一実施形態において、本発明のポリペプチドは、後述と共に図1に要約されている。
Dif44:このタンパク質は、「CD0844」としても公知であり、C.difficile由来の細胞表面タンパク質cwp25としてアノテートされる。ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号78および138ならびに配列番号79および139に提示されている配列に相当する。
Dif51:このタンパク質は、「CD0999」としても公知であり、C.difficile由来のABCトランスポーター基質結合タンパク質リポタンパク質としてアノテートされる。ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号80および140ならびに配列番号81および141に提示されている配列に相当する。N末端システインが欠失されたポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号356および357に提示されている配列に相当する。
Dif130:このタンパク質は、「CD2645」としても公知であり、C.difficile由来の推定細胞外溶質結合タンパク質としてアノテートされる。ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号92および152ならびに配列番号93および153に提示されている。N末端システインが欠失されたポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号358および359に提示されている配列に相当する。
Dif153:このタンパク質は、CD2830としても公知であり、220アミノ酸の仮定上のタンパク質としてアノテートされる。BLAST解析は、亜鉛メタロペプチダーゼのファミリーである炭疽菌致死因子タンパク質に対し相同性を示した。特に、Dif153は、炭疽菌致死因子のC末端ドメインに対し相同性を示す。防御抗原との相互作用に必要な炭疽菌のN末端ドメインは失われている。触媒部位(HEXXH)は保存されている(図17)。ポリペプチドの核酸配列および/またはアミノ酸配列は、それぞれ配列番号299、321および434ならびに配列番号300、322および435に提示されている配列を含む。BLAST解析は、亜鉛メタロペプチダーゼのファミリーである炭疽菌致死因子タンパク質に対し相同性を示した。特に、Dif153は、炭疽菌致死因子のC末端ドメインに対し相同性を示す。防御抗原との相互作用に必要な炭疽菌のN末端ドメインは、失われている。触媒部位(HEXXH)は保存されている(図15)。Dif153の解毒は、このポリペプチドのアミノ酸配列またはコード核酸配列に変異導入することにより達成することができ、プロテアーゼ活性を低下させるジンチン(zincin)メタロプロテアーゼドメインの全体または一部の欠失およびジンチンメタロプロテアーゼドメインにおける点突然変異を含む。Dif153(CD2830)の単一突然変異の例は、H142A、E143A、E143R、H146A、D149A、H150A、Y178FおよびC208Sである。Dif153(CD2830)の二重突然変異体の例は、配列番号300および435の野生型CT153(CD2830)ポリペプチド配列に対する、H142A/H146A;H142A/Y178F;H142A/E143R;H142A/E143A;E142A/Y178Fである。本発明は、また、CT153(CD2830)ポリペプチドの他の突然変異体を単独で、または組み合わせて提供する:H142A/H150AおよびE143A/D149A。前述の解毒された免疫原性ポリペプチドは、好ましくは、配列番号300および435の少なくとも1種のエピトープまたは免疫原性断片を保持する。これらの突然変異体に関する核酸配列およびアミノ酸配列は、表1に要約されている。
Dif183:このタンパク質は、「CD3669」としても公知であり、C.difficile由来の仮定上のタンパク質としてアノテートされる。C末端は、Bacillus subtilisにおいて胞子形成および発芽の両方に関係付けられたGerMNドメインを1コピー含有する(図20)。ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号186、188、187および189に提示されている。N末端システインが欠失されたポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号359および360に提示されている配列に相当する。
Dif192:このタンパク質は、「CD1035」としても公知であり、C.difficile由来の細胞表面タンパク質(推定Nアセチルムラモイル−L−アラニンアミダーゼ)cwp16としてアノテートされる。ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号104および164ならびに配列番号105および165に提示されている。
Dif208:このタンパク質は、「CD2831」としても公知であり、C.difficile由来のコラーゲン結合タンパク質ソルターゼ基質としてアノテートされる。ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号132および432ならびに配列番号133および433に提示されている。断片Dif208Aは、Dif208のアミノ酸32〜480に相当する。ポリペプチドDif208Aの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号110および170ならびに配列番号111および171に提示されている。断片Dif208Bは、Dif208のアミノ酸481〜938に相当する。ポリペプチドDif208Bの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号112および172ならびに配列番号113および173に提示されている。
Dif232:このタンパク質は、「CD1031」としても公知であり、C.difficile由来の細胞壁アンカータンパク質としてアノテートされる。ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号124および184ならびに配列番号125および185に提示されている。
本発明の特に好ましいポリペプチドは、Dif44およびDif208である。これらのポリペプチドは、in vivoでC.difficileによる腸管のコロニー形成を低下させることが示されており、免疫療法組成物において特に使用される。
一般に、本発明のポリペプチドは、特に、C.difficileの分野に関する薬および治療法、例えば、Clostridium difficile関連疾患(CDAD)に対する受動免疫化における使用のためのポリペプチドである。本発明は、また、医薬の製造におけるかかるポリペプチドの使用を提供する。
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、哺乳動物におけるC.difficile感染の防止、処置または重症度低下における使用のためのポリペプチドである。一部の実施形態において、本発明は、また、医薬の製造におけるかかる組成物の使用を提供する。
本発明および上述のポリペプチド、特に、Dif44およびDif208は、驚くべきことに、in vivoモデルにおいて検査した際に(実施例15)、C.difficileによる腸管のコロニー形成を低下させることが示された。これは、C.difficile感染における最も顕著な臨床的問題の1つである、胞子誘導疾患再発の防止に特に関連する。C.difficileに対する保護効果をもたらす実験ワクチンが、本発明および上述のポリペプチド、特に、Dif44およびDif208を含む抗原の組合せと同じ程度まで、C.difficileによる腸管のコロニー形成を低下させると以前に示されたことはない。
本発明者らは、Dif44またはDif208のいずれかと組み合わせた、C.difficileに対し保護効果を誘発する抗原の組合せを対象に投与し、その後にC.difficileを負荷した場合、腸管コロニー形成の低下が観察されることを示した。この効果は、負荷後の様々な時点において糞便に排出するC.difficileの量、または実験エンドポイントにおける腸管洗浄液もしくは組織から回収されるC.difficileの量の観点から考慮される。C.difficileに対する保護効果を誘発する抗原の組合せを投与し、その後にC.difficileを負荷した対象と比較して、腸管コロニー形成は、Dif44またはDif208のいずれかと組み合わせた、C.difficileに対し保護効果を誘発する抗原の組合せを投与され、その後にC.difficileを負荷した対象において低下する。
よって、本発明および上述のポリペプチド、特に、Dif44およびDif208は、C.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止または重症度低下において、またはC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下において特に使用される。「低下」は、パラメータの減少、好ましくは、統計的に有意な減少を引き起こすことを意味する。よって、C.difficileによる腸管のコロニー形成の低下は、C.difficileに対象を曝露した後の特定の時点における、例えば、C.difficileに対象を曝露した1、2、3、4、5、6、7日後、数週間後または数月後に、対象の腸管に存在するC.difficile細菌の数の減少を引き起こすことを指す。低下は、例えば、本発明のポリペプチド、組成物またはワクチンを投与されていない対象と比較した、C.difficileに対し保護効果を誘発する組成物(好ましくは、Dif44、Dif51、Dif130、Dif153、Dif183、Dif192、Dif208、Dif208AおよびDif232のうち1種または複数を含有しない、特に、DIF44またはDIF208を含有しない)を投与された対象と比較した、および/またはC.difficileに対し保護効果を誘発するいかなる組成物も投与されていない対象と比較したものである。低下は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%となり得る。
よって、本発明のポリペプチドは、例えば、本明細書に言及されている免疫原性組成物、ワクチンおよび医学的方法において使用することができるが、好ましくはC.difficileに対し、またはCDADに対し保護効果をもたらす、1種または複数の追加的な抗原と組み合わせて使用される場合に特に有用である。
C.difficileまたはCDADに対する保護効果は、関連する化合物(例えば、抗原または抗原の組合せ)の投与が、その後の感染または疾患の見込み、持続時間または重症度を防止および/または減少させる場合に観察される。これは、当該技術分野において周知の方法、例えば、関連する化合物を対象に投与し、対象にC.difficileを負荷する方法の使用に関して検査することができる。負荷の効果は、例えば、負荷を生き延びる動物のパーセンテージの観点から観察され、この値は、適切な対照、例えば、いずれかの化合物または保護効果を生じるいずれかの化合物の投与の非存在下において使用して得られる値と比較することができる。
C.difficileまたはCDADに対し保護効果をもたらすC.difficile抗原の例は、例えば、WO2013/084071に開示されているものであり、その内容は、本明細書中に参照として組み込まれる。よって、WO2013/084071に記載されているアッセイなどのアッセイを使用して、所定の化合物がかかる保護効果を有するか決定することができる。特に、全長C.difficile ToxB抗原と組み合わせた全長C.difficile ToxA(またはTcdA)抗原は、ゴールドスタンダードであると考えられ、よって、保護効果の陽性対照として機能することができる。よって、保護効果をもたらす抗原は、このゴールドスタンダードの少なくとも50、60、70、80、90、95または100%と同じほどに有効である。
C.difficileまたはCDADに対し保護効果をもたらす好ましいC.difficile抗原およびこれらの組合せは、WO2013/084071に開示されている。これらの抗原は、C.difficile毒素抗原とも称される。本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、1種または複数の追加的な抗原、好ましくは、C.difficileまたはCDADに対し保護効果をもたらす抗原をさらに含む。より好ましくは、追加的な抗原は、C.difficile毒素抗原である。本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、(a)少なくとも1種のToxB−GT抗原および(b)少なくとも1種のTcdA抗原をさらに含む。好ましくは、ToxB−GT抗原および/またはTcdA抗原は、解毒されている。
よって、本発明の好ましい免疫原性組成物は、C.difficile抗原の組合せを含み、前記組合せは、(a)Dif44、Dif51、Dif130、Dif153、Dif183、Dif192、Dif208、Dif208AおよびDif232からなる群から選択される1種または複数のポリペプチド、(b)少なくとも1種のToxB−GT抗原および(c)少なくとも1種のTcdA抗原を含み、好ましくは、C.difficile抗原の組合せを含み、前記組合せは、(a)Dif44およびDif208からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチド、(b)少なくとも1種のToxB−GT抗原および(c)少なくとも1種のTcdA抗原を含む。本明細書に使用されている「組合せ」は、抗原の二価、三価または多価の組合せを意味する。組合せは、好ましくは、防御応答を誘発、および/またはC.difficileによる腸管のコロニー形成を処置、防止もしくは低下させることができる。組合せが使用される場合、個々の構成成分は、順次、同時にまたは個別に投与することができる。
一部の実施形態において、ToxB−GT抗原は、(a)配列番号18もしくは配列番号60に対し80%以上の同一性を有する、および/またはb)配列番号18もしくは配列番号60の、または配列番号18もしくは配列番号60に対し80%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも7個の連続的なアミノ酸の断片であり、配列番号18もしくは配列番号60のエピトープを含むアミノ酸配列を含む、これから本質的になるまたはこれからなるポリペプチドである。好ましくは、ToxB−GT抗原は、配列番号18を含む、これから本質的になるまたはこれからなる。
一部の実施形態において、TcdA抗原は、(a)配列番号1に対し80%以上の同一性を有する、および/またはb)配列番号1の、または配列番号1に対し80%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも7個の連続的なアミノ酸の断片であり、配列番号1のエピトープを含むアミノ酸配列を含むまたはこれからなるポリペプチドである。
ある特定の実施形態において、免疫原性組成物は、ToxB−GT抗原と、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15種以上のTcdA抗原、例えば、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜9、3〜8、4〜7、5〜6種のTcdA抗原とを含むまたはこれをさらに含むであろう。好ましくは、1種または複数のTcdA抗原は、(1)ToxA−ED抗原(配列番号3)、(2)ToxA−GT抗原(配列番号4)、(3)ToxA−CP抗原(配列番号5)、(4)ToxA−T抗原(配列番号6)、(5)ToxA−T4抗原(配列番号7)、(6)ToxA−B抗原(配列番号8)、(7)ToxA−PTA2抗原(配列番号9)、(8)ToxA−P5−7抗原(配列番号10)、(9)ToxA−P5−6抗原(配列番号11)、(10)ToxA−P9−10抗原(配列番号12)、(11)ToxA−B2抗原(配列番号13)、(12)ToxA−B3抗原(配列番号14)、(13)ToxA−B5抗原(配列番号15)、(14)ToxA−B6抗原(配列番号16)または全長TcdA抗原(配列番号1)から選択される。より好ましくは、TcdA抗原は、配列番号11を含む、これから本質的になるまたはこれからなるToxA−P5−6抗原である。本明細書の他の箇所で考察している通り、1種または複数のTcdA抗原は、好ましくは、(a)これらの配列に対し80%以上の同一性を有する、および/または(b)これらの配列のうち1種もしくは複数の、またはこれらの配列のうち1種または複数に対し80%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも7個の連続的なアミノ酸の断片であり、関連する配列のエピトープを含む。
ある特定の実施形態において、免疫原性組成物は、ToxA−GT抗原と、(1)ToxB−ED抗原(配列番号17)、(2)ToxB−GT抗原(配列番号18)、(3)ToxB−CP抗原(配列番号19)、(4)ToxB−T抗原(配列番号20)、(5)ToxB−B抗原(配列番号21)、(6)ToxB−B2抗原(配列番号22)、(7)ToxB−B7(配列番号23)または(8)全長TcdB抗原(配列番号2)から必要に応じて選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9種以上のTcdB抗原、例えば、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜9、3〜8、4〜7、5〜6種のTcdA抗原とを含むまたはこれをさらに含むであろう。好ましくは、1種または複数のTcdB抗原は、ToxB−GT抗原、特に、配列番号18を含む、これから本質的になるまたはこれからなる抗原である。
特定の実施形態において、免疫原性組成物は、ToxB−GT抗原およびTcdA抗原を含むまたはこれをさらに含み、TcdA抗原は、ToxA−P5−6およびToxA−B2からなる群から選択される。より具体的には、TcdA抗原は、ToxA−P5−6である。さらにより具体的には、ToxA−P5−6抗原は、(a)配列番号11に対し80%以上の同一性を有する、および/またはb)配列番号11の、または配列番号11に対し80%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも7個の連続的なアミノ酸の断片であり、配列番号11のエピトープを含むアミノ酸配列を含む、これから本質的になるまたはこれからなるであろう。
ToxB−GT抗原
全長TcdB抗原(本明細書においてToxBおよび毒素Bとも称される)は、配列番号2のアミノ酸配列(配列番号31の核酸配列にコードされる)を含む。解毒されたTcdB抗原は、本明細書においてトキソイドBと称される。略語「ToxB−GT」は、酵素ドメイン(ED)のN末端領域内に位置する(図22に表されている)TcdBのグルコシルトランスフェラーゼドメインを指す。ToxB−GTドメイン(配列番号18、配列番号47の核酸配列にコードされる)は、配列番号2のアミノ酸1〜543に相当するTcdBの断片である。
本発明の組成物に含まれるToxB−GT抗原は、(a)配列番号18に対し50%以上の同一性(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.8%、99.9%以上)を有する、および/または(b)配列番号18の、または配列番号18に対し50%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも「n」個の連続的なアミノ酸の断片であり、「n」が、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、250、300、400、500、540以上)であるアミノ酸配列を含むまたはこれからなるポリペプチドである。好ましい断片は、配列番号18のエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号18の少なくとも1個のエピトープを保持しつつ、配列番号18のC末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を、および/またはN末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を欠く。よって、ToxB−GTのアミノ酸断片は、配列番号18の、例えば、最大30、最大40、最大50、最大60、最大70、最大80、最大90、最大100、最大125、最大150、最大175、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500または最大540個の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。
本発明の組成物に含まれるToxB−GT抗原は解毒されていてよい。解毒は、当該技術分野において公知のいずれかの適切な方法、例えば、部位特異的突然変異誘発を使用して、野生型ToxB−GT抗原のアミノ酸配列またはコード核酸配列に変異導入することにより達成することができる。好ましくは、ToxB−GT抗原は、配列番号18の野生型ToxB−GT抗原配列と比べて、1個または複数のアミノ酸置換(即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30個以上の突然変異)を含む。例えば、ToxB−GT抗原は、配列番号18の野生型ToxB−GT抗原配列と比べて、例えば、アミノ酸位置17、102、139、269、270、273、284、286、288、384、449、444、445、448、449、450、451、452、455、461、463、472、515、518および/または520に、1個または複数のアミノ酸置換(即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個以上の突然変異)を含む。例えば、ToxB−GT抗原は、配列番号18のTox−GT抗原配列のアミノ酸270、273、284、286および/または288に相当する1、2、3、4または5個の位置に置換を含むことができる。特に、配列番号18のToxB−GT抗原配列のアミノ酸270、273、284、286および/または288に相当する位置における1、2、3、4または5個のアミノ酸は、好ましくは、アラニン残基により置換することができる。これらの位置にアラニン置換を有する解毒されたToxB−GT抗原のアミノ酸配列は、配列番号60に提示されている。
ToxB−GTが、2個のアミノ酸置換を含む場合、置換は、好ましくは、配列番号18のToxB−GT抗原配列のアミノ酸位置102および278またはアミノ酸位置102および288におけるものではない。よって、本発明の組成物に含まれている解毒されたToxB−GT抗原は、(a)配列番号60に対し50%以上の同一性(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.8%、99.9%以上)を有する、および/または(b)配列番号60の、または配列番号60に対し50%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも「n」個の連続的なアミノ酸の断片であり、「n」が、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、250、300、400、500、540以上)であるアミノ酸配列を含むまたはこれからなるポリペプチドとなり得る。よって、解毒されたToxB−GTのアミノ酸断片は、配列番号60の、例えば、最大30、最大40、最大50、最大60、最大70、最大80、最大90、最大100、最大125、最大150、最大175、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500または最大540個の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。好ましい断片は、配列番号60のエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号60の少なくとも1個のエピトープを保持しつつ、配列番号60のC末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を、および/またはN末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を欠く。
ToxA−GT抗原
全長TcdA抗原(本明細書においてToxAおよび毒素Aとも称される)は、配列番号1のアミノ酸配列(配列番号30の核酸配列にコードされる)を含む。解毒されたTcdA抗原は、本明細書においてトキソイドAと称される。略語「ToxA−GT」は、酵素ドメイン(ED)のN末端領域内に位置するTcdAのグルコシルトランスフェラーゼドメインを指す。ToxA−GTドメイン(配列番号4、配列番号33の核酸配列にコードされる)は、配列番号1のアミノ酸1〜541に相当するTcdAの断片である。
本発明の組成物に含まれるToxA−GT抗原は、(a)配列番号4に対し50%以上の同一性(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.8%、99.9%以上)を有する、および/または(b)配列番号4の、または配列番号4に対し50%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも「n」個の連続的なアミノ酸の断片であり、「n」が、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、250、300、400、500、540以上)であるアミノ酸配列を含むまたはこれからなるポリペプチドである。好ましい断片は、配列番号4のエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号4の少なくとも1個のエピトープを保持しつつ、配列番号4のC末端から1個または複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を、および/またはN末端から1個または複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を欠く。
よって、ToxA−GTのアミノ酸断片は、配列番号4の、例えば、最大30、最大40、最大50、最大60、最大70、最大80、最大90、最大100、最大125、最大150、最大175、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500または最大540個の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。
本発明の組成物に含まれているToxA−GT抗原は、解毒されていてよい。解毒は、当該技術分野において公知のいずれかの適切な方法、例えば、部位特異的突然変異誘発を使用して、野生型ToxA−GT抗原のアミノ酸配列またはコード核酸配列に変異導入することにより達成することができる。好ましくは、ToxA−GT抗原は、配列番号4の野生型ToxA−GT抗原配列と比べて、1個または複数のアミノ酸置換(即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30個以上の突然変異)を含む。例えば、ToxA−GT抗原は、配列番号4のToxA−GT抗原配列のアミノ酸283、285および287に相当する、1、2または3個の位置に置換を含むことができる。特に、配列番号4のToxA−GT抗原配列のアミノ酸283、285および287に相当する位置における1、2または3個のアミノ酸は、好ましくは、アラニン残基により置換することができる。これらの位置にアラニン置換を有する解毒されたToxA−GT抗原のアミノ酸配列は、配列番号56に提示されている。
ToxA−GT抗原が、1個のアミノ酸置換を含む場合、置換は、好ましくは、配列番号4のToxA−GT抗原配列のアミノ酸位置278におけるものではない。ToxA−GT抗原が、2個のアミノ酸置換を含む場合、置換は、好ましくは、配列番号4のToxA−GT抗原配列のアミノ酸位置101および278におけるものではない。ToxA−GT抗原が、3個のアミノ酸置換を含む場合、置換は、好ましくは、配列番号4のToxA−GT抗原配列のアミノ酸位置101、278および519またはアミノ酸位置101、287および519におけるものではない。
よって、本発明の組成物に含まれる解毒されたToxA−GT抗原は、(a)配列番号56に対し50%以上の同一性(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.8%、99.9%以上)を有する、および/または(b)配列番号56の、または配列番号56に対し50%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも「n」個の連続的なアミノ酸の断片であり、「n」が、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、250、300、400、500、540以上)であるアミノ酸配列を含むまたはこれからなるポリペプチドとなり得る。好ましい断片は、配列番号56のエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号56の少なくとも1個のエピトープを保持しつつ、配列番号56のC末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を、および/またはN末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を欠く。よって、解毒されたToxB−GTのアミノ酸断片は、配列番号56の、例えば、最大30、最大40、最大50、最大60、最大70、最大80、最大90、最大100、最大125、最大150、最大175、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500または最大540個の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。
TcdA抗原:TcdA抗原は、(a)配列番号1に対し80%以上の同一性を有する、および/またはb)配列番号1の、または配列番号1に対し80%以上の同一性を有するポリペプチドの少なくとも7個の連続的なアミノ酸の断片であり、配列番号1のエピトープを含むアミノ酸配列を含むまたはこれからなるポリペプチドである。さらに、TcdA抗原は、図22に表されている、(1)ToxA−ED抗原(配列番号3)、(2)ToxA−GT抗原(配列番号4)、(3)ToxA−CP抗原(配列番号5)、(4)ToxA−T抗原(配列番号6)、(5)ToxA−T4抗原(配列番号7)、(6)ToxA−B抗原(配列番号8)、(7)ToxA−PTA2抗原(配列番号9)、(8)ToxA−P5−7抗原(配列番号10)、(9)ToxA−P5−6抗原(配列番号11)、(10)ToxA−P9−10抗原(配列番号12)、(11)ToxA−B2抗原(配列番号13)、(12)ToxA−B3抗原(配列番号14)、(13)ToxA−B5抗原(配列番号15)、(14)ToxA−B6抗原(配列番号16)または全長TcdA抗原(配列番号1)を含む。
本発明による使用に好ましいポリペプチドは、(a)配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64、79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463もしくは465に対し50%以上の同一性(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上)、例えば、90%同一性以上もしくは95%同一性以上もしくは99%同一性以上を有する、および/または(b)配列番号の少なくとも「n」個の連続的なアミノ酸の断片を含み、「n」が、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上、例えば、20以上または例えば、50以上または例えば、80以上)であるアミノ酸配列を含む。これらのポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64、79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463または465のバリアントを含む。(b)の好ましい断片は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64、79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463または465由来のエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64、79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463もしくは465の少なくとも1個のエピトープを保持しつつ、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64、79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463もしくは465のC末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を、および/またはN末端から1個もしくは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25個以上)を欠く。よって、本発明のポリペプチドのアミノ酸断片は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64、79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463または465の、例えば、最大30、最大40、最大50、最大60、最大70、最大80、最大90、最大100、最大125、最大150、最大175、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500、最大550、最大600、最大650、最大700個の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。他の断片は、1個または複数のポリペプチドドメインを省略する。例えば、天然リーダーペプチドおよび/またはソルターゼ認識配列を省略することができる。他の箇所で考察している通り、C.difficileによる腸管コロニー形成を阻害する好ましいポリペプチドは、Dif44およびDif208(即ち、配列番号79、139、133および433ならびに208Aおよび208B断片に関しては配列番号111、171、113および173)である。好ましいC.difficile毒素抗原は、ToxB_GT(配列番号18および60)およびToxA_p5−6(配列番号11)である。
用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状であっても分枝状であってもよく、修飾アミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語は、天然にまたは介入により修飾されたアミノ酸ポリマーも包含し、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化または標識構成成分によるコンジュゲーション等、他のいずれかの操作もしくは修飾がある。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1種または複数のアナログおよび当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。ポリペプチドは、単鎖または付随鎖(associated chain)として存在し得る。
本発明のポリペプチドは、様々な形態(例えば、未変性、融合体、グリコシル化型、非グリコシル化型、脂質付加型、非脂質付加型、リン酸化型、非リン酸化型、ミリストイル化型、非ミリストイル化型、単量体、多量体、粒子状、変性型等)を採ることができる。例えば、本発明のポリペプチドは、N末端システインを持たなくてよい。本発明は、N末端システインが欠失されたポリペプチドも提供する(例えば、Dif51(配列番号357)、Dif130(配列番号359)およびDif183(配列番号361))。本発明のポリペプチドは、アンカードメインを持たなくてよい(例えば、Dif208(配列番号433)、DIf208B(配列番号173)およびDif232(配列番号185))。
一部の実施形態において、配列同一性の程度は、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上を超える(例えば、本明細書に言及され、配列表に提示されている配列に対する)。これらのポリペプチドは、ホモログ、オルソログ、対立遺伝子バリアントおよび機能的突然変異体を含む。典型的に、2種のポリペプチド間の50%同一性以上は、機能的均等性の指標であるとみなされる。タンパク質間の同一性は、パラメータ、ギャップオープンペナルティ=12およびギャップ伸長ペナルティ=1によるアフィンギャップ検索を使用して、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)において実行されるスミス−ウォーターマン相同性検索アルゴリズムによって決定することができる。
別の実施形態において、本発明のポリペプチドの断片を使用することができる。断片は、配列由来の少なくともn個の連続的なアミノ酸を含む必要があり、特定の配列に応じて、nは、10以上(例えば、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上)である。よって、断片は、例えば、最大30、最大40、最大50、最大60、最大70、最大80、最大90、最大100、最大125、最大150、最大175、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500、最大640または最大1105個の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。よって、断片は、例えば、30未満、40未満、50未満、60未満、70未満、80未満、90未満、100未満、125未満、150未満、175未満、200未満、250未満、300未満、350未満、400未満、450未満、500未満、640未満または1105個未満の連続的なアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の実施形態において、アミノ酸断片は、50以下、60以下、75以下、100以下、150以下、200以下、250以下、300以下、350以下、400個以下のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むことができる。
好ましい断片は、エピトープを含む、または免疫原性断片である。特に、断片は、配列由来の1個または複数のエピトープを含むことができる。他の断片は、(a)本発明のポリペプチドのN末端シグナルペプチドである、(b)本発明のポリペプチドであるが、そのN末端シグナルペプチドを持たない、および(c)本発明のポリペプチドであるが、そのN末端アミノ酸残基を持たない。特に、本発明は、断片、Dif208A(CD2831)およびDif208B(CD2831)を提供する。これらの断片のアミノ酸(amino)配列は、図1に要約されている。
本明細書において使用される場合、用語「断片」は、別の配列のサブセットである配列を指す。核酸またはアミノ酸配列の文脈において使用される場合、用語「断片」および「サブ配列(subsequence)」は、互換的に使用される。これらの用語は、インタクトまたは完全な野生型ポリペプチドの部分または一部であるが、インタクトまたは完全な野生型ポリペプチドよりも少ないアミノ酸残基を含む部分または一部を指すように使用される。よって、この用語は、野生型または参照ポリペプチドの1個または複数の領域に相当する、トランケートされたまたはより短いアミノ酸配列を指す。断片の一例は、エピトープ配列である。アミノ酸配列の断片またはサブ配列は、天然起源または参照ポリペプチドに見られる数に満たないいかなる数の残基であってもよい。本発明が、「エピトープ」に関する場合、このエピトープは、B細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープとなり得る。かかるエピトープは、経験的に同定することができる(例えば、PEPSCAN[9、10]または同様の方法を使用する)、または予測することができる(例えば、ジェームソン−ウォルフ抗原指数[11]、マトリックスに基づくアプローチ[12]、MAPITOPE[13]、TEPITOPE[14、15]、ニューラル・ネットワーク[16]、OptiMer & EpiMer[17、18]、ADEPT[19]、Tsites[20]、親水性[21]、抗原指数[22]または[23〜27等]に開示されている方法を使用して)。エピトープは、抗体またはT細胞受容体の抗原結合部位によって認識され、これに結合する抗原の部分であり、「抗原決定基」と称することもできる。
かかる断片は、参照配列のトランケートされたまたはより短い断片であるが、かかる断片が、参照ポリペプチドには見られない追加的な配列を含むように、例えば、HisタグまたはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグなどの「タグ」配列、リンカー配列等を含む融合ポリペプチドを形成するように修飾されていてよいことは、当業者であれば明らかであろう。よって、かかる修飾断片において、断片のN末端アミノ酸のアミノ基は、アミノ酸のカルボキシル基へとペプチド結合により連結されていない(参照ポリペプチドにおいては連結されている)、および/または断片のC末端アミノ酸のカルボキシル基は、アミノ酸のアミノ基へとペプチド結合によって連結されていない(参照ポリペプチドにおいては連結されている)。
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドのパーセント同一性は一般に、第1および第2のポリペプチドの間で一致した位置の数を計数し、この数を最短ポリペプチドの全長で割り、続いて得られた値に100を掛けることにより決定される。ポリペプチドの断片に関して、この値は通常100%前後であり、したがって、殆ど意味がない。したがって、本発明の断片の文脈において、用語「参照ポリペプチドの割合」(パーセンテージとして表す)が使用される。参照ポリペプチドの割合は、断片および参照ポリペプチドの間で一致した位置の数を計数し、この数を参照ポリペプチドの全長で割り、続いて得られた値に100を掛けることにより計算される。特に、断片は、参照ポリペプチドの配列の90、80、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25未満または20%未満を含むであろう。
よって、例えば、本発明の組成物、ワクチンおよび方法に有用なポリペプチドは、他の箇所で考察している通り、配列表に列挙されている配列を有することができる、またはそのバリアントおよび/もしくは断片となり得る。かかるバリアントおよび/または断片が使用される範囲まで、これらは、配列表に列挙されている配列の機能的特性を共有する。例えば、配列表において言及されているC.difficile毒素配列のバリアントおよび/または断片は、好ましくは、C.difficileに対する保護効果をもたらす(例えば、配列表において言及されている関連するまたは相当するC.difficile毒素配列によって示される保護効果の少なくとも50、60、70、80、90、95または100%の保護効果をもたらす)列挙されている配列を有するポリペプチドの能力を共有する。配列表において言及されているC.difficileポリペプチドDif44、Dif51、Dif130、Dif153、Dif183、Dif192、Dif208およびDif232のバリアントおよび/または断片は、好ましくは、C.difficileによる腸管のコロニー形成を低下させる(例えば、配列表において言及されている関連するまたは相当するC.difficileポリペプチドDif44、Dif51、Dif130、Dif153、Dif183、Dif192、Dif208およびDif232によって示される腸管のコロニー形成の少なくとも50、60、70、80、90、95または100%である、C.difficileによる腸管のコロニー形成の低下をもたらす)列挙されている配列を有するポリペプチドの能力を共有する。
本発明により使用されるポリペプチドは、様々な手段(例えば、組換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成等)によって調製することができる。一般に、本発明のポリペプチドは、精製された形態または実質的に精製された形態で提供される、即ち、特に、他のC.difficileまたは宿主細胞のポリペプチド由来の他のポリペプチドを実質的に含まず(例えば、天然起源のポリペプチドを含まない)、一般に、少なくとも約50%純粋(重量で)であり、通常、少なくとも約90%純粋である、即ち、組成物の約50%未満、より典型的には、約10%(例えば、5%)未満が、他の発現ポリペプチドで構成される。よって、組成物中のポリペプチドは、分子が発現された生物全体から分離されている。
好ましい実施形態において、本発明は、免疫原性である、配列番号79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、これから本質的になるまたはこれからなるポリペプチドを提供する。
本明細書に記載されているポリペプチドまたはタンパク質の文脈における用語「免疫原性」とは、例えば、対象(好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトまたはマウス)を免疫化するために使用される場合、抗原またはポリペプチドが、これが由来する野生型C.difficileタンパク質に対する体液性または細胞性免疫応答、好ましくはその両方などの免疫応答を誘発することができることを意味するように使用される。免疫原性ポリペプチドは、一般に、抗原性と称される。分子は、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができる場合、「抗原性」である。抗原性ポリペプチドは、少なくとも約5、特に、少なくとも約10、少なくとも15、少なくとも20または少なくとも50アミノ酸のエピトープを含有する。エピトープとも称されるポリペプチドの抗原性部分は、抗体もしくはT細胞受容体認識に対して免疫優性部分となり得る、または免疫化のために抗原性部分を担体ポリペプチドにコンジュゲートすることにより、分子に対する抗体の作製に使用される部分となり得る。当業者は、抗原性の分子それ自体が免疫原性である必要はなく、例えば、一部の抗原は、免疫応答の誘発を可能にするアジュバントまたは担体の存在を必要とすることを認識するであろう。
用語「抗原」は、対象がそれに対する免疫応答、例えば、体液性および/または細胞性免疫応答を惹起することができる分子を指す。組成物またはワクチンに対する「免疫学的応答」は、対象とする組成物またはワクチンに対する細胞性および/または抗体媒介性免疫応答の宿主における発達である。通常、「免疫学的応答」として、次の効果のうち1種または複数が挙げられるがこれらに限定されない:対象とする組成物またはワクチンに含まれる抗原(複数可)へと特異的に方向づけられた、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞および/または細胞傷害性T細胞の産生。好ましくは、対象は、新たな感染に対する抵抗性が増強される、および/または疾患の臨床重症度が低下するような、治療的または保護的な免疫学的応答のいずれかを呈するであろう。かかる保護は、感染した対象によって正常に呈される症状の低下もしくはその欠如、より迅速な回復時間、および/または感染した宿主における病原体もしくは細菌の負荷の低下のいずれかにより実証されるであろう。用語「免疫原性」タンパク質またはポリペプチドは、本明細書において使用される場合、上述の免疫学的応答を誘発するアミノ酸配列も指す。
ハイブリッドC.difficileポリペプチド
本発明において使用されるポリペプチドは、個々の別々のポリペプチドとして組成物中に存在することができる。しかし、2種以上のポリペプチドが使用される場合、別々のポリペプチドとして存在していなくてもよい。その代わりに、少なくとも2種の(例えば、2、3、4、5種以上の)ポリペプチドは、単一のポリペプチド鎖(「ハイブリッド」ポリペプチド)として発現させることができる。ハイブリッドポリペプチドは、2つの主要な利点をもたらす:第1に、それだけでは不安定または不十分に発現され得るポリペプチドが、この問題を克服する適したハイブリッドパートナーの付加により補助され得る;第2に、両者共に抗原として有用な2種のポリペプチドを産生するために1回のみの発現および精製の使用が必要とされるため、商業的製造が単純化される。少なくとも2種のポリペプチドのハイブリッドポリペプチドは、単独または単純な混合物における少なくとも2種のポリペプチドのうち1種または複数よりも免疫原性となることもできる。ハイブリッドポリペプチドは、本発明のポリペプチドのそれぞれに由来する2種以上のポリペプチド配列、または配列が株にわたって部分的可変性を有する場合は同じポリペプチドの2種以上のバリアントを含むことができる。2、3、4、5、6、7、8、9または10種のポリペプチド由来のアミノ酸配列からなるハイブリッドが有用である。一部の実施形態において、2もしくは3種のポリペプチドなどの2、3、4または5種のポリペプチド由来のアミノ酸配列からなるハイブリッドが使用される。異なるハイブリッドポリペプチドは、単一の製剤において一体に混合することができる。ハイブリッドは、非ハイブリッドポリペプチドと組み合わせることができる。かかる組合せの範囲内で、ポリペプチドは、2種以上のハイブリッドポリペプチドにおいておよび/または非ハイブリッドポリペプチドとして存在することができる。しかし、ポリペプチドは、ハイブリッドまたは非ハイブリッドのいずれかとして存在することが典型的であり、その両方としては存在しない。ハイブリッドポリペプチドは、後述するコンジュゲートまたは非C.difficileポリペプチドと組み合わせることもできる。
ハイブリッドポリペプチドは、式NH2−A−{−X−L−}n−B−COOH(式中、Xは、上述のC.difficileポリペプチドのアミノ酸配列であり、Lは、任意選択のリンカーアミノ酸配列であり、Aは、任意選択のN末端アミノ酸配列であり、Bは、任意選択のC末端アミノ酸配列であり、nは、2以上(例えば、2、3、4、5、6等)の整数である)によって表すことができる。通常、nは、2または3である。−X−部分が、その野生型形態のリーダーペプチド配列を有する場合、これは、ハイブリッドポリペプチドにおいて含まれていても省略されていてもよい。一部の実施形態において、ハイブリッドポリペプチドのN末端に位置する−X−部分の場合を除き、リーダーペプチドは欠失され得る、即ち、X1のリーダーペプチドは保持されるであろうが、X2…Xnのリーダーペプチドは省略されるであろう。これは、全リーダーペプチドの欠失および部分−A−としてのX1のリーダーペプチドの使用と均等である。{−X−L−}の各nの場合に対して、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在しても存在しなくてもよい。例えば、n=2の場合、ハイブリッドは、NH2−X1−L1−X2−L2−COOH、NH2−X1−X2−COOH、NH2−X1−L1−X2−COOH、NH2−X1−X2−L2−COOH等となり得る。リンカーアミノ酸配列(複数可)−L−は、典型的に短くなるであろう(例えば、20個以下のアミノ酸、即ち、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個)。例として、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリグリシンリンカー(即ち、Glyn(式中、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)を含む)およびヒスチジンタグ(即ち、Hisn(式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上))が挙げられる。他の適したリンカーアミノ酸配列は、当業者に明らかであろう。有用なリンカーは、GSGGGG(配列番号351)またはGSGSGGGG(配列番号352)であり、Gly−Serジペプチドは、BamHI制限部位から形成され、これによりクローニングおよび操作を助け、(Gly)4テトラペプチドは、典型的なポリグリシンリンカーである。特に、最後のLnとしての使用のための他の適したリンカーは、ASGGGS(配列番号353)またはLeu−Gluジペプチドである。−A−は、任意選択のN末端アミノ酸配列である。これは、典型的に短くなるであろう(例えば、40個以下のアミノ酸、即ち、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個)。例として、タンパク質輸送を方向づけるためのリーダー配列またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、即ち、Hisn(式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上))が挙げられる。他の適したN末端アミノ酸配列は、当業者に明らかであろう。X1が、それ自体のN末端メチオニンを欠く場合、−A−は、通常、N末端メチオニン、例えば、Met−Ala−Serまたは単一Met残基をもたらすオリゴペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8アミノ酸を有する)である。−B−は、任意選択のC末端アミノ酸配列である。これは、典型的に短くなるであろう(例えば、40個以下のアミノ酸、即ち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個)。例として、タンパク質輸送を方向づけるための配列、クローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、即ち、Hisn(式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上)を含む)またはタンパク質安定性を増強する配列が挙げられる。他の適したC末端アミノ酸配列は、当業者に明らかであろう。ハイブリッドポリペプチドが使用される場合、ハイブリッド内の個々のポリペプチド(即ち、個々の−X−部分)は、1種または複数の株に由来し得る。例えばn=2の場合、X2は、X1と同じ株に由来しても、C.difficileの異なる株に由来してもよい。n=3の場合、株は、(i)X1=X2=X3、(ii)X1=X2≠X3、(iii)X1≠X2=X3、(iv)X1≠X2≠X3または(v)X1=X3≠X2等となり得る。
群(c)内において、欠失または置換は、N末端および/またはC末端において生じても、両末端間に生じてもよい。よって、トランケーションは、欠失の例である。トランケーションは、N末端および/またはC末端における最大40個(以上)のアミノ酸の欠失に関与し得る。N末端トランケーションは、例えば、異種性宿主における組換え発現を容易にするためにリーダーペプチドを除去することができる。C末端トランケーションは、例えば、異種性宿主における組換え発現を容易にするためにアンカー配列を除去することができる。本発明によれば、Xnは、Dif44、Dif51、Dif130、Dif153、Dif183、Dif192、Dif208、Dif208A、Dif232、ToxB−GT抗原およびTcdA抗原からなる群から選択される2種以上の抗原のアミノ酸配列を含むことができる。各Xnは、本発明の抗原の組合せ(上述の)の抗原のアミノ酸配列となり得る。ある特定の実施形態において、nは2である。nが2である場合、X1は通常ToxB−GT抗原であり、X2は通常TcdA抗原であるが、本発明に従って上述の抗原のうち2種の他のいかなる組合せを使用してもよい。nが3である場合、例えば、上述の3種の抗原のいかなる組合せを使用してもよい。nが4である場合、例えば、上述の4種の抗原のいかなる組合せを使用してもよい。一般に、Xnの2種以上は、同じ抗原であっても、またはnが2、3もしくは4である場合、各Xnは、異なる抗原であってもよい。Xnの2種以上が同じ抗原の配列である場合、前記2種以上のXnは、同じポリペプチド配列または異なるポリペプチド配列を有することができ、例えば、上述の所定の抗原の異なるバリアントまたは断片となることができる。これらの抗原が、(a)所定の配列に対し50%以上の同一性(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上)を有する、および/または(b)所定の配列の少なくとも「n」個の連続的なアミノ酸の断片を含み、「n」が、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上)であるという観点から定義される場合、(a)における同一性のレベルおよび(b)における「n」の値は、各Xについて同じであり得る。
本発明により使用されるポリペプチドは、配列−P−Q−または−Q−P−(式中、−P−が、上に定義されるアミノ酸配列であり、−Q−は、上に定義される配列ではない、即ち、融合タンパク質として提供することができる)を含むことができる。−P−のN末端コドンがATGではなく、このコドンがポリペプチドのN末端に存在しない場合、これは、Metとしてではなく、該コドンの標準アミノ酸として翻訳されるであろう。しかし、このコドンが、ポリペプチドのN末端に存在する場合、これは、Metとして翻訳されるであろう。−Q−部分の例として、ヒスチジンタグ(即ち、Hisn(式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上))、マルトース結合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)が挙げられるがこれらに限定されない。本発明により使用されるポリペプチドの発現は、E.coliなどの発現(組換え発現)のための異種性宿主において行うことができる。異種性宿主は、原核生物(例えば、細菌)であっても真核生物であってもよい。非限定例として、他の適した宿主は、Bacillus subtilis、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Mycobacteria(例えば、M.tuberculosis)、酵母等を含む。当業者であれば、コードされるアミノ酸に影響を与えずに、かかる宿主における発現効率を最適化するためにコドンを変化させることが役立ち得ることを理解するであろう。
核酸
別の実施形態において、本発明は、配列番号79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸を提供する。配列番号79、139、133、433、111、171、113および173が好ましい。特定の核酸配列は、配列番号78、80、92、104、110、112、124、132、138、140、152、164、170、172、184、186、188、356、358、360、432、434、436、438、440、442、444、446、448、450、452、454、456、458、460、462および464である。配列番号78、132、138、432、110、170、112および172が好ましい。
抗原の組合せのペプチドをコードするヌクレオチド配列は、遺伝コードに従って設計することができる。よって、かかるヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64(例えば、ToxBおよびTcdA分子をコード)のうち1種もしくは複数をコードすることができる、または配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、55、57、59、61、63、65、66、67、68、69のうち1種または複数を含むことができる。
これらの核酸は、組成物、例えば、ワクチンまたは他の免疫原性組成物における使用に適している。核酸(例えば、核酸の組合せ、ベクターまたはベクターの組合せ)は、本発明により使用されるポリペプチド、本発明により使用されるポリペプチドの組合せまたはハイブリッドポリペプチドをコードする。本発明の抗原の組合せの1種または複数(例えば、2、3または4種)のポリペプチドまたはハイブリッドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を使用することができる。核酸は、例えば、ベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)であり得る。本発明のポリペプチドをコードする核酸(典型的に、DNA)を使用して、核酸免疫化に基づく組成物、方法および使用を得ることができる。現在、核酸免疫化は、発展した分野である(例えば、参考文献28〜35等を参照)。
本発明の組成物において使用することのできる本発明の核酸は、配列番号78、80、92、104、110、112、124、132、138、140、152、164、170、172、184、186、188、356、358、360、432、434、436、438、440、442、444、446、448、450、452、454、456、458、460、462および464ならびに配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、55、57、59、61、63、65、66、67、68、69である。加えて、かかるヌクレオチド配列に対し配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸を、本発明の組成物において使用することもできる。配列間の同一性は、好ましくは、上述のスミス−ウォーターマン相同性検索アルゴリズムによって決定される。かかる核酸は、同じアミノ酸をコードする代替的なコドンを使用する核酸を含む。代替的なコドンの使用は、ワクチン接種後の哺乳動物における発現を助けることができる。
よって、言及されている核酸のいずれかに対し50%以上の同一性(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上、例えば、90%同一性以上または95%同一性以上または99%同一性以上)を有するヌクレオチド配列を含む核酸を使用することができる。配列番号78、80、92、104、110、112、124、132、138、140、152、164、170、172、184、186、188、356、358、360、432、434、436、438、440、442、444、446、448、450、452、454、456、458、460、462および464ならびに配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、55、57、59、61、63、65、66、67、68、69を含む群から選択される核酸にハイブリダイズすることができる核酸を、本発明の組成物において使用することもできる。ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行うことができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増加させる条件は、当該技術分野において広く公知であり公表されている。関連する条件の例として、次の条件が挙げられる(ストリンジェンシーが増加する順に):インキュベーション温度、25℃、37℃、50℃、55℃および68℃;バッファー濃度、10×SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSC(SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸塩バッファー)および他の緩衝系を使用したその均等物;ホルムアミド濃度、0%、25%、50%および75%;インキュベーション時間、5分間から24時間;1、2回以上の洗浄ステップ;洗浄インキュベーション時間、1、2または15分間;ならびに洗浄溶液、6×SSC、1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水。ハイブリダイゼーション技法およびその最適化は、当該技術分野において周知のものである(例えば、参考文献36、37等を参照)。一部の実施形態において、本発明の核酸は、低ストリンジェンシー条件下で標的にハイブリダイズする。他の実施形態において、これは、中等度ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。一部の実施形態において、これは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、50℃および10×SSCである。中等度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、55℃および1×SSCである。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、68℃および0.1×SSCである。
一部の組成物において、上述の核酸配列の断片(例えば、配列表において言及されている特定の配列を有する分子の断片、または配列表において言及されている特定の配列とハイブリダイズするその能力の参照による、もしくはそれとのパーセンテージ配列同一性による上に定義されているバリアントの断片)を用いることができる。本発明のある特定の実施形態に関して、核酸は、少なくとも7ヌクレオチドの長さ(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300ヌクレオチド以上の長さ)である。本発明のある特定の実施形態に関して、核酸は、最大で500ヌクレオチドの長さ(例えば、450、400、350、300、250、200、150、140、130、120、110、100、90、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15ヌクレオチド以下の長さ)である。核酸断片は、好ましくは、配列表において言及されている特定の配列のエピトープをコードする。
本発明による核酸は、様々な形態(例えば、一本鎖型、二本鎖型、ベクター、プライマー、プローブ、標識型等)を採ることができる。本発明の核酸は、環状または分枝状となることができるが、一般に、直鎖状となるであろう。他に指定または要求がなければ、核酸を利用する本発明のいずれかの実施形態は、二本鎖型および二本鎖型を構成する2本の相補的な一本鎖型のそれぞれの両方を利用することができる。プライマーおよびプローブは一般に、アンチセンス核酸のように一本鎖型である。用語「補体(complement)」または「相補的(complementary)」は、核酸に関して使用される場合、ワトソン−クリック塩基対形成を指す。よって、Cの補体はGであり、Gの補体はCであり、Aの補体はT(またはU)であり、T(またはU)の補体はAである。例えば、ピリミジン(CまたはT)の補体とするために、I(プリンイノシン)などの塩基を使用することも可能である。
本明細書に記載されている抗原をコードする核酸を使用して、例えば、生物学的試料における核酸の検出のためのハイブリダイゼーションプローブとしてポリペプチドを産生すること;核酸の追加的なコピーを作製すること;一本鎖DNAプライマーもしくはプローブまたは三本鎖形成オリゴヌクレオチドとしてリボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製することができる。本発明は、本明細書に記載されている抗原をコードする核酸を産生するためのプロセスを提供し、核酸は、化学的手段を使用して部分的にまたは全体的に合成される。本発明は、本明細書に記載されている抗原をコードするヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)と、かかるベクターで形質転換された宿主細胞とを提供する。
核酸免疫化
ポリペプチドをコードする核酸は、哺乳動物への送達後にin vivoで発現させることができ、次に、発現されたポリペプチドは、免疫系を刺激する。活性成分は、典型的に、(i)プロモーターと、(ii)該プロモーターに作動可能に連結した、ポリペプチドをコードする配列と、必要に応じて(iii)選択可能マーカーとを含む核酸ベクターの形態を採るであろう。一部の実施形態において、ベクターは、(iv)複製起点と、(v)(ii)の下流にあり、これに作動可能に連結した転写ターミネーターとをさらに含むことができる。一般に、(i)および(v)は、真核性であり、(iii)および(iv)は、原核性である。典型的なプロモーターは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のウイルスプロモーターである。ベクターは、プロモーターに加えて、プロモーターと機能的に相互作用する転写調節配列(例えば、エンハンサー)を含むこともできる。ベクターは、最初期CMVエンハンサー/プロモーターを含むことができ、CMVイントロンAを含むこともできる。ポリペプチドコード配列の発現がプロモーターの制御下にあるように、プロモーターは、ポリペプチドをコードする下流配列に作動可能に連結される。マーカーが使用される場合、これは、典型的に、微生物宿主(例えば、原核生物、細菌、酵母)において機能する。マーカーは多くの場合、原核生物の選択可能マーカー(例えば、原核生物プロモーターの制御下において転写される)である。便宜上、典型的なマーカーは、抗生物質抵抗性遺伝子である。ベクターは、典型的に、プラスミドなどの自己複製するエピソームまたは染色体外ベクターである。ベクターは、通常、複製起点を含む。多くの場合、複製起点は、原核生物において活性であるが、真核生物においては活性でない。よって、ベクターは、ベクターの選択のための原核性マーカー、原核性複製起点を含むが、ポリペプチドコード配列の転写を駆動するための真核性プロモーターを含むことができる。したがって、ベクターは、(a)原核性宿主においてポリペプチドを発現することなく増幅され選択されるが、(b)真核性宿主において増幅されることなく発現されるであろう。この構成は、核酸免疫化ベクターに理想的である。ベクターは、コード配列の下流に真核性転写ターミネーター配列を含むことができる。これは、転写レベルを増強することができる。コード配列自体にない場合、ベクターは、ポリアデニル化配列、例えば、ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化配列を含むことができる。ベクターは、多重クローニング部位を含むことができる。
ポリペプチドおよびマーカーをコードする配列に加えて、ベクターは、第2の真核性コード配列を含むことができる。ベクターは、ポリペプチドと同じ転写物からの第2の真核性ポリペプチドの翻訳を可能にするために、前記第2の配列の上流にIRES(内部リボソーム進入部位)を含むこともできる。あるいは、ポリペプチドコード配列は、IRESの下流となり得る。ベクターは、非メチル化CpGモチーフ、例えば、2個の5’プリンおよび2個の3’ピリミジンに隣接する、グアノシンに先行するシトシンを共通して有する非メチル化DNA配列を含むことができる。その非メチル化型において、これらのDNAモチーフは、数種類の免疫細胞の強力な刺激因子であることが実証された。ベクターは、標的化された仕方で送達することができる。受容体媒介性DNA送達技法は、例えば、参考文献38〜43に記載されている。核酸を含有する治療組成物は、遺伝子療法プロトコールにおける局所的投与のために約100ng〜約200mgのDNAの範囲で投与される。約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μgおよび約20μg〜約100μgのDNAの濃度範囲を、遺伝子療法プロトコールの間使用することもできる。作用の方法(例えば、コードされる遺伝子産物のレベルを増強または阻害するための)ならびに形質転換および発現の有効性などの因子は、究極的な有効性に要求される投薬量に影響を与えると思われる検討事項である。より広い範囲の組織にわたってより多い発現が望まれる場合、逐次的投与プロトコールにおいてより大量のベクターまたは同じ量が再投与される、または良好な治療成績をもたらすために異なる近接または付近の組織部分への数回の投与が必要とされ得る。あらゆる事例において、臨床試験における慣例的な実験法は、最適治療効果のための特定の範囲を決定するであろう。ベクターは、遺伝子送達媒体を使用して送達することができる。遺伝子送達媒体は、ウイルスまたは非ウイルス起源のものであり得る(一般に、参考文献44〜47を参照)。所望の核酸の送達および所望の細胞における発現のためのウイルスに基づくベクターは、当該技術分野において周知である。例示的なウイルスに基づく媒体として、組換えレトロウイルス(例えば、参考文献48〜58)、アルファウイルスに基づくベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532);これらのウイルスのハイブリッドまたはキメラを使用することもできる)、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニア、鶏痘、カナリアポックス、修飾ワクシニアAnkara等)、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、参考文献59〜64を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。死滅アデノウイルスに連結されたDNAの投与[65]を用いることもできる。
死滅したアデノウイルス単独に連結されたまたは連結されていないポリカチオン性凝縮DNA[例えば、65]、リガンド連結DNA[66]、真核細胞送達媒体細胞[例えば、参考文献67〜71]および核電荷中和(nucleic charge neutralization)または細胞膜との融合を挙げることができるがこれらに限定されない、非ウイルス送達媒体および方法を用いることもできる。ネイキッドDNAを用いることもできる。例示的なネイキッドDNA導入方法は、参考文献72および73に記載されている。遺伝子送達媒体として作用することのできるリポソーム(例えば、免疫リポソーム)は、参考文献74〜78に記載されている。追加的なアプローチは、参考文献79および80に記載されている。使用に適したさらなる非ウイルス送達は、参考文献80に記載されているアプローチなどの機械的送達系を含む。さらに、コード配列およびその発現産物は、光重合したハイドロゲル材料の沈着または電離放射線の使用により送達することができる[例えば、参考文献81および82]。コード配列の送達に使用することのできる遺伝子送達のための他の従来方法は、例えば、ハンドヘルド遺伝子移入粒子銃の使用[83]または移入した遺伝子を活性化するための電離放射線の使用[81および82]を含む。PLG{ポリ(ラクチド−co−グリコリド)}微粒子を使用したDNAの送達は、例えば、負に荷電した表面(例えば、SDSで処理)または正に荷電した表面(例えば、CTABなどのカチオン性洗剤で処理)を有するよう必要に応じて処理された微粒子への吸着による、特に好ましい方法である。
核酸は、典型的に、精製または実質的に精製された形態で提供される、即ち、特に、他のC.difficile核酸または宿主細胞核酸由来の他の核酸を実質的に含まず(例えば、天然起源の核酸を含まず)、一般に、少なくとも約50%純粋(重量で)であり、通常、少なくとも約90%純粋である。本発明における使用のための核酸は、例えば、全体的または部分的な化学合成(例えば、DNAのホスホラミダイト合成)により、ヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)を使用してより長い核酸を消化することにより、より短い核酸またはヌクレオチドを連接することにより(例えば、リガーゼまたはポリメラーゼを使用して)、ゲノムまたはcDNAライブラリーから等、多くの仕方で調製することができる。用語「核酸」は、広義には、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはそれらのアナログを含有する任意の長さのポリマー型のヌクレオチドを含む。これは、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドを含む。これは、修飾骨格(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはホスホロチオエート)または修飾塩基を含有するものなどのDNAアナログまたはRNAアナログも含む。よって、本発明は、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、DNA、cDNA、組換え核酸、分枝状核酸、プラスミド、ベクター、プローブ、プライマー等を含む。本発明の核酸は、RNAの形態を採る場合、5’キャップを有していても有していなくてもよい。
核酸は、ベクターの部分、即ち、1種または複数の細胞型の形質導入/トランスフェクションのために設計された核酸構築物の部分となり得る。ベクターは、例えば、挿入されたヌクレオチドの単離、増殖および複製のために設計された「クローニングベクター」、宿主細胞におけるヌクレオチド配列の発現のために設計された「発現ベクター」、組換えウイルスもしくはウイルス様粒子の産生をもたらすように設計された「ウイルスベクター」または2種類以上のベクターの特質を含む「シャトルベクター」であり得る。典型的なベクターはプラスミドである。「宿主細胞」は、外来性核酸のレシピエントであり得るまたはであった個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の後代を含み、後代は、天然、偶発的または計画的突然変異および/もしくは変化により、本来の親細胞と必ずしも完全に同一でなくてよい(形態においてまたは全DNA補体において)。宿主細胞は、本発明の核酸をin vivoまたはin vitroでトランスフェクトまたは感染された細胞を含む。
核酸がDNAである場合、RNA配列における「U」が、DNAにおける「T」に置き換えられるであろうことが認められよう。同様に、核酸がRNAである場合、DNA配列における「T」が、RNAにおける「U」に置き換えられるであろうことが認められよう。用語「補体」または「相補的」は、核酸に関して使用される場合、ワトソン−クリック塩基対形成を指す。よって、Cの補体はGであり、Gの補体はCであり、Aの補体はT(またはU)であり、T(またはU)の補体はAである。例えば、ピリミジン(CまたはT)の補体とするために、I(プリンイノシン)などの塩基を使用することも可能である。
抗体
別の実施形態において、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、54、56、58、60、62、64、79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465からなる群から選択されるアミノ酸配列にコードされるポリペプチドに結合することができる抗体が提供される。より好ましくは、群は配列番号79、139、133、433、111、171、113および173からなる。
本明細書に言及されている抗体は、本発明において有用なポリペプチドに結合することができ、よって、他の箇所で考察している通り、上に列挙する配列のバリアントおよび/または断片であるポリペプチドに結合する抗体を含む。特に、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体は、中和抗体である。用語、中和抗体は、特定のタンパク質、ポリペプチドまたは感染体(infectious body)に結合し、これにより前記タンパク質、ポリペプチドまたは感染体の効果を無効化または低下させることができる抗体を指す。より具体的には、中和抗体は、例えば、成長、組織付着、伝播、組織損傷等を低下または限定することにより、宿主における感染を惹起および/または永続化する病原体の能力を中和または低下させることができるいずれかの抗体である。
本発明のC.difficileポリペプチドに対する抗体は、上で考察した方法における受動免疫化のために使用することができる。よって、本発明は、本明細書に開示されているアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合することができる少なくとも1種の抗体を含む組成物を提供する。本発明による抗体の組合せは、同時投与、個別投与のまたは連続的投与のために提供される。本発明は、また、かかる抗体を含む免疫原性の医薬組成物を提供する。本明細書において、本発明の文脈において、用語「抗体(単数または複数)」は、本発明の抗体の組合せを含む。特に、本発明は、(a)Dif44抗原、Dif51抗原、Dif130抗原、Dif153抗原、Dif183抗原、Dif192抗原、Dif208抗原、Dif208A抗原およびDif232抗原、好ましくは、Diff44またはDif208抗原を認識する抗体からなる群から選択される1種または複数の抗体、(b)ToxB−GT抗原を認識する抗体ならびに(c)TcdA抗原(好ましくは、ToxA_p5_6)を認識する抗体を含む抗体の組合せを提供する。組合せは、組成物中に存在し得る。
抗体を含む組成物は、治療において使用することができる。本発明は、また、例えばCDADに対する受動免疫化のための、薬および治療における本発明の抗体の使用を提供する。本発明は、また、医薬の製造におけるかかる抗体の使用を提供する。本発明は、また、有効量の本発明の抗体を投与するステップを含む、哺乳動物を処置するための方法を提供する。組成物に関して上述の通り、これらの方法および使用は、哺乳動物がC.difficile感染から保護されることを可能にする。特に、本発明の抗体は、哺乳動物に、有効量の本明細書に記載されている抗体の組合せまたはかかる組合せを含む組成物を投与するステップを含む、C.difficileによる感染を処置または防止する方法において使用することができる。これらの方法において、本発明の少なくとも2種(例えば、2、3または4種)の抗体は、同時に、個別にまたは順次投与することができる。
本発明の抗体は、典型的に、例えば、1μM、100nM、10nM、1nM、100pMまたはより緊密な親和性で、C.difficile由来のポリペプチドに特異的に結合するであろう。用語「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン分子およびポリペプチドに結合することができるその断片を含む。これらは、ハイブリッド(キメラ)抗体分子[84、85];F(ab’)2およびF(ab)断片ならびにFv分子;非共有結合ヘテロ二量体[86、87];単鎖Fv分子(sFv)[88];二量体および三量体抗体断片構築物;ミニボディ(minibody)[89、90];ヒト化抗体分子[91〜93];ならびにかかる分子から得られるいずれかの機能的断片、およびファージディスプレイなどの非従来プロセスにより得られる抗体を含む。一部の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を得る方法は、当該技術分野において周知である。一部の実施形態において、抗体は、ヒト化抗体または完全なヒト抗体である。
本発明は、また、本発明の抗体の組合せを含む組成物を提供する。例えば、本発明の抗原の組合せに従った少なくとも3種(即ち、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12種)のC.difficile抗原(前記抗原のいずれかのバリアントおよび免疫原性断片を含む)に特異的な異なる抗体の組合せを含む組成物ならびに、本発明の抗体の組合せの混合物を調製するためのプロセスであって、上に定義されている抗体の組合せのいずれかの抗体を混合するステップを含むプロセスが提供される。例えば、本発明は、本発明のC.difficileポリペプチドおよび/またはそのエピトープを認識する抗体から選択される少なくとも2種(即ち、2、3または4種)の抗体を混合するステップを含むプロセスを提供する。抗体の混合物を調製するための本発明によるプロセスは、混合物を医薬として製剤化するさらなるステップを含むことができる。かかるプロセスは、医薬としての貯蔵または流通のために製剤を包装するステップをさらに含むことができる。
抗生物質
抗生物質による処置またはその投与の間またはその後などのある特定の状況において、腸管内菌叢の自然な均衡が撹乱される。その結果、C.difficileは、より蔓延するようになり、感染の症状をもたらし得る。よって、抗生物質と併せて本発明の組成物を使用して、根底にある状態を処置し、いずれかのC.difficile感染を同時に防止または処置することができる。
一実施形態において、方法は、有効量の本発明の組成物を投与し、続いて抗生物質を投与するステップを含む。代替法において、方法は、抗生物質を投与し、続いて本発明の組成物を投与するステップを含む。さらなる代替法において、方法は、本発明の組成物の投与と同時に抗生物質を投与するステップを含む。よって、抗生物質および有効量の1種または複数のポリペプチドは、順次または個別に投与することができる。典型的には、これらの方法において使用される抗生物質は、根底にある感染の処置に適しているが、C.difficile AADに関連することが公知の抗生物質である。いずれの抗生物質も、抗生物質関連下痢またはより重度のC.difficile感染関連状態の1種を引き起こし得るが、最も一般的な原因物質は、アンピシリン、クリンダマイシン、セフポドキシムなどのセファロスポリンおよび全フルオロキノロンである。よって、これらの方法は、C.difficile AADに高頻度で関連付けられることが当該技術分野において公知の抗生物質を取り込む処置レジメ(treatment regime)に特に適する。したがって、一部の実施形態において、本発明の組成物は、上に示す抗生物質などの抗生物質をさらに含むことができる。
組成物および医薬
別の実施形態において、本発明は、
(a)配列番号71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、190、191、193、195、260、262、264、266、268、270、272、274、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、331、357、359、361、427、429、431、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1種もしくは複数のポリペプチド、ならびに/または
(b)(a)に列挙されている群から選択されるアミノ酸配列をコードする1種もしくは複数の核酸、または配列番号70、72、74、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、192、194、259、261、263、275、267、269、271、273、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、356、358、360、426、428、430、432、434、436、438、440、442、444、446、448、450、452、454、456、458、460、462および464からなる群から選択される1種もしくは複数の核酸配列、ならびに/または
(c)(a)に列挙されている群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合することができる1種もしくは複数の抗体、または中和抗体である、(a)に列挙されている群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合することができる1種もしくは複数の抗体
を含む組成物を提供する。
あらゆる事例において、配列番号79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465の配列を有する分子、またはこれらの配列を有する分子をコードするもしくはこの分子に結合する分子が好ましく、配列番号79、139、133、433、111、171、113および173の配列を有する分子、またはこれらの配列を有する分子をコードするもしくはこの分子に結合する分子が特に好ましい。
さらなる実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1種の医薬品担体(複数可)および/または賦形剤を含む。特に、本発明の組成物は、医薬品またはワクチン組成物である。
別の実施形態において、本発明は、配列番号71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、190、191、193、195、260、262、264、266、268、270、272、274、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、331、357、359、361、427、429、431、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドを含む、これから本質的になるまたはこれからなるポリペプチドの組合せを含む組成物を提供する。特に、かかる組成物は、上に列挙されている群から選択される2種以上(即ち、2、3種以上)のアミノ酸配列を含む、これから本質的になるまたはこれからなるポリペプチドの組合せを含む。特に好ましい組成物は、配列番号79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465からなる群、または配列番号79、139、133、433、111、171、113および173からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドを含む、これから本質的になるまたはこれからなるポリペプチドの組合せを含むことができる。特に、かかる好ましい組成物は、配列番号79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465からなる群、または配列番号79、139、133、433、111、171、113および173からなる群から選択される2種以上(即ち、2、3種以上)のアミノ酸配列を含む、これから本質的になるまたはこれからなるポリペプチドの組合せを含むことができる。
本発明の好ましい組成物は、Dif44(CD0844)、Dif51(CD0999)、Dif130(CD2645)、Dif192(CD1035)、Dif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)、Dif208(CD2831)およびDif208Aからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドをコードする少なくとも1種のアミノ酸配列の組合せを含む、これから本質的になるまたはこれからなることができる。特に、かかる好ましい組成物は、C.difficileポリペプチドの組合せを含み、より具体的には、これは、Dif44(CD0844)、Dif51(CD0999)、Dif130(CD2645)、Dif192(CD1035)、Dif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)、Dif208(CD2831)およびDif208Aからなる群から選択される2種以上(即ち、2、3、4種)のポリペプチドを含む、これから本質的になるまたはこれからなる。Dif44(CD0844)およびDif208(CD2831)が特に好ましい。
本発明の特定の組成物は、ポリペプチドDIF44(CD0844)およびポリペプチドDIF192(CD1035);および/またはポリペプチドDIF51(CD0999)およびポリペプチドDIF130(CD2645);および/またはポリペプチドDIF232(CD1031)およびポリペプチドDIF208(CD2831);および/またはポリペプチドDif183(CD3669)およびポリペプチドDIF225(CD0438);および/またはポリペプチドDIF44(CD0844)およびポリペプチドDIF51(CD0999);および/またはポリペプチドDIF130(CD2645)およびポリペプチドDIF192(CD1035);および/またはポリペプチドDiF183(CD3669)およびポリペプチドDIF153(CD2830);および/またはポリペプチドDIF232(CD1031)およびポリペプチドDIF208A(CD2831);ポリペプチドDif44(CD0844)、Dif51(CD0999)、Dif130(CD2645)および/またはDif192(CD1035);および/またはポリペプチドDif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)および/またはDif208(CD2831);および/またはポリペプチドDif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)および/またはDif208A(CD2831);および/またはポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF153(CD2830)および/またはDif208(CD2831);および/またはポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF153(CD2830)、および/またはDif208A(CD2831);および/またはポリペプチドDif51(CD0999)、Dif130(CD2645)、Dif183(CD3669)、DIF192(CD1035)、および/またはDIF232(CD1031);および/またはポリペプチドDIF44(CD0844)と、ポリペプチドDIF51(CD0999)、DIF130(CD2645)、DIF153(CD2830)、DIF192(CD1035)、DIF208(CD2831)、Dif183(CD3669)およびDIF232(CD1031)のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4、5、6、7種)または少なくとも1、2、3、4、5もしくは6種、例えば、ポリペプチドDIF44と、ポリペプチドDIF153、DIF192、DIF208、Dif183およびDif232のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4種)または少なくとも1、2もしくは3種、例えば、DIF44と、DIF153、DIF44およびDIF192、DIF44とDIF208、DIF44とDif183、DIF44とDIF232;および/またはポリペプチドDIF208(CD2831)と、ポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF51(CD0999)、DIF130(CD2645)、DIF153(CD2830)、DIF192(CD1035)、Dif183(CD3669)およびDIF232(CD1031)のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4、5、6、7種)または少なくとも1、2、3、4、5もしくは6種、例えば、ポリペプチドDIF208と、ポリペプチドDIF44、DIF153、DIF192、Dif183およびDif232のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4種)または少なくとも1、2もしくは3種、例えば、DIF208とDIF153、DIF208とDIF192、DIF208とDif183、DIF208とDIF232;および/またはポリペプチドDIF44(CD0844)、Dif208(CD2831)と、DIF51(CD0999)、DIF130(CD2645)、DIF153(CD2830)、DIF192(CD1035)、Dif183(CD3669)およびDIF232(CD1031)のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4、5、6種)または少なくとも1、2、3、4もしくは5種、例えば、ポリペプチドDIF44(CD0844)、Dif208(CD2831)と、ポリペプチドDIF153、DIF192、Dif183およびDif232のうち1種もしくは複数(例えば、2または3または4種)または少なくとも1もしくは2もしくは3種の組合せを含む、これから本質的になるまたはこれからなることができる。
本発明の組成物中の列挙されている分子に対する抗体の組合せと同様に、言及されているペプチドの組合せをコードする核酸分子の組合せを使用することができるように、均等な組合せまたは組成物は、コード核酸分子および/または列挙されている分子に対する抗体を使用して作製することができる。特に、本発明の組成物は、免疫原性組成物である。
上で考察する通り、本発明の上述の組成物および組合せの全ては、例えば、C.difficileまたはCDADに対し保護効果をもたらす1種または複数の追加的な抗原、かかる抗原をコードする分子またはかかる抗原に結合する分子(例えば、抗体)を追加的に含むことができる。関連する分子およびこれらの分子の配列は、本明細書の他の箇所に提示されている。
そのようなものとして、本発明の好ましい組成物は、ToxB−GTおよびTdcA、ならびにDif44(CD0844)、Dif51(CD0999)、Dif130(CD2645)、Dif192(CD1035)、Dif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)およびDif208(CD2831)からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチド、例えば、Dif44(CD0844)、Dif51(CD0999)、Dif130(CD2645)、Dif192(CD1035)、Dif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)およびDif208(CD2831)からなる群から選択される2種以上(即ち、2、3、4種)のポリペプチドの組合せを含む、これから本質的になるまたはこれからなることができる。
DIF44、DIF51、DIF130、DIF153、DIF192、DIF208、Dif183および/またはDIF232ポリペプチドの上に列挙されている組合せの全ては、上で考察し定義されている通り、ToxB−GTおよびTcdAと追加的に組み合わせて作製することもできる。TcdAは、ToxA−B、ToxA−PTA2、ToxA−P5−7、ToxA−P5−6、ToxA−P9−10、ToxA−B2、ToxA−B3、ToxA−B5、ToxA−B6および/またはToxA−B7から選択され、好ましい組合せは、TcdAがToxA−P5−6である組合せである。最も好ましい組合せは、(i)ToxB−GT、ToxA−P5−6およびDIF44、(ii)ToxB−GT、ToxA−P5−6およびDIF208、(iii)ToxB−GT、ToxA−P5−6、DIF44およびDIF208である。
かかる組合せの例として、次の抗原の組合せが挙げられる:
Tox−GT+TdcA+Dif208;Tox−GT+TdcA+Dif208A;Tox−GT+TdcA+Dif51;Tox−GT+TdcA+Dif44;Tox−GT+TdcA+Dif130;Tox−GT+TdcA+Dif192;Tox−GT+TdcA+Dif183;Tox−GT+TdcA+Dif153;Tox−GT+TdcA+Dif232。
よって、本発明は、また、次の抗原の組合せまたは次の抗原の組合せのいずれかを認識する抗体を含む抗体の組合せを提供する:Tox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF44(CD0844)およびポリペプチドDIF192(CD1035);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF51(CD0999)およびポリペプチドDIF130(CD2645);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF232(CD1031)およびポリペプチドDIF208(CD2831);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDiF183(CD3669)およびポリペプチドDIF225(CD0438);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF44(CD0844)およびポリペプチドDIF51(CD0999);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF130(CD2645)およびポリペプチドDIF192(CD1035);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDiF183(CD3669)およびポリペプチドDIF153(CD2830);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF232(CD1031)およびポリペプチドDIF208A(CD2831);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDif44(CD0844)、Dif51(CD0999)、Dif130(CD2645)および/またはDif192(CD1035);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)および/またはDif208(CD2831);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)および/またはDif208A(CD2831);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF153(CD2830)および/またはDif208(CD2831);および/またはTox−GT+TdcA+ポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF153(CD2830)および/またはDif208A(CD2831);Tox−GT+TdcA+ポリペプチドDif51(CD0999)、Dif130(CD2645)、Dif183(CD3669)、DIF192(CD1035)および/またはDIF232(CD1031)。
TdcAは、ToxA−B、ToxA−PTA2、ToxA−P5−7、ToxA−P5−6、ToxA−P9−10、ToxA−B2、ToxA−B3、ToxA−B5、ToxA−B6および/またはToxA−B7から選択される。例えば、本発明は、また、次の抗原の組合せまたは次の抗原の組合せのいずれかを認識する抗体を含む抗体の組合せを提供する:Tox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF44(CD0844)およびポリペプチドDIF192(CD1035);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF51(CD0999)およびポリペプチドDIF130(CD2645);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF232(CD1031)およびポリペプチドDIF208(CD2831);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDif183(CD3669)およびポリペプチドDIF225(CD0438);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF44(CD0844)およびポリペプチドDIF51(CD0999);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF130(CD2645)およびポリペプチドDIF192(CD1035);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDif183(CD3669)およびポリペプチドDIF153(CD2830);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF232(CD1031)およびポリペプチドDIF208A(CD2831);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDif44(CD0844)、Dif51(CD0999)、Dif130(CD2645)および/またはDif192(CD1035);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)および/またはDif208(CD2831);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDif183(CD3669)、DIF153(CD2830)、Dif232(CD1031)および/またはDif208A(CD2831);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF153(CD2830)および/またはDif208(CD2831);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF153(CD2830)および/またはDif208A(CD2831);および/またはTox−GT+ToxA−P5−6+ポリペプチドDif51(CD0999)、Dif130(CD2645)、Dif183(CD3669)、DIF192(CD1035)および/またはDIF232(CD1031)。
Tox−GT+TcdA(好ましくは、ToxA−P5−6)はまた、ポリペプチドDIF44(CD0844)と、ポリペプチドDIF51(CD0999)、DIF130(CD2645)、DIF153(CD2830)、DIF192(CD1035)、DIF208(CD2831)、Dif183(CD3669)およびDIF232(CD1031)のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4、5、6、7種)または少なくとも1、2、3、4、5もしくは6種、例えば、ポリペプチドDIF44と、ポリペプチドDIF153、DIF192、DIF208、Dif183、DIF232のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4種)または少なくとも1、2もしくは3種、例えば、DIF44とDIF153、DIF44とDIF192、DIF44とDIF208、DIF44とDif183、DIF44とDIF232;および/またはポリペプチドDIF208(CD2831)と、ポリペプチドDIF44(CD0844)、DIF51(CD0999)、DIF130(CD2645)、DIF153(CD2830)、DIF192(CD1035)、Dif183(CD3669)およびDIF232(CD1031)のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4、5、6、7種)または少なくとも1、2、3、4、5もしくは6種、例えば、ポリペプチドDIF208と、ポリペプチドDIF44、DIF153、DIF192、Dif183のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4種)または少なくとも1、2もしくは3種、例えば、DIF208とDIF153、DIF208とDIF192、DIF208とDif183、DIF208とDIF232;および/またはポリペプチドDIF44(CD0844)、Dif208(CD2831)と、DIF51(CD0999)、DIF130(CD2645)、DIF153(CD2830)、DIF192(CD1035)、Dif183(CD3669)およびDIF232(CD1031)のうち1種もしくは複数(例えば、2、3、4、5、6種)または少なくとも1、2、3、4もしくは5種、例えば、ポリペプチドDIF44(CD0844)、Dif208(CD2831)と、ポリペプチドDIF153、DIF192、Dif183、DIF232のうち1種もしくは複数(例えば、2または3または4種)または少なくとも1もしくは2もしくは3種と組み合わせることができる。
列挙されている分子に結合する抗体の組合せ(例えば、抗原の組合せのいずれかを認識する)と同様に、言及されているペプチドの組合せをコードする核酸分子の組合せを使用することができるように、均等な組合せまたは組成物は、コード核酸分子および/または列挙されている分子に結合する抗体(例えば、抗原の組合せのいずれかを認識する)を使用して作製することができる。免疫原性組成物は、一般に、少なくとも1種の抗原性タンパク質または抗原を含むであろう。DIF208が言及されている場合、これは、これらの組合せにおいてDIF208AまたはDIF208Bと置換することができる。
本発明の組成物は、C.difficile感染を防止または処置するための方法において使用することができる。よって、本発明は、上述のポリペプチドのうち1種または複数を含む有効量の本発明の組成物を投与するステップを含む、哺乳動物において免疫応答を発生させるための方法を提供する。免疫応答は、典型的に、保護的であり、抗体および/または細胞媒介性免疫に関与する。本発明は、また、本発明の有効量の組成物を投与するステップを含む、哺乳動物におけるC.difficile感染を防止または処置するための方法を提供する。方法は、追加免疫応答を発生させることができる。
C.difficile感染の主な原因の1つは、腸管内菌叢を撹乱する抗生物質の使用である。したがって、本発明の組成物は、根底にある状態を処置し、また、いずれかのC.difficile感染も共に処置または防止するための抗生物質による処置レジメにおいて使用することができる。これらの組成物および方法の使用により、哺乳動物は、C.difficile感染、特に、院内感染から保護することができる。一部の実施形態において、C.difficile感染は、下痢、抗生物質関連下痢(AAD)、腹痛、発熱、白血球増多症、偽膜性結腸炎または中毒性巨大結腸症のうち1種または複数をもたらし、前記処置は、これらのうち1種または複数を防止、低下または排除することができる。
一部の実施形態において、本発明の組成物は、例えばCDADに対する受動免疫化のための、薬および治療法における使用のための組成物である。本発明は、また、好ましくは本明細書に言及されている処置の種類のいずれかのための、医薬の製造におけるかかる抗体または組成物の使用を提供する。
さらなる実施形態において、本発明の組成物は、哺乳動物におけるC.difficile感染の防止または処置における使用のための組成物である。
一部の実施形態において、本発明は、また、好ましくは、本明細書に言及されている処置の種類のいずれかのための、医薬の製造における本発明のポリペプチド、核酸および抗体の使用を提供する。
前記免疫原性組成物が、動物から疾患を防止、寛解、緩和または排除する場合、免疫原性組成物は、必要に応じてワクチンと称することができる。用語「ワクチン」は、本明細書において使用される場合、疾患を引き起こす生物の非存在下における、精製された抗原性決定基、精製された抗原決定基をコードする核酸またはこれらの断片のいずれかを含むワクチン組成物を指す。かかるワクチンは、「サブユニットワクチン」と称することもできる。この用語は、「全細胞ワクチン」、例えば、死滅した細菌細胞全体に由来し、複合的で特徴付けられていない組成物の部分として未精製型の抗原性決定基を含有し得るワクチンを包含することを意図しない。よって、特定の実施形態において、全細胞ワクチンは、除外することができる、または拒否される。本明細書において使用される場合、用語「多価」は、ワクチンが、少なくとも2種の株または単離株に由来する構造的に類似または「関係した」抗原性決定基を含有し、抗原性決定基が、そのアミノ酸配列の間に僅かな差を有するホモログであることを意味する。
よって、本発明の組成物は、ワクチンとして有用となり得る。本発明によるワクチンは、予防的(即ち、感染を防止する)または治療的(即ち、感染を処置する)のいずれかとなり得るが、典型的には、予防的となるであろう。用語「感染から保護される」は、対象の免疫系が予備刺激されて(例えば、ワクチン接種により)、免疫応答を誘発し、感染を撃退することを意味する。当業者であれば、ワクチン接種された対象が、これにより感染し得るが、対照対象よりも良く感染を撃退できることが明らかであろう。用語「処置」は、治療的処置および予防的または防止的処置の両方を含み、その目的は、感染を防止または減らすことである。例えば、処置は、直接的な影響もしくは治癒、抑制、阻害、防止、重症度低下、発病遅延、例えば感染関連症状の低下またはこれらの組合せを含むことができる。「防止」は、とりわけ、症状の発病遅延、疾患再発防止等を指すことができる。処置は、感染または疾病の「抑制」または「阻害」、例えば、症状の重症度、数、発生率もしくは潜伏期の低下、症状の寛解、二次症状の低下、二次感染の低下、患者生存期間の延長またはこれらの組合せを含むこともできる。
用語「抗原」は、対象が体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を惹起することができる分子を指す。組成物またはワクチンに対する「免疫学的応答」は、対象とする組成物またはワクチンに対する細胞性および/または抗体媒介性免疫応答の宿主における発達である。通常、「免疫学的応答」として、次の効果のうち1種または複数が挙げられるがこれらに限定されない:対象とする組成物またはワクチンに含まれる抗原(単数または複数)へと特異的に方向づけられた、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞および/または細胞傷害性T細胞の産生。好ましくは、対象は、新たな感染に対する抵抗性が増強されるおよび/または疾患の臨床重症度が低下するように、治療的または保護的免疫学的応答のいずれかを呈するであろう。かかる保護は、感染した対象によって正常に呈される症状の低下または欠如、感染した宿主におけるより迅速な回復時間および/またはより低いウイルス力価のいずれかにより実証されるであろう。用語「免疫原性」タンパク質またはポリペプチドは、本明細書において使用される場合、上述の通り免疫学的応答を誘発するアミノ酸配列も指す。
よって、組成物は、薬学的に許容され得る。組成物は、通常、抗原に加えて構成成分を含むであろう、例えば、典型的には、1種または複数の医薬品担体(複数可)および/または賦形剤(複数可)を含む。かかる構成成分の徹底的な考察は、[94]において得ることができる。組成物は、水性形態で哺乳動物に投与することができる。しかし、組成物は、投与前は非水性形態であってもよい。例えば、一部のワクチンは、水性形態で製造され、続いて同様に水性形態で充填され、流通され、投与されるが、他のワクチンは、製造の間に凍結乾燥され、使用時に水性形態へと再構成される。よって、本発明の組成物は、凍結乾燥製剤のように乾燥されていてよい。
組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの保存料を含むことができる。しかし、ワクチンは、水銀材料を実質的に含むべきではなく(即ち、5μg/ml未満)、例えば、チオメルサールを含まないことが好ましい。水銀を含有しないワクチンがより好ましい。保存料を含まないワクチンが特に好ましい。熱安定性を改善するために、組成物は、温度保護剤を含むことができる。かかる薬剤のさらなる詳細を下に提示する。浸透圧を制御するために、ナトリウム塩などの生理的塩を含むことが好ましい。1〜20mg/mlの間、例えば、約10±2mg/ml NaClで存在し得る塩化ナトリウム(NaCl)が好ましい。存在し得る他の塩は、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム・無水物(dehydrate)、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等を含む。組成物は、一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kgの間、好ましくは、240〜360mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を有し、より好ましくは、290〜310mOsm/kgの範囲内に収まるであろう。組成物は、1種または複数のバッファーを含むことができる。典型的なバッファーは、リン酸バッファー;Trisバッファー;ホウ酸バッファー;コハク酸バッファー;ヒスチジンバッファー(特に、水酸化アルミニウムアジュバントを含有する);またはクエン酸塩バッファーを含む。バッファーは、典型的に、5〜20mM範囲内で含まれるであろう。組成物のpHは、一般に、5.0〜8.1の間、より典型的には、6.0〜8.0の間、例えば、6.5〜7.5の間または7.0〜7.8の間となるであろう。組成物は、好ましくは、無菌である。組成物は、好ましくは、非発熱性であり、例えば、用量当たり<1EU(エンドトキシン単位、標準尺度)、好ましくは、用量当たり<0.1EUを含有する。組成物は、好ましくはグルテンを含まない。
組成物は、単回免疫化のための材料を含むことができる、または複数回免疫化のための材料を含むことができる(即ち、「複数用量」キット)。複数用量構成では、保存料の包含が好ましい。複数用量組成物中に保存料を含むことに代えて(またはそれに加えて)、組成物は、材料除去のための無菌アダプタを有する容器に含有され得る。ヒトワクチンは、典型的に、約0.5mlの投薬容量で投与されるが、半分の用量(即ち、約0.25ml)を小児に投与することができる。
本発明の組成物は、1種または複数の免疫調節剤を含むこともできる。好ましくは、免疫調節剤のうち1種または複数は、1種または複数のアジュバントを含む。アジュバントは、TH1アジュバントおよび/またはTH2アジュバントを含むことができる。本発明の組成物において使用することができるアジュバントとして、次のものが挙げられるがこれらに限定されない:
・水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)および硫酸塩等を含む、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩[例えば、参考文献95の第8および9章を参照];
・MF59(5%スクアレン、0.5%Tween80および0.5%Span85、マイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化)[参考文献95の第10章、参考文献96〜99、参考文献100の第10章および参考文献101の第12章も参照]、フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)を含む、スクアレン−水エマルションなどの水中油型エマルション;
・QS21[102]およびISCOM[参考文献95の第23章]などのサポニン製剤[参考文献95の第22章];
・ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)[103〜109];
・腸内細菌リポ多糖(LPS)の無毒性誘導体、リピドA誘導体[110、111]などの細菌誘導体または微生物誘導体、IC−31(商標)[118](26−mer配列5’−(IC)13−3’(配列番号354)を含むデオキシヌクレオチドおよび11−merアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号355)を含むポリカチオン性ポリマーポリペプチド)などの免疫賦活性オリゴヌクレオチド[112〜117]ならびにADPリボシル化毒素およびその解毒型誘導体[119〜128];
・インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[129、130])、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子などのサイトカインを含むヒト免疫調節物質;
・ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(pyrollidone)、多糖およびカルボキシメチルセルロース[132]の架橋誘導体などのキトサンおよびその誘導体、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア[131]または粘膜接着剤などの生体接着剤および粘膜接着剤;
・生分解性かつ無毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン等)から形成された微粒子(即ち、ほぼ100nm〜ほぼ150μmの直径、より好ましくは、ほぼ200nm〜ほぼ30μmの直径、最も好ましくは、ほぼ500nm〜ほぼ10μmの直径の粒子);
・リポソーム[95の第13および14章、133〜135];
・ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル[136];
・PCPP製剤[137および138];
・N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミン(nor−MDP)およびN−アセチルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミニル−l−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン MTP−PE)を含むムラミルポリペプチド;ならびに
・Imiquamodおよびそのホモログ(例えば、「Resiquimod 3M」)を含むイミダゾキノロン(imidazoquinolone)化合物[139および140]。
本発明の組成物およびワクチンは、上に同定されているアジュバントのうち1種または複数の態様の組合せを含むこともできる。例えば、次のアジュバント組成物を本発明において使用することができる:(1)サポニンおよび水中油型エマルション[141];(2)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)[142];(3)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[143];(5)3dMPLと例えばQS21および/もしくは水中油型エマルションとの組合せ[144];(6)サブミクロンエマルションとなるようマイクロフルイダイズされた、またはより大きい粒径エマルションを生成するためにボルテックスされた、10%スクアラン、0.4%Tween80(商標)、5%プルロニック−ブロックポリマーL121およびthr−MDPを含有するSAF;(7)2%スクアレン、0.2%Tween80ならびにモノホスホリルリピド(monophosphorylipid)A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群に由来する1種または複数の細菌細胞壁構成成分、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含有するRibi(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem);ならびに(8)1種または複数の無機塩(アルミニウム塩など)+LPSの無毒性誘導体(3dMPLなど)。
免疫賦活剤として作用する他の物質は、[95]の第7章に開示されている。水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントの使用が特に好ましく、抗原は一般に、これらの塩に吸着される。リン酸カルシウムは、別の好ましいアジュバントである。他の好ましいアジュバントの組合せは、CpGおよびアラムまたはレシキモドおよびアラムなどのTh1およびTh2アジュバントの組合せを含む。リン酸アルミニウムおよび3dMPLの組合せを使用してもよい(これは、肺炎球菌免疫化において有効であると報告されている[145])。
本発明の組成物は、細胞媒介性免疫応答と体液性免疫応答の両方を誘発することができる。この免疫応答は、好ましくは、C.difficile曝露の際に迅速に応答することができる、長続きする(例えば、中和)抗体および細胞媒介性免疫を誘導するであろう。2種類のT細胞、CD4細胞およびCD8細胞は、一般に、細胞媒介性免疫および体液性免疫の惹起および/または増強に必要であると考えられる。CD8 T細胞は、CD8共受容体を発現することができ、一般に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と称される。CD8 T細胞は、MHCクラスI分子に提示される抗原を認識またはこれと相互作用することができる。CD4 T細胞は、CD4共受容体を発現することができ、一般に、Tヘルパー細胞と称される。CD4 T細胞は、MHCクラスII分子に結合した抗原性ペプチドを認識することができる。MHCクラスII分子と相互作用すると、CD4細胞は、サイトカインなどの因子を分泌することができる。このような分泌されたサイトカインは、B細胞、細胞傷害性T細胞、マクロファージおよび免疫応答に関与する他の細胞を活性化することができる。ヘルパーT細胞またはCD4+細胞は、2種の機能的に別個のサブセットへとさらに分けることができる:そのサイトカインおよびエフェクター機能が異なるTH1表現型およびTH2表現型。活性化されたTH1細胞は、細胞性免疫を増強し(抗原特異的CTL産生の増加を含む)、したがって、細胞内感染に対する応答に特に価値がある。活性化したTH1細胞は、IL−2、IFN−γおよびTNF−βのうち1種または複数を分泌することができる。TH1免疫応答は、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞およびCD8細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化することにより局所的炎症反応をもたらすことができる。TH1免疫応答は、IL−12によりB細胞およびT細胞の成長を刺激することにより免疫応答を増やすように作用することもできる。TH1刺激されたB細胞は、IgG2aを分泌することができる。活性化されたTH2細胞は、抗体産生を増強し、したがって、細胞外感染に対する応答に価値がある。活性化されたTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10のうち1種または複数を分泌することができる。TH2免疫応答は、将来的な保護のためにIgG1、IgE、IgAおよびメモリーB細胞の産生をもたらし得る。増強された免疫応答は、増強されたTH1免疫応答およびTH2免疫応答のうち1種または複数を含むことができる。TH1免疫応答は、CTLの増加、TH1免疫応答に関連するサイトカイン(IL−2、IFN−γおよびTNF−βなど)のうち1種もしくは複数の増加、活性化されたマクロファージの増加、NK活性の増加またはIgG2aの産生の増加のうち1種または複数を含むことができる。一部の実施形態において、増強されたTH1免疫応答は、IgG2a産生の増加を含むであろう。TH1免疫応答は、TH1アジュバントを使用して誘発することができる。TH1アジュバントは一般に、アジュバントなしの抗原の免疫化と比べて増加したレベルのIgG2a産生を誘発するであろう。本発明における使用に適したTH1アジュバントは、例えば、サポニン製剤、ビロソームおよびウイルス様粒子、腸内細菌リポ多糖(LPS)の無毒性誘導体、免疫賦活性オリゴヌクレオチドを含むことができる。CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドなどの免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、本発明における使用のための典型的なTH1アジュバントである。TH2免疫応答は、TH2免疫応答に関連するサイトカイン(IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10など)のうち1種もしくは複数の増加、またはIgG1、IgE、IgAおよびメモリーB細胞の産生の増加のうち1種または複数を含むことができる。一部の実施形態において、増強したTH2免疫応答は、IgG1産生の増加を含むであろう。TH2免疫応答は、TH2アジュバントを使用して誘発することができる。TH2アジュバントは、一般に、アジュバントなしの抗原の免疫化と比べて増加したレベルのIgG1産生を誘発するであろう。本発明における使用に適したTH2アジュバントは、例えば、ミネラル含有組成物、油エマルションならびにADPリボシル化毒素およびその解毒型誘導体を含む。アルミニウム塩などのミネラル含有組成物は、本発明における使用のための典型的なTH2アジュバントである。
一部の実施形態において、本発明は、TH1アジュバントおよびTH2アジュバントの組合せを含む組成物を含む。多くの場合、かかる組成物は、アジュバントなしの免疫化と比べて、増強されたTH1および増強されたTH2応答、即ち、IgG1およびIgG2a産生両方の産生の増加を誘発する。一般に、TH1およびTH2アジュバントの組合せを含む組成物は、単一アジュバントによる免疫化と比べて(即ち、TH1アジュバント単独による免疫化またはTH2アジュバント単独による免疫化と比べて)、増加されたTH1免疫応答および/または増加されたTH2免疫応答を誘発する。免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の一方または両方となり得る。免疫応答は、増強されたTH1応答および増強されたTH2応答の一方または両方をもたらし得る。増強された免疫応答は、全身性免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方となり得る。免疫応答は、増強された全身性免疫応答および増強された粘膜免疫応答の一方または両方をもたらし得る。典型的には、粘膜免疫応答は、TH2免疫応答である。典型的には、粘膜免疫応答は、IgAの産生の増加を含む。
C.difficile感染は、身体の様々な区域に罹患し得るため、本発明の組成物は、様々な形態で調製することができる。例えば、組成物は、液体の溶液または懸濁液のいずれかとしての注射剤として調製することができる。注射前に液体媒体へと溶解または懸濁するのに適した固形を調製することもできる(例えば、凍結乾燥組成物またはスプレーフリーズドライ組成物)。組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クリームまたは粉末として調製することができる。組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤もしくはカプセルとして、スプレーとしてまたはシロップとして(必要に応じて風味付けされた)調製することができる。組成物は、肺性投与のために、例えば、微粉末またはスプレーを使用して吸入剤として調製することができる。組成物は、坐剤またはペッサリーとして調製することができる。組成物は、経鼻投与、経耳投与(aural administration)または眼性投与のために、例えば、点滴剤として調製することができる。組成物は、組み合わせた組成物が哺乳動物への投与直前に再構成されるように設計されたキットの形態となり得る。かかるキットは、液状の1種または複数の抗原と、1種または複数の凍結乾燥抗原とを含むことができる。
組成物が、使用前に即時に調製される必要があり(例えば、構成成分が凍結乾燥形態で提示される)、キットとして提示される場合、キットは、2本のバイアルを含むことができる、または1本の既に充填されたシリンジおよび1本のバイアルを含み、シリンジの内容物を使用して、注射前にバイアルの内容物を再活性化させることができる。
ワクチンとして使用される組成物は、免疫学的有効量の抗原(複数可)および必要に応じて他のいずれかの構成成分を含む。「免疫学的有効量」とは、個体へのこの量の投与が、単一用量であれ一連の用量の部分としてであれ、処置または防止に有効であることを意味する。この量は、処置しようとする個体の健康および体調、年齢、処置しようとする個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類等)、抗体を合成する個体の免疫系能力、所望の保護の程度、ワクチンの製剤、処置している医師による医学的状況の評価ならびに他の関連する因子に応じて変動する。この量が、慣例的な治験により決定することができる相対的に広範囲に収まるであろうことが予想される。2種以上の抗原が組成物に含まれる場合、2種の抗原は互いに同じ用量でまたは異なる用量で存在することができる。
上述の通り、組成物は、温度保護剤を含むことができ、この構成成分は、アジュバント化組成物(特に、アルミニウム塩などのミネラルアジュバントを含有する)において特に有用となり得る。参考文献146に記載されている通り、液体温度保護剤を水性ワクチン組成物に添加して、その凝固点を下げる、例えば、凝固点を0℃より下に低下させることができる。よって、組成物は、0℃を下回るがその凝固点を上回る温度で貯蔵して、熱による崩壊を阻害することができる。温度保護剤は、凍結し解凍した後の集塊または沈降から無機塩アジュバントを保護しつつ組成物の凍結を可能にすることもでき、温度上昇、例えば、40℃を上回る温度において組成物を保護することもできる。液体温度保護剤が、容量で最終混合物の1〜80%を形成するように、出発水性ワクチンおよび液体温度保護剤を混合することができる。適した温度保護剤は、ヒト投与に安全で、水に容易に混和性/可溶性であるべきであり、組成物中の他の構成成分(例えば、抗原およびアジュバント)を損傷するべきではない。例として、グリセリン、プロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。適したPEGは、200〜20,000Daに及ぶ平均分子量を有することができる。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約300Daの平均分子量を有することができる(「PEG−300」)。
本発明は、(i)上に開示されている1種または複数の抗原と、(ii)温度保護剤とを含む組成物を提供する。この組成物は、(i)1種または複数の抗原(例えば、抗原の組合せの抗原のうち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12種)を含む水性組成物と、(ii)温度保護剤とを混合することにより形成され得る。続いて、混合物は、例えば、0℃を下回る温度、0〜20℃、20〜35℃、35〜55℃またはそれ以上で貯蔵することができる。これは、液体または凍結形態で貯蔵することができる。混合物は、凍結乾燥されていてよい。あるいは、組成物は、(i)1種または複数の抗原を含む乾燥組成物と、(ii)温度保護剤を含む液体組成物とを混合することにより形成することができる。よって、構成成分(ii)は、構成成分(i)を再構成するために使用することができる。
C.difficile糖コンジュゲートとの組合せ
本発明のポリペプチドは、糖ポリペプチドと組み合わせて、またはこれとコンジュゲートして使用することができる。よって、本発明は、(1)1種または複数のポリペプチドおよび/もしくは抗体と(2)C.difficile糖および担体タンパク質の1種または複数のコンジュゲートとの組合せ;またはC.difficile糖および必要に応じて担体タンパク質にコンジュゲートした1種または複数のポリペプチドおよび/もしくは抗体を含む組成物を提供する。上述の通り、組合せは、C.difficile感染を処置もしくは防止する方法において、または免疫応答を生じさせる方法において使用することができる。
この組合せの構成成分(2)において使用されるコンジュゲートは、糖部分および担体部分を含む。糖部分は、C.difficileに由来する。C.difficile糖は、特に、参考文献147に記載されているPS−I、PS−IIおよびPS−III糖から選択することができる。PS−Iは、式Aの反復五糖単位を含む:
(式中、Rhaはラムノースであり、Pはグリコシルホスフェートであり、Glcはグルコースである)。
特に、本発明において使用されるPS−I糖は、式A’のものであり得る:
(式中、nは1〜1000の整数であり、Rhaはラムノースであり、Pはグリコシルホスフェートであり、Glcはグルコースである)。
PS−IIは、式Bの反復六糖単位を含む:
(式中、Glcはグルコースであり、GalNAcはN−アセチル−ガラクトサミンであり、Pはグリコシルホスフェートであり、Manはマンノースである)。
特に、本発明において使用されるPS−II糖は、式B’のものであり得る:
(式中、nは1〜1000の整数であり、Glcはグルコースであり、GalNAcはN−アセチル−ガラクトサミンであり、Pはグリコシルホスフェートであり、Manはマンノースである)。
PS−IIIは、その共有結合化学構造内にグリセロール、アルジトールホスフェート、グルコースおよびN−アセチル−グルコサミンを含む。上述の式(A’)および(B’)において、整数nの値は、典型的に、1〜100の間、例えば、2〜100の間、10〜100の間または25〜100の間である。構成成分(2)において使用されるコンジュゲートにおける担体部分は通常、タンパク質であり、(1)のポリペプチドの1種であってもそうでなくてもよい。典型的な担体タンパク質は、ジフテリアもしくは破傷風毒素などの細菌毒素またはトキソイドあるいはこれらの突然変異体もしくは断片である。CRM197ジフテリア毒素突然変異体[148]が有用である。他の適した担体タンパク質は、N.meningitidis外膜タンパク質複合体[149]、合成ペプチド[150、151]、熱ショックタンパク質[152、153]、百日咳タンパク質[154、155]、サイトカイン[156]、リンホカイン[156]、ホルモン[156]、増殖因子[156]、N19[158]などの様々な病原体由来ポリペプチド由来の複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[157]、H.influenzae由来のタンパク質D[159〜161]、ニューモリシン[162]またはその無毒性誘導体[163]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[164]、鉄取り込みタンパク質[165]、C.difficile由来の毒素AまたはB[166]、組換えP.aeruginosaエキソプロテインA(exoprotein A)(rEPA)[167]等を含む。一部の実施形態において、担体タンパク質は、S.aureusタンパク質である。他の実施形態において、担体は、本発明のC.difficileポリペプチドである。
組成物が、2種以上のコンジュゲートを含む場合、各コンジュゲートは、同じ担体タンパク質または異なる担体タンパク質を使用することができる。コンジュゲートは、過剰な担体(w/w)または過剰な糖(w/w)を有することができる。一部の実施形態において、コンジュゲートは、実質的に等しい重量のそれぞれを含むことができる。担体分子は、直接的にまたはリンカーを介して担体に共有結合によりコンジュゲートされ得る。タンパク質への直接的な連結は、例えば、参考文献168に記載されている通り、例えば、糖および担体の間の還元的アミノ化により達成することができる。リンカー基を介した連結は、いずれかの公知の手順、例えば、参考文献169および170に記載されている手順を使用して為すことができる。連結の1種類はアジピン酸リンカーであり、これは、遊離−NH2基(例えば、アミノ化により糖に導入される)をアジピン酸と結合させ(例えば、ジイミド活性化を使用)、続いて得られた糖−アジピン酸中間体にタンパク質を結合させることにより形成され得る[171、172]。連結の別の種類はカルボニルリンカーであり、これは、糖CDIの遊離ヒドロキシル基の反応[173、174]と、続くタンパク質との反応でカルバメート結合を形成することにより形成され得る。他のリンカーは、β−プロピオンアミド[175]、ニトロフェニル−エチルアミン[176]、ハロアシルハライド[177]、グリコシド結合[178]、6−アミノカプロン酸[179]、ADH[180]、C4〜C12部分[181]等を含む。カルボジイミド縮合を使用することもできる[182]。
C.difficile糖ポリペプチドコンジュゲートは、様々な仕方で、例えば、a)マレイミド基を含むリンカーを加えて、活性化C.difficile糖を形成することによりC.difficile糖を活性化するステップと、b)スルフヒドリル基を含むリンカーを加えて、活性化担体タンパク質を形成することにより担体タンパク質を活性化するステップと、c)活性化C.difficile糖と活性化担体タンパク質を反応させて、C.difficile糖−担体タンパク質コンジュゲートを形成するステップとを含むプロセスにより、またはa)スルフヒドリル基を含むリンカーを加えて、活性化C.difficile糖を形成することによりC.difficile糖を活性化するステップと、b)マレイミド基を含むリンカーを加えて、活性化担体タンパク質を形成することにより担体タンパク質を活性化するステップと、c)活性化C.difficile糖と活性化担体タンパク質を反応させて、C.difficile糖−担体タンパク質コンジュゲートを形成するステップとを含むプロセスにより、またはa)スルフヒドリル基を含むリンカーを加えて、活性化C.difficile糖を形成することによりC.difficile糖を活性化するステップと、b)スルフヒドリル基を含むリンカーを加えて、活性化担体タンパク質を形成することにより担体タンパク質を活性化するステップと、c)活性化C.difficile糖と活性化担体タンパク質を反応させて、C.difficile糖−担体タンパク質コンジュゲートを形成するステップとを含むプロセスにより、調製することができる。これらのコンジュゲートは、本明細書に開示されているポリペプチドのいずれかと組み合わせることができる。
追加的な抗原
多くの場合、単一の組成物を使用して、種々の感染病原体に対する免疫をもたらすことができる。したがって、組成物は、C.difficileに由来する抗原のみならず、他の細菌、ウイルス等に由来する抗原を含むこともできる。よって、本発明は、本発明の1種または複数のポリペプチドと、次の抗原のうち1種または複数とを含む組成物を提供する:VacA、CagA、NAP、HopX、HopY[183]および/またはウレアーゼなどのHelicobacter pylori由来のタンパク質抗原;タンパク質「287」および特に有用な誘導体を有する、N.meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原[184];185に開示されている調製物などのN.meningitidis血清群B由来の外膜小胞(OMV)調製物;血清群C由来の186に開示されているオリゴ糖などのN.meningitidis血清群A、C、W135および/またはY由来の糖抗原[187も参照];Streptococcus pneumoniae由来の糖抗原[188];不活性化ウイルスなどのA型肝炎ウイルス由来の抗原[189];表面抗原および/またはコア抗原などのB型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、190];C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、191];必要に応じてパータクチンおよび/または凝集原2および3とも組み合わせた、B.pertussis由来の百日咳ホロ毒素(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA)などのBordetella pertussis由来の抗原[例えば、192];ジフテリアトキソイド等、ジフテリア抗原[例えば、193]、例えば、CRM197突然変異体[例えば、194];破傷風トキソイド等、破傷風抗原[例えば、195];Haemophilus influenzae B由来の糖抗原またはポリペプチド;N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、196];Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、197];Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、198];Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、199];IPVまたはOPVなどのポリオ抗原(複数可)[例えば、200];凍結乾燥した不活性化ウイルス[例えば、202;RabAvert(商標)]などの狂犬病抗原(複数可)[例えば、201];麻疹、ムンプスおよび/または風疹抗原[例えば、203];赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質などのインフルエンザ抗原(複数可)[例えば、204];Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、205];Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば、206];Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来のタンパク質抗原[例えば、207、208];Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の糖抗原。特に、本発明は、本発明の1種または複数のポリペプチドと、Staphylococcus aureus由来の1種または複数の抗原[例えば、209]とを含む組成物を提供する。
処置の方法およびワクチンの投与
本発明は、C.difficileによる感染の防止または処置における使用のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止または低下のためのポリペプチド、核酸、抗体または組成物を提供する。対象は、動物、特に哺乳動物、より具体的にはヒトであり得るが、非限定例として、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは家畜などの商業的に重要な動物、またはネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、スナネズミもしくはハムスターなどのペットであり得る。ある特定の実施形態において、対象は、例えば、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ等、鳥類対象であり得る。
別の実施形態において、本発明は、抗生物質化合物による連続的投与、同時投与もしくは随伴的投与のための、C.difficileによる感染の防止または処置における使用のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のためのポリペプチド、核酸、抗体もしくは組成物を提供する。特に、対象は、動物、より具体的には、哺乳動物、さらにより具体的には、ヒト、例えば、成人または小児である。特に、ヒトは、妊婦または小児、特に、10歳未満の小児である。対象は、例えば、バンコマイシンによる広域抗生物質処置を受けている患者であってもよい。
別の実施形態において、本発明は、C.difficileによる感染の防止もしくは処置における使用のため、C.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または>50歳であるおよび/もしくは院内C.difficile感染を患うヒトにおけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のためのポリペプチド、核酸、抗体または組成物を提供する。
特に、本発明は、C.difficile感染に関連する下痢、抗生物質関連下痢(AAD)、腹痛、腹部疝痛、脱水、発熱、白血球増多症、偽膜性結腸炎または中毒性巨大結腸症の防止または処置における使用のためのポリペプチド、核酸、抗体または組成物を提供する。
さらなる実施形態において、本発明は、抗生物質化合物による連続的投与、同時投与または随伴的投与のための、C.difficile感染に関連する下痢、抗生物質関連下痢(AAD)、腹痛、発熱、白血球増多症、偽膜性結腸炎または中毒性巨大結腸症の防止または処置における使用のためのポリペプチド、核酸、抗体または組成物を提供する。
別の実施形態において、本発明は、C.difficile感染の防止もしくは処置のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のための医薬の製造における、本発明のポリペプチド、核酸、抗体もしくは組成物の使用を提供する。
別の実施形態において、本発明は、(a)配列番号79、81、93、105、111、113、125、133、139、141、153、165、171、173、185、187、189、300、322、357、359、361、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463および465からなる群から選択される、より好ましくは、配列番号79、139、133、433、111、171、113および173からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、これから本質的になるまたはこれからなる少なくとも1種のポリペプチド、(b)(a)に列挙されている群から選択されるアミノ酸配列をコードする少なくとも1種の核酸、および/または(c)(a)に列挙されている群から選択されるアミノ酸配列に結合することができる少なくとも1種の抗体を対象に投与するステップを含む、哺乳動物におけるC.difficile感染の防止もしくは処置のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、またはC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下における方法を提供する。
別の実施形態において、本発明は、78、80、92、104、110、112、124、132、138、140、152、164、170、172、184、186、188、356、358、360、432、434、436、438、440、442、444、446、448、450、452、454、456、458、460、462および464からなる群から選択される、好ましくは、配列番号78、132、138、432、110、170、112および172からなる群から選択される少なくとも1種の核酸を対象に投与するステップを含む、C.difficile感染の防止もしくは処置のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のための方法を提供する。
少なくとも1種の抗体を投与するステップを含む、C.difficile感染の防止もしくは処置のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のための方法において、抗体は、好ましくは、中和抗体である。
上で考察した通り、上述の抗原と、C.difficileまたはCDADに対し保護効果をもたらす1種または複数の追加的な抗原との組合せが好ましい。よって、本明細書の他の箇所に開示されている組合せおよびこれらの組合せを含む組成物は、上述の方法において等しく使用することができる。上述の抗原の組合せは、好ましくは、ToxB_GTおよびTcdA抗原、さらにより好ましくは、ToxB−GTおよびToxAp5_6抗原により作製される。よって、本発明の方法は、C.difficileまたはCDADに対し保護効果をもたらす1種または複数の追加的な抗原も投与される方法を含み、好ましいかかる抗原は、ToxB−GTおよびToxAp 5_6である。他の箇所で考察している通り、かかる抗原に結合する抗体と同様に、かかる抗原をコードするヌクレオチド分子を使用することもできる。2種以上の抗原(またはヌクレオチド分子もしくは抗体)が使用されるあらゆる事例において、抗原(またはヌクレオチド分子もしくは抗体)は、順次、同時にまたは個別に投与することができる。
別の実施形態において、本発明は、本発明の組成物を対象に投与するステップを含む、C.difficile感染の防止もしくは処置のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のための方法を提供する。
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも1種の医薬品担体(複数可)および/または賦形剤を含む本発明の組成物を対象に投与するステップを含む、C.difficile感染の防止もしくは処置のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のための方法を提供する。
別の実施形態において、本発明は、医薬組成物またはワクチン組成物である本発明の組成物を対象に投与するステップを含む、C.difficile感染の防止もしくは処置のため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、または対象におけるC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のための方法を提供する。この方法は、対象において、免疫応答を発生させるため、またはC.difficile感染を防止もしくは処置するため、またはC.difficile胞子誘導性疾患再発の処置、防止もしくは重症度低下のため、またはC.difficileによる腸管のコロニー形成の処置、防止もしくは低下のために使用することができる。本発明の方法は、抗生物質の投与をさらに含むこともできる。
C.difficileは、野生および飼育両方における種々の哺乳動物に感染することも公知である。疾患は、ヒトにおいて観察される疾患と非常に類似しているが、単離株の不均一性がより低いことが観察された[2]。よって、C.difficile感染が実証された場合、本発明の組成物および方法を使用して、とりわけウマ、ブタおよびウシなどの哺乳動物を処置することができる。
一部の実施形態において、哺乳動物は、近年抗生物質を受けたことがある、現在抗生物質を受けている、または抗生物質を受けようとしている。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、より好ましくは、ヒトである。ヒトは、小児(例えば、幼児または乳児)、十代または成人であり得る。小児を対象とする組成物は、例えば、安全性、投薬量、免疫原性等を評価するために、成人に投与することもできる。ヒトは、病院における処置下であってもよい。
本発明に従って調製されたワクチンを使用して、ヒト小児および成人の両方を処置することができる。よって、ヒトは、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳または少なくとも55歳であり得る。ワクチンを受けるヒトは、高齢(例えば、≧50歳、≧60歳、好ましくは、≧65歳)、若年(例えば、≦5歳)、入院患者、医療従事者、軍務関係者および兵士、妊婦、慢性的な病気または免疫不全患者となり得る。ワクチンは、単にこれらの群のみに適している訳ではなく、集団においてより広く使用することができる。
本発明により産生されるワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、医療専門家またはワクチン接種センターへの同じ医学的診察または来診時に)、例えば、インフルエンザワクチン、麻疹ワクチン、ムンプスワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、S.aureusワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、コンジュゲート型H.influenzae b型ワクチン、不活性化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌コンジュゲートワクチン(四価A−C−W135−Yワクチンなど)、呼吸器多核体ウイルスワクチン等と実質的に同時に、ヒトに投与することができる。
本発明は、また、本発明の組成物を含むキットを提供する。キットは、次のうち1種または複数をさらに含むことができる:説明書、シリンジもしくは他の送達デバイス、アジュバント、抗生物質または薬学的に許容される製剤化溶液。本発明は、また、本発明の組成物を予め充填した送達デバイスを提供する。
治療的処置の有効性をチェックする仕方の1つは、哺乳動物に本発明の組成物を投与した後のC.difficile感染のモニタリングを含む。予防的処置の有効性をチェックする仕方の1つは、組成物の投与後の、本発明の組成物中のポリペプチドに対する全身的な(IgG1およびIgG2a産生のレベルのモニタリングなど)および/または粘膜による(IgA産生のレベルのモニタリングなど)免疫応答のモニタリングを含む。典型的には、ポリペプチド特異的血清抗体応答は、免疫化後であるが負荷前に決定され、一方、ポリペプチド特異的粘膜抗体応答は、免疫化後かつ負荷後に決定される。本発明の組成物の免疫原性を評価する別の仕方は、イムノブロットおよび/またはマイクロアレイにより哺乳動物血清または粘膜分泌物をスクリーニングするために、組換えによりタンパク質を発現させることである。タンパク質および哺乳動物試料の間の陽性反応は、哺乳動物が、問題のタンパク質に対する免疫応答を開始したことを示す。この方法を使用して、免疫優性ポリペプチドおよび/またはポリペプチド内のエピトープを同定することもできる。ワクチン組成物の有効性は、C.difficile感染の動物モデル、例えば、モルモットまたはマウスにワクチン組成物を負荷することにより、in vivoで決定することもできる。
本発明の組成物は、一般に、哺乳動物に直接的に投与されるであろう。直接的な送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内または組織の間質腔への)により、あるいは直腸、経口(例えば、錠剤、スプレー)、腟、局所、経真皮(transdermal)もしくは経皮、鼻腔内、眼、経耳、肺または他の粘膜投与による等、粘膜により達成することができる。
本発明を使用して、全身性免疫および/または粘膜免疫を誘発、例えば、増強された全身性免疫および/または粘膜免疫を誘発することができる。典型的には、増強された全身性免疫および/または粘膜免疫は、増強されたTH1および/またはTH2免疫応答において反映される。多くの場合、増強された免疫応答は、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgAの産生の増加を含む。
投薬量は、単一用量スケジュールまたは複数用量スケジュールによるものとなり得る。複数用量は、一次免疫化スケジュールおよび/または追加免疫化スケジュールにおいて使用することができる。複数用量スケジュールにおいて、同じまたは異なる経路により様々な用量を与えることができる、例えば、非経口予備刺激および粘膜追加免疫、粘膜予備刺激および非経口追加免疫等。複数用量は、典型的に、少なくとも1週間置いて(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間等)投与されるであろう。
株およびバリアント
本発明のポリペプチドは、本来、C.difficile株630に由来した。そのため、これは、C.difficile抗原と称することができる。しかし、当業者であれば、本発明のポリペプチドが、複数の異なる株のC.difficileに起因するCDADに対する免疫化に有用であることが明らかとなろう。よって、本発明は、株630および株SMのみに由来するポリペプチドおよび/または断片を含む組成物に限定されない。C.difficile株R20291(SM)、C.difficile株196、C.difficile株BI1、C.difficile株BI/NAP1/027(リボタイプ027)、C.difficile株M120およびC.difficile株M68、株855、株QCD−63q42、株ATCC43255の配列を含む、C.difficileの数種類の株の配列が利用できる。
標準検索およびアライメント技法を使用して、いずれかのさらなるゲノム配列において、C.difficile株由来のいずれか特定の配列のホモログを同定することができ、例えば、株ATCC43255、株CIP107932、株QCD−23m63、株QCD−32g58、株QCD−37x79、株855、株QCD−63q42、株QCD−66c26、株QCD−76w55、株QCD−97b34、株CD196、株CDBI1、株CDCF5、株CDSM、株CDM68、株CDM120または株R20291において行うことができる。さらに、本C.difficile株から利用できる配列を使用して、他の株から相同配列を増幅するためのプライマーを設計することができる。よって、本発明は、この株由来のポリペプチドに限定されず、むしろ、C.difficileの他の株由来のかかるバリアントおよびホモログ、ならびに非天然バリアントを包含する。一般に、特定の配列番号の適したバリアントは、その対立遺伝子バリアント、その多型、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その突然変異体等を含む。
よって、例えば、本発明により使用されるポリペプチドは、本明細書における配列番号と比較して、保存的置換(即ち、あるアミノ酸の、関連する側鎖を有する別のアミノ酸による置換)などの1個または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個等)のアミノ酸置換を含むことができる。遺伝学的にコードされたアミノ酸は、一般に、4種のファミリーに分けられる:(1)酸性、即ち、アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、即ち、リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、即ち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)無電荷極性、即ち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、芳香族アミノ酸として共に分類される場合もある。一般に、これらのファミリー内の単一アミノ酸の置換は、生物学的活性に大きな効果を持たない。ポリペプチドは、配列番号の配列と比べて、1個または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個等)の単一アミノ酸欠失を含むこともできる。ポリペプチドは、配列番号の配列と比べて、1個または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個等)の挿入(例えば、それぞれ1、2、3、4または5個のアミノ酸の)を含むこともできる。
同様に、本発明により使用されるポリペプチドは、次のアミノ酸配列を含むことができる:(a)配列表に開示されている配列と同一(即ち、100%同一)である;(b)配列表に開示されている配列と配列同一性(例えば、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上)を共有する;(c)(a)または(b)の配列と比較して、別々の位置であっても近接していてもよい1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個(以上)の単一アミノ酸変更(欠失、挿入、置換)を有する;ならびにペアワイズアライメントアルゴリズムを使用して配列表由来の特定の配列とアライメントされる際、EMBOSSパッケージ[210]におけるニードルツール(needle tool)において実行され、それぞれN末端からC末端へと移動するxアミノ酸のウィンドウ(pアミノ酸(p>x)へと伸長するアライメントのために、p−x+1のかかるウィンドウが存在するように)は、少なくともx・y個の同一のアライメントされたアミノ酸を有し、xは、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され;yは、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され;x・yが整数でない場合、四捨五入して整数とする。好ましいペアワイズアライメントアルゴリズムは、デフォルトパラメータ(例えば、ギャップオープニングペナルティ=10.0による、およびギャップ伸長ペナルティ=0.5による、EBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用)を使用したNeedleman−Wunschグローバルアライメントアルゴリズム[211]である。
一般に、本発明のポリペプチドが、配列表由来の完全C.difficile配列と同一ではない配列を含む場合(例えば、それに対して<100%配列同一性を有する配列表を含む場合、またはその断片を含む場合)、個々の事例それぞれにおいて、ポリペプチドが、それぞれの完全C.difficile配列を認識する抗体を誘発することができることが好ましい。ハイブリッドポリペプチドが使用される場合、ハイブリッド内の個々の抗原(即ち、個々の−X−部分)は、1種または複数の株に由来し得る。例えば、n=2の場合、X2は、X1と同じ株に由来しても、異なる株に由来してもよい。n=3の場合、株は、(i)X1=X2=X3、(ii)X1=X2≠X3、(iii)X1≠X2=X3、(iv)X1≠X2≠X3または(v)X1=X3≠X2等となり得る。
群(c)内において、欠失または置換は、N末端および/またはC末端に生じても、両末端間に生じてもよい。よって、トランケーションは、欠失の例である。トランケーションは、N末端および/またはC末端における最大40個(以上)のアミノ酸の欠失を含み得る。
上述に鑑みて、用語、「C.difficile抗原」または「C.difficileポリペプチド」は、上に定義されている分子、例えば、C.difficileの他の株由来のバリアントもしくはホモログである、または本明細書に言及されているおよび/もしくは配列表に提示されているポリペプチドまたは抗原の非天然または非天然起源のバリアントであり、好ましくは、上に定義されている配列判断基準を満たす分子を含む。
本発明は、また、ポリペプチドの毒性を減少させる突然変異を有する亜鉛メタロペプチダーゼ(mettallopeptidase)のファミリーに属するポリペプチドを提供する。適したポリペプチドは、Dif153(CD2830)を含む。毒性を減少させる例示的な突然変異は、プロテアーゼ活性を低下させるジンチンメタロプロテアーゼドメインの全体または一部の欠失およびジンチンメタロプロテアーゼドメインにおける点突然変異を含む。解毒は、当該技術分野において公知のいずれかの適切な方法、例えば、部位特異的突然変異誘発を使用して、これらのポリペプチドのアミノ酸配列またはコード核酸配列に変異導入することにより達成することができる。好ましくは、亜鉛メタロペプチダーゼのファミリーに属するポリペプチドは、亜鉛メタロペプチダーゼのファミリーに属する野生型ポリペプチドの配列と比べて、1個または複数のアミノ酸置換(即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30個以上の突然変異)を含む。例えば、Dif153(CD2830)ポリペプチドは、配列番号300および435の野生型Dif153(CD2830)ポリペプチド配列と比べて、1個または複数のアミノ酸置換(即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個以上の突然変異)、例えば、アミノ酸位置134、142、143、146、149、150、178、184および/または208におけるアミノ酸番号の置換を含む。例えば、Dif153(CD2830)ポリペプチドは、配列番号300および435のDif153(CD2830)ポリペプチド配列のアミノ酸134、142、143、146、149、150、178、184および/または208に相当する1、2、3、4または5個の位置に置換を含むことができる。特に、配列番号300および435の野生型Dif153(CD2830)ポリペプチド配列と比べて、アミノ酸134、142、143、146、149、150、178、184および/または208に相当する位置における1、2、3、4または5個のアミノ酸は、好ましくは、アラニン(A)、フェニルアラニン(F)、アルギニン(R)、セリン(S)残基により置換することができる。Dif153(CD2830)の単一突然変異の例は、H142A、E143A、E143R、H146A、D149A、H150A、Y178FおよびC208Sである。Dif153(CD2830)の二重突然変異体の例は、配列番号300および435の野生型CT153(CD2830)ポリペプチド配列と比べて、H142A/H146A;H142A/Y178F;H142A/E143R;H142A/E143A;E142A/Y178Fである。本発明は、単独または組み合わせたCT153(CD2830)ポリペプチドの他の突然変異体も提供する:H142A/H150AおよびE143A/D149A。前述の解毒免疫原性ポリペプチドは、好ましくは、配列番号300および435の少なくとも1個のエピトープまたは免疫原性断片を保持する。
本発明は、また、突然変異を含むC.difficile細菌、特に、実施例において詳述されるポリペプチドの1種または複数がノックアウトされたC.difficile細菌を提供する。ノックアウト細菌を産生するための技法は周知のものであり、ノックアウトC.difficile株が報告されている。ノックアウト突然変異は、遺伝子のコード領域に位置することができる、またはその転写制御領域内(例えば、そのプロモーター内)に置くことができる。ノックアウト突然変異は、ポリペプチドをコードするmRNAのレベルを、野生型細菌によって産生されるレベルの<1%、好ましくは<0.5%、より好ましくは<0.1%、最も好ましくは0%まで低下させるであろう。本発明は、また、本発明のポリペプチドを構成的に発現するC.difficile細菌等の細菌を提供する。本発明は、また、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子であって、誘導性プロモーターの制御下における遺伝子を含むClostridium細菌を提供する。かかる細菌は、検査および開発において、または弱毒化ワクチンの調製において有用となり得る。
一般
本発明の実施は、他に指示がなければ、化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来方法を、当業者の技能範囲内で利用するであろう。かかる技法は、文献において十分に説明されている。例えば、[212〜219等]を参照されたい。一部の実施において、用語「を含む(comprising)」は、列挙されているポリペプチドなどの示された活性剤の包含ならびに医薬品業界において公知の他の活性剤および薬学的に許容される担体、賦形剤、皮膚軟化薬、安定剤等の包含を指す。一部の実施において、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、その唯一の活性成分が、示された活性成分(複数可)であり、しかし製剤の安定化、保存等のための他の化合物が含まれていてもよいが、示された活性成分の治療効果に直接的に関与しない組成物を指す。移行句「から本質的になる」の使用は、特許請求の範囲が、請求項に列挙されている特定の材料またはステップと、請求項の発明の基本および新規の特徴(複数可)に実質的な影響を及ぼさない材料またはステップを包含すると解釈するべきであることを意味する。In re Herz, 537 F.2d 549、551〜52頁、190 USPQ 461、463(CCPA 1976)(原本において強調)を参照されたい;MPEP§2111.03も参照されたい。よって、用語「から本質的になる」は、本発明の特許請求の範囲において使用する場合、「を含む(comprising)」と均等であると解釈されることを意図しない。用語「からなる(consisting of)」およびその変化は、他に明確な規定がなければ、「含む(including)」および「に限定される(limited to)」を含む。数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%、x±5%、x±4%、x±3%、x±2%、x±1%を意味する。
本発明のある特定の実施形態を上に記載および具体的に例証してきたが、本発明がかかる実施形態に限定されることを意図するものではない。以下の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲および精神から逸脱することなく、これらに対して様々な変更を行うことができる。
(実施例1)
C.difficileポリペプチドの同定
C.difficileに対するワクチンの提供における使用のためのポリペプチドを同定するために、本発明者らは、PSORTプログラム(220)を使用して、C.difficile630によってコードされる3780種前後の予測ポリペプチドの全アンサンブルを解析した。これは、末梢の亜細胞局在が予測されるタンパク質を同定した。特に、次の群が同定された:
・細菌細胞壁外側へのタンパク質の付着部位を表す典型的LPXTG様モチーフの存在により同定される、細胞壁関連タンパク質。
・タンパク質産物を典型的に細胞外環境へと方向づけるN末端リーダーペプチドの存在により、および/または搬出されることが知られている他の細菌タンパク質との配列類似性により同定される、細胞外タンパク質。
・細菌表面位置のタンパク質。
公知のビルレンス因子との配列相同性および宿主との相互作用に関与するポリペプチドモチーフのために、他のポリペプチドを選択した。未知機能の数種類のポリペプチドも同定された。続いて、次の実施例に記載されている方法論を使用して、ポリペプチドを検査およびスクリーニングした:
(実施例2)
分泌C.difficileポリペプチドの同定
Clostridium difficileセクレトーム調製を次の通りに行った:ブレインハートインフュージョン(BHI)または既知組成培地(CDM、M.N. Mickelson、J. of Bact.、1964年、88巻:158〜164頁)の両方においてC.difficile(株630およびStoke Mandeville)を増殖させた。寒天プレート上に一晩細菌を蒔き、次に、対数期の中間(0.5のOD600)または初期定常期(0.9のOD600)に達するまで、100mLの適切な培地において嫌気性条件下において37℃で増殖させた。3,500×g、10分間、4℃の遠心分離により細菌を除去し、0.22μmポアサイズフィルター(Millipore)を通して上清を濾過した。上清に存在するタンパク質を、10%w/vトリクロロ酢酸、0.04%w/vデオキシコール酸ナトリウムによりo/nで沈殿させた。5mMジチオスレイトール、0.1%Rapigest(登録商標)(Waters)を含有する50mM重炭酸アンモニウムにタンパク質を再懸濁し、90℃で10分間加熱し、2ugのトリプシン(Promega)によりo/nで消化した。0.1%v/vギ酸を添加してタンパク質分解性の(Proteolitic)消化を停止させた。その後、得られたペプチドを質量分析により解析した。
ナノLC/MS/MSによるタンパク質同定を次の通りに行った:ナノスプレー源(Waters)を備えるQ−ToF Premierエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析計に接続されたNanoAcquity UPLCシステム(Waters)において、ナノ−LCによりペプチドを分離した。NanoAcquity 5μm Symmetry(登録商標)C18トラップカラム(180μm×20mm、Waters)を通してNanoAcquity 1.7μm BEH130 C18カラム(75μm×25cm、Waters)に試料をロードした。流速250nl/分において、98%アセトニトリル、0.1%ギ酸溶液の2〜40%の120分間勾配によりペプチドを溶出させた。
MSサーベイスキャンを使用してさらなるMS/MS断片化のために300〜2,000のm/z比範囲にわたって多電荷(multicharged)ペプチドを自動的に選択するMassLynxソフトウェア、バージョン4.1(Waters)を使用して、溶出されたペプチドを自動データ依存的取得に供した。最大5種の異なる構成成分を同時にMS/MS断片化に供した。データ取得後に、ProteinLynx、バージョン3.5(Waters)を使用して、個々のMS/MSスペクトルを組み合わせ、スムージングし、セントロイド処理して、ピークリストファイルを得た。ローカルサーバー上で実行するMASCOTのバージョン(バージョン2.2.1)へのデータファイルの自動送信のために、Mascot Daemonアプリケーション(MatrixScience Ltd.、英国ロンドン)を使用した。
NCBInrデータベースのClostridium difficileセクションに由来するタンパク質配列データを組み合わせるローカルに精選されたデータベースにおいて、それぞれ71233個および21677396個の配列および残基の総数を検索することにより、タンパク質同定を達成した。MASCOT検索パラメータを次の通りに設定した;(i)トリプシン消化の許容される切断できなかった数として1、(ii)可変性修飾としてメチオニン酸化ならびにグルタミンおよびアスパラギン脱アミド、(iii)ペプチドトレランスとして0.2Da、(iv)MS/MSトレランスとして0.2Da。MASCOTスコアリングおよび確率システムにより定義される、有意なヒットのみを考慮した。ペプチド同定の許容性のためのスコア閾値は、トリプシン消化に関して≧33であった。
本発明者らは、ポリペプチドDif183、Dif192およびDif153が分泌され、株630に由来する上清に存在したことを発見した。加えて、本発明者らは、次のタンパク質が20291株の上清に存在したことを発見した:Dif183、Dif192およびDif153ならびに断片Dif208Aおよび断片Dif208B。これらの結果は、図2に要約されている。これらの分泌タンパク質/ポリペプチドは、特に、細菌コロニー形成の低下もしくは防止における使用のための、または感染部位における壊死などの組織損傷の低下における使用のための有用なワクチン標的である。
(実施例3)
NMRによる細胞ライセートの解析
組換えタンパク質発現のためのベクターを保有する細菌細胞を、最初に800uLのM9 1×バッファー、pH7.4における再懸濁により洗浄し、遠心分離し(5’、3,000rpm)、上清を廃棄した。次に、残った細菌ペレットを600uLのM9バッファーに再懸濁し、超音波処理によって細胞を溶解し、続いて4℃で遠心分離する(20’@14,000rpm)。次に、NMR解析のために上清を単離する。NMR解析のために10%D2O(容量で)を試料に添加する。900または800MHz NMRを使用して高速HSQCまたはTROSY実験を取得し、topspinソフトウェアを使用して処理した(図3)。
NMR解析から、Dif44のHSQCスペクトルは、図4においてほぼ等しい強度を有するピクス(pics)の良好な分散を示し、Dif44が十分にフォールドされていることを示した。細胞ライセートのNMR解析の結果は、図2に要約されている。これらの結果は、特に、Escherichia coli細胞質などの異種性環境において発現される場合に、その三次元構造を安定的に維持する傾向を有するポリペプチドを同定した。これは、組換え、サブユニットワクチン構成成分の提供に有用な特色である。
(実施例4)
組換えタンパク質および断片のクローニング、発現、精製
単離された組換えタンパク質を調製するために、特異的オリゴヌクレオチドおよび鋳型としてのC.difficile染色体DNAを使用して、Clostridium difficile ORFをPCR増幅した。遺伝子増幅(amplication)に使用したプライマーは、図1に要約されている。クローニングベクターのPCR増幅(V−PCR)およびインサートのPCR増幅(I−PCR)に存するPIPE方法(Klock, H.E.ら(2008年)Proteins 71巻:982〜994頁)を使用して、得られたPCR産物をpET15b(Novagen)にクローニングした。次に、1μlのV−PCRおよび1μlのI−PCRを混合し、化学的コンピテントHK100細胞に形質転換する(Klock, H. E.ら(2005年)J. Struct. Funct. Genomics 6巻、89〜94頁}。それぞれ1μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、1×クローニングPfu DNAポリメラーゼ反応バッファー、2.5ユニットのPfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene)、それぞれ200μMのdNTP(Invitrogen)ならびに50ngのゲノムDNA鋳型を含有するI−PCR反応物をセットアップした。次の通りに反応を行った:最初の変性2分間95℃、次に25サイクルの95℃30秒間、55℃45秒間および68℃3分間、続いて4℃に最後の冷却。V−PCR反応は、I−PCR反応と同一であったが、68℃のステップが14分間持続し、2ngのpET15bプラスミドがDNA鋳型として使用された。PCRスクリーニングおよびベクター−インサート接合部のDNAプラスミド配列決定により、正確な形質転換体を選択した。次に、選択されたHK100クローンから正確なプラスミドを調製し、タンパク質を発現させるためにBL21(DE3)T1r細胞(Sigma)の形質転換に使用した。
クローニングされたタンパク質を発現させるために、pET15b構築物を含有するBL21(DE3)T1rクローンを、100μg/mlアンピシリンを含有するLB培地においてOD600=0.5となるまで37℃で増殖させた。次に、1mM IPTGを添加し、同じ温度でさらに3時間増殖させることにより、タンパク質発現を誘導した。従来のタンパク質抽出およびSDS−Pageを行って、タンパク質発現をチェックした。
(実施例5)
C.difficile組換えタンパク質および断片によるマウスの免疫化
図1に記載されているポリペプチドおよび断片毎に、4匹の雌性CD1マウスの2群を使用した。アラムアジュバント(群1)またはMF59アジュバントにおいて製剤化した10μgの抗原により、各群を免疫化した。0、21および35日目に、腹腔内に免疫化を行った。49日目に最終の放血および選別を行った。
後述するウエスタンブロット、共焦点顕微鏡およびFACS解析による本発明のポリペプチドの特徴付けにおいて、組換えポリペプチドに対する血清を使用した。血清は、いずれのポリペプチドが中和抗体の調製における使用に最も適するか同定するための受動的保護実験においても利用した。
(実施例6)
ウエスタンブロットによる表面露出試験
選択されたタンパク質が、C.difficile細胞により表面発現されることを実証するために、異なるスクリーニングにおいて各組換えタンパク質に対して生じる血清を使用した。細菌画分におけるウエスタンブロット解析を行って、S層画分(細胞壁の非共有結合によりアンカーされたタンパク質を含有)および総細胞壁抽出物(細胞壁の全タンパク質を含有)における本発明のポリペプチドの存在を検証した;血清特異性の陽性対照として精製タンパク質を使用した。C.difficile 630株をBHI培地において一晩増殖させ、S層および総細胞壁抽出物の調製のために遠心分離により収集した。低pHのグリシンインキュベーションを使用して、S層抽出物を調製した;簡潔に説明すると、細菌ペレットを、0.2Mグリシン、pH2.2およびプロテアーゼ阻害剤と共に室温で20分間インキュベートした。細菌懸濁液を遠心分離し、表面タンパク質を含有する上清を2M Tris塩基の添加により中和した。
細菌と60μg/mlムタノリシン、1mg/mlリゾチームおよびプロテアーゼ阻害剤との室温2時間のインキュベーションにより、総細胞壁抽出物を調製した。細菌懸濁液を遠心分離し、表面タンパク質を含有する上清を収集した。S層および細胞壁抽出物におけるタンパク質をSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングに供した。各組換えタンパク質に対して生じたマウス血清は全て1/1000希釈で使用し、続いて1/2500希釈の抗マウス−HRPを使用した。
Dif183の解析およびC.difficile細胞画分の調製:「総細胞抽出物」を調製するために、OD600が1.3となるまでTYMにおいて株630を増殖させた。4000rpmにおける10分間の遠心分離により細胞を収集し、PBSにおいて1回洗浄した。ペレットをPBSに再懸濁した。細胞壁内に存在する他のタンパク質と共にS層タンパク質を含有する「細胞壁画分」を単離するために、OD600が1.3となるまで20mlのTYMブロスにおいて株630を増殖させた。4000rpm、10分間、4℃の遠心分離により細胞を収集し、PBSにおいて1回、Tris−スクロースバッファー(10mM Tris−HCl pH6.9、10mM MgCl2、0.5Mスクロース)において1回洗浄した。次に、穏やかに回転撹拌しつつ、2mlの消化バッファー(250μg/mlムタノリシンおよびプロテアーゼ阻害剤を含有するTris−スクロースバッファー)において2時間37℃でペレットをインキュベートした。遠心分離により、「プロトプラスト画分」を含有するペレットから、「細胞壁画分」を含有する反応上清を分離した。プロトプラストをPBSに再懸濁し、試料を5回凍結融解することにより溶解を行った。
S層に関連するタンパク質のみを含有する「S層画分」の調製のために、50mlのBHISブロスにおいて株630を一晩増殖させた。3500g、10分間、室温における遠心分離により培地から細胞を分離し、PBSにおいて洗浄し、穏やかに撹拌しつつ、プロテアーゼ阻害剤の存在下における0.5mlの0.2M HCl、pH2.2において20分間室温でインキュベートした。細菌懸濁液を最大スピードにて4℃で10分間遠心分離した。S層タンパク質を含有する上清を取り出し、2M Tris塩基の添加によりpHを中和した。
ウエスタンブロット解析のために、出発培養容量に基づき画分を正規化した。
ウエスタンブロット解析:細胞全体ライセート、細胞画分、上清画分および精製組換えタンパク質のタンパク質解析のために、還元剤を含有する試料バッファーと試料とを混合し、ロードに先立ち10分間100℃で加熱した。NuPAGEゲルシステム(Invitrogen)を使用してSDS−PAGEにより試料を分離し、ウエスタンブロット解析のためにニトロセルロース膜に転写した。膜をPBS−10%粉ミルクにより4℃で3時間ブロッキングした。使用されている一次抗体は、組換えhisタグ付きタンパク質に対して生じたポリクローナルマウス抗血清である。全一次抗体を1:1000で希釈し、1時間30分の間37℃でインキュベートした;二次抗体は、西洋わさびペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヤギ抗マウス血清であり(1:5000;Dako)、室温で45分間インキュベートした。結合した抗体の検出は、メーカーの説明書に従ってSuper Signal化学発光基質(Pierce)により行った。
示されている血清により認識されるポリペプチドDif44、Dif51およびDif192は、細胞表面露出されており、対象の免疫系に到達可能であり、したがって、これらの抗原は、特に、感染の防止、コロニー形成または感染伝播の低下に有用なワクチン標的も表す(図5)。
(実施例6A)
共焦点顕微鏡による表面露出決定
選択されたタンパク質がC.difficile細胞によって表面発現されるか決定するために、さらなるスクリーニングにおいて各組換えタンパク質に対して生じた血清を使用した。固定された細菌において共焦点顕微鏡観察を行って、予測される露出タンパク質それぞれへの特異的抗体の到達性を評価した。青色蛍光DAPIで細菌DNAを標識した;特異的血清と、続いて赤色または緑色色素にコンジュゲートした二次抗体で表面タンパク質を染色した。
選択されたポリペプチドそれぞれの表面露出を検証するために、C.difficile630株をBHIにおいてOD6000.5となるまで増殖させ、PBSにおいて洗浄した。2%PFAで20分間室温にて細菌ペレットを固定し、ポリ−リシンでコーティングしたチャンバースライド上にスポット(spot)した。次に、2%BSAで15分間細菌をブロッキングし、2%BSAにおいて1/500希釈した各組換えタンパク質に対して生じた血清と共に1時間室温でインキュベートした。次に、ヤギ抗マウスAlexa Fluor568コンジュゲート抗体(Molecular Probes)で30分間室温にて細菌を染色した。次に、DAPIを含有するGold退色防止試薬(Molecular Probes)を使用して、カバーガラスにマウントした。
本発明者らは、Dif44、Dif51、Dif153、Dif183、Dif192、Dif208およびDif232に対して生じた血清が、630株の表面におけるこれらのタンパク質を認識することができたことを見出した。図2の共焦点顕微鏡と題する列は、表面露出され、C.difficile630株抽出物において検出されるタンパク質を示す。先と同様に、細胞表面露出され、免疫系に到達可能であり得るこれらの抗原は、有用なワクチン標的を表す。
(実施例7)
ヒト上皮細胞との相互作用
選択されたポリペプチドが、ヒト上皮細胞に結合することができたか評価するために、各組換えポリペプチドを2種の結合アッセイにおいて検査した:
1.FACS解析:細胞解離溶液(CDS、Sigma)を使用してベロ細胞を非酵素的に剥離し、収集し、1%FBSを補充したRPMI培地に懸濁した。96ウェルマイクロプレートにおよそ105細胞を置き、細胞の付着を回避するために20分毎に混合しつつ、500〜0.24mg/mLにわたる異なる濃度の精製タンパク質または培地単独と1時間37℃または4℃で混合した。PBS+2%FBSで2回洗浄し、遠心分離することにより、過剰な非結合タンパク質を除去した。その後、細胞を各組換えポリペプチドに対して生じた血清と共に1時間4℃でインキュベートした。細胞をPBS+2%FBSにおいて2回洗浄し、R−フィコエリトリンコンジュゲート抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories)と共に30分間4℃でインキュベートした。その後、PBS+2%FBSにおいて細胞を洗浄し、PBSに再懸濁した。本発明者らは、Dif208A、Dif208B、Dif232およびDif192が、ベロ細胞の表面に結合する能力を有することを見出した。例として、Dif232のFACS解析は、図6に示されており、FACS解析の全結果は、図7に要約されている。ヒト細胞に結合するポリペプチドは、C.difficileのコロニー形成を限定または防止するための優れた候補となり得る。
2.共焦点顕微鏡:チャンバースライド上において、10%FCSを補充したDMEM培地にベロ細胞およびCaco−2細胞を播種し、24時間インキュベートした。DMEM+10%FCSに希釈した20mg/mLの各ポリペプチドと共に細胞を1時間37℃でインキュベートした。PBS+2%BSAにおける2回の洗浄により過剰な非結合ポリペプチドを除去し、2%PFAで20分間室温にて細胞を固定した。次に、PBS+2%BSAで15分間細胞をブロッキングし、PBS+2%BSAにおいて1/500希釈した各組換えタンパク質に対して生じた血清と共に1時間室温でインキュベートした。次に、抗マウスAlexa Fluor488コンジュゲート抗体(Molecular Probes)でポリペプチドを染色し、ファロイジン−Alexa Fluor568コンジュゲートで細胞のアクチンを染色した。次に、DAPIを含有するGold退色防止試薬(Molecular Probes)を使用して、カバーガラスにマウントした。
FACS結果を確認するために、ベロ細胞における共焦点顕微鏡による結合アッセイにより、FACSが陽性であったポリペプチドを検査した。さらに、解析をヒト腸Caco−2細胞に拡張した。ヒト細胞に結合するポリペプチドは、C.difficileのコロニー形成を限定または防止するための優れた候補となり得る。本発明者らは、Dif208B、Dif51およびDif192が、細胞膜に明らかに結合しているが、一方、Dif208Aは、細胞膜に会合している可能性があることを実証した(図7)。これらのポリペプチドは、ヒト細胞に結合することが実証され、C.difficileのコロニー形成を限定または防止するための優れた候補となり得る。
(実施例8)
細胞外マトリックス(ECM)構成成分への相互作用
プレートを10μg/mlの各ECM構成成分でコーティングし、O/Nにて4℃でインキュベートした。次に、プレートを洗浄し、2.7%で2時間37℃にてブロッキングした。洗浄後に、プレートを4℃で少なくとも16時間貯蔵した。コーティングしたウェルに20〜50μg/mlの組換えポリペプチドを添加し、2時間37℃でインキュベートした。
ウェルを洗浄し、各組換えタンパク質に対して生じた血清と共に90分間37℃でインキュベートし、続いてHRPコンジュゲート二次抗体と共に90分間37℃でインキュベーションを行った。HRP基質溶液をウェルに添加し、12.5%H2SO4を添加することにより反応を停止した。ELISAプレートリーダーにより、490nmにてプレートを読み取った。
細胞外構成成分に結合することができるポリペプチドは、腸組織のコロニー形成を限定または防止するための優れた候補となり得る。例えば、Dif208ポリペプチドは、細胞外マトリックス結合ドメインを含有する。これらのドメインが、特定のECM構成成分への結合の媒介において機能的であるか検証するために、本発明者らは、ELISA試験を行った。ELISAプレートを精製ECM構成成分でコーティングし、2ug〜31.25ng/ウェルにわたる系列希釈した組換えタンパク質と共にインキュベートした。この試験において、Dif208タンパク質の2種のサブドメイン(Dif208AおよびDif208B)を解析した。本発明者らは、Dif208サブドメインが、全ECM構成成分に結合することを発見した(図9)。これらのポリペプチドは、細胞外構成成分に結合することができ、腸組織のコロニー形成を限定または防止するための優れた候補となり得る。
(実施例9)
C.difficile臨床単離株におけるDif192およびDif44の保存
C.difficile株630(リボタイプ012)、R20291(リボタイプ027)およびM120(リボタイプ078)ならびにイタリアの異なる地域由来の優勢なPCRリボタイプのうち6種(001、014、018、012、078、126)を表すC.difficile臨床単離株の総細胞抽出物またはS層調製物のウエスタンブロット解析により、Dif192およびDif44の存在を試験した(図8)。FaganおよびFairweather(Fagan, R.およびFairweather、N. J Biol Chem.286巻(31号):27483〜93頁、2011年)により記載されている凍結融解手順に基づく方法により、細胞全体ライセートの調製物を得た。簡潔に説明すると、5,000×g、10分間、4℃の遠心分離によりC.difficileの培養物を収集し、ペレットを−20℃で凍結した。細菌を解凍し、PBSに再懸濁してOD600nmを20とし、37℃で10分間インキュベートした。一貫した再現性のある溶解を得るために、このような凍結融解サイクルを3回行った。S層の抽出は、以前に記載された方法に従って行った(Fagan, R.およびFairweather、N. Methods Mol Biol 646巻、117〜134頁、2010年)。
BHIブロスにおいて定常期(OD600nm≒1)まで増殖させた培養物から、細胞壁タンパク質を調製した。SDS−PAGEにより抽出物を分離し、続いてマウスにおいて生じた特異的抗体によりウエスタンブロッティングを行った。一次抗体は、1:2,000希釈で使用し、1:20,000の西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートウサギ抗マウス抗体(Dako)と、SuperSignal West Pico化学発光基質(Thermo Scientific Pierce)を使用することにより検出した。タンパク質分子量推定のためにウエスタンブロットにおいて直接的に、標準バンドの直接的な可視化のためのマーカー(MagicMark XP Western Protein Standard、Invitrogen)を慣例的にに使用した。解析した全臨床単離株の総抽出物において、Dif192およびDif44の発現を検出し、これらのポリペプチドが保存されており、したがって、これらのポリペプチドも、特に、感染防止、コロニー形成または感染伝播の低下のために有用なワクチン標的を表すことを示した。
(実施例10)
マウス抗体による組換えポリペプチドの認識
クロストリジウム病理発生において重要であり、in vivoにおける抗体応答を誘発することができるさらなる表面タンパク質および分泌タンパク質を同定するために、本発明者らは、630臨床株から再度調製された培養上清のさらなる解析を行った。検出可能な細胞溶解は存在しなかった(データは示さず)。
濃縮上清によるマウスの免疫化:「抗上清」血清を得るために、2種の系列希釈を行って、培地CDMM(Karasawaら、1995年)においてC.difficile630を増殖させた。OD6000.5の最終培養物を得た。遠心分離により細菌から培地を分離し、続いて0.22μmフィルターを通して濾過し、Vivaspin遠心分離濃縮器MWCO 5000 Da(Sigma)を使用して、これに含有されるタンパク質を濃縮した。得られたタンパク質濃度をビシンコニン酸アッセイ(Pierce、米国イリノイ州ロックフォード)により推定した。用量当たり20μgのタンパク質で8匹のマウスを免疫化し、得られた血清をウエスタン解析において使用するためにプールした。
ウエスタンブロット解析:50ng量の各組換えタンパク質をNuPAGEゲルにロードし、一次抗体として濃縮上清で免疫化したマウスの血清を使用して、ウエスタンブロット解析を次の通りに行った。精製組換えタンパク質を含有する試料を、還元剤を含有する試料バッファーと混合し、ロードに先立ち10分間100℃で加熱した。NuPAGEゲルシステム(Invitrogen)を使用してSDS−PAGEにより試料を分離し、ウエスタンブロット解析のためニトロセルロース膜に転写した。膜をPBS−10%粉ミルクにより3時間4℃でブロッキングした。使用した一次抗体は、組換えhisタグ付きタンパク質に対して生じたポリクローナルマウス抗血清である。一次抗体は全て、1:1000希釈し、1時間30分37℃でインキュベートした;二次抗体は、西洋わさびペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウス血清(1:5000;Dako)であり、室温で45分間インキュベートした。Super Signal化学発光基質(Pierce)により、メーカーの説明書に従って、結合した抗体の検出を行った。
選択された表面露出ポリペプチドが、in vivoで抗体応答を誘発することができることを立証するために、マウスから得た血清における特異的抗体の存在を解析した。濃縮上清で免疫化したマウスから得た血清を使用したウエスタンブロッティングにより、精製ポリペプチドを解析した。C.difficile細菌の上清で免疫化したマウス血清は、C.difficile組換えポリペプチドおよび断片を認識することができる抗体を含有する。Dif183の精製ポリペプチドおよび断片は、抗体により明らかに検出され、感染中のこれらのタンパク質の到達性およびワクチン標的としてのその適合性を確認した(図14)。
(実施例11)
ハムスター抗体による組換えポリペプチドの認識
100ngの各組換えタンパク質を、SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングに供した。膜を1/200希釈のハムスター血清、続いて1/10,000希釈の抗マウス−HRPと共にインキュベートした。a)ワクチン接種したハムスターから負荷15日後に;b)ワクチン未接種のハムスターから負荷30〜50時間後に血清を採取した。未感染のハムスターから得た血清は、陰性対照として使用した。選択された表面露出ポリペプチドが、in vivoで抗体応答を誘発することができることを立証するために、感染させたハムスターから得た血清における特異的抗体の存在を解析した。感染させたハムスターから得たならびにA毒素およびB毒素の組合せによるワクチン接種後に感染させたハムスターから得た血清を使用したウエスタンブロッティングにより、精製ポリペプチドを解析した。
感染させたハムスターから得た血清は、C.difficileポリペプチドに対する抗体を殆ど含有しないことが判明した。これは、主として、感染させたハムスターが、感染30〜50時間後に死亡したためである。これは細菌に対する免疫応答を構築するには不十分な時間である。したがって、ポリペプチド(公知がこのポリペプチドに対してこれらの血清中に存在する)は、ワクチン組成物および中和抗体の調製物における使用に特に有用であると考えられる。
ワクチン接種しその後感染させたハムスターから得た血清は、精製ポリペプチドを認識することができる抗体を含有した。感染に先立つ毒素の組合せ(p5/6+toxB_GT)による免疫化は、死亡を防止するが、C.difficileのコロニー形成を防止しない効率的な抗体応答をハムスターに発生させることができる。精製ポリペプチドおよび断片は、ワクチン接種し感染させたハムスターから得たハムスター血清に存在する抗体により検出され、感染中のこれらのタンパク質の表面到達性およびワクチン標的としてのその適合性を確認した。未感染のハムスターから得た血清は、陰性対照として使用した。例えば、ワクチン接種しその後感染させたハムスターから得た血清は、ワクチン接種し感染させたハムスターから得たハムスター血清におけるDif44、Dif51、Dif130、Dif153、Dif183、Dif208およびDif232を認識することができる抗体を含有し、感染中のこれらのタンパク質の表面到達性およびワクチン標的としてのその適合性を確認した(図10)。
未感染のハムスターから得た血清は、陰性対照として使用した(図10B)。組換えタンパク質調製物に存在するE.coli夾雑物に対する交差反応により、数本のバンドが観察された。
(実施例12)
ヒト血清由来の抗体による認識(IgAおよびIgG)
ヒト抗体による組換えポリペプチドの認識を検査するために、本発明者らは、タンパク質チップアレイを調製し利用した。
1.タンパク質マイクロアレイ手順:100を超えるノズルを有する圧電気インクジェットプリントヘッドを装着したインクジェットスポッタArrayjet(Arrayjet Limited)を使用して、ニトロセルロースコーティングスライド(FASTスライド、Schleicher and Schuell)上に精製組換えタンパク質(0.5mg/ml)を4回複製してスポットすることにより、C.difficileタンパク質アレイを作製し、およそ90〜100μmの直径のスポットを生じた。実験対照として、ビオチン化BSA、マウスIgG(複数可)、ヒトIgG(複数可)およびヒトIgM(複数可)(0.004〜0.5mg/ml)の4種の曲線複製をアレイにスポットした。タンパク質スポットの少なくとも2倍の数のPBSバッファーをスポットし、スポッティングの間、相互汚染による非特異的シグナルの検出に使用した。5%よりも少ないPBSスポットが、バックグラウンド値+3標準偏差値よりも高いシグナル強度を示した。
3%Top Block(Fluka−BioChemiKa)−PBSバッファーにおける0.1%Tween20(TPBS)を含有するブロッキング溶液と共にアレイをプレインキュベートすることにより、非特異的結合を最小化した。TPBSによる洗浄後に、3%Top Block−TPBSにヒト血清を希釈し、25℃で1時間アレイにオーバーレイした。TPBSによる洗浄後に、抗ヒト−Cy5コンジュゲート二次抗体(1:800)と共にアレイを25℃で1時間インキュベートすることにより、アレイ上にプリントされた抗原への抗体の結合を検出した。全インキュベーションステップは、HS 4800ハイブリダイゼーションステーション(TECAN)を使用して撹拌下で行った。PowerScannner3.5スキャナ(TECAN)により画像蛍光シグナルを検出し、ScanArray(商標)ソフトウェアにより、ピクセル当たり10 mの分解能において16ビット画像を作成し、ImaGene6.0ソフトウェア(Biodiscovery Inc、米国カリフォルニア州)を使用して、スポット蛍光強度(FI)を決定した。社内開発ソフトウェアを使用して精緻化および解析を行った。タンパク質毎に、各スポット周囲のバックグラウンド値の減算後に、複製されたスポットの平均蛍光強度(MFI)を決定した。シグナルは、そのMFI値が、IgGによる実験に関しては2,000よりも高く、IgAによる実験に関しては1000よりも高い場合、陽性として考慮し、これは、抗ヒト−Cy5抗体単独による検出後のタンパク質スポットの平均蛍光強度(MFI)、プラス3標準偏差値に相当する。2種の対照を加えた:空の発現ベクターを保有するE.coliの細胞抽出物を有するスポットのMFI値に相当するNN−Hisと、バッファーのみを含有するスポットのMFI値に相当するPBS_Gly(バックグラウンド値)。これらの値は、ソフトウェアにより、各試料スポットの値から自動的に減算される。
2.ウエスタンブロット解析:200ngの各精製組換えタンパク質を、1mm、12ウェルの4〜12%Novex Bis−Tris NuPAGEプレキャストゲル(Invitrogen)にロードし、200Vで35分間分離し、乾式iBlot(Invitrogen)を使用してニトロセルロース膜に転写した。PBS−T(0.05%Tween−20を含有するPBS)における10%脱脂乳(Difco)で膜を飽和させ、1時間室温で穏やかに撹拌しつつインキュベートした。次に、ブロッキングした膜を、1%脱脂乳PBS−Tにおいて1:500希釈したヒト血清4705WHと共にインキュベートし、インキュベートは3時間室温で行った。PBS−Tにより15分間1回、5分間2回、膜を洗浄した。
次に、二次抗ヒトIgG抗体、HRP−コンジュゲートSIGMA A−6029(1%脱脂乳PBS−Tにおいて1:2,500)または抗ヒトIgA、アルカリホスファターゼ−コンジュゲートSIGMA A−9669(1%脱脂乳PBS−Tにおいて1:3000)を添加し、40分間穏やかに撹拌しつつインキュベートした。PBS−Tにより15分間1回洗浄し5分間3回洗浄した後、膜を基質SuperSignal WestPico(Pierce)溶液でオーバーレイし、5分間室温で穏やかに撹拌しつつインキュベートした。ペーパータオルで過剰な基質を除去し、膜をX線フィルムに露光した。
回復期ドナー(ドナーA、ドナーB、ドナーC、ドナーDおよびドナーE)および健康なドナー(10WH、3453WH、4016BL、4697WHおよび4705WH)からヒト血清を得た。異なる血清のELISA力価を図11に示す。FGF21は、陰性対照の無関係のタンパク質であり、ToxA/Bは、Inverness Medical Inc.製の毒素AおよびBの組合せである。回復期ドナー、ドナーA、ドナーCおよびドナーDから得た血清は、FGF21のIgG力価と比較して、ToxAおよびToxBに対するIgGを有し、C.difficileに対する免疫応答を開始したことを示す。さらに、健康ドナー、10WHおよび4705WHから得た血清は、FGF21のIgG力価と比較して、ToxAおよびToxBに対する高いIgG力価を有し、過去に感染しており、C.difficileに対する免疫応答を以前に開始していたことを示す(図11)。
血清における特異的IgGの存在は、C.difficileに対するIgG全身性免疫応答に関連する。タンパク質アレイを使用して、ヒト血清における、ポリペプチドに対する特異的IgGの存在を同定した。例えば、タンパク質アレイを使用して、本発明者らは、上述のヒト血清における、Dif51、Dif130、Dif232ポリペプチドに対する特異的IgGの存在を同定した。4705WHと命名された血清において、Dif232ポリペプチドに対する高力価のIgG(MFI>5000)が測定された(図12A)。4705WHと命名された血清において、Dif232に対するIgGの存在をウエスタンブロットにより確認した(図12B)。
強い反応を示すポリペプチドは、特にヒトにおける使用のための、免疫原性組成物またはワクチン組成物において特に有用となり得る。さらに、血清における特異的IgAの検出は、C.difficileに対する粘膜免疫応答に関連する。ヒト血清における本発明のポリペプチドに対する特異的IgAの存在を決定した。例えば、本発明者らは、ヒト血清におけるDif51、ポリペプチドに対する特異的IgAの存在を同定した(後述および図13Aに要約)。
ドナーCと命名された血清において、Dif51ポリペプチドに対するIgAの力価(MFI>1000)を測定した。ドナーA、ドナーC、ドナーD、3453WHおよび4705WHと命名された血清において、Dif130ポリペプチドに対するIgAの力価(MFI>1000)を測定した。強い反応を示すポリペプチドは、生物の様々な粘膜に方向づけられた保護をもたらす粘膜免疫応答を生じさせるための免疫原性組成物またはワクチン組成物において特に有用となり得る。これは特に、感染が結腸粘膜に限定され得るC.difficileに当てはまる。血清4705WHにおけるDif130およびDif232ポリペプチドに対するIgAの存在をウエスタンブロットにより確認した(図13B)。これらのポリペプチドは、生物の様々な粘膜に方向づけられた保護をもたらす粘膜免疫応答を生じさせるための免疫原性組成物またはワクチン組成物において特に有用となり得る。これは特に、感染が結腸粘膜に限定され得るC.difficileに当てはまる。表2は、タンパク質チップおよびウエスタンブロット解析においてヒト血清(4705WH)により認識されたポリペプチドを要約する。
(実施例13)
Dif153(CD2830)のさらなる解析
630およびStoke_Mandeville株の上清においてDif153が検出された。Dif153は、220アミノ酸の仮定上のタンパク質としてアノテートされる。BLAST解析は、亜鉛メタロペプチダーゼのファミリーである炭疽菌致死因子タンパク質(LF)に対する相同性を示した。
特に、Dif153は、炭疽菌致死因子のC末端ドメイン(残基589〜810)に対する相同性を示す。防御抗原との相互作用に必要な炭疽菌のN末端ドメインは、失われている。触媒部位(HEXXH)は、Dif153において保存されており、C.difficileタンパク質が、亜鉛依存性メタロプロテアーゼであり得ることを示唆する(図15)。このタンパク質が、亜鉛または他の二価カチオンに結合することができるか理解するために、組換えタンパク質を使用してNMR解析を行った。この解析は、亜鉛、ニッケルおよび銅に結合するが、カルシウムに結合しない組換えタンパク質の能力を明らかにした。
Dif153がタンパク質分解活性を有するか調査するために、蛍光定量的解析を行って、組換えタンパク質のゼラチン基質切断能力を検査した(図18)。この解析は、組換えタンパク質が、亜鉛の存在下で弱いゼラチナーゼ/コラゲナーゼ活性を有するが、ニッケルおよび銅の存在下ではまたはアポ型では活性がないことを示した。Clostridiaは、細胞外マトリックス構成成分の消化の原因である数種類のメタロペプチダーゼを分泌することが報告されている。したがって、本発明者らは、数種類の細胞外マトリックス要素(コラーゲンI〜VIおよびフィブロネクチン)における組換えタンパク質のタンパク質分解活性をin vitroで検査した。予備的解析は、組換えタンパク質が、フィブロネクチンを切ることができることを示した(図16)。
次の通り、Dif153のさらなる特徴付けを行った:他の細胞外マトリックス要素におけるタンパク質分解活性を評価し、フィブロネクチン断片の質量分析配列決定(mass spec sequencing)により切断部位を同定する。In vitroアッセイを行って、タンパク質が、ヒト細胞に対する毒性効果を有するか理解する。In vitroアッセイを行って、タンパク質が、ヒト細胞のフィブロネクチンマトリックスの組織化に対する効果を有するか理解する。観察される酵素活性が、Dif153に特異的であることの確認は、触媒部位に変異導入された不活性組換えタンパク質の作製により達成される。フィブロネクチン分解活性を有する新たな亜鉛メタロペプチダーゼ(metellopeptidase)であるこのポリペプチドは、C.difficileのコロニー形成を限定または防止するための優れた候補となり得る。
(実施例14)
Dif183のさらなる解析
Dif183(CD3669)の機能を特徴付けるため、欠失突然変異体を作製した。栄養細胞における共焦点顕微鏡および細胞画分におけるウエスタンブロット解析により、Dif183の細胞下局在を調査した。方法は、実施例6に記載されている。これらの解析は、Dif183が細菌表面に会合することを示した(図19)。
培養上清(指数増殖期と定常期48時間後の両方に収集)におけるDif183の存在をウエスタンブロッティングにより確認した。さらに、イムノブロッティング解析は、これが総上清のみならず、超遠心画分にも存在することを明らかにした。定常期48時間後に、本発明者らは、超遠心上清および超遠心ペレットの両方においてタンパク質を検出した。この観察は、電子顕微鏡により上清とペレットにおいて以前に観察された高分子構造(鞭毛、小胞)とタンパク質との関連を示すことができる(図20)。
Dif183の機能を調査するため、栄養豊富な培地における欠失突然変異体の増殖曲線を野生型と比較した。栄養細胞および胞子の両方の生体計数を行った(図21)。指数増殖期において、突然変異体は、wtに匹敵する増殖プロファイルを有するが(図21A)、突然変異体株の光学密度は、後期定常期の間より速く減少する(図21B)。栄養細胞の生体数は、wtおよび突然変異体の間で差を示さなかった(図21C)。反対に、栄養細胞のETOH不活性化後の突然変異体胞子の生体数は、wtの約10倍少なかった(図21D)。この表現型は、胞子の形成、エタノール処理に対する胞子の抵抗性または胞子の発芽などの1種または複数の生物学的プロセスの欠損に関連し得る。
Dif183のさらなる特徴付けを行う。Dif183補完株を作製して、観察された表現型の特異性を確認する。増殖の異なる時点および胞子抽出物においてタンパク質発現を検査する。表現型が、胞子形成または発芽欠損(胞子計数、発芽アッセイ)に関連するか決定される。野生型およびノックアウト上清の効果が、胞子発芽において検査される。栄養細胞および胞子において、ノックアウトおよび野生型における電子顕微鏡解析を行う。新たな胞子形成/発芽因子であるこのポリペプチドは、C.difficileのコロニー形成を限定または防止するための優れた候補となり得る。
3700種を超える可能性のある標的から、本発明者らは、技法の組合せを使用して、C.difficile感染において有意な有用性を有する可能性のある様々なポリペプチドを同定した。これらのポリペプチドそれぞれの配列番号およびDIF識別子を図1に示し、これらのポリペプチドの予測される局在を図2に要約する。
(実施例15)
ポリペプチド抗原とtoxB_GTおよびTcdA断片との組合せ
ハムスター免疫化試験は、典型的に、ゴールデンシリアンハムスターに関与した。全身性免疫化(4回、2週間置く)により抗原を検査した。死亡までの時間、感染の徴候および細菌のコロニー形成の差を検査した。
Harlan Olac、英国から雌性ゴールデンシリアンハムスター(100g体重)を購入した。動物を個々に収容し、水および食物を適宜与えた。最初のワクチン接種の少なくとも3週間前に、遠隔測定チップ(Vitalview Emitter)を開腹手術によりi.p.挿入した。傷が癒えたら、動物をレシーバーパッドに置き、体温および活動性をモニターした(Vital Viewソフトウェア)。動物を、1、14、28および36日目に、MF59アジュバントにおいて製剤化した4用量の抗原の組合せ(50ugrのp5−6およびtoxB_GTと、20μgの抗コロニー形成抗原Dif044またはDIF208のいずれか)により腹腔内(i.p.)で免疫化した。全構成成分を正しく貯蔵し、凍結/融解サイクルを最小にした。
コロニー形成に対する各動物の感受性を確実にするため、60日目に、各動物を30mg/kgのクリンダマイシンホスフェートで処置した。続いて抗生物質投与の12時間後に、C.difficile630のおよそ1000個の胞子で各ハムスターを負荷した。
負荷後に、軟便(湿った尾)の発病および持続時間を含む、感染の徴候に関して動物を密接にモニターした。以前に報告された通り、2度を超える体温降下(35℃)を示す動物を選別した。体温が35℃より下に降下しなかったが、10%を超える体重が失われた動物も選別した。負荷後2週間を超えて生存した動物は、感染から回復したものと考慮して、実験にエンドポイントをもたらすものとして選別した。
1.死亡までの時間:動物の負荷後に35℃に達するまでに要する時間。
全動物は、9.4×104胞子/用量による負荷を生き延び、動物は、下痢を含むいかなる臨床徴候も示さなかった。期間中、糞便ペレットを収集して、胞子の排出をチェックした。これは、抗コロニー形成抗原なしのP5/6+toxB_GTによる免疫化の観察(例えば、WO2013/084071)と合致する。
2.体温:実験期間中、遠隔測定により全動物の体温をモニターした。全動物は、正常な日周温度変動を示し、動物6〜9に関して最初の48時間において影響は観察されなかった。H10における遠隔測定チップは機能しておらず、したがって、この動物の温度データは利用できない。代表的な結果を図23に示す。
3.ワクチン接種した動物の糞便におけるC.difficile胞子の排出:負荷後様々な日数で糞便ペレットを収集した。これらは、動物を新たな滅菌ケージに置くことにより、あるいは汚れた寝床を清潔な滅菌寝床に交換した後に収集した。ペレットを滅菌PBSに再懸濁し、エリスロマイシン含有Braziers CCEY寒天上に蒔くことにより、回収したC.difficile生物の数を数え上げた。続いて、100mg糞便材料当たりのコロニーの数を決定した。
結果は、抗コロニー形成因子抗原(DIF044およびDIF208)をワクチン接種した動物におけるC.difficileの初期排出が、毒素断片単独をワクチン接種した動物における排出レベル(p5/6+tox GTで免疫化した動物の歴史的データ)と類似していることを示す。抗コロニー形成因子ワクチンを接種した動物における排出のレベルは、負荷後3〜4日目の間に降下し、この時点は、毒素断片のみを免疫化した動物において細菌のレベルが増加することが典型的に観察されている。負荷後8日目まで、ワクチン接種した動物の全群における排出のレベルは類似している(図24)。
4.エンドポイントにおける腸管におけるC.difficileコロニー形成:盲腸(Cae−LA)および結腸(Col−LA)の内腔に局在化するならびにこれらの臓器の組織に関連する(Cae−TAおよびCol−TA)C.difficileの数を数え上げた。腸管を除去し、回収された細菌における細菌数を決定した。総細菌ロード(胞子および栄養細胞)を数え上げるために、各切片を長手方向に開放し、10ml PBSを2回交換しつつ穏やかに洗浄することにより内容物を除去した。Stomacherを使用して、5mlのPBSにおいて1分間組織をホモジナイズし、ホモジネートにおける生存数を決定した。酵母増殖を抑制するための20g/mlアンホテリシンBを含有するCCFA血液寒天プレートに、系列10倍希釈を蒔いた。試料中に存在する胞子数を推定するため、試料を10分間56℃で加熱し、生存数決定方法により存在する胞子数を決定した。微生物学的解析は、H1、H4、H5およびH6が、実験エンドポイントにおいて検出可能なC.difficileを持たなかったことを示した。H8およびH10は、非常に少数のC.difficileを有し、エンドポイントにおいてごく僅かなコロニーが成長していただけだった(図25)。エンドポイントにおける腸管の平均コロニー形成を、p5/6+toxB_GT単独をワクチン接種した動物による以前の実験の結果と比較した(図26)。
単離されたC.difficileの数は、結腸の内腔において全群で最も多かった。盲腸および結腸両方の内腔に関連する細菌の数は、全ワクチン接種群において同等であった。抗コロニー形成抗原をワクチン接種した群における細菌の数は、盲腸における組織関連においてより低かった。結腸における組織関連において、DIF044をワクチン接種した群から細菌は単離されなかった。
5.腸管内容物における毒素推定:腸管における毒素内容物の評価も行った。0.22μmフィルターを通して腸管洗浄液を濾過して、細菌細胞を除去した。次に、濾過した洗浄液を、10倍減少濃度(結腸は5倍)でコンフルエントベロ細胞上に24時間置いた。インキュベーション後に、細胞を洗浄し、固定し、次にギムザ染色で着色した。毒素が存在する場合、細胞は丸くなって剥離を生じ、色がなくなる。毒素内容物データは、細胞が付着(染色)を維持する希釈を表す。図27に示す通り、HT29細胞(毒素Aに感受性)またはベロ細胞(毒素Bに感受性)のいずれかの上への腸管内容物試料の添加により推定される通り、腸管試料のいずれかに存在する活性毒素はごく僅かまたは全くなかった。
6.抗体検出および腸管洗浄液、血清:抗毒素抗体、抗Dif44抗体および抗Dif208抗体の測定値に関して、ウエスタンブロットにより、ハムスターから得た血清または腸管洗浄液を検査した。この解析のために、NuPAGEゲルシステム(Invitrogen)を使用したSDS−PAGEにより200ngの各組換えタンパク質(p5−6、toxB_GT、Dif44およびDif208)を分離し、ウエスタンブロット解析のためニトロセルロース膜に転写した。PBS−10%粉ミルクにより膜を室温で1時間ブロッキングした。次に、実施例15のハムスターから得た血清(希釈1:200)または腸管洗浄液(希釈1:10)のいずれかと共に膜を90分間37℃でインキュベートした:特に、実施例15のハムスター1〜5から得た血清または腸管洗浄液を用いて、抗Di44抗体を検出し、実施例15のハムスター6〜10から得た血清または腸管洗浄液を用いて、抗Dif44抗体を検出した。抗ハムスター二次抗体(希釈1:10,000)との45分間37℃のインキュベーション後に、Super Signal化学発光基質(Pierce)により、メーカーの説明書に従って、結合した抗体の検出を行った。
図28および図29から、抗Dif44抗体および抗Dif208抗体が、血清および腸管洗浄液に存在することが分かり得る。
(実施例16)
抗Dif44抗体は、他のCWPタンパク質を認識する。
抗Dif44抗体が、他のcwpタンパク質と交差反応することができるか決定するため、200ngの様々な試料をゲルにロードし、ウエスタンブロットに供した。NuPAGEゲルシステム(Invitrogen)を使用したSDS−PAGEにより各組換えcwpタンパク質(図30に示す)を分離し、ウエスタンブロット解析のためニトロセルロース膜に転写した。
PBS−10%粉ミルクにより膜を室温で1時間ブロッキングした。次に、実施例15のハムスター1〜5から得た血清(希釈1:200)と共に膜を90分間37℃でインキュベートした。抗ハムスター二次抗体(希釈1:10,000)との45分間37℃のインキュベーション後に、Super Signal化学発光基質(Pierce)により、メーカーの説明書に従って、結合した抗体の検出を行った。
図30に示す通り、血清抗体は、cwp1、cwp3、cwp6、cwp7、cwp11、cwp14、cwp20、cwp21、cwp25、cwp26、cwp27およびcwp29を認識した。同じ試料を、p5_6+ToxB−GTをワクチン接種したハムスターから得た血清ともインキュベートした。この血清に存在するcwpタンパク質に対する可能性のある抗体は、ワクチン接種後に負荷された細菌に対する免疫応答によるものである。cwp5、cwp25、cwp26、cwp29のみに対し弱い反応性が検出され、ワクチン接種にdif44を加えることが、C.difficileに対する応答に利点を付与することを実証する。
(実施例17)
DIF44およびDIF208ポリペプチド抗原とToxB−GTおよびP5_6断片との組合せ
上述の通りに免疫原性組成物を調製する。次の通り、3種の組成物を投与する:8匹のハムスターに、ToxB_GT+P5_6+DIF208+DIF44、4匹のハムスターに、ToxB_GT+P5_6(陰性対照)、他の箇所に記載されている標準投与手順を使用。ToxB_GT+P5_6+DIF208+DIF44を投与した8匹のハムスターのうち6匹にC.difficileを負荷し、一方、2匹は負荷せずにおいた。死亡までの時間および細菌のコロニー形成の差をin vivoで検査した。例えば、免疫化し負荷したハムスターの血清において観察されたDIF44に対する抗体が、感染またはワクチン接種に起因するか決定することは以前に可能でなかったため、ワクチン接種したが負荷してないハムスターから得た血清および腸管洗浄液に存在する抗体を観察するためのウエスタンブロットも行った。