース部材26の壁部60の端面が固定板22の第2面224に接合される。
以上に説明した通り、接着剤74で固定板22に固定されたケース部材26の収容空間Sに、固定板22とケース部材26とに接着剤で固定された複数のヘッドユニット24が収容される。図5から理解される通り、固定板22とケース部材26と各ヘッドユニット24とが相互に固定された状態では、固定板22の第2面224とケース部材26の対向部262(収容空間Sの底面)との間隔Dは、第2面224に対するヘッドユニット24の高さ(第2面224と筐体40の表面との距離)Hを上回る。したがって、ヘッドユニット24の筐体40の表面とケース部材26の対向部262との間には略一定の間隔が形成される。以上の構成によれば、ヘッドユニット24の高さHに誤差が発生した場合でも、固定板22の第2面224にケース部材26を確実に固定できるという利点がある。
<液体噴射ヘッド16の製造方法>
以上に説明した液体噴射ヘッド16の製造方法を説明する。図8は、液体噴射ヘッド16の製造方法のフローチャートである。
図8に例示される通り、まず、工程P1にて固定板22が用意される。固定板22の製造には例えば打抜き加工が好適に利用される。すなわち、図9に例示される通り、例えばステンレス鋼の平板材81のうち固定板22の各開口部226に対応する領域を抜型82で打抜くことで、複数の開口部226が形成された固定板22が製造される。打抜き加工によれば、例えば平板材81の切削等により開口部226を形成する場合と比較して、固定板22の平坦性を維持しながら開口部226を形成できるという利点がある。
以上のように抜型82で開口部226を形成した場合、図9に拡大して図示した通り、固定板22のうち抜型82の進行方向の上流側に位置する表面における開口部226の内周縁の近傍は連続的な曲面となるが、抜型82の進行方向の下流側に位置する表面における開口部226の内周縁には角部αが形成され得る。第1実施形態では、固定板22のうち抜型82の進行方向の上流側に位置する表面(すなわち開口部226の内周縁の近傍が曲面である表面)が第1面222に選定される。
工程P1で製造された固定板22の平面度(平坦度)ρは例えば150μm程度である。平面度ρは、板状部材の平坦の度合(平面からの乖離の度合)の指標である。図10は、平面形状が矩形状である板状部材B(例えば固定板22)の平面度ρの説明図である。図10から理解される通り、交点CAと交点CBとに着目する。交点CAは、板状部材Bの縁辺のうち1組の対辺(EA1,EA3)の各中点を板状部材Bの表面(曲面)に沿って相互に連結する線LA1と、他の1組の対辺(EA2,EA4)の各中点を板状部材Bの表面に沿って相互に連結する線LA2とが交差する地点である。他方、交点CBは、板状部材Bの4個の頂点を包含する仮想的な四角形b上の地点である。具体的には、交点CBは、四角形bの縁辺のうち1組の対辺(EB1,EB3)の各中点を四角形bと同一面内にて相互に連結する線LB1と、他の1組の対辺(EB2,EB4)の各中点を四角形bと同一面内にて相互に連結する線LB2とが交差する地点である。平面度ρは、以上のように規定される交点CAと交点CBとの距離として定義される。したがって、板状部材Bの平面度ρが小さいほど板状部材Bは理想的な平面(仮想的な四角形b)に近いと評価できる。
図8の工程P2ではケース部材26が用意される。ケース部材26の製造には、金型を利用した射出成形が好適に利用される。図11は、工程P2で使用される金型のうち各突起部62の形成に利用される部分の断面図である。図11に例示される通り、突起部62に対応する貫通孔830が金型83に形成され、先端部が平坦面に成形されたネジ84が貫通孔830に挿入される。ネジ84を回転させて先端部の位置を調整することで突起部62の高さを個別に調整することが可能である。工程P2では、複数の突起部62の先端面(頂面)が同一面内に位置するように各ネジ84の位置が調整された金型83を利用して、対向部262と枠状部264と複数の区画部266と複数の突起部62とを含むケース部材26が一体成形される。したがって、第1実施形態では、ケース部材26の各要素を別体で形成する場合と比較して、複数の突起部62の高さが均一化されたケース部材26を低い製造コストで形成できるという利点がある。
射出成形では加工時の樹脂材料の伸縮等に起因した誤差が発生するから、ケース部材26の壁部60の端面を全体にわたり高精度に高さを均一化することは現実には困難である。他方、第1実施形態のように壁部60の端面に形成された複数の突起部62について高さを均一化することは、壁部60の全体にわたる高さの均一化と比較して容易に実現される。具体的には、第1実施形態の複数の突起部62の平面度ρは、例えば30μm以上かつ60μm以下の範囲内に抑制される。すなわち、複数の突起部62の平面度ρは、固定板22の単体(すなわちケース部材26に固定されない状態)での平面度ρ(150μm)を下回る。なお、複数の突起部62の平面度ρは、各突起部62を通過する面を仮想的な板状部材Bと見立てたうえで、図10を参照して説明した方法と同様に算定される。
図8の工程P3では複数のヘッドユニット24が用意される。ヘッドユニット24の製造には公知の技術が任意に採用される。なお、以上に例示した工程P1から工程P3の順序は任意に変更され得る。
固定板22と複数のヘッドユニット24とケース部材26とが以上の工程で用意されると、複数のヘッドユニット24が固定板22に固定される(工程P4)。具体的には、図12に例示される通り、第2面224が上方を向く姿勢(第1面222が定盤86側に位置する姿勢)で固定板22が定盤86上に載置される。そして、固定板22の各開口部226の内側に各ヘッドユニット24のノズルプレート42が位置するように、定盤86上の固定板22の第2面224に複数のヘッドユニット24が例えば接着剤で固定される。前述の通り、ヘッドユニット24のノズルプレート42のうち第2面224から第1面222側に突出する部分の高さhは固定板22の板厚TBを下回るから、固定板22にヘッドユニット24を固定した状態では、ノズルプレート42の表面は定盤86の表面に接触しない。したがって、固定板22が定盤86から浮くことはない。
工程P4に続く工程P5では、図13に例示される通り、定盤86上に固定板22が載置された状態を工程P4から維持したまま、固定板22の第2面224に例えば接着剤74でケース部材26が固定される。具体的には、ケース部材26の壁部60が固定板22上の各ヘッドユニット24を包囲する(すなわち各ヘッドユニット24が収容空間Sに収容される)とともに壁部60の複数の突起部62が固定板22の第2面224に接触するように、定盤86上の固定板22にケース部材26が固定される。工程P5では、各ヘッドユニット24の筐体40の表面に、液体流路406を包囲するように接着剤72が塗布される。したがって、固定板22に対するケース部材26の固定とともに各ヘッドユニット24とケース部材26(対向部262)とが相互に接合される。以上の工程により液体噴射ヘッド16が製造される。図8の工程P4は第1工程の例示であり、工程P5は第2工程の例示である。
前述の通り、複数の突起部62の平面度ρは充分に小さい数値に低減される(複数の突起部62の高さが高精度に均一化される)から、複数の突起部62に接触した状態でケース部材26に固定された固定板22は、固定板22の単体の状態と比較して平坦化される。具体的には、固定板22の単体での平面度ρが前述の通り150μm程度であるのに対し、ケース部材26に固定された状態の固定板22の平面度ρは40μm以上かつ70μm以下の範囲内に抑制される。以上の説明から理解される通り、ケース部材26の複数の突起部62は、固定板22を平坦化するように作用する。
以上に説明した通り、第1実施形態では、固定板22の第2面224に複数のヘッドユニット24が固定され、ケース部材26の壁部60のうち固定板22に対向する部分(頂面)に複数の突起部62が形成される。前述の通り、複数の突起部62の高さを高精度に均一化することは比較的に容易であるから、第1実施形態によれば、壁部60に突起部62を形成しない構成(壁部60のうち固定板22との対向面の全体を固定板22の第2面224に接触させる構成)と比較して固定板22が平坦化される。すなわち、単体で充分な平坦性を実現し得る高価な材料を利用しなくても固定板22を高度に平坦化することが可能である。したがって、製造コストを削減しながら、各ヘッドユニット24のノズルプレート42の表面(噴射面)と印刷媒体200との距離(噴射距離)の相違を低減できるという利点がある。
また、第1実施形態では、複数のヘッドユニット24やケース部材26が接着剤で固定板22に固定されるから、ヘッドユニット24やケース部材26をネジ等で固定板22に固定する構成と比較して固定板22の変形が抑制される。したがって、固定板22を高度に平坦化できるという前述の効果は格別に顕著である。また、ネジ等を利用する構成と比較して液体噴射ヘッド16の組立てが容易であるという利点もある。
ところで、印刷装置100では、各ノズルNを密閉するキャップ内に負圧を発生させることで各ノズルNから強制的にインクを排出する吸引動作が各ノズルNのクリーニングのために実行される。第1実施形態では、図14に例示される通り、固定板22の第1面222の全域に接触する単一のキャップ87で複数のヘッドユニット24の各ノズルNが一斉に封止される。したがって、ヘッドユニット24毎に別個のキャップを装着する構成と比較して構成が簡素化される(例えば部品点数が削減される)という利点がある。また、第1実施形態では、前述の通り固定板22が高度に平坦化されるから、複数のヘッドユニット24に対して単一のキャップ87を装着する構成にも関わらず、複数のヘッドユニット24にわたり各ノズルNを有効に封止できるという利点がある。
第1実施形態では、ヘッドユニット24の流路形成板32や圧力室形成板34がシリコンで形成され、ステンレス鋼のうちシリコンに線膨張係数が近いSUS430で固定板22が形成される。したがって、ヘッドユニット24の要素と固定板22とで線膨張係数が乖離する構成と比較すると、線膨張係数の相違に起因してヘッドユニット24や固定板22に発生し得る熱応力を低減できるという利点がある。
第1実施形態では、抜型82を利用した打抜き加工で固定板22の各開口部226を形成し、抜型82の進行方向の上流側に位置する表面が第1面222に選定される。すなわち、抜型82の進行方向の下流側に形成される角部αはヘッドユニット24側に位置する。したがって、以下の例示の通り、固定板22の角部αへの衝突に起因した外部要素(以下の例示ではワイパー)の損傷を防止できるという利点がある。
印刷装置100では、ワイパーを利用したノズルプレート42の清掃動作が実行される。具体的には、図5に鎖線で図示される通り、弾性材料で形成されたワイパー88を固定板22の第1面222とノズルプレート42とにわたり相対的に移動させることでノズルプレート42の表面が清掃される。平板材81のうち打抜き加工に起因して角部αが形成された表面を固定板22の第1面222とした構成では、第1面222に接触しながら移動するワイパー88に角部αが衝突してワイパー88が損傷する可能性がある。第1実施形態では、図9を参照して説明した通り、平板材81のうち角部αが形成された表面が固定板22の第2面224としてヘッドユニット24側に位置するから、ワイパー88は角部αに衝突しない。したがって、第1実施形態によれば、ワイパー88の損傷を防止できるという利点がある。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。以下に例示する各構成において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で利用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図15は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド16の分解斜視図である。図15に例示される通り、第2実施形態の液体噴射ヘッド16は、第1実施形態と同様の要素(固定板22,複数のヘッドユニット24,ケース部材26)に補強板27を追加した構成である。第2実施形態のヘッドユニット24は、ステンレス鋼(好適にはSUS430)で形成された固定板22の第2面224に第1実施形態と同様に固定され、ケース部材26の内部の空間に補強板27とともに収容および支持される。なお、第2実施形態のヘッドユニット24は、樹脂材料で形成された筐体40を包含する。
補強板27は、ヘッドユニット24のうち固定板22とは反対側の表面(筐体40の表面)に固定される平板状の部材である。補強板27の材料は任意であるが、例えば固定板22の材料であるステンレス鋼(好適にはSUS430)の平板材が補強板27として好適である。すなわち、第2実施形態の補強板27は、固定板22と同一の材料で形成される。なお、補強板27の板厚は任意であるが、固定板22(80μm程度)の剛性を確保する観点から400μm程度が好適である。
図16は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド16の断面図であり、図15におけるXVI-XVI線の断面図に相当する。また、図17は、固定板22側(Z方向の正側)からみたケース部材26および補強板27の平面図である。図17に例示される通り、補強板27は、平面視で複数のヘッドユニット24の配列(複数の収容空間Sの配列)に対応した外形に形成される。第2実施形態の補強板27には、開口部272とスリット274とがヘッドユニット24毎に形成される。
図16に例示される通り、各ヘッドユニット24の筐体40の液体流路406と、補強板27の開口部272とが連通するように補強板27とヘッドユニット24の筐体40とが相互に固定される。ヘッドユニット24と補強板27との接合には例えば接着剤が利用される。以上の説明から理解される通り、ヘッドユニット24のうち樹脂材料で形成された筐体40に、ステンレス鋼(SUS430)で形成された補強板27が接合される。
第2実施形態のケース部材26は、第1実施形態と同様に、複数のヘッドユニット24を挟んで固定板22とは反対側に位置する対向部262と、対向部262の周縁からZ方向の正側に突起する壁部60(枠状部264,区画部266)とを包含し、例えば樹脂材料の射出成形で一体に成形される。壁部60のうち固定板22側の端面は固定板22の第2面224に固定される。壁部60の端面に複数の突起部62が形成された構成は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。補強板27は、図16および図17に例示される通り、対向部262の液体流路267と補強板27の開口部272とが連通し、かつ、補強板27が壁部60に嵌合するようにケース部材26(対向部262)に固定される。補強板27とケース部材26との接合には例えば接着剤が利用される。
以上の説明から理解される通り、第2実施形態では、各ヘッドユニット24が固定板22に固定されるとともに、ヘッドユニット24のうち固定板22と反対側の表面(筐体40)が補強板27に接合される。したがって、例えば樹脂材料で形成されたケース部材26や筐体40の熱変形に起因して各ヘッドユニット24に作用する応力が、補強板27を設置しない構成(例えば第1実施形態)と比較して低減され、結果的に各ヘッドユニット24の変形や位置ずれ(固定板22からの剥離)が抑制されるという利点がある。第2実施形態では特に、固定板22と補強板27とが同一の材料(ステンレス鋼)で形成されるから、例えば固定板22と補強板27とが相異なる材料で形成された構成と比較して、固定板22と補強板27との線膨張係数の相違に起因した熱応力が各ヘッドユニット24に作用することを抑制できるという利点もある。
また、線膨張係数が樹脂材料よりも小さい補強板27がヘッドユニット24の筐体40に接合されるから、線膨張係数が大きい材料で補強板27を形成した構成と比較して補強板27の熱変形が抑制される。したがって、ヘッドユニット24に作用する応力が低減されるという前述の効果は格別に顕著である。なお、第2実施形態では、ケース部材26の壁部60の端面に突起部62を形成した構成は省略され得る。
<液体噴射ヘッド16の製造方法>
以上に説明した第2実施形態の液体噴射ヘッド16の製造方法を説明する。図18は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド16の製造方法のフローチャートである。第2実施形態に係る液体噴射ヘッド16の製造方法における工程P1から工程P3の処理は、第1実施形態と共通するため詳細な説明を省略する。
図18のうち工程P3の実行後の工程Q0では、補強板27が用意される。補強板27は、固定板22と同一の材料であるステンレス鋼の平板材から形成される。具体的には、ステンレス鋼の平板を図17に例示した外形に形成するとともに、開口部272およびスリット274に対応する領域を抜型で打抜くことで補強板27が形成される。なお、工程P1から工程P3の各々と工程Q0との先後は任意に変更され得る。
図18の工程QA1(第1工程)では、複数のヘッドユニット24が補強板27に固定される。具体的には、図16に例示される通り、補強板27の開口部272と各ヘッドユニット24の筐体40の液体流路406とが連通するように補強板27と各ヘッドユニット24の筐体40とが相互に固定される。
図18の工程QA2(第2工程)では、複数のヘッドユニット24が固定板22に固定される。工程QA1および工程QA2の結果、図16に例示される通り、同一の材料(例えばSUS430等のステンレス鋼)で形成された固定板22と補強板27とで複数のヘッドユニット24が挟み込まれる。
図18の工程QA3(第3工程)では、固定板22の第2面224に例えば接着剤74でケース部材26が固定される。具体的には、ケース部材26の壁部60が固定板22上の各ヘッドユニット24を包囲して壁部60の複数の突起部62が固定板22の第2面224に接触し、かつ、ケース部材26の液体流路267と補強板27の開口部272とが連通して補強板27が壁部60に嵌合するように、固定板22にケース部材26が固定される。
図19は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド16の製造方法の別例を示すフローチャートである。図19に例示される製造方法では、図18と同様の工程P1ないし工程P3と工程Q0とに引続き、第1実施形態で例示した図8の工程P4と同様に、複数のヘッドユニット24が固定板22に固定される(工程QB1)。他方、図19の工程QB2では、補強板27がケース部材26(対向部262)に固定される。なお、工程QB1および工程QB2の先後は逆転され得る。以上に説明した工程QB1および工程QB2に引続き、図19の工程QB3では、複数のヘッドユニット24が固定された固定板22に、補強板27が固定されたケース部材26が固定される。
以上に説明した通り、図19の製造方法では、工程QB2でケース部材26に固定された補強板27が工程QB3で各ヘッドユニット24に固定されるのに対し、図18の製造方法では、固定板22に対する複数のヘッドユニット24およびケース部材26の固定(工程QA2,QA3)に先立って、補強板27に複数のヘッドユニット24が固定される(QA1)。すなわち、図18の製造方法では、各ヘッドユニット24は、補強板27の接合により剛性が確保された状態で、固定板22およびケース部材26と接合される。したがって、ヘッドユニット24に作用する応力を低減する(ひいてはヘッドユニット24の変形や位置ずれを抑制する)という観点からは、図19の製造方法と比較して図18の製造方法が有利である。
<変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)前述の各形態に係る印刷装置100の液体噴射ヘッド16を、図20に例示される通り、キャリッジ18に搭載されたシリアルヘッドとした構成も採用され得る。図21に例示される通り、図20の液体噴射ヘッド16は、固定板22と複数(図20の例示では2個)のヘッドユニット24とケース部材26とを含んで構成される。第1実施形態と同様に、複数のヘッドユニット24の各々は、固定板22の第2面224に固定されるとともに、ケース部材26の壁部60(枠状部264)で画定される収容空間Sに収容される。図21から理解される通り、第2実施形態の壁部60は、平面視でヘッドユニット24を全周にわたり包囲する。壁部60のうち固定板22に対向する端面には、固定板22の第2面224に接触する複数の突起(図21では図示略)が形成される。図20に例示される通り、各ヘッドユニット24の複数のノズルNの配列の方向(X方向)が印刷媒体200の搬送の方向Aに向く姿勢で液体噴射ヘッド16はキャリッジ18に搭載される。キャリッジ18は、印刷媒体200の搬送の方向Aに交差する方向に沿って往復する。キャリッジ18の往復とともに各ヘッドユニット24のノズルNから印刷媒体200にインクが噴射される。変形例においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
(2)ケース部材26の壁部60や各突起部62の形態は以上の例示に限定されない。例えば、図22に例示される通り、ケース部材26の枠状部264(壁部60)の端面のうち内周縁側に形成された凹部269に接着剤74を塗布することも可能である。枠状部264の端面のうち凹部269以外の領域に複数の突起部62が形成される。図22の構成によれば、接着剤74が凹部269内に塗布されるから、接着剤74の余剰分が枠状部264の外側に流出する可能性を低減できるという利点がある。
(3)前述の各形態では、折曲げ部分を含まない平板状の固定板22を例示したが、固定板22が部分的に折曲げられた構成も採用され得る。例えば、図23に例示される通り、固定板22のうちケース部材26の枠状部264から張出した部分228を所定の折曲げ角度θだけケース部材26側に折曲げた構成が好適である。折曲げ角度θは、固定板22のうち折曲げの境界線を挟んだ一方側と他方側とのなす角度である。図23の構成によれば、ケース部材26と固定板22とを接合する接着剤74の余剰分の流出を固定板22の折曲げ部分228により阻止できるという利点がある。
なお、固定板22の折曲げ角度θが過度に小さい場合(例えば折曲げ角度θが鋭角である場合)には、折曲げ加工の過程で固定板22の平坦性が低下する(平面度ρの数値が増加する)可能性がある。したがって、固定板22を高度に平坦化するという観点からは、折曲げ角度θを鈍角の範囲(90°<θ<180°)内に制限した構成が好適である。前述の各形態で例示した平板状の固定板22は、折曲げ角度θが180°である(すなわち折曲げを含まない)とも換言され得る。
(4)前述の各形態では、平板材81の打抜き加工で固定板22を形成したが、各開口部226を形成する方法は打抜き加工に限定されない。例えば、平板材81のうち各開口部226に対応する領域をエッチングにより除去することで固定板22を形成することも可能である。エッチングを採用した場合には、固定板22を形成する工程P1にて平板材81に外力を作用させる必要がないから、固定板22を高度に平坦化するという効果は格別に顕著である。
(5)前述の各形態では、固定板22とは別個のノズルプレート42を各ヘッドユニット24に設置したが、固定板22をノズルプレート42として利用することも可能である。例えば、図24に例示される通り、流路形成板32のうち圧力室形成板34とは反対側の表面に固定板22の第2面224を例えば接着剤で接合し、流路形成板32の各連通流路326に連通するノズルNを固定板22に形成した構成が採用される。図24の構成では、前述の各形態で例示したノズルプレート42が省略されるから、ヘッドユニット24の構成が簡素化される(例えば部品点数が削減される)という利点がある。図5や図24の例示から理解される通り、複数のヘッドユニット24は、固定板22の第1面222側にインクを噴射可能なように固定板22の第2面224に固定され、ノズルプレート42の有無は不問である。
(6)圧力室C内の圧力を変化させる要素(圧力発生素子)は圧電素子362に限定されない。例えば、静電アクチュエータ等の振動体を圧力発生素子として利用することも可能である。また、圧力発生素子は、圧力室Cに機械的な振動を付与する要素に限定されない。例えば、加熱により圧力室Cの内部に気泡を発生させて圧力室C内の圧力を変化させる発熱素子(ヒーター)を圧力発生素子として利用することも可能である。すなわち、圧力発生素子は、圧力室Cの内部の圧力を変化させる要素として包括され、圧力を変化させる方式(ピエゾ方式/サーマル方式)や具体的な構成の如何は不問である。
(7)以上の各形態で例示した印刷装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。