水が溜まることを防止する"排水する"アスファルトの応用や、あるいは特別な溝の設計を有するタイヤの構造のような、様々な解決法が研究され、また、提案されてきている。しかしながら、もしも過剰な量の水がある場合には、アスファルトの排水が保証されない。また、溝の通常の摩耗は、水を排出するその能力を次第に低下させる。
アクアプレーニングの問題を解決するための別の手法は、車両の複数の車輪、特に複数の駆動輪の近くに取り付けられ、液体または気体の複数の噴流を路面に噴き出すことでそのような表面に溜まった水の層を除去するデバイスを使用することにある。このタイプのデバイスはまた、特定の限界内において、砂、葉、一般ゴミのような、そこに存在する様々な物質から路面をきれいにすることを可能とする。
上記のようなデバイスを記載したつい最近の文献は、欧州特許出願公開第2058141号明細書である。このデバイスは、それぞれのタイヤ付近において車両の固定位置に配置され、適切なタンク中に含まれた加圧された気体が供給される少なくとも1つのノズルから実質的に成る。タンクはコンプレッサに接続され、制御バルブが設けられる。さらに、タイヤによって持ち上げられて排出される水の軌跡に対して平行か、あるいはわずかに傾けられた一連のデフレクタが、複数の車輪の外周に沿って配置される。圧縮された気体をノズルへと供給するダクトも、ダイナミックエアインテークへと接続され、車両のフロントに取り付けられる。
欧州特許出願公開第2058141号明細書の解決法には、様々な欠点がある。
第1には、車両が直線状の経路を進んでいる場合にのみ、その動作が保証されるという事実によって表される。実際のところ、車輪が進行方向を変えると、それぞれの気体の噴流は車両に対して固定されたままである。つまり、車輪がたどる経路に追従しない。これは、車輪によって到達されない路面の領域から水を除去し、車輪が向けられる領域へとこれを排出するので、その結果、アクアプレーニングの問題を悪化させる。
欧州特許出願公開第2058141号明細書の第2の欠点は、デフレクタが複数のホイールウェルに固定されているため、泥や一般的な汚れによって簡単に汚れてしまうので、水の通路を完全にふさぐ臨界点まで、その実効性を低減させるという事実にある。また、フロントダイナミックエアインテークでさえ、遮蔽物が設けられていても詰まり易く、システムを不安定で制御不能にする。
さらなる問題は、システムによって生成される圧力に対して加えられ、ダイナミックエアインテークによってバンパーの前に生成される理論的超過圧力を含め、その性能を変え得るであろう多くの設計因子のため、当該システムは理想的な条件でのみ機能し、現実の条件では機能しないという事実に起因する。この超過圧力は、車両の速度に正比例し、また、ダクトシステムに含まれるフィルタの清浄度にも依存する。
最後に、欧州特許出願公開第2058141号明細書は、路面から水を排出するために、気体の連続的な流れを考慮する。アンチアクアプレーニングシステムが適用された場合、車両は突然に、良好な道路との接触条件にあることになるであろう。つまり、舗装道路上での良好なグリップを有することになるであろう。これにより、車両を制御するための不意で緊急な動作を取ることを運転者に強いるであろうという事実のために、この解決法は潜在的に非常に危険である。
国際公開第01/39992号は、水、雪、または同様な道路条件の場合における、車両の安全走行を改善するための方法およびデバイスを記載している。空気の複数の噴流が複数の車輪の前で用いられる。複数の噴流は可動性および/または調節可能であり、車両の複数の動作パラメータ(車輪の複数の位置、横加速、角速度等)を検出する複数のセンサ手段からの情報に基づいて、データ処理システムによって制御される。しかしながら、複数の噴流はまた、路面の条件に応じて動作されるであろうことは予期されていない。さらに、連続的なモードで複数の噴流は動作される。
独国特許出願公開第3619191号明細書は、特に氷った道路上における車両のブレーキ動作を改善するための方法およびデバイスを記載している。この文献は、車両の複数の車輪の前においてフレームに固定されたディスペンサを通して粒上の物質を放出することを考えている。
図1から図3に示されるように、本発明に従ったデバイスは、一連の主たる大きなブロックおよび付加的な要素から成るものであり、全て車両(10)中に統合されている。
第1の大きなブロックはタンク(12)から成り、その中には、アクアプレーニングを引き起こす路面(16)上に存在する水(14)の層を除去するために使用される流体が含まれる。タンクは空気、水、または流体の混合物を保持することができる。タンクを充填する作業は、普通はユーザによって実行される。流体が水の場合、タンクは、ワイパー用流体のタンクを充填するために用いられるのと同様にして充填されるであろう。流体が空気の場合、タイヤを膨らませるのと同じ方法でタンクが充填されるであろう。タンクは常に、且つ全ての場合において電子的に制御され、その中の流体のレベル、その効率をチェックし、あらゆる凍結の可能性を避けることに加え、運転者に指示して"充填"させたりその他の操作を実行させたりする。
第2の大きなブロックは、アクアプレーニングの問題を防止するために、車両(10)の状態および路面(16)の条件を検出するために必要な複数のセンサ(18)を含む。複数のセンサは既に車両に存在するであろうから、その使用は、コストを低減するために、他のシステムと共有される。(例えば、ABSまたはESPセンサは、車両の速度、車両の加速、それぞれ個別の車輪の角速度、ステアリング角、路面上の水の存在、ブレーキの条件等を示すことができるであろう。)これらのうち、車両が進んでいるkm/hを決定するための車両速度センサ、全ての車輪が同じ速度で回転しているかどうか、車両が曲がろうとしているかどうか、または1または複数の車輪が突然加速あるいは減速しているかどうかを決定するための、それぞれ個別の車輪に対する角速度センサが含まれる。雨が降っているかどうかを決定するための降雨センサ、車両のいかなる傾きも決定するための加速度計およびジャイロスコープ、車輪が排水しているかどうかおよびどれだけの排水をしているかを決定するための水センサも含まれる。ステアリング角を決定するセンサは、車両が直線道路を進んでいるのか、あるいは曲がった道路を進んでいるのかを理解するために必要である。これらの他に、例えば、車両にインストールされているABSおよびESPシステム、並びにその他の安全システムの重要なフィードバックが加えられる。また例えば、車両がまさに到達しようとしている異常な水の層の存在を検証することを可能にするセンサ(例えば、赤外線センサ)、または、タイヤによって排出される水の量を検出し、車輪に隣接している複数のセンサのような、システムに対して具体的に設計および着想された複数のセンサをインストールすることも可能である。
別の大きなブロックは、流体および電気設備用のパイプシステムを含む。システムのこの部分は、全ての他の複数のブロックおよび複数の要素を連結して動作させる全ての接続を含む。図面中では、複数の流体ダクト(20)が太い線で示され、複数の導電体(22)が細い線で示される。
さらなる要素は、タンク(12)に含まれる流体の動作圧力を生成するためのポンプ(24)によって表される。この要素は不可欠なわけではない。実際のところ、タンクが圧縮空気で充填されるタイプの場合、明らかに、超過圧力を生成する必要は無いであろう。エアコンプレッサ(不図示)によって生成された、タンク内部の空気の圧力を有することで十分であろう。他の変形例においては、ポンプ(24)は、タンクと複数の噴射装置(後述)との間にインストールされなくてもよく、その代わりに、複数の噴射装置に直接接続されてよいであろう。
別の大きなブロックは、複数の噴射装置(26)から成る。アクアプレーニングを引き起こす路面(16)上に存在する水(14)の層を除去するために、流体の複数の噴流が、ここから排出される。複数の噴射装置(26)は、複数のダクト(20)を介してポンプ(24)およびタンク(12)へと接続されている。複数の噴射装置(26)は車輪(28)またはホイールウェル、泥除け、バンパー、シャシ、締結具、サスペンション等に隣接した複数の位置に取り付けられ、それらの動作を妨げるであろう氷の形成を避けるために、公知の手段(例えば、電気的発熱体)によって保護されなくてはならない。
本発明の主要な特性に従うと、複数の噴射装置(26)は、直線状に伸びた道だけでなくカーブにおいても、複数の車輪(28)の方向に正確且つ絶えず"追従する"ことが可能でなくてはならない。複数の噴射装置(26)は、固定されてもよいし、あるいは可動性であってもよい。
複数の噴射装置(26)が車両上で動くことが可能なように取り付けられる場合(図1−図3)、各車輪(28)の長手方向面内に含まれる軸の周りに回転するように、および/または、各車輪の長手方向面に平行なガイドレールに沿って動くように、それらの噴射装置が配置されてよい。例として、3つの可能な解決法が特定される。第1の解決法は、車輪の軸と統合され、(複数の後方ステアリングホイールの場合にも)車輪の動きに追従する支持体(27)(図1−図3)に取り付けられた複数の噴射装置から成る。第2の解決法は、ホイールウェルまたは隣接する複数の領域に取り付けられた複数の噴射装置の使用を考える。この場合、ステアリング角に関連して動力を供給される電気的に制御された部分によって、あるいはまたオートバイの場合には傾き角に応じて、複数の噴射装置は、それらの中心軸(29、図7)の周りに回転することができる。第3の解決法は、車輪に隣接した複数の領域に取り付けられ、電気的に制御された磁気または機械的ガイド(31、図8)に沿って移動することが可能な噴射装置を考える。
この場合、車輪が操縦されると、ガイドレールに沿って走行することにより、噴射装置は車輪の動きに追従する。最後の1つの解決法は、上述した後者2つのタイプの噴射装置の組合せを考える。つまり、ガイドレールに沿って動くことが可能であり、且つ同時に軸周りに回転できる。
車両上の複数の固定位置に複数の噴射装置(26)が取り付けられる場合(図4−図6)、それぞれの車輪には、車輪の操向範囲の全幅をカバーするような角度で方向付けられた、少なくとも2つ(好ましくは3つ)の噴射装置が設けられるであろう。さらに、使用される複数の噴射装置のタイプに基づいて、ノズルの開口および噴流のエネルギーを増大させることまたは減少させることにより、それぞれの流体の噴流を変動させることも可能であろう。
アクアプレーニングの問題は通常複数の前輪の前で最初に発生するので、それぞれの場合において、複数の前輪の領域に本発明に従ったデバイスを適用することが都合がよい。
さらに、方向付けする複数の車輪の状態とは独立に、車両の進行方向と同じ方向にデバイスを連続的に方向付けることも可能でなければならない。実際のところ、車両が明らかなアンダーステアリング状態にあるかもしれず、それ故に、複数の車輪が右に操縦されたとしても、アクアプレーニングおよびアンダーステアリングを除くために道路の左側を"きれいにする"必要がある。
本発明の範囲内に留まったままで、複数の噴射装置(26)の構造におけるさらなる変形例が予期される。この変形例(図8b)は、いわゆる"マルチポイント"噴射装置の使用によって表され、流体源への"シングルポイント"噴射装置接続の簡便性を有することと、重要な点に配置または特定の向きに配置された複数の噴射装置と等価な動作の多用途性とを有することにより特徴付けられる。示されるようにマルチポイント噴射装置は、単一のダクト(A)を介して流体源へと接続され、対応するバルブ(B)によって選択的に開けられる複数の個別のノズル(C、D、E)を備える。バルブ(B)は、制御"バス"(F)を介してCPU制御部によって操縦される(その動作は後述する)。このようにして、例えば、車両が直線的な方向に進んでおり、方向付けする複数の車輪が車両の進路に従っていること、速度が特定の値であること、等に基づいて計算された周波数で、中央の噴射装置(E)は開けられるであろう。中央の噴射装置(E)は特定の周波数およびデューティサイクル60%で開けられ、これに対して噴射装置(D)は異なる周波数およびデューティサイクル30%で開けられるような条件もあり得る。この条件は、車両が直線路を進んでおり、進行方向に対して複数の車輪が逆ステアリング(counter-steering)位置にあることをCPUが感知したという事実に依存するであろう。
これらの噴射装置は、2つのステアリングホイール、4つのステアリングホイールを有する、前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動車両を含む全てのタイプの車両および全ての車輪に取り付けられてよく、一般には、ステアリング車軸、駆動車軸、またはフリー車軸の数にかかわらず、全てのタイプの車両に取り付けられてよい。単一トラックで運転される車両(オートバイ、スクーター、または同様なもの)にデバイスが取り付けられる場合には、ステアリング角に従うことに加えて、噴射装置はまた車両の傾き角にも追従することが可能であることに特に注意するべきである。
本発明のさらなる重要な特性は、先行技術の教唆に反して、複数の噴射装置(26)は間欠的に動作される、つまり、それらの複数の噴流が連続的でないという事実によって表される。これにより、アンチアクアプレーニングデバイスの特に起動時および停止時の過渡的条件に関して、極めて簡単且つ安全な様式で運転者が車両を制御することを可能にする。言い換えると、アクアプレーニングの問題の現実的且つ効率的な制御のために、路面に当たる流体の複数の噴流を"動的"にする必要がある。
それにより、複数の噴射装置(26)の機能は、車上でのそれぞれのインストール位置に基づいて特異的である。タイヤの前に取り付けられた複数の噴射装置、または、タイヤに対して横方向に取り付けられながらもそれらの噴流をタイヤの前に向ける複数の噴射装置は、タイヤの前の路面から水を除去する機能を有する。流体の流れは路面に向けられ、操向の間、複数の車輪の方向に従うであろう。タイヤの上方または下方に取り付けられた複数の噴射装置は、遠心効果によって、後方に向けられた水の流れを車両の進行方向に対して"遮断する"機能を有する。
車両(10)にインストールされた中央処理装置(CPU)は、複数の電気接続(22)によって、アクアプレーニングの問題に対抗するためのデバイスを形成する全ての大きなブロックおよび要素へと接続されている。CPUの機能は、その他全ての安全システムと通信することに加えて、複数のセンサ(18)によって検出された複数の値に基づいて、デバイスの動作する時と仕方を決定することである。
複数のセンサ(18)との相互作用は、車両中に既に統合されている複数のセンサをポーリングすること、および、車両に特異的に取り付けられており、それ故にその独占的な使用に向けた複数のセンサを制御することの両者によって実現できる。CPUは、システムの可能な干渉のモードを2つ有する。それは、差し迫ったアクアプレーニングの問題があることを複数のセンサが示した場合に、システムに干渉し、システムを動作させてよい。このモードにおいてシステムの動作は、発生している問題を一掃する機能を有している。また、複数の車輪が操縦され、直線ではないカーブした軌道にあるような際であっても、その他の複数のデバイス(例えばESPおよびABS)が正しく動作することを支援することができる。その計算方法は、運転者の側で車両の制御を簡単に再開するのに好都合であろう。
第2の動作モードは、アクアプレーニングの発生を防止することである。車両の動的な状態における複数のセンサ(18)および複数のリモートセンサの条件付けに基づいて、CPAがシステムを始動させ、アクアプレーニング現象が発生するよりも前にこれを未然に防ぐ。そのような事象の兆候を避けるために、計算システムが車両およびデバイスを事前に処理するであろう。必然的に、ダッシュボードおよび車載診断器具には、周知のモードのインターフェースが備えられる。最も最新の安全装置にあるように、この第2の状況においては、デバイスはまた、危険な地点に到達する前に速度を落とすように車両の自動制動を予見することもできるであろう。
全てのセンサ(18)を操縦することが非常に重要である。CPUがデバイスを始動させることが必要であるとひとたび決定したら、CPUは複数の噴射装置(26)を作動させる。しかしながらこれは、車の動的なデータ、ステアリング角、速度、偏揺れと関連して、および、アクアプレーニングに関与する車輪の数に関連して、インテリジェントモードで生じる。この点に関しこの方法においては、複数のセンサによって検出される複数の条件、および、それらの強さ、強度と持続時間を確立する数学的アルゴリズムに関連して、複数の噴流の持続時間および圧力が、それぞれの噴射装置に対してリアルタイムで動的に計算される。CPUは、任意の波形、任意の周期およびデューティサイクルを有する不連続な流れを意味する間欠的な流体の流れとなるよう計算して複数の噴射装置を駆動し、また、噴射が活性化された局面の間使用される空気の流速または単位時間当たりの流体の量も制御するであろう。この動作方法は、運転者に対して、システムの作動中においても、車両の容易な制御を可能とするであろう。従ってCPUは、空気、水、または気体の流速を制御するばかりでなく、複数のうちの1つのグループあるいは全てに対するのではなく、それぞれ個別の噴射装置における空気の噴出の複数のサイクルも動的モードにおいて制御するであろう。この方略は、安全性を増大させるために採用されるのに加えて、また、システム自身内で生成される超過圧力を有効に利用し、タンク内部の液体または流体の効率および持続時間を増大させるためにも使用される。CPUの別の機能は診断することである。言い換えると、デバイスを構成する全ての部分の効率および適切な動作を常にモニタできることであろう。システムはまた、周囲洗浄および自己試験サイクルも提供する。必然的に、この動作のモードは車両の全ての車輪に対して拡張され、それぞれの車輪は個別にまたは他の複数の車輪と一緒に制御されることができ、これにより、単一チャネルまたは多重チャネルシステムを決定する。同じことが、インストールされ得る全ての噴射装置、または全てのポンプあるいはタンクに対して言える。本設計に存在する全ての構成要素は、可能性としては1つであってよい。または1つよりも多くから、デバイスの適切な動作を十分に保証する数までであってよい。
本発明に従ったデバイスは、あらゆる路上走行車両に適用することができる。図9および図10は、例えば、オートバイに対するその応用を示し、様々な構成要素の参照番号は車に関連した以前の図におけるものと同じである。
結論として、本発明に従ったデバイスは、システムを特に信頼できるものにする限られた数の構成要素を使用することを通じて、既に知られているデバイスの問題を解決する。さらに、複数の噴流が、複数の車輪の進行方向に効率的に追従するように動作され、車のシャシに向けて方向付けられるので、このデバイスはより効率的且つ安全である。従って、車に関連した安全走行が、複数の噴流の間欠的な動作によって高められる。